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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/31 20060101AFI20220512BHJP
   G11B 5/02 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
G11B5/31 A
G11B5/31 E
G11B5/02 R
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020191416
(22)【出願日】2020-11-18
(62)【分割の表示】P 2019159455の分割
【原出願日】2015-12-24
(65)【公開番号】P2021015663
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 修一
(72)【発明者】
【氏名】成田 直幸
(72)【発明者】
【氏名】鴻井 克彦
(72)【発明者】
【氏名】竹尾 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 真理子
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 仁志
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0228295(US,A1)
【文献】特許第6803436(JP,B2)
【文献】特開2014-049145(JP,A)
【文献】国際公開第2013/141124(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/31
G11B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁極と、
積層体であって、
面内磁化膜の第1磁性層と、
前記第1磁性層と前記磁極との間に設けられた第2磁性層と、
前記第1磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた非磁性の中間層と、
を含む前記積層体と、
前記第2磁性層と前記磁極との間に設けられ前記磁極及び前記第2磁性層と接する第1非磁性層と、
を備え、
前記第1磁性層は、前記第2磁性層から前記第1磁性層に向かう第1方向に沿った第1厚さと、第1飽和磁束密度と、を有し、
前記第2磁性層は、前記第1方向に沿った第2厚さと、第2飽和磁束密度と、を有し、
前記第2厚さと前記第2飽和磁束密度との第2積は、前記第1厚さと前記第1飽和磁束密度との第1積よりも大きく、
前記第2磁性層のダンピング定数と前記第2積との積は、前記第1磁性層のダンピング定数と前記第1積との積の4倍以上16倍以下であり、
前記第2磁性層から前記第1磁性層に向かって電流が流れる、
磁気記録ヘッド。
【請求項2】
前記第1磁性層の磁化の向きは、前記電流の大きさによって変化する、請求項1記載の磁気ヘッド。
【請求項3】
前記第2厚さと前記第2飽和磁束密度との第2積は、前記第1厚さと前記第1飽和磁束密度との第1積の4倍以上である請求項1または2に記載の磁気ヘッド。
【請求項4】
前記積層体に前記電流を流したときの前記第1磁性層と前記第2磁性層との間の電気抵抗は、前記第1方向の成分を有する磁界の強度とともに上昇する、請求項1~のいずれか1つに記載の磁気記録ヘッド。
【請求項5】
第1状態において、前記第1方向に沿う成分を有する第1磁極磁界が前記磁極から発生し、
第2状態において、前記第1磁性層から前記第2磁性層に向かう第2方向に沿う成分を有する第2磁極磁界が前記磁極から生じ、
前記第1状態において、前記第1磁性層の前記磁化は、前記第2方向の成分を有する、請求項に記載の磁気記録ヘッド。
【請求項6】
前記第2状態において、前記第1磁性層の前記磁化は、前記第1方向の成分を有する、請求項記載の磁気記録ヘッド。
【請求項7】
トレーリングシールドをさらに備え、
前記磁極と前記トレーリングシールドとの間に前記積層体がある、請求項1~のいずれか1つに記載の磁気記録ヘッド。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1つに記載の磁気記録ヘッドと、
前記磁極により情報が記録される磁気記録媒体と、
前記積層体に前記電流を流す制御部と、
を備えた磁気記録再生装置。
【請求項9】
請求項またはに記載の磁気記録ヘッドと、
前記磁極により情報が記録される磁気記録媒体と、
前記積層体に前記電流を流す制御部と、
を備え、
前記磁気記録ヘッドは、コイルをさらに含み、
前記制御部は、第1動作において、前記コイルに第1コイル電流を供給して前記磁極に、前記第1方向に沿う成分を有する前記第1磁極磁界を発生させ、
前記制御部は、第2動作において、前記コイルに第2コイル電流を供給して前記磁極に、前記第1磁性層から前記第2磁性層に向かう第2方向に沿う成分を有する第2磁極磁界を発生させる、磁気記録再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録ヘッドを用いて、HDD(Hard Disk Drive)などの磁気記憶媒体に情報が記録される。磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置において、記録密度の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-120610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、記録密度が向上できる磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、磁気記録ヘッドは、磁極と、積層体と、第1非磁性層と、を含む。前記積層体は、第1磁性層と、前記第1磁性層と前記磁極との間に設けられた第2磁性層と、前記第1磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた非磁性の中間層と、を含む。前記第1非磁性層は、前記第2磁性層と前記磁極との間に設けられ前記磁極及び前記第2磁性層と接する。前記第1磁性層は、前記第2磁性層から前記第1磁性層に向かう第1方向に沿った第1厚さと、第1飽和磁束密度と、を有する。前記第2磁性層は、前記第1方向に沿った第2厚さと、第2飽和磁束密度と、を有する。前記第2厚さと前記第2飽和磁束密度との第2積は、前記第1厚さと前記第1飽和磁束密度との第1積よりも大きい。前記第2磁性層から前記第1磁性層に向かって電流が流れる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1(a)~図1(c)は、第1の実施形態に係る磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置を例示する模式的断面図である。
図2図2(a)及び図2(b)は、第1参考例の磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置を例示する模式的断面図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、第2参考例の磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置を例示する模式的断面図である。
図4図4(a)及び図4(b)は、第3参考例の磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置を例示する模式的断面図である。
図5図5(a)~図5(d)は、磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置の特性を例示するグラフ図である。
図6図6(a)~図6(d)は、磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置の特性を例示するグラフ図である。
図7図7(a)~図7(d)は、磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置の特性を例示するグラフ図である。
図8図8は、第1の実施形態に係る磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置の特性を例示するグラフ図である。
図9図9は、第1の実施形態に係る磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置の特性を例示するグラフ図である。
図10図10は、第1の実施形態に係る磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置の特性を例示するグラフ図である。
図11図11(a)~図11(c)は、第1の実施形態に係る磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置の特性を例示するグラフ図である。
図12図12(a)~図12(c)は、第1の実施形態に係る別の磁気記録ヘッド及び別の磁気記録再生装置を例示する模式的断面図である。
図13図13(a)~図13(c)は、第2の実施形態に係る磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置を例示する模式的断面図である。
図14図14(a)~図14(c)は、第3の実施形態に係る磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置を例示する模式的断面図である。
図15図15は、第4の実施形態に係る磁気記録再生装置の一部を例示する模式的斜視図である。
図16図16は、実施形態に係る磁気記録再生装置を例示する模式的斜視図である。
図17図17(a)及び図17(b)は、磁気記録再生装置の一部を例示する模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1(a)~図1(c)は、第1の実施形態に係る磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置を例示する模式的断面図である。
図1(b)及び図1(c)は、磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置の状態(動作)を例示している。
【0009】
図1(a)に示すように、本実施形態に係る磁気記録再生装置150は、本実施形態に係る磁気記録ヘッド110と、磁気記録媒体80と、を含む。磁気記録ヘッド110は、磁気記録媒体80に情報を記録する。
【0010】
磁気記録ヘッド110は、磁極20と、積層体10と、第1非磁性層15と、を含む。
【0011】
磁極20は、磁気記録媒体80に磁界(記録磁界)を印加する。磁極20は、例えば、主磁極である。
【0012】
積層体10は、第1磁性層11と、第2磁性層12と、中間層13と、を含む。第2磁性層12は、第1磁性層11と磁極20との間に設けられる。中間層13は、第1磁性層11と第2磁性層12との間に設けられる。中間層13は、非磁性である。後述するように、積層体10は、高周波磁界を発生する。高周波磁界は、磁気記録媒体80に印加される。磁極20による磁気記録媒体80への情報の記録が、高周波磁界によりアシストされる。磁気記録ヘッド110においては、例えば、高周波アシスト記録が行われる。積層体10は、例えば、スピントルク発振子(STO:Spin Torque Oscillator)として機能する。
【0013】
第1非磁性層15は、第2磁性層12と磁極20との間に設けられる。第1非磁性層15は、磁極20及び第2磁性層12と接する。磁極20と第2磁性層12との間には、磁性層は設けられない。第1非磁性層15は、例えば、金属層である。この金属層は、合金を含んでも良い。第1非磁性層15は、複数の積層膜(金属膜)を含んでも良い。
【0014】
この例では、シールド20sと、第2非磁性層16と、がさらに設けられている。磁極20とシールド20sとの間に積層体10が配置される。磁極20と積層体10との間に第1非磁性層15が配置される。シールド20sと積層体10との間に、第2非磁性層16が設けられる。この例では、第1磁性層11とシールド20sとの間に、第2非磁性層16が配置される。
【0015】
第2非磁性層16は、例えば、金属層である。この金属層は、合金を含んでも良い。第2非磁性層16は、複数の積層膜(金属膜)を含んでも良い。
【0016】
磁気記録ヘッド110は、磁気記録媒体80に対向する。磁気記録ヘッド110は、媒体対向面51(ABS:Air Bearing Surface)を有する。磁気記録媒体80は、磁気記録ヘッド110の媒体対向面51に対して、相対的に移動する。磁気記録媒体80の媒体移動方向85は、媒体対向面51に対して実質的に平行である。磁気記録媒体80の移動に伴って磁気記録媒体80の異なる位置のそれぞれに、磁極20から記録磁界が印加される。記録磁界により、磁気記録媒体80の磁化84の向きが変更される。
【0017】
磁気記録媒体80は、例えば、垂直磁化膜である。磁化84が上向きの状態が、例えば、”1”及び”0”の一方の情報に対応する。磁化84が下向きの状態が、例えば、”1”及び”0”の他方の情報に対応する。
【0018】
シールド20sは、例えば、トレーリングシールドである。例えば、磁気記録媒体80の1つの位置は、磁極20に対向した後に、シールド20sに対向する。
【0019】
磁気記録ヘッド110には、コイル25が設けられる。コイル25は、磁極20から磁界を発生させる。例えば、コイル25に流れる電流の方向に応じて、磁極20で生じる磁界(例えば記録磁界)の方向が変化する。コイル25に流れる電流の方向は、例えば、記録する情報に対応する。
【0020】
この例では、制御部55がさらに設けられている。制御部55は、磁気記録再生装置150に含まれる。制御部55は、磁気記録ヘッド110に付属されても良い。
【0021】
制御部55は、コイル25に電気的に接続される。例えば、制御部55からコイル25に電流が供給される。電流の方向が、制御部55により制御される。
【0022】
制御部55は、例えば、第1非磁性層15及び第2非磁性層16と電気的に接続される。後述するように、積層体10に電流が流れる。この電流は、例えば、制御部55により供給される。第1非磁性層15及び第2非磁性層16は、例えば、電極として機能する。制御部55と第1非磁性層15との間の電気的接続は、磁極20を介して行われても良い。制御部55と第2非磁性層16との間の電気的接続は、シールド20sを介して行われても良い。
【0023】
磁気記録媒体80から磁気記録ヘッド110に向かう方向をZ方向とする。Z方向に対して垂直な1つの方向をX方向とする。Z方向及びX方向に対して垂直な方向をY方向とする。Z方向は、ハイト方向である。X方向は、ダウントラック方向に沿う。Y方向は、トラック幅方向に沿う。
【0024】
磁気記録ヘッド110において、第2磁性層12から第1磁性層11に向かう方向を第1方向D1とする。第1磁性層11から第2磁性層12に向かう方向を第2方向D2とする。第2方向D2は、第1方向D1に対して反平行である。第1方向D1及び第2方向D2は、例えば、X方向に沿う。第1方向D1、第2方向D2及びX方向は、積層体10の積層方向に沿う。
【0025】
第1磁性層11は、第1方向D1に沿った第1厚さt1を有する。第2磁性層12は、第1方向D1に沿った第2厚さt2を有する。中間層13は、第1方向D1に沿った第3厚さt3を有する。例えば、積層体10の厚さは、例えば、第1厚さt1、第2厚さt2及び第3厚さt3の合計に依存する。
【0026】
例えば、媒体対向面51において、磁極20とシールド20sとの間の距離(第1方向D1に沿った距離)をギャップ長g20とする。ギャップ長g20を小さくすることで、記録密度が向上できる。積層体10の厚さを薄くすることで、ギャップ長g20を小さくできる。
【0027】
実施形態においては、第1磁性層11の第1厚さt1は、比較的薄く設定される。これにより、積層体10の厚さが薄くでき、ギャップ長g20を小さくできる。
【0028】
磁性膜において、磁気膜厚が定義される。磁気膜厚は、磁性膜の厚さtと、磁性膜の飽和磁束密度Bsと、の積である。
【0029】
実施形態において、第2磁性層12の磁気膜厚は、第1磁性層11の磁気膜厚よりも大きい。第1磁性層11は、第1方向D1に沿った第1厚さt1と、第1飽和磁束密度Bs1と、を有する。第2磁性層12は、第1方向D1に沿った第2厚さt2と、第2飽和磁束密度Bs2と、を有する。実施形態においては、第2厚さt2と第2飽和磁束密度Bs2との第2積(t2・Bs2)は、第1厚さt1と第1飽和磁束密度Bs1との第1積(t1・Bs1)よりも大きい。
【0030】
さらに、実施形態においては、積層体10に流れる電流を特殊な条件とする。すなわち、実施形態においては、第2磁性層12から第1磁性層11に向かって電流が流れる。以下、実施形態に係る動作について、説明する。
【0031】
図1(b)は、第1動作OP1を例示している。第1動作OP1は、磁気記録ヘッド110における第1状態に対応する。第1動作OP1において、コイル25に第1コイル電流C1が流れる。磁極20とシールド20sとの間の領域において、第1コイル電流C1の方向は、例えば、Y方向に対して逆(反平行)である。
【0032】
第1動作OP1(第1状態)において、磁極20から生じる第1磁極磁界Hg1は、第1方向D1に沿う成分を有する。このとき、積層体10に、第1方向D1の第1電流Jc1が流れる。このとき、第1電子流Je1が流される。第1電子流Je1の方向は、第1電流Jc1の向きと逆である。この第1電流Jc1は、積層体10が発振するしきい値電流以上である。このとき、積層体10において、高周波磁界Hacが発生する。高周波磁界Hacは、磁気記録媒体80に印加される。高周波磁界Hacにより、磁気記録媒体80の磁化84が反転し易くなる。
【0033】
第1動作OP1において、磁極20から第1記録磁界Hr1が生じる。第1記録磁界Hr1は、第1コイル電流C1に基づく。第1記録磁界Hr1が、磁気記録媒体80に印加される。磁気記録媒体80の磁化84は、第1記録磁界Hr1の方向に沿う。例えば、磁化84が反転する。例えば、高周波アシスト記録が行われる。これにより、第1情報(例えば”1”及び”0”の一方)の記録が行われる。
【0034】
図1(c)は、第2動作OP2を例示している。第2動作OP2は、磁気記録ヘッド110における第2状態に対応する。第2動作OP2において、コイル25に第2コイル電流C2が流れる。磁極20とシールド20sとの間の領域において、第2コイル電流C2の方向は、例えば、Y方向である。
【0035】
第2動作OP2(第2状態)において、磁極20から生じる第2磁極磁界Hg2は、第2方向D2(第1方向D1の逆、反平行)に沿う成分を有する。このときも、積層体10に、第1方向D1の第1電流Jc1が流される。この第1電流Jc1は、積層体10が発振するしきい値電流以上である。このとき、積層体10において、高周波磁界Hacが発生する。高周波磁界Hacは、磁気記録媒体80に印加される。高周波磁界Hacにより、磁気記録媒体80の磁化84が反転し易くなる。
【0036】
第2動作OP2において、磁極20から第2記録磁界Hr2が生じる。第2記録磁界Hr2は、第2コイル電流C2に基づく。第2記録磁界Hr2が、磁気記録媒体80に印加される。磁気記録媒体80の磁化84は、第2記録磁界Hr2の方向に沿う。例えば、磁化84が反転する。例えば、高周波アシスト記録が行われる。これにより、第2情報(例えば”1”及び”0”の他方)の記録が行われる。
【0037】
上記のように、実施形態においては、第1磁性層11の第1厚さt1が薄く設定される。さらに、積層体10には、第2磁性層12から第1磁性層11に向かって電流(第1電流Jc1)が流れる。これにより、積層体10から高周波磁界Hacが発生することがわかった。
【0038】
実施形態においては、薄い第1磁性層11により、ギャップ長g20が小さい。そして、この構成において、上記の方向の電流を積層体10に流すことで、積層体10から高周波磁界Hacが生じる。この高周波磁界Hacにより、例えば、高周波アシスト記録が実施される。ギャップ長g20が小さくても、高周波アシスト記録が可能である。
【0039】
実施形態によれば、小さいギャップ長g20及び高周波磁界Hacにより、記録密度が向上できる磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置が提供できる。
【0040】
実施形態における積層体10の動作の例について説明する。
図1(a)は、例えば、コイル25に電流が供給されていないときの状態(初期状態)に対応する。この状態において、第2磁性層12の磁化12mの向きは、Z方向である。第2磁性層12は、例えば、面内磁化膜である。このとき、第1磁性層11の磁化11mの向きは、-Z方向(Z方向と逆(反平行)方向)である。第1磁性層11は、例えば、面内磁化膜である。第1磁性層11の磁化11mの向きは、変化し易い。これにより、第1状態及び第2状態が生じる。
【0041】
図1(b)に例示した第1状態(第1動作OP1)において、第2方向D2の第1電子流Je1により、第2磁性層12と中間層13との界面において、スピンが反射する。反射したスピンは、第1磁性層11に進む。第2磁性層12から第1磁性層11に向けて、反射のスピントルクが注入される。第1磁性層11の磁化11mは、第1磁極磁界Hg1の方向とは逆になる。第2方向D2の第1電子流Je1により、第1磁性層11から第2磁性層12に向けて、スピンが注入される。第2磁性層12において、磁化12mが回転する。これにより、高周波磁界Hacが生じる。
【0042】
図1(c)に例示した第2状態(第2動作OP2)において、第2方向D2の第1電子流Je1により、第2磁性層12と中間層13との界面において、スピンが反射する。反射したスピンは、第1磁性層11に進む。第2磁性層12から第1磁性層11に向けて、反射のスピントルクが注入される。第1磁性層11の磁化11mは、第2磁極磁界Hg2の方向とは逆になる。第2方向D2の第1電子流Je1により、第1磁性層11から第2磁性層12に向けて、スピンが注入される。第2磁性層12において、磁化12mが回転する。これにより、高周波磁界Hacが生じる。
【0043】
第1磁性層11は、例えば、スピン注入層として機能する。第2磁性層12は、例えば、磁界発生層として機能する。
【0044】
実施形態においては、第2磁性層12から第1磁性層11に向かって電流を流す。これにより、第1磁性層11を薄くしても、良好な発振特性が得られることが分かった。
【0045】
以下、実施形態の特性の例について、参考例とともに説明する。
図2(a)及び図2(b)は、第1参考例の磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置を例示する模式的断面図である。
これらの図は、第1参考例の磁気記録ヘッド119xにおける構成及び動作を示している。
【0046】
磁気記録ヘッド119xにおいても第1磁性層11、第2磁性層12及び中間層13が設けられる。これらの磁性層の構成は、磁気記録ヘッド110と同じである。磁気記録ヘッド119xにおいては、動作における電流が、磁気記録ヘッド110のそれとは異なる。
【0047】
図2(a)及び図2(b)に示すように、第1動作OP1及び第2動作OP2において、第1磁性層11から第2磁性層12に向かう第2電流Jc2が流れる。このとき、第2磁性層12から第1磁性層11に向かう第2電子電流Je2が流れる。磁気記録ヘッド119xにおいては、第1磁性層11が薄いため、ギャップ長g20が小さくできる。しかしながら、後述するように、良好な高周波磁界が発生しない。高周波アシスト記録が困難である。
【0048】
図3(a)及び図3(b)は、第2参考例の磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置を例示する模式的断面図である。
これらの図は、第2参考例の磁気記録ヘッド119yにおける構成及び動作を示している。
【0049】
磁気記録ヘッド119yにおいても第1磁性層11、第2磁性層12及び中間層13が設けられる。磁気記録ヘッド119yにおいては、第1磁性層11は、磁気記録ヘッド110におけるそれよりも厚い。一方、磁気記録ヘッド119yにおいては、動作における電流が、磁気記録ヘッド110のそれと同じである。
【0050】
図3(a)及び図3(b)に示すように、第1動作OP1及び第2動作OP2において、第2磁性層12から第1磁性層11に向かう第1電流Jc1が流れる。このとき、第1磁性層11から第2磁性層12に向かう第1電子電流Je1が流れる。磁気記録ヘッド119yにおいては、第1磁性層11が厚いため、ギャップ長g20が大きい。後述するように、良好な高周波磁界が発生しない。高周波アシスト記録が困難である。
【0051】
図4(a)及び図4(b)は、第3参考例の磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置を例示する模式的断面図である。
これらの図は、第3参考例の磁気記録ヘッド119zにおける構成及び動作を示している。
【0052】
磁気記録ヘッド119zにおいても第1磁性層11、第2磁性層12及び中間層13が設けられる。磁気記録ヘッド119zにおいては、第1磁性層11は、磁気記録ヘッド110におけるそれよりも厚い。さらに、磁気記録ヘッド119zにおいては、動作における電流が、磁気記録ヘッド110のそれとは異なり、磁気記録ヘッド119xのそれと同じである。
【0053】
図4(a)及び図4(b)に示すように、第1動作OP1及び第2動作OP2において、第1磁性層11から第2磁性層12に向かう第2電流Jc2が流れる。このとき、第2磁性層12から第1磁性層11に向かう第2電子電流Je2が流れる。磁気記録ヘッド119zにおいては、第1磁性層11が厚いため、ギャップ長g20が大きい。後述するように、良好な高周波磁界が発生する。磁気記録ヘッド119zは、従来から知られている一般的な構成である。磁気記録ヘッド119zにおいては、高周波アシスト記録が可能である。しかしながら、ギャップ長g20が大きい。このため、記録密度を十分に向上できない。
【0054】
以下、これらの磁気記録ヘッドの特性(磁気記録再生装置の特性)のシミュレーション結果の例について説明する。シミュレーションのモデルは、以下である。
【0055】
磁気記録ヘッド110及び119xにおいて、第1磁性層11のZ方向の長さは35nmであり、Y方向の長さは35nmである。第1磁性層11のX方向の厚さ(第1厚さt1)は、4nmである。第1磁性層11の飽和磁束密度Bs(第1飽和磁束密度Bs1)は、1.2T(テスラ)である。第1磁性層11の異方性磁界Hkは、2kOe(キロエルステッド)である。第1磁性層11における交換スティフネス定数は、1.4×10-6erg/cm(エルグ/センチメートル)である。第1磁性層11におけるスピン偏極率Poは、0.48である。
【0056】
磁気記録ヘッド119y及び119zにおいて、第1磁性層11のX方向の厚さ(第1厚さt1)は、11nmである。磁気記録ヘッド119y及び119zにおいて、第1磁性層11の垂直磁気異方性磁界Hkは、18kOeである。磁気記録ヘッド119y及び119zにおける第1磁性層11のこれら以外の条件は、磁気記録ヘッド110及び119xのそれらと同じである。
【0057】
第1磁性層11を除いて、積層体10の構成は、磁気記録ヘッド110、119x、119y及び119zにおいて、同じである。
【0058】
第2磁性層12のZ方向の長さは35nmであり、Y方向の長さは35nmである。第2磁性層12のX方向の厚さ(第2厚さt2)は、10nmである。第2磁性層12の飽和磁束密度Bs(第2飽和磁束密度Bs2)は、2.2Tである。第2磁性層12の垂直磁気異方性磁界Hkは、-4kOeである。第2磁性層12における交換スティフネス定数は、2×10-6erg/cmである。第2磁性層12におけるスピン偏極率Poは、0.48である。
【0059】
第1磁性層11と第2磁性層12との間の距離(中間層13の第3厚さt3)は、2nmである。中間層13において、交換結合係数は、0である。
【0060】
積層体10に加わる磁界において、Y方向成分磁界のX方向成分磁界に対する比(Hy/Hx)は、-10%である。積層体10に加わる磁界は、0kOe~20kOeの範囲で変更される。この磁界は、ギャップ磁界(第1磁極磁界Hg1及び第2磁極磁界Hg2など)に対応する。
【0061】
以下の例は、初期状態から第1状態(第1動作OP1)に移行する場合に関するシミュレーション結果である。初期状態においては、積層体10に電流が流されない。第2磁性層12においては、磁気膜厚が比較的大きいため、第2磁性層12の磁化12mは安定である。そして、第2磁性層12の垂直磁気異方性は、正の小さい値または負の値を有する。このため、初期状態の磁気記録ヘッド110、119x、119y及び119zにおいて、磁化12mの方向は、+Z方向である。
【0062】
磁気記録ヘッド119y及び119zにおいては、第1磁性層11の磁気膜厚は比較的大きい。そして、第1磁性層11の垂直磁気異方性磁界は、正の大きな値を有する。このため、第1磁性層11の磁化11mの向きは安定である。初期状態の磁気記録ヘッド119y及び119zにおいて、磁化11mの方向は、第1方向D1である。
【0063】
これに対して、磁気記録ヘッド110及び119xにおいては、第1磁性層11の磁気膜厚は比較的小さい。そして、第1磁性層11の垂直磁気異方性磁界が小さい。このため、第1磁性層11の磁化11mの向きは、積層体10の積層面に平行になる。初期状態の磁気記録ヘッド110及び119zにおいて、磁化11mの方向は、-Z方向である。電流を流さない場合において、積層体10に第1方向D1に沿う磁界が印加されると、磁化11mの平均の方向は、第1方向D1になる。
【0064】
シミュレーションにおいて、積層体10に加わる磁界(ギャップ磁界Hgap)の向きは、略第1方向D1である。
【0065】
第1状態(第1動作OP1)の積層体10に流される電流の向きは、磁気記録ヘッドによって異なる。磁気記録ヘッド110及び119yにおいては、第1方向D1の第1電流Jc1が流される。磁気記録ヘッド119x及び119zにおいては、第2方向D2の第電流Jc2が流される。これらの電流において、電流の大きさ(絶対値)が変更される。
【0066】
磁気記録ヘッド119zは、一般的なSTOであり、電流の向きも一般的な場合に対応する。磁気記録ヘッド119yは、一般的なSTOにおいて、電流の向きが一般とは逆の場合に対応する。磁気記録ヘッド119xは、一般的なSTOにおける電流の向きにおいて、第1磁性層11が薄い場合に対応する。磁気記録ヘッド110は、第1磁性層11が薄く、電流の向きが一般的なSTOの電流とは逆の場合に対応する。
【0067】
図5(a)~図5(d)は、磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置の特性を例示するグラフ図である。
図5(a)~図5(d)は、磁気記録ヘッド110、119x、119y及び119zにそれぞれ対応する。横軸は、ギャップ磁界Hgapの強度(kOe)を示す。縦軸は、積層体10で生じる高周波磁界Hacの強度(kOe)を示す。これらの図中には、4つの電流密度Jの場合が示されている。
【0068】
図5(d)に示すように、磁気記録ヘッド119zにおいては、高い電流密度Jにおいても、高い強度の高周波磁界Hacが得られる。このように、磁気記録ヘッド119z(一般的なSTOにおいて、一般的な電流の向きの場合)においては、高周波磁界Hacが得られる。
【0069】
図5(c)に示すように、磁気記録ヘッド119yにおいては、どの電流密度Jにおいても、高周波磁界Hacの強度は、実質的に0である。このように、磁気記録ヘッド119y(一般的なSTOにおいて電流の向きが逆の場合)においては、高周波磁界Hacが得られない。このため、一般的なSTO(第1磁性層11が厚い場合)においては、第2電流Jc2が適用される。すなわち、磁気記録ヘッド119zの構成が用いられる。
【0070】
これに対して、図5(b)に示すように、磁気記録ヘッド119xにおいては、電流密度Jの絶対値が大きくても、高周波磁界Hacの強度は低い。このように、第1磁性層11が薄い場合は、一般的なSTOにおいて適用される電流の向き(第2電流Jc2)を用いると、高周波磁界Hacが実質的に得られない。このため、従来は、第1磁性層11を薄くすることが困難であると考えられていた。
【0071】
しかしながら、図5(a)に示すように、実施形態に係る磁気記録ヘッド110においては、電流密度Jが大きい場合に、高い強度の高周波磁界Hacが得られる。このように、実施形態においては、一般的なSTOにおける電流の向き(第2電流Jc2)ではなく、それとは逆の向き(第1電流Jc1)を用いる。これにより、第1磁性層11が薄い場合においても、良好な高周波磁界Hacが得られる。
【0072】
一般的なSTOで採用される電流の向きとは逆の向きの電流を用いることは、本願発明者の独自な新しい発想である。これにより、第1磁性層11を用いて高周波磁界Hacを発生させことができる。これにより、ギャップ長g20を小さくでき、記録密度が向上できる磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置が提供できる。
【0073】
図6(a)~図6(d)は、磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置の特性を例示するグラフ図である。
図6(a)~図6(d)は、磁気記録ヘッド110、119x、119y及び119zにそれぞれ対応する。横軸は、ギャップ磁界Hgapの強度(kOe)を示す。縦軸は、積層体10における抵抗R1を示す。抵抗R1は相対値である。抵抗R1は、第1磁性層11の磁化11mの方向と、第2磁性層12の磁化12mの方向と、の間の角度に対応する。抵抗R1が高いとき(例えば1)、第1磁性層11の磁化11mの方向は、第2磁性層12の磁化12mの方向に対して反平行である。抵抗R1が低いとき(例えば0)、第1磁性層11の磁化11mの方向は、第2磁性層12の磁化12mの方向に対して平行である。
【0074】
図6(b)~図6(d)に示すように、磁気記録ヘッド119x、119y及び119zにおいては、ギャップ磁界Hgapの増大とともに、抵抗R1は、減少する。このことは、ギャップ磁界Hgapの増大とともに、第1磁性層11の磁化11mと、第2磁性層12の磁化12mと、の間の角度が小さくなることに対応する。ギャップ磁界Hgapが増大すると、これらの磁化が互いに平行になる程度が高くなる。
【0075】
これに対して、図6(a)に示すように、磁気記録ヘッド110においては、電流密度Jの絶対値が大きいときに、ギャップ磁界Hgapの増大とともに抵抗R1が増大している。このことは、ある程度高い絶対値の電流密度(ある程度大きい電流)を流した場合には、ギャップ磁界Hgapが大きくなると、第1磁性層11の磁化11mが、初期状態から反転することに対応する。このような電流密度Jにおいて、図5(a)に示す高い強度の高周波磁界Hacが得られる。
【0076】
実施形態において、例えば、積層体10に第1電流Jc1を流しつつ、上記の第1方向D1の成分を有する第3磁界(ギャップ磁界Hgap)を印加する。このとき、第1磁性層11と第2磁性層12との間の電気抵抗(抵抗R1)は、第3磁界の強度とともに上昇する。すなわち、積層体10に電流(第1電流Jc1)を流したときの第1磁性層11と第2磁性層12との間の電気抵抗は、第1方向D1の成分を有する磁界の強度とともに上昇する。
【0077】
例えば、実施形態に係る磁気記録ヘッド110において、第1範囲の大きさを有し第1方向D1の第3電流を積層体10に流しつつ第1方向D1の成分を有する第3磁界(ギャップ磁界Hgap)を印加する。第3電流は、図6(a)における電流密度Jに対応する電流である。このとき、第1磁性層11と第2磁性層12との間の電気抵抗(抵抗R1)は、第3磁界の強度とともに上昇する。図6(a)の例では、第3電流の範囲は、電流密度Jの絶対値が4×10A/cm以上の範囲に対応する。このような範囲に第1電流Jc1が設定される。すなわち、第1電流Jc1の大きさは、この第1範囲にある。これにより、第1動作OP1において、良好な高周波磁界Hacが得られる。
【0078】
図7(a)~図7(d)は、磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置の特性を例示するグラフ図である。
図7(a)~図7(d)は、磁気記録ヘッド110、119x、119y及び119zにそれぞれ対応する。横軸は、ギャップ磁界Hgapの強度(kOe)を示す。縦軸は、第1磁性層11の磁化11mの向きM1を示す。向きM1が”1”のときは、磁化11mが、第1方向D1であることに対応する。向きM1が”-1”のときは、磁化11mが、第2方向D2であることに対応する。
【0079】
図7(c)及び図7(d)に示すようには、磁気記録ヘッド119y及び119zにおいては、第1磁性層11の磁化11mの向きM1は、1である。これらの磁気記録ヘッドヘッドにおいては、電流及びギャップ磁界Hgapに依存せず、磁化11mの向きM1は、第1方向D1である。これらの磁気記録ヘッドにおいては、磁化11mの向きは変化しない。
【0080】
図7(b)に示すように、磁気記録ヘッド119xにおいては、どの電流密度Jのときも、ギャップ磁界Hgapが0の場合、磁化11mの向き(平均の向き)は、0である。ギャップ磁界Hgapを大きくすると、向きM1は、1に近づく。すなわち、磁化11mの向きM1が、第1方向D1に沿うようになる。
【0081】
図7(a)に示すように、磁気記録ヘッド110においては、電流密度Jが0でギャップ磁界Hgapが0の場合、磁化11mの向き(平均の向き)は、0である。電流密度Jが0のときに、ギャップ磁界Hgapを大きくすると、向きM1は、1に近づく。すなわち、磁化11mの向きM1が、第1方向D1に沿うようになる。一方、電流密度Jが0ではない場合に、ギャップ磁界Hgapを大きくすると、向きM1は、-1に近づく。すなわち、磁化11mの向きM1は、第2方向D2に変化する。この特性は、磁気記録ヘッド110に特有である。
【0082】
このように、実施形態においては、第1磁性層11の磁化11mは、特有の特性を有する。これにより、第1磁性層11が薄い場合においても、良好な高周波磁界Hacが得られる。
【0083】
図8は、第1の実施形態に係る磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置の特性を例示するグラフ図である。
図8は、磁気記録ヘッド110において発生する高周波磁界Hacの周波数を示している。横軸は、ギャップ磁界Hgapの強度(kOe)を示す。縦軸は、高周波磁界Hacの周波数f1(GHz:ギガヘルツ)を示す。
【0084】
実施形態において、ギャップ磁界Hgapを例えば7kOe~20kOeとする。このとき、安定した高周波磁界Hacが得られる。この高周波磁界Hacの周波数f1は、例えば、5GHz以上25GHz以下である。
【0085】
このように、本実施形態においても、第1磁性層11を薄くしても、高周波磁界Hacが得られる。
【0086】
例えば、第1状態(第1動作OP1)において、第1磁性層11の磁化11mは、第2方向D2の成分を有する。第1状態において、磁化11mの方向は、第1磁極磁界Hg1の方向に対して反平行である。一方、第2状態(第2動作OP2)において、第1磁性層11の磁化11mは、第1方向D1の成分を有する。第2状態において、磁化11mの方向は、第2磁極磁界Hg2の方向に対して反平行である。
【0087】
実施形態においては、このような第1状態及び第2状態において、積層体10は、高周波磁界Hacを発生する。
【0088】
既に説明したように、第1磁性層11の第1積(t1・Bs1)は、第2磁性層12の第2積(t2・Bs2)よりも小さい。例えば、第2積は、第1積の4倍以上である。例えば、第2厚さt2は、第1厚さt1の2倍以上である。
【0089】
図9は、第1の実施形態に係る磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置の特性を例示するグラフ図である。
図9は、磁気記録ヘッド110における発振特性を示す。横軸は、第1磁性層11の厚さ(第1厚さt1)を示す。縦軸は、電流密度J(任意目盛り)を示す。図9において、発振開始電流密度Jsと、80%電流密度J80%と、が示されている。発振開始電流密度Jsは、積層体10において高周波磁界Hacが生じる最小の電流密度Jである。80%電流密度J80%は、高周波磁界Hacの最大値の80%の高周波磁界Hacが生じる電流密度Jである。図9に示す例においては、積層体10に印加される磁界(ギャップ磁界Hgap)は、10kOeである。ギャップ磁界Hgapは、例えば、第1磁極磁界Hg1または第2磁極磁界Hg2に対応する。
【0090】
図9に示すように、第1磁性層11の第1厚さt1が2nm以上9nm以下において、低い発振開始電流密度Jsが得られる。そして、この範囲において、低い80%電流密度J80%が得られる。実施形態において、第1磁性層11の第1厚さt1は、2nm以上9nm以下が好ましい。第1磁性層11の第1厚さt1は、2.5nm以上7.5nm以下が、さらに好ましい。さらに、低い発振開始電流密度Js、及び、さらに低い80%電流密度J80%が得られる。
【0091】
図10は、第1の実施形態に係る磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置の特性を例示するグラフ図である。
図10は、磁気記録ヘッド110における発振特性を示す。横軸は、第1磁性層11の垂直磁気異方性磁界MA1(kOe)である。縦軸は、電流密度J(任意目盛り)を示す。垂直磁気異方性磁界MA1は、垂直結晶磁気異方性である。垂直磁気異方性磁界MA1が負のとき、積層方向と垂直な面への磁化が容易となる。垂直磁気異方性磁界MA1が正のとき、積層方向と平行方向への磁化が容易となる。図10において、発振開始電流密度Jsと、80%電流密度J80%と、が示されている。図10に示す例においては、積層体10に印加される磁界(ギャップ磁界Hgap)は、10kOeである。
【0092】
図10に示すように、第1磁性層11の垂直磁気異方性磁界MA1が-7kOe以上8kOe以下において、低い発振開始電流密度Jsが得られる。そして、この範囲において、低い80%電流密度J80%が得られる。実施形態において、第1磁性層11の垂直磁気異方性磁界MA1が-7kOe以上8kOe以下が好ましい。第1磁性層11の垂直磁気異方性磁界MA1が-5kOe以上7kOe以下がさらに、好ましい。さらに、低い発振開始電流密度Js、及び、さらに低い80%電流密度J80%が得られる。例えば、第1磁性層11の垂直磁気異方性磁界MA1の絶対値は、7kOe以下でも良い。第1磁性層11の垂直磁気異方性磁界MA1の絶対値は、5kOe以下でも良い。
【0093】
図11(a)~図11(c)は、第1の実施形態に係る磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置の特性を例示するグラフ図である。
これらの図は、磁気記録ヘッド110における発振特性を示す。図11(a)において、横軸は、第2磁性層12の磁気ダンピング体積の、第1磁性層11の磁気ダンピング体積に対する比R2/1である。第1磁性層11は第1ダンピング定数α1を有する。第2磁性層12は、第2ダンピング定数α2を有する。既に説明したように、第1磁性層11は、第1厚さt1及び第1飽和磁束密度Bs1を有する。第2磁性層12は、第2厚さt2及び第2飽和磁束密度Bs2を有する。比R2/1は、(α2・t2・Bs2)/(α1・t1・Bs1)である。図11(b)の縦軸は、積層体10から発生する高周波磁界Hacの規格化した強度Hacnである。
【0094】
図11(a)に示すように、比R2/1が4以上16以下において、高い強度Hacnが得られる。比R2/1は、4以上16以下が好ましい。比R2/1は、5以上14以下がさらに好ましい。
【0095】
実施形態においては、例えば、第2積(t2・Bs2)と第2ダンピング定数α2との積は、第1積(t1・Bs1と第1ダンピング定数α1の積の4倍以上16倍以下であることが好ましい。
【0096】
図11(b)において、横軸は、第2磁性層12の磁気膜厚の、第1磁性層11の磁気膜厚に対する比RtBsである。比RtBsは、(t2・Bs2)/(t1・Bs1)に対応する。図11(b)の縦軸は、強度Hacnである。この例において、第1ダンピング定数α1は、0.03であり、第2ダンピング定数α2は、0.04である。
【0097】
図11(b)に示すように、比RtBsが3以上11以下において、高い強度Hacnが得られる。実施形態においては、比RtBsは、例えば、3以上11以下であることが好ましい。特に、比RtBsは、例えば、4以上10以下であることがさらに好ましい。
【0098】
図11(c)において、横軸は、第2磁性層12の第2厚さt2、第1磁性層11の第1厚さt1に対する比Rtである。比Rtは、t2/t1に対応する。図11(c)の縦軸は、強度Hacnである。この例において、第1ダンピング定数α1は、0.03であり、第2ダンピング定数α2は、0.04である。第1飽和磁束密度Bs1は、1.2Tであり、第2飽和磁束密度Bs2は、2.2Tである。
【0099】
図11(c)に示すように、比Rtが1.5以上7以下において、高い強度Hacnが得られる。実施形態においては、比Rtは、例えば、1.5以上7以下であることが好ましい。特に、比Rtは、例えば、2以上6以下であることが好ましい。
【0100】
実施形態において、磁極20は、例えば、FeCo合金、または、FeCoNi合金などを含む。
【0101】
シールド20sは、例えば、FeCo合金またはFeCoNi合金などを含む。
【0102】
第1磁性層11及び第2磁性層12の少なくともいずれかは、例えば、FeCo合金、ホイッスラー合金、[Fe/Co]人工格子、[FeCoNi/Ni]人工格子、及び、[Co/Pt]人工格子の少なくともいずれかを含む。を含む。第1磁性層11及び第2磁性層12の少なくともいずれかは、FeCo合金膜、ホイッスラー合金膜、[Fe/Co]人工格子膜、[FeCoNi/Ni]人工格子膜、及び、[Co/Pt]人工格子膜の少なくとも2つを含む積層膜を含んでも良い。
【0103】
中間層13は、例えば、Cu及びAgの少なくともいずれかを含む。中間層13は、例えば、Cuを含む合金、及び、Agを含む合金の少なくともいずれかを含んでも良い。中間層13は、例えば、Cu膜、Ag膜、Cuを含む合金膜、及び、Agを含む合金膜の少なくとも2つを含む積層膜を含んでも良い。
【0104】
第1非磁性層15及び第2非磁性層16の少なくともいずれかは、例えば、Ta、Cu、Pt及びPdの少なくともいずれかを含む。第1非磁性層15及び第2磁性層12の少なくともいずれかは、それらのいずれかを含む合金を含んでも良い。第1非磁性層15及び第2磁性層16の少なくともいずれかは、それらの膜の少なくとも2つを含む積層膜を含んでも良い。
【0105】
磁気記録媒体80は、例えば、CoCrPt-SiOグラニュラ膜を含む。
【0106】
図12(a)~図12(c)は、第1の実施形態に係る別の磁気記録ヘッド及び別の磁気記録再生装置を例示する模式的断面図である。
図12(b)及び図12(c)は、磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置の状態(動作)を例示している。
【0107】
図12(a)に示すように、本実施形態に係る磁気記録再生装置150aは、本実施形態に係る磁気記録ヘッド110aと、磁気記録媒体80と、を含む。本実施形態においては、第1磁性層11及び第2磁性層12の積層方向が、媒体対向面51に対して傾斜している。これ以外は、磁気記録ヘッド110と同様である。
【0108】
磁気記録ヘッド110a及び磁気記録再生装置150aにおいても、第2厚さt2と第2飽和磁束密度との第2積は、第1厚さt1と第1飽和磁束密度との第1積よりも大きい。例えば、第1厚さt1は、第2厚さt2よりも薄い。
【0109】
そして、図12(b)及び図12(c)に示すように、第2磁性層12から第1磁性層11に向かって電流(第1電流Jc1)が流れる。磁気記録ヘッド110a及び磁気記録再生装置150aにおいても、記録密度が向上できる磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置が提供できる。
【0110】
(第2の実施形態)
図13(a)~図13(c)は、第2の実施形態に係る磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置を例示する模式的断面図である。
図13(b)及び図13(c)は、磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置の状態(動作)を例示している。
【0111】
図13(a)に示すように、本実施形態に係る磁気記録再生装置151は、本実施形態に係る磁気記録ヘッド111と、磁気記録媒体80と、を含む。本実施形態においては、第1磁性層11及び第2磁性層12の配置が、磁気記録ヘッド110における配置とは異なる。以下の磁気記録ヘッド111の説明において、磁気記録ヘッド110と同様の部分は、適宜省略される。
【0112】
磁気記録ヘッド111は、磁極20と、シールド20sと、積層体10と、第1非磁性層15と、を含む。シールド20sは、例えば、トレーリングシールドである。積層体10は、第1磁性層11、第2磁性層12及び中間層13を含む。第1磁性層11は、磁極20とシールド20sとの間に設けられる。第2磁性層12は、第1磁性層11とシールド20sとの間に設けられる。中間層13は、第1磁性層11と第2磁性層12との間に設けられ、非磁性である。
【0113】
第1非磁性層15は、第2磁性層12とシールド20sとの間に設けられる。第1非磁性層15は、シールド20s及び第2磁性層12と接する。
【0114】
第2非磁性層16は、第1磁性層11と磁極20との間に設けられる。
【0115】
第2磁性層12から第1磁性層11に向かう方向を第1方向D1とする。第1方向D1は、X方向とは逆である。第1磁性層11から第2磁性層12に向かう方向を第2方向D2とする。第2方向D2は、X方向と同じである。
【0116】
この例においても、第1磁性層11は、第1方向D1に沿った第1厚さt1と、第1飽和磁束密度Bs1と、を有する。第2磁性層12は、第1方向D1に沿った第2厚さt2と、第2飽和磁束密度Bs2と、を有する。この例でも、第2厚さt2と第2飽和磁束密度Bs2との第2積は、第1厚さt1と第1飽和磁束密度Bs1との第1積よりも大きい。
【0117】
図13(b)は、第1動作OP1(第1状態)に対応する。第1状態において、磁極20から生じる第1磁極磁界Hg1は、第2方向D2に沿う成分を有する。このとき、積層体10に第1方向D1の第1電流Jc1が流れる。このとき、第1電子流Je1の向きは、第1電流Jc1の向きと逆である。
【0118】
図13(c)は、第2動作OP2(第2状態)に対応する。第2状態において、磁極20から生じる第2磁極磁界Hg2は、第1方向D1に沿う成分を有する。このときも、積層体10に第1方向D1の第1電流Jc1が流れる。
【0119】
このような動作により、第1磁性層11を薄くしても、良好な高周波磁界Hacが得られる。これにより、記録密度が向上できる磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置が提供できる。
【0120】
本実施形態において、第2積は、第1積の4倍以上であることが好ましい。第2厚さt2は、第1厚さの2倍以上であることが好ましい。
【0121】
1厚さt1は、例えば、2nm以上9nm以下であることが好ましい。第1磁性層11の垂直磁気異方性磁界MA1は、例えば、-7kOe以上8kOe以下であることが好ましい。
【0122】
本実施形態において、第1磁性層11は、第1ダンピング定数α1を有する。第2磁性層12は、第2ダンピング定数α2を有する。このとき、第2積と第2ダンピング定数α2との積は、第1積と第1ダンピング定数α1の積の4倍以上16倍以下であることが好ましい。
【0123】
本実施形態において、第1状態において、第1磁性層11の磁化11mは、第2方向D2の成分を有する。第2状態において、第1磁性層11の磁化11mは、第1方向D1の成分を有する。
【0124】
第1状態及び第2状態において、積層体10は、高周波磁界Hacを発生する。高周波磁界Hacの周波数は、5GHz以上25GHz以下である。
【0125】
積層体10に第1電流Jc1を流しつつ第1方向D1の成分を有する第3磁界を印加したときに、第1磁性層11と第2磁性層12との間の電気抵抗は、第3磁界の強度とともに上昇する。
【0126】
第1範囲の大きさを有し第1方向D1の第3電流を積層体10に流しつつ第1方向D1の成分を有する第3磁界を印加したときに、第1磁性層11と第2磁性層12との間の電気抵抗は、第3磁界の強度とともに上昇する。上記の第1電流Jc1の大きさは、このような第1範囲にある。
【0127】
本実施形態において、コイル25が設けられても良い。第1状態においてコイル25に第1コイル電流C1が供給されて磁極20から、第1磁極磁界Hg1が発生する。第2状態においてコイル25に第2コイル電流C2が供給されて、磁極20から第2磁極磁界Hg2が発生する。
【0128】
本実施形態にいて、制御部55をさらに設けられても良い。制御部55は、第1状態においてコイル5に第1コイル電流C1を供給し、積層体10に第1電流Jc1を供給する。制御部55は、第2状態においてコイル25に第2コイル電流Cを供給し、積層体10に第1電流Jc1を供給する。
【0129】
(第3の実施形態)
図14(a)~図14(c)は、第3の実施形態に係る磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置を例示する模式的断面図である。
図14(a)に示すように、本実施形態に係る磁気記録再生装置152は、本実施形態に係る磁気記録ヘッド112と、磁気記録媒体80と、を含む。本実施形態においては、第1磁性層11及び第2磁性層12の配置が、磁気記録ヘッド110における配置とは異なる。以下の磁気記録ヘッド112の説明において、磁気記録ヘッド110と同様の部分は、適宜省略される。
【0130】
磁気記録ヘッド112は、磁極20と、シールド20sと、積層体10と、を含む。シールド20sは、例えば、トレーリングシールドである。積層体10は、磁極20とシールド20sとの間に設けられる。積層体10は、第1磁性層11、第2磁性層12及び中間層13を含む。第1磁性層11は、磁極20とシールド20sとの間に設けられる。第2磁性層12は、磁極20からシールド20sに向かう方向と交差する方向(この例では、Z方向)において、第1磁性層11と離れている。中間層13は、第1磁性層11と第2磁性層12との間に設けられ、非磁性である。
【0131】
磁極20は媒体対向面51を有している。媒体対向面51と第1磁性層11との間の距離は、媒体対向面51と第2磁性層12との間の距離よりも長い。例えば、第1磁性層11と磁気記録媒体80との間に、第2磁性層12が位置する。
【0132】
第2磁性層12から第1磁性層11に向かう方向を第1方向D1とする。第1方向D1は、Z方向に対応する。第1磁性層11から第2磁性層12に向かう方向を第2方向D2とする。第2方向D2は、Z方向に対して逆(反平行)である。
【0133】
この例においても、第1磁性層11は、第1方向D1に沿った第1厚さt1と、第1飽和磁束密度Bs1と、を有する。第2磁性層12は、第1方向D1に沿った第2厚さt2と、第2飽和磁束密度Bs2と、を有する。この例でも、第2厚さt2と第2飽和磁束密度Bs2との第2積は、第1厚さt1と第1飽和磁束密度Bs1との第1積よりも大きい。
【0134】
この例では、第1絶縁層17及び第2絶縁層18がさらに設けられている。第1絶縁層17は、磁極20と積層体10との間に設けられる。第2絶縁層18は、シールド20sと積層体10との間に設けられる。
【0135】
この例においても、第2磁性層12から第1磁性層11に向かって電流(第1電流Jc1)が流れる。
【0136】
図14(b)は、第1動作OP1(第1状態)に対応する。第1状態において、磁極20から生じる第1磁極磁界Hg1は、磁極20からシールド20sに向かう方向(+X方向)に沿う成分を有する。積層体10に第1方向D1の第1電流Jc1が流れる。このとき、第1電子流Je1の向きは、第1電流Jc1の向きと逆である。
【0137】
図14(c)は、第2動作OP2(第2状態)に対応する。第2状態において、磁極20から生じる第2磁極磁界Hg2は、シールド20sから磁極20に向かう方向(-X方向)に沿う成分を有する。このときも、積層体10に第1方向D1の第1電流Jc1が流れる。
【0138】
このような動作により、第1磁性層11を薄くしても、良好な高周波磁界Hacが得られる。これにより、記録密度が向上できる磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置が提供できる。
【0139】
本実施形態において、第2積は、第1積の4倍以上であることが好ましい。第2厚さt2は、第1厚さの2倍以上であることが好ましい。
【0140】
例えば、第1厚さt1は、例えば、2nm以上9nm以下であることが好ましい。第1磁性層11の垂直磁気異方性磁界MA1は、例えば、-7kOe以上8kOe以下であることが好ましい。
【0141】
本実施形態において、第1磁性層11は、第1ダンピング定数α1を有する。第2磁性層12は、第2ダンピング定数α2を有する。このとき、第2積と第2ダンピング定数α2との積は、第1積と第1ダンピング定数α1の積の4倍以上16倍以下であることが好ましい。
【0142】
本実施形態において、第1状態において、第1磁性層11は、磁化11mを有する。第2状態において、第1磁性層11は、磁化11mを有する。
【0143】
第1状態及び第2状態において、積層体10は、高周波磁界Hacを発生する。高周波磁界Hacの周波数は、5GHz以上25GHz以下である。
【0144】
積層体10に第1電流Jc1を流しつつX方向の成分を有する第3磁界を印加したときに、第1磁性層11と第2磁性層12との間の電気抵抗は、第3磁界の強度とともに上昇する。
【0145】
本実施形態において、コイル25が設けられても良い。第1状態においてコイル25に第1コイル電流C1が供給されて磁極20から、第1磁極磁界Hg1が発生する。第2状態においてコイル25に第2コイル電流C2が供給されて、磁極20から第2磁極磁界Hg2が発生する。
【0146】
本実施形態にいて、制御部55をさらに設けられても良い。制御部55は、第1状態においてコイル5に第1コイル電流C1を供給し、積層体10に第1電流Jc1を供給する。制御部55は、第2状態においてコイル25に第2コイル電流Cを供給し、積層体10に第1電流Jc1を供給する。
【0147】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、磁気記憶装置に係る。本実施形態に係る磁気記憶装置は、第1~第3の実施形態のいずれか、及び、その変形の磁気記録ヘッドと、磁気記録媒体80と、を含む。磁気記録媒体80は、磁極20により情報が記録される。制御部55がさらに設けられても良い。
【0148】
制御部55は、第1動作OP1及び第2動作OP2を実施する。第1動作OP1及び第2動作OP2においは、制御部55は、積層体10に第1電流Jc1を供給する。
【0149】
本実施形態において、磁気記録ヘッドは、コイル25をさらに含む。制御部55は、第1動作OP1において、コイル25に第1コイル電流C1を供給して磁極20から第1磁極磁界Hg1を発生させる。制御部55は、第2動作OP2において、コイル25に第2コイル電流C2を供給して磁極20から第2磁極磁界Hg2を発生させる。
【0150】
以下では、磁気記録ヘッド110が用いられる場合について、説明する。
図15は、第4の実施形態に係る磁気記録再生装置の一部を例示する模式的斜視図である。
図15は、磁気記録ヘッドが搭載されるヘッドスライダを例示している。
磁気記録ヘッド110は、ヘッドスライダ3に搭載される。ヘッドスライダ3には、例えばAl/TiCなどが用いられる。ヘッドスライダ3は、磁気記録媒体80の上を、浮上または接触しながら、磁気記録媒体80に対して相対的に運動する。
【0151】
ヘッドスライダ3は、例えば、空気流入側3Aと空気流出側3Bとを有する。磁気記録ヘッド110は、ヘッドスライダ3の空気流出側3Bの側面などに配置される。これにより、ヘッドスライダ3に搭載された磁気記録ヘッド110は、磁気記録媒体80の上を浮上または接触しながら磁気記録媒体80に対して相対的に運動する。
【0152】
図16は、実施形態に係る磁気記録再生装置を例示する模式的斜視図である。
図17(a)及び図17(b)は、磁気記録再生装置の一部を例示する模式的斜視図である。
図16に示したように、実施形態に係る磁気記録再生装置150は、ロータリーアクチュエータを用いた形式の装置である。記録用媒体ディスク180は、スピンドルモータ4に装着され、駆動装置制御部からの制御信号に応答するモータにより矢印Aの方向に回転する。本実施形態に係る磁気記録再生装置150は、複数の記録用媒体ディスク180を備えても良い。磁気記録再生装置150は、記録媒体181を含んでもよい。例えば、磁気記録再生装置150は、ハイブリッドHDD(Hard Disk Drive)である。記録媒体181は、例えば、SSD(Solid State Drive)である。記録媒体181には、例えば、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリが用いられる。
【0153】
記録用媒体ディスク180に格納する情報の記録再生を行うヘッドスライダ3は、既に説明したような構成を有し、薄膜状のサスペンション154の先端に取り付けられている。ここで、ヘッドスライダ3の先端付近に、例えば、既に説明した実施形態に係る磁気記録ヘッドのいずれかが搭載される。
【0154】
記録用媒体ディスク180が回転すると、サスペンション154による押し付け圧力とヘッドスライダ3の媒体対向面(ABS)で発生する圧力とがつりあい、ヘッドスライダ3の媒体対向面は、記録用媒体ディスク180の表面から所定の浮上量をもって保持される。なお、ヘッドスライダ3が記録用媒体ディスク180と接触するいわゆる「接触走行型」としても良い。
【0155】
サスペンション154は、アーム155(例えばアクチュエータアーム)の一端に接続されている。アーム155は、例えば、駆動コイルを保持するボビン部などを有する。アーム155の他端には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ156が設けられている。ボイスコイルモータ156は、アーム155のボビン部に巻き上げられた駆動コイルと、このコイルを挟み込むように対向して配置された永久磁石及び対向ヨークからなる磁気回路とを含むことができる。サスペンション154は、一端と他端とを有し、磁気記録ヘッドは、サスペンション154の一端に搭載され、アーム155は、サスペンション154の他端に接続されている。
【0156】
アーム155は、軸受部157の上下2箇所に設けられたボールベアリングによって保持され、ボイスコイルモータ156により回転摺動が自在にできるようになっている。その結果、磁気記録ヘッドを記録用媒体ディスク180の任意の位置に移動可能となる。
【0157】
図17(a)は、磁気記録再生装置の一部の構成を例示しており、ヘッドスタックアセンブリ160の拡大斜視図である。
また、図17(b)は、ヘッドスタックアセンブリ160の一部となる磁気記録ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ:HGA)158を例示する斜視図である。
【0158】
図17(a)に示したように、ヘッドスタックアセンブリ160は、軸受部157と、ヘッドジンバルアセンブリ158と、支持フレーム161と、を含む。ヘッドジンバルアセンブリ158は、軸受部157から延びる。支持フレーム161は、軸受部157からHGAと反対方向に延びる。支持フレーム161は、ボイスコイルモータのコイル162を支持する。
【0159】
また、図17(b)に示したように、ヘッドジンバルアセンブリ158は、軸受部157から延びたアーム155と、アーム155から延びたサスペンション154と、を有している。
【0160】
サスペンション154の先端には、ヘッドスライダ3が取り付けられている。そして、ヘッドスライダ3には、実施形態に係る磁気記録ヘッドのいずれかが搭載される。
【0161】
すなわち、実施形態に係る磁気記録ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ)158は、実施形態に係る磁気記録ヘッドと、磁気記録ヘッドが搭載されたヘッドスライダ3と、ヘッドスライダ3を一端に搭載するサスペンション154と、サスペンション154の他端に接続されたアーム155と、を備える。
【0162】
サスペンション154は、信号の記録及び再生用、浮上量調整のためのヒーター用、及び、例えばスピントルク発振子用などのためのリード線(図示しない)を有する。これらのリード線と、ヘッドスライダ3に組み込まれた磁気記録ヘッドの各電極と、が電気的に接続される。
【0163】
また、磁気記録ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の記録及び再生を行う信号処理部190が設けられる。信号処理部190は、例えば、磁気記録再生装置150の一部(図16参照)に設けられる。信号処理部190の入出力線は、ヘッドジンバルアセンブリ158の電極パッドに接続され、磁気記録ヘッドと電気的に結合される。
【0164】
このように、本実施形態に係る磁気記録再生装置150は、磁気記録媒体と、上記の実施形態に係る磁気記録ヘッドと、磁気記録媒体と磁気記録ヘッドとを離間させ、または、接触させた状態で相対的に移動可能とした可動部と、磁気記録ヘッドを磁気記録媒体の所定記録位置に位置合わせする位置制御部と、磁気記録ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の記録及び再生を行う信号処理部と、を備える。
【0165】
すなわち、上記の磁気記録媒体として、記録用媒体ディスク180が用いられる。
上記の可動部は、ヘッドスライダ3を含むことができる。
また、上記の位置制御部は、ヘッドジンバルアセンブリ158を含むことができる。
【0166】
このように、本実施形態に係る磁気記録再生装置150は、磁気記録媒体と、実施形態に係る磁気記録ヘッドアセンブリと、磁気記録ヘッドアセンブリに搭載された磁気記録ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の記録及び再生を行う信号処理部と、を備える。
【0167】
実施形態によれば、記録密度が向上できる磁気記録ヘッド及び磁気記録再生装置が提供される。
【0168】
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0169】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、磁気記録ヘッドに含まれるシールド、磁極、中間層及び絶縁部、並びに、磁気記録再生装置に含まれる磁気記録媒体などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0170】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0171】
その他、本発明の実施の形態として上述した磁気記録再生装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての磁気記録再生装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0172】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0173】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0174】
3…ヘッドスライダ、 3A…空気流入側、 3B…空気流出側、 4…スピンドルモータ、 10…積層体、 11…第1磁性層、 11m…磁化、 12…第2磁性層、 12m…磁化、 13…中間層、 15…第1非磁性層、 16…第2非磁性層、 17…第1絶縁層、 18…第2絶縁層、 20…磁極、 20s…シールド、 25…コイル、 51…媒体対向面、 55…制御部、 80…磁気記録媒体、 84…磁化、 85…媒体移動方向、 110、110a、111、112、119x~119y…磁気記録ヘッド、 150、150a、151、152、…磁気記録再生装置、 154…サスペンション、 155…アクチュエータアーム、 156…ボイスコイルモータ、 157…軸受部、 158…ヘッドジンバルアセンブリ、 160…ヘッドスタックアセンブリ、 161…支持フレーム、 162…コイル、 180…記録用媒体ディスク、 181…記録媒体、 190…信号処理部、 A…矢印、 C1、C2…第1、第2コイル電流、 D1、D2…第1、第2方向、 Hac…高周波磁界、 Hacn…強度、 Hg1、Hg2…第1、第2磁極磁界、 Hgap…ギャップ磁界、 Hr1、Hr2…第1、第2記録磁界、 J…電流密度、 J80%…80%電流密度、 Jc1、Jc2…第1、第2電流、 Je1、Je2…第1、第2電子流、 Js…発振開始電流密度、 M1…向き、 MA1…垂直磁気異方性磁界、 OP1、OP2…第1、第2動作、 R1…抵抗、 R2/1…比、 Rt…比、 RtBs…比、 f1…周波数、 g20…ギャップ長、 t1~t3…第1~第3厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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