(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-19
(45)【発行日】2022-05-27
(54)【発明の名称】型枠用テープ、コンクリート型枠構造体及びコンクリート製建築物の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04G 9/10 20060101AFI20220520BHJP
【FI】
E04G9/10 101B
(21)【出願番号】P 2018132778
(22)【出願日】2018-07-13
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川島 健治
(72)【発明者】
【氏名】山田 尚明
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-087561(JP,U)
【文献】特開2007-327196(JP,A)
【文献】特開平02-132173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 9/00-19/00
E04G 25/00-25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート型枠構造体の隙間に施工される型枠用テープであって、
前記コンクリート型枠構造体の基本構造である型枠パネルの側面に貼着される粘着層と、
クッション性を有し前記型枠用テープの幅方向からの漏水を防ぐ第一止水層と、
前記第一止水層を挟んで前記粘着層と対向する側に積層され、前記型枠用テープの表面を平滑化して表面からの漏水を防ぐ第二止水層を備えた型枠用テープ。
【請求項2】
第二止水層側の表面における静摩擦係数が0.8以上である請求項1に記載の型枠用テープ。
【請求項3】
前記粘着層および前記第一止水層の間に積層され、断面方向からコンクリートの水分を吸収する吸水層を備える請求項1または2に記載の型枠用テープ。
【請求項4】
前記第一止水層の50%圧縮硬さが100kPa以下である請求項1~3の何れか一項に記載の型枠用テープ。
【請求項5】
複数の型枠パネルを連設させてなるコンクリート型枠構造体であって、
隣接する型枠パネルの隙間に型枠用テープが配され、
前記型枠用テープは、前記型枠パネルの側面に貼着する粘着層と、クッション性を有し前記型枠用テープの幅方向からの漏水を防ぐ第一止水層と、
前記第一止水層を挟んで前記粘着層と対向する側に積層され、前記型枠用テープの表面を平滑化して表面からの漏水を防ぐ第二止水層を備えたコンクリート型枠構造体。
【請求項6】
請求項5に記載のコンクリート型枠構造体内に、コンクリートを打設するコンクリート製建築物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート型枠構造体の隙間に施工される型枠用テープ、複数の型枠パネルを連設させてなるコンクリート型枠構造体、及び該コンクリート型枠構造体を用いたコンクリート製建築物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート製建築物の製造では、型枠パネルを基本構造として組み立てたコンクリート型枠構造体が利用されている。コンクリート型枠構造体の内側には、流動性のあるコンクリートが充填されるが、型枠パネル自体の寸法のくるいや、コンクリート型枠構造体の組立寸法のくるい等があると、連設された型枠パネル間に存在する隙間にコンクリートが入り込んだり、隙間からコンクリ―トのセメント成分が漏れ出したりする場合がある。このような場合、硬化後のコンクリートにバリ、砂スジ等の欠陥が生じることになる。そこで、型枠パネル自体の寸法のくるいや、組立寸法のくるいがある場合にも、コンクリート型枠構造体の隙間におけるコンクリートの入り込みや、セメント成分の漏出を防ぐことができる製品が検討されている。
【0003】
例えば、粘着層、基材層、及び吸水膨張層がこの順で積層され、隣接する型枠パネル間の隙間に設けられる積層体があった(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1の積層体は、吸水膨張層がコンクリートの水分を吸収し膨張することで、コンクリート型枠構造体の隙間を密閉する。これにより、コンクリート型枠構造体の隙間において、コンクリートの入り込みや、セメント成分の漏出を防ぎ、バリ、砂スジ等の欠陥の発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の積層体は、膨潤後の吸水膨張層の層強度が弱いため、建築現場において風雨に晒されると雨水によって吸水膨張層が流出し、隙間の密閉が損なわれる場合がある。また、特許文献1の積層体は、撤去の際に層強度が弱い吸水膨張層が破断するなどして、良好な作業性が得られない場合がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、風雨に晒される可能性のある建築現場での使用でも、硬化後のコンクリートにおけるバリ、砂スジの発生を抑制することができ、撤去時の作業性が良好な型枠用テープ、コンクリート型枠構造体、及び該コンクリート型枠構造体を用いたコンクリート製建築物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の型枠用テープは、コンクリート型枠構造体の隙間に施工される型枠用テープであって、前記コンクリート型枠構造体の基本構造である型枠パネルの側面に貼着される粘着層と、クッション性を有し前記型枠用テープの幅方向からの漏水を防ぐ第一止水層と、前記第一止水層を挟んで前記粘着層と対向する側に積層され、前記型枠用テープの表面を平滑化し表面からの漏水を防ぐ第二止水層を備える。
【0008】
また、本発明のコンクリート型枠構造体は、複数の型枠パネルを連設させてなるコンクリート型枠構造体であって、隣接する型枠パネルの隙間に型枠用テープが配され、前記型枠用テープは、前記型枠パネルの側面に貼着する粘着層と、クッション性を有し前記型枠用テープの幅方向からの漏水を防ぐ第一止水層と、前記第一止水層を挟んで前記粘着層と対向する側に積層され、前記型枠用テープの表面を平滑化して表面からの漏水を防ぐ第二止水層を備える。
【0009】
また、本発明のコンクリート製建築物の製造方法は、上記コンクリート型枠構造体内にコンクリートを打設するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、風雨に晒される可能性のある建築現場での使用でも、硬化後のコンクリートにおけるバリ、砂スジの発生を抑制することができ、撤去時の作業性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態の一例であるコンクリート型枠構造体を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態の型枠用テープを例示する模式断面図であり、(a)吸水層が無い例、および(b)吸水層がある例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の型枠用テープ、コンクリート型枠構造体、及びコンクリート製建築物の製造方法について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0013】
図1は、本発明にかかるコンクリート型枠構造体100の一例を示した斜視図である。
図1は組み立て中のコンクリート型枠構造体100の構成を示している。コンクリート型枠構造体100は、型枠パネル20を基本構造として構成されており、各型枠パネル20の主面22がコンクリートを充填する空間を取り囲むように、複数の型枠パネル20が基礎コンクリート(図外)の上に配置された構造である。型枠パネル20の材質としては、木製、樹脂製、及びコンクリート製が挙げられる。なお、一般に、コンクリート型枠構造体は、型枠パネルの背面側に補強部材を配することで、内側に充填されるコンクリートの圧力に耐え得るように構成されるが、
図1では、説明容易化のため、補強部材を省略している。
【0014】
コンクリート型枠構造体100において、互いに側面21を対向させて隣接する2枚の型枠パネル20の側面21に型枠用テープ10が施工される。型枠用テープ10は、粘着層1、第一止水層3、第二止水層5を有し(
図2参照)、隙間を形成する2枚の型枠パネル20のうちの一方の型枠パネル20の側面21に、粘着層1によって貼着される。ここで、型枠用テープ10は、長手方向の断面が、型枠パネル20の主面22と同一面内に位置するように貼着される。これにより、本発明のコンクリート製建築物の製造方法では、コンクリート型枠構造体100の内側にコンクリートを打設することで、平滑なコンクリート製建築物を製造することができる。隙間を形成する2枚の型枠パネル20のうちの他方の型枠パネル20の側面21には、第二止水層5が接する。2枚の型枠パネル20が型枠用テープ10を挟んだ状態で連結されることで、隙間が型枠用テープ10によって密閉される。これにより、コンクリート型枠構造体100では、コンクリートが充填されたときにコンクリートの圧力が、
図1において矢印Xで示す方向に掛かるが、型枠用テープ10の断面方向から隙間へのコンクリートの入り込み、セメント成分の漏出が防がれる。
【0015】
図2は、本発明にかかる型枠用テープの一例を示す模式断面図である。
図2(a)は、吸水層2を含まない型枠用テープ10の構成を示す。
図2(b)は、吸水層2を含む型枠用テープ10Aの構成を示す。
図2(a)に示す型枠用テープ10は、粘着層1、第一止水層3及び第二止水層5がこの順に積層された構造を有する。なお、
図2(a)においても、コンクリートが充填されたときに掛かるコンクリートの圧力の方向を矢印Xで示している。
【0016】
型枠用テープ10の厚みは、好ましくは1~20mmに設定され、より好ましくは2~15mmに設定される。型枠用テープ10の厚みを上記の範囲に設定することで、型枠パネル20の側面21に貼り付けた状態において隙間をふさぐことが可能でありながら、コンクリート型枠構造体の組み立て時に嵩張ることがなく、良好な作業性が得られる。型枠用テープ10の幅は、好ましくは5~50mmに設定され、より好ましくは10~30mmに設定される。型枠用テープ10の幅を上記の範囲に設定することで、十分な強度が得られるため、コンクリート型枠構造体100の内側にコンクリートが充填されたときに、コンクリートの圧力に耐えることが可能である。また、型枠パネル20の側面21に張り付けた状態で、型枠パネル20の厚みを超えて型枠用テープ10がはみ出すことがなく、良好な作業性が得られる。型枠用テープ10は、未使用時に芯部材に巻いた状態、又は芯部材を用いずに巻いた状態であることが好ましく、未使用時に巻いた状態での長さは、好ましくは1~50mに設定され、より好ましくは2~30mに設定される。未使用時に巻いた状態での型枠用テープ10の長さを上記の範囲に設定することで、コンクリート型枠構造体100の組み立て時に取り回しがよく、良好な作業性が得られる。
【0017】
粘着層1は、型枠パネル20の側面21に貼着されることで、型枠用テープ10を型枠パネル20に固定する部材である。粘着層1の材質としては、例えば、ポリアクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられ、特に、ポリアクリル系樹脂、及び合成ゴムが好ましい。これらの樹脂又はゴムは単独で用いてもよいし、複数種を混合した混合物として用いてもよい。上掲の樹脂又はゴムを使用することで、粘着層1は、耐熱、耐水分、耐アルカリに優れたものとなり、コンクリートの打設時にすぐれた耐久性が得られる。また、上掲の樹脂又はゴムを使用することで、1N以上の初期粘着力が得られるとともに、再剥離時に糊残りを抑えることができる。
【0018】
粘着層1の粘着力は、1N以上が好ましく、3N以上がより好ましい。粘着力を1N以上に設定することで、型枠パネル20への取り付け中に剥がれる虞もなく、更にコンクリート打設時の側圧による剥離や隙間からのセメント成分の漏出を抑えることができる。粘着層1の粘着力は、20N以下が好ましく、10N以下がより好ましい。粘着力を20N以下に設定することで、撤去時に型枠用テープ10を取り外しやすくなり作業性が向上する。また、粘着層1の厚みは、好ましくは0.01~1.0mmに設定され、より好ましくは0.05~0.5mmに設定される。粘着層1の粘着力と厚みを上記の範囲に設定することで、型枠パネル20の側面21に型枠用テープ10を確実に貼り付け、コンクリート型枠構造体100の内側に充填されるコンクリートの圧力に耐え得る。その一方で、コンクリート型枠構造体100の撤去時に型枠用テープ10を取り外す際には、容易に剥離させることが可能となる。また粘着層1の厚みが1mmを超える場合、剤の必要量が過多となり、経済的でない。
【0019】
第一止水層3は、クッション性を有しており、型枠用テープ10を施工した時にコンクリートの漏出を抑えるようにコンクリート型枠構造体100の隙間を密閉するための部材である。第一止水層3は、
図2に示すように、内部に気泡4を有するフォーム材で構成されている。これにより、第一止水層3に適度な柔軟性及び止水性が付与され、コンクリート型枠構造体100の隙間に型枠用テープ10が施工されると、隙間の形状に合わせて第一止水層3が変形し、隙間を密閉することが可能となる。第一止水層3の50%圧縮硬さは、好ましくは100kPa以下の範囲に設定され、より好ましくは80kPa以下に設定される。硬さを100kPa以下に設定することで、隙間の形状に合わせて適度に変形できるため、隙間を密閉し止水性を向上しやすく、また、施工しやすい。さらに、第一止水層3の50%圧縮硬さは、好ましくは3kPa以上の範囲に設定され、より好ましくは5kPa以下に設定される。硬さを3kPa以上に設定することで、隙間を密閉し、安定した止水性を保持することができ、バリ発生を抑制しやすい。なお、50%圧縮硬さは、JIS-K6400-2 A法に準じた試験機を用いて行う。圧縮速度50mm/minで厚さの25%まで予備圧縮し、その後1分間解放したのち、再び同様に厚さの50%まで圧縮し、20秒間保持後の値を測定値とする。
【0020】
第一止水層3としては、適度な柔軟性及び止水性があるフォーム材であればよく、独立気泡構造、半独立気泡構造、または連続気泡構造のフォーム材が挙げられる。第一止水層3が止水性を有することにより、矢印Xで示す方向から第一止水層の内部を通って、粘着層1に水が浸入することを防ぐことができる。そのため、粘着層1による型枠パネル20の側面への粘着力を安定して発揮することができる。
【0021】
第一止水層3の材質としては、例えば、ポリアクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられ、特に、合成ゴムが好ましい。第一止水層3の厚みは、好ましくは0.5~15mmに設定され、より好ましくは2~12mmに設定される。第一止水層3の厚みを上記の範囲に設定することで、十分なクッション性が得られ、コンクリート型枠構造体100の隙間を密閉することが可能となる。第一止水層3の厚みが0.5mm未満の場合、クッション性が不十分なものとなり、隙間を密閉することができない虞がある。第一止水層3の厚みが15mmを超える場合、コンクリート型枠構造体100の隙間に収まらない虞があり、さらに経済的でない。
【0022】
第二止水層5は、
図2(a)に示すように第一止水層3表面に形成される。すなわち、第二止水層5は、第一止水層3を挟んで粘着層1と対向する側に積層され、型枠用テープ10の表面を平滑化し、表面からの水の浸入を防ぐ。なお、ここでいう平滑化とは、厳密に平滑でなくてもよく、第二止水層5側の表面に1mlの水滴を載せたときに水滴が表面に留まり、水がフォーム材である第一止水層3の気泡4に沿って内部に浸入しない程度に平滑化していればよい。第二止水層5を設けることにより、第一止水層表面に気泡構造を起因とする凹凸が存在していても型枠用テープ10の表面を平滑化し、その結果、隣接する型枠パネル20の側面21に第二止水層が密着し、矢印Xで示す方向に第一止水層の表面の凹凸に沿って型枠用テープ10の断面方向に水が浸入することを防ぐことができ、コンクリート型枠構造体100の内側に充填されるコンクリートの圧力にも耐え得る。その一方で、コンクリート型枠構造体100の撤去時には、容易に解体させることが可能となる。
【0023】
第二止水層の形成方法としては、樹脂の塗工やラミネートが挙げられる。他の方法として、第一止水層3のフォーム材にスキン層を有するものを用い、このスキン層を第二止水層5としてもよい。スキン層とは、フォーム材用組成物を発泡、硬化させた後のフォーム材の最表面に存在する部分であり、フォーム材内部と比較して、単位体積あたりの気泡数が低く、密度が高い層である。スキン層は気泡が小さく、気泡数も少ないため、層表面はほぼ平滑になっており、表面からの水の浸入を抑制できる。なお、スキン層の無いフォーム材表面を溶融して高密度化し、スキン層を設けてもよい。
第二止水層5の材質としては、例えば、ポリアクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられる。
【0024】
第二止水層5の表面、すなわち、型枠用テープの表面は、型枠パネル20に対し適度な引っ掛かり力があると良く、具体的には、静摩擦係数が0.8以上であると好ましく、1.0以上であるとより好ましい。
【0025】
第二止水層5は、粘着性を付与してもよい。例えば、粘着力は、好ましくは20N以下の範囲に設定され、より好ましくは10N以下に設定される。粘着力を20N以下に設定することで、脱型時、隣り合う型枠パネル20を容易に剥がすことが出来、更に一方の型枠パネル20の側面21側に型枠用テープ10を残す事が出来るので型枠用テープ10が材破しないまま取り外すことができ、作業性が良い。また、第二止水層5の粘着力が粘着層1の粘着力と適度に差があると、脱型時、粘着層側が型枠パネル20に貼り付き残りやすいため、作業性が向上する。具体的には、粘着力の差が3N以上であると好ましい。
【0026】
粘着層1と第一止水層3の間には、
図2(b)に示す型枠用テープ10Aのように、吸水層2が備えられていると型枠用テープ10の断面方向から水分を吸収することができ、好ましい。コンクリート型枠構造体100の隙間に施工された状態では、吸水層2は、
図1において矢印Xで示す断面方向でコンクリートと接することにより、コンクリートの余剰水を吸収する。吸水層2は、基布と、当該基布を構成する繊維の間隙に配された高吸水性樹脂を有する構成であることが好ましい。基布は、それ自体が吸水性を有するシート材であることが好ましい。吸水性を有するシート材としては、例えば、ナイロン、レーヨン、綿、パルプ等の親水性繊維を含む布帛、及び不織布、並びに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の疏水性繊維を含む布帛、及び不織布に吸水加工を施したものが挙げられ、特に、親水性繊維を含む布帛、及び不織布が好ましい。高吸水性樹脂としては、アクリル酸/アクリル酸塩共重合体、アクリルアミド/アクリル酸塩共重合体が挙げられ、特に、アクリル酸/アクリル酸塩共重合体が好ましい。吸水層2の厚みは、好ましくは0.1~1mmに設定され、より好ましくは0.2~0.7mmに設定される。吸水層2の厚みを上記の範囲に設定することで、コンクリートの余剰水を適度に吸水し、かつ、コンクリート硬化後の砂スジの発生を防ぐことが可能となる。型枠用テープ10は、吸水層2が基布を含まない構成とすることも可能である。基布を含まない吸水層2は、例えば、粘着層1、又は第一止水層3に、高吸水性樹脂を印刷、内添、又はコーティングすることで設けることができる。第一止水層3に設ける際には、粘着層1側近傍に設けることが降雨などによる流出を抑制できるという面で好ましい。
【0027】
型枠用テープ10は、例えば、次の手順により製造することができる。(1)第一止水層の準備:フォーム材を第一止水層3として準備する。(2)粘着層の形成:第一止水層3の片方の面に粘着剤を塗布することにより、また、接着や熱ラミネート法などにより第一止水層3に両面テープを積層することにより、粘着層1を形成することができる。(3)第二止水層の形成:粘着層1、第一止水層3の積層体において、第一止水層3側に第二止水層組成物を塗布することにより、第二止水層5を形成する。また、第一止水層3の表面を平滑化し平滑層を設けることでも第二止水層5を形成することができる。(4)粘着層1、第一止水層3、及び第二止水層5の積層体を、任意の幅のテープ状に裁断することで、型枠用テープ10が得られる。なお、吸水層2を設ける場合には、(1)の工程の後に次の工程を行う。布帛、又は不織布に吸水樹脂を塗布することにより、吸水層2を作製し、第一止水層3と吸水層2とを、ドライラミネート法によって積層する。なお、吸水層2を設けた場合には、粘着層1は吸水層2側に形成する。
【実施例】
【0028】
以下、本発明の型枠用テープの実施例について説明する。本実施例では、本発明の構成を有する型枠用テープ(実施例)、並びに本発明の範囲外となる型枠用テープ(比較例)を作製した。なお、実施例並びに比較例において、各成分の%はそれぞれの質量%を示す。
【0029】
<実施例1>
第一止水層として、厚みが5mmのEPDM系発泡ゴム(日東電工株式会社製 エプトシーラーNo.685)を準備した。基布に厚みが0.48mmのPETスパンボンド不織布100g/m2(ユニチカ株式会社製 81006BSE)を用い、この基布の片面に吸水加工として、下記処方にてドライ塗布量10g/m2でグラビアコートを実施し、吸水層を作製した。
アクリル樹脂:XE-2907(株式会社トウペ製) 30%
吸水剤:SA-100(三洋化成工業株式会社製) 10%
溶媒:トルエン 60%
次に、第一止水層に、下記処方の接着剤をドライ塗布量5g/m2でグラビアコートにより塗布し、その後、第一止水層に吸水層の吸水加工を施していない側の面を当接させて、ドライラミネート法により積層した。
ウレタン樹脂:4365T(DIC株式会社製)60%
架橋剤:DN950(DIC株式会社製) 6.0%
促進剤:アクセルT-81(DIC株式会社製)0.6%
溶媒:トルエン 33.4%
次に、吸水層と第一止水層の積層体において、吸水層側の面(吸水層の吸水加工面)に、下記処方の粘着剤をコンマコーターにてドライ塗布量30g/m2で塗布し、粘着層を形成した。
アクリル樹脂:ダイレクト202(サイデン化学株式会社製)91.5%
架橋剤:硬化材AL(サイデン化学株式会社製)3.5%
溶媒:トルエン 5.0%
次いで、下記処方の微粘着剤を、離型紙にコンマコーターによりドライ時厚みが20μmになるよう塗布し、微粘着層を作製した。この微粘着層に、第一止水層、吸水層ならびに粘着層の積層体の第一止水層の吸水層が積層されていない面を当接させて転写させることで、第二止水層として微粘着層を積層した。
アクリル樹脂:AS-415(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製) 85.5%
架橋剤:B-45(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製) 6.0%
溶媒:トルエン 8.5%
これを、幅10mm×長さ2mにスリット裁断し、実施例1の型枠用テープを得た。
【0030】
<実施例2>
実施例1と同様に第一止水層、吸水層ならびに粘着層の積層体を設けた後、下記処方の接着剤を、第一止水層の粘着層とは対向する面にドライ塗布量5g/m2でグラビアコートにより塗布した。
ウレタン樹脂:4365T(DIC株式会社製)60%
架橋剤:DN950(DIC株式会社製) 6.0%
促進剤:アクセルT-81(DIC株式会社製)0.6%
溶媒:トルエン 33.4%
その後、エーテル系ウレタン樹脂クリスボンUST-135(DIC株式会社製)を離型紙にコンマコーターによりドライ時厚みが20μmになるよう塗布した後、上記接着剤上にドライラミネート法により積層することで、第二止水層として非粘着性の層を形成した。その後、実施例1に準じて、スリット裁断を実施して、実施例2の型枠用テープを得た。
【0031】
<実施例3>
実施例1と同様に第一止水層を準備した後、吸水層は設けずに、第一止水層の一方の面に、実施例1と同様の粘着層を積層し、もう一方の面に実施例1と同様の第二止水層を積層した。
その後、実施例1に準じて、スリット裁断を実施して、実施例3の型枠用テープを得た。
【0032】
<実施例4>
第一止水層として、厚みが5mmのNBR系発泡ゴム(株式会社東洋クオリティワン製 ハイシールPM)を用いた以外は実施例2に準じて、吸水層、粘着層、第二止水層を積層させ、スリット裁断を実施して、実施例4の型枠用テープを得た。
【0033】
<実施例5>
実施例1と同様に第一止水層、吸水層、粘着層を積層した後、下記処方の粘着剤を、コンマコーターで離型紙にドライ時厚みが20μmになるよう塗布した後、粘着層とは対向する面に転写し、第二止水層として粘着層を積層した。
アクリル樹脂:AS-1107(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製) 88.3%
架橋剤:B-45(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製) 2.9%
溶媒:トルエン 8.8%
その後、実施例1に準じて、スリット裁断を実施して、実施例5の型枠用テープを得た。
【0034】
<実施例6>
第一止水層として、厚みが5mmのウレタン系発泡ゴム(日本発条株式会社製 スーパーシートH6)を用いた。なお、この片面は表層にスキン面を形成しており、これを第二止水層とした。
スキン面の反対側に吸水層を積層するようにした以外は、実施例1と同様に吸水層、粘着層を積層させ、スリット裁断を実施して、実施例6の型枠用テープを得た。
【0035】
<実施例7>
第一止水層として、厚みが5mmのEPDM系発泡ゴム(日東電工株式会社製 エプトシーラーEH-2200)を用いた以外は実施例2に準じて、吸水層、粘着層、第二止水層を積層させ、スリット裁断を実施して、実施例7の型枠用テープを得た。
【0036】
<比較例1>
実施例1と同様に、第一止水層、吸水層、粘着層を積層した後、第二止水層を設けずに、スリット裁断を実施して、比較例1の型枠用テープを得た。
【0037】
<比較例2>
実施例1と同様に吸水層を準備した後、第一止水層は積層せずに、吸水層の一方の面に、実施例1と同様の粘着層を積層し、もう一方の面に実施例1と同様の第二止水層を積層した。
その後、実施例1に準じて、スリット裁断を実施して、比較例2の型枠用テープを得た。
【0038】
実施例1~7の型枠用テープ、並びに比較例1及び2の型枠用テープについて、各種測定及び評価を行った。測定項目は、粘着層と第二止水層の粘着力、第一止水層の50%圧縮硬さ、型枠用テープの静摩擦係数、止水性、作業性、及びコンクリート品位である。
【0039】
〔1〕粘着層と第二止水層の粘着力
コンクリート型枠用合板(JAS型枠用合板1類、板面品質B、厚さ12mm)の背面(未処理面)に対する型枠用テープの粘着力を、粘着層と第二止水層でそれぞれJIS Z0237 10(粘着力 180°剥離)に準拠して測定した。
【0040】
〔2〕第一止水層の50%圧縮硬さ
第一止水層のみを準備して、JIS-K6400-2 A法に準じた試験機を用い、圧縮速度50mm/minで厚さの25%まで予備圧縮し、その後1分解放したのち、再び同様に厚さの50%まで圧縮して20秒間保持後の値を測定値とした。
【0041】
〔3〕型枠用テープの静摩擦係数
型枠用テープの粘着層の反対側、すなわち第二止水層側の表面における静摩擦係数を測定した。測定方法は、JIS P8147に準ずる滑り傾斜角測定装置本体の傾斜板に、コンクリート型枠用合板(JAS型枠用合板1類、板面品質B、厚さ12mm)の背面(未処理面)を上向きにして設置。この上に、巾10mm、長さ50mmにカットした型枠用テープの第二止水層面をベニヤ合板上に載置して、10°/6secの速度で傾斜板を傾斜させ、型枠用テープが滑りはじめたときの傾斜角θを読み取り、このときの正接tanθを静摩擦係数として求める。
【0042】
〔4〕止水性
はじめに、15mm厚の合板にて各辺の内法が20cmで高さが20cm以上である角柱を作製し、内側表面に厚み20μmのポリエステルフィルムを両面テープで貼り付け、水漏れのないようにする。次に、角柱の1辺の中央部を縦方向に切断し、型枠用テープの厚みと同じ幅を有するスリットを形成する。型枠用テープを切断面の一方に貼り付け、他方の切断面とで型枠用テープを挟み、型枠用テープの厚み方向に2kgfの荷重がかかるよう固定する。このとき型枠用テープを貼り付ける際に、型枠用テープの断面が角柱の内側の面と同一面内に位置するように調節する。角柱の底辺には、厚み20μmのポリエステルフィルムを両面テープで隙間のないよう貼り付け、水漏れのないようにする。この状態で角柱の中に、高さ15cmの位置まで生コンクリート(1kgのコメリ株式会社製インスタントコンクリート)に対し、150mlの水を混合したもの)を流し込んだ後、バイブレータを生コンクリート中央部に挿し込み、10秒間振動を与える。この際に、型枠用テープと型枠切断面の接着部から水ないしは生コンクリートが染み出てくる様子を観察し、以下の評価基準により評価した。
(評価基準)
○:水ないしは生コンクリートがまったく染み出ていない。
△:水ないしは生コンクリートが若干染み出ているが、型枠内の生コンクリートの嵩が減る程ではない。
×:水ないしは生コンクリートが明らかに染み出ており、型枠内の生コンクリートの嵩も減っている。
【0043】
〔5〕作業性
コンクリート型枠用合板(JAS型枠用合板1類、板面品質B、厚さ12mm)の断面に対して、幅10mmの型枠用テープを施工し、その施工および撤去における作業性を、以下の評価基準により評価した。
(評価基準)
○:適度なハリコシ及び、若干の凹凸に対する追従性が良好であり、合板の断面への貼り付け作業が容易である。且つ、撤去時に糊残りすることなく、また、吸水層の基布が破損することなく、容易に剥がすことができる。
△:ややハリコシがない、または硬いが隙間なく貼り付け作業が可能である。あるいは、撤去時に若干の糊残りがみられるが、容易に糊を除去可能である。また、吸水層の基布に亀裂や破れが発生するが、破断することなく剥がすことができる。
×:ハリコシがなく貼り付け作業が困難である、または硬過ぎて若干の凹凸部に隙間ができてしまう。あるいは、撤去時に糊残りがある、または吸水層の基布が破損する、貼り付けた側とは反対側の型枠の合板断面に型枠用テープが残る。
【0044】
〔6〕コンクリート品位
隙間に型枠用テープを施工したコンクリート型枠構造体を用いて製造したコンクリートの品位を、下記の方法により評価した。15mm厚の合板にて各辺の内法が20cmの角柱を作製した。次に、角柱の1辺の中央部を縦方向に切断し、型枠用テープの厚みと同じ幅を有するスリットを形成した。型枠用テープを切断面の一方に貼り付け、他方の切断面とで型枠用テープを挟み、型枠用テープの厚み方向に2kgfの荷重がかかるよう固定した。型枠用テープを貼り付ける際、型枠用テープの断面が角柱の内側の面と同一面内に位置するように調節した。角柱の底辺には、厚み20μmのポリエステルフィルムを両面テープで隙間のないよう貼り付け、水漏れのないようにした。角柱の中に、生コンクリートを充填した後、バイブレータを生コンクリート中央部に挿し込み、10秒間振動を与えて締固めを実施した。24時間後に角柱を解体して、硬化後のコンクリートにおいて型枠用テープに対応する位置の外観を観察し、コンクリート品位を評価した。評価基準は、以下のとおりである。
(評価基準)
○:バリ及び砂スジの発生がない。
△:若干のバリ(高さ5mm未満)が発生した。または、3m離れた位置からは目視により確認できない程度の僅かな砂スジが発生した。
×:著しいバリ(高さ5mm以上)、および/または、吸水層の基布の一部のコンクリート表面への残留が発生した。あるいは、3m離れた位置から目視により確認できる著しい砂スジが発生した。
【0045】
実施例1~7の型枠用テープ、並びに比較例1及び2の型枠用テープの、各種測定及び評価を行った結果を表1に示す。
【0046】
【0047】
実施例1~7の型枠用テープについては、止水性、作業性及びコンクリート品位の全てにおいて良好な評価が得られた。一方、比較例1の型枠用テープについては、止水性評価が不良で、比較例2の型枠用テープについては、止水性及びコンクリート品位が不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の型枠用テープ、コンクリート型枠構造体、及びコンクリート製建築物の製造方法は、建物、ブロック、基礎、道路、トンネル、橋梁等のコンクリート構造物の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 粘着層
2 吸水層
3 第一止水層
4 気泡
5 第二止水層
10、10A 型枠用テープ
20 型枠パネル
21 側面
22 主面
100 コンクリート型枠構造体