(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-26
(45)【発行日】2022-06-03
(54)【発明の名称】蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/571 20210101AFI20220527BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20220527BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20220527BHJP
H01M 50/555 20210101ALI20220527BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20220527BHJP
H01G 11/12 20130101ALI20220527BHJP
H01G 11/74 20130101ALI20220527BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20220527BHJP
H01M 50/557 20210101ALI20220527BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20220527BHJP
【FI】
H01M50/571
H01M50/103
H01M50/184 A
H01M50/555
H01M10/04 Z
H01G11/12
H01G11/74
H01G11/84
H01M50/557
H01M10/0585
(21)【出願番号】P 2019033196
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】中條 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】奥村 素宜
(72)【発明者】
【氏名】児玉 昌士
(72)【発明者】
【氏名】菊池 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】岡西 岳太
(72)【発明者】
【氏名】石川 敬章
(72)【発明者】
【氏名】持田 修平
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-140773(JP,A)
【文献】特開2018-133323(JP,A)
【文献】特開2018-092717(JP,A)
【文献】特開2017-126434(JP,A)
【文献】特開2006-221890(JP,A)
【文献】特開2002-343333(JP,A)
【文献】特開2000-077040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50
H01M 50/10
H01M 10/04
H01M 10/05
H01G 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極板の一方の面に正極活物質が塗工され、他方の面に負極活物質が塗工されたバイポーラ電極が第一方向に積層されたバイポーラ電極群と、前記バイポーラ電極群の前記第一方向における外側に配置される金属板と、を有する積層体と、
前記電極板及び前記金属板の周縁を保持すると共に前記第一方向に交差する前記積層体の側面を覆うことで前記電極板間の電解液を封止する枠体と、を備え、
前記金属板は、前記バイポーラ電極群に対向する第一面と、前記第一面とは反対側の面であって前記積層体の最外面を形成する第二面と、を有しており、少なくとも前記第二面に防錆処理が施されている、蓄電モジュール。
【請求項2】
前記第二面は、積層方向から見たときに外形に沿って形成される所定幅の枠状領域と、枠状領域の内側に形成される矩形領域と、を有しており、
前記防錆処理は、前記矩形領域にのみ施されている、請求項1記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記第一方向において前記バイポーラ電極群の一方の端部に配置される前記金属板の第一面には、負極活物質が形成されており、
前記第一方向において前記バイポーラ電極群の他方の端部に配置される前記金属板の第一面には、正極活物質が形成されている、請求項1又は2記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記バイポーラ電極群と前記金属板の一方との間には、一方の面に負極活物質が塗工され、他方の面に活物質が塗工されていない負極側終端電極が配置されており、
前記負極側終端電極における前記一方の面は、前記バイポーラ電極群に面しており、
前記金属板と前記負極側終端電極と前記枠体との間には、空間が形成されている、請求項1又は2記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
前記金属板は、前記第二面にのみ前記防錆処理が施されている、請求項1~4の何れか一項記載の蓄電モジュール。
【請求項6】
前記防錆処理は、導電助剤を含む防錆剤が塗布された処理である、請求項1~5の何れか一項記載の蓄電モジュール。
【請求項7】
前記金属板は、メッキ処理されている、請求項1~5の何れか一項記載の蓄電モジュール。
【請求項8】
前記メッキ処理によって形成されるメッキ層は、前記金属板の表面から一方向に突出する金属からなる複数の突起を有し、
前記防錆処理によって形成される防錆膜の厚みは、前記突起の最大高さ以下である、請求項7記載の蓄電モジュール。
【請求項9】
一方の面に正極活物質が塗工され、他方の面に負極活物質が塗工された電極板と、一方の面に活物質が塗工され、他方の面に活物質が塗工されていない金属板と、前記電極板及び前記金属板の縁部にわたって設けられる第一樹脂部と、を準備する準備工程と、
前記電極板の縁部に前記第一樹脂部を溶着してバイポーラ電極ユニットを形成すると共に、前記金属板の縁部に前記第一樹脂部を溶着して終端電極ユニットを形成するユニット形成工程と、
前記バイポーラ電極ユニットが積層されたバイポーラ電極群の第一方向における外側に前記終端電極ユニットを配置して積層体を形成し、当該積層体の側面を第二樹脂部で取り囲むことによって前記積層体を一体化する積層体形成工程と、
前記積層体形成工程によって形成された前記積層体の最外側に配置された前記金属板の外側面に防錆処理を施す防錆処理工程と、を含む、蓄電モジュールの製造方法。
【請求項10】
一方の面に正極活物質が塗工され、他方の面に負極活物質が塗工された第一電極板と、一方の面に活物質が塗工され、他方の面に活物質が塗工されていない第二電極板と、両面に活物質が塗工されていない金属板と、前記第一電極板、前記第二電極板、及び前記金属板の縁部にわたって設けられる第一樹脂部と、を準備する準備工程と、
前記第一電極板の縁部に前記第一樹脂部を溶着してバイポーラ電極ユニットを形成すると共に、前記第二電極板の縁部に前記第一樹脂部を溶着して終端電極ユニットを形成する、ユニット形成工程と、
前記バイポーラ電極ユニットが積層されたバイポーラ電極群の第一方向における外側に、前記一方の面が前記バイポーラ電極群に面するように前記終端電極ユニットを配置すると共に、少なくとも一方の終端電極ユニットの外側に前記金属板を配置した積層体を形成し、当該積層体の側面を第二樹脂部で取り囲むことによって、前記金属板と前記第二電極板と前記第二樹脂部とによって囲まれる空間が形成されるように前記積層体を一体化する積層体形成工程と、
前記積層体形成工程によって形成された前記積層体の最外側に配置された前記金属板の外側面に防錆処理を施す防錆処理工程と、を含む、蓄電モジュールの製造方法。
【請求項11】
前記金属板は、メッキ処理されている、請求項9又は10記載の蓄電モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電モジュールとして、電極板の一方面に正極が形成され、他方面に負極が形成されたバイポーラ電極を備えるバイポーラ電池が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。バイポーラ電池は、バイポーラ電極とセパレータとが積層方向に沿って交互に積層された積層体を備えている。積層方向における積層体の外側には、取り出し電極として機能する終端電極が位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなバイポーラ電池において、最外層に設けられる金属板は、空気中の水分等によって錆が発生することがある。そして、当該錆びの進行によって金属板に穴が空いてしまうと、電解液の漏れ等が発生し、蓄電モジュールの性能が著しく劣化してしまう。
【0005】
本発明の目的は、長期信頼性を向上可能な蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る蓄電モジュールは、電極板の一方の面に正極活物質が塗工され、他方の面に負極活物質が塗工されたバイポーラ電極が第一方向に積層されたバイポーラ電極群と、バイポーラ電極群の第一方向における外側に配置される金属板と、を有する積層体と、電極板及び金属板の周縁を保持すると共に第一方向に交差する積層体の側面を覆うことで電極板間の電解液を封止する枠体と、を備え、金属板は、バイポーラ電極群に対向する第一面と、第一面とは反対側の面であって積層体の最外面を形成する第二面と、を有しており、少なくとも第二面に防錆処理が施されている。
【0007】
この構成の蓄電モジュールでは、積層体の最外面を形成する金属板の第二面に防錆処理が施されている。これにより、金属板の第二面に防錆処理を施すという簡易な構成で、電解液の漏れ等が発生することを抑制できる。この結果、長期信頼性を向上することができる。
【0008】
本発明に係る蓄電モジュールでは、第二面は、積層方向から見たときに外形に沿って形成される所定幅の枠状領域と、枠状領域の内側に形成される矩形領域と、を有しており、防錆処理は、矩形領域にのみ施されていてもよい。この構成では、樹脂部が溶着される部分である枠状領域には防錆処理がなされない。これにより、金属板と樹脂部との溶着を良好にすることができる。更に、空気中の水分等と鋼板とが反応するおそれがある必要最低限の範囲に防錆処理が施されるので、防錆処理にかかる費用を抑制することができる。
【0009】
本発明に係る蓄電モジュールでは、第一方向においてバイポーラ電極群の一方の端部に配置される金属板の第一面には、負極活物質が形成されており、第一方向においてバイポーラ電極群の他方の端部に配置される金属板の第一面には、正極活物質が形成されていてもよい。この構成では、負極側終端電極及び正極側終端電極を構成する金属板の一方の面に防錆処理を施すという簡易な構成によって、長期信頼性を向上させることができる。
【0010】
本発明に係る蓄電モジュールでは、バイポーラ電極群と金属板の一方との間には、一方の面に負極活物質が塗工され、他方の面に活物質が塗工されていない負極側終端電極が配置されており、負極側終端電極における一方の面は、バイポーラ電極群に面しており、金属板と負極側終端電極と枠体との間には、空間が形成されていてもよい。この構成では、負極側終端電極の外側に活物質が塗工されていない未塗工金属板を配置し、当該未塗工金属板の一方の面に防錆処理を施すという簡易な構成によって、製造コストを抑えつつ、長期信頼性を向上させることができる。更に、この構成では、蓄電モジュールの内部と外部との間に、金属板によって形成される空間を設けることができるのでアルカリクリープの進行を抑制することができる。
【0011】
本発明に係る蓄電モジュールでは、金属板は、第二面にのみ防錆処理が施されていてもよい。蓄電モジュールでは、蓄電モジュールの外部から浸食されることが多いが、この構成では、このような外部からの浸食を効果的に防止することができる。
【0012】
本発明に係る蓄電モジュールでは、防錆処理は、導電助剤を含む防錆剤が塗布された処理であってもよい。この構成では、樹脂又は油等の絶縁材料が含まれる防錆剤を使用する場合であっても、金属板の導電性を阻害することなく防錆することができる。
【0013】
本発明に係る蓄電モジュールでは、金属板は、メッキ処理されていてもよい。金属板として、例えば、ニッケルメッキが施された鋼板等、コスト及び電解液への耐反応性等に有利な材料を採用することが可能となる。この場合、メッキ処理によって形成されるメッキ層の表面にメッキ欠陥(ピンホール)が存在すると、当該ピンホールにて空気中の水分等と鋼板とが反応し、金属板が錆びてしまうおそれがある。この構成では、このようなメカニズムで発生する錆の発生を防止できるので、製造コストを抑えつつ、長期信頼性を向上することができる。
【0014】
本発明に係る蓄電モジュールでは、メッキ処理によって形成されるメッキ層は、金属板の表面から一方向に突出する金属からなる複数の突起を有し、防錆処理によって形成される防錆膜の厚みは、突起の最大高さ以下であってもよい。この構成では、防錆処理によって形成される防錆膜によって、金属板の導電性が阻害されることを防止できる。
【0015】
本発明に係る蓄電モジュールの製造方法では、一方の面に正極活物質が塗工され、他方の面に負極活物質が塗工された電極板と、一方の面に活物質が塗工され、他方の面に活物質が塗工されていない金属板と、電極板及び金属板の縁部にわたって設けられる第一樹脂部と、を準備する準備工程と、電極板の縁部に第一樹脂部を溶着してバイポーラ電極ユニットを形成すると共に、金属板の縁部に第一樹脂部を溶着して終端電極ユニットを形成するユニット形成工程と、バイポーラ電極ユニットが積層されたバイポーラ電極群の第一方向における外側に終端電極ユニットを配置して積層体を形成し、当該積層体の側面を第二樹脂部で取り囲むことによって積層体を一体化する積層体形成工程と、積層体形成工程によって形成された積層体の最外側に配置された金属板の外側面に防錆処理を施す防錆処理工程と、を含む。
【0016】
これらの構成の蓄電モジュールの製造方法では、積層体の最外面を形成する金属板の外側面に防錆処理を容易に施すことができる。また、外側面に防錆処理を施すという簡易な構成で、電解液の漏れ等が発生することを抑制できる。この結果、長期信頼性を向上することができる。
【0017】
本発明に係る蓄電モジュールの製造方法では、一方の面に正極活物質が塗工され、他方の面に負極活物質が塗工された第一電極板と、一方の面に活物質が塗工され、他方の面に活物質が塗工されていない第二電極板と、両面に活物質が塗工されていない金属板と、第一電極板、第二電極板、及び金属板の縁部にわたって設けられる第一樹脂部と、を準備する準備工程と、第一電極板の縁部に第一樹脂部を溶着してバイポーラ電極ユニットを形成すると共に、第二電極板の縁部に第一樹脂部を溶着して終端電極ユニットを形成する、ユニット形成工程と、バイポーラ電極ユニットが積層されたバイポーラ電極群の第一方向における外側に、一方の面がバイポーラ電極群に面するように終端電極ユニットを配置すると共に、少なくとも一方の終端電極ユニットの外側に金属板を配置した積層体を形成し、当該積層体の側面を第二樹脂部で取り囲むことによって、金属板と第二電極板と第二樹脂部とによって囲まれる空間が形成されるように積層体を一体化する積層体形成工程と、積層体形成工程によって形成された積層体の最外側に配置された金属板の外側面に防錆処理を施す防錆処理工程と、を含む。
【0018】
これらの構成の蓄電モジュールの製造方法では、積層体の最外面を形成する金属板の外側面に防錆処理を容易に施すことができる。また、外側面に防錆処理を施すという簡易な構成で、電解液の漏れ等が発生することを抑制できる。この結果、長期信頼性を向上することができる。更に、この構成では、蓄電モジュールの内部と外部との間に、金属板によって形成される空間を設けることができるのでアルカリクリープの進行を抑制することができる。
【0019】
本発明に係る蓄電モジュールの製造方法では、金属板は、メッキ処理されていてもよい。この構成の蓄電モジュールの製造方法では、仮に、最外集電体の表面にピンホール等が存在したとしても、当該ピンホールにて空気中の水分等と鋼板とが反応してしまうことを防止できる蓄電モジュールの製造が可能となる。この結果、製造コストを抑えつつ、長期信頼性を向上することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、製造コストを抑えつつ、長期信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】一実施形態に係る蓄電装置を示す概略断面図である。
【
図2】
図1に示される蓄電装置に含まれる蓄電モジュールを示す概略断面図である。
【
図3】
図2に示される蓄電モジュールを示す斜視図である。
【
図4】
図2に示される金属板の中央部近傍のメッキ層の断面図である。
【
図5】
図2に示される負極側終端電極に含まれる電極板を積層体の外側から見た平面図である。
【
図6】一実施形態に係る蓄電モジュールの製造方法を示すフローチャートである。
【
図7】変形例に係る蓄電モジュールの一部を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら一実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
図1~
図3及び
図6には、XYZ直交座標系が示される。
【0023】
一実施形態に係る蓄電モジュール12を備える蓄電装置10の構成について説明する。蓄電装置10は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、又は電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電モジュール12は、例えば、バイポーラ電池である。蓄電モジュール12は、例えば、ニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池であるが、電気二重層キャパシタであってもよい。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0024】
図1に示されるように、蓄電装置10は、複数の蓄電モジュール12と、導電板14と、拘束部材16と、を備える。
【0025】
複数の蓄電モジュール12は、例えば金属板等の導電板14を介して積層される。積層方向D1(Z方向:第一方向)から見て、蓄電モジュール12及び導電板14は、例えば矩形形状を有する。各蓄電モジュール12の詳細については後述する。導電板14は、蓄電モジュール12の積層方向D1における外側に位置する蓄電モジュール12の外側にもそれぞれ配置される。導電板14は、隣り合う蓄電モジュール12と電気的に接続される。これにより、複数の蓄電モジュール12が積層方向D1に電気的に直列に接続される。
【0026】
積層方向D1において、一端に位置する導電板14には端子部材24が接続されており、他端に位置する導電板14には端子部材26が接続されている。端子部材24は、接続される導電板14と一体であってもよい。端子部材26は、接続される導電板14と一体であってもよい。端子部材24及び端子部材26は、積層方向D1に交差する方向(X方向)に延在している。これらの端子部材24及び端子部材26により、蓄電装置10の充放電を実施できる。
【0027】
なお、蓄電装置1においては、積層方向の一端及び他端に蓄電モジュール2が配置されていてもよい。すなわち、蓄電装置1における蓄電モジュール2と導電板3との積層体の最外層(スタック最外層)は、蓄電モジュール2であってもよい。この場合、スタック最外層の蓄電モジュール2に対して、正極端子4及び負極端子5が設けられる。
【0028】
導電板14は、蓄電モジュール12において発生した熱を放出するための放熱板としても機能し得る。導電板14の内部に設けられた複数の空隙14aを空気等の冷媒が通過することにより、蓄電モジュール12からの熱を効率的に外部に放出できる。各空隙14aは、例えば積層方向D1に交差する方向(Y方向)に延在する。積層方向D1から見て、導電板14は、蓄電モジュール12よりも小さいが、蓄電モジュール12と同じかそれより大きくてもよい。
【0029】
拘束部材16は、一対の拘束プレート16A,16Bと、拘束プレート16A,16B同士を連結する連結部材(ボルト18及びナット20)と、を備える。各拘束プレート16A,16Bと導電板14との間には、例えば樹脂フィルム等の絶縁フィルム22が配置される。各拘束プレート16A,16Bは、例えば鉄等の金属によって構成されている。積層方向D1から見て、各拘束プレート16A,16B及び絶縁フィルム22は例えば矩形形状を有する。絶縁フィルム22は導電板14よりも大きくなっており、各拘束プレート16A,16Bは、蓄電モジュール12よりも大きくなっている。
【0030】
積層方向D1から見て、拘束プレート16Aの縁部には、ボルト18の軸部を挿通させる挿通孔H1が蓄電モジュール12よりも外側となる位置に設けられている。同様に、積層方向D1から見て、拘束プレート16Bの縁部には、ボルト18の軸部を挿通させる挿通孔H2が蓄電モジュール12よりも外側となる位置に設けられている。積層方向D1から見て各拘束プレート16A,16Bが矩形形状を有している場合、挿通孔H1及び挿通孔H2は、拘束プレート16A,16Bの角部に位置する。
【0031】
一方の拘束プレート16Aは、端子部材26に接続された導電板14に絶縁フィルム22を介して突き当てられ、他方の拘束プレート16Bは、端子部材24に接続された導電板14に絶縁フィルム22を介して突き当てられている。ボルト18は、例えば一方の拘束プレート16A側から他方の拘束プレート16B側に向かって挿通孔H1に通され、他方の拘束プレート16Bから突出するボルト18の先端には、ナット20が螺合されている。これにより、絶縁フィルム22、導電板14及び蓄電モジュール12が挟持されてユニット化されると共に、積層方向D1に拘束荷重が付加される。なお、スタック最外層が蓄電モジュール2である場合には、各拘束プレート7と蓄電モジュール2との間に絶縁フィルム22が介在されることとなる。
【0032】
図2に示されるように、蓄電モジュール12は、複数のバイポーラ電極32(バイポーラ電極群)と、バイポーラ電極32の積層方向D1においてバイポーラ電極群の外側に配置される負極側終端電極39及び正極側終端電極37と、を有する積層体30を備える。積層方向D1から見て積層体30は、例えば矩形形状を有する。隣り合うバイポーラ電極32間にはセパレータ47が配置される。バイポーラ電極32は、電極板34と、電極板34の一方の面に設けられた正極36と、電極板34の他方の面に設けられた負極38とを含む。積層体30において、一のバイポーラ電極32の正極36は、セパレータ47を挟んで積層方向D1に隣り合う一方のバイポーラ電極32の負極38と対向し、一のバイポーラ電極32の負極38は、セパレータ47を挟んで積層方向D1に隣り合う他方のバイポーラ電極32の正極36と対向している。
【0033】
負極側終端電極39は、積層方向D1において、バイポーラ電極群の一端に配置されている。負極側終端電極39は、積層方向D1において、内側面(第一面)35aに負極(負極活物質)38が配置され、外側面(第二面)35bに活物質が配置されていない金属板35を有している。負極側終端電極39の負極38は、セパレータ47を介して最上層のバイポーラ電極32の正極36と対向している。
【0034】
正極側終端電極37は、積層方向D1において、内側面(第一面)35aに正極(正極活物質)36が配置され、外側面(第二面)35bに活物質が配置されていない金属板35を有している。正極側終端電極37の正極36は、セパレータ47を介して最下層のバイポーラ電極32の負極38と対向している。これら負極側終端電極39の金属板35及び正極側終端電極37の金属板35はそれぞれ隣り合う導電板14(
図1参照)に接続される。
【0035】
蓄電モジュール12は、積層方向D1に延在する積層体30の側面30aにおいて電極板34の縁部34aを保持する枠体50を備える。積層体30の側面30aは、電極板34の一方の面と他方の面とを接続する端面からなる。枠体50は、積層方向D1から見て積層体30の周囲に設けられている。すなわち、枠体50は、電極板34の縁部34a及び金属板35の縁部35cを保持すると共に、積層体30の側面30aを取り囲むように構成されている。枠体50は、各電極板34の縁部34a及び金属板35の縁部35cに設けられ、電極板34の端部34b及び金属板35の縁部35cから張り出す張出部分52bをそれぞれ有する複数の第一樹脂部52と、積層方向D1から見て第一樹脂部52の周囲に設けられる第二樹脂部54とを備え得る。
【0036】
枠体50の内壁を構成する第一樹脂部52は、各バイポーラ電極32の電極板34の一方の面(ここでは正極36が形成される面)から縁部34aにおける電極板34の端面にわたって設けられている。積層方向D1から見て、各第一樹脂部52は、各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34a全周にわたって設けられている。隣り合う第一樹脂部52同士は、各バイポーラ電極32の電極板34の他方の面(ここでは負極38が形成される面)の外側に延在する面において当接している。その結果、第一樹脂部52には、各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34aが埋没して保持されている。
【0037】
各バイポーラ電極32の電極板34の縁部34aと同様に、バイポーラ電極群の外側に配置された金属板35の縁部35cも第一樹脂部52に埋没した状態で保持されている。具体的には、正極側終端電極37については、正極側終端電極37の外側面(導電板14に接続される面)にも、第一樹脂部52が設けられている。すなわち、正極側終端電極37の金属板35の縁部35cは、正極側終端電極37の外側面に設けられた第一樹脂部52(
図2において一番下に設けられた第一樹脂部52)と、正極側終端電極37の金属板35の内側面35aに設けられた第一樹脂部52とに埋没した状態で保持されている。
【0038】
蓄電モジュール12における枠体50の内部には、隣り合う電極板34,34と第一樹脂部52とによって囲まれる複数の内部空間V、及び電極板34と金属板35と第一樹脂部52とによって囲まれる二つの内部空間Vが形成される。内部空間Vには、電解液Eが充填される。
図3に示されるように、各内部空間Vは、当該内部空間Vをシール(封止)する枠体50に形成された開口部50eを介して、圧力調整弁(図示せず)に接続されている。
【0039】
枠体50(第一樹脂部52及び第二樹脂部54)は、例えば絶縁性の樹脂を用いた射出成形によって矩形の筒状に形成されている。枠体50を構成する樹脂材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等が挙げられる。
【0040】
積層方向D1(
図1参照)から見て枠体50の一辺を形成する一つの側面50s(ここでは、枠体50の長手方向(Y方向)を向く一つの側面50s)には、複数の開口部50eが設けられている。開口部50eのそれぞれは、内部空間Vのそれぞれと連通している。各開口部50e(例えば24個)は、各内部空間V(例えば24個)に電解液Eを注入するための注液口として機能すると共に、電解液Eが注入された後は、圧力調整弁の接続口として機能する。
【0041】
図2及び
図3に示されるように、枠体50の外壁を構成する第二樹脂部54は、積層方向D1を軸方向として延在する筒状部である。第二樹脂部54は、積層方向D1において積層体30の全長にわたって延在する。第二樹脂部54は、積層方向D1に延在する第一樹脂部52の外側面を覆っている。第二樹脂部54は、例えば、射出成形等により形成される。第二樹脂部54は、第一樹脂部52の周縁部にモールドを設置し、当該モールド内に流動性を有する第二樹脂部54の樹脂材料を流し込むことによって形成される。これにより、第一樹脂部52及び第二樹脂部54を有する枠体50が形成される。
【0042】
電極板34は、例えば、ニッケルメッキ鋼板である。電極板34の縁部34aは、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっており、当該未塗工領域が枠体50の内壁を構成する第一樹脂部52に埋没して保持される領域となっている。正極36を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極38を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。電極板34の他方の面における負極38の形成領域は、電極板34の一方の面における正極36の形成領域に対して一回り大きくなっている。
【0043】
セパレータ47は、例えばシート状に形成されている。セパレータ47を形成する材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン等からなる織布又は不織布等が例示される。また、セパレータ47は、フッ化ビニリデン樹脂化合物等で補強されたものであってもよい。
【0044】
ここで、負極側終端電極39に含まれる金属板35について詳細に説明する。
図2に示されるように、金属板35は、外側面35bと内側面35aとを有している。金属板35の内側面35aは、負極活物質が塗工されている。また、金属板35の内側面35aにおいて縁部35cは、負極活物質が塗工されない未塗工領域となっており、当該未塗工領域が枠体50の内壁を構成する第一樹脂部52に埋没して保持される領域となっている。負極38を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。
【0045】
金属板35は、ニッケルメッキ処理が表面に施された鋼板(ニッケルメッキ鋼板)Sである。鋼板としては、例えばJIS G 3141:2005にて規定される冷間圧延鋼板(SPCC等)が挙げられる。金属板35の厚さは、例えば、0.1μm以上1000μm以下であってもよい。
図4に示されるように、金属板35の外側面35bには、鋼板Sの一方の表面S11を覆う粗化メッキ層40が形成されている。粗化メッキ層40は、金属板35を構成する鋼板Sに対して電解ニッケルメッキ処理(電解メッキ処理)を実施することによって、鋼板Sの表面S11に形成されている。すなわち、粗化メッキ層40は、電解メッキ処理によって形成されたニッケルメッキ層に相当する。
【0046】
一例として、粗化メッキ層40は、鋼板Sの一方の表面S11上に設けられる第一ニッケルメッキ層41と、第一ニッケルメッキ層41上に設けられる第二ニッケルメッキ層42とを有する。第一ニッケルメッキ層41と、第二ニッケルメッキ層42とは、互いに異なる条件にて電解メッキを実施することによって形成されている。
【0047】
第一ニッケルメッキ層41は、積層方向D1に交差する面内方向D2に沿って鋼板Sの一方の表面S11上に設けられる電解メッキ層である。面内方向D2は、XY平面に沿う方向、もしくは一方の表面S11の延在方向に相当する。したがって、面内方向D2は、必ずしも積層方向D1に直交しなくてもよい。第一ニッケルメッキ層41は、一方の表面S11の全体を覆っている。
【0048】
第一ニッケルメッキ層41は、積層方向D1に沿って突出する複数の凸部43を有する。このため、第一ニッケルメッキ層41の表面形状は、鋼板Sの一方の表面S11の表面形状よりも粗くなっている。複数の凸部43は、面内方向D2に沿って不規則に設けられる。第一ニッケルメッキ層41の厚さが約1μm又はそれ以上である場合、凸部43の平均高さは、例えば0.4μm以上であって、第一ニッケルメッキ層41の厚さの半分以下程度である。この場合、第二ニッケルメッキ層42の形状を良好にすることができる。凸部43の平均高さは、例えばレーザ共焦点光学系を用いた顕微鏡を用いて測定される。
【0049】
第二ニッケルメッキ層42は、第一ニッケルメッキ層41を被成膜面として設けられる電解メッキ層であり、第一ニッケルメッキ層41よりも大きい表面粗さを有する。第二ニッケルメッキ層42は、必ずしも第一ニッケルメッキ層41の表面全体を覆うように形成されなくてもよい。複数の突起44のそれぞれは、対応する凸部43に接する部分を基端44aとして、積層方向D1に沿って先端44bに至るように形成されている。
【0050】
複数の突起44の少なくとも一部は、例えば略球形状を呈するニッケル結晶等の析出金属(付与物)を含む。このような析出金属が互いに重畳することによって、当該突起44の面内方向D2における長さ寸法が、基端44aにおける面内方向D2の長さ寸法よりも大きい拡大部44cが形成されている。すなわち、少なくとも一部の突起44は、基端44a側から先端44b側に向かって先太りとなる先太り形状を呈している。突起44における拡大部44cの位置は、必ずしも先端44bでなくてもよいが、少なくとも基端44aよりも先端44b側に位置している。突起44における拡大部44cの位置は、析出金属の重複態様により突起44ごとに異なってもよい。
【0051】
図5に示されるように、金属板35の外側面35bは、Z方向(積層方向D1)から見たときに外形に沿って形成される所定幅の枠状領域135と、枠状領域の内側に形成される矩形領域235と、を有している。
【0052】
金属板35の枠状領域135は、第一樹脂部52に溶着される部分である。金属板35の枠状領域135において、第一樹脂部52は、粗化メッキ層40に接するように設けられている。複数の突起44において隣り合う二つの突起44間には、図示はしないが第一樹脂部52の一部が介在されている。例えば、第一樹脂部52を構成する樹脂が硬化する前に、当該樹脂の一部が突起44間に介在される。そして樹脂全体を硬化することによって、突起44間に第一樹脂部52の一部が介在される。これにより、隣り合う二つの突起44は、介在される第一樹脂部52の一部が基端44aから離れる方向へ移動することを規制する。すなわち、粗化メッキ層40は、鋼板Sと第一樹脂部52との間における結合強度及び液密性を確保すると共に、金属板35の表面積を大きくするために設けられている。
【0053】
金属板35の矩形領域235は、蓄電装置10(
図1参照)において隣り合う蓄電モジュール12と電気的に接続するために導電板14を接触させる部分である。金属板35の矩形領域235には防錆処理がなされ、枠状領域135には防錆処理がなされていない。すなわち、負極側終端電極39の金属板35は、外側面35bの矩形領域235にのみ防錆処理が施されている。矩形領域235は、錆止め油を塗布することによって防錆処理されてもよいし、水溶性の錆止剤の塗布することによって防錆処理がなされてもよい。
図4に示されるように、防錆処理によって形成される防錆膜45の厚みTは、金属板35に粗化メッキ層40として形成されている突起44の最大高さH以下としてもよい。
【0054】
ここで、錆止め油の例には、大和化成株式会社製のVERZONE OIL-U及びキレスト株式会社製のキレスライトP300が含まれる。また、水溶性の錆止剤の例には、株式会社NMC製のHYP-W25及びスギムラ化学工業株式会社製のW-7PKが含まれる。なお、上記防錆処理は、導電助剤を含む防錆剤を塗布することによってなされてもよい。導電助剤の例には、カーボン、金属、導電性酸化物、及び導電性樹脂等、電子伝導性を有する材料であれば限定はない。カーボン及び金属は、より高い導電性が期待できる点で好ましい。
【0055】
同様に、正極側終端電極37に含まれる金属板35について詳細に説明する。正極側終端電極37の金属板35も、例えば、負極側終端電極39の金属板35と同様に、粗化メッキ層40が形成されたニッケルメッキ鋼板である。粗化メッキ層40については、上述した構成と同じであるので、ここでの詳細な説明は省略する。金属板35の内側面35aは、正極活物質が塗工されている。また、金属板35の内側面35aにおいて縁部35cは、正極活物質が塗工されない未塗工領域となっており、当該未塗工領域が枠体50の内壁を構成する第一樹脂部52に埋没して保持される領域となっている。正極36を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。
【0056】
金属板35は、外側面35bと内側面35aとを有している。外側面35bは、Z方向(積層方向D1)から見たときに外形に沿って形成される所定幅の枠状領域135と、枠状領域の内側に形成される矩形領域235と、を有している。矩形領域235には防錆処理がなされ、枠状領域135には防錆処理がなされていない。すなわち、正極側終端電極37の金属板35は、外側面35bの矩形領域235にのみ防錆処理が施されている。矩形領域235は、上述したような錆止め油を塗布することによって防錆処理されてもよいし、上述したような水溶性の錆止剤の塗布することによって防錆処理がなされてもよい。
【0057】
次に、金属板35,35の防錆処理方法を含めた蓄電モジュール12の製造方法について説明する。
【0058】
次に、本実施形態に係る蓄電モジュール12の製造方法について説明する。
図6に示されるように、本実施形態の蓄電モジュール12の製造方法は、準備工程S1、ユニット形成工程S2、積層体形成工程S3、及び防錆処理工程S4を含む。
【0059】
この製造方法では、まず、バイポーラ電極32、第一樹脂部52、負極側終端電極39の金属板35、及び正極側終端電極37の金属板35を準備する(準備工程S1)。続いて、バイポーラ電極32の電極板34の一方の面における縁部34aに第一樹脂部52を溶着してバイポーラ電極ユニットを形成し、負極側終端電極39の金属板35の外側面35bにおける枠状領域135に第一樹脂部52を溶着して負極側終端電極ユニットを形成し、正極側終端電極37の金属板35の外側面35bにおける枠状領域135に第一樹脂部52を溶着して正極側終端電極ユニットを形成する(ユニット形成工程S2)。
【0060】
続いて、積層方向D1に沿ってバイポーラ電極ユニットを積層することにより、バイポーラ電極ユニット群を形成する。次に、バイポーラ電極ユニット群の積層方向D1における一端において、負極側終端電極39の負極38がバイポーラ電極ユニット群と対向するように、負極側終端電極ユニットを配置する。次に、バイポーラ電極ユニット群の積層方向D1における他端において、正極側終端電極37の正極36がバイポーラ電極ユニット群と対向するように、正極側終端電極ユニットを配置する。次に、積層体30の周縁部にモールドを設置し、当該モールド内に流動性を有する第二樹脂部54の樹脂材料を流し込む。これにより、第一樹脂部52及び第二樹脂部54を有する枠体50が形成される(積層体形成工程S3)。
【0061】
続いて、負極側終端電極39の金属板35の外側面35b及び正極側終端電極37の金属板35の外側面35bに錆止め油を塗布する。このとき、防錆膜45の厚みTが、突起44の最大高さH以下となるように錆止め油が塗布される(
図4参照)。錆止め油は、積層体形成工程S3において形成された積層体30において、金属板35が露出している部分に対して実施する。すなわち、本実施形態の防錆処理は、負極側終端電極39及び正極側終端電極37の金属板35における矩形領域235(
図5参照)に対して実施される。なお、金属板35に対する防錆処理は、錆止め油を塗布する代わりに水溶性の防錆剤を塗布してもよい。このようなステップS1~ステップS4の工程を経ることによって、
図2に示されるような蓄電モジュール12が形成される。
【0062】
次に、上記実施形態の蓄電モジュール12の作用効果について説明する。上記実施形態の蓄電モジュール12及び蓄電モジュール12の製造方法では、積層体30の最外面を形成する金属板35の外側面35bに防錆処理が施されている。このため、仮に、金属板35の外側面35bにピンホール等が存在したとしても、当該ピンホールにて空気中の水分等と鋼板とが反応してしまうことを防止できる。これにより、金属板35の外側面35bに防錆処理を施すという簡易な構成で、電解液の漏れ等が発生することを抑制できる。この結果、製造コストを抑えつつ、長期信頼性を向上することができる。
【0063】
上記実施形態の蓄電モジュール12では、金属板35の矩形領域235にのみ防錆処理が施されている。言い換えれば、第一樹脂部52が溶着される部分である枠状領域135には防錆処理がなされない。これにより、金属板35と第一樹脂部52との溶着を良好にすることができる。更に、空気中の水分等と鋼板とが反応するおそれがある必要最低限の範囲に防錆処理が施されるので、防錆処理にかかる費用を抑制することができる。
【0064】
上記実施形態の蓄電モジュール12では、負極側終端電極39及び正極側終端電極37を構成するそれぞれの金属板35,35の外側面35b,35bに防錆処理を施すという簡易な構成によって、製造コストを抑えつつ、長期信頼性を向上させることができる。
【0065】
以上、一実施形態について詳細に説明されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0066】
上記実施形態では、負極側終端電極39及び正極側終端電極37を構成する金属板35,35の外側面35b,35bに防錆処理が施されている例を挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、
図7に示されるように、電極板(第一電極板)34を含む複数のバイポーラ電極32からなるバイポーラ電極群と、バイポーラ電極群の外側両端に配置される、金属板(第二電極板)35を含む負極側終端電極39及び正極側終端電極37と、上記負極側終端電極39の外側に、両面に活物質が塗工されていない未塗工の金属板335が配置されているような蓄電モジュール12に適用することも可能である。未塗工の金属板335は、バイポーラ電極群(負極側終端電極39)に対向する内側面(第一面)335aと、内側面335aとは反対側の面であって積層体30の最外面を形成する外側面(第二面)335bと、を有している。未塗工の金属板335は、少なくとも外側面335bに上述の粗化メッキ層40が形成されたニッケルメッキ鋼板である。
【0067】
未塗工の金属板335は、外側面335bにのみ防錆処理が施されている。更に詳細には、外側面335bは、Z方向(積層方向D1)から見たときに外形に沿って形成される所定幅の枠状領域435と、枠状領域の内側に形成される矩形領域535と、を有している。矩形領域535には防錆処理がなされ、枠状領域435には防錆処理がなされていない。すなわち、未塗工の金属板335は、外側面35bの矩形領域535にのみ防錆処理が施されている。矩形領域535は、錆止め油を塗布することによって防錆処理されてもよいし、水溶性の錆止剤の塗布することによって防錆処理がなされてもよい。この場合も、防錆処理によって形成される防錆膜45の厚みTは、金属板35に形成されている突起44の最大高さH以下としてもよい。
【0068】
変形例に係る蓄電モジュール312では、負極側終端電極39の金属板35の外側面35bには、防錆処理は施されていない。代わりに、未塗工の金属板335の外側面335bにのみ防錆処理が施されている。なお、その他の構成については、上記実施形態と同じであるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0069】
変形例に係る蓄電モジュール312では、負極側終端電極39の外側に未塗工の金属板335を配置し、当該未塗工の金属板335の外側面335bに防錆処理を施すという簡易な構成によって、製造コストを抑えつつ、長期信頼性を向上させることができる。更に、変形例に係る蓄電モジュール312では、金属板335と負極側終端電極39と枠体50とによって囲まれる空間VAが形成されている。すなわち、変形例に係る蓄電モジュール312では、内部空間Vと外部との間に、金属板335によって形成される空間VAを設けることができるのでアルカリクリープの進行を抑制することができる。
【0070】
上記実施形態及び変形例では、金属板35(335)の外側面35b(335b)における一部の矩形領域235(535)に防錆処理がされたニッケルメッキ鋼板を例に挙げて説明したが、外側面35b(335b)の全ての領域が防錆処理されたニッケルメッキ鋼板を用いてもよい。
【0071】
上記実施形態及び変形例では、金属板35(335)として粗化メッキ層40が形成されたニッケルメッキ鋼板を用いる例を挙げて説明したが、通常の平滑メッキ層が形成されたニッケルメッキ鋼板を用いてもよいし、メッキ処理されていないニッケル箔等の金属板を用いてもよい。
【0072】
上記実施形態及び変形例では、電極板34のメッキ層について詳細な説明をしなかったが、金属板35に形成される粗化メッキ層40と同様の構成としてもよい。
【0073】
上記実施形態及び変形例では、射出成形によって電極板34の周縁部に枠体50を形成する例を挙げて説明したが、電極板34の周縁部に第一樹脂部52を溶着することによって枠体50を形成してもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…蓄電装置、12…蓄電モジュール、30…積層体、32…バイポーラ電極、34…電極板、35…金属板、35a,335a…内側面(第一面)、35b,335b…外側面(第二面)、35c…縁部、36…正極、37…正極側終端電極、38…負極、39…負極側終端電極、40…粗化メッキ層(メッキ層)、44…突起、45…防錆膜、50…枠体、52…第一樹脂部、54…第二樹脂部、135,435…枠状領域、235,535…矩形領域、312…蓄電モジュール、335…金属板、S1…準備工程、S2…ユニット形成工程、S3…積層体形成工程、S4…防錆処理工程。