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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】真空断熱材用積層体および真空断熱材
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20220524BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20220524BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20220524BHJP
   F16L 59/065 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
B32B15/08 Q
B32B27/28 102
B32B27/32 C
F16L59/065
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018018510
(22)【出願日】2018-02-05
(65)【公開番号】P2019135094
(43)【公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】後藤 花奈子
(72)【発明者】
【氏名】山下 香往里
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 隆太
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 幸子
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-150565(JP,A)
【文献】特開2004-332929(JP,A)
【文献】国際公開第2017/090240(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
F16L 59/00-59/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ基材層を含む複数のバリアフィルムの積層体であるバリア層と、
前記バリア層の一方の面に位置する熱接着性樹脂層と、
を備え、
前記複数のバリアフィルムは、第1バリアフィルムを有し、
前記第1バリアフィルムは、
エチレン-ビニルアルコール共重合体層と、
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体層の第1の面に形成されたアルミニウム蒸着層と、
前記エチレン-ビニルアルコール共重合体層の第2の面に形成されたポリプロピレン層と、
を備える、
真空断熱材用積層体。
【請求項2】
前記複数のバリアフィルムは、第2バリアフィルムを有し、
前記第2バリアフィルムは、前記基材層と接するアルミニウム蒸着層を含み、
前記第1バリアフィルムの前記第1の面は、前記第1バリアフィルムの前記第2の面よりも前記第2バリアフィルム側に位置し、
前記第2バリアフィルムのアルミニウム蒸着層側の第1の面は、前記第2バリアフィルムの前記第1の面と反対側の第2の面よりも、前記第1バリアフィルム側に位置する、
請求項1に記載の真空断熱材用積層体。
【請求項3】
前記第2バリアフィルムは、さらにバリアコート層を含み、
前記第2バリアフィルムの前記基材層は、ポリエチレンテレフタレート層で構成され、
前記第2バリアフィルムの前記アルミニウム蒸着層は、前記ポリエチレンテレフタレート層と前記バリアコート層との間に位置する請求項2に記載の真空断熱材用積層体。
【請求項4】
前記第2バリアフィルムの前記基材層は
第2エチレン-ビニルアルコール共重合体層と、
記第2エチレン-ビニルアルコール共重合体層と接する第2ポリプロピレン層とを含む、
請求項2に記載の真空断熱材用積層体。
【請求項5】
前記複数のバリアフィルムは、第2バリアフィルムを有し、
前記第2バリアフィルムは、前記基材層と接するアルミニウム蒸着層を含み、
前記第2バリアフィルムの前記基材層は
第2エチレン-ビニルアルコール共重合体層と、
記第2エチレン-ビニルアルコール共重合体層と接する第2ポリプロピレン層とを含み
前記第1バリアフィルムと前記第2バリアフィルムとは、互いの前記アルミニウム蒸着層が対向するように貼り合わされている、請求項1に記載の真空断熱材用積層体。
【請求項6】
前記バリア層は、3つ以上の前記バリアフィルムを備える請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の真空断熱材用積層体。
【請求項7】
断熱芯材と、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の真空断熱材用積層体を用いて袋状に形成され、前記断熱芯材を被覆する袋状の外包材と、を備え、
前記外包材の内部圧力が大気圧よりも低い、
真空断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱材用積層体およびそれを用いた真空断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、真空断熱材は、外包材に断熱芯材を封入し、外包材の内部を脱気して真空状態にし、外包材の端部を熱接着して形成されている。このような真空断熱材では、断熱芯材の周囲が真空状態であり、気体による熱伝導率を限りなくゼロに近づけることができるので、断熱性能を高めることができる。
【0003】
真空断熱材の断熱性能を長時間維持するために、外包材の内部を長期に亘って高レベルの真空状態に維持する必要がある。そのため、外包材に用いられる真空断熱材用積層体には、外部から酸素や水蒸気が透過することを防止するためのガスバリア性や、断熱芯材を覆って密着封止するための熱接着性等の機能が要求される。したがって、真空断熱材用積層体は、上述の機能特性を有する複数の樹脂層が積層された積層体として構成される。
【0004】
具体的には、二軸延伸ポリプロピレン層(以下、OPP層と称する)又はポリアミド層(以下、ON層と称する)からなる最外層、アルミニウムを蒸着したポリエチレンテレフタレート樹脂層(以下、PET層と称する)からなる第二層、アルミニウムを蒸着したエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム層(以下、EVOH層と称する)、および直鎖状低密度ポリエチレン樹脂層又は高密度ポリエチレン樹脂層からなる溶着層を順に積層した真空断熱材用積層体が知られている。
【0005】
EVOH層にアルミニウムを蒸着する際、EVOH層が熱収縮するために、「熱収縮シワ」や「たるみ」が発生することがある。「熱収縮シワ」や「たるみ」は、真空断熱材用積層体の製造において、外観不良やガスバリア性不良等の品質不良の原因となる。
【0006】
特許文献1では、「熱収縮シワ」や「たるみ」などの発生を抑えるために、二軸延伸された3層共押出しフィルムの一方の面にアルミニウム蒸着を施すことが提案されている。
【0007】
特許文献1に記載された3層共押出しフィルムは、5.5μm厚さのポリアミド層(以下、ON5.5層と称する)と、4.0μm厚さのエチレン-ビニルアルコール共重合体層(以下、EVOH4.0層と称する)と、もう一つのON5.5層とが順に積層されて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-35007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された真空断熱材用積層体の3層共押出しフィルムは、アルミニウム蒸着加工時に発生する「熱収縮シワ」や「たるみ」を抑えることができる。しかし、ON5.5層の水蒸気バリア耐性が十分でないため、アルミニウム蒸着加工後に3層共押出しフィルムが「シワ」や「たるみ」を生じる可能性がある。したがって、真空断熱材用積層体の生産性を向上させる観点からは、未だ改善の余地がある。
【0010】
上記の事情を踏まえ、本発明は、バリア性能と生産性とを高いレベルで両立した真空断熱材用積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの態様によれば、真空断熱材用積層体は、それぞれ基材層を含む複数のバリアフィルムの積層体であるバリア層と、前記バリア層の一方の面に位置する熱接着性樹脂層と、を備え、前記複数のバリアフィルムは、第1バリアフィルムを有し、前記第1バリアフィルムは、エチレン-ビニルアルコール共重合体層と、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体層の第1の面に形成されたアルミニウム蒸着層と、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体層の第2の面に形成された延伸ポリプロピレン層と、を備える。
【0012】
上記の真空断熱材用積層体において、前記複数のバリアフィルムは、第2バリアフィルムを有し、前記第2バリアフィルムは、前記基材層と接するアルミニウム蒸着層を備え、前記第1バリアフィルムの前記第1の面は、前記第1バリアフィルムの前記第2の面よりも前記第2バリアフィルム側に位置し、前記第2バリアフィルムのアルミニウム蒸着層側の第1の面は、前記第2バリアフィルムの前記第1の面と反対側の第2の面よりも、前記第1バリアフィルム側に位置してもよい。
上記の真空断熱材用積層体において、前記第2バリアフィルムは、さらにバリアコート層を含み、前記第2バリアフィルムの前記基材層は、ポリエチレンテレフタレート層で構成され、前記第2バリアフィルムの前記アルミニウム蒸着層は、前記ポリエチレンテレフタレート層と前記バリアコート層との間に位置してもよい。
上記の真空断熱材用積層体において、前記第2バリアフィルムの前記基材層は、第2エチレン-ビニルアルコール共重合体層と、前記第2エチレン-ビニルアルコール共重合体層と接する第2ポリプロピレン層とを含んでもよい。
上記の真空断熱材用積層体において、前記バリア層は、3つ以上の前記バリアフィルムを備えてもよい。
【0013】
本発明の1つの態様によれば、真空断熱材用積層体は、それぞれ基材層を含む複数のバリアフィルムの積層体であるバリア層と、前記バリア層の一方の面に位置する熱接着性樹脂層と、を備え、前記複数のバリアフィルムは、第1バリアフィルムおよび第2バリアフィルムを有し、前記第1バリアフィルムは、エチレン-ビニルアルコール共重合体層と、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体層の第1の面に形成されたアルミニウム蒸着層と、前記エチレン-ビニルアルコール共重合体層の第2の面に形成されたポリプロピレン層と、を備え、前記第2バリアフィルムは、前記基材層と接するアルミニウム蒸着層を含み、前記第2バリアフィルムの前記基材層は、第2エチレン-ビニルアルコール共重合体層と、前記第2エチレン-ビニルアルコール共重合体層と接する第2ポリプロピレン層とを含み、前記第1バリアフィルムと前記第2バリアフィルムとは、互いの前記アルミニウム蒸着層が対向するように貼り合わされている。
上記の真空断熱材用積層体において、前記バリア層は、3つ以上の前記バリアフィルムを備えてもよい。
【0014】
本発明の1つの態様によれば、真空断熱材は、断熱芯材と、上記の真空断熱材用積層体を用いて袋状に形成され、前記断熱芯材を被覆する袋状の外包材と、を備え、前記外包材の内部圧力が大気圧よりも低い。
【発明の効果】
【0015】
本発明の真空断熱材用積層体は、高いバリア性能と、「熱収縮シワ」や「たるみ」が生じない生産性の高さが両立されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る真空断熱材用積層体の構成を示す断面模式図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る真空断熱材用積層体の一部の構成を示す断面拡大模式図である。
図3】本発明の第2の実施形態に係る真空断熱材用積層体の構成を示す断面模式図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る真空断熱材用積層体の一部の構成を示す断面拡大模式図である。
図5】本発明の第2の実施形態の第3変形例に係る真空断熱材用積層体の構成を示す断面模式図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係る真空断熱材の構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る真空断熱材用積層体1について、図1および図2を参照して説明する。
(真空断熱材用積層体1の構成)
図1は、本実施形態に係る真空断熱材用積層体1の構成を示す断面模式図である。図1において、真空断熱材用積層体1は、補強層11と、2つのバリアフィルムが貼り合わされて構成されたバリア層12と、熱接着性樹脂層13との複数の樹脂層が順に積層し、構成されている。バリア層12における各バリアフィルムは、それぞれ基材層を有する。本実施形態に係る真空断熱材用積層体1は、補強層11がバリア層12の第1の面に接し、かつ、熱接着剤樹脂層13がバリア層12の第2の面に接するように構成されている。ここで、バリア層12において、第2の面は、第1の面と反対側の面である。
【0018】
本実施形態に係る真空断熱材用積層体1の補強層11は、真空断熱材用積層体1の強度を改善するために構成されている。補強層11の厚さは、9~30μmの範囲内において、実際用途に合わせて適宜選択できる。補強層11は、真空断熱材用積層体1を構成する基本素材であり、機械的、物理的、化学的等において優れた性質を有する合成樹脂からなるプラスチックフィルムを用いて構成することができる。例えば、補強層11を構成する材料としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリプロピレン系、ポリカーボネート系、ポリアセタール系等の樹脂からなるフィルムを用いることができる。これらのプラスチックフィルムは、未延伸フィルム、あるいは一軸方向または二軸方向に延伸した延伸フィルムのいずれのフィルムも使用できるが、機械的強度が優れるといった観点から、二軸延伸フィルムを使用することが好ましい。本実施形態に係る真空断熱材用積層体1の補強層11は、二軸延伸ポリアミドフィルム層(以下、ON層と称する)から構成される。
【0019】
本実施形態に係る真空断熱材用積層体1の補強層11は、バリア層12を挟んで熱接着性樹脂層13の反対側の位置に構成されている。ただし、実際用途に合わせて、補強層11は、バリア層12の複数のバリアフィルムの間に構成され、あるいはバリア層12と熱接着性樹脂層13との間に構成されてもよい。補強層11は、単層に限らず、複数の層を積層して構成されてもよい。さらに、補強層11は、真空断熱材用積層体1における必須な構成ではなく、実際用途に合わせて設けなくてもよい。
【0020】
次に、本実施形態に係る真空断熱材用積層体1のバリア層12を説明する。図1に示されたように、本実施形態に係る真空断熱材用積層体1のバリア層12は、第1バリアフィルム121と第2バリアフィルム122とが貼り合わされて構成されている。バリア層12は、水蒸気および酸素を遮断するガスバリア層として機能する。具体的に、バリア層12の第1バリアフィルム121は、真空断熱材用積層体1に酸素バリア性を付与するために構成されている。バリア層12の第2バリアフィルム122は、水蒸気バリア性を付与するための加工適性に優れると共に、水蒸気バリア性を損なうことなく良好に保持でき、かつ、真空断熱材用積層体を用いた製袋時の加工適性や耐熱性等の性質に優れることが求められる。
【0021】
図2は、本実施形態に係る真空断熱材用積層体1のバリア層12の構成を示す断面拡大模式図である。
図2に示されたように、第1バリアフィルム121は、アルミニウム蒸着層131と、エチレン-ビニルアルコール共重合体層(以下、EVOH層と称する)132と、延伸ポリプロピレン層(以下、OPP層と称する)133とを順に積層して構成されている。すなわち、第1バリアフィルム121は、アルミニウム蒸着層131がEVOH層132の第1の面と接し、かつ、OPP層133がEVOH層132の第2の面と接するように構成されている。ここで、EVOH層132において、第2の面は、第1の面と反対側の面である。本実施形態に係る真空断熱材用積層体1のバリア層12において、第1バリアフィルム121のEVOH層132とOPP層133とは、合わせて第1バリアフィルム121の基材層に相当する。
【0022】
バリア層12の第1バリアフィルム121におけるOPP層133は、水蒸気バリア性に優れている。また、OPP層133は、単層に限らず、接着性を付与するための変性ポリプロピレン層や、強度を向上させるためのポリプロピレン補強層などを備える多層構造で構成されることも可能である。
【0023】
第1バリアフィルム121は、例えば、予めEVOH層132およびポリプロピレン層を共押出しした2層共押出しフィルムを延伸した基材層において、EVOH層132側の面にアルミニウム蒸着を施して構成されることができる。
以下、本実施形態に係るバリア層12の第1バリアフィルム121の構成を、「アルミニウム蒸着層/(EVOH層//OPP層)」で表す。なお、「EVOH層//OPP層」という表示は、共押出し法により製造したEVOH層132とポリプロピレン層の積層体を延伸させることにより得られるEVOH層132とOPP層133との積層構造を示す。
【0024】
図2に示されたように、第2バリアフィルム122は、アルミニウムに代表される金属を蒸着したプラスチックフィルム、酸化珪素に代表される無機物や酸化アルミニウムに代表される金属酸化物を蒸着したプラスチックフィルム、あるいは、ポリ塩化ビニリデンに代表される水蒸気バリア性組成物を塗布したプラスチックフィルム、あるいは、ポリ塩化ビニリデンフィルムを用いることができる。本実施形態に係る第2バリアフィルム122を構成する材料としては、例えば、ポリエステル系、ポリアミド系、あるいはポリプロピレン系のプラスチックフィルムを使用することが好ましい。第2バリアフィルム122の厚さは、9~30μmの範囲内において、実際用途に合わせて適宜選択できる。
【0025】
本実施形態に係るバリア層12の第2バリアフィルム122は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PET層と称する)141と、アルミニウム蒸着層142と、バリアコート層143とを順に積層して構成されている。すなわち、第2バリアフィルム122は、アルミニウム蒸着層142がPET層141の第1の面と接し、かつ、PET層141における第1の面と反対側の第2の面が大気と接するように構成されている。ここで、バリア層12の第2バリアフィルム122のPET層141は、第2バリアフィルム122の基材層に相当する。
以下、本実施形態に係る真空断熱材用積層体1の第2バリアフィルム122の構成を、「PET層/アルミニウム蒸着層/バリアコート層」で表す。
【0026】
第2バリアフィルム122において、バリアコート層143は、実際用途に合わせて各種公知のバリアコートを用いることができる。例えば、バリアコート層143は、水溶性高分子と金属アルコキシドまたはその加水分解物とを含む被覆層で構成されることができる。具体的に、テトラエトキシシラン〔Si(OC〕10.4gに塩酸(0.1N)を89.6g加え、30分間撹拌し加水分解させた固形分3wt%(SiO換算)の加水分解溶液とポリビニルアルコールの3.0wt%の水/イソプロピルアルコール(90/10)溶液とを混合した組成からなる塗液を、バーコーターにより塗布し、乾燥機で110℃、1分間乾燥させることにより、厚さ約0.5μmのバリアコート層143を形成できる。
更に、要求される性能に応じて、バリアコート層143にシランカップリング剤を添加することにより機械的強度や接着性の向上、バリア性のさらなる向上をすることも可能である。シランカップリング剤としては、イソシアヌレートシランカップリング剤が特に好適である。
【0027】
次に、本実施形態に係る真空断熱材用積層体1の熱接着性樹脂層13を説明する。熱接着材樹脂層13は、熱によって溶融して相互に融着し得る熱可塑性樹脂によって構成される。熱接着性樹脂層13を構成する材料としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレンとアクリル酸との酸コポリマー、エチレンとアクリル酸エステルとのエステルコポリマー等の酸変性ポリオレフィン系樹脂、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー等を用いることができる。
本実施形態に係る真空断熱材用積層体1の熱接着性樹脂層13は、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン層(以下、LLDPE層と称する)によって構成されている。なお、本実施形態に係る真空断熱材用積層体1の熱接着性樹脂層13の厚さは、10μm以上であればよく、実際の用途、求められる性質、およびコスト等を勘案して決めることができる。
【0028】
(真空断熱材用積層体1の製造方法)
以下、本実施形態に係る真空断熱材用積層体1の製造方法の一例を説明する。
通常、真空断熱材用積層体1を製造するための各層の積層方法としては、ドライラミネーション法、サンドイッチラミネーション法等の接着剤あるいは溶融押出し樹脂からなる接着層を介する周知の積層方法を適宜用いることができる。また、いずれの積層方法においても、必要な面にコロナ放電処理、プラズマ処理、あるいは、アンカー剤の塗布処理等のいずれか、あるいは、いずれもの易接着処理を必要に応じて施して層間の接着強度を確保する必要がある。
【0029】
本実施形態に係る真空断熱材用積層体1を製造する際、まず、補強層11の一方の面と、PET層/アルミニウム蒸着層/バリアコート層で構成された第2バリアフィルム122のPET層141側の面との両方に対して、コロナ放電処理を行う。そして、コロナ放電処理された補強層11の一方の面に、同じくコロナ放電処理された第2バリアフィルム122のPET層141側の面を積層する。次に、積層された補強層11および第2バリアフィルム122から構成される中間積層体における第2バリアフィルム122のバリアコート層143側の面に、接着剤を介して、第1バリアフィルム121のアルミニウム蒸着層131側の面を接着する。そして、補強層11およびバリア層12から構成された中間積層体における第1バリアフィルム121のOPP層133側の面と、熱接着性樹脂層13の一方の面との両方に対してコロナ放電処理を行い、これらの面を介して中間積層体と熱接着性樹脂層13とを積層する。上記の積層方法により、本実施形態に係る真空断熱材用積層体1を製造できる。
上述の積層方法で製造された本実施形態に係る真空断熱材用積層体1の構成は、「ON層/接着剤/PET層/アルミニウム蒸着層/バリアコート層/接着剤/アルミニウム蒸着層/(EVOH層//OPP層)/接着剤/LLDPE層」で表すことができる。
【0030】
(真空断熱材用積層体1の効果)
以下、本実施形態に係る真空断熱材用積層体1の効果を説明する。
本実施形態に係る真空断熱材用積層体1によれば、「アルミニウム蒸着層/(EVOH層//OPP層)」で構成された2層共押出しフィルムにアルミニウム蒸着を施した構造を有する第1バリアフィルム121を備える。第1バリアフィルム121のOPP層133が水蒸気バリア性に優れているため、第1バリアフィルム121の製造過程におけるアルミニウム蒸着時だけでなく、その後の第1バリアフィルム121の保存過程においても、アルミニウム蒸着が施されていない側の面を介して、第1バリアフィルム121のEVOH層132が水蒸気を吸収することを防ぐことができる。このため、「ON5.5層/EVOH4.0層/ON5.5層」で構成された3層共押出しフィルムを有する従来の真空断熱材用積層体のようにアルミニウム蒸着後に「シワ」や「たるみ」が発生することを抑えることができる。その結果、第1バリアフィルム121の加工適性が向上され、本実施形態に係る真空断熱材用積層体1の生産性を向上できる。
EVOH材料は、高い酸素バリア性を有するものの、高価である。このため、酸素バリア性を確保するためにEVOH層を厚く形成することは、積層体のコストを押し上げる要因である。本実施形態に係る真空断熱材用積層体1によれば、第1バリアフィルム121におけるEVOH層132が薄いため、後述する15μm厚さの単層EVOH層にアルミニウム蒸着を施した真空断熱材用積層体に比較する場合、アルミニウム蒸着後に「シワ」や「たるみ」が発生することを抑えるだけでなく、真空断熱材用積層体1のコストを大幅に削減できる。
本実施形態に係る真空断熱材用積層体1によれば、高いバリア性能と、「シワ」や「たるみ」が生じない生産性の高さが両立できる。
【0031】
本実施形態には、真空断熱材用積層体1の第1バリアフィルム121が「アルミニウム蒸着層/(EVOH層//OPP層)」という構成を有する例を説明した。真空断熱材用積層体1の1つの変形例として、例えば、第1バリアフィルム121のアルミニウム蒸着層131側の面に、あるいは、OPP層133側の面に、さらにバリアコート層を積層する構成も可能である。このように構成された真空断熱材用積層体1によれば、上述同様の効果を奏する。
真空断熱材用積層体1の他の変形例として、例えば、第1バリアフィルム121のアルミニウム蒸着層131側の面あるいはOPP層133側の面にバリアコート層を積層し、第2バリアフィルム122のバリアコート層143を省略する構成も可能である。このように構成された真空断熱材用積層体1によれば、上述同様の効果を奏する。
【0032】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る真空断熱材用積層体2について、図3および図4を参照して説明する。
図3は、本実施形態に係る真空断熱材用積層体2の構成を示す断面模式図である。図3において、真空断熱材用積層体2は、補強層21と、バリア層22と、熱接着性樹脂層23との複数の樹脂層が順に積層して構成されている。本実施形態に係る真空断熱材用積層体2のバリア層22は、第1バリアフィルム121Aと、第2バリアフィルム121Bと、第3バリアフィルム121Cとが貼り合わされて構成されている。バリア層22における各バリアフィルムは、それぞれ基材層を有する。真空断熱材用積層体2のバリア層22は、水蒸気および酸素を遮断するガスバリア層として機能する。図4は、本実施形態に係る真空断熱材用積層体2のバリア層22の構成を示す断面拡大模式図である。
本実施形態に係る真空断熱材用積層体2は、バリア層22の構成のみにおいて、本発明の第1の実施形態に係る真空断熱材用積層体1と異なる。本実施形態に係る真空断熱材用積層体2における補強層21、および熱接着性樹脂層23と、第1の実施形態に係る真空断熱材用積層体1における補強層11、および熱接着性樹脂層13とは、それぞれ同じように構成されている。このため、本実施形態に係る真空断熱材用積層体2について、バリア層22の構成を中心に説明し、その他の構成の説明を省略する。
【0033】
(バリア層22の構成)
本実施形態に係る真空断熱材用積層体2のバリア層22においては、第1バリアフィルム121Aと、第2バリアフィルム121Bと、第3バリアフィルム121Cとのそれぞれが、第1の実施形態に係る真空断熱材用積層体1のバリア層12の第1バリアフィルム121と同じように構成されている。すなわち、本実施形態に係る真空断熱材用積層体2のバリア層22は、第1の実施形態に係る真空断熱材用積層体1のバリア層12の第1バリアフィルム121が3つ貼り合わされて構成されている。本実施形態に係る真空断熱材用積層体2のバリア層22の構成は、「(OPP層//EVOH層)/アルミニウム蒸着層/接着剤/アルミニウム蒸着層/(EVOH層//OPP層)/接着剤/アルミニウム蒸着層/(EVOH層//OPP層)」で表すことができる。
【0034】
ここで、バリア層22の第1バリアフィルム121A、第2バリアフィルム121B、および第3バリアフィルム121Cにおいて、それぞれのEVOH層132におけるアルミニウム蒸着層と接する面をEVOH層132の第1の面と定義し、OPP層133と接する面をEVOH層132の第2の面と定義する。この定義によれば、バリア層22において、第3バリアフィルム121CにおけるEVOH層132の第1の面は、第3バリアフィルム121CにおけるEVOH層132の第2の面よりも、第2バリアフィルム121B側に位置する。また、バリア層22において、第2バリアフィルム121BのEVOH層132における第1の面は、第2バリアフィルム121BのEVOH層132の第2の面よりも、第3バリアフィルム121C側に位置する。すなわち、本実施形態に係る真空断熱材用積層体2のバリア層22の第2バリアフィルム121Bと第3バリアフィルム121Cとは、互いのアルミニウム蒸着層131が対向するように貼り合わされている。なお、特許請求の範囲における請求項5に係る「第1バリアフィルム」および「第2バリアフィルム」は、本実施形態に係る「第2バリアフィルム121B」および「第3バリアフィルム121C」にそれぞれ対応する点を理解されたい。
【0035】
(真空断熱材用積層体2の製造方法)
以下、本実施形態に係る真空断熱材用積層体2の製造方法の一例を説明する。
本実施形態に係る真空断熱材用積層体2を製造する際、まず、補強層21の一方の面と、バリア層22の一方のOPP層133の面との両方に対して、コロナ放電処理を行う。そして、接着剤を介して、コロナ放電処理された補強層21の一方の面に、同じくコロナ放電処理されたバリア層22の一方のOPP層133側の面を接着する。次に、接着剤を介して、アルミニウム蒸着層131が互いに対向するように第2バリアフィルム121Bと第3バリアフィルム121Cとを貼り合わせる。そして、第2バリアフィルム121BのOPP層133側の面と、第1バリアフィルム121Aのアルミニウム蒸着層131側の面とを、接着剤を介して接着し、補強層21およびバリア層22から中間積層体を構成する。最後に、補強層21およびバリア層22から構成された中間積層体における第1バリアフィルム121AのOPP層133側の面と、熱接着性樹脂層23の一方の面との両方に対してコロナ放電処理を行い、接着剤を介して、これらの面を接着する。上述の積層方法により、本実施形態に係る真空断熱材用積層体2を製造できる。
上述の積層方法で製造された本実施形態に係る真空断熱材用積層体2の構成は、「ON層/接着剤/(OPP層//EVOH層)/アルミニウム蒸着層/接着剤/アルミニウム蒸着層/(EVOH層//OPP層)/接着剤/アルミニウム蒸着層/(EVOH層//OPP層)/接着剤/LLDPE層」で表すことができる。
本実施形態に係る真空断熱材用積層体2を製造する際、第1バリアフィルム121Aと、第2バリアフィルム121Bと、第3バリアフィルム121Cとを予め貼り合わせることにより、バリア層22を形成することも可能である。
【0036】
(真空断熱材用積層体2の効果)
以下、本実施形態に係る真空断熱材用積層体2の効果を説明する。
本実施形態に係る真空断熱材用積層体2のバリア層22の第1バリアフィルム121A、第2バリアフィルム121B、および第3バリアフィルム121Cは、第1の実施形態に係る真空断熱材用積層体1のバリア層12の第1バリアフィルム121と同じ構成を有する。このため、本実施形態に係る真空断熱材用積層体2では、第1バリアフィルム121A、第2バリアフィルム121B、および第3バリアフィルム121Cの製造過程におけるアルミニウム蒸着時だけでなく、その後の各バリアフィルムの保存過程においても、アルミニウム蒸着が施されていない側の面を介して、各バリアフィルムのEVOH層132が水蒸気を吸収することを防ぐことができる。このため、本発明の第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0037】
本発明の第1の実施形態に係る真空断熱材用積層体1では、バリア層12の第1バリアフィルム121におけるEVOH層132が相対的に薄いため、厚いEVOH層にアルミニウム蒸着を施した場合と比較すると、例えば、酸素バリア性能が望む性能に達しないことがある。これに対し、本実施形態に係る真空断熱材用積層体2では、バリア層22は、第1バリアフィルム121A、第2バリアフィルム121B、および第3バリアフィルム121Cの複数のバリアフィルムを貼り合わせて形成されている。このため、本実施形態に係る真空断熱材用積層体2は、バリアフィルムを適宜増やすことで簡便に所望のバリア性能を実現できる。
本実施形態に係る真空断熱材用積層体2では、バリア層22において、第2バリアフィルム121Bと第3バリアフィルム121Cとは、互いのアルミニウム蒸着層131が対向するように貼り合わされて構成されている。真空断熱材用積層体2は、このように構成されることで、アルミニウム蒸着層131内にあるピンホールや蒸着のバラツキを互いに補完してバリア性能を落とすことを防止できると共に、蒸着層に外部からの損傷を防ぐことができる。
本実施形態に係る真空断熱材用積層体2によれば、高いバリア性能と、「シワ」や「たるみ」が生じない生産性の高さとが両立できる。
【0038】
(変形例1)
以下、本実施形態の変形例1に係る真空断熱材用積層体2Aを説明する。本変形例に係る真空断熱材用積層体2Aは、本発明の第2の実施形態に係る真空断熱材用積層体2と比較すると、バリア層22Aの構成のみが異なる。
本変形例に係る真空断熱材用積層体2Aのバリア層22Aは、第2の実施形態に係る真空断熱材用積層体2の第2バリアフィルム121Bと第3バリアフィルム121Cとのみが貼り合わされて構成されている。具体的に、本変形例に係る真空断熱材用積層体2Aは、第2バリアフィルム121Bと第3バリアフィルム121Cとの少なくとも一方のアルミニウム蒸着層131において、さらに第1の実施形態に係る真空断熱材用積層体1のバリアコート層143を積層して構成されている。なお、本変形例に係る真空断熱材用積層体2Aは、第2の実施形態に係る真空断熱材用積層体2のように、第2バリアフィルム121Bと第3バリアフィルム121Cとがそれぞれのアルミニウム蒸着層131が対向するように貼り合わされて構成されている。
【0039】
本変形例に係る真空断熱材用積層体2Aの構成の一例は、「ON層/接着剤/(OPP層//EVOH層)/アルミニウム蒸着層/バリアコート層/接着剤/アルミニウム蒸着層/(EVOH層//OPP層)/接着剤//LLDPE層」で表すことができる。
さらに、本変形例に係る真空断熱材用積層体2Aの他の例は、「ON層/接着剤/(OPP層//EVOH層)/アルミニウム蒸着層/バリアコート層/接着剤/バリアコート層/アルミニウム蒸着層/(EVOH層//OPP層)/接着剤//LLDPE層」で表すことができる。
【0040】
本変形例に係る真空断熱材用積層体2Aのバリアコート層は、第1の実施形態に係るバリアコート層143とは異なるバリアコート層であってもよい。本変形例に係る真空断熱材用積層体2Aの第2バリアフィルム121Bと第3バリアフィルム121Cとに対して、異なるバリアコート層を積層してもよい。
本変形例に係る真空断熱材用積層体2Aによれば、本発明の第2の実施形態同様の効果を奏する。
【0041】
(変形例2)
次に、本実施形態の変形例2に係る真空断熱材用積層体2Bを説明する。本変形例に係る真空断熱材用積層体2Bは、第2の実施形態に係る真空断熱材用積層体2と比較すると、バリア層22Bの構成のみが異なる。
本変形例に係る真空断熱材用積層体2Bのバリア層22Bは、第2の実施形態に係る真空断熱材用積層体2の第1バリアフィルム121Aと第2バリアフィルム121Bとのみが貼り合わされて構成されている。具体的に、本変形例に係る真空断熱材用積層体2Bは、第1バリアフィルム121Aと第2バリアフィルム121Bとの少なくとも一方のアルミニウム蒸着層131において、さらに第1の実施形態に係る真空断熱材用積層体1のバリアコート層143を積層して構成されている。なお、本変形例に係る真空断熱材用積層体2Bは、第2の実施形態に係る真空断熱材用積層体2のように、第1バリアフィルム121Aと第2バリアフィルム121Bとがそれぞれのアルミニウム蒸着層131が対向しないように貼り合わされて構成されている。
【0042】
本変形例に係る真空断熱材用積層体2Bの構成の一例は、「ON層/接着剤/バリアコート層/アルミニウム蒸着層/(EVOH層//OPP層)/接着剤/アルミニウム蒸着層/(EVOH層//OPP層)/接着剤/LLDPE層」で表すことができる。
さらに、本変形例に係る真空断熱材用積層体2Bの構成の他の例は、「ON層/接着剤/バリアコート層/アルミニウム蒸着層/(EVOH層//OPP層)/接着剤/(OPP層//EVOH層)/アルミニウム蒸着層/接着剤/LLDPE層」であってもよい。
本変形例に係る真空断熱材用積層体2Bのバリアコート層は、第1の実施形態に係るバリアコート層143とは異なるバリアコート層であってもよい。
本変形例に係る真空断熱材用積層体2Bによれば、上述同様の効果を奏する。
【0043】
(変形例3)
次に、本実施形態の変形例3に係る真空断熱材用積層体2Cを説明する。本変形例に係る真空断熱材用積層体2Cは、第2の実施形態に係る真空断熱材用積層体2と比較すると、バリア層22Cの構成のみが異なる。
本変形例に係る真空断熱材用積層体2Cのバリア層22Cは、第1バリアフィルム121Aと、第2バリアフィルム121Bと、第3バリアフィルム121Cとが貼り合わされて構成されている。ただし、本変形例に係る真空断熱材用積層体2Cのバリア層22Cの第1バリアフィルム121A、第2バリアフィルム121B、および第3バリアフィルム121Cは、それぞれのアルミニウム蒸着層131が互いに対向しないように貼り合わされている。
【0044】
本変形例に係る真空断熱材用積層体2Cの構成は、例えば、図5に示されたように、「ON層/接着剤/アルミニウム蒸着層/(EVOH層//OPP層)/接着剤/アルミニウム蒸着層/(EVOH層//OPP層)/接着剤/アルミニウム蒸着層/(EVOH層//OPP層)/接着剤/LLDPE層」で表すことができる。
本変形例に係る真空断熱材用積層体2Cの構成の他の例は、例えば、「ON層/接着剤/(OPP層//EVOH層)/アルミニウム蒸着層/接着剤/(OPP層//EVOH層)/アルミニウム蒸着層/接着剤/(OPP層//EVOH層)/アルミニウム蒸着層/接着剤/LLDPE層」で表すことができる。
さらに、本変形例に係る真空断熱材用積層体2Cの構成のもう一つの例は、例えば、「ON層/接着剤/アルミニウム蒸着層/(EVOH層//OPP層)/接着剤/(OPP層//EVOH層)/アルミニウム蒸着層/接着剤/(OPP層//EVOH層)/アルミニウム蒸着層/接着剤/LLDPE層」であってもよい。
さらに、本変形例に係る真空断熱材用積層体2Cの構成のもう一つの例は、例えば、「ON層/接着剤/アルミニウム蒸着層/(EVOH層//OPP層)/接着剤/アルミニウム蒸着層/(EVOH層//OPP層)接着剤/(OPP層//EVOH層)/アルミニウム蒸着層/接着剤/LLDPE層」であってもよい。
また、上述の変形例1および変形例2のように、第1バリアフィルム121Aと、第2バリアフィルム121Bと、第3バリアフィルム121Cとの少なくとも1つのアルミニウム蒸着層131において、第1の実施形態に係る真空断熱材用積層体1のバリアコート層143を積層して構成されてもよい。
上述の本変形例に係る真空断熱材用積層体2Cの各構成によれば、本発明の第2実施形態に係る真空断熱材用積層体2同様の効果を奏する。
【0045】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係る真空断熱材3について、図6を参照して説明する。図6は、本実施形態に係る真空断熱材3の構成を示す断面模式図である。図6に示されたように、真空断熱材3は、外包材4と、外包材4の内部に封入された断熱芯材20とを備える。本実施に係る真空断熱材3の外包材4は、本発明の第1の実施形態に係る真空断熱材用積層体1、第2の実施形態に係る真空断熱材用積層体2、あるいは第2の実施形態の各変形例に係る真空断熱材用積層体を用いて構成される。
【0046】
以下、本発明の第1の実施形態に係る真空断熱材用積層体1を用いて、本実施形態に係る真空断熱材3を製造する方法を一例として説明する。
まず、一対の矩形状の真空断熱材用積層体1を、互いの熱接着性樹脂層13が対向するように重ね合わせてから、熱接着することにより、袋状の外包材4を構成する。袋状の外包材4は、三周縁辺に熱接着部Aが形成され、一辺に開口部(非図示)が形成されている。次に、袋状の外包材4の開口部より、断熱芯材20を内部に挿入し収容する。断熱芯材20が外包材4の内部に収容された状態で、外包材4の内部のガスを抽出し真空状態を作り出し、外包材4の内部の真空状態を保ったまま、開口部を熱接着する。このような方法により、四方シールタイプの外包材4からなる真空断熱材3を製造できる。
外包材4は、四方シールタイプに限ることなく、三方シールタイプであって、ガセットタイプ、ピロータイプ等の適宜の形態に構成されることができる。
【0047】
断熱芯材20の材料としては、例えば、シリカ、パーライト、珪酸カルシウム等の無機材料、あるいは、ポリウレタンフォーム等の有機材料が用いられる。また、断熱芯材20の形態としては、微粉末、多孔質、繊維質等を挙げることができる。
【0048】
真空断熱材3において、外包材4の内部圧力は大気圧より低く構成されている。通常、真空断熱材3の外包材4の内部は、5Pa以下の真空状態が保たれ、対流による熱伝導が極力小さくなるよう構成される。一方、真空断熱材3の内部の真空度が5Paより大きいと、内部に残留する空気が対流して、断熱性能が低下する場合がある。
【0049】
本実施形態に係る真空断熱材3によれば、従来の真空断熱材用積層体を用いて構成された真空断熱材同等以上の断熱性能を有する。
【0050】
(真空断熱材用積層体の性能評価)
以下、水蒸気バリア性および酸素バリア性の観点から、本発明の第1の実施形態に係る真空断熱材用積層体1、本発明の第2の実施形態に係る真空断熱材用積層体2、および従来の真空断熱材用積層体の性能を評価し、これらの性能評価の結果を表1に示す。具体的に、本発明の第1の実施形態に係る真空断熱材用積層体1内に断熱芯材20(図6参照)を封入し、真空状態になるように脱気して、本発明の実施例1の真空断熱材3(図6参照)を構成する。同様に、本発明の第2の実施形態に係る真空断熱材用積層体2を用いて本発明の実施例2の真空断熱材3を構成する。また、従来の真空断熱材用積層体を用いて比較例1の真空断熱材を構成する。
【0051】
実施例1、実施例2、および比較例1の真空断熱材における真空断熱材用積層体の構成を説明する。
実施例1に係る真空断熱材用積層体は、「ON層/接着剤/PET層/アルミニウム蒸着層/バリアコート層/接着剤/アルミニウム蒸着層/(EVOH層//OPP層)/接着剤/LLDPE層」という構成を有する。実施例1の真空断熱材用積層体は、15μm厚さのON層によって構成された補強層11と、12μm厚さのPET層を有する第2バリアフィルム122と、2μm厚さのEVOH層および13μm厚さのOPP層を有する第1バリアフィルム121と、50μm厚さのLLDPE層によって構成された熱接着性樹脂層13とを順に積層して構成されている。
【0052】
実施例2の真空断熱材における真空断熱材用積層体は、「ON層/接着剤/(OPP層//EVOH層)/アルミニウム蒸着層/接着剤/アルミニウム蒸着層/(EVOH層//OPP層)/接着剤/アルミニウム蒸着層/(EVOH層//OPP層)/接着剤/LLDPE層」という構成を有する。実施例2の真空断熱材用積層体は、15μm厚さのON層によって構成された補強層21と、それぞれ2μm厚さのEVOH層および13μm厚さのOPP層を有する第1バリアフィルム121C、第2バリアフィルム121B、および第3バリアフィルム121Aと、50μm厚さのLLDPE層によって構成された熱接着性樹脂層13とを順に積層して構成されている。
【0053】
比較例1の真空断熱材用積層体は、本発明の第1の実施形態に係る真空断熱材用積層体1のバリア層12の第1バリアフィルム121の構成を15μm厚さのEVOH層にアルミニウム蒸着を施した構成で置き換えて構成されている。具体的に、比較例1の真空断熱材用積層体は、15μm厚さのON層によって構成された補強層と、12μm厚さのPET層を有する第2バリアフィルムと、15μm厚さのEVOH層を有する第1バリアフィルムと、50μm厚さのLLDPE層によって構成された熱接着性樹脂層とを順に積層して構成されている。比較例1の真空断熱材用積層体の構成は、「ON層/接着剤/PET層/アルミニウム蒸着層/バリアコート層/接着剤/アルミニウム蒸着層/EVOH層/接着剤/LLDPE層」で表すことができる。
なお、実施例1、実施例2、および比較例1のそれぞれの真空断熱材用積層体において、アルミニウム蒸着層の厚さは600オングストロームである。
【0054】
真空断熱材用積層体の性能評価の指標として、真空断熱材用積層体の透湿度、および酸素ガス透過度を用いた。真空断熱材用積層体の透湿度は、40℃、90%RHの環境下で、JIS Z 0208[透湿度試験(カップ法)]に準拠して、2週間および4週間保存されることに相当する加速試験で測定した。真空断熱材用積層体の透湿度の単位は、g/m・dayである。真空断熱材用積層体の酸素ガス透過度は、30℃、70%RHの環境下で、MOCON社製のOX―TRAN(登録商標) MODEL2/21を用いて、2週間および4週間保存されることに相当する加速試験で測定した。真空断熱材用積層体の酸素ガス透過度の単位は、cc/m・day・atmである。
【0055】
【表1】
【0056】
(真空断熱材用積層体の性能評価結果)
表1に示されたように、実施例1、実施例2、および比較例1における保存前の真空断熱材用積層体の透湿度は、同じく0.02g/m・dayであった。また、実施例1、実施例2、および比較例1における保存前の真空断熱材用積層体の酸素ガス透過度は、それぞれ0.08cc/m・day・atm、0.06cc/m・day・atm、および0.05cc/m・day・atmであった。すなわち、実施例1、実施例2、および比較例1における保存前の真空断熱材用積層体のガスバリア性能は、同等レベルであると言える。
【0057】
一方、実施例1、実施例2、および比較例1の真空断熱材用積層体を2週間および4週間の加速試験を経た後のガスバリア性能の指標として、上述した実施例1、実施例2、および比較例1の真空断熱材サンプルの熱伝導率を示す。表1に示されたように、例えば、実施例1の真空断熱材は、初期の熱伝導率が0.0018W/m/Kであり、2週間保存後の熱伝導率が0.0023W/m/Kであり、4週間保存後の熱伝導率が0.0033W/m/Kである。また、実施例2の真空断熱材は、初期の熱伝導率が0.0017W/m/Kであり、2週間保存後の熱伝導率が0.0020W/m/Kであり、4週間保存後の熱伝導率が0.0030W/m/Kである。一方、比較例1の真空断熱材は、初期の熱伝導率が0.0015W/m/Kであり、2週間保存後の熱伝導率が0.0020/m/Kであり、4週間保存後の熱伝導率が0.0030W/m/Kである。このため、4週間保存後の実施例1の真空断熱材、実施例2の真空断熱材、および比較例1の真空断熱材のガスバリア性能は、同等レベルであると言える。すなわち、EVOH層が薄く形成された実施例1および実施例2の真空断熱材のガスバリア性能は、EVOH層が厚く形成された比較例1の真空断熱材と比べて、遜色なかった。
【0058】
また、比較例1の真空断熱材用積層体によれば、「シワ」および「たるみ」による品質不良は約15%であり、表1において「×」で示す。これに対して、実施例1に係る真空断熱材用積層体および実施例2に係る真空断熱材用積層体のいずれを用いた場合も、「シワ」および「たるみ」による品質不良は生じなかった。すなわち、実施例1に係る真空断熱材用積層体あるいは実施例2に係る真空断熱材用積層体を用いた場合、品質不良は0であり、表1において「○」で示す。
【0059】
実施例1に係る真空断熱材用積層体および実施例2に係る真空断熱材用積層体のいずれも、単層EVOH層にアルミニウム蒸着を施して構成された比較例1に係る真空断熱材用積層体と同等レベルのガスバリア性(水蒸気バリア性および酸素バリア性)を有する。
以上より、本発明の第1の実施形態に係る真空断熱材用積層体1および第2の実施形態に係る真空断熱材用積層体2は、ガスバリア性能と生産性とが高いレベルで両立されていることが示された。
【0060】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の各実施形態及び変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0061】
本発明の第2の実施形態には、真空断熱材用積層体2のバリア層22は、3つのバリアフィルム121A、121B、および121Cを積層して構成される例を説明したが、この構成に限定されない。真空断熱材用積層体2のバリア層22は、2つ以上のバリアフィルムを積層して構成されればよく、実際の用途に合わせて、所望のバリア性能を実現するために適宜複数のバリアフィルムを積層して構成されることができる。例えば、真空断熱材用積層体2のバリア層22においては、4枚以上のバリアフィルムが貼り合わされてもよい。また、真空断熱材用積層体2のバリア層22においては、複数のバリアフィルムの1つがアルミニウム蒸着層を有さなくてもよい。
【0062】
本発明の第1の実施形態に係る真空断熱材用積層体1および第2の実施形態に係る真空断熱材用積層体2を真空断熱材に使用する例を説明したが、真空断熱材用積層体1および真空断熱材用積層体2における「アルミニウム蒸着層/(EVOH層//OPP層)」という構成のバリアフィルムに、その他の機能を有するバリアコート層をさらに積層することで、真空断熱材に使用されるに限らず、その他の用途に使用されることも可能である。
【符号の説明】
【0063】
1,2,2A,2B,2C 真空断熱材用積層体
11,21 補強層
12,22,22A,22B,22C バリア層
121,121A 第1バリアフィルム
122,121B 第2バリアフィルム
121C 第3バリアフィルム
13,23 熱接着性樹脂層
3 真空断熱材
4 外包材
20 断熱芯材
131,142 アルミニウム蒸着層
132 エチレン-ビニルアルコール共重合体層(EVOH層)
133 延伸ポリプロピレン層(OPP層)
141 ポリエチレンテレフタレート層(PET層)
143 バリアコート層
A 熱接着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6