(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-03
(45)【発行日】2022-06-13
(54)【発明の名称】ガラス微粒子堆積体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 8/04 20060101AFI20220606BHJP
C03B 37/018 20060101ALI20220606BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20220606BHJP
【FI】
C03B8/04 F
C03B37/018 C
C03B37/018 A
G02B6/02 356A
(21)【出願番号】P 2019160530
(22)【出願日】2019-09-03
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108143
【氏名又は名称】嶋崎 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】三田 怜
【審査官】松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-110535(JP,U)
【文献】実開昭63-069137(JP,U)
【文献】実開昭63-081828(JP,U)
【文献】特開昭61-141631(JP,A)
【文献】特開平10-236835(JP,A)
【文献】実開平07-021741(JP,U)
【文献】特開2000-191337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 8/04
C03B 37/018
F23D 14/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器内に、出発ロッドとバーナーを設置し、前記バーナーにガラス原料を導入し、前記バーナーが形成する火炎内でガラス原料を火炎加水分解反応させてガラス微粒子を生成し、生成したガラス微粒子を前記出発ロッドに堆積させてガラス微粒子堆積体を製造するガラス微粒子堆積体の製造方法であって、前記バーナーの最外管外周に固定治具を設置し、前記バーナー最外管先端からバーナーカバーを挿入し、該バーナーカバーと前記バーナー最外管との間に前記固定治具の一部を挟み込んで圧縮することにより前記バーナーカバーを前記バーナーに固定し、さらに圧縮されていない前記固定治具の一部の外径が、前記バーナー最外管先端に挿入された前記バーナーカバーの一部の内径より大きいことを特徴とする、ガラス微粒子堆積体の製造方法。
【請求項2】
前記固定治具が、PTFE、PFA、ポリイミドのうち少なくとも一種を含む請求項1に記載のガラス微粒子堆積体の製造方法。
【請求項3】
前記固定治具が、前記バーナーの最外管外周にテープ又はフィルムを巻き付けてなる請求項1又は2に記載のガラス微粒子堆積体の製造方法。
【請求項4】
前記バーナーに前記バーナーカバーを固定したときの、バーナー長手方向と直行する断面における前記バーナーカバーの内径と前記バーナー最外管の外径との内外径差が0.5mm以上4mm以下である請求項1に記載のガラス微粒子堆積体の製造方法。
【請求項5】
前記バーナーカバーの先端の、前記バーナー先端からの突出し距離が20mm以上40mm以下である請求項1又は4に記載のガラス微粒子堆積体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OVD法(外付け法)、VAD法(気相軸付け法)、MMD法(多バーナー多層付け法)などによりガラス微粒子を出発ロッドに堆積させてガラス微粒子堆積体を製造するガラス微粒子堆積体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的に知られたOVD法による光ファイバ母材の製造装置においては、反応容器内に出発ロッドとガラス微粒子生成用のバーナーを設置し、該バーナーにSiCl4 等の原料ガスを供給し、バーナーが形成する火炎内における火炎加水分解反応で生じたガラス微粒子を出発ロッドの周囲に堆積させてガラス微粒子堆積体を形成している。
【0003】
このようなガラス微粒子堆積体の製造方法においては、石英ガラス製バーナー先端へのガラス微粒子の付着や、バーナー先端の劣化による形状変化を防いだり、バーナー火炎の流れを制御したりするため、バーナーの先端に、着脱式のバーナーカバー(バーナーフード)を被せることが知られている(文献1,2,3,4参照)。
また、ガラス微粒子堆積体の成長に伴って、バーナーの位置や角度を変更する技術が知られている。(文献5、6参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭63-110535号公報
【文献】実開昭63-81828号公報
【文献】特開2010-96378号公報
【文献】特開2006-199527号公報
【文献】特開2017-071513号公報
【文献】特許第6505188号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バーナー及びバーナーカバーは、耐熱性および耐腐食性に優れた石英ガラス製とすることが多い。石英ガラス製バーナーは、石英ガラス製の円管を手作業で溶接して製作することが多く、また、石英ガラス製の円管自体も加熱延伸によって内外径を調整して作製されるため、各バーナーの個体間で形状差が生じやすい。このため、バーナーにバーナーカバーを被せても、バーナーカバーの位置の再現性が得られないことが多々あった。具体的には、バーナーカバーがバーナーの所定位置で固定されず、奥まで入りすぎたり、逆に手前までにしか入らなかったりした。そのため、バーナー火炎の状態が各バーナーの個体間で異なり、ガラス微粒子堆積体の形状に差が生じやすくなっていた。
さらに、ガラス微粒子堆積体を製造中、バーナー位置や角度を変更する際(文献5、6など参照)に、バーナーカバーが所定位置からずれる問題があった。
【0006】
文献1に記載のバーナーは、バーナーカバーをテフロンテープなどの固定材でバーナーに固定しているが、固定材がバーナーカバーを支えることができず、ガラス微粒子堆積体の製造を繰り返すうちにバーナーカバーの位置がズレ、火炎状態の再現性を得ることが困難であった。
【0007】
文献2に記載のバーナーは、バーナーの最外管に、バーナーカバーの内径と同径になるように耐熱性テープを巻き付け、そこにバーナーカバーを装着し、その後、固定用テープ材で装着したバーナーカバーの根元とバーナーに巻き付けられた耐熱性テープの露出部とを覆うように巻き付けてバーナーに固定しているが、バーナーカバーを固定用テープ材でしっかりと固定しているために、バーナーからバーナーカバーを取り外して交換することは出来ず、バーナーカバー清掃のために、バーナー自体を装置から取り外し、交換する必要があった。
【0008】
文献3に記載のバーナーは、バーナーの先端にノズルを連結するための耐熱樹脂製の継手を設けているが、やはり個体差の大きいバーナーとノズルでは、継手のセッティングが困難であった。また、複雑な継手は重く高価であるため、バーナーの安定性を欠くことになる上に、コストアップにつながっていた。
【0009】
文献4に記載のバーナーは、バーナーの先端に二重のカバーを設置しており、カバーのコストが倍増する上、設置方法が複雑化し、さらにバーナー先端が重くなってバーナーの安定性を欠くことに加え、コストアップにつながっていた。
【0010】
そこで、本発明は、このような課題に鑑みて、個体差が大きいバーナー及びバーナーカバーを、バーナーの所定の位置に容易に固定させることができ、製造中のバーナー移動などに起因する位置ずれがなく、さらに容易に着脱することのできるガラス微粒子堆積体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決してなり、反応容器内に、出発ロッドとバーナーを設置し、前記バーナーにガラス原料を導入し、前記バーナーが形成する火炎内でガラス原料を火炎加水分解反応させてガラス微粒子を生成し、生成したガラス微粒子を前記出発ロッドに堆積させてガラス微粒子堆積体を製造するガラス微粒子堆積体の製造方法であって、前記バーナーの最外管外周に固定治具を設置し、前記バーナー最外管先端からバーナーカバーを挿入し、該バーナーカバーと前記バーナー最外管との間に前記固定治具の一部を挟み込んで圧縮することにより前記バーナーカバーを前記バーナーに固定し、さらに圧縮されていない前記固定治具の一部の外径が、前記バーナー最外管先端に挿入された前記バーナーカバーの一部の内径より大きいことを特徴とする、ガラス微粒子堆積体の製造方法である。
【0012】
なお、前記固定治具は、PTFE、PFA、ポリイミドのうち少なくとも一種を含むのが好ましく、該固定治具を、前記バーナーの最外管外周にテープ又はフィルムを巻き付けて設置してもよい。
また、前記バーナーに前記バーナーカバーを固定したときの、バーナー長手方向と直行する断面における前記バーナーカバーの内径と前記バーナー最外管の外径との内外径差が0.5mm以上4mm以下とするのがよく、前記バーナーカバーの先端の、前記バーナー先端からの突出し距離が20mm以上40mm以下とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バーナーカバーとバーナー最外管との間に固定治具の一部を挟み込んで圧縮することにより、形状的に個体差の大きいバーナーであっても、容易にバーナーカバーをバーナーの所定の位置に設置することができる。この固定治具を、例えば、シールテープをバーナー最外管の周りに複数回巻いたものとすると、非常に容易かつ安価にバーナーとバーナーカバーの個体差を吸収し、バーナーカバーを所定の位置に強固に設置することができ、製造中にバーナーカバーがズレ落ちるのを防止することが可能になる。さらに、バーナーカバーの交換及びそれに伴う着脱、個別のバーナーによる微調整なども容易になり、調整作業に要する時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に掛かる、バーナーに固定治具を介してバーナーカバーを設置する態様を示す概略図であり、左側の図はバーナーカバー取り付け前の状態を示し、右側の図は取り付け後の状態を示す。
【
図2】本発明に掛かる、バーナーに圧縮性を有する固定治具を介してバーナーカバーを設置する態様を示す概略図であり、左側の図はバーナーカバー取り付け前の状態を示し、右側の図は取り付け後の状態を示す。
【
図3】バーナーの角度変化を伴うガラス微粒子堆積体の製造装置を示す概略構成図である。
【
図4】バーナーの移動を伴うガラス微粒子堆積体の製造装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るガラス微粒子堆積体の製造方法の実施形態の例を添付図面に基づいて説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態によって限定されるものではない。
図1は、本実施形態のガラス微粒子堆積体を製造するバーナーの構成図であり、左側の図はバーナーにバーナーカバー取り付け前の状態を示し、右側の図は取り付け後の状態を示している。
多重管バーナー1は、その最外管に固定治具3が設置されており、固定治具3を介してバーナーカバー2をバーナー1に固定している。ここでは図示されていないが、多重管バーナー1の内部には、ガラス原料ガスとしてガス状のSiCl
4など、火炎形成用ガスとしてH
2やO
2など、バーナーシールガスとしてN
2やArなどの不活性ガスを供給する配管などが収められている。
【0016】
バーナーに導入されたガラス原料は、バーナーが形成する火炎内で火炎加水分解反応によってガラス微粒子を生成し、生成したガラス微粒子を出発ロッドに堆積させてガラス微粒子堆積体が製造される。この際、バーナーの先端にガラス微粒子が付着したり、バーナーの先端が劣化して形状が変化したりすることを防いだり、バーナー火炎の流れを制御したりするため、バーナーの先端にバーナーカバーを被せることが知られている。
【0017】
しかし、特に石英ガラス製のバーナー及びバーナーカバーは、構造が複雑で製造が困難であり、一つずつ手作業で製造することが多いため、形状の個体差が大きいことが多い。そのため、バーナーカバーをバーナーの所定の位置に固定させ、さらに交換のために着脱を行うことが困難であることが問題になっていた。
バーナー及びバーナーカバーの外径差が大きいと、例えば、バーナーカバーの、バーナー先端からの突出し距離がバーナーによって異なることになり、形成した火炎の流れやガラス微粒子の堆積状態に影響し、ガラス微粒子堆積体の形状や堆積効率の悪化につながっていた。また、バーナーカバーがガラス微粒子堆積体の堆積中に揺れ動き、火炎の流れに悪影響を及ぼしたり、破損につながったりしていた。特に、堆積中にバーナー角度を変化させて、或いはバーナー位置を移動させてガラス微粒子堆積体を製造する際に影響が出やすかった。
【0018】
本発明は、上記のような問題を解決するために、
図1に示す様にバーナー1の最外管の外周に、バーナーカバー2をバーナー1に固定する固定治具3を設置し、その固定治具を介してバーナー1の先端にバーナーカバーを設置する構成としており、固定治具の一部をバーナーカバーとバーナー最外管との間に挟み込んだ状態で圧縮することにより、バーナーカバーをバーナーに固定することを特徴とし、さらに圧縮されていない固定治具の一部の外径が、バーナーカバー下部の内径より大きいことを特徴としている。これにより、バーナーカバーは、常にバーナーの所定の位置にしっかりと固定される。
【0019】
上記固定治具3の材質は特に限定されず、固体の他、粘性を有するゲル状の物体などであってもよいが、バーナーから噴出する火炎による熱や反応ガスによる影響を受けにくい材質が好ましい。例えば、ニトフロンテープ(日東電工製、商品名)やバルカーテープシール#20(バルカー社製、商品名)が挙げられる。
固定治具3は、耐熱性や耐薬品性に優れたポリイミド、PFA(フッ素樹脂)、PTFE(テフロン樹脂)を含むテープやフィルムが好ましく、バーナー1の最外管の外周に巻きつけることで、良好な効果が得られる。なお、前記バルカーテープシールはPTFE(テフロン樹脂)などを含んでいて、耐熱性や耐薬品性に優れ、加工が容易で、伸縮性があり、安価であるという特徴があり、本発明に好適に用いられる。
【0020】
バーナーカバーはその内径を、バーナーとバーナーカバーの固体毎の形状差に影響されない程度に、バーナー最外管の外径より大きめに設計し、
図2に示す通り、前記したテープ又はフィルムを固定治具3として、カバーを設置したい箇所のバーナー最外管の外周に巻きつけ、その後、バーナーカバーを挿入し、巻きつけたテープをバーナー最外管との間に挟み込んで、テープのつぶし代分を圧縮するようにバーナーカバーを設置することで、バーナーカバーを容易に所定の位置に固定できる。
【0021】
この際、バーナーカバーを固定治具にゆっくり手でねじるように押し込んでいくと、バーナーカバー下端内径より外径の大きな固定治具をつぶして圧縮しながら設置することができる。このときバーナーカバーは、バーナー最外管に固定治具を介して固定されており、バーナーカバーがバーナーに直接接していないため、バーナー及びバーナーカバーの形状差があっても、固定状態に影響しにくい。また、バーナーカバーの内径とバーナー最外管の外径に差があっても、固定治具となるテープを巻きつける回数を変えれば、その場で容易に調整可能である。また、専用の固定治具を用意する必要がなく、交換などのメンテナンスも容易であり、バーナー及びバーナーカバー自体に微細な細工が不要という利点がある。さらに、固定治具3の圧縮されていない固定治具の一部の外径が、バーナーカバー下端の最外管外径より大きくなるように設置しておくことで、バーナーカバーを所定の位置に固定することができ、さらに、製造を繰り返すうちにバーナーカバーが振動などで下方にズレ落ちていくことを防止することができ、連続使用を行っても火炎の安定性を確保することができる。
【実施例】
【0022】
図3は、バーナーの角度変化を伴うガラス微粒子堆積体の製造装置を示す概略構成図であり、主としてクラッド部の堆積に用いられるクラッド堆積用バーナーに本発明の固定治具を設置するのが有効である。
図4は、バーナーの移動を伴うガラス微粒子堆積体の製造装置を示す概略構成図であり、バーナー7に本発明の固定治具を設置するのが有効である。
本実施例においては、
図4に示す製造装置を使用してOVD法によってガラス微粒子の堆積、すなわちガラス微粒子堆積体の製造を行った。
【0023】
出発ロッドとして、直径35mm、長さ1400mmのシングルモード光ファイバ用に屈折率を調整したコア部材の両端にダミー用石英棒を溶接したものを出発ロッド5として用い、これを反応容器6内にセットし、図示しない回転機構コア部材回転用モーターにより40rpmで回転させた。
次いで、バ一ナー7に、火炎形成ガスとしての酸素ガスを95 l/min、水素ガスを190 l/min、キャリアーガスとしての酸素ガスを12 l/minに同伴して、原料ガスSICL4を 45g/minで、図示しないガス供給設備より供給した。このバーナー7を、図示しないバーナートラバース用モーターにより150mm/minの速度で1800mmの範囲を出発ロッド5に沿って往復移動させ、SICL4の火炎加水分解で発生したガラス微粒子8を出発ロッド5の周囲に堆積させて、30時間後に外径が150mmφで総重量30kgのガラス微粒子堆積体4を製造した。
【0024】
[比較例1]
比較例1においては、上記ガラス微粒子堆積体4の製造に際して、バーナーカバー固定治具を用いず、バーナーカバーをバーナーに直接乗せ、粘着性のアルミテープで固定した。ここで、バーナーは、直胴部の長さ40cmのガラス製の多重管バーナーで、根本に火炎形成ガスとしての酸素ガス、水素ガス、キャリアーガスとしての酸素ガス、原料ガスとしてのSICL4を流すための枝管を有している。また、バーナーカバーは直胴部長さ40cmの筒状のガラスである。このとき、バーナーカバーの内径とバーナー最外管の外径との内外径差の最小値は1.5mmであり、前記バーナーカバーの先端の、前記バーナーの先端からの突出し距離は、30mmであった。
なお、以下の実施例においても、バーナー及びバーナーカバーとしては同様のものを用いた。
バーナーカバーの内径は、ミツトヨ製内径測定器141シリーズを用いて長さ方向に5cmごとに測定し、バーナー最外管の外径は、ミツトヨ製ノギス500シリーズを用いて長さ方向に5cmごとに測定し、得られた値を用いた。以下、内径と外径についても同様に測定した。
【0025】
[実施例1]
実施例1においては、上記ガラス微粒子堆積体4の製造に際して、バーナー最外管の外周に、バルカーテープシール(#20)(厚さ0.15mm、幅20mm、PTFE含有)を約2周巻きつけて、厚さ0.3mmとした固定治具を設置し、固定治具のバーナー先端側10mmの位置までバーナーカバーを差し込み、バーナーカバーとバーナー最外管外周との間で固定治具を挟み込んで圧縮することで、バーナーカバーを固定治具を介してバーナーに取り付けた。このとき、バーナーカバーの内径とバーナー最外管の外径との内外径差の最小値は0.2mmであり、バーナーカバー先端の、バーナー先端からの突出し距離は30mmであった。また、圧縮されていない固定治具の一部の外径は、バーナーカバー下端の最外管内径より大きかった。
【0026】
[実施例2]
実施例2は、バーナー最外管の外周に、バルカーテープシール(#20)(厚さ0.15mm、幅20mm、PTFE含有)を約5周巻きつけて、厚さ0.75mmとした固定治具を設置し、実施例1と同様にしてバーナーカバーをバーナーに取り付けた。このとき、バーナーカバーの内径とバーナー最外管の外径との内外径差の最小値は0.5mmであり、バーナーカバー先端の、バーナー先端からの突出し距離は30mmであった。また、圧縮されていない固定治具の一部の外径は、バーナーカバー下端の最外管内径より大きかった。
【0027】
[実施例3]
実施例3は、バーナー最外管の外周に、バルカーテープシール(#20)(厚さ0.15mm、幅20mm、PTFE含有)を約10周巻きつけて、厚さ1.5mmとした固定治具を設置し、実施例1と同様にしてバーナーカバーをバーナーに取り付けた。このとき、バーナーカバーの内径とバーナー最外管の外径との内外径差の最小値は1.3mmであり、バーナーカバー先端の、バーナー先端からの突出し距離は30mmであった。また、圧縮されていない固定治具の一部の外径は、バーナーカバー下端の最外管内径より大きかった。
【0028】
[実施例4]
実施例4は、バーナー最外管の外周に、バルカーテープシール(#20)(厚さ0.15mm、幅20mm、PTFE含有)を約30周巻きつけて、厚さ4.5mmとした固定治具を設置し、実施例1と同様にしてバーナーカバーをバーナーに取り付けた。このとき、バーナーカバーの内径とバーナー最外管の外径との内外径差の最小値は4mmであり、バーナーカバー先端の、バーナー先端からの突出し距離は30mmであった。また、圧縮されていない固定治具の一部の外径は、バーナーカバー下端の最外管内径より大きかった。
【0029】
[実施例5]
実施例5は、バーナー最外管の外周に、バルカーテープシール(#20)(厚さ0.15mm、幅20mm、PTFE含有)を約33周巻きつけて、厚さ5mmとした固定治具を設置し、実施例1と同様にしてバーナーカバーを固定治具を介してバーナーに取り付けた。このとき、バーナーカバーの内径とバーナー最外管の外径との内外径差の最小値は4.7mmであり、バーナーカバー先端の、バーナー先端からの突出し距離は30mmであった。また、圧縮されていない固定治具の一部の外径は、バーナーカバー下端の最外管内径より大きかった。
【0030】
[実施例6]
実施例6は、バーナー最外管の外周に、バルカーテープシール(#20)(厚さ0.15mm、幅20mm、PTFE含有)を約10周巻きつけて、厚さ1.5mmとした固定治具を設置し、該固定治具のバーナー先端側10mmの位置までバーナーカバーを差し込み、バーナーカバーとバーナー最外管外周の間で固定治具を挟み込んで圧縮することで、バーナーカバーを固定治具を介してバーナーに取り付けた。このとき、バーナーカバーの内径とバーナー最外管の外径との内外径差の最小値は1.3mmであり、バーナーカバー先端の、バーナー先端からの突出し距離は15mmであった。また、圧縮されていない固定治具の一部の外径は、バーナーカバー下端の最外管内径より大きかった。
【0031】
[実施例7]
実施例7は、バーナーカバー先端の、バーナー先端からの突出し距離を20mmとした以外は、実施例6と同様にして、バーナーカバーを固定治具を介してバーナーに取り付けた。
なお、バーナーカバーの内径とバーナー最外管の外径との内外径差の最小値は1.3mmであり、圧縮されていない固定治具の一部の外径は、バーナーカバー下端の最外管内径より大きかった。
【0032】
[実施例8]
実施例8は、バーナーカバー先端の、バーナー先端からの突出し距離を40mmとした以外は、実施例6と同様にして、バーナーカバーを固定治具を介してバーナーに取り付けた。
なお、バーナーカバーの内径とバーナー最外管の外径との内外径差の最小値は1.3mmであり、圧縮されていない固定治具の一部の外径は、バーナーカバー下端の最外管内径より大きかった。
【0033】
[実施例9]
実施例9は、バーナーカバー先端の、バーナー先端からの突出し距離を45mmとした以外は、実施例6と同様にして、バーナーカバーを固定治具を介してバーナーに取り付けた。
なお、バーナーカバーの内径とバーナー最外管の外径との内外径差の最小値は1.3mmであり、圧縮されていない固定治具の一部の外径は、バーナーカバー下端の最外管内径より大きかった。
【0034】
[実施例10]
実施例10は、バーナー最外管の外周に、ポリイミドフィルム(API-114A FR)(厚さ0.06mm、幅25mm、ポリイミド含有)を約25周巻きつけて厚さ1.5mmとした固定治具を設置し、固定治具のバーナー先端側10mmの位置までバーナーカバーを差し込み、バーナーカバーとバーナー最外管外周の間で固定治具を挟み込んで圧縮することでバーナーカバーを、固定治具を介してバーナーに取り付けた。
このとき、バーナーカバーの内径とバーナー最外管の外径との内外径差の最小値は1.3mmであり、バーナーカバー先端の、バーナー先端からの突出し距離は30mmであった。
また、圧縮されていない固定治具の一部の外径は、バーナーカバー下端の最外管内径より大きかった。
【0035】
[実施例11]
実施例11は、固定治具の厚さを、バーナー最外管の外周に、PFAフィルム(AFA-113A)(厚さ0.10mm、幅50mm、PFA含有)を約15周巻きつけて厚さ1.5mmとした以外は、実施例10と同様にして、バーナーカバーを固定治具を介してバーナーに取り付けた。
なお、バーナーカバーの内径とバーナー最外管の外径との内外径差の最小値は1.3mmであり、バーナーカバー先端の、バーナー先端からの突出し距離は30mmであった。また、圧縮されていない固定治具の一部の外径は、バーナーカバー下端の最外管内径より大きかった。
【0036】
[実施例12]
実施例12は、固定治具の厚さを、ポリエチレンフィルム(AUE-112B)(厚さ0.18mm、幅25mm、ポリエチレン含有)を約8周巻きつけて厚さ1.5mmとした以外は、実施例10と同様にしてバーナーカバーを固定治具を介してバーナーに取り付けた。
なお、バーナーカバーの内径とバーナー最外管の外径との内外径差の最小値は1.3mmであり、バーナーカバー先端の、バーナー先端からの突出し距離は30mmであった。また、圧縮されていない固定治具の一部の外径は、バーナーカバー下端の最外管内径より大きかった。
【0037】
上記比較例1及び実施例1~12の構成で、ガラス微粒子堆積体の生産をそれぞれ5バッチ行った後の、ガラス微粒子堆積体の外径変動、バーナー先端のスス付着量及びバーナーの破損について調べた。その結果を表1に示した。
【0038】
【0039】
実施例1,2,3,4,5の比較により、バーナーにバーナーカバーを固定したときの、バーナー長手方向と直行する断面におけるバーナーカバーの内径とバーナー最外管の外径との内外径差の最小値(mm)は、0.5mm以上4mm以下が望ましいことが分かる。この数値が0.5mmより小さいと、バーナーカバーのバーナーへの設置が難しくなるほか、バッチ中において、バーナー移動中の振動などによりバーナーカバーとバーナーが接触してバーナーが破損することがあり、好ましくない。
また、この数値が4mmを超えると、バーナーカバーのバーナーへの設置が難しくなるほか、バーナーから出る火炎が広がりすぎて、火炎内のガラス微粒子の分布に大きくバラつきが生じ、ガラス微粒子堆積体の径変動が大きくなる。
【0040】
実施例3,6,7,8,9の比較により、バーナーカバーの先端の、バーナー先端からの突出し距離は20mm以上40mm以下が望ましいことが分かる。この数値が20mmより小さいと、バーナーカバーによるバーナーへのスス付着量低減効果が小さくなってしまい、バーナー自体にススが付着して、火炎の流れが抑制され、ガラス微粒子堆積体の径変動が大きくなる。また、この数値が40mmを超えると、バーナーから出る火炎が絞られすぎ、火炎が当たる箇所の温度が局所的に上がりすぎ、ガラス微粒子堆積体の径変動が大きくなる。
【0041】
比較例及び実施例1,10,11,12の比較により、固定治具の材料はPTFE、PFA、ポリイミドのうち少なくとも一種を含むことで、バーナーの破損を抑制させることができる。バーナーの破損は、固定治具が劣化してバーナーカバーが、バーナーからズレて落下することなどが原因で発生していた。原料ガスとしてSiCl4を用いることにより、チャンバー内は塩酸雰囲気になるため、固定治具として耐熱、耐薬品性に優れた部材を用いることで固定治具の劣化を抑制することができる。
【0042】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変形、改良などが自在である。
【符号の説明】
【0043】
1:バーナー
2:バーナーカバー
3:固定治具
4:ガラス微粒子堆積体
5:出発ロッド
6:反応容器
7:バーナー
8:ガラス微粒子
9:クラッド堆積用バーナー
10:バーナーカバー