(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】アミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20220524BHJP
【FI】
C07F7/18 M
(21)【出願番号】P 2019000615
(22)【出願日】2019-01-07
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣神 宗直
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-517707(JP,A)
【文献】特開平08-081478(JP,A)
【文献】特表2010-535732(JP,A)
【文献】特開平04-230395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/02- 7/21
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】
[式中、R
1は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表し、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基または下記式(4)で表される官能基を表
すが、R
2
およびR
3
のうちいずれかが、下記式(4)の官能基で表され、mは、1~3の整数を表し、nは、1~12の整数を表し、Meは、メチル基を意味する。
【化2】
(式中、アスタリスク*は、隣接原子との結合を表し、pは、1~12の整数を表し、qは、
2~10の整数を表す。)]
で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法であって、
(A):下記式(2)
【化3】
(式中、R
2およびR
3は、前記と同じ意味を表す。)
で表されるアミン化合物と、下記式(3)
【化4】
(式中、Xは、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を表し、R
1およびnは、前記と同じ意味を表す。)
で表されるハロゲン基含有有機ケイ素化合物とを反応させる工程、
(B):前記工程(A)で生成したアミンハロゲン化水素酸塩を分液操作で除去する工程、および
(C):前記工程(B)で得られた有機層を、当該有機層に含まれるハロゲン化物イオンに対して0.1~0.95モル当量の塩基で中和する工程
を含むことを特徴とするアミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法。
【請求項2】
前記工程(C)において、前記塩基が式(5)で表される請求項1記載のアミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法。
【化5】
(式中、Mは、リチウム、ナトリウムまたはカリウムを表し、R
4は、炭素数1~10のアルキル基を表す。)
【請求項3】
前記工程(B)において、前記分液操作が、60℃以上の温度で行われる請求項1
または2記載のアミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アミノ基含有有機ケイ素化合物は、表面処理剤や、組成物の接着助剤として広く使用されている。
このアミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法としては、クロロ基含有有機ケイ素化合物とアミン化合物とを反応させる方法が知られている。クロロ基含有有機ケイ素化合物とアミン化合物の反応で生成したアミン塩酸塩は、濾過または分液により除去するのが一般的である。
例えば、特許文献1では、生成した固体のアミン塩酸塩を異なるアミン化合物を添加することで液状化させ、分液操作により除去する方法が開示されている。
【0003】
しかし、異なるアミン化合物を添加する方法は、分液により生産性を向上させることはできるが、原料アミン化合物とは異なるアミン化合物が系中に混在することになるため、蒸留時に回収したアミン化合物の純度が低下し、リサイクルできないといった問題がある。また、異なるアミン化合物が混入したアミノ基含有有機ケイ素化合物が着色しやすいといった問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、生産性が高く、着色の少ないアミノ基含有有機ケイ素化合物が得られる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ハロゲン基含有有機ケイ素化合物とアミン化合物を反応させて生じたアミン塩酸塩を分液により除去した後、所定量の塩基を用いて中和することにより、着色の少ないアミノ基含有有機ケイ素化合物が高収率で得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
1. 下記式(1)
【化1】
[式中、R
1は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表し、R
2およびR
3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基または下記式(4)で表される官能基を表し、mは、1~3の整数を表し、nは、1~12の整数を表し、Meは、メチル基を意味する。
【化2】
(式中、アスタリスク*は、隣接原子との結合を表し、pは、1~12の整数を表し、qは、1~10の整数を表す。)]
で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法であって、
(A):下記式(2)
【化3】
(式中、R
2およびR
3は、前記と同じ意味を表す。)
で表されるアミン化合物と、下記式(3)
【化4】
(式中、Xは、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を表し、R
1およびnは、前記と同じ意味を表す。)
で表されるハロゲン基含有有機ケイ素化合物とを反応させる工程、
(B):前記工程(A)で生成したアミンハロゲン化水素酸塩を分液操作で除去する工程、および
(C):前記工程(B)で得られた有機層を、当該有機層に含まれるハロゲン化物イオンに対して0.1~0.95モル当量の塩基で中和する工程
を含むことを特徴とするアミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法、
2. 前記工程(C)において、前記塩基が式(5)で表される1のアミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法、
【化5】
(式中、Mは、リチウム、ナトリウムまたはカリウムを表し、R
4は、炭素数1~10のアルキル基を表す。)
3. 前記qが、2~10の整数である1または2のアミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法、
4. 前記工程(B)において、前記分液操作が、60℃以上の温度で行われる1~3のいずれかのアミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の製造方法によれば、着色の少ないアミノ基含有有機ケイ素化合物を、高い生産性で得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に係る下記式(1)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法は、
【化6】
(式中、Meは、メチル基を意味する。以下同様。)
(A):下記式(2)で表されるアミン化合物と、下記式(3)で表されるハロゲン基含有有機ケイ素化合物とを反応させる工程、
【化7】
(式(3)中、Xは、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を表す。)
(B):工程(A)で生成したアミンハロゲン化水素酸塩を分液操作で除去する工程、および
(C):工程(B)で得られた有機層を、当該有機層に含まれるハロゲン化物イオンに対して0.1~0.95モル当量の塩基で中和する工程
を含むことを特徴とする。
【0010】
上記各式において、R1は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を表す。
炭素数1~10のアルキル基としては、直鎖状、環状、分枝状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル基等が挙げられる。
炭素数6~10のアリール基の具体例としては、フェニル、α-ナフチル、β-ナフチル基等が挙げられる。
これらの中でも、R1としては、直鎖のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0011】
mは、1~3の整数を表すが、好ましくは2~3の整数である。
nは、1~12の整数を表すが、原料調達の観点から、好ましくは1~8の整数であり、より好ましくは3である。
【0012】
また、R2およびR3は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基または下記式(4)で表される官能基を表す。この炭素数1~10のアルキル基の具体例としては、上記と同様のものが挙げられる。
これらの中でも本発明の製造方法は、R2およびR3のうちいずれかが、上記式(4)の官能基で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法に適している。
【0013】
【化8】
(式中、アスタリスク*は、隣接原子との結合を表す。)
【0014】
式(4)において、pは、1~12の整数を表すが、原料調達の観点から、好ましくは1~8の整数であり、より好ましくは2である。
また、qは、1~10の整数を表すが、原料調達の観点から、好ましくは1~8の整数であり、本発明の製造方法は、特に、qが2~8のアミノ基含有有機ケイ素化合物の製造方法に適している。
【0015】
上記式(1)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物としては、特に限定されるものではないが、下記式(6)、(7)および(8)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物が挙げられ、本発明の製造方法は、特にこれらの有機ケイ素化合物の製造に適している。
【0016】
【化9】
(式中、R
1およびmは上記と同じ意味を表す。)
【0017】
また、工程(A)で用いられる、上記式(3)で表されるハロゲン基含有有機ケイ素化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、下記式(9)~(12)で表すものが挙げられる。
【0018】
【化10】
(式中、R
1およびmは上記と同じ意味を表す。)
【0019】
一方、上記式(2)で表されるアミン化合物としても特に限定されるものではないが、例えば、上記式(6)~(8)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物の原料となる、下記式(13)~(15)で表される化合物等が挙げられる。
【0020】
【0021】
本発明の製造方法の工程(A)において、上記式(2)で表されるアミン化合物の使用量は、上記式(3)で表されるハロゲン基含有有機ケイ素化合物1モルに対し、2~10モルが好ましく、2~4モルがより好ましい。
また、工程(A)の反応温度は、反応性を高めて生産性を向上させるとともに、副反応を抑制して生成物の品質をより高めることを考慮すると、80~200℃が好ましく、100~180℃がより好ましい。
【0022】
続いて、本発明の製造方法の工程(B)では、工程(A)で生成(副生)した、原料として用いた式(2)で表されるアミン化合物のハロゲン化水素酸塩を、上述した特許文献1のように異なるアミン化合物を添加せずに分液操作によって除去する。
工程(B)の処理温度は、反応系を液状に保って分液効率を高めることを考慮すると、40~150℃が好ましく、60~120℃がより好ましい。
【0023】
さらに、本発明の製造方法の工程(C)では、工程(B)でハロゲン化水素酸塩を除去した有機層に含まれるハロゲン化物イオンを測定し、そこで求められたハロゲン化物イオン量に対し、0.1~0.95モル当量、好ましくは0.5~0.95モル当量の塩基を用いて有機層の中和を行う。
この際、塩基の量が0.1モルより少ない場合、その後の蒸留操作によって得られるアミノ基含有有機ケイ素化合物の収率が低くなり、生産性が悪化する。一方、塩基の量が0.95モルより多い場合、蒸留操作によって得られるアミノ基含有有機ケイ素化合物が着色する。
なお、ハロゲン化イオンの量は、硝酸銀を滴下することにより測定することができる。
【0024】
工程(C)で用いられる塩基としては、特に限定されるものではないが、下記式(5)で表される塩基が好ましい。
【0025】
【0026】
式(5)において、Mは、リチウム、ナトリウムまたはカリウムを表し、R4は、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~5のアルキル基を表す。炭素数1~10のアルキル基としては、上記で例示した基と同様のもの挙げられる。
【0027】
式(5)で表される塩基の具体例としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、メトキシカリウム、エトキシカリウム、メトキシリチウム、エトキシリチウム等が挙げられる。
【0028】
なお、工程(C)の後は、(D)蒸留によってアミノ基含有有機ケイ素化合物を精製することが好ましい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、反応率や純度は、Agilent6890Nを用いてGC測定により求めた。クロル分は、硝酸銀滴定法により求めた。
【0030】
[実施例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた5Lセパラブルフラスコに、ジエチレントリアミン(東ソー(株)製)2,477g(24mol)を納め、125℃でクロロプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)1,590g(8mol)を5時間かけて滴下した後、130℃で3時間熟成を行った。GCにより反応率を確認したところ、反応率は100%であった。
その後、内温を80℃まで冷却し、分液操作でアミン塩酸塩層を除いた。得られた有機層は2,500gであり、その有機層に含まれるクロル分は5,500ppmであった。有機層の中に0.39molのクロル分が存在する計算となる。
アミン塩酸塩を除去した有機層に、25℃でナトリウムメトキシド28%メタノール溶液63g(ナトリウムメトキシドとして0.32mol)を投入し、25℃で3時間撹拌した。撹拌終了後、蒸留精製し、下記式(16)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物を主成分(純度88%)とする目的物1,335gを得た。目的物の外観はハーゼン色数10の無色透明液体であった。また、ジエチレントリアミンを600g回収した。ジエチレントリアミンの純度は98%であり、残り2%はメタノールであった。
【0031】
【0032】
[実施例2]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた5Lセパラブルフラスコに、ジエチレントリアミン(東ソー(株)製)2,477g(24mol)を納め、125℃でクロロプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)1,590g(8mol)を5時間かけて滴下した後、130℃で3時間熟成を行った。GCにより反応率を確認したところ、反応率は100%であった。
その後、内温を80℃まで冷却し、分液操作でアミン塩酸塩層を除いた。得られた有機層は2,500gであり、その有機層に含まれるクロル分は5,500ppmであった。有機層の中に0.39molのクロル分が存在する計算となる。
アミン塩酸塩を除去した有機層に、25℃でナトリウムメトキシド28%メタノール溶液39g(ナトリウムメトキシドとして0.20mol)を投入し、25℃で3時間撹拌した。撹拌終了後、蒸留精製し、上記式(16)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物を主成分(純度88%)とする目的物1,300gを得た。目的物の外観はハーゼン色数10の無色透明液体であった。また、ジエチレントリアミンを600g回収した。ジエチレントリアミンの純度は98%であり、残り2%はメタノールであった。
【0033】
[比較例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた5Lセパラブルフラスコに、ジエチレントリアミン(東ソー(株)製)2,477g(24mol)を納め、125℃でクロロプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)1,590g(8mol)を5時間かけて滴下した後、130℃で3時間熟成を行った。GCにより反応率を確認したところ、反応率は100%であった。
その後、内温を80℃まで冷却し、分液操作でアミン塩酸塩層を除いた。得られた有機層は2,500gであり、その有機層に含まれるクロル分は5,500ppmであった。有機層の中に0.39molのクロル分が存在する計算となる。
アミン塩酸塩を除去した有機層に、25℃でナトリウムメトキシド28%メタノール溶液77g(ナトリウムメトキシドとして0.40mol)を投入し、25℃で3時間撹拌した。撹拌終了後、蒸留精製し、上記式(16)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物を主成分(純度88%)とする目的物1,350gを得た。目的物の外観はハーゼン色数200の黄色透明液体であった。また、ジエチレントリアミンを600g回収した。ジエチレントリアミンの純度は98%であり、残り2%はメタノールであった。
【0034】
[比較例2]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた5Lセパラブルフラスコに、ジエチレントリアミン(東ソー(株)製)2,477g(24mol)を納め、125℃でクロロプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)1,590g(8mol)を5時間かけて滴下した後、130℃で3時間熟成を行った。GCにより反応率を確認したところ、反応率は100%であった。
その後、内温を80℃まで冷却し、分液操作でアミン塩酸塩層を除いた。得られた有機層は2,500gであり、その有機層に含まれるクロル分は5,500ppmであった。有機層の中に0.39molのクロル分が存在する計算となる。
アミン塩酸塩を除去した有機層に、25℃でナトリウムメトキシド28%メタノール溶液154g(ナトリウムメトキシドとして0.80mol)を投入し、25℃で3時間撹拌した。撹拌終了後、蒸留精製し、上記式(16)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物を主成分(純度88%)とする目的物1,360gを得た。目的物の外観はハーゼン色数300の黄色透明液体であった。また、ジエチレントリアミンを600g回収した。ジエチレントリアミンの純度は98%であり、残り2%はメタノールであった。
【0035】
[比較例3]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた5Lセパラブルフラスコに、ジエチレントリアミン(東ソー(株)製)2,477g(24mol)を納め、125℃でクロロプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)1,590g(8mol)を5時間かけて滴下した後、130℃にて3時間熟成を行った。GCにより反応率を確認したところ、反応率は100%であった。
その後、内温を80℃まで冷却し、分液操作でアミン塩酸塩層を除いた。得られた有機層は2,500gであり、その有機層に含まれるクロル分は5,500ppmであった。
アミン塩酸塩を除去した有機層を蒸留精製し、上記式(16)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物を主成分(純度88%)とする目的物1,000gを得たが、蒸留中に釜中が塩により固化した。目的物の外観はハーゼン色数10の無色透明液体であった。また、ジエチレントリアミンを600g回収した。ジエチレントリアミンの純度は98%であり、残り2%はメタノールであった。
【0036】
[比較例4]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた5Lセパラブルフラスコに、ジエチレントリアミン(東ソー(株)製)2,477g(24mol)を納め、125℃でクロロプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)1,590g(8mol)を5時間かけて滴下した後、130℃にて3時間熟成を行った。GCにより反応率を確認したところ、反応率は100%であった。
その後、内温を30℃まで冷却し、分液操作を試みたが、有機層と塩酸塩層が分離せず、分液操作を行うことができなかった。
【0037】
[比較例5]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた5Lセパラブルフラスコに、ジエチレントリアミン(東ソー(株)製)2,477g(24mol)を納め、125℃でクロロプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)1,590g(8mol)を5時間かけて滴下した後、130℃で3時間熟成を行った。GCにより反応率を確認したところ、反応率は100%であった。さらに、エチレンジアミン(東ソー(株)製)481g(8mol)を30℃で投入し、3時間撹拌した後、分液操作でアミン塩酸塩層を除いた。得られた有機層は2,700gであり、その有機層に含まれるクロル分は3,000ppmであった。
アミン塩酸塩を除去した有機層を蒸留精製し、上記式(16)で表されるアミノ基含有有機ケイ素化合物を主成分(純度88%)とする目的物1,300gを得た。目的物の外観はハーゼン色数20の無色透明液体であった。また、ジエチレントリアミンを700g回収した。ジエチレントリアミンの純度は90%であり、残り8%はエチレンジアミン、2%はメタノールであった。なお、回収ジエチレントリアミンにエチレンジアミンが含まれているため、そのまま次の反応に用いることができない。