(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-30
(45)【発行日】2022-06-07
(54)【発明の名称】蓄電モジュール用電極及び蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20220531BHJP
H01G 11/12 20130101ALI20220531BHJP
H01G 11/82 20130101ALI20220531BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20220531BHJP
H01M 50/627 20210101ALI20220531BHJP
H01M 50/103 20210101ALN20220531BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01G11/12
H01G11/82
H01M50/184 A
H01M50/627
H01M50/103
(21)【出願番号】P 2018188179
(22)【出願日】2018-10-03
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100186761
【氏名又は名称】上村 勇太
(72)【発明者】
【氏名】東 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】織田 恭平
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-92717(JP,A)
【文献】特開2012-234823(JP,A)
【文献】特表2017-508241(JP,A)
【文献】特開2002-280059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/0585
H01G 11/12
H01G 11/82
H01M 50/627
H01M 50/102-103
H01M 50/184
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面及び当該第1主面の反対側に位置する第2主面を有し、板形状を呈する集電体と、
前記第1主面上に位置する正極層と、
前記第2主面上に位置する負極層と、
前記正極層及び前記負極層よりも外側に位置する前記集電体の周縁部上に位置する樹脂枠と、を備え、
前記樹脂枠は、枠形状を呈する第1層と、前記第1層に重なると共に枠形状を呈する第2層とを有し、
前記第2層は、前記第2層の外縁から内縁まで延在する複数の連通孔形成予定領域を有し、
前記複数の連通孔形成予定領域のそれぞれは、切取線によって区画される、
蓄電モジュール用電極。
【請求項2】
前記切取線上には、ミシン目が設けられる、請求項1に記載の蓄電モジュール用電極。
【請求項3】
前記第1層の外縁と、前記第2層の前記外縁とは、互いに連続している、請求項1又は2に記載の蓄電モジュール用電極。
【請求項4】
前記複数の連通孔形成予定領域は、平面視にて第1方向に沿って並んでおり、且つ、前記第1方向に直交する第2方向に沿った前記樹脂枠の中心軸に関して非対称に位置する、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電モジュール用電極。
【請求項5】
隣り合う連通孔形成予定領域同士の前記第1方向に沿った間隔は、一定であり、
前記複数の連通孔形成予定領域のそれぞれの形状は、同一である、請求項4に記載の蓄電モジュール用電極。
【請求項6】
前記複数の連通孔形成予定領域の一つには、前記第2層の前記外縁から前記内縁まで延在する連通孔が設けられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電モジュール用電極。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電モジュール用電極、及びセパレータを有する電極積層体を備え、
前記複数の連通孔形成予定領域の一つには、前記第2層の前記外縁から前記内縁まで延在する連通孔が設けられる、蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュール用電極及び蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、積層された複数枚のバイポーラ電極を備える蓄電モジュールが記載されている。バイポーラ電極は、集電体と、集電体の片方の面上に設けられた正極層と、集電体の他方の面上に設けられた負極層とを有する。この蓄電モジュールは、バイポーラ電極の周縁部を被覆する樹脂枠を備えている。樹脂枠は、電池内部の電解液等が外部に漏液しないように設けられる封止材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような蓄電モジュールの一例として、樹脂枠が取り付けられたバイポーラ電極を用いることがある。この場合、バイポーラ電極は、例えば樹脂シートの加工物である樹脂枠を集電体に貼り付けることによって形成される。上記樹脂枠は、電解液等を蓄電モジュール内部に注液するための連通孔を有する。蓄電モジュール内に電解液等を効率よく注液する観点から、複数のバイポーラ電極の少なくとも一部において、連通孔が設けられる箇所をずらすことがある。
【0005】
連通孔の形成位置をずらす手法として、蓄電モジュールの位置に応じた箇所に連通孔が設けられる樹脂枠を製造することが挙げられる。この場合、複数種の樹脂枠を形成するための金型等と、各樹脂枠を保管するためのスペースとが必要になる。したがって上記手法では、樹脂枠の製造コスト、及び各樹脂枠の在庫管理コスト等が増加してしまう。
【0006】
本発明の目的は、製造コスト等を低減可能な蓄電モジュール用電極及び蓄電モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る蓄電モジュール用電極は、第1主面及び当該第1主面の反対側に位置する第2主面を有し、板形状を呈する集電体と、第1主面上に位置する正極層と、第2主面上に位置する負極層と、正極層及び負極層よりも外側に位置する集電体の周縁部上に位置する樹脂枠と、を備える。樹脂枠は、枠形状を呈する第1層と、第1層に重なると共に枠形状を呈する第2層とを有し、第2層は、第2層の外縁から内縁まで延在する複数の連通孔形成予定領域を有し、複数の連通孔形成予定領域のそれぞれは、切取線によって区画される。
【0008】
この蓄電モジュール用電極によれば、樹脂枠の第2層が有する連通孔形成予定領域のいずれかを、対応する切取線に沿って除去することによって、第2層の外縁から内縁まで延在する連通孔を容易に形成できる。ここで、第2層に設けられる連通孔の形成箇所は、連通孔形成予定領域の選択により容易に変更可能である。このため、複数種の樹脂枠を用いることなく、蓄電モジュールの位置に応じた箇所に連通孔が設けられる樹脂枠を備える蓄電モジュール用電極を準備できる。このような蓄電モジュール用電極を用いることによって、複数種の樹脂枠を製造することなく蓄電モジュールを製造できる。したがって、複数種の樹脂枠を在庫管理する必要もないので、蓄電モジュールの製造コスト等を低減可能である。
【0009】
切取線上には、ミシン目が設けられてもよい。この場合、所望の連通孔形成予定領域のみを切取線に沿って容易に除去できるので、第2層に連通孔を容易に形成できる。
【0010】
第1層の外縁と、第2層の外縁とは、互いに連続してもよい。この場合、樹脂枠を形成する際に用いられる樹脂シートの廃棄率を低減できる。
【0011】
複数の連通孔形成予定領域は、平面視にて第1方向に沿って並んでおり、且つ、第1方向に直交する第2方向に沿った樹脂枠の中心軸に関して非対称に位置してもよい。この場合、平面視にて、中心軸を回転軸として樹脂枠を反転させたときの連通孔形成予定領域の位置を、上記反転前の連通孔形成予定領域の位置に対してずらすことができる。このため、反転前の樹脂枠を含む蓄電モジュール用電極と、反転後の樹脂枠を含む蓄電モジュール用電極との両方を用いることによって、平面視における連通孔の形成箇所のパターンを容易に最大2倍まで増加できる。
【0012】
複数の連通孔形成予定領域が、第2方向に沿った樹脂枠の中心軸に関して非対称に位置する場合、隣り合う連通孔形成予定領域同士の第1方向に沿った間隔は、一定であり、複数の連通孔形成予定領域のそれぞれの形状は、同一であってもよい。この場合、平面視にて、中心軸を回転軸として樹脂枠を反転させたときの連通孔形成予定領域の全ての位置を、上記反転前の連通孔形成予定領域の位置に対して確実にずらすことができる。このため、反転前の樹脂枠を含む蓄電モジュール用電極と、反転後の樹脂枠を含む蓄電モジュール用電極との両方を用いることによって、平面視における連通孔の形成箇所のパターンを倍増できる。
【0013】
複数の連通孔形成予定領域の一つには、第2層の外縁から内縁まで延在する連通孔が設けられてもよい。
【0014】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールは、上記蓄電モジュール用電極、及びセパレータを有する電極積層体を備え、複数の連通孔形成予定領域の一つには、第2層の外縁から前記内縁まで延在する連通孔が設けられる。このような蓄電モジュールは、複数種の樹脂枠を用いることなく、蓄電モジュールの位置に応じた箇所に連通孔が設けられる樹脂枠を備える蓄電モジュール用電極を用いて製造される。これにより、複数種の樹脂枠を製造することなく蓄電モジュールを製造できる。したがって、複数種の樹脂枠を在庫管理する必要もないので、蓄電モジュールの製造コスト等を低減可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、製造コスト等を低減可能な蓄電モジュール用電極及び蓄電モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態に係る蓄電装置を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、蓄電モジュール用電極を示す概略平面図である。
【
図4】
図4(a)は、
図3のIVa-IVa線に沿った概略断面図であり、
図4(b)は、
図3のIVb-IVb線に沿った概略断面図である。
【
図6】
図6(a)は、反転前の枠体の要部拡大平面図であり、
図6(b)は、反転後の樹脂枠の要部拡大平面図である。
【
図7】
図7(a)は、比較例に係る第1枠体を示す概略平面図である。また、
図7(b)は、比較例に係る第2枠体を示す要部拡大平面図であり、
図7(c)は、比較例に係る第3枠体を示す要部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら一実施形態について詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る蓄電装置を示す概略断面図である。
図1に示される蓄電装置1は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、積層された複数の蓄電モジュール4を含むモジュール積層体2と、モジュール積層体2に対してその積層方向に拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えている。
【0018】
モジュール積層体2は、複数(本実施形態では3つ)の蓄電モジュール4と、複数(ここでは4つ)の導電板5とを含む。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。本実施形態では、蓄電モジュール4はニッケル水素二次電池である。以下では、蓄電モジュール4が積層する方向を単に「積層方向(Z軸方向)」とする。また、積層方向に交差もしくは直交する方向を水平方向とする。水平方向は、例えば互いに直交するX軸方向(第1方向)とY軸方向(第2方向)とを有する。本実施形態では、「積層方向から見る」は、平面視に相当する。
【0019】
積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール4同士は、導電板5を介して電気的に接続されている。このため、隣り合う蓄電モジュール4の間には、導電板5が設けられている。導電板5は、積層方向の両端に位置する蓄電モジュール4の外側にも配置されている。
【0020】
積層方向の一端(本実施形態では下端)に位置する導電板5には、正極端子6が接続されている。積層方向の他端(本実施形態では上端)に位置する導電板5には、負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えばX軸方向に延在している。正極端子6及び負極端子7が設けられることによって、蓄電装置1の充放電を実施できる。
【0021】
導電板5は、蓄電装置1における放熱板としても機能し得る。導電板5は、例えば蓄電モジュール4において発生した熱を放出し得る。導電板5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられている。流路5aは、例えば、Y軸方向に沿って延在する空隙である。これらの流路5aを空気等の冷媒が通過することによって、蓄電モジュール4からの熱を効率的に外部に放出できる。なお、
図1の例では、平面視における導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さい。しかしながら、放熱性向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくてもよい。
【0022】
拘束部材3は、モジュール積層体2を積層方向に挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10とによって構成されている。エンドプレート8は、積層方向から見た蓄電モジュール4及び導電板5の面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。エンドプレート8の内側面(モジュール積層体2側の面)には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられている。フィルムFにより、エンドプレート8と導電板5との間が絶縁されている。
【0023】
エンドプレート8の縁部には、モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電板5がエンドプレート8によって挟持されてモジュール積層体2としてユニット化されると共に、モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重が付加される。
【0024】
次に、蓄電モジュール4の構成について詳細に説明する。
図2は、
図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
図2に示されるように、蓄電モジュール4は、電極積層体11と、電極積層体11を取り囲む筒状の封止体12とを備えている。電極積層体11は、Z軸方向に沿って積層された複数の電極(複数のバイポーラ電極14、負極終端電極18、及び、正極終端電極19)と、複数のセパレータ13とを含む。電極積層体11は、上記電極とセパレータ13とが交互に積層することによって形成される。電極積層体11は、Z軸方向に延在する側面11aを有している。
【0025】
セパレータ13は、Z軸方向において隣り合うバイポーラ電極14同士の間に位置する絶縁部材であり、例えばシート形状を呈する。平面視にて、セパレータ13は、バイポーラ電極14の縁の内側に位置する。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されてもよい。なお、セパレータ13の形状は、シート形状に限られず、袋形状でもよい。
【0026】
バイポーラ電極14は、第1主面15a及び第1主面15aの反対側に位置する第2主面15bを有する集電体15と、第1主面15a上に位置する正極層16と、第2主面15b上に位置する負極層17と、を備える。平面視にて、集電体15はセパレータ13よりも大きく、正極層16及び負極層17のそれぞれはセパレータ13よりも小さい。
【0027】
集電体15は、水平方向に延在する板形状を呈する導電体であり、可撓性を示す。このため水平方向は、集電体15の延在方向とも言える。集電体15は、例えばニッケル箔、メッキ処理が施された鋼板、またはメッキ処理が施されたステンレス鋼板である。鋼板としては、例えばJIS G 3141:2005にて規定される冷間圧延鋼板(SPCC等)が挙げられる。ステンレス鋼板としては、例えばJIS G 4305:2015にて規定されるSUS304等が挙げられる。集電体15の厚さは、例えば0.1μm以上1000μm以下である。
【0028】
バイポーラ電極14の正極層16は、セパレータ13を挟んで積層方向に隣り合う一方のバイポーラ電極14の負極層17と向かい合っている。正極層16は、例えば集電体15の第1主面15aに正極活物質を塗工することにより形成されている。正極活物質は、例えば、水酸化ニッケルである。水酸化ニッケルには、コバルト酸化物等が被覆されてもよい。
【0029】
バイポーラ電極14の負極層17は、セパレータ13を挟んで積層方向に隣り合う他方のバイポーラ電極14の正極層16と向かい合っている。負極層17は、例えば集電体15の第2主面15bに負極活物質を塗工することにより形成されている。負極活物質は、例えば水素吸蔵合金である。本実施形態では、集電体15の第2主面15bにおける負極層17の形成領域は、集電体15の第1主面15aにおける正極層16の形成領域よりも大きくなっている。
【0030】
負極終端電極18は、集電体15及び集電体15の第2主面15bに設けられた負極層17を有する。負極終端電極18は、Z軸方向の一端(本実施形態では上端)に配置されている。負極終端電極18の負極層17は、セパレータ13を介して、バイポーラ電極14の正極層16と対向している。正極終端電極19は、集電体15、及び集電体15の第1主面15aに設けられた正極層16を有する。正極終端電極19は、Z軸方向の他端(本実施形態では下端)に配置されている。正極終端電極19の正極層16は、セパレータ13を介して、バイポーラ電極14の負極層17と対向している。
【0031】
負極終端電極18の集電体15の第1主面15aには、導電板5が接触している。また、正極終端電極19の集電体15の第2主面15bには、他の導電板5が接触している。拘束部材3からの拘束荷重は、導電板5を介して負極終端電極18及び正極終端電極19から電極積層体11に付加される。すなわち、導電板5は、Z軸方向に沿って電極積層体11に拘束荷重を付加する拘束部材として機能し得る。
【0032】
集電体15の周縁部15cは、例えば矩形の枠形状を呈している。周縁部15cは、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。すなわち、平面視における周縁部15cは、集電体15のうち正極層16及び負極層17よりも外側に位置する部分に相当する。
【0033】
封止体12は、電極積層体11を取り囲むように構成される樹脂部材である。封止体12は、平面視にて、例えば矩形の枠形状を呈している。封止体12は、例えば角筒形状を呈している。本実施形態では、封止体12は、周縁部15cを包囲するように電極積層体11の側面11aに設けられている。封止体12は、側面11aにおいて周縁部15cを保持している。封止体12は、集電体15の周縁部15cを囲繞する一次シールとしての樹脂枠21と、樹脂枠21の周囲に配置された二次シール22とを有する。
【0034】
樹脂枠21は、蓄電モジュール4に含まれる集電体15毎に設けられる部材であり、集電体15の各縁に重なっている。樹脂枠21は、例えば、所定の厚さ(Z軸方向に沿った長さ)を有する樹脂シートから形成される。樹脂枠21は、集電体15の周縁部15cの全周にわたって連続的に設けられている。樹脂枠21は、集電体15の第1主面15aに気密(液密)に接合(例えば溶着)されている。各樹脂枠21は、対応するバイポーラ電極14、負極終端電極18、もしくは正極終端電極19と一体化している。このため、蓄電モジュール4には、樹脂枠21とバイポーラ電極14とが一体化した構造体が含まれる。以下では、当該構造体を蓄電モジュール用電極MEとも呼称する。すなわち、蓄電モジュール用電極MEは、バイポーラ電極14及び樹脂枠21を備える。なお、樹脂枠21は、例えば超音波処理又は熱処理等を経て集電体15に溶着される。
【0035】
二次シール22は、封止体12の外壁を構成する部材であり、例えば角筒状を呈している。二次シール22は、各樹脂枠21の外周面を覆っている。二次シール22の内周面は、各樹脂枠21の外周面に溶着されている。本実施形態では、二次シール22は、各樹脂枠21に対して気密(液密)に接合されている。このため、隣り合う蓄電モジュール用電極ME間には、液密及び気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。図示されていないが、内部空間Vには、例えば水溶液系の電解液(具体例としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、もしくはこれらの混合液等のアルカリ性電解液)が収容されている。この電解液は、樹脂枠21に設けられる連通孔41(後述する
図3を参照)を介して、内部空間Vに収容される。樹脂枠21及び二次シール22のそれぞれは、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)又は変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等の樹脂で形成されている。なお、「内部空間の体積」は、セパレータ13の空隙を含む体積を意味する場合がある。
【0036】
次に、
図3及び
図4(a),(b)を参照しながら樹脂枠21の詳細な構造について説明する。
図3は、蓄電モジュール用電極を示す概略平面図である。
図4(a)は、
図3のIVa-IVa線に沿った概略断面図であり、
図4(b)は、
図3のIVb-IVb線に沿った概略断面図である。
図3及び
図4(a),(b)に示されるように、蓄電モジュール用電極MEに含まれる樹脂枠21は、枠形状を呈する第1層27と、Z軸方向において第1層27に重なると共に枠形状を呈する第2層29とを有する。本実施形態では、第2層29の少なくとも一部が、Z軸方向において第1層27に重なっている。すなわち、第2層29の全てが、Z軸方向において第1層27に重ならなくてもよい。
【0037】
第1層27は、樹脂枠21の枠状本体部であり、集電体15の第1主面15a上に位置し、且つ、周縁部15cに接合される。第1層27の一部である内側部分27aは、Z軸方向において集電体15に重なっている。すなわち、内側部分27aは、集電体15の周縁部15cに接合される部分である。また、平面視にて、第1層27の内縁27bは、正極層16よりも外側に位置する。すなわち、第1層27と正極層16とは、水平方向にて互いに離間している。一方、第1層27の他部である外側部分27cは、Z軸方向において集電体15に重ならない。すなわち、外側部分27cは、平面視にて集電体15から水平方向に沿って外側に突出する部分である。このため、平面視にて、第1層27の外縁27dは、集電体15の周縁部15cよりも外側に位置する。
【0038】
第2層29は、蓄電モジュール用電極ME上にセパレータ13を配置する空間を画成するための枠状部分である。第2層29の一部は第1層27上に位置し、第2層29の他部は周縁部15cに接合される。第2層29の一部は第1層27に対して加熱及び加圧されてもよい。これにより、第2層29の第1層27からの分離を抑制できる。本実施形態では、第1層27の外縁27dと第2層29の外縁29aとは、平面視にて一致する。このため、二次シール22は、第1層27の外縁27dと第2層29の外縁29aとの両方に容易に接触し得る。これに対して、第1層27の内縁27bと第2層29の内縁29bとは、平面視にて離間している。本実施形態では、平面視にて、内縁29bの一部は内側部分27aよりも外側に位置しており、内縁29bの他部は内側部分27aよりも樹脂枠21の中心側に位置する。第2層29は、内縁29bの上記一部を含む第1部分291及び第2部分292と、内縁29bの上記他部を含む第3部分293及び第4部分294とを有する。
【0039】
第1部分291と第2部分292とは、X軸方向において互いに対向する部分であり、平面視にて略矩形状を呈している。第1部分291は、Y軸方向における中央部291aと、Y軸方向において中央部291aを挟む端部291b,291cとを有する。中央部291aは、樹脂枠21の開口に重なり得る部分である。中央部291aの一部は第1層27に接触しており、中央部291aの他部は集電体15に接触している。本実施形態では、中央部291aの外縁側は第1層27に接触しており、中央部291aの内縁291d側は集電体15に接触している。端部291b,291cは、互いに同一形状を呈する。端部291b,291cのそれぞれは、樹脂枠21の開口に重ならず、且つ、第1層27上に位置している。すなわち、端部291b,291cのそれぞれは、第1層27に接触し、且つ、集電体15には接触していない。Y軸方向において、第1部分291の長さに対する端部291b,291cの合計長さの割合は、例えば2%以上16%以下である。この場合、第2層29に起因した樹脂枠21の液密性及び気密性の劣化等を良好に抑制できる。なお、本明細書における「同一」は、「完全同一」だけでなく「実質的同一」を含む概念である。実質的に同一形状は、例えば±5%程度の誤差を含む。同様に、本明細書における「一定」は、「完全一定」だけでなく「実質的一定」を含む概念である。実質的に一定間隔は、例えば±5%程度の誤差を含む。
【0040】
第2部分292は、第1部分291と同様に、Y軸方向における中央部292aと、Y軸方向において中央部292aを挟む端部292b,292cとを有する。第1部分291と同様に、中央部292aの一部は第1層27に接触しており、中央部292aの他部は集電体15に接触する。一方、端部292b,292cのそれぞれは、第1層27に接触し、且つ、集電体15には接触していない。端部292b,292cの形状は、端部291b,291cの形状と同一でもよいし、異なってもよい。本実施形態では、第1部分291と第2部分292とは、互いに同一形状を呈する。
【0041】
第3部分293と第4部分294とは、Y軸方向において互いに対向する部分であり、平面視にて略矩形状を呈している。X軸方向において、第3部分293の一方の端部は、第1部分291の端部291bに溶着しており、第3部分293の他方の端部は、第2部分292の端部292bに溶着している。また、X軸方向において、第4部分294の一方の端部は、第1部分291の端部291cに溶着しており、第4部分294の他方の端部は、第2部分292の端部292cに溶着している。これにより、例えば第1部分291と第3部分293との間等における電解液の漏洩を防止できる。また、第3部分293の全体と、第4部分294の全体とは、それぞれ第1層27上に位置している。このため、樹脂枠21には、第3部分293及び第1層27と、第4部分294及び第1層27とによる段差部21tが形成される。セパレータ13は、第1層27において段差部21tを構成する部分に配置される。セパレータ13は、第1部分291における中央部291aの一部上と、第2部分292における中央部292aの一部上とに配置されてもよい。この場合、セパレータ13の撓みを良好に抑制できる。
【0042】
第3部分293は、第2層29(より具体的には第3部分293)の外縁29aから内縁29bまで延在する連通孔形成予定領域31~35と、第2層29(より具体的には第3部分293)の外縁29aから内縁29bまで延在する連通孔41とを有する。連通孔形成予定領域31~35のそれぞれは、第3部分293において除去され得る領域であり、平面視にて略矩形状を呈する。連通孔形成予定領域31~35のいずれかが除去されることによって、第3部分293には連通孔41と同様の連通孔が設けられる。本実施形態では、連通孔形成予定領域31~35は、互いに同一形状を呈する。連通孔形成予定領域31~35のそれぞれは、第3部分293に設けられた切取線Lによって区画される。切取線Lは、連通孔形成予定領域31~35を第2層29から除去するときの目印となる線であり、平面視にて略U字形状を呈する。例えば、連通孔形成予定領域31を区画するための切取線Lは、第2層29の外縁29aから内縁29bまで延在する一対の線、並びに、当該一対の線を結ぶと共に第1層27と第2層29との境界に沿って延在する線を有する。切取線Lは、例えば第2層29への描画もしくは押圧等によって形成される。本実施形態では、切取線L上には、ミシン目が設けられる。この場合、特別な工具等を用いなくとも、切取線Lに沿って連通孔形成予定領域31~35を容易に除去できる。
【0043】
連通孔41は、電極積層体11の内部空間V(
図2を参照)に電解液を注液するための開口である。連通孔41は、第3部分293における連通孔形成予定領域を除去することによって形成される。すなわち、連通孔41は、第3部分293に設けられた複数の連通孔形成予定領域の一つから設けられている。このため、平面視における連通孔41の形状は、連通孔形成予定領域31~35の形状と同一である。また、本実施形態では、連通孔41は、X軸方向において、連通孔形成予定領域31を介して連通孔形成予定領域32の反対側に位置しているが、これに限られない。連通孔は、例えば連通孔形成予定領域31~35のいずれかに設けられてもよい。この場合、第3部分293において連通孔41が形成されている箇所は、切取線によって区画される連通孔形成予定領域になる。
【0044】
連通孔形成予定領域31~35と、連通孔41とは、平面視にてX軸方向に沿って並んでいる。隣り合う連通孔形成予定領域同士のX軸方向に沿った間隔P1は、一定である。このためX軸方向において、連通孔形成予定領域31,32の間隔と、連通孔形成予定領域32,33の間隔とは、同一である。また、X軸方向において、連通孔形成予定領域31と、連通孔41との間隔P2は、間隔P1と同一である。このため、第3部分293において連通孔41と連通孔形成予定領域31~35とは、X軸方向において、一定の間隔をおいて順に配置されている。加えて、第1部分291の内縁291dから連通孔41までのX軸方向に沿った距離と、第2部分292の内縁292dから連通孔形成予定領域35までのX軸方向に沿った距離とは、互いに異なっている。このため、連通孔形成予定領域31~35と、連通孔41とは、Y軸方向に沿った樹脂枠21の中心Cを通る軸(樹脂枠21の中心軸A)に関して非対称に位置する。
【0045】
第1層27と第2層29とは、互いに連続している。本実施形態では、第1層27の外縁27dと、第2層29の外縁29aとは、互いに連続している。これは、第1層27及び第2層29は、後述する
図5及び
図6(a),(b)に示される枠体51を折線61~64に沿って折り返すことによって形成されるからである(詳細は後述)。したがって、第1層27と第2層29とは、1枚の樹脂シートから分断されることなく形成されている。
【0046】
次に、
図5及び
図6(a),(b)を参照しながら、バイポーラ電極14に溶着する前であって、第2層29の形成前の樹脂枠に相当する枠体について説明する。
図5は、枠体の概略平面図である。
図6(a)は、反転前の枠体の要部拡大平面図であり、
図6(b)は、反転後の樹脂枠の要部拡大平面図である。
図5に示される枠体51は、樹脂枠21を形成するための部材である。枠体51は、例えばロールから引き出された樹脂シートを加工することによって得られる成型物である。本実施形態では、枠体51は、金型によって上記樹脂シートの一部を打ち抜くことによって形成される。枠体51は、後に第1層27になる本体枠部52と、後に第2層29の第1部分291~第4部分294になる第1突出部53~第4突出部56とを有する。本体枠部52と、第1突出部53~第4突出部56とは、互いに連続している。
【0047】
本体枠部52は、平面視にて第1層27と同一形状を呈する。第1突出部53~第4突出部56のそれぞれは、第1部分291~第4部分294と同様に、平面視にて略矩形状を呈する。第1突出部53及び第2突出部54のそれぞれは、X軸方向において本体枠部52の外側に向かって突出する部分である。第3突出部55及び第4突出部56のそれぞれは、Y軸方向において本体枠部52の外側に向かって突出する部分である。本体枠部52と第1突出部53とは折線61によって区画されており、本体枠部52と第2突出部54とは折線62によって区画されており、本体枠部52と第3突出部55とは折線63によって区画されており、本体枠部52と第4突出部56とは折線64によって区画されている。第1突出部53~第4突出部56が折線61~64に沿ってそれぞれ折り返されることによって、第1層27及び第2層29を有する樹脂枠21が形成される。
【0048】
折線61,62のそれぞれは平面視にてY軸方向に沿って延在する直線であり、折線63,64のそれぞれは平面視にてX軸方向に沿って延在する直線である。本実施形態では、折線61は第3突出部55及び第4突出部56の一短辺と揃っており、折線62は、第3突出部55及び第4突出部56の他短辺と揃っている。
【0049】
第3突出部55は、後に連通孔形成予定領域31~35もしくは連通孔41になる切欠予定領域71~76を有する。本実施形態では、切欠予定領域71~76のそれぞれは、同一形状を呈し、且つ、ミシン目によって構成される切取線Lによって区画される。ミシン目は、例えば上記樹脂シートを打ち抜く際に設けられる。この場合、上記樹脂シートを打ち抜くための金型は、上記ミシン目を形成するための構成を有する。なお、折線63は、切取線LにおいてX軸方向に沿って延在する部分に重複している。これにより、後に切欠予定領域71~76のいずれかから連通孔41(
図3を参照)が設けられるとき、第1層27による連通孔41の閉塞を良好に抑制できる。
【0050】
切欠予定領域71~76は、平面視にてX軸方向に沿って並んでいる。隣り合う切欠予定領域同士のX軸方向に沿った間隔P3は、
図3に示される間隔P1と一定である。すなわち、切欠予定領域71~76は、X軸方向において、一定の間隔をおいて順に設けられている。また、第3突出部55の一短辺から切欠予定領域71までの距離D1と、第3突出部55の他短辺から切欠予定領域76までの距離D2とは、互いに異なっている。このため、切欠予定領域71~76は、Y軸方向に沿った枠体51の中心Cを通る中心軸Aに関して非対称に位置する。したがって、反転前の切欠予定領域71~76の位置(
図5及び
図6(a)を参照)と、中心軸Aを回転軸として枠体51を反転させたときの切欠予定領域71~76の位置(
図6(b)を参照)とは、互いに完全に一致しない。本実施形態では、例えば中心軸Aを回転軸として枠体51を反転させた場合、反転前の切欠予定領域72と、反転後の切欠予定領域75,76とは、一部重なるが、完全には重ならない。中心軸Aを回転軸として枠体51を反転させた場合、反転前の切欠予定領域74と、反転後の切欠予定領域74もまた、一部重なるが、完全には重ならない。
【0051】
上述したように、枠体51の加工物である樹脂枠21における連通孔形成予定領域31~35は、Y軸方向に沿った樹脂枠21の中心軸Aに関して非対称に位置する。このため、中心軸Aを回転軸として樹脂枠21を反転させた場合、平面視における反転前の連通孔形成予定領域31~35の位置と、平面視における反転後の連通孔形成予定領域31~35の位置とは、互いに完全に一致しない。
【0052】
次に、以上に説明した本実施形態に係る蓄電モジュール用電極ME及びそれを備える蓄電モジュール4によって得られる作用効果について、
図7(a)~(c)を参照しながら説明する。
図7(a)は、比較例に係る第1枠体を示す概略平面図である。また、
図7(b)は、比較例に係る第2枠体を示す要部拡大平面図であり、
図7(c)は、比較例に係る第3枠体を示す要部拡大平面図である。
図7(a)に示されるように、比較例に係る第1枠体151は、切欠予定領域及び切取線が設けられていない点、及び、切欠141が設けられる点にて本実施形態に係る枠体51と異なっている。また、
図7(b)に示される第2枠体251は、切欠予定領域及び切取線が設けられていない点、及び、切欠241が設けられる点にて本実施形態に係る枠体51と異なっており、
図7(c)に示される第3枠体351は、切欠予定領域及び切取線が設けられていない点、及び、切欠341が設けられる点にて本実施形態に係る枠体51と異なっている。
【0053】
第1枠体151の切欠141と、第2枠体251の切欠241と、第3枠体351の切欠341とは、それぞれ異なる位置に設けられる。このような第1枠体151、第2枠体251及び第3枠体351を全て用いて蓄電モジュールを製造することによって、蓄電モジュールにおいて電解液等の注液用の連通孔が設けられる箇所を分散できる。これにより、比較例においては、蓄電モジュール内に電解液等を効率よく注液できる。一方、比較例においては、少なくとも第1枠体151、第2枠体251、及び第3枠体351を形成するための金型等と、各樹脂枠を保管するためのスペースとが必要になる。したがって比較例においては、各樹脂枠の製造コスト、及び各樹脂枠の在庫管理コスト等が増加してしまう。
【0054】
これに対して、本実施形態に係る蓄電モジュール用電極MEによれば、枠体51の第2層29が有する連通孔形成予定領域を切取線に沿って除去することによって、第2層29の外縁29aから内縁29bまで延在する連通孔41を容易に形成できる。ここで、第2層29に設けられる連通孔の形成箇所は、例えば連通孔形成予定領域31~35の選択により容易に変更可能である。このため、複数種の樹脂枠を用いることなく、蓄電モジュール4の位置に応じた箇所に連通孔が設けられる枠体51を備える蓄電モジュール用電極MEを準備できる。このような蓄電モジュール用電極MEを用いることによって、複数種の樹脂枠を製造することなく蓄電モジュール4を製造できる。したがって、複数種の樹脂枠を在庫管理する必要もないので、蓄電モジュールの製造コスト等を低減可能である。
【0055】
本実施形態では、切取線L上には、ミシン目が設けられる。このため、所望の連通孔形成予定領域のみを切取線Lに沿って容易に除去できるので、第2層29に連通孔を容易に形成できる。
【0056】
本実施形態では、第1層27の外縁27dと、第2層29の外縁29aとは、互いに連続している。このため、枠体51を形成する際に用いられる樹脂シートの廃棄率を低減できる。
【0057】
本実施形態では、連通孔形成予定領域31~35は、平面視にてX軸方向に沿って並んでおり、且つ、Y軸方向に沿った枠体51の中心軸Aに関して非対称に位置する。このため、中心軸Aを回転軸として樹脂枠21を反転させたとき、平面視における反転前の連通孔形成予定領域31~35の位置を、平面視における反転後の連通孔形成予定領域31~35の位置に対してずらすことができる。このため、反転前の枠体51から形成された樹脂枠21を含む蓄電モジュール用電極MEと、反転後の枠体51から形成された樹脂枠を含む蓄電モジュール用電極との両方を用いることによって、平面視における連通孔の形成箇所のパターンを容易に最大2倍まで増加できる。
【0058】
ここで本実施形態では、隣り合う連通孔形成予定領域同士のX軸方向に沿った間隔P1は、一定であり、連通孔形成予定領域31~35のそれぞれの形状は、同一である。このため、中心軸Aを回転軸として樹脂枠21を反転させたとき、平面視における反転後の連通孔形成予定領域31~35の全ての位置を、平面視における反転前の連通孔形成予定領域31~35の位置に対して確実にずらすことができる。このため、反転前の枠体51から形成された樹脂枠21を含む蓄電モジュール用電極MEと、反転後の枠体51から形成された樹脂枠を含む蓄電モジュール用電極との両方を用いることによって、平面視における連通孔の形成箇所のパターンを倍増できる。
【0059】
本実施形態では、連通孔形成予定領域の一つには、第2層29の外縁29aから内縁29bまで延在する連通孔41が設けられており、X軸方向において、連通孔形成予定領域31と、連通孔41との間隔P2は、間隔P1と同一である。このため、連通孔41と連通孔形成予定領域31~35とは、X軸方向において、一定の間隔をおいて順に配置されている。このため、連通孔形成予定領域31~35と、連通孔41とは、Y軸方向に沿った樹脂枠21の中心軸Aに関して非対称に位置する。
【0060】
本発明に係る蓄電モジュール用電極及び蓄電モジュールは、上記実施形態に限定されず、他に様々な変形が可能である。例えば、本発明では、蓄電モジュールに含まれる全ての蓄電モジュール用電極が、上記実施形態に係る樹脂枠を備えなくてもよい。すなわち、本発明では、蓄電モジュールに含まれる蓄電モジュール用電極の少なくとも一が、上記実施形態に係る蓄電モジュール用電極であればよい。また、上記実施形態では、電極積層体は、各種電極とセパレータとの積層体であるが、これに限られない。電極積層体は、蓄電モジュール用電極と、セパレータとを備えてもよい。すなわち、電極積層体は、封止体の一部を備えてもよい。
【0061】
上記実施形態では、樹脂枠の第1部分のみに連通孔形成予定領域及び連通孔が形成されているが、これに限られない。例えば、樹脂枠の第2部分のみに連通孔形成予定領域及び連通孔が形成されてもよいし、樹脂枠の第1~第4部分の少なくともいずれかに連通孔形成予定領域及び連通孔が形成されてもよい。この場合、蓄電モジュールにおいて連通孔が設けられる箇所をより分散できる。
【0062】
上記実施形態では、連通孔形成予定領域同士は互いに同一形状を呈するが、これに限られない。例えば、連通孔形成予定領域の少なくとも一つが、他の連通孔形成予定領域と異なる形状を呈してもよい。同様に、切欠予定領域同士は、互いに同一形状を呈さなくてもよい。また、連通孔形成予定領域と連通孔とは、互いに異なる形状を呈してもよい。加えて、上記実施形態では、隣り合う連通孔形成予定領域同士の間隔は一定であるが、これに限られない。同様に、隣り合う切欠予定領域同士の間隔は一定であるが、これに限られない。
【0063】
上記実施形態では、枠体は、金型によって樹脂シートの一部を打ち抜くことによって形成されるが、これに限られない。また、切欠予定領域は、枠体の形成と同時に設けられなくてもよい。
【0064】
上記実施形態では、連通孔が形成されるタイミングは特に限定されない。連通孔は、切欠予定領域の除去によって形成されてもよいし、連通孔形成予定領域の除去によって形成されてもよい。すなわち、連通孔は、折線を介して枠体の一部が折り返される前に形成されてもよいし、上記一部が折り返された後に形成されてもよい。
【0065】
上記実施形態では、樹脂枠の第1層及び第2層は連続しているが、これに限られない。例えば、第1層の外縁と第2層の外縁とは、互いに分離してもよい。この場合、第1層と第2層とは、1枚の樹脂シートから分断されることによって形成されてもよい。もしくは、第1層と第2層とは、互いに異なる樹脂シート等から形成されてもよい。また、上記実施形態では、樹脂枠の第2層の一部は集電体に接触しているが、これに限られない。第2層は、集電体に対して離間してもよい。この場合、例えば集電体と第2層との間には第1層が位置する。
【0066】
上記実施形態では、樹脂枠において、第2層の内縁の一部が第1層の内縁よりも外側に位置し、第2層の内縁の他部が第1層の内縁よりも樹脂枠の中心側に位置しているが、これに限られない。例えば、第2層の内縁の全体が第1層の内縁よりも外側に位置してもよいし、第2層の内縁の全体が第1層の内縁よりも樹脂枠の中心側に位置してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…蓄電装置、2…モジュール積層体、3…拘束部材、4…蓄電モジュール、5…導電板、5a…流路、6…正極端子、7…負極端子、8…エンドプレート、8a…挿通孔、9…締結ボルト、10…ナット、11…電極積層体、11a…側面、12…封止体、13…セパレータ、14…バイポーラ電極、15…集電体、15a…第1主面、15b…第2主面、15c…周縁部、16…正極層、17…負極層、18…負極終端電極、19…正極終端電極、21…樹脂枠、21t…段差部、22…二次シール、27…第1層、27a…内側部分、27b…内縁、27c…外側部分、27d…外縁、29…第2層、29a…外縁、29b…内縁、31~35…連通孔形成予定領域、41…連通孔、51…枠体、52…本体枠部、61~64…折線、71~76…切欠予定領域、141,241,341…切欠、291…第1部分、291a,292a…中央部、291b,291c,292b,292c…端部、291d,292d…内縁、292…第2部分、293…第3部分、294…第4部分、A…中心軸、C…中心、D1,D2…距離、L…切取線、ME…蓄電モジュール用電極、P1~P3…間隔、V…内部空間。