IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大陽日酸株式会社の特許一覧

特許7080911超臨界ガスの液化装置、及び超臨界ガスの液化方法
<>
  • 特許-超臨界ガスの液化装置、及び超臨界ガスの液化方法 図1
  • 特許-超臨界ガスの液化装置、及び超臨界ガスの液化方法 図2
  • 特許-超臨界ガスの液化装置、及び超臨界ガスの液化方法 図3
  • 特許-超臨界ガスの液化装置、及び超臨界ガスの液化方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】超臨界ガスの液化装置、及び超臨界ガスの液化方法
(51)【国際特許分類】
   F28F 27/02 20060101AFI20220530BHJP
   F25J 1/00 20060101ALI20220530BHJP
   F25J 1/02 20060101ALI20220530BHJP
   F25J 5/00 20060101ALI20220530BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20220530BHJP
【FI】
F28F27/02 C
F25J1/00 D
F25J1/02
F25J5/00
F28F27/02 A
F28F9/02 301Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020002198
(22)【出願日】2020-01-09
(65)【公開番号】P2021110496
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2021-11-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 真也
(72)【発明者】
【氏名】入澤 真
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-533719(JP,A)
【文献】特開平09-101095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 27/02
F25J 1/00
F25J 1/02
F25J 5/00
F28F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象となる第1流体が流通する第1流路、冷流体となる第2流体が流通する第2流路、及び冷流体となる第3流体が流通する第3流路を有し、前記第1流路、前記第2流路、及び前記第3流路の間で熱交換を行う第1熱交換部と、
前記第1流路と前記第2流路とを有し、前記第1流路と前記第2流路との間で熱交換を行う第2熱交換部と、
前記第1熱交換部に位置し、前記第1流体を前記第1熱交換部に導入し、前記第2流体及び前記第3流体を前記第1熱交換部から導出する、第1分配部と、
前記第2熱交換部に位置し、前記第1流体を前記第2熱交換部から導出し、前記第2流体を前記第2熱交換部に導入する、第2分配部と、
前記第1熱交換部と前記第2熱交換部との間に位置し、前記第1熱交換部から導出される前記第1流体を前記第2熱交換部に導入し、前記第2熱交換部から導出される前記第2流体を前記第1熱交換部に導入し、前記第3流体を前記第1熱交換部に導入する、第3分配部と、を備える、熱交換器と、
液化ガスを貯留する気液分離器と、
前記気液分離器内の気相又は液相を前記第1流体として流通する第1経路と、
前記第1経路から分岐し、前記第1流体の一部を第2流体として流通する第2経路と、
前記第1経路から分岐し、前記第1流体の一部を第3流体として流通する第3経路と、を備え、
前記第1経路から前記第1流体を前記第1分配部に導入した後、前記第2分配部から前記第1流体を前記第1経路に導出し、
前記第2経路から前記第2流体を前記第2分配部に導入した後、前記第1分配部から前記第2流体を前記第2経路に導出し、
前記第3経路から前記第3流体を前記第3分配部に導入した後、前記第1分配部から前記第3流体を前記第3経路に導出するように、前記第1経路、前記第2経路及び前記第3経路に亘って前記熱交換器を配置する、超臨界ガスの液化装置。
【請求項2】
前記第1熱交換部と前記第2熱交換部とが、前記第3分配部によって連結される、請求項1に記載の超臨界ガスの液化装置
【請求項3】
前記第1熱交換部に前記第1分配部が連結され、前記第2熱交換部に前記第2分配部が連結される、請求項2に記載の超臨界ガスの液化装置
【請求項4】
プレートフィン型熱交換器である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の超臨界ガスの液化装置
【請求項5】
前記第2流路の前記熱交換器の一次側に位置する第1減圧弁と、
前記第3経路の前記熱交換器の一次側に位置する第2減圧弁と、をさらに備える、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の超臨界ガスの液化装置。
【請求項6】
熱交換器を用いて液化ガスを過冷却し、過冷却された液化ガスを製品として得る、超臨界ガスの液化方法であって、
冷却対象の液化ガスを第1流体として熱交換器の温流体流路に導入し、前記熱交換器によって過冷却された前記第1流体を前記熱交換器から導出し、過冷却された前記第1流体を分割して少なくとも第2流体及び第3流体を得た後、過冷却された前記第1流体の残部を製品とし、
前記第2流体を第1圧力値まで減圧した後、前記熱交換器の第1冷流体流路に冷流体として導入し、
前記第2流体と同じ温度の前記第3流体を前記第1圧力値と異なる第2圧力値まで減圧した後、前記熱交換器の第2冷流体流路に冷流体として導入する、超臨界ガスの液化方法。
【請求項7】
前記製品の温度が一定となるように、前記第2流体又は前記第3流体の流量を調整する、請求項に記載の超臨界ガスの液化方法。
【請求項8】
前記第2流体又は前記第3流体のうち、流量を調整する流体の圧力値を、流量を調整しない流体の圧力値よりも低くする、請求項に記載の超臨界ガスの液化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器、超臨界ガスの液化装置、及び超臨界ガスの液化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧の超臨界ガスを冷却して低温の液化ガスを採取する際、液化ガスの気化による蒸発損失を削減するため、液化ガスを過冷却状態として貯液される場合が多い。液化ガスを過冷却状態とする際、冷却した液化ガスの一部を分割流として採取した後、その分割流を順次減圧して温度を低下させ、これを冷却源として液化ガスを冷却する方法が一般的である。例えば、特許文献1には、高圧の超臨界ガスを冷却して低温の液化ガスを採取する方法が開示されている。
【0003】
ここで、「過冷度」とは、液化ガスにおいて、その流体の沸点から何度冷却されているかを示す指標である。例えば、窒素の場合、圧力400kPaGにおける沸点は-179℃である。つまり、その圧力における飽和の液体窒素の過冷度は0(ゼロ)である。一方、当該液体窒素を-185℃まで冷却した場合(過冷却状態)、その液体窒素の過冷度は、6℃[=-179℃-(-185℃)]である。
【0004】
図3は、従来の超臨界ガスの液化装置の構成を示す系統図である。図3に示すように、従来の液化装置101は、圧縮機102A,102B,102Cからなる多段圧縮機102、第1及び第2昇圧ブロア103A,103B、第1及び第2膨張タービン104A,104B、循環熱交換器105、気液分離器106、第1熱交換器117、第2熱交換器127、第1及び第2減圧弁108A,108B、及び経路L101~L109と、を備える。
【0005】
図3に示すように、従来の液化装置101及び液化方法では、常温の窒素ガスを冷却液化の対象とする。常温の窒素ガスは循環熱交換器105で冷却液化され、減圧弁110で減圧された後、気液分離器106内に貯液される。ただし、気液分離器106内の液体窒素は飽和液であり、気化による蒸発損失を削減するために、当該液体窒素は第1熱交換器117及び第2熱交換器127において過冷却状態とされる。そして、過冷却の液体窒素が製品となる。
【0006】
具体的には、図3に示すように、気液分離器106から導出された液体窒素(第1流体)は、経路L107を介して第1熱交換器117の温端に導入され、順次、冷却される。所定の温度まで冷却された液体窒素は第1熱交換器117の冷端から再び経路L107に導出される。次いで、経路L107は、第1熱交換器117と第2熱交換器127との間で分岐し、液体窒素の一部を経路L108に導出する。経路L108に導出された液体窒素(第3流体)は、第2減圧弁108Bで減圧された後、その一部(約10%)が気化した気液二相状態で、第1熱交換器117に冷流体として導入される。第1熱交換器117に導入された第3流体は、第1熱交換器117において第1流体を冷却し、自身は全量窒素ガスとなって再び経路L108に導出される。すなわち、第1流体は、第2減圧弁108Bで減圧された後の液体窒素の潜熱、及びガス窒素の顕熱によって冷却される。
【0007】
次に、第1熱交換器117により冷却された第1流体は、第2熱交換器127に導入されてさらに冷却される。所定の温度まで冷却された第1流体は、第2熱交換器127の冷端から再び経路L107に導出される。次いで、経路L107は、第2熱交換器127の二次側で分岐し、液体窒素(第1流体)の一部を経路L109に導出する。経路L109に導出された液体窒素(第2流体)は、第1減圧弁108Aで減圧された後、その一部(約10%)が気化した気液二相状態で、第2熱交換器127、次いで第1熱交換器117に冷流体として導入される。第2熱交換器127及び第1熱交換器117に導入された第2流体は第1流体を冷却し、自身は全量窒素ガスとなって再び経路L109に導出される。すなわち、第1流体は、第1減圧弁108Aで減圧された後の液体窒素の潜熱、及びガス窒素の顕熱によって冷却される。
【0008】
従来の液化装置101に適用される第1熱交換器117及び第2熱交換器127としては、運転温度の観点から、アルミニウムプレートフィン熱交換器(以下、「プレートフィン型熱交換器」という)が一般的に用いられる。なお、プレートフィン型熱交換器の詳細な構造は、例えば、特許文献2及び特許文献3に開示されている。
【0009】
図4は、従来の液化装置101における熱交換器周辺の構成を示す模式図である。
図4に示すように、第1熱交換器117は、経路L107~L109を流れるそれぞれの流体をプレートフィン型熱交換器に導入/導出するヘッダ118A~118C、119A~119C、ヘッダから導入された流体の流れを均一にするディストリビュータ115,116、及び熱交換を主目的とする熱交換部(フィン)113から構成されている。
同様に、第2熱交換器127は、経路L107,L109を流れるそれぞれの流体をプレートフィン型熱交換器に導入/導出するヘッダ128A,128B,129A,129B、ヘッダから導入された流体の流れを均一にするディストリビュータ125,126、及び熱交換を主目的とする熱交換部(フィン)114から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許第3303101号公報
【文献】特許第5295737号公報
【文献】特開2010-101617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の液化装置101では、第1熱交換器117及び第2熱交換器127におけるディストリビュータでの圧力損失は、熱交換を主目的とする熱交換部(フィン)での圧力損失と比較して大きく、流体の圧力損失によるプロセス全体の熱的効率の低減が困難であった。特に、ガスに比較して密度の大きい液体、つまり液体窒素を導入する流路においては、適切に流体を分散させるために、熱交換部(フィン)での圧力損失よりもディストリビュータでの圧力損失を大きく設定する設計が用いられる場合があった。
【0012】
また、経路に流通する流体をプレートフィン型熱交換器に導入/導出するためには、ヘッダを経由する必要があり、その際の流体流路面積の拡大、縮小による圧力損失が不可避であった。例えば、入口ヘッダ及び出口ヘッダでの圧力損失は、熱交換部(フィン)での圧力損失の20~60%となる場合があり、熱交換器における熱的損失の一つであった。
【0013】
従来の液化装置101及び液化方法によれば、循環熱交換器105から導出された流体は2つ以上の熱交換器(第1熱交換器117及び第2熱交換器127)を通して飽和温度以下まで冷却される。つまり、熱交換器(過冷器)を2つ以上設置するため、その構造上、圧力損失が大きくなる傾向があり、液化装置101及び液化方法の効率的な運転を阻害する要因の一つであった。
【0014】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、液化効率を改善し、圧力損失の低減が可能な熱交換器、超臨界ガスの液化装置、及び超臨界ガスの液化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 冷却対象となる第1流体が流通する第1流路、冷流体となる第2流体が流通する第2流路、及び冷流体となる第3流体が流通する第3流路を有し、前記第1流路、前記第2流路、及び前記第3流路の間で熱交換を行う第1熱交換部と、
前記第1流路と前記第2流路とを有し、前記第1流路と前記第2流路との間で熱交換を行う第2熱交換部と、
前記第1熱交換部に位置し、前記第1流体を前記第1熱交換部に導入し、前記第2流体及び前記第3流体を前記第1熱交換部から導出する、第1分配部と、
前記第2熱交換部に位置し、前記第1流体を前記第2熱交換部から導出し、前記第2流体を前記第2熱交換部に導入する、第2分配部と、
前記第1熱交換部と前記第2熱交換部との間に位置し、前記第1熱交換部から導出される前記第1流体を前記第2熱交換部に導入し、前記第2熱交換部から導出される前記第2流体を前記第1熱交換部に導入し、前記第3流体を前記第1熱交換部に導入する、第3分配部と、を備える、熱交換器。
[2] 前記第1熱交換部と前記第2熱交換部とが、前記第3分配部によって連結される、前項[1]に記載の熱交換器。
[3] 前記第1熱交換部に前記第1分配部が連結され、前記第2熱交換部に前記第2分配部が連結される、前項[2]に記載の熱交換器。
[4] プレートフィン型熱交換器である、前項[1]乃至[3]のいずれかに記載の熱交換器。
[5] 前項[1]乃至[4]のいずれかに記載の熱交換器と、
液化ガスを貯留する気液分離器と、
前記気液分離器内の気相又は液相を前記第1流体として流通する第1経路と、
前記第1経路から分岐し、前記第1流体の一部を第2流体として流通する第2経路と、
前記第1経路から分岐し、前記第1流体の一部を第3流体として流通する第3経路と、を備え、
前記第1経路から前記第1流体を前記第1分配部に導入した後、前記第2分配部から前記第1流体を前記第1経路に導出し、
前記第2経路から前記第2流体を前記第2分配部に導入した後、前記第1分配部から前記第2流体を前記第2経路に導出し、
前記第3経路から前記第3流体を前記第3分配部に導入した後、前記第1分配部から前記第3流体を前記第3経路に導出するように、前記第1経路、前記第2経路及び前記第3経路に亘って前記熱交換器を配置する、超臨界ガスの液化装置。
[6] 前記第2流路の前記熱交換器の一次側に位置する第1減圧弁と、
前記第3経路の前記熱交換器の一次側に位置する第2減圧弁と、をさらに備える、前項[5]に記載の超臨界ガスの液化装置。
[7] 熱交換器を用いて液化ガスを過冷却し、過冷却された液化ガスを製品として得る、超臨界ガスの液化方法であって、
冷却対象の液化ガスを第1流体として熱交換器の温流体流路に導入し、前記熱交換器によって過冷却された前記第1流体を前記熱交換器から導出し、過冷却された前記第1流体を分割して少なくとも第2流体及び第3流体を得た後、過冷却された前記第1流体の残部を製品とし、
前記第2流体を第1圧力値まで減圧した後、前記熱交換器の第1冷流体流路に冷流体として導入し、
前記第2流体と同じ温度の前記第3流体を前記第1圧力値と異なる第2圧力値まで減圧した後、前記熱交換器の第2冷流体流路に冷流体として導入する、超臨界ガスの液化方法。
[8] 前記製品の温度が一定となるように、前記第2流体又は前記第3流体の流量を調整する、前項[7]に記載の超臨界ガスの液化方法。
[9] 前記第2流体又は前記第3流体のうち、流量を調整する流体の圧力値を、流量を調整しない流体の圧力値よりも低くする、前項[8]に記載の超臨界ガスの液化方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の熱交換器は、液化効率を改善し、圧力損失の低減が可能である。
本発明の超臨界ガスの液化装置は、上述の熱交換器を備えるため、液化効率を改善し、圧力損失の低減が可能である。
本発明の超臨界ガスの液化方法は、上述の熱交換器を備える液化装置を用いるため、液化効率を改善し、圧力損失の低減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る超臨界ガスの液化装置の構成を示す系統図である。
図2】本実施形態の液化装置における熱交換器周辺の構成を示す模式図である。
図3】従来の超臨界ガスの液化装置の構成を示す系統図である。
図4】従来の液化装置における熱交換器周辺の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について、添付の図面を参照し、実施形態を示して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0019】
<超臨界ガスの液化装置>
図1は、本発明の実施形態に係る超臨界ガスの液化装置の主要部を示す系統図である。
本実施形態の超臨界ガスの液化装置(以下、単に「液化装置」と示す)1は、直列に設置された圧縮機2A,2B,2Cからなる多段圧縮機2と、第1及び第2昇圧ブロア3A,3Bと、第1及び第2膨張タービン4A,4Bと、循環熱交換器5と、気液分離器6と、熱交換器7と、第1及び第2減圧弁8A,8Bと、経路L1~L9と、を備えて概略構成される。
なお、本実施形態の液化装置1において、経路L1~L9はそれぞれ所定の材質、所定の径を有する配管によって構成される。
また、本実施形態において、「超臨界ガス」とは、その流体の臨界温度および臨界圧力を超えた状態にある流体をいう。超臨界ガスとしては、例えば、40℃、5.0MPaAの窒素ガス等が挙げられる。
【0020】
本実施形態の液化装置1は、経路L1の一端から冷却対象となる液化ガスの原料(気体)を供給し、その原料を冷却して過冷却された液化ガスを得るための装置である。以下、冷却対象となる原料として、窒素ガスを用いる場合を一例として説明する。
【0021】
図1に示すように、経路L1は、液化装置1に原料窒素ガスを導入する経路である。経路L1には、一次側から順に、減圧弁9、直列に設置された圧縮機2A,2B,2Cからなる多段圧縮機2が配置されている。また、経路L1には、後述する経路L4,L8,L9がそれぞれ合流する。
【0022】
経路L1に導入された原料窒素ガスは、多段圧縮機2により、所要の圧力となるまで圧縮される。
多段圧縮機2を構成する各圧縮機2A,2B,2Cには、後述する経路L4,L8,L9からの各圧縮機の吸入圧力まで減圧された窒素ガスが導入され、原料窒素ガスと共に圧縮される。
【0023】
経路L1は、経路L2と経路L3とに分岐する。これにより、多段圧縮機2によって所要の圧力まで圧縮された窒素ガスは、経路L1から経路L2及び経路L3にそれぞれ供給される。
【0024】
経路L2には、一次側から順に、第1膨張タービン4Aに直結した第1昇圧ブロア3A、循環熱交換器5、第1膨張タービン4Aが配置されている。
経路L2に流れる窒素ガスは、第1昇圧ブロア3Aで昇圧され、循環熱交換器5により所要の温度となるまで冷却された後、第1膨張タービン4Aで等エントロピー膨張する。
【0025】
経路L2は、第1膨張タービン4Aに二次側にて、後述する経路L4に合流する。
第1膨張タービン4Aで等エントロピー膨張した窒素ガスは、流路気液分離器6で分離したフラッシュガスの戻り流路である経路L4に合流した後、多段圧縮機2の圧力の等しい吸入段である圧縮機2Cの一次側の経路L1に供給される。
【0026】
経路L3には、一次側から順に、第2膨張タービン4Bに直結した第2昇圧ブロア3B、循環熱交換器5が配置されている。
経路L3に流れる窒素ガスは、第2昇圧ブロア3Bで昇圧され、循環熱交換器5に導入される。
【0027】
経路L3は、経路L5と経路L6とに分岐する。これにより、第2昇圧ブロア3Bで昇圧された窒素ガスは、経路L3から経路L5及び経路L6にそれぞれ供給される。
【0028】
経路L5には、第2膨張タービン4Bが配置されている。
経路L5は、第2膨張タービン4Bに二次側にて、後述する経路L4に合流する。
第2膨張タービン4Bで等エントロピー膨張した窒素ガスは、流路気液分離器6で分離したフラッシュガスの戻り流路である経路L4と合流した後、多段圧縮機2の圧力の等しい吸入段である圧縮機2Cの一次側の経路L1に供給される。
【0029】
経路L6には、一次側から順に、循環熱交換器5、減圧弁10、及び気液分離器6が配置されている。
経路L6に流れる窒素ガスは、循環熱交換器5により所要の温度となるまで冷却され、減圧弁10により所要の圧力となるまで等エンタルピー膨張して気液混合流体となった後、気液分離器6に導入される。
【0030】
気液分離器6に導入された気液混合流体は、フラッシュガス(気相)と液(液相)とに分離され、気液分離器6内に貯留される。
気液分離器6で分離されたフラッシュガス(気相)は、経路L4に導出された後、多段圧縮機2の圧力の等しい吸入段である圧縮機2Cの一次側の経路L1に供給される。
一方、気液分離器6で分離された液(液相)は、経路L7に導出された後、熱交換器7に導入される。
【0031】
経路(第1経路)L7は、一端が気液分離器6と接続されており、多端が製品の取り出し口となっている。経路L7には、気液分離器6内の気相又は液相(第1流体)が流通する。
なお、本実施形態の液化装置1の起動時は、気液分離器6内の気相が第1流体となる。一方、本実施形態の液化装置1の定常運転時は、気液分離器6内の液相が第1流体となる。
【0032】
経路L7には、一次側から順に、熱交換器7、温度測定器11、及び減圧弁12が配置されている。経路L7は、熱交換器7の二次側で経路L8及び経路L9に分岐する。
気液分離器6で分離された液(液体窒素)は、熱交換器7に導入され、所要の過冷度となるまで冷却され、その一部が経路L8及び経路L9に分岐する以外は減圧弁12により減圧された後、製品液化窒素として経路L7から取り出される。
【0033】
経路(第3経路)L8は、一端が熱交換器7の二次側で経路L7から分岐し、多端が圧縮機2Aの二次側で経路L1に合流する。経路L8には、一次側から順に、第2減圧弁8B、熱交換器7、循環熱交換器5が配置されている。
【0034】
経路L8は、経路(第1経路)L7から分岐し、第1流体の一部を第3流体として流通する。換言すると、第3流体は、第1流体の分割流である。
経路L8に流通する液化窒素(第3流体)は、第2減圧弁8Bで所要の圧力値P2まで減圧された後、一部が気化した気液二相の状態で熱交換器7の中間部分に冷流体として導入され、第1流体を冷却して自身は全量窒素ガスとなる。
熱交換器7の温端から導出された後、経路L8に流通する窒素ガス(第3流体)は、循環熱交換器5に冷却源となる戻り流体(冷流体)として導入され、経路L1において多段圧縮機2の圧力の等しい吸入段(圧縮機2B)に戻される。
【0035】
経路(第2経路)L9は、一端が熱交換器7の二次側で経路L7から分岐し、多端が圧縮機2Aの一次側で経路L1に合流する。経路L9には、一次側から順に、第1減圧弁8A、熱交換器7、循環熱交換器5が配置されている。
【0036】
経路L9は、経路(第1経路)L7から分岐し、第1流体の一部を第2流体として流通する。換言すると、第2流体は、第1流体の分割流である。
経路L9に流通する液化窒素(第2流体)は、第1減圧弁8Aで所要の圧力値P1となるまで減圧された後、一部が気化した気液二相の状態で熱交換器7の冷端に冷流体として導入され、第1流体を冷却して自身は全量窒素ガスとなる。
熱交換器7の温端から導出された後、経路L9に流通する窒素ガス(第2流体)は、循環熱交換器5に冷却源となる戻り流体(冷流体)として導入され、経路L1において多段圧縮機2の圧力の等しい吸入段(圧縮機2A)に戻される。
【0037】
<熱交換器>
次に、本実施形態の液化装置1における熱交換器7の構成について、詳細に説明する。
図2は、本実施形態に係る熱交換器の構成を示す模式図である。
図2に示すように、熱交換器7は、第1熱交換部13、第2熱交換部14、第1ディストリビュータ(第1分配部)15、第2ディストリビュータ(第2分配部)16及び第3ディストリビュータ(第3分配部)17を備える。熱交換器7は、第1熱交換部13に第1ディストリビュータ15が連結され、第2熱交換部14に第2ディストリビュータ16が連結され、第1熱交換部13と第2熱交換部14とが第3ディストリビュータ17によって連結されて、これらの構成が一体化されている。
【0038】
本実施形態にかかる熱交換器7は、経路(第1経路)L7、経路(第2経路)L9及び経路(第3経路)L8に亘って配置され、経路L7を流れる第1流体を温流体とし、経路L9を流れる第2流体、及び経路L8を流れる第3流体を冷流体として熱交換することで、第1流体を冷却する、プレートフィン型熱交換器である。
【0039】
第1熱交換部13は、冷却対象となる第1流体が流通する第1流路(温流体流路)、冷流体となる第2流体が流通する第2流路(第1冷流体流路)、及び冷流体となる第3流体が流通する第3流路(第2冷流体流路)を有し、第1流路、第2流路、及び第3流路の間で熱交換を行う。
第1流路、第2流路、及び第3流路は、一般的なプレートフィン型熱交換器と同様に、それぞれ複数の層(フィンが設けられた流体の流路)を有していてもよい。また、第1熱交換部13は、第1流路、第2流路、及び第3流路の各層が交互となるように積層された構造であってもよい。
【0040】
第2熱交換部14は、第1流路と第2流路とを有し、第1流路と第2流路との間で熱交換を行う。
第1流路及び第2流路は、一般的なプレートフィン型熱交換器と同様に、それぞれ複数の層(フィンが設けられた流体の流路)を有していてもよい。また、第2熱交換部14は、第1流路及び第2流路の各層が交互となるように積層された構造であってもよい。
【0041】
第1ディストリビュータ(第1分配部)15は、第1熱交換部13に位置する。すなわち、第1ディストリビュータ15は、熱交換器7に設けられた3つのディストリビュータのうち、熱交換器7の温端に位置する。
【0042】
第1ディストリビュータ15には、第1流体の入口ヘッダ18A、第2流体の出口ヘッダ19B、及び第3流体の出口ヘッダ19Cがそれぞれ設けられている。第1ディストリビュータ15は、入口ヘッダ18Aを介して第1流体を第1熱交換部13に導入し、出口ヘッダ19Bを介して第2流体を第1熱交換部13から導出し、出口ヘッダ19Cを介して第3流体を第1熱交換部13から導出する。
【0043】
なお、入口ヘッダ18A、出口ヘッダ19B、及び出口ヘッダ19Cの第1ディストリビュータ15に設ける位置は、特に限定されない。図2に示すように、入口ヘッダ18A、出口ヘッダ19B、及び出口ヘッダ19Cを同じ端面に設けてもよいし、いずれかのヘッダを側面に設ける構成であってもよい。
【0044】
第2ディストリビュータ(第2分配部)16は、第2熱交換部14に位置する。すなわち、第2ディストリビュータ16は、熱交換器7に設けられた3つのディストリビュータのうち、熱交換器7の冷端に位置する。
【0045】
第2ディストリビュータ16には、第1流体の出口ヘッダ19A、及び第2流体の入口ヘッダ18Bが設けられている。第2ディストリビュータ16は、出口ヘッダ19Aを介して第1流体を第2熱交換部14から導出し、入口ヘッダ18Bを介して第2流体を第2熱交換部14に導入する。
【0046】
なお、出口ヘッダ19A、及び入口ヘッダ18Bの第2ディストリビュータ16に設ける位置は、特に限定されない。図2に示すように、出口ヘッダ19A、及び入口ヘッダ18Bを同じ端面に設けてもよいし、いずれかのヘッダを側面に設ける構成であってもよい。
【0047】
第3ディストリビュータ(第3分配部)17は、第1熱交換部13と第2熱交換部14との間に位置する。すなわち、第3ディストリビュータ17は、熱交換器7に設けられた3つのディストリビュータのうち、熱交換器7の中間部に位置する。
【0048】
第3ディストリビュータ17には、第3流体の入口ヘッダ18Cが設けられている。第3ディストリビュータ17は、第1熱交換部13から導出される第1流体を第2熱交換部14に導入し、第2熱交換部14から導出される第2流体を第1熱交換部13に導入し、入口ヘッダ18Cを介して第3流体を第1熱交換部13に導入する。
【0049】
本実施形態にかかる熱交換器7は、経路(第1経路)L7から入口ヘッダ18A及び第1ディストリビュータ15を介して第1流体を第1熱交換部13に導入し、第3ディストリビュータ17を介して第1熱交換部13から導出される第1流体を第2熱交換部14に導入した後、第2ディストリビュータ16及び出口ヘッダ19Aを介して第2熱交換部14から第1流体を経路(第1経路)L7に導出する。
【0050】
また、熱交換器7は、経路(第2経路)L9から入口ヘッダ18B及び第2ディストリビュータ16を介して第2流体を第2熱交換部14に導入し、第3ディストリビュータ17を介して第2熱交換部14から導出される第2流体を第1熱交換部13に導入した後、第1ディストリビュータ15及び出口ヘッダ19Bを介して第1熱交換部13から第2流体を経路(第2経路)L9に導出する。
【0051】
また、熱交換器7は、経路(第3経路)L8から入口ヘッダ18C及び第3ディストリビュータ17を介して第3流体を第1熱交換部13に導入した後、第1ディストリビュータ15及び出口ヘッダ19Cを介して第1熱交換部13から第3流体を経路(第3経路)L8に導出する。
【0052】
<超臨界ガスの液化方法>
次に、本発明の一実施形態にかかる超臨界ガスの液化方法について、説明する。
本実施形態の超臨界ガスの液化方法(以下、単に「液化方法」と示す)は、上述した熱交換器7を備える液化装置1を用いて液化ガスを過冷却し、過冷却された液化ガスを製品として得る方法である。
【0053】
本実施形態の液化方法は、冷却対象の液化ガスを第1流体として熱交換器7の第1流路(温流体流路)に導入し、熱交換器7によって過冷却された第1流体を熱交換器7から導出し、過冷却された第1流体を分割して少なくとも第2流体及び第3流体を得た後、過冷却された第1流体の残部を製品とする。
また、本実施形態の液化方法は、得られた第2流体を第1圧力値P1まで減圧した後、熱交換器7の第2流路(第1冷流体流路)に冷流体として導入する。
さらに、本実施形態の液化方法は、第2流体と同じ温度の第3流体を第1圧力値P1と異なる第2圧力値P2まで減圧した後、熱交換器7の第3流路(第2冷流体流路)に冷流体として導入する。
【0054】
本実施形態の液化方法では、製品の温度が一定となるように、第2流体又は第3流体の流量を調整する。その際、第2流体又は前記第3流体のうち、流量を調整する流体の圧力値を、流量を調整しない流体の圧力値よりも低くする。
【0055】
具体的には、図1及び図2に示すように、経路(第1経路)L7から分岐する経路(第3経路)L8に流通する液化窒素(第3流体)は、第2減圧弁8Bで所要の圧力値P2となるまで減圧される。また、経路(第1経路)L7から分岐する経路(第2経路)L9に流通する液化窒素(第2流体)は、第1減圧弁8Aで所要の圧力値P1となるまで減圧される。
【0056】
本実施形態の液化方法では、熱交換器7の冷却源となる2つの冷流体のうち、第3流体が中圧、第2流体が低圧となるように、第1減圧弁8A及び第2減圧弁8Bの開度をそれぞれ調整する。すなわち、圧力値P1よりも圧力値P2が大きくなるように制御する。そして、2つの冷流体のうち、より温度の高い中圧流体(第3流体)を熱交換器7の中間部、すなわち、第3ディストリビュータ17から導入する。
【0057】
また、本実施形態の液化方法では、経路(第1経路)L7を流通する液化窒素(第1流体)の、熱交換器7の出口温度が一定になるように低圧流体の減圧弁の開度を調節する。一方、中圧流体の減圧弁は固定開度とする。これにより、熱交換器7を安定的に運転できる。具体的には、図1に示すように、温度測定器11による測定値が一定となるように、第2流体が流通する経路(第2経路)L9に位置する第1減圧弁8Aの開度を調整する。なお、第1減圧弁8Aの開度の調整は、自動制御であってもよいし、手動で制御してもよい。一方、第3流体が流通する経路(第3経路)L8に位置する第2減圧弁8Bの開度は固定する。
【0058】
ところで、従来の液化装置101によれば、図3及び図4に示すように、経路L109(本実施形態の液化装置1における経路L9に対応)を流通する第2流体は、第1減圧弁108Aの二次側から循環熱交換器105の一次側において、第2熱交換器127の入口ヘッダ128B、ディストリビュータ126、ディストリビュータ125、及び出口ヘッダ129Bと、第1熱交換器117の入口ヘッダ118B、ディストリビュータ116、ディストリビュータ115、及び出口ヘッダ119Bとを通過する必要がある。
【0059】
これに対して、本実施形態の液化装置1によれば、図1及び図2に示すように、経路L9を流通する第2流体は、第1減圧弁8Aの二次側から循環熱交換器5の一次側において、熱交換器7の入口ヘッダ18B、ディストリビュータ16、ディストリビュータ17、ディストリビュータ15、及び出口ヘッダ19Bのみを通過する。
【0060】
すなわち、本実施形態の液化装置1は、従来の液化装置101と比較して、経路L9における圧力損失を大きく低減できる。
また、経路L9における圧力損失が小さくなるため、従来の液化装置101における第3流体よりも本実施形態の液化装置1における第3流体の過冷度が大きくなる(エンタルピーが小さくなる)。したがって、従来よりも経路L9に流通する第3流体の流量を少なくでき、熱交換器7の小型化が可能となる。
【0061】
また、従来の液化装置101及び液化方法によれば、図3及び図4に示すように、経路L108(本実施形態の液化装置1における経路L8に対応)を流通する第3流体は、第1熱交換器117の冷端温度の状態から、第2減圧弁108Bにより圧力値P2まで減圧された後、第1熱交換器117に導入され、第1流体を冷却する。
【0062】
これに対して、本実施形態の液化装置1及び液化方法によれば、図1及び図2に示すように、経路L8を流通する第3流体は、熱交換器7の冷端温度の状態(すなわち、従来のプロセスよりも低温状態)から第2減圧弁8Bにより圧力値P2まで減圧され、熱交換器7に導入される。
【0063】
すなわち、本実施形態の液化装置1及び液化方法は、従来と比較して、経路L8を流通する第3流体の過冷度が大きいため、第2減圧弁8Bによって減圧した際、第3流体の一部が気化するが、その液体窒素の割合が従来よりも多い。したがって、本実施形態の液化装置1及び液化方法によれば、従来よりも経路L8を流通する第3流体の流量を減少させることが可能となる。
また、経路L8を流通する第3流体を熱交換器7に導入する際のガス窒素の割合が小さいため、熱交換器7のディストリビュータ17の小型化が可能となる。
【0064】
一般的に、熱交換器の低圧ラインから導出される窒素ガスは、フィード窒素圧縮機の吸入側に導入されるため、中圧ラインから導出される窒素よりも低圧である。
したがって、従来の液化装置101及び液化方法によれば、ガス密度が小さいため、第1熱交換器117及び第2熱交換器127において経路L109(低圧ライン)の圧力が最も低く、より大きな圧力損失が生じる傾向がある。
これに対して、本実施形態の液化装置1及び液化方法によれば、経路L9(低圧ライン)の圧力損失を低減させ、その上で、熱交換器7の小型化が可能となる。
【0065】
なお、定常運転時の熱交換器には、温流体として液体状態の流体(例えば、液体窒素)、冷流体として液体又は気液二相流状態といった低温の流体が流れる。
これに対して、液化装置の起動時には、熱交換器の温流体用の流路、及び冷流体用の流路において、常温、又は定常運転時と比較すると低温でないガス流体が流れる。
したがって、液化装置の起動時には、熱交換器を流れるガス流体の圧力損失は、定常運転時よりも極端に大きくなる。
本実施形態の液化装置1及び液化方法によれば、経路(第1経路)L7、経路(第2経路)L9、及び経路(第3経路)L8の圧力損失が低減されるため、液化装置1の起動時であっても熱交換器7に流れるガス流体の流量が多くなり、駆動時間を短縮できる。また、本実施形態の液化装置1及び熱交換器7によれば、第1~第3流体が流通する第1~第3流路においても、圧力損失が低減されているため、これらの第1~第3流路にガス流体を導入するといった起動方法の選択も可能となる。
【0066】
従来の液化装置101によれば、第1熱交換器117及び第2熱交換器127の運転温度が最も低く、大気温度との温度差が大きいため、これらの構成機器、及びその周辺への侵入熱が大きい。
これに対して、本実施形態の液化装置1によれば、従来よりもヘッダ数、ディストリビュータ数、配管数等の構成機器の点数が少なく、小型化された熱交換器7を用いるため、侵入熱を低減できる。したがって、本実施形態の液化装置1及び液化方法によれば、装置全体、及びプロセス全体の熱的効率の改善が可能となる。
【0067】
以上説明したように、本実施形態の熱交換器7によれば、2つの熱交換器の機能を1つにまとめるように構成されている。これにより、従来よりもヘッダ数、ディストリビュータ数、配管数等の構成機器の点数が少ないため、液化効率を改善し、圧力損失の低減が可能である。また、熱交換器7の小型化が可能であり、コスト減少による生産性の向上も可能である。
【0068】
また、本実施形態の液化装置1及び液化方法によれば、上述した熱交換器7を備えるため、液化効率を改善し、圧力損失の低減が可能である。すなわち、従来のように、複数の熱交換器を用いるプロセスよりも、各流体が通過するヘッダ、ディストリビュータの個数が減少するため、流体の圧力抵抗が減少する。したがって、装置の起動時間の短縮が可能となる。
【0069】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態の液化装置1では、熱交換器7が2つの熱交換器の機能を1つにまとめる構成を一例として説明したが、3つ以上の熱交換器を直列に接続した構成としてもよい。このように、液化装置における過冷却を行う熱交換器が3つ以上必要な場合であっても、従来よりも圧力損失の低減が可能となる、上記実施形態の液化装置1と同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、高圧の超臨界ガスを冷却して低温の液化ガスを採取する液化装置において、適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1・・・超臨界ガスの液化装置(液化装置)
2・・・多段圧縮機
2A,2B,2C・・・圧縮機
3A・・・第1昇圧ブロア
3B・・・第2昇圧ブロア
4A・・・第1膨張タービン
4B・・・第2膨張タービン
5・・・循環熱交換器
6・・・気液分離器
7・・・熱交換器
8A・・・第1減圧弁
8B・・・第2減圧弁
9,10,12・・・減圧弁
11・・・温度測定器
13・・・第1熱交換部
14・・・第2熱交換部
15・・・第1ディストリビュータ(第1分配部)
16・・・第2ディストリビュータ(第2分配部)
17・・・第3ディストリビュータ(第3分配部)
18A,18B,18C・・・入口ヘッダ
19A,19B,19C・・・出口ヘッダ
L1~L6・・・経路
L7・・・経路(第1経路)
L8・・・経路(第3経路)
L9・・・経路(第2経路)
P1,P2・・・圧力値
図1
図2
図3
図4