(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】蓄電モジュール、蓄電装置、及び蓄電モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/28 20060101AFI20220526BHJP
H01G 11/80 20130101ALI20220526BHJP
H01G 11/18 20130101ALI20220526BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20220526BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20220526BHJP
H01M 50/102 20210101ALI20220526BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20220526BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20220526BHJP
H01M 50/505 20210101ALI20220526BHJP
H01M 50/197 20210101ALI20220526BHJP
H01M 50/186 20210101ALI20220526BHJP
H01M 50/503 20210101ALI20220526BHJP
H01M 50/548 20210101ALI20220526BHJP
H01M 50/193 20210101ALI20220526BHJP
【FI】
H01M10/28 Z
H01G11/80
H01G11/18
H01G11/78
H01G11/84
H01M50/102
H01M50/103
H01M50/184 Z
H01M50/184 A
H01M50/505
H01M50/197
H01M50/186
H01M50/503
H01M50/548 101
H01M50/193
(21)【出願番号】P 2018155570
(22)【出願日】2018-08-22
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】竹中 泰亮
(72)【発明者】
【氏名】中村 知広
(72)【発明者】
【氏名】弘瀬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】菊池 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】奥村 素宜
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 伸烈
(72)【発明者】
【氏名】寺島 大樹
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-030951(JP,A)
【文献】特開2020-030949(JP,A)
【文献】特開2018-049793(JP,A)
【文献】国際公開第2018/116729(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04-39
H01M 50/10-198
H01M 50/50-598
H01G 11/00-86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に正極層が形成され、他方の面に負極層が形成された電極板からなるバイポーラ電極がセパレータを介して一方向に積層されたバイポーラ電極群と、前記一方向において前記バイポーラ電極群の他端にセパレータを介して配置され、前記バイポーラ電極群と対向する面に負極層が形成された電極板からなる終端電極と、を含んで構成された積層体と、
前記終端電極に電気的に接触するように配置される導電板と、
前記積層体の側面を囲むように設けられ、隣り合う電極間に内部空間を形成すると共に当該内部空間を封止する封止体と、
前記内部空間の一部に収容されたアルカリ溶液を含む電解液と、を備え、
前記封止体は、
複数の前記バイポーラ電極及び前記終端電極のそれぞれの電極板の周縁に設けられる、複数の枠状の第1封止部と、
前記一方向に積層された複数の前記第1封止部の周縁を一体的に取り囲む第2封止部と、を有し、
前記第1封止部と前記終端電極の電極板と前記導電板とによって囲まれる余剰空間の湿度は、
アルカリクリープ現象の進行を抑制できるような所定値以下
の湿度であり、
前記終端電極に設けられる前記第1封止部と前記導電板との間にはシール処理部が配置されている、蓄電モジュール。
【請求項2】
前記余剰空間は、前記シール処理部によって密閉された空間であり、前記封止体の外部の大気よりも低い前記所定値以下の湿度となるように除湿されている、請求項1記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記導電板は、前記一方向に直交する方向に延在する複数の孔部を有する、請求項1
又は2記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記シール処理部は、前記導電板の周縁に沿って枠状に形成されている、請求項1
~3の何れか一項記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
前記シール処理部は、ゴム又は接着剤により形成されている、請求項1~
4の何れか一項記載の蓄電モジュール。
【請求項6】
前記シール処理部は、アルカリ耐性を有している、請求項1~
5の何れか一項記載の蓄電モジュール。
【請求項7】
請求項1~
6の何れか一項記載の複数の蓄電モジュールが、前記一方向に積層されている、蓄電装置。
【請求項8】
一方の面に正極層が形成され、他方の面に負極層が形成された電極板からなるバイポーラ電極がセパレータを介して一方向に積層されたバイポーラ電極群と、前記一方向において前記バイポーラ電極群の他端にセパレータを介して配置され、前記バイポーラ電極群と対向する面に負極層が形成された電極板からなる終端電極と、を含んで構成された積層体と、
前記終端電極に電気的に接触するように配置される導電板と、
前記積層体の側面を囲むように設けられ、隣り合う電極間に内部空間を形成すると共に当該内部空間を封止する封止体と、
前記内部空間の一部に収容されたアルカリ溶液を含む電解液と、を備え、
前記封止体は、
複数の前記バイポーラ電極及び前記終端電極のそれぞれの電極板の周縁に設けられる、複数の枠状の第1封止部と、
前記一方向に積層された複数の前記第1封止部の周縁を一体的に取り囲む第2封止部と、を有する、蓄電モジュールの製造方法であって、
前記終端電極に設けられる前記第1封止部に前記導電板を固着すると共に前記第1封止部と前記導電板との間にシール処理を施す工程を、
アルカリクリープ現象の進行を抑制できるような所定値以下の湿度環境下で実行する、蓄電モジュールの製造方法。
【請求項9】
前記シール処理を施す工程を、ドライルームにおいて前記ドライルームの外部の大気よりも低い前記所定値以下の湿度環境下で実行する、請求項8記載の蓄電モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュール、蓄電装置、及び蓄電モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電モジュールとして、電極板の一方の面に正極が形成され、他方の面に負極が形成されたバイポーラ電極を備えるバイポーラ電池が知られている(特許文献1参照)。バイポーラ電池は、セパレータを介して複数のバイポーラ電極を積層してなる積層体を備えている。積層体の側面には、積層方向に隣り合うバイポーラ電極間を封止する封止体が設けられており、バイポーラ電極間に形成された内部空間に電解液が収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような蓄電モジュールでは、積層体における積層方向の一端に、負極終端電極が配置されている。負極終端電極は、電極板の片面に負極のみが設けられ、負極が積層方向の中央側を向くように積層方向の一端に配置されている。この負極終端電極の電極板の縁部も他のバイポーラ電極と同様に封止体によって封止されている。しかしながら、電解液がアルカリ溶液からなる場合、いわゆるアルカリクリープ現象により、電解液が負極終端電極の電極板の表面を伝わり、封止体と当該電極板との間を通って当該電極板の外面側に滲み出てしまうことが生じ得る。電解液が外面側に漏れ出て拡散すると、例えば負極終端電極に隣接して配置された導電板の腐食や、負極終端電極と拘束部材との短絡等が生じるおそれがあり、信頼性を低下させる要因となり得る。
【0005】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、アルカリクリープ現象による電解液の滲み出しを抑制できる蓄電モジュール、蓄電装置、及び蓄電モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る蓄電モジュールは、一方の面に正極層が形成され、他方の面に負極層が形成された電極板からなるバイポーラ電極がセパレータを介して一方向に積層されたバイポーラ電極群と、一方向においてバイポーラ電極群の他端にセパレータを介して配置され、バイポーラ電極群と対向する面に負極層が形成された電極板からなる終端電極と、を含んで構成された積層体と、終端電極に電気的に接触するように配置される導電板と、積層体の側面を囲むように設けられ、隣り合う電極間に内部空間を形成すると共に当該内部空間を封止する封止体と、内部空間の一部に収容されたアルカリ溶液を含む電解液と、を備え、封止体は、複数のバイポーラ電極及び終端電極のそれぞれの電極板の周縁に設けられる、複数の枠状の第1封止部と、一方向に積層された複数の第1封止部の周縁を一体的に取り囲む第2封止部と、を有し、第1封止部と終端電極の電極板と導電板とによって囲まれる余剰空間の湿度は、所定値以下であり、終端電極に設けられる第1封止部と導電板との間にはシール処理部が配置されている。
【0007】
アルカリクリープ現象は、負極電位、水分、及び電解液の通り道がそれぞれ存在することにより生じ、時間の経過とともに進行する。この蓄電モジュールでは、封止体と負極終端電極の電極板と導電板とによって囲まれた余剰空間が予め所定の湿度以下となるように除湿(調整)されている。これにより、第1封止部と電極板との間の電解液の通り道が、水分の多い空間に曝されることがなくなるので、アルカリクリープ現象の進行を抑制できる。また、この蓄電モジュールでは、終端電極に設けられる第1封止部と導電板との間にはシール処理部が配置されているので、当該余剰空間の湿度が高くなることが抑制される。これにより、内部空間から負極終端電極の外部に向かうアルカリクリープ現象の進行経路を余剰空間において遮断できる。したがって、この蓄電モジュールでは、アルカリクリープ現象による電解液の滲み出しを抑制できる。
【0008】
本発明に係る蓄電モジュールでは、導電板は、一方向に直交する方向に延在する複数の孔部を有していてもよい。この構成では、導電板の放熱性能がより一層向上する。
【0009】
本発明に係る蓄電モジュールでは、シール処理部は、導電板の周縁に沿って枠状に形成されていてもよい。この構成では、第1封止部と導電板との間から水分が侵入することをより確実に防止できる。この結果、上記余剰空間の湿度が高くなることを防止できる。
【0010】
本発明に係る蓄電モジュールでは、シール処理部は、ゴム又は接着剤により形成されていてもよい。この構成では、第1封止部と導電板との間を簡易にシール処理することができる。
【0011】
本発明に係る蓄電モジュールでは、シール処理部は、アルカリ耐性を有していてもよい。この構成では、何らかの要因で電解液が余剰空間に漏れ出たとしても、シール処理部が破壊されることを抑制できる。
【0012】
本発明に係る蓄電装置は、上記の複数の蓄電モジュールが、一方向に積層されていてもよい。この蓄電装置では、蓄電モジュールにおける電解液の滲み出しを抑制できる。
【0013】
本発明に係る蓄電モジュールの製造方法は、一方の面に正極層が形成され、他方の面に負極層が形成された電極板からなるバイポーラ電極がセパレータを介して一方向に積層されたバイポーラ電極群と、一方向においてバイポーラ電極群の他端にセパレータを介して配置され、バイポーラ電極群と対向する面に負極層が形成された電極板からなる終端電極と、を含んで構成された積層体と、終端電極に電気的に接触するように配置される導電板と、積層体の側面を囲むように設けられ、隣り合う電極間に内部空間を形成すると共に当該内部空間を封止する封止体と、内部空間の一部に収容されたアルカリ溶液を含む電解液と、を備え、封止体は、複数のバイポーラ電極及び終端電極のそれぞれの電極板の周縁に設けられる、複数の枠状の第1封止部と、一方向に積層された複数の第1封止部の周縁を一体的に取り囲む第2封止部と、を有する、蓄電モジュールの製造方法であって、終端電極に設けられる第1封止部に導電板を固着すると共に第1封止部と導電板との間にシール処理を施す工程を、所定の湿度環境下において実行する。
【0014】
この蓄電モジュールの製造方法によって形成される、封止体と負極終端電極の電極板と導電板とによって囲まれた余剰空間は、所定の湿度以下となるように除湿(調整)される。これにより、アルカリクリープ現象の進行を抑制できる。更に、終端電極に設けられる第1封止部と導電板との間にはシール処理部が配置されるので、当該余剰空間に水分が侵入するおそれがない。これにより、内部空間から負極終端電極の外部に向かうアルカリクリープ現象の進行経路を余剰空間において遮断できる。したがって、この蓄電モジュールの製造方法によって形成される蓄電モジュールでは、アルカリクリープ現象による電解液の滲み出しを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アルカリクリープ現象による電解液の滲み出しを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係る蓄電モジュールを備えて構成される蓄電装置を示す概略断面図である。
【
図2】
図1に示した蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
【
図3】
図1に示される蓄電モジュールを示す斜視図である。
【
図4】
図1に示した蓄電モジュールの作用効果を示す説明図である。
【
図5】変形例に係る蓄電モジュールを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら一実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0018】
図1に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、積層された複数の蓄電モジュール4を含むモジュール積層体2と、モジュール積層体2に対してモジュール積層体2の積層方向(一方向)D(
図2参照)に拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えている。
【0019】
モジュール積層体2は、複数(ここでは3つ)の蓄電モジュール4と、複数(ここでは4つ)の導電板5とを含む。蓄電モジュール4は、バイポーラ電池であり、積層方向Dから見て矩形状をなしている。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0020】
積層方向Dに互いに隣り合う蓄電モジュール4同士は、導電板5を介して電気的に接続されている。導電板5は、積層方向Dに互いに隣り合う蓄電モジュール4間と、積層端に位置する蓄電モジュール4の外側とにそれぞれ配置されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された一方の導電板5には、正極端子6が接続されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された他方の導電板5には、負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板5の縁部から積層方向Dに交差する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0021】
図1の例では、積層方向Dから見た導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さくなっているが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくなっていてもよい。導電板5は、負極終端電極(終端電極)18及び正極終端電極19のそれぞれに、電気的に接続される。本実施形態の導電板5は、負極終端電極18及び正極終端電極19のそれぞれに、接触配置されている。なお、負極終端電極18に接触配置される導電板5については、後段において更に詳述する。
【0022】
拘束部材3は、モジュール積層体2を積層方向Dに挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10とによって構成されている。エンドプレート8は、積層方向Dから見た蓄電モジュール4及び導電板5の面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。エンドプレート8におけるモジュール積層体2側の面には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられている。フィルムFにより、エンドプレート8と導電板5との間が絶縁されている。
【0023】
エンドプレート8の縁部には、モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電板5がエンドプレート8によって挟持されてモジュール積層体2としてユニット化されると共に、モジュール積層体2に対して積層方向Dに拘束荷重が付加される。
【0024】
次に、蓄電モジュール4の構成について詳細に説明する。
図2に示されるように、蓄電モジュール4は、電極積層体(積層体)11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12とを備えている。電極積層体11は、セパレータ13を介して蓄電モジュール4の積層方向Dに沿って積層された複数の電極によって構成されている。これらの電極は、複数のバイポーラ電極14の積層体(バイポーラ電極群)と、負極終端電極18と、正極終端電極19とを含む。
【0025】
バイポーラ電極14は、一方の面15a及び一方の面15aの反対側の他方の面15bを含む電極板15と、一方の面15aに設けられた正極層16と、他方の面15bに設けられた負極層17とを有している。正極層16は、正極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される正極活物質層である。負極層17は、負極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される負極活物質層である。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極層16は、セパレータ13を挟んで積層方向Dの一方に隣り合う別のバイポーラ電極14の負極層17と対向している。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極層17は、セパレータ13を挟んで積層方向Dの他方に隣り合う別のバイポーラ電極14の正極層16と対向している。
【0026】
負極終端電極18は、電極板15と、電極板15の他方の面15bに設けられた負極層17とを有している。負極終端電極18は、他方の面15bが電極積層体11における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dの一端に配置されている。負極終端電極18の電極板15の他方の面15bに設けられた負極層17は、セパレータ13を介して、積層方向Dの一端のバイポーラ電極14の正極層16と対向している。
【0027】
正極終端電極19は、電極板15と、電極板15の一方の面15aに設けられた正極層16とを有している。正極終端電極19は、一方の面15aが電極積層体11における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dの他端に配置されている。正極終端電極19の一方の面15aに設けられた正極層16は、セパレータ13を介して、積層方向Dの他端のバイポーラ電極14の負極層17と対向している。正極終端電極19の電極板15の他方の面15bは、電極積層体11の積層方向Dにおける他方の外側面を構成し、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電板5(
図1参照)と電気的に接続されている。
【0028】
電極板15は、例えば、ニッケル又はニッケルメッキ鋼板といった金属からなる。一例として、電極板15は、ニッケルからなる矩形の金属箔である。電極板15の縁部15cは、矩形枠状をなし、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。正極層16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極層17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。本実施形態では、電極板15の他方の面15bにおける負極層17の形成領域は、電極板15の一方の面15aにおける正極層16の形成領域に対して一回り大きくなっている。
【0029】
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13は、電極板15,15間の短絡を防止する部材である。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。なお、セパレータ13は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
【0030】
封止体12は、例えば絶縁性の樹脂によって、全体として矩形の筒状に形成されている。封止体12は、電極板15の縁部15cを包囲するように電極積層体11の側面11aに設けられている。封止体12は、側面11aにおいて縁部15cを保持している。封止体12は、電極板15の縁部15cに結合された複数の第1封止部21と、側面11aに沿って第1封止部21を外側から包囲し、第1封止部21のそれぞれに結合された第2封止部22とを有している。第1封止部21及び第2封止部22は、例えば、耐アルカリ性を有する絶縁性の樹脂である。第1封止部21及び第2封止部22の構成材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等が挙げられる。
【0031】
第1封止部21は、電極板15の一方の面15aにおいて縁部15cの全周にわたって連続的に設けられ、積層方向Dから見て矩形環状をなしている。第1封止部21は、例えば超音波又は熱によって電極板15の一方の面15aに溶着され、気密に接合されている。第1封止部21は、例えば積層方向Dに所定の厚さを有するフィルムである。第1封止部21の内側は、積層方向Dに互いに隣り合う電極板15の縁部15c同士の間に位置している。第1封止部21の外側は、電極板15の縁よりも外側に張り出しており、その先端部分は、第2封止部22に埋設されている。積層方向Dに沿って互いに隣り合う第1封止部21同士は、互いに離間していてもよく、接していてもよい。
【0032】
電極板15の一方の面15aにおける縁部15cと第1封止部21とが重なる領域は、電極板15と第1封止部21との結合領域となっている。結合領域において、電極板15の表面は、粗面化されている。粗面化された領域は、結合領域のみでもよいが、本実施形態では電極板15の一方の面15aの全体が粗面化されている。粗面化は、例えば電解メッキによる複数の突起の形成により実現し得る。一方の面15aに複数の突起が形成されることにより、一方の面15aにおける第1封止部21との接合界面では、溶融状態の樹脂が粗面化により形成された複数の突起間に入り込み、アンカー効果が発揮される。これにより、電極板15と第1封止部21との間の結合強度を向上させることができる。粗面化の際に形成される突起は、例えば基端側から先端側に向かって先太りとなる形状を有している。これにより、隣り合う突起の間の断面形状がアンダーカット形状となり、アンカー効果を高めることが可能となる。
【0033】
第2封止部22は、電極積層体11及び第1封止部21の外側に設けられ、蓄電モジュール4の外壁(筐体)を構成している。第2封止部22は、例えば樹脂の射出成型によって形成され、積層方向Dに沿って電極積層体11の全長にわたって延在している。第2封止部22は、積層方向Dを軸方向として延在する矩形の筒状(環状)を呈している。第2封止部22は、例えば射出成型時の熱によって第1封止部21の外表面に溶着されている。
【0034】
第1封止部21及び第2封止部22は、隣り合う電極の間に内部空間Vを形成すると共に内部空間Vを封止する。より具体的には、第2封止部22は、第1封止部21と共に、積層方向Dに沿って互いに隣り合うバイポーラ電極14の間、積層方向Dに沿って互いに隣り合う負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び積層方向Dに沿って互いに隣り合う正極終端電極19とバイポーラ電極14との間をそれぞれ封止している。これにより、隣り合うバイポーラ電極14の間、負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び正極終端電極19とバイポーラ電極14との間には、それぞれ気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。この内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液を含む電解液(不図示)が収容されている。電解液は、セパレータ13、正極層16、及び負極層17内に含浸されている。
【0035】
図2及び
図3に示されるように、封止体12の外側面を形成する第2封止部22は、第1封止部21の側面を覆う側面部22aと、積層方向Dから見た平面視において側面部22aから内側に向かって張り出す張出部22bと、を有している。封止体12を構成する一の側面12sには、圧力調整弁60が取り付けられる複数(ここでは四つ)の圧力調整弁取付領域12aが設けられている。第1封止部21の各圧力調整弁取付領域12aには、複数の連通孔(不図示)が設けられている。この連通孔は、蓄電モジュール4の各セルの内部空間Vに連通している。また、第2封止部22にも圧力調整弁取付領域12aが設けられている。このため第2封止部22には、上記連通孔につながる複数の孔が設けられている。
【0036】
圧力調整弁60は、内部空間Vの内圧に応じて開閉して圧力を調整する(例えば内圧が所定値を超えたときに開き、ガスを抜く)機能を有する部材である。圧力調整弁60は、圧力調整弁取付領域12aに取り付けられている。圧力調整弁取付領域12aに設けられる孔及び連通孔は、内部空間Vへ電解液を注入するための注液口(電解液注入口)として用いることもできる。
【0037】
負極終端電極18に接触配置される導電板5について詳述する。導電板5は、負極終端電極18の電極板15に設けられる第1封止部21に固着されている。負極終端電極18の電極板15に設けられる第1封止部21と導電板5との間には、導電板5の周縁に沿って枠状に形成されるシール処理部Bが設けられている。シール処理部Bの例は、接着剤である。すなわち、導電板5が接着剤によって第1封止部21に固着されることにより、導電板5と第1封止部21との固着部分がシール処理部Bとなる。接着剤の例には、オレフィン系ホットメルト接着剤が含まれる。第1封止部21が金属との接着機能を有する場合、第1封止部21をそのまま接着剤として導電板5に熱溶着してよい。接着剤は、アルカリ耐性を有していることが好ましい。
【0038】
シール処理部Bの別例は、ゴム部材である。ゴム部材も、接着剤と同様に、導電板5の周縁に沿って枠状に配置される。ゴム部材の材料の例には、NBR(ニトリルゴム)、FKM(フッ素ゴム)、及びEPDM(エチレンプロピレンゴム)が含まれる。ゴム部材も接着剤と同様に、アルカリ耐性を有していることが好ましい。シール処理部Bとしてゴム部材を用いる場合には、ゴム部材を圧縮率3~20%で圧着することでゴム接触面の気密をとる。
【0039】
蓄電モジュール4には、第1封止部21と負極終端電極18の電極板15と導電板5とによって囲まれる余剰空間Sが形成されている。余剰空間Sの湿度は、例えば、アルカリクリープ現象の進行を抑制できるような所定値以下の湿度(封止体12の外部の大気よりも低い湿度)に調整されている。蓄電モジュール4の外部から余剰空間Sへの通路となり得る、導電板5と第1封止部21との固着部分は、シール処理がなされているいので、余剰空間Sの密閉性が維持されている。したがって、余剰空間Sの湿度が高くなることはない。
【0040】
上記実施形態の蓄電モジュール4は、負極終端電極18に設けられる第1封止部21に導電板5を固着すると共に第1封止部21と導電板5との間にシール処理を施す工程が、所定の湿度環境下において実行される。具体的には、上記工程は、ドライルームの環境下で行われる。これにより、第1封止部21と負極終端電極18の電極板15と導電板5とによって囲まれる余剰空間Sの湿度を、アルカリクリープ現象の進行を抑制できるような所定値以下の湿度の空間とすることができる。第1封止部21と導電板5とを固着する工程は、第1封止部21の周面に第2封止部22を固着する前であっても固着した後であってもよい。
【0041】
次に、上記実施形態の蓄電モジュール4の作用効果について説明する。この蓄電モジュール4では、封止体12と負極終端電極18の電極板15と導電板5とによって囲まれた余剰空間Sが予め所定の湿度以下となるように除湿(調整)されている。これにより、
図4に示されるように、第1封止部21と電極板15との間の電解液の通り道Pが水分の多い空間に曝されることがなくなるので、アルカリクリープ現象の進行を抑制できる。また、この蓄電モジュール4では、負極終端電極18に設けられる第1封止部21と導電板5との間にはシール処理部Bが配置されているので、当該余剰空間Sの湿度が高くなることが抑制される。これにより、内部空間Vから負極終端電極18の外部に向かうアルカリクリープ現象の進行経路P1を余剰空間Sにおいて遮断できる。したがって、この蓄電モジュール4では、アルカリクリープ現象による電解液の滲み出しを抑制できる。
【0042】
上記実施形態の蓄電モジュール4では、シール処理部Bは、導電板5の周縁に沿って枠状に形成されている。これにより、第1封止部21と導電板5との間から水分が侵入することをより確実に防止できる。この結果、上記余剰空間Sの湿度が高くなることを防止できる。
【0043】
上記実施形態の蓄電モジュール4では、シール処理部Bは、ゴム又は接着剤により形成されるので、第1封止部21と導電板5との間を簡易にシール処理することができる。
【0044】
上記実施形態の蓄電モジュール4では、シール処理部Bは、アルカリ耐性を有しているので、何らかの要因で電解液が余剰空間Sに漏れ出たとしても、シール処理部Bが破壊されることを抑制できる。
【0045】
以上、一実施形態について詳細に説明されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0046】
上記実施形態は、板状部材によって形成されている導電板5を例に挙げて説明したが、例えば、
図5に示されるように、積層方向Dに直交する方向に延在する複数の流路(孔部)5aを有する導電板5を用いてもよい。すなわち、導電板5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられている。流路5aは、例えば積層方向Dと、正極端子6及び負極端子7の引き出し方向と、にそれぞれ交差(直交)する方向に沿って延在している。導電板5は、蓄電モジュール4同士を電気的に接続する接続部材としての機能のほか、これらの流路5aに冷媒を流通させることにより、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持っている。このような流路5aが形成された導電板5を備える蓄電モジュール4では、導電板5の放熱性能をより一層向上させることができる。
【0047】
上記実施形態及び変形例では、積層方向Dと直交する水平方向において、導電板5と張出部22bとの間に隙間を設ける例を挙げて説明したが、隙間を設けずに張出部22bを導電板5に接触させてもよい。この場合、張出部22bによって導電板5を一体的に固定するようにしてもよい。
【0048】
上記実施形態及び変形例では、正極終端電極19の電極板15の正極層16が塗工されていない面が第2封止部22によって封止されている例を挙げて説明したが、電極板15の正極層16が塗工されていない面にも矩形形状の第1封止部21が固着されていてもよい。この第1封止部21も第2封止部22によって他の第1封止部21と結合されてもよい。また、電極板15の正極層16が塗工されている面側に配置される第1封止部21の縁部と正極層16が塗工されてない面側に配置される第1封止部21の縁部とが、熱板溶着等で結合されていてもよい。
【0049】
また、上記実施形態及び変形例では、ニッケル水素電池の製造方法を挙げて説明したが、リチウムイオン二次電池の製造方法に適用してもよい。この場合、正極が形成された電極板と負極が形成された電極板とがセパレータ介して積層される積層体を含む構成であってもよい。正極活物質は、例えば複合酸化物、金属リチウム、硫黄等である。負極活物質は、例えば黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属、金属化合物、SiOx(0.5≦x≦1.5)等の金属酸化物、ホウ素添加炭素等である。電極板は、ステンレススチール箔等を用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1…蓄電装置、4…蓄電モジュール、5…導電板、5a…流路(孔部)、11…電極積層体(積層体)、12…封止体、13…セパレータ、14…バイポーラ電極、15…電極板、15a…電極板の一方の面、15b…電極板の他方の面、15c…縁部、16…正極層、17…負極層、18…負極終端電極(終端電極)、21…第1封止部、22…第2封止部、B…シール処理部、D…積層方向、S…余剰空間、V…内部空間。