(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】放射性物質輸送貯蔵容器
(51)【国際特許分類】
G21F 5/06 20060101AFI20220512BHJP
G21F 9/36 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
G21F5/06 G
G21F9/36 501C
G21F9/36 501H
G21F9/36 501A
(21)【出願番号】P 2018050464
(22)【出願日】2018-03-19
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有松 隆史
(72)【発明者】
【氏名】下条 純
(72)【発明者】
【氏名】田中 謙太郎
(72)【発明者】
【氏名】萬谷 健一
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-292682(JP,A)
【文献】特開2007-240173(JP,A)
【文献】特開2012-013625(JP,A)
【文献】特開2001-166084(JP,A)
【文献】特開2008-076270(JP,A)
【文献】特開2003-255086(JP,A)
【文献】特開2004-144600(JP,A)
【文献】米国特許第04702391(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 5/00
G21F 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性物質が収められる収容空間を有する筒状の胴部と、
前記胴部の一端面に、前記胴部と同心に固定された底部と、
前記胴部と同心で、前記底部から前記胴部と反対方向へ延在する筒状の底部サポート部であって、前記底部と別の部材とされて前記底部と接合されている底部サポート部と、
前記胴部の外周面側に設けられた筒状の側部中性子遮蔽層と、
前記側部中性子遮蔽層を覆う筒状の側部中性子遮蔽層カバーと、
を備え、
前記底部の外径、および前記底部サポート部の外径が、いずれも、前記胴部の外径よりも大きく、前記側部中性子遮蔽層カバーの外径よりも小さ
く、
前記底部サポート部の、前記底部側とは反対側の面に、ステンレス鋼、またはニッケル基合金が溶着されている、あるいは、ステンレス鋼、またはニッケル基合金を材料とする補助底部サポートが固定されていることを特徴とする、放射性物質輸送貯蔵容器。
【請求項2】
放射性物質が収められる収容空間を有する筒状の胴部と、
前記胴部の一端面に、前記胴部と同心に固定された底部と、
前記胴部と同心で、前記底部から前記胴部と反対方向へ延在する筒状の底部サポート部であって、前記底部と別の部材とされて前記底部と接合されている底部サポート部と、
を備え、
前記底部の外径、および前記底部サポート部の外径が、いずれも、前記胴部の外径よりも大きく、
前記底部サポート部の、前記底部側とは反対側の面に、ステンレス鋼、またはニッケル基合金が溶着されている、あるいは、ステンレス鋼、またはニッケル基合金を材料とする補助底部サポートが固定されていることを特徴とする、放射性物質輸送貯蔵容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の放射性物質輸送貯蔵容器において、
前記底部サポート部の内径が、前記胴部の内径よりも大きいことを特徴とする、放射性物質輸送貯蔵容器。
【請求項4】
請求項3に記載の放射性物質輸送貯蔵容器において、
前記底部サポート部の内径が、前記胴部の外径よりも小さいことを特徴とする、放射性物質輸送貯蔵容器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の放射性物質輸送貯蔵容器において、
前記底部からの中性子線の放出を抑える底部中性子遮蔽体が、前記底部サポート部の内側に配置されており、
前記底部中性子遮蔽体を前記底部サポート部の内側に保持するための底部中性子遮蔽体保持部材が、前記底部サポート部に固定されていることを特徴とする、放射性物質輸送貯蔵容器。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の放射性物質輸送貯蔵容器において、
前記底部サポート部の材料が、ステンレス鋼、またはニッケル基合金であることを特徴とする、放射性物質輸送貯蔵容器。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれかに記載の放射性物質輸送貯蔵容器において、
物体との衝突によって生じる衝撃を吸収する緩衝体の取付部が、前記底部サポート部に形成されていることを特徴とする、放射性物質輸送貯蔵容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質が収容される放射性物質輸送貯蔵容器に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性物質輸送貯蔵容器に関する技術は、例えば特許文献1~3に記載される。特許文献1は、放射性物質輸送貯蔵容器を軽量化するために、底板の外径およびそのサポート部の外径が、放射性物質が収められる筒状の胴部の外径よりも小さくされる。
【0003】
一方、特許文献2、3に記載の放射性物質輸送貯蔵容器では、底板(底部)の外径は、放射性物質が収められる筒状の胴部の外径と同じにされている。
【0004】
なお、特許文献1~3に記載のいずれの放射性物質輸送貯蔵容器においても、容器内から外部への中性子線の放出を抑えるために、胴部の外周面側、および底板の外面側には、それぞれ、側部中性子遮蔽体、および底部中性子遮蔽体が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-240173号公報
【文献】特開2017-78580号公報
【文献】特開2011-169915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1~3に記載される放射性物質輸送貯蔵容器は、側部中性子遮蔽体と底部中性子遮蔽体との間にある、中性子遮蔽体が存在しない領域である遮蔽体間領域から、中性子線が放出され易く、この遮蔽体間部分の近傍である容器の底角部における容器表面において、中性子線量当量率(単位は、μSv/h)の局所的な大きなピークが出る、すなわち、中性子線量当量率が局所的に非常に大きくなるという問題を有する。
【0007】
特許文献1は、この遮蔽体間部分において、中性子線量当量率が局所的に非常に大きくなることを防止するため、すなわち、中性子線量当量率のピークを緩和するため、側部中性子遮蔽体が底板側へ延長されて、当該側部中性子遮蔽体によって底板の外周面が覆われる放射性物質輸送貯蔵容器が開示される。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の放射性物質輸送貯蔵容器は、底板の外周面を側部中性子遮蔽体で覆うために、胴部と底板との段差部分に側部中性子遮蔽体が形成される必要がある。このように複雑な側部中性子遮蔽体の形状は、放射性物質輸送貯蔵容器の製造工程を長くさせ、製造コストの高騰の要因となり得る。
【0009】
また、底板の外径およびそのサポート部の外径が胴部の外径よりも小さい放射性物質輸送貯蔵容器は、縦置きで容器が使用された場合に、地震などによる横揺れに対する容器の自立安定性が悪くなるという問題もある。
【0010】
特許文献2、3は、底板(底部)の外径と放射性物質が収められる筒状の胴部の外径とが同じである放射性物質輸送貯蔵容器が開示される。特許文献2、3の放射性物質輸送貯蔵容器は、容器の底角部の表面における中性子線量当量率は緩和されるものの、底板(底部)およびサポート部が胴部と同じ外径を有することから、放射性物質輸送貯蔵容器の重量が増加して、設計上の重量制限を満足できなくなるという問題がある。この問題を解消するために、放射性物質輸送貯蔵容器に収納される燃料の収納体数を減らす必要があり、収納効率は悪い。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、容器の重量増加による燃料の収納効率の悪化を抑制し、中性子遮蔽体が存在しない容器の底角部の表面における中性子線量当量率のピークを抑えることができ、且つ、自立安定性にも優れる放射性物質輸送貯蔵容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、放射性物質が収められる収容空間を有する筒状の胴部と、前記胴部の一端面に、前記胴部と同心に固定された底部と、前記胴部と同心で、前記底部から前記胴部と反対方向へ延在する筒状の底部サポート部と、を備える放射性物質輸送貯蔵容器である。この放射性物質輸送貯蔵容器は、前記底部の外径、および前記底部サポート部の外径が、いずれも、前記胴部の外径よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、容器の重量増加による燃料の収納効率の悪化を抑制し、中性子遮蔽体が存在しない容器の底角部の表面における中性子線量当量率のピークを抑えることができ、且つ、自立安定性にも優れる放射性物質輸送貯蔵容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る放射性物質輸送貯蔵容器の縦断面図である。
【
図3】
図1に示す放射性物質輸送貯蔵容器の軸方向の両端部に、物体との衝突によって生じる衝撃を吸収する緩衝体がそれぞれ取り付けられた状態の放射性物質輸送貯蔵容器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1、2に示すように、本実施形態の放射性物質輸送貯蔵容器100(以下、「キャスク100」と記載する)は、放射性物質が収められる収容空間Eを有する筒状の胴部1と、胴部1の一端面に、胴部1と同心に固定された底板2(底部)と、胴部1と同心で、底板2から胴部1と反対方向へ延在する筒状の底部サポート3(底部サポート部)とを備えている。底部サポート3は、底板2を支持するものであり、キャスク100が縦置き状態にされた際に、底板2が直接地面や床面に接触することを防ぐものである。
【0017】
また、底板2とは反対側の胴部1の開口は、一次蓋5、および二次蓋6により密封状態で閉止される。二次蓋6の外側の三次蓋7は、キャスク100を輸送する際に胴部1に取り付けられる蓋であって、キャスク100を輸送した後のキャスク100の貯蔵使用時は、通常、当該三次蓋7は外される。
【0018】
ここで、キャスク100内から外部への中性子線の放出を抑えるために、胴部1の外周面側には、筒状の側部中性子遮蔽層8(側部中性子遮蔽体)が設けられ、胴部1の底側、および蓋側には、それぞれ、底部中性子遮蔽層9(底部中性子遮蔽体)、および上部中性子遮蔽層10(上部中性子遮蔽体)が設けられる。側部中性子遮蔽層8は、主として、胴部1からの中性子線の放出を抑えるためのものである。底部中性子遮蔽層9は、主として、底板2からの中性子線の放出を抑えるためのものであり、上部中性子遮蔽層10は、主として、蓋(一次蓋5および二次蓋6)からの中性子線の放出を抑えるためのものである。
【0019】
側部中性子遮蔽層8は、筒状の側部中性子遮蔽層カバー13(側部中性子遮蔽体保持部材)で覆われており、側部中性子遮蔽層8の上端および下端は、それぞれ、上部端板15および下部端板14で保護されている。底部中性子遮蔽層9は、底部サポート3の内側に配置されている。底部中性子遮蔽層9は、底部中性子遮蔽層カバー16(底部中性子遮蔽体保持部材)で覆われることにより、底部サポート3の内側に保持される。上部中性子遮蔽層10は、二次蓋6の内部に収容されている。
【0020】
側部中性子遮蔽層8、底部中性子遮蔽層9、および上部中性子遮蔽層10を構成する中性子遮蔽材は、例えば、エポキシ樹脂、もしくはポリエステル樹脂などの樹脂、またはシリコンゴム、もしくはエチレンポリプロピレンゴムなどのゴムである。
【0021】
なお、キャスク100を構成する胴部1、底板2、底部サポート3、一次蓋5、二次蓋6、および三次蓋7は、例えば炭素鋼などの金属材料で形成される。金属材料は、主として、ガンマ線を遮蔽する機能を有する材料であり、ある程度の中性子線をも遮蔽するものが好ましい。
【0022】
ここで、本実施形態のキャスク100を構成する底板2の外径B1は、胴部1の外径T1よりも大きくされ、且つ、底部サポート3の外径S1も、胴部1の外径T1よりも大きくされている。なお、本実施形態では、底板2の外径B1と底部サポート3の外径S1とが等しくされているが、底板2の外径B1と底部サポート3の外径S1とが異なっていてもよい。また、底板2の外径B1、および底部サポート3の外径S1は、例えば、胴部1の外径T1よりも、40mm~150mm大きくされる。
【0023】
図2には、符号Xを付して示すように、キャスク100の底角部に、中性子遮蔽材(中性子遮蔽層)が存在しない領域Xが存在する。そのため、当該キャスク100の底角部の表面において、中性子線量当量率の局所的なピークが出る。しかしながら、本実施形態のキャスク100によると、その底板2の外径B1、および底部サポート3の外径S1が、いずれも、胴部1の外径T1よりも大きい外径を有するため、底板2の外径B1、および底部サポート3の外径S1が、胴部1の外径T1よりも小さい、または胴部1の外径T1と等しい場合よりも、中性子遮蔽体が存在しないキャスク100の底角部の表面における中性子線量当量率のピークが抑えられる。
【0024】
また、底板2の外径B1、および底部サポート3の外径S1が、いずれも、胴部1の外径T1よりも大きくされていることで、キャスク100が縦置きで使用された場合に、地震などによる横揺れに対して、キャスク100は転倒しにくい。
【0025】
また、胴部1の外径T1は、底板2の外径B1、および底部サポート3の外径S1よりも小さいので、キャスク100は、胴部1の外径T1が底板2の外径B1などと等しいキャスクよりも、重量を軽くすることができる。
【0026】
ここで、底部サポート3の内径S2は、胴部1の内径T2よりも大きくされていることが好ましい。この構成によると、底部サポート3の内側に配置される底部中性子遮蔽層9の径を大きくすることができ(底部サポート3の内側における中性子遮蔽材の充填できる領域を広くでき)、キャスク100の底角部からの中性子線の放出をより抑えることができる(キャスク100の底角部の表面における中性子線量当量率のピークをより抑えることができる)。
【0027】
さらには、底部サポート3の内径S2は、胴部1の外径T1よりも小さくされていることが好ましい。S1>T1、且つT2<S2<T1の関係が満たされると、キャスク100が縦置きで使用された場合に、平面視において、胴部1の外周面と底部サポート3とが必ず重なるので、キャスク100の重量を底部サポート3に確実に伝達することができ、安定的に貯蔵することができる。
【0028】
なお、本実施形態の底板2のように、底板2は、底部サポート3側(底側)が、胴部1の外径T1よりも大きい外径B1の大径部11を有し、胴部1との固定側が、胴部1と等しい外径T1の小径部12を有するように構成されてもよい。この構成によると、胴部1と底板2との境界面に段差が無いために、一様な厚みの側部中性子遮蔽層8を用いることができる。そして、胴部1と底板2との境界面に段差がないため、溶接が容易になるだけでなく、溶接部の検査(放射線透過検査(RT)、超音波探傷試験(UT)など)もまた容易になる。
【0029】
一方、キャスク100を構成する胴部1、底板2、および一次蓋5は、キャスク100内を密封状態に保つための密封部材である。そのため、キャスク100の耐圧試験後に、底板2を補修することはできない。仮に底板2を補修すれば、再度の耐圧試験の実施が必要となるからである。そのため、本実施形態の底板2、底部サポート3のように、底板2と底部サポート3とが別々の部材とされ、互いに接合されていることが好ましい。この構成によると、キャスク100の耐圧試験後に、底部サポート3が傷ついたり腐食したりしても、底部サポート3を補修することができる。なお、底板2と底部サポート3とは、一素材から形成された一体品であってもよいが、この場合、耐圧試験後の底板2および底部サポート3の補修は困難である。
【0030】
また、本実施形態の底部中性子遮蔽層カバー16のように、底部中性子遮蔽層カバー16は、底部サポート3に固定されていることが好ましい。仮に、密封部材である底板2に底部中性子遮蔽層カバー16を直接、溶接にて固定する場合は、溶接後の熱処理が必要であるが、底部中性子遮蔽層カバー16を、密封部材ではない底部サポート3に固定する場合は、溶接後の熱処理を不要とすることができる。なお、底部サポート3の内側に、底部中性子遮蔽層9が配置された後に、底部中性子遮蔽層カバー16が底部サポート3に固定されることになる。底部中性子遮蔽層9は、樹脂、ゴムなどの水素を多く含有する有機材料からなるため、底部中性子遮蔽層カバー16を底部サポート3に溶接にて固定する場合、溶接後の熱処理ができない。
【0031】
また、キャスク100が縦置きで使用される場合を考慮すると、底部サポート3の腐食を防止するために、底部サポート3の材料は、ステンレス鋼、またはニッケル基合金などの耐食性に優れた金属材料であることが好ましい。底部サポート3が腐食されると、底部サポート3の腐食は底板2へと伝わる。底部サポート3の材料が耐食性に優れた金属材料である場合、底板2は、底部サポート3が腐食されにくいため、腐食されにくくなる。また、塗装により底部サポート3の腐食を防止する場合よりも、耐食性に優れた金属材料から底部サポート3を形成した方が、経年劣化体の影響を受けにくいために、長く腐食を防止することができる。
【0032】
また、本実施形態のキャスク100のように、底部サポート3は、底部サポート3の底板2側とは反対側の面に、ステンレス鋼、またはニッケル基合金などの耐食性に優れた金属材料を材料とする補助底部サポート4が、溶接などにより固定されていることが好ましい。底部サポート3の底板2側とは反対側の面は、キャスク100が縦置きで使用される場合に、架台(不図示)などと接触するため、最も腐食が生じやすい部分である。補助底部サポート4は、この最も腐食が生じやすい面に、固定されることで、補助底部サポート4がインコネル(登録商標)などの高価な材料であっても、その使用量を少なくすることができ、安価に腐食対策を実施することができる。なお、補助底部サポート4は、例えば、リング状の板材である。
【0033】
以上のように、底部サポート3に耐食性に優れた金属材料を用いた場合、底部サポート3の底板2側とは反対側の面に耐食性に優れた金属材料の補助底部サポート4が固定された場合、またはその両方を採用した場合、キャスク100は、約60年間といった長期で、メンテナンスすることなく使用することが期待できる。
【0034】
なお、底部サポート3の底板2側とは反対側の面に、ステンレス鋼、またはニッケル基合金などの耐食性に優れた金属材料が溶着されることで(クラッド溶接)、当該面の腐食対策が施されていてもよい。
【0035】
図3は、
図1に示すキャスク100の軸方向の両端部に、輸送容器の設計要件である9m落下事象によって生じる衝撃を吸収する緩衝体(底部緩衝体17、上部緩衝体18)がそれぞれ取り付けられた状態の放射性物質輸送貯蔵容器の縦断面図である。
【0036】
図3に示すように、キャスク100は、その輸送時、物体との衝突によって生じる衝撃を吸収する緩衝体(底部緩衝体17、上部緩衝体18)が軸方向の両端部に、それぞれ取り付けられる。
【0037】
ここで、
図1、2に示すように、底部緩衝体17の取付部3aは、密封部材ではない底部サポート3に形成されていることが好ましい。仮に、密封部材である底板2に、底部緩衝体17の取付部が形成されるとすると、その取付部の形成は、キャスク100の耐圧試験前に行われる必要がある。そして、この取付部に傷などがついても、その後(キャスク100の耐圧試験後)に、取付部を補修することはできない。底板2に形成した取付部を補修すれば、再度の耐圧試験の実施が必要となるからである。一方、底部緩衝体17の取付部3aを、密封部材ではない底部サポート3に形成する場合は、キャスク100の耐圧試験後に取付部3aを形成することができるとともに、形成された取付部3aに傷などがついたとしても、再度の耐圧試験を実施することなく、その補修が可能となる。
【0038】
なお、底部緩衝体17の取付部3aは、例えば、ボルト穴であり、このボルト穴を用いて、底部緩衝体17は、ボルト19によって底部サポート3に取り付けられる。
【0039】
底部サポート3と同様に密封部材ではない底部中性子遮蔽層カバー16に、底部緩衝体17をボルト19で取り付ける方法もあるが、この方法には、次の問題がある。ボルト19が締め込まれる底部中性子遮蔽層カバー19の板厚を、ボルト19の雄ネジ部の長さよりも厚いものとする必要が生じ、その結果、底部中性子遮蔽層カバー19の重量が増し、キャスク100の重量が全体として増加してしまう。そのため、底部緩衝体17の取付部3aは、底部サポート3に形成されていることが好ましい。
【0040】
なお、上部緩衝体18は、例えば、胴部1に形成された取付部1a(例えば、ボルト穴)を用いて、ボルト20によって三次蓋7とともに胴部1に取り付けられる。
【0041】
緩衝体(底部緩衝体17、上部緩衝体18)の材料は、木材、発泡樹脂、発泡金属などである。
【0042】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、当業者は、上記実施形態に対して、想定できる範囲内で種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0043】
1:胴部
2:底板(底部)
3:底部サポート(底部サポート部)
3a:取付部(ボルト穴)
4:補助底部サポート
9:底部中性子遮蔽層(底部中性子遮蔽体)
16:底部中性子遮蔽層カバー(底部中性子遮蔽体保持部材)
17:底部緩衝体(緩衝体)
100:キャスク(放射性物質輸送貯蔵容器)
B1:底板(底部)の外径
E:収容空間
S1:底部サポート(底部サポート部)の外径
S2:底部サポート(底部サポート部)の内径
T1:胴部の外径
T2:胴部の内径