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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】車両用構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/04 20060101AFI20220513BHJP
   B60R 19/24 20060101ALI20220513BHJP
   B62D 65/16 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
B60R19/04 M
B60R19/24 N
B62D65/16 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018004391
(22)【出願日】2018-01-15
(65)【公開番号】P2019123322
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(72)【発明者】
【氏名】橋村 徹
(72)【発明者】
【氏名】山川 大貴
(72)【発明者】
【氏名】前田 康裕
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 憲一
(72)【発明者】
【氏名】内藤 純也
(72)【発明者】
【氏名】巽 明彦
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/065231(WO,A1)
【文献】特開2007-222877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/04
B60R 19/24
B62D 65/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びる第1部材と、
前後方向に延び、前記第1部材に対して前後方向に挿入される第2部材と、
前記第1部材の車幅方向の端部に前記第1部材と並行して配置され、前記端部に接合される第3部材と、を備え、
前記第3部材は、少なくとも前記第1部材より外側に延伸しており、
前記第1部材及び前記第3部材は、前記第2部材が挿入される側で、物理的に締結されている、車両用構造体。
【請求項2】
前記第3部材は、前後方向において、前記第2部材に重なるように配置されている、請求項1記載の車両用構造体。
【請求項3】
前記第3部材の断面形状は、矩形状を有しており、
前記第3部材と前記第1部材との重複長さは、前記第3部材の断面の短辺側長さの3倍以上となっている、請求項1又は2に記載の車両用構造体。
【請求項4】
前記第3部材は、前記第1部材の前記端部から前記第1部材の車幅方向内方に向けて前記第1部材に挿入されており、
前記第2部材は、前後方向から前記第1部材及び前記第3部材に挿入され、前記第2部材の前記第1部材及び前記第3部材への挿入部が拡管されて、前記第1部材及び前記第3部材にかしめ接合されている、請求項1~3のいずれか1つに記載の車両用構造体。
【請求項5】
車幅方向に延びる第1部材と、前後方向に延びる第2部材と、車幅方向に延びる第3部材と、を準備し、
前記第3部材を、前記第1部材の車幅方向の端部に前記第1部材と並行して配置して、少なくとも前記第1部材より外側に延伸するよう、前記端部に接合し、
前記第2部材を、前後方向から前記第1部材及び前記第3部材に挿入し、
前記第1部材及び前記第3部材を、前記第2部材が挿入される側で、物理的に締結することを含む、車両用構造体の製造方法。
【請求項6】
前記第3部材を、前記第1部材の車幅方向の端部から前記第1部材の車幅方向内方に向けて前記第1部材に挿入し、
前記第2部材の前記第1部材及び前記第3部材への挿入部を拡管することによって、前記第2部材を前記第1部材及び前記第3部材にかしめ接合することを含む、請求項5記載の車両用構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に用いられる車両用構造体及びその製造方法に関するものであり、特に、自動車等に用いられるバンパー構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の衝突基準が厳しくなりつつあるが、直近で課題となっているものの1つに、自動車の高速走行時にオフセット衝突を受けた場合、自動車及び乗員の被害を低減させるというものがある。具体的には、自動車の車幅に対して所定量の重ね量を有する状態で、バリア治具に自動車を所定の速度で衝突させる、スモールオフセット衝突試験が規定されている。そして、上記試験において、自動車の車幅に対する重ね量の基準が、従来の40%から15%へと強化されるようになり、さらにその衝突速度も従前より、例えば50km/hから64km/hへと高速化されてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-96459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1で開示されているようなバンパー構造体は、通常、主に正面からの衝突荷重に耐えるよう設計されており、上記のような高速度のオフセット衝突に対して十分考慮されたものとなっていない。
【0005】
ここで、上記オフセット荷重に対応するために、単純にバンパー構造体の車幅方向長さを長くすることが考えられる。しかし、例えば、バンパー構造体がアルミ押出材の場合、曲げ長さが長くなる、及び、曲げ曲率が小さくなるという課題のため、車幅方向への延長量には限界がある。また、押出材の断面は車幅方向に一様であるため、端部のみに大きな荷重を負担させるためには、バンパービーム自体を大きく、又は肉厚を厚くして強度を向上させる必要があるが、これにより、バンパー構造体の全体重量が大きくなってしまう。
【0006】
また、バンパー構造体が鋼製のプレス成形品である場合、深くて長い曲げ形状は加工の難易度が高く、また、端部強度を大きく向上させるためには、パッチを当てる等の対応が必要となる。また、バンパー構造体が鋼製のロール成形品である場合には、上述した押出材と同様の課題が生じる。
【0007】
そこで本発明では、簡単な構成でオフセット荷重に対する強度を向上させることができる車両用構造体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様は、車両用構造体であって、車幅方向に延びる第1部材と、
前後方向に延び、前記第1部材に対して前後方向に挿入される第2部材と、
前記第1部材の車幅方向の端部に配置され、前記端部に接合される第3部材と、を備える。
【0009】
前記構成によれば、第1部材の車幅方向の端部に第3部材を接合するという簡単な構成で、オフセット荷重に対する強度を向上させることができる。
【0010】
前記第1態様は、さらに、次のような構成を備えるのが好ましい。
【0011】
(1)前記第3部材は、前後方向において、前記第2部材に重なるように配置されている。
【0012】
前記構成(1)によれば、第3部材が第2部材に重なるように配置されることによって、第1部材の車幅方向の端部の強度をさらに向上させることができる。
【0013】
(2)前記第3部材の断面形状は、矩形状を有しており、
前記第3部材と前記第1部材との重複長さは、前記第3部材の断面の短辺側長さの3倍以上となっている。
【0014】
前記構成(2)によれば、第3部材と第1部材との重複長さを所定以上とすることによって、第1部材と第3部材との接合強度を向上させることができる。
【0015】
(3)前記第3部材は、前記第1部材の前記端部から前記第1部材の車幅方向内方に向けて前記第1部材に挿入されており、
前記第2部材は、前後方向から前記第1部材及び前記第3部材に挿入され、前記第2部材の前記第1部材及び前記第3部材への挿入部が拡管されて、前記第1部材及び前記第3部材にかしめ接合されている。
【0016】
前記構成(3)によれば、第2部材の挿入部を拡管して、第2部材を第1部材及び第3部材にかしめ接合することによって、第1部材、第2部材及び第3部材の接合部の強度を向上させることができる。
【0017】
本発明の第2態様は、車両用構造体の製造方法であって、車幅方向に延びる第1部材と、前後方向に延びる第2部材と、車幅方向に延びる第3部材と、を準備し、
前記第3部材を、前記第1部材の車幅方向の端部に配置して前記端部に接合し、
前記第2部材を、前後方向から前記第1部材及び前記第3部材に挿入することを含む。
【0018】
前記構成によれば、オフセット荷重に対する強度を向上させた車両用構造体を製造することができる。
【0019】
前記第2態様は、さらに、次のような構成を備えるのが好ましい。
【0020】
(4)前記第3部材を、前記第1部材の車幅方向の端部から前記第1部材の車幅方向内方に向けて前記第1部材に挿入し、
前記第2部材の前記第1部材及び前記第3部材への挿入部を拡管することによって、前記第2部材を前記第1部材及び前記第3部材にかしめ接合することを含む。
【0021】
前記構成(4)によれば、第1部材、第2部材及び第3部材の接合部の強度を向上させた車両用構造体を製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、簡単な構成でオフセット荷重に対する強度を向上させることができる車両用構造体及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用構造体の水平断面図。
図2図1においてゴム及び押子を除いた水平断面図。
図3図2のIII-III断面図。
図4】変形例を示す、図3と同様の図。
図5図1の車両用構造体の一部の斜視図。
図6図4の一部透視図。
図7】ゴムによりバンパーステイを拡管した状態の水平断面図。
図8】ゴムの圧縮を解除した状態の水平断面図。
図9】バンパービームが2つの管体が接続されて構成される変形例の車両用構造体の一部の斜視図。
図10図9の一部透視図。
図11図9の変形例の車両用構造体の一部の斜視図。
図12図11の一部透視図。
図13図9の変形例の車両用構造体の一部の斜視図。
図14図13の一部透視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用構造体90の水平断面図であり、本実施形態では、車両用構造体90は、バンパー構造体であり、車両の車幅方向はX方向に対応し、車両の前後方向はY方向に対応する。
【0026】
図1に示されるように、車両用構造体90は、車幅方向(X方向)に延びる第1部材(バンパービーム)1と、車両の前後方向(Y方向)に延び、バンパービーム1にY方向に挿入される第2部材(バンパーステイ)2、3と、を備えている。バンパーステイ2、3は、バンパービーム1を車両骨格(図示せず)に接続するようになっている。
【0027】
バンパービーム1は、中空形状を有し、垂直断面が矩形状となっている。バンパービーム1は、車両に取り付けられた際前方側に位置する前壁11と、前壁11と平行に配置され、後方側に位置する後壁12と、前壁11の車幅方向両端部から車幅方向外方へ傾斜して延びる2つの前方傾斜壁13、14と、前方傾斜壁13、14と平行に配置され、後壁12の車幅方向両端部から車幅方向外方へ傾斜して延びる2つの後方傾斜壁15、16と、を備えている。
【0028】
後方傾斜壁15は、バンパーステイ2が挿入される孔部15aを有し、後方傾斜壁16は、バンパーステイ3が挿入される孔部16aを有している。
【0029】
バンパーステイ2、3は、バンパービーム1に挿入される挿入部として中空形状を有する管部21、31を有し、バンパービーム1にかしめ接合される。かしめ接合の一例としては、バンパーステイ2、3の管部21、31に挿入された弾性体(ゴム)80を押子81によってY方向に圧縮し、ゴム80を圧縮方向に直交する方向に膨張させて、バンパーステイ2、3の管部21、31を拡管する。バンパーステイ2、3は拡管することにより、バンパービーム1にかしめ接合される。
【0030】
バンパービーム1及びバンパーステイ2、3はそれぞれ、アルミニウム合金の押出材でできている。
【0031】
ゴム80の材質は、例えば、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、CNRゴム(クロロプレンゴム+ニトリルゴム)、又はシリコンゴムのいずれかが用いられることが好ましい。また、ゴム80の硬度は、ショアAで30以上であることが好ましい。
【0032】
押子81は、プレス装置(図示せず)に取り付けられており、このプレス装置によって駆動されることで、ゴム80をY方向に圧縮できる。押子81は、ゴム80を押圧する部分として凸部81aを有しており、凸部81aの端面である押圧面81bは、凸方向(Y方向)に対して垂直な平坦面を有している。
【0033】
図2は、図1においてゴム80及び押子81を除いた水平断面図である。図1及び図2に示されるように、車両用構造体10はさらに、パンパービーム1のX方向の端部1a、1bに配置され、端部1a、1bに接合される第3部材(補強部材)4、5と、を備えている。補強部材4は、中空形状を有し、垂直断面が矩形状となっている。補強部材4は、バンパービーム1の端部1aから、バンパービーム1の車幅方向内方に向けて、バンパービーム1に挿入されており、バンパービーム1の端部1aの端面からX方向外方に突出するように、端部1aに接合されている。
【0034】
補強部材5は、中空形状を有し、垂直断面が矩形状となっている。補強部材5は、バンパービーム1の端部1bから、バンパービーム1の車幅方向内方に向けて、バンパービーム1に挿入されており、バンパービーム1の端部1bの端面からX方向外方に突出するように、端部1bに接合されている。
【0035】
補強部材4は、Y方向から見て、バンパーステイ2に重なるように、バンパービーム1に挿入されている。同様に、補強部材5は、Y方向から見て、バンパーステイ3に重なるように、バンパービーム1に挿入されている。したがって、バンパーステイ2、3が、バンパーステイ2、3の管部21、31に挿入されたゴム80により拡管する際、バンパーステイ2は補強部材4を介してバンパービーム1にかしめ接合され、バンパーステイ3は補強部材5を介してバンパービーム1にかしめ接合される。補強部材4は、バンパーステイ2が挿入される孔部4aを有しており、補強部材5は、バンパーステイ3が挿入される孔部5aを有している。
【0036】
バンパーステイ2、3は、X方向に延びる座部2a、3aを有しており、座部2a、3aには、バンパーステイ2、3、バンパービーム1の端部1a、1b及び補強部材4、5を結合する固定ボルト91が挿通する挿通孔2b、3bが設けられている。固定ボルト91によって、バンパーステイ2に対するバンパービーム1の端部1a及び補強部材4の位置が固定され、また、バンパーステイ3に対するバンパービーム1の端部1b及び補強部材5の位置が固定される。
【0037】
図3は、図2のIII-III断面図である。図3に示されるように、バンパービーム1の端部1bと補強部材5との間には、接着剤92が配置される。バンパービーム1の材料と補強部材5の材料とが異種部材である場合、異種部材間の電位差腐食を考慮して、絶縁材である接着剤を配置することが好ましい。また、バンパービーム1の材料と補強部材5の材料とが同材である場合も、隙間腐食を考慮して、絶縁材である接着剤を配置することが好ましい。なお、バンパービーム1の端部1aと補強部材4との間にも、上記と同様の構成が設けられる。
【0038】
図4は、上記実施形態の変形例を示す、図3と同様の図である。図4に示されるように、バンパービーム1の端部1bの内面には、垂直断面において、内方に凹むキー溝部1b1が形成されてもよい。その場合、補強部材5において、キー溝部1b1に対向する位置には、キー溝部1b1に係合する突部5bが形成される。バンパービーム1の端部1bのキー溝部1bに補強部材5の突部5bが係合することによって、端部1bに対する補強部材5の周方向の位置決めを行うことができる。さらに、端部1bをY方向に曲げることによって、端部1bに対する補強部材5のX方向の位置決めも行うことができる。また、図3と同様に、バンパービーム1の端部1bと補強部材5との間には、接着剤92が配置される。なお、バンパービーム1の端部1aと補強部材4との間にも、上記と同様の構成が設けられる。
【0039】
図5は、図1の車両用構造体の一部の斜視図であり、図6は、図4の一部透視図である。図5及び図6に示されるように、補強部材4がバンパービーム1に挿入されることによる、補強部材4とバンパービーム1との重複量Lは、補強部材4の垂直断面の短辺側長さSの3倍以上である。同様に、補強部材5がバンパービーム1に挿入されることによる、補強部材5とバンパービーム1との重複量は、補強部材5の垂直断面の短辺側長さの3倍以上となっている。
【0040】
[車両用構造体の製造方法]
次に、車両用構造体90を製造する製造方法について、図2図7及び図8を主に参照して説明する。図7は、ゴム80によりバンパーステイ2、3を拡管した状態の水平断面図であり、図8は、ゴム80の圧縮を解除した状態の水平断面図である。
【0041】
まず、図2に示されるように、バンパービーム1、バンパーステイ2、3、補強部材4、5及びゴム80を準備する。そして、補強部材4を、バンパービーム1の端部1aから、バンパービーム1の車幅方向内方に向けて、バンパービーム1に挿入し、補強部材5を、バンパービーム1の端部1bから、バンパービーム1の車幅方向内方に向けて、バンパービーム1に挿入する。
【0042】
次に、バンパービーム1の端部1aに形成された孔部15aにバンパーステイ2の管部21を挿入する。この際、バンパーステイ2の管部21は、補強部材4に形成された孔部4aを貫通する。同様に、バンパービーム1の端部1bに形成された孔部16aにバンパーステイ3の管部31を挿入する。この際、バンパーステイ3の管部31は、補強部材5に形成された孔部5aを貫通する。そして、固定ボルト91をバンパーステイ2の挿通孔2b、3bに挿入し、バンパーステイ2に対するバンパービーム1の端部1a及び補強部材4の位置を固定し、バンパーステイ3に対するバンパービーム1の端部1b及び補強部材5の位置を固定する。ここで、バンパーステイ2、3の管部21、31を拡管させてバンパービーム1とかしめ接合する場合、固定ボルト91及びバンパーステイ2、3の座部2a、3a(固定ボルト91が挿通する挿通孔2b、3bが設けられている)を不要とすることもできる。その後、バンパーステイ2、3の管部21、31内にゴム80を挿入する。
【0043】
ゴム80の挿入後、図7に示されるように、押子81の凸部をバンパーステイ2、3の管部21、31内に挿入し、ゴム80をY方向に圧縮して、圧縮方向に直交する方向に膨張させ、それによって、バンパーステイ2、3の管部21、31を拡管する。バンパーステイ2、3は、拡管により、補強部材4、5及びバンパービーム1にかしめ接合される。
【0044】
バンパーステイ2、3をかしめ接合した後、図8に示されるように、押子81によるゴム80の圧縮を解除する。圧縮力が除去されたゴム80は、自身の弾性力により元の形状に復元する。このため、バンパーステイ2、3から容易にゴム80を取り出すことができる。
【0045】
バンパーステイ2、3の管部21、31に挿入される部材は、ゴム80に限定されず、例えば、内部に気体又は液体が封入された流体封入部材をゴムの代わりに用いてもよい。圧縮力の付与により外側に膨張し、バンパーステイの管部を拡管できるものであればよい。なお、圧縮力の付与により外側に膨張する際、ゴムのように均等に変形する部材であることが好ましい。
【0046】
前記構成の車両用構造体90によれば、次のような効果を発揮できる。
【0047】
(1)バンパービーム1の車幅方向の端部1a、1bに補強部材4、5を接合するという簡単な構成で、オフセット荷重に対する強度を向上させた車両用構造体90を提供することができる。
【0048】
(2)前後方向からみて、補強部材4がバンパーステイ2に重なり、補強部材5がバンパーステイ3に重なるように配置されることによって、バンパービーム1の車幅方向の端部1a、1bの強度をさらに向上させることができる。
【0049】
(3)補強部材4、5とバンパービーム1との重複長さLを、所定以上、すなわち、補強部材4、5の垂直断面の短辺側長さSの3倍以上とすることによって、バンパービーム1と補強部材4、5との接合強度を向上させることができる。
【0050】
(4)バンパーステイ2、3の管部21、31を拡管して、バンパーステイ2、3をバンパービーム1及び補強部材4、5にかしめ接合することによって、バンパービーム1、バンパーステイ2、3及び補強部材4、5の接合部の強度を向上させることができる。
【0051】
(5)バンパーステイ2、3の管部21、31は、ゴム80によって拡管される。ここで、ゴム80は等方変形性を有しているので、バンパーステイ2、3の管部21、31を均等に拡管することができる。その結果、バンパーステイ2、3の管部21、31に対する局所的な負荷を軽減でき、管部21、31の局所的な変形を防止できる。このため、ゴム80を用いるかしめ接合は、その他の接合方法に比べて、バンパービーム1、バンパーステイ2、3及び補強部材4、5を高精度に嵌合でき、これらの接合強度を向上させることができる。
【0052】
(6)固定ボルト91によって、バンパーステイ2に対するバンパービーム1の端部1a及び補強部材4の位置を固定し、また、バンパーステイ3に対するバンパービーム1の端部1b及び補強部材5の位置を固定することができる。そして、ゴム80によるバンパーステイ2、3の拡管時においても、バンパーステイ2、3に対するバンパービーム1及び補強部材4、5の位置のずれを防止できる。
【0053】
(7)バンパービーム1の端部1a、1bと補強部材4、5との間には、接着剤92が配置されているので、バンパービーム1と補強部材4、5との間の電位差腐食や隙間腐食を抑制することができる。
【0054】
(変形例)
上記実施形態では、バンパービーム1は1つの管体で構成され、断面形状は、内部に1つの空間を有する形状であり、補強部材4、5はそれに対応してそれぞれ、1つの管体で構成され、断面形状は、内部に1つの空間を有する形状である。しかし、バンパービーム1、補強部材4、5は、上記に限定されるものではなく、複数の管体によって構成されるものでもよい。図9は、バンパービーム1が2つの管体が接続されて構成される変形例の車両用構造体の一部の斜視図であり、図10は、図9の一部透視図である。
【0055】
図9及び図10に示されるように、バンパービーム1は、車幅方向に延びる2つの管体191、192が上下に配置され、管体191と管体192とが接続壁193によって接続されることによって構成されている。それに合わせて、補強部材4は、車幅方向に延びる2つの管体491、492が上下に並んで設けられている。そして、補強部材4の管体491は、バンパービーム1の端部1aから、バンパービーム1の車幅方向内方に向けて、バンパービーム1の管体191に挿入され、補強部材4の管体492は、バンパービーム1の端部1aから、バンパービーム1の車幅方向内方に向けて、バンパービーム1の管体492に挿入される。補強部材5も補強部材4と同様に構成され、バンパービーム1の端部1bから、バンパービーム1の車幅方向内方に向けて同様に挿入される。
【0056】
上記構成によれば、バンパービーム1は、管体191と管体192が接続壁193によって接続されて構成されるので、接続壁193によって、バンパービーム1の構造強度を向上させることができ、その結果、補強部材4、5が挿入されるバンパービーム1の端部1a、1bにおいて、オフセット荷重に対する強度をさらに向上させることができる。
【0057】
図11は、図9の変形例の車両用構造体の一部の斜視図であり、図12は、図11の一部透視図である。図11及び図12に示されるように、バンパーステイ2は、バンパービーム1の後方傾斜壁15に加えて、前方傾斜壁13も貫通するようになっている。同様に、バンパーステイ3は、バンパービーム1の後方傾斜壁16に加えて、前方傾斜壁14も貫通するようになっている。
【0058】
上記構成によれば、バンパーステイ2、3は、バンパービーム1の後方傾斜壁15、16及び前方傾斜壁13、14を貫通するようになっているので、バンパーステイ2、3をかしめることによる、バンパーステイ2、3、補強部材4、5及びバンパービーム1の接合強度を向上させることができる。その結果、補強部材4、5が挿入されるバンパービーム1の端部1a、1bにおいて、オフセット荷重に対する強度をさらに向上させることができる。
【0059】
図13は、図9の変形例の車両用構造体の一部の斜視図であり、図14は、図13の一部透視図である。図13及び図14に示されるように、バンパーステイ2は、バンパービーム1の後方傾斜壁15を貫通し、補強部材4を貫通しないようになっている。同様に、バンパーステイ3は、バンパービーム1の後方傾斜壁16を貫通し、補強部材5を貫通しないようになっている。
【0060】
上記構成によれば、バンパーステイ2、3は、バンパービーム1の後方傾斜壁15、16を貫通し、補強部材4、5を貫通しないので、バンパーステイ2、3の長さを短くすることができ、車両用構造体90の重量を軽減することができる。また、バンパーステイ2、3をバンパービーム1にかしめ接合することによる、バンパービーム1と補強部材4、5との接合への影響を小さくすることができる。
【0061】
図9図14に示されるように、車幅方向に延びる2つの管体191、192が上下に配置され、管体191と管体192とが接続壁193によって接続されることによってバンパービーム1が構成されている場合、断面において上下方向中央部に接続壁193が存在する。このとき、通常、補強部材4、5は、それぞれ2つ設けられることになる。しかし、バンパービーム1の片方の管体のみを補強し、補強部材4、5を、それぞれ1つとすることもできる。また、補強部材4、5を挿入する部分のみ、バンパービーム1の接続壁193を除去し、補強部材4、5をそれぞれ1つとすることもできる。
【0062】
上記実施形態では、補強部材4、5は、バンパービーム1の端部1a、1bに挿入されることによって、端部1a、1bに配置されているが、補強部材の内部にバンパービームの端部が挿入されることによって、補強部材が、バンパービームの端部に配置されてもよい。
【0063】
上記実施形態では、バンパービーム1の両端部1a、1bに補強部材4、5が設けられているが、補強部材は、バンパービーム1のいずれか一端部に設けられてもよい。
【0064】
上記実施形態では、補強部材4、5は、バンパービーム1の端部1a、1bから車幅方向外方に向けて突出するように配置されているが、バンパービーム1の端部1a、1bから突出しないように配置されてもよい。
【0065】
上記実施形態では、バンパービーム1と補強部材4、5とは、バンパーステイ2、3をパンパービーム1にかしめ接合することによって、接合されているが、リベット、溶接、接着剤、キー溝曲げによって接合されてもよい。また、かしめ接合については、上記実施形態では、ゴムかしめによる例を示しているが、ハイドロかしめ、電磁成型かしめにより行われてもよい。
【0066】
上記実施形態では、車両用構造体90としてバンパー構造体を例として説明したが、本発明は、バンパー構造体に限定されず、車両に使用される車両用構造体に広く適用することができる。
【0067】
本発明は、上記実施形態で説明した構成には限定されず、特許請求の範囲に記載した内容を逸脱することなく、当業者が考え得る各種変形例を含むことができる。
【符号の説明】
【0068】
1 バンパービーム
1a 端部
1b 端部
11 前壁
12 後壁
13 前方傾斜壁
14 前方傾斜壁
15 後方傾斜壁
16 後方傾斜壁
2 バンバーステイ
21 管部
3 バンパーステイ
31 管部
4 補強部材
5 補強部材
80 ゴム
81 押子
90 車両用構造体
91 固定ボルト
92 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14