(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】ヘッドレスト
(51)【国際特許分類】
B60N 2/885 20180101AFI20220516BHJP
B60N 2/809 20180101ALI20220516BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20220516BHJP
A47C 31/11 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
B60N2/885
B60N2/809
A47C7/38
A47C31/11 Z
(21)【出願番号】P 2018147905
(22)【出願日】2018-08-06
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 隆志
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-207756(JP,A)
【文献】特開2008-113928(JP,A)
【文献】特開2018-034736(JP,A)
【文献】特開2006-69287(JP,A)
【文献】登録実用新案第3082747(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0050803(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
A47C 7/38
A47C 31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートのヘッドレストであって、
前記ヘッドレストの上下方向に延びる一つの折り曲げ軸又は前記ヘッドレストの幅方向に間隔をあけて上下方向に延びる複数の折り曲げ軸に沿って折り曲げ可能なフラップ部を、前記ヘッドレストの幅方向両側の第1端側及び第2端側にそれぞれ備え、
前記ヘッドレストのトリムカバーは、
前記ヘッドレストの前面に配置された前面表皮と、
前記第1端側の第1フラップ部の折り曲げ軸、又は、前記第1端側の第1フラップ部の複数の折り曲げ軸のうち少なくとも前記第1端に最も近い折り曲げ軸、を前記第1端から前記幅方向に跨ぎ、前記第1フラップ部の後面に配置された後面第1表皮と、
前記第2端側の第2フラップ部の折り曲げ軸、又は、前記第2端側の第2フラップ部の複数の折り曲げ軸のうち少なくとも前記第2端に最も近い折り曲げ軸、を前記第2端から前記幅方向に跨ぎ、前記第2フラップ部の後面に配置された後面第2表皮と、
前記後面第1表皮と前記後面第2表皮との間に架け渡された一つ以上の伸縮材と、
を有
し、
前記伸縮材は、前記後面第1表皮に接合されている第1伸縮材と、前記後面第2表皮に接合されている第2伸縮材と、に分割されており、
前記第1伸縮材と前記第2伸縮材とは、分離可能に連結されているヘッドレスト。
【請求項2】
請求項1記載のヘッドレストであって、
前記第1フラップ部と前記第2フラップ部は、ぞれぞれ、複数の折り曲げ軸に沿って折り曲げ可能であり、
前記後面第1表皮は、
前記第1フラップ部の複数の折り曲げ軸のうち前記第1端から最も離れた折り曲げ軸を前記第1端から幅方向に跨いでおり、
前記後面第2表皮は、
前記第2フラップ部の複数の折り曲げ軸のうち前記第2端から最も離れた折り曲げ軸を前記第2端から幅方向に跨いでいるヘッドレスト。
【請求項3】
請求項
1又は2記載のヘッドレストであって、
前記トリムカバーは、前記伸縮材を覆う一つ以上の後面中央表皮をさらに有するヘッドレスト。
【請求項4】
請求項
3記載のヘッドレストであって、
前記第1フラップ部と前記第2フラップ部との間に設けられているベース部と、
前記ヘッドレストを前記乗物用シートのシートバックに取り付けるための一対のステーと、
を備え、
前記一対のステーは、前記幅方向に互いに間隔をあけて、前記ベース部の後面から延びており、
前記トリムカバーは、前記ベース部の後面において、前記一対のステーの基端部よりも上側に配置される上側伸縮材と、前記一対のステーの基端部よりも下側に配置される下側伸縮材と、を有し、
前記後面中央表皮は、前記上側伸縮材を覆う後面中央上側表皮と、前記下側伸縮材を覆う後面中央下側表皮と、を有し、
前記後面中央上側表皮と前記後面中央下側表皮とは、分離可能に連結されており、
前記後面中央上側表皮の下端部と前記後面中央下側表皮の上端部との少なくとも一方は、前記一対のステーを収容する一対の切り欠き部を有するヘッドレスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートのヘッドレストに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたヘッドレストは、本体部と、本体部の左右の側部に設けられた可動なウイングとを有する。ウイングが本体部に対して起こされた状態で、ウイングは、側方に傾けられた着座者の頭部を支持可能である。ヘッドレストの前面側において、ウイングと本体部との間には伸縮性を有するカバーが張られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2017/0197529号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたヘッドレストは、ヘッドレストの後面側において、ウイングの可動機構が露出している。このため、乗物用シートの美観を損ない、周囲の人々に危害感を与える虞がある。ヘッドレストの後面側にもカバーが設けられ、ウイングの可動機構が後面カバーによって覆い隠される場合に、ウイングが寝かされた際に、弛み又は皺が後面カバーに生じ、乗物用シートの美観が損なわれる。後面カバーが伸縮性を有していれば、弛み又は皺は抑制され得るが、カバーの材料が制約される。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、乗物用シートの美観を高めることが可能なヘッドレストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の乗物用シートのヘッドレストは、前記ヘッドレストの上下方向に延びる一つの折り曲げ軸又は前記ヘッドレストの幅方向に間隔をあけて上下方向に延びる複数の折り曲げ軸に沿って折り曲げ可能なフラップ部を、前記ヘッドレストの幅方向両側の第1端側及び第2端側にそれぞれ備え、前記ヘッドレストのトリムカバーは、前記ヘッドレストの前面に配置された前面表皮と、前記第1端側の第1フラップ部の折り曲げ軸、又は、前記第1端側の第1フラップ部の複数の折り曲げ軸のうち少なくとも前記第1端に最も近い折り曲げ軸、を前記第1端から前記幅方向に跨ぎ、前記第1フラップ部の後面に配置された後面第1表皮と、前記第2端側の第2フラップ部の折り曲げ軸、又は、前記第2端側の第2フラップ部の複数の折り曲げ軸のうち少なくとも前記第2端に最も近い折り曲げ軸、を前記第2端から前記幅方向に跨ぎ、前記第2フラップ部の後面に配置された後面第2表皮と、前記後面第1表皮と前記後面第2表皮との間に架け渡された一つ以上の伸縮材と、を有し、前記伸縮材は、前記後面第1表皮に接合されている第1伸縮材と、前記後面第2表皮に接合されている第2伸縮材と、に分割されており、前記第1伸縮材と前記第2伸縮材とは、分離可能に連結されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、乗物用シートの美観を高めることが可能なヘッドレストを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態を説明するための、乗物用シートの一例の斜視図である。
【
図2】
図1の乗物用シートのヘッドレストの前面側の斜視図である。
【
図4】
図2のヘッドレストの後面側の斜視図である。
【
図5】
図2のヘッドレストの後面側の斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態を説明するためのヘッドレストの他の例の後面側の斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態を説明するためのヘッドレストの他の例の前面側の斜視図である。
【
図8】
図7のヘッドレストの後面側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施形態を説明するための乗物用シートの一例を示し、
図2及び
図3は、
図1の乗物用シートのヘッドレストを示す。
【0010】
乗物用シート1は、航空機に搭載される乗物用シートであり、シート1に着座する乗員(以下、着座者という)の臀部及び大腿部を支持するシートクッション(不図示)と、着座者の腰部及び背部を支持するシートバック2と、着座者の頭部を支持するヘッドレスト3とを備える。ヘッドレスト3は、シートバック2の上方に配置され、シートバック2に組付けられている。以下、ヘッドレスト3において、着座者の頭部に接する面をヘッドレスト3の前面といい、その反対側の面をヘッドレスト3の後面という。
【0011】
ヘッドレスト3は、ヘッドレスト3の幅方向の中央部に設けられているベース部4と、ヘッドレスト3の幅方向の第1端3A側に設けられている第1フラップ部5Aと、幅方向の第2端3B側に設けられている第2フラップ部5Bとを有する。第1フラップ部5Aは、ヘッドレスト3の上下方向に延びる折り曲げ軸A1に沿って前側(着座者の頭部側)に折り曲げ可能であり、折り曲げ軸A1は、ベース部4と第1フラップ部5Aとの間に設けられている。第2フラップ部5Bもまた、ヘッドレスト3の上下方向に延びる折り曲げ軸B1に沿って前側に折り曲げ可能であり、折り曲げ軸B1は、ベース部4と第2フラップ部5Bとの間に設けられている。
【0012】
図3に示すように、ヘッドレスト3は、フレーム10と、クッションパッド11と、フレーム10及びクッションパッド11を覆うトリムカバー12と、一対のステー13とを備える。
【0013】
フレーム10は、金属材料又は比較的硬質な樹脂材料からなり、ヘッドレスト3の骨格を形成する。フレーム10は、フレームベース部20と、一対のフレームフラップ部21A及びフレームフラップ部21Bとを有する。フレームベース部20はベース部4(
図2参照)の骨格を形成し、フレームフラップ部21Aは第1フラップ部5A(
図2参照)の骨格を形成し、フレームフラップ部21Bは第2フラップ部5B(
図2参照)の骨格を形成する。
【0014】
フレームフラップ部21Aは、ヒンジ22Aを介して回動可能にフレームベース部20に連結されている。ヒンジ22Aのヒンジ軸は、第1フラップ部5Aの折り曲げ軸A1(
図1参照)に一致する。フレームフラップ部21Bは、ヒンジ22Bを介して回動可能にフレームベース部20に連結されている。ヒンジ22Bのヒンジ軸は、第2フラップ部5Bの折り曲げ軸B1(
図1参照)に一致する。フレームフラップ部21A及びフレームフラップ部21Bは、図示しないロック機構により、一つ以上の所定の回動角度又は任意の回動角度に保持可能である。
【0015】
クッションパッド11は、例えば軟質ウレタンフォーム等の発泡材からなる。クッションパッド11は、フレーム10の少なくとも前面を覆ってフレーム10に組み付けられる。
【0016】
トリムカバー12は、ヘッドレスト3の前面に配置される前面表皮30と、第1フラップ部5Aの後面に配置される後面第1表皮31Aと、第2フラップ部5Bの後面に配置される後面第2表皮31Bと、前面表皮30の縁部と後面第1表皮31A及び後面第2表皮31Bそれぞれの縁部とを接続するマチ表皮32とを有し、これらの表皮が縫合されて形成されている。なお、マチ表皮32は省略され、前面表皮30の縁部と後面第1表皮31A及び後面第2表皮31Bそれぞれの縁部とが直接縫合されてもよい。
【0017】
トリムカバー12を形成する各表皮は、例えば皮革(天然皮革、合成皮革)、布(ニット、織布、不織布)等の表皮材からなり、表皮材は、皮革又は布の単層構造であってもよいし、皮革又は布を表地として、皮革又は布にワディング(例えば弾性変形可能な軟質ポリウレタンフォームなどの発泡体)が積層された多層構造であってもよい。
【0018】
前面表皮30は、一枚の表皮材によって形成されてもよいし、複数枚の表皮材によって形成されてもよい。
図3に示す例では、前面表皮30は、ベース部4の前面に配置される前面中央表皮33と、第1フラップ部5Aの前面に配置される前面第1表皮34Aと、第2フラップ部5Bの前面に配置される前面第2表皮34Bとによって形成されている。前面中央表皮33と前面第1表皮34Aとの縫合部は折り曲げ軸A1(
図2参照)に沿って設けられており、前面中央表皮33と前面第2表皮34Bとの縫合部は折り曲げ軸B1(
図2参照)に沿って設けられている。
【0019】
一対のステー13は、ヘッドレスト3をシートバック2に組み付けるためのものであり、ヘッドレスト3の幅方向に互いに間隔をあけて設けられており、シートバック2の上端部に差し込まれる。
図3に示す例では、一対のステー13は、金属材料からなるロッド又はパイプがU字状に折り曲げられて一体に形成されており、一対のステー13を連結しているステー連結部40がフレームベース部20の後面に固定される。一対のステー13は、ステー連結部40に接続されている基端部41と、基端部41から延びる差込部42とをそれぞれ有する。基端部41は、フレームベース部20の後面から起き上がるように曲げられている。差込部42は、フレームベース部20の後面に沿うように曲げられ、下方に延びている。
【0020】
【0021】
上述したとおり、トリムカバー12は、第1フラップ部5Aの後面に配置される後面第1表皮31Aと、第2フラップ部5Bの後面に配置される後面第2表皮31Bとを有し、さらに、後面第1表皮31Aと後面第2表皮31Bとの間に架け渡されている上側伸縮材35及び下側伸縮材36と、上側伸縮材35を覆う後面中央上側表皮37と、下側伸縮材36を覆う後面中央下側表皮38とを有する。
【0022】
後面第1表皮31Aは、第1フラップ部5Aの折り曲げ軸A1をヘッドレスト3の第1端3Aから幅方向に跨いでおり、折り曲げ軸A1を越える後面第1表皮31Aの内側縁部31Aeは、ベース部4の後面に配置されている。後面第2表皮31Bは、第2フラップ部5Bの折り曲げ軸B1をヘッドレスト3の第2端3Bから幅方向に跨いでおり、折り曲げ軸B1を越える後面第2表皮31Bの内側縁部31Beは、後面第1表皮31Aの内側縁部31Aeとの間に間隔をあけて、ベース部4の後面に配置されている。
【0023】
フレーム10及びクッションパッド11は、後面第1表皮31Aの内側縁部31Aeと後面第2表皮31Bの内側縁部31Beとの間に形成される開口を通してトリムカバー12の内部に収納される。一対のステー13は、上記開口を通してトリムカバー12の外部に引き出され、ベース部4の後面から延びている。
【0024】
上側伸縮材35は、一対のステー13それぞれの基端部41よりも上側に配置されており、上側伸縮材35の長手方向の一方の端部が後面第1表皮31Aの内側縁部31Aeに縫合され、他方の端部が後面第2表皮31Bの内側縁部31Beに縫合されている。下側伸縮材36は、一対のステー13それぞれの基端部41よりも下側に配置されており、下側伸縮材36の長手方向の一方の端部が後面第1表皮31Aの内側縁部31Aeに縫合され、他方の端部が後面第2表皮31Bの内側縁部31Beに縫合されている。上側伸縮材35及び下側伸縮材36は、例えばゴム帯である。
【0025】
好ましくは、
図4に示すにように、上側伸縮材35は、後面第1表皮31Aの内側縁部31Aeに縫合される第1伸縮材35Aと、後面第2表皮31Bの内側縁部31Beに縫合される第2伸縮材35Bとに分割され、下側伸縮材36もまた、後面第1表皮31Aの内側縁部31Aeに縫合される第1伸縮材36Aと、後面第2表皮31Bの内側縁部31Beに縫合される第2伸縮材36Bとに分割される。そして、第1伸縮材35Aと第2伸縮材35Bとは連結部材50を介して分離可能に連結され、第1伸縮材36Aと第2伸縮材36Bもまた連結部材51を介して分離可能に連結される。第1伸縮材35Aと第2伸縮材35Bとが互いに分離され、第1伸縮材36Aと第2伸縮材36Bとが互いに分離されることにより、後面第1表皮31Aの内側縁部31Aeと後面第2表皮31Bの内側縁部31Beとの間の開口を広げてトリムカバー12を容易に着脱できる。連結部材50及び連結部材51は、例えば一対のクリップ、面ファスナー、スナップボタン等である。
【0026】
後面中央上側表皮37は、一対のステー13それぞれの基端部41よりも上側でベース部4の後面に配置されており、上側伸縮材35を覆っている。後面中央上側表皮37を上方に開くことができるように、後面中央上側表皮37の上側縁部だけがマチ表皮32に縫合されている。後面中央下側表皮38は、一対のステー13それぞれの基端部41よりも下側でベース部4の後面に配置されており、下側伸縮材36を覆っている。後面中央下側表皮38を下方に開くことができるように、後面中央下側表皮38の下側縁部だけがマチ表皮32に縫合されている。後面中央上側表皮37及び後面中央下側表皮38が開かれることにより、後面第1表皮31Aの内側縁部31Aeと後面第2表皮31Bの内側縁部31Beとの間の開口が露出する。
【0027】
後面中央上側表皮37の下側縁部には、例えば樹脂材料からなる芯材52が接合されており、後面中央下側表皮38の上側縁部には、芯材52を係止可能な断面J字状のフック53が接合されている。後面中央上側表皮37及び後面中央下側表皮38が閉じられ、芯材52とフック53とが係合することにより、後面中央上側表皮37と後面中央下側表皮38とは分離可能に連結される。後面中央上側表皮37と後面中央下側表皮38とが連結されている状態で、後面第1表皮31Aの内側縁部31Aeと後面第2表皮31Bの内側縁部31Beとの間の開口と、この開口において後面第1表皮31Aと後面第2表皮31Bとの間に架け渡されている上側伸縮材35及び下側伸縮材36とは、後面中央上側表皮37と後面中央下側表皮38とによって覆い隠される。後面中央下側表皮38の上側縁部には一対の切り欠き部55が設けられており、一対のステー13は、一対の切り欠き部55を通してトリムカバー12の外部に引き出される。なお、後面中央上側表皮37と後面中央下側表皮38とは、例えば面ファスナー、スナップボタン等によって分離可能に連結されてもよい。
【0028】
例えば第1フラップ部5Aが折り曲げ軸A1に沿って前側(着座者の頭部側)に折り曲げられた際に、後面第1表皮31Aの内側縁部31Aeは、第1端3A側に向けて引っ張られる。一方、第1フラップ部5Aが曲げ戻された際に、後面第1表皮31Aの内側縁部31Aeは、第1端3A側とは反対側に向けて押し戻される。後面第1表皮31Aには、上側伸縮材35及び下側伸縮材36の張力が常に作用しており、内側縁部31Aeの押し引きにかかわらず、弛み又は皺が後面第1表皮31Aに生じることが抑制される。同様に、後面第2表皮31Bにも、上側伸縮材35及び下側伸縮材36の張力が常に作用しており、弛み又は皺が後面第2表皮31Bに生じることが抑制される。これにより、乗物用シート1の美観が高まる。
【0029】
また、一対のステー13がベース部4の後面から延びている本例において、伸縮材として上側伸縮材35と下側伸縮材36とを含み、上側伸縮材35と下側伸縮材36とが、一対のステー13を避けて、後面第1表皮31A及び後面第2表皮31Bそれぞれの上側及び下側に略等しく張力を作用させている。これにより、弛み又は皺が後面第1表皮31A及び後面第2表皮31Bに生じることが一層抑制され、乗物用シート1の美観がさらに高まる。
【0030】
また、後面第1表皮31Aの内側縁部31Aeと後面第2表皮31Bの内側縁部31Beとの間の開口と、この開口において後面第1表皮31Aと後面第2表皮31Bとの間に架け渡されている上側伸縮材35及び下側伸縮材36とが覆い隠されることにより、乗物用シート1の美観がさらに高まる。
【0031】
なお、
図6に示すように、一対のステー13は、幅方向に間隔をあけて、ベース部4の下面から延びてもよい。この場合、一対のステー13を避けるように、後面第1表皮31Aと後面第2表皮31Bとの間に架け渡される伸縮材を上下に分ける必要がなく、
図6に示す例では、上側伸縮材35及び下側伸縮材36よりも幅広な伸縮材60が後面第1表皮31Aと後面第2表皮31Bとの間に架け渡されている。なお、伸縮材60もまた、後面第1表皮31Aの内側縁部31Aeに縫合される第1伸縮材60Aと、後面第2表皮31Bの内側縁部31Beに縫合される第2伸縮材60Bとに分割され、第1伸縮材60Aと第2伸縮材60Bとは連結部材61を介して分離可能に連結されている。連結部材61は、例えば一対のクリップ、面ファスナー、スナップボタン等である。
【0032】
また、伸縮材60は後面中央表皮62によって覆われている。後面中央表皮62は、ベース部4の後面全体に配置されており、上方に開くことができるように、後面中央表皮62の上側縁部だけがマチ表皮32に縫合されている。後面中央表皮62の下側縁部には、例えば面ファスナー、スナップボタン等の連結部材63が接合されており、ベース部4の下面に配置されているマチ表皮32の縁部にも、連結部材63が接合されている。後面中央表皮62が閉じられ、後面中央表皮62及びマチ表皮32それぞれの連結部材63同士が係合することにより、後面中央表皮62とマチ表皮32とが分離可能に連結される。
【0033】
ここまで、第1フラップ部5Aは、一つの折り曲げ軸A1に沿って折り曲げ可能であり、第2フラップ部5Bもまた、一つの折り曲げ軸B1に沿って折り曲げ可能であるものとして説明したが、
図7及び
図8に示すように、第1フラップ部及び第2フラップそれぞれに、複数の折り曲げ軸が設定されてもよい。
【0034】
図7及び
図8に示すヘッドレスト103において、ヘッドレスト103の幅方向の第1端103A側に設けられている第1フラップ部105Aは、ヘッドレスト103の幅方向に間隔をあけて上下方向に延びる折り曲げ軸A1及び折り曲げ軸A2に沿って前側(着座者の頭部側)に折り曲げ可能である。折り曲げ軸A1は、ベース部104と第1フラップ部105Aとの間に設けられており、折り曲げ軸A2は、折り曲げ軸A1と第1端103Aとの間に設けられている。ヘッドレスト103の幅方向の第2端103B側に設けられている第2フラップ部105Bもまた、ヘッドレスト103の幅方向に間隔をあけて上下方向に延びる折り曲げ軸B1及び折り曲げ軸B2に沿って前側に折り曲げ可能である。折り曲げ軸B1は、ベース部104と第2フラップ部105Bとの間に設けられており、折り曲げ軸B2は、折り曲げ軸B1と第2端103Bとの間に設けられている。
【0035】
トリムカバー112は、第1フラップ部105Aの後面に配置される後面第1表皮131Aと、第2フラップ部105Bの後面に配置される後面第2表皮131Bとを有し、さらに、後面第1表皮131Aと後面第2表皮131Bとの間に架け渡されている上側伸縮材135及び下側伸縮材136と、上側伸縮材135を覆う後面中央上側表皮137と、下側伸縮材136を覆う後面中央下側表皮138とを有する。
【0036】
後面第1表皮131Aは、第1端103Aから最も離れた第1フラップ部105Aの折り曲げ軸A1を第1端103Aから幅方向に跨いでおり、折り曲げ軸A1を越える後面第1表皮131Aの内側縁部131Aeは、ベース部104の後面に配置されている。後面第2表皮131Bは、第2端103Bから最も離れた第2フラップ部105Bの折り曲げ軸B1を第2端103Bから幅方向に跨いでおり、折り曲げ軸B1を越える後面第2表皮131Bの内側縁部131Beは、後面第1表皮131Aの内側縁部131Aeとの間に間隔をあけて、ベース部104の後面に配置されている。
【0037】
上側伸縮材135は、一対のステー113それぞれの基端部141よりも上側に配置されており、上側伸縮材135の長手方向の一方の端部が後面第1表皮131Aの内側縁部131Aeに縫合され、他方の端部が後面第2表皮131Bの内側縁部131Beに縫合されている。上側伸縮材135は、後面第1表皮131Aの内側縁部131Aeに縫合される第1伸縮材135Aと、後面第2表皮131Bの内側縁部131Beに縫合される第2伸縮材135Bとに分割され、第1伸縮材135Aと第2伸縮材135Bとは連結部材150を介して分離可能に連結されている。下側伸縮材136は、一対のステー113それぞれの基端部141よりも下側に配置されており、下側伸縮材136の長手方向の一方の端部が後面第1表皮131Aの内側縁部131Aeに縫合され、他方の端部が後面第2表皮131Bの内側縁部131Beに縫合されている。下側伸縮材136は、後面第1表皮131Aの内側縁部131Aeに縫合される第1伸縮材136Aと、後面第2表皮131Bの内側縁部131Beに縫合される第2伸縮材136Bとに分割され、第1伸縮材136Aと第2伸縮材136Bとは連結部材151を介して分離可能に連結されている。
【0038】
後面中央上側表皮137は、一対のステー113それぞれの基端部141よりも上側でベース部104の後面に配置され、上側伸縮材135を覆う。後面中央下側表皮138は、一対のステー113それぞれの基端部141よりも下側でベース部104の後面に配置され、下側伸縮材136を覆う。上方に開くことができる後面中央上側表皮137の下側縁部には、芯材152が接合されており、下方に開くことができる後面中央下側表皮138の上側縁部には、芯材152を係止可能な断面J字状のフック153が接合されている。後面中央上側表皮137及び後面中央下側表皮138が閉じられ、芯材152とフック153とが係合することにより、後面中央上側表皮137と後面中央下側表皮138とは分離可能に連結される。後面中央上側表皮137と後面中央下側表皮138とが連結されている状態で、後面第1表皮131Aの内側縁部131Aeと後面第2表皮131Bの内側縁部131Beとの間の開口と、この開口において後面第1表皮131Aと後面第2表皮131Bとの間に架け渡されている上側伸縮材135及び下側伸縮材136とは、後面中央上側表皮137と後面中央下側表皮138とによって覆い隠される。
【0039】
例えば第1フラップ部105Aが折り曲げ軸A1及び/又は折り曲げ軸A2に沿って前側(着座者の頭部側)に折り曲げられた際に、後面第1表皮131Aの内側縁部131Aeは、第1端103A側に向けて引っ張られる。一方、第1フラップ部105Aが曲げ戻された際に、後面第1表皮131Aの内側縁部131Aeは、第1端103A側とは反対側に向けて押し戻される。後面第1表皮131Aには、上側伸縮材135及び下側伸縮材136の張力が常に作用しており、内側縁部131Aeの押し引きにかかわらず、弛み又は皺が後面第1表皮131Aに生じることが抑制される。同様に、後面第2表皮131Bにも、上側伸縮材135及び下側伸縮材136の張力が常に作用しており、弛み又は皺が後面第2表皮131Bに生じることが抑制される。
【0040】
なお、後面第1表皮131Aが、少なくとも第1端103Aに最も近い折り曲げ軸A2を第1端103Aから幅方向に跨ぎ、後面第2表皮131Bが、少なくとも第2端103Bに最も近い折り曲げ軸B2を第2端103Bから幅方向に跨いでいればよい。ただし、後面中央上側表皮137及び後面中央下側表皮138の弛み又は皺を抑制する観点から、
図8に示したように、後面第1表皮131Aは、第1端103Aから最も離れた第1フラップ部105Aの折り曲げ軸A1を第1端103Aから幅方向に跨いでおり、後面第2表皮131Bは、第2端103Bから最も離れた第2フラップ部105Bの折り曲げ軸B1を第2端103Bから幅方向に跨いでいることが好ましい。この場合、後面中央上側表皮137及び後面中央下側表皮138が、折り曲げ軸A1と折り曲げ軸B1との間でベース部4の後面に配置される。これにより、後面中央上側表皮137及び後面中央下側表皮138が、折り曲げ軸A1及び/又は折り曲げ軸B1に沿って折り曲げられることがなく、後面中央上側表皮137及び後面中央下側表皮138の弛み又は皺が抑制される。
【0041】
以上、航空機に搭載される乗物用シート1を例に本発明を説明したが、乗物用シート1の構成は、自動車等の車両や船舶といった航空機以外の乗物のシートにも適用可能である。
【0042】
以上説明したとおり、本明細書に開示された乗物用シートのヘッドレストは、前記ヘッドレストの上下方向に延びる一つの折り曲げ軸又は前記ヘッドレストの幅方向に間隔をあけて上下方向に延びる複数の折り曲げ軸に沿って折り曲げ可能なフラップ部を、前記ヘッドレストの幅方向両側の第1端側及び第2端側にそれぞれ備え、前記ヘッドレストのトリムカバーは、前記ヘッドレストの前面に配置された前面表皮と、前記第1端側の第1フラップ部の折り曲げ軸のうち少なくとも前記第1端に最も近い折り曲げ軸を前記第1端から前記幅方向に跨ぎ、前記第1フラップ部の後面に配置された後面第1表皮と、前記第2端側の第2フラップ部の折り曲げ軸のうち少なくとも前記第2端に最も近い折り曲げ軸を前記第2端から前記幅方向に跨ぎ、前記第2フラップ部の後面に配置された後面第2表皮と、前記後面第1表皮と前記後面第2表皮との間に架け渡された一つ以上の伸縮材と、を有する。
【0043】
また、本明細書に開示された乗物用シートのヘッドレストは、前記後面第1表皮は、前記第1フラップ部の折り曲げ軸のうち前記第1端から最も離れた折り曲げ軸を前記第1端から幅方向に跨いでおり、前記後面第2表皮は、前記第2フラップ部の折り曲げ軸のうち前記第2端から最も離れた折り曲げ軸を前記第2端から幅方向に跨いでいる。
【0044】
また、本明細書に開示された乗物用シートのヘッドレストは、前記伸縮材は、前記後面第1表皮に接合されている第1伸縮材と、前記後面第2表皮に接合されている第2伸縮材と、に分割されており、前記第1伸縮材と前記第2伸縮材とは、分離可能に連結されている。
【0045】
また、本明細書に開示された乗物用シートのヘッドレストは、前記トリムカバーは、前記伸縮材を覆う一つ以上の後面中央表皮をさらに有する。
【0046】
また、本明細書に開示された乗物用シートのヘッドレストは、前記第1フラップ部と前記第2フラップ部との間に設けられているベース部と、前記ヘッドレストを前記乗物用シートのシートバックに取り付けるための一対のステーと、を備え、前記一対のステーは、前記幅方向に互いに間隔をあけて、前記ベース部の後面から延びており、前記トリムカバーは、前記ベース部の後面において、前記一対のステーの基端部よりも上側に配置される上側伸縮材と、前記一対のステーの基端部よりも下側に配置される下側伸縮材と、を有し、前記後面中央表皮は、前記上側伸縮材を覆う後面中央上側表皮と、前記下側伸縮材を覆う後面中央下側表皮と、を有し、前記後面中央上側表皮と前記後面中央下側表皮とは、分離可能に連結されており、前記後面中央上側表皮の下端部と前記後面中央下側表皮の上端部との少なくとも一方は、前記一対のステーを収容する一対の切り欠き部を有する。
【符号の説明】
【0047】
1 乗物用シート
2 シートバック
3 ヘッドレスト
3A ヘッドレストの第1端
3B ヘッドレストの第2端
4 ベース部
5A 第1フラップ部
5B 第2フラップ部
10 フレーム
11 クッションパッド
12 トリムカバー
13 ステー
20 フレームベース部
21A フレームフラップ部
21B フレームフラップ部
22A ヒンジ
22B ヒンジ
30 前面表皮
31A 後面第1表皮
31Ae 後面第1表皮の内側縁部
31B 後面第2表皮
31Be 後面第2表皮の内側縁部
32 マチ表皮
33 前面中央表皮
34A 前面第1表皮
34B 前面第2表皮
35 上側伸縮材
35A 第1伸縮材
35B 第2伸縮材
36 下側伸縮材
36A 第1伸縮材
36B 第2伸縮材
37 後面中央上側表皮
38 後面中央下側表皮
40 ステー連結部
41 ステーの基端部
42 ステーの差込部
50 連結部材
51 連結部材
52 芯材
53 フック
55 切り欠き部
60 伸縮材
60A 第1伸縮材
60B 第2伸縮材
61 連結部材
62 後面中央表皮
63 連結部材
103 ヘッドレスト
103A ヘッドレストの第1端
103B ヘッドレストの第2端
104 ベース部
105A 第1フラップ部
105B 第2フラップ部
112 トリムカバー
113 ステー
131A 後面第1表皮
131Ae 後面第1表皮の内側縁部
131B 後面第2表皮
131Be 後面第2表皮の内側縁部
135 上側伸縮材
135A 第1伸縮材
135B 第2伸縮材
136 下側伸縮材
136A 第1伸縮材
136B 第2伸縮材
137 後面中央上側表皮
138 後面中央下側表皮
141 ステーの基端部
150 連結部材
151 連結部材
152 芯材
153 フック
A1 折り曲げ軸
A2 折り曲げ軸
B1 折り曲げ軸
B2 折り曲げ軸