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特許7076718帯電強化添加剤を含むエレクトレットウェブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】帯電強化添加剤を含むエレクトレットウェブ
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20220523BHJP
   D04H 1/42 20120101ALI20220523BHJP
   B03C 3/28 20060101ALI20220523BHJP
   B01D 39/16 20060101ALI20220523BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
C08L101/00
D04H1/42
B03C3/28
B01D39/16 A
C08K5/3492
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019536527
(86)(22)【出願日】2018-01-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 IB2018050065
(87)【国際公開番号】W WO2018127831
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-12-25
(31)【優先権主張番号】62/442,522
(32)【優先日】2017-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ,ネイサン イー.
(72)【発明者】
【氏名】リ,フーミン ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルプ,ケリー エー.
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン,ジョン エム.
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/208605(WO,A1)
【文献】特開2012-072514(JP,A)
【文献】特表2012-509375(JP,A)
【文献】特開2009-297815(JP,A)
【文献】特表2016-520728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/00
D04H 1/42
B03C 3/28
B01D 39/16
C08K 5/3492
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、
少なくとも1種の置換トリアジンフェノレート塩を含む帯電強化添加剤と、
を含む、エレクトレットウェブ。
【請求項2】
前記帯電強化添加剤が、下記の構造:
【化1】
[式中、R、R、及びRはそれぞれ独立して、水素原子、あるいはアルキル若しくは置換アルキル又はアリール若しくは置換アリール基を含む置換基を含み、
は、ハロゲン原子、アルキル若しくは置換アルキル基、アルケニル基、アリール若しくは置換アリールを含む置換基、又は-O-R11、-N-R1112、-B(OR13)(OR14)、若しくは-SiR15 を含む基であり、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は1つ以上の酸素、窒素、硫黄、若しくはリン原子を含むヘテロ原子含有基を含み、R12は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は1つ以上の酸素、窒素、硫黄、若しくはリン原子を含むヘテロ原子含有基を含むか、あるいはR11及びR12は、それらを結合している原子と共に複素環構造を形成し、
各R13及びR14は、独立して、水素原子、アルキル基、アリール基であるか、又はR13及びR14は、結合している原子と共に複素環構造を形成し、
各R15はアルキル基であり、
各R及びRは、独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、アリール基、置換アリール基、又はハロゲン原子を含み、
nは、1~4の整数であり、
Mは、価数nの遷移金属原子又は主族金属原子を含む]
を有する置換トリアジンフェノレートアニオン及び金属カチオンを含む、請求項1に記載のエレクトレットウェブ。
【請求項3】
前記帯電強化添加剤が、下記の構造:
【化2】
[式中、各R、R、R、R、R、R、及びR10は独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はハロゲン原子を含み、
及びRは独立して、水素原子又は置換基を含み、R及びRのうちの少なくとも1つは、ハロゲン原子、アルキル若しくは置換アルキル基、アルケニル基、アリール若しくは置換アリールを含む置換基、又は-O-R11、-N-R1112、-B(OR13)(OR14)、若しくは-SiR15 を含む基であり、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は1つ以上の酸素、窒素、硫黄若しくはリン原子を含むヘテロ原子含有基を含み、R12は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は1つ以上の酸素、窒素、硫黄、若しくはリン原子を含むヘテロ原子含有基を含むか、あるいはR11及びR12は、結合している原子と共に複素環構造を形成し、
各R13及びR14は、独立して、水素原子、アルキル基、アリール基であるか、又はR13及びR14は、結合している原子と共に複素環構造を形成し、
各R15基はアルキル基であり、
m=0.5、1、又は2であり、
Mは、価数2mの遷移金属原子又は主族金属原子を含む]
を有する置換トリアジンフェノレートアニオン及び金属カチオンを含む、請求項1に記載
【請求項4】
前記帯電強化添加剤が、前記ウェブの0.01~5.0重量%を構成する、請求項1に記載のエレクトレットウェブ。
【請求項5】
エレクトレット濾過材を含む、請求項1に記載のエレクトレットウェブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、帯電強化添加剤を含有する不織熱可塑性マイクロファイバーウェブなどの不織繊維ウェブを含むエレクトレットウェブ、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトレットは、半永久的な電荷を示す誘電材料である。エレクトレットは、例えば食品包装用ラップ、空気フィルタ、フィルタ付きマスク(filtering facepiece)、及び人工呼吸器、及びマイクロホン、ヘッドホンなどの電気音響デバイス中の静電要素、及び静電記録装置を含む様々なデバイスにおいて有用である。
【0003】
エアロゾル濾過に使用されるマイクロファイバーウェブの性能は、繊維に電荷を付与し、エレクトレット材料を形成することによって向上させることができる。特に、エレクトレットは、エアロゾルフィルタにおいて粒子捕捉を強化させるのに効果的である。マイクロファイバーウェブにおいてエレクトレット材料を形成するための多くの方法が知られている。そのような方法は、例えば、メルトブローン繊維が形成されて、この繊維がダイオリフィスから出てくるとき、電子又はイオンなどの帯電した粒子と衝突させることを含む。別の方法は、例えば、ウェブが形成された後でコロナ放電によって繊維を帯電させること、又はカーディング及び/若しくはニードルタッキング(摩擦帯電)によって繊維マットに電荷を付与することを含む。更に、濾過促進エレクトレット電荷を生成するのに十分な圧力で、ウォータージェット又は水滴流を不織ウェブに衝突させる方法(ハイドロチャージング)も記載されている。
【0004】
ポリマー組成物の特性を改変するために、多くの材料がポリマー組成物に添加されてきた。例えば、米国特許第5,914,186号(Yauら)には、少なくとも1マイクロメートルの直径を有するマイクロ粒子接着剤が表面にコーティングされている基材を含む耐熱性帯電防止感圧性接着テープが記載されている。マイクロ粒子は、ポリマー電解質ベースポリマーと、アルカリ又はアルカリ土類金属の少なくとも1種のイオン塩と、ヒンダードアミン、置換トルイミダゾールの塩、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の熱安定剤と、から形成される導電性コーティングを有する。
【0005】
添加剤が添加されたエレクトレットの例としては、アミジン基又はグアニジン基のいずれかを含有するN-n-ブチルカルバミン酸3-9ヨード-2-プロピニルエステル、及び2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾールについて記載している特開平08284063号、並びにヒンダードアミン化合物、含窒素ヒンダードフェノール化合物、金属塩ヒンダードフェノール化合物、フェノール化合物、硫黄化合物、及びリン化合物について記載している国際公開第93/14510号に記載されているような抗菌性添加剤を含むエレクトレットが挙げられる。特開平06254319号には、帯電量の低下を抑制するために、ポリオレフィンエレクトレットにおいて長鎖有機酸の金属塩を使用することが記載されている。欧州特許第623,941号には、ポリマーエレクトレットにおいて様々な化学的分類の帯電制御剤を使用することが記載されている。米国特許第5,871,845号(Dahringerら)には、電子写真プロセスのトナーに含まれる、繊維形成性ポリマー又は重縮合物及び有機又は有機金属帯電制御化合物で構成されるエレクトレット繊維が記載されている。
【0006】
また、電荷の印加と、その後の加熱を少なくとも2サイクル交互に行うことを含む、エレクトレットを製造する方法について記載しており、また、極性高分子量化合物を含有するエレクトレットについても記載している欧州特許第447,166号、並びに非接触電圧印加電極と接地電極との間に繊維シートを配置することと、それらの電極間に電気を供給することとを含む方法について記載している米国特許第4,874,659号(Andoら)など、高安定性エレクトレットを製造する方法も記載されている。
【発明の概要】
【0007】
帯電強化添加剤を含有するエレクトレットウェブ及びその使用が本明細書において開示されている。電気を帯びたウェブは、熱可塑性樹脂と、少なくとも1種の置換トリアジンフェノレート塩を含む帯電強化添加剤と、を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、帯電強化添加剤は、下記の構造:
【化1】
[式中、R、R、及びRはそれぞれ独立して、水素原子、あるいはアルキル若しくは置換アルキル又はアリール若しくは置換アリール基を含む置換基を含み、Rは、ハロゲン原子、アルキル若しくは置換アルキル基、アルケニル基、アリール若しくは置換アリールを含む置換基、又は-O-R11、-N-R1112、-B(OR13)(OR14)、若しくは-SiR15 を含む基であり、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は1つ以上の酸素、窒素、硫黄、若しくはリン原子を含むヘテロ原子含有基を含み、R12は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は1つ以上の酸素、窒素、硫黄、若しくはリン原子を含むヘテロ原子含有基を含むか、あるいはR11及びR12は、結合している原子と共に複素環構造を形成し、各R13及びR14は、独立して、水素原子、アルキル基、アリール基であるか、又はR13及びR14は、結合している原子と共に複素環構造を形成し、各R15基はアルキル基であり、各R及びRは、独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、アリール基、置換アリール基、又はハロゲン原子を含み、nは、金属原子Mの価数であり、かつ塩のアニオン部分の化学量論数でもあり、1~4の整数であり、Mは、価数nの遷移金属原子又は主族金属原子を含む]を有する置換トリアジンフェノレートアニオン及び金属カチオンを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、帯電強化添加剤は、下記の構造:
【化2】
[式中、各R、R、R、R、R、R、及びR10は独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はハロゲン原子を含み、R及びRは独立して、水素原子又は置換基を含み、R及びRのうちの少なくとも1つは、ハロゲン原子、アルキル若しくは置換アルキル基、アルケニル基、アリール若しくは置換アリールを含む置換基、又は-O-R11、-N-R1112、-B(OR13)(OR14)、若しくは-SiR15 を含む基であり、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は1つ以上の酸素、窒素、硫黄若しくはリン原子を含むヘテロ原子含有基を含み、R12は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は1つ以上の酸素、窒素、硫黄若しくはリン原子を含むヘテロ原子含有基を含むか、あるいはR11及びR12は、結合している原子と共に複素環構造を形成し、各R13及びR14は、独立して、水素原子、アルキル基、アリール基であるか、又はR13及びR14は、結合している原子と共に複素環構造を形成し、各R15基はアルキル基であり、m=0.5、1、又は2であり、m=0.5の場合にMがリチウム、ナトリウム又はカリウムであり、m=1の場合にMがカルシウム、マグネシウム又はコバルトであり、m=2の場合にMがバナジウム又はチタンとなるように、Mは、価数2mの遷移金属原子又は主族金属原子を含む]を有する置換トリアジンフェノレートアニオン及び金属カチオンを含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特性が向上したエレクトレットウェブが依然として必要である。帯電強化添加剤を含有するエレクトレットウェブが本開示において提示されている。これらの帯電強化添加剤により、摩擦帯電、コロナ放電、ハイドロチャージング(hydrocharging)又はこれらの組み合わせなどの様々な異なる帯電機構によって容易に帯電するエレクトレットウェブが得られる。本開示において有用なエレクトレットウェブは、熱可塑性樹脂と帯電強化添加剤のブレンドを含む。そのようなブレンドから調製されるウェブは、熱可塑性樹脂だけを用いて調製されるウェブよりも強化された特性を示すことができる。有用な帯電強化添加剤としては、置換トリアジンフェノレート塩が挙げられる。
【0011】
エレクトレットウェブは、様々な形態であってよい。例えばウェブは、連続若しくは不連続フィルムであっても、繊維ウェブであってもよい。繊維ウェブは、濾過材の形成に特に有用である。いくつかの実施形態では、ウェブは不織マイクロファイバーウェブである。典型的には、マイクロファイバーは、有効径(又は走査型電子顕微鏡などの方法で測定される場合は平均径)が1~100マイクロメートル、又はより典型的には2~30マイクロメートルであり、マイクロファイバーは円形断面を有する必要はない。
【0012】
用語「a」、「an」、及び「the」は、「少なくとも1つの」と区別なく使用され、記載される要素のうちの1つ以上を意味する。
【0013】
用語「エレクトレット」は、半永久的な電荷を示す材料を指す。電荷は、様々な技術によって特徴付けることができる。
【0014】
用語「アルキル」は、飽和炭化水素であるアルカンのラジカルである一価の基を指す。アルキルは、直鎖状、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであってもよく、典型的には、1~20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1~18個、1~12個、1~10個、1~8個、1~6個、又は1~4個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル(t-ブチル)、n-ペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、及びエチルヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0015】
用語「ヘテロアルキル」とは、ヘテロ原子を含有するアルキル基を意味する。これらのヘテロ原子はペンダント原子、例えばフッ素、塩素、臭素若しくはヨウ素などのハロゲンであってもよく、又は鎖状原子、例えば窒素、酸素若しくは硫黄などであってもよい。ヘテロアルキル基の例は、-CHCH(OCHCHOCHCHなどのポリオキシアルキル基である。
【0016】
用語「アルコキシ」は、一般構造-O-R(式中、Rはアルキル基である)を有する基を指す。用語「アリールオキシ」は、一般構造-O-R(式中、Rはアリール基である)を有する基を指す。場合によっては、用語アルコキシは、総称として使用されて、アルコキシ基とアリールオキシ基の両方を表す。
【0017】
用語「置換アルキル」は、炭化水素骨格上に置換基を含むアルキル基を指す。これらの置換基は、アルキル基、ヘテロアルキル基又はアリール基であってもよい。置換アルキル基の例は、ベンジル基である。
【0018】
用語「アルケニル」は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する炭化水素であるアルケンのラジカルである一価の基を指す。アルケニルは、直鎖状、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであってもよく、典型的には、2~20個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アルケニルは、2~18個、2~12個、2~10個、4~10個、4~8個、2~8個、2~6個、又は2~4個の炭素原子を含有する。例示的なアルケニル基としては、エテニル、n-プロペニル、及びn-ブテニルが挙げられる。
【0019】
用語「アリール」は、結合又は縮合していてもよい1~5個の環を含む基である芳香族炭素環基を意味する。アリール基は、アルキル基又はヘテロアルキル基で置換されていてもよい。アリール基の例としては、フェニル基、ナフタレン基、及びアントラセン基が挙げられる。「縮合芳香」環は、複数の化学結合によって1つ以上の他の環に結合された少なくとも1つの芳香環を含む環系を意味する。本開示では、縮合芳香環は、少なくとも1つの芳香環及び1つの複素環を含む。
【0020】
用語「複素環」は、その環系の中に又はそれに結合された、少なくとも1つのヘテロ原子を含む炭素環を指す。
【0021】
用語「ポリマー」及び「ポリマー材料」は、ホモポリマー等の1種のモノマーから調製された材料、又はコポリマー、ターポリマー等の2種以上のモノマーから調製された材料の両方を指す。同様に、用語「重合させる」は、ホモポリマー、コポリマー、及びターポリマー等であり得るポリマー材料を製造するプロセスを指す。「コポリマー」及び「コポリマー材料」という用語は、少なくとも2種のモノマーから調製されたポリマー材料を指す。
【0022】
用語「室温」及び「周囲温度」は、区別なく使用され、20℃~25℃の範囲の温度を意味する。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「ホットメルト加工可能な」は、例えば熱及び圧力によって、固体から粘性流体に変化することができる組成物を指す。この組成物は、実質的に化学的に変化することも、分解することも、又は意図された用途に使用不能になることもなく、ホットメルト加工可能でなければならない。
【0024】
別途断りがない限り、本明細書及び特許請求の範囲で用いる図形寸法、量、及び物理的特性を表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されていると理解するものとする。したがって、それとは反対の指示がない限り、記載されている数字は、本明細書に開示されている教示を使用した所望の特性に応じて変わり得る近似値である。
【0025】
本開示において有用な熱可塑性樹脂としては、ウェブに形成し帯電させたときに多量のトラップされた静電荷を保持することができる、任意の熱可塑性非導電性ポリマーが挙げられる。典型的には、そのような樹脂は、意図される用途の温度で1014Ω-cmを超えるDC(直流)抵抗率を有する。トラップされた電荷を捕捉することができるポリマーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリ-4-メチル-1-ペンテンなどのポリオレフィン;ポリ塩化ビニル;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリラクチドを含むポリエステル;並びに全フッ素化ポリマー及びコポリマーが挙げられる。特に有用な材料としては、ポリプロピレン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、これらのブレンド、又はプロピレン及び4-メチル-1-ペンテンのうちの少なくとも1つから形成されるコポリマーが挙げられる。
【0026】
好適な熱可塑性樹脂の例として、例えば、ポリプロピレン樹脂:Exxon-Mobil Corporation(Irving,TX)から市販されているESCORENE PP 3746G;Total Petrochemicals USA Inc.(Houston,TX)から市販されているTOTAL PP3960、TOTAL PP3860、及びTOTAL PP3868;並びにLyondellBasell Industries,Inc.(Rotterdam,Netherlands)から市販されているMETOCENE MF 650W;並びにMitsui Chemicals,Inc.(Tokyo,Japan)から市販されているポリ-4-メチル-1-ペンテン樹脂TPX-MX002が挙げられる。
【0027】
フェノレート塩は、エレクトレットウェブのための帯電強化剤として使用される。トリアジンフェノールは、紫外光吸収剤として知られ使用されているが、トリアジンフェノール塩の知名度は、はるかに低く、それを製造する元となるトリアジンフェノールに比べて、行われてきた研究は、はるかに少ない。
【0028】
本明細書において開示されている組成物の中でも、下記の式Iの構造を有する、置換トリアジンフェノレートアニオン及び金属カチオンである塩を含む組成物がある。
【化3】
[式中、R、R、及びRはそれぞれ独立して、水素原子、あるいはアルキル若しくは置換アルキル又はアリール若しくは置換アリール基を含む置換基を含み、Rは、ハロゲン原子、アルキル若しくは置換アルキル基、アルケニル基、アリール若しくは置換アリールを含む置換基、又は-O-R11、-N-R1112、-B(OR13)(OR14)、若しくは-SiR15 を含む基であり、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は1つ以上の酸素、窒素、硫黄、若しくはリン原子を含むヘテロ原子含有基を含み、R12は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は1つ以上の酸素、窒素、硫黄、若しくはリン原子を含むヘテロ原子含有基を含むか、あるいはR11及びR12は、結合している原子と共に複素環構造を形成し、各R13及びR14は、独立して、水素原子、アルキル基、アリール基であるか、又はR13及びR14は、結合している原子と共に複素環構造を形成し、各R15基はアルキル基であり、各R及びRは、独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、アリール基、置換アリール基、又はハロゲン原子を含み、nは、金属原子Mの価数であり、かつ塩のアニオン部分の化学量論数でもあり、1~4の整数であり、Mは、価数nの遷移金属原子又は主族金属原子を含む]。いくつかの実施形態では、n=1であり、Mは、リチウム、ナトリウム、又はカリウムを含む。値nはまた、塩のアニオン部分の化学量論も指す。Mの価数が1を超える場合、金属カチオンはn個のアニオン部分と錯体形成している。
【0029】
式Iの多くの実施形態において、R、R又はRのうちの少なくとも1つは、置換基、すなわち、水素原子以外の基を含む。多くの実施形態では、R、R及びRはそれぞれ、置換基を含む。いくつかの実施形態では、R、R及びRは置換されておらず、すなわち、R、R及びRはそれぞれ、水素原子を含む。いくつかの実施形態において、Rは、1~20個の炭素原子を含むアルコキシ、置換アルコキシ、又はアリールオキシを含み、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はハロゲン原子を含む。多くの実施形態では、R及びRは、同じであっても異なっていてもよい置換基を含み、アリール基又は置換アリール基を含む。
【0030】
一実施形態では、Rは、1~10個の炭素原子、いくつかの実施形態では、6個の炭素原子を有するアルコキシ基を含み、R、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子を含み、R及びRはそれぞれ独立して、アリール又は置換アリール基を含み、いくつかの実施形態では、R及びRのそれぞれはフェニル基を含む。別の実施形態では、Rは、1~12個の炭素原子を有する置換アルコキシ基を含み、いくつかの実施形態では、アルキルエステル置換アルコキシ基を含み、各R、R及びRは、独立して水素原子を含み、R及びRはそれぞれ独立して、アリール又は置換アリール基を含み、いくつかの実施形態では、R及びRのそれぞれはフェニル置換フェニル基を含む。
【0031】
式Iの塩のいくつかの実施形態では、R基は、フェノレートアニオンである置換基である。この第2のタイプの化合物の例は、下記式IIで表される:
【化4】
[式II中、各R、R、R、R、R、R、及びR10は独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はハロゲン原子を含み、R及びRは独立して、水素原子又は置換基を含み、R及びRのうちの少なくとも1つは、ハロゲン原子、アルキル若しくは置換アルキル基、アルケニル基、アリール若しくは置換アリールを含む置換基、又は-O-R11、-N-R1112、-B(OR13)(OR14)、若しくは-SiR15 を含む基であり、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は1つ以上の酸素、窒素、硫黄若しくはリン原子を含むヘテロ原子含有基を含み、R12は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は1つ以上の酸素、窒素、硫黄若しくはリン原子を含むヘテロ原子含有基を含むか、あるいはR11及びR12は、結合している原子と共に複素環構造を形成し、各R13及びR14は、独立して、水素原子、アルキル基、アリール基であるか、又はR13及びR14は、結合している原子と共に複素環構造を形成し、各R15基はアルキル基であり、m=0.5、1、又は2であり、m=0.5の場合にMがリチウム、ナトリウム又はカリウムであり、m=1の場合にMがカルシウム、マグネシウム又はコバルトであり、m=2の場合にMがバナジウム又はチタンとなるように、Mは、価数2mの遷移金属原子又は主族金属原子を含む]。
【0032】
いくつかの実施形態では、式IIの化合物は、独立して水素原子を含むR、R、R、R、R及びR10を有し、Rは置換アリール基を含み、各R及びRは、-O-R11(式中、R11は、1~8個の炭素原子を有するアルキル基を含む)を含む基を含む。特定の実施形態では、式IIの化合物は、独立して水素原子を含むR、R、R、R、R及びR10を有し、Rは、3-メトキシフェニルの置換アリール基を含み、各R及びRは、-O-R11を含む基を含み、式中、R11は、8個の炭素原子を有する分枝状アルキル基を含む。対応するビスフェノール化合物は、BASFからTINOSORB-Sとして市販されている。
【0033】
帯電強化添加剤又は添加剤の組み合わせは、任意の好適な量で添加することができる。本開示の帯電強化添加剤は、比較的少量であっても有効であることが示されている。典型的には、帯電強化添加剤又は添加剤の組み合わせは、熱可塑性樹脂と帯電強化添加剤(複数可)とのブレンド中に、ブレンドの総重量に基づいて、最大約10重量%、より典型的には0.02~5重量%の範囲の量で存在する。いくつかの実施形態では、帯電強化添加剤又は添加剤の組み合わせは、0.1~3重量%、0.1~2重量%、0.2~1.0重量%、又は0.25~0.5重量%の量で存在する。
【0034】
熱可塑性樹脂と帯電強化添加剤又は添加剤の組み合わせとのブレンドは、よく知られた方法によって調製することができる。典型的には、ブレンドは溶融押出技術を使用して加工されるため、バッチプロセスでブレンドを予めブレンドしてペレットを形成してもよく、又は連続プロセスにて押出機中で熱可塑性樹脂及び帯電強化添加剤(複数可)を混合してもよい。連続プロセスを使用する場合、熱可塑性樹脂及び帯電強化添加剤(複数可)は、固体として予備混合してもよく、又は押出機に別々に添加して溶融状態で混合させてもよい。
【0035】
予備ブレンドペレットを形成するために使用できる溶融混合機の例としては、分散混合、分配混合、又は分散混合と分配混合の組み合わせを提供するものが挙げられる。バッチ法の例としては、BRABENDER(例えば、C.W.Brabender Instruments,Inc.(South Hackensack,NJ)から市販されているBRABENDER PREP CENTER)又はBANBURY内部混合及びロールミリング装置(例えば、Farrel Co.(Ansonia,CT)から入手可能な装置)を使用するものが挙げられる。バッチ混合後、生成した混合物を直ちに急冷し、後で加工するために混合物の融解温度未満で保管してもよい。
【0036】
連続法の例としては、単軸押出、二軸押出、ディスク押出、プランジャー式(reciprocating)単軸押出及びピンバレル単軸押出が挙げられる。連続法は、キャビティトランスファーミキサー(例えば、RAPRA Technology,Ltd.(Shrewsbury,England)から市販されているCTM)及びピン混合要素、静的混合要素などの分配混合要素又は分散混合要素(例えば、MADDOCK混合要素又はSAXTON混合要素から市販されている)の両方の利用を含むことができる。
【0037】
バッチプロセスによって調製される予備ブレンドされたペレットを押し出すために使用できる押出機の例としては、連続加工について前述した装置と同じタイプが挙げられる。有用な押出条件は、一般的には、添加剤なしで樹脂を押し出すのに好適なものである。
【0038】
押し出された熱可塑性樹脂と帯電強化添加剤(複数可)とのブレンドは、流延又はコーティングしてフィルム若しくはシートにしてもよく、又は任意の好適な技術を使用して繊維ウェブに形成してもよい。フィルムは、例えば米国特許第6,524,488号(Insleyら)に記載されている方法によって、濾過材を含む様々な物品に加工することができる。繊維ウェブは、例えばメルトブローンマイクロファイバー、短繊維(staple fibers)、解繊フィルム(fibrillated film)、及びこれらの組み合わせを含む様々な繊維の種類から製造することができる。繊維ウェブを調製する技術としては、例えば、エアレイドプロセス、湿式プロセス、水流交絡、スパンボンドプロセス、メルトブローンプロセス、及びこれらの組み合わせが挙げられる。メルトブローン及びスパンボンドの不織マイクロファイバーウェブは、濾過材として特に有用である。
【0039】
メルトブローン及びスパンボンドの不織マイクロファイバーエレクトレットフィルタは、フィルタ付きマスクなどの人工呼吸器の空気フィルタ要素として、又は家庭用及び業務用空気調和装置、空気清浄機、真空掃除機、医療用送気管フィルタ、乗り物用並びにコンピュータ、コンピュータディスクドライブ及び電子機器などの一般的な機器用の空気調和システムなどの目的のために、特に有用である。いくつかの実施形態では、エレクトレットフィルタを人工呼吸器アセンブリと組み合わせて、人が使用するよう設計された人工呼吸装置を形成する。人工呼吸器の用途において、エレクトレットフィルタは、成形タイプ、プリーツタイプ若しくは折りたたみタイプの半面形の人工呼吸器、交換可能なカートリッジ若しくはキャニスター又はプレフィルタの形態であってもよい。
【0040】
本開示において有用なメルトブローンマイクロファイバーは、Van A.Wente、「Superfine Thermoplastic Fibers」、Industrial Engineering Chemistry,vol.48,pp.1342~1346及びThe Naval Research LaboratoriesのReport No.4364、1954年5月25日発行、標題「Manufacture of Super Fine Organic Fibers」(Van A.Wenteら)に記載されているように調製することができる。
【0041】
スパンボンドマイクロファイバーは、例えば、米国特許第4,340,563号及び同第8,162,153号、並びに米国特許出願公開第2008/0038976号に記載されているように、1種以上の連続ポリマーフリー繊維をコレクタ上に押し出すスパンボンドプロセスを用いて形成することができる。
【0042】
繊維エレクトレットフィルタに有用なメルトブローン及びスパンボンドマイクロファイバーは、Davies,C.N.、「The Separation of Airborne Dust and Particles」、Institution of Mechanical Engineers,London,Proceedings 1B,1952に記載の方法に従って算出される有効繊維径(effective fiber diameter、EFD)が、典型的には約1~100マイクロメートル、より典型的には2~30マイクロメートル、いくつかの実施形態では、約7~15マイクロメートルである。
【0043】
短繊維もまた、ウェブ中に存在し得る。一般的に、短繊維が存在することにより、吹き付けたマイクロファイバーだけのウェブよりも、ウェブはより厚くより密度の低いものとなる。一般的に、約90重量パーセント以下、より典型的には約70重量パーセント以下の短繊維が存在する。短繊維を含むウェブの例は、米国特許第4,118,531号(Hauser)に開示されている。
【0044】
活性炭又はアルミナなどの吸着粒子材料もまたウェブ中に含まれてもよい。そのような粒子は、ウェブの内容物の最大約80体積パーセントの量で存在し得る。粒子充填ウェブの例は、例えば、米国特許第3,971,373号(Braun)、米国特許第4,100,324号(Anderson)及び米国特許第4,429,001号(Kolpinら)に記載されている。
【0045】
例えば、顔料、光安定剤、一次及び二次酸化防止剤、金属不活化剤、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、脂肪酸金属塩、亜リン酸トリエステル、リン酸塩、フッ素含有化合物、核形成剤、並びにこれらの組み合わせを含む様々な任意選択の添加剤を、熱可塑性組成物とブレンドすることができる。加えて、酸化防止剤は場合によって、帯電強化添加剤としての機能も果たすことができる。帯電添加剤としては、トリアジン環中にある窒素原子に加えて少なくとも1個の窒素原子を含む、熱的に安定な有機トリアジン化合物又はオリゴマーが挙げられ、例えば、Rousseauらの米国特許第6,268,495号、同第5,976,208号、同第5,968,635号、同第5,919,847号、及び同第5,908,598号を参照されたい。エレクトレットを強化することが知られている別の添加剤は、「CHIMASSORB 944:(ポリ[[6-(1,1,3,3,-テトラメチルブチル)アミノ]-s-トリアジン-2,4-ジイル][[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]])(BASF(Ludwigshafen,Germany)から入手可能)である。帯電強化添加剤は、N-置換アミノ芳香族化合物、特に、トリアミノ置換化合物、例えば、2,4,6-トリアニリノ-p-(カルボ-2’-エチルヘキシル-1’-オキシ)-1,3,5-トリアジン(BASF(Ludwigshafen,Germany)から「UVINUL T-150」として市販されている)であってもよい。別の帯電添加剤は、トリステアリルメラミン(「TSM」)としても知られている、2,4,6-トリス-(オクタデシルアミノ)-トリアジンである。帯電強化添加剤の更なる例は、米国特許出願シリアル番号第61/058,029号、米国特許出願シリアル番号第61/058,041号、米国特許第7,390,351号(Leirら)、米国特許第5,057,710号(Nishiuraら)並びに米国特許第4,652,282号及び同第4,789,504号(Ohmoriら)に記載されている。
【0046】
更に、ウェブを処理してその表面を化学的に改変してもよい。表面フッ素化は、ポリマー物品をフッ素含有種及び不活性ガスを含む雰囲気中に置き、次いで放電させてポリマー物品表面の化学的性質を改変することによって達成することができる。放電は、ACコロナ放電などのプラズマの形態であってもよい。このプラズマフッ素化プロセスにより、ポリマー物品の表面上にフッ素原子が存在するようになる。プラズマフッ素化プロセスは、Jones/Lyonsらの多くの米国特許第6,397,458号、同第6,398,847号、同第6,409,806号、同第6,432,175号、同第6,562,112号、同第6,660,210号及び同第6,808,551号に記載されている。高いフッ素飽和比(fluorosaturation ratio)を有するエレクトレット物品は、Spartzらの米国特許第7,244,291号に記載されており、ヘテロ原子とともに低いフッ素飽和比を有するエレクトレット物品は、Kirkらの米国特許第7,244,292号に記載されている。フッ素化技術を開示している他の公報としては、米国特許第6,419,871号、同第6,238,466号、同第6,214,094号、同第6,213,122号、同第5,908,598号、同第4,557,945号、同第4,508,781号及び同第4,264,750号;米国特許出願公開第2003/0134515(A1)号及び同第2002/0174869(A1)号;並びに国際公開第01/07144号が挙げられる。
【0047】
本開示に従って調製されるエレクトレット濾過材は、一般的には、約10~500g/m、いくつかの実施形態では、約10~100g/mの範囲の坪量(単位面積当たりの質量)を有する。メルトブローンマイクロファイバーウェブの製造において、坪量は、例えばコレクタ速度又はダイ押出量のいずれかを変えることによって、制御することができる。濾過材の厚さは、典型的には約0.25~20ミリメートルであり、いくつかの実施形態では約0.5~2ミリメートルである。一般に、フィルタエレメントでは多層の繊維エレクトレットウェブが使用される。繊維エレクトレットウェブの固体度(solidity)は、典型的には約1%~25%、より典型的には約3%~10%である。固体度は、ウェブの固形分の割合を定める、単位のないパラメータである。一般的に、本開示の方法により、濾過材の坪量、厚さ、又は固体度に関係なく、エレクトレットウェブ全体にわたって概ね均一な電荷分布を有するエレクトレットウェブが提供される。エレクトレット濾過材及びそれを製造する元となる樹脂は、その電気伝導率を増大させ得るあらゆる不必要な処理、例えば、電離放射線、ガンマ線、紫外線照射、熱分解、酸化などへの曝露などに供してはならない。
【0048】
エレクトレットウェブは、それが形成されるときに帯電させてもよく、又はウェブは、ウェブが形成された後に帯電させてもよい。エレクトレット濾過材において、濾過材は一般にウェブを形成した後に帯電させる。一般に、当技術分野において既知の任意の標準的な帯電方法を使用することができる。例えば、帯電は、摩擦帯電、コロナ放電及びハイドロチャージングを含む様々な方法で実施することができる。方法の組み合わせもまた使用することができる。上述したように、いくつかの実施形態では、本開示のエレクトレットウェブは、追加の帯電方法を必要とせず、コロナ放電のみ、特にDCコロナ放電によって帯電することができるという望ましい特徴を有する。
【0049】
好適なコロナ放電プロセスの例は、米国特許再発行第30,782号(van Turnhout)、米国特許第再発行第31,285号(van Turnhout)、米国特許第再発行第32,171号(van Turnhout)、米国特許第4,215,682号(Davisら)、米国特許第4,375,718号(Wadsworthら)、米国特許第5,401,446号(Wadsworthら)、米国特許第4,588,537号(Klaaseら)、米国特許第4,592,815号(Nakao)、及び米国特許第6,365,088号(Knightら)に記載されている。
【0050】
エレクトレットウェブを帯電させるために使用することができる別の技術は、ハイドロチャージングである。ウェブのハイドロチャージングは、繊維に電荷を付与するのに十分な方法で繊維を水と接触させ、その後ウェブを乾燥させることによって実施される。ハイドロチャージングの一例は、ウェブに濾過促進エレクトレット電荷を供給するのに十分な圧力で、ウォータージェット又は水滴流をウェブに当て、次いで、ウェブを乾燥させることを要する。最適な結果を達成するために必要な圧力は、使用する噴霧器の種類、ウェブを形成する元となるポリマーの種類、ポリマーへ加える添加剤の種類及び濃度、ウェブの厚さ及び密度、並びにハイドロチャージングの前に行われるコロナ表面処理などの前処理の有無に応じて変わる。一般に、約10~500psi(69~3450kPa)の範囲の水圧が好適である。ウォータージェット又は水滴流は、任意の好適な噴霧装置によって提供することができる。有用な噴霧装置の一例は、繊維の水圧交絡に使用される装置である。ハイドロチャージングの好適な方法の例は、米国特許第5,496,507号(Angadjivandら)に記載されている。他の方法は、米国特許第6,824,718号(Eitzmanら)、米国特許第6,743,464号(Insleyら)、米国特許第6,454,986号(Eitzmanら)、米国特許第6,406,657号(Eitzmanら)、及び米国特許第6,375,886号(Angadjivandら)に記載されている。また、ウェブのハイドロチャージングは、米国特許第7,765,698号(Sebastianら)に開示されている方法を用いて実施してもよい。
【0051】
濾過性能を評価するために、様々な濾過試験プロトコールが開発されてきた。これらの試験は、ジオクチルフタレート(DOP)などの標準的な曝露用エアロゾルを使用してフィルタウェブのエアロゾル透過[これは、通常、フィルタウェブを透過するエアロゾルのパーセント(%Pen)で表される]を測定すること、及びフィルタウェブ全域での圧力低下(ΔP)を測定することを含む。これらの2つの測定から、品質係数(Quality Factor)(QF)として知られている量を、以下の式によって算出することができる:
QF=-ln(%Pen/100)/ΔP
(式中、lnは自然対数を表す)。高いQF値は、より良好な濾過性能を示し、QF値の低下は、濾過性能の低下と完全に相関している。これらの値の測定についての詳細は、実施例の項で示す。典型的には、本開示の濾過材は、6.9センチメートル/秒の面速度で0.3(mmHO)-1以上の測定QF値を有する。
【0052】
特定の濾過材が実際に静電気を帯電していることを確認するために、電離X線放射線への曝露前後にその性能を調べてもよい。文献、例えば、Air Filtration(Pergamon Press,1993)、R.C.BROWN、及び「Application of Cavity Theory to the Discharge of Electrostatic Dust Filters by X-Rays」、A.J.WAKER及びR.C.BROWN、Applied Radiation and Isotopes,Vol.39,No.7,pp.677~684,1988に記載されているように、静電気を帯電しているフィルタをX線に曝露した場合、繊維間の気孔中でX線により生成されるイオンが電荷の一部を中和するので、フィルタを透過するエアロゾルは曝露前よりも曝露後の方が多くなる。したがって、一定のレベルまで堅調に増加し、その後は更に照射しても変化しない、累積X線曝露に対する透過のプロットを得ることができる。この時点で、全ての電荷がフィルタから除去されている。
【0053】
これらの観察結果により、濾過性能を特徴付ける別の試験プロトコールであるX線放電試験を採用することとした。この試験プロトコールでは、試験用に選択した濾過材片をX線放射線に曝して、エレクトレットウェブを放電させる。この試験の1つの特質は、ウェブがエレクトレットであることを裏付けることである。X線がエレクトレットの電荷を消失させることが知られているので、濾過材をX線に曝露し、この曝露前後でフィルタ性能を測定し、フィルタ性能を比較することにより、この濾過材がエレクトレットであるかどうかが分かる。X線放射線に曝露した後にフィルタ性能が変化しなければ、これは、消失した電荷がなかったこと及びこの材料がエレクトレットではないことを示す。しかしながら、X線放射線曝露後にフィルタ性能が低下したら、これは、この濾過材がエレクトレットであることを示す。
【0054】
米国特許第8,790,449号に詳細に記載されているように、試験を行う場合、典型的には、濾過材のX線放射線への曝露前後に濾過性能を評価する。透過率%は、以下の式に従って算出することができる:下記の実施例の項に記載している濾過性能試験方法に従って試験した場合、透過率%=(ln(初期DOP透過%/100)/(ln(60分間のX線曝露後のDOP透過%/100)))×100。ウェブがフィルタとして使用するのに十分な電荷を有するためには、透過率%は、典型的には少なくとも300%である。透過率%が増加するに従って、ウェブの濾過性能も増加する。いくつかの実施形態では、透過率%は、少なくとも400%、500%、又は600%である。好ましい実施形態では、透過率%は、少なくとも750%又は800%である。いくつかの実施形態では、ウェブは、少なくとも1000%、又は少なくとも1250%の透過率%を示す。
【0055】
下記の実施例の項に記載している濾過性能試験方法に従って試験した場合、6.9cm/sの面速度での初期品質係数(X線への曝露前)は、典型的には少なくとも0.3(mmHO)-1、より典型的には少なくとも0.4、又は更には0.5(mmHO)-1である。いくつかの実施形態では、初期品質係数は、少なくとも0.6又は0.7(mmHO)-1である。他の実施形態では、初期品質係数は、少なくとも0.8、少なくとも0.90、少なくとも1.0(mmHO)-1であり、又は更には1.0(mmHO)-1を超える。60分間のX線曝露後の品質係数は、典型的には、初期品質係数の50%未満である。いくつかの実施形態では、初期品質係数は、少なくとも0.5(mmHO)-1以上であり、60分間のX線曝露後の品質係数は、0.15(mmHO)-1未満である。
【実施例
【0056】
これらの実施例は、単に例示目的のものであり、添付の特許請求の範囲の限定を意図するものではない。本明細書の実施例及び他の箇所における全ての部、百分率、比などは、特に断りのない限り、重量に基づくものである。
【0057】
溶媒はEMD(OmniSolvグレード)であり、更に精製することなく使用した。分離、単離、クロマトグラフィー、及び他の一般的用途に使用した溶媒は、EMD(Omnisolvグレード)から入手した。
【0058】
以下の略語:hr=時間、g=グラム、m=メートル、cm=センチメートル、mm=ミリメートル、in=インチ、mg=ミリグラム、RBF=丸底フラスコ、及びlb=ポンドを、実施例全体を通して使用する。
【0059】
開示されているフェノール化合物の構造式
下記の表は、フェノレート塩を調製するために本出願で使用したフェノール化合物に関する構造式の概要を示す。フェノールは、市販されているか、又は下記の合成例に記載の方法によって調製することができる。
【表1】
【0060】
フェノレート塩の一般的合成
上述のフェノールを用いて、下記の経路を使用してフェノレート塩を調製した。調製した塩の金属カチオンのリストによって、形成したフェノレート塩を下記の表1にまとめている。
【0061】
磁気撹拌子、冷却器及び滴下漏斗を備えた二口RBF中、フェノール性出発物質を10~40重量%でTHFに添加した。溶液を撹拌し、窒素下でフェノール性出発物質の全てが溶解するまで加熱還流した。窒素下で、滴下漏斗からRBFに化学量論量の金属アルコキシド原液を滴下添加した。溶液を1~36時間還流した。減圧して溶液をストリッピングし、回収した粉末を真空乾燥した。
【0062】
材料
以下は、使用した市販の材料及び試薬の表である。
【表2】
【0063】
以下は、フェノレート塩を調製するために使用した市販の材料及び試薬の表である。
【表3】
【0064】
エレクトレットウェブ及びエレクトレットフィルムの調製
ポリマー樹脂又はフェノレート塩を有するポリマー樹脂を配合することによって、不織形態の一連のエレクトレット物品を調製した。
【表4】
【0065】
実施例1~12及び比較例CE1~CE9:エレクトレットウェブ
一連の不織ウェブを調製し、帯電させ、試験した。調製したウェブを表3にまとめている。表3において、フェノレート塩は、フェノールと金属カチオンで表されており、例えばフェノール-1のナトリウム塩は、表中でフェノール1-Naと表されている。樹脂単独で、又は樹脂をフェノール添加剤とともに、若しくはフェノレート塩を用いずに他の添加剤とともに用いて、比較例のウェブも調製した。比較例のウェブはCEという記述語で表す。
【0066】
不織サンプルの調製
工程A:マイクロファイバー不織ウェブの調製
プロセスA:
各実施例で、上記帯電添加剤のうちの1つを選択し、表3に示す濃度でポリプロピレンと乾式ブレンドし、そのブレンドを、Van A.Wente、「Superfine Thermoplastic Fibers」、Industrial Engineering Chemistry,vol.48,pp.1342~1346に記載されているとおりに押し出した。押出温度は、約250℃~300℃の範囲であり、押出機は、約2.5~3kg/hr(5~7lb/hr)の速度で動作するBRABENDERコニカル二軸押出機(Brabender Instruments,Inc.から市販されている)であった。ダイの幅は25.4cm(10インチ)であり、1cm当たりの孔数10ホール(1インチ当たりの孔数25ホール)であった。約50~60g/mの坪量、約6.5~9.5マイクロメートルの有効繊維径、及び約0.75~2ミリメートルの厚さを有するメルトブローンウェブを形成した。
【0067】
工程B-エレクトレットの調製:
調製した各メルトブローンウェブを、コロナ帯電、コロナ前処理及びハイドロチャージングという3つのエレクトレット帯電方法のうちの1つ、又はハイドロチャージングによって帯電させた。表4は、各サンプルに適用された特定の帯電方法をまとめたものである。
【0068】
帯電方法1-コロナ帯電:
上記で調製した選択されたメルトブローンウェブ又はフィルムを、DCコロナ放電によって帯電させた。接地表面上のウェブに、放電源の長さ1センチメートル当たり約0.01ミリアンペアのコロナ電流でコロナブラシ電源(corona brush source)の下を約3センチメートル/秒の速度で通過させることによって、コロナ帯電を実現した。コロナ電源は、ウェブを載せた接地表面の約3.5センチメートル上に位置していた。コロナ電源は、正のDC電圧によって駆動した。
【0069】
帯電方法2-コロナ前処理及びハイドロチャージング:
上記の工程Aで調製した選択されたメルトブローンウェブを、帯電方法1に記載のDCコロナ放電によって前処理し、次いで、帯電方法3に記載のハイドロチャージングによって帯電させた。
【0070】
帯電方法3-ハイドロチャージング:
5μS/cm未満の導電性を有する高純度水の微細スプレーを、896キロパスカル(130psig)の圧力及び約1.4リットル/分の流速で動作するノズルから連続的に発生させた。工程Aで調製した選択されたメルトブローンウェブを、多孔質ベルトによって運び、約10センチメートル/秒の速度で水噴霧の中を通過させ、その間、同時に、ウェブを通して水を下方から減圧吸引した。各メルトブローンウェブをハイドロチャージャーに2回通し(各面に順次1回ずつ)、次いで、フィルタ試験の前に終夜完全に乾燥させた。
【0071】
同様に、各比較例では、対応する実施例のウェブと同じグレードのポリプロピレンからメルトブローンウェブを調製したが、帯電添加剤は添加しなかった。表3は、各実施例について特定のウェブの特徴をまとめたものである。
【0072】
濾過性能試験方法、不織メルトブローンマイクロファイバーウェブ
DOPエアロゾル透過率%(%Pen)及び圧力低下(ΔP)についてサンプルを試験し、これらの2つの値から品質係数(QF)を算出した。自動フィルタ試験機AFTモデル8127(TSI,Inc.(St.Paul,MN)から入手可能)を使用して、曝露用エアロゾルとしてのジオクチルフタレート(DOP)、及びフィルタ全域の圧力低下(ΔP(mmHO))を測定するMKS圧力変換器を使用して、不織マイクロファイバーウェブの濾過性能(%Pen及びQF)を評価した。DOPエアロゾルは、公称で、50~200mg/mの上流濃度及び100mg/mの目標値を有する、単分散の0.33マイクロメートル質量中央径(MMD)であった。プロセスAにより製造されたウェブでは42.5リットル/分(面速度6.9cm/s)、又はプロセスBにより製造されたウェブでは85リットル/分(面速度13.8cm/s)のいずれかの較正された流速で、濾過材サンプルにエアロゾルを通過させた。エアロゾルイオン化装置の電源は、これらの試験で切っておいた。総試験時間は、23秒であった(立ち上がり時間15秒、サンプル時間4秒、及びパージ時間4秒)。較正した光度計を使用して、濾過材の上流と下流の両方で、光散乱によりDOPエアロゾルの濃度を測定した。DOP %Penは、以下のように定義する:%Pen=100×(DOP濃度下流/DOP濃度上流)。各材料について、メルトブローンウェブ上の異なる箇所で6回の別個の測定を行い、結果を平均した。
【0073】
%Pen及びΔPを使用して、以下の式によってQFを算出した:
QF=-ln(%Pen/100)/ΔP
(式中、lnは自然対数を表す)。高いQF値は、より良好な濾過性能を示し、QF値の低下は、濾過性能の低下と完全に相関している。プロセスBにより形成したウェブでは、2層積層物としてウェブを試験した。
【0074】
性能データを表4にまとめる。
【表5】
【表6】
本発明は以下の態様を包含する。
(項目1)
熱可塑性樹脂と、
少なくとも1種の置換トリアジンフェノレート塩を含む帯電強化添加剤と、
を含む、エレクトレットウェブ。
(項目2)
前記ウェブが不織繊維ウェブを含む、項目1に記載のエレクトレットウェブ。
(項目3)
前記ウェブがフィルムを含む、項目1に記載のエレクトレットウェブ。
(項目4)
前記帯電強化添加剤が、下記の構造:
【化5】
[式中、R 、R 、及びR はそれぞれ独立して、水素原子、あるいはアルキル若しくは置換アルキル又はアリール若しくは置換アリール基を含む置換基を含み、
は、ハロゲン原子、アルキル若しくは置換アルキル基、アルケニル基、アリール若しくは置換アリールを含む置換基、又は-O-R 11 、-N-R 11 12 、-B(OR 13 )(OR 14 )、若しくは-SiR 15 を含む基であり、R 11 は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は1つ以上の酸素、窒素、硫黄、若しくはリン原子を含むヘテロ原子含有基を含み、R 12 は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は1つ以上の酸素、窒素、硫黄、若しくはリン原子を含むヘテロ原子含有基を含むか、あるいはR 11 及びR 12 は、それらを結合している原子と共に複素環構造を形成し、
各R 13 及びR 14 は、独立して、水素原子、アルキル基、アリール基であるか、又はR 13 及びR 14 は、結合している原子と共に複素環構造を形成し、
各R 15 はアルキル基であり、
各R 及びR は、独立して、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、アリール基、置換アリール基、又はハロゲン原子を含み、
nは、1~4の整数であり、
Mは、価数nの遷移金属原子又は主族金属原子を含む]
を有する置換トリアジンフェノレートアニオン及び金属カチオンを含む、項目1に記載のエレクトレットウェブ。
(項目5)
n=1であり、Mは、リチウム、ナトリウム、又はカリウムを含む、項目4に記載のエレクトレットウェブ。
(項目6)
n=2であり、Mは、カルシウム、マグネシウム、又はコバルトを含む、項目4に記
載のエレクトレットウェブ。
(項目7)
が、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基を含み、各R 及びR が、独立してアリール基又は置換アリール基を含む、項目4に記載のエレクトレットウェブ。
(項目8)
が、1~10個の炭素原子を有するアルコキシ基を含み、各R 及びR が、独立してフェニル基を含む、項目4に記載のエレクトレットウェブ。
(項目9)
が、1~20個の炭素原子を有する置換アルコキシ基を含み、各R 及びR が、独立して置換アリール基を含む、項目4に記載のエレクトレットウェブ。
(項目10)
が、エステル置換アルコキシ基を含む、1~12個の炭素原子を有する置換アルコキシ基を含み、各R 及びR が、独立してフェニル置換フェニル基を含む、項目4に記載のエレクトレットウェブ。
(項目11)
前記帯電強化添加剤が、下記の構造:
【化6】
[式中、各R 、R 、R 、R 、R 、R 、及びR 10 は独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はハロゲン原子を含み、
及びR は独立して、水素原子又は置換基を含み、R 及びR のうちの少なくとも1つは、ハロゲン原子、アルキル若しくは置換アルキル基、アルケニル基、アリール若しくは置換アリールを含む置換基、又は-O-R 11 、-N-R 11 12 、-B(OR 13 )(OR 14 )、若しくは-SiR 15 を含む基であり、R 11 は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は1つ以上の酸素、窒素、硫黄若しくはリン原子を含むヘテロ原子含有基を含み、R 12 は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又は1つ以上の酸素、窒素、硫黄、若しくはリン原子を含むヘテロ原子含有基を含むか、あるいはR 11 及びR 12 は、結合している原子と共に複素環構造を形成し、
各R 13 及びR 14 は、独立して、水素原子、アルキル基、アリール基であるか、又はR 13 及びR 14 は、結合している原子と共に複素環構造を形成し、
各R 15 基はアルキル基であり、
m=0.5、1、又は2であり、
Mは、価数2mの遷移金属原子又は主族金属原子を含む]
を有する置換トリアジンフェノレートアニオン及び金属カチオンを含む、項目1に記載のエレクトレットウェブ。
(項目12)
m=0.5であり、Mが、リチウム、ナトリウム、又はカリウムである、項目11に記載のエレクトレットウェブ。
(項目13)
m=1であり、Mが、カルシウム、マグネシウム、又はコバルトである、項目11に記載のエレクトレットウェブ。
(項目14)
m=2であり、Mが、バナジウム又はチタンである、項目11に記載のエレクトレットウェブ。
(項目15)
及びR がそれぞれ、1~20個の炭素原子を有するアルコキシ基を含む、項目11に記載のエレクトレットウェブ。
(項目16)
各R 、R 、R 、R 、R 、及びR 10 が水素原子を含み、R 及びR がそれぞれ-O-R 11 基を含み、R 11 が8個の炭素原子を有するアルキル基を含み、R が3-メトキシフェニル基を含む、項目11に記載のエレクトレットウェブ。
(項目17)
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、又はポリエステルを含む、項目1に記載のエレクトレットウェブ。
(項目18)
前記帯電強化添加剤が、前記ウェブの0.01~5.0重量%を構成する、項目1に記載のエレクトレットウェブ。
(項目19)
前記ウェブが静電荷を持ち、前記電荷が、コロナ処理、ハイドロチャージング、又はこれらの組み合わせによって付与される、項目1に記載のエレクトレットウェブ。
(項目20)
前記ウェブが静電荷を持ち、前記電荷が、コロナ処理によって付与される、項目1に記載のエレクトレットウェブ。
(項目21)
前記ウェブが、顔料、光安定剤、一次及び二次酸化防止剤、金属不活化剤、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、脂肪酸金属塩、亜リン酸トリエステル、リン酸塩、フッ素含有化合物、核形成剤、並びにこれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の追加の添加剤を更に含む、項目1に記載のエレクトレットウェブ。
(項目22)
エレクトレット濾過材を含む、項目1に記載のエレクトレットウェブ。
(項目23)
X線放電試験に従って試験した場合、前記濾過材が、6.9センチメートル/秒の面速度で少なくとも300%の透過率%を有する、項目22に記載のエレクトレット濾過材。
(項目24)
X線放電試験に従って試験した場合、前記濾過材が、6.9センチメートル/秒の面速度で少なくとも0.3(mmのH O) -1 の初期品質係数を有し、60分間のX線曝露後は、前記初期品質係数の50%未満の品質係数を有する、項目22に記載のエレクトレット濾過材。
(項目25)
前記濾過材が、71℃で72時間のエージング後に、品質係数により測定される濾過性
能を少なくとも85%保持する、項目22に記載のエレクトレット濾過材。