(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
A61F 13/494 20060101AFI20220512BHJP
A61F 5/44 20060101ALI20220512BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20220512BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
A61F13/494 110
A61F5/44 H
A61F13/49 315Z
A61F13/511 110
(21)【出願番号】P 2018058180
(22)【出願日】2018-03-26
【審査請求日】2021-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 武志
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-030963(JP,A)
【文献】特開平08-000663(JP,A)
【文献】特開2009-233135(JP,A)
【文献】特開2010-227149(JP,A)
【文献】特開2005-211131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/494
A61F 5/44
A61F 13/49
A61F 13/511
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートとバックシートの間に設けられた吸収体と、前記吸収体の幅方向の両側に立体ギャザーを備えた使い捨ておむつにおいて、
前記トップシートの幅方向の両側部に身体面側に向かって折返した延出部を形成し、
前記延出部と、前記延出部に対向するトップシート部位を、前後方向に所定の間隔を隔てて設けられた固定部で固定し、
前記延出部と、前記延出部に対向する立体ギャザーの部位を固定し
、
前記前後方向に所定の間隔を隔てて固定した固定部を、前記延出部の幅方向の中心よりも外側に偏移した部位に設けたことを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記延出部の幅方向の固定部の内側に前後方向に延在する第1弾性伸縮部材を設けた請求項
1記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記立体ギャザーの基部から先端部の長さを、前記延出部の基部から先端部の長さよりも長く形成した請求項
1又は2記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記立体ギャザーの先端部に前後方向に延在する第2弾性伸縮部材を設け、前記立体ギャザーの基部から第2弾性伸縮部材の長さを、前記延出部の基部から先端部の長さよりも長く形成した請求項
3に記載の使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつに関するものであり、特に、立体ギャザーの内側面に親水性の部材を設けて肌を伝わって移動する排泄物の外部への漏れ出しを防止した使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、排泄物の外部への漏れ出しを防止するために、立体ギャザーの基端部を撥水性にして、先端部を親水性に形成する手段が知られていた。(特許文献1)
また、肌を伝わって移動する少量の排泄物を保持して外部への漏れ出しを防止するために、立体ギャザーの内側面に親水性の部材を設ける手段が知られていた。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-104371号公報
【文献】特開2002-238949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の手段では、多量の排泄物が幅方向に移動した場合には、立体ギャザーの先端部を透過して外部に容易に漏れ出す恐れがあった。
また、特許文献2の手段では、多量の排泄物が幅方向に移動した場合には、親水性の部材で保水することができず、保水できなかった排泄物が立体ギャザーを超えて外部に漏れ出す恐れがあった。
【0005】
そこで、本発明の主たる課題は、立体ギャザーの内側に多量の排泄物を保持して、立体ギャザーを超えて排泄物が外部に漏れ出すのを防止した使い捨ておむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
第1手段は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、前記トップシートとバックシートの間に設けられた吸収体と、前記吸収体の幅方向の両側に立体ギャザーを備えた使い捨ておむつにおいて、
前記トップシートの幅方向の両側部に身体面側に向かって折返した延出部を形成し、 前記延出部と、前記延出部に対向するトップシート部位を、前後方向に所定の間隔を隔てて設けられた固定部で固定し、前記延出部と、前記延出部に対向する立体ギャザーの部位を固定し、前記前後方向に所定の間隔を隔てて固定した固定部を、前記延出部の幅方向の中心よりも外側に偏移した部位に設けたことを特徴とする。
【0007】
【0008】
第2手段は、第1手段の構成において、前記延出部の幅方向の固定部の内側に前後方向に延在する第1弾性伸縮部材を設けたことを特徴とする。
【0009】
第3手段は、第1又は2手段の構成において、前記立体ギャザーの基部から先端部の長さを、前記延出部の基部から先端部の長さよりも長く形成したことを特徴とする。
【0010】
第4手段は、第3手段の構成において、前記立体ギャザーの先端部に前後方向に延在する第2弾性伸縮部材を設け、前記立体ギャザーの基部から第2弾性伸縮部材の長さを、前記延出部の基部から先端部の長さよりも長く形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1手段によれば、トップシートの幅方向の両側部に身体面側に向かって折返した延出部を形成し、延出部と、延出部に対向するトップシート部位を、前後方向に所定の間隔を隔てて設けられた固定部で固定し、延出部と、延出部に対向する立体ギャザーの部位を固定したので、延出部が、立体ギャザーと共に身体側に向かって起立し、延出部における固定部よりも幅方向の外側に位置する部位が、身体側に向かって膨らんで幅方向の内側に開口を有する溜まり部を形成し、多くの尿を保持して尿の外部への漏れ出しを防止することができる。
【0012】
前後方向に所定の間隔を隔てて固定した固定部を、延出部の幅方向の中心よりも外側に偏移した部位に設けたので、延出部が、身体側に向かって高い位置まで起立して多くの尿を保持して尿の外部への漏れ出しをより防止することができる。
【0013】
第2手段によれば、第1手段による効果に加えて、延出部の幅方向の固定部の内側に前後方向に延在する第1弾性伸縮部材を設けたので、延出部を第1弾性伸縮部材の収縮力によって身体側に向かって効率良く起立させることができる。
【0014】
第3手段によれば、第1又は2記載の手段による効果に加えて、立体ギャザーの基部から先端部の長さを、延出部の基部から先端部の長さよりも長く形成したので、延出部の表面または内部を伝わって移動する尿の外部への漏れ出しを防止することができる。
【0015】
第4手段によれば、第3手段による効果に加えて、立体ギャザーの先端部に前後方向に延在する第2弾性伸縮部材を設け、立体ギャザーの基部から第2弾性伸縮部材の長さを、延出部の基部から先端部の長さよりも長く形成したので、立体ギャザーを第2弾性伸縮部材の収縮力によって身体側に向かって効率良く起立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】使い捨ておむつを展開した内面平面図である。
【
図2】使い捨ておむつを展開した外面平面図である。
【
図6】他の使い捨ておむつを展開した内面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<使い捨ておむつ>
本発明の保水性能に優れ、尿の漏れ出しを防止できる使い捨ておむつの理解を容易にするために、使い捨ておむつ(以下、使い捨ておむつと言う)を例にとって説明する。なお、本明細書において「前後方向」とは、腹側と背側を結ぶ方向を言い、「幅方向」とは、前後方向と直交する方向を言い、「上下方向」とは、使い捨ておむつの装着状態において胴回り方向と直交する方向を言うものとする。
【0018】
図1,2に示すように、使い捨ておむつは、身体側面に設けられた液透過性のトップシート10と、反身体側面に設けられた液不透過性のバックシート11と、トップシート10とバックシート11の間に挟持された吸収要素20とから形成されている。
【0019】
バックシート11の反身体側面である外面には、外装シート12が設けられている。また、トップシート10と吸収要素20の間には、トップシート10を透過した排泄物を吸収要素20に移動させ、排泄物の逆戻りを防止する中間シート15を設けるのが好適である。
【0020】
吸収要素20の幅方向の両側には、所定の間隔を隔てて排泄物の外部への漏れを防止する立体ギャザー30がそれぞれ設けられている。立体ギャザー30は、実質的に幅方向に連続するギャザーシート31と、ギャザーシート31の前後方向に沿って伸長状態で固定された細長状の弾性伸縮部材(請求項における「第2弾性伸縮部材」)32から形成されている。また、立体ギャザー30の基部の外側には、所定の間隔を隔てて排尿の外部への漏れを防止する平面ギャザー40が形成されている。
【0021】
吸収要素20の前後方向の両側には、エンドフラップ部EFがそれぞれ形成され、吸収要素20の幅方向の両側には、サイドフラップ部SFがそれぞれ形成されている。なお、エンドフラップ部EFとサイドフラップ部SFには、吸収要素20は延在していない。
【0022】
サイドフラップ部SFの後部には、ファスニングテープ50が設けられている。ファスニングテープ50は、サイドフラップSFの後部に固定される基材51と、基材51の内面に設けられた係止部52から形成されている。
【0023】
外装シート12の外面の後部には、ファスニングテープ50の係止部52を係止させるターゲットシート55を設けるのが好適である。
【0024】
図3に示すように、トップシート10の幅方向の両側は、身体側面に向かって折返されて、内側に開口部61を有する略U字形状の折返し部60がそれぞれ形成さている。
【0025】
折返し部60を形成する身体側面に向かって折返された第1シート部(請求項における「延出部」)62と、第1シート部62に対向する第2シート部63の対向面は、ホットメルト等の接着剤からなる固定部64で固定されている。また、第1シート部62と立体ギャザー30のギャザーシート31の対向面もホットメルト等の接着剤で固定されている。
【0026】
第1シート部62の幅方向の内側は、固定部64の幅方向の内側よりも内側に延在して形成され、第1シート部62の幅方向の外側は、固定部64の幅方向の外側よりも外側に延在して形成されている。これにより、
図4,5に示すように、第1シート部62の前後方向の中間部を身体側面に向かって起立させて、トップシート10の表面を移動してきた尿を第1シート部62内に保持することができる。
【0027】
ギャザーシート31の幅方向の内側は、第1シート部62の幅方向の内側よりも内側に延在して形成されている。これにより、
図4,5に示すように、立体ギャザー30の前後方向の中間部が身体側面に向かって起立する起立高さを、第1シート部62の前後方向の中間部が身体側面に向かって起立する起立高さよりも高くして、第1シート部62に保持された尿が外部に漏れ出すのを防止することができる。
【0028】
ギャザーシート31の固定された弾性伸縮部材32を第1シート部62の幅方向の内側よりも内側に設けるのが好ましい。これにより、弾性伸縮部材32が効率良く伸縮してギャザーシート31を効率良く起立させることができる。
【0029】
図1に示すように、固定部64は、第1シート部62と第2シート部63の対向面の前後方向の前部と後部に設けられると共に、前部と後部の間に前後部の間に前後方向に所定の間隔を隔てて設けられている。これにより、
図4,5に示すように、第1シート部62が身体側面に向かって起立した場合に、第1シート部62における固定部64と固定部64の間の部位、すなわち、第2シート部63に固定されていない第1シート部62は、第1シート部62のおける固定部64の部位、すなわち、第2シート部63に固定されている第1シート部62よりも身体面側に向かって高く起立させることができる。一方、第2シート部63に固定されている第1シート部62における幅方向の外側には、略反円弧形状の溜まり部65が形成されてトップシート10の表面を移動してきた多くの尿を保持することができる。
【0030】
図6に示すように、幅方向において第1シート部62の固定部64よりも内側に前後方向に延在する糸ゴム等からなる弾性伸縮部材(請求項における「第1弾性伸縮部材」)66を設けるのが好ましい。また、この場合、第1シート部62における弾性伸縮部材66が設けられた部位をギャザーシート31に固定しないのが好ましい。これにより、第1シート部62の前後方向の中間部を身体側面に向かってより効率的に起立させることができる。なお、弾性伸縮部材66は、第1シート部62のおける前後方向の中間部や、第1シート部62のおける前後方向の前後部のみに設けることもできる。
【0031】
次に、トップシート10等の素材および特徴部分について順に説明する。
(トップシート)
トップシート10は、有孔又は無孔の不織布や、多孔性プラスチックシート等で形成されている。また、このうち不織布は、その原料繊維が何であるかは、特に限定されない。例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維等や、これらから二種以上が使用された混合繊維、複合繊維等を例示することができる。さらに、不織布は、どのような加工によって製造されたものであってもよい。加工方法としては、公知の方法、例えば、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法、エアスルー法、ポイントボンド法等を例示することができる。例えば、柔軟性、ドレープ性を求めるのであれば、スパンレース法が、嵩高性、ソフト性を求めるのであれば、サーマルボンド法が、好ましい加工方法となる。
【0032】
(バックシート)
バックシート11は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂や、ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布、防水フィルムを介在させて実質的に液不透過性を確保した不織布(この場合は、防水フィルムと不織布とでバックシートが構成される。)等で形成されている。もちろん、このほかにも、近年、ムレ防止の観点から好まれて使用されている液不透過性かつ透湿性を有する素材も例示することができる。この液不透過性かつ透湿性を有する素材のシートとしては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を混練して、シートを成形した後、一軸又は二軸方向に延伸して得られた微多孔性シートを例示することができる。さらに、マイクロデニール繊維を用いた不織布、熱や圧力をかけることで繊維の空隙を小さくすることによる防漏性強化、高吸水性樹脂または疎水性樹脂や撥水剤の塗工といった方法により、防水フィルムを用いずに液不透過性としたシートも、バックシート11として用いることができる。
【0033】
(外装シート)
外装シート12は、吸収要素20を支持し、着用者に装着するための部分である。外装シート12は、両側部の前後方向中央部が括れた砂時計形状とされており、ここが着用者の脚を囲む部位となる。
【0034】
外装シート12は、不織布で形成するのが好適であるが、これに限定されない。不織布の種類は特に限定されず、素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることができ、加工法としてはスパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、エアスルー法、ニードルパンチ法等を用いることができる。ただし、肌触り及び強度を両立できる点でスパンボンド不織布やSMS不織布、SMMS不織布等の長繊維不織布が好適である。不織布は一枚で使用する他、複数枚重ねて使用することもできる。後者の場合、不織布相互をホットメルト接着剤等により接着するのが好ましい。不織布を用いる場合、その繊維目付けは10~50g/m2、特に15~30g/m2のものが望ましい。
【0035】
(中間シート)
中間シート15は、トップシート10と同様の素材で形成されている。中間シート15は、トップシート10に接合するのが好ましく、その接合にヒートエンボスや超音波溶着を用いる場合は、中間シート15の素材は、トップシート10と同程度の融点をもつものが好ましい。中間シート15に不織布を用いる場合、その不織布の繊維の繊度は2.0~5.0dtex程度とするのが好ましい。
【0036】
(吸収要素)
吸収要素20は、吸収体21と、吸収体21を包む包装シート22とから形成されている。
【0037】
(吸収体)
吸収体21は、繊維の集合体により形成することができる。この繊維集合体としては、綿状パルプや合成繊維等の短繊維を積繊したものの他、セルロースアセテート等の合成繊維のトウ(繊維束)を必要に応じて開繊して得られるフィラメント集合体も使用できる。繊維目付けとしては、綿状パルプや短繊維を積繊する場合は、例えば100~300g/m2程度とすることができ、フィラメント集合体の場合は、例えば30~120g/m2程度とすることができる。合成繊維の場合の繊度は、例えば、1~16dtex、好ましくは1~10dtex、さらに好ましくは1~5dtexである。フィラメント集合体の場合、フィラメントは、非捲縮繊維であってもよいが、捲縮繊維であるのが好ましい。捲縮繊維の捲縮度は、例えば、1インチ当たり5~75個、好ましくは10~50個、さらに好ましくは15~50個程度とすることができる。また、均一に捲縮した捲縮繊維を用いる場合が多い。
【0038】
吸収体21は、高吸収性ポリマー粒子を含むのが好ましく、特に、少なくとも液受け入れ領域において、繊維の集合体に対して高吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)が実質的に厚み方向全体に分散されているものが望ましい。
【0039】
吸収体21の上部、下部、及び中間部にSAP粒子が無い、あるいはあってもごく僅かである場合には、「厚み方向全体に分散されている」とは言えない。したがって、「厚み方向全体に分散されている」とは、繊維の集合体に対し、厚み方向全体に「均一に」分散されている形態のほか、上部、下部及び又は中間部に「偏在している」が、依然として上部、下部及び中間部の各部分に分散している形態も含まれる。また、一部のSAP粒子が繊維の集合体中に侵入しないでその表面に残存している形態や、一部のSAP粒子が繊維の集合体を通り抜けて包装シート22上にある形態も排除されるものではない。
【0040】
高吸収性ポリマー粒子とは、「粒子」以外に「粉体」も含む。高吸収性ポリマー粒子の粒径は、この種の吸収性物品に使用されるものをそのまま使用でき、1000μm以下、特に150~400μmのものが望ましい。高吸収性ポリマー粒子の材料としては、特に限定無く用いることができるが、吸水量が40g/g以上のものが好適である。高吸収性ポリマー粒子としては、でんぷん系、セルロース系や合成ポリマー系等のものがあり、でんぷん-アクリル酸(塩)グラフト共重合体、でんぷん-アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物やアクリル酸(塩)重合体等のものを用いることができる。高吸収性ポリマー粒子の形状としては、通常用いられる粉粒体状のものが好適であるが、他の形状のものも用いることができる。
【0041】
高吸収性ポリマー粒子としては、吸水速度が70秒以下、特に40秒以下のものが好適に用いられる。吸水速度が遅すぎると、吸収体21内に供給された液が吸収体21外に戻り出てしまう所謂逆戻りを発生し易くなる。
【0042】
高吸収性ポリマー粒子の目付け量は、当該吸収体21の用途で要求される吸収量に応じて適宜定めることができる。したがって一概には言えないが、50~350g/m2とすることができる。ポリマーの目付け量が50g/m2未満では、吸収量を確保し難くなる。350g/m2を超えると、効果が飽和するばかりでなく、高吸収性ポリマー粒子の過剰によりジャリジャリした違和感を与えるようになる。
【0043】
(包装シート)
包装シート22は、ティッシュペーパ、特にクレープ紙、不織布、ポリラミ不織布、小孔が開いたシート等で形成されている。ただし、高吸収性ポリマー粒子が抜け出ないシートであるのが望ましい。クレープ紙に換えて不織布を使用する場合、親水性のSMMS(スパンボンド/メルトブローン/メルトブローン/スパンボンド)不織布が特に好適であり、その材質はポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン等を使用できる。繊維目付けは、5~40g/m2、特に10~30g/m2のものが望ましい。
【0044】
(立体ギャザー)
立体ギャザー30のギャザーシート31としては撥水性不織布を用いることができ、また弾性伸縮部材32としては糸ゴム等を用いることができる。弾性伸縮部材は、複数本設ける他、各1本設けることができる。
【0045】
ギャザーシート31の内面は、トップシート10の側部上に幅方向の固着始端を有し、この固着始端から幅方向外側の部分は、バックシート11の側部およびその幅方向外側に位置する外装シート12の側部にホットメルト接着剤等により固着されている。
【0046】
脚周りにおいては、立体ギャザー30の固着始端より幅方向内側は、製品前後方向両端部ではトップシート10上に固定されているものの、その間の部分は非固定の自由部分であり、この自由部分が弾性伸縮部材32の収縮力により起立するようになる。おむつの、装着時には、おむつが舟形に体に装着されるので、そして弾性伸縮部材32の収縮力が作用するので、弾性伸縮部材32の収縮力により立体ギャザー30が起立して脚周りに密着する。その結果、脚周りからのいわゆる横漏れが防止される。
【0047】
(平面ギャザー)
サイドフラップ部SFにおける立体ギャザー30の基部の外側には、平面ギャザー40が形成されている。サイドフラップ部SFには、ギャザーシート31の固着部分のうち固着始端近傍の幅方向外側において、ギャザーシート31とバックシート11との間に、糸ゴム等からなる脚周り弾性伸縮部材41が前後方向に沿って伸長された状態で固定されており、これによりサイドフラップ部SFの脚周り部分には、平面ギャザー40が形成される。
【0048】
(ファスニングテープ)
ファスニングテープ50の基材51の基部は、ホットメルト接着剤等によってギャザーシート31と外装シート12の間に固定されている。また、基材51は、不織布、プラスチックフィルム、ポリラミ不織布、紙やこれらの複合素材から形成されている。
【0049】
係止部52は、メカニカルファスナーのフック材から形成されている。フック材は、その外面側に多数の係合突起を有する。係合突起の形状としては、(A)レ字状、(B)J字状、(C)マッシュルーム状、(D)T字状、(E)ダブルJ字状(J字状のものを背合わせに結合した形状のもの)等が存在するが、いずれの形状であっても良い。もちろん、ファスニングテープ50の係止部として粘着材層を設けることもできる。
【0050】
(ターゲットシート)
ターゲットシート55は、ループ糸が表面に多数設けられたプラスチックフィルムや不織布等から形成されている。
【0051】
明細書中で以下の用語が使用される場合、明細書中に特に記載が無い限り、以下の意味を有するものである。
・「展開」とは、収縮や弛み無く平坦に展開した状態を意味する。
・「目付け量」は次のようにして測定されるものである。試料又は試験片を予備乾燥した後、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内に放置し、恒量になった状態にする。予備乾燥は、試料又は試験片を温度100℃の環境で恒量にすることをいう。なお、公定水分率が0.0%の繊維については、予備乾燥を行わなくてもよい。恒量になった状態の試験片から、試料採取用の型板(100mm×100mm)を使用し、100mm×100mmの寸法の試料を切り取る。試料の重量を測定し、100倍して1平米あたりの重さを算出し、目付けとする。
・「厚み」は、自動厚み測定器(KES-G5 ハンディー圧縮試験機)を用い、荷重:0.098N/cm2、及び加圧面積:2cm2の条件下で自動測定する。
・「吸水量」は、JIS K7223-1996「高吸水性樹脂の吸水量試験方法」によって測定する。
・「吸水速度」は、2gの高吸収性ポリマー及び50gの生理食塩水を使用して、JIS K7224‐1996「高吸水性樹脂の吸水速度試験法」を行ったときの「終点までの時間」とする。
・試験や測定における環境条件についての記載がない場合、その試験や測定は、標準状態(試験場所は、温度23±1℃、相対湿度50±2%)の試験室又は装置内で行うものとする。
・各部の寸法は、特に記載が無い限り、自然長状態ではなく展開状態における寸法を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品に利用可能なものである。
【符号の説明】
【0053】
10 トップシート
11 バックシート
21 吸収体
30 立体ギャザー
32 弾性伸縮部材(第2弾性伸縮部材)
62 第1シート部(延出部)
64 固定部
66 弾性伸縮部材(第1弾性伸縮部材)