(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-23
(45)【発行日】2022-05-31
(54)【発明の名称】α-シヌクレインに対する抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20220524BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220524BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220524BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220524BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220524BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220524BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220524BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220524BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220524BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220524BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20220524BHJP
【FI】
C07K16/18
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P25/28
A61P25/16
A61K39/395 N
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2018563050
(86)(22)【出願日】2017-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2017063406
(87)【国際公開番号】W WO2017207739
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2020-05-27
(32)【優先日】2016-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506042265
【氏名又は名称】メディミューン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パーキンソン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】スコフィールド,ダーレン
(72)【発明者】
【氏名】アービング,ローレイン
(72)【発明者】
【氏名】トム,ジョージ
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-511254(JP,A)
【文献】特表2010-526028(JP,A)
【文献】特表2013-525266(JP,A)
【文献】J Neurosci, 2014 Jul 9, vol. 34, no. 28, pp. 9441-9454
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトα-シヌクレインに結合する抗体またはその抗原結合性断片であって、
(a) 以下の配列を有する3つの重鎖CDR:
(i) 配列番号5のH-CDR1、
(ii) 配列番号15のH-CDR2;および
(iii) 配列番号16のH-CDR3、ならびに
(b) 以下の配列を有する3つの軽鎖CDR:
(i) 配列番号20のL-CDR1、
(ii) 配列番号10のL-CDR2;および
(iii) 配列番号21のL-CDR3
を含む、上記抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項2】
500pM未満のK
Dでヒトα-シヌクレインに結合する、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項3】
in vivoでα-シヌクレインの細胞間伝達を遅延させる、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項4】
ヒトα-シヌクレインに結合するが、ヒトβ-シヌクレインまたはヒトγ-シヌクレインに結合しない、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項5】
ヒト、ラットおよびカニクイザルα-シヌクレインに結合する、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項6】
配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項7】
配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項8】
配列番号14のアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項9】
配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項10】
配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項11】
配列番号19のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項12】
配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項13】
配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項14】
配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項15】
配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項16】
配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む可変重鎖を含み、更に配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項17】
配列番号14のアミノ酸配列を含む可変重鎖を含み、更に配列番号19のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項18】
配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、更に配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項19】
抗体である、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項20】
Fc領域中にL234F/L235E/P331S三重突然変異を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
【請求項21】
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片、および製薬上許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項22】
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片をコードする、単離された核酸分子。
【請求項23】
配列番号13のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む、請求項22に記載の単離された核酸分子。
【請求項24】
配列番号18のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む、請求項22に記載の単離された核酸分子。
【請求項25】
請求項22に記載の核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞。
【請求項26】
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合性断片を含む、患者での中枢神経系(CNS)のα-シヌクレイノパチー疾患を治療するための医薬組成物。
【請求項27】
疾患が、パーキンソン病(PD)、レビー小体認知症(DLB)、または多系統萎縮症(MSA)である、請求項26に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2016年6月2日出願の米国特許仮出願第62/344,746号からの優先権の利益を主張する。前述の出願は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、この配列表は、その全体が参照により本明細書中に援用される。該ASCIIコピーは、2017年5月30日に作成され、1848081-0002-091-WO1_SL.txtと命名され、48,099バイトのサイズである。
【0003】
本発明は、α-シヌクレイン抗体および疾患、特に、α-シヌクレイノパチー、より詳細にはパーキンソン病(PD)の予防または治療でのその使用に関する。
【背景技術】
【0004】
レビー小体病(LBD)としても知られるα-シヌクレイノパチーは、それらのすべてがそのコアにα-シヌクレインを重要な病理的特徴として有する神経変性疾患のファミリーである(Jellinger, Mov Disord (2003), 18 Suppl 6: S2-12;およびSpillantini and Goedert, Ann N Y Acad Sci (2000), 920: 16-27;これらの両方が参照により本明細書中に組み入れられる)。α-シヌクレイノパチーとしては、パーキンソン病(PD)、レビー小体認知症(DLB)および多系統萎縮症(MSA)が挙げられる。
【0005】
PDは、緩徐進行性の加齢に関連する運動障害であり、65歳を超える人々のうちの1%超が罹患している。PDは、アルツハイマー病に次いで2番目に一般的な神経変性状態である。
【0006】
α-シヌクレイノパチーの決定的な特徴である病変は、レビー小体およびレビー神経突起(Lewy neurite)であり、これらは、死後組織病理検査に際して明らかになる、脳のニューロン内部に見出される凝集したタンパク質の不溶性封入体である。
【0007】
レビー病変の存在ならびに前脳基底部、中脳橋系(mesopontine system)、扁桃体、新皮質、迷走神経の背側運動核、嗅球、青斑核、および脳幹などの脳の非運動野での神経欠損が、認知障害および認知症、嗅覚障害、レム睡眠行動障害(RBD)をはじめとする睡眠障害、抑うつおよび不安感をはじめとする気分障害、心血管および胃腸管の問題(便秘など)をはじめとする自律神経機能障害、ならびに倦怠感および傾眠を引き起こす可能性がある。これらの非運動症状のうちのいくつかは、疾患の前運動期または前駆期の特徴であるようである(Kalia et al. Lancet (2015), 386(9996): 896-912;参照により本明細書中に組み入れられる)。
【0008】
レビー病変の存在および最も目立つ黒質でのドーパミン作動性ニューロンの細胞死をはじめとする脳の運動野での神経欠損が、休止時振戦、固縮、動作緩慢および姿勢不安定を引き起こす可能性がある(Spillantini and Goedert、Ann N Y Acad Sci (2000), 920: 16-27;参照により本明細書中に組み入れられる)。
【0009】
アルファ-シヌクレイン(「α-シヌクレイン」または「α-syn」とも称される)タンパク質は、レビー小体およびレビー神経突起の主要な構造的成分である。α-シヌクレインは、最大で140アミノ酸から構成される小型の酸性タンパク質である(14kDa)。ヒト天然野生型α-シヌクレインは、UniProtKB登録番号P37840の下に記載される通りの配列番号1のアミノ酸配列を有する。文脈から別様であることが明らかでない限り、α-シヌクレインまたはその断片への言及は、上記の天然ヒト野生型アミノ酸配列、およびそのヒト対立遺伝子変異体、特に、レビー小体病に関連付けられているもの(例えば、E46K、A30P、H50Q、G51DおよびA53T、ここで、一文字目は配列番号1でのアミノ酸を示し、数字は配列番号1でのコドン位置であり、2番目の文字は対立遺伝子変異体中のアミノ酸である)を含む。そのような変異体は、任意により、個別に、またはいずれかの組み合わせで存在し得る。α-シヌクレイン凝集を促進する誘導された突然変異であるE83Q、A90V、A76Tもまた、個別に、または互いとの組み合わせかつ/もしくはヒト対立遺伝子変異体であるE46K、A30P、H50Q、G51DおよびA53Tとの組み合わせで存在することができる。構造レベルでは、α-シヌクレインは、3つの異なる領域を含む:両親媒性N末端α-ヘリックスドメイン(脂質および膜結合特性を有する)(残基1~60)、中央部疎水性アミロイド結合性ドメイン(プラークの非アミロイドβ成分(NAC)をコードする)(残基61~95)、および酸性プロリンリッチC末端テイル(残基96~140)。NACドメインの残基71~82は、タンパク質をランダムコイル構造からβ-シート構造へと切り替えることを可能にすることにより、α-シヌクレインの凝集特性/線維化特性に対して重要であると考えられている(Bisaglia et al. FASEB J (2009), 23(2): 329-40;参照により本明細書中に組み入れられる)。C末端ドメインは顕著な二次構造を有しないが、残基Ser129に重要なリン酸化部位を、かつ細胞質α-シヌクレイン封入体中ではニトロ化されている多数のチロシン残基を含む。α-シヌクレインのN末端およびC末端切断型もまた存在する。タンパク質に対する翻訳後修飾は、α-シヌクレイン凝集および毒性に影響を及ぼし得る(Oueslati et al. Prog Brain Res (2010), 183: 115-45;参照により本明細書中に組み入れられる)。
【0010】
α-シヌクレインは、中枢神経系(CNS)/脳に豊富であり、ニューロンおよびグリアの両方の細胞内に見出され、かつ脳脊髄液(CSF)中(Mollenhauer et al. J Neural Transm (2012), 119(7): 739-46;参照により本明細書中に組み入れられる)および脳の細胞を浸しかつそれを取り巻く間質液(ISF)中(Emmanouilidou et al. PLoS One (2011), 6(7): e22225;参照により本明細書中に組み入れられる)では細胞外にも見出される。α-シヌクレインは、新皮質、海馬、黒質、視床、および小脳のニューロンで優勢に発現されるシナプスタンパク質である(Iwai et al. Neuron (1995), 14: 467-475;参照により本明細書中に組み入れられる)。生理的条件下では、α-シヌクレインは神経のシナプス末端に局在し、獲得に関連するシナプス再編成の最中にシナプス前末端で特異的にアップレギュレーションされる(Fortin et al. J Neurosci (2005), 25: 10913-10921;参照により本明細書中に組み入れられる)。
【0011】
in vitro研究により、α-シヌクレイン単量体が凝集プロセスの開始点を形成し得ることが示されている。単量体は、種々の小型オリゴマー種へと凝集することができ、オリゴマー種は、続いてβ-シート相互作用により安定化され、次に、レビー小体中で同定されるものによく似た不溶性線維状構造へと多量体化できる原線維の形成につながる(Cremades et al. Cell (2012), 149(5): 1048-59;参照により本明細書中に組み入れられる)。
【0012】
病理的状態では、異常なα-シヌクレイン凝集が、α-シヌクレイノパチーで見られる病理学的変化にとって重要であり得る(Lashuel et al. Nature (2002), 418: 291;およびTsigelny et al. FEBS Journal (2007), 274: 1862-1877;これらの両方が参照により本明細書中に組み入れられる)。in vitroおよびin vivo研究により、α-シヌクレインの神経毒性作用は、小型の可溶性オリゴマー立体構造物(conformer)または原線維により惹起されるようであることが示されている(Winner et al. Proc Natl Acad Sci U S A (2011), 108(10): 4194-9;およびDanzer et al. J Neurosci (2007), 27(34): 9220-32;これらの両方が参照により本明細書中に組み入れられる)。α-シヌクレインの線維状凝集体はPDの特徴である一方で、α-シヌクレインのオリゴマー形態は、毒性の分子種である(Danzer et al. J Neurosci (2007), 27(34): 9220-32;Lashuel et al. Nature (2002), 418: 291;およびWinner et al. Proc Natl Acad Sci USA (2011), 108: 4194-4199;これらのそれぞれが参照により本明細書中に組み入れられる)。
【0013】
α-シヌクレインオリゴマーは、細胞外環境へと放出され、「伝搬」メカニズムにより隣り合う細胞によって取り込まれることができる(Angot and Brundin, Parkinsonism Relat Disord (2009), 15 Suppl 3: S143-147;Desplats et al. Proc Natl Acad Sci USA (2009), 106: 13010-13015;およびLee et al. J Biol Chem (2010), 285: 9262-9272;これらのそれぞれが参照により本明細書中に組み入れられる)。α-シヌクレインの凝集体は、プリオン様の拡散メカニズムを通して、ミスフォールディングを伝搬することができる(Lee et al. Nat Rev Neurol (2010), 6: 702-706;Luk et al. J Exp Med (2012), 209(5): 975-86;およびLuk et al. Science (2012), 338(6109): 949-53;これらのそれぞれが参照により本明細書中に組み入れられる)。したがって、α-シヌクレインは、オリゴマー毒性または伝搬およびプリオン様拡散のいずれかにより、神経変性を引き起こすことができる。
【0014】
ニューロンをはじめとする細胞が、正常な状態および細胞ストレス条件下でも、種々の形態のα-シヌクレイン(単量体、オリゴマー、凝集体)を分泌し得ること、単量体型および凝集型のα-シヌクレインの分泌が細胞ストレス条件下で上昇すること、および細胞外環境へのα-シヌクレインのこの分泌を通じて、病変伝搬可能型のα-シヌクレインがニューロン同士の間で伝搬し得ることは、現在、十分に確立され、かつ受け入れられている(Recasens and Dehay, Front Neuroanat (2014), 8: 159;参照により本明細書中に組み入れられる)。
【0015】
PDでのα-シヌクレインの作用は、即時的ダメージを超えて、脆弱な神経細胞にまで広がり得る。大多数の神経変性疾患と同様に、炎症促進性細胞応答も観察されている(Lee et al. J Biol Chem (2010), 285: 9262-9272;参照により本明細書中に組み入れられる)。血中α-シヌクレインおよび/または活性化型星状細胞はミクログリアを活性化することができ、これが、反応性酸素分子種の生成増大、一酸化窒素およびサイトカイン産生、ならびにさらに、神経変性の悪化へとつながる(Lee et al. J Biol Chem (2010), 285: 9262-9272;参照により本明細書中に組み入れられる)。
【0016】
様々な異なる実験モデルにより、培養細胞でのα-シヌクレインの細胞間伝達、またはα-シヌクレイン病変のin vivo拡散および伝搬が実証されている。レビー小体病変は、PD患者の線条体へと移植片が治療的に移植されてから10年間超経過後の、胚性中脳神経移植片内で観察されている。具体的には、移植されたニューロンは、α-シヌクレインについて陽性に染色される多数のレビー小体様封入体を含有し、このことは、α-シヌクレイン病変の宿主から移植片への伝達が生じたことを示した(Li et al. Nat Med (2008), 14(5): 501-3;およびKordower et al. Nat Med (2008), 14(5): 504-6;これらの両方が参照により本明細書中に組み入れられる)。
【0017】
さらに、予め形成された組み換えα-シヌクレイン線維およびα-シヌクレインオリゴマーは、培養細胞およびニューロンにより内在化されることができ、かつレビー病変に類似するα-シヌクレイン封入体の形成を伴うドナーからレシピエント細胞へのα-シヌクレインの直接的移動が実証されている(Danzer et al. J Neurosci (2007), 27(34): 9220-32;Volpicelli-Daley et al. Neuron (2011), 72(1): 57-71;およびLuk et al. Proc Natl Acad Sci U S A (2009), 106(47): 20051-6;これらのそれぞれが参照により本明細書中に組み入れられる)。予め形成された合成α-シヌクレイン線維または加齢α-シヌクレイントランスジェニックマウスの脳から抽出したレビー小体様α-シヌクレイン含有材料の無症候性レシピエントマウスの脳への注入は、神経変性および神経学的傷害を伴って、レシピエント動物の宿主ニューロンでのレビー小体様病変の形成を促進する(Luk et al. J Exp Med (2012), 209(5): 975-86;およびLuk et al. Science (2012), 338(6109): 949-53;これらの両方が参照により本明細書中に組み入れられる)。マカクザルおよびマウスの黒質または線条体に接種されたPD脳から単離されたα-シヌクレイン含有レビー小体抽出物は、宿主細胞により迅速に取り込まれ(24時間以内)、続いて、1年間より後に明らかになる細胞欠失を伴って、線条体ドーパミン作動性末端の比較的緩慢な欠失が生じる(Recasens et al. Ann Neurol (2014), 75(3): 351-62;参照により本明細書中に組み入れられる)。同様に、シヌクレイノパチーであるDLBまたはMSAを有する患者由来の脳ホモジネートを用いたマウスへの接種は、宿主マウスでのα-シヌクレインレビー様病変を生起させる(Watts et al. Proc Natl Acad Sci U S A (2013), 110(48): 19555-60;およびMasuda-Suzukake et al. Brain (2013), 136(Pt 4): 1128-38;これらの両方が参照により本明細書中に組み入れられる)。最後に、嗅球から、相互接続された脳構造への単量体型およびオリゴマー型α-シヌクレインの両方の移動および伝達が、マウスで実証されている(Rey et al. Acta Neuropathol (2013), 126(4): 555-73;参照により本明細書中に組み入れられる)。
【0018】
α-シヌクレインを標的とする抗体を用いる受動免疫療法アプローチが、多数の前臨床的α-シヌクレイノパチーマウスモデルで試験されてきた(Lawand et al. Expert Opin Ther Targets (2015): 1-10;参照により本明細書中に組み入れられる)。具体的には、α-シヌクレインに対するモノクローナル抗体(9E4)を用いた研究により、in vivoでのα-シヌクレイン凝集体および病変の消失、行動的運動改善、ならびに神経保護作用が示されている(国際公開第2014/058924号;参照により本明細書中に組み入れられる)。
【0019】
PD/DLBの実験的モデルとして開発されたα-シヌクレイントランスジェニックマウスの、9E4モノクローナル抗体を用いた受動免疫化を用いるさらなる研究により、該抗体が、α-シヌクレイン病変を消失させ、シナプスおよび軸索の欠陥を減少させ、線条体のチロシンヒドロキシラーゼ線維の欠失を撤回させ、かつ記憶障害および運動機能の欠陥を著明に減少させることが示されている(Games et al. J Neurosci (2014), 34(28): 9441-54;Bae et al. J Neurosci (2012), 32(39): 13454-69;およびMasliah et al. PLoS One (2011), 6(4): e19338;これらのそれぞれが参照により本明細書中に組み入れられる)。さらに、線条体内に合成α-シヌクレインの予め形成された線維(pff)を注入された野生型マウスでの抗α-シヌクレインモノクローナル抗体の受動的投与は、レビー病変の確実な減少、黒質でのドーパミンニューロン欠失の防止、およびpff処置後のマウスモデルでの主徴である運動欠陥の著明な改善をもたらした(Tran et al. Cell Rep (2014), 7(6): 2054-65;参照により本明細書中に組み入れられる)。
【0020】
加えて、抗体などの高分子治療薬を用いるCNSの障害の治療に伴う主要な懸念事項のうちの1つは、それらの薬物を罹患組織へと到達させることである。脳および脊髄への高分子の通過は、血液脳関門(BBB)により大きく制限される。BBBは、脳を保護し、脳の恒常性を調節し、脳の大部分への分子の自由通過を妨げ、それにより、多数の脳疾患の治療を制限する。栄養素、増殖因子、およびホルモンなどの必須分子の輸送は、脳内皮細胞の通過を調節する一連の特異的トランスポーターおよび受容体を介して達成される。したがって、生物製剤および他の薬物の脳への送達は、重大な困難となる。加えて、おそらくは炎症促進応答を促すエフェクターリガンドとのFcの係合に起因する炎症応答を防止するために、脳から抗体を迅速に除去する輸送メカニズムが存在するようである。
【0021】
この10年間、BBBを通過する抗体輸送の報告がなされており、これらの報告では、トランスポーター分子の細胞外ドメインへの結合性が、内皮細胞層を通過する受容体抗体複合体のトランスサイトーシスを容易にする。
【0022】
BBBは主に、脳毛細血管内皮細胞から構成され、これらの細胞は、脳への分子の輸送を制限するタイトジャンクションなどの特別な特徴を有するが(Reese et al. 1967, J. Cell Biol. 34: 207-217;Brightman et al. 1969, J. Cell Biol. 40: 648-677;Rubin et al. 1999, Ann. Rev. Neurosci. 22: 11-28)、周皮細胞、星状細胞、および神経細胞などの他の細胞タイプもまた、BBBの機能で重要な役割を担う。典型的には、末梢に投与された抗体のうちの0.1%未満が脳に到達する(Boado et al. 2010, Mol. Pharm. 7: 237-244;Pepinsky et al. 2011, Nat. Neurosci. 8: 745-751)。BBBは、生理的、代謝的かつ免疫学的バリアとして機能する(Gaillard et al. 2003, Microvasc. Res. 65: 24-31)。
【0023】
BBBを通過する抗体輸送は、脳内皮細胞での受容体媒介型のトランスサイトーシスを引き起こすことにより強化することができる。このプロセスを介すると、内皮細胞の腔側での抗原の係合が、細胞を通過する抗体の内在化および往復、ならびに続いて組織内へのその放出を誘導することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【文献】国際公開第2014/058924号パンフレット
【非特許文献】
【0025】
【文献】Jellinger, Mov Disord (2003), 18 Suppl 6: S2-12
【文献】Spillantini and Goedert, Ann N Y Acad Sci (2000), 920: 16-27
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
PDに対する現行の薬物療法は、主に疾患の運動関連症状を治療することに焦点が当てられている。α-シヌクレイノパチーを治療もしくは予防できる市販のまたは利用可能な治療薬は、現在はない。
したがって、特にヒトでの、α-シヌクレイノパチーを治療するための療法に対する必要性が、当技術分野に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、ヒトα-シヌクレインに対する単離された抗体に関する。本発明は、aslo0452 ngl-3抗体の機能的特性のうちの1種以上を有する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。例えば、以下の通りである:
【0028】
本発明は、ヒトα-シヌクレインのC末端領域に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。本発明は、ヒトα-シヌクレイン(例えば、配列番号1)のアミノ酸102付近からアミノ酸130付近の間に含まれる領域に特異的に結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトα-シヌクレイン(配列番号1)のアミノ酸120付近からアミノ酸130付近の間に含まれる領域に特異的に結合する。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、9E4抗体により結合される抗体と同じでないエピトープに結合する。
【0029】
本発明は、ヒトα-シヌクレインに結合するが、ヒトβ-シヌクレインまたはヒトγ-シヌクレインには結合しない、抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
本発明は、ヒト、ラットおよびカニクイザルα-シヌクレインに結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0030】
本発明は、高親和性でヒトα-シヌクレインに結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。一実施形態では、本発明の抗体、またはその抗原結合性断片は、例えば、Octet分析を用いて測定される場合に、500ピコモル濃度(pM)未満、400pM未満、300pM未満、200pM未満、150pM未満、120pM未満、110pM未満または106pM以下のKDを有して、α-シヌクレインに結合する。一実施形態では、本発明の抗体、またはその抗原結合性断片は、例えば、KinExA分析を用いて測定される場合に、400ピコモル濃度(pM)未満、300pM未満、250pM未満、200pM未満、150pM未満、120pM未満、110pM未満、100pM未満、80pM未満または74pM以下のKDで、α-シヌクレインに結合する。
【0031】
本発明は、天然の内因性ヒトα-シヌクレインに結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
本発明は、単量体形態のヒトα-シヌクレインに結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
本発明は、ヒトα-シヌクレインの凝集体に結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
本発明は、疾患関連の、病変形態α-シヌクレインに結合する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0032】
本発明は、脳間質液中のα-シヌクレインレベルを低下させる、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を提供する。特に、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、脳間質液中の遊離未結合型α-シヌクレインレベルを低下させる。
【0033】
本発明は、脳脊髄液中のα-シヌクレインレベルを低下させる、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を提供する。特に、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、脳脊髄液中の遊離未結合型α-シヌクレインレベルを低下させる。
【0034】
本明細書中で用いる場合、用語「遊離未結合型α-シヌクレイン」とは、本発明の抗体またはその抗原結合性断片に結合していないα-シヌクレインを意味する。該遊離未結合型α-シヌクレインは、その単量体形態もしくはオリゴマー形態での、または凝集形態でのα-シヌクレインに対して適用することができる。この用語は、α-シヌクレインのいずれの病変形態にも広く適用される。
【0035】
本発明は、in vivoでのα-シヌクレイン拡散を低減させる抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトα-シヌクレインに対する結合に関して抗体aslo0452 ngl-3と競合する。
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、抗体 aslo0452 ngl-3と同じヒトα-シヌクレイン上のエピトープに結合する。
【0036】
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、本明細書に開示される通りの、配列番号2のアミノ酸配列の可変重鎖領域(VH)および配列番号3のアミノ酸配列の可変軽鎖領域(VL)を含む抗体asyn0087から誘導される。
【0037】
特定の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、抗体asyn0087から誘導され、このとき、該抗体または抗原結合性断片は、500mM未満のKDを有し、かつ本明細書に記載される、抗体asyn0087、aslo0452 ngl-3およびaslo0543のうちのいずれか1種と同じエピトープに結合する。
【0038】
本明細書において用いる場合、「H-CDR」とは、抗体またはその抗原結合性断片の重鎖領域の相補性決定領域(CDR)を意味し、「L-CDR」とは、軽鎖領域の相補性決定領域(CDR)を意味する。
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、以下から選択される少なくとも1つのCDRを含む:
(i) 配列番号5のH-CDR1、
(ii) 配列番号6のH-CDR2、
(iii) 配列番号7のH-CDR3、
(iv) 配列番号9のL-CDR1、
(v) 配列番号10のL-CDR2、
(vi) 配列番号11のL-CDR3。
【0039】
さらなる実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の重鎖のCDR3は、抗体aslo0452 ngl-3の重鎖の配列番号16のCDR3であり;かつ/または本発明の抗体またはその抗原結合性断片の軽鎖のCDR3は、抗体aslo0452 ngl-3の軽鎖の配列番号21のCDR3である。
【0040】
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、抗体aslo0452 ngl-3のCDRから選択されるCDRのうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つまたはすべてを有し、すなわち、配列番号5、配列番号15、配列番号16、配列番号20、配列番号10、配列番号21のうちのいずれか1種から選択される少なくとも1つのCDRを有する。
【0041】
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の重鎖のCDR3は、抗体aslo0452 ngl-3の重鎖のCDR3であり;かつ/または本発明の抗体またはその抗原結合性断片の軽鎖のCDR3は、抗体aslo0452 ngl-3の軽鎖のCDR3である。
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の重鎖のCDR3は、抗体aslo0452 ngl-3の重鎖のCDR3である。
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の軽鎖のCDR3は、抗体aslo0452 ngl-3の軽鎖のCDR3である。
【0042】
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の重鎖のCDR3は、抗体aslo0452 ngl-3の重鎖のCDR3であり、かつ本発明の抗体またはその抗原結合性断片の軽鎖のCDR3は、抗体aslo0452 ngl-3の軽鎖のCDR3である。
本発明は、抗体aslo0452 ngl-3の6つのCDRを有する抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0043】
つまり、一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、以下を含む:
(a) 以下の配列を有する3つの重鎖CDR:
(i) 配列番号5のH-CDR1、
(ii) 配列番号15のH-CDR2;および
(iii) 配列番号16のH-CDR3、ならびに
(b) 以下の配列を有する3つの軽鎖CDR:
(i) 配列番号20のL-CDR1、
(ii) 配列番号10のL-CDR2、および
(iii) 配列番号21のL-CDR3。
【0044】
本発明は、配列番号13により規定されるヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する可変重鎖、および配列番号18により規定されるヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する可変軽鎖を含む、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0045】
本発明は、配列番号14により規定されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する可変重鎖、および配列番号19により規定されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する可変軽鎖を含む、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0046】
本発明は、配列番号14のアミノ酸配列を有する可変重鎖、および配列番号19のアミノ酸配列を有する可変軽鎖を含む、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0047】
特定の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号4により規定される配列を有する可変重鎖、および配列番号8により規定される配列を有する可変軽鎖を含む。
【0048】
さらなる特定の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号4により規定される配列を有する可変重鎖、および配列番号8により規定される配列を有する可変軽鎖を含み、500pM未満のKDでヒトα-シヌクレインに結合し、かつasyn0087、aslo0452 ngl-3またはaslo0543と同じエピトープに結合する。
【0049】
別の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号14により規定される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する可変重鎖、および配列番号19により規定される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する可変軽鎖を含む。
【0050】
特定の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号14により規定される配列を有する可変重鎖および配列番号19により規定される配列を有する可変軽鎖を含む。
【0051】
さらなる実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号14により規定される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する可変重鎖および配列番号19により規定される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する可変軽鎖を含み、かつ、さらに以下を含む:
(a) 以下の配列を有する3つの重鎖CDR:
(i) 配列番号5のH-CDR1、
(ii) 配列番号15のH-CDR2;および
(iii) 配列番号16のH-CDR3、ならびに
(b) 以下の配列を有する3つの軽鎖CDR:
(i) 配列番号20のL-CDR1、
(ii) 配列番号10のL-CDR2、および
(iii) 配列番号21のL-CDR3。
【0052】
本発明はまた、配列番号13により規定されるヌクレオチド配列を有する可変重鎖および配列番号18により規定されるヌクレオチド配列を有する可変軽鎖を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0053】
本発明は、配列番号14により規定されるアミノ酸配列を有する可変重鎖および配列番号19により規定されるアミノ酸配列を有する可変軽鎖を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0054】
配列番号12により規定されるアミノ酸配列を有する重鎖および配列番号17により規定されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、本発明の抗体またはその抗原結合性断片もまた提供される。
【0055】
別の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号24により規定される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する可変重鎖、および配列番号30により規定される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する可変軽鎖を含む。
【0056】
特定の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号24により規定される配列を有する可変重鎖および配列番号30により規定される配列を有する可変軽鎖を含む。
【0057】
さらなる実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号24により規定される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する可変重鎖、および配列番号30により規定される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する可変軽鎖を含み、さらに、以下を含む:
(c) 以下の配列を有する3つの重鎖CDR:
(iv) 配列番号25のH-CDR1、
(v) 配列番号26のH-CDR2;および
(vi) 配列番号27のH-CDR3、ならびに
(d) 以下の配列を有する3つの軽鎖CDR:
(iv) 配列番号31のL-CDR1、
(v) 配列番号32のL-CDR2;および
(vi) 配列番号33のL-CDR3。
【0058】
本発明はまた、配列番号24により規定されるヌクレオチド配列を有する可変重鎖、および配列番号30により規定されるヌクレオチド配列を有する可変軽鎖を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0059】
本発明は、配列番号24により規定されるアミノ酸配列を有する可変重鎖、および配列番号30により規定されるアミノ酸配列を有する可変軽鎖を含む抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0060】
配列番号22により規定されるアミノ酸配列を有する重鎖、および配列番号28により規定されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、本発明の抗体またはその抗原結合性断片もまた提供される。
【0061】
一実施形態では、上記の何処かで定義される本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、IgA、IgD、IgE、IgM、IgG、例えばIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4などの抗体またはその抗原結合性断片である。
【0062】
別の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、改変型Fc領域を有する。好適な改変は、当業者には周知であり、とりわけ、半減期を増加もしくは減少させるか、エフェクター機能を除去、低減もしくは強化するか、コンジュゲート化のための遊離チオールを有する置換されたシステインを提供するための改変を含むことができる。そのような改変の例は、半減期を増加させるためのYTEおよび/またはエフェクター機能を低減させるためのTMである。一部の実施形態では、本明細書中に開示される抗体または抗原結合性断片のうちのいずれかは、抗体のFc領域中に変異M252Y/S254T/T256E(YTE)を含む(Dall'Acqua et al., 2006, J. Biol. Chem、281:23514-23524)。一部の実施形態では、本明細書中に開示される抗体または抗原結合性断片のうちのいずれかは、Oganesyanらの文献(Acta Crystallogr D Biol Crystallogr, (2008) 64: 700-704)に開示されるL234F/L235E/P331S変異に対応するFc領域中の三重突然変異(本明細書中では「TM」と略される)を含む。一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、IgG1 TM抗体またはその抗原結合性断片であり得る。別の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、YTE変異を有するFc領域を含み得る。
【0063】
別の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、血液脳関門(BBB)トランスポーター部分にカップリングすることができ、このとき、該BBBトランスポーター部分は、BBBを通過して、抗体またはその抗原結合性断片を輸送することが可能である。
【0064】
一実施形態では、BBBトランスポーター部分は、抗体であり得る。一実施形態では、該BBB抗体は、抗α-シヌクレイン抗体(anti-α-syncuclein antibody)またはその抗原結合性断片と共に多重特異的構築物を形成し得る。BBBトランスポーター部分は、免疫グロブリン可変重鎖相補性決定領域-1(VH-CDR1)、免疫グロブリン可変重鎖相補性決定領域-2(VH-CDR2)、免疫グロブリン可変重鎖相補性決定領域-3(VH-CDR3)、免疫グロブリン可変軽鎖相補性決定領域-1(VL-CDR1)、免疫グロブリン可変軽鎖相補性決定領域-2(VL-CDR2)、および免疫グロブリン可変軽鎖相補性決定領域-3(VL-CDR3)を含むことができ;このとき、VH-CDR1は配列番号40または49を含み、VH-CDR2は配列番号41または50を含み、VH-CDR3は配列番号42または51を含み、VL-CDR1は配列番号36、44または53を含み、VL-CDR2は配列番号37、45または54を含み、かつVL-CDR3は配列番号38、46または55を含む。
【0065】
一部の実施形態では、トランスポーター部分は、配列番号47または配列番号39を含む免疫グロブリン可変重鎖(VH)領域を含む。一部の実施形態では、トランスポーター部分は、配列番号43を含む免疫グロブリン可変軽鎖(VL)領域を含む。
【0066】
加えて、トランスポーター部分は、完全抗体、Fv断片、Fab断片、Fab'断片、F(ab')2断片、ジスルフィド結合(dsFv)断片、単鎖Fv(scFV)断片、sc(Fv)2断片、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、および単鎖抗体から選択することができる。特定の実施形態では、トランスポーター部分は、リンカーを介して融合されたVHドメインおよびVLドメインを含むscFV断片を含む。一部の例では、リンカーは、(Gly4Ser)n(配列番号56)であり得、このとき、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9および10からなる群より選択される正の整数である。
【0067】
一部の実施形態では、本発明のいずれかのトランスポーター分子は、本発明のいずれかのα-シヌクレイン結合性分子と、本明細書中に記載される通りに組み合わされて、本発明の多重特異的結合性分子を提供することができる。
本発明は、医薬としての使用のための、上記の何処かに規定される通りの本発明の抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0068】
本発明はまた、α-シヌクレイノパチーの予防または治療での使用のための、上記の何処かに規定される通りの本発明の抗体またはその抗原結合性断片もまた提供する。
一実施形態では、α-シヌクレイノパチーは、パーキンソン病(PD)、レビー小体認知症(DLB)、および多系統萎縮症(MSA)から選択される。
一実施形態では、α-シヌクレイノパチーは、パーキンソン病(PD)である。
【0069】
本発明は、患者での疾患、特に中枢神経系に関連する疾患を治療または予防する方法を提供し、該方法は、上記の何処かに規定される通りの本発明の抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するステップを含む。
一実施形態では、疾患は、α-シヌクレイノパチーである。
一実施形態では、α-シヌクレイノパチーは、パーキンソン病(PD)、レビー小体認知症(DLB)、および多系統萎縮症(MSA)から選択される。
一実施形態では、α-シヌクレイノパチーは、パーキンソン病(PD)である。
本発明は、上記の何処かに規定される通りの本発明の抗体またはその抗原結合性断片、および製薬上許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0070】
「製薬上許容される賦形剤」との語句には、薬剤投与に適合する、いずれかかつすべての溶媒、分散媒、コーティング剤、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤、および吸収遅延剤などが含まれる。製薬上活性な物質に対するそのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野で周知である。組成物はまた、補助的な、追加の、または強化された治療的機能を提供する他の活性化合物も含有することができる。医薬組成物はまた、投与についての指示書と共に、容器、パック、または分注器に含めることもできる。
【0071】
本発明の医薬組成物は、その意図される投与経路と適合するべく製剤化される。投与を実行するための方法は、当業者に公知である。投与は、例えば、静脈内、腹腔内、筋内、腔内、皮下または経皮的であり得る。
本発明は、上記の何処かに規定される通りの本発明の抗体またはその抗原結合性断片をコードする単離された核酸分子を提供する。
特定の実施形態では、本発明は、配列番号13および/または配列番号18を含む単離された核酸分子を提供する。
別の特定の実施形態では、本発明は、配列番号23および/または配列番号29を含む単離された核酸分子を提供する。
【0072】
この情報がもたらされれば、当業者は開示された抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸分子を容易に取得することができるであろう。核酸はDNAまたはRNAを含むことができ、かつ完全にもしくは部分的に合成または組み換えであり得る。ヌクレオチド配列に対する参照は、文脈が別様であることを要求しない限り、特定された配列を含むDNA分子を包含し、またUがTを置き換えている特定された配列を含むRNAを包含する。
本発明の核酸分子は、本明細書中に開示されるCDR、VHドメイン、および/またはVLドメインに対するコード配列を含む。
【0073】
本開示はまた、上記の何処かに規定される通りの本発明の抗体またはその抗原結合性断片をコードする、特に本明細書中に開示されるCDR、VHドメイン、および/またはVLドメインをコードする、少なくとも1種の核酸分子を含む、プラスミド、ベクター、ファージミド、転写または発現カセットの形態の構築物も提供する。
本開示はさらに、上記の通りの1種以上の構築物を含む宿主細胞を提供する。
【0074】
本明細書中に開示されるいずれかの1種以上のCDR(H-CDR1、H-CDR2、H-CDR3、L-CDR1、L-CDR2、またはL-CDR3)、VHまたはVLドメインをコードする核酸、ならびにコードされる生成物を生成させる方法もまた提供される。方法は、コード核酸からコードされる生成物を発現させるステップを含む。発現は、核酸を含有する組み換え宿主細胞を適切な条件下で培養することにより達成することができる。発現による産生に続いて、VHもしくはVLドメイン、または特異的結合性メンバーを、いずれかの好適な技術を用いて単離および/または精製し、続いて適宜用いることができる。
【0075】
抗原結合性断片、VHおよび/またはVLドメインならびにコード核酸分子およびベクターは、その天然環境から、実質的に純粋もしくは均質な形態で、または核酸の場合には、必要とされる機能を有するポリペプチドをコードする配列以外の起源の核酸もしくは遺伝子を含まないかまたは実質的に含まずに、単離および/または精製することができる。
【0076】
様々な異なる宿主細胞でのポリペプチドのクローニングおよび発現のためのシステムが、当技術分野で周知である。抗体を産生するために好適な細胞に関しては、Gene Expression Systems, Academic Press, eds. Fernandez et al., 1999を参照されたい。簡潔には、好適な宿主細胞として、細菌、植物細胞、哺乳動物細胞、ならびに酵母およびバキュロウイルスシステムが挙げられる。異種ポリペプチドの発現のために当技術分野で利用可能な哺乳動物細胞株としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、および多数のそれ以外のものが挙げられる。一般的な細菌宿主は大腸菌である。本発明に適合するいずれのタンパク質発現システムも、開示される抗体を産生させるために用いることができる。好適な発現系としては、Gene Expression Systems, Academic Press, eds. Fernandez et al., 1999に記載されるトランスジェニック動物が挙げられる。
【0077】
好適なベクターを、プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子および適切な場合には他の配列をはじめとする適切な調節配列を含むように、選択または構築することができる。ベクターは、適切な場合には、プラスミドまたはウイルス性(例えば、ファージ、またはファージミド)であり得る。さらなる詳細に関しては、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989を参照されたい。例えば、核酸構築物の作製、突然変異誘発、配列決定、細胞へのDNAの導入および遺伝子発現での核酸の操作、およびタンパク質の分析に関する多数の公知の技術およびプロトコールが、Current Protocols in Molecular Biology, 2nd Edition, eds. Ausubel et al., John Wiley & Sons, 1992に詳細に記載されている。
【0078】
本開示のさらなる態様は、本明細書中に開示される通りの核酸、特に上記の何処かに規定される通りの本発明の抗体またはその抗原結合性断片をコードする核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0079】
またさらなる態様は、そのような核酸を宿主細胞に導入するステップを含む方法を提供する。導入は、いずれかの利用可能な技術を利用することができる。真核細胞に関しては、好適な技術として、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム媒介トランスフェクションおよびレトロウイルスもしくは他のウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、または昆虫細胞に関してはバキュロウイルス)を用いる形質導入が挙げられる。細菌細胞に関しては、好適な技術としては、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーションおよびバクテリオファージを用いるトランスフェクションが挙げられる。細胞への核酸の導入に、核酸からの発現を引き起こすかまたは発現を可能にするステップ(例えば、遺伝子の発現のための条件下で宿主細胞を培養することにより)が続く場合がある。
【0080】
図面および配列表の簡単な説明
本発明を、添付の図面および配列表を参照して、より詳細に説明する。それらの中では、以下のことが示されている:
表1:2種類の親和性測定プラットホームで実行されたヒトα-synに対する主要な抗α-シヌクレイン抗体の親和性測定
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0081】
【
図1】HTRF(登録商標)アッセイの模式図である。
【
図2】asyn0087、aslo0452ngl-3およびaslo0543重鎖可変領域(VH)(それぞれ、配列番号2、14および24)ならびに軽鎖可変領域(VL)(それぞれ、配列番号3、19、および30)のアミノ酸配列の比較を示す図である。下線を施されたアミノ酸は、CDRに対応する。
【
図3A】aslo0452 ngl-3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列である。
図3Aおよび3Bは、aslo0452 ngl-3の、それぞれ可変重鎖および可変軽鎖ヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す。
図3Aは、出現順に、それぞれ、配列番号13および14を開示する。
【
図3B】aslo0452 ngl-3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列である。
図3Aおよび3Bは、aslo0452 ngl-3の、それぞれ可変重鎖および可変軽鎖ヌクレオチドおよびアミノ酸配列を示す。
図3Bは、出現順に、それぞれ、配列番号18および19を開示する。
【
図3C】aslo0452 ngl-3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列である。
図3Cおよび3Dは、最も近いヒト生殖系列配列に対するこれらの配列のアライメントを示す。
図3Cは、aslo0452 ngl-3可変重鎖ドメインアミノ酸配列(配列番号14)と、生殖系列IGHV3-23(配列番号58)およびJH6配列(配列番号59)とのアライメントを示す。相補性決定領域(CDR)には下線が施されて標識されている。生殖系列との差異は、太字で強調され、縁取りされている。軽鎖フレームワーク領域中のすべての非バーニア残基(non-Vernier residue)はヒト生殖系列アミノ酸である。バーニア残基(*)は、生殖系列アミノ酸にマッチするように変更されていない。
【
図3D】aslo0452 ngl-3のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列である。
図3Cおよび3Dは、最も近いヒト生殖系列配列に対するこれらの配列のアライメントを示す。
図3Dは、aslo0452 ngl-3可変軽鎖ドメインアミノ酸配列(配列番号19)と、生殖系列IGLV5-45(配列番号60)およびJL2(配列番号61)との、3種類の配列のアライメントを示す。相補性決定領域(CDR)には下線が施されて標識されている。生殖系列との差異は、太字で強調され、縁取りされている。軽鎖フレームワーク領域中のすべての非バーニア残基(non-Vernier residue)はヒト生殖系列アミノ酸である。バーニア残基(*)は、生殖系列アミノ酸にマッチするように変更されていない。
【
図4】α-synトランケートのパネルを用いるリード単離体クローンのエピトープ結合性を示す図である。ELISAウェルは、以下のタンパク質の種々の規定される領域を表わす種々の市販のα-synトランケートを用いてコーティングされている:1-140:全長α-syn、1-60:N末端領域のみ、61-140:プラークの非アミロイド成分(NAC)+C末端領域、1-95:N末端およびNAC領域、96-140:C末端領域のみ、ΔNAC:NAC領域欠失、NCAP:アミノ酸103-129(rPeptide)を欠損したα-synのオルタナティブスプライシング形態。検出に用いた一次抗体は(
図4A)Asyn087;ならびに(
図4B)Aslo0452 ngl-3(黒色バー)、aslo0543(明灰色バー)およびNIP228アイソタイプ適合対照(濃灰色バー)であった。結合性は、抗ヒトIgG Eu
3+二次抗体(
図4A)または抗ヒトIgG-HRP二次抗体(
図4B)のいずれかを用いて検出される。
【
図5】DELFIAエピトープ競合アッセイを用いて、シヌクレインファミリーメンバーと比較したα-synに対するaslo0452 ngl-3およびaslo0543の特異性を示す図である。エピトープ競合HTRFアッセイを用いて、α-synに対する親和性最適化型aslo0452 ngl-3およびaslo0543クローンの特異性を、未標識α-syn、β-synおよびγ-synの力価測定により測定した。これにより、IC
50値が決定された。
【
図6】HTRFエピトープ競合アッセイを用いた、ヒト、カニクイザルおよびラットα-synに対するaslo0452 ngl-3およびaslo0543の特異性を示す図である。エピトープ競合HTRFアッセイを用いて、親和性最適化型クローンの生物種交差反応性プロフィールを、未標識α-synの力価測定および各生物種のα-synに対するIC
50値の誘導により、同様のアッセイで決定した。
【
図7A】親和性最適化型クローンがヒト神経芽腫細胞株で天然のヒトα-synに結合することを実証する、代表的なフローサイトメトリー結果を示す図である。
図7Aおよび7BのパネルA、C、EおよびGは、α-syn陰性ヒト乳癌細胞株であるBT20に対する結合性を示す。
図7Aおよび7BのパネルB、D、FおよびHは、α-syn陽性ヒト神経芽腫細胞株であるSHSY5Yに対する結合性を示す。
図7A:本研究で用いた一次ヒト抗体は、asyn0087およびHu IgG対照であった。ヒト抗体結合性は、二次抗ヒトIgG-FITC(Jackson社)を用いて検出した。
【
図7B】親和性最適化型クローンがヒト神経芽腫細胞株で天然のヒトα-synに結合することを実証する、代表的なフローサイトメトリー結果を示す図である。
図7Aおよび7BのパネルA、C、EおよびGは、α-syn陰性ヒト乳癌細胞株であるBT20に対する結合性を示す。
図7Aおよび7BのパネルB、D、FおよびHは、α-syn陽性ヒト神経芽腫細胞株であるSHSY5Yに対する結合性を示す。
図7B:本研究で用いた一次ヒト抗体は、aslo0452 ngl-3、aslo0543、およびNIP228アイソタイプ適合IgG1 TM対照であった。ヒト抗体結合性は、二次抗ヒトIgG-FITC(Jackson社)を用いて検出した。用いた一次マウス抗体は、4D6(Covance社)、およびアイソタイプ適合陰性対照(R&D Systems社)であった。マウス抗体結合性は、二次抗マウスIgG-FITC(Sigma社)を用いて検出した。
【
図8】DELFIA ELISAによる、凝集したヒトα-synに対する最適化型抗α-syn IgGの特異性を示す図である。グラフは、2種類の高親和性α-syn特異的クローンであるaslo0452 ngl-3およびaslo0543、およびリード抗体asyn0087が、捕捉された凝集型α-syn(黒色バー)を検出したが、捕捉された単量体型α-synは検出しなかったことを示す。
【
図9-1】免疫組織化学による、疾患関連組織での親和性最適化型クローンの特異性を示す図である。
図9A、9Bおよび9Cは、それぞれ、aslo0452 ngl-3、asyn0087およびaslo0543を用いた染色性を示す。パネルA、BおよびCは、aslo0452 ngl-3が、PD脳組織中の黒質のレビー小体(パネルAおよびB)およびレビー神経突起(パネルC)の両方を染色することを示す。パネルDは、aslo0452 ngl-3が、正常脳切片中の側頭皮質由来細胞中のα-synの低レベル染色を示すことを表わす。パネルE、F、およびGは、aslo0452 ngl-3が、PD脳組織中の扁桃体のレビー小体、レビー神経突起およびレビー小点(Lewy dot)を染色することを示す。パネルHは、アイソタイプ適合型対照抗体が、PD脳組織中の扁桃体で染色を示さないことを表わす。
【
図9-2】免疫組織化学による、疾患関連組織での親和性最適化型クローンの特異性を示す図である。
図9A、9Bおよび9Cは、それぞれ、aslo0452 ngl-3、asyn0087およびaslo0543を用いた染色性を示す。パネルI~Mは、asyn0087による、PD脳組織中の青斑核の染色を示し;特定された病理的特徴は、レビー小体(パネルIおよびL)、神経凝集体(パネルJ)、レビー神経突起(パネルK)、および淡明封入体(Pale body)(パネルM)である。パネルNおよびOは、aslo0543が、PD脳組織中の黒質のレビー小体およびレビー神経突起を染色することを示す。パネルPは、aslo0543による、正常脳切片中の側頭皮質由来細胞中のα-synの低レベル染色を示す。
【
図10】aslo0452 ngl-3の全身性投与が、ラットの前頭前皮質中の遊離asynレベルを迅速に低下させることを示す図である。aslo0452 ngl-3(30mg/kg静脈内;黒丸)またはビヒクル(白丸)処置ラットのISFでの、絶対的(
図10A)または相対的(
図10B)平均±SEMでの遊離α-シヌクレイン濃度。
【
図11】aslo0452 ngl-3が、用量および時間依存的に、全身性投与に際して、ラットのCSF中の遊離asynレベルを低下させることを示す図である。aslo0452 ngl-3(3、10、30、100mg/kg静脈内;黒丸)またはビヒクル(白丸)処置ラットのCSFでの、絶対的(
図11A)または相対的(
図11B)平均±SEMでの遊離α-シヌクレイン濃度。
【
図12】抗α-シヌクレイン抗体であるaslo0452 ngl-3およびaslo0452 ngl-3-D265Aが、同側から反対側へのα-シヌクレイン拡散を阻止することを示す図である。
図12A:右側海馬にLV-α-synが注入されたnon-tgマウス(黒色矢印)を、抗α-シヌクレインマウスIgG1抗体であるaslo0452 ngl-3、aslo0452 ngl-3 D265A、9E4、またはNIP228アイソタイプ対照抗体を用いて、13週間にわたる週1回投与により受動免疫化し、続いて、SYN-1および自動化画像分析を用いて免疫細胞化学によりα-シヌクレイン拡散について測定した。
図12B:Aに表わされる同側海馬冠状断切片の免疫細胞化学分析から得られたα-シヌクレイン免疫反応性データの定量化。各カラムは、10回の独立した抗体処置の平均±SEM値である(抗体処置群当たり、n=マウス10匹)。
*P<0.05 vs NIP228;ダネット事後検定を用いた一元配置分散分析。
図12C:パネルAに表わされる反対側海馬冠状断切片の免疫細胞化学分析から得られたα-シヌクレイン免疫反応性データの定量化。各カラムは、10回の独立した抗体処置の平均±SEM値である(抗体処置群当たり、n=マウス10匹)。
*P<0.05 vs NIP228;ダネット事後検定を用いた一元配置分散分析。
【
図13】抗α-シヌクレイン抗体であるaslo0452 ngl-3およびaslo0452 ngl-3-D265Aが、軸索に沿ったレンチウイルス媒介発現α-シヌクレインの沈着および播種を低減させることを示す図である。
図13A:右側海馬にLV-α-synが注入されたnon-tgマウスを、抗α-シヌクレインマウスIgG1抗体であるaslo0452 ngl-3、aslo0452 ngl-3 D265A、9E4、またはNIP228アイソタイプ対照抗体を用いて、13週間にわたる週1回投与により受動免疫化し、続いて、同側および反対側海馬間軸索に沿ったα-シヌクレイン沈着(黒色矢印)について免疫細胞化学分析した。
図13B:SYN-1および自動化画像分析を用いて免疫細胞化学により測定された、同側軸索中α-シヌクレイン沈着の定量化。各カラムは、10回の独立した抗体処置の平均±SEM値である(抗体処置群当たり、n=マウス10匹)。
*P<0.05 vs NIP228;ダネット事後検定を用いた一元配置分散分析。
図13C:SYN-1および自動化画像分析を用いて免疫細胞化学により測定された、反対側軸索中α-シヌクレイン沈着の定量化。各カラムは、10回の独立した抗体処置の平均±SEM値である(抗体処置群当たり、n=マウス10匹)。
*P<0.05 vs NIP228;ダネット事後検定を用いた一元配置分散分析。
【
図14】抗α-シヌクレイン抗体であるaslo0452 ngl-3およびaslo0452 ngl-3-D265Aが、CA1海馬ニューロンおよび第5層新皮質ニューロンでのα-シヌクレイン沈着を低減させることを示す図である。
図14A:右側海馬にLV-α-synが注入されたnon-tgマウスを、抗α-シヌクレインマウスIgG1抗体であるaslo0452 ngl-3、aslo0452 ngl-3 D265A、9E4、またはNIP228アイソタイプ対照抗体を用いて、13週間にわたる週1回投与により受動免疫化し、続いて、同側CA1海馬ニューロンおよび同側第5層新皮質ニューロン中のα-シヌクレイン沈着(黒色矢印)について免疫細胞化学分析した。
図14B:SYN-1および自動化画像分析を用いて免疫細胞化学により測定された、同側第5層新皮質ニューロン中のα-シヌクレイン沈着の定量化。示されたデータは、0.1mm
2当たりのα-シヌクレイン陽性細胞(ニューロン)の数を表わす。各カラムは、10回の独立した抗体処置の平均±SEM値である(抗体処置群当たり、n=マウス10匹)。
*P<0.05 vs NIP228;ダネット事後検定を用いた一元配置分散分析。
図14C:SYN-1および自動化画像分析を用いて免疫細胞化学により測定された、同側CA1海馬ニューロン中のα-シヌクレイン沈着の定量化。示されたデータは、0.1mm
2当たりのα-シヌクレイン陽性細胞(ニューロン)の数を表わす。各カラムは、10回の独立した抗体処置の平均±SEM値である(抗体処置群当たり、n=マウス10匹)。
*P<0.05 vs NIP228;ダネット事後検定を用いた一元配置分散分析。
【
図15】aslo0452 ngl-3およびaslo0452 ngl-3-D265A抗体が、α-シヌクレイントランスジェニックマウスでのα-シヌクレイン拡散を阻止することを示す図である。
図15A:右側海馬にLV-α-synが注入されたα-syn tgマウス(黒色矢印)を、抗α-シヌクレインマウスIgG1抗体であるaslo0452 ngl-3、aslo0452 ngl-3 D265A、9E4、またはNIP228アイソタイプ対照抗体を用いて、13週間にわたる週1回投与により受動免疫化し、続いて、SYN-1および自動化画像分析を用いて免疫細胞化学によりα-シヌクレイン拡散について測定した。
図15B:パネルAに表わされる同側海馬冠状断切片の免疫細胞化学分析から得られたα-シヌクレイン免疫反応性データの定量化。各カラムは、10回の独立した抗体処置の平均±SEM値である(抗体処置群当たり、n=マウス10匹)。
*P<0.05 vs NIP228;ダネット事後検定を用いた一元配置分散分析。
図15C:パネルAに表わされる反対側海馬冠状断切片の免疫細胞化学分析から得られたα-シヌクレイン免疫反応性データの定量化。各カラムは、10回の独立した抗体処置の平均±SEM値である(抗体処置群当たり、n=マウス10匹)。
*P<0.05 vs NIP228;ダネット事後検定を用いた一元配置分散分析。
【
図16】aslo0452 ngl-3およびaslo0452 ngl-3-D265A抗体が、トランスジェニックマウスでの軸索に沿ったレンチウイルス媒介発現α-シヌクレインの沈着および播種を低減させることを示す図である。
図16A:右側海馬にLV-α-synが注入されたα-syn tgマウスを、抗α-シヌクレインマウスIgG1抗体であるaslo0452 ngl-3、aslo0452 ngl-3 D265A、9E4、またはNIP228アイソタイプ対照抗体を用いて、13週間にわたる週1回投与により受動免疫化し、続いて、同側および反対側海馬間軸索に沿ったα-シヌクレイン沈着(黒色矢印)について免疫細胞化学分析した。
図16B:SYN-1および自動化画像分析を用いて免疫細胞化学により測定された、同側軸索中α-シヌクレイン沈着の定量化。各カラムは、10回の独立した抗体処置の平均±SEM値である(抗体処置群当たり、n=マウス10匹)。
*P<0.05 vs NIP228;ダネット事後検定を用いた一元配置分散分析。
図16C:SYN-1および自動化画像分析を用いて免疫細胞化学により測定された、反対側軸索中α-シヌクレイン沈着の定量化。各カラムは、10回の独立した抗体処置の平均±SEM値である(抗体処置群当たり、n=マウス10匹)。
*P<0.05 vs NIP228;ダネット事後検定を用いた一元配置分散分析。
【
図17】aslo0452 ngl-3およびaslo0452 ngl-3-D265A抗体が、α-シヌクレイントランスジェニックマウスのCA1海馬ニューロンおよび第5層新皮質ニューロンでのα-シヌクレイン沈着を低減させることを示す図である。
図17A:右側海馬にLV-α-synが注入されたα-syn tgマウスを、抗α-シヌクレインマウスIgG1抗体であるaslo0452 ngl-3、aslo0452 ngl-3 D265A、9E4、またはNIP228アイソタイプ対照抗体を用いて、13週間にわたる週1回投与により受動免疫化し、続いて、同側CA1海馬ニューロンおよび同側第5層新皮質ニューロン中のα-シヌクレイン沈着(黒色矢印)について免疫細胞化学分析した。
図17B:SYN-1および自動化画像分析を用いて免疫細胞化学により測定された、同側第5層新皮質ニューロン中のα-シヌクレイン沈着の定量化。示されたデータは、0.1mm
2当たりのα-シヌクレイン陽性細胞(ニューロン)の数を表わす。各カラムは、10回の独立した抗体処置の平均±SEM値である(抗体処置群当たり、n=マウス10匹)。
*P<0.05 vs NIP228;ダネット事後検定を用いた一元配置分散分析。
図17C:SYN-1および自動化画像分析を用いて免疫細胞化学により測定された、同側CA1海馬ニューロン中のα-シヌクレイン沈着の定量化。示されたデータは、0.1mm
2当たりのα-シヌクレイン陽性細胞(ニューロン)の数を表わす。各カラムは、10回の独立した抗体処置の平均±SEM値である(抗体処置群当たり、n=マウス10匹)。
*P<0.05 vs NIP228;ダネット事後検定を用いた一元配置分散分析。
図17D:SYN-1および自動化画像分析を用いて免疫細胞化学により測定された、反対側CA1海馬ニューロン中のα-シヌクレイン沈着の定量化。示されたデータは、0.1mm
2当たりのα-シヌクレイン陽性細胞(ニューロン)の数を表わす。各カラムは、10回の独立した抗体処置の平均±SEM値である(抗体処置群当たり、n=マウス10匹)。
*P<0.05 vs NIP228;ダネット事後検定を用いた一元配置分散分析。
【
図18】BBBt0626gl-ScFv-Bs2-also0452-ngl-3-hIgG1TMとのaslo452-ngl3-hIgG1TMのエピトープ競合が、BBB部分の組み込みによりaslo452-ngl3-hIgG1TMの結合特異性を変化させないことをHTRFアッセイで実証することを示す図である。Dylight650標識抗α-シヌクレイン抗体であるaslo0452hgl3-hIgG1TMは、ビオチン化α-シヌクレインに結合し、これが次に、クリプテート(cyrptate)標識ストレプトアビジンに結合する。クリプテートの励起後、エネルギー転移(FRET)が起こり、dylight650標識aslo0452hgl3-hIgG1TMの存在下では、dylight650が励起されて、蛍光を生じる。競合相手のIgGが存在する場合は、dylight650標識aslo0452の結合が阻止されて、dylight650標識aslo0452の励起が妨げられ、その結果、蛍光シグナルが減少する。未標識aslo0452およびBbbt0626-Bs2-also0452 hIgG1TMは両方とも、同様にdylight650標識aslo0452-ngl3-hIgG1TMと競合することができる。
【
図19】BBBt0626gl-BS2-aslo452-ngl-3-hIgG1TMのマウス脳内皮細胞結合性が、aslo452-ngl3-hIgG1TMと結合した場合のBBB部分の効率的な標的係合を実証することを示す図である。FMAT(蛍光微小体積アッセイ技術;Fluorescence Micro-volume Assay Technology)またはミラーボールアッセイ技術は、両方とも、脳内皮細胞に対する抗体の特異的結合性を測定するために用いられている。このアッセイは、マウス脳内皮細胞(b.End3)に対するヒトIgGの結合性を測定する。B.End3細胞は、Bbbt0626 hIgG1TM、Bbbt0626glscFv-Bs2-aslo0452-hIgG1TMおよびBbbt0626glscFv-Bs2-NIP228 hIgG1TMにより同様に結合されるが、対照抗体であるNIP228 hIgG1TMにより結合されない。この結合性は、マウス抗Fc mAb(ヒト特異的)を用いて検出され、続いて、Alexafluor647標識ヤギ抗マウスFcを用いて検出される。
【発明を実施するための形態】
【0082】
本発明は、aslo0452 ngl-3抗体およびaslo0543抗体の驚くべき予期せぬ発見に基づく。この発見は、aslo0452 ngl-3抗体およびaslo0543抗体により共有される特性を有する新たな抗体の群、ならびに、それぞれaslo0452 ngl-3およびaslo0543の特性を有する抗体のサブグループをもたらした。
【0083】
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、本明細書に開示される通りの、配列番号2のアミノ酸配列の可変重鎖領域(VH)および配列番号3のアミノ酸配列の可変軽鎖領域(VL)を有する抗体asyn0087から誘導される。
【0084】
特定の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、抗体asyn0087から誘導され、このとき、該抗体または抗原結合性断片は、500nM未満のKDを有し、かつ本明細書に記載される、抗体asyn0087、aslo0452ngl-3およびaslo0543のうちのいずれか1種と同じエピトープに結合する。
【0085】
asyn0087と同様に、aslo0452 ngl-3抗体およびaslo0543抗体は、ヒトα-シヌクレインのC末端領域(残基96-140)に結合する。より具体的には、aslo0452 ngl-3抗体およびaslo0543抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトα-シヌクレイン(例えば、配列番号1)のアミノ酸102付近からアミノ酸130付近の間に含まれる領域に結合する。一部の実施形態では、本明細書中に開示される抗体または抗原結合性断片のいずれかは、ヒトα-シヌクレイン(例えば、配列番号1)のアミノ酸120付近からアミノ酸130付近の間に含まれる領域に結合する。一部の実施形態では、本明細書中に開示される抗体またはその抗原結合性断片のいずれかは、9E4抗体により結合されるエピトープと同じエピトープではないエピトープに結合する。
【0086】
aslo0452 ngl-3抗体およびaslo0543抗体は、α-シヌクレインに対して選択的である。抗体またはその抗原結合性断片は、β-シヌクレインまたはγ-シヌクレインなどの他のシヌクレインファミリーメンバーに結合しない。より具体的には、抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトα-シヌクレインに対して特異的である。
【0087】
aslo0452 ngl-3抗体およびaslo0543抗体は、ヒト、ラットまたはカニクイザルα-シヌクレインに結合する。aslo0452 ngl-3およびaslo0543がヒト、カニクイザルおよびラットα-シヌクレインに結合する能力は、ヒト、カニクイザルおよびラットα-シヌクレインに結合しない抗体と比較して、ヒトα-シヌクレイン上の異なるエピトープに対する結合性を示すものである。つまり、aslo0452 ngl-3抗体およびaslo0543抗体は、疾患のカニクイザルおよびラットモデルでのin vivoでの安全性評価および研究のために用いることが可能である。
【0088】
aslo0452 ngl-3抗体およびaslo0543抗体は、高親和性でヒトα-シヌクレインに結合する。aslo0452 ngl-3抗体およびaslo0543抗体は、例えば、Octet分析を用いて測定される場合に(例えば、実施例9を参照されたい)、500ピコモル濃度(pM)未満、400pM未満、300pM未満、150pM未満、120pM未満、115pM未満、110pM未満または106pM以下のKDでα-シヌクレインに結合する。aslo0452 ngl-3抗体およびaslo0543抗体は、例えば、KinExA分析を用いて測定される場合に(参考KinExA分析プロトコールに関しては、例えば、実施例9を参照されたい)、300ピコモル濃度(pM)未満、250pM未満、200pM未満、150pM未満、120pM未満、110pMもしくは108pM未満、100pM未満、80pM未満または74pM以下のKDでα-シヌクレインに結合する。
【0089】
aslo0452 ngl-3 Fab断片は、高親和性でヒトα-シヌクレインに結合する。aslo0452 ngl-3 Fab断片は、例えば、KinExA分析を用いて測定される場合に(例えば、実施例9.3を参照されたい)、300ピコモル濃度(pM)未満、200pM未満、180pM未満、174pMまたはそれ以下のKDでα-シヌクレインに結合する。
【0090】
aslo0452 ngl-3抗体およびaslo0543抗体は、天然の内因性ヒトα-シヌクレインに結合する。aslo0452 ngl-3抗体およびaslo0543抗体は、ヒトα-シヌクレインの凝集体に結合する。したがって、特に、抗体は、凝集に必要とされないエピトープに結合する。aslo0452 ngl-3抗体およびaslo0543抗体は、α-シヌクレインの単量体形態および凝集形態の両方を隔絶することが可能である。本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、α-シヌクレインの単量体形態および凝集形態の両方に結合することが可能である。
【0091】
aslo0452 ngl-3抗体およびaslo0543抗体は、α-シヌクレインの疾患関連病変形態、例えば、パーキンソン病脳組織中のレビー小体、レビー神経突起、レビー小点に結合する。最小限の染色が、正常(非疾患性)脳で観察される。
【0092】
aslo0452 ngl-3抗体は、脳間質液中のα-シヌクレインレベルを低下させる。特に、aslo0452 ngl-3抗体は、脳間質液中の遊離未結合型α-シヌクレインレベルを低下させる。
【0093】
aslo0452 ngl-3抗体は、脳脊髄液中のα-シヌクレインレベルを低下させる。特に、aslo0452 ngl-3抗体は、脳脊髄液中の遊離未結合型α-シヌクレインレベルを低下させる。aslo0452 ngl-3抗体は、in vivoでのα-シヌクレイン拡散を低減させる。α-シヌクレイン拡散を阻害するこの新規機能は、拡散を阻害しない抗体と比較して、ヒトα-シヌクレイン上の異なるエピトープに対する結合性を示すものである。
【0094】
一部の実施形態では、本明細書中に開示される抗体またはその抗原結合性断片のうちのいずれかは、aslo0452 ngl-3の機能的特性のうちのいずれか1種以上、例えば、本明細書中に明記されるaslo0452 ngl-3機能的特性のうちのいずれかを有する。一部の実施形態では、本明細書中に開示される抗体またはその抗原結合性断片のうちのいずれかは、aslo0543の機能的特性のうちのいずれか1種以上、例えば、本明細書中に明記されるaslo0543機能的特性のうちのいずれかを有する。
【0095】
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトα-シヌクレインに対する結合性に関して抗体aslo0452 ngl-3および/またはaslo0543と競合する。別の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、抗体aslo0452 ngl-3および/またはaslo0543と同じヒトα-シヌクレイン上のエピトープに結合する。
【0096】
抗体またはその抗原結合性断片が、上記で規定される通りの参照抗体または抗原結合性断片のエピトープに結合するか否かは、容易に決定することができる。そのような方法は、当技術分野では慣用の事項である。例えば、抗体は、2種類の抗体(一方は検出目的のために標識されており、他方は標識されていない)が、所与の抗原と共に同時にインキュベートされる生化学的競合アッセイにより、別の抗体と比較することができる。結合シグナルが標識抗体に対して得られる場合、2種類の抗体は、対象となるタンパク質上の別個の重複しないエピトープを認識すると考えられる。結合シグナルが得られない場合、逆に、それらは、一方の抗体の結合が立体的に第2の抗体の結合を妨げるので、タンパク質配列上の重複するエピトープを有すると特性決定されるであろう。さらに、所与のエピトープのアミノ酸局在はまた、トランケート、抗原の一次アミノ配列から誘導される直鎖ペプチド配列、生物種オルソログなどの改変型タンパク質を用いて、および所与のタンパク質に結合する抗体のタンパク質分解消化および質量分析により、特定することもできる。これらの方法論は、抗体と抗原との相互作用の領域を生成するために機能する。
【0097】
追加の慣用的実験(ペプチド突然変異および結合性分析など)を、いずれかの観察された結合性の欠損が、実際に本発明のエピトープへの結合性に起因するか否か、または何らかの他の現象(立体障害など)が原因であるかを確認するために、実行することができる。そのような実験は、ELISA、RIA、Biacore、フローサイトメトリーまたは他の公知の抗体結合性アッセイを用いて行なうことができる。
【0098】
例えば、特異的エピトープの詳細なマッピングのために、エピトープ:パラトープ界面の数学的モデルを、X線回折を含む共結晶化などの高解像度イメージング法を用いて抗原:抗体複合体の構造を分解することを介して生成されるデータから誘導することができる。エピトープを規定する主要な接触残基を特定することに関して、誘導される数学的モデルの妥当性を確認するために、抗原の点突然変異誘発と、引き続いて、確立されたそのような突然変異により生じる抗原と抗体との間の結合性の強度に対する影響の分析を行なわなくてはならない。この方法の組み合わせを用いて、エピトープを含む主要な接触残基の正確なマップを確立することができる。
【0099】
本発明の抗体またはその抗原結合性断片のエピトープに結合する抗体またはその抗原結合性断片は、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の変異体を作製することにより生成することができる。そのような変異体抗体またはその抗原結合性断片は、本発明の抗体またはその抗原結合性断片のCDRとの高レベルの同一性を共有するCDRを有し得る。例えば、一部の実施形態では、本明細書中に開示される抗体または抗原結合性断片のうちのいずれかの本明細書中に開示されるCDRのうちのいずれかは、本明細書中で参照される具体的CDR配列のうちのいずれか1種以上(例えば、配列番号5、15、16、20、10および21を有するCDRのうちのいずれか1種以上)と比較して、1または2アミノ酸残基が異なっている場合がある。加えて、そのような抗体は、フレームワーク領域中に1箇所以上の変異(例えば、保存的アミノ酸置換)を有することができる。
【0100】
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、抗体aslo0452 ngl-3のCDRに対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%かつ最大99%の配列同一性を維持するCDRアミノ酸配列中の変異を有する。
【0101】
特に、保存的アミノ酸置換が企図される。保存的置換とは、関連する側鎖を有するアミノ酸のファミリーの範囲内で行なわれるものである。遺伝的にコードされるアミノ酸は、一般的に、以下のファミリーに分けられる:(1) 酸性:アスパラギン酸、グルタミン酸;(2) 塩基性:リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3) 非極性:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4) 非荷電極性:グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン。これらのファミリーは、さらに分類することができる:セリンおよびトレオニンは脂肪族ヒドロキシファミリーであり;アスパラギンおよびグルタミンはアミド含有ファミリーであり;アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンは脂肪族ファミリーであり;かつフェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは芳香族ファミリーである。つまり、一般的に、ロイシンからイソロイシンまたはバリンへの、アスパラギン酸からグルタミン酸への、トレオニンからセリンへの独立した置換、またはあるアミノ酸から構造的に関連するアミノ酸への同様の置換は、特に置換がCDR部位内のアミノ酸を含まない場合には、生じる抗体の結合性機能または特性に対する大きな影響を有しないことが予測できるであろう。
【0102】
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、以下から選択される少なくとも1つのCDRを含む:
(i) 配列番号5のH-CDR1、
(ii) 配列番号6のH-CDR2、
(iii) 配列番号7のH-CDR3、
(iv) 配列番号9のL-CDR1、
(v) 配列番号10のL-CDR2、
(vi) 配列番号11のL-CDR3。
【0103】
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、抗体aslo0452 ngl-3のCDRから選択される少なくとも1つのCDR、すなわち、配列番号5、配列番号15、配列番号16、配列番号20、配列番号10、配列番号21のうちのいずれか1つから選択される少なくとも1つのCDRを有する。
【0104】
別の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の重鎖のCDR3は、抗体aslo0452 ngl-3の重鎖のCDR3であり;かつ/または本発明の抗体またはその抗原結合性断片の軽鎖のCDR3は、抗体aslo0452 ngl-3の軽鎖のCDR3である。つまり、一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の重鎖のCDR3は、抗体aslo0452 ngl-3の重鎖の配列番号16のCDR3であり;かつ/または本発明の抗体またはその抗原結合性断片の軽鎖のCDR3は、抗体aslo0452 ngl-3の軽鎖の配列番号21のCDR3である。
さらなる実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の重鎖のCDR3は、抗体aslo0452 ngl-3の重鎖のCDR3である。
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の軽鎖のCDR3は、抗体aslo0452 ngl-3の軽鎖のCDR3である。
【0105】
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、抗体aslo0452 ngl-3の6つのCDR、すなわち、配列番号5、配列番号15および配列番号16のアミノ酸配列を有する3つの重鎖CDR;ならびに配列番号20、配列番号10および配列番号21のアミノ酸配列を有する3つの軽鎖CDRを有する。
【0106】
本発明は、配列番号13により規定されるヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する可変重鎖、および配列番号18により規定されるヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する可変軽鎖を含む、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0107】
本発明はまた、配列番号13により規定されるヌクレオチド配列を有する可変重鎖、および配列番号18により規定されるヌクレオチド配列を有する可変軽鎖を含む、抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0108】
本発明は、配列番号14により規定されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する可変重鎖、および配列番号19により規定されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する可変軽鎖を含む、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0109】
一実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、(i) 配列番号14により規定されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する可変重鎖、および配列番号19により規定されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する可変軽鎖、ならびに(ii) 抗体aslo0452 ngl-3の6つのCDR、を含む。
【0110】
本発明は、配列番号14のアミノ酸配列を有する可変重鎖、および配列番号19のアミノ酸配列を有する可変軽鎖を含む、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、抗体aslo0543の6つのCDRを有する。
【0111】
つまり、一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、以下を含む:
(a) 以下の配列を有する3つの重鎖CDR:
(i) 配列番号25のH-CDR1、
(ii) 配列番号26のH-CDR2;および
(iii) 配列番号27のH-CDR3、ならびに
(b) 以下の配列を有する3つの軽鎖CDR:
(i) 配列番号31のL-CDR1、
(ii) 配列番号32のL-CDR2、および
(iii) 配列番号33のL-CDR3。
【0112】
さらなる実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号14により規定される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する可変重鎖および配列番号19により規定される配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する可変軽鎖を含み、かつ、以下をさらに含む:
(a) 以下の配列を有する3つの重鎖CDR:
(vii) 配列番号25のH-CDR1、
(viii) 配列番号26のH-CDR2;および
(ix) 配列番号27のH-CDR3、ならびに
(b) 以下の配列を有する3つの軽鎖CDR:
(vii) 配列番号31のL-CDR1、
(viii) 配列番号32のL-CDR2、および
(ix) 配列番号33のL-CDR3。
【0113】
本発明はまた、配列番号23により規定されるヌクレオチド配列を有する可変重鎖および配列番号29により規定されるヌクレオチド配列を有する可変軽鎖を含む、抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0114】
本発明はまた、配列番号24のアミノ酸配列を有する可変重鎖および配列番号30のアミノ酸配列を有する可変軽鎖を含む、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0115】
さらなる実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号22により規定されるアミノ酸配列を有する重鎖および配列番号28により規定されるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0116】
フレームワーク領域およびCDRまたは抗体は、正確に規定することができる(Kabat et al. Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services (1991), 91-3242, 1991;およびChothia et al. J. MoI. Biol. (1987), 196:901-917、それらの両方が、参照により本明細書中に組み入れられる)。
【0117】
本発明の抗体またはその抗原結合性断片のアミノ酸配列中の軽微な変異は、本発明により包含されるものと考慮され、但し、アミノ酸配列中の変異は、本明細書中の何処かに規定される通りの本発明の抗体またはその抗原結合性断片に対して少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、および最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を維持する。特に、保存的アミノ酸置換が企図される。
【0118】
本発明はまた、本明細書中の何処かに規定される通りの本発明の抗体またはその抗原結合性断片の軽鎖を含む単鎖アミノ酸配列を提供する。本発明はまた、本明細書中の何処かに規定される通りの本発明の抗体またはその抗原結合性断片の重鎖を含む単鎖アミノ酸配列を提供する。
【0119】
比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、SmithおよびWaterman(Smith and Waterman, Adv. Appl. Math. 2 (1981), 484;参照により本明細書中に組み入れられる)の局所ホモロジーアライメントアルゴリズムにより、NeedlemanおよびWunsch(Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. (1970), 48: 443;参照により本明細書中に組み入れられる)のアルゴリズムにより、PearsonおよびLipman(Pearson & Lipman, Proc Natl Acad Sci U S A (1988), 85: 2444;参照により本明細書中に組み入れられる)の類似性探索法により、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実行(GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA - Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group, University of Wisconsin Biotechnology Center, 1710 University Avenue, Madison, Wis. 53705)により、または目視評価(Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausbel et al, eds, Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, In. And John Wiley & Sons, Inc. (1995 Supplement) Ausbubelを参照されたい;参照により本明細書中に組み入れられる)により、行なうことができる。
【0120】
配列類似性または同一性(%)を決定するために好適なアルゴリズムの例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムである(Altschul et al. J. Mol. Biol. (1990), 215(3): 403-410; およびthe National Center for Biotechnology Information の“http://www.ncbi.nlm.nih.gov/”を参照されたい;これらの両方が参照により本明細書中に組み入れられる)。
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は単離される。別の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は精製される。
【0121】
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片はモノクローナル抗体である。別の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片はヒト化抗体である。また別の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片はヒト抗体である。
【0122】
一実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、IgA、IgD、IgE、IgMもしくはIgG(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4など)抗体またはその抗原結合性断片である。
【0123】
別の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、IgG Fc受容体に対して低下した結合親和性を有する。つまり、本発明の抗体または抗原結合性断片は、低い免疫原性作用を有する。一実施形態では、抗体またはその抗原結合性断片は、IgG1 TM抗体またはその抗原結合性断片である。IgG1 TMは、IgG1三重突然変異体であり、Fc-γ受容体(FcγR)に対する抗体またはその抗原結合性断片の結合親和性を低下させるFcドメイン中の3箇所の点突然変異(L234F/L235E/P331S)を含む(Oganesyan et al. Acta Crystallogr D Biol Crystallogr, (2008) 64: 700-704;参照により本明細書中に組み入れられる)。一部の実施形態では、つまり、本発明の抗体によるα-シヌクレイン拡散の抗体媒介予防は、主要な作用機序としてFc関連エフェクター機能を必要としない。
【0124】
抗原結合性断片としては、Fab、Fv、scFv、dAb、Fd、Fab'、F(ab')2または結合に十分なフレームワークを有する単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。Fab断片は、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片であり得る。F(ab')2断片は、ヒンジ領域でのジスルフィド架橋を介して連結された2つのFab断片からなる二価断片であり得る。Fc断片は、CH2およびCH3ドメインからなることができる。Fv断片は、抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなることができる。dAb断片(Ward et al. Nature (1989), 341: 544-546;参照により本明細書中に組み入れられる)は、VHドメインからなることができる。結合に十分なフレームワークを有する単離された相補性決定領域(CDR)は、可変領域の抗原結合性部分であり得る。
【0125】
軽鎖可変領域の抗原結合性部分および重鎖可変領域の抗原結合性部分(例えば、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVH)は、組み換え法を用いて、VL領域およびVH領域が対になって一価分子を形成する単一タンパク質鎖としてそれらを作製することを可能にする合成リンカーにより、組み合わせることができる(単鎖Fv(scFv)として公知である;例えば、Bird et al. Science (1988), 242(4877): 423-426;およびHuston et al. Proc Natl Acad Sci U S A (1988), 85: 5879-5883を参照されたい;これらの両方が参照により本明細書中に組み入れられる)。これらは、当業者に公知の慣用技術を用いて取得され、部分は完全抗体と同じ様式で有用性についてスクリーニングされる。
【0126】
本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、上記で規定される通りの有利な特性のうちのいずれかもしくはすべて、またはそれらの組み合わせを有することができる。特に、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、α-シヌクレインに対して選択的であり得、かつin vivoでのα-シヌクレインの細胞間伝達および拡散を遅延または防止することができる場合がある。
【0127】
得られた本発明の抗体またはその抗原結合性断片の機能性、ならびに、特に(i) α-シヌクレインのエピトープに結合するその能力;および(ii) in vivoでのα-シヌクレインの細胞間伝達および拡散を遅延または防止するその能力は、実施例で本明細書中に記載される技術を用いてその特異的活性をアッセイすることにより、容易に決定することができる。
【0128】
本開示は、トランスポーター分子を用いる、血液脳関門(BBB)を通過する本発明の抗体またはその抗原結合性断片の送達のための組成物を提供し、該トランスポーター分子は、該抗体または断片と会合しながら、例えば、該抗体または断片に融合またはコンジュゲート化しながら、脳内皮細胞を通過することができる。BBB配列は、本明細書中に提供される。
【0129】
本明細書中で用いる場合、用語「ペイロード」(payload)は、BBBを通過するその輸送を、本明細書中に提供される通りのトランスポーター分子により促進することができる、本明細書に記載される通りの抗体またはその抗原結合性断片についての省略表現として用いられる。特定の実施形態では、「ペイロード」とは、本発明の抗体の重鎖可変領域、より詳細にはalso0452 ngl-3またはaslo0543の重鎖可変領域を包含する。
【0130】
ペイロードは、トランスポーター分子の一部分、例えば、融合ポリペプチドとしての一部分であり得、またはジスルフィド結合もしくは他の共有結合を介してポリペプチドに結合させることができる。あるいは、ペイロードは、下記でさらに記載される通りに、トランスポーター分子がBBBを通過するその輸送を促進することを可能にするであろういずれかの様式で、トランスポーター分子と会合させることができる。特定の態様では、ペイロードは、BBB輸送後にトランスポーター分子の一部分であり続け、その形態で中枢神経系(CNS)活性を保持する。あるいは、ペイロードは、BBB輸送の間、トランスポーター分子と会合していることができるが、BBB輸送後にトランスポーター分子と分離することを可能にする様式であり得る。
【0131】
本開示はさらに、本発明の抗体またはその抗原結合性断片と会合したそのようなトランスポーター分子の使用を含む、CNSの疾患または障害、特にα-シヌクレイノパチーの治療または診断のための方法を提供する。
【0132】
特定の態様では、本開示は、免疫グロブリン由来ポリペプチドを含む単離されたトランスポーター分子を提供する。特定の態様では、ポリペプチドは、脳微小血管内皮細胞(BMVEC)、例えば、マウスB.End3細胞に対する結合性を検出する、蛍光微小体積アッセイ技術(Fluorescence Micro-volume Assay Technology)(FMAT)を用いて特定および単離された、ラクダ抗体FC5の模倣体または非模倣体である。特定の態様では、免疫グロブリン由来ポリペプチドは、抗体またはその活性断片であり、このとき、「活性(な)」とはトランスポーター分子が、例えば、1種以上の生物種でのBMVEC(例えば、マウスBMVEC、ラットBMVEC、カニクイザルBMVEC、またはヒトBMVEC)に結合することができ、1種以上の生物種のBMVECへと内在化することができ、かつ/または単独で、もしくはペイロードと会合して、血液脳関門を通過することができることを意味する。
【0133】
一部の実施形態では、BBBトランスポーター分子は、米国特許仮出願第62/094,503号(その全体が参照により本明細書中に組み入れられる)に記載されるBBBトランスポーター分子である。特定の態様では、トランスポーター分子は、米国特許仮出願第62/094,503号(その全体が参照により本明細書中に組み入れられる)に記載される通りの、Bbbt0241、Bbbt0626、Bbbt0626gl、Bbbt0632、BBBt0632gl Bbbt0654、Bbbt0726、Bbbt0727、Bbbt0732、Bbbt0754、Bbbt0674、Bbbt0755、Bbbt0643、Bbbt0579またはBbbt0671のうちの1種以上を含む。
特定の実施形態では、BBBトランスポーター分子は、Bbbt0626またはBBBt0632である。
【0134】
特定の実施形態では、BBBトランスポーター分子は生殖系列化され、例えば、Bbbt0626glは、「Bbbt0626gl」と称されるBbbt0626の生殖系列バージョンである。
さらなる特定の実施形態では、BBBトランスポーター分子は、BBBt0632glまたはBbbt0626glである。
【0135】
特定の態様では、トランスポーター分子はBMVECに結合しないが、依然として、in vitroトランスサイトーシスアッセイで示されるようにBBBを介して輸送することが可能である。
【0136】
BBBトランスポーター分子に関して、記載されるVH CDR配列は、古典的なKabatナンバリング位置に対応し、すなわち、Kabat H-CDR1は31-35位であり、H-CDR2は50-65位であり、H-CDR3は95-102位である。L-CDR2およびL-CDR3もまた古典的なKabatナンバリング位置に対応し、すなわち、それぞれ50-56位および89-97位である。本明細書中で用いる場合、用語「L-CDR1」または「軽鎖CDR1」は、VL中のKabatの23-34位に位置する配列に対応する(対照的に、Kabatナンバリング法に従う古典的なL-CDR1位置は、24-34位に対応する)。
【0137】
特定の態様では、免疫グロブリン由来ポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域(CDR)を含む。例えば、免疫グロブリン由来ポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域-1(H-CDR1)、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域-2(H-CDR2)、免疫グロブリン重鎖相補性決定領域-3(H-CDR3)を含むことができる。特定の態様では、免疫グロブリン由来ポリペプチドは、免疫グロブリン軽鎖CDRを、さらに含むか、または代わりに含むことができる。例えば、免疫グロブリン由来ポリペプチドは、免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域-1(L-CDR1)、免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域-2(L-CDR2)、および免疫グロブリン軽鎖相補性決定領域-3(L-CDR3)を含むことができる。
【0138】
特定の態様では、免疫グロブリン由来ポリペプチドは、それぞれ以下のアミノ酸配列を有する、H-CDR1、H-CDR2、H-CDR3、L-CDR1、L-CDR2、およびL-CDR3を含む:
(a) H-CDR1として配列番号40、H-CDR2として配列番号41、H-CDR3として配列番号42、L-CDR1として配列番号36、L-CDR2として配列番号37、およびL-CDR3として配列番号38(このとき、CDRは、Bbbt0626およびBbbt0626glのものに類似している);
(b) H-CDR1として配列番号40、H-CDR2として配列番号41、H-CDR3として配列番号42、L-CDR1として配列番号44、L-CDR2として配列番号45、およびL-CDR3として配列番号46(このとき、CDRは、Bbbt0626およびBbbt062glのものと同一である)。
【0139】
特定の態様では、免疫グロブリン由来ポリペプチドは、それぞれ以下のアミノ酸配列を有する、H-CDR1、H-CDR2、H-CDR3、L-CDR1、L-CDR2、およびL-CDR3を含む:
(a) H-CDR1として配列番号49、H-CDR2として配列番号50、H-CDR3として配列番号51、L-CDR1として配列番号53、L-CDR2として配列番号54、およびL-CDR3として配列番号55(このとき、CDRは、Bbbt0632glのものに類似している);
(b) H-CDR1として配列番号49、H-CDR2として配列番号50、H-CDR3として配列番号51、L-CDR1として配列番号53、L-CDR2として配列番号54、およびL-CDR3として配列番号55(このとき、CDRは、Bbbt0632glのものと同一である)。
【0140】
特定の代替的実施形態では、上記の通りの1種以上のCDRは、例えば、1、2、3、4、または5箇所の単一アミノ酸の欠失、置換、または挿入以外は、明記されたCDRと同一である。
特定の実施形態では、上記で提供される通りのトランスポーター分子は、血液脳関門を通過することができる。
【0141】
特定の態様では、H-CDR1、H-CDR2、H-CDR3、L-CDR1、L-CDR2、およびL-CDR3は、免疫グロブリンフレームワーク領域中に配置されて、抗体VHおよび抗体VLを生成することができる。特定の態様では、フレームワーク領域は、ヒト由来フレームワーク領域であり得る。特定の態様では、抗体VHおよび抗体VLは、例えば、柔軟なペプチドリンカーを介して、一緒に融合されて、scFv分子を形成する。特定の態様では、VHおよびVLはさらに、1種以上の免疫グロブリン定常ドメイン、例えば、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH3ドメイン、CH3ドメイン、CL-κドメイン、および/またはCL-λドメインを含む。特定の態様では、1種以上の免疫グロブリン定常ドメインは、ヒト免疫グロブリン、例えば、ヒトIgG1免疫グロブリンに由来する。特定の態様では、VH、VL、および/または定常ドメインは、例えば、より長いかもしくは短い半減期、増大もしくは低減されたエフェクター機能またはペプチド融合、ジスルフィド結合、もしくは化学的コンジュゲート化のいずれかを介してペイロード分子に結合する能力を強化するための変異を含むことができる。
【0142】
本発明の特定の態様では、本明細書において記載される通りの脳内皮細胞を通過できるトランスポーター分子と会合した、本発明の抗体またはその抗原結合性断片が提供される。
【0143】
特定の態様では、本開示は、免疫グロブリン由来ポリペプチドを含むトランスポーター分子と会合した、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を提供し、このとき、該ポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖可変領域(VH)領域および免疫グロブリン軽鎖可変領域(VL)領域を含む。特定の態様では、免疫グロブリン由来ポリペプチドは、以下のものをはじめとする、本明細書中に提供される配列を含む:
(a) 配列番号39に対して少なくとも80%、84%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるVHアミノ酸配列、および配列番号43に対して少なくとも80%、84%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるVLアミノ酸配列(ここで、配列番号39および配列番号43は、Bbbt0626glのVHおよびVL領域をコードする)、
(b) 配列番号47に対して少なくとも80%、84%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるVHアミノ酸配列、および配列番号43に対して少なくとも80%、84%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるVLアミノ酸配列(ここで、配列番号47および配列番号43は、Bbbt0626のVHおよびVL領域をコードする)、
(c) 配列番号48に対して少なくとも80%、84%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるVHアミノ酸配列、および配列番号43に対して少なくとも80%、84%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるVLアミノ酸配列(ここで、配列番号48および配列番号43は、Bbbt0632のVHおよびVL領域をコードする)。
【0144】
特定の態様では、本開示は、免疫グロブリン由来ポリペプチドを含むトランスポーター分子と会合した、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を提供し、ここで、免疫グロブリン由来ポリペプチドはVH領域およびVL領域を含み、このとき:
(a) VH領域は配列番号34を含み、かつVL領域は配列番号35を含むか;または
(b) VH領域は配列番号39を含み、かつVL領域は配列番号43を含むか;または
(c) VH領域は配列番号39を含み、かつVL領域は配列番号35を含むか;または
(d) VH領域は配列番号47を含み、かつVL領域は配列番号43を含むか;または
(e) VH領域は配列番号47を含み、かつVL領域は配列番号35を含むか;または
(f) VH領域は配列番号48を含み、かつVL領域は配列番号52を含む。
さらなる実施形態では、上記の通りのトランスポーター分子のVHおよびVL領域は、共有的に結合して、単鎖断片(ScFv)を形成する。
【0145】
特定の態様では、本明細書に伴って提供されるトランスポーター分子はトランスポーター活性を有し、例えば、1種以上の生物種に由来するBMVEC(例えば、マウス、ラット、カニクイザル、またはヒトBMVEC)に結合することができるか、1種以上の生物種のBMVEC中に内在化することができるか、または血液脳関門を通過することができる。
【0146】
特定の態様では、本明細書中に提供される通りのトランスポーター分子は、免疫グロブリン由来ポリペプチドを含み、このとき、免疫グロブリン由来ポリペプチドは、抗体またはそのBBB透過可能断片を含む。
【0147】
本明細書中に記載される場合、「BBB透過可能断片」とは、1種以上の生物種のBMVECに特異的に結合でき、末梢血管系からCNS血管系へとin vitroまたはin vivoでBMVECを通過することができるトランスポーター分子の断片である。所与の断片がBBB透過可能断片であるか否かは、当業者に公知の様々なin vitroまたはin vivoアッセイにより試験することができる。例えば、トランスポーター分子は、in vitroトランスサイトーシスアッセイ、US 62/094,503に記載される通りの利尿アッセイなどのin vivoアッセイで試験することができる。BBBを通過するペイロードのin vivo送達を測定するために用いることができるであろう他のアッセイとしては、限定するものではないが、慢性結紮損傷(CCI);神経枝結紮損傷モデル(spared nerve injury model;SNI)または脊髄神経結紮(SNL)が挙げられ、これらのすべてが、足先フリック(paw flick)、またはHargreaves法を介して測定することができる(Hargreaves K, et al., Pain; 1988; 32; 77-88)。特定の態様では、本明細書中に提供される通りのトランスポーター分子は、1種以上の生物種に由来するBMVEC(例えば、ヒト、カニクイザル、マウス、ラット、またはウシBMVEC)に結合することができる。結合性は、当業者に公知の様々な方法で、例えば、US 62/094,503に記載される通りのFMATアッセイで、実証することができる。特定の態様では、BMVECは脳毛細血管内皮細胞(BCEC)である。特定の態様では、本明細書中に提供される通りのトランスポーター分子は、in vitroトランスサイトーシスアッセイでBCECの単層を通過することができる。特定の態様では、トランスポーター分子活性は、CNSでのトランスポーター分子の可視化により実証することができる。例えば、トリチウム標識トランスポーター分子を被験体に送達し(例えば、マウス末梢に、例えば、静脈内に)、続いて定量的全身放射線撮影を介してCNS中で可視化することができる。特定の態様では、トランスポーター分子は、CNSの特定の領域に、例えば、小脳皮質、大脳灰白質、脊髄灰白質、脳橋、またはそれらの組み合わせに局在する。
【0148】
特定の態様では、本明細書中に記載される通りのトランスポーター分子は、2種以上のサブユニットを含むかまたはそれらからなる(例えば、重鎖またはその断片および軽鎖またはその断片であって、重鎖および軽鎖は、例えば、単一の融合タンパク質(例えば、scFv)として、または1箇所以上のジスルフィド結合により一緒に保持される2個のサブユニットとして会合している)、抗体またはそのBBB透過可能断片を含む。特定の態様では、重鎖はVHドメインまたは領域を含み、軽鎖はVLドメインまたは領域を含む。
一実施形態では、本発明は、本明細書で記載される通りの血液脳関門トランスポーター分子に会合した本発明の抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
【0149】
特定の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は血液脳関門トランスポーター分子に会合しており、このとき、トランスポーター分子は、以下を含む単鎖断片(scFv)である:
i. 配列番号39のBBBt0626glの重鎖可変領域(VH)および配列番号43のBBBt0626glの軽鎖可変領域(VL)、または
ii. 配列番号47のBBBt0626の重鎖可変領域(VH)および配列番号43のBBBt0626の軽鎖可変領域(VL)、
iii. 配列番号48のBBBt0632glの重鎖可変領域(VH)および配列番号52のBBBt0632glの軽鎖可変領域(VL)。
【0150】
特定の態様では、重鎖はさらに、重鎖定常ドメイン、例えば、CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、および/もしくはCH3ドメイン、またはその断片を含む。特定の態様では、重鎖定常ドメインは、IgG定常ドメインまたはその断片、例えば、ヒトIgG定常ドメイン、例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4定常ドメインである。特定の態様では、IgG定常ドメインまたはその断片は、野生型IgG定常ドメインと比較して変化したグリコシル化および/または1箇所以上のアミノ酸置換を含み、このとき、改変型IgGは、特定の特性、例えば、野生型IgG定常ドメインを有するIgGの半減期と比較して増加もしくは減少した半減期、野生型IgG定常ドメインと比較して増大もしくは低減したエフェクター機能、または、例えば、ペプチド結合、ジスルフィド結合、もしくは化学的コンジュゲート化を介して、異種部分に結合する能力を有する。特定の態様では、IgG定常ドメインまたはその断片は、野生型IgG定常ドメインと比較して変化したグリコシル化を有し、このとき、改変型IgGは、特定の特性、例えば、野生型IgG定常ドメインを有するIgGの半減期と比較して増加もしくは減少した半減期、野生型IgG定常ドメインと比較して増大もしくは低減したエフェクター機能を有する。
【0151】
一部の実施形態では、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、本明細書に規定される通りのBBBt0626またはBBBt0626glと会合して、二重特異性抗体分子を形成する。
【0152】
他の実施形態では、本発明の該二重特異性抗体は、本発明の抗α-シヌクレイン抗体の重鎖のN末端(「BiS2形式」)もしくはC末端(「BiS3形式」)またはVLのN末端(「BiS1形式」)にグラフトされた、BBBt0626またはBBBt0626glのVHおよびVL領域を含む単鎖断片(scFv)と会合したヒトIgG1 TM骨格(すなわち、IgG1 TMの重鎖CH1、CH2、CH3領域)を含む。BiS形式の参照は、DiMasi et al. J Mol Biol. 2009 Oct 30;393(3):672-92に開示される通りである。
一部の実施形態では、本発明の該二重特異性抗体はさらに、本発明の抗α-シヌクレイン抗体のVLと会合したκまたはλCL領域を含む軽鎖を含む。
【0153】
特定の実施形態では、本発明の二重特異性抗体は、以下と会合したヒトIgG1 TM骨格を含み:
(i) 配列番号39の重鎖可変領域(VH)および配列番号43の軽鎖可変領域(VL)を含むBBBt0626glの単鎖断片(scFv);または
(ii) 配列番号47の重鎖可変領域(VH)および配列番号43の軽鎖可変領域(VL)を含むBbbt0626の単鎖断片(scFv)、
【0154】
このとき、該scFvは、配列番号12のaslo0452 ngl-3の重鎖のN末端(BiS2形式)もしくはC末端(BiS3形式)または配列番号17の軽鎖のN末端(「BiS1形式」)にグラフトされる。
【0155】
またさらなる特定の実施形態では、本発明の二重特異性抗体は、以下を含むBBBt0626glの単鎖断片(scFv)と会合したヒトIgG1 TM骨格を含み:(i) 配列番号39の重鎖可変領域(VH)および(ii) 配列番号43の軽鎖可変領域(VL);このとき、該scFvは、配列番号12のaslo0452 ngl-3の重鎖のN末端(BiS2形式)もしくはC末端(BiS3形式)または配列番号17の軽鎖のN末端(「BiS1形式」)にグラフトされる。
【0156】
他の特定の実施形態では、本発明の二重特異性抗体は、以下と会合したヒトIgG1 TM骨格を含み:
(i) 配列番号39の重鎖可変領域(VH)および配列番号43の軽鎖可変領域(VL)を含むBBBt0626glの単鎖断片(scFv);または
(ii) 配列番号47の重鎖可変領域(VH)および配列番号43の軽鎖可変領域(VL)を含むBbbt0626の単鎖断片(scFv)、
このとき、該scFvは、配列番号22のaslo0543の重鎖のN末端(BiS2形式)もしくはC末端(BiS3形式)または配列番号28の軽鎖のN末端(「BiS1形式」)にグラフトされる。
【0157】
本発明はまた、医薬としての使用のための本発明の抗体またはその抗原結合性断片を提供する。
本発明はまた、中枢神経系の疾患、特にα-シヌクレイノパチーの予防または治療での使用のための本発明の抗体またはその抗原結合性断片を提供する。一実施形態では、α-シヌクレイノパチーは、パーキンソン病(PD)、レビー小体認知症(DLB)、および多系統萎縮症(MSA)から選択される。好ましい実施形態では、α-シヌクレイノパチーは、パーキンソン病(PD)である。
【0158】
本発明はまた、中枢神経系の疾患、特にα-シヌクレイノパチーを予防または治療するための医薬の製造のための、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の使用を提供する。一実施形態では、α-シヌクレイノパチーは、パーキンソン病(PD)、レビー小体認知症(DLB)、および多系統萎縮症(MSA)から選択される。好ましい実施形態では、α-シヌクレイノパチーは、パーキンソン病(PD)である。
【0159】
本発明はまた、患者での疾患を治療または予防する方法を提供し、該方法は、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するステップを含む。一実施形態では、α-シヌクレイノパチーは、パーキンソン病(PD)、レビー小体認知症(DLB)、および多系統萎縮症(MSA)から選択される。好ましい実施形態では、α-シヌクレイノパチーは、パーキンソン病(PD)である。
【0160】
使用時には、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、in vivoでのα-シヌクレインの伝搬および拡散を阻害することにより、疾患進行を治療または防止することができる。本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、つまり、他の治療薬とは異なる利点を提供する。本発明はまた、患者に対して本発明の抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む、それを必要とする被験体での疾患進行を遅延または防止する方法を提供する。
【0161】
一実施形態では、該疾患の治療方法は、治療上有効量の本発明の抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む。他の実施形態では、該疾患を予防する方法または疾患進行を遅延もしくは予防する方法は、予防上有効量の本発明の抗体またはその抗原結合性断片を投与するステップを含む。
【0162】
本発明の抗体またはその抗原結合性断片の投与のための投与量範囲は、所望の治療効果を生じるためのものである。必要とされる投与量範囲は、抗体もしくはその抗原結合性断片または組成物の正確な性質、投与経路、製剤の性質、患者の年齢、患者の状態の性質、程度または重症度、もしあれば、禁忌、および担当医の判断に依存する。それらの投与量レベルの変更は、最適化のための標準的な経験的慣用手段を用いて調整することができる。
【0163】
好適な投与量は、体重1kg当たり1~50mgの範囲内である。投与量は、5~30mg/kg、10~25mg/kg、または15~20mg/kgの範囲内であり得る。単位投与量は、1日1回またはそれ以下の頻度で、例えば、週1回または月1回、投与することができる。
【0164】
投与は、長期間にわたる、本発明の抗体またはその抗原結合性断片の反復投与により行うことができる。投与は同時または順次的であり得、いかなる順序で行うこともできる。
【0165】
本明細書中に規定される予防または治療は、単独の療法として施すことができ、または、本発明の抗体または抗原結合性断片に加えて、α-シヌクレイノパチーの治療で通常用いられる他の薬剤もしくは確立された治療薬(L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)、ドーパミン(受容体)アゴニスト、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害剤、および/またはB型モノアミンオキシダーゼ(MAO-B)阻害剤など)の投与を含むことができる。他の薬剤または確立された治療薬の投与は、本発明の抗体またはその抗原結合性断片と組み合わせて、またはその補助として、またはこれと併用して行うことができ、かつ処置の個々の構成要素の同時、連続的または分離した投与によるものであり得る。
【0166】
併用治療は、当業者により必要または便利であると見なされる、いずれかの様式で行なうことができ、かつ本明細書の目的のために、組み合わせて用いられる対象である化合物同士の順序、量、反復または相対量に関して、制限は意図されない。
【0167】
治療上有効量とは、疾患または疾患の臨床症状のうちの少なくとも1種を治療するために患者に対して単独でまたは組み合わせて投与される場合に、疾患または症状のそのような治療に影響を及ぼすのに十分である、抗体またはその抗原結合性断片の量を意味する。治療上有効量は、例えば、抗体および/または疾患の症状、治療対象の患者の年齢、体重、および/もしくは健康状態、および処方する医師の判断に応じて変化し得る。いずれかの所与の例での適切な治療上有効量は、当業者が確認することができ、または慣用の実験操作により決定することが可能であり得る。治療上有効量はまた、抗体または抗体またはその抗原結合性断片のいかなる毒性作用または有害作用よりも、有益作用の方が上回るものである。
【0168】
「予防上有効量」とは、患者に対して単独でまたは組み合わせて投与される場合に、疾患または疾患の臨床症状のうちの少なくとも1種の発症もしくは再発を阻害または遅延させる、抗体または抗体またはその抗原結合性断片のいずれかの量である。一部の実施形態では、予防上有効量は、疾患の発症または再発を完全に防止する。発症を「阻害する」とは、疾患の発症の尤度を低下させるか、または疾患の発症を完全に防止することを意味する。
【0169】
本発明はまた、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を含む医薬組成物を提供する。したがって、本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合性断片を、製薬上許容される賦形剤と共に含む、医薬組成物を提供する。好適な製薬上許容される賦形剤は、薬剤投与に好適な調製物への活性化合物の加工を容易にし得る。
【0170】
本発明の医薬組成物は、限定するものではないが、非経口送達(例えば、筋内、皮下または静脈内)用に製剤化することができる。筋内、皮下または静脈内注入に好適な組成物としては、無菌水溶液が挙げられる。
【0171】
医薬組成物は、水溶液の形態を採ることができ、かつ生理的に適合性のバッファー(ハンクス液、リンゲル液、または緩衝生理食塩液など)を含むことができる。医薬組成物は、追加的または代替的に、懸濁液の粘度を上昇させる物質(カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなど)を含有することができる。医薬組成物は、適切な油性注入用懸濁液として調製することができる。好適な親油性溶媒またはビヒクルとしては、油脂(ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(オレイン酸エチルまたはトリグリセリドなど)、またはリポソームが挙げられる。任意により、医薬組成物は、好適な安定化剤または高度に濃縮された溶液の調製を可能にするために化合物の溶解度を上昇させる薬剤を含有することができる。
【0172】
本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合性断片をコードする、単離された核酸分子を提供する。本発明はまた、本発明の単離された核酸分子を含むベクターを提供する。本発明はさらに、本発明のベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0173】
本発明の抗体または抗原結合性断片は、特定の作製方法または製造方法に限定されない。つまり、本発明は、抗体を分泌するハイブリドーマから製造された抗体、ならびに抗体をコードする核酸(1種または複数)を用いて形質転換またはトランスフェクションされた組み換え的に生成された細胞から産生された抗体を提供する。そのようなハイブリドーマ、組み換え的に生成された細胞、および核酸は、本発明の一部を形成する。
【実施例】
【0174】
実施例1:抗体作製
抗α-syn特異的抗体を、マイクロタイターウェル上に受動的に固相化されたものおよび溶液中の遊離のものの両方の組み換えヒトα-syn(「hu α-syn」)に対する一連の選択サイクルを用いて、ファージディスプレイライブラリーから単離した。線状ファージM13に基づくファージミドベクター中へとクローニングされた未刺激(naive)ヒト単鎖Fv(scFv)ファージディスプレイライブラリーを、選択のために用いた(Lloyd et al., Protein Eng Des Sel. (2009), 22(3):159-68;およびVaughan et al., Nat Biotechnol. (1996), 14(3); 309-14;それらの両方が参照により本明細書中に組み入れられる)。
【0175】
2回または3回の上記の選択ラウンド後の選択アウトプットからの代表的な一定数の個々のクローンを、ペリプラズム大腸菌抽出物中の可溶性scFv断片として(Kipriyanov et al. J Immunol Methods (1997) 200: 69-77;参照により本明細書中に組み入れられる)、可溶性ヒトα-シヌクレインに対する結合性について、均質FRET(蛍光共鳴エネルギー移動、fluorescence resonance energy transfer)HTRF(登録商標)(均一な時間分解蛍光、Homogeneous Time-Resolved Fluorescence、Cisbio International社)アッセイで、最初にスクリーニングした。
【0176】
HTRF(登録商標)アッセイ(
図1)は、近接しているドナー蛍光団とアクセプター蛍光団との間の蛍光共鳴エネルギー転移を利用する均質アッセイ技術である(Mathis G Clin Chem (1995) 41: 1391-1397.;参照により本明細書中に組み入れられる)。このアッセイは、対象となる分子のうちの一方をドナー蛍光団(例えば、ユーロピウム(Eu
3+)クリプテート)に直接的または間接的にカップリングさせ、かつ他方の対象となる分子をアクセプター蛍光団であるXL665(安定的に架橋されたアロフィコシアニン)にカップリングさせることにより、高分子相互作用を測定するために用いた。クリプテート分子の励起(337nm)が、620nmでの蛍光発光を生じた。この発光からのエネルギーが、クリプテートに近接したXL665に転移され、XL665からの特異的な長寿命蛍光(665nm)の発光を生じた。ドナー(620nm)およびアクセプター(665nm)の両方の特異的シグナルを測定することにより、アッセイ中の着色化合物の存在を相殺する665/620nm比の算出が可能になった。
【0177】
未精製抗α-syn scFvサンプルを、ビオチン化α-synに対する結合性について試験した。40nMビオチン化ヒトα-synを0.8nMストレプトアビジンテルビウム(Cisbio International, 610SATLB)と組み合わせて含有する5マイクロリットルの溶液を、384ウェル低容量アッセイプレート(Costar, 3676)に加えた。次に、抗体試験サンプルの各希釈10マイクロリットルをプレートに加えた。最後に、DC抗-myc(Cisbio International, 661MYCDAB)を含有する溶液5マイクロリットルをアッセイプレートに加えた。すべての希釈は、0.8Mフッ化カリウム(BDH 103444T)および0.1%ウシ血清アルブミン(BSA, Sigma A9576)をダルベッコPBS(Invitrogen, 14190185)中に含有するアッセイバッファー中で行なった。アッセイプレートを室温で3時間インキュベートし、続いて、4℃で16時間インキュベートし、その後、EnVisionプレートリーダー(Perkin Elmer社)を用いて、620nmおよび665nmの発光波長での時間分解蛍光を読み取った。
【0178】
各サンプルについて665/620nm比の算出、続いて%デルタF値を算出することにより、データを分析した。665/620nm比は、以下の方程式を用いてサンプル干渉について補正するために用いた:
【0179】
【数1】
続いて、各サンプルについての%デルタFを、以下の方程式を用いて算出した:
【0180】
【数2】
陰性対照(非特異的結合)は、試験サンプルを非タグ付けヒトまたはラットα-synに置き換えることにより定義した。
続いて、%デルタF値を、以下の方程式に記載される通りに特異的結合性(%)を算出するために用いた:
【0181】
【数3】
IC
50値は、4パラメーター論理方程式を用いた曲線フィッティングにより、GraphPad Prismソフトウェアを用いて決定した:
Y=最低値+(最高値-最低値)/(1+10^((LogEC50-X)*ヒルスロープ))
Xは濃度の対数である
Yは特異的結合性である
YはS字形状を有して最低値から最高値に達する。
【0182】
未精製ペリプラズム抽出物としてのヒトα-synに結合する単鎖Fvクローンを、DNA配列決定に供した(Osbourn et al, Immunotechnology (1996), 2: 181-196;およびVaughan et al., Nat Biotechnol. (1996), 14(3); 309-14;それらの両方が参照により本明細書中に組み入れられる)。固有のscFvを再び細菌中で発現させ、アフィニティークロマトグラフィーにより精製した(国際公開第01/66754号に記載される通り;参照により本明細書中に組み入れられる)。これらのサンプルの効力を、上記の通りのHTRFアッセイで、ビオチン化ヒトα-synに対する結合性について、精製済み調製物の力価測定により決定した。最も強いα-syn相互作用を示した精製scFv調製物を、IgG形式への変換のために選択した。
【0183】
HTRFアッセイでの抗体の力価測定により、クローンを、α-synに対する結合性の強さに関して順位付けした。最も強いα-syn結合物質を、Octet Redバイオセンサー(実施例9に記載される方法を参照されたい)でのIgGとしてのα-synに対する結合性動態(koff)、ならびにシヌクレインファミリーメンバー選択性(ヒトα-syn、β-syn、γ-syn)(実施例4に記載される方法を参照されたい)およびネズミα-synとの交差反応性(実施例5に記載される方法を参照されたい)について、さらに分析した。
【0184】
実施例2:aslo0452 ngl-3の誘導
C末端反応性α-syn特異的クローンであるasyn0087を、DELFIAアッセイ(実施例4に記載される方法を参照されたい)でヒトα-synに対する結合性をスクリーニングすることにより同定した。asyn0087は、ヒト、カニクイザルおよびげっ歯類α-synに特異的に結合する(実施例5に記載される方法を参照されたい)。asyn0087を、最も近い考えられるヒト生殖系列配列に戻し(Tomlinson VBASE. MRC Centre of Protein Engineering, Cambridge, UK. 1997;参照により本明細書中に組み入れられる)、これは最適化に先立つ標準的突然変異誘発技術により、効力に影響を及ぼさなかった。生殖系列化に続いて、クローンを、α-syn に対する結合性に関して再評価した。有害作用は観察されなかった。
【0185】
リードクローンから誘導した大きなscFv-ファージライブラリーを、Clarkson and Lowman (2004)(Phage display: A practical approach. Oxford: Oxford University Press;参照により本明細書中に組み入れられる)に記載される通りの標準的分子生物学技術を用いて、可変重鎖(VH)相補性決定領域(CDR)2および3ならびに軽鎖(VL)CDR1および3のオリゴヌクレオチド標的化突然変異誘発により作製した。ライブラリーを、ヒトα-synに対して比較的高い親和性を有する変異体を選択するために、可溶性ビオチン化ヒトα-synに対して行なわれる親和性ベースのファージディスプレイ選択に供した。選択は、実行された選択の各ラウンドについて可溶性ビオチン化ヒトα-synの濃度を低下させたこと以外は、本質的に上記に記載された通りに行なった。
【0186】
各選択アウトプットからの代表的なクローンを、可溶性α-synへの結合性に関して親α-syn結合性クローンasyn0087に対して競合するその能力について、ペリプラズム大腸菌抽出物中での可溶性scFv断片としてHTRFアッセイで最初にスクリーニングした。これらの集団スクリーニングでの各ライブラリーの性能を用いて、どのCDR突然変異誘発ライブラリーを遺伝的に一緒に加えるか、または「組み換え」て新規ライブラリーを作製するかの情報を提供し、これらの組み換えられたライブラリーを、可溶性ビオチン化ヒトα-synに対して行なう親和性駆動選択のさらなるラウンドに供した。
【0187】
個別のライブラリーおよび組み換え突然変異誘発ライブラリーに由来するクローンの両方に関して、陽性結合物質の配列分析後に、クローンを、scFv断片およびIgGの両方として発現させ、精製し、可溶性α-synに対する結合性を、エピトープ競合HTRFアッセイにより再確認した。HTRFエピトープ競合アッセイで抗体を力価測定することにより、クローンを、親IgG asyn0087と比較したα-synに対する結合性の相対的改善に関して、それらのIC50値により順位付けした。最も強いα-syn結合物質を、シヌクレインファミリーメンバー選択性(ヒトα-syn、β-syn、γ-syn)ならびにカニクイザルおよびラットα-synとの交差反応性について、直接結合HTRFアッセイまたはエピトープ競合HTRFアッセイのいずれかにより、さらに分析した。
【0188】
ライブラリ組み換えおよびスクリーニングのこれらの反復ラウンドから、2種類の強力なα-syn特異的カニクイザルおよびラットα-syn交差反応性クローンであるaslo0452 ngl-1およびaslo0467が同定された。
【0189】
IC
50効力での正の改善が観察された単一点突然変異誘発を、CDRのそれぞれについて、aslo0452 ngl-1に対して行なった。選択されたCDRの各位置は、20種類すべての考えられるアミノ酸残基を通して個別に変異され、aslo0452 ngl-1 IgGと比較して改善したIC
50についてエピトープ競合HTRFアッセイにより再びスクリーニングした。4つのCDR(H2、H3、L1およびL3)にわたって複数の残基が特定され、aslo0452 ngl-1およびaslo0467の両方に組み合わせられて、aslo0452 ngl-1と比較して改善したIC
50についてエピトープ競合HTRFアッセイにより再び評価した。これらの実験から、2種類の最も改善された結合物質が、aslo0452 ngl-3およびaslo0543として特定された。
図2では、asyn0087、aslo0452 ngl-3およびaslo0543のVHおよびVL領域のアミノ酸配列を比較する。
【0190】
実施例2.1:IgG1 TMへのscFvの再形式化
所望のα-syn結合特性を有する単鎖Fvクローンを無エフェクター型の完全免疫グロブリンG1 TM(IgG1 TM)(Oganesyan et al. Acta Crystallogr D Biol Crystallogr. (2008), 64(Pt 6):700-4;参照により本明細書中に組み入れられる)抗体形式に変換し、この形式は、以下の改変を含んで、本質的にはPersic et al.(Persic et al, Gene (1997) 187: 9-18;参照により本明細書中に組み入れられる)により記載された通りであった。CHOトランジェント細胞を用いる使用を容易にし、かつエピソーム複製を可能にするために、発現ベクター中にOriP断片が含められた。可変重鎖(VH)ドメインは、ヒト重鎖定常ドメインおよび哺乳動物細胞中での完全IgG1 TM重鎖を発現するための調節エレメントを含むベクター(pEU1.4)にクローニングした。同様に、可変軽鎖(VL)ドメインは、ヒト軽鎖(λ)定常ドメインおよび哺乳動物細胞中で完全IgG軽鎖を発現するための調節エレメントの発現のために、ベクター(pEU4.4)にクローニングした。IgGを取得するために、重鎖IgG発現ベクターおよび軽鎖IgG発現ベクターをCHOトランジェント哺乳動物細胞にトランスフェクションした(Daramola et al, Biotechnol Prog (2014) 30: 132-141;参照により本明細書中に組み入れられる)。IgGが発現され、培地中に分泌された。回収物を精製前にろ過し、続いて、IgGを、プロテインAクロマトグラフィーを用いて精製した。培養上清を、適切なサイズのセラミックプロテインA(BioSepra社)のカラムにロードし、50mM Tris-HCl pH8.0、250mM NaClを用いて洗浄した。結合したIgGを、0.1Mクエン酸ナトリウム(pH3.0)を用いてカラムから溶出させ、Tris-HCl(pH9.0)の添加により中和した。溶出された物質を、Nap10カラム(Amersham, #17-0854-02)を用いてPBSへとバッファー交換し、IgGの濃度を、IgGのアミノ酸配列に基づく減衰係数を用いて分光学的に決定した(Mach et al, Anal Biochem (1992) 200: 74-80;参照により本明細書中に組み入れられる)。精製されたIgGを、SEC-HPLCを用いて、かつSDS-PAGEにより、凝集化および分解純度について分析した。
【0191】
候補薬物形式としてのIgG1 TM使用の論理的根拠は、免疫細胞および補体の活性化(すなわち、炎症を引き起こし得るC3aの過剰産生)に起因する第三者殺傷を最低限にすることである。第三者細胞殺傷は、候補薬物および細胞外α-シヌクレイン(脂質膜と相互作用することが実証されている)により形成される免疫複合体の考えられる蓄積により惹起される可能性がある(Bartels et al., Biophys. J. (2010), 99: 2116-2124;参照により本明細書中に組み入れられる)。Fcγ受容体(FcγR)に対する無視できる程度の結合性および免疫複合体による低下したC1q媒介補体活性化を有することが実証されているので、IgG1 TM形式が選択された(Oganesyan et al. Acta Crystallogr D Biol Crystallogr. (2008), 64(Pt 6):700-4;参照により本明細書中に組み入れられる)。
【0192】
免疫原性のいかなる潜在的リスクも最小限にするために、aslo0452 ngl-3のフレームワークは、効力に影響を及ぼさずに可能な限り、ヒト生殖系列アミノ酸配列に近づけられている。このことは、バーニア残基(Foote and Winter, J Mol Biol. (1992), 224(2): 487-99;参照により本明細書中に組み入れられる)をはじめとするaslo0452 ngl-3中の一部のアミノ酸が、最も近いヒト生殖系列配列へと変異されていないことを意味する。aslo0452 ngl-3のV
Hドメインでは、ヒト生殖系列IGVH3-23およびIGJH6配列に変異されていないV領域中の1個のバーニア残基がある(
図3C)。aslo0452 ngl-3のV
Lドメインでは、すべてのフレームワーク残基がヒト生殖系列IGLV5-45およびIGJL2またはIGJL3配列にマッチする(
図3D)。
【0193】
実施例3:親和性最適化型抗α-syn IgGエピトープの確認
組み換えヒトα-、β-、およびγ-シヌクレイン、ヒトα-シヌクレインの組み換えトランケート(aa1-60、aa1-95、aa61-140、96-140、ΔNAC、およびNCAP)、ならびにマウスα-シヌクレインは、rPeptide社から入手した。おおよそのエピトープマッピングを、市販のα-synトランケートを用いて行なった。
【0194】
簡潔には、1ミリリットル当たり1マイクログラムの各トランケートを、4℃で一晩、マイクロタイターウェルにコーティングした。PBSでウェルをリンスした後、各抗α-syn抗体の1μg/mL希釈物を加えた。1時間のインキュベーションおよび洗浄後、結合抗体を、HRPまたはEu3+のいずれかにコンジュゲート化した抗ヒトIgGの添加により検出した。インキュベーションおよび洗浄後、適切な検出基質を添加し(それぞれ、TMBまたはDELFIAエンハンサー溶液)、プレートを、マイクロタイタープレートリーダー上で読み取った。
【0195】
これらのエピトープ結合性研究により、リード単離体であるasyn0087は、アミノ酸102から130のα-synタンパク質のC末端領域中に位置するエピトープを認識することが明らかになった(
図4A)。aslo0452 ngl-3およびaslo0543の両方が、それらの親リード単離体であるasyn0087と同じ、アミノ酸102から130のα-synタンパク質のC末端領域中に位置するエピトープの認識を維持している(
図4B)。
【0196】
実施例4:エピトープ競合HTRFアッセイを用いるシヌクレインファミリーメンバーと比較したα-synに対するaslo0452 ngl-3およびaslo0543の特異性
他のシヌクレイン(β-シヌクレインおよびγ-シヌクレイン)とのオフターゲット相互作用に関連するいかなる潜在的安全性リスクも最小限にするために、ヒトα-synに対して特異的であることは、治療用途で用いることが意図される抗体にとっては重要である。
【0197】
他のシヌクレインファミリーメンバーであるβ-synおよびγ-synと比較したα-synに対するaslo0452 ngl-3およびaslo0543の特異性を、溶液中の抗体に対するビオチン化ヒトα-synの結合性を測定するHTRFエピトープ競合アッセイを用いて決定した。
【0198】
α-syn、β-synおよびγ-synを、アッセイへと力価調整し、aslo0452 ngl-3 IgGおよびaslo0543 IgGの選択性を、aslo0452 ngl-3/aslo0543に対するビオチン化ヒトα-syn結合性の阻害度合を測定することにより評価した。IC50値は、PRISM 6(登録商標)ソフトウェア(Graphpad社)を用いて4パラメーター論理方程式に対してデータを曲線フィッティングすることにより決定した。ヒトα-syn、β-synおよびγ-synに対するIgGの直接的結合性を測定する、より高感度のHTRFアッセイもまた、α-syn特異性を確認するために用いられた(データは示していない)。陰性対照のためには、抗体試験サンプルが、アイソタイプ対照抗体またはバッファーのみに置き換えられた。
【0199】
aslo0452 ngl-3およびaslo0543 HTRFエピトープ競合アッセイでのα-syn、β-synおよびγ-synタンパク質を用いて得られた代表的なIC
50値を、
図5に示す。β-synおよびγ-synに対しては、試験した濃度(最大で5μM)では結合が観察されず、このことは、aslo0452 ngl-3およびaslo0543がα-synに対して選択的であることを実証している。
【0200】
実施例5:HTRFエピトープ競合アッセイを用いたヒト、カニクイザルおよびラットα-synに対するaslo0452 ngl-3の特異性
治療用途を考慮すると、抗体が、ヒトα-synに対して観察される反応性の10倍以内まで、カニクイザルα-シヌクレインに対して交差反応性であることが重要であり、ラットα-シヌクレインに対して交差反応性であることが望ましい。このことは、カニクイザルおよびラット生物種の両方で安全性研究が実行されることを可能にするためである。
【0201】
ヒト、カニクイザルおよびラットα-synに対するaslo0452 ngl-3およびaslo0543の特異性を、溶液中のaslo0452 ngl-3に対するビオチン化ヒトα-synの結合性を測定するHTRFエピトープ競合アッセイを用いて決定した。
【0202】
ヒト、カニクイザルおよびラットα-synをアッセイへと力価調整し、抗体の選択性を、抗体に対するビオチン化ヒトα-syn結合性の阻害度合を測定することにより評価した。IC50値は、PRISM 6(登録商標)ソフトウェア(Graphpad社)を用いて4パラメーター論理方程式に対してデータを曲線フィッティングすることにより決定した。aslo0452 ngl-3およびaslo0543の生物種交差反応性はまた、直接結合HTRFアッセイ形式を用いても確認された(示していない)。aslo0452 ngl-3(またはaslo0543)は、HTRFアッセイによるaslo0452 ngl-3(またはaslo0543)に対するヒトまたはカニクイザルまたはラットα-syn結合性に関して競合するようにアッセイへと力価調整した。陰性対照としては、抗体試験サンプルが、アイソタイプ対照抗体またはバッファーのみに置き換えられた。
【0203】
HTRFエピトープ競合アッセイでのヒト、カニクイザルおよびラットα-synタンパク質を用いて得られた代表的なIC
50値を、
図6に示す。aslo0452 ngl-3は、それぞれ5.7nMおよび6.8nMのIC
50値でヒトおよびカニクイザルα-synに結合し、19.6nM(4倍以内)のIC
50値でラットα-synに結合する。aslo0543は、それぞれ2.0nMおよび2.1nMのIC
50値でヒトおよびカニクイザルα-synに結合し、3.8nM(2倍以内)のIC
50値でラットα-synに結合する。
【0204】
aslo0452 ngl-3がヒト、カニクイザルおよびラットα-synに結合する能力は、ヒト、カニクイザルおよびラットα-synに結合しない抗体と比較して、ヒトα-シヌクレイン上の異なるエピトープに対する結合性を示すものである。
【0205】
実施例6:フローサイトメトリーにより測定された天然のα-synに対する親和性最適化型クローンの特異性
親和性最適化型抗α-syn IgGであるaslo0452 ngl-3およびaslo0543の天然の内因性ヒトα-synに対する結合性についての特異性を、α-syn陽性細胞株および陰性細胞株を用いて、フローサイトメトリーにより決定した。
【0206】
簡潔には、SHSY5Y神経芽腫細胞(α-syn陽性)およびBT-20乳癌細胞(α-syn陰性)を、0.01%ホルムアルデヒド中で固定し、続いて、0.5%(v/v) Tween20を用いて透過化し、その後、抗α-syn抗体、陽性対照またはアイソタイプ対照抗体と共にインキュベートした。十分に洗浄した後、結合抗体を、抗ヒトまたは抗マウスIgG-FITC二次抗体と共にインキュベーションすることにより検出した。さらなる洗浄後、細胞を、FACS Canto II装置(Becton Dickinson, Franklin Lakes, NJ)を用いて分析し、データ解析を、FlowJoソフトウェア(Tree Star, Ashland, OR)を用いて行なった。
【0207】
データを、単独で染色された細胞と一次抗体染色された細胞との差異を示すヒストグラムとしてプロットする。
図7Aの結果は、アイソタイプ対照および二次抗体単独(パネルB)と比較して、α-syn陽性SH-SY5Y細胞でのasyn0087の存在下(パネルD)での蛍光シグナルのシフトを示し、これは、内因的に発現されたα-synの認識を示すものである。asyn0087は、α-syn陰性ヒト乳癌細胞株であるBT-20には結合しない(パネルC)。
図7Bの結果は、α-syn陽性SH-SY5Y細胞に対する陽性対照抗体4D6(パネルF)と同等の、aslo0452 ngl-3またはaslo0543のいずれかの存在下(パネルH)での蛍光シグナルの強いシフトを示し、α-syn陰性BT-20細胞(パネルG)ではシフトは示されていない。このことは、aslo0452 ngl-3およびaslo0543の両方が、天然の内因的に発現された細胞内ヒトα-synに結合することを実証する。
【0208】
実施例7:DELFIA ELISAによる凝集型ヒトα-synに対する最適化型抗α-syn IgGの特異性
ヒトα-synの線維状調製物または凝集体を、Emadi et al.(Emadi et al, Biochemistry (2004), 43: 2871-2878;参照により本明細書中に組み入れられる)により記載される通りに生成させた。簡潔には、200μLの50μM組み換えα-synを1.8mLザルスタット製チューブに分注し、37℃の振盪インキュベーターに280rpmで3日間置いた。凝集型α-synの存在を、最終濃度10μMまで添加され、暗所にて室温で1時間インキュベートされ、かつ励起波長450nmおよび発光波長485nmでEnvisionマイクロプレートリーダーを用いて蛍光が読み取られた、チオフラビンTの取り込みにより決定した。
【0209】
親和性最適化型抗α-syn IgGであるaslo0452 ngl-3およびaslo0543、ならびにリード抗体asyn0087の、凝集型ヒトα-synに対する特異性を、DELFIA(登録商標)抗体捕捉アッセイを用いて決定した。このアッセイにより、ペアワイズELISAでのaslo0452 ngl-3、aslo0543またはasyn0087による凝集型ヒトα-synの捕捉が測定された。簡潔には、抗α-syn抗体のマウスIgG1バージョンを、96ウェルマイクロタイタープレート(Nunc社)のウェルに固相化した。ブロッキング後、凝集型または単量体型ヒトα-synを、ウェル中でインキュベートした。洗浄後、捕捉されたヒトα-synを、同じ抗α-syn抗体のヒトIgG1 TMバージョンの添加および引き続く抗ヒトIgGユーロピウムコンジュゲート(Perkin Elmer社)または抗ヒトIgG-HRPコンジュゲートの添加により検出した。インキュベーションおよび洗浄に続いて、適切な検出基質を添加し(それぞれ、TMBまたはDELFIAエンハンサー溶液)、プレートを、マイクロタイタープレートリーダーで読み取った。
【0210】
本アッセイでは、凝集型ヒトα-synのみが捕捉および検出されるはずであり、これは、1個の凝集体上に複数コピーの同じエピトープが存在するからである。単量体型α-synでは、エピトープが1コピーのみしか存在せず、したがって、検出用の二次抗体が捕捉抗体の存在下では結合できない。データを
図8にまとめる。リード単離体であるasyn0087は、凝集型組み換えヒトα-synに結合できる。つまり、asyn0087が結合するエピトープは、それ自体がα-synの凝集化に関与するものではない。aslo0452 ngl-3およびaslo0543の両方が、凝集型組み換えヒトα-synに結合するその能力を保持していた。
【0211】
実施例8:免疫組織化学による疾患関連組織中の最適化型抗α-syn IgGの特異性
親和性最適化型抗α-syn IgGであるaslo0452 ngl-3およびaslo0543、ならびにリード抗体asyn0087の、疾患関連形態のヒトα-synに対する特異性を、パーキンソン病脳組織の免疫組織化学染色により決定した。結果を
図9に示し、これは、asyn0087と同様に、aslo0452 ngl-3およびaslo0543の両方が、レビー小体、レビー神経突起、神経凝集物、レビー小点およびバックグラウンド脳組織を含むパーキンソン病脳組織切片中のヒトα-synの疾患関連病変形態を認識できることを実証する。正常または健康脳組織中での非特異的染色は認められなかった。
【0212】
実施例9:抗α-syn抗体親和性測定
ヒトα-synに対する抗α-syn IgGについての平衡解離定数(KD)を、以下の2種類のプラットホーム技術を用いて決定した:Octet Red(Forte Bio社)およびKinExA(Sapidyne Instruments社)。
【0213】
両方のアッセイシステムが良好な一致を示し、aslo0452 ngl-3親和性がナノモル濃度未満の範囲内にあったことが示された。表1は、リード単離およびリード最適化プロセスを通して生成された主要な抗α-synクローンから誘導される親和性測定値を示す。
【0214】
実施例9.1:Octetによるaslo0452 ngl-3の親和性
組み換え細菌発現単量体型ヒトaviタグα-syn-Flag-Hisに対するaslo0452 ngl-3 IgGの親和性を、Octet Red装置を用いて評価した。aslo0452 ngl-3を、平衡に達するまで、種々の濃度の各リガンドと予め混合した。続いて、遊離抗体の量を、ストレプトアビジンコーティング済みセンサー上に固相化されたビオチン化α-synを用いて遊離aslo0452 ngl-3を捕捉することにより、Octetを用いて測定した。各α-syn濃度で検出された遊離抗体の量を、リガンドの濃度に対してプロットし、KinExAソフトウェアを用いて平衡解離定数(KD)を算出した。表1に示される結果は、aslo0452 ngl-3 IgGが、106pMの親和性でヒトα-synに結合することを実証する。
【0215】
実施例9.2:KinExAによるaslo0452 ngl-3の親和性
加えて、組み換え細菌発現単量体型ヒトビオチン化α-synに対するaslo0452 ngl-3 IgGの溶液相親和性(KD)を、KinExA装置(Sapidyne Instruments社)を用いて決定した。aslo0452 ngl-3を、平衡に達するまで、種々の濃度の各リガンドと予め混合した。続いて、遊離抗体の量を、α-synコーティングビーズを用いて遊離aslo0452 ngl-3を捕捉し、未結合物質を洗い流し、蛍光標識分子種特異的抗体を用いて結合抗体を検出することにより、KinExAを用いて測定した。各α-syn濃度で検出された遊離抗体の量を、リガンドの濃度に対してプロットし、KinExAソフトウェアを用いて平衡解離定数(KD)を算出した。表1に示される結果は、aslo0452 ngl-3 IgGが、74pMの親和性でα-synに結合することを実証し、これは、上記のOctet溶液相親和性アッセイとの良好な一致を示す。
【0216】
実施例9.3:KinExAによるaslo0452 ngl-3 Fab断片の親和性
aslo0452 ngl-3 Fab断片は、高親和性でα-シヌクレインに結合する。α-シヌクレインに対するaslo0452 ngl-3 Fab断片のKD値は、KinExA分析(全長抗体について上記実施例中に記載される通り)により測定した場合に、174pM(95%CI:15~177pM)である。
【0217】
実施例10:雄性Sprague Dawleyラットの前頭前皮質間質液(ISF)中での遊離未結合型α-シヌクレインレベルに対するaslo0452 ngl-3の影響
成体雄性Sprague Dawleyラット(293~417g;Harlan, the Netherlands)を麻酔し、前頭前皮質にガイドを移植した。
【0218】
実験の1日前に、プッシュプルプローブ(1~3MDaポリエチレンメンブレン4mm)を、定位フレームを用いて前頭前皮質に移植した(プローブに対する座標:AP=-3.4mm(ブレグマに対して)、横方向+0.8mm(正中線に対して)、腹方向-5.0mm(硬膜に対して)、切歯バーは-3.3mmに設定された(すべての座標は、Paxinos and Watson, The rat brain in stereotaxic coordinates, Academic Press, New York, 6th edition 2008に従う))。プローブは、ステンレス鋼ネジおよび歯科用セメントを用いて頭蓋骨に取り付けた。
【0219】
実験の日に、プッシュプル微小透析プローブを、フレキシブルPEEKチューブ(Western Analytical Products Inc. USA;PK005-020)を用いて微小灌流ポンプ(Harvard社)に連結し、人工CSF(灌流液)(147mM NaCl、3.0mM KCl、1.2mM CaCl2、および1.2mM MgCl2+0.2%BSAを含有)を 0.5μL/分の流速で灌流させた。プローブの排出口をフレキシブルFEPチューブに連結した。最低でも2時間の予備安定化の後に、PBS中に製剤化されたaslo0452 ngl-3またはPBS単独(ビヒクル)を、それぞれ30mg/kgまたは0mg/kgで投与した。化合物は、2mL/kgで静脈内投与した。微小透析サンプルを、120分間間隔で回収した。サンプルは、ミニバイアル(Microbiotech/se AB, Sweden;4001029)へと回収した。すべてのサンプルを-80℃で保存した。
【0220】
ラットISF中の遊離α-シヌクレイン濃度を決定するために、まず、微小透析サンプルを免疫沈降に供して、aslo0452 ngl-3を除去した。免疫沈降は、治療抗体に結合したα-シヌクレインを共沈するが、未結合の「遊離」α-シヌクレインは上清中に残る。プロテインAビーズ(ダイナビーズ(登録商標)プロテインA)の溶液を、96ウェルスカートなしプレート(ポリプロピレン0.2mL)に加え、溶液からビーズを分離するために磁石(DynaMag
TM 96 side)を用いてTBST(50mM TBS+0.1%Tween20)で2回洗浄した。融解させたラットISF微小透析サンプル(10または20μL)を各ウェルに加え、上下にピペッティングすることによりビーズと混合し、傾斜回転を加えて4℃で10分間インキュベートした。続いて、磁石を用いてビーズを2回ペレット化させて、ビーズを完全に除去した。免疫沈降させたISFサンプルを、抗α-シヌクレインELISAキット(Sensolyte
TM定量的ELISAキット、ヒト/マウス/ラット、AnaSpec,US、AS-55550)に由来する、サンプル希釈バッファーが既に加えられた96ウェルプレートへと移し、合計体積を100μLとした。1ウェル当たり100μLの較正サンプルを2回反復でプレートに加え、50μLの検出抗体作業溶液を各ウェルに加えた。プレートを、撹拌しながら、光から保護して+4~8℃で一晩インキュベートし、続いて、350μLの洗浄バッファーを用いて6回洗浄した。最後に、100μLのTMB発色基質を各ウェルに加え、プレートを、暗所にて室温で10~15分間インキュベートした。反応を停止させるために、50μLの停止溶液を各ウェルに加え、プレートを、450nmの吸光度で2時間以内に読み取った。定量化は、対数スケールの濃度に対する直線スケールでの吸光度単位として標準曲線の応答をプロットすることにより行なった。4パラメーター関数を曲線フィッティングのために用いた。
遊離α-シヌクレインの時間依存的な減少が、30mg/kgでの単回の静脈内aslo0452 ngl-3投与後にISF中で実証された(
図10)。
【0221】
実施例11:雄性Sprague DawleyラットのCSF中での遊離未結合型α-シヌクレインレベルに対するaslo0452 ngl-3の影響
成体雄性Sprague Dawleyラットを麻酔し、カテーテルを大槽中に配置して、CSF採取に順応させた。0.8cm留置カニューレを大槽中に挿入し、頭蓋骨の頂上の切開部を通して露出させた。CSFカテーテルの端部を、歯科用アクリルセメントを用いて定位置に固定し、3本のステンレス鋼ネジを用いて頭蓋骨に取り付けた。化合物を投与する前に、最低でも2日間、動物を回復させた。
【0222】
aslo0452 ngl-3を、3、10、30または100mg/kgでの投与のためにバッファー中に製剤化した。化合物またはビヒクルのみを、2mL/kgで静脈内投与した。
【0223】
最低でも2日間にわたる少なくとも4回の清浄なCSFサンプルの回収後、化合物を投与した。すべての動物に、「0」日目にaslo0452 ngl-3またはビヒクルのいずれかを投与した。それぞれの示された時点で、CSFサンプルを回収した。すべてのサンプルを、発送まで-80℃で保存した。
【0224】
CSF中の遊離α-シヌクレインを測定するために、aslo0452 ngl-3に結合したα-シヌクレインを、分析前に免疫沈降(IP)により除去した。IPは、治療抗体に結合したα-シヌクレインを共沈するが、未結合の「遊離」α-シヌクレインは上清中に残る。上清中のα-シヌクレインの遊離レベルの決定は、Anaspec社から入手した市販のELISAキットを用いて行なった。分析は、ISF結果について記載した通り(実施例10に記載される通り)に行なった。
【0225】
3~100mg/kgの用量範囲での単回静脈内aslo0452 ngl-3投与後に、CSF中での遊離α-シヌクレインの用量および時間依存的減少が実証された(
図11)。
【0226】
実施例12:α-シヌクレイノパチーのレンチウイルスin vivoモデルでのα-シヌクレイン拡散の減少によるaslo0452 ngl-3の機能的特性決定
高親和性抗α-シヌクレイン抗体であるaslo0452 ngl-3がα-シヌクレインの拡散を阻止する能力を、α-シヌクレイノパチーのレンチウイルスin vivoマウスモデルを用いて調べた。この目的のために、非トランスジェニック野生型マウス(non-tg)およびα-シヌクレイン過剰発現トランスジェニックマウス(α-syn tg)の両方に、α-シヌクレインを発現するレンチウイルスベクター(LV-α-syn)を右側海馬に注入し、続いて、aslo0452 ngl-3を含む抗α-シヌクレインマウスIgG1抗体およびアイソタイプ対照マウスIgG1 NIP228を用いて13週間にわたって週1回、受動免疫した。免疫化期間の終了時に、マウスを安楽死させ、その脳を4%PFA中で固定し、続いて、冠状断切片にし、LV-α-syn注入部位に対して同側および反対側でのα-シヌクレイン免疫反応性のレベルについて、自動化画像分析を用いて免疫細胞化学により分析した。
【0227】
手術および受動免疫化
3~4月齢非トランスジェニック野生型マウス(non-tg;n=40)およびα-シヌクレイントランスジェニックマウス(α-syn tg;n=40)に、α-シヌクレインを発現するレンチウイルスベクター(LV-α-syn)の右側海馬への単回の片側注入(ブレグマから-2.0、1.5、-1.3)を施した。LV-α-syn注入手術の2週間後に、マウスに抗α-シヌクレインマウスIgG1抗体:aslo0452 ngl-3(non-tg n=10;α-syn tg n=10)、aslo0452 ngl-3 D265A(non-tg n=10;α-syn tg n=10)、9E4(non-tg n=10;α-syn tg n=10)を週1回投与するか、またはNIP228アイソタイプ対照マウスIgG1(non-tg n=10;α-syn tg n=10)を投与した。
【0228】
すべてのマウスIgGを、13週間にわたって、腹腔内(IP)経路により20mg/kgで投与した。動物は、1ケージ当たりの最大数または4匹ずつで集団飼育した。動物は、12/12明暗サイクルで、食餌および水への自由なアクセスを与えて飼育された。週1回、ケージを交換し、毎日モニタリングした。いかなる有害事象も報告された。すべての動物が、外科的手順ならびに免疫化に耐えた。抗体処置期間の終了時に、動物の人道的処置に関するガイドラインに従ってマウスを安楽死させ、その脳を冠状軸で連続切片にし、免疫細胞化学法により、α-シヌクレイン拡散の神経病理学的分析のために評価した。
【0229】
α-シヌクレイン免疫細胞化学
脳を取り出し、4%パラホルムアルデヒド中で固定し、ビブラトームを用いて冠状軸にて40μm間隔で切片を作製し、凍結保護媒(30%グリセリン、30%エチレングリコール、40%PBS)中にて-30℃で保存した。PBS洗浄およびブロッキングバッファーステップ後、切片を、一次抗体(抗α-シヌクレインmAb SYN-1(BD社)、1:500希釈)と共に4℃で一晩インキュベートし、PBS中で洗浄し、二次抗体(ビオチン化抗マウスIgG(Vector Laboratories社)、1:100希釈)と共に室温で1時間インキュベートした。最後のPBS洗浄ステップ後、α-シヌクレイン染色を、アビジン/ビオチン-ペルオキシダーゼ複合体検出システム(Elite ABC, Vector Laboratories)を用いて局在特定した。続いて、切片を、レンチウイルスベクター(LV-α-syn)注入部位に対して同側および反対側でのα-シヌクレインのレベルについて、自動化画像分析を用いて分析した。
【0230】
統計学
non-tg処置群およびα-syn tg処置群にわたるα-シヌクレインレベルの自動化画像取得により生成されたデータを、GraphPad Prismソフトウェア(San Diego California, USA)を用いて解析した。ダネットの多重比較事後検定を用いて、一元配置分散分析を行なった。図に示されるデータは、平均±平均の標準誤差(SEM)として表わされる。群間差異は、p<0.05の場合に統計学的に有意と見なした。すべての解析は、評価者に対して盲検として行なった。抗体処置群もまた、評価者に対して盲検とした。
【0231】
結果
non-tgマウスおよびα-syn tgマウスの両方で、LV-α-syn注入された同側でのα-シヌクレイン免疫反応性は、神経網(neuropil)中で強く、海馬の表面のほとんどをカバーしていた(
図12A、
図15A;NIP228-同側)。non-tgマウスおよびα-syn tgマウスの反対側非注入側海馬もまた、高レベルのα-シヌクレイン免疫反応性を示し、このことは、レンチウイルスにより発現されたα-シヌクレインが、注入側の右側海馬から左側海馬へと拡散したことを示した(
図12A、
図15A;NIP228-反対側)。このレンチウイルスα-シヌクレイン注入マウスモデルでは、以前の実験により、PCR分析により決定した場合に、レンチウイルス自体の移動の兆候なく、発現されたα-シヌクレインタンパク質のみが反対側に拡散することが示されている(データは示していない)。
【0232】
9E4抗体(9E4:PRX002のマウスバージョン(Prothena社))を用いる受動免疫を受けたnon-tgマウスでのレンチウイルス発現α-シヌクレインの同側および反対側海馬レベルは、NIP228アイソタイプ対照マウスIgG1を用いる受動免疫を受けたnon-tgマウスでのレンチウイルス発現α-シヌクレインの同側および反対側海馬レベルとほぼ同一であり(
図12A、B、C;NIP228と比較した9E4)、このことは、IP経路を介して13週間にわたって20mg/kgで週1回投与される場合に、9E4が、このα-シヌクレイン拡散モデルでのα-シヌクレインの播種を阻止しないことを示す。
【0233】
対照的に、aslo0452 ngl-3抗体またはaslo0452 ngl-3の無エフェクター型突然変異型(aslo0452-ngl-3-D265A)(マウスIgG1中の265位でのアスパラギン酸からアラニンへの置換(D265A)が、ミクログリアで見出されるこのアイソタイプと低親和性のIgG Fc受容体(FcγRIIBおよびFcγRIII)との相互作用を欠損させる)のいずれかを用いる受動免疫を受けたnon-tgマウスでのレンチウイルス発現α-シヌクレインの同側および反対側両方での海馬レベルは、NIP228アイソタイプ対照マウスIgG1を用いる受動免疫を受けたnon-tgマウスでのレンチウイルス発現α-シヌクレインの同側および反対側海馬レベルよりも、非常に顕著に低かった(
図12A、B、C;NIP228と比較したaslo0452-ngl-3およびaslo0452-ngl-3-D265A)。このことは、aslo0452-ngl-3またはaslo0452-ngl-3の無エフェクター型D265A突然変異型のいずれかを用いるマウスの受動免疫化が、α-シヌクレイノパチーのこのマウスモデルでのα-シヌクレインの拡散を確実に阻止することを示す。LV-α-synベクターがα-syn tgマウスの右側海馬に注入された場合に同様の結果が得られ;aslo0452-ngl-3またはaslo0452-ngl-3-D265Aを用いる受動免疫化は、NIP228処置α-syn tgマウスと比較して、海馬でのα-シヌクレイン免疫反応性の同側および反対側両方でのレベルを確実かつ統計学的に有意に低下させたが、9E4では低下させなかった(
図15A、B、C)。
【0234】
より高倍率では、レンチウイルス発現α-シヌクレイン免疫反応性沈着物は、non-tgマウスの注入側の同側軸索および非注入側の反対側軸索の両方に沿って観察でき(
図13A;黒色矢印は、海馬間軸索を示す)、このことは、反対側海馬へのα-シヌクレイン拡散が、原則として軸索に沿って生じ得ることを示唆する(経軸索拡散)。9E4抗体またはNIP228アイソタイプ対照マウスIgG1のいずれかを用いて受動免疫化されたnon-tgマウスでの軸索上のα-シヌクレイン沈着物の同側および反対側レベルは、顕著には異ならず(
図13A、B、C;NIP228と比較した9E4)、このことは、本発明者らの実験条件下では、9E4は軸索上のα-シヌクレイン沈着物のレベルに影響を与えず、かつ、このレンチウイルスα-シヌクレイノパチー拡散モデルでは軸索に沿ったα-シヌクレインの播種を減少させないことを示した。
【0235】
対照的に、aslo0452-ngl-3抗体またはaslo0452-ngl-3の無エフェクター型突然変異型(aslo0452-ngl-3-D265A)のいずれかを用いて受動免疫化されたnon-tgマウスでの軸索上のα-シヌクレイン沈着物の同側および反対側両方でのレベルは、NIP228アイソタイプ対照マウスIgG1を用いて処置されたnon-tgマウスでの軸索上のα-シヌクレイン沈着物レベルよりも顕著に低く(
図13A、B、C;NIP228と比較したaslo0452-ngl-3およびaslo0452-ngl-3-D265A)、このことは、aslo0452-ngl-3またはaslo0452-ngl-3の無エフェクター型D265A突然変異型のいずれかを用いるマウスの受動免疫化が、軸索上のα-シヌクレイン沈着物を消失させ、かつこのレンチウイルスα-シヌクレイノパチーマウスモデルでの軸索に沿ったα-シヌクレインの同側から反対側への移動を確実に阻止することを示している。
【0236】
LV-α-synベクターをα-syn tgマウスの右側海馬に注入した場合、非常に類似する結果が得られ;aslo0452-ngl-3またはaslo0452-ngl-3-D265Aを用いる受動免疫化は、NIP228処置α-syn tgマウスと比較して、軸索に沿ったα-シヌクレイン免疫反応性の同側および反対側両方でのレベルを確実かつ統計学的に有意に低下させたが、9E4では低下させなかった(
図16A、B、C)。
【0237】
LV-α-syn注入non-tgマウスでは、より高倍率で、強いα-シヌクレイン免疫反応性が同側海馬の神経網中で検出され、より低い程度で、同側新皮質の神経網中で検出された(
図14A)。加えて、強いα-シヌクレイン沈着が、同側海馬のCA1領域中の特定可能な神経細胞の細胞体(soma)のうちの多数で検出され、より弱いα-シヌクレイン免疫反応性が、同側新皮質の第5層ニューロンで検出された(
図14;黒色矢印)。9E4抗体を用いる処置は、NIP228アイソタイプ対照マウスIgGを用いて免疫化されたnon-tgマウスと比較した場合に、α-シヌクレイン沈着物を含有する同側CA1海馬ニューロンまたは同側第5層新皮質ニューロンの数を著明に変化させなかったが(
図14A、B、C;NIP228と比較した9E4)、aslo0452-ngl-3抗体またはaslo0452-ngl-3の無エフェクター型突然変異型(aslo0452-ngl-3-D265A)のいずれかを用いて処置されたnon-tgマウスは、NIP228アイソタイプ対照マウスIgG処置non-tgマウスと比較して、α-シヌクレイン沈着物を含有する、著明に低下した数の同側CA1ニューロンおよび同側第5層ニューロンを有していた(
図14A、B、C;NIP228と比較したaslo0452-ngl-3およびaslo0452-ngl-3-D265A)。
【0238】
また、神経網中ならびに海馬の同側CA1領域および新皮質の同側第5層領域のニューロン中のα-シヌクレイン免疫反応性の強さは、NIP228アイソタイプ対照マウスIgG処置non-tgマウスと比較して、aslo0452-ngl-3処置およびaslo0452-ngl-3-D265A処置non-tgマウスでは著しく低下した(
図14A;NIP228と比較したaslo0452-ngl-3およびaslo0452-ngl-3-D265A)。
【0239】
LV-α-synベクターをα-syn tgマウスの右側海馬に注入した場合、同様の結果が得られ;aslo0452-ngl-3またはaslo0452-ngl-3-D265Aを用いる処置は、NIP228処置α-syn tgマウスと比較して、同側CA1海馬領域および第5層新皮質領域、ならびに反対側CA1海馬領域での強いα-シヌクレイン免疫反応性を含むニューロン数の統計学的に有意な低下をもたらしたが、9E4では低下させなかった(
図17A、B、C、D)。
【0240】
高親和性抗α-シヌクレインマウスIgG1抗体aslo0452-ngl-3を用いる、片側の海馬にヒトα-シヌクレインの発現を駆動するレンチウイルスベクターをいずれも定位固定注入されたnon-tg野生型マウスまたはα-syn tgマウスのいずれかの受動免疫化は、α-シヌクレイン伝搬のこのマウスモデルで観察されるレンチウイルス発現α-シヌクレインの同側から反対側への経軸索拡散を確実に減少させることが実証された。この新規に開示された、抗α-シヌクレイン抗体のα-シヌクレインin vivo拡散を阻害する特性は、試験したモデルでの拡散を阻害しない抗体(例えば、9E4抗体)と比較して、ヒトα-シヌクレインの異なるエピトープへの結合性を示すものである。
【0241】
さらに、aslo0452-ngl-3の無エフェクター型D265A突然変異型が、該モデルのα-シヌクレイン拡散の減少に関してaslo0452-ngl-3と等しく効果的であることを示すデータは、α-シヌクレイン拡散の抗体を介した防止が、主要な作用機序としてFc関連エフェクター機能を必要としないことを示し、特に、α-シヌクレイン拡散の抗体媒介阻止において、ミクログリア上に存在するFc受容体(FcγRIIBおよびFcγRIII)に対する必要性または役割はないと思われることを示す。
【0242】
まとめると、α-シヌクレインを標的とする本発明の抗体、ならびにその抗原結合性断片は、レシピエント細胞へのα-シヌクレインの病理的取り込みを阻止または遅延させること、ならびに解剖学的に連結した脳領域間でのα-シヌクレイン病変の播種および伝達を妨げることにより、PDまたはDLBまたはMSAでの疾患を変化させる因子となる能力を有する。これにより、α-シヌクレインを標的とする抗体は、疾患進行を治療または予防することができ、かつPD、DLBまたはMSAなどのシヌクレイノパチーを有する患者に対する治療的利益となり得る。
【0243】
実施例13:0452 ngl-3-BBBt0626gl二重特異性抗体の作製
aslo0452 ngl-3の重鎖のN末端(Bis2形式)またはC末端(Bis3形式)にグラフトされたBBBt0626glの単鎖断片(scFv)と結合したヒトIgG1 TM骨格を含む本発明の例示的二重特異性抗体を、以下に記載する通りに作製した。
【0244】
Bis2形式の本発明の二重特異性抗体は、それぞれ、Bbbt0626glscFvまたはBbbt0626wtの上流およびaslo0452 ngl-3 VHの下流に、BssHIIおよびBstEII隣接エンドヌクレアーゼ制限部位を含んだ、Bbbt0626glscFv-(G4S)x2-aslo0452 ngl-3 VHまたはBbbt0626wt-(G4S)x2-aslo452 ngl-3 VHをコードするDNA断片を合成的に生成させることにより作製した。続いて、消化されたDNA断片を、hIgG1TMベクター骨格へと指向性クローニングした。
【0245】
Bis3形式の本発明の二重特異性抗体は、PCR増幅、およびそれに続く制限エンドヌクレアーゼ部位(SfiIおよびXbaI)を用いる指向性クローニングにより作製した。2種類のPCR断片を生成させた:(1) SfiI制限部位からCH3ドメインのC末端までのhIgG1TM -CH3ドメインを増幅し、(2) Bbbt0626gl scFvのC末端およびXbaI制限部位を越えるすぐ下流のベクター配列を増幅するオリゴと共に、CH3-(G4S)x3リンカー(配列番号57)のC末端およびBbbt0626glのN末端を組み込むフォワードPCRオリゴを含む、重複するPCR断片。貫通PCR反応(pull-through PCR reaction)で両方のPCR断片をつなぎ合わせ、続いて、SfiIおよびXbaI制限エンドヌクレアーゼ部位を介してpEU1_4(ヒトIgG1TMベクター)へと指向性クローニングした。
【0246】
これらの二重特異性抗体を、CHOベースの発現系で発現させ、生じた抗体をプロテインAカラム精製を介して精製した。すべてのBbbt0626由来二重特異性抗体を、マウス脳内皮細胞株(b.end3)に対するin vitro結合性について試験して、BBBトランスポーター部分の結合活性を確認し、また、HTRFベースのエピトープ競合アッセイでalso0452 ngl-3の結合性の競合についても試験して、aslo0452 ngl-3エピトープに対する結合性を確認した。
本発明は、以下を提供する。
1. 500pM未満のKDでヒトα-シヌクレインに結合し、ヒトα-シヌクレインのC末端領域内のアミノ酸102付近からアミノ酸130付近の間に含まれる領域に特異的に結合し、かつin vivoでα-シヌクレイン拡散を減少させる、抗体またはその抗原結合性断片。
2. ヒトα-シヌクレインに結合するが、ヒトβ-シヌクレインまたはヒトγ-シヌクレインに結合しない、上記1に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
3. ヒト、ラットおよびカニクイザルα-シヌクレインに結合する、上記1または2に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
4. 天然の内因性ヒトα-シヌクレインに結合する、上記1~3のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
5. ヒトα-シヌクレインの凝集体に結合する、上記1~4のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
6. α-シヌクレインの疾患関連病変形態に結合する、上記1~5のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
7. 脳間質液および/または脳脊髄液中の、α-シヌクレインレベル、特に遊離未結合型α-シヌクレインを減少させる、上記1~6のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
8. (i) 配列番号5のH-CDR1、
(ii) 配列番号6のH-CDR2、
(iii) 配列番号7のH-CDR3、
(iv) 配列番号9のL-CDR1、
(v) 配列番号10のL-CDR2、
(vi) 配列番号11のL-CDR3
から選択される少なくとも1種のCDRを有する、上記1~7のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
9. (a) 抗体またはその抗原結合性断片の重鎖のCDR3が抗体aslo0452 ngl-3の重鎖の配列番号16のCDR3であり;かつ/または
(b) 抗体またはその抗原結合性断片の軽鎖のCDR3が抗体aslo0452 ngl-3の軽鎖の配列番号21のCDR3である、
上記8に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
10. (a) 以下の配列を有する3つの重鎖CDR:
(i) 配列番号5のH-CDR1、
(ii) 配列番号15のH-CDR2;および
(iii) 配列番号16のH-CDR3、ならびに
(b) 以下の配列を有する3つの軽鎖CDR:
(i) 配列番号20のL-CDR1、
(ii) 配列番号10のL-CDR2;および
(iii) 配列番号21のL-CDR3
を含む、上記1~9のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
11. 配列番号14により規定される配列に対して少なくとも90%の同一性を有する可変重鎖、および配列番号19により規定される配列に対して少なくとも90%の同一性を有する可変軽鎖を含む、上記10に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
12. 配列番号14により規定される配列を有する可変重鎖、および配列番号19により規定される配列を有する可変軽鎖を含む、上記11に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
13. (a) 以下の配列を有する3つの重鎖CDR:
(i) 配列番号25のH-CDR1、
(ii) 配列番号26のH-CDR2;および
(iii) 配列番号27のH-CDR3、ならびに
(b) 以下の配列を有する3つの軽鎖CDR:
(i) 配列番号31のL-CDR1、
(ii) 配列番号32のL-CDR2;および
(iii) 配列番号33のL-CDR3
を含む、上記11に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
14. IgA、IgD、IgE、IgM、IgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4抗体またはその抗原結合性断片である、上記1~13のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
15. IgG1 TM抗体またはその抗原結合性断片である、上記1~14のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
16. ヒトα-シヌクレインに対する結合性に関して、抗体aslo0452 ngl-3と競合する、上記1~15のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
17. 抗体aslo0452 ngl-3と同じヒトα-シヌクレイン上のエピトープに結合する、上記1~16のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
18. 血液脳関門(BBB)を通過する送達のためのトランスポーター分子と会合している、上記1~17のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
19. 前記トランスポーター分子が:
a. BBBt0626glもしくはその血液脳関門透過可能断片を含む免疫グロブリン由来ポリペプチド、または
b. BBBt0626もしくはその血液脳関門透過可能断片、または
c. BBBt0632glもしくはその血液脳関門透過可能断片
である、上記18に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
20. 前記トランスポーター分子が以下を含む単鎖断片(scFv)である、上記19に記載の抗体またはその抗原結合性断片:
(i) 配列番号39のBBBt0626glの重鎖可変領域(VH)および配列番号43のBBBt0626glの軽鎖可変領域(VL)、または
(ii) 配列番号47のBBBt0626の重鎖可変領域(VH)および配列番号43のBBBt0626の軽鎖可変領域(VL)、または
(iii) 配列番号48のBBBt0632glの重鎖可変領域(VH)および配列番号52のBBBt0632glの軽鎖可変領域(VL)。
21. ヒトα-シヌクレインに結合する抗体またはその抗原結合性断片であって、
(a) 以下の配列を有する3つの重鎖CDR:
(i) 配列番号5のH-CDR1、
(ii) 配列番号15のH-CDR2;および
(iii) 配列番号16のH-CDR3、ならびに
(b) 以下の配列を有する3つの軽鎖CDR:
(i) 配列番号20のL-CDR1、
(ii) 配列番号10のL-CDR2;および
(iii) 配列番号21のL-CDR3
を含む、上記抗体またはその抗原結合性断片。
22. 500pM未満のKDでヒトα-シヌクレインに結合する、上記21に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
23. in vivoでα-シヌクレイン拡散を減少させる、上記21または22に記載の抗体またはその抗原結合性断片。
24. ヒトα-シヌクレインに結合するが、ヒトβ-シヌクレインまたはヒトγ-シヌクレインに結合しない、上記21~23のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
25. ヒト、ラットおよびカニクイザルα-シヌクレインに結合する、上記21~24のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
26. 天然の内因性ヒトα-シヌクレインに結合する、上記21~25のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
27. ヒトα-シヌクレインの凝集体に結合する、上記21~26のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
28. α-シヌクレインの疾患関連病変形態に結合する、上記21~27のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
29. 脳間質液および/または脳脊髄液中の、α-シヌクレインレベル、特に遊離未結合型α-シヌクレインを減少させる、上記21~28のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
30. 配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む、上記21~29のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
31. 配列番号14のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む、上記21~30のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
32. 配列番号14のアミノ酸配列を含む可変重鎖を含む、上記21~31のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
33. 配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む、上記21~32のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
34. 配列番号19のアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む、上記21~33のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
35. 配列番号19のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含む、上記21~34のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
36. 抗体である、上記1~35のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
37. Fc領域中にL234F/L235E/P331S三重突然変異を含む、上記1~36のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
38. 配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖を含む、上記21~29のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
39. 配列番号12のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、上記21~29のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
40. 配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、上記21~29または38~39のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
41. 配列番号17のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、上記21~29または38~39のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
42. 医薬としての使用のための、上記1~41のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
43. α-シヌクレイノパチーの予防または治療での使用のための、上記1~42のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片。
44. α-シヌクレイノパチーが、パーキンソン病(PD)、レビー小体認知症(DLB)、および多系統萎縮症(MSA)から選択される、上記43に記載の使用のための抗体またはその抗原結合性断片。
45. α-シヌクレイノパチーがパーキンソン病(PD)である、上記44に記載の使用のための抗体またはその抗原結合性断片。
46. 上記1~41のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片を患者に投与するステップを含む、患者での中枢神経系(CNS)の疾患を治療または予防する方法。
47. 前記疾患がα-シヌクレイノパチーである、上記46に記載の方法。
48. α-シヌクレイノパチーが、パーキンソン病(PD)、レビー小体認知症(DLB)、および多系統萎縮症(MSA)から選択される、上記47に記載の方法。
49. α-シヌクレイノパチーがパーキンソン病(PD)である、上記48に記載の方法。
50. 上記1~41のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片、および製薬上許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
51. 上記1~41のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合性断片をコードする、単離された核酸分子。
52. 配列番号13のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む、上記51に記載の単離された核酸分子。
53. 配列番号18のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列を含む、上記51に記載の単離された核酸分子。
54. 上記51~53のいずれかに記載の核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞。
【配列表】