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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】家庭紙ロール用紙管
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/16 20060101AFI20220524BHJP
【FI】
A47K10/16 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017187607
(22)【出願日】2017-09-28
(65)【公開番号】P2019058588
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 美喜
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-502041(JP,A)
【文献】特開2016-016951(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047385(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0185205(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の家庭紙が巻かれる家庭紙ロール用紙管であって
重なり代を有してスパイラル状に巻回された外側紙管原紙とスパイラル状に巻回された内側紙管原紙とが、相互に位置をずらして重畳され接着層によって接着され、
外側紙管原紙と内側紙管原紙の坪量が145~155g/m2であり、
前記外側紙管原紙の幅が88~98mmであるとともに重なり代が10~15mmであり、かつ、紙管幅95~120mmで外側紙管が周回するように構成され、
前記内側紙管原紙は重なり代がなく、外側紙管原紙の重なり代と内側紙管原紙の縁とが重なっておらず、
かつ、25%圧縮時における圧縮強度が13.0~22.5Nであり、50%圧縮時における圧縮強度が20.0~24.5Nである、
ことを特徴とする家庭紙ロール用紙管。
【請求項2】
外側紙管原紙及び内側紙管原紙が非片艶紙である請求項1記載の家庭紙ロール用紙管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭紙ロール用紙管に関する。
【背景技術】
【0002】
紙管に帯状のキッチンペーパーやトイレットペーパー等の家庭紙を巻いてロール状のトイレットロールやキッチンペーパーロール等の製品にするには、ワインダーが用いられる。家庭紙ロールを製造するためのワインダーには、紙管内に挿入したシャフトによって紙管を回転させて紙を巻き取るセンターワイディングと、巻き取りロールやドラムロールとも称されるサーフェイスロールとエア抜きなどを行うライダーロールとによって外周面側から回転力を与えて紙管に紙を巻き付けるサーフェイスワインダーがあり、近年では、生産性の高いサーフェイスワインダーが主流となっている。
【0003】
しかし、サーフェイスワインダーでは、紙管にシャフトの入るセンターワインディングと異なる特性が紙管に要求される。
【0004】
すなわち、サーフェイスワインダーでは、2本のロール間を通過しながら紙をピックアップする際に、高いグリップ力が必要となる。また、紙管を紙管外径より2.5~3mm程度狭いクリアランスを通過させる。そして、紙をピックアップしてから巻き取りが開始されると、紙管の周速は瞬間的に700m/分程度まで急加速される。
【0005】
したがって、紙管にはクリアランスを通過する際に若干の潰れる弾性が必要であるとともに、巻き取り時に断面の真円度が高い状態に復元されることが要求される。クリアランス通過時に潰れがたい場合には、紙のピックアップができなくなり、また、潰れた状態のまま、巻き取りが開始されるとワインダー内で紙管の踊りやはねが生じて巻き取りができなくなる。
【0006】
他方で、家庭紙ロールの製造は、一般的には、製品幅よりも長い長尺の紙管を形成し、この長尺の紙管に幅広のペーパーを巻いてログと称される製品幅よりも幅広の中間体を形成し、その後にこのログをログカッター又はログソーと呼ばれる裁断手段にて製品幅に裁断して製品とする。したがって、紙管の強度が弱いと所定寸法に裁断する際、カット面が潰れて不良品となる。
【0007】
ところで、紙管は、巻かれた紙を使用した後には、通常は廃棄されるものであるため、家庭紙ロールにおける紙管の原料やコストは低いほうが望ましい。紙管の原料やコスト低減の手段の一つに紙管原紙の坪量を低下させることが挙げられるが、坪量の低下は原紙の強度の低下につながるため、単に坪量を低下させるだけでは、サーフェイスワインダーで使用可能な紙管の特性を確保することが非常に困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-131464号公報
【文献】特開2013-070815号公報
【文献】特開2014-193214号公報
【文献】特開2016-064879号公報
【文献】特許第5590205号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の主たる課題は、坪量が低く、しかもサーフェイスワインダーの適性がより向上された家庭紙ロール用紙管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである
【0011】
〔請求項1記載の発明〕
帯状の家庭紙が巻かれる家庭紙ロール用紙管であって
重なり代を有してスパイラル状に巻回された外側紙管原紙とスパイラル状に巻回された内側紙管原紙とが、相互に位置をずらして重畳され接着層によって接着され、
外側紙管原紙と内側紙管原紙の坪量が145~155g/m2であり、
前記外側紙管原紙の幅が88~98mmであるとともに重なり代が10~15mmであり、かつ、紙管幅95~120mmで外側紙管が周回するように構成され、
前記内側紙管原紙は重なり代がなく、外側紙管原紙の重なり代と内側紙管原紙の縁とが重なっておらず、
かつ、25%圧縮時における圧縮強度が13.0~22.5Nであり、50%圧縮時における圧縮強度が20.0~24.5Nである、
ことを特徴とする家庭紙ロール用紙管。
【0012】
【0013】
〔請求項2記載の発明〕
外側紙管原紙及び内側紙管原紙が非片艶紙である請求項1記載の家庭紙ロール用紙管。
【発明の効果】
【0014】
以上のとおり本発明によれば、坪量が低く、しかもサーフェイスワインダーの適性がより向上された家庭紙ロール用紙管が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る家庭紙ロール用紙管の斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る家庭紙ロール用紙管の断面図である。
図3】本発明に係る耐圧強度の測定方法を説明するための図である。
図4】本発明に係る家庭紙ロール用紙管の製造方法を説明するための図である。
図5】紙管の製造方法を説明するための他の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を図1~5を参照しながら以下に説明する。但し、本発明は、この実施形態に限られない。
【0017】
本実施形態の家庭紙ロール用紙管10は、帯状のトイレットペーパー、キッチンペーパー、ティシュペーパー又は紙タオル等の家庭紙が巻かれてロール状の製品を構成するためのものであり、その外径は、φ35~44mmである。
【0018】
この家庭紙ロール用紙管(以下、単に紙管ともいう)10は、スパイラル状に巻回された外側紙管原紙32とスパイラル状に巻回された内側紙管原紙31とが相互に位置ずらして重畳され接着剤による接着層22によって接着されているいわゆるスパイラル紙管である。
【0019】
本実施形態に係る外側紙管原紙32及び内側紙管原紙31の坪量がともに、145~155g/m2である。従来の一般的なサーフェイスワインダーに用いられる家庭紙ロール用紙管に用いられる紙管原紙の坪量は170~180g/m2であり、本実施形態に係る外側紙管原紙32及び内側紙管原紙31の坪量145~155g/m2は、かなり低い坪量である。まず、低坪量であることから繊維原料を少なくすることができ、コストも安くすることができる。そして、本実施形態の紙管10は、低坪量でありながら下記構成によって従来紙管よりもサーフェイスワインダーにおける適性が高くなっている。なお、145g/m2未満となると強度を発現させるのが困難となり、155g/m2ではコスト安を達成し難くなる。また、内側紙管原紙31と外側紙管原紙32の坪量の差が10g/m2以内であり成形ベルトとマンドレルシャフトを用いた一般的な製法において皺が発生しがたい。好ましくは、内側紙管原紙31と外側紙管原紙32の坪量の差は5g/m2、特には2g/m2とするのが望ましい。最も好ましいのは同一である。また、本発明に係る坪量とは、JIS P 8124(1998)の坪量測定方法によるものである。紙管原紙31,32の坪量は、紙管製造前のものを測定してもよいが、次のように測定しても紙管前の紙管原紙の坪量と同等となる。家庭紙ロールの家庭紙をすべて巻き出して紙管を取り出した後、この紙管を、水を満たしたビーカー中に沈めて24時間浸漬して接着糊を溶解させて、内側紙管原紙と外側紙管原紙を分離する。次いで、内側紙管原紙と外側紙管原紙の各々を105℃で12時間乾燥させる。さらに、内側紙管原紙と外側紙管原紙の各々を、恒温恒湿室23℃50%環境下に24時間保管する。次いで、内側紙管原紙と外側紙管原紙の各々の質量を測定する(小数点3位まで)。内側紙管原紙と外側紙管原紙の各々を、平面状として、幅および長さを測定する。上記質量と幅及び長さから次式にて坪量を算出する。紙管原紙の坪量(g/m2)=紙管原紙の質量(g)÷〔紙管原紙の長さ(m)×紙管原紙の幅(m)〕。5ロールの紙管について、各々計測した内側紙管原紙と外側紙管原紙の坪量5点を平均して、各々の内側紙管原紙と外側紙管原紙の坪量とする。
【0020】
本実施形態の紙管10は、外側紙管原紙32が重なり代11を有してスパイラル状に巻回されており、特にその外側紙管原紙32の幅L1が88~98mmであるとともに重なり代11の幅L2が8~18mmとなっている。重なり代11のより好ましい幅L2は、10~15mmである。なお、重なり代11の部分においては外側紙管原紙同士が接着層21によって接着されている。ここで、従来の紙管においても外側紙管原紙が重なり代を有しているものがあるが、一般的には5mm程度である。本実施形態の紙管では外側紙管原紙の重なり代が8~18mmと幅広になっている。重なり代が8mm以上となると、サーフェイスワインダーでの操業が非常に安定する。この理由は、まず、サーフェイスワインダーでは、紙を巻き始める初期段階においてはサーフェイスロールによって紙管及び巻かれて紙が回転させられその後すぐにその巻き始められたロールにライダーロールが接触する。すなわち、紙管の回転発生からライダーロールによって紙が巻かれ始めたロールの抑えが開始されるまでの間に時間差がある。そして、本実施形態の紙管10では、外側紙管原紙32の重なり代11は原紙同士が重ねっているため外周面側にやや凸となる。つまり、本実施形態の紙管は、外周面に8~18mm幅の凸部11がスパイラル状に形成される。そして、8mm以上の幅の凸部11が外周面にあると、特に、紙を巻き始める段階において、サーフェイスロールと紙が紙管に巻かれ始めたロールとの間の接触範囲が高まるため、ライダーロールが当たるまでの間の紙が紙管に巻かれ始めたロールの踊りやブレが生じにくくなる。また、紙管に紙をピックアップする際に凸部が広いことによって、ピックアップのミスが少なくなり操業が安定する。
【0021】
また、重なり代11の幅が8mm以上と従来製品における重なり代よりわずか3mm幅広になることで紙管の強度が各段に高まる。その結果、上記のとおり低い坪量とすることができる。反対に8mmを下回る重なり代の幅では、145~155g/m2の紙管原紙とするのが困難となる。また、重なり代の幅が18mmを超える場合には、紙管原紙を低い坪量としても重なり代によってコストの削減が相殺されるため18mmを超えるのは望ましくない。また、18mmを超えるとマンドレルシャフトを用いた一般的な製造方法の場合に皺が入りやすく製造が難しくなる。さらに。18mmを超えるとライダーロールによる空気排出が不十分となるエア噛みが発生するおそれが高まる。ライダーロールは、紙管に紙が巻かれ始めたロールに接触して、さらに紙を巻いていく際に既に巻かれている紙とこれから巻く紙との間の隙間に空気が入らないように抑えるように作用するため、凸部の幅が18mmを超えて幅広となる空気排出が十分とならずエア噛みが発生する恐れが高まるのである。エア噛みが発生した際には、安定したロールの回転が難しくなるため操業安定性が低下する。
【0022】
さらに、本実施形態の紙管では、坪量145~155g/m2で外側紙管原紙32の重なり代の幅を8~18mmとすることで紙管の弾性と強度に優れたものとなり、紙管にキッチンペーパーやトイレットペーパーを巻いた後にログソー等で裁断する際に紙管の潰れが発生し難くなる。
【0023】
他方、本実施形態における外側紙管原紙32の幅は88~98mmである。98mmを超えると重なり代の間隔が離れすぎとなり強度等の向上が十分に発現しない場合がある。また、88mmを下回ると坪量を低下させた意義が相殺されるおそれが高まる。
【0024】
ここで本実施形態に紙管では、内側紙管原紙31についても重なり代を形成してもよいが、内側紙管原紙31は紙管の内周面を構成することになるが、この内周面が製造時にマンドレルシャフトに直接に巻きつけられ部分であるため段差がないほうが望ましい。このため本実施形態の紙管の好ましい形態は、内側紙管原紙については重なり代がない形態である。但し、強度の発現の点から、内側紙管原紙31の縁は隙間なく接合しているのが望ましい。
【0025】
外側紙管原紙32と内側紙管原紙31との位置のずれについては、内側紙管原紙31の幅方向の間、特に幅方向の中央部に外側紙管原紙31の重なり代11が位置するようにするのがよい。これは内側紙管原紙31と外側紙管原紙32へのマンドレルシャフト対する巻き付けの角度を同程度にすればよい。このようにすると少なくとも外側紙管原紙32の重なり代11のある部分は三層積層構造となるため、凸部による紙管の弾性及び強度の発現がサーフェイスロールの適性により優れたものとなる。なお、内側紙管原紙31の幅は、特に限定されないが80mmを基準に、外側紙管原紙32の幅及び重なり代の幅と、重なり代部分が内側紙管原紙31の幅の中央に位置されることを考慮して適宜に定めればよい。
【0026】
本実施形態に係る紙管10の接着層21,22に係る接着剤は、特に限定されない。公知の紙管用のものを用いることができる。アクリル系接着剤、ホットメルト接着剤、澱粉糊、PVA(ポリビニルアルコール)等が例示できる。
【0027】
本実施形態に係る紙管は、幅95~120mmで外側紙管原紙32が周回するようにする。このようにすると95~120mmで三枚重ねとなる凸部11が周回して配置され、特にサーフェイスワインダーでのグリップ時の潰れに対する強度及び弾性において適性の高いものとなる。また、95~120mmで凸部が周回するように配置されている場合には、ログソーでの裁断の際に紙管の潰れが発生し難くなる。
【0028】
ここで、本実施形態の紙管10における具体的な強度は、25%圧縮時における圧縮強度が13.0~22.5Nであり、50%圧縮時における圧縮強度が20.0~24.5Nであるが望ましい。ここで、圧縮強度は、特に図3に示すように、紙管10を水平で硬質な台40の上に孔が水平方向に向くように横向き置き、端子51をφ2cmとしたプッシュプルゲージ50(株式会社イマダ社製の型番:Z2-20又はその相当品)を用いて、紙管中央上から垂直方向に押した際の、25%圧縮時と50%圧縮時の抵抗力をそれぞれ測定した値である。なお、測定は、家庭紙ロールから家庭紙を取り除いて紙管だけとして測定してもよいし、家庭紙巻き付け前の紙管(後述する長尺のスパイラル紙管30等)を測定してもよい。但し、家庭紙ロールから家庭紙を取り除いた紙管を測定する場合には、潰れがないものとする。また、家庭紙ロールから家庭紙を取り除いて紙管だけとする場合には、ピックアップ糊によって1~2層の家庭紙が付着している状態であってもよい。さらに、紙管が幅114mmを超えるものの場合には、114mm幅に潰れないように裁断して測定する。95~114mmの範囲では、そのまま測定する。25%圧縮時における耐圧強度が13.0~22.5Nの範囲にあり、50%圧縮時における圧縮強度が20.0~24.5Nの範囲にあれば、サーフェイスワインダーにて2本のロール間を通過しながら紙をピックアップする際に高いグリップ力が加わったり、紙をピックアップしてから巻き取りが開始される際の急加速の際においても紙管がねじれることがなくものと評価でき、また、紙管10を紙管外径より2.5~3mm程度狭いクリアランスを通過する際において、適切な潰れる量でしかも巻き取り時までに復元されるものと評価できる。さらに、ログソーで裁断する際においても、家庭紙ロール及び紙管が極めて潰れ難いものと評価できる。特に、50%圧縮時における圧縮強度を20.0~24.5Nであると、このログソーで極めて潰れ難いものと評価できる。ログソーでログを製品幅に裁断する際には、カッターの刃により、ログが瞬間的に紙管が潰れるほど圧迫されることがあり、その際の紙管の潰れが元の紙管径に対し半分ほどになる場合がある。したがって、その際の変形が大きくなり過ぎないように、50%圧縮時における圧縮強度を20.0~24.5Nとするのが特に望ましい。
【0029】
他方で、上記紙管10の強度は、繊維密度や平滑度、紙力剤の使用によっても調整できるが、次のような紙管原紙を用いるのが望ましい。
【0030】
外側紙管原紙32及び内側紙管原紙31の繊維原料は、100%クラフトパルプが望ましく、特に、広葉樹クラフトパルプを60質量%超100質量%以下、針葉樹クラフトパルプを0質量%以上60質量%未満であるのが望ましい。公知の接着糊が使用でき、抄紙も容易で、強度を発現しやすい。
【0031】
また、外側紙管原紙32及び内側紙管原紙31が、ともに非片艶紙であるのが望ましい。すなわち、乾燥がヤンキードライヤーではなく、多筒式ドライヤー等によって乾燥されている原紙であるのがよい。特に、紙面の表裏の差が少ないツインワイヤー抄紙による上質紙であるのが望ましい。つまり、紙管10は、ツインワイヤー抄紙機によって抄紙され乾燥が多筒式ドライヤーによって製造された坪量145~155g/m2の上質紙であるのが望ましい。非片艶紙は、接着剤の表面への付着及び浸透が均一になりやすく強度が発現しやすい。また、外側紙管原紙の重なり代が幅広の場合、接着糊の付着及び浸透が均一であると凸部の高さの精度が高まりエア噛みなどがより発生しがたくなる。
【0032】
また、サイズ度(コッブ法)が高い方が、接着剤が付着及び浸透しやすく、ベック平滑度が高い方が、接着剤が付着及び浸透しやすい。したがって、サイズ剤やカレンダー処理によって、サイズ度及びベック平滑度を高めるのが望ましい。なお、ここでのサイズ度とは、JIS P 8140(1998)に基づくコッブサイズ度であり、ベック平滑度は、JIS P 8119(1998)に基づくものである。
【0033】
次いで、紙管の製造工程について特に図4及び図5により説明する。紙管10の製造は、原反ロール31A,32Aから繰出された二枚の帯状の紙管原紙(内側紙管原紙31及び外側紙管原紙32)のうち外側紙管原紙32の内側紙管原紙対向面に糊付けロール65等によって接着剤20を付与し、外側紙管原紙32の接着剤付与面に内側紙管原紙31を幅方向に一部重ね、前記内側紙管原紙31の外側紙管原紙32との対抗しない面をマンドレルシャフト52に対向する面、すなわち紙管内面となる面にして、各紙管原紙31,32をマンドレルシャフト52に螺旋状に巻き付けて連続的に筒状部分29を形成する。その際に外側紙管原紙32については5~18mmの重なり代をもって巻く。そして形成された筒状部分29は、家庭紙ロールの複数倍幅以上の幅でカッター58によりカットして長尺のスパイラル紙管30(スパイラル式紙管とも称される)を形成する。外側紙管原紙32に対する接着剤20の付与量は必ずしも限定されないが、1~25.0g/m2程度である。
【0034】
図示の形態では、各紙管原紙31,32のマンドレルシャフト52への巻き付けは、一対のプーリー53,53間に巻き掛けられた成形ベルト54により、マンドレルシャフト52上の所定部分に位置する筒状部分29に回転力を与え、その回転により紙管原紙31,32をマンドレルシャフト52の軸心に対して所定角度で引き込んで、螺旋状に巻くようにしている。図示例では、一対のプーリー53,53を二機配置して二つの成形ベルト54,54により、筒状部分29に回転力を与えているが、一機の一対のプーリーと成形ベルトにより筒状部分に回転力を与えるようにしてもよい。また、図示しないが、筒状部分29に成形ベルト54ではなくロールを当接させて回転力を与えるようにしても、各紙管原紙31,32をマンドレルシャフト52に巻き付けることができる。
【0035】
ここで、紙管原紙31,32をマンドレルシャフト52に巻き付けてスパイラル紙管の形成するにあたっては、図示例からも理解されるように、紙管原紙31,32が連続的にマンドレルシャフト52に送り込まれることにより筒状部分29が長くなり、その筒状部分29が連続的に形成されてマンドレルシャフト52の先端方向に伸びていく。そして、その過程では、筒状部分29の内面がマンドレルシャフト52の周面に摺接しながら、マンドレルシャフト52の先端方向に向かって移動していくことになる。
【0036】
かくして製造された長尺のスパイラル紙管30は、サーフェイスワインダーにて、この長尺のスパイラル紙管30と実質的に同幅の家庭紙が巻かれたログとされる。その後に、ログソーでログを製品幅に裁断し、個々の家庭紙ロールとされる。ログの切断と同時に、長尺の紙管も裁断され、長尺のスパイラル紙管30も個々の紙管10となる。
【実施例
【0037】
次いで、本発明の実施例の紙管とその比較例の紙管を作成し、その紙管の物性値を測定した。また、紙管の製造性について評価した。さらに、各紙管を用いてサーフェイスワインダーで巻き取りを行ってログを製造し、その後にそのログをログソーで裁断して、紙管の潰れなどを評価する加工テストを行った。表中の物性値は次のようにして測定した。なお、原紙に関しては原紙の状態で測定した。
【0038】
〔坪量〕
上記のとおり紙管を外側紙管原紙と内側紙管原紙に分離した後に、JIS P 8124(1998)の坪量測定方法に従って測定した。
【0039】
〔平滑度〕
JIS P 8119(1998)に基づくベック平滑度を測定した。測定面は、内側紙管原紙及び外側紙管原紙ともに貼り合わせ面である。試験片の寸法は、50mm角からA4サイズ以下とした。なお、数値は、5回の測定値の平均値である。なお、測定値は、紙管製造前の紙管原紙のものである。
【0040】
〔引張り強さ〕
JIS P 8113(2006)に基づき測定した。試験片の寸法は幅15mm、長さ180mmであり、紙の縦方向及び横方向について5回の測定し、その平均値を縦及び横の引っ張り強さとした。なお、測定値は、紙管製造前の紙管原紙のものである。
【0041】
〔クラーク剛度〕
JIS P 8143(2009)の7.3自動式試験機法に基づいて測定した。試験片の寸法は、幅15mm、長さ500mmであり、紙の縦方向及び横方向について5回の測定し、その平均値を縦及び横のクラーク剛度とした。なお、測定値は、紙管製造前の紙管原紙のものである。
【0042】
〔コッブサイズ度120秒〕
JIS P 8140(1998)「紙及び板紙―吸水度試験方法―コッブ法」に基づいて測定した。試験器は内径112.8mm、25mmの金属製シリンダを用いた。試験片はシリンダの外径より10mm以上大きいものを用意する。質量を計測した試験片を下のゴム板とシリンダの間に挟みネジで留める。水深10mm以上となるようにシリンダ内に水を注ぐ。注ぎ始めてから120秒経過後に直ちに水を捨て、直ぐにネジを外し、試験片の質量を計測する。コッブサイズ度(A)は、吸水前後の質量差をシリンダ内部の面積(10cm2)で除して求める。
【0043】
〔圧縮強度〕
上記の圧縮強度を測定した。用いた機器は、端子をφ2cmとしたプッシュプルゲージ(株式会社イマダ社製の型番:Z2-20)である。
【0044】
〔加工テスト〕
成形ベルトでのシワ入りについては、図5に示す装置を用いて、下記表1に記載の外側紙管原紙及び内側紙管原紙、紙管製造方法によって、2週間、紙管を製造して、シワのある紙管の発生率を確認した。◎は成形ベルトでのシワ入りなし、〇は成形ベルトで1mm程度のシワが3~7%発生、△は成形ベルトで1mm程度のシワが7%以上、×は成形ベルトで4mm程度のシワ入り5%以上を示している。
【0045】
また、ワインダーでの紙管潰れは、各例に係る紙管を用いてサーフェイスワインダーにてログを製造し、ログの紙管を確認することで行った。◎はワインダーでの紙管潰れ入りなし、〇はワインダーで1mm程度の紙管潰れが3~7%、△はワインダーで1mm程度の紙管潰れが7%以上、×はワインダーで4mm程度の紙管潰れ入り5%以上を示している。
【0046】
また、ログソーでの紙管潰れは、サーフェイスワインダーにて製造した各例に係るログをログソーで114mm幅に裁断して、裁断面を確認した。◎はログソーでの紙管潰れ入りなし、〇はログソーで1mm程度の紙管潰れが3~7%、△はログソーで1mm程度の紙管潰れが7%以上、×はログソーで4mm程度の紙管潰れ入り5%以上を示している
【0047】
【表1】
【0048】
表1に示されるとおり実施例2、実施例3、実施例6、実施例7については加工テストにおいてすべての項目で◎、参考例1、参考例4、参考例5、参考例8は〇の評価が確認された。比較例については、比較例1がシワや潰れが発生しすべての項目で△の評価となった。他の比較例2~5はいずれもシワや潰れが顕著に発生しすべての項目で×の評価となった。
【0049】
また、坪量が高いが坪量差が大きく内側紙管原紙と外側紙管原紙の強度等の差がある比較例2は、紙管製造時のシワの発生が顕著に確認された。内側紙管原紙及び外側紙管原紙の坪量が145g/m2の比較例3は、重なり代を10mmにしても加工テストで十分な結果が得られなかった。また、比較例4のように内側紙管原紙及び外側紙管原紙の坪量が150g/m2あっても重なり代が8mm未満の場合には加工テストで十分な結果が得られなかった。比較例5は、内側紙管原紙及び外側紙管原紙の坪量が150g/m2であり、重なり代も20mmと幅広にしたが、かえって成形ベルトでのシワが顕著に発生した。対して、各参考例と本発明の数値の範囲内にある各実施例は、成形ベルトでの製造時のシワやサーフェイスワインダーやログソーでの紙管潰れがほとんど発生しない。
【符号の説明】
【0050】
10、10A…紙管、11…重なり代(凸部)、20…接着剤、21,22…接着層、30…長尺の紙管、31A,32A…原反ロール、31…内側紙管原紙、32…外側紙管原紙、L1…外側紙管原紙の幅、L2…重なり代の幅、40…水平台、50…プッシュプルゲージ、51…端子、65…糊付けロール、52…マンドレルシャフト、53…プーリー、54…成形ベルト、58…カッター。
図1
図2
図3
図4
図5