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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】光電変換素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/44 20060101AFI20220513BHJP
   H01L 51/46 20060101ALI20220513BHJP
   H01L 51/48 20060101ALI20220513BHJP
   H01L 51/42 20060101ALI20220513BHJP
【FI】
H01L31/04 112Z
H01L31/04 168
H01L31/04 186
H01L31/08 T
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018090671
(22)【出願日】2018-05-09
(65)【公開番号】P2019197800
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】杉村 博
(72)【発明者】
【氏名】宮西 晋太郎
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0122584(US,A1)
【文献】特表2002-508599(JP,A)
【文献】特開2013-222750(JP,A)
【文献】特開平09-007763(JP,A)
【文献】特開2002-203675(JP,A)
【文献】特開2001-250686(JP,A)
【文献】特開2004-220811(JP,A)
【文献】特開2004-253209(JP,A)
【文献】特開2003-249351(JP,A)
【文献】特開2011-065947(JP,A)
【文献】特開2017-005162(JP,A)
【文献】特開平07-302940(JP,A)
【文献】特開平06-097478(JP,A)
【文献】特開2013-109965(JP,A)
【文献】特開2017-050426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/42-51/56
H01L 31/02-31/119
H01L 31/18-31/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光吸収層及び導電層のうちの一方にホール輸送材料を付着させて、前記ホール輸送材料を含有するホール輸送層を形成する形成工程と、
前記ホール輸送材料の融点以上で且つ120℃以上170℃以下の温度まで、前記ホール輸送層を加熱して、前記ホール輸送層を溶融させる溶融工程と、
溶融した前記ホール輸送層に前記光吸収層及び前記導電層のうちの他方を圧着させながら冷却することにより、前記ホール輸送層を介して前記光吸収層と前記導電層とを接着する接着工程と
を含み、
前記光吸収層が、一般式(1)で表される化合物を含有する、光電変換素子の製造方法。
【化1】
(前記一般式(1)中、Aは有機分子であり、Bは金属原子であり、Xはハロゲン原子である。)
【請求項2】
前記光吸収層及び前記導電層のうちの他方を圧着させる前に、前記ホール輸送材料の融点以上で且つ120℃以上170℃以下の温度まで、前記光吸収層及び前記導電層のうちの他方を加熱する、請求項1に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(1)中、Aはアルキルアミン又はアルキルアンモニウムであり、Bは鉛原子であり、Xはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である、請求項1又は2に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される化合物は、ペロブスカイト結晶構造を有する、請求項1~3の何れか一項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項5】
前記ホール輸送材料は、モノブタジエン構造を有する化合物、又はビスブタジエン構造を有する化合物を含む、請求項1~4の何れか一項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項6】
前記ホール輸送材料は、一般式(2)で表される化合物を含む、請求項1~5の何れか一項に記載の光電変換素子の製造方法。
【化2】
(前記一般式(2)中、
1~R4は、各々独立に、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルキルアミノ基、置換もしくは未置換のアリールアミノ基、又は置換もしくは未置換のアルコキシ基であり、
m、n、r及びsは、各々独立に、0以上5以下の整数であり、但し、m、n、r及びsが何れも0である場合は除き、
mが2以上5以下の整数である場合、複数のR1は同一でも異なっていてもよく、nが2以上5以下の整数である場合、複数のR2は同一でも異なっていてもよく、rが2以上5以下の整数である場合、複数のR3は同一でも異なっていてもよく、sが2以上5以下の整数である場合、複数のR4は同一でも異なっていてもよい。)
【請求項7】
前記ホール輸送材料は、一般式(3)で表される化合物を含む、請求項1~5の何れか一項に記載の光電変換素子の製造方法。
【化3】
(前記一般式(3)中、
11及びR12は、各々独立に、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、又は置換もしくは未置換のアリール基であり、但し、R11及びR12が何れも水素原子である場合は除き、
13は、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリール基、又は置換もしくは未置換のアラルキル基であり、
tは、0又は1を表す。)
【請求項8】
前記ホール輸送層は、リチウム化合物を更に含有する、請求項1~7の何れか一項に記載の光電変換素子の製造方法。
【請求項9】
前記導電層の第1面の上に表面層が設けられ、前記第1面は前記ホール輸送層と接着している前記導電層の第2面とは反対側の面であり、
前記導電層は透明又は半透明であり、前記表面層は透明又は半透明な樹脂フィルムである、請求項1~8の何れか一項に記載の光電変換素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は、例えば、光センサー、複写機、及び太陽電池に用いられている。特に、再生可能エネルギーとして、太陽電池への利用が検討されている。太陽電池としては、例えば、シリコン系太陽電池、CIGS系太陽電池、及びCdTe系太陽電池のような無機系太陽電池が普及している。また、光電変換材料として有機-無機ハイブリッド材料を用いる太陽電池も検討されている。このような太陽電池に利用するための光電変換素子の製造方法としては、蒸着処理、及び封止処理が知られている。
【0003】
特許文献1には、蒸着処理により光電変換素子を製造することが開示されている。詳しくは、特許文献1の実施例には、蒸着法により金を正孔輸送層上に蒸着して、第2電極を作製することが開示されている。
【0004】
特許文献2には、封止処理により光電変換素子を製造することが開示されている。詳しくは、特許文献2の実施例には、光電変換層と正極とを対向するように配置し、光電変換層を囲むように封止部を形成すること、及び溶融状態の正孔輸送層材料を、注入口を介して、封止部の内側に注入することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-27587号公報
【文献】特開2008-159334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の蒸着処理には、真空下で蒸着処理を行う設備が必要となる。また、特許文献2に記載の封止処理には、光電変換素子に封止部を設ける必要があり、光電変換素子の構成の複雑化、及び製造工程の煩雑化を招く。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡便な方法で、高い光電変換効率を有する光電変換素子を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光電変換素子の製造方法は、光吸収層及び導電層のうちの一方にホール輸送材料を付着させて、前記ホール輸送材料を含有するホール輸送層を形成する形成工程と、前記ホール輸送材料の融点以上で且つ120℃以上170℃以下の温度まで、前記ホール輸送層を加熱して、前記ホール輸送層を溶融させる溶融工程と、溶融した前記ホール輸送層に前記光吸収層及び前記導電層のうちの他方を圧着させながら冷却することにより、前記ホール輸送層を介して前記光吸収層と前記導電層とを接着する接着工程とを含む。前記光吸収層が、一般式(1)で表される化合物を含有する。
【0009】
【化1】
【0010】
前記一般式(1)中、Aは有機分子であり、Bは金属原子であり、Xはハロゲン原子である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光電変換素子の製造方法によれば、簡便な方法で、高い光電変換効率を有する光電変換素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る製造方法により製造された光電変換素子を示す断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る光電変換素子の製造方法の一例を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る光電変換素子の製造方法の別の一例を示す図である。
図4】ペロブスカイト結晶構造の基本単位格子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については、同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。本発明は、実施形態に何ら限定されず、本発明の目的の範囲内で適宜変更を加えて実施できる。以下、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。アクリレート及びメタクリレートを包括的に「(メタ)アクリレート」と総称する場合がある。
【0014】
<光電変換素子の製造方法>
本実施形態は、光電変換素子1の製造方法に関する。まず、図1を参照して、本実施形態に係る製造方法により製造された光電変換素子1の概要について説明する。光電変換素子1は、第1導電層3と、電子輸送層4と、光吸収層6と、ホール輸送層7と、第2導電層8とを備える。電子輸送層4は、緻密酸化チタン層51と、多孔質酸化チタン層52とを含む。光電変換素子1は、必要に応じて、基体2と、表面層9とを更に備えていてもよい。光電変換素子1が基体2を備える場合、基体2上に、第1導電層3が備えられる。なお、基体2が円筒形状である場合には、基体2の外周面上に、第1導電層3が備えられる。第1導電層3上に、電子輸送層4が備えられる。電子輸送層4上に、光吸収層6が備えられる。詳しくは、第1導電層3上に、電子輸送層4のうちの緻密酸化チタン層51が備えられる。緻密酸化チタン層51上に、電子輸送層4のうちの多孔質酸化チタン層52が備えられる。多孔質酸化チタン層52上に、光吸収層6が備えられる。光吸収層6の上に、ホール輸送層7が備えられる。ホール輸送層7上に、第2導電層8が備えられる。光電変換素子1が表面層9を備える場合、第2導電層8上に、表面層9が備えられる。詳しくは、第2導電層8の第1面81の上に表面層9が設けられる。第1面81は、第2導電層8の第2面82とは反対側の面である。第2面82は、ホール輸送層7と接着している面である。光電変換素子1の表面層9側から、光L(例えば、太陽光)が入射する。なお、説明を容易にするために、図1では、光電変換素子1の表面層9側から光Lが入射する場合を示している。しかし、表面層9側からではなく、光電変換素子1の基体2側から光Lが入射してもよい。
【0015】
次に、本実施形態に係る光電変換素子1の製造方法について説明する。本実施形態に係る光電変換素子1の製造方法は、ホール輸送層7の形成工程と、ホール輸送層7の溶融工程と、接着工程とを含む。ホール輸送層7の形成工程において、光吸収層6及び導電層のうちの一方にホール輸送材料を付着させて、ホール輸送材料を含有するホール輸送層7を形成する。ホール輸送材料を付着させる導電層が、第2導電層8に相当する。ホール輸送層7の溶融工程において、ホール輸送材料の融点以上で且つ120℃以上170℃以下の温度まで、ホール輸送層7を加熱して、ホール輸送層7を溶融させる。接着工程において、溶融したホール輸送層7に光吸収層6及び第2導電層8のうちの他方を圧着させながら冷却することにより、ホール輸送層7を介して光吸収層6と第2導電層8とを接着する。光吸収層6は、後述する一般式(1)で表される化合物を含有する。以下、「一般式(1)で表される化合物」を、単に「化合物(1)」と記載することがある。本実施形態に係る光電変換素子1の製造方法は、以下の第1~第5の利点を有する。
【0016】
第1の利点を説明する。本実施形態に係る製造方法では、溶融したホール輸送層7を介して光吸収層6と第2導電層8とを接着させる。このため、蒸着処理によって、ホール輸送層上に第2導電層を形成する必要がなく、第2導電層を形成するための真空蒸着設備を必要としない。よって、本実施形態に係る製造方法によれば、簡便な方法で、高い光電変換効率を有する光電変換素子1を製造できる。
【0017】
第2の利点を説明する。本実施形態に係る製造方法では、溶融したホール輸送層7に光吸収層6及び第2導電層8のうちの他方を圧着させながら冷却することにより、ホール輸送層7を介して光吸収層6と第2導電層8とを接着させる。このため、光吸収層と第2導電層との外周部を囲むように封止部を形成し、溶融状態の正孔輸送材料を封止部の内側に注入する必要がない。よって、本実施形態に係る製造方法によれば、光電変換素子1の構成の複雑化及び製造工程の煩雑化を招くことなく、簡便な方法で、高い光電変換効率を有する光電変換素子1を製造できる。
【0018】
第3の利点を説明する。本実施形態に係る製造方法では、ホール輸送材料の融点以上で且つ120℃以上170℃以下の温度まで、ホール輸送層7を加熱して、ホール輸送層7を溶融させる。形成工程で一度形成されたホール輸送層7を溶融工程で溶融させることにより、光吸収層6及び第2導電層8のうちの他方に対するホール輸送層7の接着強度を高めることができる。
【0019】
第4の利点を説明する。本実施形態に係る製造方法では、ホール輸送材料の融点以上で且つ120℃以上170℃以下の温度まで、ホール輸送層7を加熱して、ホール輸送層7を溶融させる。加熱温度がホール輸送材料の融点以上で且つ120℃以上170℃以下の温度であることから、加熱温度が高くなり過ぎない。このため、加熱により光電変換素子1の成分(より具体的には、光吸収層6に含有される化合物(1)等)が劣化することを抑制できる。
【0020】
第5の利点を説明する。本実施形態に係る製造方法では、光吸収層6及び導電層のうちの一方にホール輸送材料を付着させて、ホール輸送材料を含有するホール輸送層7を形成する。形成工程でホール輸送層7を一度形成することにより、ホール輸送層7が溶媒を実質的に含有していない状態となる。ホール輸送層7に溶媒が残存した状態で、ホール輸送層7に光吸収層6及び第2導電層8のうちの他方を圧着した場合には、溶媒が揮発して光電変換素子1内に気泡が発生する。形成工程でホール輸送層7を一度形成することにより、気泡を発生させることなく、好適に光電変換素子1を製造できる。
【0021】
本実施形態に係る光電変換素子1の製造方法の例としては、第1の好適な方法、及び第2の好適な方法が挙げられる。第1の好適な方法では、ホール輸送層7の形成工程において、光吸収層6及び第2導電層8のうち、第2導電層8にホール輸送材料を付着させる。第2の好適な方法では、ホール輸送層7の形成工程において、光吸収層6及び第2導電層8のうち、光吸収層6にホール輸送材料を付着させる。
【0022】
以下、図2を参照して、第1の好適な方法について説明する。まず、第1積層体11と、第2積層体12とを準備する。第1積層体11は、基体2と、第1導電層3と、電子輸送層4と、光吸収層6とを、記載された順に備えている。必要に応じて基体2は省略されてもよく、第1積層体11は、第1導電層3と、電子輸送層4と、光吸収層6とを少なくとも備えていればよい。第2積層体12は、表面層9と、第2導電層8とを、記載された順に備えている。必要に応じて表面層9は省略されてもよく、第2積層体12は、第2導電層8を少なくとも備えていればよい。ホール輸送層7の形成工程において、第2積層体12が有する第2導電層8に、ホール輸送材料を付着させて、ホール輸送材料を含有するホール輸送層7を形成する。ホール輸送層7の溶融工程において、ホール輸送材料の融点以上で且つ120℃以上170℃以下の温度まで、ホール輸送層7を加熱して、ホール輸送層7を溶融させる。接着工程において、溶融したホール輸送層7に、第1積層体11が有する光吸収層6を圧着させながら冷却することにより、ホール輸送層7を介して光吸収層6と第2導電層8とを接着する。このようにして、光電変換素子1が製造される。
【0023】
以下、図3を参照して、第2の好適な方法について説明する。まず、第1積層体11と、第2積層体12とを準備する。ホール輸送層7の形成工程において、第1積層体11が有する光吸収層6に、ホール輸送材料を付着させて、ホール輸送材料を含有するホール輸送層7を形成する。ホール輸送層7の溶融工程において、ホール輸送材料の融点以上で且つ120℃以上170℃以下の温度まで、ホール輸送層7を加熱して、ホール輸送層7を溶融させる。接着工程において、溶融したホール輸送層7に、第2積層体12が有する第2導電層8を圧着させながら冷却することにより、ホール輸送層7を介して光吸収層6と第2導電層8とを接着する。このようにして、光電変換素子1が製造される。
【0024】
本実施形態に係る光電変換素子1の製造方法は、既に述べたように、ホール輸送層7の形成工程と、ホール輸送層7の溶融工程と、接着工程とを含む。本実施形態に係る光電変換素子1の製造方法は、必要に応じて、第1導電層3の準備工程、電子輸送層形成工程、光吸収層形成工程、及び第2導電層8の準備工程を更に含んでいてもよい。なお、第1導電層3の準備工程、電子輸送層形成工程、及び光吸収層形成工程を通じて、第1積層体11が形成される。また、第2導電層8の準備工程を通じて、第2積層体12が形成される。以下、各工程について説明する。
【0025】
(第1導電層の準備工程)
第1導電層3の準備工程において、基体2上に、第1導電層3を形成する。基体2が絶縁材料である場合には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、及びメッキ法のような方法によって、第1導電層3を基体2上に形成する。基体2が導電性材料である場合には、基体2が第1導電層3を兼ねることから、第1導電層3の準備工程を省略することができる。この場合、基体2を、基体2を兼ねる第1導電層3として使用することができる。また、第1導電層3を備える基体2として、市販品を使用する場合には、第1導電層3の準備工程を省略することができる。
【0026】
(電子輸送層形成工程)
電子輸送層形成工程において、第1導電層3の上に、電子輸送層4を形成する。電子輸送層形成工程は、緻密酸化チタン層形成工程と、多孔質酸化チタン層形成工程とを含む。
【0027】
緻密酸化チタン層形成工程において、第1導電層3上に、緻密酸化チタン層51を形成する。例えば、チタンキレート化合物を含有する緻密酸化チタン層用塗布液を第1導電層3上に塗布し、焼成を行うことによって、緻密酸化チタン層51を形成する。緻密酸化チタン層用塗布液を第1導電層3上に塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スクリーン印刷法、キャスト法、浸漬塗布法、ロールコート法、スロットダイ法、スプレーパイロリシス法、及びエアロゾルデポジション法が挙げられる。焼成後に、緻密酸化チタン層51を、四塩化チタンの水溶液に浸してもよい。これにより、緻密酸化チタン層51の緻密性を増すことができる。
【0028】
多孔質酸化チタン層形成工程において、緻密酸化チタン層51上に、多孔質酸化チタン層52を形成する。例えば、チタンキレート化合物を含有する多孔質酸化チタン層用塗布液を緻密酸化チタン層51上に塗布し、焼成を行うことによって、多孔質酸化チタン層52を形成できる。多孔質酸化チタン層用塗布液に有機バインダーが含有される場合には、焼成によって、有機バインダーを消失させることができる。多孔質酸化チタン層用塗布液を緻密酸化チタン層51に塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スクリーン印刷法、キャスト法、浸漬塗布法、ロールコート法、スロットダイ法、スプレーパイロリシス法、及びエアロゾルデポジション法が挙げられる。
【0029】
多孔質酸化チタン層52の細孔径及び空孔率(空隙率)は、例えば、酸化チタン粒子の粒子径を変更すること、並びに有機バインダーの種類及び添加量を変更することによって調整することができる。
【0030】
多孔質酸化チタン層用塗布液に有機バインダーが含有される場合、このような有機バインダーとしては、エチルセルロース、又はアクリル樹脂が好ましい。アクリル樹脂は、低温分解性に優れ、低温で焼成を行う場合であっても多孔質酸化チタン層52内に有機物が残存し難い。アクリル樹脂は、300℃程度の温度で分解することが好ましい。アクリル樹脂の具体例としては、少なくとも1種の(メタ)アクリルモノマーの重合体が挙げられる。アクリル樹脂の重合に使用可能な(メタ)アクリルモノマーの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びポリオキシアルキレン構造を有する(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。
【0031】
(光吸収層形成工程)
光吸収層形成工程において、電子輸送層4上に光吸収層6を形成する。詳しくは、電子輸送層4のうちの多孔質酸化チタン層52上に、光吸収層6を形成する。光吸収層6は、化合物(1)を含有する。光吸収層6を形成する方法としては、例えば、1段階法、及び2段階法が挙げられる。
【0032】
1段階法において、式「AX」で表される化合物(以下、化合物(AX)と記載する)を含有する溶液と、式「BX2」で表される化合物(以下、化合物(BX2)と記載する)を含有する溶液とを混合して、混合液を得る。式「AX」及び式「BX2」中のA、B、及びXは、各々、一般式(1)中のA、B、及びXと同義である。この混合液を多孔質酸化チタン層52上に塗布して、乾燥させることにより、一般式「ABX3」で表される化合物(1)を含有する光吸収層6が形成される。混合液を多孔質酸化チタン層52上に塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スクリーン印刷法、及び浸漬塗布法が挙げられる。
【0033】
2段階法において、化合物(BX2)を含有する溶液を多孔質酸化チタン層52上に塗布して、塗布膜を形成する。この塗布膜上に、化合物(AX)を含有する溶液を塗布して、塗布膜中で化合物(BX2)と化合物(AX)とを反応させる。次いで、塗布膜を乾燥させることにより、一般式「ABX3」で表される化合物(1)を含有する光吸収層6が形成される。化合物(BX2)を含有する溶液を多孔質酸化チタン層52上に塗布する方法、及び化合物(AX)を含有する溶液を塗布膜上に塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、スクリーン印刷法、及び浸漬塗布法が挙げられる。このような光吸収層形成工程を通じて、光吸収層6を備える第1積層体11が形成される。
【0034】
(第2導電層の準備工程)
第2導電層8の準備工程において、表面層9上に、第2導電層8を形成する。表面層9を備える第2導電層8として、市販品を使用する場合には、第2導電層8の準備工程を省略することができる。このような第2導電層8の準備工程を通じて、第2導電層8を備える第2積層体12が形成される。
【0035】
(ホール輸送層の形成工程)
ホール輸送層7の形成工程において、光吸収層6及び第2導電層8のうちの一方にホール輸送材料を付着させて、ホール輸送材料を含有するホール輸送層7を形成する。
【0036】
ホール輸送層形成工程の一具体例を説明する。粉末状のホール輸送材料を、光吸収層6及び第2導電層8のうちの一方に散布する。散布後、ホール輸送材料の融点までホール輸送材料を加熱して、ホール輸送層7を形成する。粉末状のホール輸送材料を散布することで、溶媒を含有しないホール輸送層7を形成できる。これにより、溶媒の揮発による気泡の発生を抑制できる。なお、ホール輸送材料を加熱する温度を、ホール輸送材料の融点以上で且つ120℃以上170℃以下の温度とすることにより、ホール輸送層7の形成工程と、後述するホール輸送層7の溶融工程とを同時に行うことができる。
【0037】
ホール輸送層形成工程の別の具体例を説明する。ホール輸送材料と溶媒とを含有するホール輸送層用塗布液を調製する。ホール輸送層用塗布液を、光吸収層6及び第2導電層8のうちの一方に塗布して、乾燥させることにより、ホール輸送層7を形成する。溶媒の揮発による気泡の発生を抑制するために、形成されたホール輸送層7は、溶媒を実質的に含有していないことが好ましい。ホール輸送層用塗布液を、光吸収層6に塗布して乾燥させる場合には、ホール輸送層用塗布液に含有される溶媒は、化合物(1)の結晶構造を乱さない溶媒であることが好ましい。ホール輸送層用塗布液に含有される溶媒の例としては、クロロベンゼン及びトルエンが挙げられる。ホール輸送層用塗布液を塗布する方法としては、例えば、浸漬塗布法、スプレー塗布法、及びスライドホッパー塗布法が挙げられる。
【0038】
(ホール輸送層の溶融工程)
ホール輸送層7の溶融工程において、ホール輸送材料の融点以上で且つ120℃以上170℃以下の温度まで、ホール輸送層7を加熱して、ホール輸送層7を溶融させる。ホール輸送層7を加熱する装置としては、例えば、オーブン、加熱乾燥機、及びホットプレートが挙げられる。ホール輸送材料の融点は、例えば、目視型の融点測定器(ヤマト科学株式会社製「MP-21型」など)を用いて測定することができる。
【0039】
(接着工程)
接着工程において、溶融したホール輸送層7に、光吸収層6及び第2導電層8のうちの他方を圧着させながら冷却することにより、ホール輸送層7を介して光吸収層6及び第2導電層8を接着する。図2に示す第1の好適な方法を採用する場合には、第2積層体12上に形成されたホール輸送層7と、第1積層体11が有する光吸収層6とが対向するように、第2積層体12と第1積層体11とを重ね合わせる。ホール輸送層7を介して重ね合わせた第2積層体12と第1積層体11とを圧着しながら、徐々に冷却する。図3に示す第2の好適な方法を採用する場合には、第1積層体11上に形成されたホール輸送層7と、第2積層体12が有する第2導電層8とが対向するように、第2積層体12と第1積層体11とを重ね合わせる。ホール輸送層7を介して重ね合わせた第2積層体12と第1積層体11とを圧着しながら、徐々に冷却する。
【0040】
光吸収層6及び第2導電層8のうちの他方を圧着させる前に、ホール輸送材料の融点以上で且つ120℃以上170℃以下の温度まで、光吸収層6及び第2導電層8のうちの他方を加熱することが好ましい。接着前に、光吸収層6及び第2導電層8のうちの一方だけでなく他方も加熱することにより、ホール輸送層7と他方とを圧着させたときに、ホール輸送層7が冷却し難くなり、ホール輸送層7の溶融状態を長く保つことができる。これにより、ホール輸送層7を介して光吸収層6及び第2導電層8を更に良好に接着することができる。図2に示す第1の好適な方法を採用する場合には、ホール輸送層7が形成された第2積層体12だけでなく、光吸収層6を有する第1積層体11も圧着前に加熱することが好ましい。図3に示す第2の好適な方法を採用する場合には、ホール輸送層7が形成された第1積層体11だけでなく、第2導電層8を有する第2積層体12も圧着前に加熱することが好ましい。
【0041】
なお、第1導電層3の準備工程、電子輸送層形成工程、光吸収層形成工程、第2導電層8の準備工程、ホール輸送層7の形成工程、ホール輸送層7の溶融工程、及び接着工程は、何れも、常圧下で行うことができる。ホール輸送層7の形成工程、溶融工程、及び接着工程において、光電変換素子1は封止部を備えていないことが好ましい。但し、製品流通時及び製品使用時の酸素及び湿度の影響をより低減させるために、光電変換素子1が形成された後に、光吸収層6の周り(横面)を封止部で覆ってもよい。以上、本実施形態に係る光電変換素子1の製造方法について、説明した。
【0042】
<光電変換素子>
次に、本実施形態に係る製造方法により製造された光電変換素子1に備えられる基体2、第1導電層3、電子輸送層4、緻密酸化チタン層51、多孔質酸化チタン層52、光吸収層6、ホール輸送層7、第2導電層8、及び表面層9について説明する。
【0043】
(基体)
基体2の形状の例としては、平板状、フィルム状、及び円筒形状が挙げられる。基体2の材質の例としては、アルミニウム、ニッケル、クロム、マグネシウム、鉄、錫、チタン、金、銀、銅、タングステン、及びこれらの合金が挙げられる。合金の例としては、ステンレス鋼が挙げられる。基体2の材質の別の例としては、透明ガラス(より具体的には、ソーダライムガラス、及び無アルカリガラス等)、及びセラミックが挙げられる。
【0044】
(第1導電層)
第1導電層3は、光電変換素子1の陰極に相当する。第1導電層3を構成する材料の例としては、ヨウ化銅(CuI)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化スズ(SnO2)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、及びガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)のような透明導電性材料;ナトリウム;ナトリウム-カリウム合金;リチウム;マグネシウム;アルミニウム;マグネシウム-銀混合物;マグネシウム-インジウム混合物;アルミニウム-リチウム合金;アルミニウム-酸化アルミニウム混合物(Al/Al23);並びにアルミニウム-フッ化リチウム混合物(Al/LiF)が挙げられる。第1導電層3は、これらの材料の1種のみを含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
【0045】
第1導電層3の膜厚は、特に限定されない。第1導電層3の膜厚は、0.4μm以上であることが好ましい。第1導電層3の膜厚が0.4μm以上であると、第1導電層3に良好な導電性を付与できる。なお、基体2の材質が導電性材料である場合、基体2が第1導電層3を兼ねることから、基体2を兼ねる第1導電層3上に、緻密酸化チタン層51が備えられてもよい。
【0046】
(電子輸送層)
電子輸送層4は、光吸収層6において光励起により発生した電子を、第1導電層3に輸送する層である。このため、電子輸送層4は、光吸収層6で発生した電子を第1導電層3に良好に移動できる材料で構成されている。電子輸送層4は、酸化チタンで構成されることが好ましい。酸化チタンで構成される電子輸送層4は、緻密酸化チタン層51と、多孔質酸化チタン層52とを含む。以下、緻密酸化チタン層51、及び多孔質酸化チタン層52について説明する。
【0047】
(電子輸送層:緻密酸化チタン層)
緻密酸化チタン層51の空隙率は、多孔質酸化チタン層52よりも小さい。緻密酸化チタン層51が備えられることにより、光吸収層6に含有される光吸収材料(光電変換材料)が緻密酸化チタン層51内に染み込み難くなる。また、緻密酸化チタン層51が備えられることにより、起電力低下の原因となる第1導電層3と第2導電層8との接触を防止することができる。緻密酸化チタン層51の厚さは、5nm以上200nm以下であることが好ましく、10nm以上100nm以下であることが更に好ましい。
【0048】
緻密酸化チタン層51を形成するために使用可能なチタンキレート化合物の例としては、デュポン社製「TYZOR(登録商標)AAシリーズ」のような市販品が挙げられる。緻密酸化チタン層51を形成するために使用可能なチタンキレート化合物の別の例としては、アセト酢酸エステルキレート基を有する化合物、及びβ-ジケトンキレート基を有する化合物が挙げられる。
【0049】
アセト酢酸エステルキレート基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジイソプロポキシチタニウムビス(メチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシチタニウムビス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシチタニウムビス(プロピルアセトアセテート)、ジイソプロポキシチタニウムビス(ブチルアセトアセテート)、ジブトキシチタニウムビス(メチルアセトアセテート)、ジブトキシチタニウムビス(エチルアセトアセテート)、トリイソプロポキシチタニウム(メチルアセトアセテート)、トリイソプロポキシチタニウム(エチルアセトアセテート)、トリブトキシチタニウム(メチルアセトアセテート)、トリブトキシチタニウム(エチルアセトアセテート)、イソプロポキシチタニウムトリ(メチルアセトアセテート)、イソプロポキシチタニウムトリ(エチルアセトアセテート)、イソブトキシチタニウムトリ(メチルアセトアセテート)、及びイソブトキシチタニウムトリ(エチルアセトアセテート)が挙げられる。
【0050】
β-ジケトンキレート基を有する化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジイソプロポキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)、ジイソプロポキシチタニウムビス(2,4-ヘプタンジオネート)、ジブトキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)、ジブトキシチタニウムビス(2,4-ヘプタンジオネート)、トリイソプロポキシチタニウム(アセチルアセトネート)、トリイソプロポキシチタニウム(2,4-ヘプタンジオネート)、トリブトキシチタニウム(アセチルアセトネート)、トリブトキシチタニウム(2,4-ヘプタンジオネート)、イソプロポキシチタニウムトリ(アセチルアセトネート)、イソプロポキシチタニウムトリ(2,4-ヘプタンジオネート)、イソブトキシチタニウムトリ(アセチルアセトネート)、及びイソブトキシチタニウムトリ(2,4-ヘプタンジオネート)が挙げられる。
【0051】
(電子輸送層:多孔質酸化チタン層)
多孔質酸化チタン層52は多孔質である。多孔質酸化チタン層52の空隙率は、緻密酸化チタン層51よりも大きい。多孔質酸化チタン層52が備えられることにより、光吸収層6に含有される光吸収材料が、多孔質酸化チタン層52の細孔内に染み込みやすい。そして、細孔内に光吸収層6が形成されて、光吸収層6と多孔質酸化チタン層52との接触面積を拡大することができる。接触面積が拡大することにより、光吸収層6において光励起により発生した電子を、効率よく多孔質酸化チタン層52に移動させることができる。多孔質酸化チタン層52の細孔内に、光吸収層6だけでなく、ホール輸送層7の一部も形成されることが好ましい。多孔質酸化チタン層52の細孔内にホール輸送層7の一部が形成されることにより、光吸収層6とホール輸送層7との接触面積を拡大でき、光吸収層6において光励起により発生したホールを、効率よくホール輸送層7に移動させることができる。多孔質酸化チタン層52の厚さは、100nm以上20000nm以下であることが好ましく、200nm以上1500nm以下であることが更に好ましい。
【0052】
多孔質酸化チタン層52を構成する酸化チタンは、特に限定されないが、例えば、アナターゼ型の酸化チタンが挙げられる。多孔質酸化チタン層52を形成するための多孔質酸化チタン層用塗布液の例としては、酸化チタン粒子(より具体的には酸化チタン(日本アエロジル株式会社製「AEROXIDE(登録商標)TiO2 P25」)等)をアルコール(より具体的にはエタノール等)に分散させた分散液が挙げられる。多孔質酸化チタン層52を形成するための多孔質酸化チタン層用塗布液の別の例としては、酸化チタンペースト(より具体的には日揮触媒化成株式会社製「PST-18NR」等)をアルコール(より具体的にはエタノール等)で希釈した液が挙げられる。
【0053】
なお、電子輸送層4は、酸化チタン以外の材料で構成されていてもよい。例えば、電子輸送層4は、酸化チタン以外の材料で構成された緻密層と、酸化チタン以外の材料で構成され多孔質層とを備えていてもよい。この場合、酸化チタン以外の材料で構成され緻密層上に、酸化チタン以外の材料で構成され多孔質層が設けられる。
【0054】
(光吸収層)
光吸収層6は、光電変換素子1の表面層9側から入射した光Lを吸収して、電子及びホールを発生させる層である。光吸収層6に含有される光吸収材料が有する低いエネルギーの電子が、入射した光Lにより光励起され、高いエネルギーの電子とホールとが発生する。発生した電子は、電子輸送層4に移動する。発生したホールは、ホール輸送層7に移動する。このような電子とホールとの移動により、電荷分離が行われる。
【0055】
光吸収層6は、光吸収材料として、化合物(1)を含有する。化合物(1)は、下記一般式(1)で表される。
【0056】
【化2】
【0057】
一般式(1)中、Aは有機分子であり、Bは金属原子であり、Xはハロゲン原子である。光吸収材料である化合物(1)は、有機無機ハイブリッド化合物の結晶である。有機無機ハイブリッド化合物は、無機材料と有機材料とで構成される化合物である。このような有機無機ハイブリッド化合物である化合物(1)を含有する光吸収層6を備えることから、光電変換素子1は、有機無機ハイブリッド光電変換素子とも呼ばれる。真空蒸着により形成される無機材料の光吸収材料を含有する光吸収層と比較して、化合物(1)を含有する光吸収層6は塗布によって形成できる。このため、製造プロセスの容易化、及び製造コストの低減が可能となる。また、光吸収層6が化合物(1)を含有することで、光電変換効率を向上させることができる。
【0058】
化合物(1)は、例えば、ペロブスカイト結晶構造を有する。図4は、ペロブスカイト結晶構造の基本単位格子を示す。図4に示すように、化合物(1)がペロブスカイト結晶構造を有する場合、化合物(1)は立方晶系の基本単位格子を有する。この基本単位格子は、各頂点に配置された有機分子Aと、体心に配置された金属原子Bと、各面心に配置されたハロゲン原子Xとを備えている。
【0059】
一般式(1)中のAで表される有機分子の例としては、アルキルアミン、アルキルアンモニウム、及び含窒素複素環式化合物が挙げられる。一般式(1)中のAで表される有機分子は、1種の有機分子のみであってもよく、2種以上の有機分子であってもよい。
【0060】
アルキルアミンの例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、ヘキシルメチルアミン、エチルプロピルアミン、及びエチルブチルアミンが挙げられる。
【0061】
アルキルアンモニウムは、このようなアルキルアミンのイオン化物である。アルキルアンモニウムの例としては、メチルアンモニウム(CH3NH3)、エチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ペンチルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、ジブチルアンモニウム、ジペンチルアンモニウム、ジヘキシルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリペンチルアンモニウム、トリヘキシルアンモニウム、エチルメチルアンモニウム、メチルプロピルアンモニウム、ブチルメチルアンモニウム、メチルペンチルアンモニウム、ヘキシルメチルアンモニウム、エチルプロピルアンモニウム、及びエチルブチルアンモニウムが挙げられる。
【0062】
含窒素複素環式化合物の例としては、イミダゾール、アゾール、ピロール、アジリジン、アジリン、アゼチジン、アゼト、アゾール、イミダゾリン、及びカルバゾールが挙げられる。含窒素複素環式化合物は、イオン化物であってもよい。含窒素複素環式化合物のイオン化物としては、フェネチルアンモニウムが好ましい。
【0063】
一般式(1)中のAで表される有機分子としては、アルキルアミン又はアルキルアンモニウムが好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキルアミン又は炭素原子数1以上6以下のアルキルアンモニウムがより好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキルアミン又は炭素原子数1以上3以下のアルキルアンモニウムが更に好ましく、メチルアンモニウム(CH3NH3)が特に好ましい。
【0064】
一般式(1)中のBで表される金属原子の例としては、鉛、スズ、亜鉛、チタン、アンチモン、ビスマス、ニッケル、鉄、コバルト、銀、銅、ガリウム、ゲルマニウム、マグネシウム、カルシウム、インジウム、アルミニウム、マンガン、クロム、モリブデン、及びユーロピウムが挙げられる。一般式(1)中のBで表される金属原子は、1種の金属原子のみであってもよく、2種以上の金属原子であってもよい。光吸収層6の光吸収特性及び電荷発生特性を向上させるために、一般式(1)中のBで表される金属原子としては、鉛原子が好ましい。
【0065】
一般式(1)中のXで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。一般式(1)中のXで表されるハロゲン原子は、1種のハロゲン原子であってもよく、2種以上のハロゲン原子であってもよい。エネルギーバンドギャップが狭くなることから、一般式(1)中のXで表されるハロゲン原子としては、ヨウ素原子が好ましい。例えば、一般式(1)中の3個のXのうち、少なくとも1個のXがヨウ素原子を表すことが好ましく、3個のXが何れもヨウ素原子を表すことがより好ましい。
【0066】
一般式(1)で表される化合物としては、CH3NH3PbX3(ただし、Xはハロゲン原子である)で表される化合物が好ましく、CH3NH3PbI3で表される化合物がより好ましい。一般式(1)で表される化合物がこのような化合物であることにより、光吸収層6において電子とホールとをより効率良く発生させることができる。その結果、より高い光電変換効率を有する光電変換素子1を得ることができる。
【0067】
化合物(1)がペロブスカイト結晶構造を有することは、X線回折法を用いて確認することができる。詳しくは、ガラス板上に化合物(1)を含有する光吸収層6を作製し、光吸収層6を粉末状で回収し、粉末X線回折装置を用いて回収された粉末状の光吸収層6(化合物(1))の回折パターンを測定する。或いは、光電変換素子1から光吸収層6を粉末状で回収し、粉末X線回折装置を用いて回収された粉末状の光吸収層6(化合物(1))の回折パターンを測定する。
【0068】
光吸収層6は、化合物(1)のみで構成される層であってもよい。また、光吸収層6は、化合物(1)に加えて、化合物(1)以外の光吸収材料を更に含有していてもよい。
【0069】
(ホール輸送層)
ホール輸送層7は、光吸収層6で発生したホールを捉えて、陽極である第2導電層8に輸送する層である。光電変換素子1においては、ホール輸送層7はホール輸送材料を含有する。
【0070】
ホール輸送材料の融点は、120℃以上170℃以下であることが好ましい。ホール輸送材料の融点が120℃以上であると、光電変換素子1の実使用中にホール輸送材料が溶解することを更に抑制できる。ホール輸送材料の融点が170℃以下であると、ホール輸送層7の溶融工程でホール輸送材料の融点以上の温度まで加熱する際に、加熱温度が高くなり過ぎない。このため、光電変換素子1の成分(より具体的には、光吸収層6に含有される化合物(1)等)が加熱により劣化することを抑制できる。
【0071】
ホール輸送材料の例としては、ピラゾリン化合物、アリールアミン化合物、スチルベン化合物、エナミン化合物、ポリピロール化合物、ポリビニルカルバゾール化合物、ポリシラン化合物、ブタジエン化合物、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン化合物、ポリアニリン化合物、ポリフェニレンビニレン化合物、ポリチエニネンビニレン化合物、及びポリチオフェン化合物が挙げられる。ホール輸送層7の溶融工程での加熱温度を170℃以下に抑えつつ、光電変換効率を向上させるためには、ホール輸送材料の例としては、ブタジエン化合物が好ましく、モノブタジエン構造を有する化合物(以下、モノブタジエン系化合物と記載する)、又はビスブタジエン構造を有する化合物(以下、ビスブタジエン系化合物と記載する)が好ましい。
【0072】
モノブタジエン系化合物としては、一般式(2)で表される化合物(以下、ホール輸送材料(2)と記載する)が好ましい。モノブタジエン系化合物としては、一般式(2)で表される化合物で且つ融点が120℃以上170℃以下である化合物がより好ましい。
【0073】
【化3】
【0074】
一般式(2)中、R1~R4は、各々独立に、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルキルアミノ基、置換もしくは未置換のアリールアミノ基、又は置換もしくは未置換のアルコキシ基である。m、n、r及びsは、各々独立に、0以上5以下の整数である。但し、m、n、r及びsが何れも0である場合は除かれる。mが2以上5以下の整数である場合、複数のR1は同一でも異なっていてもよい。nが2以上5以下の整数である場合、複数のR2は同一でも異なっていてもよい。rが2以上5以下の整数である場合、複数のR3は同一でも異なっていてもよい。sが2以上5以下の整数である場合、複数のR4は同一でも異なっていてもよい。
【0075】
1~R4が表わす置換もしくは未置換のアルキル基としては、未置換のアルキル基が好ましく、未置換の炭素原子数1以上3以下のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。R1~R4が表わす置換のアルキルアミノ基としては、ジベンジルアミノ基が好ましい。R1~R4が表わす未置換のアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、又はジプロピルアミノ基が好ましく、ジエチルアミノ基がより好ましい。R1~R4が表わす置換もしくは未置換のアリールアミノ基としては、未置換のアリールアミノ基が好ましく、ジフェニルアミノ基がより好ましい。R1~R4が表わす置換もしくは未置換のアルコキシ基としては、未置換のアルコキシ基が好ましく、未置換の炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基が更に好ましい。
【0076】
一般式(2)中、R1~R4は、各々独立に、未置換のアルキルアミノ基を表すことが好ましく、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、又はジプロピルアミノ基を表すことがより好ましく、ジエチルアミノ基を表すことが特に好ましい。m及びnは、1を表すことが好ましい。r及びsは、1又は0を表すことが好ましく、0を表すことがより好ましい。ホール輸送材料(2)としては、化学式(2-1)で表される化合物(以下、ホール輸送材料(2-1)と記載する)が好ましい。
【0077】
【化4】
【0078】
ビスブタジエン系化合物としては、一般式(3)で表される化合物(以下、ホール輸送材料(3)と記載する)が好ましい。ビスブタジエン系化合物としては、一般式(3)で表される化合物で且つ融点が120℃以上170℃以下である化合物がより好ましい。
【0079】
【化5】
【0080】
一般式(3)中、R11及びR12は、各々独立に、水素原子、置換もしくは未置換のアルキル基、又は置換もしくは未置換のアリール基である。但し、R11及びR12が何れも水素原子である場合は除かれる。R13は、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のアリール基、又は置換もしくは未置換のアラルキル基である。tは、0又は1を表す。
【0081】
11、R12、及びR13が表わす置換もしくは未置換のアルキル基としては、未置換のアルキル基が好ましく、未置換の炭素原子数1以上3以下のアルキル基がより好ましく、メチル基、又はエチル基が更に好ましい。R13が表わす置換もしくは未置換のアルコキシ基としては、未置換のアルコキシ基が好ましく、未置換の炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、又はエトキシ基が更に好ましく、メトキシ基が特に好ましい。R11、R12、及びR13が表わす未置換のアリール基としては、未置換の炭素原子数6以上10以下のアリール基が好ましく、フェニル基、又はナフチル基がより好ましい。R11、R12、及びR13が表わす置換のアリール基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基で置換された炭素原子数6以上10以下のアリール基が好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基で置換されたフェニル基がより好ましく、トリル基が更に好ましく、p-トリル基が特に好ましい。R13が表わす置換もしくは未置換のアラルキル基としては、未置換のアラルキル基が好ましく、未置換の炭素原子数7以上13以下のアラルキル基がより好ましく、ベンジル基、又はフェネチル基が更に好ましい。
【0082】
一般式(3)中、R11及びR12は、置換のアリール基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基で置換された炭素原子数6以上10以下のアリール基を表すことがより好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基で置換されたフェニル基を表すことが更に好ましく、トリル基を表すことが一層好ましく、p-トリル基を表すことが特に好ましい。R13は、未置換のアルコキシ基を表すことが好ましく、未置換の炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基を表すことがより好ましく、メトキシ基、又はエトキシ基を表すことが更に好ましく、メトキシ基を表すことが特に好ましい。tは、1を表すことが好ましい。ホール輸送材料(3)としては、化学式(3-1)で表される化合物(以下、ホール輸送材料(3-1)と記載する)が好ましい。
【0083】
【化6】
【0084】
ホール輸送層7は、ホール輸送材料を主材料として構成されることが好ましい。具体的には、ホール輸送層7の質量に対するホール輸送材料の含有率は70質量%以上100質量%以下であることが好ましく、85質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。ホール輸送材料の結晶化を抑制するために、ホール輸送層7は、必要に応じて、有機バインダー樹脂及び可塑剤等を含有してもよい。しかし、ホール輸送層7は、ホール輸送材料のみで構成されてもよい。
【0085】
ホール輸送層7に高い電荷輸送能を付与するために、ホール輸送層7は、ホール輸送材料に加えて、リチウム化合物を更に含有することが好ましい。リチウム化合物は、例えばイオン導電剤として、ホール輸送層7に含有される。リチウム化合物の含有量は、ホール輸送材料の質量に対して、5質量%以上50質量%以下であることが好ましい。リチウム化合物の例としては、下記一般式(4)で表される化合物(以下、リチウム化合物(4)と記載する)が好ましい。
【0086】
【化7】
【0087】
一般式(4)中、Rfは、各々独立に、パーフルオロアルキル基を表す。Mは、リチウムを表す。Rfで表されるパーフルオロアルキル基としては、炭素原子数1以上4以下のパーフルオロアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。リチウム化合物(4)としては、リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(化学式:(CF3SO22NLi、以下「LiTFSI」と記載することがある)が好ましい。
【0088】
ホール輸送層7の膜厚は、20nm以上500nm以下であることが好ましく、50nm以上150nm以下であることがより好ましい。このような膜厚のホール輸送層7であれば、光吸収層6で発生したホールを円滑に且つ効率的に第2導電層8に移動させることができる。なお、既に述べたように、ホール輸送層7が多孔質酸化チタン層52の細孔内に入り込んでいる場合には、ホール輸送層7の膜厚は、多孔質酸化チタン層52の細孔内に入り込んでいだ部分を除く部分の膜厚である。
【0089】
光電変換素子1の表面層9側から光Lが入射する場合、入射した光Lを光吸収層6に到達させるために、ホール輸送層7は、透明又は半透明であることが好ましい。ホール輸送層7が透明又は半透明となるためには、ホール輸送層7が非晶質層であることが好ましい。
【0090】
(第2導電層)
第2導電層8は、光電変換素子1の陽極に相当する。第2導電層8を構成する材料の例としては、金、銀、及び白金のような金属;ヨウ化銅(CuI)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化スズ(SnO2)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)及びガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)のような透明導電性材料;銀ナノワイヤー、及びカーボンナノファイバーのような導電性微粒子;並びにポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸とを含むポリマー(PEDOT/PSS)のような導電性ポリマーが挙げられる。第2導電層8は、これらの材料の1種のみを含有していてもよく、2種以上を含有していてもよい。
【0091】
光電変換素子1の表面層9側から光Lが入射する場合、入射した光Lを光吸収層6に到達させるために、第2導電層8は、透明又は半透明であることが好ましく、透明であることがより好ましい。第2導電層8を構成する材料として例示した材料のうち、透明又は半透明の材料を適宜選択して使用することができる。なお、光電変換素子1の基体2側から光Lが入射する場合には、第2導電層8は透明及び半透明である必要はなく、金属基体又は厚い層を第2導電層8として使用してもよい。第2導電層8の厚さは、50nm以上60nm以下であることが好ましい。
【0092】
(表面層)
表面層9は、空気中の水分及び酸素による光電変換素子1の内部の劣化を抑制する層である。また、表面層9が設けられることで、光電変換素子1を実使用する際に、衝撃及び傷から光電変換素子1の外面を保護することができる。表面層9を構成する材料の例としては、樹脂、及びガラスが挙げられる。表面層9の形状例としては、板状、及びフィルム状が挙げられる。表面層9の例としては、ガラス板、樹脂板、及び樹脂フィルム(例えば、ラップフィルム)が挙げられる。
【0093】
表面層9を構成する材料が樹脂である場合、この樹脂の融点は、ホール輸送材料の融点よりも高いことが好ましい。ホール輸送層7の溶融工程でホール輸送材料の融点以上の温度まで加熱する際に、表面層9の変質を抑制しやすいからである。表面層9を構成する材料である樹脂の融点は、170℃以上であることが好ましい。表面層9を構成する材料である樹脂は、このような高い耐熱性を有する樹脂である限り、特に限定されない。表面層9を構成する材料である樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミドイミド(PAI)、及びシリコーンが挙げられる。表面層9を構成する材料である樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
【0094】
光電変換素子1の表面層9側から光Lが入射する場合、入射した光Lを光吸収層6に到達させるために、表面層9は、透明又は半透明であることが好ましく、透明であることがより好ましい。表面層9を構成する材料として例示した材料のうち、透明又は半透明の材料を適宜選択して使用することができる。表面層9としては、透明又は半透明なガラス板、透明又は半透明な樹脂板、或いは透明又は半透明な樹脂フィルムが好ましい。表面層9としては、透明又は半透明な樹脂フィルムがより好ましく、透明な樹脂フィルムが更に好ましく、透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが特に好ましい。本実施形態では、ホール輸送層7の溶融工程における加熱温度が、ホール輸送材料の融点以上で且つ120℃以上170℃以下の温度である。このため、軟化点が比較的低い(例えば、軟化点が180℃程度である)樹脂フィルムを使用することができる。表面層9として樹脂フィルムを使用することにより、大きな面積の光電変換素子1を安価に製造することができる。また、表面層9として樹脂フィルムを使用することにより、空気及び水分が封止される。このため、光電変換素子1の表面層9側に、封止のためのシール材又はフィルムを別途設ける必要がない。光電変換素子1の表面層9側の封止処理を省略することができ、製造工程の簡素化及び製造コストの低減を図ることができる。なお、光電変換素子1の基体2側から光Lが入射する場合には、表面層9は透明及び半透明である必要はない。
【実施例
【0095】
以下、実施例を示して本発明を更に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されるものではない。以下、光電変換素子(A-1)~(A-8)及び(B-1)~(B-2)の作製方法、評価方法、及び評価結果について、説明する。
【0096】
[作成方法]
<光電変換素子(A-1)の作製>
まず、透明導電性基板Aを準備した。透明導電性基板Aは、フッ素ドープ酸化スズでコートされた透明ガラス板(シグマアルドリッチ社製、厚さ:2.2mm)を、横25mm及び縦25mmの大きさに切断することにより得られた。透明導電性基板Aを、第1導電層を設けた基体として使用した。透明導電性基板Aは、透明な基体と、基体上に備えられる透明な第1導電層とを有していた。透明導電性基板Aに対して、エタノール中での超音波洗浄処理、及びUV洗浄処理を行った。
【0097】
次に、電子輸送層形成工程を行った。詳しくは、チタンキレート化合物であるジイソプロポキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)を75質量%の濃度で含有する1-ブタノール溶液(シグマアルドリッチ社製)を、1-ブタノールで希釈した。これにより、チタンキレート化合物の濃度が0.02mol/Lである緻密酸化チタン層用塗布液を調製した。スピンコーターを用いて、緻密酸化チタン層用塗布液を透明導電性基板Aの上に塗布し、450℃で15分間加熱した。これにより、第1導電層上に、膜厚50nmの緻密酸化チタン層を形成した。次いで、酸化チタンペースト(日揮触媒化成株式会社製「PST-18NR」)をエタノールで希釈して、多孔質酸化チタン層用塗布液を調製した。スピンコーターを用いて、多孔質酸化チタン層用塗布液を緻密酸化チタン層上に塗布し、450℃で1時間焼成した。これにより、緻密酸化チタン層上に、膜厚300nmの多孔質酸化チタン層を形成した。
【0098】
次に、光吸収層形成工程を行った。詳しくは、PbI2(東京化成工業株式会社製)とCH3NH3I(東京化成工業株式会社製)とを、モル比が1:1になるように、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させた。これにより、固形分濃度が55質量%である光吸収層用塗布液を調製した。スピンコーターを用いて、光吸収層用塗布液を多孔質酸化チタン層上に塗布し、100℃で10分間乾燥させた。これにより、多孔質酸化チタン層上に、膜厚500nmの光吸収層を形成した。光吸収層には、ペロブスカイト結晶構造を有するCH3NH3PbI3が含有されていた。
【0099】
次に、透明導電性基板Bを準備した。透明導電性基板Bは、フッ素ドープ酸化スズでコートされた透明ガラス板(シグマアルドリッチ社製、厚さ:2.2mm)を、横25mm及び縦25mmの大きさに切断することにより得られた。透明導電性基板Bを、第2導電層を設けた表面層として使用した。透明導電性基板Bは、透明な表面層と、表面層上に備えられる透明な第2導電層とを有していた。透明導電性基板Bに対して、エタノール中での超音波洗浄処理、及びUV洗浄を行った。
【0100】
次に、ホール輸送層の形成工程を行った。詳しくは、透明導電性基板Bの上に、ホール輸送材料(2-1)のトルエン溶液を滴下し、100℃で60分間乾燥させた。ホール輸送材料(2-1)としては、1,1-ビス(p-ジエチルアミノフェニル)-4,4’-ジフェニル-1,3-ブタジエン(高砂香料工業株式会社製「T-405」、融点:168℃)を使用した。これにより、第2導電層上に、ホール輸送材料(2-1)のキャスト膜(ホール輸送層に相当)を形成した。
【0101】
次に、ホール輸送層の溶融工程を行った。詳しくは、ホットプレートを用いて、ホール輸送層を形成した透明導電性基板Bを168℃まで加熱して、ホール輸送材料(2-1)を溶融させた。これと同時に、ホットプレートを用いて、緻密酸化チタン層、多孔質酸化チタン層、及び光吸収層を形成した透明導電性基板Aを168℃まで加熱した。
【0102】
次に、接着工程を行った。詳しくは、加熱した透明導電性基板Aと加熱した透明導電性基板Bとを、5mmだけずらして重ね合わせた。その際に、透明導電性基板Aに備えられる光吸収層と、透明導電性基板Bに備えられるホール輸送層とが対向するように、重ね合わせた。重ね合わせた透明導電性基板A及びBを、圧着させながら室温まで徐々に冷却した。これにより、透明導電性基板Aに備えられる光吸収層と、透明導電性基板Bに備えられるホール輸送層とを接着させた。その結果、ホール輸送層を介して、光吸収層と第2導電層とが接着した。銀ペーストを用いて、第1導電層及び第2導電層の各々に、端子を取り付けた。このようにして、光電変換素子(A-1)を得た。光電変換素子(A-1)において、基体上に、第1導電層、緻密酸化チタン層、多孔質酸化チタン層、光吸収層、ホール輸送層、第2導電層、及び表面層が、記載された順に備えられていた。
【0103】
<光電変換素子(A-2)の作製>
ホール輸送層の形成工程を次のように変更したこと以外は、光電変換素子(A-1)の作製と同じ方法で、光電変換素子(A-2)を作製した。光電変換素子(A-2)のホール輸送層の形成工程では、透明導電性基板Bの上に、ホール輸送材料(2-1)のトルエン溶液を滴下し、100℃で60分間乾燥させた。これにより、第2導電層上に、ホール輸送材料(2-1)のキャスト膜を形成した。ホール輸送材料(2-1)のキャスト膜の上に、リチウム化合物であるLiTFSI(キシダ化学株式会社製)のエタノール溶液を滴下し、100℃で60分間乾燥させた。リチウム化合物の添加量は、ホール輸送材料(2-1)の質量に対して、32質量%であった。これにより、第2導電層上に、ホール輸送材料(2-1)とLiTFSIとが混合したキャスト膜(ホール輸送層に相当)を形成した。
【0104】
<光電変換素子(A-3)の作製>
ホール輸送材料(2-1)をホール輸送材料(3-1)に変更したこと、及び溶融工程の加熱温度を168℃から130℃に変更したこと以外は、光電変換素子(A-1)の作製と同じ方法で、光電変換素子(A-3)を作製した。ホール輸送材料(3-1)の融点は、123℃であった。
【0105】
<光電変換素子(A-4)の作製>
ホール輸送層の形成工程を次のように変更したこと以外は、光電変換素子(A-3)の作製と同じ方法で、光電変換素子(A-4)を作製した。光電変換素子(A-4)のホール輸送層の形成工程では、透明導電性基板Bの上に、ホール輸送材料(3-1)のトルエン溶液を滴下し、100℃で60分間乾燥させた。これにより、第2導電層上に、ホール輸送材料(3-1)のキャスト膜を形成した。ホール輸送材料(3-1)のキャスト膜の上に、イオン化導電剤であるLiTFSI(キシダ化学株式会社製)のエタノール溶液を滴下し、100℃で60分間乾燥させた。リチウム化合物の添加量は、ホール輸送材料(3-1)の質量に対して、21質量%であった。これにより、第2導電層上に、ホール輸送材料(3-1)とLiTFSIとが混合したキャスト膜(ホール輸送層に相当)を形成した。
【0106】
<光電変換素子(A-5)の作製>
透明導電性基板BをフィルムCに変更したこと以外は、光電変換素子(A-3)の作製と同じ方法で、光電変換素子(A-5)を作製した。フィルムCは、スズドープ酸化インジウムでコートされたシート状のポリエチレンテレフタレートフィルム(ITOコートPETフィルムシート、シグマアルドリッチ社製)を、横25mm及び縦25mmの大きさに切断することにより得られた。フィルムCを、第2導電層を設けた表面層として使用した。フィルムCは、透明な樹脂フィルムである表面層と、表面層上に備えられる透明な第2導電層とを有していた。
【0107】
<光電変換素子(B-1)の作製>
ホール輸送層の形成工程及び溶融工程を次のように変更したこと以外は、光電変換素子(A-1)の作製と同じ方法で、光電変換素子(B-1)を作製した。
【0108】
光電変換素子(B-1)のホール輸送層の形成工程では、ホール輸送材料として、下記式で表される化合物(Luminescence Technology社製、融点:243℃~248℃)を使用した。以下、下記式で表される化合物を、「ホール輸送材料(spiro-OMeTAD)」と記載する。
【0109】
【化8】
【0110】
ホール輸送材料(spiro-OMeTAD)144mgと、リチウム化合物であるLiTFSI(キシダ化学株式会社製)18mgと、4-tert-ブチルピリジン(東京化成工業株式会社製)53mgとをクロロベンゼン(キシダ化学株式会社製)2mLに溶解し、ホール輸送層用塗布液を調製した。ホール輸送材料(spiro-OMeTAD)を酸化させるため、ホール輸送層用塗布液を空気中で1日静置した。1日静置後、透明導電性基板Bの上に、ホール輸送層用塗布液を滴下し、100℃で60分間乾燥させた。これにより、第2導電層上に、ホール輸送材料(spiro-OMeTAD)のキャスト膜(ホール輸送層に相当)を形成した。
【0111】
光電変換素子(B-1)のホール輸送層の溶融工程では、ホットプレートを用いて、ホール輸送層を形成した透明導電性基板Bを250℃まで加熱して、ホール輸送材料(spiro-OMeTAD)を溶融させた。これと同時に、ホットプレートを用いて、緻密酸化チタン層、多孔質酸化チタン層、及び光吸収層を形成した透明導電性基板Aを250℃まで加熱した。なお、加熱により、光吸収層が黒色から黄色に変色したことが確認された。
【0112】
<光電変換素子(B-2)の作製>
ホール輸送層の形成工程及び溶融工程を行わなかったこと、及び接着工程を次のように変更したこと以外は、光電変換素子(A-1)の作製と同じ方法で、光電変換素子(B-2)を作製した。このように変更した理由は、光電変換素子(B-1)の作製において上記のような光吸収層の変色が確認されたことから、光吸収層の過度な加熱を避けるためであった。
【0113】
光電変換素子(B-2)の接着工程では、ホール輸送材料(spiro-OMeTAD)144mgと、リチウム化合物であるLiTFSI(キシダ化学株式会社製)18mgと、4-tert-ブチルピリジン(東京化成工業株式会社製)53mgとを、クロロベンゼン(キシダ化学株式会社製)2mLに溶解し、ホール輸送層用塗布液を調製した。ホール輸送材料(spiro-OMeTAD)を酸化させるため、ホール輸送層用塗布液を空気中で1日静置した。1日静置後、透明導電性基板Bの上にホール輸送層用塗布液を滴下し、乾燥せることなく溶液(塗布液)の状態のまま、透明導電性基板Aと透明導電性基板Bとを、5mmずらして重ね合わせた。その際に、透明導電性基板Aに備えられる光吸収層と、透明導電性基板Bに備えられるホール輸送用塗布液の層とが対向するように、重ね合わせた。重ね合わせた透明導電性基板A及びBを、圧着させながら、ホットプレートを用いて131℃まで加熱した。なお、131℃は塗布液に含有されるクロロベンゼンの沸点である。加熱により、気化したクロロベンゼンの気泡が発生し、ホール輸送層を作製することができなかった。また、ホール輸送層を介して光吸収層と第2導電層とを接着することができなかった。
【0114】
<光電変換素子(A-6)の作製>
アルミニウム板(縦182mm、横257mm、厚さ1mm)を、基体を兼ねる第1導電層として使用した。アルミニウム板に対して、エタノール中での超音波洗浄処理、及びUV洗浄処理を行った。
【0115】
次に、電子輸送層形成工程を行った。詳しくは、チタンキレート化合物であるジイソプロポキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)を75質量%の濃度で含有する1-ブタノール溶液(シグマアルドリッチ社製)を、1-ブタノールで希釈した。これにより、チタンキレート化合物の濃度が0.02mol/Lである緻密酸化チタン層用塗布液を調製した。塗布幅100mmのアプリケーターを用いて、緻密酸化チタン層用塗布液をアルミニウム板の上に塗布し、450℃で15分間加熱した。これにより、基体を兼ねる第1導電層上に、膜厚50nmの緻密酸化チタン層を形成した。次いで、酸化チタンペースト(日揮触媒化成株式会社製「PST-18NR」)をエタノールで希釈して、多孔質酸化チタン層用塗布液を調製した。塗布幅100mmのアプリケーターを用いて、多孔質酸化チタン層用塗布液を緻密酸化チタン層上に塗布し、450℃で1時間焼成した。これにより、緻密酸化チタン層上に、膜厚300nmの多孔質酸化チタン層を形成した。
【0116】
次に、光吸収層形成工程を行った。詳しくは、PbI2(東京化成工業株式会社製)とCH3NH3I(東京化成工業株式会社製)とを、モル比が1:1になるように、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させた。これにより、固形分濃度が55質量%である光吸収層用塗布液を調製した。塗布幅100mmのアプリケーターを用いて、光吸収層用塗布液を多孔質酸化チタン層上に塗布し、100℃で10分間乾燥させた。これにより、多孔質酸化チタン層上に、膜厚500nmの光吸収層を形成した。光吸収層には、ペロブスカイト結晶構造を有するCH3NH3PbI3が含有されていた。
【0117】
次に、フィルムDを準備した。フィルムDは、スズドープ酸化インジウムでコートされたシート状のポリエチレンテレフタレートフィルム(ITOコートPETフィルムシート、シグマアルドリッチ社製)を、縦182mm及び横257mmの大きさに切断することにより得られた。フィルムDを、第2導電層を設けた表面層として使用した。フィルムDは、透明な樹脂フィルムである表面層と、表面層上に備えられる透明な第2導電層とを有していた。このフィルムDに対して、エタノール中での超音波洗浄処理、及びUV洗浄を行った。
【0118】
次に、ホール輸送層の形成工程を行った。詳しくは、塗布幅100mmのアプリケーターを用いて、フィルムDの上に、ホール輸送材料(2-1)のトルエン溶液を塗布し、100℃で30分間乾燥させた。これにより、第2導電層上に、ホール輸送材料(2-1)のキャスト膜(ホール輸送層に相当)を形成した。次いで、ホール輸送層を形成したフィルムDと、緻密酸化チタン層、多孔質酸化チタン層、及び光吸収層を形成したアルミニウム板とを、各々、横80mm及び縦80mmの大きさに切断した。
【0119】
次に、ホール輸送層の溶融工程を行った。詳しくは、ホットプレートを用いて、切断後のホール輸送層を形成したフィルムDを168℃まで加熱して、ホール輸送材料(2-1)を溶融させた。これと同時に、ホットプレートを用いて、切断後の緻密酸化チタン層、多孔質酸化チタン層、及び光吸収層を形成したアルミニウム板を168℃まで加熱した。
【0120】
次に、接着工程を行った。詳しくは、加熱したフィルムDと加熱したアルミニウム板とを、5mmだけずらして重ね合わせた。その際に、アルミニウム板に備えられる光吸収層と、フィルムDに備えられるホール輸送層とが対向するように、重ね合わせた。重ね合わせたアルミニウム板とフィルムDとを、圧着させながら室温まで徐々に冷却した。これにより、アルミニウム板に備えられる光吸収層と、フィルムDに備えられるホール輸送層とを接着させた。その結果、ホール輸送層を介して、光吸収層とフィルムD(表面層に設けられた第2導電層)とが接着した。銀ペーストを用いて、第1導電層及び第2導電層の各々に、端子を取り付けた。このようにして、光電変換素子(A-6)を得た。光電変換素子(A-6)において、基体を兼ねる第1導電層上に、緻密酸化チタン層、多孔質酸化チタン層、光吸収層、ホール輸送層、第2導電層、及び表面層が、記載された順に備えられていた。
【0121】
<光電変換素子(A-7)の作製>
光吸収層形成工程を次のように変更したこと以外は、光電変換素子(A-1)の作製と同じ方法で、光電変換素子(A-7)を作製した。光電変換素子(A-7)の光吸収層形成工程では、70℃に加熱しながら、PbI2(東京化成工業株式会社製)をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させた。これにより、光吸収層用塗布液を調製した。緻密酸化チタン層及び多孔質酸化チタン層を形成した透明導電性基板Aを、70℃まで加熱した。加熱後、スピンコーターを用いて、光吸収層用塗布液を多孔質酸化チタン層上に塗布し、70℃で60分間乾燥させた。これにより、多孔質酸化チタン層上に、塗布膜を形成した。次いで、CH3NH3I(東京化成工業株式会社製)をイソプロピルアルコールに溶解させた。これにより、光吸収層用溶解液を調製した。塗布膜が形成された透明導電性基板Aを、光吸収層用溶解液に浸漬させた。これにより、塗布膜が白色から黒色に変化したことが確認された。透明導電性基板Aを光吸収用溶解液から取出し、70℃で30分間乾燥させた。これにより、多孔質酸化チタン層上に、膜厚200nmの光吸収層を形成した。光吸収層には、ペロブスカイト結晶構造を有するCH3NH3PbI3が含有されていた。
【0122】
<光電変換素子(A-8)の作製>
アルミニウム円筒体(外径30mm、軸方向の長さ340mm、厚さ1mm)を、基体を兼ねる第1導電層として使用した。このアルミニウム円筒体に対して、エタノール中での超音波洗浄処理、及びUV洗浄処理を行った。
【0123】
次に、電子輸送層形成工程を行った。詳しくは、チタンキレート化合物であるジイソプロポキシチタニウムビス(アセチルアセトネート)を75質量%の濃度で含有する1-ブタノール溶液(シグマアルドリッチ社製)を、1-ブタノールで希釈した。これにより、チタンキレート化合物の濃度が0.02mol/Lである緻密酸化チタン層用塗布液を調製した。緻密酸化チタン層用塗布液にアルミニウム円筒体を浸漬させた後、450℃で15分間加熱した。これにより、第1導電層上に、膜厚50nmの緻密酸化チタン層を形成した。次いで、ペイントシェーカーを用いて、43質量部の酸化チタン(日本アエロジル株式会社製「AEROXIDE(登録商標)TiO2 P25」)、21質量部のα-テルピネオール、2質量部のエチルセルロース、1質量部の2-(2-n-ブトキシエトキシ)エタノール、及び33質量部のエタノールを混合して、多孔質酸化チタン層用塗布液を調製した。多孔質酸化チタン層用塗布液に緻密酸化チタン層を形成したアルミニウム円筒体を浸漬させた後、450℃で1時間焼成した。これにより、緻密酸化チタン層上に、膜厚300nmの多孔質酸化チタン層を形成した。
【0124】
次に、光吸収層形成工程を行った。詳しくは、70℃に加熱しながら、PbI2(東京化成工業株式会社製)をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させて、光吸収層用塗布液を調製した。70℃に保温しながら、光吸収層用塗布液に、緻密酸化チタン層及び多孔質酸化チタン層を形成したアルミニウム円筒体を浸漬させて、多孔質酸化チタン層上に塗布膜を形成した。塗布膜を形成したアルミニウム円筒体を冷却して、常温で静置した。なお、PbI2の塗布膜は、光吸収層用塗布液の色と同じ黄色であった。次いで、CH3NH3I(和光純薬工業株式会社製)をイソプロピルアルコールに溶解させた。これにより、光吸収層用溶解液を調製した。光吸収層用溶解液に、PbI2の塗布膜を形成したアルミニウム円筒体を浸漬させて、PbI2の塗布膜上に光吸収層用溶解液を塗布した。このとき、浸漬速度10mm/秒でアルミニウム円筒体を浸漬させ、最深まで浸漬した時点で1秒間静止させ、引き上げ速度2mm/秒でアルミニウム円筒体を引き上げた。これにより、塗布膜が黄色から黒色に変化したことが確認された。アルミニウム円筒体を、70℃60分間乾燥させた。これにより、多孔質酸化チタン層上に、膜厚200nmの光吸収層を形成した。光吸収層には、ペロブスカイト結晶構造を有するCH3NH3PbI3が含有されていた。
【0125】
次に、ホール輸送層の形成工程を行った。詳しくは、ホール輸送材料(2-1)のトルエン溶液に、光吸収層を形成したアルミニウム円筒体を浸漬させた後、70℃で30分間乾燥させた。これにより、光吸収層上に、ホール輸送材料(2-1)のキャスト膜(ホール輸送層に相当)を形成した。
【0126】
次に、フィルムEを準備した。フィルムEは、スズドープ酸化インジウムでコートされたシート状のポリエチレンテレフタレートフィルム(ITOコートPETフィルムシート、シグマアルドリッチ社製)を、横95mm及び縦340mmの大きさに切断することにより得られた。フィルムEを、第2導電層を設けた表面層として使用した。フィルムEは、透明な樹脂フィルムである表面層と、表面層上に備えられる透明な第2導電層とを有していた。このフィルムEに対して、エタノール中での超音波洗浄処理、及びUV洗浄を行った。
【0127】
次に、ホール輸送層の溶融工程を行った。詳しくは、クリーンオーブンを用いて、ホール輸送層を形成したアルミニウム円筒体を170℃まで加熱して、ホール輸送材料(2-1)を溶融させた。これと同時に、同じクリーンオーブンを用いて、フィルムEを170℃まで加熱した。
【0128】
次に、接着工程を行った。詳しくは、加熱したアルミニウム円筒体の周りに、加熱したフィルムEを巻き付け、圧着した。その際に、フィルムEの第2導電層と、アルミニウム円筒体に備えられるホール輸送層とが対向するように、巻き付けた。ホール輸送材料の粘度が高いため、ホール輸送層がアルミニウム円筒体から垂れることはなかった。圧着した状態で、室温まで徐々に冷却した。これにより、フィルムEの第2導電層と、ホール輸送層とを接着させた。その結果、ホール輸送層を介して、光吸収層と第2導電層とが接着した。アルミニウム円筒体の端部と、フィルムEの第2導電層の端部とに、各々、リード線を取り付けた。このようにして、光電変換素子(A-8)を得た。光電変換素子(A-8)において、基体を兼ねる第1導電層上に、緻密酸化チタン層、多孔質酸化チタン層、光吸収層、ホール輸送層、第2導電層、及び表面層が、記載された順に備えられていた。
【0129】
[評価方法及び評価結果]
作製した光電変換素子(A-1)~(A-8)及び(B-1)~(B-2)の各々の短絡電流、開放電圧、曲線因子、及び光電変換効率を、ソーラーシミュレータ(株式会社ワコム電創製)を用いて測定した。光電変換素子の表面層側の第2導電層が陽極に、基体側の第1導電層が陰極となるように、ソーラーシミュレータに光電変換素子を接続した。キセノンランプの光をエアマスフィルター(株式会社ニコン製「AM-1.5」)を通過させることにより得られた100mW/cm2の疑似太陽光を、光電変換素子に照射した。照射したときの光電変換素子の電流-電圧特性を測定し、電流-電圧曲線を得た。電流-電圧曲線から、短絡電流、開放電圧、曲線因子、及び光電変換効率を算出した。結果を表1に示す。
【0130】
表1中の「HTM」は、ホール輸送材料を示す。「Mp」は、ホール輸送材料の融点を示す。「2-1」は、ホール輸送材料(2-1)(1,1-ビス(p-ジエチルアミノフェニル)-4,4’-ジフェニル-1,3-ブタジエン、高砂香料工業株式会社製「T-405」、融点:168℃)を示す。「3-1」は、ホール輸送材料(3-1)(N,N-ビス[4-[4,4-ビス(4-メチルフェニル)-1,3-ブタジエニル]フェニル]-4-メトキシフェニルアミン、融点:123℃)を示す。「spiro-OMeTAD」は、ホール輸送材料(spiro-OMeTAD)(融点:243℃~248℃)を示す。「加熱温度」は、溶融工程でホール輸送層を加熱した温度を示す。「変換効率」は、光電変換効率を示す。
【0131】
【表1】
【0132】
光電変換素子(A-1)~(A-8)の各々の製造方法は、ホール輸送層を形成する形成工程と、ホール輸送層を溶融させる溶融工程と、接着工程とを含んでいた。溶融工程において、ホール輸送材料の融点以上で且つ120℃以上170℃以下の温度まで、ホール輸送層を加熱して、ホール輸送層を溶融させていた。光吸収層は、化合物(1)(具体的には、ペロブスカイト結晶構造を有するCH3NH3PbI3)を含有していた。そのため、表1に示すように、光電変換素子(A-1)~(A-8)の短絡電流の値、開放電圧の値、及び曲線因子の値は、光電変換素子(B-1)と比較して、大きかった。また、光電変換素子(A-1)~(A-8)の光電変換効率は、光電変換素子(B-1)と比較して、高かった。
【0133】
光電変換素子(B-1)のホール輸送層の溶融工程において、ホール輸送層を加熱する温度が、120℃以上170℃以下の温度ではなかった。そのため、表1に示すように、光電変換素子(B-1)の短絡電流の値、開放電圧の値、及び曲線因子の値は小さく、光電変換効率は低かった。これは、加熱により、化合物(1)(具体的には、ペロブスカイト結晶構造を有するCH3NH3PbI3)が分解したためだと考えられる。
【0134】
光電変換素子(B-2)の製造方法は、ホール輸送層の形成工程と、ホール輸送層の溶融工程とを含んでいなかった。ホール輸送層を加熱する温度が、ホール輸送材料の融点以上ではなかった。そのため、光電変換素子(B-2)の製造時に残留溶媒の気泡が多数発生し、表1に示すように光電変換素子(B-2)の短絡電流、開放電圧、曲線因子、及び光電変換効率を測定することができなかった。
【0135】
これらのことから明らかなように、本発明に包含される製造方法により製造された光電変換素子(A-1)~(A-8)は、光電変換素子(B-1)~(B-2)と比較して、高い光電変換効率を示した。また、封止処理及び蒸着処理を行うことなく、簡便な方法で、光電変換素子(A-1)~(A-8)を製造することができた。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明に係る製造方法により製造された光電変換素子は、メガソーラーシステムのような太陽光発電システム、太陽電池、及び小型携帯機器用の電源等に利用できる。
【符号の説明】
【0137】
1 :光電変換素子
2 :基体
3 :第1導電層
4 :電子輸送層
6 :光吸収層
7 :ホール輸送層
8 :第2導電層
9 :表面層
11 :第1積層体
12 :第2積層体
51 :緻密酸化チタン層
52 :多孔質酸化チタン層
81 :第1面
82 :第2面
L :光
図1
図2
図3
図4