(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-20
(45)【発行日】2022-05-30
(54)【発明の名称】アルコール飲料の脱アルコールのための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C12H 3/02 20190101AFI20220523BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20220523BHJP
B01D 3/10 20060101ALI20220523BHJP
【FI】
C12H3/02
A23L2/00 H
B01D3/10
(21)【出願番号】P 2019548773
(86)(22)【出願日】2017-11-29
(86)【国際出願番号】 FI2017050844
(87)【国際公開番号】W WO2018100247
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-25
(32)【優先日】2016-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】519192728
【氏名又は名称】ワインミル オーワイ
【氏名又は名称原語表記】WINEMILL OY
【住所又は居所原語表記】Karppitie 6, 01490 VANTAA, Finland
(73)【特許権者】
【識別番号】519192739
【氏名又は名称】ガウフィン サミ
【氏名又は名称原語表記】GAUFFIN, Sami
【住所又は居所原語表記】Karppitie 6, 01490 VANTAA, Finland
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】ガウフィン サミ
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0243922(US,A1)
【文献】特開2008-062178(JP,A)
【文献】特開平07-060002(JP,A)
【文献】実開昭58-156502(JP,U)
【文献】英国特許出願公開第2084607(GB,A)
【文献】仏国特許出願公開第2863625(FR,A1)
【文献】国際公開第2015/114673(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00
B01D 3/00-42
C12H 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール飲料のアルコール分を除去する装置(100、200)であって、
前記アルコール飲料を収容する手段を含む第1容器(102、202)と、
液体を収容する手段を含む第2容器(104、204)と、
前記第1容器から、前記アルコール飲料を受けるように調整される第3容器(106、206)とを備え、
前記第3容器
(106、206)は前記第2容器(104、204)に更に連結され、
内部の圧力を低下させるために、少なくとも前記第3容器(106、206)と少なくとも機能的に通じる真空(211b)を発生させるための手段と、
少なくとも部分的に前記第2容器(104、204)内部にある分留手段(205)とを備え、
前記分留手段(205)は、前記第2容器(104、204)及び前記第3容器(106、206)に機能的に連結しており、
前記装置(100、200)は前記アルコール飲料のための真空蒸留を促進するために、前記第2容器(104、204)及び、前記分留手段(205)を介して前記第3容器(106、206)に真空を作るように調整され、
前記アルコール飲料から蒸発するエタノールは、前記分留手段(205)を介して前記第2容器(104、204)に送られ、前記第2容器(104、204)の液体に溶解することを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記第1容器(102、202)
の内部又はその一部として、前記第3容器(106、206)
を有することを特徴とする、請求項1記載の装置(100、200)。
【請求項3】
前記第3容器(106、206)は、前記第1容器(102、202)とは別の容器であることを特徴とする、請求項1記載の装置(100、200)。
【請求項4】
前記分留手段(205)は分留塔を備えることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記分留手段
(205)は、その上部にキャップ部分を有する開いた分留塔の構成を備え、
前記キャップ部分は、エタノール蒸気のために凝縮面を提供することを特徴をする
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置(100、200)は、前記分留手段(205)の前、又は前記分留手段(205)で、
前記真空蒸留
の状態が作られたときに発生する第1の蒸気を収集するための手段を備えることを特徴とする、請求項1
、3乃至5のいずれか一項に記載の装置(100、200)。
【請求項7】
前記第1の蒸気は、前記第1容器(102、202)に導かれ、
前記第1の蒸気は、前記第1容器(102、202)にある液体と混合されることを特徴とする、請求項
6記載の装置(100、200)。
【請求項8】
前記第1の蒸気は、微細気泡ディフューザといったディフューザを介して、前記第1容器(102、202)に導かれることを特徴とする、請求項6記載の装置(100、200)。
【請求項9】
前記アルコール飲料を加熱する
加熱手段を備えることを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記加熱手段は、前記第3容器の内容物を加熱するために、前記第3容器に位置することを特徴とする、請求項
9記載の装置。
【請求項11】
前記第2容器及び/又はその内部にある液体を冷却する手段を備えることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
アルコール飲料のアルコール分を除去する方法であって、
第1容器にアルコール飲料を収容するステップ(304)と、
第2容器に液体を収容するステップ(310)と、
前記
液体が実質的にノンアルコールかどうか判定するステップ(312)と、
前記アルコール飲料
からエタノール蒸気を取り出すた
めに真空蒸留を促進する所定の低圧力及び所定の温度条件
に設定
し、所定の時間、維持するステップ
(314)と、
分留手段
(205)を介し
て前記エタノール蒸気を
前記第2容器へ導く
と共に前記分留手段(205)を介して流れる前記エタノール蒸気を冷却するステップ(316)と、を含む方法。
【請求項13】
前記アルコール飲料のアルコール含有量(ABV)を判定すること(306)を備えることを特徴とする、請求項
12記載の方法。
【請求項14】
前記ステップ(314)
において維持する所定の時間は、
前記アルコール飲料の目標アルコール含有量(ABV)に応じた時間
であることを特徴とする、請求項
12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記真空蒸留は、前記第3容器で実施されることを特徴とする、請求項
12乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、アルコール飲料の脱アルコールに関する。本発明は具体的には、しかし排他的ではないが、家庭やレストランにある飲料(例えばワイン)からアルコールを慎重に除去する装置及び方法に関係する。
【背景技術】
【0002】
ワインは、少なくとも新石器時代から生産及び消費されてきた、高く評価されている生産物である。今日でもワインは非常にたくさん消費されており、製造は厳しく規制されている。さらに、ワイン造りで最も長いルーツ(歴史)を有する国では特に、ワインがどのように生産及び消費されるかの決定において、伝統がおそらく大きな役割を果たしさえする。
【0003】
気候変動により、ワインのアルコール含有量(ABV)は、少なくとも世界の一部地域において、この20~30年の間に10年ごとに約1.5%ペースで着実に上昇している。
ABVにおけるこの上昇は直接的には、暖かい気候でブドウが生育され、実の糖度(ワインのABVに直接影響)が上昇した結果である。
同時に、ワイン造りの規制及び伝統が、ワインのABV上昇による問題の解決を難しくしている。なぜならワイン造りでは、脱アルコール手段を利用すべきでない。というのは、脱アルコール手段は、味覚や、色、香りといったワインの特質に影響を与えるからである。
【0004】
また多くの場合、ワインのエタノール含有量は、ワインの特質を高めるための副産物又は触媒である。よってエタノール自体が望まれてでいるものではない。逆に、高いABVのワインを多量に摂取すると、ワイン中に存在する多量のエタノールを急速に摂取することとなり、健康に関して大きなデメリットとなることが多い。消費者は、官能的で、健康にも役立つワインの特性を享受したいと望んでいるが、上昇したアルコール含有量を考慮すれば、摂取を制限しなければならない。
【0005】
多くの脱アルコールプロセスが、従来技術より公知である。まず、飲料製造プロセスの前及び/又はプロセス中に用いることができる、発酵前及び発酵(中の)生物学的プロセス及び発酵停止技術が存在する。次に、生成された飲料からアルコールを除去する方法が存在する。そして、この方法が本発明に関連する。
この方法は、従来技術により概念的には周知であるが、そのいくつかの実施例によると、有機溶剤又は超臨界溶媒を使用した、(樹脂、シリカゲル、又は沸石上の)吸着膜濾過、蒸留技術、スピニングコーンカラム、凍結濃縮、蒸発、及び抽出等がある。
【0006】
しかし、提示された脱アルコール技術の多くは、大型の運用に関連し、通常は大型産業又は研究室グレードの生産設備内で行われる。よってこれらの方法は、アルコール飲料の最終消費者である通常の消費者、レストラン、及びバーでは管理できない。更に、多くの国の現行法では、厳しい規則がアルコール生産及び取扱いに課されている。そして実際のところ、脱アルコールは前述の飲料生産者の手に委ねられるのみである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施例の目的は、アルコール飲料のアルコールを除去する装置及び方法と特に関連した、従来装置において明らかな、上述した欠点の内1つ以上を少なくとも低減することである。この目的は、請求項による装置及び方法によりほとんど達成される。
【0008】
本発明の技術的課題は、家庭及びレストランにあるアルコール飲料のアルコール分を適宜除去する方法であり、アルコール飲料から取り除いたエタノールを液体(流体)に希釈させ、エタノールの蒸留物を製造したり取り出したりできないようにする。
本発明のさらなる焦点は、アルコール飲料の特色に(例えば火を通したり、凍らせることによって)影響を及ぼさないように、できるだけ穏やかにアルコール飲料からエタノールを除去するように、脱アルコール化を実施することである。周知のように、ワイン及びビールを長時間加熱すると、その味や特色が変化する。
【0009】
純エタノールを装置から出さないということは、2つの重要な機能となる。この装置で強いアルコール、特に蒸留で取り出したエタノールを生産することはない。そして、可燃性かつ刺激反応性の気体エタノールを機械から周囲空気へ出すことはない。気体エタノールは、極めて可燃性が高いので危険であり、さらにその刺激的な臭いは不都合でもある。従って、気体又は液体状態のエタノールを装置から出さないことは、装置を実際に使用する際に重要である。更に本発明においては、冷却液を利用して真空(減圧)を作り出し、蒸留で取り出したエタノールを前記冷却液に溶け込ませる。その結果、エタノール蒸気はポンプへ進むことができず、また、装置の外に出ることもない。
【0010】
本発明の主要な利点は、家庭環境において、さまざまな既製のアルコール飲料の脱アルコールに対して使用できるという点にある。
【0011】
本発明の他の主要な利点は、純粋なエタノールの蒸留物を最終的に生じることなく、代わりにエタノール蒸気をそのまま凝縮させ、液体に溶け込ませる。本発明を用いると、使用者は蒸留生産物を生産し、それを摂取することができないので、これは、家庭で使用する際には極めて重要である。更に前述の方法は、装置の部品の相互関係及び調整によって本質的に成し遂げられる。従って、蒸留で取り出したエタノールを収集するためのフィルタや容器を必要としない。
【0012】
さらに本発明のもう1つの利点は、とりわけ、ワインの味、芳香、及びこういった特質に対する影響が最小限であるワインの脱アルコールを可能にするということである。脱アルコールの方法によると、ワインに処理を施すのに最も適した条件を利用するよう最適化される。もっとも、例えばビールや、他のアルコール度数の高いお酒といった類似の飲料からもアルコール分を除去することもできる。
【0013】
本発明の一態様によると、アルコール飲料のアルコール分を除去する装置は、以下を備える。
アルコール飲料を収容する手段を含む第1容器。
液体を収容する手段を含む第2容器。
第1容器から、アルコール飲料を受けるように配された第3容器。前記第3容器は更に、第2容器に連結される。
内部の圧力を低下させるために、少なくとも第3容器と少なくとも機能的に接続された、真空を生成する手段。
少なくとも部分的に第2容器内部にある分留手段。この分留手段は、機能的に第2容器及び第3容器に連結される。
前記装置は、
アルコール飲料のための、真空(減圧)蒸留を促進するよう構成され、第2容器及び、分留手段を介して第3容器で真空を生成し、アルコール飲料から蒸発するエタノールは、分留手段を介して第2容器へと送られ、蒸発したエタノールが第2容器にある液体に溶解される。
【0014】
本発明の例示的な実施形態によれば、アルコール飲料はワインである。
【0015】
本発明の例示的な実施形態によれば、第1容器は、第3容器を備える又は構成する。他の例示的な実施形態によれば、第3容器は、第1容器とは別の容器である。
【0016】
本発明の例示的な実施形態によれば、分留手段は、分留塔(カラム)を備える。
さらに第2容器内の液体を、蒸気を液体に、更に液体自体に凝縮させるため、カラム(塔)の蒸気を冷却するため、分留手段と相互に作用させて用いてもよい。
本発明の他の例示的な実施形態によれば、分留手段は、上部にキャップ部分を有する、開放された分留塔が配置され、キャップ部分はエタノール蒸気のための凝縮面を提供する。
【0017】
本発明の例示的な実施形態によれば、本装置は、分留手段の前又は分留手段において、真空蒸留の第1の蒸気を収集する手段を備える。前記第1の蒸気は、第1容器に導いてもよく、第1容器内部の液体と混合される。この第1の蒸気は、ディフューザ(例えば、マイクロバブルディフューザ(拡散器))を介して、第1容器に導いてもよい。
【0018】
本発明の例示的な実施形態によれば、装置は、アルコール飲料を加熱する手段を備える。加熱手段は好適には、内部の内容物を加熱するために、第3容器に位置してもよい。
【0019】
本発明の例示的な実施形態によれば、装置は、第2容器及び/又はその中の液体を冷却する手段を備える。この手段は、より効率的に分留手段を冷却することによって、分留手段における凝縮をより効率的に行うために使用することができる。冷却液の量及び温度は、分留手段の凝縮における、好適な効率の観点から制御されるよう設定してもよい。
【0020】
本発明の例示的な実施形態によれば、分留手段は2段階の機構を備える。第1段階では、第2容器とは別の容器に、真空蒸留の第1の蒸気(蒸発物)を送る。そして第2段階では、第2容器にエタノール蒸気を導く。
本発明の例示的な実施形態によれば、分留手段は、2段階のバルブ機構又は導管配置を備える。第1段階では、アルコール飲料を真空蒸留して得た第1の蒸気を第1容器へ送る。そして第2段階では、第2容器にエタノール蒸気を導く。
弁の作動は、タイミング(時間的)又は目標圧力に関連しており、すなわちタイマーを用いて行うか、真空ポンプで誘発される圧力変化に関連して行ってもよい。
従って第1の蒸気、例えば、アルコール飲料処理の初期の約10~20秒に生じる第1の揮発性エステル類を、第1容器に導くことができる。
【0021】
本発明の例示的な実施形態によれば、脱アルコール化されたアルコール飲料は、脱アルコール完了後に第3容器から第1容器へ移してもよい。
上記は特に、一部のアルコール分が除去されたアルコール飲料と、未処理のアルコール飲料とを混合するために利用され得る。またさらに、アルコール分が除去されたアルコール飲料及び/又はその混合液を冷却するために用いることができる。
【0022】
本発明の例示的な実施形態によれば、アルコール分が除去されたアルコール飲料が第3容器から第1容器へ移動させられた後、エタノール溶液の混合液は第2容器から第3容器へと送られ、装置から取り出される。
第3容器を洗浄するためにこの方法を利用してもよい。さらにまた、装置を清潔にするために、装置の導管、弁、及び容器の全体にエタノール溶液の混合液を送ることもできる。
【0023】
本発明の一態様によると、アルコール飲料からアルコール分を除去する方法は、以下のステップを含む。
第1容器にアルコール飲料を収容するステップ。
第2容器に液体を収容するステップ。
液体が実質的にノンアルコールか判定するステップ。
低圧力(減圧)下かつ真空蒸留を促進するのに適した温度条件下にアルコール飲料をセットするステップ。
前記圧力及び温度条件を、アルコール飲料からエタノール蒸気を取り出すための時間、維持するステップ。
分留手段を介して前記第2容器へ、生じたエタノール蒸気を導くステップ。
留出液を作り出すために分留手段を介して流れているエタノール蒸気を冷却するステップ。
分留手段から第2容器の液体へ前記留出液を導くステップ。
【0024】
本発明の例示的な実施形態によれば方法は、処理前のアルコール飲料のアルコール含有量(ABV)を判定する方法の項目を備える。
【0025】
本発明の例示的な実施形態による方法は、圧力及び温度条件を、アルコール飲料の目標アルコール含有量(ABV)に関連させた時間、維持する方法の項目を備える。
【0026】
本発明の例示的な実施形態によれば、真空蒸留は、第3容器で行われる。
【0027】
本発明の例示的な実施形態によれば、圧力及び温度の目標値は、エタノール水溶液の真空蒸留を発生させるものであり、エタノールは49℃未満の温度条件で蒸発される。
【0028】
本発明の例示的な実施形態によれば、アルコール飲料の揮発成分を含む第1の蒸気は、分留手段を介して液体と混合されることなく、脱アルコールが行われていないアルコール飲料の方へ導かれ、混合される。
【0029】
本発明の先に述べた方法の技術的課題は、蒸留で取り出した純粋エタノールが、本発明の方法により作成されないような、さまざまな既製のアルコール飲料の脱アルコールを可能とする方法である。多くの国では、自宅ではアルコールの製造が許可されていないので、このことは、家庭で利用する観点から見て有益である。
【0030】
本発明の装置の各種実施形態に関する、上記に示された考慮点では、当業者に理解されるように、本発明の方法の実施例に、必要な変更を加えることが可能であり、柔軟に適用することができる。
【0031】
ここまで簡潔に検討してきたが、本発明の異なる態様の有用性は、各特定の実施例に応じた複数の結果により生じる。
【0032】
用語「examplary(例示的な)」は、唯一もしくは好適な選択肢というだけではなく、一実施例、又は実施例のような特徴を意味する。
【0033】
用語「dealcoholization(脱アルコール」」及び「dealcoholized(アルコール分を除去した)」は、アルコール飲料のアルコール(エタノール)含有量を低下させることを意味する。
この用語は主に、アルコール飲料のエタノールを低下させることによってアルコール飲料のアルコール含有量を低下させることを意味する。そして、この用語は、脱アルコールの結果物は、達成可能であるかもしれないが、完全に又は完全に近い状態で、エタノールを含まない生産物でなければならないという意味ではない。
【0034】
用語「dissolve(溶解する)」は、エタノール蒸留液又は、気体エタノールが液体に溶解及び/又は混合されることを意味し、用いられる。
【0035】
本発明の異なる実施例は、添付の従属クレームにおいても開示される。
【0036】
次に、本発明のいくつかの例示的な実施形態が、添付の図面を参照することにより詳細に確認される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本開示内容による、装置の一実施例が開示される。
【
図2】本開示内容による、装置の実施例の略図である。
【
図3】本開示内容による、アルコール飲料を脱アルコール化する方法の実施例が図示される。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1には、本発明による装置100の実施例が開示されている。
【0039】
装置100は原則的に、第1容器102と、第2容器104と、第3容器106とを備え、容器間で液体(例えば水やアルコール液)を移動させることができる。
【0040】
第1容器102は、アルコール分を除去するアルコール飲料を取り込み、収容するために用いる。第1容器102は好適には、アルコール飲料を収容するために、耐真空のねじ式クロージャ(閉鎖)、キャップ、弁、又は、この種の他の耐真空手段を備える。第1容器102は、液体(例えばアルコール飲料)を冷却するために、冷却コイル、冷却ループ、又はこの種の他の構成を備えることもできる。
第1容器102にあるアルコール飲料を冷却するための他の手段では、第1容器102内部に内側容器を備えることができる。内側容器には、冷水又は氷を差し入れることができる。冷却手段を、第1容器102に取り外し可能に取り付けることができ、そして前記手段は冷却液及び/又は氷を循環させるための導管を備えることができる。
【0041】
第2容器104は好適には、液体を収容するために、耐真空ネジクロージャ、キャップ、弁、又はこの種の他の耐真空手段を備える。液体は好適には、水又は他のノンアルコールの液体を含む。しかし、装置100の技術的な観点からは、アルコール液(飲料)のアルコールを高めるために装置を用いるならば、そのアルコール液は第2容器104で用いられ得る。
第2容器104は、少なくとも機能的に第3容器106に取り付けられた分留手段を備える。分留手段は好適には、分留塔(少なくとも部分的に第2容器104内部にある)を備える。そして、分留塔は、上述した手段によって取り込まれた液体で囲まれる。分留塔は、例えばVigreux(ビグリュー)カラムを含むことができる。カラムを離れたエタノール蒸気及び凝縮物が周囲の液体内に送られるように、分留塔は好適には、凝縮器の導管又はカラムを囲むキャップ部分を備える。
【0042】
第3容器106は好適には、ワインを沸騰させるタンクとして用いられる。さらに任意で、第3容器106は、第2容器104で蒸発したエタノールと液体とを混合させた廃棄物を(この混合物は、第2容器104から第3容器106まで移送されるが)、格納したり、処分するために用いられることができる。加熱手段及び真空ポンプ又は吸引器手段は、第3容器106に流体回路を介した機能的な結合により、取り付けられている。
【0043】
容器102、104、106の材料は、好適には、ポリマー、プラスチック、ガラス、鋼、アルミニウム、又はこの種の他の材料、又は十分にアルコール耐性があるこの種の材料の組合せである。容器102、104、106が、同一材料を含む必要はない。好適には少なくとも、真空度約90~95%又は85~90%又は95~99%の真空蒸留状態を促進することができるように、真空下に置かれる容器は少なくとも、耐真空材料、構造、及び封止手段を有しなければならない。
【0044】
装置100は、液体を移動及び/又は分配するための手段110、例えば、外部容器108(例えばワイン又はビールの瓶、グラス又はこの種の容器)にアルコール分が除去された飲料を分配するための注ぎ口を備えることもできる。調節可能な導管は、外部容器108から液体を抜き出すために用いることもできる。
【0045】
装置100の機能は、入力手段112、例えば回転可能な及び/又は押し込み可能なつまみを使用し、制御することができる。装置100の設定ならびに脱アルコールプロセスのための入力は、表示画面(ディスプレイ)114又はこの種の他のユーザーインタフェース手段を介して設けることができる。場合によっては、任意に又は追加的に、制御手段及びインタフェース手段を、スマートフォン又はコンピュータを介して設けることができる。リモート(遠隔)からの使用者向けに、装置100の機能、規制、及び/又は(ユーザ)インタフェースを提供するための、IoT手段(例えばM2Mコミュニケーション手段、外部サーバ、クラウドコンピューティング手段)を用いることができる。
【0046】
装置100は流体回路を保護するための筺体116を備えることもできる。そして、導管と容器と、その複数の構成要素を含む。装置100が機能する間に生じる可能性のある溢れや滴下物を収集するために、雫受け118を利用することもできる。
【0047】
図2は、本発明による装置200の実施例の略図である。
【0048】
第1容器202は液体を取り込むための手段を備え、そして第1容器202はまた、導管を介して第3容器206に連結される。導管は弁によって制御される。第1容器202は、冷却手段203を備えることもできる。第1容器202はねじ込みクロージャ(閉鎖部)又は蓋を備えたカラム(塔)を構成することができる。そして、このクロージャは手動で操作することができる。
【0049】
第1容器202の冷却手段203は、第1容器202の中に入れられたアルコール飲料の温度を制御するために用いることができる。加えて冷却手段は、保存及び/又は提供のため、アルコール飲料を特定の温度に設定するために用いることもできる。さらに又は逆に、第1容器202は、第1容器202のアルコール飲料の温度を制御するための加熱及び/又は冷却手段を備えることもできる。
冷却手段203は、提供前、すなわち装置200からアルコール飲料を注ぐ前に、アルコール飲料の温度を設定するのに役立が、この種の手段は、真空蒸留状態を促進するためにも用いることができる。
また、アルコール飲料から少なくとも一部のアルコール分を除去するために、アルコール飲料の少なくとも一部の温度を、真空蒸留プロセスで上昇させ、アルコール飲料は、冷却のために脱アルコールの後、第1容器202へ戻るようにしてもよい。
【0050】
例えば使用者が、アルコール飲料の容器から第1容器202に注いだアルコール飲料は、弁209aの制御を経て、任意にポンプ211aの作用により、第3容器206へと送られる。
第3容器206に送られたアルコール飲料の量を検出するために、流量計207を配置することができる。
多くの場合、アルコール飲料の特定部分だけを真空蒸留することは、有益である。処理されるアルコール飲料の量は、真空蒸留して得たアルコール飲料の最終的なアルコール含有量を推定及び/又は制御するために知る必要がある。このことは、アルコール飲料の一部だけのアルコール分を除去し、それから第1容器202の未処理のアルコール飲料と混合するとき、特に重要である。
しかし、上述した考慮点は、最終製品の最終アルコール含有量だけに影響を及ぼし、このように装置200の機械的機能には直接影響を及ぼさない。第1容器202から第3容器へと送られる液体は、弁209a及びポンプ211a又は211bで制御することができる。
【0051】
第2容器204には、水又は、低アルコール又はノンアルコールの液体が加えられる。任意には場合により、ワインといったアルコールの液体を、第2容器204の液体として用いられることもできる。
前記液体に対するエタノールの可溶性を高める冷却特性の観点から、液体の種類を選択することができる。好適には液体の量は、分留手段205の種類及び機能ならびに、分留手段構成の好適な冷却効率で決定される。
更に液体の量は、冷却水又は他の液体の目標エタノール含有量と、真空蒸留で取り出された最終的なエタノール溶液によって決定することもできる。
第2容器204にある液体の主な作用は、蒸留で取り出したエタノールが装置200の外部又はポンプ211bに移送されないように、この蒸留で取り出したエタノールを液体内に溶け込ませることである。しかし、第2容器にある液体の任意の第2作用として、分留手段205を冷却し、そのエタノール蒸気を凝縮させるために前記液体を使用してもよい。
【0052】
第3容器206では、アルコール飲料は、弁209cを介して、真空ポンプ211bや吸引器(アスピレータ)等を用いて第2容器204及び第3容器206を真空(減圧)状態にすることによって、そして任意では、アルコール飲料の温度を十分に、そしてその中の圧力に応じて、アルコール飲料からエタノールを蒸発させるように昇温して、真空蒸留状態とする。
本実施例によると、真空が第2容器204で最初に作られるように、弁209b及び209aは、真空蒸留プロセスの間は閉じている。そしてこの真空状態は、分留手段205を介して第3容器206にさらに運ばれる。
そして蒸発したエタノールは、分留手段205を上昇する。ここでは、分留塔と、分留塔を囲んでいるキャップ部分の構成として描写されている(前記キャップ部分は、他端が閉じ、分留塔上に配置されたシリンダとして描写されている)。そしてカラムを囲むキャップ部分は、第2容器204に加えられる液体によって、少なくとも部分的に更に囲まれる。(前記液体は描写されない)。
エタノール蒸気は分留手段205へと進み、そこでエタノール蒸気は、分留手段部品、例えば、端部が第2容器204にある液体に浸漬している凝縮器の導管又はキャップ部分の内側、にて凝縮する。凝縮したエタノールは下がり、凝縮液として第2容器204内の液体と混合され、及び/又は、気相、すなわちエタノール蒸気から、前記液面に直接溶解する。
エタノール蒸気の中には、液体へ直接移動するものや、第2容器204の液体を介して気泡として移動するものがあるが、いくらかは、エタノールガス(例えば液体から生じる気泡)の量があまり多くなりすぎない限りは許容される。例えば少量である場合は、吸込み弁209c又は真空ポンプ211bで、フィルタ等により捕らえられる。
【0053】
図2の分留手段205は、原則的に、第3容器からの蒸気を運搬するために連結されたカラムと、前記カラムの周囲に位置する外包(キャップ部分)とを備える。
蒸気はカラムを介して進み、分留手段205のキャップ部分の内側面に凝縮する。そしてそこから凝縮物は、キャップ部分の最下限へと進み、そして、キャップ部分と第2容器204との間の空間へと進み、そこで凝縮物は液体と混合される。
液体を介した第2容器204からの真空と、キャップ部分と第2容器204との間の空間により、エタノール凝縮物は、第2容器204の液体に送られる(エタノール凝縮物は本質的に、ある意味、液体の壁に接触する)。内筒と外包との間で凝縮を改良するために、他の構造を用いてもよい。
キャップ部分と分留塔との構成を含む、描写された分留手段205を鑑みて、液体は、第2容器204に真空を発生させた(それにより液面が上昇した)後でさえ、分留手段205のキャップ部分は、液体に完全には沈まないように、好適に用いられるべきである。
まずは第2容器204で真空を発生させ、そして分留手段205を介して第3容器206で真空を発生させると、第2容器204の液体が上昇する。そして液体は、キャップ部分と分留塔との間から、一部漏れ出る。
従ってこのプロセスでは、キャップ部分の外面に対して、液面は分留手段205の外側で上昇し、その結果、上述されるように液体が分留手段205から漏れ出るので、分留手段内部では液面は低下する。
前述により今度は、分留手段205内部では、液体を含んでいない内部容積が増大し、より広いキャップ部分の外側領域が液体に囲まれ、より広いキャップ部分の内側面領域は、液体を含まなくなる。そして次に、エタノール蒸気がより効率的に、キャップ部分と分留カラム(前記カラムの外壁)との間の表面上に凝縮できるようになる。
換言すれば、真空ポンプの方向に液体を吸引している真空(これは、第2容器204で生じる真空により生じる)、そしてある程度は、第3容器206で蒸発するエタノールによって生じたわずかに高い圧力により、分留手段205のキャップ部分の外部(第2容器204とキャップ部分外壁間の空間)では、液面が上昇し、キャップ部分(分留カラムと隣接する壁領域)の内部空間で、分留手段の冷却領域が増大する。
エタノールが気体エタノールとしてでなく、凝縮液として液体内に入る(混合される)という視点から、凝縮するエタノール蒸気のためのより大きい空間又は領域を有することは好都合である。
【0054】
上述されるように、第3容器206は真空蒸留の温度を制御するために、加熱手段を備えることができる。適切な加熱手段は、一般的に当業者に知られており、そして、例えば加熱要素(例えばコイル)を備えてもよい。この種の加熱手段は、第3容器の液体内に入れておくか、又外部に位置させてもよい。
【0055】
弁209aは四方弁を備えることができ、弁209dは二方弁(例えばソレノイドバルブ)を備えることができ、そして、弁209cはエア抜きを有する三方弁を備えることができるがその一方で、弁209bは、吸気及び/又はエア抜きを有する三方弁を含むことができる。
【0056】
真空安全弁又は孔209e(例えばダックビル弁)は、分留手段205に設置してもよい。このことは、いくつかの実施例において有益である。なぜなら、真空蒸留を終了させた、及び/又は停電等により真空ポンプが故障した後に、第3容器206の液体が冷却される場合、真空蒸留反応によって、第3容器206でより高い真空が生じる場合があるからである。従って、圧力差には、装置の圧壊又は故障のリスクがない。
【0057】
本発明において好まれる真空蒸留条件は、最高温度が約49℃で、この温度(異なる温度条件も可能である)に対応する真空も備える。エタノール-水混合液を真空蒸留するための基本的な概念及び異なる可能な条件(エタノール-水混合液相図に従う)は、当業者によく知られている。約49℃とは、ワインを加熱する際の、影響があまり大きくないと広く認められている温度の上限である。典型的な真空蒸留状態では、好ましくは真空度約90~95%又は85%~90%又は95~99%が含まれる。
前半2つの真空範囲は、加熱手段を用いる場合に適し、後の真空範囲は、加熱手段がない場合、例えば周囲温度で作動させる場合に、使用し得る。しかし本発明において、こういった制限を確定するものではなく、好適ないずれの値も設定可能であることは明らかである。
図2にあるように装置200は、第2容器及び第3容器で、又はその間で温度(T)及び圧力(P)検出手段ならびに、第1容器202の温度検出手段(T)を備えることができる。
【0058】
第3容器206は、第2容器の液体を分析するために用いることもできる。第2容器204の流体の一部は、弁209aを介して第3容器206に送ることができる。液体が水であるかどうか知るための手順を用いることができ、そして、次の工程が含まれ得る。
(1)少量(例えば3clの液体)を第3容器206に導く
(2)液体を真空状態下に置き、そして、第3容器206の温度を上昇させる
(3)(1)の3clの液体を急速に沸騰させ、そして、温度及び圧力は、圧力及び温度センサ(P、T)又は他の手段でモニタする。
【0059】
第2容器の液体に対して、使用者のアルコール及び抽出物計測器、又は適切なセンサを用いてエタノール含有量の分析を行うことができる。
【0060】
さらに装置200には、真空蒸留状態が作られたときに発生する第1の蒸気を、冷却液中に、この第1の蒸気を導くことなく収集するための手段を備えることができる。このことは有益である。なぜなら真空蒸留状態が作られると生じる第1の蒸気は、エタノールが蒸発し始める前及び/又は同時に(例えば正しい条件下で約20秒)生じるエステル類及びこの種の揮発性の化合物を含むからである。これらの化合物(エタノールを除く)は、芳香や味覚等を生じさせるワインの多くの特性を有する。
従って、前記揮発性の化合物は、第1容器202にある揮発性の化合物を移動させるために、例えば導管213を介した弁209aの制御により(分留手段に入っていく代わりに)導くことができる。そして揮発性の化合物を、第1容器202の液体に導入することができる。
ディフューザには、それ自体の入口が必要であるが、例えば微細気泡ディフューザを、揮発性の化合物と、第1容器202の液体とを混合するために用いることができる。
【0061】
アルコール飲料からアルコール分を(例えば使用者が決定する目標ABVまで)除去するために、第3容器206にあるアルコール飲料の真空蒸留が実施されたあと、アルコール分を除去した液体を、他の液体(例えば未処理のアルコール飲料)と混合することができる第1容器へ移動させることができる。弁209d及び分配手段210を介することによって、アルコール飲料又は第1容器のこの液体を流出させてもよい。
【0062】
例えば、前記混合液を第3の容器206に送ることにより、第2の容器204のエタノール溶液の混合液は好適に処置される。使用者は、前記混合液の処分及び清掃するために第3の容器206を取り外すことができる。任意では、出力配管及び弁を介して、エタノール溶液の混合液を排出/出口導管に直接流してもよい。この排出/出口導管は更に、下水設備に直接連結されていてもよい
それ故、使用者は、マイルドな(軽減した)エタノール-水混合液を残すが、この廃棄処分については手動で行わなければならない。もしくは、使用者が水-エタノール混合液に全く接触しないよう、装置200で自動的に前記混合液を処分できるようにしてもよい。
【0063】
有用ではあるが、
図2にて図示するように、第3の容器206を必ず別容器とする必要はない。
例えば第2の容器204の液体及びアルコール飲料を冷却するのに、冷却コイルは1つあればよい。なぜなら、ワインは第3の容器にポンプで送ることが可能であり、この間に第2の容器204の液体を、冷却のために第1の容器202に送ってもよい。そしてその後、真空蒸留プロセスの間に分留手段のエタノール蒸気を液化させるための冷却を行うため、前記液体を第2の容器204へ戻してもよい。
対照的に、第1の容器202内部又はその一部として第3の容器206を有する場合は、システムがより単純になるという利点がある。そして、第1の容器202でアルコール飲料を直接真空蒸留することができ、容器202、204、206間で液体を移動する必要も低減される。
【0064】
またいくつかの実施例において、アルコール飲料等の外部容器108自体を、第1容器202として用いることもできる。
この場合、瓶に導管自体を挿入し、真空蒸留を第2容器204及び第3容器206(これは第1容器202とは別の容器である)で、バルブ制御によって、前記第2容器204及び第3容器206だけに真空を制限することによって、第2容器204及び第3容器206で真空蒸留を行うことができる。
【0065】
容器及び回路システムは異なる方法で配置することができ、そして本発明によれば、
図1及び
図2の装置200の実施例が単に例示的な実施形態であることは当業者に明らかである。
考慮される本発明のために、明らかに、液体及び気体を運び、処理するシステムの機能及びその相互に関係する役割は重要である。そして、本発明はその点においてよく理解されていなければならない。
装置200のための1つの実現可能なサイズを図示するために、第1及び第2のカラムの容量は、例えば1600ml~2000mlであってもよい(図示するようなカラムの外形を有する)。そして第3の容器の容量は、例えば1000ml~1200mlであってもよい。この量は、典型的なワインのボトル750mlのアルコール分を除去するのに適している。装置200は原則的には、台所卓上機器の寸法でもよい。しかし本発明は明らかに、当業者が理解するように計測可能である。
【0066】
図3は、本発明によるワインのアルコール分を除去する方法の実施例を図示するブロック図である。明らかに、他の飲料を用いることも可能であるが、いくつかの例示的な装置の作用及び機能における明白な描写のために、本願明細書ではワインを用いる。
【0067】
「スタートアップ(開始)」と称される302では、装置、例えば少なくとも使用者による入力に関する部分がセットアップ(設定)される。このセットアップには少なくとも、脱アルコールプロセスを実行する装置の電源を入れることが含まれ得る。
【0068】
304で、使用者は脱アルコールの装置にワインを入れる。
【0069】
306で、任意で使用者による入力を介してワインのABVを確定する。使用者は例えば、ワイン容器からABVを知ることもできる。
【0070】
308で、ワインの目標ABV(すなわち脱アルコールプロセス後のABV)を確定する。目標ABVは、使用者が設定するか又は予め決めておくことができる
【0071】
310で、装置に液体を入れる。この液体はワインと混ざらないようにワインとは別の場所(容器)に注がれる。好適には、装置に加えられる液体の量は、脱アルコールの装置に入れたワインの量と少なくとも同量である。
【0072】
312では、310で加えられた液体が適切であり、少なくとも実質的に低アルコール又は完全なノンアルコールの液体であるか確認するためのチェックが行われる。
例えば、液体のエタノール含有量は、使用者がアルコール及び抽出物計測器により、又は適切なセンサを用いて判定することができる。少なくとも、アルコールを含むかどうかは判定されなければならない。また場合によっては、液体のアルコール含有量を判定する場合もある。液体は、ジュースやお茶、コーヒー類である場合もある。液体が不適切な物質(例えばエタノール-水混合液)を含むと判定される場合、項目310及び312に従って新しい流体が加えられ、確認される間、そのプロセス(処理)は停止される。
水であるか、アルコールを含まない適切な液体が検出された場合、プロセスは項目314へと続く。
【0073】
314では、例えば真空ポンプ吸引を用いて真空蒸留を行うことができる空間にワインが移される。ワインの量は好適には流量計でモニタされる。水は真空下に置かれ、そして、その量を判定することもできる。あまりに水の量が少ない場合、例えばモニタされたワインの量より水が少ないと検出される場合、本プロセスを制御するために、水を追加するよう要請することができる。分留手段を通過するエタノール蒸気の、より良好な液化を促進するために、好適には水は約8~10℃まで冷却してもよい。
【0074】
一部のワインは、この一部が真空蒸留プロセス下に置かれない特定の場所に配置することができる。そして、こういった未処置分を冷却することもできる。
アルコール分が除去されるワインは、真空度約90~95%の真空状態下に置かれ、温度は約35~40℃、好ましくは49℃を超えることがないようにする。この温度については、幾つかの例により、その温度を超えるとワインの質の劣化を生じさせ得ることが確認されている。また、真空度は85~90%又は95~99%であってもよい。広義では、真空蒸留により異なる実施可能な条件について当業者は理解するだろう。
【0075】
316で、エタノールは分留手段を介して、蒸発及び移動する。分留手段と相互に作用する冷却されたノンアルコール液体により、エタノール蒸気は液化される。そして次に、液化されたエタノール蒸留液は分留手段を介して水に送られる。任意及び/又は追加で、エタノール蒸気は、分留塔を介して直接水面又は水面付近まで進み、ここで水に直接凝縮することもできる。
いくつかの例において、エタノールの一部は気泡として水を通して流れることができるが、前述したとおりであってもよい。
【0076】
318で、目標ABV及び他容器の未処理のワイン量に応じて、特定量のエタノールがワインから除去された後に真空は解除され、アルコール分が除去されたワインを他の容器に取り出すことができる。そこで、アルコール分が除去されたワインを未処理のワインと混合することもできる。さらにワインの分配や飲用、又は格納及び保存するために、ワインを特定温度とするために冷却してもよい。
【0077】
ワインは、ワインの格納条件及び保存を改善するために、真空状態に置いてもよい。
【0078】
エタノール-水混合液(廃棄物とみなされる)は、排出口に導いても、もしくは使用者が処分するようそのまま置いていてもよい。しかし混合液のABVは、最初のワインより高くなることはない。そして実際の使用では使用者により、ABVが処理前のワインより高くなることはないので、常にアルコールは大幅に低くなる。
【0079】
本発明の範囲は、その等価物と共に、添付の請求の範囲で確定される。当業者は、開示された実施例が説明の便宜上行われたのみであるという事実を認めるであろう。そして、本願明細書で確認される革新的な支点は、本発明の各特定の使用例により適した更なる実施例、実施例の組合せ、変形例、及び等価物まで及ぶ。