(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】車両のシャッタードア開閉装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/67 20150101AFI20220524BHJP
B60J 5/12 20060101ALI20220524BHJP
E06B 9/02 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
E05F15/67
B60J5/12
E06B9/02 A
(21)【出願番号】P 2019119459
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 博隆
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-240083(JP,A)
【文献】実開平03-059218(JP,U)
【文献】実開昭61-083778(JP,U)
【文献】特開平06-024243(JP,A)
【文献】特開平07-025243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00 - 15/79
B60J 5/12
E06B 9/56 - 9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けた開口を挟むように延在されて配設された一対のガイドレールと、
前記一対のガイドレールに摺動可能に案内される一対のスライドシューと、
前記スライドシューに支持され、前記開口を開閉する複数枚のシャッター部材と、
前記スライドシューと連結されるギヤードケーブルと、
前記スライドシューと前記ギヤードケーブルとを連結する連結部と、
前記ギヤードケーブルを送り可能とするギヤードケーブル送り機構と、を有する車両のシャッタードア開閉装置において、
前記連結部は、
前記ギヤードケーブルの前記シャッター部材側の端部に設けたケーブル側係止体と、
前記スライドシューの前記ギヤードケーブル側の端部に設けたシュー側係止体と、
前記ケーブル側係止体と前記シュー側係止体との間に介在される防振部材と、を有していることを特徴とする車両のシャッタードア開閉装置。
【請求項2】
前記ケーブル側係止体は、送り方向に対して交差する方向の端面を有し、
前記端面と前記シュー側係止体との間に前記防振部材が介在されていることを特徴とする請求項1記載の車両のシャッタードア開閉装置。
【請求項3】
前記ケーブル側係止体は、送り方向に対して交差する方向に延在する係止板であり、
前記シュー側係止体は、前記係止板の両面と対向する一対の係止面を有し、
前記防振部材が前記係止板の両側において前記係止面との間にそれぞれ介在されていることを特徴とする請求項1記載の車両のシャッタードア開閉装置。
【請求項4】
前記ケーブル側係止体は、送り方向に対して交差する方向に延在する係止板であり、
前記シュー側係止体は、前記係止板の板面と対向する単一の係止面を有し、
前記防振部材が前記係止板と前記係止面との間に介在されていることを特徴とする請求項1記載の車両のシャッタードア開閉装置。
【請求項5】
前記ケーブル側係止体は、前記ギヤードケーブルの前記シャッター部材側の端部と連結されるケーブル側ブラケットであり、
前記シュー側係止体は、前記スライドシューの前記ギヤードケーブル側の端部と連結されるシュー側ブラケットであることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載の車両のシャッタードア開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のシャッタードア開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のシャッタードア開閉装置に関連する従来の技術として、例えば、特許文献1に開示されたシャッター装置が知られている。特許文献1に開示されたシャッター装置は、外枠に取り付けた上下開閉式のシャッターを備えており、このシャッターを手動開閉装置と電動開閉装置により開閉する構成である。
【0003】
外枠は左支柱と右支柱及び両支柱の上端部に架設する桁材より構成されている。桁材の下にシャッター格納室が設けられ、左右支柱の内周側にシャッターの案内体が相対して設けられている。左右支柱の案内体には開口する案内溝がそれぞれ形成されている。シャッターは桁材の下に固定する上下伸縮の平行リンクと、平行リンクの交差部に軸支する横桟と、平行リンクの下限交差部に軸支する下桟と、により構成されている。横桟のガイドブロックと下桟のガイドブロックは、案内溝に沿って摺動する。下桟のガイドブロックにはギヤガイドが設けられている。
【0004】
手動開閉装置は、下桟の左右ガイドブロックに分けて固定する左右の昇降ワイヤーと、昇降ワイヤーを個々に巻き取るバランサーと、から構成されている。バランサーの左右のワイヤーを外枠桁材より左右の支柱に導き、ワイヤーの端部を下桟の左右のガイドブロックに分けて固定するものである。ワイヤードラムはワイヤーを巻取るものである。このワイヤードラムとバネドラムは噛合している。電動開閉装置は、下桟の左右ガイドブロックに分けて取付けるギャードケーブルである。
【0005】
電動開閉装置にてシャッターを昇降する場合、モータにて水平歯車を回動すれば、水平歯車には下桟のガイドブロックに取付けたギャードケーブルが噛合しているので、水平歯車の回動に応じてケーブルが対称方向に往復する。ギャードケーブルが対称方向に往復することにより下桟が昇降し、それにより下桟に軸支する平行リンクが伸縮しながら昇降する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたシャッター装置は、シャッターの昇降時にギヤードケーブルと水平歯車との噛合による打音が発生し、発生した打音がギヤードケーブルを通じてシャッターに振動を伝達する。ギヤードケーブルを通じた振動がシャッターに伝達されることにより、シャッターに騒音が生じるという問題がある。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、シャッタードアの開閉時の騒音を抑制することができる車両のシャッタードア開閉装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、車体に設けた開口を挟むように延在されて配設された一対のガイドレールと、前記一対のガイドレールに摺動可能に案内される一対のスライドシューと、前記スライドシューに支持され、前記開口を開閉する複数枚のシャッター部材と、前記スライドシューと連結されるギヤードケーブルと、前記スライドシューと前記ギヤードケーブルとを連結する連結部と、前記ギヤードケーブルを送り可能とするギヤードケーブル送り機構と、を有する車両のシャッタードア開閉装置において、前記連結部は、前記ギヤードケーブルの前記シャッター部材側の端部に設けたケーブル側係止体と、前記スライドシューの前記ギヤードケーブル側の端部に設けたシュー側係止体と、前記ケーブル側係止体と前記シュー側係止体との間に介在される防振部材と、を有していることを特徴とする。
【0010】
本発明では、防振部材がスライドシューのギヤードケーブル側の端部に設けたシュー側係止体とケーブル側係止体との間に介在されている。このため、シャッター部材およびスライドシューを備えるシャッタードアの開閉時に、ギヤードケーブル送り機構の作動によるギヤードケーブルを通じた振動は、防振部材によって吸収され、シャッタードアへの振動の伝達が抑制される。これにより、シャッタードアの開閉時の静音化を図ることができる。
【0011】
また、前記ケーブル側係止体は、送り方向に対して交差する方向の端面を有し、前記端面と前記シュー側係止体との間に前記防振部材が介在されている構成としてもよい。
この場合、ケーブル側係止体が送り方向に対して交差する方向の端面を有するため、防振部材はこの端面にわたって当接できる。このため、ギヤードケーブルを通じた振動は端面を通じて効率的に防振部材に吸収させることが可能である。また、シャッタードアの開閉時においてケーブル側係止体および防振部材は過度の荷重を受け難くなる。
【0012】
また、上記の車両のシャッタードア開閉装置において、前記ケーブル側係止体は、送り方向に対して交差する方向に延在する係止板であり、前記シュー側係止体は、前記係止板の両面と対向する一対の係止面を有し、前記防振部材が前記係止板の両側において前記係止面との間にそれぞれ介在されている構成としてもよい。
この場合、防振部材が係止板の両側において係止面との間にそれぞれ介在されているので、ケーブル側係止体とシュー側係止体との間において防振部材を固定し易くなる。また、係止板の両側に介在された防振部材は、シャッタードアの開閉時におけるギヤードケーブルを通じた振動をより効率的に吸収することが可能となる。
【0013】
また、上記の車両のシャッタードア開閉装置において、前記ケーブル側係止体は、送り方向に対して交差する方向に延在する係止板であり、前記シュー側係止体は、前記係止板の板面と対向する単一の係止面を有し、前記防振部材が前記係止板と前記係止面との間に介在されている構成としてもよい。
この場合、防振部材が係止板と係止面との間に介在されているので、係止板の両側に防振部材を介在する場合と比較すると、防振部材の数を低減、あるいは防振部材の形状を単純化することができる。シャッタードアの開閉のいずれかにおいてギヤードケーブルを通じた振動をより効率的に吸収することが可能となる。
【0014】
また、上記の車両のシャッタードア開閉装置において、前記ケーブル側係止体は、前記ギヤードケーブルの前記シャッター部材側の端部と連結されるケーブル側ブラケットであり、前記シュー側係止体は、前記スライドシューの前記ギヤードケーブル側の端部と連結されるシュー側ブラケットである構成としてもよい。
この場合、ケーブル側ブラケットがギヤードケーブルの端部と連結されるので、ギヤードケーブルの端部にケーブル側係止体を一体的に形成する必要がない。また、シュー側ブラケットがスライドシューの端部と連結されるので、スライドシューのケーブル側の端部にシュー側係止体を一体的に形成する必要がない。これにより、ギヤードケーブルを専用品とする必要がなく汎用品を使用することができ、また、スライドシューのケーブル側の端部を単純化することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シャッタードアの開閉時の騒音を抑制することができる車両のシャッタードア開閉装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施形態に係る車両のシャッタードア開閉装置を適用した自動車の後部を示す斜視図である。
【
図2】第1の実施形態に係るシャッタードア開閉装置の概要を示す斜視図である。
【
図3】第1の実施形態に係るシャッタードア開閉装置の連結部の斜視図である。
【
図4】(a)はシャッタードア開閉装置の連結部の平面図であり、(b)は同側面図である。
【
図5】(a)は
図4(a)のA-A線矢視図であり、(b)は同図のB-B線矢視図であり、(c)は同図のC-C線矢視図である。
【
図6】ピニオンおよびギヤードケーブルを示す要部平面図である。
【
図7】第2の実施形態に係るシャッタードア開閉装置の概要を示す斜視図である。
【
図8】第3の実施形態に係るシャッタードア開閉装置の概要を示す斜視図である。
【
図9】第3の実施形態に係るシャッタードア開閉装置の連結部の平面図である。
【
図10】(a)は変形例1を示す説明図であり、(b)は変形例2を示す説明図であり、(c)は変形例3を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る車両のシャッタードア開閉装置について図面を参照して説明する。本実施形態では車両としての自動車に適用した例であり、シャッタードアはリヤの開口を開閉する。なお、方向を特定する「前後」、「左右」および「上下」については、自動車の運転手が運転席の運転シートに着座して、自動車の前進側を向いた状態を基準として示す。まず、車両としての自動車について説明する。
【0018】
図1に示すように、自動車10の車体11は、左右一対のサイドパネル12と左右のサイドパネル12を上部にて連結するルーフパネル13と、を有している。車体11の前部には前輪(図示せず)が備えられており、車体11の後部には後輪14が備えられている。さらに、車体11の後部の下端にはバンパ15が備えられている。サイドパネル12の上縁部16はルーフパネル13の側縁部17と接続されている。車体11の後部には車室と連通する開口18が形成されている。開口18は、サイドパネル12の後縁部19と、ルーフパネル13の後縁部20と、バンパ15の上縁部21とにより区画されている。
【0019】
開口18はシャッタードア開閉装置30により開閉される。
図2に示すように、シャッタードア開閉装置30は、一対のガイドレール31と、一対のスライドシュー32と、複数枚のシャッター部材33と、ギヤードケーブル34と、連結部35と、ギヤードケーブル送り機構36と、を有する。
【0020】
ガイドレール31は、アルミニウム製であって、スライドシュー32を案内するための部材である。ガイドレール31は、左右のサイドパネル12の後縁部19において開口18を挟むように延在して配設され、さらにサイドパネル12の後縁部19から上縁部16に達し、サイドパネル12の上縁部16から前方へ向けて延在している。したがって、ガイドレール31の上端は、サイドパネル12の上縁部16において後縁部19の前方に位置している。ガイドレール31の下端はバンパ15付近まで達している。
【0021】
図3に示すように、ガイドレール31は、第1壁部41と、第1壁部41の対向する第2壁部42と、第1壁部41と第2壁部42とを接続する第3壁部43と、を有している。第1壁部41、第2壁部42および第3壁部43は、ガイドレール31の断面を略コ字状とし、ガイドレール31においてスライドシュー32の案内を可能とする第1溝部44を形成する。
図3、
図4(a)に示すように、第3壁部43には、ギヤードケーブル34の案内を可能とする第2溝部45が形成されている。第2溝部45は、第3壁部43の内側に形成された円状溝である。
図3、
図4(b)に示すように、ギヤードケーブル34が第2溝部45から脱落しないように、第2溝部45より小さい開口溝46が第3壁部43に形成されている。
【0022】
第3壁部43の開口溝46の反対側にはシール部材48を保持する第3溝部47が形成されている。第3溝部47に保持されるシール部材48は、サイドパネル12に当接して、サイドパネル12とガイドレール31との間への水や異物の進入を防止する。
【0023】
図5(a)~
図5(c)に示すように、ガイドレール31は、サイドパネル12の上縁部16付近に設けられた段差部37に固定部材により固定されている。なお、サイドパネル12の後縁部19にも上縁部16と同様の段差部(図示せず)が形成されており、ガイドレール31はサイドパネル12の後縁部19における段差部に固定されている。
【0024】
スライドシュー32は、複数のシャッター部材33を支持する部材であり、複数のシュー部材49がガイドレール31に沿うように互いに連結されている。
図3に示すように、シュー部材49には板状のシャッター部材33の長手方向の端部を接続する接続部50が形成されている。シュー部材のガイドレールとの摺動部には、摺動性向上および異音防止のために樹脂コーティングが施されている。スライドシュー32およびギヤードケーブル34は連結部35によって互いに連結されているが、連結部35の詳細については後述する。
【0025】
シャッター部材33は、一対の長辺と一対の短辺を有する長尺状の部材である(
図1、
図2を参照)。シャッター部材33はガイドレール31間の距離に合わせた長手方向(車体11の左右方向)の長さを有している。シャッター部材33の短辺側の端部はスライドシュー32に支持されている。シャッター部材33の長辺側の端部には、互いに隣り合うシャッター部材33を隙間無く接続する接続部材(図示せず)が設けられている。接続部材は可撓性を有する樹脂材料により形成されている。スライドシュー32、シャッター部材33および接続部材は開口18を開閉するシャッタードアを構成する。
【0026】
図6に示すように、ギヤードケーブル34は、可撓性を有する鋼索52と、鋼索52の表面に形成されたラック53と、を有している。ラック53は、ギヤードケーブル送り機構36が備えるピニオンギヤ54と噛合することが可能である。ギヤードケーブル34の外径は、ガイドレール31の第2溝部45に挿通可能な外径に設定されている。ギヤードケーブル34は連結部35を介してスライドシュー32と連結されている。また、ギヤードケーブル34はギヤードケーブル送り機構36と連結されている。
【0027】
ギヤードケーブル送り機構36は、ギヤードケーブル34を送るための機構である。ギヤードケーブル送り機構36は、車体11の左右方向においてルーフパネル13の中央付近に備えられており、車外および車室から見えないようにカバー等で覆われている。
図2に示すように、ギヤードケーブル送り機構36は、ギヤードケーブル34と噛合するピニオンギヤ54と、ピニオンギヤ54を回転させる駆動モータ55と、を有している。
図6に示すように、右のギヤードケーブル34は右のサイドパネル12からギヤードケーブル送り機構36へ向かっており、ピニオンギヤ54の前部で噛合する。左のギヤードケーブル34は左のサイドパネル12からギヤードケーブル送り機構36へ向かっており、ピニオンギヤ54の後部で噛合する。
【0028】
したがって、駆動モータ55の正回転により、ピニオンギヤ54が一方へ回転されると、左右のギヤードケーブル34がギヤードケーブル送り機構36へ向けて送られる。駆動モータ55の逆回転により、ピニオンギヤ54が他方へ回転(逆回転)されると、左右のギヤードケーブル34がギヤードケーブル送り機構36から送り出される。
図6において正回転に対応するピニオンギヤ54の回転方向およびギヤードケーブル34の移動方向を実線の矢印にして示し、逆回転に対応するピニオンギヤ54の回転方向およびギヤードケーブル34の移動方向を実線の矢印にして示す。
【0029】
ここで、スライドシュー32およびギヤードケーブル34を連結する連結部35について説明する。連結部35は、
図3、
図4(a)、
図4(b)に示すように、スライドシュー32に設けたシュー側係止体56と、ギヤードケーブル34に設けたケーブル側係止体57と、シュー側係止体56とケーブル側係止体57との間に介在される防振部材58と、有する。
【0030】
シュー側係止体56は、スライドシュー32の最もギヤードケーブル34側のシュー部材49の端部に備えられている。シュー側係止体56はシュー部材49と一体的に形成された環状部59を備えている。
図3、
図4(b)に示すように、環状部59の内側には略方形の通孔60が形成されている。通孔60の開口方向はスライドシュー32の移動方向と直交する方向である。シュー側係止体56の環状部59には、前後一対の係止面59A、59Bを有している。
【0031】
ケーブル側係止体57は、ギヤードケーブル34のスライドシュー32側の端部に備えられている。ケーブル側係止体57はギヤードケーブル34と一体的に形成された突片部61を備えている。突片部61は、ギヤードケーブル34の長手方向と直交する方向に突出しており、シュー側係止体56の通孔60に挿通されている。
図3、
図4(b)に示すように、突片部61は縦板片62および横板片63を有しており、突片部61の突出方向と直交する断面は十文字状である。
【0032】
縦板片62は、ギヤードケーブル34の送り方向に対して交差する方向に延在しており、係止板に相当する。横板片63は、主にスライドシュー32およびシャッター部材33の自重より突片部61に掛かる荷重に対抗する機能を有する。なお、ケーブル側係止体57の環状部59には、突片部61の縦板片62の前面は係止面59Aに対向し、縦板片62の後面は係止面59Bと対向する。したがって、シュー側係止体56の係止面59A、59Bは、縦板片62の両面と対向する一対の係止面に相当する。
【0033】
通孔60における空間は、突片部61により4分割されている。4分割されている空間にはそれぞれ防振部材58が充填されている。防振部材58は振動を吸収することが可能な弾性材料であるゴム系材料により立方体に形成されている。防振部材58が、通孔60における空間に充填されているので、シュー側係止体56とケーブル側係止体57との間は防振部材58を介して連結されており、シュー側係止体56とケーブル側係止体57とは互いに接触しない。
【0034】
次に、本実施形態に係るシャッタードア開閉装置30によるシャッタードアの開閉について説明する。シャッタードアが開口18を閉じている状態から開口18を開くとき、ギヤードケーブル送り機構36の駆動モータ55が正回転される。例えば、車室内に設けた開閉スイッチやキーに設けた開閉スイッチの車外からの操作によって駆動モータ55を駆動する。
【0035】
駆動モータ55の駆動によりギヤードケーブル34を巻き取る方向にピニオンギヤ54が回転される。ピニオンギヤ54の回転によりギヤードケーブル34は、ギヤードケーブル送り機構36に近づく方向へガイドレール31を移動する。ギヤードケーブル34と連結されているスライドシュー32はギヤードケーブル34とともにルーフパネル13へ向けて移動する。このため、シャッター部材33はルーフパネル13へ向けて移動し、シャッター部材33の移動によって開口18が開かれる。
【0036】
開口18が開かれるとき、ピニオンギヤ54とギヤードケーブル34との噛合による振動がギヤードケーブル34に伝達される。ギヤードケーブル34に伝達される振動は、ケーブル側係止体57を通じて防振部材58に伝達される。具体的には、ギヤードケーブル34に伝達される振動は、ケーブル側係止体57の突片部61における縦板片62の板面を通じて防振部材58に伝達される。防振部材58に伝達された振動は防振部材58によって吸収される。その結果、ギヤードケーブル34に伝達された振動がスライドシュー32には伝達されず、シャッター部材33においてギヤードケーブル34に伝達される振動による騒音は発生しない。
【0037】
また、開口18が開かれるとき、ケーブル側係止体57の突片部61における縦板片62は、主にスライドシュー32およびシャッター部材33の自重より突片部61に掛かる荷重を受けるが、縦板片62の板面が通じてこの荷重の殆どを受ける。また、横板片63は、縦板片62を通じて受ける荷重に対して対抗し、突片部61の変形や折損が防止される。
【0038】
次に、シャッタードアが開口18を開いている状態から開口18を閉じる場合について説明する。シャッタードアが開口18を開くとき、ギヤードケーブル送り機構36の駆動モータ55が逆回転される。駆動モータ55の駆動によりギヤードケーブル34を送り出す方向にピニオンギヤ54が回転される。ピニオンギヤ54の回転によりギヤードケーブル34は、ギヤードケーブル送り機構36から離れる方向へガイドレール31において移動する。ギヤードケーブル34と連結されているスライドシュー32はギヤードケーブル34とともにバンパ15へ向けて移動する。このため、シャッター部材33はバンパ15へ向けて移動し、シャッター部材33の移動によって開口18が閉じられる。
【0039】
開口18が閉じられるとき、ピニオンギヤ54とギヤードケーブル34との噛合による振動がギヤードケーブル34に伝達される。ギヤードケーブル34に伝達される振動は、ケーブル側係止体57を通じて防振部材58に伝達される。防振部材58に伝達された振動は防振部材58によって吸収される。その結果、ギヤードケーブル34に伝達された振動がスライドシュー32には伝播せず、シャッター部材33においてギヤードケーブル34に伝達される振動による騒音は発生しない。
【0040】
本実施形態に係るシャッタードア開閉装置30は以下の作用効果を奏する。
(1)防振部材58が、スライドシュー32のギヤードケーブル34側の端部に設けたシュー側係止体56とケーブル側係止体57との間に介在されている。このため、シャッタードアの開閉時に、ギヤードケーブル送り機構36の作動によるギヤードケーブル34を通じた振動は、防振部材58によって吸収され、シャッタードアへの振動の伝達が抑制される。これにより、シャッタードアの開閉時の静音化を図ることができる。
【0041】
(2)ケーブル側係止体57の突片部61が備える縦板片62は、ギヤードケーブル34の送り方向に対して交差する方向の端面を有し、端面とシュー側係止体56との間に防振部材58が介在されている。このため、防振部材58は縦板片62の板面にわたって当接できる。このため、ギヤードケーブル34を通じた振動は縦板片62の板面を通じて効率的に防振部材58に吸収させることが可能である。また、シャッタードア開閉時においてケーブル側係止体57および防振部材58は過度の荷重を受け難くなる。
【0042】
(3)ケーブル側係止体57は、ギヤードケーブル34の送り方向に対して交差する方向に延在する係止板としての突片部61である。シュー側係止体56は、突片部61の縦板片62の両面と対向する一対の係止面59A、59Bを有する。防振部材58が突片部61の縦板片62の両側において縦板片62と係止面59A、59Bとの間にそれぞれ介在されている。このため、ケーブル側係止体57とシュー側係止体56との間において防振部材58を固定し易くなる。また、縦板片62の両側に介在された防振部材58は、シャッタードアの開閉時におけるギヤードケーブル34を通じた振動をより効率的に吸収することが可能となる。
【0043】
(4)突片部61は横板片63を有している。シャッタードアの開閉時、ケーブル側係止体57の突片部61における縦板片62は、主にスライドシュー32およびシャッター部材33の自重より突片部61に掛かる荷重を受けるが、縦板片62の板面が通じてこの荷重の殆どを受ける。また、横板片63は、縦板片62を通じて受ける荷重に対して対抗し、突片部61の変形や折損を防止することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るシャッタードア開閉装置について説明する。本実施形態では、スライドシューおよびギヤードケーブルを連結する連結部が第1の実施形態と相違する。本実施形態では、第1の実施形態と同じ構成について第1の実施形態の説明を援用し、共通の符号を用いる。
【0045】
図7に示すように、本実施形態のシャッタードア開閉装置70は、スライドシュー32およびギヤードケーブル34を連結する連結部71を有している。本実施形態の連結部71は、スライドシュー32に設けたシュー側係止体としてのシュー側ブラケット72と、ギヤードケーブル34に設けたケーブル側係止体としてのケーブル側ブラケット73と、シュー側ブラケット72とケーブル側ブラケット73との間に介在される防振部材74と、を有する。
【0046】
シュー側ブラケット72は金属製であり、スライドシュー32の最もギヤードケーブル34側のシュー部材49の端部に備えられている。シュー側ブラケット72は、環状部75と、環状部75からシュー部材49へ向けて延在する板部76と、を備えている。環状部75の内側には略方形の通孔77が形成されている。通孔77の開口方向はスライドシュー32の移動方向と直交する方向である。シュー側ブラケット72の環状部75には、前後一対の係止面75A、75Bを有している。
【0047】
板部76の先端にはシュー部材49へ向けて屈曲して形成された挿入部78が形成されている。最もギヤードケーブル34側のシュー部材49のケーブル側の端部には、板部76の挿入部78が挿入可能な挿通孔79が形成されている。したがって、板部76の挿入部78が挿通孔79に挿入されることにより、シュー側ブラケット72はスライドシュー32に連結される。
【0048】
ケーブル側ブラケット73は、ギヤードケーブル34のスライドシュー32側の端部に備えられている。ケーブル側ブラケット73は、一方の端部に形成された挿入孔80と、他方の端部付近においてシュー側ブラケット72の環状部75へ向けて屈曲して形成された板部81と、を有している。ギヤードケーブル34の端部には、挿入孔80に挿入可能な挿入片82が備えられており、挿入孔80に挿入片82が挿入されることにより、ケーブル側ブラケット73がギヤードケーブル34と連結される。板部81は、ギヤードケーブル34の長手方向と直交する方向に突出しており、シュー側ブラケット72の環状部75における通孔77に挿通されている。板部81は、環状部75の前後一対の係止面75A、75Bと平行な板面を有している。なお、挿入片82を備えるギヤードケーブル34は、汎用品である。
【0049】
板部81は、ギヤードケーブル34の送り方向に対して交差する方向に延在しており、係止板に相当する。なお、ケーブル側ブラケット73の環状部75には、板部81の前面は係止面75Aに対向し、板部81の後面は係止面75Bと対向する。したがって、シュー側ブラケット72の係止面75A、75Bは、板部81の両面と対向する一対の係止面に相当する。
【0050】
通孔77における空間は、板部81により2分割されている。2分割されている空間にはそれぞれ防振部材74が充填されている。防振部材74は振動を吸収することが可能な弾性材料であるゴム系材料により立方体に形成されている。防振部材74が、通孔77における空間に充填されているので、シュー側ブラケット72とケーブル側ブラケット73との間は防振部材74を介して連結されており、シュー側ブラケット72とケーブル側ブラケット73とは互いに接触しない。
【0051】
本実施形態のシャッタードア開閉装置70は、第1の実施形態の作用効果(1)と同等の作用効果を奏する。また、ケーブル側ブラケット73がギヤードケーブル34の端部と連結されるので、ギヤードケーブル34の端部にケーブル側係止体を一体的に形成する必要がない。そして、シュー側ブラケット72がスライドシュー32の端部に連結されるので、スライドシュー32の端部にシュー側係止体を一体的に形成する必要がない。これにより、ギヤードケーブル34およびスライドシュー32を専用品とする必要がなく汎用品を使用することができ、また、スライドシュー32のケーブル側の端部を単純化することができる。さらに、シュー側ブラケット72、ケーブル側ブラケット73を交換できるの、連結部71の保守し易く、連結部71における寸法調整を図り易いほか、連結部71を製作し易い。
【0052】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るシャッタードア開閉装置について説明する。本実施形態では、スライドシューおよびギヤードケーブルを連結する連結部が第1、2の実施形態と相違する。本実施形態では、第1、2の実施形態と同じ構成について第1、2の実施形態の説明を援用し、共通の符号を用いる。
【0053】
図8、
図9に示すように、本実施形態のシャッタードア開閉装置90は、スライドシュー32およびギヤードケーブル34を連結する連結部91を有している。本実施形態の連結部91は、スライドシュー32に設けたシュー側係止体としてのシュー側ブラケット92と、ギヤードケーブル34に設けたケーブル側係止体としてのケーブル側ブラケット93と、シュー側ブラケット92とケーブル側ブラケット93との間に介在される2個の防振部材94を有する。さらに、連結部91は、2個の防振部材94を締結するボルト95およびナット96を有している。
【0054】
シュー側ブラケット92は金属製であり、スライドシュー32の最もギヤードケーブル34側のシュー部材49の端部に備えられている。シュー側ブラケット92は、環状部97と、環状部97からシュー部材49へ向けて延在する板部98と、を備えている。環状部75の内側には略方形の通孔99が形成されている。通孔77の開口方向はスライドシュー32の移動方向と直交する方向である。シュー側ブラケット92の環状部97には、前後一対の係止面97A、97Bを有している。
図9に示すように、係止面97Aには、ボルト95を挿通するためのボルト通孔97Cが形成されている。
【0055】
板部98の先端にはシュー部材49へ向けて屈曲して形成された挿入部100が形成されている。板部98の挿入部100が挿通孔79に挿入されることにより、シュー側ブラケット92はスライドシュー32に連結される。
【0056】
ケーブル側ブラケット93は、ギヤードケーブル34のスライドシュー32側の端部に備えられている。ケーブル側ブラケット93は、一方の端部に形成された挿入孔101と、他方の端部付近においてシュー側ブラケット92の環状部97における係止面97Aと対向するように屈曲して形成された板部102と、を有している。挿入孔101にギヤードケーブル34の端部に設けた挿入片82が挿入されることにより、ケーブル側ブラケット93がギヤードケーブル34と連結される。板部102は、ギヤードケーブル34の長手方向と直交する方向に突出しており、
図9に示すように、ボルト95を挿通するためのボルト通孔102Aが形成されている。
【0057】
図9に示すように、防振部材94にはボルト95を挿通可能とする貫通孔94Aが形成されている。一方の防振部材94は通孔99に位置するように、ボルト95は防振部材94の貫通孔94Aおよび環状部97のボルト通孔97Cに挿通されている。他方の防振部材94は、環状部97と板部102との間に位置する。ボルト95の軸部は、環状部97と板部102との間の防振部材94の貫通孔94Aおよび板部102のボルト通孔102Aに挿通されており、ボルト95にはナット96が締結されている。一方の防振部材94はボルト95へのナット96の締結による軸力を受けて、係止面97Aに押圧される。他方の防振部材94はボルト95へのナット96の締結による軸力を受けて、環状部97の前面および板部102に押圧される。
【0058】
本実施形態のシャッタードア開閉装置90は、第1の実施形態の作用効果(1)および第2の実施形態と同等の作用効果を奏する。また、一方の防振部材94はボルト95へのナット96の締結による軸力を受けて係止面97Aに押圧され、他方の防振部材94は締結による軸力を受けて、環状部97の前面および板部102に押圧される。このため、防振部材94は、がたつくことはなく、シュー側ブラケット92、ケーブル側ブラケット93に確実に固定することができる。
【0059】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0060】
○ 上記の実施形態では、防振部材としてゴム系材料により形成された防振部材としたが、これに限定されない。例えば、防振部材はコイルばねなどの金属製のばねのほか、ゲル状の材料による防振部材であってもよく、金属製のばねやゲル状材料を組み合わせた防振部材としてもよい。
○ 上記の実施形態では、立方体の防振部材を用いたが防振部材の形状は立方体に限定されない。例えば、
図10(a)に示す変形例1のように、筒状の防振部材110であってもよい。この場合、シュー側係止体111が備える円筒状の環状部112に防振部材110を挿入し、防振部材110の中心にケーブル側係止体113が備える係止片114を挿入する。
○ 上記の第1の実施形態では、シュー側係止体の通孔における空間は、ケーブル側係止体の突片部により4分割されたが、この限りではない。例えば、
図10(b)に示す変形例2のように、突片部120により環状部59の空間を3分割してもよい。具体的には、前方の空間を全体の半分とし、後方の空間を2分割して3分割する。3分割されている空間にはそれぞれ空間に合わせた大きさの防振部材121が充填されている。なお、防振部材が大きいほど受ける荷重に対抗し易い。
○ 上記の第1の実施形態では、ケーブル側係止体は係止板であって、シュー側係止体は、係止板の両面と対向する一対の係止面を有し、防振部材が係止板の両側において係止面との間にそれぞれ介在されたが、この限りではなく、例えば、防振部材を係止板の片側のみに介在させてもよい。この場合、シャッタードアを開くときは閉じるときよりもギヤードケーブルの打音が大きくなるので、係止板の前面側に防振部材を介在することが好ましい。さらに言うと、例えば、
図10(c)に示す変形例3のように、シュー側係止体130は、ケーブル側係止体132の端面134と対向する単一の係止面131を有してもよい。端面134は係止板133における送り方向に対して交差する面である。この場合、係止面131と端面134との間に防振部材135が介在されるが、係止面131と防振部材135との接合や、係止板133と防振部材135との接合をより強固にすることが望ましい。
○ 上記の第1の実施形態では、ギヤードケーブルとケーブル側係止体が一体形成され、スライドシューとシュー側係止体が一体形成されたが、ケーブル側係止体およびシュー側係止体のいずれか一方がブラケットであって、ケーブル側係止体およびシュー側係止体のいずれか他方が一体形成されていてもよい。
○ 上記の実施形態では、自動車のリヤの開口をドアシャッターが開閉するドアシャッター開閉装置について説明したが、この限りではない。例えば、自動車の側部の開口に設けたドアシャッターに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 自動車
11 車体
12 サイドパネル
13 ルーフパネル
15 バンパ
18 開口
30、70、90 シャッタードア開閉装置
31 ガイドレール
32 スライドシュー
33 シャッター部材
34 ギヤードケーブル
35、51、71、91 連結部
36 ギヤードケーブル送り機構
56、111、130 シュー側係止体
57、112 132 ケーブル側係止体
58、74、94、110、121、122、135 防振部材
59、75、97、112 環状部
59A、75A、97A 係止面(前)
59B、75B、97C 係止面(後)
61、120 突片部
62 縦板片
63 横板片
72、92 シュー側ブラケット
73、93 ケーブル側ブラケット
95 ボルト
96 ナット
114 係止片
131 係止面
133 係止板
134 端面