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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-27
(45)【発行日】2022-06-06
(54)【発明の名称】転写箔及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20220530BHJP
   B42D 25/324 20140101ALI20220530BHJP
   G03B 35/18 20210101ALI20220530BHJP
【FI】
G02B5/18
B42D25/324
G03B35/18
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020176710
(22)【出願日】2020-10-21
(62)【分割の表示】P 2019170760の分割
【原出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2021047411
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2020-10-21
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】河野 美都子
(72)【発明者】
【氏名】本間 英明
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】井口 猶二
【審判官】関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-90464(JP,A)
【文献】特開2009-175579(JP,A)
【文献】特開2010-128096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
G02B 5/32
B42D15/02
B42D25/00-25/485
G03H 1/00-5/00
G03B35/18
B44C 1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写材層と、前記転写材層を剥離可能に支持した支持体と、前記転写材層を間に挟んで前記支持体と向き合った接着層とを備え、前記転写材層はレリーフ構造形成層と反射層とを含んだ帯状の転写箔の製造方法であって、
回折画像を表示するレリーフ構造が一方の主面に設けられたレリーフ構造形成層を形成することと、
前記レリーフ構造が設けられた前記主面上に金属層を形成することと、
前記金属層上に、前記金属層の表面のうち、前記レリーフ構造形成層の長さ方向に各々が延びた一対の縁部を露出させ、それら縁部に挟まれた中央部を被覆したマスク層を形成することと、
前記マスク層をエッチングマスクとして用いたエッチングにより、前記金属層のうち前記一対の縁部に対応した部分を除去して、反射層を形成することと、
前記接着層を形成することとを含み、前記接着層の厚さを前記マスク層の厚さの2乃至40倍の範囲内とし、前記転写箔の長さ方向に延びた前記反射層の縁は凹部を含み、前記転写箔の一対の縁の各々から前記反射層までの最短距離を0.1乃至2.0mmの範囲内とする転写箔の製造方法。
【請求項2】
前記接着層の厚さを2μm乃至15μmの範囲内とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マスク層は0.2乃至1.5μmの範囲内の厚さを有するように形成する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記マスク層は0.4乃至1.0μmの範囲内の厚さを有するように形成する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
転写材層と、前記転写材層を剥離可能に支持した支持体と、前記転写材層を間に挟んで前記支持体と向き合った接着層とを備えた帯状の転写箔であって、
前記転写材層は、回折画像を表示するレリーフ構造が一方の主面に設けられたレリーフ構造形成層と、前記主面を部分的に被覆した金属製の反射層と、前記反射層を被覆し、前記反射層と同じ形状を有するマスク層とを含み、
前記反射層は、前記転写箔の長さ方向に延びた帯状の形状を有し、前記長さ方向に平行な前記転写箔の一対の縁から離間しており、前記転写箔の長さ方向に延びた前記反射層の縁は凹部を含み、前記転写箔の前記一対の縁の各々から前記反射層までの最短距離は0.1乃至2.0mmの範囲内にあり、
前記接着層の厚さは前記マスク層の厚さの2乃至40倍の範囲内にある転写箔。
【請求項6】
前記接着層の厚さは2μm乃至15μmの範囲内にある請求項5に記載の転写箔。
【請求項7】
前記マスク層は0.2乃至1.5μmの範囲内の厚さを有する請求項5又は6に記載の転写箔。
【請求項8】
前記マスク層は0.4乃至1.0μmの範囲内の厚さを有する請求項5又は6に記載の転写箔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写箔及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、商品等の物品が真正品であることを証明する目的で、偽造や複製が困難なレリーフ型のホログラムを上記物品において使用することがある。
【0003】
レリーフ型のホログラムは、凹部又は凸部から構成された回折格子からなる。レリーフ型のホログラムが射出する回折光の色やそれを視認可能な方向は、凹部又は凸部のピッチやそれらの配列の方位に応じて変化する。
【0004】
レリーフ型のホログラムには、対象物の画像を立体的に表示可能なもの、即ち、三次元画像を表示可能なものがある。そのようなホログラムとしては、例えば、ホログラムによって再生される画像における上記対象物の向きが、上記対象物の実物を観察した場合と同様に、観察角度の変化に応じて変化するものがある。このレリーフ型のホログラムには、例えば、凹部又は凸部を、互いに平行な複数の曲線状とした構造を採用する(特許文献1及び2を参照のこと)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-281804号公報
【文献】特開平7-104211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、商品券や紙幣などの物品では、帯状のレリーフ型ホログラムが貼り付けられたものが増えている。そのような物品の製造には、例えば、転写箔を使用する。この転写箔では、ホログラムが明るい画像を表示できるように、反射層としてアルミニウム層などの金属層を形成することが多い。
【0007】
本発明者らは、そのような転写箔には、以下の問題を生じることを見出している。
即ち、上記の転写箔の製造では、例えば、最終製品としての転写箔と同様の層構造を有している帯状の積層体を、最終製品としての転写箔よりも幅広に作製し、その後、この積層体の長さ方向に沿った両縁部を切断する。金属層が積層体の全幅に亘って設けられていると、転写箔の長さ方向に沿って延びた両端面で、金属層が露出することになる。金属層の切断面は、ばりを有し得る。また、転写箔の長さ方向に沿って延びた両端面で金属層が露出した構造は、耐薬品性に劣る。帯状のレリーフ型ホログラムは、その長さ方向に沿って延びた端面が長いので、ばりや耐薬品性の問題は特に深刻である。それ故、最終製品としての転写箔よりも狭い幅の金属層を有する積層体を形成し、この積層体の切断を、金属層が存在していない位置で行うことが望ましい。
【0008】
しかしながら、金属層の幅を狭くすると、画像を表示可能な領域の面積が減少する。それ故、画像の表示に利用する領域の幅は、金属層の幅と等しいことが望ましい。
【0009】
ところで、幅が狭い金属層は、例えば、幅広の金属層の両縁部をエッチングによって除去することにより得られる。具体的には、先ず、幅広の金属層上に、フォトレジスト層を形成する。次いで、このフォトレジスト層を、フォトマスクを用いた露光及び現像に順次供して、レジストパターンを形成する。その後、このレジストパターンをエッチングマスクとして用いたエッチングを行い、金属層の両縁部を除去する。
【0010】
金属層の幅を、画像を表示するためのレリーフ構造が設けられた領域の幅と等しくするには、フォトマスクをレリーフ構造に対して高い精度で位置合わせしなければならない。
【0011】
しかしながら、レリーフ構造は微細な凹部又は凸部で構成されているため、それ自体を撮像しても、レリーフ構造が設けられた領域と他の領域とを区別することは難しい。従って、この方法で、フォトマスクをレリーフ構造に対して高い精度で位置合わせすることは困難である。
【0012】
また、レリーフ構造を特定の条件下で照明すると、画像が再生される。例えば、この画像が三次元画像である場合、この三次元画像を撮像すれば、レリーフ構造が設けられた領域と他の領域とを区別することは可能である。但し、三次元画像をフォトマスクとともに正面方向から撮像するには、レリーフ構造を斜め方向から照明する必要がある。この照明光はフォトマスクによって少なくとも部分的に遮られるため、この方法でも、フォトマスクをレリーフ構造に対して高い精度で位置合わせすることは困難である。
【0013】
そして、或る対象物の三次元画像を再生するホログラムでは、その画像が表示される領域の位置は、照明方向や観察方向に応じて変化し得る。このような理由でも、フォトマスクをレリーフ構造に対して高い精度で位置合わせすることは困難である。
【0014】
三次元画像が、この三次元画像によって主に表現すべき立体的なモチーフ(要素)の画像を含んでいる場合、観察者は、三次元画像のうち、先のモチーフ(要素)の正面近傍の部分の画像を中心に観察する。そのため、このモチーフ(要素)の正面近傍の部分を表示する領域で、フォトマスクの位置ずれなどによる金属層の欠落を生じることなく、この正面近傍の部分を最大限大きく見せることができるようにすることが望まれている。
【0015】
そこで、本発明は、反射層として金属層を使用し、画像を十分に大きな寸法で再生するレリーフ構造が設けられた転写箔を、ばりや耐薬品性の問題を生じることなしに、高い歩留まりで製造可能とすることを目的とする。
【0016】
また、特には、本発明は、反射層として金属層を使用し、三次元画像を十分に大きな寸法で再生するレリーフ構造が設けられた転写箔を、ばりや耐薬品性の問題を生じることなしに、高い歩留まりで製造可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一側面によると、転写材層と、前記転写材層を剥離可能に支持した支持体とを備え、前記転写材層はレリーフ構造形成層と反射層とを含んだ帯状の転写箔の製造方法であって、観察者が注視する注視部を含んだ三次元画像を含む回折画像を表示するレリーフ構造が一方の主面に設けられたレリーフ構造形成層を形成することと、前記レリーフ構造が設けられた前記主面上に金属層を形成することと、前記金属層上に、前記金属層の表面のうち、前記レリーフ構造形成層の長さ方向に各々が延びた一対の縁部を露出させ、それら縁部に挟まれた中央部を被覆したマスク層を形成することと、前記マスク層をエッチングマスクとして用いたエッチングにより、前記金属層のうち前記一対の縁部に対応した部分を除去して、反射層を形成することとを含み、前記レリーフ構造のうち、前記注視部の表示に利用される注視領域を、前記反射層によって被覆し、前記注視領域から前記反射層の前記長さ方向の各縁までの最短距離を0.1乃至2.0mmの範囲内とする転写箔の製造方法が提供される。
【0018】
本発明の他の側面によると、転写材層と、前記転写材層を剥離可能に支持した支持体とを備えた帯状の転写箔であって、前記転写材層は、三次元画像を含む回折画像を表示するレリーフ構造が一方の主面に設けられたレリーフ構造形成層と、前記主面を部分的に被覆した金属製の反射層とを含み、前記反射層は、前記転写箔の長さ方向に延びた帯状の形状を有し、前記長さ方向に平行な前記転写箔の一対の縁から離間しており、前記三次元画像は、観察者が注視する注視部を含み、前記レリーフ構造のうち、前記注視部の表示に利用される注視領域は、前記反射層によって被覆されており、前記注視領域から前記反射層の前記長さ方向に延びた各縁までの最短距離は0.1乃至2.0mmの範囲内にある転写箔が提供される。
【0019】
ここで、用語「三次元画像」は、画像における対象物の向きが、例えば、その対象物の実物を観察した場合と同様に、観察角度の変化に応じて変化する画像を意味する。
【0020】
上記の転写箔及びその製造方法では、反射層は、転写箔の、その長さ方向に平行な一対の縁から離間させる。それ故、金属製の反射層を設けるにも拘わらず、ばりや耐薬品性の問題は生じない。
【0021】
また、上記の通り、この転写箔及びその製造方法では、レリーフ構造のうち注視部の表示に利用される注視領域から、反射層の上記長さ方向の各縁までの最短距離又はその設計値を、十分に大きくする。それ故、転写箔の製造において、レリーフ構造に対するマスク層の相対位置が目標とする相対位置から僅かにずれたとしても、注視領域上で、金属層の一部がエッチングによって除去されることはない。即ち、この転写箔は、その製造において、レリーフ構造に対するマスク層の相対位置が目標とする相対位置から僅かにずれたとしても、注視部を、部分的な欠落を生じさせることなしに表示することができる。それ故、この転写箔は、高い歩留まりで製造することが可能である。
【0022】
また、この転写箔及びその製造方法では、上記の距離又はその設計値を十分に小さくする。それ故、この転写箔は、注視部を大きく表示することが可能である。
【0023】
上記の距離及びその設計値は、0.3乃至1.0mmの範囲内にあることが好ましい。なお、「注視部」及び「注視領域」については、後で図面を参照しながら説明する。
【0024】
本発明の更に他の側面によると、前記三次元画像は、観察角度の変化に伴い、最大で30乃至60°の範囲内の角度で回転する上記側面に係る転写箔及びその製造方法が提供される。
【0025】
一般に、この回転角度の最大値が大きいほど、レリーフ構造のうち斜め方向から観察した場合にのみ注視部の表示に利用される領域と、レリーフ構造のうち正面方向から観察した場合にのみ注視部の表示に利用される領域は、大きさ及び位置の相違が大きくなる。従って、上記の構成が特に有効である。但し、この回転角度の最大値を過剰に大きくすると、三次元画像が暗くなるか、又は、観察角度の変化に応じた三次元画像の変化が滑らかでなくなる。
【0026】
本発明の更に他の側面によると、前記三次元画像は周辺部を更に含み、前記レリーフ構造のうち、前記周辺部の表示にのみ利用される周辺領域は、前記注視領域を取り囲んでいる上記側面に係る転写箔及びその製造方法が提供される。
【0027】
レリーフ構造に対するマスク層の相対位置が目標とする相対位置から僅かにずれた場合、画像の中心位置が設計位置から僅かにずれることになる。しかしながら、観察者は、通常、注視部に注目し、周辺部には注視部ほど注意を払わない。それ故、注視部の部分的な欠落を生じなければ、観察者が、そのような僅かなずれを知覚することは不可能又は困難である。
【0028】
本発明の更に他の側面によると、前記注視部と前記周辺部の一部とは、1以上の対象物の画像であり、前記周辺部の他の部分は、前記1以上の対象物の背景の画像を含んだ上記側面に係る転写箔及びその製造方法が提供される。
【0029】
三次元画像が背景の画像を含んでいる場合、1以上の対象物の画像は、より立体的に見える。
【0030】
本発明の更に他の側面によると、前記転写箔の前記一対の縁の各々から前記反射層までの最短距離を0.1乃至2.0mmの範囲内とする上記側面の何れかに係る転写箔の製造方法が提供される。或いは、本発明の更に他の側面によると、前記転写箔の前記一対の縁の各々から前記反射層までの最短距離は0.1乃至2.0mmの範囲内にある上記側面の何れかに係る転写箔が提供される。
【0031】
この距離が十分に大きければ、転写材層の一部を物品に転写してなる表示体の、その縁部における物品からの剥離を防止し易い。従って、先のずれが、表示体や表示体付き物品の外観に与える影響を抑えることができる。
【0032】
但し、この距離を小さくすると、レリーフ構造に対するマスク層の相対位置が目標とする相対位置からずれた場合に、金属層のうちエッチングによって除去される部分の位置が目標位置からずれ、その結果、転写箔の一方の端面で金属製の反射層が露出する可能性がある。この距離を大きくすると、画像の表示に利用可能な領域の面積が小さくなる。この距離は、0.1乃至1.0mmの範囲内にあることが好ましい。
【0033】
本発明の更に他の側面によると、前記転写箔の前記一対の縁の各々から前記反射層までの距離が前記長さ方向に沿って一定である上記側面の何れかに係る転写箔及びその製造方法が提供される。この構造は、画像の表示に利用可能な領域の面積を最大化するうえで有利である。
【0034】
或いは、本発明の更に他の側面によると、前記転写箔の前記一対の縁の各々から前記反射層までの距離が前記長さ方向に沿って変化する上記側面の何れかに係る転写箔及びその製造方法が提供される。この場合、前記長さ方向に沿った前記反射層の縁は、例えば、曲線状である。この構造は、ホログラム画像の表現を際立たせるうえで有利である。
【0035】
本発明の更に他の側面によると、1以上の貫通孔を有するように前記反射層を形成する上記側面の何れかに係る転写箔の製造方法が提供される。或いは、本発明の更に他の側面によると、前記反射層は1以上の貫通孔を有する上記側面の何れかに係る転写箔が提供される。各貫通孔の開口部の面積は、0.01乃至1mmの範囲内にあることが好ましい。これら貫通孔は、例えば、反射層の端部に設けることができる。これら貫通孔を設けることにより、例えば、外観の華やかさを増すことができる。また、これら貫通孔の位置ではマスク層も貫通しているので、貫通孔を設けると、反射層とマスク層(存在している場合には)とを間に挟んで隣り合った層間の接着性を高めることができる。それ故、端部からの剥離を生じ難くすることができる。
【0036】
本発明の更に他の側面によると、前記転写材層は、前記反射層を被覆し、前記反射層と同じ形状を有するマスク層を更に含んだ上記側面の何れかに係る転写箔が提供される。
このマスク層は、例えば、金属層のエッチングの際にエッチングマスクとして用いた層である。マスク層は、金属層のエッチング後に除去してもよく、残してもよい。
【0037】
本発明の更に他の側面によると、前記マスク層の厚さは0.2乃至1.5μmの範囲内にある上記側面に係る転写箔及びその製造方法が提供される。
マスク層が薄いと、エッチングマスクとしての機能が不十分となる可能性がある。マスク層が厚いと、後述する接着層とレリーフ構造形成層との間での層間剥離を生じ易い。マスク層の厚さは、0.4乃至1.0μmの範囲内にあることが好ましい。マスク層の厚さが上記の範囲内にあれば、マスク層によって生じる段差に起因した端部の剥離を防止し易く、エッチング時のマスク不良を防止し易い。
【0038】
本発明の更に他の側面によると、前記転写材層を間に挟んで前記支持体と向き合った接着層を更に備えた上記側面の何れかに係る転写箔が提供される。
転写箔は、接着層を備えていてもよく、備えていなくてもよい。接着層の母材は、熱可塑性樹脂とすることができる。その樹脂成分は、アクリル樹脂とすることができる。アクリル樹脂は、ポリメチルメタクリレート等とすることができる。転写箔から表示体を転写する物品が有価証券等である場合、この物品の材質は、紙、ポリプロピレン、又はポリエチレンである場合が多い。樹脂成分をアクリル樹脂とした場合、そのような物品への転写を少ない熱量で行うことができる。それ故、短時間のホットスタンピングで転写できる。これにより、転写のスループットが向上する。
【0039】
ここで、「短時間のホットスタンピング」とは、一般的に、90乃至130℃のダイヘッドのプレス面の温度での1秒未満のホットスタンピングを意味する。短時間のホットスタンピング時の圧力は、0.2乃至5t/cmとすることができる。短時間でないホットスタンピング時の圧力も、0.2乃至5t/cmとすることができる。
【0040】
アクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂として、例えば、ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、又はポリウレタン系樹脂を使用することもできる。ビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、又はポリビニルアルコールを使用することができる。ポリスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン又はスチレン・アクリロニトリル共重合体を使用することができる。ポリエチレン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン又はエチレン酢酸ビニル共重合体を使用することができる。
【0041】
樹脂成分は、これらのうち2種類以上を共重合した樹脂であってもよい。上述した各樹脂は、エステル結合、ウレタン結合、エーテル結合、アミン結合、及びシラノール結合の1以上を含んでいてもよい。この場合、これらの結合に関わる官能基を有する2種類以上の樹脂の化学構造の一部を架橋させてもよい。これらの結合によって分子量を調整することができ、それ故、ガラス転移温度、軟化温度、粘弾性、及び耐溶剤性等を調整することができる。熱可塑性樹脂は、上記の通り共重合体であってもよく、変性していてもよい。
【0042】
接着層の厚さは、2μm乃至15μmの範囲内とすることができる。また、接着層の厚さは、マスク層の厚さの2乃至40倍の範囲内とすることができる。マスク層が厚ければ、マスク層によって生じる段差に起因した接着不良を防止し易い。マスク層が過剰に厚くなければ、熱可塑性樹脂は、表示体の縁からはみ出し難い。
【0043】
本発明の更に他の側面によると、前記接着層は蛍光を発する材料を含んでいる上記側面に係る転写箔が提供される。或いは、本発明の更に他の側面によると、前記転写材層は、前記反射層を間に挟んで前記支持体と向き合い、蛍光を発する材料を含んだ層を更に含んだ上記側面の何れかに係る転写箔が提供される。一例によれば、この蛍光を発する材料を含んだ層は、反射層と他の層との接着強度を高めるために設けられるアンカーコート層である。
【0044】
このような構成を採用した場合、蛍光を利用して、金属層のエッチングが正しく行われたことを確認することができる。例えば、金属層のエッチングが正しい位置で行われたこと、又は、不要なエッチング残りが生じていないことを確認することができる。
【0045】
このような構成は、回折画像として三次元画像を表示するレリーフ構造が設けられた転写箔の製造に限らず、二次元など他の回折画像を表示するレリーフ構造が設けられた転写箔の製造にも有用である。
【0046】
或いは、この蛍光を利用して、接着層やアンカーコート層などの蛍光を発する材料を含んだ層の厚さのばらつきを確認することができる。具体的には、蛍光強度の分布を調べることにより、上記厚さのばらつきを確認することができる。転写箔では、その周縁部において、接着層やアンカーコート層などの厚さにばらつきを生じ易い。蛍光を利用すると、特に周縁部における厚さの管理を容易に行うことができる。
【0047】
或いは、例えば、蛍光を発する材料(第1材料)に、他の材料(第2材料)からなる粒子が分散している場合、この複合材料に励起光を照射して、これを観察することにより、第2材料からなる粒子の分散状態を確認することができる。粒子の分散状態は、この複合材料を含んだ層の接着性に影響を及ぼす。特に、転写箔の周縁部における接着性は、後述する表示体全体の接着性に大きな影響を及ぼす。蛍光を利用すると、粒子の分散状態を容易に確認することができる。具体的には、上記の複合材料に励起光を照射して蛍光でのヘイズを測定することにより、粒子の分散状態を確認できる。第1材料及び第2材料としては、有機蛍光染料を用いることが好ましい。
【0048】
本発明の更に他の側面によると、前記蛍光を発する材料は、波長が365nmの光で励起した場合に、420乃至480nmの波長範囲内で最大強度を示す蛍光を発する上記側面に係る転写箔が提供される。
【0049】
ヒトは、波長が約555nmの光に対して最大の視感度を示すが、上記の波長範囲内の蛍光であれば、機械のみならず、肉眼でも確認することも可能である。しかも、上記の波長範囲内の蛍光を発する材料は数多く存在するため、選定が容易である。また、多くの環境下では、上記波長範囲内の蛍光、即ち青色の蛍光のほうが、赤色の蛍光のほうが目立たない。即ち、上記の波長範囲内の蛍光は、表示体による回折画像の表示を妨げ難い。
【0050】
本発明の更に他の側面によると、前記蛍光を発する材料は有機物である上記側面の何れかに係る転写箔が提供される。
蛍光を発する材料は有機物である場合、特に、蛍光を発する材料が青色の蛍光を発する有機物である場合、この材料は光劣化を生じ易い。それ故、この場合、検査の際には蛍光を利用することができ、表示体としての使用時には、回折画像の表示が蛍光によって妨げられるのを防止することができる。
【0051】
蛍光を発する材料は、可視領域の光を吸収せず、且つ、可視領域外の特定の光を照射することによって蛍光を発するものであってもよい。そのような材料を含んだ層は、可視領域の光を吸収せず、且つ、可視領域外の特定の光を照射することによって蛍光を発し得る。ここで、「可視領域の光を吸収しない」とは、蛍光を発する材料を含んだ層の吸収率が、可視領域の全域で、反射層の反射率より小さい場合と定義でき、更には、上記吸収率が上記反射率の1/3以下である場合と定義できる。
【0052】
蛍光を発する材料は、低分子材料であってもよく、熱可塑性樹脂などの高分子材料であってもよい。前者の場合、蛍光を発する材料は、例えば、高分子材料と混合して使用する。後者の場合、蛍光を発する材料は、例えば、接着剤として用いることができる。蛍光を発する材料としては、紫外線励起蛍光体又は赤外線励起蛍光体を使用することができる。なお、紫外線励起蛍光体は、紫外線を吸収することによって、可視領域に含まれる波長の光を発する蛍光体である。また、赤外線励起蛍光体は、赤外線を吸収することによって、可視領域に含まれる波長の光を発する蛍光体である。
【0053】
蛍光を発する材料は、無機蛍光体であってもよく、有機蛍光体であってもよい。
【0054】
無機蛍光体は、例えば、Ca、Zn、Y及びVの酸化物、硫化物、又はケイ酸塩の結晶を主成分とし、これに金属元素又はランタノイド等の希土類元素を含有させて、焼成したものである。無機の紫外線励起蛍光体の具体例としては、CaCl:Eu2+、CaWO、ZnO:ZnSiO:Mn、YS:Eu、ZnS:Ag、YVO:Eu、Y:Eu、GdS:Tb、LaS:Tb、YAl12:Ceが挙げられる。なお、蛍光体の組成は、通常、「:」の前後に、それぞれ、主成分である母体結晶の組成とその中に分散した付活剤元素とを記載することにより表記する。例えば、ZnS:Mnは、母体結晶の組成がZnSであり、付活剤元素がMnであることを示している。
【0055】
有機蛍光体は、例えば、芳香族ヘテロ環誘導体、ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体、イミダゾール誘導体、クマリン誘導体、トリアゾール誘導体、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ナフタル酸誘導体、イミダゾロン誘導体、多環芳香族炭化水素、ペリレン系化合物、又はナフタルイミド系化合物である。芳香族ヘテロ環誘導体の具体例としては、フルオレセイン、エオシン、ローダミンB、ローダミン6G、及びチオフラビンが挙げられる。多環芳香族炭化水素の具体例としては、アントラセンが挙げられる。有機蛍光体は、これらの化合物の1以上の構造と他の構造とを分子中に有していてもよい。
【0056】
蛍光を発する材料は、同種又は異種の蛍光体の混合物であってもよい。ここで、同種の蛍光体とは、蛍光体が結晶である場合には、その組成及び結晶構造が同様であり、結晶子サイズなどが異なる2以上の蛍光体である。また、異種の蛍光体とは、蛍光体の組成、結晶構造又は分子構造が異なっている2以上の蛍光体である。例えば、LiNd0.9Yb0.112で表される組成を有し、同じ結晶構造を有している結晶体からなり、結晶子サイズが異なる、即ち結晶性が異なる2以上の蛍光体は、同種の蛍光体である。また、例えば、LiNd0.9Yb0.112で表される結晶からなる蛍光体と、Nd0.9Yb0.1Al2.7Cr0.3(BOで表される結晶からなる蛍光体とは、少なくとも組成及び結晶構造が異なっているため、異種の蛍光体である。
【0057】
蛍光を発する材料は、蛍光インキ中に、例えば、0.001乃至0.1質量%の濃度で含有させることができる。輝度などの蛍光特性と印刷適性の向上とを図るために、この材料としては、メディアン径が0.1乃至50μmの範囲内にある蛍光顔料を使用することが好ましく、1.0乃至20μmの範囲内にある蛍光顔料を使用することがより好ましい。蛍光を発する材料を含んだ層における蛍光顔料の含有量は、例えば、0.1乃至20質量%の範囲内とする。
【0058】
励起光として用いる紫外線は、一般に、紫外線領域の長波長側から順に、UV-A、UV-B、及びUV-Cに分けられる。UV-Aは、400乃至320nmに波長成分を有する紫外線である。UV-Bは、320乃至290nmに波長成分を有する紫外線である。UV-Cは、290乃至10nmに波長成分を有する紫外線である。
【0059】
蛍光体は、励起光の波長域に応じて2種類に分類される。一方は、殺菌灯によく用いられている、比較的短い波長の紫外線、例えば波長が254nm付近の紫外線で励起する蛍光体である。他方は、比較的短い波長の紫外線、例えば波長が254nm付近の紫外線と、一般なブラックライトが射出する比較的長い波長の紫外線、例えば波長が365nm付近の紫外線との双方の広い波長領域で励起する蛍光体である。ブラックライトは入手し易いことから、波長が365nm付近の紫外線で励起する蛍光体を用いることが好ましい。
【0060】
本発明の更に他の側面によると、前記パターン露光は、前記反射層が、前記転写箔の幅方向に各々が延びた1以上のスリットを有し、前記1以上のスリットによって複数の部分へ分割されるように行う上記側面の何れかに係る転写箔の製造方法が提供される。或いは、本発明の更に他の側面によると、前記反射層は、前記転写箔の幅方向に各々が延びた1以上のスリットを有し、前記1以上のスリットによって複数の部分へ分割されている上記側面の何れかに係る転写箔が提供される。
【0061】
この構成を採用した場合、転写材層の一部(以下、転写部という)を物品へ転写する際に、転写部と非転写部との境界の位置をスリットの位置と一致させると、優れた箔切れ性を達成できる。また、物品に転写された転写部、即ち表示体の上記スリットに対応した端面で、金属製の反射層が露出するのを防止できる。
【0062】
本発明の更に他の側面によると、前記1以上のスリットは2以上のスリットであり、隣り合った前記スリット間の距離は1乃至15mmの範囲内にある上記側面に係る転写箔及びその製造方法が提供される。
この距離が十分に大きければ、転写位置のずれを生じたとしても、反射層が端面で露出するのを防止できる。また、この距離が過度に大きくなければ、十分な絵柄領域を確保できる。
【0063】
本発明の更に他の側面によると、前記反射層の輪郭は、スリットの近傍で曲線を含んでいる上記側面に係る転写箔及びその製造方法が提供される。
転写箔の長さ方向に延びた反射層の縁とスリットの長さ方向に延びた反射層の縁とによって形成される角は、丸められていてもよい。この構造によると、接着不良が最も発生し易い角部での転写箔の接着不良を防止し易い。
【0064】
本発明の更に他の側面によると、前記転写箔の幅が7乃至20mmの範囲内となるように切断を行うことを更に含んだ上記側面の何れかに係る転写箔の製造方法が提供される。或いは、本発明の更に他の側面によると、前記転写箔は7乃至20mmの範囲内の幅を有する上記側面の何れかに係る転写箔が提供される。
【0065】
支持体は、ポリマーフィルム又はポリマーシートとすることができる。支持体の材料は、プラスチックとすることができる。また、支持体は、コートされたプラスチックフィルムとすることができる。プラスチックは、ポリオレフィン、アクリル、又はポリカーボイネートとすることができる。ポレオレフィンは、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はポリエチレンテレフタレートとすることができる。支持体の転写材層を支持している主面には、離型層を設けてもよい。離型層は、フッ素樹脂又はシリコーンを含んだものとすることができる。
【0066】
支持体の厚さは、例えば、20乃至60μmとすることができる。支持体を十分に厚くすると、マスク層が設けられた部分とマスク層が設けられていない部分との厚さの相違等が転写箔の変形に及ぼす影響を小さくすることができる。支持体が適度に薄ければ、支持体が変形することにより、マスク層によって生じる段差を小さくすることができる。
【0067】
支持体のヤング率は、3500乃至5000MPaとすることができる。ヤング率がこの範囲内にあれば、支持体は、搬送時の伸びを抑えつつ、上記の段差が小さくなるように変形することができる。
【0068】
搬送時の支持体の伸びは、後述するマスク層の位置ズレにも影響する。支持体の厚みのばらつきは、12μm以内とすることができる。これよりばらつきが大きい場合には、局所的な支持体の伸びが生じやすく、後述のマスク層の位置ズレも大きくなりやすい。
【0069】
レリーフ構造形成層の材料は、例えば、熱可塑性樹脂又は硬化樹脂とすることができる。硬化樹脂は、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂又は電子線硬化樹脂とすることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂又はビニル樹脂を使用する。熱硬化性樹脂としては、例えば、反応性水酸基を有するアクリルポリオール若しくはポリエステルポリオールにポリイソシアネートを架橋剤として添加して架橋させたウレタン樹脂、メラミン樹脂又はフェノール樹脂を使用する。紫外線硬化樹脂又は電子線硬化樹脂としては、例えば、アクリル樹脂を使用できる。アクリル樹脂としては、例えば、エポキシアクリル、エポキシメタクリル、ウレタンアクリレート又はウレタンメタクリレートを使用する。
【0070】
レリーフ構造形成層は、例えば、以下の方法より形成することができる。例えば、熱可塑性樹脂からなる層に、レリーフ構造が設けられたスタンパを、熱加圧し、その後、先の層からスタンパを離す。或いは、紫外線硬化樹脂からなる塗膜を形成し、これにスタンパを押し当てながら紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、その後、塗膜からスタンパを離す。或いは、熱硬化性樹脂からなる塗膜を形成し、これにスタンパを押し当てながら加熱して熱硬化性樹脂を硬化させ、その後、塗膜からスタンパを離す。レリーフ構造形成層の厚さは、例えば、1乃至25μmの範囲内とすることができる。
【0071】
金属層は、レリーフ構造形成層の主面の一部又は全体に形成する。また、金属製の反射層は、レリーフ構造形成層の主面の一部に形成する。金属製の反射層をレリーフ形成層の主面の一部に形成した場合、転写箔の長さ方向に沿って延びた両端面で、反射層が露出するのを防止できる。また、反射層によって、例えば、より複雑又は精緻な絵柄を表現することが可能となる。この場合、転写箔の偽造をより困難とすることができる。
【0072】
金属製の反射層は、レリーフ構造が生じさせる光学的効果を容易に観察可能とする。なお、レリーフは、構造色を表示する。構造色は、例えば、観察方向や照明方向に応じて変化する色又は虹色である。
【0073】
金属製の反射層又はそのパターニング前の金属層は、単体金属又は合金からなる。単体金属としては、例えば、アルミニウム、スズ、ニッケル、銅、銀、又は金を使用することができる。合金としては、例えば、アルミニウム、スズ、ニッケル、銅、銀、及び金の1以上を含んだ合金を使用することができる。これらの金属の純度は、99%以上とすることができる。また、これら金属の純度は、99.99%(4N)以上であってもよい。4N以上の純度とすることで、金属層の欠陥を低減し易い。金属層は、例えば、真空蒸着法及びスパッタリング法などの気相堆積法により形成することができる。金属製の反射層及び金属層の厚さは、例えば、10乃至500nmの範囲内とすることができる。
【0074】
マスク層は、例えば、先ず、金属層上に感光性樹脂層を形成し、次いで、この感光性樹脂層を、フォトマスクを用いたパターン露光及び現像に供することにより得られる。マスク層は、印刷により設けられた印刷マスクであってもよい。
【0075】
転写材層は、支持体と接するように位置した剥離保護層を更に含むことができる。剥離保護層は、転写部の支持体からの剥離を容易にするとともに、剥離した転写部、即ち、表示体の表面を損傷及び劣化から保護する役割を果たす。剥離保護層は、例えば、光透過性を有している。剥離保護層は、例えば樹脂からなる。剥離保護層を構成している樹脂は、例えば、紫外線硬化した樹脂、熱硬化した樹脂、又は、熱可塑性樹脂である。この樹脂には、例えば、アクリル樹脂を用いることができる。剥離保護層の厚さは、例えば、0.5乃至5μmの範囲内とすることができる。
【0076】
接着層は、例えば熱可塑性樹脂からなる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、及びオレフィン樹脂が挙げられる。接着層の厚さは、例えば、0.5乃至20μmの範囲内とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1】本発明の一実施形態に係る転写箔を概略的に示す平面図。
図2図1に示す転写箔のII-II線に沿った断面図。
図3図1及び図2に示す転写箔の一部を拡大して示す平面図。
図4図1乃至図3に示す転写箔が、略正面から観察した場合に表示する画像を示す図。
図5図1乃至図3に示す転写箔が、斜め右から観察した場合に表示する画像を示す図。
図6図1乃至図3に示す転写箔が、斜め左から観察した場合に表示する画像を示す図。
図7図1乃至図3に示す転写箔と、図4乃至図6の画像を三次元復元することにより得られる仮想的な立体物とを、仮想空間に重ねた様子を概略的に示す図。
図8図1及び図2に示す転写箔の一部を拡大して示す他の平面図。
図9】反射層に位置ずれを生じた転写箔が、略正面から観察した場合に表示する画像を示す図。
図10】反射層に位置ずれを生じた転写箔が、斜め右から観察した場合に表示する画像を示す図。
図11】反射層に位置ずれを生じた転写箔が、斜め左から観察した場合に表示する画像を示す図。
図12】第1変形例に係る転写箔を概略的に示す平面図。
図13】第2変形例に係る転写箔を概略的に示す平面図。
図14】第3変形例に係る転写箔を概略的に示す平面図。
図15】表示体付き物品の一例を概略的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0078】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。なお、同様又は類似した機能を有する要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0079】
<転写箔>
先ず、本発明の一実施形態に係る転写箔について説明する。
【0080】
図1は、本発明の一実施形態に係る転写箔を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す転写箔のII-II線に沿った断面図である。図3は、図1及び図2に示す転写箔の一部を拡大して示す平面図である。
【0081】
なお、図中、X方向及びY方向は、転写箔10の主面に平行であり且つ互いに直交する方向である。また、Z方向は、X方向及びY方向に対して垂直な方向である。即ち、Z方向は、転写箔10の厚さ方向である。
【0082】
図1乃至図3に示す転写箔10は、支持体11と転写材層12と接着層13とを含んでいる。
支持体11は、転写材層12を剥離可能に支持している。支持体11は、帯形状を有している。
【0083】
転写材層12は、レリーフ構造形成層121と、反射層122と、剥離保護層123と、マスク層124とを含んでいる。剥離保護層123、レリーフ構造形成層121、反射層122、及びマスク層124は、この順に、支持体11上に積層されている。レリーフ構造形成層121と反射層122とマスク層124との積層順は、逆であってもよい。
【0084】
レリーフ構造形成層121は、光透過性を有している材料、例えば、無色透明な材料からなる。レリーフ構造形成層121の反射層122側の主面には、三次元画像を含む回折画像を表示するレリーフ構造RSが設けられている。ここでは、レリーフ構造RSは、上記主面の全体に亘って設けられている。この主面は、レリーフ構造RSが設けられていない領域、即ち平坦な領域を更に含んでいてもよい。
【0085】
レリーフ構造RSは、互いに交差する2つの方向、例えば互いに直交する2つの方向に配列した複数の画素を含んでいる。各画素は、赤色用の第1サブ画素と、緑色用の第2サブ画素と、青色用の第3サブ画素とを含んでいる。これら画素は、加法混色により様々な色を表示する。
【0086】
赤色用の第1サブ画素は、Y方向に各々が延び、X方向へ配列した複数の短冊状部からなる。これら短冊状部は、それぞれ、観察角度の変化、例えばY方向に垂直な面内での観察角度の変化に応じて順次再生される画像の表示に利用する。
【0087】
これら短冊状部には、回折格子が設けられているものと、回折格子が設けられていないものとがある。また、これら短冊状部のうち、回折格子が設けられているものは、回折格子の格子定数は互いに等しいが、回折格子を構成している溝状の凹部又は畝状の凸部の配列方向が異なっている。
【0088】
回折格子が設けられていない短冊状部は、回折光を射出しないため、全観察角度において表示に寄与しない。他方、回折格子が設けられた短冊状部は、一定の照明条件下、例えば、X方向に対して垂直であり且つY方向に対して傾いた方向から白色光で照明する条件下では、溝状の凹部又は畝状の凸部の配列方向に応じて定まる特定の角度に赤色回折光を高い強度で射出し、他の角度には高い強度の回折光は射出しない。
【0089】
そして、これら短冊状部のうち回折格子が設けられているものは、短冊状部に占める回折格子の面積比が様々である。この面積比に応じて、回折光の強度が変化する。
【0090】
なお、全観察角度に赤色回折光を最大強度で射出するように設計した第1サブ画素では、短冊状部に設けられた凹部又は凸部の配列は、例えば、Y方向に一定のピッチで配列した複数の円弧からなるパターンを形成する。
【0091】
緑色用の第2サブ画素は、回折格子の格子定数が異なること以外は、赤色用の第1サブ画素と同様の構造を有している。第2サブ画素の短冊状部のうち、回折格子が設けられているものは、上記照明条件下において、溝状の凹部又は畝状の凸部の配列方向に応じて定まる特定の角度に緑色回折光を高い強度で射出し、他の角度には高い強度の回折光は射出しない。
【0092】
青色用の第3サブ画素は、回折格子の格子定数が異なること以外は、赤色用の第1サブ画素と同様の構造を有している。第3サブ画素の短冊状部のうち、回折格子が設けられているものは、上記照明条件下において、溝状の凹部又は畝状の凸部の配列方向に応じて定まる特定の角度に青色回折光を高い強度で射出し、他の角度には高い強度の回折光は射出しない。
【0093】
レリーフ構造形成層121のレリーフ構造RSが設けられた主面は、第1表示領域RAと第2表示領域RBとを含んでいる。
【0094】
第1表示領域RAは、レリーフ構造形成層121の上記主面のうち、三次元画像を表示するレリーフ構造が設けられた領域である。ここでは、転写箔10の幅と等しい幅を各々が有する複数の第1表示領域RAが、間を隔てて転写箔10の長さ方向に配列している。
【0095】
第1表示領域RAは、第1領域RA1と第2領域RA2とを含んでいる。
【0096】
第1領域RA1は、三次元画像の一部としての1以上の対象物の画像を表示するレリーフ構造が設けられた領域である。ここでは、一例として、第1領域RA1は、三次元画像の一部として四輪自動車の画像を表示するレリーフ構造が設けられた領域であるとする。
【0097】
なお、第1領域RA1のうち、第1部分領域RA1aは、図4を参照しながら後で説明する条件下で観察した場合に、四輪自動車の画像の表示に利用する領域である。また、第1領域RA1のうち、第2部分領域RA1bは、図5を参照しながら後で説明する条件下で観察した場合に、四輪自動車の画像の表示に利用する領域である。第1領域RA1のうち、第3部分領域RA1cは、図6を参照しながら後で説明する条件下で観察した場合に、四輪自動車の画像の表示に利用する領域である。
【0098】
第1領域RA1内に配置された画素のうち、第2領域RA2との境界に隣接したものは、上記照明条件下において、少なくとも1つの角度に、赤、緑及び青色の回折光の少なくとも1つを射出する。第1領域RA1内に配置された他の画素の各々は、上記照明条件下において、少なくとも1つの角度に、赤、緑及び青色の回折光の少なくとも1つを射出するものであってもよく、何れの角度にも回折光を射出しないものであってもよい。
【0099】
ここに記載する例では、第1領域RA1内に配置され且つ反射層122によって被覆された画素の各々は、上記照明条件下において、少なくとも1つの観察角度で、四輪自動車の表示に寄与する。また、ここに記載する例では、第1領域RA1内に配置され且つ反射層122によって被覆された画素の一部は、全ての観察角度で四輪自動車の表示に寄与し、第1領域RA1内に配置され且つ反射層122によって被覆された残りの画素は、少なくとも1つの観察角度で四輪自動車の表示に大きく寄与し、他の観察角度で四輪自動車の背景の表示に大きく寄与する。なお、第1領域RA1内に配置された残りの画素は、反射層122によって被覆されていないため、強い回折光を射出しない。それ故、これら画素は、何れの観察角度でも四輪自動車の表示に大きくは寄与しない。
【0100】
第2領域RA2は、三次元画像の残りの部分としての、1以上の対象物の背景の画像のみを表示するレリーフ構造が設けられた領域である。ここでは、第2領域RA2は、第1領域RA1を取り囲んでいる。ここでは、一例として、第2領域RA2は、三次元画像の残りの部分として四輪自動車の背景の画像のみを表示するためのレリーフ構造が設けられた領域であるとする。
【0101】
ここに記載する例では、第2領域RA2内に配置され且つ反射層122によって被覆された画素の各々は、上記照明条件下において、全ての観察角度で、四輪自動車の背景の表示に大きく寄与する。なお、第2領域RA2内に配置された残りの画素は、反射層122によって被覆されていないため、強い回折光を射出しない。それ故、これら画素は、何れの観察角度でも四輪自動車の背景の表示に大きくは寄与しない。即ち、第2領域RA2内に配置された画素の各々は、何れの観察角度においても、四輪自動車の画像の表示には寄与しない。
【0102】
第2表示領域RBは、レリーフ構造形成層121の上記主面のうち、三次元画像の表示に利用しない領域である。ここでは、複数の第2表示領域RBが、間を隔てて転写箔10の長さ方向に配列している。即ち、第1表示領域RAと第2表示領域RBとは、転写箔10の長さ方向に交互に配列している。
【0103】
第2表示領域RBは、平坦面であってもよく、レリーフ型の光散乱構造が設けられた面であってもよく、レリーフ型の回折格子(三次元画像を表示するものを除く)が設けられた面であってもよく、それらの2以上の組み合わせであってもよい。
【0104】
反射層122は、第1表示領域RAの一部と第2表示領域RBの一部とを被覆している。反射層122は、パターニングされた金属層である。反射層122は、転写箔10の長さ方向、即ちY方向に延びた帯状の形状を有し、Y方向に平行な転写箔10の一対の縁から離間している。反射層122のうちレリーフ構造RSを被覆している部分は、レリーフ構造に対してコンフォーマルな形状を有している。
【0105】
剥離保護層123は、支持体11と隣接するように設けられている。剥離保護層123は、光透過性を有している材料、例えば、無色透明な材料からなる。剥離保護層123は、省略することができる。
【0106】
マスク層124は、反射層122を被覆し、反射層122と同じ形状を有している。マスク層124は、金属層を反射層122へとパターニングする際に、エッチングマスクとして利用した層である。マスク層124は省略することができる。
【0107】
転写材層12は、互いに隣接した転写部TP及び非転写部を含んでいる。転写部TP及び非転写部は、転写箔10の長さ方向へ交互に配置されている。
【0108】
転写部TPは、転写材層12のうち、物品へ転写される部分である。転写部TPは、表示体として利用される部分である。各転写部TPは、転写材層12のうち、1以上の第1表示領域RAに対応した部分と、2以上の第2表示領域RBの一部に対応した部分とを含んでいる。
【0109】
非転写部は、転写材層12のうち、物品へ転写されずに残留する部分である。非転写部は、転写材層12のうち、第2表示領域RBの他の一部に対応した部分を含んでいる。非転写部は省略することができる。
【0110】
この転写箔10では、通常、支持体11は無色透明である。この場合、転写箔10は、以下に説明する画像を表示し得る。
【0111】
図4は、図1乃至図3に示す転写箔が、略正面から観察した場合に表示する画像を示す図である。図5は、図1乃至図3に示す転写箔が、斜め右から観察した場合に表示する画像を示す図である。図6は、図1乃至図3に示す転写箔が、斜め左から観察した場合に表示する画像を示す図である。
【0112】
転写箔10の支持体11側の面を、X方向に対して垂直であり且つY方向に対して傾いた方向から白色光で照明し、これを略正面から観察した場合、転写箔10は、図4に示すように、略正面を向いた四輪自動車の画像と、その背景の画像とを表示する。
【0113】
同様の照明条件下で、転写箔10の支持体11側の面を斜め右から観察した場合、転写箔10は、図5に示すように、観察者から見て斜め左を向いた四輪自動車の画像と、その背景の画像とを表示する。
【0114】
そして、同様の照明条件下で、転写箔10の支持体11側の面を斜め左から観察した場合、転写箔10は、図6に示すように、観察者から見て斜め右を向いた四輪自動車の画像と、その背景の画像とを表示する。
【0115】
転写箔10は、それが表示する画像における四輪自動車の向きが、観察角度の変化に応じて連続的に変化するように構成されている。それ故、転写箔10が表示する四輪自動車の画像は立体的に見える。
【0116】
なお、四輪自動車の背景の画像が、ベタ画像でなく、四輪自動車の向きの変化に応じてX方向へ移動するように、転写箔10を構成した場合、観察角度の変化に応じた表示画像の変化をより自然なものとすることができる。例えば、四輪自動車の背景の画像を、輪郭の一部がX方向に対して交差する方向に延びた部分を有するパターンを含んだ画像とする。図4に示す状態から図5に示す状態へと観察角度を変化させた場合に、先のパターンが左から右へ移動し、図4に示す状態から図6に示す状態へと観察角度を変化させた場合に、先のパターンが右から左へ移動するように転写箔10を構成すると、観察角度の変化に応じた表示画像の変化はより自然なものとなる。
【0117】
この転写箔10のレリーフ構造RSが表示する三次元画像は、観察者が注視する注視部を含んでいる。そして、レリーフ構造RSのうち、注視部の表示に利用される注視領域は、反射層122によって被覆されており、注視領域から反射層122の上記長さ方向に延びた各縁までの最短距離は、所定の範囲内にある。注視部及び注視領域について、図3図7及び図8を参照しながら説明する。
【0118】
図7は、図1乃至図3に示す転写箔と、図4乃至図6の画像を三次元復元することにより得られる仮想的な立体物とを、仮想空間に重ねた様子を概略的に示す図である。図8は、図1及び図2に示す転写箔の一部を拡大して示す他の平面図である。
【0119】
なお、図4乃至図6の画像からは、1以上の対象物である四輪自動車の後部は、三次元復元できない。ここでは、理解を容易にするために、図7では、図4乃至図6の画像から三次元復元することにより得られる仮想的な立体物I(四輪自動車)は、その後部を含むように描いている。また、図7では、撮像装置Cによる撮像方向を図7に示すように変化させた場合に、仮想的な立体物Iと転写箔10が表示する四輪自動車の画像とが重なるように、仮想的な立体物Iと転写箔10とを配置している。
【0120】
転写箔10が表示する三次元画像における対象物の向きは、観察角度の変化に応じて変化する。即ち、観察方向を一定としたまま、転写箔10をその長さ方向に平行な軸の周りで回転させると、仮想的な立体物Iは、転写箔10をその長さ方向に平行であり且つ転写箔10上に位置した軸Aの周りで回転する。
【0121】
観察者は、通常、軸A上に位置した仮想的な立体物Iのうち、転写箔10を正面から観察した場合に軸Aよりも観察者側に位置した部分を注視する。そして、観察者に注視させるべき注視部は、第1表示領域RAの上下方向における中央部に位置させるのが通常である。
【0122】
そこで、ここでは、「注視部」は、以下のように定義する。
即ち、先ず、図3に示すように、転写箔10の幅方向、ここではX方向に各々が延び、三次元画像を表示するレリーフ構造が設けられた第1表示領域RAを間に挟んで離間した2本の第1直線間の距離をHとする。そして、これら第1直線を基準として、2本の第2直線を規定する。第2直線は、転写箔10の幅方向、ここではX方向に各々が延び、第1直線の間に各々が位置している。第2直線の一方は、第1直線の一方から距離Hだけ離間している。第2直線の他方は、第1直線の他方から距離Hだけ離間している。距離H及びHの各々はH/4である。
【0123】
次に、図7に示すように、異なる観察角度で第1表示領域RAが表示する複数の画像を撮像し、それら画像から三次元復元を行う。三次元復元は、三角測量の原理を利用して行う。画像間での特徴点のマッチングには、ORB、SIFT又はFLANNを使用することができる。なお、三角測量の原理を利用して3つ以上の画像から三次元復元を行う場合には、仮想空間において、同一の特徴点が複数の位置に現れることがある。この場合は、これら位置の重心を、その特徴点の仮想空間における位置とする。この場合、仮想空間において、同一の特徴点が複数の位置に現れ、その1つの位置が他の2以上の位置から大きくずれているときには、前者を除外して重心を算出することができる。
【0124】
そして、この三次元復元によって得られた仮想的な立体物と、第1表示領域RAが表示する画像とが重なるように、仮想空間において、仮想的な立体物と転写箔10とを配置する。また、観察方向を一定としたまま、転写箔10をその長さ方向に平行な軸の周りで回転させた場合に、仮想的な立体物が回転する軸Aを特定する。
【0125】
次いで、2つの第1平面を特定する。第1平面の一方は、第2直線の一方が位置し且つ転写箔10の長さ方向に垂直な平面である。第1平面の他方は、第2直線の他方が位置し且つ転写箔10の長さ方向に垂直な平面である。
【0126】
そして、転写箔10を正面から観察した場合に、仮想的な立体物のうち、2つの第1平面に挟まれた部分を有し且つ軸A上に位置したもの、ここでは仮想的な立体物Iを特定する。
【0127】
次に、転写箔10を正面から観察した場合に、仮想的な立体物Iのうち軸Aよりも観察者側に位置した部分を特定し、この部分上で転写箔10から最も遠い位置と転写箔10との間の距離をDmaxとする。また、距離Dminはゼロとする。
【0128】
そして、転写箔10を正面から観察した場合に、仮想的な立体物Iのうち、軸Aよりも観察者側に位置し、2つの第2平面に挟まれ、転写箔10からの距離がDmin乃至Dmaxの範囲内にある部分を特定する。この部分が注視部MPである。
【0129】
また、ここでは、「注視領域」は、以下のように定義する。
即ち、図8に示すように、注視領域RMは、レリーフ構造RSのうち、図7の注視部MPの表示に利用される領域である。なお、図8において、領域RMaは、レリーフ構造RSのうち、略正面から観察した場合に、注視部MPの表示に利用する領域である。また、領域RMbは、レリーフ構造RSのうち、斜め右から観察した場合に、注視部MPの表示に利用する領域である。そして、領域RMcは、レリーフ構造RSのうち、斜め左から観察した場合に、注視部MPの表示に利用する領域である。
【0130】
この転写箔10では、注視領域RMから反射層122の上記長さ方向の各縁までの最短距離は、0.1乃至2.0mmの範囲内にある。即ち、図8において、注視領域RMから反射層122の一方の縁までの最短距離D1と、注視領域RMから反射層122の他方の縁までの最短距離D2との各々は、0.1乃至2.0mmの範囲内にある。
【0131】
なお、ここでは、理解を容易にするために、図面を参照して「注視部」及び「注視領域」を説明したが、「注視部」及び「注視領域」の上記定義は、本発明の範囲内にある他の構成に対しても適用される。
【0132】
<転写箔の製造方法>
次に、上述した転写箔10の製造方法を説明する。
【0133】
先ず、帯状の支持体11を準備する。支持体11としては、例えば、転写箔10よりも幅広のものを準備する。転写箔10の幅の2倍以上の幅を有する支持体11を使用すると、複数の転写箔10を同時に製造することができる。
【0134】
次に、支持体11上に、剥離保護層123を形成する。剥離保護層123は、例えば、その材料としての樹脂を支持体11上に塗布し、塗膜を硬化させることにより得る。
【0135】
次いで、剥離保護層123上に、レリーフ構造形成層121を形成する。レリーフ構造形成層121は、例えば、剥離保護層123上に熱可塑性樹脂層を形成し、これに、レリーフ構造が設けられたスタンパを、熱を印加しながら押し当て、その後、熱可塑性樹脂層からスタンパを離すことにより得る。或いは、レリーフ構造形成層121は、剥離保護層123上に紫外線硬化樹脂からなる塗膜を形成し、これにスタンパを押し当てながら紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、その後、塗膜からスタンパを離すことにより得る。或いは、レリーフ構造形成層121は、剥離保護層123上に熱硬化性樹脂からなる塗膜を形成し、これにスタンパを押し当てながら加熱して熱硬化性樹脂を硬化させ、その後、塗膜からスタンパを離すことにより得る。
【0136】
その後、レリーフ構造形成層121上に、金属層を形成する。金属層は、例えば、真空蒸着法及びスパッタリング法などの気相堆積法により、レリーフ構造形成層121の上面全体を覆うように形成する。
【0137】
次に、金属層上に感光性樹脂層を形成し、次いで、この感光性樹脂層を、フォトマスクを用いたパターン露光及び現像に供する。このパターン露光には、注視領域RM等について上述した設計を採用する。これにより、マスク層124を得る。
【0138】
マスク層124は、印刷により形成することができる。このとき、印刷法は、グラビア印刷やスクリーン印刷とすることができる。また、このとき、マスク層の材質は、アクリル、ウレタン、又はウレタンアクリレートとすることができる。
【0139】
続いて、金属層をエッチングに供して、そのマスク層124で覆われていない部分を選択的に除去する。これにより、パターニングされた金属層からなる反射層122を得る。
【0140】
その後、接着層13を形成する。更に、この積層体を、所定の幅に切断する。この切断は、反射層122が設けられていない位置で行う。以上のようにして、転写箔10を得る。
【0141】
<効果>
この転写箔10では、反射層122は、転写箔10の、その長さ方向に平行な一対の縁から離間している。それ故、この転写箔10は、金属製の反射層122を含んでいるにも拘わらず、ばりや耐薬品性の問題は生じない。
【0142】
また、この転写箔10では、前述のように、レリーフ構造RSのうち注視部MPの表示に利用される注視領域RMから、反射層122の上記長さ方向の各縁までの距離D1及びD2を、0.1乃至2.0mmの範囲内としている。
【0143】
三次元画像が、この三次元画像によって主に表現すべき立体的なモチーフ(要素)の画像を含んでいる場合、観察者が最も注目するのは、そのモチーフ(要素)の正面近傍の部分の画像である。それ故、この正面近傍の部分の画像は、何れの観察角度で観察しても欠けることなく、最大限大きく表示することが必要となる。なお、この立体的なモチーフ(要素)の正面近傍は、注視部MPと言い換えることができる。
【0144】
距離D1及びD2が0.1mmより小さいと、端部で絵柄が歪む等の不具合により、観察者に違和感を生じさせ得る。距離D1及びD2が2.0mmより大きいと、注視部MPの表示に利用する注視領域RMの大きさを十分大きくとることができない。距離D1及びD2が0.1乃至2.0mmの範囲内であれば、観察者に違和感を生じさせることなく、注視部MPの表示に利用する注視領域RMを大きく設けることができる。
【0145】
注視部MPの表示に利用する領域である注視領域RMを、反射層122の長さ方向の各縁の位置まで設けると、マスク層の相対位置が目標とする相対位置からずれた場合に、注視領域RM上で、金属層の一部がエッチングによって除去されてしまう。
【0146】
幅が7乃至20mmであり、観察角度が30°乃至60°の範囲内で三次元画像を表示する転写箔の場合、軸Aの位置の設定などの設計にもよるが、略正面から観察した場合に注視部MPの表示に利用する領域である領域RMaから反射層122の端部までの距離に対して、斜め右又は斜め左から観察した場合に注視部MPの表示に利用する領域である領域RMb又はRMcから反射層122の端部までの距離は、例えば1.0乃至5.0mm程度ずれる。
【0147】
つまり、略正面から目視又はカメラなどで位置を確認する場合、この条件のもとで推定される注視領域RMの見かけ上の位置は、反射層122の端部までの距離が十分に離れている。しかしながら、注視領域RMの実際の位置から反射層122の端部までの距離は、領域RMb又はRMcから反射層122の端部までの距離である。このように、上記の条件のもとでは、見かけ上、領域RMaから反射層端部までの距離が、注視領域RMから反射層122の端部までの距離として見える。そのため、位置合わせの難易度があがり、注視領域RMを反射層122の端部ぎりぎりまで設けてしまうと、製造時の誤差などで、上述のように注視領域RM上で金属層の一部がエッチングによって除去されてしまうことがある。
【0148】
エッチングマスクの位置合わせ精度は、装置などの状況により状況は異なる場合があるが、搬送の位置ズレや支持体の伸び等により、通常の転写箔の製造において標準偏差0.12mmの誤差が生じる。また、安定的な製造の指標であるシックスシグマを達成するためには、2以上の工程能力指数、即ち6σ以上のシグマレベルが必要とされる。シックスシグマを達成するには、マスク層の位置ずれの管理値を±0.72mm(=±6×0.12mm)以上とする必要がある。
【0149】
また、エッチング時には、過剰なエッチングや過少なエッチングが生じることがあり、これらによる製造誤差はおおよそ±0.1mmである。
【0150】
そのため、この例では、エッチングマスクの位置合わせの設計値を反射層122の端部から1.0mmとし、エッチングマスクの位置合わせ精度とエッチング時の製造誤差とを考慮したエッチングの位置の管理値を0.18乃至1.82mmとすることで、距離D1及びD2の値が前述の範囲内にある転写箔を安定的に製造できる。
【0151】
そして、距離D1及びD2をこの範囲内とすれば、転写箔10の製造において、レリーフ構造RSに対するマスク層の相対位置に、通常の製造において起こり得る程度のずれを生じたとしても、マスク層の端部を注視領域RMの外側に位置させることができ、注視領域RM上で金属層がエッチングによって除去されることを防止できる。即ち、この転写箔10は、その製造において、レリーフ構造RSに対するマスク層の相対位置の設計上の相対位置に、通常の製造で起こり得る程度のずれが生じても、注視部MPを、欠落を生じさせることなしに表示することができる。
【0152】
なお、距離D1及びD2は、等しくなくてもよい。また、距離D1及びD2の各々は、転写箔全域で同じ値である必要はなく、異なる値であってもよい。
【0153】
注視部MPを欠落なしで表示できれば、観察者は、上記の位置ずれを生じたことを知覚することは不可能又は困難である。それ故、先の設計を採用した場合、上記の位置ずれを生じたものであっても良品とすることができる。従って、この転写箔10は、高い歩留まりで製造することが可能である。
【0154】
また、この転写箔10では、上記の距離D1及びD2の設計値を十分に小さくしている。それ故、この転写箔10は、注視部を大きく表示することが可能である。
【0155】
レリーフ構造に対するマスク層の相対位置が設計上の相対位置から僅かにずれたとしても、注視部を部分的な欠落を生じさせることなしに表示することができることを、図9乃至図11を参照しながら説明する。
【0156】
図9は、反射層に位置ずれを生じた転写箔が、略正面から観察した場合に表示する画像を示す図である。図10は、反射層に位置ずれを生じた転写箔が、斜め右から観察した場合に表示する画像を示す図である。図11は、反射層に位置ずれを生じた転写箔が、斜め左から観察した場合に表示する画像を示す図である。
【0157】
図9乃至図11の転写箔10は、レリーフ構造RSに対するマスク層の位置が設計上の位置から右側へ僅かにずれた場合に得られるものである。
【0158】
最終製品としての転写箔の幅へ寸法を揃えるための切断の際には、反射層122を位置合わせに利用できる。それ故、転写箔10の縁から反射層122までの距離は、設計値通りにすることが容易である。
【0159】
しかしながら、上記の通り、レリーフ構造RSに対するマスク層の位置合わせは難しい。それ故、レリーフ構造RSに対するマスク層の相対位置は、設計上の相対位置からずれ易い。
【0160】
図9乃至図11に示すように、レリーフ構造RSに対するマスク層の位置が設計上の位置から右側へ僅かにずれると、反射層122に対するレリーフ構造RSの位置は、設計上位置から左側へ僅かにずれる。このような位置ずれを生じると、例えば、注視領域RMから反射層122の左側の縁までの最短距離D1が短い場合には、注視領域RMの左端が反射層122によって被覆されないことになる。その結果、右斜めから観察した場合に転写箔10が表示する画像から、注視部MPの一部が欠落する。このような欠落は、観察者に知覚され易い。従って、注視領域RMから反射層122の左側の縁までの最短距離D1が短い場合、観察者は、上記の位置ずれを容易に知覚する。
【0161】
同様に、レリーフ構造RSに対するマスク層の位置が設計上の位置から左側へ僅かにずれると、反射層122に対するレリーフ構造RSの位置は、設計上の位置から右側へ僅かにずれる。このような位置ずれを生じると、例えば、注視領域RMから反射層122の右側の縁までの最短距離D2が短い場合には、注視領域RMの右端が反射層122によって被覆されないことになる。その結果、左斜めから観察した場合に転写箔10が表示する画像から、注視部MPの一部が欠落する。このような欠落は、観察者に知覚され易い。従って、注視領域RMから反射層122の右側の縁までの最短距離D2が短い場合も、観察者は、上記の位置ずれを容易に知覚する。
【0162】
これに対し、本実施形態では、設計上、注視領域RMから反射層122の縁までの最短距離D1及びD2を十分に大きくする。それ故、レリーフ構造RSに対するマスク層の位置が設計上の位置から左側又は右側へ僅かにずれたとしても、注視領域RMの全体が反射層122によって被覆される。即ち、左斜めから観察した場合及び右斜めから観察した場合の何れにおいても、転写箔10が表示する画像から、注視部MPの一部が欠落することはない。
【0163】
また、図4乃至図6をそれぞれ図9乃至図11と対比すると、上記の位置ずれに起因して、反射層122に対する三次元画像の位置に相違を生じている。しかしながら、この相違は、詳細な対比を行わない限り知覚されることはない。
【0164】
従って、本実施形態によると、上記の位置ずれを生じたものであっても、不良品とならず、良品とすることができる。即ち、この転写箔10は、高い歩留まりで製造することが可能である。
【0165】
<変形例>
次に、変形例に係る転写箔について説明する。
【0166】
(第1変形例)
第1変形例に係る転写箔は、以下の点を除き、図1乃至図11を参照しながら説明した転写箔10と同様である。
【0167】
図12は、第1変形例に係る転写箔を概略的に示す平面図である。
図12に示す転写箔10では、反射層122にスリットSLが設けられている。これらスリットSLの各々は、非転写部の位置で、転写箔10の幅方向、即ちX方向に延びている。反射層122は、これらスリットSLによって複数の部分へ分割されている。これら部分の隣り合った各2つは、1つの非転写部を間に挟むように配置されている。
【0168】
この構成を採用した場合、転写材層12の一部、即ち転写部TPを物品へ転写する際に、優れた箔切れ性を達成できる。また、物品に転写された転写部TP、即ち表示体の上記スリットSLに対応した端面で、反射層122が露出するのを防止できる。
【0169】
(第2変形例)
第2変形例に係る転写箔は、以下の点を除き、図1乃至図11を参照しながら説明した転写箔10と同様である。
【0170】
図13は、第2変形例に係る転写箔を概略的に示す平面図である。
図13に示す転写箔10では、転写箔10の長さ方向に延びた反射層122の縁は、転写箔10の幅方向へ突き出た凸部を含んでいる。具体的には、反射層122は、幅が広い部分と幅が狭い部分とを含んでいる。そして、反射層122の幅が広い部分は、第1表示領域RAを被覆している。この構造は、ホログラム画像の表現を際立たせるうえで有利である。
【0171】
また、この転写箔10では、反射層122の幅が広い部分は、第1表示領域RAと比較して、転写箔10の長さ方向の寸法がより小さい。そして、転写箔10の厚さ方向から観察した場合に、反射層122の幅が広い部分は、第1表示領域RAの輪郭の内側に位置し且つこの輪郭から離間している。それ故、転写箔10の長さ方向における反射層122の位置が目標とする位置から僅かにずれたとしても、観察者は、上記の位置ずれを生じたことを知覚することは不可能又は困難である。従って、この転写箔10も、高い歩留まりで製造することが可能である。
【0172】
(第3変形例)
第3変形例に係る転写箔は、以下の点を除き、図1乃至図11を参照しながら説明した転写箔10と同様である。
【0173】
図14は、第3変形例に係る転写箔を概略的に示す平面図である。
図14に示す転写箔10では、転写箔10の長さ方向に延びた反射層122の縁は、凹部を含んでいる。具体的には、反射層122は、幅が広い部分と幅が狭い部分とを含んでいる。そして、反射層122の幅が広い部分は、第1表示領域RAを被覆している。この構造は、ホログラム画像の表現を際立たせるうえで有利である。
【0174】
また、この転写箔10では、反射層122の幅が広い部分は、第1表示領域RAと比較して、転写箔10の長さ方向の寸法がより大きい。そして、転写箔10の厚さ方向から観察した場合に、反射層122の幅が狭い部分は、第1表示領域RAの輪郭の外側に位置し且つこの輪郭から離間している。それ故、転写箔10の長さ方向における反射層122の位置が目標とする位置から僅かにずれたとしても、観察者は、上記の位置ずれを生じたことを知覚することは不可能又は困難である。従って、この転写箔10も、高い歩留まりで製造することが可能である。
【0175】
(第4変形例)
第4変形例に係る転写箔及びその製造方法は、以下の点を除き、図1乃至図11を参照しながら説明した転写箔10及びその製造方法と同様である。
【0176】
第4変形例は、レリーフ構造が、回折画像として三次元画像だけでなく二次元画像なども表示し、接着剤層が蛍光材料を含むことを特徴としている。
【0177】
即ち、第4変形例に係る転写箔の製造方法は、転写材層と、前記転写材層を剥離可能に支持した支持体とを備え、前記転写材層はレリーフ構造形成層と反射層とを含んだ帯状の転写箔の製造方法であって、
回折画像を表示するレリーフ構造が一方の主面に設けられたレリーフ構造形成層を形成することと、
前記主面に金属層を形成することと、
前記金属層上に、前記金属層の表面のうち、前記レリーフ構造形成層の長さ方向に各々が延びた一対の縁部を露出させ、それら縁部に挟まれた中央部を被覆したマスク層を形成することと、
前記マスク層をエッチングマスクとして用いたエッチングにより、前記金属層のうち前記一対の縁部に対応した部分を除去して、反射層を形成することと
前記転写材層を間に挟んで前記支持体と向き合った接着層を設けることとを含み、
前記接着層は、蛍光を発する材料を含む。
【0178】
また、第4変形例に係る転写箔は、転写材層と、前記転写材層を剥離可能に支持した支持体と、前記転写材層を間に挟んで前記支持体と向き合った接着層とを備えた帯状の転写箔であって、
前記転写材層は、回折画像を表示するレリーフ構造が一方の主面に設けられたレリーフ構造形成層と、前記主面を部分的に被覆した金属製の反射層とを含み、
前記反射層は、前記転写箔の長さ方向に延びた帯状の形状を有し、前記長さ方向に平行な前記転写箔の一対の縁から離間しており、
前記接着層は、蛍光を発する材料を含む。
【0179】
<表示体付き物品>
次に、上記の転写箔10を用いて製造可能な表示体付き物品について説明する。
【0180】
図15は、表示体付き物品の一例を概略的に示す平面図である。
図15に示す表示体付き物品1は、物品20と転写部TPとを含んでいる。
【0181】
物品20は、例えば、印刷物である。印刷物は、印刷基材と印刷層とを含んでいる。印刷基材は、例えば、紙、プラスチック、金属、又はそれらの組み合わせからなる。印刷基材は、シートであってもよく、カードであってもよい。
【0182】
転写部TPは、図1乃至図11を参照しながら説明した転写箔10、図12を参照しながら説明した転写箔10、図13を参照しながら説明した転写箔10、又は図14を参照しながら説明した転写箔10から、その転写材層12の一部を物品20上に転写したものである。転写部TPは、表示体としての役割を果たす。転写部TPは、上記の接着層13のうち、転写部TPとともに物品20上へと転写された部分を介して、物品20に貼り付けられている。
【0183】
上記の転写箔10では、接着層13は、蛍光を発する材料を含んでいてもよい。この場合、接着層13が発する蛍光を利用して、反射層122を形成するための金属層のエッチングが正しく行われたこと、又は、接着層13の厚さのばらつきを確認することができる。或いは、接着層13が、蛍光を発する材料と、その中に分散した他の材料からなる粒子とを含んだ複合材料からなる場合は、接着層13が発する蛍光を利用して、粒子の分散状態を確認することができる。
【0184】
以下に、原出願の当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1]
転写材層と、前記転写材層を剥離可能に支持した支持体とを備え、前記転写材層はレリーフ構造形成層と反射層とを含んだ帯状の転写箔の製造方法であって、
観察者が注視する注視部を含んだ三次元画像を含む回折画像を表示するレリーフ構造が一方の主面に設けられたレリーフ構造形成層を形成することと、
前記レリーフ構造が設けられた前記主面上に金属層を形成することと、
前記金属層上に、前記金属層の表面のうち、前記レリーフ構造形成層の長さ方向に各々が延びた一対の縁部を露出させ、それら縁部に挟まれた中央部を被覆したマスク層を形成することと、
前記マスク層をエッチングマスクとして用いたエッチングにより、前記金属層のうち前記一対の縁部に対応した部分を除去して、反射層を形成することとを含み、
前記レリーフ構造のうち、前記注視部の表示に利用される注視領域を、前記反射層によって被覆し、前記注視領域から前記反射層の前記長さ方向の各縁までの最短距離を0.1乃至2.0mmの範囲内とする転写箔の製造方法。
[2]
前記三次元画像は周辺部を更に含み、前記レリーフ構造のうち、前記周辺部の表示にのみ利用される周辺領域は、前記注視領域を取り囲んでいる項1に記載の方法。
[3]
前記注視部と前記周辺部の一部とは、1以上の対象物の画像であり、前記周辺部の他の部分は、前記1以上の対象物の背景の画像を含んだ項2に記載の方法。
[4]
前記転写箔の前記一対の縁の各々から前記反射層までの最短距離を0.1乃至2.0mmの範囲内とする項1乃至3の何れか1項に記載の方法。
[5]
前記マスク層は、0.2乃至1.5μmの範囲内の厚さを有するように形成する項1乃至4の何れか1項に記載の方法。
[6]
前記転写材層を間に挟んで前記支持体と向き合った接着層を設けることを更に含んだ項1乃至5の何れか1項に記載の方法。
[7]
前記接着層は蛍光を発する材料を含んだ項6に記載の方法。
[8]
前記蛍光を発する材料は、波長が365nmの光で励起した場合に、420乃至480nmの波長範囲内で最大強度を示す蛍光を発する項7に記載の方法。
[9]
前記反射層は、前記転写箔の幅方向に各々が延びた1以上のスリットを有し、前記1以上のスリットによって複数の部分へ分割されるように形成する項1乃至8の何れか1項に記載の方法。
[10]
前記1以上のスリットは2以上のスリットであり、隣り合った前記スリット間の距離は1乃至15mmの範囲内にある項9に記載の方法。
[11]
幅が7乃至20mmの範囲内となるように切断を行うことを更に含んだ項1乃至10の何れか1項に記載の方法。
[12]
転写材層と、前記転写材層を剥離可能に支持した支持体とを備えた帯状の転写箔であって、
前記転写材層は、三次元画像を含む回折画像を表示するレリーフ構造が一方の主面に設けられたレリーフ構造形成層と、前記主面を部分的に被覆した金属製の反射層とを含み、
前記反射層は、前記転写箔の長さ方向に延びた帯状の形状を有し、前記長さ方向に平行な前記転写箔の一対の縁から離間しており、
前記三次元画像は、観察者が注視する注視部を含み、
前記レリーフ構造のうち、前記注視部の表示に利用される注視領域は、前記反射層によって被覆されており、前記注視領域から前記反射層の前記長さ方向に延びた各縁までの最短距離は0.1乃至2.0mmの範囲内にある転写箔。
[13]
前記三次元画像は周辺部を更に含み、前記レリーフ構造のうち、前記周辺部の表示にのみ利用される周辺領域は、前記注視領域を取り囲んでいる項12に記載の転写箔。
[14]
前記注視部と前記周辺部の一部とは、1以上の対象物の画像であり、前記周辺部の他の部分は、前記1以上の対象物の背景の画像を含んだ項13に記載の転写箔。
[15]
前記転写箔の前記一対の縁の各々から前記反射層までの最短距離は0.1乃至2.0mmの範囲内にある項12乃至14の何れか1項に記載の転写箔。
[16]
前記転写材層は、前記反射層を被覆し、前記反射層と同じ形状を有するマスク層を更に含んだ項12乃至15の何れか1項に記載の転写箔。
[17]
前記マスク層の厚さは0.2乃至1.5μmの範囲内にある項16に記載の転写箔。
[18]
前記転写材層を間に挟んで前記支持体と向き合った接着層を更に備えた項12乃至17の何れか1項に記載の転写箔。
[19]
前記接着層は蛍光を発する材料を含んだ項18に記載の転写箔。
[20]
前記蛍光を発する材料は、波長が365nmの光で励起した場合に、420乃至480nmの波長範囲内で最大強度を示す蛍光を発する項19に記載の転写箔。
[21]
前記反射層は、前記転写箔の幅方向に各々が延びた1以上のスリットを有し、前記1以上のスリットによって複数の部分へ分割されている項12乃至20の何れか1項に記載の転写箔。
[22]
前記1以上のスリットは2以上のスリットであり、隣り合った前記スリット間の距離は1乃至15mmの範囲内にある項21に記載の転写箔。
[23]
7乃至20mmの範囲内の幅を有する項12乃至22の何れか1項に記載の転写箔。
【符号の説明】
【0185】
1…表示体付き物品、10…転写箔、11…支持体、12…転写材層、13…接着層、20…物品、121…レリーフ構造形成層、122…反射層、123…剥離保護層、124…マスク層、A…軸、I…仮想的な立体物、MP…注視部、RA…第1表示領域、RA1…第1領域、RA1a…第1部分領域、RA1b…第2部分領域、RA2…第2領域、RB…第2表示領域、RM…注視領域、RMa…領域、RMb…領域、RMc…領域、RS…レリーフ構造、SL…スリット。
図1
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