(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】ステント
(51)【国際特許分類】
A61F 2/86 20130101AFI20220518BHJP
A61F 2/95 20130101ALI20220518BHJP
【FI】
A61F2/86
A61F2/95
(21)【出願番号】P 2020541252
(86)(22)【出願日】2019-09-04
(86)【国際出願番号】 JP2019034701
(87)【国際公開番号】W WO2020050292
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/033291
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】林 俊明
(72)【発明者】
【氏名】菅 一大
(72)【発明者】
【氏名】赤井 正雄
(72)【発明者】
【氏名】村上 賢治
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-110779(JP,A)
【文献】特開2004-49804(JP,A)
【文献】特表2004-528862(JP,A)
【文献】特開2003-135604(JP,A)
【文献】特表2003-510162(JP,A)
【文献】特表平8-509899(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0226282(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/86
A61F 2/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の管腔を拡張するステントであって、
網目の周面を有する円管状の第一の管状ユニットと、
網目の周面を有する円管状であり、前記第一の管状ユニットと前記ステントの長手軸方向において連結される第二の管状ユニットと、
を備え、
前記第一の管状ユニットは、前記長手軸方向の一方である第一方向の側に屈曲して凸となる第一の第一方向側屈曲部を有し、
前記第二の管状ユニットは、前記長手軸方向の他方である第二方向の側に屈曲して凸となる第二の第二方向側屈曲部を有し、
前記第一の第一方向側屈曲部と、前記第二の第二方向側屈曲部とは、相対移動可能に連結された第一連結部を形成する、
ステント。
【請求項2】
前記第一の管状ユニットおよび前記第二の管状ユニットはそれぞれ、ワイヤを交差させて編み込まれて形成され、
前記第一の管状ユニットを形成するワイヤは、前記第二の管状ユニットを形成するワイヤと比較して径方向の寸法が大きい、
請求項
1に記載のステント。
【請求項3】
前記第二の管状ユニットは、前記第一の管状ユニットと比較して前記長手軸方向の長さが長い、
請求項
1に記載のステント。
【請求項4】
前記第一の管状ユニットは、前記第二方向の側に屈曲して凸となる第一の第二方向側屈曲部を有し、
前記第二の管状ユニットは、前記第一方向の側に屈曲して凸となる第二の第一方向側屈曲部を有し、
前記第一の管状ユニットの前記第一の第二方向側屈曲部と、前記第二の管状ユニットの前記第二の第一方向側屈曲部とは、相対移動可能に連結された第二連結部を形成する、
請求項
1に記載のステント。
【請求項5】
前記第一の管状ユニットおよび前記第二の管状ユニットはそれぞれ、ワイヤを交差させて編み込まれて形成され、
前記第一の管状ユニットは、前記ワイヤの異なる箇所が直線交差する第一の直線交差部を備え、
前記第二の管状ユニットは、前記ワイヤの異なる箇所が直線交差する第二の直線交差部を備える、
請求項
4に記載のステント。
【請求項6】
前記第二の管状ユニットの前記第二の第一方向側屈曲部から前記第二の第二方向側屈曲部までをつなぐ前記ワイヤの線分上において形成された前記第二の直線交差部の数は、前記第一の管状ユニットの前記第一の第一方向側屈曲部から前記第一の第二方向側屈曲部までをつなぐ前記ワイヤの線分上において形成された前記第一の直線交差部の数より多い、
請求項
5に記載のステント。
【請求項7】
隣り合う二つの前記第二の管状ユニットを有し、
前記第一方向の側の前記第二の管状ユニットの前記第二の第二方向側屈曲部と、前記第二方向の側の前記第二の管状ユニットの前記第二の第一方向側屈曲部とは、相対移動可能に連結された第三連結部を形成する、
請求項
4に記載のステント。
【請求項8】
隣り合う二つの前記第一の管状ユニットを有し、
前記第一方向の側の前記第一の管状ユニットの前記第一の第二方向側屈曲部と、前記第二方向の側の前記第一の管状ユニットの前記第一の第一方向側屈曲部とは、相対移動可能に連結された第四連結部を形成する、
請求項
4に記載のステント。
【請求項9】
前記第一の管状ユニットと前記第二の管状ユニットとが、前記長手軸方向に交互に配列されている、
請求項
4に記載にステント。
【請求項10】
前記第一の管状ユニットと前記第二の管状ユニットとが、前記長手軸方向に配列しており、
前記第二の管状ユニットは、前記第一の管状ユニットと比較して、前記ステントの先端、基端または中心に多く配置されている、
請求項
7に記載にステント。
【請求項11】
生体の管腔を拡張し、網目の周面を有するステントであって、
円管状に延びる第一領域と、
円管状に伸び、前記第一領域と前記ステントの長手軸方向において連結される第二領域と、
を備え、
前記第一領域は、
前記長手軸方向の一方である第一方向の側に屈曲して凸となる第一の第一方向側屈曲部を有し、
前記第二領域は、前記長手軸方向の他方である第二方向の側に屈曲して凸となる第二の第二方向側屈曲部を有し、
前記第一の第一方向側屈曲部と、前記第二の第二方向側屈曲部とは、相対移動可能に連結された第一連結部を形成する、
ステント。
【請求項12】
前記第一領域および前記第二領域は、ワイヤを交差させて編み込まれて形成される、
請求項
11に記載のステント。
【請求項13】
前記第一領域および前記第二領域は、前記ワイヤの異なる箇所が直線交差する直線交差部を備える、
請求項
12に記載のステント。
【請求項14】
前記ワイヤは、前記第一方向側屈曲部から前記第二方向側屈曲部までをつなぐ線上において、二以上の前記直線交差部を構成する、
請求項
13に記載のステント。
【請求項15】
前記第一領域および前記第二領域は、レーザーカットにより前記網目が形成される、
請求項
11に記載のステント。
【請求項16】
前記第一領域は、前記第二方向の側に屈曲して凸となる第一の第二方向側屈曲部を有し、
前記第二領域は、前記第一方向の側に屈曲して凸となる第二の第一方向側屈曲部を有し、
前記第一領域は、前記第一の第一方向側屈曲部から前記第一の第二方向側屈曲部までをつなぐ線上において、前記網目の交点が二以上であり、
前記第二領域は、前記第二の第一方向側屈曲部から前記第二の第二方向側屈曲部までをつなぐ線上において、前記網目の交点が二以上である、
請求項
11に記載のステント。
【請求項17】
前記第一の管状ユニットおよび前記第二の管状ユニットはそれぞれ、ワイヤを交差させて編み込まれて形成され、
前記第一の管状ユニットは、前記ワイヤが直線交差する第一の直線交差部を備え、
前記第二の管状ユニットは、前記ワイヤが直線交差する第二の直線交差部を備える、
請求項1に記載のステント。
【請求項18】
前記第一連結部は接続ワイヤを有し、
接続ワイヤは、
前記第一方向の側に屈曲して凸となる接続ワイヤ第一屈曲部と、
前記第二方向の側に屈曲して凸となる接続ワイヤ第二屈曲部と、を有し、
前記第一連結部は、
前記接続ワイヤ第一屈曲部が、前記第二の管状ユニットに固定され、
前記接続ワイヤ第二屈曲部が、前記第一の管状ユニットの前記第一方向側屈曲部と、交差して形成される、
請求項1に記載のステント。
【請求項19】
前記第一連結部は接続ワイヤを有し、
接続ワイヤは、
前記第一方向の側に屈曲して凸となる接続ワイヤ第一屈曲部と、
前記第二方向の側に屈曲して凸となる接続ワイヤ第二屈曲部と、を有し、
前記第一連結部は、
前記接続ワイヤ第一屈曲部が、前記第二領域に固定され、
前記接続ワイヤ第二屈曲部が、前記第一領域の前記第一方向側屈曲部と、交差して形成される、
請求項
11に記載のステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントに関する。本願は、2018年09月07日に、PCT出願されたPCT/JP2018/033291号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体内の管状器官の管腔において狭窄や閉塞が発生した患部に、線材(素線)等からなるステントを留置することで、管状器官の管腔を拡張・保持するステント留置術が用いられている。
【0003】
自己拡張性を有するステント(自己拡張型ステント)は、縮径された状態で狭窄や閉塞が発生した患部にデリバリシステムによって搬送される。デリバリシステムからリリースされたステントは、自己拡張性により拡径することで狭窄や閉塞を押し広げる。
【0004】
このようなステントを留置する管腔は屈曲している場合が多いため、ステントには屈曲した管腔の形状に合わせた形状を維持する機能(管路形状維持機能)が必要とされている。管路形状維持機能を有するステントは、屈曲する管腔に留置された場合において、反力によってステント本来の形状に戻ることなく、屈曲した管腔の形状に合わせた形状を維持することができる。
【0005】
特許文献1に記載の形状記憶合金を用いた拡張機構は、身体の狭窄部位を拡張させることができる。また、特許文献1に記載の拡張機構は、軸方向に伸縮可能な「かみ合わせ部」を有しており、狭窄部の管腔形状にかかわらず、管腔の形状に合わせた形状を維持することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しがしながら、特許文献1に記載の拡張機構は、デリバリシステムからリリースした拡張機構が、患部が位置する箇所に留置されなかった場合、リリースする場所を変更して再留置するために拡張機構をデリバリシステムに再収納(リキャプチャ)することが難しかった。
【0008】
上記事情を踏まえ、本発明は、管路形状維持機能を有し、かつ、デリバリシステムに再収納(リキャプチャ)することができる機能(リキャプチャ機能)を有するステントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係るステントは、生体の管腔を拡張するステントであって、網目の周面を有する円管状の第一の管状ユニットと、網目の周面を有する円管状であり、前記第一の管状ユニットと前記ステントの長手軸方向において連結される第二の管状ユニットと、を備え、前記第一の管状ユニットは、前記長手軸方向の一方である第一方向の側に屈曲して凸となる第一の第一方向側屈曲部を有し、前記第二の管状ユニットは、前記長手軸方向の他方である第二方向の側に屈曲して凸となる第二の第二方向側屈曲部を有し、前記第一の第一方向側屈曲部と、前記第二の第二方向側屈曲部とは、相対移動可能に連結された第一連結部を形成する。
【0010】
本発明の第二の態様に係るステントは、生体の管腔を拡張し、網目の周面を有するステントであって、円管状に延びる第一領域と、円管状に伸び、前記第一領域と前記ステントの長手軸方向において連結される第二領域と、を備え、前記第一領域は、前記長手軸方向の一方である第一方向の側に屈曲して凸となる第一の第一方向側屈曲部を有し、前記第二領域は、前記長手軸方向の他方である第二方向の側に屈曲して凸となる第二の第二方向側屈曲部を有し、前記第一の第一方向側屈曲部と、前記第二の第二方向側屈曲部とは、相対移動可能に連結された第一連結部を形成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のステントは、管路形状維持機能を有し、かつ、デリバリシステムに再収納することができる機能(リキャプチャ機能)を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るステントの全体構成を示す図である。
【
図2】同ステントを周方向に展開した展開図である。
【
図3】同ステントの管状ユニットの編み方を示す図である。
【
図4】第一方向側に位置する編み込み済みの管状ユニットに、第二方向側から連結される別の管状ユニットの編み方を示す図である。
【
図5】
図2において一点破線で示す部分の拡大図である。
【
図7】デリバリシステムからリリースする際の同ステントを示す図である。
【
図8】本発明の第二実施形態に係るステントの連結部を周方向に展開した展開図である。
【
図9】同ステントの接続ワイヤの変形例を示す図である。
【
図10】本発明の第三実施形態に係るステントの全体構成を示す図である。
【
図12】本発明の第四実施形態に係るステントの全体構成を示す図である。
【
図13】本発明の第五実施形態に係るステントの全体構成を示す図である。
【
図14】本発明の第六実施形態に係るステントの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態について、
図1から
図7を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るステント100の全体構成を示す図である。
図1は、自己拡張した状態のステント100の全体構成を示している。
図2は、ステント100を周方向に展開した展開図である。
【0014】
ステント100は、ワイヤを編み込んで形成されており、円筒形状を有する。ステント100は、胆管、食道、十二指腸、小腸、大腸等の消化器系体内管腔等に留置され、主として管腔を拡張・保持する目的で使用される。本実施形態のステント100は、その外周面側を樹脂フィルム等で被覆したいわゆるカバードステントではなく、フィルム等で被覆されないアンカバードステントである。ただし、ステント100は、樹脂フィルム等で被覆してカバードステントとして用いることもできる。
【0015】
ステント100は、
図1に示すように複数の管状ユニット1と、連結部2と、を備える。複数の管状ユニット1は長手軸方向に配列しており、隣り合う管状ユニット1が連結部2によって連結されている。以降の説明において、ステント100の長手軸方向の一方を「第一方向D1」といい、ステント100の長手軸方向の他方を「第二方向D2」という。
【0016】
管状ユニット(管状部)1は、屈曲を繰り返しながら周方向に傾いて延びるワイヤにより、網目を周面に有する円管状に形成されている。管状ユニット1は、ワイヤが屈曲する第一屈曲部11と、ワイヤが屈曲する第二屈曲部12と、ワイヤが直線交差する直線交差部13と、を有する。
【0017】
第一屈曲部(第一方向側屈曲部)11は、周方向に傾いて延びるワイヤが長手軸方向に折り返して屈曲し、第一方向D1側に凸となる凸部であり、第一方向D1端部に複数形成される。複数の第一屈曲部11は、周方向に配列している。
【0018】
第二屈曲部(第二方向側屈曲部)12は、周方向に傾いて延びるワイヤが長手軸方向に折り返して屈曲し、第二方向D2側に凸となる凸部であり、第二方向D2端部に複数形成される。複数の第二屈曲部12は、周方向に配列している。
【0019】
連結部(第一連結部)2は、隣り合う管状ユニット1が長手軸方向に連結する部分であって、第二方向D2側の管状ユニット1の第一屈曲部11と、第一方向D1側の管状ユニット1の第二屈曲部12とが、交差して形成されている。連結部2において、第一屈曲部11と第二屈曲部12とが径方向および長手軸方向に「フック状」に交差することで、隣り合う管状ユニット1は、分離不能ではあるが相対移動可能に連結される。
【0020】
図3は、管状ユニット1の編み方を示す図である。
管状ユニット1は、例えば特許文献1に示す
図5に記載のような公知の作製冶具を用いて作製される。作製冶具は円筒形状の本体と、本体の外周面に立設する複数のピンPで形成されている。
図3は作製冶具の本体の外周面を平面状に展開した展開図である。ピンPは、周方向に2列で配列している。
【0021】
管状ユニット1を形成するワイヤは、
図3に示すように、スタート位置Sから周方向に傾いて伸び、第一屈曲部11と第二屈曲部12とを繰り返し形成する。ワイヤは、周方向に一周目の周回した後、さらに二周目の周回を行う(
図3に示す1の部分)。
【0022】
二周目のワイヤ(
図3において実線で表示)は、周方向に傾いて伸び、第一屈曲部11と第二屈曲部12とを繰り返し形成する。二周目のワイヤが形成する第一屈曲部11は、一周目のワイヤが形成した第一屈曲部11の間に形成される。二周目のワイヤが形成する第二屈曲部12は、一周目のワイヤが形成する第二屈曲部12の間に形成される。
【0023】
二周目のワイヤは、一周目のワイヤと交差する直線交差部13を形成する。ワイヤは、周方向に二周目の周回した後、さらに三周目の周回を行う(
図3に示す2の部分)。
【0024】
三周目のワイヤ(
図3において一点破線で表示)は、周方向に傾いて伸び、第一屈曲部11と第二屈曲部12とを繰り返し形成する。三周目のワイヤが形成する第一屈曲部11は、一周目のワイヤが形成する第一屈曲部11と二周目のワイヤが形成する第一屈曲部11との間に形成される。三周目のワイヤが形成する第二屈曲部12は、一周目のワイヤが形成する第二屈曲部12と二周目のワイヤが形成する第二屈曲部12との間に形成される。
【0025】
三周目のワイヤは、一周目のワイヤおよび二周目のワイヤと交差する直線交差部13を形成する。ワイヤは、周方向に三周目の周回した後、終了地点Eまで編み込まれる。
【0026】
スタート位置Sおよび終了地点Eに位置するワイヤの両端部は、カシメ、レーザ溶接、ロウ付け等の接合法を用いて連結される。
図3では、ワイヤは、第二屈曲部12における端部を接合しているが、端部では応力の集中が起こりやすいことを考慮するならば、第一屈曲部11や第二屈曲部12の端部ではなく、直線部分にて接合する方が望ましい。
【0027】
ワイヤは、NiTiを主材料とする超弾性合金である。NiTiを主材料とする超弾性合金は、編み込んだ時点では永久変形をしておらず、編み込んだ状態で熱処理を加えることで編み込み形状が記憶される。
【0028】
上記のように編み込まれた管状ユニット1は、
図3に示すように、第一屈曲部11と第二屈曲部12までをつなぐワイヤの線分上において、二個の直線交差部13を構成する。
【0029】
図4は、第一方向D1側に位置する編み込み済みの管状ユニット1(以降、「管状ユニット1A」という)に、第二方向D2側から連結される別の管状ユニット1(以降、「管状ユニット1B」という)の編み方を示す図である。
図4において、管状ユニット1Aは二点破線によって表示されている。
【0030】
管状ユニット1Bを作製冶具を用いて作製する際、
図4に示すように管状ユニット1Aを作製する際に使用したピンの一部が共有される。具体的には、
図4において、周方向に2列で配列するピンPのうち、第二方向側において1列で配列するピンPが共有される。
【0031】
管状ユニット1Bを形成するワイヤは、
図4に示すように、管状ユニット1Aと同様、スタート位置Sから周方向に傾いて伸び、第一屈曲部11と第二屈曲部12とを繰り返し形成する。
【0032】
図5は、
図2において一点破線で示す部分の拡大図である。
管状ユニット1Bを形成するワイヤは、第一屈曲部11を形成する際、管状ユニット1Aの第二屈曲部12と、径方向および長手軸方向に「フック状」に交差して、連結部2を形成する。
【0033】
ワイヤは、管状ユニット1Aと同様、周方向に三周目の周回した後、終了地点Eまで編み込まれる。スタート位置Sおよび終了地点Eに位置するワイヤの両端部は、カシメ、レーザ溶接、ロウ付け等の接合法を用いて連結される。
【0034】
管状ユニット1Aと管状ユニット1Bとは、連結部2により、分離不能ではあるが相対移動可能に連結される。また、管状ユニット1Aと管状ユニット1Bとは、新たに接続用の部材を追加することなく連結することができる。
【0035】
他の管状ユニット1はそれぞれ、隣り合う管状ユニット1と、管状ユニット1Aと管状ユニット1Bとが連結部2により連結された方法と同様の方法により、連結部2により連結される。全ての管状ユニット1を連結することにより、ステント100が形成される。
【0036】
次に、ステント100の動作について説明する。
ステント100は、縮径された状態でデリバリシステムに格納され、狭窄や閉塞が発生した患部に搬送される。デリバリシステムからリリースされたステント100は、自己拡張性により拡径することで狭窄や閉塞を押し広げる。ステント100は、構成が単純であるため、デリバリシステムに収納された際の収納径を小さくすることができる。
【0037】
図6は、屈曲するステント100を示す図である。連結部2は隣り合う管状ユニット1をフック状に連結するため、隣り合う管状ユニット1を相対移動させることができる。以降、隣り合う管状ユニット1の相対移動による連結部2の変形を「すべり変形」という。
【0038】
ステント100は、
図6に示すように、ステント100全体を長手軸に対して屈曲させた場合、超弾性合金であるワイヤが「弾性変形」することなく、周方向に配列する連結部2が「すべり変形」して屈曲する。その結果、ステント100本来の形状に戻ろうとせず、屈曲形状を維持することが可能である。すなわち、ステント100は、屈曲した管腔の形状に合わせた形状を維持する機能(管路形状維持機能)を有する。
【0039】
ステント100は、
図1に示すように、周方向に2列ずつ配列する直線交差部13に対して、その間を連結部2が周方向に一列配列している。すなわち、すべり変形可能な連結部2と、すべり変形不能な直線交差部13とが、1対2の比率で長手軸方向に配置される。そのため、ステント100は、全体として「すべり変形」しやすく、管腔が大きく屈曲している場合であっても、管腔の形状に合わせた形状を維持することができる。
【0040】
図7は、デリバリシステムからリリースする際のステント100を示す図である。
デリバリシステムの先端のアウターシースAからステント100がリリースされる際、ステント100の広がり角度θを小さくすることができるため、ステント100をデリバリシステムに容易に再収納(リキャプチャ)することができる。すなわち、ステント100は、デリバリシステムに容易に再収納(リキャプチャ)することができるリキャプチャ機能を有する。
【0041】
特許文献1に記載の拡張機構は、フック状に交差した「かみ合わせ部」の数が多く、拡張機構がリリースされた際の拡張機構の広がり角度が非常に大きくなる。そのため、デリバリシステムに拡張機構を再収納(リキャプチャ)する際に大きな力を加える必要があり、再収納(リキャプチャ)することが難しい。
【0042】
本実施形態のステント100は、フック状に交差した連結部2を有している。「すべり変形」を行う連結部2は、長手軸方向に均等に広がる直線交差部13と比較して、リリース時において径方向に広がりやすい。しかしながら、ステント100は、すべり変形可能な連結部2と、すべり変形不能な直線交差部13とが、1対2の比率で長手軸方向に配置される。そのため、ステント100がリリースされる際、特許文献1に記載の拡張機構と比較して、ステント100の広がり角度θを小さくすることができる。
【0043】
本実施形態のステント100によれば、管路形状維持機能と、デリバリシステムに再収納することができるリキャプチャ機能と、を両立することができる。
【0044】
以上、本発明の第一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0045】
(変形例1)
例えば、上記実施形態において、ステント100は、すべり変形可能な連結部2と、すべり変形不能な直線交差部13とを、1対2の比率で長手軸方向に配置することで、管路形状維持機能とリキャプチャ機能とを両立させていた。しかしながらステントの態様はこれに限定されない。さらにリキャプチャ機能を高める場合、ステントは、すべり変形可能な連結部2と、すべり変形不能な直線交差部13とを、1対3(もしくは3以上)の比率で長手軸方向に配置してもよい。ただし、直線交差部13の比率を高くするほど、管路形状維持機能が抑制されるため、リキャプチャ機能と管路形状維持機能とのバランスを考慮して直線交差部13の比率を決定することが望ましい。
【0046】
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態について、
図8から
図9を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。第二実施形態に係るステント100Bは、第一実施形態に係るステント100と比較して、連結部の構成が異なる。
【0047】
ステント100Bは、複数の管状ユニット1と、連結部2Bと、を備える。複数の管状ユニット1は長手軸方向に配列しており、隣り合う管状ユニット1が連結部2Bによって連結されている。
【0048】
図8は、連結部2Bを周方向に展開した展開図である。
連結部2Bは、隣り合う管状ユニット1が長手軸方向に連結する部分であり、接続ワイヤ20を有する。
【0049】
接続ワイヤ20は、屈曲を繰り返しながら周方向に傾いて延び、接続ワイヤ20が屈曲する接続ワイヤ第一屈曲部21と、接続ワイヤ20が屈曲する接続ワイヤ第二屈曲部22と、を形成する。
【0050】
接続ワイヤ第一屈曲部21は、周方向に傾いて延びる接続ワイヤ20が長手軸方向に折り返して屈曲し、第一方向D1側に凸となる凸部であり、第一方向D1端部に複数形成される。複数の接続ワイヤ第一屈曲部21は、周方向に配列している。
【0051】
接続ワイヤ第二屈曲部22は、周方向に傾いて延びる接続ワイヤ20が長手軸方向に折り返して屈曲し、第二方向D2側に凸となる凸部であり、第二方向D2端部に複数形成される。複数の接続ワイヤ第二屈曲部22は、周方向に配列している。
【0052】
連結部2Bは、接続ワイヤ20が、第二方向D2側の管状ユニット1と、第一方向D1側の管状ユニット1と、相対移動可能に連結することで形成される。
【0053】
接続ワイヤ20の接続ワイヤ第一屈曲部21は、
図8に示すように、第一方向D1側の管状ユニット1の一部に、巻き付けて固定される。固定方法および固定場所に関しては限定はなく、接続ワイヤ第一屈曲部21が第一方向D1側の管状ユニット1から分離しなければよい。
【0054】
接続ワイヤ20の接続ワイヤ第二屈曲部22は、第二方向D2側の管状ユニット1の第一屈曲部11と、交差している。接続ワイヤ第二屈曲部22と第一屈曲部11とは、径方向および長手軸方向に「フック状」に交差する。
【0055】
連結部2Bによって連結された隣り合う管状ユニット1は、接続ワイヤ第二屈曲部22と第一屈曲部11とが径方向および長手軸方向に「フック状」に交差するため、分離不能ではあるが相対移動可能に連結される。その結果、第二方向D2側の管状ユニット1の第一屈曲部11と、第一方向D1側の管状ユニット1の第二屈曲部12と、は相対移動可能に連結される。
【0056】
他の管状ユニット1はそれぞれ、隣り合う管状ユニット1と、連結部2Bの接続ワイヤ20により同様に連結される。全ての管状ユニット1を連結することにより、ステント100Bが形成される。
【0057】
本実施形態のステント100Bによれば、第一実施形態のステント100同様、管路形状維持機能と、デリバリシステムに再収納することができるリキャプチャ機能と、を両立することができる。
【0058】
本実施形態のステント100Bによれば、管状ユニット1を個別に複数作製し、その後、接続ワイヤ20により連結することができるため、ステント作製が容易になる。
【0059】
本実施形態のステント100Bによれば、接続ワイヤ20が他のワイヤと同様、ジグザグ構造(周方向に傾いて延びて屈曲を繰り返す構造)になっているため、デリバリシステムに収納時は縮径させやすく、リリース時は拡張させやすい。
【0060】
以上、本発明の第二実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0061】
(変形例2)
例えば、上記実施形態において、管状ユニット1はワイヤが編み込まれて形成されたものであったが、管状ユニットの態様はこれに限定されない。管状ユニットは、円筒状素材に対してレーザーカットにより網目が周面に形成されたレーザーカットタイプのものであってもよい。レーザーカットにより複数の管状ユニットを形成し、その後、接続ワイヤ20により管状ユニットを連結してステント100Bを形成してもよい。
【0062】
管状ユニットがレーザーカットタイプのものである場合であっても、第一屈曲部11と第二屈曲部12までをつなぐ線上において、二個の網目の交点を構成する。ステント100Bは、すべり変形可能な連結部2と、すべり変形不能な交点とを、1対2の比率で長手軸方向に配置することで、管路形状維持機能とリキャプチャ機能とを両立させることができる。
【0063】
(変形例3)
例えば、上記実施形態において、接続ワイヤ20は、管状ユニット1とは別途に用意されたものであったが、接続ワイヤの態様はこれに限定されない。
図9は、接続ワイヤ20の変形例である接続ワイヤ20Bを示す図である。接続ワイヤ20Bは、管状ユニット1を形成するワイヤと一体に形成されており、接続ワイヤ20と同様、隣り合う管状ユニット1との連結に用いられる。別途、接続ワイヤ20を用意する必要がなく、取り扱いが容易となる。
【0064】
(第三実施形態)
本発明の第三実施形態について、
図10から
図11を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。第三実施形態に係るステント100Cは、第一実施形態に係るステント100と比較して、管状ユニットの構成が異なる。
【0065】
図10は、本実施形態に係るステント100Cの全体構成を示す図である。
ステント100Cは、第一実施形態のステント100同様、ワイヤを編み込んで形成されており、円筒形状を有する。
【0066】
ステント100Cは、少なくとも一つの第一の管状ユニット3と、少なくとも一つの第二の管状ユニット4と、を備える。第一の管状ユニット3と第二の管状ユニット4とは長手軸方向に交互に配列している。
【0067】
第一の管状ユニット3は、屈曲を繰り返しながら周方向に傾いて延びるワイヤW1により、網目を周面に有する円管状に形成されている。第一の管状ユニット3は、ワイヤW1が屈曲する第一の第一方向側屈曲部31と、ワイヤW1が屈曲する第一の第二方向側屈曲部32と、ワイヤW1が直線交差する第一の直線交差部33と、を有する。
【0068】
第一の第一方向側屈曲部31は、周方向に傾いて延びるワイヤW1が長手軸方向に折り返して屈曲し、第一方向D1側に凸となる凸部であり、第一方向D1端部に複数形成される。複数の第一の第一方向側屈曲部31は、周方向に配列している。
【0069】
第一の第二方向側屈曲部32は、周方向に傾いて延びるワイヤW1が長手軸方向に折り返して屈曲し、第二方向D2側に凸となる凸部であり、第二方向D2端部に複数形成される。複数の第一の第二方向側屈曲部32は、周方向に配列している。
【0070】
第二の管状ユニット4は、屈曲を繰り返しながら周方向に傾いて延びるワイヤW2により、網目を周面に有する円管状に形成されている。第二の管状ユニット4は、ワイヤW2が屈曲する第二の第一方向側屈曲部41と、ワイヤW2が屈曲する第二の第二方向側屈曲部42と、ワイヤW2が直線交差する第二の直線交差部43と、を有する。第二の管状ユニット4は第一の管状ユニット3と形状が異なっており、本実施形態においてはワイヤW1の径寸法とワイヤW2の径寸法とが異なっている。
【0071】
第二の第一方向側屈曲部41は、周方向に傾いて延びるワイヤW2が長手軸方向に折り返して屈曲し、第一方向D1側に凸となる凸部であり、第一方向D1端部に複数形成される。複数の第二の第一方向側屈曲部41は、周方向に配列している。
【0072】
第二の第二方向側屈曲部42は、周方向に傾いて延びるワイヤW2が長手軸方向に折り返して屈曲し、第二方向D2側に凸となる凸部であり、第二方向D2端部に複数形成される。複数の第二の第二方向側屈曲部42は、周方向に配列している。
【0073】
第一の管状ユニット3を形成するワイヤW1は、外径が0.17mm~0.18mmである。
一方、第二の管状ユニット4を形成するワイヤW2は、外径が0.15mmであり、ワイヤW1よりも細い。そのため、第一の管状ユニット3は、第二の管状ユニット4と比較して、狭窄を径方向外側に広げる拡張力が大きい。ステント100Cの留置位置に炎症等がある場合は、ワイヤW1の外径を約0.15mm、ワイヤW2の外径を0.12mm~0.13mmとしてステント100C全体の拡張力を弱めてもよい。なお、ワイヤの外径ではなくワイヤの材質を変えることで、第一の管状ユニット3の拡張力を第二の管状ユニット4の拡張力より大きくしてもよい。
【0074】
第一の管状ユニット3および第二の管状ユニット4の編み方は、第一実施形態の管状ユニット1の編み方と同じである。
【0075】
図11は、
図10に示すステント100Cの一部の拡大図である。
第一の管状ユニット3の第一の第一方向側屈曲部31と、第二の管状ユニット4の第二の第二方向側屈曲部42とは、径方向および長手軸方向に「フック状」に交差することで、分離不能ではあるが相対移動可能に連結された第一連結部5を形成する。
【0076】
第一の管状ユニット3の第一の第二方向側屈曲部32と、第二の管状ユニット4の第二の第一方向側屈曲部41とは、径方向および長手軸方向に「フック状」に交差することで、分離不能ではあるが相対移動可能に連結された第二連結部6を形成する。
【0077】
次に、ステント100Cの動作について説明する。
デリバリシステムからリリースされたステント100Cは、自己拡張性により拡径することで狭窄や閉塞を押し広げる。ステント100Cは、第一実施形態のステント100同様、第一連結部5および第二連結部6が「すべり変形」して屈曲するため、屈曲した管腔の形状に合わせた形状を維持する機能(管路形状維持機能)を有する。また、ステント100Cは、第一実施形態のステント100同様、第一の直線交差部33および第二の直線交差部43を備えており、デリバリシステムに容易に再収納(リキャプチャ)することができるリキャプチャ機能を有している。
【0078】
本実施形態のステント100Cによれば、管路形状維持機能と、デリバリシステムに再収納することができるリキャプチャ機能と、を両立することができる。
【0079】
さらに、ステント100Cは径方向への拡張力が異なる第一の管状ユニット3と第二の管状ユニット4とが、長手軸方向に交互に配列している。そのため、狭窄等に留置されたステント100Cの外周面は、長手軸方向に沿って凹凸形状となる。その結果、ステント100Cは湾曲する狭窄等に留置された場合であっても、マイグレーションを好適に防止することができる。また、全体の拡張力を高めたステントと比較すると、拡張力が小さい第二の管状ユニット4を含むためステント100C全体が与える狭窄等への負担を小さくすることができ、一方で拡張力が大きい第一の管状ユニット3を含むためアンカー効果を十分発揮できる。
【0080】
以上、本発明の第三実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0081】
(第四実施形態)
本発明の第四実施形態について、
図12を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。第四実施形態に係るステント100Dは、第三実施形態に係るステント100Cと比較して、管状ユニットおよび連結部の構成が異なる。
【0082】
図12は、本実施形態に係るステント100Dの全体構成を示す図である。
ステント100Dは、第一実施形態のステント100同様、ワイヤを編み込んで形成されており、円筒形状を有する。
【0083】
ステント100Dは、少なくとも一つの第一の管状ユニット3と、少なくとも二つの第二の管状ユニット4と、を備える。第一の管状ユニット3と、隣り合う二つの第二の管状ユニット4とが、長手軸方向に交互に配列している。なお、第一の管状ユニット3と、隣り合う三以上の第二の管状ユニット4とが、長手軸方向に交互に配列していてもよい。
【0084】
隣り合う二つの第二の管状ユニット4において、第一方向D1側の第二の管状ユニット4の第二の第二方向側屈曲部42と、第二方向D2側の第二の管状ユニット4の第二の第一方向側屈曲部41とは、相対移動可能に連結された第三連結部7を形成する。
【0085】
隣り合う二つの第二の管状ユニット4のうち、第一方向D1側の第二の管状ユニット4の第二の第一方向側屈曲部41は、第一の管状ユニット3と第二連結部6を形成する。
【0086】
隣り合う二つの第二の管状ユニット4のうち、第二方向D2側の第二の管状ユニット4の第二の第二方向側屈曲部42は、第一の管状ユニット3と第一連結部5を形成する。
【0087】
本実施形態に係るステント100Dによれば、第三実施形態に係るステント100C同様、管路形状維持機能と、デリバリシステムに再収納することができるリキャプチャ機能と、を両立することができる。
【0088】
さらに、ステント100Dは径方向への拡張力が異なる第一の管状ユニット3と第二の管状ユニット4とが、長手軸方向に配列している。そのため、第三実施形態に係るステント100C同様、マイグレーションを好適に防止することができる。さらに、ステント100Dは第一の管状ユニット3の個数に対する第二の管状ユニット4の個数が異なる。そのため、狭窄等への負担低減効果とアンカー効果のバランスを調整することができる。
【0089】
以上、本発明の第四実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0090】
(変形例4)
上記実施形態では、第一の管状ユニット3と、隣り合う二つの第二の管状ユニット4とが、長手軸方向に交互に配列していたが、管状ユニットの組み合わせ態様はこれに限定されない。ステントは、少なくとも二つの第一の管状ユニット3と、少なくとも一つの第二の管状ユニット4と、を備えており、隣り合う二つの第一の管状ユニット3と、第二の管状ユニット4とが、長手軸方向に交互に配列していてもよい。隣り合う二つの第一の管状ユニット3において、第一方向D1側の第一の管状ユニット3の第一の第二方向側屈曲部32と、第二方向D2側の第一の管状ユニット3の第一の第一方向側屈曲部31とは、相対移動可能に連結された第四連結部8を形成する。なお、隣り合う三以上の第一の管状ユニット3と、第二の管状ユニット4とが、長手軸方向に交互に配列していてもよい。また、第二の管状ユニット4は、第一の管状ユニット3と比較して、ステントの先端または基端に多く配置されていてもよい。ステントの先端、基端の拡張力を高くすることで、マイグレーション防止できる。また、第二の管状ユニット4は、第一の管状ユニット3と比較して、ステントの中心に多く配置されていてもよい。ステントの中心の拡張力を高くすることで、狭窄部の拡張性を高めることができる。
【0091】
(第五実施形態)
本発明の第五実施形態について、
図13を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。第五実施形態に係るステント100Eは、第三実施形態に係るステント100Cと比較して、管状ユニットの構成が異なる。
【0092】
図13は、本実施形態に係るステント100Eの全体構成を示す図である。
ステント100Eは、第一実施形態のステント100同様、ワイヤを編み込んで形成されており、円筒形状を有する。
【0093】
ステント100Eは、少なくとも一つの第一の管状ユニット3Bと、少なくとも一つの第二の管状ユニット4Bと、を備える。第一の管状ユニット3Bと第二の管状ユニット4Bとは長手軸方向に配列している。
【0094】
第一の管状ユニット3Bは、屈曲を繰り返しながら周方向に傾いて延びるワイヤW3により、網目を周面に有する円管状に形成されている。第一の管状ユニット3Bは、ワイヤW3が屈曲する第一の第一方向側屈曲部31と、ワイヤW3が屈曲する第一の第二方向側屈曲部32と、ワイヤW3が直線交差する第一の直線交差部33と、を有する。
【0095】
第二の管状ユニット4Bは、屈曲を繰り返しながら周方向に傾いて延びるワイヤW3により、網目を周面に有する円管状に形成されている。第二の管状ユニット4Bは、ワイヤW3が屈曲する第二の第一方向側屈曲部41と、ワイヤW3が屈曲する第二の第二方向側屈曲部42と、ワイヤW3が直線交差する第二の直線交差部43と、を有する。
【0096】
第一の管状ユニット3Bおよび第二の管状ユニット4Bは、同一のワイヤW3で形成されている。一方、第一の管状ユニット3Bと第二の管状ユニット4Bとは、長手軸方向の長さが異なる。第一の管状ユニット3Bの長手軸方向の長さL3は、第二の管状ユニット4Bの長手軸方向の長さL4より小さい。そのため、第一の管状ユニット3Bは、第二の管状ユニット4Bと比較して、狭窄を径方向外側に広げる拡張力が大きい。
【0097】
第一の管状ユニット3Bの第一の第一方向側屈曲部31と、第二の管状ユニット4Bの第二の第二方向側屈曲部42とは、分離不能ではあるが相対移動可能に連結された第一連結部5を形成する。
【0098】
第一の管状ユニット3Bの第一の第二方向側屈曲部32と、第二の管状ユニット4Bの第二の第一方向側屈曲部41とは、分離不能ではあるが相対移動可能に連結された第二連結部6を形成する。
【0099】
隣り合う二つの第二の管状ユニット4Bにおいて、第一方向D1側の第二の管状ユニット4Bの第二の第二方向側屈曲部42と、第二方向D2側の第二の管状ユニット4Bの第二の第一方向側屈曲部41とは、相対移動可能に連結された第三連結部7を形成する。
【0100】
隣り合う二つの第一の管状ユニット3Bにおいて、第一方向D1側の第一の管状ユニット3Bの第一の第二方向側屈曲部32と、第二方向D2側の第一の管状ユニット3Bの第一の第一方向側屈曲部31とは、相対移動可能に連結された第四連結部8を形成する。
【0101】
本実施形態のステント100Eによれば、第三実施形態に係るステント100C同様、管路形状維持機能と、デリバリシステムに再収納することができるリキャプチャ機能と、を両立することができる。
【0102】
さらに、ステント100Eは径方向への拡張力が異なる第一の管状ユニット3Bと第二の管状ユニット4Bとが、長手軸方向に配列している。そのため、そのため、第三実施形態に係るステント100C同様、マイグレーションを好適に防止することができる。
【0103】
以上、本発明の第五実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0104】
(第六実施形態)
本発明の第六実施形態について、
図14を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。第六実施形態に係るステント100Fは、第三実施形態に係るステント100Cと比較して、管状ユニットの構成が異なる。
【0105】
図14は、本実施形態に係るステント100Fの全体構成を示す図である。
ステント100Fは、第一実施形態のステント100同様、ワイヤを編み込んで形成されており、円筒形状を有する。
【0106】
ステント100Fは、少なくとも一つの第一の管状ユニット3Cと、少なくとも一つの第二の管状ユニット4Cと、を備える。第一の管状ユニット3Cと第二の管状ユニット4Cとは長手軸方向に交互に配列している。
【0107】
第一の管状ユニット3Cは、屈曲を繰り返しながら周方向に傾いて延びるワイヤW3により、網目を周面に有する円管状に形成されている。第一の管状ユニット3Cは、ワイヤW3が屈曲する第一の第一方向側屈曲部31と、ワイヤW3が屈曲する第一の第二方向側屈曲部32と、ワイヤW3が直線交差する第一の直線交差部33と、を有する。第一の管状ユニット3Cは、
図14に示すように、第一の第一方向側屈曲部31と第一の第二方向側屈曲部32までをつなぐワイヤの線分上において、5個の第一の直線交差部33を構成する。
【0108】
第二の管状ユニット4Cは、屈曲を繰り返しながら周方向に傾いて延びるワイヤW3により、網目を周面に有する円管状に形成されている。第二の管状ユニット4Cは、ワイヤW3が屈曲する第二の第一方向側屈曲部41と、ワイヤW3が屈曲する第二の第二方向側屈曲部42と、ワイヤW3が直線交差する第二の直線交差部43と、を有する。第二の管状ユニット4Cは、
図14に示すように、第二の第一方向側屈曲部41と第二の第二方向側屈曲部42までをつなぐワイヤの線分上において、3個の第二の直線交差部43を構成する。
【0109】
第一の管状ユニット3Cの第一の第一方向側屈曲部31から第一の第二方向側屈曲部32までをつなぐワイヤW3の線分上において形成された第一の直線交差部33の数(5個)は、第二の管状ユニット4Cの第二の第一方向側屈曲部41から第二の第二方向側屈曲部42までをつなぐワイヤW3の線分上において形成された第二の直線交差部43の数(3個)より多い。そのため、第一の管状ユニット3Cは、第二の管状ユニット4Cと比較して、狭窄を径方向外側に広げる拡張力が大きい。
【0110】
第一の管状ユニット3Cの第一の第一方向側屈曲部31と、第二の管状ユニット4Cの第二の第二方向側屈曲部42とは、分離不能ではあるが相対移動可能に連結された第一連結部5を形成する。
【0111】
第一の管状ユニット3Cの第一の第二方向側屈曲部32と、第二の管状ユニット4Cの第二の第一方向側屈曲部41とは、分離不能ではあるが相対移動可能に連結された第二連結部6を形成する。
【0112】
本実施形態のステント100Fによれば、第三実施形態に係るステント100C同様、管路形状維持機能と、デリバリシステムに再収納することができるリキャプチャ機能と、を両立することができる。
【0113】
さらに、ステント100Fは径方向への拡張力が異なる第一の管状ユニット3Cと第二の管状ユニット4Cとが、長手軸方向に配列している。そのため、そのため、第三実施形態に係るステント100C同様、マイグレーションを好適に防止することができる。
【0114】
以上、本発明の第六実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0115】
(変形例5)
上記実施形態では、第一の管状ユニット3と第二の管状ユニット4とが長手軸方向に配列していたが、ステントの態様はこれに限定されない。ステントは三種類以上の管状ユニットが連結部によって連結されて形成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、人体の管状の部分を管腔内部から広げる医療機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0117】
100,100B,100C,100D,100E,100F ステント
1 管状ユニット(管状部)
11 第一屈曲部(第一方向側屈曲部)
12 第二屈曲部(第二方向側屈曲部)
13 直線交差部
2,2B 連結部(第一連結部)
20,20B 接続ワイヤ
21 接続ワイヤ第一屈曲部
22 接続ワイヤ第二屈曲部
3,3B,3C 第一の管状ユニット
31 第一の第一方向側屈曲部
32 第一の第二方向側屈曲部
33 第一の直線交差部
4,4B,4C 第二の管状ユニット
41 第二の第一方向側屈曲部
42 第二の第二方向側屈曲部
43 第二の直線交差部
5 第一連結部
6 第二連結部
7 第三連結部
8 第四連結部