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特許7078515異材接合方法、異材接合継手、異材接合用補助部材付き管状部材及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】異材接合方法、異材接合継手、異材接合用補助部材付き管状部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/23 20060101AFI20220524BHJP
   B21D 39/20 20060101ALI20220524BHJP
   B21D 39/14 20060101ALI20220524BHJP
   B21D 39/04 20060101ALI20220524BHJP
【FI】
B23K9/23 H
B21D39/20 D
B21D39/14
B21D39/04 D
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018201197
(22)【出願日】2018-10-25
(65)【公開番号】P2020066033
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 励一
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0228869(US,A1)
【文献】特開2016-147309(JP,A)
【文献】再公表特許第2016/103375(JP,A1)
【文献】実開平02-028324(JP,U)
【文献】国際公開第2016/042596(WO,A1)
【文献】特開2002-005136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/23
B21D 39/20
B21D 39/14
B21D 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属材料からなる管状の第1の部材と、該第1の金属材料と異なる第2の金属材料からなる第2の部材とを接合してなる異材接合方法において、
前記第1の金属材料と異なる第3の金属材料からなる管状の補助部材と、前記第1の部材のいずれか一方の内側部材の周囲に、前記補助部材と前記第1の部材のいずれか他方の外側部材を配置する工程と、
前記内側部材を拡管加工することにより、その周壁の一部を径方向外側に膨出して、前記第1の部材と前記補助部材とをかしめ結合する工程と、
前記補助部材と前記第2の部材とを溶接することで、前記補助部材を介して前記第1の部材と前記第2の部材とを接合する工程と、
を有する異材接合方法。
【請求項2】
前記拡管加工は、前記外側部材が配置されている前記内側部材の内部に弾性体を挿入し、前記弾性体を軸方向に圧縮することで、前記内側部材の周壁の一部を径方向外側に膨出させる、請求項1に記載の異材接合方法。
【請求項3】
前記外側部材には、円周方向に沿って複数の穴が設けられ、
前記拡管加工は、前記内側部材の内部に前記複数の穴に対応して複数の玉を配置し、前記複数の玉と当接する当接部を有し、該当接部が軸方向に沿って中心軸から徐々に離間する押出部材を軸方向に変位させることで、前記複数の玉を前記内側部材の径方向外側へ移動させ、前記複数の穴に臨む前記内側部材の周壁の一部を径方向外側に膨出させる、請求項1に記載の異材接合方法。
【請求項4】
前記内側部材が前記第1の部材で、前記外側部材が前記補助部材であり、
前記補助部材は、穴又は内向き溝が形成されているとともに、
前記かしめ結合は、前記第1の部材の周壁の一部を、前記穴又は内向き溝に対して嵌入させることにより行われる、請求項1~3のいずれか1項に記載の異材接合方法。
【請求項5】
前記第1の金属材料は、アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製と、鋼製とのいずれか一方であり、
前記第2及び第3の金属材料は、前記アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製と、前記鋼製とのいずれか他方である、請求項1~4のいずれか1項に記載の異材接合方法。
【請求項6】
第1の金属材料からなる管状の第1の部材と、該第1の金属材料と異なる第2の金属材料からなり、前記第1の部材と接合される第2の部材と、を有する異材接合継手において、
前記第1の金属材料と異なる第3の金属材料からなる管状の補助部材を備え、
前記補助部材と前記第1の部材のいずれか一方である内側部材は、その周壁の一部が径方向外側に膨出する膨出部を有することで、前記補助部材と前記第1の部材のいずれか他方である外側部材とかしめ結合され、
前記補助部材と前記第2の部材とが溶接される異材接合継手。
【請求項7】
前記内側部材が前記第1の部材で、前記外側部材が前記補助部材であり、
前記補助部材は、穴又は内向き溝が形成されているとともに、
前記第1の部材の周壁の一部が、前記穴又は内向き溝に対して嵌入されてなる、請求項6に記載の異材接合継手。
【請求項8】
前記補助部材には、円周方向に沿って複数の前記穴が設けられ、
前記第1の部材は、前記複数の穴に嵌入される複数の前記膨出部を有する、請求項7に記載の異材接合継手。
【請求項9】
前記第1の金属材料は、アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製と、鋼製とのいずれか一方であり、
前記第2及び第3の金属材料は、前記アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製と、前記鋼製とのいずれか他方である、請求項6~8のいずれか1項に記載の異材接合継手。
【請求項10】
金属材料からなる管状部材と、該管状部材の金属材料と異なる金属材料からなり、前記管状部材と嵌合する管状の補助部材と、を備える異材接合用補助部材付き管状部材であって
記管状部材である内側部材は、その周壁の一部が径方向外側に膨出する膨出部を有することで、前記補助部材である外側部材とかしめ結合され
前記補助部材は、穴又は内向き溝が形成されているとともに、
前記管状部材の周壁の一部が、前記穴又は内向き溝に対して嵌入されてなる異材接合用補助部材付き管状部材。
【請求項11】
前記補助部材には、前記穴を構成する複数の貫通穴が円周方向に沿って設けられ、
前記管状部材は、前記複数の貫通穴に嵌入される複数の前記膨出部を有し、
前記複数の膨出部の突出高さは、前記補助部材の肉厚以下である、請求項10に記載の異材接合用補助部材付き管状部材。
【請求項12】
前記管状部材の金属材料は、アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製と、鋼製とのいずれか一方であり、
前記補助部材の金属材料は、前記アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製と、前記鋼製とのいずれか他方である、請求項10又は11に記載の異材接合用補助部材付き管状部材。
【請求項13】
金属材料からなる管状部材と、該管状部材の金属材料と異なる金属材料からなり、前記管状部材と嵌合する管状の補助部材と、を備える異材接合用補助部材付き管状部材の製造方法であって、
前記補助部材と前記管状部材のいずれか一方の内側部材の周囲に、前記補助部材と前記管状部材のいずれか他方の外側部材を配置する工程と、
前記内側部材を拡管加工することにより、その周壁の一部を径方向外側に膨出して、前記管状部材と前記補助部材とをかしめ結合する工程と、を備え
前記拡管加工は、前記外側部材が配置されている前記内側部材の内部に弾性体を挿入し、前記弾性体を軸方向に圧縮することで、前記内側部材の周壁の一部を径方向外側に膨出させる異材接合用補助部材付き管状部材の製造方法。
【請求項14】
前記外側部材には、円周方向に沿って複数の穴が設けられ、
前記拡管加工は、前記内側部材の内部に前記複数の穴に対応して複数の玉を配置し、前記複数の玉と当接する当接部を有し、該当接部が軸方向に沿って中心軸から徐々に離間する押出部材を軸方向に変位させることで、前記複数の玉を前記内側部材の径方向外側へ移動させ、前記複数の穴に臨む前記内側部材の周壁の一部を径方向外側に膨出させる、請求項13に記載の異材接合用補助部材付き管状部材の製造方法。
【請求項15】
前記内側部材が前記管状部材で、前記外側部材が前記補助部材であり、
前記補助部材は、穴又は内向き溝が形成されているとともに、
前記かしめ結合は、前記管状部材の周壁の一部を、前記穴又は内向き溝に対して嵌入させることにより行われる、請求項13又は14に記載の異材接合用補助部材付き管状部材の製造方法。
【請求項16】
前記管状部材の金属材料は、アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製と、鋼製とのいずれか一方であり、
前記補助部材の金属材料は、前記アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製と、前記鋼製とのいずれか他方である、請求項1315のいずれか1項に記載の異材接合用補助部材付き管状部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異材接合方法、異材接合継手、異材接合用補助部材付き管状部材及びその製造方法に関し、特に、自動車や鉄道車両等の輸送機器、建築物等の構造物に適用可能な異材接合方法、異材接合継手、異材接合用補助部材付き管状部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の輸送機器の燃費の向上を図るため、車体重量の軽量化が進められている。軽量化としては、現在主要となっている鋼を、軽量素材であるアルミニウム合金、マグネシウム合金、炭素繊維などに置換する手段がある。しかし、全てをこれら軽量素材に置換するには、高コスト化や強度不足になる、といった課題があり、その解決策として、鋼と軽量素材を適材適所に組み合わせた、いわゆるマルチマテリアルと呼ばれる設計手法が注目を浴びている。
【0003】
鋼と上記軽量素材を組み合わせるには、必然的にこれらを接合する箇所が出てくる。鋼同士やアルミニウム合金同士、マグネシウム合金同士では容易である溶接が、異材では極めて困難であることが知られている。この理由として、鋼とアルミニウムあるいはマグネシウムの溶融混合部には極めて脆い性質である金属間化合物(IMC)が生成し、引張や衝撃といった外部応力で溶融混合部が容易に破壊してしまうことにある。このため、抵抗スポット溶接法やアーク溶接法といった溶接法が異材接合には採用できず、他の接合法を用いるのが一般的である。鋼と炭素繊維の接合も、後者が金属ではないことから溶接を用いることができない。
【0004】
従来の異材接合技術の例としては、鋼素材と軽量素材の両方に貫通穴を設けてボルトとナットで上下から拘束する手段があげられる。また、他の例としては、かしめ部材を強力な圧力をかけて片側から挿入し、かしめ効果によって拘束する手段が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、鋼素材と軽量素材とを接合する部位としては、上記平板同士を接合する場合以外に、管状部材と平板とを接合する場合がある。
【0006】
これに対し、特許文献2には、板状の鋼製部品の穴部にアルミパイプを挿通し、更にアルミパイプ内にゴムを挿入した状態で、ゴムの両端を圧縮してアルミパイプを拡大変形させ、鋼製部品にアルミパイプを接合する技術が開示されている。
また、特許文献3では、鋼製の壁の開口に筒状部材を挿入し、筒状部材の内部に配置された弾性体を軸方向に圧縮させて筒状部材を2段階で拡管して、筒状部材と壁とを接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-174219号公報
【文献】特開2016-147309号公報
【文献】米国特許第4320568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献2や3に記載の接合方法の場合、鋼板部品には開口をあらかじめ形成する必要が生じると共に、接合現場において、ゴムや弾性体を有する接合装置が必要となり、現場での接合作業が煩雑となる可能性がある。
【0009】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的は、異なる金属材料からなる部材を、低コストで簡便に、かつ確実に接合でき、広範囲な分野に適用できる異材接合方法、異材接合継手、異材接合用補助部材付き管状部材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、異材接合方法に係る下記(1)の構成によって達成される。
(1) 第1の金属材料からなる管状の第1の部材と、該第1の金属材料と異なる第2の金属材料からなる第2の部材とを接合してなる異材接合方法において、
前記第1の金属材料と異なる第3の金属材料からなる管状の補助部材と、前記第1の部材のいずれか一方の内側部材の周囲に、前記補助部材と前記第1の部材のいずれか他方の外側部材を配置する工程と、
前記内側部材を拡管加工することにより、その周壁の一部を径方向外側に膨出して、前記第1の部材と前記補助部材とをかしめ結合する工程と、
前記補助部材と前記第2の部材とを溶接することで、前記補助部材を介して前記第1の部材と前記第2の部材とを接合する工程と、
を有する異材接合方法。
【0011】
また、異材接合方法に係る本発明の好ましい実施形態は、以下の(2)~(5)に関する。
(2) 前記拡管加工は、前記外側部材が配置されている前記内側部材の内部に弾性体を挿入し、前記弾性体を軸方向に圧縮することで、前記内側部材の周壁の一部を径方向外側に膨出させる、(1)に記載の異材接合方法。
(3) 前記外側部材には、円周方向に沿って複数の穴が設けられ、
前記拡管加工は、前記内側部材の内部に前記複数の穴に対応して複数の玉を配置し、前記複数の玉と当接する当接部を有し、該当接部が軸方向に沿って中心軸から徐々に離間する押出部材を軸方向に変位させることで、前記複数の玉を前記内側部材の径方向外側へ移動させ、前記複数の穴に臨む前記内側部材の周壁の一部を径方向外側に膨出させる、(1)に記載の異材接合方法。
(4) 前記内側部材が前記第1の部材で、前記外側部材が前記補助部材であり、
前記補助部材は、穴又は内向き溝が形成されているとともに、
前記かしめ結合は、前記第1の部材の周壁の一部を、前記穴又は内向き溝に対して嵌入させることにより行われる、(1)~(3)のいずれか1つに記載の異材接合方法。
(5) 前記第1の金属材料は、アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製と、鋼製とのいずれか一方であり、
前記第2及び第3の金属材料は、前記アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製と、前記鋼製とのいずれか他方である、(1)~(4)のいずれか1つに記載の異材接合方法。
【0012】
また、本発明の上記目的は、異材接合継手に係る下記(6)の構成によって達成される。
(6) 第1の金属材料からなる管状の第1の部材と、該第1の金属材料と異なる第2の金属材料からなり、前記第1の部材と接合される第2の部材と、を有する異材接合継手において、
前記第1の金属材料と異なる第3の金属材料からなる管状の補助部材を備え、
前記補助部材と前記第1の部材のいずれか一方である内側部材は、その周壁の一部が径方向外側に膨出する膨出部を有することで、前記補助部材と前記第1の部材のいずれか他方である外側部材とかしめ結合され、
前記補助部材と前記第2の部材とが溶接される異材接合継手。
【0013】
また、異材接合継手に係る本発明の好ましい実施形態は、以下の(7)~(9)に関する。
(7) 前記内側部材が前記第1の部材で、前記外側部材が前記補助部材であり、
前記補助部材は、穴又は内向き溝が形成されているとともに、
前記第1の部材の周壁の一部が、前記穴又は内向き溝に対して嵌入されてなる、(6)に記載の異材接合継手。
(8) 前記補助部材には、円周方向に沿って複数の前記穴が設けられ、
前記第1の部材は、前記複数の穴に嵌入される複数の前記膨出部を有する、(7)に記載の異材接合継手。
(9) 前記第1の金属材料は、アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製と、鋼製とのいずれか一方であり、
前記第2及び第3の金属材料は、前記アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製と、前記鋼製とのいずれか他方である、(6)~(8)のいずれか1つに記載の異材接合継手。
【0014】
また、本発明の上記目的は、異材接合用補助部材付き管状部材に係る下記(10)の構成によって達成される。
(10) 金属材料からなる管状部材と、該管状部材の金属材料と異なる金属材料からなり、前記管状部材と嵌合する管状の補助部材と、を備える異材接合用補助部材付き管状部材であって、
前記補助部材と前記管状部材のいずれか一方の内側部材は、その周壁の一部が径方向外側に膨出する膨出部を有することで、前記補助部材と前記管状部材のいずれか他方の外側部材とかしめ結合される異材接合用補助部材付き管状部材。
【0015】
また、異材接合用補助部材付き管状部材に係る本発明の好ましい実施形態は、以下の(11)~(13)に関する。
(11) 前記内側部材が前記管状部材で、前記外側部材が前記補助部材であり、
前記補助部材は、穴又は内向き溝が形成されているとともに、
前記管状部材の周壁の一部が、前記穴又は内向き溝に対して嵌入されてなる、(10)に記載の異材接合用補助部材付き管状部材。
(12) 前記補助部材には、前記穴を構成する複数の貫通穴が円周方向に沿って設けられ、
前記管状部材は、前記複数の貫通穴に嵌入される複数の前記膨出部を有し、
前記複数の膨出部の突出高さは、前記補助部材の肉厚以下である、(11)に記載の異材接合用補助部材付き管状部材。
(13) 前記管状部材の金属材料は、アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製と、鋼製とのいずれか一方であり、
前記補助部材の金属材料は、前記アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製と、前記鋼製とのいずれか他方である、(10)~(12)のいずれか1つに記載の異材接合用補助部材付き管状部材。
【0016】
また、本発明の上記目的は、異材接合用補助部材付き管状部材の製造方法に係る下記(14)の構成によって達成される。
(14) 金属材料からなる管状部材と、該管状部材の金属材料と異なる金属材料からなり、前記管状部材と嵌合する管状の補助部材と、を備える異材接合用補助部材付き管状部材の製造方法であって、
前記補助部材と前記管状部材のいずれか一方の内側部材の周囲に、前記補助部材と前記管状部材のいずれか他方の外側部材を配置する工程と、
前記内側部材を拡管加工することにより、その周壁の一部を径方向外側に膨出して、前記管状部材と前記補助部材とをかしめ結合する工程と、を備える異材接合用補助部材付き管状部材の製造方法。
【0017】
また、異材接合用補助部材付き管状部材の製造方法に係る本発明の好ましい実施形態は、以下の(15)~(18)に関する。
(15) 前記拡管加工は、前記外側部材が配置されている前記内側部材の内部に弾性体を挿入し、前記弾性体を軸方向に圧縮することで、前記内側部材の周壁の一部を径方向外側に膨出させる、(14)に記載の異材接合用補助部材付き管状部材の製造方法。
(16) 前記外側部材には、円周方向に沿って複数の穴が設けられ、
前記拡管加工は、前記内側部材の内部に前記複数の穴に対応して複数の玉を配置し、前記複数の玉と当接する当接部を有し、該当接部が軸方向に沿って中心軸から徐々に離間する押出部材を軸方向に変位させることで、前記複数の玉を前記内側部材の径方向外側へ移動させ、前記複数の穴に臨む前記内側部材の周壁の一部を径方向外側に膨出させる、(14)に記載の異材接合用補助部材付き管状部材の製造方法。
(17) 前記内側部材が前記管状部材で、前記外側部材が前記補助部材であり、
前記補助部材は、穴又は内向き溝が形成されているとともに、
前記かしめ結合は、前記管状部材の周壁の一部を、前記穴又は内向き溝に対して嵌入させることにより行われる、(14)~(16)のいずれか1つに記載の異材接合用補助部材付き管状部材の製造方法。
(18) 前記管状部材の金属材料は、アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製と、鋼製とのいずれか一方であり、
前記補助部材の金属材料は、前記アルミニウム合金もしくはマグネシウム合金製と、前記鋼製とのいずれか他方である、(14)~(17)のいずれか1つに記載の異材接合用補助部材付き管状部材の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の異材接合方法及び異材接合継手によれば、管状の補助部材が管状の第1の部材と強固に結合されると共に、該補助部材と第2の部材とが溶接により接合されるので、異なる金属材料からなる第1の部材と第2の部材とを、補助部材を介して間接的に接合することができる。
また、第1の部材に対する補助部材の取り付け位置に応じて、第1の部材の任意の位置に、第2の部材を接合することができる。
さらに、管状の第1の部材と補助部材とをあらかじめ結合しておけば、補助部材と第2の部材とを一般的な溶接方法で容易に接合することができる。
したがって、本発明は、異なる金属材料からなる部材を、低コストで簡便に、かつ確実に接合でき、広範囲な分野に適用できる。
【0019】
また、本発明の異材接合用補助部材付き管状部材及びその製造方法によれば、管状の補助部材が管状部材と強固に結合されているので、管状部材と、該管状部材と異なる金属材料からなる部材とを、補助部材を介して間接的に接合することができる。
また、管状部材に対する補助部材の取り付け位置に応じて、管状部材の任意の位置に、管状部材と異なる金属材料からなる部材を接合することができる。
したがって、本発明は、異なる金属材料からなる部材を、低コストで簡便に、かつ確実に接合でき、広範囲な分野に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る異材接合継手を示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る異材接合方法の各工程を示す斜視図である。
図3】本実施形態に係る異材接合用補助部材付き管状部材を製造する過程を示す断面図である。
図4】本実施形態の一例に係る異材接合用補助部材付き管状部材の斜視図である。
図5】本実施形態に係る異材接合方法により製造された異材接合継手の断面図である。
図6A】本実施形態の第1変形例に係る異材接合方法の各工程、及び異材接合継手を示す斜視図である。
図6B】本実施形態の第1変形例において、パイプ及び補助部材の他の例を示す横断面図である。
図6C】本実施形態の第1変形例において、パイプ及び補助部材の他の例を示す横断面図である。
図6D】本実施形態の第1変形例において、パイプ及び補助部材の他の例を示す横断面図である。
図7】本実施形態の第2変形例において、補助部材付き管状部材と板材とを接合する状態を示す斜視図である。
図8】本実施形態の第3変形例に係る異材接合用補助部材付き管状部材を示す断面図である。
図9A】本実施形態の第4変形例に係る異材接合用補助部材付き管状部材を示す断面図である。
図9B】本実施形態の第4変形例に係る異材接合方法、及び異材接合継手を示す断面図である。
図10】本実施形態の第5変形例に係る異材接合方法、及び異材接合継手を示す断面図である。
図11】本発明の第2実施形態の異材接合方法及び異材接合用補助部材付き管状部材の製造方法の拡管加工において、膨出部が形成される前の状態を示す上面図及び側面図である。
図12】第2実施形態に用いる拡管加工用の金属球及び円管を示す上面図及び側面図である。
図13】第2実施形態の異材接合方法及び異材接合用補助部材付き管状部材の製造方法の拡管加工において、膨出部が形成された後の状態を示す上面図及び側面図である。
図14】第2実施形態の変形例に係る押出部材及び金属球を、拡管加工時の移動と共に示す概略図である。
図15】本発明の第3実施形態に係る異材接合継手を示す斜視図である。
図16】本発明の第3実施形態に係る異材接合方法の各工程を示す斜視図である。
図17】第3実施形態に係る異材接合方法及び異材接合用補助部材付き管状部材の製造方法において拡管工程を示す斜視図である。
図18】第3実施形態に係る異材接合方法及び異材接合用補助部材付き管状部材の製造方法において拡管工程に使用される金属球及び受座を示す斜視図である。
図19】第3実施形態に係る異材接合方法及び異材接合用補助部材付き管状部材の製造方法において拡管工程を示す断面図である。
図20】拡管前及び拡管後における図19のXXVa-XXVa線、及びXXVb-XXVb線での断面図である。
図21】第3実施形態の変形例に係る異材接合方法及び異材接合用補助部材付き管状部材の製造方法において拡管工程を示す断面図である。
図22】拡管前及び拡管後における図21のXXVIIa-XXVIIa線、及びXXVIIb-XXVIIb線での断面図である。
図23】第3実施形態の変形例に係る異材接合方法及び異材接合用補助部材付き管状部材の製造方法において拡管工程に使用される金属球及び受座を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の各実施形態に係る異材接合方法、異材接合継手、異材接合用補助部材付き管状部材及びその製造方法について、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
(第1実施形態)
第1実施形態の異材接合方法は、アルミニウム合金又はマグネシウム合金(第1の金属材料)からなる円管状のパイプ(第1の部材、管状部材)1と、鋼製(第2の金属材料)からなる平板状の板材(第2の部材)2とを、鋼製(第3の金属材料)からなる円管状の補助部材3を用いて間接的に接合し、図1に示すような異材接合継手10を得るものである。このため、異材接合継手10では、以下詳述するように、補助部材3がパイプ1と強固に結合されていると共に、補助部材3と板材2とがアーク溶接等により接合されている。
【0023】
補助部材3は、パイプ1の端部に外嵌して取り付けられている。このため、補助部材3の内径は、パイプ1の外径より僅かに大きく設計されている。また、補助部材3は、円周方向に所定の間隔で複数の貫通穴(本実施形態では、3つ)3aが形成されている。
【0024】
パイプ1は、補助部材3の複数の貫通穴3aに臨む周壁の一部が径方向外側に膨出し、複数の貫通穴3aに対して嵌入される複数の膨出部1aを有し、これによって、補助部材3とかしめ結合されている。したがって、膨出部1aの基部は、補助部材3の内周面と貫通穴3aとの縁部全周に亘って接触しており、補助部材3は、パイプ1に対して軸方向に位置決めされると共に、回り止めされている。
【0025】
そして、板材2と、該板材2の平面に載置された補助部材3の端部との隅部には、アーク溶接によって溶接金属Wが形成され、板材2と補助部材3が強固に接合されている。
【0026】
このような異材接合継手10は、図2に示すように、まず、円筒状のパイプ1と、複数の貫通穴3aが形成された補助部材3と、を用意する。補助部材3の複数の貫通穴3aは、管状のブランク部材に対して図示しないパンチ等を用いて穿設される。なお、複数の貫通穴3aは、図1,2に示すような円形に限らず、多角形など他の形状であってもよい。
【0027】
そして、この補助部材3を、パイプ1の周囲に配置し、図3に示すように、ゴム21(弾性体)を用いたパイプ1の拡管加工により、複数の貫通穴3aに臨むパイプ1の周壁の一部を径方向外側に膨出させ、パイプ1と補助部材3とをかしめ結合する。
【0028】
このかしめ結合は、図3に示すように、受座20の上にパイプ1と、パイプ1の周囲に配置される補助部材3と、を載置する。受座20は、パイプ1及び補助部材3が載置される上面から突出する円柱状の突出部20aを有し、突出部20aの周囲にパイプ1が外嵌される。また、受座20に配置されたパイプ1の内部には、パイプ1の内径よりわずかに小さな外径をそれぞれ有するゴム21と押圧部材22とが配置される。ゴム21は、受座20の突出部20aの上に載置され、パイプ1の上下方向において、貫通穴3aの上方及び下方に延在して位置する。したがって、受座20の突出部20aは、補助部材3の端面から貫通穴3aまでの軸方向長さよりも短い。また、ゴム21は軸方向に圧縮後も貫通穴3aの上方及び下方に延在して位置する長さに設定される。押圧部材22は、ゴム21の上に載置されており、不図示のプレス装置などに連結され、下方に向かって強大な荷重を付与可能となっている。
【0029】
なお、ゴム21の材質としては、例えば、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、CNRゴム(クロロプレンゴム+ニトリルゴム)、又はシリコンゴムのいずれかを用いることが好ましい。また、これらのゴム21の硬度はショアAで30以上であることが好ましい。
【0030】
次いで、押圧部材22によってゴム21の軸方向に強大な荷重を付与すると、ゴム21は全長が短くなる代わりに外径が増大するように弾性変形する。これにより、パイプ1の内周面が径方向外方へと押圧されるが、補助部材3の内周面が対向する周壁の部位では、パイプ1の拡径が拘束される一方、補助部材3の貫通穴3aが臨む周壁の部位は、弾性変形したゴム21により拡管して径方向外方に押し出され、貫通穴3a内に膨出してドーム状の膨出部1aをなし、貫通穴3a内に嵌入する。
【0031】
そして、押圧部材22から荷重を除くことでゴム21が変形から復帰するが、塑性変形しているパイプ1の膨出部1aは複数の貫通穴3a内に残存した状態を維持するから、パイプ1と補助部材3とはかしめ接合されることとなる。その後、パイプ1内から押圧部材22、ゴム21を取り除き、更に受座20からパイプ1と補助部材3を取り外すことで、図3に示す接合体(異材接合用補助部材付き管状部材)4を得ることができる。
なお、一対の補助部材3をパイプ1の両端部にかしめ結合することで、図4に示すような接合体4を構成してもよい。
【0032】
その後、図2に戻って、接合体4の補助部材3と、板材2とがアーク溶接等により接合される。このアークによるすみ肉溶接は、鋼同士の溶接であるので、金属間化合物を生じることなく、強固に接合される。図2中、符号23は、溶接トーチを表している。
【0033】
なお、図5に示すように、補助部材3の肉厚tは、アーク溶接の際に溶接金属Wがアルミニウム合金又はマグネシウム合金からなるパイプ1に達しないように設定される。加えて、補助部材3の肉厚tは、上述したパイプ1を拡管加工する際に、補助部材3が変形しないように設定されている。
【0034】
また、本実施形態では、パイプ1をアルミニウム合金又はマグネシウム合金とし、板材2と補助部材3とを鋼製としているが、板材2と補助部材3の金属材料がパイプ1の金属材料と異なるものであればよく、各部材の金属材料はこれに限定されない。例えば、板材2と補助部材3の金属材料は、金属間化合物を生じることなく、融接を用いて互いに接合可能な材料であればよい。また、板材2と補助部材3の鋼製の組成は、互いに同一であっても異なるものであってもよい。
また、パイプ1が鋼製、板材2がアルミニウム合金又はマグネシウム合金である場合には、補助部材3は、パイプ1の金属材料と異なる金属材料であればよく、例えば、板材2と同じ金属材料であるアルミニウム合金又はマグネシウム合金としてもよい。
【0035】
さらに、補助部材3には、複数の貫通穴3aが形成される代わりに、内周面に凹設される複数の有底穴や、周方向全周に亘って又は周方向に沿って断続的に形成される内向き溝であってもよい。すなわち、パイプ1の拡管加工により、穴や内向き溝内に膨出される膨出部1aによって補助部材3がパイプ1から抜けない構成であればよく、回り止めされるほうがより好ましい。
【0036】
また、パイプ1の断面形状は、円形に限らず、筒状であれば任意であり、他の例として、四角形、六角形、八角形などの多角形であってもよい。この場合、補助部材3の断面形状も、パイプ1の形状と対応するものであればよく、円形に限らず、四角形、六角形、八角形などの多角形であってもよい。なお、パイプ1の拡管加工に用いられるゴム21や押圧部材22もパイプ1の内形形状に対応するものを用意すればよい。
【0037】
例えば、図6Aに示すように、パイプ1は、断面形状が四角形である角管部材であってもよい。この場合、補助部材3もパイプ1の外面に沿った四角形であればよく、貫通穴3aは各側面にそれぞれ穿設されてもよい。
【0038】
また、補助部材3の断面形状は、貫通穴3aが形成される部分でパイプ1の外面に接触又は近接して、貫通穴3a内に膨出部1aが形成される形状であれば、パイプ1の形状と対応するものでもよいし、パイプ1の形状と異なる形状であってもよい。
【0039】
例えば、図6Bでは、パイプ1は、断面形状が正八角形である角管部材とし、補助部材3も、断面形状が正八角形である角管部材としている。また、補助部材3には、貫通穴3aが1つおきの四辺に穿設されている。
【0040】
図6Cでは、パイプ1は、断面形状が円形である円管部材とし、補助部材3は、断面形状が正方形である角管部材としている。また、補助部材3には、貫通穴3aが各辺に穿設されている。
【0041】
図6Dでは、パイプ1は、断面形状が円形である円管部材とし、補助部材3は、断面形状が正六角形である角管部材としている。また、補助部材3には、貫通穴3aが1つおきの三辺に穿設されている。
【0042】
上述した図6A図6Dのいずれの変形例の場合も、パイプ1の拡管加工により補助部材3がパイプ1と強固に結合されていると共に、補助部材3と板材2とがアーク溶接等により接合される。
【0043】
さらに、図7に示すように、接合体4の端面(パイプ1及び補助部材3の端面)は、パイプ1の軸線方向に対して傾斜していてもよく、接合体4の軸線方向が板材2の法線に対して傾斜して接合することもできる。この場合、パイプ1及び補助部材3の端面は、パイプ1の拡管加工の後に斜めに切断してもよいし、拡管加工の前にそれぞれ斜めに切断していてもよい。
【0044】
また、パイプ1の膨出部1aは、補助部材3の貫通穴3aに確実にかしめ結合されるものであればよく、膨出部1aの突出高さhが補助部材3の肉厚tよりも高くてもよいし、図8に示すように、補助部材3の肉厚t以下であってもよい。なお、膨出部1aの大きさは、貫通穴3aの大きさや拡管加工時の押圧部材22の軸方向荷重等によって制御される。
【0045】
さらに、このような突出高さhの場合、図9Aに示すように、膨出部1a及び貫通穴3aが補助部材3の軸方向両端側に位置するようにして、補助部材3をパイプ1の軸方向中間部に配置した接合体4を形成することで、開口が形成された板材2を補助部材3の回りに挿通することができる。これにより、図9Bに示すように、一対の補助部材3と、板材2との間の各隅部をアーク溶接などにより接合することで、板材2をパイプ1の軸方向中間部に接合することができる。
【0046】
また、パイプ1と補助部材3とは、図5に示すように、互いの端面が面一となるように結合されてもよいが、図10に示すように、補助部材3の端面がパイプ1の端面よりも延出するように結合されてもよい。
これにより、図5に示す実施形態では、すみ肉溶接の際に、溶接金属がパイプ1に当たらないように留意する必要があったが、図10に示す変形例では、溶接金属がパイプ1に当たらないように留意する必要がない。
【0047】
以上説明したように、本実施形態の異材接合方法によれば、管状のパイプ1をアルミニウム合金又はマグネシウム合金からなるとし、平板状の板材2を鋼製からなるとした場合、鋼製からなり、貫通穴3aが形成された管状の補助部材3を、パイプ1の周囲に配置する工程と、パイプ1を拡管加工することにより、その周壁の一部を径方向外側に膨出して貫通穴3aに対して嵌入させ、パイプ1と補助部材3とをかしめ結合する工程と、補助部材3と板材2とを溶接することで、補助部材3を介してパイプ1と板材2とを接合する工程と、を備える。
また、本実施形態の異材接合継手10によれば、アルミニウム合金又はマグネシウム合金からなる管状のパイプ1と、鋼製からなり、パイプ1と接合される平板状の板材2と、鋼製からなり、貫通穴3aが形成される管状の補助部材3と、を備え、パイプ1は、その周壁の一部が径方向外側に膨出して貫通穴3aに対して嵌入される膨出部1aを有することで、補助部材3とかしめ結合され、かつ、補助部材3と板材2とが溶接される。
これにより、管状の補助部材3が管状のパイプ1と強固に結合されると共に、該補助部材3と板材2とが溶接により接合されるので、異なる金属材料からなるパイプ1と板材2とを、補助部材3を介して間接的に接合することができる。
また、パイプ1に対する補助部材3の取り付け位置に応じて、パイプ1の任意の位置に、板材2を接合することができる。
さらに、管状のパイプ1と補助部材3とをあらかじめ結合しておけば、補助部材3と板材2とを一般的な溶接方法で容易に接合することができる。
したがって、本実施形態は、異なる金属材料からなるパイプ1と板材2とを、低コストで簡便に、かつ確実に接合でき、広範囲な分野に適用できる。
【0048】
また、本実施形態の異材接合用補助部材付き管状部材の製造方法によれば、アルミニウム合金又はマグネシウム合金からなる管状のパイプ1と、鋼製からなり、パイプ1の周囲に配置される管状の補助部材3と、を備え、貫通穴3aが形成された管状の補助部材3を、パイプ1の周囲に配置する工程と、パイプ1を拡管加工することにより、その周壁の一部を径方向外側に膨出して貫通穴3aに対して嵌入させ、パイプ1と補助部材3とをかしめ結合する工程と、を備える。
また、本実施形態の異材接合用補助部材付き管状部材によれば、アルミニウム合金又はマグネシウム合金からなる管状部材と、鋼製からなり、パイプ1の周囲に配置される管状の補助部材3と、を備え、補助部材3には、貫通穴3aが形成され、パイプ1は、その周壁の一部が径方向外側に膨出して貫通穴3aに対して嵌入されてなる膨出部1aを有する。
これにより、管状の補助部材3がパイプ1と強固に結合されているので、パイプ1と、該パイプ1と異なる金属材料からなる板材2とを、補助部材3を介して間接的に接合することができる。
また、パイプ1に対する補助部材3の取り付け位置に応じて、パイプ1の任意の位置に、パイプ1と異なる金属材料からなる板材2を接合することができる。
したがって、本実施形態は、異なる金属材料からなるパイプ1と板材2とを、低コストで簡便に、かつ確実に接合でき、広範囲な分野に適用できる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る異材接合方法及び異材接合用補助部材付き管状部材の製造方法について説明する。本実施形態では、パイプ1の拡管加工において、第1実施形態のものと異なる。すなわち、第1実施形態では、パイプ1の拡管加工が、弾性体を軸方向に圧縮することで行われていたが、本実施形態では、図11図13に示すように、複数(本実施形態では3つ)の金属球(玉)31を用いて行われる。
したがって、製造される異材接合継手10及び接合体(異材接合用補助部材付き管状部材)4は、第1実施形態のものと実質的に同じである。
【0050】
図11及び図12に示すように、複数の金属球31は、樹脂又はゴム製の弾性変形可能な円管42を用いて保持される。具体的には、円管42の周壁には、複数(本実施形態では3つ)の穴42aが等間隔に設けられており、3つの金属球31は、3つの穴42aから部分的にそれぞれ突出した状態で、円管42内に保持されている。
【0051】
また、図11に示すように、3つの金属球31及び円管42は、パイプ1内に収容される円管状の下部抑え管43によって支持される。このため、3つの金属球31は、パイプ1の周囲に配置された補助部材3の複数の貫通穴3aと同じ高さの位置に配置される。
【0052】
更に、パイプ1の上方より円管状の上部抑え管44を挿入して、その下面を円管42に当接させる。また、この状態で、3つの金属球31は、補助部材3の貫通穴3aに臨むように位相合わせして配置させている。
なお、補助部材3は、パイプ1に対して軸方向に位置決めされる必要があり、図示しない治具等を用いて補助部材3を所定の高さに保持する必要がある。
【0053】
この状態から、図13に示すように、下部が円錐部40aである押出部材40を、パイプ1の上方より円管状の上部抑え管44の案内にしたがって挿入し、円錐部40aを3つの金属球31と当接させる。そして、押出部材40を強大な押圧力で軸方向に沿って下降させると、円錐部40aが下部抑え管43内に進入しながら3つの金属球31を押圧する。金属球31は下部抑え管43の上面により軸方向への移動が制限されているため、金属球31は、円管42を変形させつつ径方向外側へと互いに離間するように移動する。この金属球31の移動により、パイプ1の周壁の一部が補助部材3の貫通穴3aに嵌入することで膨出部1aが形成され、パイプ1と補助部材3とがかしめ結合されることとなる。その後、押出部材40を上方に退避させると金属球31が膨出部1aから抜け出し、パイプ1と補助部材3からなる接合体4を、下部抑え管43から抜き出すことができる。
その他の構成及び作用については、第1実施形態のものと同様である。
【0054】
なお、押出部材40は、本実施形態のように円錐部40aに限定されるものでなく、複数の金属球31と当接する当接部を有し、該当接部が軸方向に沿って中心軸から徐々に離間するものであればよい。これにより、押出部材40が軸方向に変位することで、複数の金属球31をパイプ1の径方向外側へ移動させることができる。
【0055】
したがって、押出部材40の当接部は、上記実施形態のように、複数の金属球31と当接する円周方向3箇所を有する円錐部40aによって構成されてもよく、あるいは、図14に示す変形例のように、金属球31の半径rに応じた複数(3箇所)の凹面部40bが、軸方向に沿って中心軸から徐々に離間するように構成されたものでもよい。また、この場合、凹面部40bは、軸方向に沿って中心軸から徐々に離間するにつれて、円弧長さを長くしている。さらに、押出部材40は、3箇所の凹面部40bをそれぞれテーパ面で結ぶように構成される。
この変形例の場合、押出部材40が軸方向に変位することで、凹面部40bにより金属球31が円周方向にずれるのを防止できるので、確実に円管42の穴42aに向けて外側に金属球31を押し出すことができる。
【0056】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る異材接合方法について、図15図23を参照して説明する。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同一又は同等部分については、説明を省略あるいは簡略化する。
【0057】
第3実施形態では、補助部材3は、パイプ1の端部に内嵌して取り付けられている。このため、補助部材3の外径は、パイプ1の内径より僅かに小さく設計されている。また、図16に示すように、パイプ1には、円周方向に所定の間隔で複数の貫通穴(本実施形態では、3つ)1dが形成されている。一方、補助部材3は、パイプ1の複数の貫通穴1dに臨む周壁の一部が径方向内側に膨出し、複数の貫通穴1dに対して嵌入される複数の膨出部3dを有する。これによって、パイプ1と補助部材3とは、かしめ結合されている。膨出部3dの基部は、補助部材3の外周面と貫通穴1dとの縁部全周に亘って接触しており、補助部材3は、パイプ1に対して軸方向に位置決めされると共に、回り止めされている。また、パイプ1と補助部材3とは、互いにかしめ結合された状態において、補助部材3の軸方向端部3fがパイプ1の軸方向端部1fから延出している。
【0058】
また、板材2と、該板材2の平面に載置された補助部材3の軸方向端部3fとの隅部には、アーク溶接によって溶接金属Wが形成され、板材2と補助部材3が強固に接合されている。なお、補助部材3の軸方向端部3fは、パイプ1の軸方向端部1fから延出しているので、板材2と容易に溶接することができる。
【0059】
このような異材接合継手10は、図15図20に示すように、まず、複数の貫通穴1dが形成された円管状のパイプ1と、円筒状の補助部材3と、を用意する。パイプ1の複数の貫通穴1dは、管状のブランク部材に対して図示しないパンチ等を用いて穿設される。なお、複数の貫通穴1dは、図16に示すような円形に限らず、多角形など他の形状であってもよい。
【0060】
そして、この補助部材3を、パイプ1の内側に配置し、図17に示すように、複数(本実施形態では3つ)の金属球(玉)31と押出部材40とを用いた拡管加工により、複数の貫通穴1dに臨む補助部材3の周壁の一部を径方向外側に膨出させ、パイプ1と補助部材3とをかしめ結合する。
【0061】
ここで、上述したように、補助部材3がパイプ1の内側に配置され、かつ、補助部材3の軸方向端部3fが、パイプ1の軸方向端部1fから延出する。このため、拡管加工する際に使用される受座35では、補助部材3を支持する支持面34は、パイプ1を支持する支持面33の内側に設けられた環状溝38内に形成される。すなわち、支持軸部36に形成される環状溝38は、補助部材3の内周面に内嵌する筒状の軸部分と、パイプ1の支持面33を形成するリング部分との間に形成される。
【0062】
3つの金属球31は、支持軸部36の上面32a上に配置される。上面32aは、3つの金属球31が、補助部材3の周囲に配置されたパイプ1の複数の貫通穴1dと同じ高さとなるような高さを有する。なお、支持軸部36の上面32aの径方向の肉厚は、金属球31の半径よりも大きい方が金属球31を保持するために好ましい。また、支持軸部36の内径は、後述の押出部材40が挿入される際に、押出部材40と干渉しないように設計される。なお、金属球31の落下を防止するため、金属球31は、補助部材3を環状溝38内に配置した後に、上面32a上に載置される。
【0063】
押出部材40は、第1実施形態と同様に、3つの溝状の凹面40dを有する略三角錐状の当接部40cを有する。また、上述した受座35を用いる場合には、押出部材40を円周方向に回転させることで、金属球31の円周方向位置を変えることができる。このため、金属球31の円周方向位置を変えることでも、3つの金属球31がパイプ1の貫通穴1dに臨むように位相合わせすることができる。
【0064】
したがって、拡管加工では、まず、受座35の支持面33、34にパイプ1及び補助部材3がそれぞれ配置される。この際、パイプ1と金属球31とは、受座35の上面32a上の3つの金属球31が補助部材3の貫通穴3aに臨むように位相合わせされる。
【0065】
そして、押出部材40を、パイプ1の上方より挿入し、3つの凹面40dを3つの金属球31と当接させる。そして、押出部材40を強大な押圧力で軸方向に沿って下降させると、当接部40cが受座35の支持軸部36内に進入しながら3つの金属球31を押圧する。金属球31は3つの凹面40dによって径方向外側へと互いに離間するように支持軸部36の上面32a上を移動する。この金属球31の移動により、補助部材3の周壁の一部がパイプ1の貫通穴1dに嵌入することで膨出部3dが形成され、パイプ1と補助部材3とがかしめ結合されることとなる。その後、押出部材40を上方に退避させてパイプ1から抜き出し、さらに、パイプ1と補助部材3からなる接合体(異材接合用補助部材付き管状部材)4を、受座35から抜き出す。その際、金属球31が補助部材3の膨出部3dから抜け出される。
【0066】
また、受座35に支持されたパイプ1と補助部材3とは、高さの異なる支持面33、34に支持されているので、補助部材3の軸方向端部3fがパイプ1の軸方向端部1fから延出するようにして、パイプ1と補助部材3とはかしめ結合される。
【0067】
その後、図16に戻って、接合体4の補助部材3と、板材2とがアーク溶接等により接合される。このアークによるすみ肉溶接は、鋼同士の溶接であるので、金属間化合物を生じることなく、強固に接合される。
【0068】
なお、本実施形態では、パイプ1をアルミニウム合金又はマグネシウム合金とし、板材2と補助部材3とを鋼製としているが、板材2と補助部材3の金属材料がパイプ1の金属材料と異なるものであればよく、各部材の金属材料はこれに限定されない。例えば、板材2と補助部材3の金属材料は、金属間化合物を生じることなく、融接を用いて互いに接合可能な材料であればよい。また、板材2と補助部材3の鋼製の組成は、互いに同一であっても異なるものであってもよい。
また、パイプ1が鋼製、板材2がアルミニウム合金又はマグネシウム合金である場合には、補助部材3は、パイプ1の金属材料と異なる金属材料であればよく、例えば、板材2と同じ金属材料であるアルミニウム合金又はマグネシウム合金としてもよい。
【0069】
また、拡管加工は、図21図23に示すように、金属球31を保持する穴32を持った支持軸部36を有する受座35を用いて行われてもよい。
【0070】
以上説明したように、本実施形態の異材接合方法によれば、管状のパイプ1をアルミニウム合金又はマグネシウム合金からなるとし、平板状の板材2を鋼製からなるとした場合、鋼製からなる管状の補助部材3の周囲に、複数の貫通穴1dが形成されたパイプ1を配置する工程と、パイプ1に形成された複数の貫通穴1dに臨む補助部材3の周壁の一部を径方向外側に膨出して、パイプ1の貫通穴1d内に嵌入させ、パイプ1と補助部材3とをかしめ結合する工程と、補助部材3と板材2とを溶接することで、補助部材3を介してパイプ1と板材2とを接合する工程と、を有する。
【0071】
また、本実施形態の異材接合継手10によれば、アルミニウム合金又はマグネシウム合金からなる管状のパイプ1と、鋼製からなり、パイプ1と接合される平板状の板材2と、鋼製からなり、円周方向に複数の貫通穴3aが形成される管状の補助部材3と、を備え、補助部材3は、その周壁の一部が径方向外側に膨出してパイプ1の貫通穴1dに対して嵌入される複数の膨出部3dを有することで、補助部材3とかしめ結合され、かつ、補助部材3と板材2とが溶接される。
これにより、管状の補助部材3が管状のパイプ1と強固に結合されると共に、該補助部材3と板材2とが溶接により接合されるので、異なる金属材料からなるパイプ1と板材2とを、補助部材3を介して間接的に接合することができる。
【0072】
また、管状のパイプ1と補助部材3とをあらかじめ結合しておけば、補助部材3と板材2とを一般的な溶接方法で容易に接合することができる。
したがって、本実施形態は、異なる金属材料からなるパイプ1と板材2とを、低コストで簡便に、かつ確実に接合でき、広範囲な分野に適用できる。
【0073】
また、本実施形態の異材接合用補助部材付き管状部材の製造方法によれば、アルミニウム合金又はマグネシウム合金からなる管状のパイプ1と、鋼製からなり、パイプ1と嵌合する管状の補助部材3と、を備え、管状の補助部材3の周囲に、複数の貫通穴1dが形成されたパイプ1を配置する工程と、パイプ1に形成された複数の貫通穴1dに臨む補助部材3の周壁の一部を径方向外側に膨出させて貫通穴1dに対して嵌入させ、パイプ1と補助部材3とをかしめ結合する工程と、を備える。
また、本実施形態の異材接合用補助部材付き管状部材によれば、アルミニウム合金又はマグネシウム合金からなる管状部材と、鋼製からなり、パイプ1の内側に配置される管状の補助部材3と、を備え、パイプ1には、複数の貫通穴1dが形成され、パイプ1は、その周壁の一部が径方向外側に膨出して複数の貫通穴1dに対して嵌入されてなる複数の膨出部3dを有することで、補助部材3とかしめ結合される。
これにより、管状の補助部材3がパイプ1と強固に結合されているので、パイプ1と、該パイプ1と異なる金属材料からなる板材2とを、補助部材3を介して間接的に接合することができる。
したがって、本実施形態は、異なる金属材料からなるパイプ1と板材2とを、低コストで簡便に、かつ確実に接合でき、広範囲な分野に適用できる。
【0074】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものでなく、適宜、変形、改良等が可能である。
例えば、本発明のパイプ1の拡管工程は、上述した2つの実施形態に限定されるものでなく、例えば、電磁成形を用いてもよいし、ハイドロフォーミングを用いてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 パイプ(第1の部材、管状部材)
1a 膨出部
1d 貫通穴
2 板材(第2の部材)
3 補助部材
3a 貫通穴(穴)
3d 膨出部
3f 軸方向端部
4 接合体
10 異材接合継手
20 受座
20a 突出部
21 ゴム
22 押圧部材
23 溶接トーチ
31 金属球(玉)
32 穴
32a 上面
33 支持面
34 支持面
38 環状溝
40 押出部材
40a 円錐部(当接部)
40b 凹面部(当接部)
40c 当接部
40d 凹面
42 円管
42a 穴
43 下部抑え管
44 上部抑え管
図1
図2
図3
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図5
図6A
図6B
図6C
図6D
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図9A
図9B
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