(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】シャワーヘッド
(51)【国際特許分類】
A47K 3/28 20060101AFI20220519BHJP
B05B 1/18 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
A47K3/28
B05B1/18 101
(21)【出願番号】P 2017231897
(22)【出願日】2017-12-01
【審査請求日】2020-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 剛
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-082591(JP,A)
【文献】特開2017-155410(JP,A)
【文献】特開2014-204842(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0119218(KR,A)
【文献】特許第5731650(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/20-3/40
E03C 1/08-1/10
B05B 1/00-1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水管に接続するための接続部と、前記接続部に連なり、前記給水管から供給された液体を散布するための散布部と、を備えたシャワーヘッドであって、
前記散布部は、
前記液体を通過させることにより当該液体中にマイクロバブルを発生させることができるよう構成されたマイクロバブル発生孔を有するマイクロバブル発生部と、
前記マイクロバブル発生部との間に前記液体を貯留する貯留空間が形成されるようにして配置され、前記マイクロバブル発生孔から吐出された前記液体を当該貯留空間内に拡散させるための拡散部と、
前記拡散部を貫通し、前記貯留空間内から外部へ前記液体を吐出するための吐出孔と、
前記吐出孔を通過した前記液体を散布するための散布孔を備え、前記拡散部に対面して配置された分水板と、を有する、
シャワーヘッド。
【請求項2】
前記拡散部は、前記液体の流通方向から見た平面視において、前記マイクロバブル発生孔と重なる位置に配置されている、請求項1に記載のシャワーヘッド。
【請求項3】
前記吐出孔の流路断面積は、前記貯留空間の流路断面積の5~30%である、請求項1または2に記載のシャワーヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワーヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロバブルと呼ばれる直径数十μm以下の微細な気泡は、一般的な大きさの気泡にはない特有の性質を有するため、種々の分野に応用されている。例えば、肌の美容や健康の増進を目的として、マイクロバブルを含む水や湯をシャワーヘッドから散布する技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、シャワーヘッド内に組み込まれたベンチュリ管によってマイクロバブルを発生させ、シャワーヘッドからマイクロバブルを含む水や湯を散布する技術が記載されている。特許文献1のシャワーヘッドにおいて、ベンチュリ管の下流には、多数の散布孔を有し、シャワーヘッド外に水を散布するための分水板が設けられている。ベンチュリ管を通過した水は、分水板へ向かって直進し、分水板に設けられた多数の散水孔からシャワーヘッド外へ散布される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、特許文献1のシャワーヘッドにおいて、ベンチュリ管を通過した水は分水板へ向かって直進し、散布孔を介してシャワーヘッド外へ散布される。そのため、ベンチュリ管の出口に対面する位置においては、散布孔から吐出される水中のマイクロバブルの量が比較的多くなりやすい。一方、ベンチュリ管の出口から外れた位置においては、散布孔から吐出される水中のマイクロバブルの量が比較的少なくなりやすい。
【0006】
従って、特許文献1のシャワーヘッドを使用する場合、肌表面に、比較的多量のマイクロバブルを含む水が接触する部分と比較的少量のマイクロバブルを含む水が接触する部分とが生じやすい。その結果、マイクロバブルによる作用にむらが生じるおそれがある。
【0007】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、散布孔から吐出される液体中のマイクロバブル量の偏りを抑制できるシャワーヘッドを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、給水管に接続するための接続部と、前記接続部に連なり、前記給水管から供給された液体を散布するための散布部と、を備えたシャワーヘッドであって、
前記散布部は、
前記液体を通過させることにより当該液体中にマイクロバブルを発生させることができるよう構成されたマイクロバブル発生孔を有するマイクロバブル発生部と、
前記マイクロバブル発生部との間に前記液体を貯留する貯留空間が形成されるようにして配置され、前記マイクロバブル発生孔を通過した前記液体を当該貯留空間内に拡散させるための拡散部と、
前記拡散部を貫通し、前記貯留空間内から外部へ前記液体を吐出するための吐出孔と、
前記吐出孔を通過した前記液体を散布するための散布孔を備え、前記拡散部に対面して配置された分水板と、を有する、
シャワーヘッドにある。
【発明の効果】
【0009】
前記シャワーヘッドは、マイクロバブルを発生させるためのマイクロバブル発生部と、液体を散布するための分水板との間に、拡散部を有している。拡散部は、マイクロバブル発生部との間に液体を貯留する貯留空間が形成されるようにして配置され、マイクロバブル発生孔から吐出された液体を貯留空間内に拡散させることができるように構成されている。
【0010】
前記シャワーヘッドにおいて、マイクロバブル発生孔から吐出された液体は、マイクロバブル発生孔から直進した後、拡散部によってその流れの向きを変更され、貯留空間内に拡散する。そのため、マイクロバブル発生孔を通過した液体が直接分水板に到達することを回避することができる。
【0011】
また、拡散部によって貯留空間内に液体が拡散されることにより、貯留空間内の液体を攪拌することができる。そのため、貯留空間内において、液体中に含まれるマイクロバブルの量の偏りを低減することができる。そして、貯留空間内の液体を吐出孔から分水板側へ吐出し、更には散布孔を介して分水板からシャワーヘッドの外部へ吐出することにより、各散布孔から散布される液体中のマイクロバブルの量の偏りを抑制することができる。
【0012】
以上の結果、前記シャワーヘッドによれば、散布孔から吐出される液体中のマイクロバブル量の偏りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例における、シャワーヘッドの斜視図である。
【
図3】実施例における、シャワーヘッドの正面図である。
【
図4】実施例における、アダプタを取り外した状態の接続部の拡大斜視図である。
【
図5】実施例における、散布部の要部を示す一部拡大断面図である。
【
図6】
図3のVI-VI線矢視断面における接続部の一部拡大図である。
【
図7】外板のノブを第1の位置に設定した状態における、マイクロバブル発生部とマイクロバブル量調整部との位置関係を示す一部拡大図である。
【
図8】外板のノブを第2の位置に設定した状態における、マイクロバブル発生部とマイクロバブル量調整部との位置関係を示す一部拡大図である。
【
図9】外板のノブを第3の位置に設定した状態における、マイクロバブル発生部とマイクロバブル量調整部との位置関係を示す一部拡大図である。
【
図11】実施例における、マイクロバブル発生部の斜視図である。
【
図13】実施例における、マイクロバブル量調整部の斜視図である。
【
図14】実施例における、アダプタの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
前記シャワーヘッドにおいて、給水管から供給される液体は、例えば、水や湯であってもよい。また、シャワーヘッドに化粧料等の薬液が内蔵されたカートリッジを取り付け、シャワーヘッド内で当該薬液を水または湯に混合することにより、薬液を含む水または湯をシャワーヘッドから散布することもできる。
【0015】
給水管から供給される液体は、接続部からシャワーヘッド内へ流入し、マイクロバブル発生部に導かれる。そして、マイクロバブル発生部に設けられたマイクロバブル発生孔を通過することにより、液体中にマイクロバブルが形成される。マイクロバブル発生孔は、例えば、入口側において液体の圧力を高め、出口側において液体の圧力を低下させることができるように構成されたオリフィスであってもよい。
【0016】
オリフィスによって液体中にマイクロバブルが形成される理由としては、例えば、以下のような理由が考えられる。オリフィスの入口においては、オリフィスよりも上流側に比べて流路断面積が急激に小さくなる。そのため、オリフィスの入口付近に存在する液体の圧力が高くなり、液体中に溶存可能なガスの量が増大すると推定される。従って、オリフィスの入口付近に存在する液体中には、給水管から供給された直後の液体に比べて多量のガスが溶存していると推定される。
【0017】
一方、オリフィスの出口においては、オリフィス内に比べて流路断面積が大きくなるため、液体の圧力が低下する。これにより、液体中に溶存可能なガスの量が、オリフィスの入り口付近に存在する液体に比べて減少すると推定される。それ故、オリフィスの出口においては、液体中に溶存している気体が過飽和となることにより、マイクロバブルが形成されると推定される。
【0018】
マイクロバブル発生部の下流側には、拡散部が配置されている。拡散部は、マイクロバブル発生部との間に液体を貯留する貯留空間が形成されるようにして配置されており、マイクロバブル発生孔を通過した液体を貯留空間内に拡散させることができるように構成されている。拡散部は、例えば、マイクロバブル発生孔を通過した液体の流れを遮るように配置された遮蔽板や、マイクロバブル発生孔を通過した液体の流れの向きを変更する整流板等を有していてもよい。
【0019】
拡散部は、マイクロバブル発生孔から吐出された液体の少なくとも一部を貯留空間内に拡散させることができるように構成されていればよい。これにより、マイクロバブル発生孔から吐出された液体が直接分水板に到達することを抑制するとともに、貯留空間内の液体を攪拌することができる。その結果、散布孔から吐出される液体中のマイクロバブル量の偏りを抑制することができる。
【0020】
拡散部は、液体の流通方向から見た平面視において、マイクロバブル発生孔と重なる位置に配置されていることが好ましい。マイクロバブル発生孔を通過した液体は、通常、マイクロバブル発生孔から直進する。そのため、マイクロバブル発生孔と重なる位置、つまりマイクロバブル発生孔の正面に拡散部を配置することにより、液体の流れを拡散部によって遮り、マイクロバブル発生孔を通過した液体が直接分水板に到達することを防止することができる。更に、この場合には、マイクロバブル発生孔を通過した液体を確実に貯留空間内に拡散させ、貯留空間内の液体を十分に攪拌することができる。その結果、散布孔から吐出される液体中のマイクロバブル量の偏りをより効果的に抑制することができる。
【0021】
吐出孔の流路断面積は、貯留空間の流路断面積の5~30%であることが好ましい。吐出孔の流路断面積が過度に小さい場合には、吐出孔から吐出される液体の量が少なくなりやすい。そのため、シャワーヘッドから散布される液体の量が不足するおそれがある。一方、吐出孔の流路断面積が過度に多い場合には、吐出孔から吐出される液体の量が多くなりやすい。そのため、シャワーヘッドから散布される液体の勢いが過度に強くなり、使用者が不快感を感じるおそれがある。
【0022】
吐出孔の流路断面積を前記特定の範囲とすることにより、吐出孔から吐出させる液体の量を過不足のない範囲にし、前述した問題の発生をより確実に回避することができる。更に、吐出孔の流路断面積を前記特定の範囲とすることにより、貯留空間内での液体の滞在時間をより長くし、貯留空間内の液体を十分に攪拌することができる。その結果、散布孔から吐出される液体中のマイクロバブル量の偏りをより効果的に抑制することができる。
【0023】
なお、前述した吐出孔の流路断面積は、貯留空間側から見た平面視における、吐出孔の開口面積である。例えば、貯留空間側から分水板側へ向かうにつれて吐出孔の開口面積が小さくなる場合等の、吐出孔の流路断面積が位置に応じて変化する場合には、最も小さい流路断面積の値を吐出孔の流路断面積とする。
【0024】
同様に、貯留空間の流路断面積は、マイクロバブル発生部側から見た平面視における、貯留空間の開口面積である。また、例えば貯留空間の流路断面積が位置に応じて変化する場合には、最も小さい流路断面積の値を貯留空間の流路断面積とする。
【実施例】
【0025】
前記シャワーヘッドの実施例を、
図1~
図16を用いて説明する。シャワーヘッド1は、
図1及び
図3に示すように、給水管に接続するための接続部11と、接続部11に連なり、給水管から供給された液体を散布するための散布部12と、を有している。
図2及び
図5に示すように、散布部12は、マイクロバブル発生部2と、拡散部3と、拡散部3を貫通する吐出孔31と、拡散部3に対面して配置された分水板4と、を有している。
【0026】
図5及び
図11に示すように、マイクロバブル発生部2は、液体を通過させることにより当該液体中にマイクロバブルを発生させることができるよう構成されたマイクロバブル発生孔21を有している。拡散部3は、
図5に示すように、マイクロバブル発生部2との間に液体を貯留する貯留空間30が形成されるようにして配置されており、マイクロバブル発生部2を通過した液体を貯留空間30内に拡散させることができる。吐出孔31は、貯留空間30内から外部へ液体を吐出することができる。分水板4は、吐出孔31を通過した液体を散布するための散布孔421を有している。以下、本例のシャワーヘッド1の構成を詳説する。
【0027】
図1及び
図3に示すように、本例のシャワーヘッド1は、棒状を呈するグリップ部13と、グリップ部13の一端に設けられた接続部11と、グリップ部13の他端に設けられた散布部12と、を有している。散布部12は、グリップ部13の径方向外方へ突出するようにして湾曲している。また、散布部12の先端には、グリップ部13の径方向外方を向いた分水板4が配置されており、給水管から供給される液体をグリップ部13の径方向外方へ散布することができるように構成されている。
【0028】
以下において、散布部12が前方に突出するようにシャワーヘッド1を配置した場合に、散布部12側から見た平面視において観察可能な部分をシャワーヘッド1の「正面101」といい、観察することができない部分を、シャワーヘッド1の「背面102」ということがある(
図1、
図3参照)。より具体的には、シャワーヘッド1の正面101は、浴室の壁面に設けられたフックに散布部12が前方に突出するようにしてシャワーヘッド1を掛けた場合に、使用者から視認可能な部分である。また、シャワーヘッド1の背面102は、浴室の壁面に設けられたフックに、散布部12が前方に突出するようにしてシャワーヘッド1を掛けた場合に、壁面に対面する部分である。
【0029】
図1、
図2及び
図6に示すように、接続部11は、後述する通水管71に着脱可能な状態で接続されたアダプタ5と、アダプタ5の側周面を覆うアダプタカバー51と、を有している。アダプタ5は、例えば
図14~
図16に示すアダプタ5a~5cのように、給水管としてのシャワーホースにおける継手部分の形状に対応した種々の形状を有している。本例のシャワーヘッド1は、シャワーホースにおける継手部分の形状に応じて適切なアダプタ5を装着することにより、種々のシャワーホースに接続することができる。
【0030】
図1~
図3に示すように、シャワーヘッド1におけるグリップ部13及び散布部12の外壁は、外管部6から構成されている。また、
図5及び
図6に示すように、外管部6の内側には、シャワーホースから供給される液体を流通させるための通水部7が配置されている。外管部6と通水部7との間には隙間が形成されている。
【0031】
外管部6は、
図2に示すように、散布部12側及び接続部11側にそれぞれ開口した外管部本体61と、環状を呈し、外管部本体61における散布部12側の開口端に取り付けられた環状蓋部62と、を有している。
図3及び
図5に示すように、環状蓋部62の内側には、分水板4が回動可能な状態で嵌め込まれている。
【0032】
図5及び
図6に示すように、外管部6の内側には、通水部7が配置されている。通水部7は、グリップ部13の全長に亘って延在している通水管71と、通水管71に接続され、散布部12内に配置されたカップ部72と、を有している。
【0033】
図4及び
図6に示すように、通水管71における接続部11側の端部は、外管部本体61から突出している。また、通水管71は、
図6に示すように、Oリング711を介して接続部11のアダプタ5に接続されている。通水管71と接続部11との間には、シャワーホースから供給される液体中の異物を濾し取るストレーナ712が配置されている。また、通水管71の接続部11側の端部におけるストレーナ712よりも上流側には、シャワーヘッド1からシャワーホースへの液体の逆流を防止するための逆止弁713が着脱可能な状態で収容されている。
【0034】
図4に示すように、通水管71における接続部11側の端部には、通水管71の径方向外方に突出した鍔部714と、アダプタ5に接続するための接手部715とが設けられている。鍔部714は、通水管71の全周に亘って延設されている。また、鍔部714は、シャワーヘッド1の背面102、即ち、散布部12が前方に突出するようにシャワーヘッド1を配置した場合(
図3参照)に、散布部12側から見た平面視において観察することができない部分に、2か所の切り欠き716を有している。
【0035】
2か所の切り欠き716は、より具体的には、鍔部714における背面側の半周上に、互いに間隔をあけて配置されている。また、切り欠き716は、通水管71の周方向外方に向かうにつれて拡開している。本例のシャワーヘッド1においては、これらの切欠き716によって、外管部本体61と通水管71との間に水抜き穴710が形成されている。水抜き穴710は、外管部6と通水部7との間の隙間に溜まった液体をシャワーヘッド1の背面側から排出することができる。
【0036】
図5に示すように、通水管71における散布部12側の端部は、カップ部72内まで挿入されている。また、通水管71とカップ部72との間には、Oリング717が介在している。
【0037】
図2及び
図5に示すように、カップ部72は、分水板4側に開口したカップ状を呈している。カップ部72は、その底面に2か所の締結穴721を有しており、締結穴721に挿入されたねじ722を介して外管部本体61に締結されている。カップ部72の開口端723には、後述する分水板4の基板41が当接している。
【0038】
図5に示すように、カップ部72内にはマイクロバブル発生部2及び拡散部3が収容されている。
図11に示すように、マイクロバブル発生部2は、その外周縁部22に3か所の締結穴221を有している。
図5に示すように、マイクロバブル発生部2は、締結穴221に挿入されたねじ222を介してカップ部72に締結されている。また、カップ部72とマイクロバブル発生部2との間には、通水管71から流入した液体を一時的に貯留するための入口空間20が形成されている。
【0039】
図11に示すように、マイクロバブル発生部2は、マイクロバブルを発生させるための複数のマイクロバブル発生孔21と、マイクロバブル発生孔21よりも流路断面積が大きな大径孔23とを有している。マイクロバブル発生孔21及び大径孔23は、マイクロバブル発生部2を貫通しており、入口空間20及び貯留空間30の両方に開口している。また、入口空間20側から見た平面視におけるマイクロバブル発生部2の中央には、マイクロバブル発生部2を貫通する軸部挿入穴24が設けられている。軸部挿入穴24内には、後述するマイクロバブル量調整部8の軸部82が挿入されている。
【0040】
図7~
図9に示すように、本例のマイクロバブル発生部2は、8か所のマイクロバブル発生孔21(21a、21b)を有している。8か所のマイクロバブル発生孔21のうち、最も外周側に配置された3か所のマイクロバブル発生孔21aは、後述する調整板81よりも外周側に位置している。また、これら3か所のマイクロバブル発生孔21aよりも内側に配置されたマイクロバブル発生孔21bは、調整板81に覆われ得る位置に配置されている。
【0041】
マイクロバブル発生孔21は、液体の流通方向から見た平面視において円形の断面形状を呈している。また、
図5に示すように、マイクロバブル発生孔21は、入口空間20側の開口端において最も小さい開口径を有しており、貯留空間30側に近づくほど徐々に開口径が大きくなり、貯留空間30側の開口端において最も大きい開口径を有している。
【0042】
図7~
図9に示すように、本例のマイクロバブル発生部2は、2か所の大径孔23を有している。大径孔23は、液体の流通方向から見た平面視において、円弧状の断面形状を呈している。図には示さないが、大径孔23は、入口空間20側の開口端から貯留空間30の開口端までの全長に亘って一定の断面形状を有している。なお、本例の大径孔23は、マイクロバブルを形成する機能を有していない。入口空間20から大径孔23内に流入した液体は、マイクロバブルを含まない状態で貯留空間へ流出する。
【0043】
図5に示すように、拡散部3は、カップ部72内における、マイクロバブル発生部2よりも下流側に配置されている。
図5に示すように、拡散部3とマイクロバブル発生部2との間には、マイクロバブル発生部2を通過した液体、つまりマイクロバブルを含む液体を一時的に貯留するための貯留空間30が形成されている。また、マイクロバブル発生部2と拡散部3との間には、
図2及び
図5に示すように、Oリング321が介在している。
【0044】
図12に示すように、拡散部3は、その外周縁部32に3か所の締結穴322を有している。図には示さないが、拡散部3は、締結穴322に挿入されたねじ323(
図2参照)を介してカップ部72に締結されている。また、貯留空間30側から見た平面視における拡散部3の中央には、マイクロバブル発生部2を貫通する軸保持部挿入穴33が設けられている。軸保持部挿入穴33内には、
図5に示すように、後述する分水板4の基板41における軸保持部412が挿入されている。
【0045】
図12に示すように、拡散部3は、その外周縁部32よりも内側に、円板状を呈する遮蔽板34を有している。
図5及び
図10に示すように、遮蔽板34は、液体の流通方向から見た平面視において、マイクロバブル発生孔21と重なる位置、つまりマイクロバブル発生孔21の正面に配置されている。
【0046】
また、
図10及び
図12に示すように、遮蔽板34には、遮蔽板34を貫通し、貯留空間30内から外部へ液体を吐出するための4か所の吐出孔31が設けられている。
図10に示すように、吐出孔31は、液体の流通方向から見た平面視において、マイクロバブル発生孔21とは重ならない位置、つまりマイクロバブル発生孔21a及びマイクロバブル発生孔21bの正面から外れた位置に配置されている。
【0047】
本例のシャワーヘッド1において、吐出孔31の流路断面積の合計は、貯留空間30の流路断面積の5~30%の範囲内である。より具体的には、本例のシャワーヘッド1における貯留空間30は、マイクロバブル発生部2及び遮蔽板34を端面とした円柱状を呈している。貯留空間30の流路断面積、つまり、液体の流通方向から見た平面視における貯留空間30の面積は911mm2であり、吐出孔31の流路断面積の合計は74.2mm2である。
【0048】
図5に示すように、遮蔽板34の下流には、分水板4が配置されている。分水板4は、外管部6の環状蓋部62に回動可能に保持されている。本例の分水板4は、基板41と、多数の散布孔421を備え、基板41上に積層されたゴム板42と、ゴム板42上に積層され、シャワーヘッド1の表面に露出した外板43とを有している。また、基板41とゴム板42との間には隙間410が形成されている。分水板4は、基板41とゴム板42との隙間410内に流入した液体を各散布孔421に分配し、多数の散布孔421から吐出することができる。
【0049】
図2に示すように、基板41における拡散部3の吐出孔31に対面する位置には、吐出孔31から吐出された液体を基板41とゴム板42との間の隙間410に流入させるための流路孔411が設けられている。また、
図5に示すように、拡散部3側から見た平面視における基板41の中央には、筒状を呈する軸保持部412が立設されている。軸保持部412は、遮蔽板34に設けられた軸保持部挿入穴33に挿通されている。そして、軸保持部412内には、後述するマイクロバブル量調整部8の軸部82が挿入されている。
【0050】
ゴム板42は、散布孔421を備え、外板43側に突出した多数の突起422を有している。これらの突起422は、外板43に設けられた貫通孔431に挿入されている。
【0051】
外板43は、ゴム板42の突起422が挿入される多数の貫通孔431を有している。また、外板43は、
図1、
図3及び
図5に示すように、その外周縁部に、分水板4を回動させるためのノブ432を有している。本例の分水板4は、
図3に示すように、外板43のノブ432を旋回させることにより、基板41、ゴム板42及び外板43を回動させることができる。
【0052】
本例のシャワーヘッド1においては、
図2及び
図5に示すように、カップ部72とマイクロバブル発生部2との間に、マイクロバブルの発生量を調整するためのマイクロバブル量調整部8が設けられている。
図7~
図9に示すように、マイクロバブル量調整部8は、入口空間20側から見た平面視において、マイクロバブル発生部2の中央を覆うように配置されている。
【0053】
図13に示すように、マイクロバブル量調整部8は、液体の流通方向から見た平面視において円板状を呈する調整板81と、調整板81の中央に配置され、マイクロバブル発生部2側に突出した軸部82とを有している。
図5に示すように、軸部82は、マイクロバブル発生部2を貫通し、分水板4に設けられた軸保持部412(後述)に保持されている。これにより、分水板4を回動させた際に、軸保持部412及び軸部82を介して調整板81を回動させることができる。
【0054】
図13に示すように、調整板81は、その一部に、厚み方向に貫通した2か所の貫通孔811を有している。また、調整板81における入口空間20側の面の中央には、周囲よりも陥没したスプリング収容部812が形成されている。図には示さないが、スプリング収容部812内にはコイルばね813(
図2参照)が配置されており、コイルばね813によって調整板81がマイクロバブル発生部2側に押圧されている。また、マイクロバブル発生孔21及び大径孔23の入口空間20側の開口端における周縁部にはパッキン814が設けられており、パッキン814と調整板81とが摺接している。これにより、調整板81とマイクロバブル発生部2との間の隙間からマイクロバブル発生孔21への液体の流入を抑制することができる。
【0055】
図7~
図9に示すように、8か所のマイクロバブル発生孔21(21a、21b)のうち、最も外周側に配置された3か所のマイクロバブル発生孔21aは、調整板81よりも外周側に配置されている。これらのマイクロバブル発生孔21aは調整板81によって覆われることがないため、マイクロバブル発生孔21a内に常に液体を流通させ、液体中にマイクロバブルを形成することができる。それ故、本例のシャワーヘッド1は、散布部12から常にマイクロバブルを含む液体を吐出することができる。
【0056】
また、マイクロバブル発生孔21aよりも内側に配置された5か所のマイクロバブル発生孔21bは、調整板81によって覆われ得る位置に配置されている。調整板81は、その周方向に回動することによって貫通孔811を移動させ、マイクロバブル発生孔21bが調整板81に覆われている状態と、貫通孔811に面した状態とを切り替えることができる。
【0057】
マイクロバブル発生孔21bが調整板81によって覆われている場合には、当該マイクロバブル発生孔21bは調整板81によって閉鎖される。そのため、調整板81によって覆われたマイクロバブル発生孔21b内には液体を流通させることができない。一方、マイクロバブル発生孔21bが貫通孔811に面している場合、当該マイクロバブル発生孔21bは調整板81によって閉鎖されない。そのため、貫通孔811に面したマイクロバブル発生孔21b内には液体を流通させることができる。
【0058】
2か所の大径孔23は、前述したマイクロバブル発生孔21bと同様に、調整板81によって覆われ得る位置に配置されている。それ故、大径孔23が調整板81によって覆われている場合には、当該大径孔23が調整板81によって閉鎖されるため、当該大径孔23内に液体を流通させることができない。一方、大径孔23が貫通孔811に面している場合には、当該大径孔23は調整板81によって閉鎖されないため、当該大径孔23内に液体を流通させることができる。
【0059】
本例のシャワーヘッド1は、外板43のノブ432を旋回させて分水板4を回動させることにより、分水板4に連動して調整板81が回動し、液体が流通可能なマイクロバブル発生孔21bの数を変更することができる。その結果、マイクロバブルの発生量を調節することができる。例えば、
図7に示すように外板43のノブ432が第1の位置432a(
図3参照)にある場合には、調整板81よりも外周側に配置された3か所のマイクロバブル発生孔21aと、2か所の大径孔23とに液体を流通させることができる。
【0060】
また、
図8に示すようにノブ432が第2の位置432b(
図3参照)にある場合には、調整板81よりも外周側に配置された3か所のマイクロバブル発生孔21aに液体を流通させることができる。さらに、この場合には、マイクロバブル発生孔21aよりも内側に配置された5か所のマイクロバブル発生孔21bのうち、貫通孔811に面した4か所のマイクロバブル発生孔21bにも液体を流通させることができる。
【0061】
そして、
図9に示すようにノブ432が第3の位置432c(
図3参照)にある場合には、調整板81よりも外周側に配置された3か所のマイクロバブル発生孔21aに液体を流通させることができる。さらに、この場合には、マイクロバブル発生孔21aよりも内側に配置された5か所のマイクロバブル発生孔21bのうち、貫通孔811に面した1か所のマイクロバブル発生孔21bと、1か所の大径孔23とに液体を流通させることができる。
【0062】
従って、本例のシャワーヘッド1においては、分水板4のノブ432がいずれの位置にある場合にも、マイクロバブル発生孔21aによって液体中にマイクロバブルを形成し、常に散布部12からマイクロバブルを含む液体を散布することができる。また、ノブ432が第1の位置432aにある場合には、液体中に発生するマイクロバブルの量が最も少なくなり、ノブ432が第2の位置432bにある場合には、液体中に発生するマイクロバブルの量が最も多くなる。そして、ノブ432が第3の位置432cにある場合には、第1の位置432aにある場合と第2の位置432bにある場合との中間の量のマイクロバブルを液体中に発生させることができる。
【0063】
次に、本例のシャワーヘッド1に液体を供給した際の各部の作用を説明する。接続部11から供給された液体は、まず、通水管71を通り、
図5に示すように、カップ部72とマイクロバブル発生部2との間に形成された入口空間20内に流入する。入口空間20は、その付け根において最も流路断面積が狭くなっており、マイクロバブル発生部2側へ向かうにつれて流路断面積が広くなっている。
【0064】
入口空間20内の液体は、
図7~
図9に示すように、調整板81における貫通孔811の位置に応じた数のマイクロバブル発生孔21または大径孔23を通過して貯留空間30へ流入する。このとき、マイクロバブル発生孔21を通過した液体中に、マイクロバブルを形成することができる。
【0065】
マイクロバブル発生孔21及び大径孔23から貯留空間30内へ流入した液体は、遮蔽板34へ向かって直進する。
図5及び
図10に示すように、マイクロバブル発生孔21の正面には遮蔽板34があるため、マイクロバブル発生孔21から貯留空間30内へ流入した液体は、遮蔽板34に当たってその流れの方向が変更される。その結果、マイクロバブルを含む液体を貯留空間30内へ拡散させることができる。また、吐出孔31がマイクロバブル発生孔21の正面から外れた位置に設けられているため、貯留空間30において一旦攪拌された液体を吐出孔31から吐出することができる。
【0066】
マイクロバブル発生孔21または吐出孔31を通過した液体は、分水板4における流路孔411を介して基板41とゴム板42との隙間410に流入し、各散布孔421に分配される。そして、各散布孔421からマイクロバブルを含む液体が散布される。
【0067】
次に、本例の作用効果を説明する。シャワーヘッド1は、マイクロバブルを発生させるためのマイクロバブル発生部2と、液体を散布するための分水板4との間に、拡散部3を有している。拡散部3は、マイクロバブル発生部2との間に液体を貯留する貯留空間30が形成されるようにして配置され、マイクロバブル発生孔21から吐出された液体を貯留空間30内に拡散させることができるように構成されている。
【0068】
シャワーヘッド1において、マイクロバブル発生孔21から吐出された液体は、拡散部3によって貯留空間30内に拡散する。そのため、マイクロバブル発生孔21から吐出された液体が直接分水板4に到達することを回避することができる。
【0069】
また、拡散部3によって貯留空間30内に液体を拡散することにより、貯留空間30内の液体を攪拌し、液体中に含まれるマイクロバブルの量の偏りを低減することができる。そして、貯留空間30内の液体を吐出孔31から外部へ吐出し、更には散布孔421を介して分水板4からシャワーヘッド1の外部へ吐出することにより、各散布孔421から散布される液体中のマイクロバブルの量の偏りを抑制することができる。
【0070】
また、拡散部3は、液体の流通方向から見た平面視において、マイクロバブル発生孔21と重なる位置に配置されている。そのため、マイクロバブル発生孔21から吐出された液体の流れを拡散部3によって遮り、マイクロバブル発生孔21から吐出された液体が直接分水板4に到達することを防止することができる。更に、マイクロバブル発生孔21から吐出された液体を確実に貯留空間30内に拡散させ、貯留空間30内の液体を十分に攪拌することができる。その結果、散布孔421から吐出される液体中のマイクロバブル量の偏りをより効果的に抑制することができる。
【0071】
また、吐出孔31の流路断面積は、貯留空間30の流路断面積の5~30%である。そのため、貯留空間30内での液体の滞在時間をより長くし、貯留空間30内の液体を十分に攪拌することができる。その結果、散布孔421から吐出される液体中のマイクロバブル量の偏りをより効果的に抑制することができる。
【0072】
以上の結果、本例のシャワーヘッド1によれば、散布孔421から吐出される液体中のマイクロバブル量の偏りを抑制することができる。
【0073】
また、本例のシャワーヘッド1は、アダプタ5と、アダプタ5の側周面を覆うアダプタカバー51と、を備えた接続部11を有している。本例のシャワーヘッド1は、シャワーホースにおける継手部分の形状に応じて適切なアダプタ5を装着することにより、種々のシャワーホースに接続することができる。また、本例のシャワーヘッド1は、塗装や意匠性を高めるための形状の付与等の、意匠性を高めるための処理をアダプタカバー51に施すことができる。これにより、アダプタ5の形状等を比較的シンプルにすることができ、意匠性を高めるための処理によるコストの増大を抑制することができる。
【0074】
本例のシャワーヘッド1は、グリップ部13と接続部11側との間に水抜き穴710を有しており、水抜き穴710は、シャワーヘッド1の背面102に設けられている。シャワーヘッド1を浴室の壁面に設けられたフックに掛ける場合、シャワーヘッド1は、通常、接続部11を下方に、散布部12を上方に向けるとともに、散布部12が前方に突出するようにして配置される。この場合、シャワーヘッドの背面102は、浴室の壁面と対面しており、使用者にとって視認しにくい位置に配置される。それ故、水抜き穴710をシャワーヘッド1の背面102に設けることにより、外管部6と通水部7との間の隙間に溜まった液体を、シャワーヘッド1の使用者にとって視認しにくい背面102から排出することができる。
【0075】
また、シャワーヘッド1の接続部11に接続されるシャワーホースは、自重によって接続部11から垂下している。そのため、シャワーヘッド1は、背面102から排出された液体を、シャワーヘッド1の外表面及び接続部11に接続されたシャワーホースを伝って流下させることができる。以上の結果、外管部6と通水部7との間の隙間に溜まった液体の排出を使用者から目立たないように行うことができる。
【0076】
本発明に係るシャワーヘッドの具体的な態様は、前述した実施例の態様に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更することができる。
例えば、前述した実施例においては、接続部11を給水管としてのシャワーホースに接続し、グリップ部13を手で把持して使用するタイプのシャワーヘッド1の例を示したが、シャワーヘッドは、浴室の天井や壁から突出した給水管としての水道配管に直接接続して使用する構成とすることもできる。この場合には、接続部11と散布部12との間にグリップ部13を設けなくてもよい。
【0077】
また、前述した実施例においては、通水管71の鍔部714に切り欠き716を設けることによって水抜き穴710を形成したが、外管部本体61に切り欠きを設けることによって水抜き穴を形成してもよい。また、鍔部714を貫通するように水抜き穴を設けることもできる。
【符号の説明】
【0078】
1 シャワーヘッド
11 接続部
12 散布部
2 マイクロバブル発生部
21 マイクロバブル発生孔
3 拡散部
30 貯留空間
31 吐出孔
4 分水板
421 散布孔