(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】分散体、着色層、着色膜、着色基材、着色合わせ基材、およびインク
(51)【国際特許分類】
C09D 17/00 20060101AFI20220519BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20220519BHJP
C03C 17/28 20060101ALI20220519BHJP
C03C 17/30 20060101ALI20220519BHJP
C09C 1/36 20060101ALI20220519BHJP
C09C 1/48 20060101ALI20220519BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20220519BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20220519BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20220519BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
C09D17/00
B32B27/20 A
C03C17/28 A
C03C17/30 A
C09C1/36
C09C1/48
C09D7/40
C09D11/037
C09D201/00
G02B5/20 101
(21)【出願番号】P 2016091559
(22)【出願日】2016-04-28
【審査請求日】2018-07-12
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2015092173
(32)【優先日】2015-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】町田 佳輔
(72)【発明者】
【氏名】中山 博貴
【合議体】
【審判長】蔵野 雅昭
【審判官】川端 修
【審判官】木村 敏康
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-262016(JP,A)
【文献】特開2002-194290(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133148(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/161767(WO,A1)
【文献】特開2014-201729(JP,A)
【文献】特開2000-214310(JP,A)
【文献】特開平3-16942(JP,A)
【文献】特開昭56-109848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 17/00
C09D 11/00-54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子とが媒体中に分散し、
前記チタン化合物微粒子が、窒化チタン微粒子、酸化窒化チタン微粒子、弱還元酸化チタン微粒子から選択される一種以上であり、
前記窒化チタン微粒子は、TiとNとのモル比が1:1から±20%までの範囲であり、
前記酸化窒化チタン微粒子は、TiとN+Oとのモル比が1:1から±20%までの範囲であり、
前記弱還元酸化チタン微粒子は、組成式TiO
2-x
において、0.02≦x≦0.8の範囲であり、
前記チタン化合物微粒子の平均分散粒子径が、
40nm以下1nm以上であり、
前記カーボンブラック微粒子の平均分散粒子径が、
30nm以下1nm以上であり、
前記チタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子との重量比が、[チタン化合物微粒子]/[カーボンブラック微粒子]=100:10~100:100の範囲にあり、
基材上に成膜して、単位投影面積あたりに含有するチタン化合物微粒子とカーボンブラック化合物微粒子との合計重量が0.05g/m
2以上1.50g/m
2以下である着色層としたとき、
JIS R 3106:1998に規定の方法で算出される可視光透過率が、0.5%以上40%以下であり、
JIS Z 8701:1999およびJIS Z 8729:2004に基づきD65光源・10度視野にて算出されるL*a*b*色味値において、透過色座標のa*およびb*の値が、式0≦((a*)
2+(b*)
2)
0.5≦2を満たすことを特徴とする分散体。
【請求項2】
さらに赤外線吸収性微粒子を含有することを特徴する、請求項1に記載の分散体。
【請求項3】
前記赤外線吸収性微粒子が、タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子、ホウ化物微粒子、アンチモン添加酸化錫微粒子、錫添加酸化インジウム微粒子から選択される一種以上であることを特徴とする、請求項2に記載の分散体。
【請求項4】
前記媒体が、無機バインダーおよび/または有機バインダーであることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の分散体。
【請求項5】
前記有機バインダーが、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、電子線硬化樹脂、常温硬化樹脂、熱可塑性樹脂から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項4に記載の分散体。
【請求項6】
チタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子とが媒体中に分散し、
前記チタン化合物微粒子が、窒化チタン微粒子、酸化窒化チタン微粒子、弱還元酸化チタン微粒子から選択される一種以上であり、
前記窒化チタン微粒子は、TiとNとのモル比が1:1から±20%までの範囲であり、
前記酸化窒化チタン微粒子は、TiとN+Oとのモル比が1:1から±20%までの範囲であり、
前記弱還元酸化チタン微粒子は、組成式TiO
2-x
において、0.02≦x≦0.8の範囲であり、
前記チタン化合物微粒子の平均分散粒子径が、
40nm以下1nm以上であり、
前記カーボンブラック微粒子の平均分散粒子径が、
30nm以下1nm以上であり、
前記チタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子との重量比が、[チタン化合物微粒子]/[カーボンブラック微粒子]=100:10~100:100の範囲にある分散体が、基材上に成膜されたものである着色層であって、
単位投影面積あたりに含有するチタン化合物微粒子とカーボンブラック化合物微粒子との合計重量が0.05g/m
2以上1.50g/m
2以下であり、
JIS R 3106:1998に規定の方法で算出される可視光透過率が、0.5%以上40%以下であり、
JIS Z 8701:1999およびJIS Z 8729:2004に基づきD65光源・10度視野にて算出されるL*a*b*色味値において、透過色座標のa*およびb*の値が、式0≦((a*)
2+(b*)
2)
0.5≦2を満たすことを特徴とする着色層。
【請求項7】
前記基材が、樹脂またはガラスであることを特徴とする、請求項6に記載の着色層。
【請求項8】
チタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子とが媒体中に分散し、
前記チタン化合物微粒子が、窒化チタン微粒子、酸化窒化チタン微粒子、弱還元酸化チタン微粒子から選択される一種以上であり、
前記窒化チタン微粒子は、TiとNとのモル比が1:1から±20%までの範囲であり、
前記酸化窒化チタン微粒子は、TiとN+Oとのモル比が1:1から±20%までの範囲であり、
前記弱還元酸化チタン微粒子は、組成式TiO
2-x
において、0.02≦x≦0.8の範囲であり、
前記チタン化合物微粒子の平均分散粒子径が、
40nm以下1nm以上であり、
前記カーボンブラック微粒子の平均分散粒子径が、
30nm以下1nm以上であり、
前記チタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子との重量比が、[チタン化合物微粒子]/[カーボンブラック微粒子]=100:10~100:100の範囲にある分散体の成型体であって、
当該成型体がフィルム状、シート状、ボード状のいずれかの形状を有し、
単位投影面積あたりに含有するチタン化合物微粒子とカーボンブラック化合物微粒子との合計重量が0.05g/m
2以上1.50g/m
2以下であり、
JIS R 3106:1998に規定の方法で算出される可視光透過率が、0.5%以上40%以下であり、
JIS Z 8701:1999およびJIS Z 8729:2004に基づきD65光源・10度視野にて算出されるL*a*b*色味値において、透過色座標のa*およびb*の値が、式0≦((a*)
2+(b*)
2)
0.5≦2を満たすことを特徴とする着色膜。
【請求項9】
前記着色膜が、熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする、請求項8に記載の着色膜。
【請求項10】
請求項6または7に記載の着色層、請求項8または9に記載の着色膜、から選択されるいずれか1種以上が、透明基材上に設けられていることを特徴とする着色基材。
【請求項11】
JIS R 3106:1998に規定の方法で算出される可視光透過率が、0.5%以上40%以下であり、
JIS Z 8701:1999およびJIS Z 8729:2004に基づきD65光源・10度視野にて算出されるL*a*b*色味値において、透過色座標のa*およびb*の値が、式0≦((a*)
2+(b*)
2)
0.5≦2を満たすことを特徴とする、請求項10に記載の着色基材。
【請求項12】
前記透明基材が、樹脂またはガラスであることを特徴とする、請求項10または11に記載の着色基材。
【請求項13】
請求項6または7に記載の着色層、請求項8または9に記載の着色膜、請求項10から12のいずれかに記載の着色基材、から選択されるいずれか1種以上が、複数枚の透明基材間に設けられていることを特徴とする着色合わせ基材。
【請求項14】
JIS R 3106:1998に規定の方法で算出される可視光透過率が、0.5%以上40%以下であり、
JIS Z 8701:1999およびJIS Z 8729:2004に基づきD65光源・10度視野にて算出されるL*a*b*色味値において、透過色座標のa*およびb*の値が、式0≦((a*)
2+(b*)
2)
0.5≦2を満たすことを特徴とする、請求項13に記載の着色合わせ基材。
【請求項15】
前記透明基材が、樹脂またはガラスであることを特徴とする、請求項13または14に記載の着色合わせ基材。
【請求項16】
チタン化合物微粒子と、カーボンブラック微粒子と、有機溶媒または水から選択される一種以上とを含有するインクであって、
前記チタン化合物微粒子が、窒化チタン微粒子、酸化窒化チタン微粒子、弱還元酸化チタン微粒子から選択される一種以上であり、
前記窒化チタン微粒子は、TiとNとのモル比が1:1から±20%までの範囲であり、
前記酸化窒化チタン微粒子は、TiとN+Oとのモル比が1:1から±20%までの範囲であり、
前記弱還元酸化チタン微粒子は、組成式TiO
2-x
において、0.02≦x≦0.8の範囲であり、
前記チタン化合物微粒子の平均分散粒子径が、
40nm以下1nm以上であり、
前記カーボンブラック微粒子の平均分散粒子径が、
30nm以下1nm以上であり、
前記インクに含有されるチタン化合物微粒子と、カーボンブラック微粒子との重量比が、[チタン化合物微粒子]/[カーボンブラック微粒子]=100:10~100:100の範囲にあり、
前記インクを用いて、透明基材上へ、単位投影面積あたりに含有するチタン化合物微粒子とカーボンブラック化合物微粒子との合計重量が0.05g/m
2以上1.50g/m
2以下である着色層を形成した着色基材の光学特性において、JIS R 3106:1998に規定の方法で算出される可視光透過率が、0.5%以上40%以下であるときの、JIS Z 8701:1999およびJIS Z 8729:2004に基づきD65光源・10度視野にて算出されるL*a*b*色味値において、透過色座標のa*およびb*の値が、式0≦((a*)
2+(b*)
2)
0.5≦2を満たすことを特徴とするインク。
【請求項17】
さらに赤外線吸収性微粒子を含有することを特徴する、請求項16に記載のインク。
【請求項18】
前記赤外線吸収性微粒子が、タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子、ホウ化物微粒子、アンチモン添加酸化錫微粒子、錫添加酸化インジウム微粒子から選択される一種以上であることを特徴とする、請求項17に記載のインク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車などの輸送機器や建材の窓に用いられる赤味、青味、緑味、黄色味といった色調を有さない分散体、着色層、着色膜、着色基材や着色合わせ基材、およびインクに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの輸送機器や建材の窓の多くは透明であり、紫外線、可視光線および赤外線の透過率が高い。そこで太陽光による車両搭乗者の眩惑防止や、車内・室内の快適性向上、冷房効率や自動車燃費の向上、人間の視線の遮蔽によるプライバシー保護などを目的として、光を完全に遮蔽することなく窓の透過率を適度に低下させる着色基材や貼付けフィルム等が、市場において求められている。
【0003】
前記の要求を実現する為、例えば、アニリンブラック、暗色アゾ、ペリレンブラック、カーボンブラックといった黒色の色素材料により着色したフィルム、あるいはこれら色素材料をハードコート層や粘着剤層に含有させたフィルムなどが多く市販されている。
【0004】
また、例えば特許文献1には、透明フィルムの一方の面に少なくとも1層の着色された粘着剤層を設けてなる着色フィルムであって、当該粘着剤層が顔料と分散剤とからなる着色剤によって着色された着色フィルムが開示されている。当該着色フィルムにおいて着色剤は、銅フタロシアニン顔料、アンスラキノンレッド顔料、ジスアゾイエロー顔料である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、例えば輸送機器の操作者は、窓から外部を見通して、各種の信号や交通状況を正確に認識する必要がある。この為、輸送機器の窓に設けられる着色基材や着色フィルムには、赤味、青味、緑味、黄色味といった色調を有さない着色基材や着色フィルムが求められている。
近年、当該輸送機器分野を初めとして、建築、産業分野、光学素子、サングラスといった分野においても、赤味、青味、緑味、黄色味といった色調を有さない着色基材や着色フィルムが求められている。
尚、本発明では、当該赤味、青味、緑味、黄色味といった色調を有さない着色基材のことを「自然な色調を有する着色基材」と、同様に、赤味、青味、緑味、黄色味といった色調を有さない着色フィルムのことを「自然な色調を有するフィルム」と記載する場合がある。
【0007】
しかしながら、本発明者らが検討を行った結果、以下の課題が見出された。
即ち、上述した従来の技術に係る着色基材や着色フィルムは、可視光透過率の低い波長領域において、高い水準で自然な色調であることを実現出来ていない。また、当該着色基材や着色フィルムの耐候性が低いことである。
【0008】
ここで本発明者らは研究を行い、自然な色調を有する着色基材や着色フィルムは、可視光の波長領域において、特定の波長の光を「吸収する」「遮蔽する」または「透過する」ことが無いものであることに想到した。換言すれば、着色基材や着色フィルムにおいて、可視光の波長領域の光を均等に「吸収する」「遮蔽する」または「透過する」ことで、人間の視覚において、赤味、青味、緑味、黄色味といった色調を感知させない着色基材や着色層になると考えた。
【0009】
例えば、従来の技術に係るアニリンブラック等の黒色の有機色素材料によって、着色基材、粘着剤またはハードコートを着色した着色フィルムは、当該黒色の有機色素材料が可視光領域の全域において均等に光を吸収する色素材料ではない為、自然な色調を有する着色基材となっていなかった。さらに、当該黒色の有機色素材料の耐候性が十分でない為、ごく短期の使用で光学特性が劣化し、遮光性能が低下するものであった。
【0010】
また、例えば、カーボンブラックによって、フィルムやボードといった透明基材、粘着層、またはハードコートを着色した着色基材や着色フィルムは、当該カーボンブラックの吸収が、可視光の短波長側と長波長側とで異なる為、自然な色調を有するものとなっていなかった。
また、例えば、高耐候性の有色顔料、例えばフタロシアニンブルー顔料などで着色した着色基材や着色フィルムは、当該フタロシアニンブルー顔料が、可視光のうちの一部波長領域の光のみ吸収する為に、やはり自然な色調を有するものとなっていなかった。
【0011】
以上の知見から、三種類以上の有色顔料や有色染料を組み合わせて調色し、自然な色調を有する着色基材を得ることが考えられた。
ところが、本発明者らが研究したところ、三種類以上の色素を調色して工業的に安定した色調を実現することは非常に困難であった。また使用される色素のうち一種類でも耐候性が低いものが含まれていれば、当該耐候性の低い色素の劣化により、調色された色素の色調が変化してしまうという問題があった。
【0012】
本発明は、上述の状況の下で為されたものであり、その解決しようとする課題は、少ない種類の着色材料の組み合わせで自然な色調を実現でき、耐候性が高く、工業的に実現可能な着色層、着色膜、着色基材、着色合わせ基材、これらの製造に用いる分散体、およびインクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決する為、研究を行った。そして、チタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子とを所定の重量比で含み、有機溶媒および水から選択される一種以上の溶媒に分散されているインクを調製した。そして、当該インクを適用して作製した分散体や着色層、着色膜、着色基材、着色合わせ基材が、僅か二種類の着色材料の組み合わせであり、工業的実施が容易であるにも拘わらず、可視光透過率の低い領域での透過色および反射色において、特異的に自然な色調を実現可能であることを知見した。
【0014】
具体的には、上述の構成を有する着色層、着色膜、着色基材、着色合わせ基材が、JIS Z 8701:1999およびJIS Z 8729:2004に基づきD65光源・10度視野にて算出されるL*a*b*色味値において、透過色座標または反射色座標の少なくとも一方のa*およびb*の値が、式0≦((a*)2+(b*)2)0.5≦3を満たす色調、さらに好ましくは、式0≦((a*)2+(b*)2)0.5≦2を満たす色調を実現できることを知見した。
【0015】
なお、本発明に係る着色基材、着色合わせ基材の構成は以下の通りである。
着色基材は、基材の少なくとも片面に、コーティング層または粘着剤層を有し、前記コーティング層または前記粘着剤層から選択される少なくとも一層が、着色層である構成を有する。
また、着色合わせ基材は、複数枚の透明基材と、着色層、着色膜、着色基材から選択される1種以上とを有し、着色層、着色膜、着色基材から選択される1種以上が、前記複数枚の透明基材間に配置されている構成を有する。
【0016】
本発明者らは、チタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子とが媒体中に分散している分散体や、チタン化合物微粒子と、カーボンブラック微粒子と、有機溶媒または水とを含有するインクが、上記構成の分散体および着色基材、着色合わせ基材を製造する為の分散体やインクとして適切であることも知見した。
【0017】
さらに、本発明者らは、上述したチタン化合物として、窒化チタン微粒子、酸化窒化チタン微粒子、弱還元酸化チタン微粒子のうち少なくとも一種類を用いると、上述の構成を有する分散体、着色基材、着色合わせ基材、およびインクにおいて、特に、自然な色調を実現可能であることを知見した。
そして、当該チタン化合物微粒子、およびカーボンブラック微粒子とも無機物質であり、優れた耐候性を有するものであることに想到した。
【0018】
さらに興味深いことに、本発明者らは、上述の構成を有する着色基材が、従来技術で製造された着色フィルムなどの着色基材と比較して日射透過率が低く、遮熱基材としても高い性能を有することを知見し、本発明を完成した。
【0019】
すなわち、上述の課題を解決する第1の発明は、
チタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子とが媒体中に分散し、
前記チタン化合物微粒子が、窒化チタン微粒子、酸化窒化チタン微粒子、弱還元酸化チタン微粒子から選択される一種以上であり、
前記チタン化合物微粒子およびカーボンブラック微粒子の平均分散粒子径が、50nm以下1nm以上であり、
前記チタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子との重量比が、[チタン化合物微粒子]/[カーボンブラック微粒子]=100:10~100:100の範囲にあり、
基材上に成膜して、単位投影面積あたりに含有するチタン化合物微粒子とカーボンブラック化合物微粒子との合計重量が0.05g/m2以上1.50g/m2以下である着色層としたとき、
JIS R 3106:1998に規定の方法で算出される可視光透過率が、0.5%以上40%以下であり、
JIS Z 8701:1999およびJIS Z 8729:2004に基づきD65光源・10度視野にて算出されるL*a*b*色味値において、透過色座標のa*およびb*の値が、式0≦((a*)2+(b*)2)0.5≦2を満たすことを特徴とする分散体である。
第2の発明は、
さらに赤外線吸収性微粒子を含有することを特徴する、第1の発明に記載の分散体である
第3の発明は、
前記赤外線吸収性微粒子が、タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子、ホウ化物微粒子、アンチモン添加酸化錫微粒子、錫添加酸化インジウム微粒子から選択される一種以上であることを特徴とする、第2の発明に記載の分散体である。
第4の発明は、
前記媒体が、無機バインダーおよび/または有機バインダーであることを特徴とする、第1から第3の発明のいずれかに記載の分散体である。
第5の発明は、
前記有機バインダーが、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、電子線硬化樹脂、常温硬化樹脂、熱可塑性樹脂から選択される1種以上であることを特徴とする、第4の発明に記載の分散体である。
第6の発明は、
チタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子とが媒体中に分散し、
前記チタン化合物微粒子が、窒化チタン微粒子、酸化窒化チタン微粒子、弱還元酸化チタン微粒子から選択される一種以上であり、
前記チタン化合物微粒子およびカーボンブラック微粒子の平均分散粒子径が、50nm以下1nm以上であり、
前記チタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子との重量比が、[チタン化合物微粒子]/[カーボンブラック微粒子]=100:10~100:100の範囲にある分散体が、基材上に成膜されたものである着色層であって、
単位投影面積あたりに含有するチタン化合物微粒子とカーボンブラック化合物微粒子との合計重量が0.05g/m
2
以上1.50g/m
2
以下であり、
JIS R 3106:1998に規定の方法で算出される可視光透過率が、0.5%以上40%以下であり、
JIS Z 8701:1999およびJIS Z 8729:2004に基づきD65光源・10度視野にて算出されるL*a*b*色味値において、透過色座標のa*およびb*の値が、式0≦((a*)2+(b*)2)0.5≦2を満たすことを特徴とする着色層である。
第7の発明は、
前記基材が、樹脂またはガラスであることを特徴とする、第6の発明に記載の着色層である。
第8の発明は、
チタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子とが媒体中に分散し、
前記チタン化合物微粒子が、窒化チタン微粒子、酸化窒化チタン微粒子、弱還元酸化チタン微粒子から選択される一種以上であり、
前記チタン化合物微粒子およびカーボンブラック微粒子の平均分散粒子径が、50nm以下1nm以上であり、
前記チタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子との重量比が、[チタン化合物微粒子]/[カーボンブラック微粒子]=100:10~100:100の範囲にある分散体の成型体であって、
当該成型体がフィルム状、シート状、ボード状のいずれかの形状を有し、
単位投影面積あたりに含有するチタン化合物微粒子とカーボンブラック化合物微粒子との合計重量が0.05g/m
2
以上1.50g/m
2
以下であり、
JIS R 3106:1998に規定の方法で算出される可視光透過率が、0.5%以上40%以下であり、
JIS Z 8701:1999およびJIS Z 8729:2004に基づきD65光源・10度視野にて算出されるL*a*b*色味値において、透過色座標のa*およびb*の値が、式0≦((a*)2+(b*)2)0.5≦2を満たすことを特徴とする着色膜である。
第9の発明は、
前記着色膜が、熱可塑性樹脂を含むことを特徴とする、第8の発明に記載の着色膜である。
第10の発明は、
第6または第7の発明に記載の着色層、第8または第9の発明に記載の着色膜、から選択されるいずれか1種以上が、透明基材上に設けられていることを特徴とする着色基材である。
第11の発明は、
JIS R 3106:1998に規定の方法で算出される可視光透過率が、0.5%以上40%以下であり、
JIS Z 8701:1999およびJIS Z 8729:2004に基づきD65光源・10度視野にて算出されるL*a*b*色味値において、透過色座標のa*およびb*の値が、式0≦((a*)2+(b*)2)0.5≦2を満たすことを特徴とする、第10の発明に記載の着色基材である。
第12の発明は、
前記透明基材が、樹脂またはガラスであることを特徴とする、第10または第11の発明請に記載の着色基材である。
第13の発明は、
第6または第7の発明に記載の着色層、第8または第9の発明に記載の着色膜、第10から第12の発明のいずれかに記載の着色基材、から選択されるいずれか1種以上が、複数枚の透明基材間に設けられていることを特徴とする着色合わせ基材である。
第14の発明は、
JIS R 3106:1998に規定の方法で算出される可視光透過率が、0.5%以上40%以下であり、
JIS Z 8701:1999およびJIS Z 8729:2004に基づきD65光源・10度視野にて算出されるL*a*b*色味値において、透過色座標のa*およびb*の値が、式0≦((a*)2+(b*)2)0.5≦2を満たすことを特徴とする、第13の発明に記載の着色合わせ基材である。
第15の発明は、
前記透明基材が、樹脂またはガラスであることを特徴とする、第13または第14の発明に記載の着色合わせ基材である。
第16の発明は、
チタン化合物微粒子と、カーボンブラック微粒子と、有機溶媒または水から選択される一種以上とを含有するインクであって、
前記チタン化合物微粒子が、窒化チタン微粒子、酸化窒化チタン微粒子、弱還元酸化チタン微粒子から選択される一種以上であり、
前記チタン化合物微粒子およびカーボンブラック微粒子の平均分散粒子径が、50nm以下1nm以上であり、
前記インクに含有されるチタン化合物微粒子と、カーボンブラック微粒子との重量比が、[チタン化合物微粒子]/[カーボンブラック微粒子]=100:10~100:100の範囲にあり、
前記インクを用いて、透明基材上へ、単位投影面積あたりに含有するチタン化合物微粒子とカーボンブラック化合物微粒子との合計重量が0.05g/m2以上1.50g/m2以下である着色層を形成した着色基材の光学特性において、JIS R 3106:1998に規定の方法で算出される可視光透過率が、0.5%以上40%以下であるときの、JIS Z 8701:1999およびJIS Z 8729:2004に基づきD65光源・10度視野にて算出されるL*a*b*色味値において、透過色座標のa*およびb*の値が、式0≦((a*)2+(b*)2)0.5≦2を満たすことを特徴とするインクである。
第17の発明は、
さらに赤外線吸収性微粒子を含有することを特徴する、第16の発明に記載のインクである。
第18の発明は、
前記赤外線吸収性微粒子が、タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子、ホウ化物微粒子、アンチモン添加酸化錫微粒子、錫添加酸化インジウム微粒子から選択される一種以上であることを特徴とする、第17の発明に記載のインクである。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る分散体やインクを用いて製造した、本発明に係る着色層、着色膜、着色基材、着色合わせ基材は、二種類の着色材料の組み合わせでありながら自然な色調を有し、耐候性が高く、工業的に実施が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施例21、比較例1~4および参考例1で測定された着色フィルムおよび基材フィルムの透過曲線である。
【
図2】実施例21、比較例1~4および参考例1で測定された着色フィルムおよび基材フィルム透過曲線から、可視光の波長領域付近、低い透過率の領域付近を拡大した透過曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明に係る分散体は、少なくともチタン化合物微粒子およびカーボンブラック微粒子が、媒体中に分散した状態を有するものを指す概念である 。ここで媒体とは、固形、ゲル状等の分散媒であって、具体的には、無機バインダーおよび/または有機バインダーを用いることが出来る。当該無機バインダーとしては、シリコーン樹脂を挙げることが出来、有機バインダーとしては、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、電子線硬化樹脂、常温硬化樹脂、熱可塑性樹脂から選択される1種以上であることが好ましい。
そして、好ましくは、固形の媒体中に、少なくともチタン化合物微粒子およびカーボンブラック微粒子が分散した状態を指す概念である 。
【0023】
尚、当該分散体が基材の少なくとも片面に、コーティング層、粘着剤層、等として形成され、本発明に係る着色基材を構成している場合、当該分散体を「着色層」と記載する場合がある。
また、当該分散体が樹脂中に含有され、当該樹脂がフィルム状、シート状、ボード状、等に成形されている場合、当該成形体を「着色膜」と記載する場合がある。
一方、当該分散体が粉末状である場合、当該粉末を「分散粉」と記載する場合がある。
さらに、当該分散体がペレット状である場合、当該ペレットを「マスターバッチ」と記載する場合がある。
【0024】
次に、本発明に係るインクは、
(a)チタン化合物微粒子および/またはカーボンブラック微粒子を溶媒中に分散した分散液、
(b)上述した(a)に係る分散液へコーティング樹脂を添加して、コーティング層形成に用いることのできる塗布液、
(c)上述した(a)に係る分散液へ粘着剤を添加して、粘着剤層形成に用いることのできる塗布液、
以上の、分散液および塗布液を含む概念である。
尚、以上の概念を区別する場合は、(a)を「分散液」または「微粒子分散液」と、(b)を「コーティング用インク」と、(c)を「粘着剤層形成液」と記載する場合がある。
【0025】
上述した本発明に係る着色層は、上述したインクを用いて製造したハードコート等のコーティング層、上述したインクを用いて製造した粘着剤層等の、チタン化合物微粒子と、カーボンブラック微粒子とを含有する着色層も含む概念である。
【0026】
次に、本発明に係る着色基材は、透明基材の少なくとも片面に上述したコーティング層、粘着剤層から選択される一種以上の着色層、および/または、上述した着色膜を有する形態である。そして、当該コーティング層または粘着剤層の少なくとも一層はチタン化合物微粒子を含有し、当該コーティング層または粘着剤層の少なくとも一層はカーボンブラック微粒子を含有するものも含む概念である。
【0027】
そして、本発明に係る着色合わせ基材は、上述した着色層、着色膜、着色基材から選択される1種以上が、複数枚の透明基材間に存在する合わせ基材を示す概念である。
【0028】
以下、本発明に係る[1]インク、分散体、着色合わせ基材および着色基材を構成する成分、[2]インク、分散粉およびマスターバッチの形態およびその製造方法、[3]着色層、着色基材、着色膜、着色合わせ基材、およびその製造方法、について詳細に説明する。
【0029】
[1]インク、分散体、着色層、着色膜、着色基材および着色合わせ基材を構成する成分
インク、分散体、着色層、着色膜、着色基材および着色合わせ基材を構成する成分として、(1)チタン化合物微粒子、(2)カーボンブラック微粒子、(3)溶媒、(4)分散剤、(5)赤外線吸収性化合物、(6)コーティング樹脂、(7)粘着剤、(8)その他の添加物、(9)透明基材、(10)熱可塑性樹脂、の順で詳細に説明する。
【0030】
(1)チタン化合物微粒子
本発明に係るチタン化合物微粒子としては、可視光領域に強い着色を持ち、単独で微粒子分散体とした際に青紫色を呈するものを好ましく用いることができる。具体的には窒化チタン微粒子、酸化窒化チタン微粒子、弱還元酸化チタン(TiO2-x)微粒子を、前記観点において優れた光学特性を持つ微粒子として挙げることが出来る。
【0031】
窒化チタン微粒子は、化学式がTiNで表されるものであるが、TiとNとのモル比が1:1から±20%までの範囲で、ずれているものでも適用できる。
【0032】
ここで、酸化窒化チタン微粒子は、上述した窒化チタン微粒子のNの一部をOで代替したものに該当する微粒子である。酸化窒化チタン微粒子においても、TiとN+Oとのモル比が1:1から±20%までの範囲で変動する。この結果、当該モル比が1:1からずれている酸化窒化チタン微粒子でも適用できる。
【0033】
弱還元酸化チタン微粒子は、酸化チタン(TiO2)の弱還元処理によって得られる弱還元酸化チタン(TiO2-x)の微粒子である。具体的な組成としては、TiO2-xで表される組成式において、概ね0.02≦x≦0.8の範囲にあるものが挙げられる。さらに具体的な組成としては、三酸化二チタン(Ti2O3)、七酸化四チタン(Ti4O7)やこれらの混晶、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
上述の弱還元処理としては、水素やアンモニアなど還元雰囲気下での焼成処理、CaH2と混合しての焼成処理など、公知の処理方法を用いることができる。
【0034】
以上、酸化チタン微粒子、酸化窒化チタン微粒子、および弱還元酸化チタン微粒子といった、チタン化合物微粒子の粒子径が100nm以下、好ましくは50nm以下、最も好ましくは40nm以下であると、当該チタン化合物微粒子が可視光領域の光の散乱原因とならず、後述する着色層、着色基材においてクリアな透過性を得ることが出来る。
一方、粒子径が1nm以上であれば製造が容易である。
また、これらのチタン化合物微粒子は何れも無機化合物であり、耐候性が高い。
【0035】
(2)カーボンブラック微粒子
本発明に係るカーボンブラック微粒子としては、窒素吸着比表面積(BET値)が大きく、粒子径が小さいと、隠蔽力が強くなり、分散性も向上するため好ましい。当該観点から、カーボンブラック微粒子の粒子径は100nm以下、50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましい。
一方、粒子径が1nm以上であれば製造が容易である。
そして、当該カーボンブラック微粒子の分散性を向上させる為に、カーボンブラック微粒子に対して表面改質処理を行うのも好ましい構成である。分散性を向上させる為の表面改質処理方法としては公知の方法から任意に選択でき、例えばプラズマ処理や、樹脂による被覆処理などが挙げられる。
また、カーボンブラック微粒子は無機化合物であり、耐候性が高い。
【0036】
(3)溶媒
本発明に係るインクにおいて、チタン化合物微粒子およびカーボンブラック微粒子の分散媒体として用いられる溶媒は、特に限定されるものではない。そして、当該溶媒は、当該インクへ配合される樹脂に応じて選択することが可能である。具体的には、水、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、芳香族化合物、等、一般的な溶媒の使用が可能である。また、これらの溶媒の中から選択される一種以上の溶媒を用いることが出来る。
必要に応じて、当該溶媒へ、酸やアルカリを添加して当該溶媒のpHを調節してもよい。
【0037】
(4)分散剤
本発明に係る分散剤は、上述した本発明に係るチタン化合物微粒子やカーボンブラック微粒子を、上述した溶媒中、後述する着色膜に用いられる樹脂中、コーティング樹脂中、または粘着剤中へ均一に分散させる為に用いられる。
分散剤としては例えば、リン酸エステル化合物、高分子系分散剤、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、等を好ましく用いることができる。また、高分子系分散剤としては、アクリル系高分子分散剤、ウレタン系高分子分散剤、アクリル・ブロックコポリマー系高分子分散剤、ポリエーテル類分散剤、ポリエステル系高分子分散剤などが挙げられる。なお、分散剤はこれらに限定されるものではなく、各種の分散剤を用いることができる。
【0038】
尤も、当該分散剤は、アミンを含有する基、水酸基、カルボキシル基、または、エポキシ基を官能基として有する分散剤であることが好ましい。これらの官能基は、チタン化合物微粒子およびカーボンブラック微粒子の表面に吸着して、当該微粒子の凝集を抑制し、当該微粒子を、溶媒中や着色膜中、コーティング樹脂中、または粘着剤中へ均一に分散させる効果を有する。
【0039】
当該分散剤の添加量は、微粒子100重量部に対し10重量部~2000重量部の範囲であることが望ましく、より好ましくは30重量部~1000重量部の範囲である。分散剤添加量が上述の範囲にあれば、微粒子が溶媒中やコーティング樹脂中、熱可塑性樹脂中、粘着剤中で均一に分散するとともに、着色膜、最終的に基材フィルム上へ形成されるコーティング層、透明基材、および粘着剤層の物性へ悪影響を及ぼすことがないからである。
【0040】
(5)赤外線吸収性化合物
上述したように、本発明に係るインク、分散体、着色層、着色膜、着色基材および着色合わせ基材は、近赤外線の領域においても十分な吸収能を有し、遮熱インク、遮熱分散体、遮熱合わせ基材および、遮熱基材としても機能する。
尤も、さらに近赤外線の吸収能力を向上させる目的で、所望により近赤外域に強い吸収を持つ赤外線吸収性化合物を、インク、分散体、着色層、着色膜、着色基材および着色合わせ基材へ、さらに添加しても良い。当該赤外線吸収性化合物としては、大別して、赤外線吸収性有機化合物と、無機の赤外線吸収性微粒子とがある。以下、赤外線吸収性有機化合物と、無機の赤外線吸収性微粒子について説明する。
【0041】
(i)赤外線吸収性有機化合物
上述の目的で用いられる赤外線吸収性有機化合物としては、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、イモニウム化合物、ジイモニウム化合物、ポリメチン化合物、ジフェニルメタン化合物、トリフェニルメタン化合物、キノン化合物、アゾ化合物、ペンタジエン化合物、アゾメチン化合物、スクアリリウム化合物、有機金属錯体、シアニン化合物等を使用することができる。
【0042】
(ii)無機の赤外線吸収性微粒子
無機の赤外線吸収性微粒子としては、タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子、ホウ化物微粒子、アンチモン添加酸化錫微粒子、錫添加酸化インジウム微粒子などが挙げられる。さらに、複合タングステン酸化物微粒子としては、セシウム添加酸化タングステン微粒子、ルビジウム添加酸化タングステン微粒子などが挙げられる。
【0043】
さらに、複合タングステン酸化物微粒子、アンチモン添加酸化錫微粒子、および、錫添加酸化インジウム微粒子は、有意に近赤外線を吸収するに足る濃度をもって、本発明に係るインク、分散体、着色層、着色膜、着色膜、着色基材および着色合わせ基材へ添加した場合でも、これらの色彩に大きな影響を及ぼすことがなく、好ましい。
【0044】
無機の赤外線吸収性微粒子は、有意に近赤外線を吸収するに足る濃度をもって、本発明に係るインク、分散体、着色層、着色膜、着色膜、着色基材および着色合わせ基材へ添加した場合でも、可視光の透明性に優れ、また、着色ボードや着色フィルムとして屋外または屋外に準じる過酷な環境で用いた場合でも耐候性に優れ好ましい。
【0045】
無機の赤外線吸収性微粒子は、公知の方法で本発明に係るインク、分散体、着色層、着色膜、着色膜、着色基材および着色合わせ基材に含有させることができる。例えば、赤外線吸収性微粒子と、溶媒と、必要に応じて分散剤とを混合した組成物へ分散処理を施すことでインク化する。当該インクを、本発明に係るチタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子とのインクへ添加して混合インクとし、当該混合インクを用いて、着色基材を構成する樹脂への分散、着色基材へのコーティング処理や、粘着剤層形成処理を行うことができる。
【0046】
(6)コーティング樹脂
コーティング層の形成に用いられるコーティング樹脂としては、例えば、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、電子線硬化樹脂、常温硬化樹脂、熱可塑性樹脂、等を目的に応じて選択することができる。なかでも、硬度、平滑性、微粒子の分散性、プロセスの簡易性、等の観点から、紫外線硬化樹脂を用いることが好ましい。
【0047】
紫外線硬化樹脂としては、硬化によって透明な樹脂組成物を形成する物であれば特に制
限なく使用でき、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリ
ル系樹脂、アリルエステル系樹脂等が挙げられる。なかでも、硬度、平滑性、透明性、等の観点から、アクリル系樹脂を好ましく用いることができる。
【0048】
(7)粘着剤
粘着剤層の形成に用いられる粘着剤としては、例えば、光硬化性または熱硬化性の樹脂を主成分とする粘着剤を用いることができる。当該粘着剤は、紫外線に対して耐久性を有するものが好ましく、アクリル系粘着剤またはシリコーン系粘着剤が好ましい。さらに、粘着特性やコスト、等の観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。アクリル系粘着剤には溶剤系およびエマルジョン系があるが、剥離強さの制御容易性の観点からは、溶剤系が好ましい。そして、アクリル溶剤系粘着剤として溶液重合ポリマーを使用する場合、そのアクリルモノマーとしては、公知のものを使用できる。
【0049】
(8)その他の添加物
本発明に係るインク、分散体、着色層、着色膜、着色膜、着色基材および着色合わせ基材においては、その他、必要に応じて各種添加剤を添加してもよい。例えば、紫外線遮蔽剤やHALSの添加により、着色層、着色膜、着色フィルムの紫外線劣化を防止できることに加え、太陽光に含まれる紫外線が着色基材、着色合わせ基材、着色フィルム、着色層、着色膜を通して車内や室内に侵入し、人間の肌や、車内、室内の調度類等へ光劣化をもたらすことを抑制できる。
当該紫外線吸収剤には、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物、酸化セリウム微粒子、酸化亜鉛微粒子、酸化チタン微粒子などが挙げられる。
【0050】
また、例えば、酸化防止剤の添加により、着色基材や着色層、着色膜の劣化を防止できる。また、例えば、顔料微粒子分散体や染料など色調調整剤の添加により、着色基材や着色層が自然な色調を保持する範囲で、当該色調を微調整することもできる。
【0051】
これらの添加剤については、当該添加剤の効果と所望とに応じて、さまざまな形態で着色層や、当該着色層以外の着色基材の各層、例えば、ハードコード層、透明基材、粘着剤層、等から選択した一層以上に含有させることができる。
【0052】
(9)透明基材
本発明に係る着色基材の基材となる透明基材としては、可視光に対して透過性があり散乱の少ない、無色透明の基材が好ましい。具体的には、ガラス、樹脂ボード、樹脂フィルムから選択される基材が適している。基材が樹脂ボードや樹脂フィルムである場合、樹脂の種類として具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。なかでも基材が樹脂フィルムである場合、ポリエステル樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート樹脂が特に好ましい。
【0053】
当該透明基材を用いる場合、その表面は、樹脂バインダーとの結着性向上を目的とした表面処理が施されていてもよく、その代表的な処理方法は、コロナ表面処理、プラズマ処理、スパッタリング処理等の放電処理、火炎処理、金属ナトリウム処理、プライマー層コート処理等が挙げられる。
【0054】
前記着色層、着色膜、着色基材を、当該複数の透明基材間に配置したり、当該複数の透明基材によって挟持させて、着色合わせ基材を構成するための透明基材は、ガラスであることが好ましい。
【0055】
(10)熱可塑性樹脂
本発明にかかる分散体は、さらに熱可塑性樹脂を含有させ成形することで、シート状、ボード状あるいはフィルム状、等の、着色膜としての形態をとることができる。
当該着色膜に含有される熱可塑性樹脂としては、可視光に対して透過性があり散乱の少ない無色透明の樹脂であることが好ましい。具体的には、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。
【0056】
[2]インク、分散粉およびマスターバッチの形態およびその製造方法
以下、(1)インクの形態、(2)インクの製造方法、についてそれぞれ説明し、分散体を構成する(3)分散粉およびマスターバッチの形態、(4)分散粉およびマスターバッチの製造方法、についてそれぞれ説明する。
【0057】
(1)インクの形態
本発明に係るインクは、少なくともチタン化合物微粒子、カーボンブラック微粒子および溶媒を含み、さらに所望に応じて分散剤、赤外線吸収性化合物、コーティング樹脂、粘着剤、その他の添加物を含有する。
【0058】
本発明に係るインク中へ、コーティング樹脂や粘着剤を含有させ、混合物とすることで、当該混合物を着色層の形成に用いることができる。
例えば、インク中に、チタン化合物微粒子と、カーボンブラック微粒子と、コーティング樹脂とを含むコーティング用インクは、着色基材のコーティング層形成に用いることが出来る。
一方、例えば、インク中に、チタン化合物微粒子と、カーボンブラック微粒子と、粘着剤とを含むインクは、粘着剤層形成液として用いることができる。
【0059】
尚、本発明に係るインクは、当該インクを用いて透明基材上へコーティング層または粘着剤層を形成して得た着色基材の光学特性が、JIS Z 8701:1999およびJIS Z 8729:2004に基づきD65光源・10度視野にて算出されるL*a*b*色味値において、透過色座標または反射色座標の少なくとも一方のa*およびb*の値が、式0≦((a*)2+(b*)2)0.5≦3を満たすような比率で、チタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子を含有するものである。
具体的には、当該インクに含有されるチタン化合物微粒子と、カーボンブラック微粒子との重量比が、[チタン化合物微粒子]/[カーボンブラック微粒子]=100:10~100:100の範囲にあるとき、本発明に係るインクを用いて透明基材上へ、コーティング層および/または粘着剤層を形成した着色基材は、上述した光学特性を満足することができる。
【0060】
これに対し、上述した[チタン化合物微粒子]/[カーボンブラック微粒子]=100:10の値よりもチタン化合物微粒子が少ないことで、着色基材の色味は自然な色調を示す灰色から、青~青紫色へと寄ることを回避出来る。この結果、0≦((a*)2+(b*)2)0.5≦3となり、上述した光学特性を満足することが容易になる。
一方、上述した[チタン化合物微粒子]/[カーボンブラック微粒子]=100:100重量比の値よりもカーボンブラック微粒子が少ないことで、着色基材の色味は自然な色調を示す灰色から、褐色へと寄ることを回避出来る。この結果、0≦((a*)2+(b*)2)0.5≦3となり、上述した光学特性を満足することが容易になる。
【0061】
特に、式0≦((a*)2+(b*)2)0.5≦2を満たすような比率で、チタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子とを含有するインクを用いて、透明基材上へコーティング層または粘着剤層を形成して得た着色基材の光学特性は、より自然な色調を実現することができ好ましい。
また、本発明に係るインクは、チタン化合物微粒子、カーボンブラック微粒子とも無機化合物であることから、耐候性が高い。
【0062】
ここで、本発明に係るインクを用いて透明基材上へコーティング層または粘着剤層を形成して得た着色基材の光学特性が、JIS Z 8701:1999およびJIS Z 8729:2004に基づきD65光源・10度視野にて算出されるL*a*b*色味値において、透過色座標または反射色座標の少なくとも一方のa*およびb*の値が式0≦((a*)2+(b*)2)0.5≦3、さらに好ましくは式0≦((a*)2+(b*)2)0.5≦2を満たすことの意義について説明する。
尚、当該光学特性の意義は、後述する本発明に係る着色層および着色基材の光学特性についても同様である。
【0063】
所定の色調L*
0、a*
0、b*
0を持つ標準試料に対して、被測定試料が色調L*、a*、b*を有するとき、観察者の練度や色域に依存することはあるものの、JIS Z 8730:2009で規定される測定サンプルの色差ΔE=((ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2)1/2=((L*-L*
0)2+(a*-a*
0)2+(b*-b*
0)2)1/2の値が0以上3以下となると、標準試料と被測定試料との色調の差を目視で判別することが困難である。特に、色差ΔEが0以上2以下であれば、さらに判別が困難である。
一方、標準試料が理想的なグレーの色調を持ち、且つ、被測定試料と同一の明るさであるとき、すなわち標準試料がL*
0=L*、a*
0=0およびb*
0=0を同時に満たすとき、当該標準試料に対する被測定試料の色差はΔE=((a*)2+(b*)2)1/2で算出されることとなる。
従って、理想的なグレーの色調を有する標準試料に対する被測定試料の色差が、式0≦((a*)2+(b*)2)1/2≦3を満たすとき、理想的なグレーの色調を有する標準試料と被測定試料との色調の差を目視で判別することは困難である。式0≦((a*)2+(b*)2)1/2≦2の関係を満たすときは、さらに判別が困難であることによる。
この結果、本発明に係るインキを用いることで、自然な色調を有する着色層や着色基材を製造することが出来る。
【0064】
(2)インクの製造方法
本発明に係るインクは、公知の方法で製造することができる。
この製造の際、チタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子とを、所定の割合で液状媒体である溶媒に添加し、両微粒子に対し同時に分散処理を行うことで、本発明に係るインクを製造することが出来る。また、チタン化合物微粒子の分散液と、カーボンブラック微粒子の分散液とを、それぞれ別個の分散処理により製造した後、当該2種の分散液を所定の割合で混合することで、本発明に係るインクを製造してもよい。
当該分散処理の方法は、チタン化合物微粒子および/またはカーボンブラック微粒子が、均一に液状媒体中へ分散する方法であれば特に限定されるものではない。例えばビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散等を用いることができる。
【0065】
尚、当該チタン化合物微粒子および/またはカーボンブラック微粒子を、液状媒体に添加し分散処理する際に、所望により適量の分散剤、カップリング剤、界面活性剤等を添加することができる。
【0066】
上述した赤外線吸収性化合物、コーティング樹脂、粘着剤、その他の添加物は、チタン化合物微粒子および/またはカーボンブラック微粒子の分散処理の前に添加してもよく、当該分散処理の後に添加してもよい。
但し、赤外線吸収性化合物として無機の赤外線吸収性微粒子を用いる場合や、紫外線吸収剤として無機の紫外線吸収性微粒子を用いる場合は、予め、これら微粒子の分散液を製造しておき、当該分散液を、本発明に係るインクへ添加することが好ましい。
また、コーティング樹脂や粘着剤を、チタン化合物微粒子および/またはカーボンブラック微粒子の分散処理の前に添加した場合、当該分散処理工程において液の粘度が上昇し、分散効率を低下する場合がある。そこで、コーティング樹脂や粘着剤は、チタン化合物微粒子および/またはカーボンブラック微粒子を分散処理した後の分散液へ、添加することが好ましい構成である。
【0067】
(3)分散粉およびマスターバッチの形態
本発明に係る分散体は、少なくともチタン化合物微粒子、カーボンブラック微粒子および分散剤を含む。そして分散粉は粉末状、マスターバッチはペレット状の形態を有する。
【0068】
本発明に係る分散粉およびマスターバッチを、熱可塑性樹脂と混合することで、当該混合物をシート状、ボード状あるいはフィルム状の形態を有する着色膜の形成に用いることができる。
【0069】
尚、本発明に係る分散粉およびマスターバッチは、当該分散粉およびマスターバッチを用いて熱可塑性樹脂中へチタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子を分散して得た、シート状、フィルム状もしくはボード状の形態を有する着色膜の光学特性について、上述したインクと同様に考えることが出来る。
【0070】
(4)分散粉およびマスターバッチの製造方法
本発明に係る分散粉およびマスターバッチは、公知の方法で製造することができる。
例えば、上述した分散液から有機溶媒などの揮発成分を除去することで、分散剤中にチタン化合物微粒子およびカーボンブラック微粒子が高濃度で分散した粉末状の分散体である分散粉を得ることができる。揮発成分を除去する方法としては特に限定されないが、例えば当該分散液を減圧乾燥する方法を好ましく用いることができる。
【0071】
具体的には、分散液を攪拌しながら減圧乾燥し、分散体と揮発成分とを分離する。当該減圧乾燥に用いる装置としては、真空攪拌型の乾燥機が挙げられるが、上記機能を有する装置であれば良く、特に限定されない。また、減圧乾燥する際の圧力値についても特に限定されず適宜選択することができる。
分散液から揮発成分を除去する際に、減圧乾燥法を用いることで、該混合物からの溶媒の除去効率を向上させることができる。また、分散体が長時間高温に曝されることがないので、分散体中に分散しているチタン化合物微粒子やカーボンブラック微粒子の凝集が起こらず好ましい。さらに蒸発した溶媒を回収することも容易で、環境的配慮からも好ましい。
また、当該分散粉を樹脂中に分散させ、当該樹脂をペレット状に成形することで、ペレット状の分散体、すなわちマスターバッチを得ることもできる。
【0072】
得られた分散粉およびマスターバッチにおいて、残留する溶媒は5質量%以下であることが好ましい。これは、残留する溶媒が5質量%以下であれば、当該分散粉およびマスターバッチを、例えば、後述する着色膜に加工した際に気泡が発生せず、外観や光学特性が良好に保たれるからである。
【0073】
[3]着色層、着色基材、着色膜、着色合わせ基材、およびその製造方法
以下、着色層、着色膜の説明を含め、(1)着色層の形態、(2)着色基材の形態、(3)着色膜、着色合わせ基材の形態、(4)着色層、着色基材の製造方法、(5)着色膜、着色合わせ基材の製造方法、についてそれぞれ説明する。
【0074】
(1)着色層の形態
本発明に係る着色層は、少なくともチタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子とを含有する着色層であり、JIS Z 8701:1999およびJIS Z 8729:2004に基づきD65光源・10度視野にて算出されるL*a*b*色味値において、透過色座標または反射色座標の少なくとも一方のa*およびb*の値が、式0≦((a*)2+(b*)2)0.5≦3を満たすことを特徴とする。
【0075】
本発明の着色層を用いて本発明に係る着色基材を製造する場合、JIS R 3106:1998で算出される可視光透過率が0.2%以上60%以下であることが好ましい。これは、これは、可視光透過率が0.2%以上あれば、着色基材を通しての視認性が担保できる為である。また60%以下であれば、着色基材の人間の視感度に対する透過率が適正なものとなり、着色基材としての役割である、太陽光による車両搭乗者の眩惑防止や、車内・室内の快適性向上、冷房効率や自動車燃費の向上、人間の視線の遮蔽によるプライバシー保護といった効果を担保できる為である。
当該観点より、着色基材の可視光透過率は0.5%以上40%以下であることがさらに好ましい。
【0076】
本発明に係る着色層およびインクを用い、例えば、ディスプレイの画素間に形成されるブラックマトリックス等に用いる場合、単位投影面積あたりのチタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子との合計重量を多くすることで、当該着色層の可視光透過率を0%以上0.2%未満に調整することもできる。
当該着色層は、可視光の透過性を実質的に有しない一方、反射色がΔE=((a*)2+(b*)2)0.5≦3を満たし、好ましくはΔE=((a*)2+(b*)2)0.5≦2を満たす、自然な色調を有する着色層である。
【0077】
当該インクを用いて、当該着色層をガラスや樹脂シート、樹脂フィルム、等の任意の基材上に形成することで、深い黒色、且つ、自然な色調を有する塗膜となる。即ち、当該インクは塗料等として、着色層はディスプレイの画素間に形成されるブラックマトリックス等として用いることができる。
【0078】
可視光透過率を0%以上0.2%未満に調整した着色層においても、可視光透過率が0.2%以上60%以下の着色層と同様に、その光学特性はJIS R 3106:1998で算出される可視光透過率が0%以上60%以下であり、JIS Z 8701:1999およびJIS Z 8729:2004に基づきD65光源・10度視野にて算出されるL*a*b*色味値において、透過色座標または反射色座標の少なくとも一方のa*およびb*の値が、式0≦((a*)2+(b*)2)0.5≦3を満たすような比率で、チタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子とを含有する。
また、本発明に係る分散体である着色層は、単位投影面積あたりに含有するチタン化合物微粒子とカーボンブラック化合物微粒子との合計重量が0.05g/m2以上1.50g/m2以下であることが好ましい。
【0079】
具体的には、本発明に係る分散体であり、着色層でもあるコーティング層または粘着剤層に含有されるチタン化合物微粒子と、カーボンブラック微粒子との重量比が、[チタン化合物微粒子]/[カーボンブラック微粒子]=100:10の値よりもチタン化合物微粒子が少ないことで、着色基材の色味は自然な色調を示す灰色から、青~青紫色へと寄ることを回避出来る。この結果、ΔE=((a*))2+(b*)2)0.5≦3となり、上述した光学特性を満足することが容易になる。
一方、上述した[チタン化合物微粒子]/[カーボンブラック微粒子]=100:100重量比の値よりもカーボンブラック微粒子が少ないことで、着色基材の色味は自然な色調を示す灰色から、褐色へと寄ることを回避出来る。この結果、ΔE=((a*)2+(b*)2)0.5≦3となり、上述した光学特性を満足することが容易になる。
とりわけ、式0≦((a*)2+(b*)2)0.5≦2を満たすような比率で、チタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子とを含有することで、より自然な色調を実現することができ、特に好ましい。
【0080】
尚、本発明に係る着色層は、前述した塗料、ブラックマトリックス、着色基材といった用途以外にも、例えばサングラス、レーザ保護眼鏡、光学素子としての減光フィルタやNDフィルタ、農業用遮光フィルム、食品用保護フィルム等へも応用が可能である。
また、本発明に係る着色層は、チタン化合物微粒子、カーボンブラック微粒子とも無機化合物であることから、耐候性が高い。
【0081】
(2)着色基材の形態
本発明に係る着色基材は、少なくともチタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子とを含有する透明基材、または、透明基材の少なくとも片面にコーティング層または粘着剤層を有する着色基材である。そして、当該コーティング層または当該粘着剤層の少なくとも一層が着色層であり、当該着色基材としても、JIS Z 8701:1999およびJIS Z 8729:2004に基づきD65光源・10度視野にて算出されるL*a*b*色味値において、透過色座標または反射色座標の少なくとも一方のa*およびb*の値が、式0≦((a*)2+(b*)2)0.5≦3を満たすことを特徴とする。
特に、式0≦((a*)2+(b*)2)0.5≦2を満たすような比率で、チタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子とを着色層に含有させることで、より自然な色調を実現することができ、特に好ましい。
【0082】
チタン化合物微粒子およびカーボンブラック微粒子は、各々コーティング層と粘着剤層とのどちらに含有されていてもよい。そして、同一の層に両微粒子が分散されていても、異なる層に分散されていてもよい。
尤も、製造工程を簡易化する観点からは、チタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子とは、コーティング層と粘着剤層のいずれかの同一層に共に分散されていることが好ましい。
【0083】
また、チタン化合物微粒子およびカーボンブラック微粒子は、粘着剤層よりもコーティング層に含有されていることがより好ましい。これは粘着剤層へチタン化合物微粒子やカーボンブラック微粒子を含有させた場合、本発明に係る着色フィルムを窓などに貼り付けた際に、貼り付ける圧力により粘着剤の膜厚が面内で均一でなくなり、面積あたりの微粒子量が変化することで、色むらが生じる可能性がある為である。
【0084】
尚、粘着剤層を有する着色フィルムにおいては、実用上の観点から、粘着剤層表面に離型フィルムを積層することも好ましい。また自動車のバックウィンドウのように曲面へも貼り付け易いように、ドライヤー等の熱で簡単に軟化するフィルムを、基材フィルムとして用いてもよい。
【0085】
ここで、チタン化合物微粒子およびカーボンブラック化合物微粒子の両方を、粘着剤層に含有させる構成をとる場合であっても、コーティング樹脂を用いてフィルム基材の少なくとも片面にコーティング層を形成するのが好ましい構成である。
これは、フィルム基材の表面に適宜なコーティング層が形成されていることで、当該着色フィルム基材の耐候性、表面の耐擦過性、等といった実用的な特性が向上する為である。
【0086】
上述したように、本発明に係る着色フィルムの可視光透過率は、当該着色フィルム面における単位投影面積当たりの、チタン化合物微粒子およびカーボンブラック微粒子の合計重量によって決定される。当該単位投影面積あたりの両微粒子の合計重量は、インク中の両微粒子重量と、コーティング樹脂や粘着剤との重量比率、または、コーティング層および/または粘着剤層の厚みを適宜に制御することで、容易に調整可能である。
そして、本発明に係る着色基材は、チタン化合物微粒子、カーボンブラック微粒子とも無機化合物であることから、耐候性が高い。
【0087】
(3)着色膜、着色合わせ基材の形態
本発明に係る着色膜は、熱可塑性樹脂を含有し、成形されることで、シート状、ボード状あるいはフィルム状、等の形態をとることができる。
当該成形方法は、公知のものが適用できる。
上述した着色層、着色膜着色基材から選択される1種以上を、複数の透明基材間に配置したり、複数の透明基材によって挟持させたりすることにより本発明に係る着色合わせ基材となる。
また、着色合わせ基材を構成するための透明基材は、ガラスであることが好ましい。
【0088】
本発明に係る着色膜、着色合わせ基材は、それ自体においても、JIS Z 8701:1999およびJIS Z 8729:2004に基づきD65光源・10度視野にて算出されるL*a*b*色味値において、透過色座標または反射色座標の少なくとも一方のa*およびb*の値が、式0≦((a*)2+(b*)2)0.5≦3を満たす。
特に、式0≦((a*)2+(b*)2)0.5≦2を満たすような比率で、チタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子とを着色層に含有させることで、より自然な色調を実現することができ、特に好ましい。
【0089】
尚、本発明に係る着色合わせ基材の光学特性、製造条件については、上述した着色層や着色基材と同様に考えることが出来る。
【0090】
(4)着色層、着色基材の製造方法
本発明に係る着色層は、本発明に係るコーティング用インク、または、本発明に係る粘着剤層形成液を用いて形成することができる。
また、本発明に係る着色基材は、透明基材および本発明に係るコーティング用インク、または、透明基材および本発明に係る粘着剤層形成液を用いて製造することができる。
【0091】
以下、本発明に係る着色基材としての、着色フィルムの製造工程の一例を用いて、着色層、着色基材の製造方法を具体的に説明するが、本発明はこの記述に限定されるものではない。
まず、本発明に係るコーティング用インクを、透明フィルム基材表面にコーティングした後、溶媒を蒸発させる。そして、所定の方法でコーティング樹脂を硬化させることで、チタン化合物微粒子およびカーボンブラック微粒子がコーティング樹脂中に分散した着色層であるコーティング層が透明フィルム基材表面に形成され、本発明に係る着色フィルムを製造することができる。
【0092】
また、本発明に係る粘着剤層形成液を透明フィルム基材表面にコーティングした後、溶媒を蒸発させることで、チタン化合物微粒子およびカーボンブラック微粒子が媒体中に分散した着色層でもある粘着剤層が透明基材表面に形成され、本発明に係る着色フィルムを製造することができる。
【0093】
透明フィルム基材上へコーティング層や粘着剤層を設ける際に、本発明に係るコーティング用インクを塗布する方法は、当該透明フィルム基材表面へインクが均一に塗布できる方法であればよく、特に限定されない。例えば、バーコート法、グラビヤコート法、スプレーコート法、ディップコート法等を挙げることができる。
【0094】
ここで、着色フィルムの製造方法として、コーティング樹脂として紫外線硬化樹脂を用いた本発明に係るコーティング用インクにおいて、バーコート法を用いてコーティング層を形成する場合を例に、コーティング層の形成工程について説明する。
【0095】
本発明に係るコーティング用インクをバーコート法により塗布する場合、適度なレベリング性をもつよう液濃度、および添加剤等を適宜調整してインクを調製することが好ましい。そして、所望のコーティング層の厚さや、コーティング層中の微粒子の含有量に応じて適切なバー番号のワイヤーバーを用いて基材フィルム上に当該インクの塗膜を形成することができる。次いで塗布されたインク中に含まれる溶媒を乾燥により除去した後、紫外線を照射し硬化させることで、透明フィルム基材上にコーティング層を形成することができる。
このとき、コーティング用インクの塗膜の乾燥条件としては、コーティング用インクに含まれる成分や、溶媒の種類や使用割合によっても異なるが、例えば60℃~140℃の温度で20秒~10分間程度加熱することで、コーティング用インクの塗膜を乾燥することができる。
また、紫外線の照射方法は特に限定されるものではなく、例えば、超高圧水銀灯などのUV露光機を好適に用いることができる。
【0096】
以上の操作に加え、上述したコーティング層の形成工程の前後において、さらに適宜な工程を実施し、基板である透明フィルム基材とコーティング層との密着性、コーティング時の塗膜の平滑性、溶媒の乾燥性などを操作することもできる。コーティング層の形成工程の前後に任意に実施する工程としては、例えば基材の表面処理工程、プリベーク(基材フィルムの前加熱)工程、ポストベーク(基材フィルムの後加熱)工程などが挙げられ、適宜選択することができる。プリベーク工程および/またはポストベーク工程を実施する場合、当該工程における加熱温度は例えば80℃~200℃、加熱時間は30秒~240秒であることが好ましい。
透明フィルム基材上におけるコーティング層の厚さは、特に限定されないが10μm以下であることが好ましく、6μm以下であることがより好ましい。これはコーティング層の厚さが10μm以下であれば、十分な鉛筆硬度を発揮して耐擦過性を有することに加えて、コーティング層における溶媒の揮散およびバインダーの硬化の際に、透明フィルム基材の反り発生等の工程異常発生を抑制できるからである。
【0097】
(5)着色膜、着色合わせ基材の製造方法
本発明に係る着色合わせ基材は、本発明にかかる着色層、シート状、ボード状もしくはフィルム状の形態を有する着色膜、着色基材から選択される1種以上を、複数枚の透明基材間に配置したり、複数枚の透明基材によって挟持させることにより製造することができる。
以下、本発明に係る着色膜および着色合わせ基材の製造工程の一例を用いて、着色膜および着色合わせ基材の製造方法の一例を具体的に説明するが、本発明はこの記述に限定されるものではない。
着色合わせ基材の中間層として用いる着色膜が含有する熱可塑性樹脂は、透明基材との密着性、耐候性、耐貫通性などの観点から、ポリビニルアセタール樹脂やエチレン・酢酸ビニル共重合体が好ましく、ポリビニルブチラール樹脂であることがさらに好ましい。
【0098】
また、当該着色膜を構成する熱可塑性樹脂が単独では柔軟性や透明基材との密着性を十分に有しない場合、例えば熱可塑性樹脂がポリビニルアセタール樹脂である場合は、さらに可塑剤を添加することが好ましい。
可塑剤としては、本発明に係る熱可塑性樹脂に対して可塑剤として用いられる物質を用いることができる。例えばポリビニルアセタール樹脂で構成された熱線遮蔽フィルムに用いられる可塑剤としては、一価アルコールと有機酸エステルとの化合物である可塑剤、多価アルコール有機酸エステル化合物等のエステル系である可塑剤、有機リン酸系可塑剤等のリン酸系である可塑剤が挙げられる。いずれの可塑剤も、室温で液状であることが好ましい。なかでも、多価アルコールと脂肪酸から合成されたエステル化合物である可塑剤が好ましい。
【0099】
粉末状もしくはペレット状の分散体と、熱可塑性樹脂と、所望に応じて可塑剤その他添加剤とを混練した後、当該混練物を、押出成形法、射出成形法等の公知の方法により、フィルム状の着色膜を製造することができる。
フィルム状の着色層の形成方法には、公知の方法を用いることが出来る。例えば、カレンダーロール法、押出法、キャスティング法、インフレーション法等を用いることができる。
こうして製造されたフィルム状の着色膜を、板ガラスまたはプラスチックの材質からなる複数枚の透明基材間に、中間層として介在させることで、本発明にかかる着色合わせ基材を得ることができる。尚、複数枚の透明基材間に、フィルム状の分散体を介在させて合わせ基材を得る方法においては、公知の張り合わせ方法を用いることができる。
【実施例】
【0100】
以下、実施例を参照しながら本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるわけではない。
尚、実施例および比較例において、着色フィルムの光学特性は、分光光度計U-4100(日立製作所(株)製)を用いて測定した。
具体的には、次の手順による。
(1)試料の分光透過率(透過率の光波長依存性)を分光光度計で測定する。
(2)測定された分光透過率を、JIS Z 8701に基づいて、D65光源・10°視野でのX10Y10Z10色味値に変換する。
(3)変換されたX10Y10Z10色味値を、JIS Z 8729に基づいて、D65光源・10°視野でのL*a*b*色味値に変換し、a*、b*の値を得る。
【0101】
フィルム基材としては、透明PETフィルムHPE-50(帝人(株)製、厚さ50μm)(以下、単に「PETフィルム」と記載する。)を用いた。当該PETフィルムの光学特性を測定したところ、可視光透過率は89.2%、日射透過率は89.2%であった。また色座標においてa*=0.0,b*=0.8であり、灰色からの色差ΔE=((a*)
2+(b*)
2)
0.5の値は0.8であった。これを表1に示した。また、当該PETフィルムの分光透過率を、
図1および
図2に細実線を用いて示した。
【0102】
(実施例1)
窒化チタン微粒子(平均粒径30nm)を10質量%、官能基としてアミンを含有する基を有するアクリル系高分子分散剤(アミン価48mgKOH/g、分解温度250℃のアクリル系分散剤)(以下、分散剤aと略称する。)10質量%、トルエン80質量%を秤量した。これらを、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、13時間粉砕・分散処理し、窒化チタン微粒子分散液(以下、分散液Aと略称する。)を得た。
【0103】
カーボンブラック微粒子(平均粒径15nm)を10質量%、分散剤aを10質量%、トルエン80質量%を秤量した。これらを、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、7時間粉砕・分散処理し、カーボンブラック微粒子分散液(以下、分散液Bと略称する。)を得た。
【0104】
分散液Aと分散液Bとを、後述するコーティング用インク中に含まれる窒化チタン微粒子とカーボンブラック微粒子との重量比が100:30となるよう混合し、混合インクを得た。この混合インク100重量部へ、紫外線硬化樹脂(東亞合成(株)のアロニックスUV-3701。有効成分100%のアクリル系紫外線硬化樹脂。以下、単に紫外線硬化樹脂と呼ぶ。)を100重量部、トルエンを800重量部添加した後、十分に混合することで、実施例1に係るコーティング用インク(以下、コーティング用インクAと略称する。)を得た。
【0105】
PETフィルムの表面に、No.6のワイヤーバーを用いて、上記コーティング用インクAをバーコーターにより成膜した。この膜を70℃で1分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化させた。以上により、窒化チタン微粒子とカーボンブラック微粒子とを含有するコーティング層の形成された、実施例1に係る着色フィルム(以下、着色フィルムAと略称する。)を得た。
【0106】
着色フィルムに含まれる単位投影面積あたりの着色材料の合計重量は、0.16g/m2となった。また、着色フィルムの光学特性を測定した結果、着色フィルムAの可視光透過率は36.6%で、日射透過率は43.0%であった。また色座標においてa*=-1.1、b*=0.2であり、灰色からの色差ΔE=((a*)2+(b*)2)1/2は1.1であった。これを表1に示した。
【0107】
(実施例2~6)
ワイヤーバーのバー番号の変更によりコーティング膜厚を変更したことを除いては実施例1と同様にして、実施例2~6に係る着色フィルム(以下、それぞれ着色フィルムB、着色フィルムC、着色フィルムD、着色フィルムE、着色フィルムFと略称する。)を得た。
尚、実施例2ではNo.10、実施例3ではNo.12、実施例4ではNo.18、実施例5ではNo.24、実施例6ではNo.40のワイヤーバーを用いた。
そして着色フィルムB、着色フィルムC、着色フィルムD、着色フィルムE、着色フィルムFの光学特性を実施例1と同様に測定し、着色フィルムに含まれる単位投影面積あたりの着色材料の合計重量とともに表1に示した。
【0108】
(実施例7)
実施例1で作製した分散液Aと分散液Bを、インク中に含まれる窒化チタン微粒子とカーボンブラック微粒子との重量比が100:50となるよう混合した。この混合インク100重量部に対して、紫外線硬化樹脂を100重量部、トルエンを800重量部添加したのち十分に混合することで、実施例7に係るコーティング用インク(以下、コーティング用インクGと略称する。)を得た。
【0109】
PETフィルムの表面に、No.4のワイヤーバーを用いて、上記コーティング用インクGをバーコーターにより成膜した。この膜を70℃で1分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化させた。以上により、窒化チタン微粒子とカーボンブラック微粒子とを含有するコーティング層の形成された、実施例7に係る着色フィルム(以下、着色フィルムGと略称する。)を得た。そして着色フィルムGの光学特性を実施例1と同様に測定し、着色フィルムに含まれる単位投影面積あたりの着色材料の合計重量とともに表1に示した。
【0110】
(実施例8)
ワイヤーバーのバー番号の変更によりコーティング膜厚を変更したことを除いては実施例7と同様にして、実施例8に係る着色フィルム(以下、着色フィルムHと略称する。)を得た。なお、実施例8ではNo.8のワイヤーバーを用いた。
そして着色フィルムHの光学特性を実施例1と同様に測定し、着色フィルムに含まれる単位投影面積あたりの着色材料の合計重量とともに表1に示した。
【0111】
(実施例9)
実施例1で作製した分散液Aと分散液Bを、インク中に含まれる窒化チタン微粒子とカーボンブラック微粒子との重量比が100:70となるよう混合した。この混合インク100重量部に対して、紫外線硬化樹脂を100重量部、トルエンを800重量部添加したのち十分に混合することで、実施例9に係るコーティング用インク(以下、コーティング用インクIと略称する。)を得た。
【0112】
PETフィルムの表面に、No.3のワイヤーバーを用いて、上記コーティング用インクIをバーコーターにより成膜した。この膜を70℃で1分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化させた。以上により、窒化チタン微粒子とカーボンブラック微粒子とを含有するコーティング層の形成された、実施例9に係る着色フィルム(以下、着色フィルムIと略称する。)を得た。そして着色フィルムIの光学特性を実施例1と同様に測定し、着色フィルムに含まれる単位投影面積あたりの着色材料の合計重量とともに表1に示した。
【0113】
(実施例10)
実施例1で作製した分散液Aと分散液Bを、インク中に含まれる窒化チタン微粒子とカーボンブラック微粒子との重量比が100:25となるよう混合した。この混合インク100重量部に対して、紫外線硬化樹脂を100重量部、トルエンを800重量部添加した後、十分に混合することで、実施例10に係るコーティング用インク(以下、コーティング用インクJと略称する。)を得た。
【0114】
PETフィルムの表面に、No.4のワイヤーバーを用いて、上記コーティング用インクJをバーコーターにより成膜した。この膜を70℃で1分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化させた。以上により、窒化チタン微粒子とカーボンブラック微粒子とを含有するコーティング層の形成された、実施例10に係る着色フィルム(以下、着色フィルムJと略称する。)を得た。そして着色フィルムJの光学特性を実施例1と同様に測定し、着色フィルムに含まれる単位投影面積あたりの着色材料の合計重量とともに表1に示した。
【0115】
(実施例11~13)
ワイヤーバーのバー番号の変更によりコーティング膜厚を変更したことを除いては実施例10と同様にして、実施例11~13に係る着色フィルム(以下、それぞれ着色フィルムK、着色フィルムL、着色フィルムMと略称する。)を得た。なお、実施例11ではNo.10、実施例12ではNo.12、実施例13ではNo.16のワイヤーバーを用いた。
そして着色フィルムK、着色フィルムL、着色フィルムMの光学特性を実施例1と同様に測定し、着色フィルムに含まれる単位投影面積あたりの着色材料の合計重量とともに表1に示した。
【0116】
(実施例14)
実施例1で作製した分散液Aと分散液Bを、インク中に含まれる窒化チタン微粒子とカーボンブラック微粒子との重量比が100:15となるよう混合した。この混合インク100重量部に対して、紫外線硬化樹脂を100重量部、トルエンを800重量部添加したのち十分に混合することで、実施例14に係るコーティング用インク(以下、コーティング用インクNと略称する。)を得た。
【0117】
PETフィルムの表面に、No.4のワイヤーバーを用いて、上記コーティング用インクNをバーコーターにより成膜した。この膜を70℃で1分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化させた。以上により、窒化チタン微粒子とカーボンブラック微粒子とを含有するコーティング層の形成された、実施例14に係る着色フィルム(以下、着色フィルムNと略称する。)を得た。そして着色フィルムNの光学特性を実施例1と同様に測定し、着色フィルムに含まれる単位投影面積あたりの着色材料の合計重量とともに表1に示した。
【0118】
(実施例15)
ワイヤーバーのバー番号の変更によりコーティング膜厚を変更したことを除いては実施例14と同様にして、実施例15に係る着色フィルム(以下、着色フィルムOと略称する。)を得た。なお、実施例15ではNo.6のワイヤーバーを用いた。
そして着色フィルムOの光学特性を実施例1と同様に測定し、着色フィルムに含まれる単位投影面積あたりの着色材料の合計重量とともに表1に示した。
【0119】
(実施例16)
実施例1で作製した分散液Aと分散液Bを、インク中に含まれる窒化チタン微粒子とカーボンブラック微粒子との重量比が100:10となるよう混合した。この混合インク100重量部に対して、紫外線硬化樹脂を100重量部、トルエンを800重量部添加したのち十分に混合することで、実施例16に係るコーティング用インク(以下、コーティング用インクPと略称する。)を得た。
【0120】
PETフィルムの表面に、No.4のワイヤーバーを用いて、上記コーティング用インクPをバーコーターにより成膜した。この膜を70℃で1分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化させた。以上により、窒化チタン微粒子とカーボンブラック微粒子とを含有するコーティング層の形成された、実施例16に係る着色フィルム(以下、着色フィルムPと略称する。)を得た。そして着色フィルムPの光学特性を実施例1と同様に測定し、着色フィルムに含まれる単位投影面積あたりの着色材料の合計重量とともに表1に示した。
【0121】
(実施例17)
アンチモンドープ酸化錫(ATO)微粒子(平均粒径24nm)を10質量%、分散剤aを10質量%、トルエン80質量%を秤量した。これらを、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、10時間粉砕・分散処理し、ATO微粒子分散液(以下、分散液Cと略称する。)を得た。
【0122】
分散液Cと、実施例1で作製した分散液Aと分散液Bとを、インク中に含まれる窒化チタン微粒子とカーボンブラック微粒子とATO微粒子の重量比が100:40:400となるよう混合した。この混合インク100重量部に対して、紫外線硬化樹脂を100重量部、トルエンを50重量部添加したのち十分に混合することで、実施例17に係るコーティング用インク(以下、コーティング用インクQと略称する。)を得た。
【0123】
PETフィルムの表面に、No.10のワイヤーバーを用いて、上記コーティング用インクQをバーコーターにより成膜した。この膜を70℃で1分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化させた。以上により、窒化チタン微粒子、カーボンブラック微粒子およびATO微粒子を含有するコーティング層の形成された、実施例17に係る着色フィルム(以下、着色フィルムQと略称する。)を得た。そして着色フィルムQの光学特性を実施例1と同様に測定し、着色フィルムに含まれる単位投影面積あたりの着色材料の合計重量とともに表1に示した。
【0124】
(実施例18)
酸化窒化チタン微粒子(平均粒径28nm)を10質量%、分散剤aを10質量%、トルエン80質量%を秤量した。これらを、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、15時間粉砕・分散処理し、酸化窒化チタン微粒子分散液(以下、分散液Dと略称する。)を得た。
【0125】
分散液Dと、実施例1で作製した分散液Aとを、インク中に含まれる酸化窒化チタン微粒子とカーボンブラック微粒子との重量比が100:50となるよう混合した。この混合インク100重量部に対して、紫外線硬化樹脂を100重量部、トルエンを800重量部添加したのち十分に混合することで、実施例18に係るコーティング用インク(以下、コーティング用インクRと略称する。)を得た。
【0126】
PETフィルムの表面に、No.6のワイヤーバーを用いて、上記コーティング用インクRをバーコーターにより成膜した。この膜を70℃で1分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化させた。以上により、酸化窒化チタン微粒子とカーボンブラック微粒子とを含有するコーティング層の形成された、実施例18に係る着色フィルム(以下、着色フィルムRと略称する。)を得た。そして着色フィルムRの光学特性を実施例1と同様に測定し、着色フィルムに含まれる単位投影面積あたりの着色材料の合計重量とともに表1に示した。
【0127】
(実施例19~22)
ワイヤーバーのバー番号の変更によりコーティング膜厚を変更したことを除いては実施例18と同様にして、実施例19~22に係る着色フィルム(以下、それぞれ着色フィルムS、着色フィルムT、着色フィルムU、着色フィルムVと略称する。)を得た。なお、実施例19ではNo.9、実施例20ではNo.10、実施例21ではNo.14、実施例22ではNo.22のワイヤーバーを用いた。
そして着色フィルムS、着色フィルムT、着色フィルムU、着色フィルムVの光学特性を実施例1と同様に測定し、着色フィルムに含まれる単位投影面積あたりの着色材料の合計重量とともに表1に示した。
また、実施例22で得られた着色フィルムVの分光透過率を、
図1および
図2に太実線を用いて示した。
【0128】
(実施例23)
実施例1で作製した分散液Bと、実施例18で作製した分散液Dとを、インク中に含まれる酸化窒化チタン微粒子とカーボンブラック微粒子との重量比が100:80となるよう混合した。この混合インク100重量部に対して、紫外線硬化樹脂を100重量部、トルエンを800重量部添加したのち十分に混合することで、実施例23に係るコーティング用インク(以下、コーティング用インクWと略称する。)を得た。
【0129】
PETフィルムの表面に、No.4のワイヤーバーを用いて、上記コーティング用インクWをバーコーターにより成膜した。この膜を70℃で1分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化させた。以上により、酸化窒化チタン微粒子とカーボンブラック微粒子とを含有するコーティング層の形成された、実施例23に係る着色フィルム(以下、着色フィルムWと略称する。)を得た。そして着色フィルムWの光学特性を実施例1と同様に測定し、着色フィルムに含まれる単位投影面積あたりの着色材料の合計重量とともに表1に示した。
【0130】
(実施例24)
ワイヤーバーのバー番号の変更によりコーティング膜厚を変更したことを除いては実施例23と同様にして、実施例24に係る着色フィルム(以下、着色フィルムXと略称する。)を得た。なお、実施例24ではNo.5のワイヤーバーを用いた。
そして着色フィルムXの光学特性を実施例1と同様に測定し、着色フィルムに含まれる単位投影面積あたりの着色材料の合計重量とともに表1に示した。
【0131】
(実施例25)
実施例1で作製した分散液Aと分散液Bとを混合し、混合インクを得た。このとき、当該混合インク中に含まれる窒化チタン微粒子とカーボンブラック微粒子との重量比が、100:30となるよう混合した。
次に、当該混合インクへ分散剤aを添加した。このとき、分散剤aを添加した混合インク中に含まれる、分散剤の重量と、窒化チタン微粒子とカーボン微粒子とを合わせた重量との比が、(分散剤の重量):((窒化チタン微粒子の重量)+(カーボン微粒子の重量))=900:100となるように、分散剤aを混合インクに添加した。
尚、当該式中の(分散剤の重量)は、分散液Aおよび分散液Bを製造する際に添加した分散剤の重量と、分散液Aおよび分散液Bを混合したのちに添加した分散剤の重量とを合わせた重量を表している。
【0132】
得られた分散剤aを添加した混合インクを、撹拌型真空乾燥機へ装填した。
そして、撹拌型真空乾燥機により常温で減圧乾燥を行って、分散剤aを添加した混合インクからトルエンを除去し、実施例25に係る窒化チタン微粒子とカーボン微粒子と熱可塑性樹脂である分散剤aとを含有する分散粉(以下、分散粉Yと略称する。)を得た。得られた分散粉Yのトルエン含有量は、2.9重量%であった。
【0133】
ポリカーボネート樹脂(帝人製)の粉末を99.87重量部と、分散粉Yを0.13重量部混合し、280℃に設定した二軸押出機に供給して混練を行った後、押出成形により1.0mm厚のシート状に成形した。これにより実施例25に係る熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂を含むシート状の着色膜(以下、着色膜Yと略称する。)を得た。
着色膜Yに含まれる単位投影面積あたりの着色材料の合計重量は、0.16g/m2となった。また、着色膜Yの光学特性を測定した結果、可視光透過率は35.9%、日射透過率は42.5%であった。また色座標においてa*=-1.0、b*=0.4であり、灰色からの色差ΔE=((a*)2+(b*)2)1/2は1.1であった。
【0134】
(実施例26)
ポリビニルブチラール樹脂の粉末を71.30重量部、可塑剤としてトリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエートを28.52重量部、実施例25で製造した分散粉Yを0.18重量部秤量し、十分に混合して混合組成物を得た。得られた混合組成物を、200℃に設定した二軸押出機に供給して混練を行った後、Tダイから押し出しカレンダーロール法により0.76mm厚のフィルム状に成形した。これにより、実施例25に係る熱可塑性樹脂として、ポリビニルブチラール樹脂を含むフィルム状の着色膜(以下、着色膜Zと略称する。)を作製した。
【0135】
作製した着色膜Zを、2枚の透明フロートガラス(3mm厚)で仮挟持した後、当該仮挟持物を130℃に熱し、真空下で5分間のプレス処理を施すことで着色合わせ基材(以下、着色合わせ基材Zと略称する。)を得た。
得られた着色合わせ基材Zに含まれる単位投影面積あたりの着色材料の合計重量は、0.16g/m2となった。また、着色合わせ基材Zの光学特性を測定した結果、可視光透過率は35.0%で、日射透過率は42.6%であった。また色座標においてa*=-1.1、b*=0.6であり、灰色からの色差ΔE=((a*)2+(b*)2)1/2は1.3であった。
【0136】
(比較例1)
実施例1で作製した窒化チタン分散液である分散液Aを100重量部に対して、紫外線硬化樹脂を100重量部、トルエンを800重量部添加したのち十分に混合することで、比較例1に係るコーティング用インク(以下、コーティング用インクαと略称する。)を得た。
【0137】
PETフィルムの表面に、No.24のワイヤーバーを用いて、上記コーティング用インクαをバーコーターにより成膜した。この膜を70℃で1分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化させた。以上により、窒化チタン微粒子を含有しカーボンブラック微粒子を含有しないコーティング層の形成された、比較例1に係る着色フィルム(以下、着色フィルムαと略称する。)を得た。そして着色フィルムαの光学特性を実施例1と同様に測定し、着色フィルムに含まれる単位投影面積あたりの着色材料の合計重量とともに表1に示した。
また、比較例1で得られた着色フィルムαの分光透過率を、
図1および
図2に一点鎖線を用いて示した。
【0138】
(比較例2)
実施例1で作製したカーボンブラック分散液である分散液Bを100重量部に対して、紫外線硬化樹脂を100重量部、トルエンを800重量部添加したのち十分に混合することで、比較例2に係るコーティング用インク(以下、コーティング用インクβと略称する。)を得た。
【0139】
PETフィルムの表面に、No.10のワイヤーバーを用いて、上記コーティング用インクβをバーコーターにより成膜した。この膜を70℃で1分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化させた。以上により、カーボンブラック微粒子を含有し窒化チタン微粒子を含有しないコーティング層の形成された、比較例2に係る着色フィルム(以下、着色フィルムβと略称する。)を得た。そして着色フィルムβの光学特性を実施例1と同様に測定し、着色フィルムに含まれる単位投影面積あたりの着色材料の合計重量とともに表1に示した。
また、比較例2で得られた着色フィルムβの分光透過率を、
図1および
図2に長破線を用いて示した。
【0140】
(比較例3)
銅フタロシアニンブルー顔料(C.I.ピグメントブルー15:6)であるHeliogen Blue D 6700 T(BASF製)を10質量%、分散剤aを10質量%、トルエン80質量%を秤量した。これらを、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、5時間粉砕・分散処理し、銅フタロシアニンブルー顔料分散液(以下、分散液Eと略称する。)を得た。
【0141】
分散液Eを100重量部に対して、紫外線硬化樹脂を100重量部、トルエンを800重量部添加したのち十分に混合することで、比較例3に係るコーティング用インク(以下、コーティング用インクγと略称する。)を得た。
PETフィルムの表面に、No.10のワイヤーバーを用いて、上記コーティング用インクγをバーコーターにより成膜した。この膜を70℃で1分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化させた。以上により、銅フタロシアニン顔料を含有し、窒化チタン微粒子とカーボンブラック微粒子とのいずれも含有しないコーティング層の形成された、比較例3に係る着色フィルム(以下、着色フィルムγと略称する。)を得た。そして着色フィルムγの光学特性を実施例1と同様に測定し、着色フィルムに含まれる単位投影面積あたりの着色材料の合計重量とともに表1に示した。
また、比較例3で得られた着色フィルムγの分光透過率を、
図1および
図2に短破線を用いて示した。
【0142】
(比較例4)
酸化鉄(Fe2O3)微粒子(平均粒径30nm)を10質量%、分散剤aを10質量%、トルエン80質量%を秤量した。これらを、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、12時間粉砕・分散処理し、酸化鉄微粒子分散液(以下、分散液Fと略称する。)を得た。
【0143】
分散液Fと、実施例1で作製した分散液Aとを、インク中に含まれる窒化チタン微粒子と酸化鉄微粒子の重量比が100:45となるよう混合した。この混合インク100重量部に対して、紫外線硬化樹脂を100重量部、トルエンを800重量部添加したのち十分に混合することで、比較例4に係るコーティング用インク(以下、コーティング用インクδと略称する。)を得た。
【0144】
PETフィルムの表面に、No.20のワイヤーバーを用いて、上記コーティング用インクδをバーコーターにより成膜した。この膜を70℃で1分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射し、紫外線硬化樹脂を硬化させた。以上により、窒化チタン微粒子を含有しカーボンブラック微粒子を含有しないコーティング層の形成された、比較例4に係る着色フィルム(以下、着色フィルムδと略称する。)を得た。そして着色フィルムδの光学特性を実施例1と同様に測定し、着色フィルムに含まれる単位投影面積あたりの着色材料の合計重量とともに表1に示した。
また、比較例4で得られた着色フィルムδの分光透過率を、
図1および
図2に破線を用いて示した。
【0145】
【0146】
(実施例1~26および比較例1~4の評価)
実施例1~16および実施例18~24に係る着色フィルムは、コーティング層に適宜な割合でチタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子とを含有している。この為、当該着色フィルムは、耐候性の高い無機微粒子のみを用いていながら、可視光透過率の低い領域でもΔE=((a*)2+(b*)2)1/2が0以上3以下の自然な色調を有していた。
実施例25、26に係る着色膜、およびこれを用いた実施例26に係る着色合わせ基材も、上述した実施例1~24と同様に、適宜な割合でチタン化合物微粒子とカーボンブラック微粒子とを含有していることから、同様に可視光透過率の低い領域でもΔE=((a*)2+(b*)2)1/2が0以上3以下の自然な色調を有していた。
【0147】
特に、
図1、
図2に示した実施例22に係る着色フィルムの分光透過率は、波長380~780nmの可視光領域において平坦な透過特性を奏し、特に、波長450~750nmの領域において、分光透過率はほぼ一定値であった。
【0148】
さらに、実施例1~16および実施例18~24に係る着色フィルム、実施例25に係る着色膜、ならびに実施例26に係る着色合わせ基材においては、窒化チタン微粒子とカーボンブラック微粒子とのいずれもが近赤外領域の波長に吸収を持つことから、日射透過率も低い値が得られた。
実施例17に係る着色フィルムでは、上記構成に加えてコーティング層中にさらに赤外線吸収性微粒子を有することで、ΔE=((a*)2+(b*)2)1/2が0以上3以下の自然な色調を保ちながら、同程度の可視光透過率を持ち、且つ、赤外線吸収性微粒子を含有しない他の実施例に係る着色フィルムと比較して、さらに低い日射透過率が得られた。
【0149】
比較例1、2に係る着色フィルムは、窒化チタン微粒子とカーボンブラック分散液とのいずれか一方のみを含有している為に、自然な色調から大きく異なってしまっていた。
比較例3に係る着色フィルムは、青色有機顔料である銅フタロシアニンブルーが可視光を大きくカットするが、可視光の長波長側と比較して可視光の短波長側の吸収が十分でない為に、自然な色調から大きく異なってしまっていた。また銅フタロシアニンブルーが波長780nmより長波長側の近赤外領域にほとんど吸収を持たない為に、日射透過率の抑制が十分ではない。この為、同程度の可視光透過率を持つ実施例に係る着色フィルムと比較すると、日射透過率が非常に高く、遮熱特性で大きく劣るフィルムであった。
比較例4に係る着色フィルムは、可視光長波長領域の吸収が相対的に強い窒化チタン微粒子と、カーボンブラックと同様に可視光短波長領域の吸収が相対的に強い酸化鉄微粒子とを組み合わせた例である。しかし、酸化鉄の持つ吸収特性では、窒化チタンと組み合わせても可視光の全域において平坦な透過率を持つことができず、自然な色調からは異なってしまっていた。これは窒化チタンと酸化鉄との配合比率を変化させても同様であった。
【0150】
当該比較例4に係る着色フィルムの可視光長波長領域の吸収データから、本発明に係る着色フィルムや着色層の構成は、上述の課題を解決する画期的なものであることが改めて示された。