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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-25
(45)【発行日】2022-06-02
(54)【発明の名称】有機光電子素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20220526BHJP
【FI】
H05B33/22 D
H05B33/14 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019537689
(86)(22)【出願日】2018-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2018031235
(87)【国際公開番号】W WO2019039562
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2017161639
(32)【優先日】2017-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 岳文
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 薫
(72)【発明者】
【氏名】桑名 保宏
(72)【発明者】
【氏名】横山 大輔
【審査官】中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/204275(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/008977(WO,A1)
【文献】特開2002-175887(JP,A)
【文献】特開2008-270731(JP,A)
【文献】特開2006-237083(JP,A)
【文献】国際公開第2016/100313(WO,A1)
【文献】特開2016-224442(JP,A)
【文献】特開2015-097236(JP,A)
【文献】特開2005-038634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/00-33/28
H01L 51/50-51/56
H01L 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に設けられた陽極と、
前記陽極に対向する陰極と、
前記陽極および前記陰極の間に配置された発光層と、
前記発光層と前記陽極との間に配置された正孔輸送層と、
前記発光層と前記正孔輸送層との間において前記発光層および前記正孔輸送層に接して設けられた電子ブロック層と、を備え、
前記正孔輸送層は、含フッ素重合体および有機半導体材料を含み、波長域450nm~800nmにおける屈折率が1.60以下であり、
前記正孔輸送層と前記電子ブロック層とは異なる材料を形成材料とし、
前記電子ブロック層のLUMOエネルギー準位は、前記発光層のLUMOエネルギー準位および前記正孔輸送層のLUMOエネルギー準位よりも高く、
前記含フッ素重合体の1×10-3Paの真空度において300℃における蒸発速度が、0.01g/msec以上であり、
前記含フッ素重合体のガラス転移点が、60℃以上であり、
前記含フッ素重合体が、主鎖に脂肪族環を有さず、フルオロオレフィンに由来する単位を有する含フッ素重合体、または、主鎖に脂肪族環構造を有する含フッ素重合体であり、
前記主鎖に脂肪族環を有さず、フルオロオレフィンに由来する単位を有する含フッ素重合体が、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニルフルオリド、ポリクロロトリフルオロエチレン、および、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、有機光電子素子。
【請求項2】
前記電子ブロック層のLUMOエネルギー準位と前記発光層のLUMOエネルギー準位とのエネルギー差は、前記正孔輸送層のLUMOエネルギー準位と前記電子ブロック層のLUMOエネルギー準位とのエネルギー差よりも大きい請求項1に記載の有機光電子素子。
【請求項3】
前記電子ブロック層のLUMOエネルギー準位と前記発光層のLUMOエネルギー準位とのエネルギー差は、0.5eVよりも大きい請求項1または2に記載の有機光電子素子。
【請求項4】
前記電子ブロック層の膜厚が5nm~30nmである請求項1~3のいずれか一項に記載の有機光電子素子。
【請求項5】
前記正孔輸送層における前記含フッ素重合体の含有量(A)と前記有機半導体材料の含有量(B)との体積比が、(A):(B)=70:30~5:95である請求項1~4のいずれか1項に記載の有機光電子素子。
【請求項6】
前記含フッ素重合体の波長域450nm~800nmにおける屈折率が1.50以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の有機光電子素子。
【請求項7】
前記含フッ素重合体の重量平均分子量が1,500~50,000である、請求項1~6のいずれか一項に記載の有機光電子素子。
【請求項8】
前記含フッ素重合体が、主鎖に脂肪族環構造を有するペルフルオロ重合体である請求項1~のいずれか一項に記載の有機光電子素子。
【請求項9】
前記ペルフルオロ重合体が、ポリペルフルオロ(3-ブテニルビニルエーテル)である、請求項に記載の有機光電子素子。
【請求項10】
前記ポリペルフルオロ(3-ブテニルビニルエーテル)の固有粘度が、0.01~0.14dl/gである、請求項に記載の有機光電子素子。
【請求項11】
前記正孔輸送層は、物理蒸着層である請求項1~10のいずれか1項に記載の有機光電子素子。
【請求項12】
前記正孔輸送層と前記陽極との間に配置され、半導体材料と含フッ素重合体とを含む正孔注入層を更に有する請求項1~11のいずれか1項に記載の有機光電子素子。
【請求項13】
前記有機光電子素子が有機EL素子である、請求項1~12のいずれか1項に記載の有機光電子素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自発光型の素子として、有機光電子素子(有機エレクトロルミネッセンス素子。以下、有機EL素子。)が知られている。有機EL素子は、一対の電極間に、発光層、電子輸送層、正孔輸送層等の複数種の層が積層された構成を基本構造としている。
【0003】
有機EL素子は、電源から供給された電子と正孔とが内部の発光層で再結合することにより光子を生じ発光する。有機EL素子の分野においては、長年にわたる研究開発により、「注入した電子の数」に対する「素子内部で生じた光子」の割合である「内部量子効率」は100%近くまで達している。
【0004】
一方、近年の有機EL素子においても、「注入した電子の数」に対する「素子外部に取り出された光子」の割合である「外部量子効率」は20~30%程度にとどまっており、改善が求められている。
【0005】
外部量子効率が低い原因の一つとして、有機EL素子を構成する各層の屈折率差に起因した内部反射が考えられる。上述したように、有機EL素子は発光層の他に複数種の層を有する。これらの層は互いに屈折率が異なる。そのため、発光層で生じた光は、屈折率の異なる各層間の界面において反射し、素子外部に射出される前に素子内部で減衰または吸収されることが考えられる。
【0006】
これに対し、電荷輸送層にナノサイズの多孔質シリカ粒子を含有させ、電荷輸送層の屈折率を低下させた有機EL素子が知られている(特許文献1参照。)。特許文献1に記載の有機EL素子では、電荷輸送層と電荷輸送層に接する層との界面で起きる反射が抑制され、外部量子効率が向上することが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2013/108618号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発光層において正孔と電子とが再結合する際、再結合の位置、すなわち発光位置は各層を構成する材料に依存して変化しやすい。特許文献1に記載の有機EL素子では、電荷輸送層に多孔質シリカ粒子を含有させることにより電荷輸送層を低屈折率化しているが、低屈折率化した電荷輸送層と、半導体材料のみで形成した電荷輸送層とでは電荷の輸送特性が異なる。そのため、特許文献1に記載の有機EL素子では、電荷輸送層の屈折率制御に伴って、発光層における再結合位置が変化し、有機EL素子の発光特性や長期信頼性が低下してしまうおそれがある。また、電荷輸送層を低屈折率化しても、発光位置を固定していなければ、低屈折率化による効果的な光取出し効果が得られず、発光特性を向上できないおそれがある。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、発光特性および長期信頼性に優れた有機光電子素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、基板と、前記基板に設けられた陽極と、前記陽極に対向する陰極と、前記陽極および前記陰極の間に配置された発光層と、前記発光層と前記陽極との間に配置された正孔輸送層と、前記発光層と前記正孔輸送層との間において前記発光層および前記正孔輸送層に接して設けられた電子ブロック層と、を備え、前記正孔輸送層は、含フッ素重合体および有機半導体材料を含み、波長域450nm~800nmにおける屈折率が1.60以下であり、前記正孔輸送層と前記電子ブロック層とは異なる材料を形成材料とし、前記電子ブロック層のLUMOのエネルギー準位は、前記発光層のLUMOのエネルギー準位および前記正孔輸送層のLUMOのエネルギー準位よりも高い有機光電子素子を提供する。
【0011】
本発明の一態様においては、前記電子ブロック層のLUMOのエネルギー準位と前記発光層のLUMOのエネルギー準位とのエネルギー差は、前記正孔輸送層のLUMOのエネルギー準位と前記発光層のLUMOのエネルギー準位とのエネルギー差よりも大きい構成としてもよい。
【0012】
本発明の一態様においては、前記電子ブロック層のLUMOのエネルギー準位と前記発光層のLUMOのエネルギー準位とのエネルギー差は、0.5eVよりも大きい構成としてもよい。
【0013】
本発明の一態様においては、前記電子ブロック層の膜厚が5nm~30nmである構成としてもよい。
【0014】
本発明の一態様においては、前記正孔輸送層における前記含フッ素重合体の含有量(A)と前記有機半導体材料の含有量(B)との体積比が、(A):(B)=70:30~5:95である構成としてもよい。
【0015】
本発明の一態様においては、前記正孔輸送層は、物理蒸着層である構成としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、発光特性および長期信頼性に優れた有機光電子素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る有機EL素子1を示す断面模式図である。
図2】有機EL素子1から電子ブロック層19を除いた場合のエネルギーバンドを示す図である。
図3】有機EL素子1のエネルギーバンドを示す図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る有機EL素子2を示す断面模式図である。
図5】実施例1、3、5、7、9、11および比較例1、3、5、7、9、11における電子ブロック層の膜厚と光取出し効率との相関を示すプロット図である。
図6】実施例2、4、6、8、10、12および比較例2、4、6、8、10、12における電子ブロック層の膜厚と光取出し効率との相関を示すプロット図である。
図7】実施例13~17および比較例13~17における電子ブロック層の膜厚と光取出し効率との相関を示すプロット図である。
図8】重合体Bの弾性率と温度の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、図1図3を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る有機光電子素子について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率等は適宜異ならせてある。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態の有機光電子素子(有機EL素子)1を示す断面模式図である。有機EL素子1は、基板10、陽極11、正孔注入層12、正孔輸送層13、電子ブロック層19、発光層14、電子輸送層15、電子注入層16、陰極17がこの順に積層した構造を有している。本実施形態の有機EL素子1は、発光層14で生じた光Lが、陰極17を介して外部へ射出されるトップエミッション方式を採用している。
【0020】
(基板)
基板10は、光透過性を備えていてもよく、光透過性を備えなくてもよい。基板10の形成材料としては、ガラス、石英ガラス、窒化ケイ素等の無機物や、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の有機高分子(樹脂)を用いることができる。また、表面の絶縁性が確保される限り、基板10の形成材料として金属材料を採用することもできる。
【0021】
また、基板10は、有機EL素子に電気的に接続される不図示の各種配線、駆動素子を備えている。
【0022】
(陽極)
陽極11は、基板10上に形成され、正孔輸送層13に正孔(ホール)を供給する。また、陽極11は、発光層14から発せられた光を反射する光反射性を有する。陽極11の形成材料としては、ITO(Indium Tin Oxide:インジウムドープ酸化錫)やIZO(Indium Zinc Oxide:インジウムドープ酸化亜鉛)等の導電性金属酸化物を用いることができる。また、陽極11に光反射性を付与するため、陽極11の基板10側には、金属材料を形成材料とする反射膜が設けられている。すなわち、陽極11は、導電性金属酸化物を形成材料とする層と、反射膜との積層構造を有する。
【0023】
また、陽極11の形成材料として、銀を用いることとしてもよい。
【0024】
陽極11の厚さは、特に制限されないが、30~300nmが好ましい。陽極11の厚さは、たとえば100nmである。
【0025】
(正孔注入層)
正孔注入層12は、陽極11と正孔輸送層13との間に形成されている。正孔注入層12は、陽極11から正孔輸送層13への正孔の注入を容易にする機能を有する。なお、正孔注入層12は形成しなくてもよい。
【0026】
正孔注入層12は、公知の半導体材料を用いて形成することができる。このような材料としては、たとえば、以下の半導体材料が挙げられる。
酸化モリブデン、または酸化タングステン等の金属酸化物;
銅フタロシアニン等の有機金属錯体材料;
ジ-[4-(N,N-ジトリル-アミノ)-フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N,N,N,N-テトラ-m-トリルベンゼン-1,3-ジアミン(PDA)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)ベンジジン(TPD)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス-[4-(フェニル-m-トリル-アミノ)-フェニル]-ビフェニル-4,4’-ジアミン(DNTPD)、4,4’,4''-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m-MTDATA)、N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(NPB)、4,4’,4''-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(TDATA)、ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)、9,9’,9’’-トリフェニル-9H,9’H,9’’H-3,3’:6’,3’’-テルカルバゾール(Tris-PCz)、4,4’,4''-トリス(N-(ナフタレン-2-イル)-N-フェニル-アミノ)トリフェニルアミン(2-TNATA)等のアリールアミン材料;
ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(PANI/DBSA)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSS)、またはポリアニリンカンファースルホン酸(PANI/CSA)、ポリアニリン/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PANI/PSS)等の高分子半導体材料;
N-(ジフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-N-(4-(9-フェニル-9H-カルバゾイル-3イル)フェニル)-9H-フルオレン-2-アミン(以下、「HT211」という。)、HTM081(Merck社製)、HTM163(Merck社製)、HTM222(Merck社製)、NHT-5(Novaled社製)、NHT-18(Novaled社製)、NHT-49(Novaled社製)、NHT-51(Novaled社製)、NDP-2(Novaled社製)、NDP-9(Novaled社製)等の市販品。
これら正孔注入層12の形成材料は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。また、上記正孔注入層12の形成材料は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
さらに、正孔注入層12は、後述の含フッ素重合体および有機半導体材料との電荷の授受を容易にするドーパントを含んでいてもよい。正孔注入材料に対するドーパントの具体例としては、TCNQ、F-TCNQ、PPDN、TCNNQ、F-TCNNQ、HAT-CN、HATNA、HATNA-Cl6、HATNA-F6、C6036、F16-CuPc、NDP-2(Novaled社製)、NDP-9(Novaled社製)等の有機ドーパント、および、MoO、V、WO、ReO、CuI等の無機ドーパントが挙げられる。有機半導体材料は1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。また含フッ素重合体は1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0028】
正孔注入層12の厚さは、特に制限されないが、1~300nmが好ましい。正孔注入層12の厚さは、たとえば5nmである。
【0029】
(正孔輸送層)
正孔輸送層13は、正孔注入層12上に形成されている。なお、正孔注入層12がない場合は、正孔輸送層13は、陽極11に形成される。正孔輸送層13は、陽極11から注入された正孔を発光層14に向けて良好に輸送する機能を有する。
【0030】
正孔輸送層13は、有機半導体材料と、含フッ素重合体とを含む。正孔輸送層13は、単層であってもよく、複数層の積層体であってもよい。また、第3成分としてドーパント等を含んでいてもよい。
【0031】
正孔輸送層13は、有機半導体材料と比べて低屈折率である含フッ素重合体を含むため、有機半導体材料のみからなる正孔輸送層と比べ低屈折率である。波長域450~800nmにおける正孔輸送層13の屈折率は、1.60以下であり、好ましくは1.55以下であり、更に好ましくは1.50以下であり、導電性を確保する観点から、1.3以上であることが好ましく、1.4以上であることがより好ましい。
正孔輸送層13は、波長域450~800nmにおいて発光層14よりも低屈折率であることが好ましい。発光層14の屈折率は、正孔輸送層13中の有機半導体材料と含フッ素重合体との混合比を制御することにより調整可能である。正孔輸送層13が低屈折率であることにより、有機EL素子1の内部で生じた光取出し効率が向上する。
【0032】
(有機半導体材料)
正孔輸送層13の形成材料である有機半導体材料は、陽極から正孔の注入を受けて輸送する正孔輸送材料として知られた化合物を採用することができる。
【0033】
正孔輸送材料としては、芳香族アミン誘導体が好適に例示できる。具体例としては、下記のα-NPD、TAPC、PDA、TPD、m-MTDATA等が挙げられる。
【0034】
【化1】
【0035】
その他の正孔輸送材料としては、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス-[4-(フェニル-m-トリル-アミノ)-フェニル]-ビフェニル-4,4’-ジアミン(DNTPD)、N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(NPB)、4,4’,4''-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(TDATA)、ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)、9,9’,9’’-トリフェニル-9H,9’H,9’’H-3,3’:6’,3’’-テルカルバゾール(Tris-PCz)、4,4’,4''-トリ(9-カルバゾイル)トリフェニルアミン(TCTA)、2,2’,7,7’-テトラキス(N,N-ジフェニルアミノ)-2,7-ジアミノ-9,9’-スピロビフルオレン(Spiro-TAD)、2,2’,7,7’-テトラキス(N、N-ジ-p-メトキシフェニルアミノ)-9,9’-スピロビフルオレン(Spiro-MeOTAD)4,4’,4''-トリス(N,N-2-ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2-TNATA)等のアリールアミン材料;ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(PANI/DBSA)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSS)、またはポリアニリンカンファースルホン酸(PANI/CSA)、ポリアニリン/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PANI/PSS)等の高分子半導体材料;N-(ジフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-N-(4-(9-フェニル-9H-カルバゾイル-3イル)フェニル)-9H-フルオレン-2-アミン(以下、「HT211」という。)、HTM081(Merck社製)、HTM163(Merck社製)、HTM222(Merck社製)、NHT-5(Novaled社製)、NHT-18(Novaled社製)、NHT-49(Novaled社製)、NHT-51(Novaled社製)、NDP-2(Novaled社製)、NDP-9(Novaled社製)等の市販品等が挙げられる。
これら正孔輸送層13の形成材料は、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。また、上記正孔輸送層13の形成材料は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
(含フッ素重合体)
本発明の電荷注入層および電荷輸送層に含まれる含フッ素重合体は、フッ素原子を含む重合体である。なお、本実施形態においては、オリゴマーも重合体に含める。すなわち、含フッ素重合体はオリゴマーであってもよい。
含フッ素重合体は、正孔輸送層等の層の形成速度、層の強度と表面粗さの観点から、含フッ素重合体の熱分解が起こる温度以下において実用化するのに十分な蒸発速度もしくは飽和蒸気圧を有することが好ましい。一般的な含フッ素重合体であるPTFEの熱分解開始温度が約400℃、テフロン(登録商標)AFの熱分解開始温度が350℃である。本実施形態に係る含フッ素重合体の300℃における蒸発速度は、0.01g/msec以上が好ましく、0.02g/msec以上が好ましい。また、300℃における飽和蒸気圧は、0.001Pa以上であることが好ましく、0.002Pa以上がより好ましい。この観点から含フッ素重合体は、分子間相互作用が小さいと考えられるペルフルオロ重合体が好ましい。また結晶性が低いといわれる主鎖に脂肪族環構造を有する重合体がさらに好ましい。ここで主鎖に脂肪族環構造を有するとは、含フッ素重合体が繰り返し単位中に脂肪族環構造(芳香族性を示さない環構造)を有し、かつ、該脂肪族環を構成する炭素原子の1個以上が主鎖を構成することを意味する。
本明細書中、飽和蒸気圧(単位:Pa)は、真空示差熱天秤(アドバンス理工社製:VPE-9000)により測定される値である。
【0037】
含フッ素重合体の重量平均分子量(以下、「Mw」で表す。)は1,500~50,000が好ましく、3,000~40,000がより好ましく、5,000~30,000がさらに好ましい。重量平均分子量が1,500以上の場合は、形成される含フッ素重合体で層を形成した場合に十分な強度が得られやすい。一方で、重量平均分子量が50,000以下の場合は、実用的な層形成速度(成膜速度)を与える飽和蒸気圧を有するため、蒸着源を高温、具体的には、400℃超の温度まで加熱する必要がなくなる。蒸着原の温度が高すぎると蒸着過程において含フッ素重合体の主鎖が開裂し、含フッ素重合体が低分子量化してしまい、形成される層の強度が不十分となり、さらに分解物に由来する欠陥が発生し、平滑な表面を得にくい。また、主鎖の開裂により生じ意図せず混入した分子あるいはイオンが膜の導電性や有機EL素子の発光寿命に影響を与える可能性が想定される。
よってMwが1,500~50,000の範囲であれば、含フッ素重合体の主鎖が開裂を起こすことなく、十分な強度と平滑な表面を有する層が形成できる。
【0038】
「多分散度」とは、数平均分子量(以下、「Mn」で表す。)に対するMwの割合、すなわち、Mw/Mnをいう。形成される層における品質の安定性の観点から、含フッ素重合体の多分散度(分子量分布)(Mw/Mn)は小さい方が好ましく、2以下が好ましい。なお多分散度の理論的な下限値は1である。多分散度の小さい含フッ素重合体を得る方法として、リビングラジカル重合等の制御重合を行う方法、サイズ排除クロマトグラフィを用いた分子量分画精製法、昇華精製による分子量分画精製法が挙げられる。これらの方法のうち、層の形成に蒸着法を適用した場合の蒸着レートの安定性を考慮し、昇華精製を行うことが好ましい。
本明細書中、MwおよびMnはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
含フッ素重合体のガラス転移点(Tg)は高い方が、得られる素子の信頼性が高くなることから好ましい。具体的にはガラス転移点が、60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、100℃以上が特に好ましい。上限は特に制限されないが、350℃が好ましく、300℃がより好ましい。
【0039】
主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有するペルフルオロ重合体が、ペルフルオロ(3-ブテニルビニルエーテル)を環化重合してなる繰り返し単位のみからなるペルフルオロ重合体(ポリペルフルオロ(3-ブテニルビニルエーテル)ともいう)である場合、固有粘度[η]が、0.01~0.14dl/gであることが好ましく、0.02~0.1dl/gであることがより好ましく、0.02~0.08dl/gであることが特に好ましい。[η]が0.01dl/g以上の場合は、相対的に含フッ素重合体の分子量が大きくなり、形成後の層において十分な強度が得られやすい。一方で、[η]が0.14dl/g以下の場合は、相対的に含フッ素重合体の分子量が小さくなり、実用的な成膜速度を与える飽和蒸気圧を有する。
本明細書中、固有粘度[η](単位:dl/g)は、測定温度30℃でアサヒクリン(登録商標)AC2000(旭硝子社製)を溶媒として、ウベローデ型粘度計(柴田科学社製:粘度計ウベローデ)により測定される値である。
【0040】
含フッ素重合体の波長450nm~800nmにおける屈折率の上限値は、1.5が好ましく、1.4がより好ましい。屈折率が1.5以下であれば、有機半導体材料との混合により得られる電荷注入層、電荷輸送層等の層の屈折率をガラス基板等の屈折率と同等水準である1.55程度まで低下させることができ、光取り出し効率が向上するため好ましい。一方、屈折率の理論的な下限値は1.0である。
有機半導体材料の屈折率は、一般的に1.7~1.8程度である。このような一般的な有機半導体材料に対して、屈折率が1.5以下の含フッ素重合体を混合すれば、得られる電荷注入層、電荷輸送層等の屈折率を低下させることができる。電荷注入層、電荷輸送層の屈折率が低下して、電荷注入層、電荷輸送層に隣接する電極、ガラス基板等(ソーダガラスおよび石英ガラスの屈折率は可視光領域でそれぞれ約1.51~1.53、約1.46~1.47である。)の屈折率に近づけば、電荷注入層または電荷輸送層と、電極またはガラス基板との界面で生じる全反射を回避することができ、光取り出し効率が向上する。
【0041】
含フッ素重合体としては、以下の重合体(1),(2)が挙げられる。
重合体(1):主鎖に脂肪族環を有さず、フルオロオレフィンに由来する単位(以下、「フルオロオレフィン単位」とも記す。)を有する含フッ素重合体、
重合体(2):主鎖に脂肪族環を有する含フッ素重合体。
【0042】
≪重合体(1)≫
重合体(1)は、フルオロオレフィンの単独重合体であってもよく、フルオロオレフィンと、フルオロオレフィンと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。
フルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、ビニルフルオライド、ペルフルオロアルキルエチレン(炭素数1~10のペルフルオロアルキル基を有するもの等)、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、トリフルオロエチレン等が挙げられる。
例示したうちで、電荷注入層および電荷輸送層の屈折率を低下させやすいことから、炭素原子に結合しているすべての水素原子がフッ素に置換されたテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)が好ましい。
【0043】
フルオロオレフィンと共重合可能な他の単量体としては、ビニルエーテル、ビニルエステル、芳香族ビニル化合物、アリル化合物、アクリロイル化合物、メタクリロイル化合物等が挙げられる。
重合体(1)が共重合体である場合、フルオロオレフィンに由来する単位の割合は、20モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。
【0044】
重合体(1)の主鎖末端の官能基は、反応性の低い官能基であることが好ましい。反応性の低い官能基としては、たとえば、アルコキシカルボニル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0045】
重合体(1)としては、合成したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
重合体(1)としては、以下の含フッ素重合体が挙げられる。
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体((旭硝子社製:Fluon(登録商標)PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(EPA)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(旭硝子社製:Fluon(登録商標)ETFE)、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)、ポリビニルフルオリド(PVF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)等。
例示したうちで、電荷注入層および電荷輸送層の屈折率を低下させやすいことから、炭素原子に結合しているすべての水素原子または塩素原子がフッ素に置換されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(EPA)が好ましい。
重合体(1)は、公知の方法を用いて製造できる。
重合体(1)としては、合成したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
【0046】
≪重合体(2)≫
重合体(2)は、主鎖に脂肪族環を有する含フッ素重合体である。
「主鎖に脂肪族環構造を有する含フッ素重合体」とは、含フッ素重合体が脂肪族環構造を有する単位を有し、かつ、該脂肪族環を構成する炭素原子の1個以上が主鎖を構成する炭素原子であることを意味する。脂肪族環は酸素原子等のヘテロ原子を有する環であってもよい。
重合体の「主鎖」とは、重合性二重結合を有するモノエンの重合体においては重合性二重結合を構成した2つの炭素原子に由来する炭素原子の連鎖をいい、環化重合しうるジエンの環化重合体においては2つの重合性二重結合を構成した4つの炭素原子に由来する炭素原子の連鎖をいう。モノエンと環化重合しうるジエンとの共重合体においては、該モノエンの上記2つの炭素原子と該ジエンの上記4つの炭素原子とから主鎖が構成される。
したがって、脂肪族環を有するモノエンの重合体の場合は、脂肪族環の環骨格を構成する1つの炭素原子または環骨格を構成する隣接した2つの炭素原子が重合性二重結合を構成する炭素原子である構造のモノエンの重合体である。環化重合しうるジエンの環化重合体の場合は、後述のように、2つの二重結合を構成する4つの炭素原子のうちの2~4つが脂肪族環を構成する炭素原子となる。
【0047】
重合体(2)中の脂肪族環の環骨格を構成する原子の数は、4~7個が好ましく、5~6個が特に好ましい。すなわち、脂肪族環は4~7員環が好ましく、5~6員環が特に好ましい。脂肪族環の環を構成する原子としてヘテロ原子を有する場合、ヘテロ原子としては酸素原子、窒素原子等が挙げられ、酸素原子が好ましい。また、環を構成するヘテロ原子の数は1~3個が好ましく、1個または2個であることがより好ましい。
脂肪族環は置換基を有していてもよく、有さなくてもよい。「置換基を有していてもよい」とは、該脂肪族環の環骨格を構成する原子に置換基が結合してもよいことを意味する。
【0048】
重合体(2)の脂肪族環を構成する炭素原子に結合した水素原子はフッ素原子に置換されていることが好ましい。また、脂肪族環が置換基を有する場合、その置換基に炭素原子に結合した水素原子を有する場合も、その水素原子はフッ素原子に置換されていることが好ましい。フッ素原子を有する置換基としては、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、=CF等が挙げられる。
重合体(2)中の脂肪族環としては、電荷注入層および電荷輸送層の屈折率を低下させやすいことから、ペルフルオロ脂肪族環(置換基を含め、炭素原子に結合した水素原子のすべてがフッ素原子に置換されている脂肪族環)が好ましい。
【0049】
重合体(2)としては、下記の重合体(21)、(22)が挙げられる。
重合体(21):含フッ素環状モノエンに由来する単位を有する含フッ素重合体、
重合体(22):環化重合しうる含フッ素ジエン(以下、単に「含フッ素ジエン」ともいう。)の環化重合により形成される単位を有する含フッ素重合体。
【0050】
フッ素重合体(21):
「含フッ素環状モノエン」とは、脂肪族環を構成する炭素原子間に重合性二重結合を1個有する含フッ素単量体、または、脂肪族環を構成する炭素原子と脂肪族環外の炭素原子との間に重合性二重結合を1個有する含フッ素単量体である。
含フッ素環状モノエンとしては、下記の化合物(1)または化合物(2)が好ましい。
【0051】
【化2】
[式中、X、X、X、X、YおよびYは、それぞれ独立に、フッ素原子、エーテル性酸素原子(-O-)を含んでいてもよいペルフルオロアルキル基、またはエーテル性酸素原子を含んでいてもよいペルフルオロアルコキシ基である。XおよびXは相互に結合して環を形成してもよい。]
【0052】
、X、X、X、YおよびYにおけるペルフルオロアルキル基は、炭素数が1~7であることが好ましく、炭素数が1~4であることが特に好ましい。前記ペルフルオロアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状が好ましく、直鎖状が特に好ましい。具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基等が挙げられ、特にトリフルオロメチル基が好ましい。
、X、X、X、YおよびYにおけるペルフルオロアルコキシ基としては、前記ペルフルオロアルキル基に酸素原子(-O-)が結合したものが挙げられ、トリフルオロメトキシ基が特に好ましい。
【0053】
式(1)中、Xは、フッ素原子であることが好ましい。
は、フッ素原子、トリフルオロメチル基、または炭素数1~4のペルフルオロアルコキシ基であることが好ましく、フッ素原子またはトリフルオロメトキシ基であることが特に好ましい。
およびXは、それぞれ独立に、フッ素原子または炭素数1~4のペルフルオロアルキル基であることが好ましく、フッ素原子またはトリフルオロメチル基であることが特に好ましい。
およびXは相互に結合して環を形成してもよい。前記環の環骨格を構成する原子の数は、4~7個が好ましく、5~6個が特に好ましい。
化合物(1)の好ましい具体例として、化合物(1-1)~(1-5)が挙げられる。
【0054】
【化3】
【0055】
式(2)中、YおよびYは、それぞれ独立に、フッ素原子、炭素数1~4のペルフルオロアルキル基または炭素数1~4のペルフルオロアルコキシ基が好ましく、フッ素原子またはトリフルオロメチル基が特に好ましい。
化合物(2)の好ましい具体例として、化合物(2-1),(2-2)が挙げられる。
【0056】
【化4】
【0057】
重合体(21)は、前記の含フッ素環状モノエンの単独重合体であってもよく、含フッ素環状モノエンと共重合可能な他の単量体の共重合体であってもよい。
ただし、重合体(21)中の全単位に対する含フッ素環状モノエンに由来する単位の割合は、20モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましく、100モル%がさらに好ましい。
含フッ素環状モノエンと共重合可能な他の単量体としては、たとえば、含フッ素ジエン、側鎖に反応性官能基を有する単量体、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)等が挙げられる。
含フッ素ジエンとしては、後述する重合体(22)の説明で挙げるものと同様のものが挙げられる。側鎖に反応性官能基を有する単量体としては、重合性二重結合および反応性官能基を有する単量体が挙げられる。重合性二重結合としては、CF=CF-、CF=CH-、CH=CF-、CFH=CF-、CFH=CH-、CF=C-、CF=CF-等が挙げられる。反応性官能基としては、後述する重合体(22)の説明で挙げるものと同様のものが挙げられる。
含フッ素環状モノエンと含フッ素ジエンとの共重合により得られる重合体は重合体(21)とする。
【0058】
重合体(22):
「含フッ素ジエン」とは、2個の重合性二重結合およびフッ素原子を有する環化重合しうる含フッ素単量体である。重合性二重結合としては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基が好ましい。含フッ素ジエンとしては、下記化合物(3)が好ましい。
CF=CF-Q-CF=CF ・・・(3)。
式(3)中、Qは、エーテル性酸素原子を含んでいてもよく、フッ素原子の一部がフッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~5、好ましくは1~3の、分岐を有してもよいペルフルオロアルキレン基である。該フッ素以外のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
Qは、エーテル性酸素原子を含むペルフルオロアルキレン基であることが好ましい。その場合、前記ペルフルオロアルキレン基におけるエーテル性酸素原子は、前記ペルフルオロアルキレン基の一方の末端に存在していてもよく、前記ペルフルオロアルキレン基の両末端に存在していてもよく、前記ペルフルオロアルキレン基の炭素原子間に存在していてもよい。環化重合性の点から、前記ペルフルオロアルキレン基の一方の末端にエーテル性酸素原子が存在していることが好ましい。
【0059】
化合物(3)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
CF=CFOCFCF=CF
CF=CFOCF(CF)CF=CF
CF=CFOCFCFCF=CF
CF=CFOCFCF(CF)CF=CF
CF=CFOCF(CF)CFCF=CF
CF=CFOCFClCFCF=CF
CF=CFOCClCFCF=CF
CF=CFOCFOCF=CF
CF=CFOC(CFOCF=CF
CF=CFOCFCF(OCF)CF=CF
CF=CFCFCF=CF
CF=CFCFCFCF=CF
CF=CFCFOCFCF=CF
【0060】
化合物(3)の環化重合により形成される単位として、下記単位(3-1)~(3-4)等が挙げられる。
【0061】
【化5】
【0062】
重合体(22)は、含フッ素ジエンの単独重合体であってもよく、含フッ素ジエンと共重合可能な他の単量体の共重合体であってもよい。
含フッ素ジエンと共重合可能な他の単量体としては、たとえば、側鎖に反応性官能基を有する単量体、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)等が挙げられる。
【0063】
重合体(22)の具体例としては、たとえば、CF=CFOCFCFCF=CF(ペルフルオロ(3-ブテニルビニルエーテル))を環化重合させて得られる、下式(3-1-1)で表される重合体が挙げられる。
なお、以下、ペルフルオロ(3-ブテニルビニルエーテル)を「BVE」という。
【0064】
【化6】
【0065】
ただし、式(3-1-1)中、pは5~1,000の整数である。
pは、10~800の整数が好ましく、10~500の整数が特に好ましい。
【0066】
重合体(2)の主鎖末端の官能基は、反応性の低い官能基であることが好ましい。反応性の低い官能基としては、たとえば、アルコキシカルボニル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0067】
重合体(2)としては、合成したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
重合体(2)の具体例としては、BVE環化重合体(旭硝子社製:サイトップ(登録商標))、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(4-メトキシ-1,3-ジオキソール)共重合体(ソルベイ社製:ハイフロン(登録商標)AD)、テトラフルオロエチレン/ペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)共重合体(Dupont社製:テフロン(登録商標)AF)、 ペルフルオロ(4-メチル-2-メチレン-1,3-ジオキソラン)重合体(MMD重合体)が好ましい。
【0068】
本発明では、含フッ素重合体は重合体(2)であることが好ましく、重合体(22)であることがより好ましく、BVEを環化重合させて得られる、式(3-1-1)で表される含フッ素重合体が特に好ましい。
【0069】
正孔輸送層13の形成材料としては、上述した含フッ素重合体および有機半導体材料との電荷の授受を容易にするドーパントが含まれてもよい。有機半導体材料は1種のみを用いても、2種以上を併用してもよく、また含フッ素重合体は1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0070】
正孔輸送層13の形成材料において、含フッ素重合体の含有量(A)と有機半導体材料の含有量(B)との体積比は(A):(B)=70:30~5:95であることが好ましく、60:40~20:80であることがより好ましい。含フッ素重合体と有機半導体材料との体積比が上記の範囲であれば、得られる正孔輸送層13の屈折率がガラス基板等の屈折率と同等水準まで低下し、有機EL素子における光取り出し効率が向上するため好ましい。
【0071】
このような正孔輸送層13は、公知のドライコート法またはウェットコート法で形成することができる。
【0072】
用いる有機半導体材料が高分子材料である場合、正孔輸送層13の成膜には公知のウェットコート法を採用するとよい。ウェットコート法としては、インクジェット法、キャストコート法、ディップコート法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソコート法、およびスプレーコート法等が挙げられる。ウェットコート法を採用する場合には、用いる有機半導体材料と含フッ素重合体とを所望の比率で混合した溶液または分散液を用意し、上述のいずれかの方法で成膜するとよい。
【0073】
用いる有機半導体材料が低分子材料である場合、正孔輸送層13の成膜には公知のドライコート法を採用するとよい。ドライコート法は、含フッ素重合体と有機半導体材料とを均一な混合比で成膜しやすいため好ましい。
【0074】
ドライコート法としては、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、およびスパッタ法等の物理蒸着法が挙げられる。物理蒸着法にて成膜される正孔輸送層13は、物理蒸着層である。正孔輸送層13の形成材料が低分子材料である場合、正孔輸送層13は物理蒸着層である蓋然性が高い。これらのうち有機半導体および含フッ素重合体を分解しすることなく成膜しやすいことから、抵抗加熱蒸着法が好ましく、含フッ素重合体と有機半導体材料とを共蒸着させる工程を含む、抵抗加熱による共蒸着法が特に好ましい。
【0075】
共蒸着における蒸着速度(含フッ素重合体と有機半導体材料との合計の蒸着速度)は特に制限されないが、0.001~10nm/sであることが好ましい。このとき、含フッ素重合体と有機半導体材料の蒸着速度比により混合比を制御できる。
【0076】
正孔輸送層13の厚さは特に制限されないが、10nm~350nmが好ましく、20nm~300nmがより好ましい。
【0077】
正孔輸送層13は、波長域450nm~800nmにおける吸収係数が5000cm-1以下であることが好ましく、1000cm-1以下であることがより好ましく、上記波長域において吸収帯を有さないことが特に好ましい。
ここで、「吸収係数(単位:cm-1)」は、石英基板上の正孔輸送層について、紫外可視分光光度計(島津製作所社製:UV-2450)を用いて測定される値である。
【0078】
正孔輸送層13を構成する各層の吸収係数が5000cm-1を超える場合、光が厚み100nmの正孔輸送層を1回通過すると、通過前の光の全量を100%としたときに対し5%の光が吸収される。有機EL素子の内部では光の多重干渉により、正孔輸送層13を通過するときの光の吸収による損失が累積する。そのため、正孔輸送層を通過する際における光吸収が光取り出し効率を大きく低減させる要因となる。光吸収が十分小さい正孔輸送層を用いることは、有機電界発光素子の発光効率を損なわないために極めて重要である。有機EL素子の発光効率が損なわれないことによりエネルギー利用効率が高くなり、かつ、光吸収に基づく発熱が抑制される結果として素子寿命が長くなる。
【0079】
(ドーパント)
正孔輸送材料を形成するドーパントの具体例としては、TCNQ、F-TCNQ、PPDN、TCNNQ、F-TCNNQ、HAT-CN、HATNA、HATNA-Cl6、HATNA-F6、C6036、F16-CuPc、NDP-2(Novaled社製)、NDP-9(Novaled社製)等の有機ドーパント、またはMoO、V、WO、ReO、CuI等の無機ドーパントが挙げられる。
【0080】
(電子ブロック層)
電子ブロック層19は、正孔輸送層13と発光層14とに挟持され、正孔輸送層13と発光層14とに接して形成されている。電子ブロック層19の形成材料の最低非占有軌道(LUMO)のエネルギー準位は、正孔輸送層13の形成材料のLUMOのエネルギー準位よりも高い。エネルギー準位が高いとは、真空準位により近いことを意味し、エネルギー準位が低いとは、真空準位から遠いことを意味する。
【0081】
さらに、電子ブロック層19の形成材料のLUMOエネルギー準位は、発光層14の形成材料のLUMOエネルギー準位よりも高い。電子ブロック層19のLUMOエネルギー準位と発光層14のLUMOエネルギー準位とのエネルギー差は、0.3eVよりも大きいと好ましく、0.5eVよりも大きいとより好ましい。
【0082】
電子ブロック層19のLUMOエネルギー準位と発光層14のLUMOエネルギー準位とのエネルギー差は、正孔輸送層13のLUMOエネルギー準位と発光層14のLUMOエネルギー準位とのエネルギー差よりも大きいことが好ましい。
【0083】
電子ブロック層19の形成材料としては、公知の半導体材料を用いて形成することができる。このような材料としては、たとえば、以下の半導体材料が挙げられる。
N,N’-ジ-(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(α-NPD)、ジ-[4-(N,N-ジトリル-アミノ)-フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N,N,N,N-テトラ-m-トリルベンゼン-1,3-ジアミン(PDA)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)ベンジジン(TPD)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス-[4-(フェニル-m-トリル-アミノ)-フェニル]-ビフェニル-4,4’-ジアミン(DNTPD)、4,4’,4''-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m-MTDATA)、4,4’,4''-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(TDATA)、ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル(HAT-CN)、9,9’,9’’-トリフェニル-9H,9’H,9’’H-3,3’:6’,3’’-テルカルバゾール(Tris-PCz)、4,4’,4''-トリス(N-(ナフタレン-2-イル)-N-フェニル-アミノ)トリフェニルアミン(2-TNATA)、4,4’,4''-トリ(9-カルバゾイル)トリフェニルアミン(TCTA)、2,2’,7,7’-テトラキス(N,N-ジフェニルアミノ)-2,7-ジアミノ-9,9’-スピロビフルオレン(Spiro-TAD)、2,2’,7,7’-テトラキス(N、N-ジ-p-メトキシフェニルアミノ)-9,9’-スピロビフルオレン(Spiro-MeOTAD)等のアリールアミン材料;
ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(PANI/DBSA)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSS)、またはポリアニリンカンファースルホン酸(PANI/CSA)、ポリアニリン/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PANI/PSS)等の高分子半導体材料;
N-(ジフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-N-(4-(9-フェニル-9H-カルバゾイル-3イル)フェニル)-9H-フルオレン-2-アミン(以下、「HT211」という。)、HTM081(Merck社製)、HTM163(Merck社製)、HTM222(Merck社製)、NHT-5(Novaled社製)、NHT-18(Novaled社製)、NHT-49(Novaled社製)、NHT-51(Novaled社製)、NDP-2(Novaled社製)、NDP-9(Novaled社製)等の市販品等が挙げられる。
【0084】
これらの化合物は、正孔輸送層13の形成材料としても用いることができる。ただし、電子ブロック層19の形成材料としては、正孔輸送層13に用いられる有機半導体材料とは異なるものを用いる。
【0085】
電子ブロック層19の形成材料のLUMOエネルギー準位と、正孔輸送層13に用いられる有機半導体材料のLUMOエネルギー準位との差は大きいほど好ましい。例えば、正孔輸送層13の形成材料としてα-NPD(LUMOエネルギー準位:2.40eV)を用いた場合、電子ブロック層19の形成材料として、Spiro-MeOTAD(LUMOエネルギー準位:1.76eV)等を用いることが好ましい。
【0086】
電子ブロック層19の厚さは、特に制限されないが、1nm~50nmであることが好ましく、5nm~30nmであることがより好ましく、10nm~20nmであることが更に好ましい。
【0087】
(発光層)
発光層14は、電子ブロック層19に接して形成されている。発光層14では、陽極11から注入された正孔および陰極17から注入された電子が再結合し、光子を放出して発光する。その際の発光波長は、発光層14の形成材料に応じて定まる。
【0088】
発光層14の形成材料のLUMOエネルギー準位は、正孔輸送層13の形成材料のLUMOエネルギー準位よりも低い。
【0089】
発光層14の形成材料としては、蛍光材料、熱活性化遅延蛍光(TADF)材料、りん光材料等、公知のものを採用することができる。たとえば、発光層14の形成材料としては、(E)-2-(2-(4-(ジメチルアミノ)スチリル)-6-メチル-4H-ピラン-4-イリデン)マロノニトリル(DCM)、4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-ジュロリジル-9-エニル-4H-ピラン(DCM)、Rubrene、Coumarin6、Ir(ppy)、(ppy)Ir(acac)等の発光ドーパント材料、4,4‘-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル(CBP)、3,3'-ジ(9H-カルバゾール-9-イル)-1,1'-ビフェニル(mCBP)等のりん光ホスト材料、ADN、Alq等の蛍光ホスト材料、ポリフェニレンビニレン(PPV)、MEH-PPV等のポリマー材料が挙げられるが、これらに限定されない。発光層14の形成材料は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよく、所望の発光波長に応じて適宜選択される。発光層14の屈折率は、波長域450nm~800nmにおいて1.65~1.90であり、たとえば波長600nmにおいて1.70~1.80である。
【0090】
発光層14の厚さは、特に制限されないが、10~50nmが好ましい。発光層14の厚さは、たとえば15nmである。
【0091】
(電子輸送層)
電子輸送層15は、発光層14に接して形成されている。電子輸送層15は、陰極17から注入された電子を発光層14に向けて良好に輸送する機能を有する。なお、電子輸送層15は形成しなくてもよい。
【0092】
電子輸送層15の形成材料としては、公知のものを採用することができる。たとえば、電子輸送層15の形成材料としては、下記のAlq、PBD、TAZ、BND、OXD-7、2,2’,2''-(1,3,5-ベンジントリイル)-トリス(1-フェニル-1-H-ベンズイミダゾール)(TPBi)が挙げられる。その他、電子輸送層15の形成材料として、2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(BCP)、t-Bu-PBD、シロール誘導体も挙げられる。電子輸送層15の形成材料は、これらに限定されない。電子輸送層15は、発光層14と共通する材料を含んでいてもよい。
【0093】
【化7】
【0094】
さらに、電子輸送層15は、上述の含フッ素重合体を含んでいてもよい。この場合、電子輸送層15は、波長域450~800nmにおいて発光層14よりも低屈折率であると好ましい。
【0095】
電子輸送層15の厚さは、特に制限されないが、30~200nmが好ましい。電子輸送層15の厚さは、たとえば60nmである。
【0096】
(電子注入層)
電子注入層16は、陰極17と電子輸送層15との間に設けられている。なお、電子輸送層15がない場合は、電子注入層16は陰極17と発光層14との間に設けられる。電子注入層16は、陰極17から電子輸送層15または発光層14への電子の注入を容易にする機能を有する。電子注入層16の形成材料としては、通常知られたものを使用することができる。具体例としては、LiF、CsCO、CsF等の無機化合物や、下記のAlq、PBD、TAZ、BND、OXD-7等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
【化8】
【0098】
さらに、電子注入層16は、後述の含フッ素重合体を含んでいてもよい。この場合、電子注入層16は、波長域450~800nmにおいて発光層14よりも低屈折率であると好ましい。
なお、電子注入層16は形成しなくてもよい。
【0099】
電子注入層16の厚さは、特に制限されないが、0.5~2nmが好ましい。電子注入層16の厚さは、たとえば1nmである。
【0100】
(陰極)
陰極17は、電子注入層16に接して形成されている。なお、電子注入層16がない場合には、陰極17は電子輸送層15に接して形成され、電子注入層および電子輸送層15がない場合には、陰極17は発光層14に接して形成される。陰極17は、電子注入層16、電子輸送層15または発光層14に電子を注入する機能を有する。陰極17の形成材料としては、公知のものを採用することができる。たとえば、陰極17の形成材料として、MgAg電極、Al電極が挙げられる。Al電極の表面にはLiF等のバッファ層が形成されていてもよい。
【0101】
陰極17は、全体として発光層14から発せられた光の一部を反射し、残部を透過する程度に薄く形成された半透過膜である。
【0102】
陰極17の厚さは、特に制限されないが、5~30nmが好ましい。陰極17の厚さは、たとえば5nmである。
【0103】
(マイクロキャビティ構造)
本実施形態の有機EL素子1においては、陽極11と陰極17が、陽極11と陰極17との間で光を共振させる光共振構造(マイクロキャビティ)を構成している。陽極11と陰極17との間では、発光層14で生じた光が反射を繰り返し、陽極11と陰極17との間の光路長と合致した波長の光が共振して増幅される。一方で、陽極11と陰極17との間の光路長と合致しない波長の光は減衰する。
ここでいう「光路長」は、素子外部に射出される所望の光の波長と、当該所望の光の波長における各層の屈折率と、を用いて算出されるものとする。
【0104】
陽極11と陰極17との間の光路長は、たとえば発光層14で生じる光Lの中心波長の整数倍に設定されている。この場合、発光層14で発せられた光Lは、中心波長に近いほど増幅され、中心波長から離れるほど減衰して有機EL素子1の外部に射出される。このようにして、有機EL素子1から射出される光Lは、発光スペクトルの半値幅が狭く、色純度が向上したものとなる。
【0105】
マイクロキャビティ構造は、陰極および陽極を両端とする固定端反射による共振を利用している。そのため、「発光位置から陽極までの光路長が、素子外部に射出される所望の光の波長λの1/4の整数倍」であり、かつ「発光位置から陰極までの光路長が、素子外部に射出される所望の光の波長λの1/4の整数倍」である場合、所望のマイクロキャビティ構造を形成することができる。
【0106】
(電子ブロック層の機能)
図2,3は、電子ブロック層19の機能を説明する説明図である。図2は、上述した有機EL素子から電子ブロック層19を除いた場合のエネルギーバンドを示す図であり、図3は、有機EL素子1のエネルギーバンドを示す図である。
【0107】
図2,3において、縦軸は、エネルギー準位(単位:eV)を示し、横軸は各層の積層方向を示す。図2,3では電子ブロック層19と発光層14とのLUMOエネルギー準位の差をΔE1として示し、正孔輸送層13と発光層14とのLUMOエネルギー準位の差をΔE2として示し、電子ブロック層19と正孔輸送層13とのLUMOエネルギー準位の差をΔE3として示している。図に示すように、ΔE1>ΔE2である。
【0108】
各層のエネルギー準位がこのような関係である場合、電子ブロック層19を有さない構成と比べると、以下のような効果が得られる。
【0109】
まず、図2に示すように電子ブロック層19が無い場合、陰極から注入された電子Eは、発光層14と正孔輸送層13とのエネルギー障壁であるΔE2を超えるエネルギーを獲得すると、正孔輸送層13にまで流れるおそれがある。この場合、符号Aで示すような発光層14内での正孔Hと電子Eとの再結合に加え、符号Bで示すような正孔輸送層13での再結合も生じ得る。
【0110】
これに対し、図3に示すように電子ブロック層19がある場合、陰極から注入された電子は、ΔE2よりも大きい発光層14と電子ブロック層19とのエネルギー障壁であるΔE1を獲得しないと電子ブロック層19や正孔輸送層13にまで流れない。そのため、陰極から供給される電子Eは、発光層14と電子ブロック層19との界面でせき止められる形となり、発光層14内にて正孔Hと電子Eの再結合が生じる確率を高めることができる。
【0111】
したがって、電子ブロック層19を有する有機EL素子1では、正孔輸送層13への電子の漏出を抑制でき、有機EL素子1の発光特性や長期信頼性が低下を防ぐことができる。
【0112】
<光学計算による効果の検証>
正孔輸送層13が含フッ素重合体を含むことで低屈折率となることで、光取出し効率が向上する効果を検証するため、Setfos4.6(サイバーネット社製)を用いてシミュレーションした結果を説明する。有機EL素子1の一例として解析対象とした素子構成は、基板10としてガラス(厚み1mm)、陽極11としてAg(厚み100nm)、正孔注入層12としてHAT-CN(厚み10nm)、電子ブロック層19としてspiro-MeOTAD(厚み5nm、10nm、15nm、20nm、30nm、50nm)、発光層14としてIr(ppy)を発光ゲスト、CBP(厚み20nm)を発光ホスト、電子輸送層15としてAlq(厚み140nm)、電子注入層16としてLiF(厚み0.8nm)、陰極17としてAl(厚み10nm)とした。正孔輸送層13については、低屈折率正孔輸送層であるLow-n-HTL層(波長550nmにおける屈折率が1.55)を正孔輸送層とした構成を実施例1~12、α-NPD層(波長550nmにおける屈折率が1.77)を正孔輸送層とした構成を比較例1~12とした。発光層については、発光層中での発光点を発光層の中間(発光点0.5)とし、電子輸送層15の膜厚を50nm~250nmの範囲で30nm間隔、正孔輸送層13の膜厚を10nm~300nmの範囲で30nm間隔で掃引し、正孔輸送層13の薄膜側(1次共振)と厚膜側(2次共振)において光取出し効率が最大となる条件を算出した。解析の結果を、表1および図5図6に示す。
【表1】
【0113】
表1および図5図6のシミュレーション結果から、電子ブロック層の厚みが20nm以下の領域において正孔輸送層13が低屈折率となることで光取出し効率が向上する効果が大きく表れることが示された。
【0114】
以上のような構成の有機EL素子1によれば、発光特性および長期信頼性に優れた有機EL素子を提供することができる。
【0115】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態に係る有機EL素子2の断面模式図であり、図1に対応する図である。したがって、本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0116】
有機EL素子2は、基板20、陽極21、正孔注入層12、正孔輸送層13、電子ブロック層19、発光層14、電子輸送層15、電子注入層16、陰極27がこの順に積層した構造を有している。本実施形態の有機EL素子2は、発光層14で生じた光Lが、陽極21および基板20を介して外部へ射出されるボトムエミッション方式を採用している。
【0117】
基板20は、光透過性を備えている。基板20の形成材料としては、ガラス、石英ガラス、窒化ケイ素等の無機物や、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の有機高分子(樹脂)を用いることができる。また、光透過性を有するならば、上記材料を積層または混合して形成された複合材料を用いることもできる。
【0118】
陽極21は、基板20上に形成され、正孔輸送層13に正孔(ホール)を供給する。陽極21の形成材料としては、ITOやIZO等の光透過性を有する導電性金属酸化物を用いることができる。
【0119】
陰極27は、電子注入層16に接して形成されている。陰極27は、発光層14において等方的に放射される光Lを反射し、陽極21の方へ向かわせる機能を有する。
【0120】
陰極27の厚さは、特に制限されないが、30~300nmが好ましい。陰極27の厚さは、たとえば100nmである。
【0121】
このような構成の有機EL素子2においても、上述した電子ブロック層19の機能により、正孔と電子との再結合が発光層14内で生じる可能性を高める効果が期待できる。そのため、発光特性および長期信頼性に優れた有機EL素子2とすることができる。
【0122】
正孔輸送層13が含フッ素重合体を含むことで低屈折率となることで、光取出し効率が向上する効果を検証するため、Setfos4.6(サイバーネット社製)を用いてシミュレーションした結果を説明する。有機EL素子2の一例として解析対象とした素子構成は、基板10としてガラス(厚み1mm)、陽極11としてITO(厚み100nm)、正孔注入層12としてHAT-CN(厚み10nm)、電子ブロック層19としてspiro-MeOTAD(厚み5nm、10nm、15nm、30nm、50nm)、発光層14としてIr(ppy)を発光ゲスト、CBP(厚み30nm)を発光ホスト、電子輸送層15としてTPBi(50nm)、電子注入層16としてLiF(厚み0.8nm)、陰極17としてAl(厚み100nm)とした。正孔輸送層13については、低屈折率正孔輸送層であるLow-n-HTL層(波長550nmにおける屈折率が1.55)を正孔輸送層とした構成を実施例13~17、α-NPD層(波長550nmにおける屈折率が1.77)を正孔輸送層とした構成を比較例13~17とした。シミュレーションでは、電子輸送層15の膜厚と、正孔輸送層13の膜厚を10nm~100nmの範囲で10nm間隔で掃引し、光取出し効率が最大となる条件を算出した。解析の結果を、表2および図7に示す。
【表2】
【0123】
表2および図7のシミュレーション結果から、電子ブロック層の厚みが30nm以下の領域において正孔輸送層13が低屈折率となることで光取出し効率が向上する効果が大きく表れることが示された。
【0124】
本実施例の含フッ素重合体の屈折率、重量平均分子量、固有粘度および飽和蒸気圧の測定は、以下の記載に従って行った。
「含フッ素重合体の屈折率の測定方法」
JIS K 7142に準拠して測定する。
【0125】
「含フッ素重合体の重量平均分子量の測定方法」
含フッ素重合体の重量平均分子量を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定する。まず、分子量既知のPMMA標準試料を、GPCを用いて測定し、ピークトップの溶出時間と分子量から、較正曲線を作成する。ついで、含フッ素重合体を測定し、較正曲線からMwとMnを求める。移動相溶媒には1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-2-(トリフルオロメチル)ペンタン/ヘキサフルオロイソプロピルアルコール(体積比で85/15)の混合溶媒を用いる。
【0126】
「含フッ素重合体の固有粘度[η]の測定方法」
含フッ素重合体の固有粘度[η]を測定温度30℃でアサヒクリン(登録商標)AC2000(旭硝子社製)を溶媒として、ウベローデ型粘度計(柴田科学社製:粘度計ウベローデ)により測定する。
【0127】
「含フッ素重合体の蒸発速度および飽和蒸気圧の測定方法」
真空示差熱天秤(アドバンス理工社製:VPE-9000)を用いて300℃における蒸発速度および飽和蒸気圧を測定する。
含フッ素重合体50mgを内径7mmのセルに仕込み、1×10-3Paの真空度にて、毎分2℃で昇温し、300℃における蒸発速度g/m・秒を測定した。飽和蒸気圧の算出には蒸発速度と前記GPC測定でもとめたMwを用いた。
【0128】
本実施例の電荷輸送層の屈折率の測定、および本実施例で作製した素子の特性評価は、以下の記載に従って行う。
【0129】
「電荷輸送層の屈折率の測定方法」
多入射角分光エリプソメトリー(ジェー・エー・ウーラム社製:M-2000U)を用いて、シリコン基板上の膜に対して、光の入射角を45~75度の範囲で5度ずつ変えて測定を行う。それぞれの角度において、波長域450~800nmの範囲で約1.6nmおきにエリプソメトリーパラメータであるΨとΔを測定する。前記の測定データを用い、有機半導体の誘電関数をCauchyモデルによりフィッティング解析を行い、各波長の光に対する電荷注入層の屈折率と消衰係数を得る。
【0130】
「導電性評価用素子のJ-V特性の評価」
ソースメータ(Keithley社製:Keithley(登録商標)2401)により、ITO(酸化インジウムスズ)側を陽極、アルミニウム側を陰極として電圧を印加しながら、電圧毎に導電性評価用素子に流れる電流を測定した。
【0131】
以下の含フッ素重合体の製造に使用した単量体、溶剤および重合開始剤の略号は、以下の通りである。
BVE:ペルフルオロ(3-ブテニルビニルエーテル)
TFE:テトラフルオロエチレン
PPVE:ペルフルオロビニルエーテル(CF=CFOCFCFCF
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
1H-PFH:1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロヘキサン
IPP:ジイソプロピルペルオキシジカーボネート
【0132】
<含フッ素重合体Aの合成>
BVEの30g、1H-PFHの30g、メタノールの0.5gおよびIPPの0.44gを、内容積50mlのガラス製反応器に入れた。系内を高純度窒素ガスにて置換した後、40℃で24時間重合を行った。得られた溶液を、666Pa(絶対圧)、50℃の条件で脱溶媒を行い、含フッ素重合体の28gを得た。得られた含フッ素重合体の固有粘度[η]は、0.04dl/gであった。
次いで、得られた含フッ素重合体を特開平11-152310号公報の段落[0040]に記載の方法により、フッ素ガスにより不安定末端基を-CF基に置換し、含フッ素重合体Aを得た。
得られた含フッ素重合体Aの波長600nmの光に対する屈折率は1.34、固有粘度[η]は、0.04dl/gであった。含フッ素重合体AのMwは9,000、Mnは6,000、Mw/Mnは1.5、300℃における飽和蒸気圧は0.002Pa、300℃における蒸発速度0.08g/msecであった。
【0133】
<含フッ素重合体Bの合成>
内容積1006mLのステンレス製オートクレーブに、PPVEの152.89g、AC2000の805.0g、メタノールの2.400g、およびAIBNの1.149gを仕込み、液体窒素で凍結脱気をした。70℃に昇温した後、TFEを0.57MPaGになるまで導入した。温度と圧力を一定に保持しながら、TFEを連続的に供給して重合させた。重合開始から9時間後にオートクレーブを冷却して重合反応を停止し、系内のガスをパージして含フッ素重合体の溶液を得た。
含フッ素重合体の溶液にメタノールの813gを加えて混合し、含フッ素重合体が分散している下層を回収した。得られた含フッ素重合体の分散液を80℃で16時間温風乾燥し、次に100℃で16時間真空乾燥して、含フッ素重合体の18.92gを得た。
含フッ素重合体の組成は、PPVE:TFE=14:86モル%であった。
次いで、得られた含フッ素重合体を330℃のオーブンで5時間加熱した後、メタノールに浸漬し、75℃のオーブンで20時間加熱し、不安定末端基をメチルエステル基に置換し、含フッ素重合体Bを得た。前記方法で含フッ素重合体BのMwおよびMnを測定できないので、代わりに重合体Bの弾性率と温度の関係を図8に示す。
得られた重合体Bの波長600nmの光に対する屈折率は1.34、300℃における蒸発速度は0.04g/msecであった。
【0134】
第1実施形態および第2実施形態のシミュレーションの結果から、電子ブロック層19の厚みが薄い程、正孔輸送層13を低屈折率化する効果が大きく表れることが示されたが、一方で、電子ブロック層が薄くなるほど、電子ブロック性が弱くなり、電子が漏出することが懸念される。
【0135】
以下に示す電子オンリーデバイス(EOD)の試験では、電子ブロック層19の厚みが10nmと薄い条件において、電子の漏出の程度を評価するために実施した。
[実施例18]
<電子オンリーデバイス(EOD)の作製>
電子ブロック性評価用のEODを作製するための基板として、2mm幅の帯状にITO(酸化インジウムスズ)が成膜されたガラス基板を用いた。その基板を中性洗剤、アセトン、イソプロピルアルコールを用いて超音波洗浄し、さらにイソプロピルアルコール中で煮沸洗浄した上で、オゾン処理によりITO膜表面の付着物を除去した。この基板を真空蒸着機内に置き、圧力10-4Pa以下に真空引きした上で、正孔ブロック層としてTPBiを真空蒸着機内で抵抗加熱し蒸着速度0.1nm/secで10nm蒸着した。その後、正孔輸送層としてα-NPDと含フッ素重合体Aを、α-NPDと含フッ素重合体Aの体積比が50:50となるように、真空蒸着機内で抵抗加熱し、共蒸着を行うことで共蒸着膜Aを100nm成膜した。2つの材料の合計の蒸着速度は0.2nm/sとした。その後、電子ブロック層としてspiro-MeOTADを蒸着速度0.1nm/secで10nm、電子注入層としてTPBiを蒸着速度0.1nm/secで5nm、LiFを蒸着速度0.1nm/secで0.8nmそれぞれ蒸着し、最後にルミニウムを抵抗加熱で2mm幅の帯状に蒸着し、導電性評価用素子を得た。2mm幅のITOと2mm幅のアルミニウムが交差した2mm×2mmが素子面積となる。
[実施例19]
正孔輸送層としてα-NPDと含フッ素重合体Bを、α-NPDと含フッ素重合体Bの体積比が50:50となるように、真空蒸着機内で抵抗加熱し、共蒸着を行うことで共蒸着膜Bを100nm成膜したこと以外は、実施例18と同様にして、EODを作製した。
[比較例18]
電子ブロック層としてspiro-MeOTADを蒸着成膜しなかったこと以外は実施例18と同様にして、EODを作製した。
[比較例19]
電子ブロック層としてspiro-MeOTADを蒸着成膜しなかったこと以外は実施例19と同様にして、EODを作製した。
[比較例20]
正孔輸送層としてα-NPDのみを100nm蒸着成膜した以外は実施例18と同様にして、EODを作製した。
[比較例21]
電子ブロック層としてspiro-MeOTADを蒸着成膜しなかったこと以外は比較例20と同様にして、EODを作製した。
[実施例20]
約2cm角程度にカットしたシリコン基板を、それぞれ中性洗剤、アセトン、イソプロパノールを用いて超音波洗浄し、さらにイソプロパノール中で煮沸洗浄した上で、オゾン処理により基板表面の付着物を除去した。この基板をそれぞれ真空蒸着機内に置き、圧力10-4Pa以下に真空引きした上で、含フッ素重合体Aとα-NPDとを、体積比率が50:50になるように、真空蒸着機内で抵抗加熱し、共蒸着を行うことで厚み約100nmの正孔輸送層を基板上に作製した。得られた正孔輸送層の波長600nmの光に対する屈折率は1.55であった。
[実施例21]
含フッ素重合体Aの代わりに含フッ素重合体Bを用いた以外は実施例20と同様にして正孔輸送層を成膜した。得られた正孔輸送層の波長600nmの光に対する屈折率は1.55であった。
[比較例22]
正孔輸送層としてα-NPDのみを約100nm成膜した以外は、実施例20と同様にして正孔輸送層を成膜した。得られた正孔輸送層の波長600nmの光に対する屈折率は1.78であった。
【0136】
実施例20、実施例21および比較例22より、α-NPDと含フッ素重合体とを、体積比率が50:50になるように共蒸着することで、屈折率が1.78から1.55まで低下することが確認された。
【0137】
実施例18~19、比較例18~21のEODの電子ブロック性を検証するため、電子の導電性評価を行った。各EODの構造を表3、各EODにおいて6Vおよび8Vの電圧を印可した際の電流密度の値を表4に示す。
【0138】
【表3】
【0139】
【表4】
【0140】
表3および表4の結果より、電子ブロック層としてspiro-MeOTADを成膜することで電流密度が1桁近く下がることが確認され、膜厚が10nmであっても電子がブロックされていることが確認できた。しかし、驚くべきことに、正孔輸送層として含フッ素重合体Aを含む共蒸着膜Aや、含フッ素重合体Bを含む共蒸着膜Bを用いることで、さらに電流密度が低下し、電子ブロック性が強くなっていることが確認された。この結果は、spiro-MeOTADから漏れ出る電子が僅かだが存在し、その漏れ出た電子を含フッ素樹脂がトラップしていると考えられる。含フッ素樹脂が漏出した電子をトラップすることで、正孔輸送層内での正孔と電子の再結合による消光を抑制し、発光効率を向上することが期待できる。
【0141】
上述した本実施形態の有機光電子素子は、有機ELデバイス、太陽電池、有機フォトダイオード、有機レーザー等の有機光電子デバイスに利用できる。
【0142】
特に本実施形態の有機光電子素子は、有機EL素子として好適に用いられる。このような有機EL素子は有機ELディスプレイ、有機EL照明等の有機ELデバイスに利用できる。これらの有機ELデバイスは、トップエミッション型であってもよく、ボトムエミッション型であってもよい。
【0143】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
なお、2018年8月24日に出願された日本特許出願2017-161639号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0144】
10,20…基板、11,21…陽極、13…正孔輸送層、14…発光層、17,27…陰極、19…電子ブロック層、E…電子、H…正孔、L…光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8