IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エンドレスアドバンスの特許一覧 ▶ 豊田 哲郎の特許一覧

<>
  • 特許-土壌充填剤 図1
  • 特許-土壌充填剤 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】土壌充填剤
(51)【国際特許分類】
   C05D 9/02 20060101AFI20220530BHJP
   A01G 7/06 20060101ALI20220530BHJP
   C09K 17/02 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
C05D9/02
A01G7/06 A
C09K17/02 H
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017138904
(22)【出願日】2017-07-18
(65)【公開番号】P2019019027
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】599148226
【氏名又は名称】株式会社エンドレスアドバンス
(73)【特許権者】
【識別番号】503075334
【氏名又は名称】豊田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100086092
【弁理士】
【氏名又は名称】合志 元延
(72)【発明者】
【氏名】田中 孝
(72)【発明者】
【氏名】花里 功
(72)【発明者】
【氏名】豊田 哲郎
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-198635(JP,A)
【文献】特開2017-178629(JP,A)
【文献】特開2014-201470(JP,A)
【文献】特開2011-211913(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0008215(US,A1)
【文献】特開2004-123677(JP,A)
【文献】特開昭59-013687(JP,A)
【文献】特開2015-006979(JP,A)
【文献】特開2003-226587(JP,A)
【文献】特開2001-181075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05D 9/00
A01G 7/06
C09K 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物生育用として土壌に施される充填剤であって、少なくとも、二価鉄(Fe)と、炭素(C)と、有機酸と、ミネラルと、珪酸を主成分とする鉱物素材と、腐植物質と、コーヒー豆焙煎粉砕物及び/又は茶葉とが、配合されており、
該二価鉄は、二価鉄含有物質中に含有されており、粉状,粒状,又は塊状をなし、
該炭素は、炭素材からなるか又は炭素含有物質中に含有されており、粉状,粒状,塊状,又は繊維状をなし、
該鉱物素材は、そのコロイド粒子に、自体に含有したミネラル及び上記ミネラルが吸着しており、水分を含む該土壌中において、それらのミネラルを放出すると共に、該土壌中の有害物質を吸着,除去し、
該二価鉄は、水分を含む該土壌中において、隣接した該炭素より電気陰性度が低いことに起因して、二価の鉄イオン(Fe2+)化し、
該腐植物質は、ピートモス,その他の腐植土中に含有されており、該二価鉄は、水分を含む該土壌中において、該腐植物質のフミン酸の働きにより、二価の鉄イオン(Fe2+)化し、
該二価の鉄イオンは、上記有機酸と結合し、もって錯体である有機酸鉄が生成され、又、該二価の鉄イオンは、該腐植物質のフルボ酸と結合し、もって錯体であるフルボ酸鉄が生成され、
そして、該コーヒー豆焙煎粉砕物及び/又は茶葉は、水分を含む該土壌中において、該二価の鉄イオンが、該有機酸鉄化や該フルボ酸鉄化されることなく酸化されてしまった酸化鉄(Fe)、及び該鉱物素材にミネラルとして吸着されていた酸化鉄(Fe)を、二価の鉄イオン(Fe2+)に還元して維持すること、を特徴とする土壌充填剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌充填剤に関する。すなわち、植物の生育,栽培用として土壌に施される、土壌充填剤に関する。
【背景技術】
【0002】
《技術的背景》
植物肥料の三大要素,多量要素は、窒素,リン酸,カリウムである。次いで、カルシウム,マグネシウム,硫黄等の肥料が、中量要素として知られている。
そして、鉄は微量要素ではあるが、植物の光合成,葉緑素合成,酸化還元,その他の生育に関し、必須肥料となっている。
【0003】
《従来技術》
これに対し最近、鉄欠乏症が問題となっている。土壌のアルカリ化,その他に伴い、鉄が植物に吸収,摂取されなくなる、という問題が指摘されている。
鉄は、水分を含む土壌中では、二価の鉄イオン(Fe2+)か三価の鉄イオン(Fe3+)の形態で存在するが、植物等の生体内では、二価の鉄イオンの形態でのみ存在し得る。従って、鉄を二価の鉄イオンとして植物に吸収,摂取させることが必要となる。
三価の鉄イオンは、不溶性水酸化物つまり酸化鉄(Fe)となり、植物の吸収,摂取が不可能化する。しかるに、二価の鉄イオンは土壌中では、酸化されて三価の鉄イオン化,酸化鉄化され易い。
又、このような鉄欠乏症と共に、ミネラル欠乏症も問題となっている。ミネラルは、カリウム,カルシウム,マグネシウム,ナトリウム,その他多くの鉱物素材の無機成分よりなり、水中では金属イオンの形で存在するものが多いが、天然由来の素材成分の減少と共に、その不足,欠乏が指摘されている。
このように最近、鉄欠乏症やミネラル欠乏症が顕著化,問題化している。そして従来、このような鉄欠乏症やミネラル欠乏症への従来技術,対策技術は少なく、僅かな技術が散見されるに過ぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
このような従来技術としては、例えば、次の特許文献1,2,3に示されたものが挙げられる。
【文献】特開2003-12390号公報
【文献】特開2007-195546号公報
【文献】特開平9-136807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
まず、従来の鉄欠乏症対策の従来技術は、十分な効果を発揮するには至っていなかった。例えば、上述した特許文献1,2,3の技術は、キレート鉄錯体(含.二価の鉄イオン)を構成内容とするが、コストやコントロール性に問題が指摘されていた。
又、従来技術として、森林の腐植土中で自然生成されたフルボ酸鉄(含.二価の鉄イオン)を採取することも行われていたが、極めてコスト高となっていた。更に、いずれの従来技術も、効果の持続性に問題が指摘されていた。すなわち二価の鉄イオンを、長期間,安定的に土壌中に供給し続ける維持性に乏しかった。
これらに鑑み、鉄欠乏症問題は依然解消されていなかった。ミネラル欠乏症問題についても、同様の事情により問題解消には至っていなかった。もって、植物の光合成,葉緑素合成,酸化還元,その他の生成に、支障が発生し易かった。
【0006】
《本発明について》
本発明の土壌充填剤は、このような実情に鑑み、上記従来技術の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、鉄が二価の鉄イオンとして植物に摂取され、第2に、酸化鉄も二価の鉄イオン化されて摂取され、第3に、ミネラルも十分摂取されると共に、第4に、しかもこれらが簡単容易に、コスト,安定性,持続性に優れつつ実現され、土壌環境も向上する、土壌充填剤を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
《請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、特許請求の範囲の請求項1に記載したように、次のとおりである。
この土壌充填剤は、植物生育用として土壌に施される。そして少なくとも、二価鉄(Fe)と、炭素(C)と、有機酸と、ミネラルと、珪酸を主成分とする鉱物素材と、腐植物質と、コーヒー豆焙煎粉砕物及び/又は茶葉とが、配合されている。
該二価鉄は、二価鉄含有物質中に含有されており、粉状,粒状,又は塊状をなす。
該炭素は、炭素材からなるか又は炭素含有物質中に含有されており、粉状,粒状,塊状,又は繊維状をなす。
該鉱物素材は、そのコロイド粒子に、自体に含有したミネラル及び上記ミネラルが吸着しており、水分を含む該土壌中において、それらのミネラルを放出すると共に、該土壌中の有害物質を吸着,除去する。
【0008】
該二価鉄は、水分を含む該土壌中において、隣接した該炭素より電気陰性度が低いことに起因して、二価の鉄イオン(Fe2+)化する。
該腐植物質は、ピートモス,その他の腐植土中に含有されている。そして該二価鉄は、水分を含む該土壌中において、該腐植物質のフミン酸の働きにより、二価の鉄イオン(Fe2+)化する。
該二価の鉄イオンは、上記有機酸と結合し、もって錯体である有機酸鉄が生成される。又、該二価の鉄イオンは、該腐植物質のフルボ酸と結合し、もって錯体であるフルボ酸鉄が生成される。
【0009】
そして、該コーヒー豆焙煎粉砕物及び/又は茶葉は、水分を含む該土壌中において、該二価の鉄イオンが、該有機酸鉄化や該フルボ酸鉄化されることなく酸化されてしまった酸化鉄(Fe)、及び該鉱物素材にミネラルとして吸着されていた酸化鉄(Fe)を、二価の鉄イオン(Fe2+)に還元して維持すること、を特徴とする。

【0010】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)この土壌充填剤は、二価鉄,炭素,有機酸,ミネラル,腐植物質等が、配合されている。更に、珪酸を主成分とする鉱物素材,コーヒー豆焙煎粉砕物,茶葉が、配合されている。
(2)そして土壌中で、二価鉄は、炭素より電気陰性度が低いことに起因して、二価の鉄イオン化する。又、二価鉄は、腐植物質のフミン酸の働きによって、二価の鉄イオン化する。
(3)得られた二価の鉄イオンは、多くの場合、有機酸と結合して有機酸鉄となったり、腐植物質のフルボ酸と結合してフルボ酸鉄となる。有機酸やフルボ酸は、二価の鉄イオンに対する結合力が強く、二価の鉄イオンの酸化を大幅に抑制して有機酸鉄化やフルボ酸鉄化する。
(4)そして、二価の鉄イオンがそのままの形態で結合している有機酸鉄やフルボ酸鉄が、植物に吸収され、二価の鉄イオンが植物に摂取される。
(5)ところで、コーヒー豆焙煎粉砕物や茶葉は、土壌中の酸化鉄を二価の鉄イオンに還元,維持する。そこで、有機酸鉄化やフルボ酸鉄化せず酸化鉄化してしまった三価の鉄イオンも、元の二価の鉄イオン化される。この面からも、二価の鉄イオンの植物摂取が促進される。
(6)他方、鉱物素材は、イオン交換により、吸着したミネラルを土壌中に放出すると共に、有害物質を吸着,除去する。ミネラルとしては、鉱物素材自体のものや、予め配合されたものが含まれる。
(7)更に、この土壌充填剤にあっては、以下のようになる。まず、廉価な市販品,産業副産物,廃棄品,自然産品等を使用可能であり、構成が簡単である。又、フルボ酸鉄や有機酸鉄を、簡単容易に生成できる。
(8)しかも、酸化され易く不安定な二価の鉄イオンを、フルボ酸鉄や有機酸鉄としたことにより、酸化を大幅に抑制し安定的,持続的に植物に摂取させることができる。
酸化鉄化した三価の鉄イオンも、コーヒー豆焙煎粉砕物や茶葉により、二価の鉄イオンとして安定的,持続的に還元,維持,供給可能である。ミネラルも、鉱物素材のイオン交換により、安定的,持続的に供給可能である。
(9)土壌中の有害物質は、鉱物素材にて吸着,除去される。コーヒー豆焙煎粉砕物,茶葉,鉱物素材等は、土壌の通水性,通気性,保水性等に優れている。
(10)そこで、本発明に係る土壌充填剤は、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0011】
《第1の効果》
第1に、鉄が二価の鉄イオンとして、植物に摂取される。
本発明に係る土壌充填剤は、二価鉄,炭素,有機酸,ミネラル,腐植物質等を、配合してなる。そして土壌中で、二価鉄が二価の鉄イオン化した後、有機酸と結合して有機酸鉄となったり、腐植物質のフルボ酸と結合してフルボ酸鉄となり、もって二価の鉄イオンが、そのまま植物に摂取される。
従って、植物の光合成,葉緑素合成,酸化還元,その他の生育等が促進される。植物は、微量要素ながら必須肥料の鉄が、二価の鉄イオンとして吸収,摂取される。前述したこの種従来技術で指摘されていた鉄欠乏症問題は、解消される。
【0012】
《第2の効果》
第2に、酸化鉄も二価の鉄イオン化されて、植物に摂取されるようになる。
本発明に係る土壌充填剤は、コーヒー豆焙煎粉砕物や茶葉が配合されており、土壌中ので酸化鉄を二価の鉄イオンに還元,維持する。もって、二価の鉄イオンの植物への吸収,摂取が、この面からも促進される。
すなわち、二価の鉄イオンは酸化され易く、前述したように有機酸鉄化やフルボ酸鉄化されることなく、酸化鉄化されてしまう場合も多々ある。特にこのような場合において、酸化鉄が再び二価の鉄イオン化される意義は大きい。これに加え、鉱物素材にミネラルとして吸着されていた酸化鉄も、二価の鉄イオン化される。
【0013】
《第3の効果》
第3に、ミネラルも植物に十分摂取される。
本発明に係る土壌充填剤は、珪酸を主成分とする鉱物素材を配合してなる。そして鉱物素材は、そのコロイド粒子に吸着したミネラルを土壌中に放出する。鉱物素材のミネラルに加え、予め配合されたミネラルも土壌中に放出される。
このように、従来不足が指摘されていた肥料成分のミネラルを、植物に十分摂取せしめることができ、植物の光合成,その他の生成が促進される。例えばカルシウムやカリウムは、植物のリン酸吸収を促進する。
【0014】
《第4の効果》
第4に、しかもこれらは簡単容易に、コスト,安定性,持続性,その他に優れつつ実現され、土壌環境も向上する。
本発明に係る土壌充填剤は、その二価鉄,炭素,腐植物質,鉱物素材,コーヒー豆焙煎粉砕物,茶葉等の配合物質として、市販品,産業副産物,自然産品,廃棄品等を使用可能であり、製造コスト面に優れている。又、極めて高価であったフルボ酸鉄を人工的に簡単容易に生成でき、この面からも製品コスト面に優れており、有機酸鉄についてもこれに準じる。
又、二価の鉄イオンを、フルボ酸鉄や有機酸鉄として、安定的に植物に摂取せしめることができ、前述した第1の効果発揮の安定性にも優れている。フルボ酸鉄や有機酸鉄は、配合物質の組み合わせにより長期間にわたり土壌中に供給し続けることができ、第1の効果の持続性,維持性,永続性にも優れている。
更に、コーヒー豆焙煎粉砕物等により、酸化鉄が余すところなく二価の鉄イオン化されて、植物に摂取されるので、この面からもコスト,安定性,持続性に優れている。ミネラルについても、土壌中に放出されて植物に摂取されるので、この面からもコスト,安定性,持続性に優れている。
又、土壌中の有害物質が吸着,除去されるので、土壌や水分が浄化され土壌環境が向上する。根腐れや水腐敗が防止される。又、細孔状,多孔状のコーヒー豆焙煎粉砕物等,鉱物素材等により、土壌の通水性,通気性,保水性等に優れており、この面からも土壌環境が向上する。
このように、この種従来技術に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る土壌充填剤について、発明を実施するための形態の説明に供し、充填基剤の要部の構成ブロック図である。
図2】同発明を実施するための形態の説明に供し、他の要部の構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、図1および図2を参照して説明する。
《土壌充填剤1の二価鉄2,炭素3,酵素4,有機酸6,ミネラルM等の充填基剤20について》
本発明の土壌充填剤1は、植物生育用,肥料用,土壌改良用等として、土壌に施される。そして少なくとも、二価鉄(Fe)2と、炭素(C)3と、酵素4とが、充填基剤20として混合配合されている。まず、土壌充填剤1の充填基剤20のこのような配合物質について説明する。
二価鉄(Fe)2については、次のとおり。二価鉄2は、二価鉄含有物質中に含有されており、粉状,粒状,又は塊状をなす。
二価鉄含有物質は、塩化第一鉄(FeCl),その他の二価鉄含有化合物よりなり、水分(HO)12との接触により、二価の鉄イオン(Fe2+)5を溶出可能である。例えば、高炉スラグ,製鋼スラグ等の鉄鋼スラグ,その他各種の含鉄スラグ,鉄化合物が、鉄鋳物粉,合金鉄粉等として使用される。
【0017】
炭素(C)3については、次のとおり。炭素3は、炭素材よりなるか、炭素含有物質中に含有されており、粉状,粒状,塊状,又はハイブリット繊維状をなす。例えば、コークス,グラファイト,木炭,石炭,活性炭等よりなり、これらが粉状物や粒状物として使用される。
酵素4等については、次のとおり。酵素4は、周知のごとく、タンパク質性の高分子有機触媒であり、各種触媒作用が知られており、その触媒作用により、クエン酸,乳酸,酢酸等の有機酸6や、アミノ酸や,ミネラルM等が触媒反応せしめられる。
土壌充填剤1の二価鉄2,炭素3,酵素4,有機酸6,ミネラルM等については、以上のとおり。
【0018】
《土壌充填剤1の腐植物質7,その他の充填基剤20について》
腐植物質7については、次のとおり。土壌充填剤1の代表例では、更に腐植物質7が、充填基剤20として混合配合されており、腐植物質7は、ピートモス,その他の腐植土中に含有されている。
すなわち腐植土は、森林等において動植物による有機物が、微生物にて分解されて生成された土状のものよりなるが、このような天然ものに限らず、廃材等を発酵させた人工のものもある。農業,園芸用の(ココ)ピートモスが、代表例である。
そして、このような腐植土には、腐植酸であるフミン酸8やフルボ酸9等の腐植物質7が含有されており、水溶性であり抽出可能である。土壌充填剤1は通常、腐植物質7を含有した腐植土をそのまま配合してなるが、腐植土から抽出された腐植物質7を配合することも考えられる。
【0019】
更に、図示例の土壌充填剤1では、モンモリロナイト10又は/及びゼオライト11が、充填基剤20として混合配合されている。モンモリロナイト10やゼオライト11は、二価鉄含有物質,炭素材や炭素含有物質,酵素4,腐植土,水分(HO)12更には、後述する鉱物素材,焙煎粉砕物等を、混合保持すると共に、各種反応の触媒機能を発揮する。
すなわち、モンモリロナイト10やゼオライト11は、細層状,細孔状,多孔状の粘土よりなり、他物質保持性,通水性,通気性,保水性,触媒機能等が知られている。なお、更に塩分(塩素Cl)を、充填基剤20として混合配合することもある。
土壌充填剤1の腐植物質7,その他の充填基剤20については、以上のとおり。
【0020】
《二価の鉄イオン5の生成》
次に、二価の鉄イオン5の生成について説明する。土壌充填剤1の充填基剤20は、土壌に施されると、次の(イ),(ロ)のようになる。
(イ)二価鉄(Fe)2が、水分12を含む土壌中において、隣接する炭素3より電気陰性度が低いことに起因して、二価の鉄イオン5化する。
(ロ)二価鉄(Fe)2は、腐植物質7のフミン酸8の働きにより、二価の鉄イオン(Fe2+)5化する。
【0021】
これらについて更に詳述する。まず(イ)、土壌充填剤1に充填基剤20として混合配合された二価鉄2と炭素3とが、土壌中の水分12の存在を前提に、土壌中で接触,密着する。
すると、水分12が電解液の溶媒の役目を果たし、電解質の二価鉄2と炭素3間の電位差により、炭素3に比べ電子奪取力つまり電気陰性度が低いことに基因して、二価の鉄イオン5として電離,溶出せしめる。このようにして、二価鉄2がイオン化される。炭素3は、このような二価鉄2の反応促進用として機能する。
他方(ロ)、この土壌充填剤1では、上述した(イ)とは異なり、次によっても二価鉄2がイオン化される。
すなわち、土壌充填剤1に充填基剤20として混合配合された二価鉄2と、例えば腐植土から抽出される腐植物質7のフミン酸8とが、土壌中の水分12の存在を前提に、土壌中で接触,密着する。すると、水分12が電解液の溶媒の役目を果たし、酸性有機物のフミン酸8が電解質の二価鉄2を溶かし、二価の鉄イオン5として電離,溶出せしめる(もってフミン酸8はシデロホアとも称される)。
なお、このような反応の前提となる水分12は、土壌中のみならず、配合されたモンモリロナイト10やゼオライト11からも、混合保持された分が供給される。
二価の鉄イオン5の生成については、以上のとおり。
【0022】
《二価の鉄イオン5の錯体化》
次に、二価の鉄イオン5の錯体化について説明する。土壌充填剤1の充填基剤20において、二価鉄2は、上述したように(イ)炭素3との関係や、(ロ)フミン酸8との関係で、二価の鉄イオン5化される。
ところで、このように生成された二価の鉄イオン5(Fe2+)は、酸化され易く不安定であり、酸素にて酸化されて三価の鉄イオン(Fe3+)化,酸化鉄(Fe)13化され易い。三価の鉄イオン,酸化鉄13では、植物への吸収,摂取が不能化する。
これに対し、この土壌充填剤1の充填基剤20では、次の(A),(B)により、二価の鉄イオン5の酸化がかなり抑制され、植物に吸収,摂取されるようになる。
【0023】
(A)溶出された二価の鉄イオン5は、有機酸6と結合し、もって錯体である有機酸鉄14が生成されて、植物に吸収,摂取される。
すなわち二価の鉄イオン5に対し、有機酸6の結合力(キレート結合力)が、前述した酸素の結合力(酸化力)より強いので、二価の鉄イオン5は、おおむね酸化されずに素早くキレート結合され、錯体化される。二価の鉄イオン5を錯体中心とし、有機酸6が配位した有機酸鉄14が生成される。
(B)溶出された二価の鉄イオン5は、腐植物質7のフルボ酸9と結合し、もって錯体であるフルボ酸鉄(腐植酸鉄,有機酸鉄の一種)15が生成されて、植物に吸収,摂取される。
すなわち、二価の鉄イオン5に対し、フルボ酸9の結合力(キレート結合力)が、酸素の結合力(酸化力)より強いので、二価の鉄イオン5は、おおむね酸化されずに素早くキレート結合され、錯体化される。二価の鉄イオン5を錯体中心とし、フルボ酸9が配位したフルボ酸鉄15が生成される。フルボ酸9は、例えば腐植土中から抽出される。
このような二価の鉄イオン5の(A)有機酸鉄14化や(B)フルボ酸鉄15化に伴い、二価の鉄イオン5の酸化鉄(Fe)13化は、大幅に抑制される。
有機酸鉄14やフルボ酸鉄15は、錯体として非常に安定しており、酸素にて酸化されず、このような錯体を形成する二価の鉄イオン5は、そのままのイオン形態のまま、植物に吸収,摂取される。
二価の鉄イオン5の錯体化については、以上のとおり。
【0024】
《充填基剤20の配合比率》
次に、この土壌充填剤1の充填基剤20について、その配合物質の配合比率(重量%)の一例は、次のとおりであり、残余は、主に腐植土やモンモリロナイト10,ゼオライト11等である(勿論この例は充填基剤20に関するものであり、後述する鉱物素材や焙煎粉砕物は含まず)。
・二価鉄2 :0.15%~0.20%
・炭素3 :0.5% ~5.2%
・フルボ酸9:0.5% ~2.0%
・酵素4 :0.07%~0.8%
・塩分濃度※:0.01%~1.0% (※塩素Clの重量%)
なお、このような土壌充填剤1について、その他のデータは次のとおり。
・電気抵抗値:0.5ms/cm~2.0ms/cm
・ペーハー値:pH5.0~pH6.5 (植物に適)
充填基剤20の配合比率については、以上のとおり。
【0025】
《鉱物素材16について》
本発明の土壌充填剤1は、上述した充填基剤20に加え、更に、鉱物素材16が混合配合されている。
鉱物素材16は、珪酸17を主成分とし、そのコロイド粒子にミネラルMが吸着しており、水分12を含む土壌中において、そのミネラルMを放出すると共に、土壌中の有害物質を吸着,除去する。
【0026】
このような鉱物素材16について、更に詳述する。鉱物素材16は、天然自然産品の鉱物,無機物に由来し、珪酸17を主成分とし、粘土の極小粒子であるコロイド粒子にミネラルM(主に金属イオン)が吸着した、コロイド粒子集合体,粘土鉱物よりなり、細孔状,多孔状をなす。
すなわち、鉱物素材16のコロイド粒子は、永久陰荷電としてマイナス(-)に常時帯電しており、プラス(+)イオンを吸着つまり吸引して付着すると共に、陽イオン交換を行う。
土壌充填剤1に配合された鉱物素材16は、そのコロイド粒子(-)に、鉱物素材16由来の当初よりの各種ミネラルM(+)(主に金属イオン)や、前述した充填基剤20の各種ミネラルMが、吸引,付着されている。
そして水分12を含んだ土壌に施されると、イオン交換が進行する。もってそれ迄、鉱物素材16のコロイド粒子(-)に吸引,付着していた有用なミネラルM(+)が土壌中に放出され植物に吸収される。
これと共に、土壌中に蓄積されていたプラスイオン(+)の有害物質(例えば過剰な水素イオンHやアンモニウムイオンNH 等の不純イオンや不純ガス)が、ミネラルMを放出された後のエリアに入れ替わって、鉱物素材16のコロイド粒子(-)に、吸引,付着,除去される。
【0027】
鉱物素材16は、重量%で50%以上~75%以下程度の珪酸(SiO)17を主成分とする。そして、鉄(Fe),アルミニウム(Al),ナトリウム(Na),カルシウム(Ca),カリウム(K),マグネシウム(Mg)、更にはイオウ(S),銅(Cu),マンガン(Mn),亜鉛(Zn),その他各種のミネラルM(主に金属イオン)を含有する。これらのミネラルMは、主に金属酸化物として存在するが、水分12によりプラス(+)イオン化して存在する。
そして鉱物素材16は、代表的には珪酸塩白土等の珪酸塩よりなるが、珪酸17が50%未満の場合は、コロイド粒子(-)の吸引が不足し、75%を越える場合は、吸引されるミネラルMが量的に不足する。
【0028】
鉱物素材16について、珪酸塩白土としての成分分析の1例は、次のとおり(出典:東京大学理学部化学教室分析)。
・珪酸(SiO) :72.96%
・酸化鉄(Fe) : 4.95%
・アルミニウム(Al): 9.92%
・ナトリウム(NaO) : 4.98%
・カルシウム(CaO) : 3.27%
・カリウム(KO) : 0.13%
・水分(HO) : 3.81%
鉱物素材16については、以上のとおり。
【0029】
《コーヒー豆焙煎粉砕物18等について》
本発明の土壌充填剤1は、上述した充填基剤20や鉱物素材16に加え、コーヒー豆焙煎粉砕物18等が混合配合されている。
すなわち、コーヒー豆焙煎粉砕物18及び/又は茶葉が配合されており、水分12を含む土壌中において、酸化鉄(Fe)13を二価の鉄イオン(Fe2+)5に、還元して維持する。
【0030】
このようなコーヒー豆焙煎粉砕物18等について、更に詳述する。まず、コーヒー豆焙煎粉砕物18は、コーヒー豆を焙煎,粉砕したものよりなり、コーヒーカスが代表的である。pH5.8程度の弱酸性で99%が有機物よりなり、細孔状,多孔状の粒状をなす。勿論、コーヒー豆を粉砕して焙煎したものや、挽いたコーヒー豆も含まれる。
又、このようなコーヒー豆焙煎粉砕物18に代え、又は共に、茶葉を用いることも可能である。茶葉としては、茶を煎じた後の茶殻が代表的であるが、緑茶,紅茶,ウーロン茶等々を問わず、使用される。
そして、このようなコーヒー豆焙煎粉砕物18や茶葉は、水分12を含む土壌中において、三価の鉄イオン(Fe3+)つまり酸化鉄(Fe)13を、二価の鉄イオン(Fe2+)5に還元する還元機能と、二価の鉄イオン(Fe2+)5をそのまま安定的に維持する維持機能と、を備えている(これらについては、特許第5804454号公報を参照)。
【0031】
従って、コーヒー焙煎粉砕物18や茶葉は次の(イ),(ロ)を対象に、その機能を発揮する。
(イ)土壌に施された土壌充填剤1の充填基剤20の二価鉄(Fe)2から生成された二価の鉄イオン5が、三価の鉄イオン化,酸化鉄13化したもの。つまり、有機酸鉄14化やフルボ酸鉄15化されることなく、酸化鉄13化したもの。
(ロ)土壌に施された土壌充填剤1の鉱物素材16のコロイド粒子(-)に、ミネラルMとして吸着されていた酸化鉄13。
なお、コーヒー豆焙煎粉砕物18には、植物生育阻害性があるが、他の配合物質が等量以上混合使用されれば、このような阻害性は消滅する。
コーヒー豆焙煎粉砕物18等については、以上のとおり。
【0032】
《作用等》
本発明の土壌充填剤1は、以上説明したように構成されている。そこで以下のようになる。
(1)この土壌充填剤1には、充填基剤20として、二価鉄2,炭素3,酵素4,有機酸6,ミネラルM,腐植物質7,モンモリロナイト10,ゼオライト11等が、配合されている。
なお、モンモリロナイト10やゼオライト11は、同様に細孔状,多孔状をなす鉱物素材16やコーヒー豆焙煎粉砕物18の量によっては、配合量を減少させるか配合を見送られることもある。その場合、モンモリロナイト10やゼオライト11の他物質保持性等については、鉱物素材16やコーヒー豆焙煎粉砕物18が肩代わりする。
そして、このような各充填基剤20と共に、鉱物素材16および、コーヒー豆焙煎粉砕物18や茶葉が、必須的に配合されている。
なお、土壌充填剤1について、その配合物質の配合比率(重量%)の一例は、次のとおり。
・充填基剤20 :15.4%
(二価鉄2+炭素3+酵素4+フルボ酸9+フミン酸8)
・鉱物素材16 :84.3%
・コーヒー豆焙煎粉砕物18: 0.3%
・残余は、主に腐植土,モンモリロナイト10,ゼオライト11等
【0033】
(2)そしてまず、土壌充填剤1の充填基剤20が充填された土壌中では、二価鉄2が、水分12の存在を前提としつつ、接触,密着する炭素3に比し電気陰性度が低いことに起因して、二価の鉄イオン5化する。
又、二価鉄2が、水分12の存在を前提としつつ、接触,密着する腐植物質7のフミン酸8の働きによっても、二価の鉄イオン5化する。
【0034】
(3)得られた二価の鉄イオン5は、多くの場合、有機酸6と結合して、有機酸鉄14となる。又、腐植物質7のフルボ酸9と結合して、フルボ酸鉄15となる。
すなわち、有機酸6やフルボ酸9は、二価の鉄イオン5に対する結合力が酸素の結合力より強いので、上述により生成され酸化され易い二価の鉄イオン5は、おおむね酸化されずに素早くキレート結合される。
三価の鉄イオン化,酸化鉄13化は大幅に抑制され、有機酸鉄14やフルボ酸鉄15として、錯体化される。
【0035】
(4)土壌充填剤1の充填基剤20により、得られた錯体である有機酸鉄14やフルボ酸鉄15では、二価の鉄イオン5がそのままの形態で結合している。
そして、有機酸鉄14やフルボ酸鉄15は、その二価の鉄イオン5と共に植物に吸収される。もって、植物の必須要素である鉄が、二価の鉄イオン5の形態で植物に摂取される。
【0036】
(5)これに対し、酸化され易い二価の鉄イオン5が、上述により有機酸鉄14化やフルボ酸鉄15化されることなく、酸化鉄13化された場合は次のとおり。
これについては、土壌充填剤1に充填基剤20と共に配合されたコーヒー豆焙煎粉砕物18や茶葉が、これを二価の鉄イオン5に還元して維持する。更に、鉱物素材16にミネラルMの1つとして吸着されていた酸化鉄13も、同様に二価の鉄イオン5として還元,維持される。
もって、この面からも植物の必須要素である鉄が、二価の鉄イオン5の形態で植物に摂取されるようになる。
【0037】
(6)更に、この土壌充填剤1には、充填基剤20やコーヒー豆焙煎粉砕物18と共に、珪酸17を主成分とする鉱物素材16が配合されている。
そして鉱物素材16は、そのコロイド粒子(-)に吸着したミネラルM(+)を、イオン交換により、水分12を含む土壌中に放出すると共に、土壌中の有害物質を吸着,除去する。
吸着,放出されるミネラルMとしては、鉱物素材16に元来吸着されていたミネラルMに加え、充填基剤20中のミネラルMも、一時吸着,保持された後、放出される。
【0038】
(7)更に、この土壌充填剤1は、例えば鉄鋼スラグ等の二価鉄2、例えばコークスやグラファイト等の炭素材や炭素含有物質、例えばピートモス等の腐植物質7、そして酵素4,モンモリロナイト10,ゼオライト11等を充填基剤20として配合してなる。更には、例えばコーヒーカス等のコーヒー豆焙煎粉砕物18や、例えば茶殻等の茶葉や、天然自然産品に由来する鉱物素材16を、配合してなる。
このように、この土壌充填剤1は、廉価な市販品,産業副産物,廃棄品,自然産品等を、広く使用可能である。又、この土壌充填剤1によると、これまで自然生成採取品であったフルボ酸鉄15を、腐植物質7,二価鉄2の組み合わせにより、簡単容易に生成でき、有機酸鉄14についても、これに準じ簡単容易に生成可能である。
【0039】
(8)しかも、この土壌充填剤1によると、これ迄は酸化され易く不安定であった二価の鉄イオン5を、酸素に触れても酸化されにくく、安定した錯体のフルボ酸鉄15や有機酸鉄14化する。もって、安定的に植物に供給,吸収,摂取せしめることができる。
又、この土壌充填剤1によると、このように二価の鉄イオン5のフルボ酸鉄15や有機酸鉄14を、各配合物質を組み合わせたことにより、長期間にわたり供給し続けることができ、持続性に優れている。
更に、この土壌充填剤1によると、配合されたコーヒー豆焙煎粉砕物18や茶葉により、酸化鉄13が安定的,持続的に二価の鉄イオン5に還元,維持される。
すなわち、有機酸鉄14化やフルボ酸鉄15化することなく酸化された酸化鉄13や、鉱物素材16にミネラルMとして吸着されていた酸化鉄13が、二価の鉄イオン5化に還元,維持される。
又、鉱物素材16に吸着していたミネラルMや、充填基剤20中のミネラルMも、イオン交換により安定的,持続的に土壌中に放出される。
【0040】
(9)更に、イオン交換により、土壌中に蓄積されていた老輩物質等の有害物質が鉱物素材16に吸着,除去されるので、土壌やその水分12が浄化される。
又、コーヒー豆焙煎粉砕物18,茶葉,鉱物素材16,更にはモンモリロナイト10,ゼオライト11等は、細孔状,多孔状の団粒構造よりなる。もって、土壌の通水性(水はけ),通気性(酸素供給性),保水性等に優れている。
又、これらは弱酸性なので、悪臭の主因であり有毒でもあるアンモニアガス等の有毒ガスを吸着し、もって二価の鉄イオン5によるこれらの分解の触媒ともなる。二価の鉄イオン5は、植物に吸収されるが、このように有毒ガスの分解作用も発揮する。
作用等については、以上のとおり。
【符号の説明】
【0041】
1 土壌充填剤
2 二価鉄(Fe)
3 炭素(C)
4 酵素
5 二価の鉄イオン(Fe2+
6 有機酸
7 腐植物質
8 フミン酸
9 フルボ酸
10 モンモリロナイト
11 ゼオライト
12 水分
13 酸化鉄(Fe
14 有機酸鉄
15 フルボ酸鉄
16 鉱物素材
17 珪酸
18 焙煎粉砕物
20 充填基剤
M ミネラル
図1
図2