(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】立軸ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/60 20060101AFI20220530BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20220530BHJP
F04D 13/00 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
F04D29/60 D
F04D29/66 D
F04D13/00 A
(21)【出願番号】P 2018183716
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】川村 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】原賀 広和
【審査官】落合 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-146775(JP,A)
【文献】特開平11-351181(JP,A)
【文献】特開2010-190157(JP,A)
【文献】特開2003-161285(JP,A)
【文献】特開平09-291817(JP,A)
【文献】特開昭63-057899(JP,A)
【文献】実開昭61-099699(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 13/00-13/16,29/60-29/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車と前記羽根車を覆うポンプケーシングとを有するポンプと、前記ポンプケーシングと締結部を介して連結し、流体を吸い込むための吸込口と、前記ポンプケーシングと締結部を介して連結し、前記流体を流通するためのポンプ配管と、前記ポンプ配管と締結部を介して連結し、前記流体を排出する
吐出口に前記流体を流通するため
、縦方向から横方向に前記流体の流れ方向を変更する曲部を有し、ポンプ井に形成されるセット部に吊り下げるためのサポート部と前記吐出口に形成される吐出フランジと有するディスチャージケーシングと、を有し、
前記ディスチャージケーシングの振動を抑制
し、前記曲部の内側に、前記ディスチャージケーシングの縦方向配管と横方向配管とをつなぐように、前記吐出フランジと前記サポート部との間に形成される避共振リブを有し、
前記避共振リブは、前記曲部の下側であって、前記流体の吐出方向に対して両側方向である左右方向の中心に一つ、及び、その左右対称に一対が形成されることを特徴とする立軸ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送水や送液を目的とする立軸ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2017-125451号公報(特許文献1)がある。この公報には、回転駆動源を含む立軸ポンプの床上部分で運転時に発生する共振現象を効果的に抑制するため、基礎床よりも下に設置される羽根車と、基礎床よりも上に設置される回転駆動源と、羽根車および回転駆動源を互いに連結する主軸と、基礎床に設置されて回転駆動源を支持する支持構造と、支持構造を少なくとも一方に含む2つの部材によって形成される締結部における締結位置を、主軸を中心とする径方向について調整することを可能にする締結位置調整手段とを備える立軸ポンプが記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、回転駆動源を含む立軸ポンプの床上部分で運転時に発生する共振現象を抑制する立軸ポンプについて記載されている。しかし、特許文献1には、立軸ポンプに設置される、流体を流通するためのディスチャージケーシングの振動を抑制することについては記載されていない。
【0005】
そこで、本発明は、立軸ポンプに設置される、流体を流通するためのディスチャージケーシングの振動を抑制する立軸ポンプを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の立軸ポンプは、羽根車とこの羽根車を覆うポンプケーシングとを有するポンプと、ポンプケーシングと締結部を介して連結し、流体を吸い込むための吸込口と、ポンプケーシングと締結部を介して連結し、流体を流通するためのポンプ配管と、ポンプ配管と締結部を介して連結し、流体を排出する吐出口に流体を流通するため、縦方向から横方向に流体の流れ方向を変更する曲部を有し、ポンプ井に形成されるセット部に吊り下げるためのサポート部と吐出口に形成される吐出フランジと有するディスチャージケーシングと、を有し、ディスチャージケーシングの振動を抑制し、曲部の内側に、ディスチャージケーシングの縦方向配管と横方向配管とをつなぐように、吐出フランジとサポート部との間に形成される避共振リブを有し、避共振リブは、曲部の下側であって、流体の吐出方向に対して両側方向である左右方向の中心に一つ、及び、その左右対称に一対が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、立軸ポンプに設置される、流体を流通するためのディスチャージケーシングの振動を抑制する立軸ポンプを提供することができる。
【0008】
なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施例の立軸ポンプを説明する断面図である。
【
図2】本実施例のディスチャージケーシングを拡大して説明する側面図である。
【
図3】本実施例のディスチャージケーシングを拡大して説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。なお、同一の構成には、同一の符号を付し、説明が重複する場合には、その説明を省略する場合がある。
【実施例1】
【0011】
図1は、本実施例の立軸ポンプを説明する断面図である。
【0012】
本実施例に記載する立軸ポンプ100は、羽根車1、ポンプケーシング2、締結部(フランジ)3、ポンプ配管4、回転軸(シャフト)5、吸込口6、吐出口7、カップリング部9、シール部10、ディスチャージケーシング11、軸受部12、中間カップリング部13、案内羽根14、サポート部15、補強リブ16、吐出フランジ17、避共振リブ20を有する。
【0013】
なお、本実施例に記載する立軸ポンプ100は、単独の羽根車1とこの羽根車1を覆う単独のポンプケーシング2とを有するものであるが、複数の羽根車1とこれら複数の羽根車1を覆う複数のポンプケーシング2とを有するものであってもよい。
【0014】
本実施例に記載する立軸ポンプ100は、サポート部15を介して、ポンプ井に形成されたセット部(開口部)8に、吊り下げられる。補強リブ16は、サポート部15を補強する。
【0015】
インペラとも呼ばれる羽根車1、案内羽根14、ポンプケーシング2は、ポンプ30を形成する。羽根車1は、カップリング部9を介して連結するモータ(図示なし)が回転駆動することにより、回転軸5を介して回転駆動する。羽根車1が回転駆動することにより、ベルマウスとも呼ばれる吸込口6から吸い込まれた流体は昇圧され、案内羽根14にて整流され、コラムパイプとも呼ばれるポンプ配管4、ディスチャージケーシング11を流通し、吐出口7から吐出する。
【0016】
なお、回転軸5には、数か所(本実施例では2か所)に、中間カップリング部13が形成される。また、回転軸5は、数か所(本実施例では2か所)で、軸受部12を介してポンプ配管4に、回転自在に支持される。また、回転軸5がディスチャージケーシング11を連通する部分には、シール部10が形成される。
【0017】
吸込口6とポンプケーシング2とは、ポンプケーシング2とポンプ配管4とは、ポンプ配管4とディスチャージケーシング11とは、それぞれ、フランジが形成された締結部3により連結される。
【0018】
つまり、本実施例に記載する立軸ポンプ100は、羽根車1と羽根車1を覆うポンプケーシング2とを有するポンプ30と、ポンプケーシング2と締結部3を介して連結し、流体を吸い込むための吸込口6と、ポンプケーシング2と締結部3を介して連結し、流体を流通するためのポンプ配管4と、ポンプ配管4と締結部3を介して連結し、流体を排出する吐出口7に、流体を流通するためのディスチャージケーシング11と、を有するものである。
【0019】
また、ポンプ配管4は、数本(本実施例では2本)が連結したものであり、これら数本のポンプ配管4は、フランジが形成された締結部3により連結される。これら数本のポンプ配管4は、必ずしも同じ長さである必要はない。
【0020】
そして、本実施例に記載する立軸ポンプ100は、ディスチャージケーシング11の振動を抑制するため、ディスチャージケーシング11の曲部の下側に避共振リブ20が形成される。
【0021】
ディスチャージケーシング11は、縦方向から横方向に、流通する流体の流れ方向を変更させる構造を有するものである。本実施例では、ディスチャージケーシング11が、このように縦方向から横方向に屈曲する曲部であって、その曲部の下側(内側)に、避共振リブ20を形成する。
【0022】
つまり、縦方向から横方向への曲部を有するディスチャージケーシング11を構成する縦方向の配管と横方向の配管とつなぐように、避共振リブ20が形成される。
【0023】
また、避共振リブ20は、ディスチャージケーシング11の吐出口7に形成される吐出フランジ17とサポート部15との間に形成される。つまり、避共振リブ20は、ディスチャージケーシング11を構成する配管の外側に形成される。
【0024】
本実施例では、ディスチャージケーシング11に、このような避共振リブ20を形成することにより、ディスチャージケーシング11の固有振動数が、特定の固有振動数と合致することを回避して、ディスチャージケーシング11の振動(共振)を抑制する。
【0025】
図2は、本実施例のディスチャージケーシングを拡大して説明する側面図である。また、
図3は、本実施例のディスチャージケーシングを拡大して説明する正面図である。
【0026】
本実施例に記載する立軸ポンプ100は、羽根車1とモータ(図示なし)とが、回転軸5を介して連結され、共に回転駆動する。羽根車1とモータ(図示なし)とが回転駆動する際に、ディスチャージケーシング11は、羽根車1とモータ(図示なし)との回転駆動により発生する振動を受け、前後方向(
図2参照)、及び、左右方向(
図3参照)に振動する(振動モードを有する)。
【0027】
特に、ディスチャージケーシング11の固有振動数が、羽根車1とモータ(図示なし)及び回転軸(シャフト)5により構成される回転体との回転駆動により発生する固有振動数の共振領域にある場合には、大きな振動となる。
【0028】
一般的に、構造物の固有振動数を上げるためには、単独又は複数のリブを設置すること、または、母材の板厚を厚くすることが知られている。しかし、単独又は複数のリブを設置することや母材の板厚を厚くすることでは、必然的に構造部の重量が増加する。
【0029】
そこで、本実施例では、避共振リブ20を形成していないディスチャージケーシング11の固有振動数が、羽根車1とモータ(図示なし)及び回転軸(シャフト)5により構成される回転体との回転駆動により発生する固有振動数の共振領域にある場合、ディスチャージケーシング11の曲部の下側に避共振リブ20を形成することにより、ディスチャージケーシング11の全体重量を大幅に増加させることがなく、ディスチャージケーシング11の固有振動数を変更(高く)する。そして、ディスチャージケーシング11の振動(共振)を抑制する。
【0030】
そして、詳細には、避共振リブ20は、ディスチャージケーシング11の吐出口7に形成される吐出フランジ17とサポート部15との間に形成されることが好ましいことが分かった(
図2及び
図3参照)。
【0031】
さらに、
図2及び
図3に示すように、避共振リブ20は、ディスチャージケーシング11の曲部の下側に形成され、ディスチャージケーシング11が縦方向から横方向に屈曲する曲部であって、その曲部の下側(内側)に形成され、縦方向から横方向に屈曲する曲部を有するディスチャージケーシング11を構成する縦方向の配管と横方向の配管とつなぐように形成される。
【0032】
また、
図3に示すように、避共振リブ20は、左右方向対称に、少なくとも一対の避共振リブ20bが形成される。解析の結果、このように左右方向対称に、少なくとも一対の避共振リブ20bを形成することにより、ディスチャージケーシング11の全体重量を大幅に増加させることがなく、ディスチャージケーシング11の前後方向及び左右方向の振動(共振)を抑制することができる。ここで、
図3において左右方向とは、ディスチャージケーシング11の両側方向であり、流体の吐出方向(
図3の紙面(平面)に対して垂直方向)に対して両側方向である。
【0033】
なお、本実施例における避共振リブ20は、ディスチャージケーシング11の曲部の下側の左右方向における中心に一つの避共振リブ20aが形成され、その左右に対象に一対の避共振リブ20bが形成されている。つまり、避共振リブ20(三つ)は、中心に避共振リブ20a(一つ)、及び、その中心に形成される避共振リブ20aの左右対称に一対の避共振リブ20b(二つ)から構成される。
【0034】
これにより、避共振リブ20を形成していないディスチャージケーシング11の固有振動数が、羽根車1とモータ(図示なし)及び回転軸(シャフト)5により構成される回転体との回転駆動により発生する固有振動数の共振領域にある場合、ディスチャージケーシング11の前後方向及び左右方向の振動(共振)を抑制すると共に、ディスチャージケーシング11の強度を強化することもできる。
【0035】
ディスチャージケーシング11は、縦方向から横方向に屈曲する曲部に流体を流通させるため、特に、横方向の配管は上方への応力が発生する。このため、ディスチャージケーシング11の曲部の下側の左右方向における中心に一つの避共振リブ20aを形成することにより、こうした応力の発生に対応し、ディスチャージケーシング11の強度を強化することができる。
【0036】
なお、避共振リブ20は、吐出フランジ17やサポート部15と同様の材料で形成されることが好ましく、ステンレス鋼や炭素鋼が使用される。また、避共振リブ20は、吐出フランジ17とサポート部15とには、溶接等により形成される。
【0037】
また、本実施例では、避共振リブ20は、サポート部15に対して、直角に形成される。これにより、避共振リブ20を形成していないディスチャージケーシング11の固有振動数が、羽根車1とモータ(図示なし)及び回転軸(シャフト)5により構成される回転体との回転駆動により発生する固有振動数の共振領域にある場合、ディスチャージケーシング11の前後方向及び左右方向の振動(共振)を抑制すると共に、ディスチャージケーシング11の強度を強化することもできる。なお、避共振リブ20は、サポート部15に対して、傾斜して形成されてもよい。
【0038】
このように、本実施例に記載する立軸ポンプ100は、ディスチャージケーシング11の曲部の下側(吐出フランジ17の下側)に、その共振を抑制する避共振リブ20を形成する(
図3参照)ことにより、ディスチャージケーシング11の固有振動数を変更(高く)し、ディスチャージケーシング11の振動を抑制する。これにより、立軸ポンプ100を安定して運転することができる。
【0039】
つまり、本実施例では、避共振リブ20を形成していないディスチャージケーシング11の固有振動数が、羽根車1とモータ(図示なし)及び回転軸(シャフト)5により構成される回転体との回転駆動により発生する固有振動数の共振領域にある場合、ディスチャージケーシング11に、避共振リブ20を形成することにより、固有振動数を変更(高く)し、ディスチャージケーシング11の振動(共振)を抑制する。このように、本実施例によれば、ディスチャージケーシング11の振動(共振)を効果的に抑制することができる。
【0040】
そして、本実施例によれば、ディスチャージケーシング11の近傍に、避共振リブ20を効率的に形成することにより(避共振リブ20を適切な箇所に必要最小限に形成することにより)、ディスチャージケーシング11の固有振動数を変更する(高める)と共に、強度を強化することができ、コスト低減も可能である。
【0041】
なお、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0042】
1 羽根車
2 ポンプケーシング
3 締結部
4 ポンプ配管
5 回転軸
6 吸込口
7 吐出口
8 セット部
9 カップリング部
10 シール部
11 ディスチャージケーシング
12 軸受部
13 中間カップリング部
14 案内羽根
15 サポート部
16 補強リブ
17 吐出フランジ
20 避共振リブ
30 ポンプ
100 立軸ポンプ