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  • 特許-無停電電源装置 図1
  • 特許-無停電電源装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】無停電電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/493 20070101AFI20220519BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220519BHJP
   H02J 9/06 20060101ALI20220519BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
H02M7/493
H02M7/48 N
H02J9/06 120
H02J7/34 G
H02J7/34 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018139542
(22)【出願日】2018-07-25
(65)【公開番号】P2020018097
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】竹本 圭孝
(72)【発明者】
【氏名】目黒 光
(72)【発明者】
【氏名】鳴島 じゅん
(72)【発明者】
【氏名】青木 宏輔
(72)【発明者】
【氏名】馬淵 雄一
(72)【発明者】
【氏名】上妻 央
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 尊衛
(72)【発明者】
【氏名】二宮 隆典
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-126329(JP,A)
【文献】特開2018-74842(JP,A)
【文献】特開2007-221880(JP,A)
【文献】特開2007-330028(JP,A)
【文献】特開平7-170754(JP,A)
【文献】特開平11-332001(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/36253(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42- 7/98
H02J 9/00-11/00
H02J 7/00- 7/12
7/34- 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧を直流電圧に変換する順変換器と該直流電圧を交流電圧に変換する逆変換器と前記直流電圧部分に接続される蓄電池電圧を昇圧するための直流変換器で構成される無停電電源装置モジュールを複数並列接続する無停電電源装置であって、
前記複数並列接続された無停電電源装置モジュールのそれぞれの入出力電流の合計を用いて制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記入出力電流の合計により前記無停電電源装置モジュールの故障を検出し、前記無停電電源装置モジュールの故障台数に応じた制御に切り換えるとともに、故障した前記無停電電源装置モジュールを切り離すことを特徴とする無停電電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無停電電源装置であって、
前記無停電電源装置モジュールの故障台数に応じた制御は、前記制御装置の内部の入力変数の100%の定義を前記無停電電源装置モジュールの故障前と故障後で同じとする係数を算出し、該算出した係数を前記入力変数に乗算することで行うことを特徴とする無停電電源装置。
【請求項3】
請求項1に記載の無停電電源装置であって、
前記無停電電源装置モジュールは前記並列接続から切り離すコンタクタまたはリレーを有し、
前記無停電電源装置モジュールの切り離しは、前記制御装置により自動で各コンタクタまたはリレーを開くことで行うことを特徴とする無停電電源装置。
【請求項4】
請求項1に記載の無停電電源装置であって、
前記無停電電源装置モジュールは前記並列接続から切り離すコネクタを有し、
前記無停電電源装置モジュールの切り離しは、手動で前記コネクタを切り離すことで行うことを特徴とする無停電電源装置。
【請求項5】
請求項1に記載の無停電電源装置であって、
前記無停電電源装置モジュールの故障検出は、自動で前記無停電電源装置モジュールを1台ずつ動作させ、前記入出力電流の合計により前記無停電電源装置モジュールが故障した台数を検出することを特徴とする無停電電源装置。
【請求項6】
請求項1に記載の無停電電源装置であって、
前記無停電電源装置モジュールの故障検出は、手動で前記無停電電源装置モジュールを1台ずつ動作させ、正常に動かない無停電電源装置モジュールについて故障と判断することを特徴とする無停電電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無停電電源装置の並列接続時の縮退運転に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無停電電源装置(以降UPSと称する)の定格電流を増加させる方法として、スイッチング素子を並列接続する方法以外に、複数のUPSを並列接続する方法がある。なお、以降、1つのUPSを構成するために並列接続される複数のUPSそれぞれをUPSモジュールと呼ぶ。
複数のUPSモジュールを並列接続させる方法の中でも、以下(1)、(2)の方式がある。
【0003】
(1)並列制御無
複数のUPSモジュールで構成されているが、各々のUPSモジュールを制御するための制御装置は一つであり、電流検出機器についてもUPSモジュールごとではなく、UPSモジュールの合計電流を検出し、それを制御に使用する。
【0004】
(2)並列制御有
複数のUPSモジュールで構成され、各々のUPSモジュールを制御するための制御装置はUPSモジュールごとに設けられ、かつ電流検出機器についてもUPSモジュールごとに流れる電流を検出し、それらを各々のUPSモジュールの制御のために使用する。
【0005】
上記並列接続方式で並列制御有の方式の先行技術として、特許文献1がある。特許文献1には、各々に交流電力を出力するインバータを含む少なくとも3台の無停電電源装置を備え、各無停電電源装置を並列冗長運転により負荷に対して電力供給を行う無停電電源システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-50933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、前述した並列接続方式で並列制御有の方式であり、UPSモジュールごとに制御装置や電流検出機器が設けられる。そのため、回路の複雑化、大型化、高価という課題の解決に十分とは言えず、並列接続方式で並列制御無の方式がこれらの課題に有利である。
【0008】
そこで、並列接続方式で並列制御無の方式について考察すると、前述の(1)並列制御無で説明したように、複数のUPSモジュールの集合として構成されるUPSを制御する制御装置は、全てのUPSモジュールを流れる合計電流をもとに制御する。そのため、過電流レベル、過負荷レベルなどの保護に関連する制御やPI制御の応答速度のようにUPSの性能に関係する制御は、UPS全体の合計電流に基づき決定されるため、例えばUPSモジュールが1台でも故障すると、制御性能が担保されない。したがって、並列制御無のようなシステム構成を有するUPSは、UPSモジュール故障時に、故障したUPSモジュールを交換せざる終えない状況となるため、UPSモジュール交換までの期間はUPS運転が不可能となる課題がある。
【0009】
本発明はこのような課題を鑑みてなされたものであり、並列接続方式で並列制御無の方式において、複数のUPSモジュールの内、正常なUPSモジュールで運転を継続する縮退運転を行なう際に、安全に運転継続するために必要な回路切替方式および制御方式を有する無停電電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記背景技術及び課題に鑑み、その一例を挙げるならば、交流電圧を直流電圧に変換する順変換器と直流電圧を交流電圧に変換する逆変換器と直流電圧部分に接続される蓄電池電圧を昇圧するための直流変換器で構成される無停電電源装置モジュールを複数並列接続する無停電電源装置であって、複数並列接続された無停電電源装置モジュールのそれぞれの入出力電流の合計を用いて制御する制御装置を備え、制御装置は、入出力電流の合計により無停電電源装置モジュールの故障を検出し、無停電電源装置モジュールの故障台数に応じた制御に切り換えるとともに、故障した無停電電源装置モジュールを切り離す構成とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、UPSモジュールの故障台数に応じた制御に切り換えるとともに、故障したUPSモジュールをシステムから切り離すことで、もとの容量より小容量のUPSとして運転継続が可能なUPSを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1におけるUPSの回路ブロック図である。
図2図1における制御装置の回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。
【実施例
【0014】
図1は、本実施例におけるUPSの回路ブロック図である。図1において、商用電源1にUPSモジュール20、30、40の交流入力部が並列に接続され、各UPSモジュールの出力部は負荷装置2へ並列に接続されている。
【0015】
UPS10は、UPSモジュール20、30、40および制御装置50と入力交流電圧検出器11と入力交流電流検出器12と蓄電池3と蓄電池電圧検出器13と蓄電池電流検出器14と出力交流電流検出器15と出力交流電圧検出器16とで構成される。
【0016】
UPSモジュール20は、交流入力側コンタクタ24を介して順変換器21を有し、順変換器21の直流側に逆変換器22の直流側が接続され、逆変換器22の交流側は交流出力側コンタクタ25を介して負荷装置2へ接続され、直流変換器23の蓄電池側は蓄電池側コンタクタ26と27を介して蓄電池3へ接続され、もう一方は逆変換器22の入力へ接続される構成を有する。UPSモジュール30、40はUPSモジュール20と同じ構成をもつ。各UPSモジュール20、30、40の直流変換器23は蓄電池3に並列に接続される。
【0017】
制御装置50は、入力交流電圧検出器11と入力交流電流検出器12と蓄電池電圧検出器13と蓄電池電流検出器14と出力交流電流検出器15と出力交流電圧検出器16により検出される電圧と電流を入力とし、各UPSモジュール20、30、40の順変換器21、逆変換器22、直流変換器23を駆動するための信号を各UPSモジュールへ伝達する手段をもつ。すなわち、図1において、制御装置50は、順変換器21へは信号Aを出力し、逆変換器22へは信号Bを出力し、直流変換器23へは信号Cを出力する。また、制御装置50は、交流入力側コンタクタ24、蓄電池側コンタクタ26、27や、交流出力側コンタクタ25の切り替え制御信号である信号Dを出力する。
【0018】
次に、制御装置50の備える機能について図2を用いて説明する。制御装置50は、入力交流電流検出器12と蓄電池電流検出器14と出力交流電流検出器15で検出された各種電流を入力とし、故障検出モードとして自動でUPSモジュールを1台ずつ動作させ、UPSモジュールが故障した台数mを検出する。図2において、制御装置50は、故障台数m設定部52とUPSモジュール全て稼動した場合の台数(N台)を設定する全台数N設定部51と、N/(N-m)を計算し、制御装置内部の入力変数(入力電流、出力電流、直流電流)の100%の定義をUPSモジュール故障前と故障後で同じとする係数を算出する演算部53を有する。例えば、全台数Nが3であり、故障台数mが1の場合、N/(N-m)=3/2となり、故障前の入力電流の合計値が例えば30Aであった場合、故障後は、30Aの(N-m)/N=2/3である20Aを100%とするための係数3/2を算出する。
【0019】
演算部53の出力は、乗算部54により各入力変数(入力電流、出力電流、直流電流)と掛け算される。乗算部54のそれぞれの出力は、順変換器、逆変換器、直流変換器の電流をそれぞれ制御するために入力電流指令、出力電流指令、直流電流指令と差をとりPI制御器55へ入力され、PI制御器(PI)55は、それぞれの電流がそれぞれの指令に追従するように順変換器、逆変換器、直流変換器への駆動指令信号A、B、Cを与える役割をもつ。さらに、乗算部54のそれぞれの出力は、順変換器、逆変換器、直流変換器を保護するための、過電流判定を行なう過電流検出部(OC)56と、過負荷判定を行なう過負荷検出部(OL)57との入力となり、過電流検出部56と過負荷検出部57とは、順変換器、逆変換器、直流変換器の駆動をストップさせる指令信号A、B、Cを出力する役割をもつ。
【0020】
m台故障検出時には、故障したm台のUPSモジュールを主回路から切り離すことで、制御装置50内のPI制御設定や保護設定を変更することなしに運転をすることが可能となる。例えば、故障したUPSモジュールがUPSモジュール20であった場合、UPSモジュール20の交流入力側コンタクタ24と交流出力側コンタクタ25と蓄電池側コンタクタ26、27を開くことにより主回路から切り離す。なお、図1ではUPSモジュールを主回路から切り離す場合、自動で各コンタクタを開くことで対応可能であるが、これらコンタクタをリレーに変更してもよいし、コネクタに変更して手動で切り離してもよい。
【0021】
また、図1は単相電力変換器として示しているが、三相3線電力変換器、三相4線電力変換器でも同様の効果を得ることが出来る。また、制御装置50内のm台のUPSモジュール故障時に制御が切換わるPI制御部55と過電流検出部56と過負荷検出部57はあくまで一例であり、UPSの入出力電流および蓄電池電流を用いて制御する演算部がある場合は、同様に適用可能である。
【0022】
また、上記説明では、故障検出モードとして自動でUPSモジュールを1台ずつ動作させ、UPSモジュールが故障した台数mを検出するとしたが、故障検出時に、手動でUPSモジュールを1台ずつ動作させ、正常に動かないUPSモジュールについては故障と判断してもよい。
【0023】
以上のように、本実施例によれば、検出する電流により、UPSモジュールの故障を検出し、UPSモジュールの故障台数に応じた制御に切り換えるとともに、故障したUPSモジュールをシステムから切り離すことで、もとの容量より小容量のUPSとして縮退運転を行ない、安全に運転継続するために必要な回路切替方式および制御方式を有する無停電電源装置を提供することができる。
【0024】
以上、実施例について説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0025】
1:商用電源、2:負荷装置、3:蓄電池、10:無停電電源装置(UPS)、11:入力交流電圧検出器、12:入力交流電流検出器、13:蓄電池電圧検出器、14:蓄電池電流検出器、15:出力交流電流検出器、16:出力交流電圧検出器、20,30,40:UPSモジュール、21:順変換器、22:逆変換器、23:直流変換器、24:交流入力側コンタクタ、25:交流出力側コンタクタ、26,27:蓄電池側コンタクタ、50:制御装置、51:全台数N設定部、52:故障台数m設定部、53:演算部、54:乗算部、55:PI制御部(PI)、56:過電流検出部(OC)、57:過負荷検出部(OL)
図1
図2