(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】無線電力伝送システム及び受電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20220517BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220517BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20220517BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20220517BHJP
H01M 10/46 20060101ALI20220517BHJP
H01F 38/14 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J7/00 301D
H02J7/10 H
H02J7/00 S
H02H7/18
H01M10/46
H01F38/14
(21)【出願番号】P 2018047703
(22)【出願日】2018-03-15
【審査請求日】2020-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正俊
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-007462(JP,A)
【文献】国際公開第2017/042904(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
H01F 38/18
H01M 10/42-10/48
H02H 7/00
H02H 7/10-7/20
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H02J 50/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電流を高周波電流に変換するインバータと、
前記インバータで変換された高周波電流に応じた交流電力を無線で伝送する送電コイルと、前記送電コイルと直列に接続される送電キャパシタとを有する送電共振器と、
前記インバータと前記送電コイルとの間に接続され、インダクタとキャパシタとを有するT型回路と、
を備える送電装置と、
前記送電コイルから伝送された前記交流電力を受ける受電コイルと、前記受電コイルと直列に接続される受電キャパシタとを有する受電共振器と、
前記受電コイルが受けた前記交流電力を直流電力に変換する交直変換器と、
前記交直変換器で変換された直流電力を蓄積するバッテリと、
を備える受電装置と、
を有し、
前記受電コイルによる漏れ磁束の影響が残るように、前記高周波電流の周波数での前記受電コイルのインピーダンスの絶対値は、前記受電キャパシタのインピーダンスの絶対値よりも大きい無線電力伝送システム。
【請求項2】
前記T型回路は、前記キャパシタをシャント素子とするT型回路である請求項1に記載の無線電力伝送システム。
【請求項3】
前記T型回路は、前記インダクタをシャント素子とするT型回路である請求項1に記載の無線電力伝送システム。
【請求項4】
直流電流を高周波電流に変換するインバータと、
前記インバータで変換された高周波電流に応じた交流電力を無線で伝送する送電コイルと、前記送電コイルと直列に接続される送電キャパシタとを有する送電共振器と、
前記インバータと前記送電コイルとの間に接続され、インダクタとキャパシタとを有するT型回路と、
を備える送電装置と、
前記送電コイルから伝送された前記交流電力を受ける受電コイルと、前記受電コイルと直列に接続される受電キャパシタとを有する受電共振器と、
前記受電コイルが受けた前記交流電力を直流電力に変換する交直変換器と、
前記交直変換器で変換された直流電力を蓄積するバッテリと、
前記交直変換器と前記受電キャパシタとの間に直列に接続された受電インダクタと、
を備える受電装置と、
を有し、
前記受電コイルによる漏れ磁束の影響が残るように、前記高周波電流の周波数での前記受電コイルと前記受電インダクタとのインピーダンスの和の絶対値は、前記受電キャパシタのインピーダンスの絶対値よりも大きい無線電力伝送システム。
【請求項5】
前記T型回路は、前記キャパシタをシャント素子とするT型回路である請求項4に記載の無線電力伝送システム。
【請求項6】
前記T型回路は、前記インダクタをシャント素子とするT型回路である請求項4に記載の無線電力伝送システム。
【請求項7】
直流電流を高周波電流に変換するインバータと、前記インバータで変換された高周波電流に応じた交流電力を無線で伝送する送電コイルと、前記送電コイルと直列に接続される送電キャパシタとを有する送電共振器と、前記インバータと前記送電コイルとの間に接続され、インダクタとキャパシタとを有するT型回路とを備える送電装置の前記送電コイルから伝送された前記交流電力を受ける受電コイルと、前記受電コイルと直列に接続される受電キャパシタとを有する受電共振器と、
前記受電コイルが受けた前記交流電力を直流電力に変換する交直変換器と、
前記交直変換器で変換された直流電力を蓄積するバッテリと、
を備え、
前記受電コイルによる漏れ磁束の影響が残るように、前記高周波電流の周波数での前記受電コイルのインピーダンスの絶対値は、前記受電キャパシタのインピーダンスの絶対値よりも大きい受電装置。
【請求項8】
直流電流を高周波電流に変換するインバータと、前記インバータで変換された高周波電流に応じた交流電力を無線で伝送する送電コイルと、前記送電コイルと直列に接続される送電キャパシタとを有する送電共振器と、前記インバータと前記送電コイルとの間に接続され、インダクタとキャパシタとを有するT型回路とを備える送電装置の前記送電コイルから伝送された前記交流電力を受ける受電コイルと、前記受電コイルと直列に接続される受電キャパシタとを有する受電共振器と、
前記受電コイルが受けた前記交流電力を直流電力に変換する交直変換器と、
前記交直変換器で変換された直流電力を蓄積するバッテリと、
前記交直変換器と前記受電キャパシタとの間に直列に接続された受電インダクタと、
を備え、
前記受電コイルによる漏れ磁束の影響が残るように、前記高周波電流の周波数での前記受電コイルと前記受電インダクタとのインピーダンスの和の絶対値は、前記受電キャパシタのインピーダンスの絶対値よりも大きい受電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線電力伝送システム及びそれに用いられる受電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無線電力伝送システムの方式の1つとして、送電コイルを含む送電装置と受電コイルを含む受電装置とを用いた電磁誘導によって電力を伝送する方式が知られている。この種の無線電力伝送システムの送電装置において、電源の出力にインピーダンス変換器となるT型回路を挿入する構成が知られている。このようなT型回路を用いた無線電力伝送システムでは、送電コイルを定電流で駆動することができる。
【0003】
送電装置にT型回路を挿入する技術を直列共振型の無線電力伝送システムに応用すると、受電装置の側に負荷が存在しない場合又は受電装置が開放状態となった場合の送電装置の電源から見たシステムの負荷を略無限大に置き換えることができる。このため、例えば送電装置の近くに受電装置がないときに誤って電力の伝送が開始されたり、途中で電力の伝送が遮断されたりした場合であっても、送電装置における電源は保護される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
送電装置にT型回路を挿入する技術は、送受電ともに直列共振器を用いて無線給電によってバッテリを充電する無線電力伝送システムにも適用され得る。しかしながら、この場合の無線電力伝送システムでは、T型回路においてインピーダンス変換が行われた後、さらに送受電の直列共振器でもインピーダンス変換が行われる。このとき、バッテリから見たシステムは電圧源に置き換えられる。このため、電源の電圧がバッテリの電圧に近づくにしたがって、バッテリの充電電流が急激に上昇してしまう。
【0006】
本実施形態は、バッテリの充電電流の急激な上昇を抑制することができる無線電力伝送システム及びそれに用いられる受電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
無線電力伝送システムは、送電装置と受電装置とを有する。送電装置は、直流電流を高周波電流に変換するインバータと、インバータで変換された高周波電流に応じた交流電力を無線で伝送する送電コイル及び送電コイルと直列に接続される送電キャパシタを有する送電共振器と、インバータと送電コイルとの間に接続され、インダクタとキャパシタとを有するT型回路とを備える。受電装置は、送電コイルから伝送された交流電力を受ける受電コイル及び受電コイルと直列に接続される受電キャパシタを有する受電共振器と、受電コイルが受けた交流電力を直流電力に変換する交直変換器と、交直変換器で変換された直流電力を蓄積するバッテリとを備える。そして、受電コイルによる漏れ磁束の影響が残るように、高周波電流の周波数での受電コイルのインピーダンスの絶対値は、受電キャパシタのインピーダンスの絶対値よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、1つの実施形態に係る無線電力伝送システムの構成を示す回路図である。
【
図2】
図2は、受電コイルのインピーダンスの絶対値が受電キャパシタのインピーダンスの絶対値と等しい場合において、インバータの出力電圧実効値を徐々に上げていったときのバッテリを流れる充電電流の変化を示した図である。
【
図3】
図3は、受電コイルのインピーダンスの絶対値が受電キャパシタのインピーダンスの絶対値よりも大きい場合において、インバータの出力電圧実効値を徐々に上げていったときのバッテリを流れる充電電流の変化を示した図である。
【
図4】
図4は、変形例1に係る無線電力伝送システムの構成を示す回路図である。
【
図5】
図5は、変形例2に係る無線電力伝送システムの構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
図1は、1つの実施形態に係る無線電力伝送システムの構成を示す回路図である。無線電力伝送システムは、送電装置と受電装置とを有する2端子対回路で表される。送電装置は、電源を有し、電源によって生成された電力を受電装置に伝送する。受電装置は、バッテリを有し、送電装置から伝送された電力に従ってバッテリを充電する。送電装置は、例えば固定された充電ステーションに設けられる。一方、受電装置は、移動できる機器に設けられる。送電装置と受電装置とは互いに電気接点を有していないが、送電装置と受電装置とが近接したときの電磁結合により、無線での電力の伝送が行われる。以下、送電装置と受電装置のそれぞれについて説明する。
【0010】
送電装置は、高周波電源としてのインバータV1と、インダクタL1及びL2とキャパシタC1とを含むT型LCL回路と、送電コイルL3とを備える。また、送電コイルL3には、送電キャパシタC2が直列に接続されている。ここで、インダクタL1及びL2、送電コイルL3は、それぞれ、単一の素子である必要はなく、複数の素子によって所定のインダクタンスを有する素子として構成されていてもよい。同様に、キャパシタC1及びC2も、それぞれ、単一の素子である必要はなく、複数の素子によって所定のキャパシタンスを有する素子として構成されていてもよい。また、インダクタL1及びL2、送電コイルL3のインダクタンス、キャパシタC1及びC2のキャパシタンスは、例えば受電装置のバッテリV2に要求されるバッテリ電圧の範囲、バッテリV2の充電電流、送電コイルL3と受電コイルL4とで構成される変圧器に要求される結合係数の範囲、インバータV1の上限電圧といったパラメータに応じて適宜に設定されるものとする。
【0011】
インバータV1は、受電装置のバッテリの充電のための高周波電流を生成する高周波電源である。インバータV1は、送電装置に接続される直流電源装置から供給される直流電流を高周波電流に変換してT型LCL回路に出力する。
【0012】
T型LCL回路は、インバータV1の出力に接続されている。T型LCL回路のインダクタL1とインダクタL2とはインバータV1の出力に対して直列に接続されている。一方、キャパシタC1は、インバータV1の出力に対してシャント接続されている。ここで、インダクタL1とインダクタL2とは同じインダクタンスを有する素子である。また、インバータV1で生成される高周波電流の周波数におけるインダクタL1とインダクタL2のインピーダンスの和の絶対値がキャパシタC1のインピーダンスの絶対値と等しくなるように、インダクタL1、L2のインダクタンス及びキャパシタC1のキャパシタンスの値が設定されている。このようなT型LCL回路は、インピーダンス変換器(インピーダンス-アドミタンス変換器)として動作し、インバータV1で発生した定電圧に基づく高周波電流を定電流にして送電コイルL3に出力する。なお、インピーダンス変換器としてのT型回路は、π型回路に置き換えられてもよい。ただし、T型回路を用いたほうが、π型回路を用いるよりもインバータV1への負荷を軽減することができる。
【0013】
送電コイルL3は、送電装置と受電装置とが近接したときに、受電装置の受電コイルL4と電磁結合される。つまり、送電コイルL3は、送電装置と受電装置とが近接したときに変圧器の1次側コイルとして動作し、T型LCL回路から出力された高周波電流に応じた交流電力を受電コイルL4に伝送する。
【0014】
また、前述したように送電コイルL3には、送電キャパシタC2が直列に接続されている。送電コイルL3のインダクタンスと送電キャパシタC2のキャパシタンスとは、インバータV1で生成される高周波電流の周波数において略直列共振するように設定されている。通常、送電コイルL3と受電コイルL4の間にはギャップが生じる。このギャップ等に起因して、送電コイルL3と受電コイルL4の間には磁束の漏れが発生する。この漏れ磁束は、等価的には、送電コイルL3に直列に接続されたインダクタとして働く。この漏れ磁束によるインダクタ成分の影響により、送電装置における電源力率は低下する。送電コイルL3と送電キャパシタC2とによって形成される直列共振器により、漏れ磁束によるインダクタ成分の影響が打ち消される。これにより、電源力率の低下は補償される。
【0015】
受電装置は、受電コイルL4と、ダイオードD1、D2、D3、D4を含む交直変換器と、バッテリV2とを備える。また、受電コイルL4には、受電キャパシタC3が直列に接続されている。ここで、受電コイルL4は、単一の素子である必要はなく、複数の素子によって所定のインダクタンスを有する素子として構成されていてもよい。同様に、受電キャパシタC3も、単一の素子である必要はなく、複数の素子によって所定のキャパシタンスを有する素子として構成されていてもよい。また、受電コイルL4のインダクタンス、受電キャパシタC3のキャパシタンスは、例えば受電装置のバッテリV2のバッテリ電圧の範囲、充電電流、送電コイルL3と受電コイルL4とで構成される変圧器の結合係数の範囲、インバータV1の上限電圧といったパラメータに応じて適宜に設定されるものとする。
【0016】
受電コイルL4は、送電装置と受電装置とが近接したときに、送電装置の送電コイルL3と電磁結合される。つまり、受電コイルL4は、送電装置と受電装置とが近接したときに変圧器の2次側コイルとして動作し、送電コイルL3から伝送された交流電力を受ける。また、前述したように受電コイルL4には、受電キャパシタC3が直列に接続されている。受電コイルL4と受電キャパシタC3とによって形成される直列共振器により、漏れ磁束によるインダクタ成分の影響が打ち消される。これにより、電力の伝送効率の低下は補償される。ここで、本実施形態では、受電コイルL4と受電キャパシタC3とを完全には共振させずに意図的に漏れ磁束の影響を残すことでバッテリV2における急激な充電電流の上昇を抑制する。詳しくは後で説明する。
【0017】
交直変換器は、受電コイルL4に接続されている。交直変換器は、例えばダイオードD1、D2、D3、D4によるダイオードブリッジ回路である。この交直変換器は、受電コイルL4から出力される交流電力(交流電流)を直流電力(直流電流)に変換する。
【0018】
バッテリV2は、例えばリチウムイオンバッテリといったバッテリであって、交直変換器からの出力に応じて電力を蓄積する。受電装置を有する機器は、バッテリV2に蓄積された電力を用いて所望の動作をする。
【0019】
ここで、本実施形態の受電装置では、インバータV1で生成される高周波電流の周波数における受電コイルL4のインピーダンスの絶対値が受電キャパシタC3のインピーダンスの絶対値よりも大きくなるように、受電コイルL4のインダクタンス及び受電キャパシタC3のキャパシタンスの値が設定されている。すなわち、以下の(式1)の関係が成り立つように、インダクタンスLr及びキャパシタンスCrの値が設定される。なお、(式1)のωは高周波電流の角周波数であり、Lrは受電コイルのL4のインダクタンスであり、Crは受電キャパシタC3のキャパシタンスである。
【数1】
【0020】
図2は、受電コイルL4のインピーダンスの絶対値が受電キャパシタC3のインピーダンスの絶対値と等しい場合において、インバータV1の出力電圧実効値を徐々に上げていったときのバッテリV2を流れる充電電流の変化を示した図である。受電コイルL4のインピーダンスの絶対値が受電キャパシタC3のインピーダンスの絶対値と等しい場合、すなわち受電コイルL4と受電キャパシタC3とが直列共振している場合、バッテリV2から見たシステムは電圧源に置き換えられる。このとき、
図1の無線電力伝送システムは、電圧源であるインバータV1が電圧源であるバッテリV2を充電する回路に置き換わる。このため、
図2に示すように、インバータV1の出力電圧がバッテリV2のバッテリ電圧Vbに近づくにしたがって急激に充電電流が上昇する。
【0021】
図3は、受電コイルL4のインピーダンスの絶対値が受電キャパシタC3のインピーダンスの絶対値よりも大きい場合において、インバータV1の出力電圧実効値を徐々に上げていったときのバッテリV2を流れる充電電流の変化を示した図である。受電コイルL4のインピーダンスの絶対値を受電キャパシタC3のインピーダンスの絶対値よりも大きくして意図的に漏れ磁束の影響を残すことにより、
図3に示すようにバッテリV2における急激な充電電流の上昇は抑制される。つまり、インバータV1の出力電圧がバッテリV2のバッテリ電圧Vbに近づいても急激な充電電流の上昇は生じない。
【0022】
ここで、受電コイルL4のインピーダンスの絶対値が受電キャパシタC3のインピーダンスの絶対値よりも大きくなるにつれて、充電電流の急激な上昇は抑制される。一方、受電コイルL4のインピーダンスの絶対値が受電キャパシタC3のインピーダンスの絶対値よりも大きくなるにつれて、電力伝送の効率は低下することになる。このため、所望のバッテリ電圧まで上昇させるためにインバータV1の出力電圧実効値を大きくする必要が生じたり、所望のバッテリ電圧まで上昇するまでに時間がかかるようになったりする。したがって、実際には、受電コイルL4のインピーダンスの絶対値を受電キャパシタC3のインピーダンスの絶対値よりもどの程度大きくするかは、例えば受電装置のバッテリV2に要求されるバッテリ電圧の範囲、バッテリV2の充電電流、送電コイルL3と受電コイルL4とで構成される変圧器に要求される結合係数の範囲、インバータV1の上限電圧といったパラメータに応じて適宜に設定されることが望ましい。
【0023】
以上説明したように本実施形態によれば、受電コイルL4のインピーダンスの絶対値を受電キャパシタC3のインピーダンスの絶対値よりも大きくすることにより、充電電流の急激な上昇が抑制される。
【0024】
[変形例1]
図4は、変形例1に係る無線電力伝送システムの構成を示す回路図である。
図1では、送電装置のインピーダンス変換器を構成するT型回路は、キャパシタC1をシャント素子とするLCL型のT型回路である。これに対し、
図4では、送電装置のインピーダンス変換器を構成するT型回路は、インダクタL5をシャント素子とするCLC型のT型回路である。すなわち、
図4のT型回路では、キャパシタC4とキャパシタC5とはインバータV1の出力に対して直列に接続されている。一方、インダクタL5は、インバータV1の出力に対してシャント接続されている。ここで、キャパシタC4とキャパシタC5とは同じキャパシタンスを有する素子である。また、インバータV1で生成される高周波電流の周波数におけるキャパシタC4とキャパシタC5のインピーダンスの和の絶対値がインダクタL5のインピーダンスの絶対値と等しくなるように、インダクタL1、L2のインダクタンス及びキャパシタC1のキャパシタンスの値が設定されている。
【0025】
このように、T型回路がLCL型からCLC型に置き換えられたとしても、受電コイルL4のインピーダンスの絶対値を受電キャパシタC3のインピーダンスの絶対値よりも大きくすることにより、充電電流の急激な上昇が抑制される。
【0026】
[変形例2]
図5は、変形例2に係る無線電力伝送システムの構成を示す回路図である。
図5では、受電キャパシタC3と交直変換器との間にさらに受電インダクタL6が挿入されている。変形例2では、受電コイルL4のインピーダンスと受電インダクタL6のインピーダンスとの和の絶対値が受電キャパシタC3のインピーダンスの絶対値よりも大きくなるように、受電コイルL4及び受電インダクタL6のインダクタンス及び受電キャパシタC3のキャパシタンスの値が設定されている。すなわち、以下の(式2)の関係が成り立つように、インダクタンスLr1、Lr2及びキャパシタンスCrの値が設定される。(式2)のωは高周波電流の角周波数であり、Lr1は受電コイルのL4のインダクタンスであり、Lr2は受電インダクタL6のインダクタンスであり、Crは受電キャパシタC3のキャパシタンスである。
【数2】
【0027】
このように、受電キャパシタC3と交直変換器との間にさらに受電インダクタL6を挿入し、かつ、受電コイルL4のインピーダンスと受電インダクタL6のインピーダンスとの絶対値を受電キャパシタC3のインピーダンスの絶対値よりも大きくすることにより、充電電流の急激な上昇が抑制される。
【0028】
なお、受電インダクタL6は、受電キャパシタC3と交直変換器との間ではなく、受電コイルL4と交直変換器との間の位置に挿入されてもよい。
【0029】
[その他の変形例]
前述した実施形態及びその変形例では、インダクタL1、インダクタL2、送電キャパシタC2、受電キャパシタC3は2端子対回路の片方の線路にのみ設けられている。これに対し、インダクタL1、インダクタL2、送電キャパシタC2、受電キャパシタC3は、2端子対回路の両方の線路に分けて設けられてもよい。この場合、両方の線路に設けられたインダクタがインダクタL1及びL2のそれぞれと同等のインダクタンスを有する素子を形成し、両方の線路に設けられたキャパシタが送電キャパシタC2及び受電キャパシタC3のそれぞれと同等のキャパシタンスを有する素子を形成するように素子のパラメータが設定される。インダクタL1、インダクタL2、送電キャパシタC2、受電キャパシタC3が2端子対回路の両方の線路に分けて設けられることにより、クロストークが抑制される。
【0030】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0031】
C1 キャパシタ、C2 送電キャパシタ、C3 受電キャパシタ、D1 ダイオード、D2 ダイオード、D3 ダイオード、D4 ダイオード、L1 インダクタ、L2 インダクタ、L3 送電コイル、L4 受電コイル、L5 インダクタ、L6 受電インダクタ、C4 キャパシタ、C5 キャパシタ、V1 インバータ、V2 バッテリ。