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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】針組立体
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/158 20060101AFI20220609BHJP
【FI】
A61M5/158 500P
A61M5/158 500H
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021119373
(22)【出願日】2021-07-20
(62)【分割の表示】P 2016234245の分割
【原出願日】2016-12-01
(65)【公開番号】P2021176556
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2021-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】特許業務法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】三宅 貴子
(72)【発明者】
【氏名】中川 直己
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5779679(US,A)
【文献】国際公開第2010/116832(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0041231(US,A1)
【文献】登録実用新案第3035912(JP,U)
【文献】特開平10-94606(JP,A)
【文献】国際公開第2013/140982(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/158
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空針の針ハブが筒状のハウジングに対して軸方向で移動可能に内挿されていると共に、該ハウジングに対して該中空針が突出した使用位置へ該針ハブを位置決めする係合機構と、該ハウジングに対して該中空針を引込方向へ付勢する付勢手段とを備えており、該係合機構が解除されると該中空針が該ハウジングへ引き込まれて収容される針組立体において、
前記係合機構が、前記ハウジングの筒壁部で径方向に対向位置して設けられた一対の位置決め穴と、前記針ハブから弾性的に突設されて該一対の位置決め穴に対して同時に係止される一対の係止突部とによって構成されており、
該位置決め穴と該係止突部との各基端側における係合面が、何れも外周側に向かうにつれて次第に基端側に向かう傾斜面とされていることを、特徴とする針組立体。
【請求項2】
前記一対の位置決め穴に係止された前記一対の係止突部を前記ハウジングの内方に向けてそれぞれ押圧して係止解除する一対の押付突起を有する一対の可撓性片が、該ハウジングに一体形成されている請求項1に記載の針組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採血や輸血、輸液などの際に皮膚に穿刺されるとともに使用後にハウジングに収容されて保護される針組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、輸液や採血、血液透析を行う際に用いられる針組立体が知られている。この針組立体は、中空針を備えており、当該中空針の基端が針ハブに固定されている。かかる針組立体が患者の血管に穿刺されることで、針ハブに接続されるカヌラなどの外部管路を通じて、輸液や採血、血液透析が実施されるようになっている。
【0003】
ところで、針組立体は、誤穿刺や再使用の防止、或いは廃棄処理の容易化などの目的で、使用後の針先を保護するハウジングを備えているものがある。たとえば、かかるハウジングを備えた針組立体としては、米国特許第5779679号明細書(特許文献1)に記載のものなどがある。
【0004】
すなわち、上記特許文献1に記載の針組立体では、中空針と、当該中空針を固定支持する針ハブと、当該針ハブに軸方向で移動可能に外挿される略筒状のハウジングとを備えている。そして、使用前の初期状態では、これら針ハブとハウジングとが相互に係合することで、ハウジング内に設けられた付勢部材(バネ)が圧縮させられるとともに、中空針がハウジングからの突出状態に保持されている。かかる状態で中空針を患者の血管に穿刺して施術した後、外部からの操作により針ハブとハウジングとの係合を解除し、中空針および針ハブをバネの付勢力によりハウジングに対して基端側に移動させることで、中空針をハウジング内に収容した状態で安全に廃棄することができるようになっている。
【0005】
なお、上記特許文献1に記載の針組立体では、針ハブのハウジングに対する基端側への移動は、針ハブの軸方向中間部分において外側に突出する当接突起(40)が、ハウジング(本体部12)の基端部における開口部(48)に入り込んで係合肩部(47)と相互に当接することで規制されていた。すなわち、本体部の内径寸法は全長に亘って略一定とされていた。
【0006】
ところが、本体部の内径寸法が全長に亘って略一定とされることから、針ハブの当接突起が係合肩部に係止されず、バネの付勢力によっては、中空針および針ハブが、本体部から飛び出してしまうおそれがあった。
【0007】
なお、本体部の内面に、内側に突出する突部を設けることも考えられるが、かかる構造を採用すると、ハウジングの成形型の構造が複雑となり、製造効率が低下するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第5779679号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、ハウジングに対して内側に突出する突部を設けることなく針ハブのハウジングに対する基端側への移動をより確実に規制することができる、新規な構造の針組立体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0011】
【0012】
本発明の第1の態様は、中空針の針ハブが筒状のハウジングに対して軸方向で移動可能に内挿されていると共に、該ハウジングに対して該中空針が突出した使用位置へ該針ハブを位置決めする係合機構と、該ハウジングに対して該中空針を引込方向へ付勢する付勢手段とを備えており、該係合機構が解除されると該中空針が該ハウジングへ引き込まれて収容される針組立体において、前記係合機構が、前記ハウジングの筒壁部で径方向に対向位置して設けられた一対の位置決め穴と、前記針ハブから弾性的に突設されて該一対の位置決め穴に対して同時に係止される一対の係止突部とによって構成されており、該位置決め穴と該係止突部との各基端側における係合面が、何れも外周側に向かうにつれて次第に基端側に向かう傾斜面とされていることを、特徴とするものである。
【0013】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る針組立体であって、前記一対の位置決め穴に係止された前記一対の係止突部を前記ハウジングの内方に向けてそれぞれ押圧して係止解除する一対の押付突起を有する一対の可撓性片が、該ハウジングに一体形成されているものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に従う構造とされた針組立体によれば、係止突部が係止穴に導き入れられる際には、係止穴よりも軸方向前方側の内面(案内面)が、軸方向後方側の内面よりも外周側に位置していることから、係止突部が係止穴に、より確実に係止されて、中空針および針ハブのハウジングからの飛出しが効果的に阻止され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態としての針組立体を使用状態で示す平面図。
図2図1におけるII-II断面図。
図3図2におけるIII-III断面図。
図4図1に示された針組立体を中空針の収容状態で示す平面図。
図5図4におけるV-V断面図。
図6図5におけるVI-VI断面図。
図7】本発明の第2の実施形態としての針組立体を使用状態で示す正面図。
図8図7に示された針組立体の平面図。
図9図7におけるIX-IX断面図。
図10図7に示された針組立体を中空針の収容状態で示す正面図。
図11図10に示された針組立体の平面図。
図12図10におけるXII-XII断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
先ず、図1~3には、本発明の第1の実施形態としての針組立体10が、使用状態で示されている。この針組立体10は、中空針12と、当該中空針12の基端側を固定支持する針ハブ14を備えており、これら中空針12と針ハブ14が筒状のハウジング16に対して軸方向で移動可能に内挿されている。そして、図1~3に示されるように、使用状態では、中空針12の針先18がハウジング16から先端側に突出している一方、使用後には、中空針12および針ハブ14がハウジング16に対して基端側に移動して、中空針12の針先18がハウジング16内に収容されて保護されるようになっている。なお、以下の説明において、軸方向とは、中空針12の針軸方向である図1中の左右方向をいう。また、先端側および前方とは、中空針12の針先18側である図1中の左側をいう一方、基端側および後方とは、針ハブ14に対してカヌラなどの外部管路20が接続される側である図1中の右側をいう。さらに、上下方向とは、図2中の上下方向をいうとともに、左右方向とは、図1中の下上方向をいう。
【0019】
より詳細には、中空針12は、例えば金属製とされており、ステンレス鋼などにより形成されている。この中空針12の針先18は、先細とされて鋭利な形状とされている。なお、中空針12の針先18には貫通孔が形成されて、血液が中空針12内に流入し易くなっていてもよい。
【0020】
また、針ハブ14は、全体として略円筒状とされており、硬質の合成樹脂などにより形成されている。この針ハブ14の軸方向中間部分における内周面には、内周側に突出する環状の位置決め突部22が設けられている。かかる針ハブ14の先端側開口部から中空針12の基端側が挿入されて、中空針12の基端と位置決め突部22とが相互に当接することで、中空針12の基端が位置決めされるようになっている。そして、必要に応じて、中空針12と針ハブ14とが相互に接着などの手段により固着されることにより、針ハブ14の先端に中空針12が固定支持されるようになっている。
【0021】
一方、針ハブ14の基端部分には内径寸法が大きくされた大径部24が設けられており、当該大径部24の基端側開口部からカヌラなどの外部管路20が挿入されている。さらに、必要に応じて接着などの処理が施されることにより、針ハブ14の基端に対して外部管路20が接続されている。そして、これら中空針12と針ハブ14と外部管路20のそれぞれの内孔により、輸液や採血などを行うに際して薬液や血液が流動する流体流路26が構成されている。
【0022】
また、針ハブ14の軸方向中間部分における外周面には、外周側に突出する環状突部28が設けられている。かかる針ハブ14において、環状突部28より基端側の外周面は、左右方向寸法に対して上下方向寸法が大きくされている。すなわち、針ハブ14の外周面において、上下方向両側には、外方に突出する板状の突出板部30,30が形成されており、これら突出板部30,30の形成位置における上下方向寸法が、環状突部28の外径寸法と略等しくされている。換言すれば、針ハブ14の外周面において、上下方向両側には、環状突部28から基端側に連続して延びる突出板部30,30が形成されている。
【0023】
さらに、かかる突出板部30,30の外面には段差32,32が形成されており、突出板部30,30において、当該段差32,32よりも基端側の厚さ寸法(上下方向寸法)が、先端側の厚さ寸法よりも大きくされている。
【0024】
一方、針ハブ14の外周面において、環状突部28よりも基端側には、外方に延び出す一対の弾性突片34,34が設けられている。これら弾性突片34,34は、左右方向両側において、針ハブ14の外周面から軸方向に傾斜して先端側に延び出しており、更にその突出先端には、左右方向外方に突出する係止突部36,36が設けられている。そして、かかる係止突部36,36を含む弾性突片34,34は、軸直角方向(左右方向)で弾性変形が可能とされている。
【0025】
また、ハウジング16は、全体として周壁部38を備える略筒状とされており、硬質の合成樹脂などによる一体成形品として形成されている。このハウジング16の先端部分は、軸方向中間部分や基端部分に比べて小径の円筒形状とされており、その先端には、中央に挿通孔40を有して内周側に突出する環状の前壁部42が形成されている。
【0026】
一方、ハウジング16の軸方向中間部分から基端部分にかけては、上下方向寸法に比べて左右方向寸法が大きくされた横長の形状とされており、本実施形態では、略楕円筒形状とされている。そして、これら先端側の円筒形状部分と基端側の楕円筒部分のそれぞれの周壁によりハウジング16の周壁部38が構成されている。
【0027】
かかるハウジング16の周壁部38の内面44において、軸方向中間部分の上下方向両側には、段差46,46が設けられており、当該段差46,46よりも先端側における周壁部38の厚さ寸法(上下方向寸法)が、段差46,46よりも基端側における周壁部38の厚さ寸法に比べて大きくされている。
【0028】
また、ハウジング16の基端部分において、上下方向両側には、周壁部38を貫通する矩形の貫通窓48,48が形成されている。そして、これら貫通窓48,48の先端側の内周縁部からは、基端側に突出する弾性舌片50,50が一体形成されている。かかる弾性舌片50,50は、周囲の三方が周壁部38に対して連結されておらず、突出基端(貫通窓48,48の先端側の内周縁部)を起点として上下方向で弾性変形可能となっている。また、これら弾性舌片50,50の突出先端(軸方向基端)には、内周側に突出する係合爪52,52が形成されている。なお、ハウジング16に対して中空針12および針ハブ14が組み付けられていない、ハウジング16の単品状態では、係合爪52,52間の上下方向離隔寸法が、針ハブ14の基端部分(突出板部30,30における段差32,32よりも基端側の部分)における上下方向寸法よりも小さくされており、より具体的には、針ハブ14の突出板部30,30における段差32,32よりも先端側の上下方向寸法(環状突部28の外径寸法)と略等しくされている。
【0029】
さらに、ハウジング16の周壁部38において、左右方向両側の軸方向中間部分には、周壁部38を貫通する位置決め穴54,54が形成されている。なお、ハウジング16の内面44において、位置決め穴54,54の基端側に隣接する部分の左右方向幅寸法は、図1などに示される使用状態における係止突部36,36の左右方向最大幅寸法より小さくされている。
【0030】
そして、ハウジング16の周壁部38において、位置決め穴54,54よりも基端側の外周面における左右方向両側には、軸方向に傾斜して先端側に延び出す一対の可撓片56,56が形成されている。これら可撓片56,56は、左右方向内方に向かって撓み変形することが可能とされており、本実施形態では、弾性的な変形が可能とされている。
【0031】
更にまた、可撓片56,56の先端には、押付突起58,58が左右方向内方に向かって突出して形成されている。これら押付突起58,58は、位置決め穴54,54よりも小さい大きさで形成されており、位置決め穴54,54に臨む位置、即ち位置決め穴54,54の外側開口部60,60から左右方向外方に所定距離だけ離隔した位置に設けられている。
【0032】
一方、ハウジング16の周壁部38において、左右方向両側の基端部分、即ち可撓片56,56よりも基端側へ離れた位置には、内面44に開口する一対の係止穴62,62が形成されており、本実施形態では、これら係止穴62,62が周壁部38を貫通して形成されている。特に、本実施形態では、これら係止穴62,62が略矩形状とされているとともに、係止穴62,62の基端側の内面が、基端側に向かうにつれて次第に外周側に傾斜する傾斜面64,64とされている。
【0033】
ここにおいて、ハウジング16の左右方向両側において、係止穴62,62よりも先端側(軸方向前方側)では、周壁部38が基端側に向かって次第に拡開するようにされている。すなわち、ハウジング16の左右方向両側において、可撓片56,56よりも基端側には、基端側に向かうにつれて次第に外周側に傾斜する傾斜壁部66,66が、周壁部38における他の部分と略同じ厚さ寸法をもって形成されており、ハウジング16の内面44のうち、傾斜壁部66,66の内面が、基端側に向かって次第に内径寸法(ハウジング16の横断面である楕円形状の中心からの距離)が大きくなる傾斜面68,68とされている。また、かかる傾斜壁部66,66の基端側に隣接して係止穴62,62が位置している。これにより、ハウジング16の左右方向両側において、係止穴62,62よりも先端側(軸方向前方側)の内面(傾斜面68,68)が、所定の軸方向距離に亘って、係止穴62,62よりも基端側(軸方向後方側)の内面よりも外周側に位置している。すなわち、係止穴62,62よりも先端側に位置する傾斜面68,68が、係止穴62,62よりも基端側に位置する内面のうち左右方向の内面よりも内径寸法が大きくされている。
【0034】
そして、周壁部38における傾斜壁部66,66の内側(左右方向内方側)には、傾斜面68,68の幅方向である上下方向に貫通する貫通孔70,70が形成されており、上記傾斜面68,68により、貫通孔70,70の内面における外周側面が構成されている。すなわち、かかる貫通孔70,70が、傾斜面68,68の幅方向において、傾斜面68,68上を延びて形成されている。これら貫通孔70,70は、平面視において三角形状とされており、貫通孔70,70の開口幅(左右方向幅)が、基端側に向かうにつれて次第に大きくなるようになっている。かかる貫通孔70,70は、ハウジング16の左右方向両側において、係止穴62,62に対して軸方向で連通している。
【0035】
また、本実施形態のハウジング16の先端部分には、翼状部72が取り付けられている。すなわち、翼状部72は、筒状部74と当該筒状部74から左右方向両側に突出する翼本体76,76とを含んで構成されており、筒状部74がハウジング16の先端部分に外嵌されることで、ハウジング16に対して翼状部72が取り付けられている。なお、ハウジング16の上側には、先端側に延びる位置決め凸部78が設けられているとともに、翼状部72における筒状部74の上側には基端側に開口する位置決め凹部80が設けられており、かかる位置決め凹部80に対して位置決め凸部78が挿入されることで、ハウジング16に対して翼状部72が周方向で位置決めされている。
【0036】
以上の如き構造とされたハウジング16に対して中空針12および針ハブ14が内挿されて組み付けられることにより、本実施形態の針組立体10が構成されている。すなわち、ハウジング16の基端側開口部82から、針ハブ14に固定支持された中空針12が挿入されて、図1などに示される使用状態では、ハウジング16の前壁部42に設けられた挿通孔40を通じて針ハブ14の先端および中空針12が、ハウジング16の先端から突出している。
【0037】
これら針ハブ14とハウジング16との間には、中空針12および針ハブ14をハウジング16内への引込方向である基端側に付勢する付勢手段としてのコイルスプリング84が設けられている。すなわち、針ハブ14の先端部分にコイルスプリング84が外挿されており、コイルスプリング84の基端が、針ハブ14の環状突部28に固定されているとともに、コイルスプリング84の先端が、ハウジング16の前壁部42に固定されている。そして、図1などに示される使用状態では、コイルスプリング84が、これら環状突部28と前壁部42との軸方向間において、圧縮状態で配設されており、当該コイルスプリング84の弾性的な復元力により、中空針12および針ハブ14がハウジング16に対して基端側に付勢されている。
【0038】
かかるハウジング16と針ハブ14との組付状態では、針ハブ14に設けられた係止突部36,36がハウジング16の内面44に向かって弾性的に突出しており、ハウジング16に設けられた位置決め穴54,54を通じて外方に突出している。そして、係止突部36,36と位置決め穴54,54における基端側の内周縁部とが相互に当接することにより、係止突部36,36が位置決め穴54,54に係止されている。これにより、図1などに示される使用状態において、中空針12および針ハブ14のハウジング16に対する基端側への変位が規制されている。したがって、位置決め穴54,54に対する係止突部36,36の係合作用によって、中空針12および針ハブ14をハウジング16から突出した使用位置に位置決めして保持する係合機構が構成されている。また、ハウジング16の内面44の上下方向両側に設けられた段差46,46と針ハブ14の上下方向両側に設けられた段差32,32とが軸方向で係合することにより、中空針12および針ハブ14のハウジング16に対する先端側への変位が規制されている。
【0039】
さらに、かかる組付状態では、ハウジング16に設けられた係合爪52,52間の上下方向離隔距離が、針ハブ14の基端部分の上下方向寸法より小さくされていることから、ハウジング16の基端部分の上下方向両側に設けられた弾性舌片50,50が、針ハブ14の基端部分により外周側に押圧されて弾性的に押し広げられている。これにより、弾性舌片50,50には内周側への弾性的な復元力が作用して、弾性舌片50,50および係合爪52,52が内周側へ付勢されており、かかる弾性舌片50,50および係合爪52,52の内周側への変位が、係合爪52,52と針ハブ14の外周面とが相互に当接することにより制限されている。
【0040】
以上の如き構造とされた針組立体10は、中空針12を患者の皮膚に穿刺することで流体流路26内に血液や薬液が流動せしめられて、採血や輸液がなされる。そして、採血や輸液の後に、中空針12および針ハブ14をハウジング16に対して基端側に移動せしめることで、図4~6に示されるように、中空針12の針先18がハウジング16内に収容および保護されて、針組立体10が安全に廃棄され得る。
【0041】
すなわち、採血や輸液の終了後に、ハウジング16に設けられた可撓片56,56を左右方向内方に押圧して、押付突起58,58を位置決め穴54,54から突出する係止突部36,36に押し付けることで、係止突部36,36を含む弾性突片34,34が内周側に弾性変形せしめられる。これにより、係止突部36,36と位置決め穴54,54とから構成される係合機構の係合が解除されて、コイルスプリング84による付勢力に従って中空針12および針ハブ14がハウジング16に対して基端側に自動的に移動せしめられ、中空針12および針ハブ14がハウジング16内に引き込まれて収容される。その際、係止突部36,36には、外周側への弾性的な復元力が作用して、ハウジング16の内面44に対して当接しながら基端側に摺動せしめられる。
【0042】
そして、係止突部36,36が、ハウジング16の基端部分に設けられた係止穴62,62に至ることで弾性突片34,34が外周側に復元変形して、係止突部36,36が係止穴62,62に入り込むとともに、係止突部36,36が係止穴62,62における基端側の内面である傾斜面64,64に当接することで、係止突部36,36が係止穴62,62に係止せしめられる。これにより、図4~6に示される中空針12および針ハブ14のハウジング16内への引込位置において、ハウジング16に対する中空針12および針ハブ14の基端側への移動が規制される。
【0043】
また、かかる収容状態(引込状態)では、ハウジング16の係合爪52,52が、針ハブ14の外面に設けられた段差32,32を通過することで、内周側に復元変形せしめられる。これにより、図5に示されるように、係合爪52,52は、針ハブ14の突出板部30,30における段差32,32よりも先端側の外面と当接して、係合爪52,52と段差32,32とが軸方向で係合することで、ハウジング16に対する中空針12および針ハブ14の先端側への移動が規制されて、中空針12のハウジング16からの再突出が防止されるようになっている。
【0044】
ここで、中空針12および針ハブ14のハウジング16への引込みに伴って係止突部36,36がハウジング16の内面44に摺接しながら基端側に移動する際に、ハウジング16の内面44のうち、傾斜壁部66,66の内面は、基端側に向かって次第に外周側に傾斜する傾斜面68,68とされていることから、係止突部36,36が当該傾斜面68,68を通過する際には、次第に外周側に復元変形しながら基端側に移動することとなる。そして、係止穴62,62よりも基端側の内面に比べて先端側の内面(傾斜面68,68)の方が、左右方向の内径寸法が大きくされていることから、係止突部36,36は、係止穴62,62に至る以前に、係止穴62,62よりも基端側の内面における左右方向内径寸法よりも左右方向寸法が大きくされる。これにより、係止突部36,36をより確実に係止穴62,62に導き入れることができるようになっており、本実施形態では、係止突部36,36を係止穴62,62に導くための案内面が、傾斜面68,68により構成されている。かかる傾斜面(案内面)68,68を採用することにより、コイルスプリング84による付勢力に従って中空針12および針ハブ14がハウジング16に対して勢いよく基端側に移動したとしても、係止突部36,36がより確実に係止穴62,62に係止されて、例えば針ハブ14の基端側への移動が規制されることなくハウジング16から針ハブ14が抜け出すなどのおそれが回避され得る。
【0045】
なお、上記のように、係止穴62,62の先端側の内面が、基端側に向かうにつれて次第に外周側へ傾斜する傾斜面68,68とされることにより、中空針12および針ハブ14がハウジング16に対して先端側へ移動して中空針12がハウジング16から再突出し易くなるが、本実施形態では、係合爪52,52と段差32,32とが軸方向で係合することで、中空針12および針ハブ14のハウジング16に対する先端側への移動が規制されている。これにより、中空針12および針ハブ14がハウジング16に対して基端側だけでなく先端側へも変位することが不能とされており、中空針12におけるハウジング16内への収容状態が安定して維持され得る。
【0046】
以上の如き構造とされた針組立体10は、中空針12および針ハブ14のハウジング16に対する基端側への移動が、前記特許文献1に記載のように、ハウジングの内面に突部を設けて規制するものでなく、針ハブ14に設けられた係止突部36,36がハウジング16の周壁部38に設けられた係止穴62,62に係止されることで規制されるものであることから、針ハブ14の基端部分、および当該針ハブ14の基端部分に接続される外部管路20における径寸法が小さくなることが回避されて、流体流路26を通じての血液や薬液の流動が安定して実現され得る。
【0047】
また、針ハブ14から外周側に突出する弾性突片34,34は、ハウジング16内を基端側に移動する際に、左右方向内方に弾性変形せしめられることから、針ハブ14およびハウジング16の左右方向寸法が大きくなることが回避されて、針組立体10が大型化することが効果的に防止され得る。
【0048】
また、本実施形態の傾斜面(案内面)68,68を構成する傾斜壁部66,66が、ハウジング16の周壁部38における他の部分と略同じ厚さ寸法を有していることから、例えば傾斜面(案内面)68,68の形成位置において、強度が低下することが回避され得る。さらに、傾斜壁部66,66の内側(左右方向内方)には、上下方向に貫通する貫通孔70,70が形成されていることから、ハウジング16を型成形により製造する際に、貫通孔70,70を通じて型抜きすることができて、ハウジング16を一体成形品として形成することができる。また、かかる貫通孔70,70を、例えば係止穴62,62と軸方向で重なる位置に形成することで、貫通孔70,70を通じて、係止突部36,36の係止穴62,62への係止状態を外部から視認することも可能となる。
【0049】
更にまた、本実施形態では、中空針12をハウジング16から突出した使用位置に位置決めする係合機構が、係止突部36,36と位置決め穴54,54を含んで構成されていることから、係止突部36,36を、中空針12および針ハブ14の基端側への移動防止だけでなく、使用位置での中空針12および針ハブ14の保持にも巧く利用することができて、構造の簡略化が図り得る。特に、針ハブ14とハウジング16との間には、中空針12および針ハブ14をハウジング16の基端側に付勢するコイルスプリング84が設けられていることから、押付突起58,58を左右方向内方に押し込んで係止突部36,36と位置決め穴54,54との係合を解除することで、ワンタッチで中空針12をハウジング16内に収容することができる。
【0050】
次に、図7~9には、本発明の第2の実施形態としての針組立体90が示されている。本実施形態では、ハウジング92の形状が、前記第1の実施形態とは異ならされている一方、ハウジング92以外の形状は、前記第1の実施形態と同様とされている。なお、本実施形態において、前記第1の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に、前記第1の実施形態と同一の符号を付すことにより、詳細な説明を省略する。
【0051】
すなわち、本実施形態のハウジング92では、周壁部94の基端部分における左右方向両側において、周壁部94を貫通して、一対の係止穴96,96が形成されている。これらの係止穴96,96は、正面視において略矩形状とされており、当該係止穴96,96の先端側の内周縁部からは、基端側に突出する可撓壁部98,98が形成されている。すなわち、これら可撓壁部98,98よりも基端側が、実質的に周壁部94を貫通する係止穴96,96とされている。当該可撓壁部98,98は、周囲の三方が周壁部94に連結されておらず、突出基端(係止穴96,96の先端側の内周縁部)を起点として左右方向で撓み変形が可能とされており、本実施形態では、弾性的な変形が可能とされている。特に、本実施形態では、周壁部94の内面100が軸方向で略一定の形状とされている一方、可撓壁部98,98が、周壁部94の他の部分よりも外側から薄肉とされることで、左右方向での弾性変形が可能とされている。なお、本実施形態においても、ハウジング92は、硬質の合成樹脂による一体成形品とされている。
【0052】
以上の如きハウジング92を採用することにより、係止突部36,36と位置決め穴54,54との係合を解除して中空針12および針ハブ14をハウジング92に対して基端側に移動させる際には、係止突部36,36がハウジング92の内面100に摺接して可撓壁部98,98に至ることで、係止突部36,36の左右方向外方への弾性的な復元力に従って、可撓壁部98,98が係止突部36,36により左右方向外方に押圧される。これにより、可撓壁部98,98が左右方向外方に変形せしめられて、周壁部94の内面100のうち、可撓壁部98,98の内面102,102が、左右方向の内径寸法が大きくされる。すなわち、可撓壁部98,98が左右方向外方に変形させられることで、これら可撓壁部98,98の内面102,102により係止穴96,96の基端側の内面より左右方向の内径寸法の大きい拡径面が構成されている。
【0053】
そして、可撓壁部98,98が左右方向外方に変形せしめられることにより、係止突部36,36が弾性的な復元作用に従ってその左右方向幅寸法が、係止穴96,96の基端側の内面よりも大きくされる。かかる状態で、更に基端側に変位せしめられることにより、図10~12に示されるように、係止突部36,36が係止穴96,96に入り込んで、係止突部36,36と係止穴96,96の基端側の内面である傾斜面64,64とが当接することで、中空針12および針ハブ14のハウジング92に対する基端側への移動が防止され得る。すなわち、中空針12および針ハブ14がハウジング92に対して基端側へ移動する際に、係止突部36,36が係止穴96,96に、可撓壁部98,98の内面(拡径面)102,102により導き入れられるようになっており、本実施形態では当該内面(拡径面)102,102により案内面が構成されている。
【0054】
なお、本実施形態では、可撓壁部98,98が弾性を有していることから、係止突部36,36の内面(拡径面、案内面)102,102の通過後は、可撓壁部98,98が初期形状に復元変形するようになっており、初期位置に復元した可撓壁部98,98の突出先端面(軸方向基端面)と係止突部36,36とが軸方向で当接することにより、中空針12および針ハブ14のハウジング92に対する先端側への移動が防止されるようになっている。これにより、中空針12のハウジング92からの再突出が防止されて、中空針12がハウジング92内に安定して収容および保護されるようになっている。
【0055】
以上の如き構造とされた本実施形態の針組立体90においても、前記第1の実施形態の針組立体10と同様の効果が発揮され得る。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良などを加えた態様で実施可能である。
【0057】
たとえば、前記第1の実施形態では、案内面が、基端側に向かって次第に外周側に傾斜する傾斜面68,68によって構成されていたが、基端側に向かって外側に段階的に広がるようになっていてもよい。
【0058】
さらに、前記第1の実施形態では、ハウジング16において可撓片56,56と係止穴62,62との軸方向間に傾斜壁部66,66が設けられて、その内面(傾斜面68,68)により案内面が構成されており、また、前記第2の実施形態では、ハウジング92の基端部分に可撓壁部98,98が設けられて、その内面102,102により案内面が構成されていたが、かかる態様に限定されず、例えば係止穴よりも先端側の略全長において案内面が設けられるなどしてもよい。すなわち、ハウジングにおける係止穴よりも先端側の内面において、少なくとも係止穴の開口縁部に、係止穴よりも基端側の内面よりも外周側に位置する案内面が設けられればよい。
【0059】
また、前記第1の実施形態においても、前記第2の実施形態のように、係止突部が内周側から当接することで、外周側に撓み変形(弾性変形)するようになっていてもよい。
【0060】
さらに、前記実施形態では、係止突部36,36が位置決め穴54,54に係止されることで、中空針12および針ハブ14を使用位置に保持する係合機構が構成されていたが、かかる態様に限定されるものではなく、例えば係止突部を利用することなく、係合機構を別途設けてもよい。
【0061】
更にまた、前記第2の実施形態では、ハウジング92が一体成形品とされて、周壁部94の他の部分よりも薄肉とされることで可撓壁部98,98が構成されていたが、例えば可撓壁部を変形し易い材質で別体として形成して、ハウジングに後固着してもよい。かかる場合には、可撓壁部の厚さ寸法は周壁部と等しくされてもよい。
【0062】
また、前記第2の実施形態において、可撓壁部98,98は弾性的な変形が可能とされていたが、かかる態様に限定されるものではなく、係止突部の拡径面(案内面)の通過後において、可撓壁部は初期位置に復元しなくてもよい。かかる場合には、前記第1の実施形態の係合爪52,52のように中空針および針ハブのハウジングに対する先端側への移動を防止する機構を別途採用することにより、中空針のハウジングからの再突出が防止され得る。尤も、前記第1の実施形態において、傾斜壁部66,66の基端と係止突部36,36とが軸方向で当接することで中空針12および針ハブ14のハウジング16に対する先端側への移動が防止される場合は、係合爪52,52などは設けられなくてもよい。
【0063】
さらに、前記実施形態では、係止穴62,62(96,96)は、周壁部38(94)を貫通して形成されていたが、内面に開口する有底の穴形状とされてもよい。
【0064】
更にまた、前記実施形態では、弾性突片34,34、係止突部36,36、位置決め穴54,54、係止穴62,62(96,96)、押付突起58,58、案内面(傾斜面68,68、内面102,102)などはそれぞれ一対設けられていたが、それぞれ1つでもよい。
【0065】
また、前記実施形態では、ハウジング16(92)に翼状部72が取り付けられていたが、本発明において、翼状部は必須なものではない。
【0066】
さらに、前記実施形態では、ハウジング16,92が硬質の合成樹脂による一体成形品とされていたが、例えば案内面を構成する傾斜壁部や可撓壁部を別体で形成して周壁部に後固着してもよいし、係止穴よりも先端側と基端側を別体で形成して後固着するなどしてもよい。
【0067】
なお、前記実施形態では、ハウジング16,92が横長の略楕円筒形状とされていたが、例えば横長の略矩形筒形状とされてもよい。かかる場合には、前記第2,3,5の態様中に記載された「内径」または「径」という文言は、ハウジングの左右方向における内面とハウジングの横断面である矩形筒の中心との左右方向距離とみなされる。尤も、ハウジングは横長形状に限定されるものではなく、円筒形状や横断面が正方形とされた筒形状でもよい。
【0068】
本発明はもともと以下に記載の発明を含むものであり、その構成および作用効果に関して、付記しておく。
本発明は、
(i) 中空針の針ハブが筒状のハウジングに対して軸方向で移動可能に内挿されていると共に、該ハウジングに対して該中空針が突出した使用位置へ該針ハブを位置決めする係合機構と、該ハウジングに対して該中空針を引込方向へ付勢する付勢手段とを備えており、該係合機構が解除されると該中空針が該ハウジングへ引き込まれて収容される針組立体において、前記ハウジングの内面に開口する係止穴が設けられている一方、前記針ハブから該ハウジングの内面に向かって弾性的に突出する係止突部が設けられており、前記中空針の前記ハウジングへの引込位置で該係止突部が該係止穴に係止されて該中空針の該ハウジングからの再突出が防止されるようになっていると共に、該中空針の該ハウジングへの引き込みに伴って該係止突部が該係止穴に向かって摺接する該ハウジングの該係止穴よりも軸方向前方側の内面が、少なくとも該係止穴の開口縁部において、該ハウジングにおける該係止穴の軸方向後方側の内面よりも外周側に位置して該係止突部を該係止穴に導き入れる案内面とされていることを、特徴とする針組立体、
(ii) 前記ハウジングにおいて、前記係止穴よりも軸方向前方側に位置して前記係止突部が摺接される内面が、該係止穴よりも軸方向後方側の内面に比して、大きな内径面とされることによって前記案内面が構成されている(i)に記載の針組立体、
(iii) 前記ハウジングにおいて、前記係止穴よりも軸方向前方側に位置して前記係止突部が摺接される前記案内面が、該係止穴が位置する軸方向後方側に向かって次第に内径が大きくなる傾斜面とされている(ii)に記載の針組立体、
(iv) 前記ハウジングの周壁部において、前記中空針の引込方向に対して略直角となる前記案内面の幅方向に向かって貫通する貫通孔が該案内面上を延びて設けられている(ii)又は(iii)に記載の針組立体、
(v) 前記ハウジングにおいて、前記係止穴よりも軸方向前方側に位置して前記係止突部が摺接される前記案内面が、変形可能な可撓壁部で構成されており、該案内面に摺接して該係止穴に向かって移動する該係止突部が該可撓壁部に押し付けられることで該可撓壁部が外方に向かって変形する拡径面とされている(i)~(iv)の何れか一項に記載の針組立体、
(vi) 前記ハウジングの周壁部が、前記案内面を構成する部分において薄肉とされることで前記可撓壁部が構成されている(v)に記載の針組立体、
(vii) 前記ハウジングにおいて、前記係止穴よりも軸方向前方側に位置する部分と軸方向後方側に位置する部分とが一体成形された単一部品で構成されている(i)~(vi)の何れか一項に記載の針組立体、
(viii) 前記針ハブにおいて、軸方向に傾斜して外方に延び出す一対の弾性突片が設けられていると共に、各該弾性突片の先端部分に前記係止突部が設けられている一方、前記ハウジングの周壁部には、前記係止穴よりも軸方向先端側へ離れた位置に位置決め穴が設けられており、該位置決め穴に対する該係止突部の係合作用によって、前記中空針を該ハウジングから突出した前記使用位置へ保持する前記係合機構が構成されている(i)~(vii)の何れか一項に記載の針組立体、
(ix) 前記位置決め穴が前記ハウジングの周壁部を貫通している一方、該位置決め穴の外側開口部に臨む押付突起を備えた可撓片が該ハウジングに設けられており、前記針ハブに設けられて該位置決め穴に係合された前記係止突部を、該ハウジングの外周側から該押付突起で押し込むことで該係止突部の該位置決め穴への係合が解除されるようになっている(viii)に記載の針組立体、
に関する発明を含む。
上記(i)に記載の発明では、係止突部が針ハブからハウジングの内面に向かって弾性的に突出しており、中空針がハウジング内へ引き込まれる際には、この係止突部が内周側に弾性変形せしめられて、ハウジングの内面へ摺接しながら基端側へ移動することとなる。そして、かかる係止突部がハウジングに設けられた係止穴に至ることで係止突部が復元変形して、係止突部が係止穴に係止されることで、中空針のハウジングからの再突出が防止されるようになっている。特に、係止穴の軸方向前方側の内面が、係止穴の軸方向後方側の内面よりも外周側に位置して係止突部を係止穴に導き入れる案内面とされていることから、係止突部は、係止穴に至る以前に係止穴より外周側まで復元変形させられることとなり、付勢部材の付勢力により中空針および針ハブが勢いよく基端側へ移動したとしても、係止突部の係止穴への係止がより確実に達成され得る。
上記(ii)に記載の発明では、ハウジングにおける係止穴よりも軸方向前方側の内面の内径寸法が、係止穴よりも軸方向後方側の内面の内径寸法よりも大きくされていることから、係止突部が係止穴に至る以前に、より確実に係止突部を係止穴よりも外周側まで復元変形させることができる。特に、案内面を構成するに際して、例えばハウジングの周壁部の肉厚寸法が小さくなるものでないことから、ハウジングの強度も十分に確保され得る。
上記(iii)に記載の発明では、案内面が軸方向後方側に向かって次第に内径寸法が大きくなる傾斜面とされていることから、係止突部の復元変形がスムーズに生じて、使用者による中空針のハウジング内への引込操作が良好に達成され得る。
上記(iv)に記載の発明では、ハウジングの周壁部には、案内面の幅方向に向かって貫通する貫通孔が案内面上を延びて設けられていることから、ハウジングを型成形で製造するに際して、貫通孔を通じて成形型を型抜きすることができて、ハウジング、ひいては針組立体の製造効率の向上が図られ得る。また、貫通孔の大きさを適宜調節することで、貫通孔を通じて、係止突部の係止穴への係止状態を外部から視認することも可能となる。
上記(v)に記載の発明では、係止突部が可撓壁部の案内面に押し付けられることで可撓壁部が外方に向かって変形せしめられて、案内面(拡径面)の内径寸法が、係止穴の軸方向後方側の内面の内径寸法よりも大きくされる。これにより、係止突部が係止穴に至る以前に係止穴より外周側まで復元変形させられることとなり、係止突部の係止穴への係止がより確実に達成され得る。
上記(vi)に記載の発明では、可撓壁部が、ハウジングの周壁部において案内面を構成する部分が薄肉とされることで構成されていることから、簡単な構成をもって可撓壁部が形成されて、ハウジング、ひいては針組立体の製造効率の向上が図られ得る。
上記(vii)に記載の発明では、係止穴よりも軸方向前方側に位置する部分と軸方向後方側に位置する部分とが一体成形された単一部品で構成されていることから、ハウジングが少ない部品点数をもって形成され得て、例えばハウジングの全体を単一部品で構成することも可能となる。特に、例えば前記特許文献1では、ハウジングの内面に突部を設けて中空針および針ハブの移動を規制する機構を採用していたことから、ハウジングが2部品により構成されていたが、本態様では、このような構造に比べて部品点数を削減することができて、ハウジング、ひいては針組立体の製造効率の向上を図ることができる。
上記(viii)に記載の発明では、一対の係止突部と一対の位置決め穴との係合作用によって中空針がハウジングから突出する使用位置に保持される。すなわち、中空針を使用位置からハウジング内の収容位置へ移動させるには、それぞれ一対設けられた係止突部と位置決め穴との係合の解除が必要となることから、例えば係止突部と位置決め穴がそれぞれ1つしか設けられない場合に比べて、意図せず係止突部と位置決め穴との係合が解除されて中空針がハウジング内に収容されてしまうということが効果的に防止されて、中空針が使用位置でより安定して保持され得る。
上記(ix)に記載の発明では、ハウジングに設けられた押付突起で係止突部を内周側に押し込むことで、係止突部と位置決め穴との係合が解除される。特に、本態様の針組立体は中空針を引込方向に付勢する付勢手段を備えていることから、係止突部と位置決め穴との係合を解除することで中空針は自動的にハウジング内に引き込まれることとなり、ワンタッチでの操作が可能となる。
更にまた、本発明は、以下に記載の本発明の原出願に係る発明を含むものであり、その構成に関して、付記しておく。
本発明の原出願は、
(1) 中空針の針ハブが筒状のハウジングに対して軸方向で移動可能に内挿されていると共に、該ハウジングに対して該中空針が突出した使用位置へ該針ハブを位置決めする係合機構と、該ハウジングに対して該中空針を引込方向へ付勢する付勢手段とを備えており、該係合機構が解除されると該中空針が該ハウジングへ引き込まれて収容される針組立体において、前記ハウジングの内面に開口する係止穴が設けられている一方、前記針ハブから該ハウジングの内面に向かって弾性的に突出する係止突部が設けられており、前記中空針の前記ハウジングへの引込位置で該係止突部が該係止穴に係止されて該中空針の該ハウジングからの再突出が防止されるようになっていると共に、該中空針の該ハウジングへの引き込みに伴って該係止突部が該係止穴に向かって摺接する該ハウジングの該係止穴よりも軸方向先端側の内面が、少なくとも該係止穴の開口縁部において、該ハウジングにおける該係止穴の軸方向基端側の内面よりも外周側に位置していると共に、該ハウジングにおいて、前記係止穴よりも軸方向先端側に位置して前記係止突部が摺接される内面が、該係止穴が位置する軸方向基端側に向かって次第に外周側へ広がる傾斜面をもって該係止突部を該係止穴に導き入れる案内面とされていることを、特徴とする針組立体、
(2) 前記ハウジングにおいて、前記係止穴よりも軸方向先端側に位置して変形可能な可撓壁部が設けられており、前記中空針の引き込みに際して該ハウジングの内面に摺接して該係止穴に向かって移動する該係止突部が該可撓壁部に押し付けられて該可撓壁部が外方に向かって変形することで、該係止穴の前記開口縁部における軸方向先端側の内面の位置が設定される(1)に記載の針組立体、
(3) 前記ハウジングの周壁部が部分的に薄肉とされることで前記可撓壁部が構成されている(2)に記載の針組立体、
に関する発明を含む。
【符号の説明】
【0069】
10,90:針組立体、12:中空針、14:針ハブ、16,92:ハウジング、34:弾性突片、36:係止突部、38,94:周壁部、44,100:内面、56:可撓片、58:押付突起、60:外側開口部、62,96:係止穴、68:傾斜面(案内面)、70:貫通孔、84:コイルスプリング(付勢手段)、98:可撓壁部、102:内面(拡径面、案内面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12