(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】エアジェット織機の緯糸処理装置
(51)【国際特許分類】
D03D 47/30 20060101AFI20220524BHJP
【FI】
D03D47/30
(21)【出願番号】P 2019003965
(22)【出願日】2019-01-14
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】室谷 春樹
(72)【発明者】
【氏名】荒井 隆二
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-085351(JP,A)
【文献】特開昭64-052850(JP,A)
【文献】特開2001-011753(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D29/00-51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインノズルから射出され、緯入れミスと判別された緯糸を緯入れ経路側方の緯糸引取り経路へ吹き付け誘導するブローノズルと、
スレイと一体となって前後に揺動可能であり、前記緯糸引取り経路へ吹き付け誘導された前記緯糸が導入される緯糸導入ダクトと、
前記緯糸引取り経路に備えられ、前記緯糸導入ダクトに誘導された前記緯糸を一対のローラによって引き取る緯糸引取り機構と、
前記緯糸引取り経路に引き取られる前記緯糸を光学的に検出する緯糸検出器と、を備えたエアジェット織機の緯糸処理装置において、
前記緯糸が導入されるガイド凹部を有し、前記ガイド凹部に導入された緯糸を検出する位置で前記緯糸検出器を支持する緯糸ガイド部材を備え、
前記緯糸ガイド部材は、織前側が頂部となって前記ガイド凹部を形成する織前側頂部と経糸の送り出し側が頂部となって前記ガイド凹部を形成する送り出し側頂部とを備え、
前記織前側頂部は、前記一対のローラが緯糸を圧接する前の状態では前記緯糸引取り経路よりも上方に位置することを特徴とするエアジェット織機の緯糸処理装置。
【請求項2】
前記緯糸ガイド部材は、前記一対のローラによる緯糸の引き取り時に前記緯糸へ向けて移動可能であることを特徴とする請求項1記載のエアジェット織機の緯糸処理装置。
【請求項3】
前記ガイド凹部の最深部から前記織前側頂部までの距離は、前記ガイド凹部の最深部から前記送り出し側頂部までの距離よりも短いことを特徴とする請求項1又は2記載のエアジェット織機の緯糸処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エアジェット織機の緯糸処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアジェット織機の緯糸処理装置の従来技術としては、例えば、特許文献1に開示された織機における不良緯糸処理装置が知られている。この種の緯糸処理装置は、緯入れミスをした緯糸を、緯入れ経路の側方に設けた緯糸導入ダクトへ誘導し、緯糸導入ダクトに誘導された緯糸を一対のローラの圧接により引き取り、引き取られる緯糸に回動検出アームを当接させて緯糸を検出する。
【0003】
また、別の従来技術として、例えば、特許文献2に開示された流体噴射式織機における不良糸除去装置が知られている。この種の緯糸処理装置は、不良糸を捕捉して巻き取る巻き取り器と、不良糸を検出する検出器とを有している。緯入れ不良の発生時には、給糸カッタによる不良糸の切断を回避して、緯入れ用のメインノズル側の緯糸と不良糸とをつながった状態とし、巻き取り器をメインノズル近傍の捕捉位置に移動させ、不良糸を捕捉する。その後、巻き取り器を巻き取り位置に移動させ、メインノズル側の緯糸から切断された状態の不良糸を巻き取り器により織布から抜き取る。不良糸を検出する検出器は、移動ブラケットのアームの部分に取り付けられている。検出器のケーシングは、先端に向かって広がる一対の案内壁と、一対の案内壁の収束方向に位置する検出壁とを有し、検出壁の近傍を検出領域としている。一対の案内壁は、巻き取り器の巻き取り位置への移動時に、進行方向側が開口するように設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平1-85351号公報
【文献】特開2001-11753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された緯糸処理装置が備える回動検出アームには風綿が付着しやすく、頻繁に風綿を取り除く作業が必要になる。そこで、特許文献1の緯糸処理装置に特許文献2の緯糸検出器を適用することも考えられる。特許文献1の緯糸処理装置では、緯糸導入ダクトに導入された緯糸は、緯糸導入ダクトとともに筬の揺動に対応して前方から後方の緯糸引き取り位置へ移動する。つまり、緯糸導入ダクトに導入された緯糸の筬の揺動に伴う移動経路は緯糸導入ダクトの移動によって決定する。一方、特許文献2の緯糸検出器は、先端に向かって広がる一対の案内壁と、一対の案内壁の収束方向に位置する検出壁とを有し、検出壁の近傍を検出領域としている。したがって、特許文献2の緯糸検出器の検出領域に緯糸が導かれるように、特許文献2の一対の案内壁を有する緯糸検出器を単に適用した場合、緯糸検出器が緯糸と干渉して緯糸の緯糸引き取り位置への移動を妨げるという問題がある。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、緯糸検出器が緯入れミスした緯糸の移動を妨げることなく、緯糸を確実に検出することができるとともに緯糸検出器に付着する風綿を除去することが可能なエアジェット織機の緯糸処理装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、メインノズルから射出され、緯入れミスと判別された緯糸を緯入れ経路側方の緯糸引取り経路へ吹き付け誘導するブローノズルと、スレイと一体となって前後に揺動可能であり、前記緯糸引取り経路へ吹き付け誘導された前記緯糸が導入される緯糸導入ダクトと、前記緯糸引取り経路に備えられ、前記緯糸導入ダクトに誘導された前記緯糸を一対のローラによって引き取る緯糸引取り機構と、前記緯糸引取り経路に引き取られる前記緯糸を光学的に検出する緯糸検出器と、を備えたエアジェット織機の緯糸処理装置において、前記緯糸が導入されるガイド凹部を有し、前記ガイド凹部に導入された緯糸を検出する位置で前記緯糸検出器を支持する緯糸ガイド部材を備え、前記緯糸ガイド部材は、織前側が頂部となって前記ガイド凹部を形成する織前側頂部と経糸の送り出し側が頂部となって前記ガイド凹部を形成する送り出し側頂部とを備え、前記織前側頂部は、前記一対のローラが緯糸を圧接する前の状態では前記緯糸引取り経路よりも上方に位置することを特徴とする。
【0008】
本発明では、緯入れミスと判別された緯糸は、ブローノズルの吹き付けにより緯糸導入ダクトに導入される。緯糸導入ダクトの緯糸は緯糸導入ダクトの移動によって緯糸引取り経路に移動し、緯糸引取り機構の一対のローラによって引き取られる。緯糸検出器は、引き取られる緯糸を光学的に検出する。一対のローラが緯糸を圧接する前の状態では緯糸ガイド部材の織前側頂部が緯糸引取り経路よりも上方に位置するので、緯糸が緯糸引取り経路に移動されるとき、緯糸ガイド部材に干渉することはない。また、緯糸が引き取られるとき、緯糸がガイド凹部に案内されるので、緯糸を確実に検出することができるほか、ガイド凹部に存在する風綿が緯糸によって除去することができる。
【0009】
また、上記のエアジェット織機の緯糸処理装置において、前記緯糸ガイド部材は、前記一対のローラによる緯糸の引き取り時に前記緯糸へ向けて移動可能である構成としてもよい。
この場合、緯糸ガイド部材が一対のローラによる緯糸の引き取り時に緯糸へ向けて移動するので、緯糸がガイド凹部へ向けて導入され易くなり、緯糸をより確実に検出することができる。
【0010】
また、上記のエアジェット織機の緯糸処理装置において、前記ガイド凹部の最深部から前記織前側頂部までの距離は、前記ガイド凹部の最深部から前記送り出し側頂部までの距離よりも短い構成としてもよい。
この場合、緯糸は、織前側頂部と干渉することなく、緯糸引取り経路へ移動できるとともに、緯糸ガイド部材において送り出し側頂部によってガイド凹部に導入され易くなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、緯糸検出器が緯入れミスした緯糸の移動を妨げることなく、緯糸を確実に検出することができるとともに緯糸検出器に付着する風綿を除去することが可能なエアジェット織機の緯糸処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態に係るエアジェット織機の緯糸処理装置の概要を示す平面図である。
【
図2】第1の実施形態に係るエアジェット織機の緯糸処理装置の要部を示す要部正面図である。
【
図3】第1の実施形態に係るエアジェット織機の緯糸処理装置の要部を示す要部平面図である。
【
図5】(a)は緯糸ガイド部材の側面図であり、(b)は緯糸ガイド部材の後面図であり、(c)は緯糸ガイド部材の底面図である。
【
図6】(a)は緯糸ガイド部材が下降する前の状態を示すエアジェット織機の緯糸処理装置の要部を示す要部側面図であり、(b)は緯糸ガイド部材が下降後の状態を示すエアジェット織機の緯糸処理装置の要部を示す要部側面図である。
【
図7】第2の実施形態に係るエアジェット織機の緯糸処理装置の要部を示す要部正面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係るエアジェット織機の緯糸処理装置について図面を参照して説明する。
図1、
図2に示すように、エアジェット織機10が備えるスレイ11の一端側には、緯入れ用メインノズル12が装着されている。緯入れ用メインノズル12の近傍には緯糸測長貯留装置13が備えられている。緯糸測長貯留装置13は、巻き付けによって緯糸Yを測長して貯留する。緯糸測長貯留装置13により貯留された緯糸Yは緯入れタイミングに同期して緯入れ用メインノズル12へ供給される。
【0014】
スレイ11上には、変形筬14が立設されており、変形筬14には緯入れ通路(図示せず)が設けられている。変形筬14の緯入れ通路は、緯入れタイミングに同期して緯入れ用メインノズル12により射出された緯糸Yが飛走する通路である。スレイ11には、複数の緯入れ用補助ノズル(図示せず)が備えられている。これらの緯入れ用補助ノズルは、緯入れ用メインノズル12から射出された緯糸Yの飛走を助長するための圧縮空気を噴射する。
【0015】
緯入れ用メインノズル12は、緯糸測長貯留装置13により貯留された緯糸Yを緯入れタイミングに同期して変形筬14の緯入れ通路内に射出する。スレイ11の他端側には、緯糸フィーラ15が配置されている。緯糸フィーラ15は、緯入れミスの有無を検出する。緯入れが正常に行われた場合、緯糸Yの先端は経糸Tの開口を通過して緯糸フィーラ15が配置された位置まで到達する。緯糸フィーラ15は、制御装置(図示せず)と接続されており、緯糸フィーラ15が緯入れミスを検出すると、制御装置は緯入れミスと判別する。変形筬14は、緯入れが正常に行われると筬打ち動作を行う。
【0016】
製織された織布Wにおける緯入れ用メインノズル12側の端部付近には、緯糸Yを切断する緯糸カッター16が備えられている。緯糸カッター16は、緯入れが正常に行われた場合に緯糸Yを筬打ち毎に切断して、緯入れ用メインノズル12から緯糸Yを分離する。一方、緯入れミスの場合には、緯糸カッター16は緯糸Yを切断せず、緯入れミスの緯糸Yを緯入れ用メインノズル12から分離させない。
【0017】
図2に示すように、緯入れ用メインノズル12の真下に位置するように、ブローノズル17がスレイ11に設置されている。ブローノズル17は、緯入れ用メインノズル12から射出され、緯入れミスと判別された緯糸Yを緯入れ経路側方の緯糸引取り経路へ吹き付け誘導する。ブローノズル17は、緯入れ用メインノズル12の前方にて緯入れ方向と交差するように上方に圧縮空気をノズル孔18から噴射する。緯入れ経路は飛走する緯糸Yの経路を意味する。
【0018】
ブローノズル17の上方には緯糸導入ダクト19が設けられている。緯糸導入ダクト19は、ブローノズル17によって緯入れ経路側方の緯糸引取り経路へ吹き付け誘導された緯糸Yを導入するダクトである。緯糸導入ダクト19の入口20は、ブローノズル17のノズル孔18と対向する。緯糸導入ダクト19の出口21と対向するようにエアガイド22が設置されている。さらに、エアガイド22の出口と対向するように吸引ダクト23が設置されている。エアガイド22は緯糸導入ダクト19へ導入された緯糸Yを吸引ダクト23へ導き易くする。なお、緯糸導入ダクト19の入口20と緯入れ用メインノズル12のノズル先端との間には、緯入れミスをした緯糸Yを切断する刃体(図示)が設置されている。
【0019】
図3に示すように、吸引ダクト23の出口は、ダストボックス(図示せず)に向けて湾曲されている。ダストボックスは、スレイ11が揺動する領域であるスレイ揺動域の後方に設けられている。吸引ダクト23の湾曲部24にはエア供給源と接続されたエアノズル25が接続されている。エアノズル25は吸引ダクト23の出口を指向する。緯糸導入ダクト19、エアガイド22および吸引ダクト23は、緯糸Yが引き取られる緯糸引取り経路を形成し、スレイ11と一体的に前後に揺動可能である。
【0020】
図4に示すように、スレイ揺動域における後方の機台にはステッピングモータ26が設置されている。ステッピングモータ26の上方には駆動ローラ27が回転可能に支持されている。ステッピングモータ26の駆動プーリ28と駆動ローラ側の被動プーリ29にはタイミングベルト30が懸装されている。ステッピングモータ26の上方であって駆動ローラ27よりも高い位置には、エアシリンダ31が設けられている。エアシリンダ31は、機側に取り付けられたエアシリンダ本体32とエアシリンダ本体32に対して進退するロッド33を備えている。ロッド33の進退方向は上下方向である。
【0021】
エアシリンダ31のロッド33は、板面を立てる姿勢としたプレート部材34の後面に取り付けられている。したがって、プレート部材34はエアシリンダ31の作動により昇降する。プレート部材34の前面にはエアジェット織機10の前方へ向けて突出する第1ブラケット35および第2ブラケット36が備えられている。
【0022】
第1ブラケット35には被動ローラ37が回転可能に支持されている。被動ローラ37は下方に位置する駆動ローラ27と対向する。被動ローラ37は、エアシリンダ31のロッド33の下降により駆動ローラ27と当接して駆動ローラ27を押圧する。駆動ローラ27および被動ローラ37は、スレイ11がスレイ揺動域における機側の後方へ移動したとき、緯糸導入ダクト19とエアガイド22との間に位置し、緯糸引取り経路上に位置する。駆動ローラ27および被動ローラ37は、緯糸引取り機構が備える一対のローラに相当する。したがって、本実施形態の緯糸引取り機構は、ステッピングモータ26、駆動ローラ27および被動ローラ37を有する。ステッピングモータ26は、制御装置の指令に基づいて制御される。
【0023】
第2ブラケット36には、緯糸ガイド部材38が取り付けられている。したがって、緯糸ガイド部材38は移動可能である。緯糸ガイド部材38は、緯糸引取り経路にて引き取られる緯糸Yを光学的に検出する緯糸検出器39を支持する。緯糸ガイド部材38は、緯糸引取り経路における緯糸Yを緯糸検出器39の検出可能範囲に案内する。緯糸検出器39は反射式の光学センサであり、センサ光を緯糸Yへ向けて発光する投光部(図示せず)と、緯糸Yからの反射光を受ける受光部(図示せず)を有している。緯糸検出器39は制御装置と接続され、緯糸Yを検出したときの検出信号を制御装置へ向けて発信する。
【0024】
次に、緯糸ガイド部材38の形状を説明するが、緯糸ガイド部材38が第2ブラケット36に取り付けられた状態における上下方向および前後方向を基準として、緯糸ガイド部材38の各部を説明する。
図5に示すように、緯糸ガイド部材38は、ガイド本体部40と、ガイド本体部40に一体形成されたアーム部41と、を有している。
【0025】
ガイド本体部40は、上端面42と、第1側面43と、第2側面44と、第1円弧状面45と、第1傾斜面46と、第2円弧状面47と、第2傾斜面48と、を備えている。上端面42は上方に面しており上端面42の後方にはアーム部41が位置する。第1側面43は上端面42の前端から下方へ向けて延在し、前方に面する面である。第2側面44は、第1側面43の反対側にて後方に面する面である。
【0026】
第1側面43の下端から第1円弧状面45が連続して延在し、第1円弧状面45から第1傾斜面46が連続して延在する。第1傾斜面46は、第1円弧状面45から遠ざかるにつれて後方かつ上方へ向かう傾斜面である。第2側面44の下端から第2円弧状面47が連続して延在し、第2円弧状面47から第2傾斜面48が連続して延在する。第2傾斜面48は、第2円弧状面47から遠ざかるにつれて前方かつ上方へ向かう傾斜面である。第1傾斜面46の上端および第2傾斜面48の上端は接続されている。したがって、ガイド本体部40は、第1円弧状面45と、第1傾斜面46と、第2傾斜面48と、により形成されるガイド凹部49を有している。ガイド凹部49の最深部50には、ガイド凹部49から上端面42に貫通される貫通孔51が形成されている。貫通孔51には緯糸検出器39が挿通されている。緯糸ガイド部材38は、ガイド凹部49に導入された緯糸Yを検出する位置で緯糸検出器39を支持する。
【0027】
第2側面44、第2円弧状面47および第2傾斜面48は、ガイド本体部40の織前側において下方へ突出する織前側突出部52を形成する。第2側面44、第2円弧状面47および第2傾斜面48は、ガイド本体部40の経糸Tの送り出し側において下方へ突出する送り出し側突出部53を形成する。したがって、ガイド凹部49の前方に織前側突出部52が位置し、ガイド凹部49の後方に送り出し側突出部53が位置する。
【0028】
織前側突出部52は、織前側の頂部となってガイド凹部49を形成する織前側頂部54を有する。織前側頂部54は、織前側突出部52において最も下方に位置する部位である。
図6(a)に示すように、駆動ローラ27と被動ローラ37が緯糸Yを圧接する前の状態では、織前側頂部54は、緯糸引取り経路よりも上方に位置する。織前側頂部54が緯糸引取り経路よりも上方に位置するので、緯糸導入ダクト19から吸引ダクト23に導入された緯糸Yがスレイ11の揺動により織前から経糸Tの送り出し側へ移動されても緯糸Yが緯糸ガイド部材38と干渉しない。なお、
図6(b)に示すように、駆動ローラ27と被動ローラ37が緯糸Yを圧接した状態では、織前側頂部54は、緯糸引取り経路よりも下方に位置する。
【0029】
送り出し側突出部53は、経糸Tの送り出し側の頂部となってガイド凹部49を形成する送り出し側頂部55を有する。送り出し側頂部55は、送り出し側突出部53において最も下方に位置する部位である。送り出し側頂部55は、織前側頂部54よりも低い位置となっている。つまり、送り出し側頂部55は、緯糸引取り経路よりも下方に位置する。したがって、ガイド凹部49の最深部50から織前側頂部54までの上下方向の距離は、ガイド凹部49の最深部50から送り出し側頂部55までの上下方向の距離よりも短い。送り出し側頂部55が緯糸引取り経路よりも下方に位置することにより、緯糸Yが第2傾斜面48によって案内され易くなり、緯糸検出器39へ緯糸Yを接近させ易くなる。
【0030】
緯糸ガイド部材38のアーム部41は、ガイド本体部40の後部にて上方へ延在する部位である。アーム部41は上端面56と、前側面57と後側面58を備えている。前側面57は上端面56の前側の端部とガイド本体部40の上端面42の後側の端部と接続されている。後側面58はガイド本体部40の第2側面44と同一面となっている。アーム部41の上端付近にはボルト挿通用の通孔59が形成されている。通孔59に通したボルト(図示せず)によって緯糸ガイド部材38は第2ブラケット36に固定される。
【0031】
次に、本実施形態に係るエアジェット織機10の緯糸処理装置の作用について説明する。エアジェット織機10が運転される状態では、緯入れ用メインノズル12から射出された緯糸Yが正常に緯入れされ、織布Wにおける緯入れ用メインノズル12側の反対側の端まで到達すると、緯糸Yが変形筬14により筬打されて織布Wの織前に織り込まれる。筬打された緯糸Yは緯入れ用メインノズル12側の近傍に設けられた緯糸カッター16により切断され、以後の緯入れの繰り返しにより織成動作が継続される。
【0032】
緯糸Yが織布Wにおける緯入れ用メインノズル12側の反対側の端部まで到達しないような緯入れミスが発生すると、緯糸フィーラ15が緯入れミスを検出する。そして、緯糸フィーラ15からの緯入れミスを示す検出信号に基づいて主軸(図示せず)の駆動用モータの作動が停止される。緯入れミスの検出信号が発信された後、主軸は一回ほど惰性で回転して停止する。すなわち、スレイ11がスレイ移動域における最後退位置から織布W側へ前進する間に緯入れミスの検出信号が発信される。そして、緯入れミスをした緯糸Yが織布Wに筬打された後、スレイ11はさらに往復動し、
図1、
図3の二点鎖線により示す筬打ち位置直前で停止する。緯入れミスの検出信号の発信とともに緯糸カッター16は緯糸を切断しない状態となる。織布Wに織り込まれた緯入れミスの緯糸Yは緯入れ用メインノズル12に接続した状態が維持される。
【0033】
次に、ブローノズル17およびエアノズル25に圧力空気が供給される。このため、ブローノズル17と緯糸導入ダクト19との間には緯入れ経路を横切る空気流が生じるほか、吸引ダクト23の入口側には吸引方向の空気流が生じる。これらの空気流は、緯糸カッター16が緯糸Yを切断しないまま、スレイ11がスレイ揺動域における
図3の実線位置から鎖線位置に停止するまでの間に発生する。したがって、緯入れミスの緯糸Yは緯入れ用メインノズル12側に接続した状態で織り込まれ、緯入れミスの緯糸Yに後続する緯糸Yはブローノズル17からの噴射される圧縮空気により緯糸測長貯留装置13から引き出されるとともに緯糸導入ダクト19内へ強制導入される。
【0034】
後続の緯糸Yが所定長以上あり、かつ緯糸導入ダクト19内へ円滑に導入されると、後続の緯糸Yは出口21からエアガイド22を経て吸引ダクト23内へ到達し、ブローノズル17の噴射作用によりダストボックスに向けて吹き晒される。このため、緯糸導入ダクト19と吸引ダクト23との間の緯糸Yが適度の張力を付与されて緊張する。
【0035】
主軸は停止後に引き続いて所定量だけ逆転して作動し、スレイ11が最後退位置へ移動し、緯糸Yは緯糸引取り経路に移動される。
図6(a)に示すように、緯糸ガイド部材38の織前側頂部54が緯糸引取り経路よりも上方に位置するので、緯糸Yが緯糸引取り経路に移動されるとき、緯糸ガイド部材38に干渉しない。主軸の逆転により経糸Tが開口され、上下の経糸Tによる緯入れミスの緯糸Yの織り込み状態が解除される。
【0036】
緯入れミスの緯糸Yの織り込みが解除されると同時に、緯糸導入ダクト19とエアガイド22との間の後続の緯糸Yが駆動ローラ27と被動ローラ37との間へ配置されるとともに、エアガイド22と吸引ダクト23との間の後続の緯糸Yが緯糸検出器39を備えた緯糸ガイド部材38の下方へ配置される。そして、エアシリンダ31のロッド33が下降し、プレート部材34が下降する。プレート部材34の下降により、被動ローラ37が駆動ローラ27に圧接されるとともに、
図6(b)に示すように、緯糸ガイド部材38が下降する。
【0037】
緯糸ガイド部材38の下降に伴い、緯糸Yは駆動ローラ27と被動ローラ37とにより圧接される。また、緯糸ガイド部材38の下降に伴い、緯糸Yは緯糸ガイド部材38との相対移動によりガイド凹部49に位置する。緯糸Yがガイド凹部49に位置する際、緯糸ガイド部材38の第1傾斜面46および第2傾斜面48は、緯糸Yの位置に応じて緯糸Yと摺接しつつ、緯糸Yをガイド凹部49の最深部50へ向けて案内する。緯糸Yがガイド凹部49に位置すると、緯糸検出器39は緯糸Yを光学的に検出する。なお、第1傾斜面46および第2傾斜面48に風綿が存在する場合、風綿は案内される緯糸Yに絡み取られる。
【0038】
緯糸検出器39の緯糸Yによりステッピングモータ26が駆動される。駆動ローラ27が所定量の回転することにより、駆動ローラ27および被動ローラ37が緯糸Yを把持した状態で回転する。駆動ローラ27および被動ローラ37の回転により、緯糸Yは吸引ダクト23側に引き取られる。緯糸Yには緯糸Yが引き取られるときに引き取り張力が発生し、刃体は引き取り張力によって緯糸Yを切断する。緯糸Yは刃体により緯入れ用メインノズル12から切断によって分離される。そして、緯入れミスの緯糸Yの先端が駆動ローラ27と被動ローラ37を通過すれば、緯糸検出器39は緯糸Yを検出しなくなり、緯入れミスの緯糸Yはダストボックスへ排出される。なお、緯糸Yが緯糸ガイド部材38に付着する風綿を絡み取っている場合、緯糸Yは風綿とともにダストボックスへ排出される。
【0039】
緯糸検出器39が緯糸Yを検出しなくなることにより、ブローノズル17およびエアノズル25に対する圧縮空気の供給が停止されるとともに、エアシリンダ31のロッド33が上昇し、プレート部材34は上昇する。プレート部材34の上昇により被動ローラ37および緯糸ガイド部材38は上昇して原位置へ復帰し、製織が再開される。
【0040】
本実施形態のエアジェット織機10の緯糸処理装置は以下の作用効果を奏する。
(1)緯入れミスと判別された緯糸Yは、ブローノズル17の吹き付けにより緯糸導入ダクト19に導入される。緯糸導入ダクト19の緯糸Yは緯糸導入ダクト19とともに移動によって緯糸引取り経路に移動し、駆動ローラ27および被動ローラ37によって引き取られる。緯糸検出器39は、引き取られる緯糸Yを光学的に検出する。駆動ローラ27および被動ローラ37が緯糸Yを圧接する前の状態では緯糸ガイド部材38の織前側頂部54が緯糸引取り経路よりも上方に位置するので、緯糸Yが緯糸引取り経路に移動されるとき、緯糸ガイド部材38に干渉することはない。また、緯糸Yが引き取られるとき、緯糸Yがガイド凹部49に案内されるので、緯糸Yを確実に検出することができるほか、ガイド凹部49に存在する風綿が緯糸Yによって除去することができる。このように、緯糸検出器39は緯入れミスした緯糸Yの移動を妨げることなく、緯糸Yを確実に検出することができるとともに緯糸検出器39に付着する風綿を除去することが可能である。
【0041】
(2)緯糸ガイド部材38は、第2ブラケット36を介してプレート部材34に取り付けらており、プレート部材34はエアシリンダ31の作動により昇降可能である。緯糸ガイド部材38が駆動ローラ27および被動ローラ37による緯糸Yの引き取り時に緯糸Yへ向けて移動するので、緯糸Yがガイド凹部49へ向けて導入され易くなり、緯糸Yをより確実に検出することができる。
【0042】
(3)緯糸ガイド部材38は、経糸Tの送り出し側の頂部となる送り出し側頂部55を有する。ガイド凹部49の最深部50から織前側頂部54までの距離は、ガイド凹部49の最深部50から送り出し側頂部55までの距離よりも短い。このため、緯糸Yは、織前側頂部54と干渉することなく、緯糸引取り経路へ移動できるとともに、緯糸ガイド部材38において送り出し側頂部55によってガイド凹部49に導入され易くなる。
【0043】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るエアジェット織機の緯糸処理装置について説明する。本実施形態は、緯糸ガイド部材が昇降せず固定されている点で第1の実施形態と異なる。本実施形態では、第1の実施形態と同じ構成については、第1の実施形態の説明を援用して共通の符号を用いる。
【0044】
図7に示すように、エアジェット織機10の緯糸処理装置は、緯糸導入ダクト19と吸引ダクト23との間にエアガイド22が設けられない構成である。緯糸引取り機構は一対のローラとしての駆動ローラ61および被動ローラ62を有している。駆動ローラ61は被動ローラ62の上方に配置されており、駆動ローラ61は固定ブラケット(図示せず)に取り付けられている。本実施形態の駆動ローラ61は昇降しない。駆動ローラ61の下方に位置する被動ローラ62は駆動ローラ61に対して接離するように昇降する。被動ローラ62は昇降可能な可動ブラケット(図示せず)に取り付けられており、可動ブラケット(図示せず)はエアシリンダ(図示せず)により昇降可能である。緯糸ガイド部材38は、駆動ローラ61と同様に昇降しないように固定ブラケットに固定されている。緯糸ガイド部材38の織前側頂部54が緯糸引取り経路よりも上方に位置するように、緯糸ガイド部材38の高さが設定されている。
【0045】
緯入れミスした緯糸Yは、ブローノズル17とエアノズル25の圧縮空気によって緯糸導入ダクト19および吸引ダクト23に導入される。被動ローラ62が上昇されない状態では、緯糸引取り経路における緯糸Yは駆動ローラ61および緯糸ガイド部材38の下方に位置する。被動ローラ62が上昇されると、被動ローラ62は緯糸引取り経路の緯糸Yを持ち上げ、駆動ローラ61に当接する。緯糸Yは駆動ローラ61と被動ローラ62により圧接され、被動ローラ62の持ち上げにより山形となる。緯糸ガイド部材38では緯糸Yが持ち上げられることによりガイド凹部49に位置し、緯糸検出器39はガイド凹部49の緯糸Yを検出する。緯糸検出器39による緯糸Yの検出により駆動ローラ61が駆動され、緯入れミスの緯糸Yはダストボックスへ排出される。
【0046】
本実施形態では、第1の実施形態の作用効果(1)、(3)と同等の作用効果を奏する。また、緯糸ガイド部材38を固定した状態でも緯糸引取り経路における緯入れミスの緯糸Yを検出することができる。
【0047】
なお、上記の実施形態は、本発明の一実施形態を示すものであり、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、下記のように発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【0048】
○ 上記の実施形態では、緯糸ガイド部材のガイド凹部の最深部から織前側頂部までの距離は、ガイド凹部の最深部から送り出し側頂部までの距離よりも短いとしたが、これに限定されない。例えば、緯糸ガイド部材のガイド凹部の最深部から織前側頂部までの距離は、ガイド凹部の最深部から送り出し側頂部までの距離と同じでもよい。
○ 上記の実施形態では、一対のローラのうち一方のローラを固定し、他方のローラを一方のローラに対して接離可能な可動ローラとしたが、このかぎりではない。例えば、双方のローラを互いに接離可能な可動ローラとしてもよい。
○ 上記の実施形態では、緯糸ガイド部材は直線運動により上下方向に往復移動可能としたが、これに限らない。エアジェット織機の緯糸処理装置は、例えば、緯糸ガイド部材を円弧運動により上下方向に往復移動させる構成を備えてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 エアジェット織機
11 スレイ
12 緯入れ用メインノズル
13 緯糸測長貯留装置
14 変形筬
17 ブローノズル
19 緯糸導入ダクト
23 吸引ガイド
25 エアノズル(吸引ガイド)
27、61 駆動ローラ
31 エアシリンダ
37、62 被動ローラ
38 緯糸ガイド部材
39 緯糸検出器
46 第1傾斜面
48 第2傾斜面
49 ガイド凹部
50 最深部
52 織前側突出部
53 送り出し側突出部
54 織前側頂部
55 送り出し側頂部
経糸 T
緯糸 Y