(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】異物をろ過する原子燃料集合体下部ノズル
(51)【国際特許分類】
G21C 3/33 20060101AFI20220609BHJP
G21C 3/322 20060101ALI20220609BHJP
G21C 3/30 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
G21C3/33 400
G21C3/322
G21C3/30 130
(21)【出願番号】P 2019549561
(86)(22)【出願日】2018-03-16
(86)【国際出願番号】 US2018022920
(87)【国際公開番号】W WO2018170428
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-02-08
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】アレシン、アルテム
(72)【発明者】
【氏名】ヒューゲル、デヴィッド、エス
(72)【発明者】
【氏名】クリアリー、ウィリアム
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-090459(JP,A)
【文献】特開平09-101385(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0272477(US,A1)
【文献】特開2002-296379(JP,A)
【文献】実開平07-020595(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/30-3/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉の燃料集合体(10)の下部ノズル(12)に使用される基部(104)であって、
頂面(104b)と、
底面(104a)と、
当該底面と当該頂面の間を
延びる複数の垂直な
壁(106)とを具備し、当該複数の垂直な
壁は当該底面と当該頂面の間で当該基部を貫通する複数の非円形流路(109)を画定
し、
当該基部は、当該頂面から延び、当該複数の流路のうちの対応する1つの流路をカバーする複数の異物フィルタ(140)をさらに具備し、当該複数の異物フィルタの各々は格子構造(142)を有しており、当該複数の異物フィルタは、当該燃料集合体の複数の燃料棒の間を、当該燃料集合体の複数の燃料棒の下端部に沿って延びるように構成されている
ことを特徴とする基部(104)。
【請求項2】
請求項1の基部であって、
各々が前記垂直な
壁の交差部に
よって画定され、当該交差部の厚さは前記垂直な壁の厚さよりも大きい、複数の厚壁領域(107)と、
各々が対応する厚壁領域に位置する複数の流路孔(108)と
をさらに具備する請求項1の基部。
【請求項3】
前記流路孔の各々は、前記基部の前記底面に位置するテイパー付き流入口(108a)と、前記基部の前記頂面に位置するテイパー付き流出口(108b)とを具備することを特徴とする、請求項2の基部。
【請求項4】
各々が当該ばね部材の対応する
垂直な壁の上縁から上方に延びる高さ(h2)の複数のばね部材(120)をさらに具備し、各ばね部材は前記燃料集合体の2本の燃料棒(102)に係合する構成であることを特徴とする、請求項3の基部。
【請求項5】
前記ばね部材の各々は、前記2本の燃料棒のうちの一方と係合する構成の第1のばね状付勢部分(122)と、当該第1のばね状付勢部分に対向し、前記2本の燃料棒のうちのもう一方と係合する構成の第2のばね状付勢部分(124)とを含むことを特徴とする、請求項4の基部。
【請求項6】
前記第1のばね状付勢部分および前記第2のばね状付勢部分はいずれもほぼ弓状である、請求項5の基部。
【請求項7】
前記異物フィルタの各々は、格子構造(142)を有する、中空で角錐状または円錐状の構造体より成
る、請求項
1の基部。
【請求項8】
前記異物フィルタの各々の前記格子構造は、前記基部の真上または真下から見ると正方形の格子状パターン配列である、請求項
1の基部。
【請求項9】
前記基部および前記複数のばね部材は単体として形成される、請求項4の基部。
【請求項10】
前記基部および前記複数の異物フィルタは単体として形成される、請求項
1の基部。
【請求項11】
前記基部、前記複数の異物フィルタおよび前記複数のばね部材は単体として形成される、請求項
4の基部。
【請求項12】
原子炉の燃料集合体に使用する下部ノズル組立体であって、
ほぼ矩形のスカート部と、
当該ほぼ矩形の
スカート部に結合された請求項1
の基部と
を具備する下部ノズル組立体。
【請求項13】
原子炉に使用される燃料集合体であって、
請求項
12の下部ノズル組立体と、
上部ノズルと、
当該下部ノズルと当該上部ノズルの間を長手方向に延びてそれらに結合された多数の案内管と、
当該上部ノズルと当該下部ノズルの間を延びる細長い燃料棒のアレイと
を具備する燃料集合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)の下で、参照により本願に組み込まれる2017年3月17日出願の米国仮特許出願第62/472,983号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は概して原子炉に関し、具体的には、加圧水型原子炉(PWR)に使用されるような原子燃料集合体の異物をろ過する下部ノズルに関する。
【背景技術】
【0003】
原子炉冷却材循環系の構成機器の製造時およびその後の設置並びに修理時に、原子炉容器およびさまざまな運転条件下で冷却材を原子炉容器に循環させる関連系統からすべての異物を確実に排除するべく鋭意努力が払われる。異物を確実に除去する目的で念入りな手順が実施されるが、そうした除去を完璧に行うための万全の措置を講じているにもかかわらず、少量の金属片や金属粒子などの異物が依然として系統内に残ることが経験によりわかっている。ほとんどの異物は金属の削りくずであるが、それはおそらく、蒸気発生器の修理もしくは交換後に、または燃料交換時に行われる同様のプラント機器改修後に、一次系内に取り残されたものである。プラント運転時にこの種の異物が燃料領域に入り込まないようにすることが望ましい。
【0004】
特に問題となる燃料集合体の損傷は、これまでいくつかの原子炉で見つかっている、最下部の支持グリッドで捕捉される異物によるものである。異物は、プラント起動時に、下部炉心支持板の冷却材流れ開口から燃料集合体下部ノズルの流路孔を経て侵入する。異物は、燃料集合体の最下部の支持グリッドの「卵箱」形セルの壁と燃料棒被覆管の下端部との間の空間に捕捉されやすい。損傷の内容は、燃料棒被覆管の外面に異物が接触して起こるフレッチングによる被覆管の貫通孔である。また、下部ノズルの流路孔に引っ掛かった異物が冷却材の流れの中で旋回することにより、燃料棒被覆管に裂け目が生じる傾向がある。
【0005】
原子炉から異物を除去するためのいくつかの異なる方法が提案され、試みられている。これらの方法の多くは、Mayersらに付与された米国特許第4,096,032号で論じられている。Shallenbergerらに付与された米国特許第4,900,507号には、別の方法が記載されている。上記特許に記載された方法はいずれもそれなりによい結果をもたらし、それぞれ意図された使用条件の範囲内でほぼ目的を達成するが、原子炉内の異物ろ過の問題に対する新たな解決策が今も求められている。新しい方法は、原子炉構成機器の既存の構造および作動に適合し、原子炉の運転サイクルを通して実効性があり、少なくとも原子炉にかかる費用を上回る総合的な便益を提供するものでなければならない。
【発明の概要】
【0006】
本願で説明する実施態様は、加圧水型原子炉(PWR)に使用されるような燃料集合体向けの異物捕捉機能を改良するものであり、この改良による下部ノズルの圧力降下の減少は既存設計の下部ノズルに比べて最小限に抑えられる。本発明の実施態様は、流路を層流が流れるようにして圧力損失係数を小さくする設計が含まれる独特の構成の異物捕捉部分を利用する。この設計は、標準的な商用PWRが通常の運転条件下にあるときの状態に付随する流量が大きめのときに特に効果的である。本発明の実施態様には、燃料棒の下端部を保持する機能も組み込まれている。既存設計の燃料の多くは、この機能を、燃料棒の端部を保持するだけでなく異物を捕捉させる目的で下部ノズルの直上に戦略的に配置された支持グリッドに担わせている。本発明の実施態様では、下部ノズルに組み込んだ可撓性ばねが燃料棒の端部を拘留するので、支持グリッドを下部ノズルの直上に配置する必要がない。この一体型の方法は、下部ノズル、したがって燃料集合体の全体設計を改良するものである。
【0007】
一実施態様では、原子炉の燃料集合体の下部ノズルに用いる基部が提供される。当該基部は、頂面と、底面と、ほぼ正方形の格子状パターン配列の複数の垂直な壁部分とより成り、当該ほぼ正方形の格子状パターン配列の複数の垂直な壁部分は当該底面と当該頂面の間で当該基部を貫通する複数の非円形流路を画定する。
【0008】
当該基部は、各々が垂直な壁部分の交差部に位置する複数の厚壁領域と、各々が対応する厚壁領域に位置する複数の流路孔とをさらに具備してもよい。
【0009】
当該流路孔の各々は、当該基部の当該底面に位置するテイパー付き流入口と、当該基部の当該頂面に位置するテイパー付き流出口とを具備してもよい。
【0010】
当該基部は、各々が対応する壁部分の上縁から或る高さだけ上方に延びて、当該燃料集合体の2本の燃料棒に係合する構成の複数のばね部材をさらに具備してもよい。
【0011】
当該ばね部材の各々は、当該2本の燃料棒のうちの一方と係合する構成の第1のばね状付勢部分と、当該第1のばね状付勢部分に対向して、当該2本の燃料棒のうちのもう一方と係合する構成の第2のばね状付勢部分を含んでもよい。
【0012】
当該第1のばね状付勢部分および当該第2のばね状付勢部分は、いずれもほぼ弓状でよい。
【0013】
当該基部は、各々が当該複数の流路のうちの対応する1つの流路をほぼカバーするように当該基部上に配置された複数の異物フィルタをさらに具備してもよい。
【0014】
当該異物フィルタの各々は、格子構造を有する、中空で角錐状または円錐状の構造体より成り、当該格子構造は貫流する冷却材の流れに対する抵抗が最小となるような大きさおよび構成を有し、当該基部から上方に延びるものでよい。
【0015】
当該異物フィルタの当該格子構造は、当該基部の真上または真下から見ると正方形の格子状パターン配列の構成でよい。
【0016】
当該基部と当該複数のばね部材とは、単体として形成してもよい。
【0017】
当該基部と当該複数の異物フィルタとは、単体として形成してもよい。
【0018】
当該基部、当該複数の異物フィルタおよび当該複数のばね部材は、単体として形成してもよい。
【0019】
別の実施態様では、原子炉の燃料集合体に用いる下部ノズル組立体が提供される。当該下部ノズル組立体は、ほぼ矩形のスカート部と、当該ほぼ矩形の基部に結合された前述したような平板状の基部とを具備する。
【0020】
さらに別の実施態様では、原子炉に用いる燃料集合体が提供される。当該燃料集合体は、前述したような下部ノズル組立体と、上部ノズルと、当該下部ノズルと当該上部ノズルの間を長手方向に延びてそれらに結合された多数の案内管と、当該上部ノズルと当該下部ノズルの間を延びる細長い燃料棒のアレイとを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の詳細を、好ましい実施態様を例にとり、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0022】
【
図1】従来型異物フィルタ/下部ノズルを含む従来型燃料集合体を、明示のため部品を破断して垂直方向に短縮した形で示す部分破断立面図である。
【0023】
【
図2】
図1に示す燃料集合体の従来型異物フィルタ/下部ノズルの等角図である。
【0024】
【
図3】下部ノズルの流路板上に配置された例示的な燃料棒(断面を略示)を、当該流路板上の当該燃料棒を取り囲む位置に着座する支持グリッドストラップと共に示す、
図2の異物フィルタ/下部ノズルのほぼ中心部の断面図である。
【0025】
【
図4】本発明の例示的な実施態様のフローアセンブリの代表的部分を示す部分断面等角図である。
【0026】
【
図5】例示的な燃料棒(5本だけ断面を示す)の端部を拘留した状態の、
図4のフローアセンブリの一部を示す等角図である。
【0027】
【
図6】
図5に示すフローアセンブリの断面の正面立面図である。
【0028】
【
図7】燃料棒(略示)の拘留態様を例示する、フローアセンブリの
図4~6に示した部分より大きい部分の上面図である。
【0029】
【
図8】例示的な燃料棒(略示)の端部を拘留した状態の、
図7のフローアセンブリを示す下面図である。
【0030】
【
図9】
図4~8のフローアセンブリの垂直ばね部材を示す等角図である。
【0031】
【0032】
【
図11】
図4~8のフローアセンブリの異物ろ過部分を示す等角図である。
【0033】
【0034】
【
図13】
図11、12の異物ろ過部分を、
図11の線13-13に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下の説明において、同一参照記号は、いくつかの図面を通して同一のまたは対応する部品を指すものである。また、以下の説明において、前方、後方、左、右、上方へ、下方へなどの用語は便宜的な語彙であり、限定的な用語として解釈するものでないことを理解されたい。
【0036】
ここから図面に即して説明すると、
図1は、本発明の実施態様を適用できる参照符号10で総括表示する先行技術の燃料集合体を垂直方向に短縮した形で示す立面図である。燃料集合体10は加圧水型原子炉に用いるタイプであり、下端部に米国特許第4,900,507号に記載されるような異物フィルタ/下部ノズル12を備えた構造躯体を有する。下部ノズル12は、原子炉炉心領域(図示せず)において下部炉心支持板14上に燃料集合体10を支持する。燃料集合体10の構造躯体は、下部ノズル12に加えて、上端部の上部ノズル16と、多数の案内管またはシンブル18とを有する。これらの案内管またはシンブルは、下部ノズル12と上部ノズル16の間を長手方向に延び、両端部はそれらのノズルに剛性的に固着されている。
【0037】
燃料集合体10はさらに、案内シンブル18の軸方向離隔位置に取り付けられた複数の横方向グリッド20と、当該グリッド20により横方向に離隔して支持された細長い燃料棒22の整列アレイとを有する。また、燃料集合体10の中心部には、下部ノズル12と上部ノズル16の間を延びてそれらに取り付けられる炉内計装案内管24がある。このような部品の構成および配置により、燃料集合体10は、構成部品を損傷することなく容易に取り扱うことができる一体型ユニットを形成する。
【0038】
上述したように、燃料集合体10のアレイ状燃料棒22は、燃料集合体の長さ方向に離隔したグリッド20により互いに離隔した関係に保持される。各燃料棒22は原子燃料ペレット26を有し、その両端部は上部端栓28および下部端栓30により閉じられている。ペレット26は、上部端栓28と積み重ねたペレットの最上部との間に位置するプレナムばね32により、積み重ねた形を維持する。核分裂性物質より成る燃料ペレット26は、原子炉の核反応を発生させる元である。水やホウ素含有水などの液状減速材/冷却材は、下部炉心板14の複数の流れ開口(参照番号なし)を上向きに貫流して燃料集合体へ圧送される。燃料集合体10の下部ノズル12を通った冷却材は、燃料棒22に沿って流れ、燃料棒中で発生する熱を吸収して有用な仕事を発生させる。
【0039】
核分裂プロセスを制御するために、多数の制御棒34が、燃料集合体10の所定位置にある案内シンブル18内を往復移動可能である。具体的には、上部ノズル16の上方に配置された棒クラスタ制御機構36により制御棒34が支持される。この制御機構は、内部にねじ溝のある円筒状部材37から複数の鉤またはアーム38が放射状に延びる構成である。各アーム38は制御棒34に相互接続されているため、制御機構36を作動させると、すべて公知の態様で、制御棒が案内シンブル18内で垂直方向に移動し、燃料集合体10の核分裂プロセスを制御することができる。
【0040】
前述したように、最下部のグリッド20の中またはその下方に異物が捕捉されることに起因する燃料集合体の損傷が問題になっている。したがって、そのような損傷の発生を防止するには、かかる異物が下部ノズルの流路孔を通過して燃料棒が束ねられた領域に到達しないようにすることが非常に望ましい。
【0041】
図2に示す従来型下部ノズル12は、ほぼ矩形のスカート部44から複数の隅脚部42が延びる支持手段を有する。隅脚部42は、下部炉心板14上に燃料集合体10を支持する。下部ノズル12はさらに、溶接などによってスカート部44に適当に取り付けられたほぼ矩形の平板46を含む。
図2、3に示すように、従来型下部ノズル12の平板46には、複数の離隔した流路孔48がある。流路孔48は、損傷をもたらすような大きさの異物を「ふるい分けられる」サイズである。そのような設計は、平板46および燃料集合体10を流れる冷却材の流量または圧力降下に有意な影響を及ぼすことなくかかるふるい分けを行うことを意図している。
【0042】
図3の平板46の部分断面図に示す流路孔48の直径は、最下部の支持グリッド20に通常は捕捉されるサイズの異物の通過を阻止する大きさである。異物が小さくて平板の流路孔48を通過できれば、その異物はグリッド20も通過する可能性が高いが、それは、流路孔48の直径が支持グリッド20のセルの非占有空間の最大断面寸法より小さいからである。そのような非占有空間は、通常、支持グリッド20を構成する相互に差し込まれたストラップの隣り合う交差部の隅部の間に存在する。従来型異物フィルタ/下部ノズル12は、支持グリッドのその非占有空間を通過できないサイズの異物は当該フィルタを決して通過できないようにすることにより、燃料棒が異物による損傷を受ける可能性を有意に低減する。従来型異物フィルタ/下部ノズル12は、所期の目的をそれなりに達成するが、まだ改善の余地がある。
【0043】
本発明の実施態様は、
図1~3の従来型異物フィルタ/下部ノズル12の平板46および燃料棒位置決めグリッド20の代わりに、従来型の平板46よりも圧力降下が小さいだけでなくろ過能力が高い装置を使用する。以上では、本発明の実施態様の改良対象である従来型装置を記述してきたが、以下において、ろ過装置100およびその一部をさまざまな角度で表す
図4~13を用いて改良型ろ過装置100の一実施態様を記述する。
【0044】
まず
図4に、改良型ろ過装置100の例示的な実施態様の代表的部分を部分断面等角図で示す。
図5は、ろ過装置100の同一部分であるが、ろ過装置100が使用される
図1に関して前述したような燃料集合体において、複数の燃料棒(2本だけ参照番号を付し、装置100との作用関係を示すため5本だけ断面表示)の端部102がろ過装置100内に拘留された状態を示す。
【0045】
図4、5に加えて、
図6を参照すると、装置100は、使用時にスカート部44(
図1~3に関して前述し、
図6に略示)のようなスカート部に溶接または他の適当な機構によって結合される構成のほぼ平面状の基部104を含む。基部104は、底面104a、頂面104b、および底面104aと頂面104bの間を延びる高さh
1の複数の垂直壁部分106を含む。
図8に示す装置100の下面図におそらく最もわかりやすく示されているように、壁部分106の構成は一般的に、ほぼ正方形の格子状パターン配列であり、この格子状パターン配列の壁部分106は底面104aから基部104を貫通して頂面104bへ延びる複数の非円形流路109を画定する。格子状パターンの壁部分106が交差する領域107は、基部104を垂直方向に貫通するベンチュリ型流路孔108(非限定的な例では直径は約0.020~約0.200インチの範囲)の形成を可能とするように一般的に壁がわずかに厚くなっている。各流路孔は、対応する燃料棒の端部102の下方にあって、中心が燃料棒の中心と一致するよう位置決めされている。本願において「格子状」という用語は、格子模様に類似する要素の配列を意味する。ベンチュリ型流路孔108の各々は、貫流する流体の望ましくない乱流および/または圧力降下を最小限に抑えるように、流入口(108a)および流出口(108b)にテイパーが付けられている。基部104の全般的な構成は、
図8の下面図におそらく最もわかりやすく示されているように、冷却材の流れを妨げる可能性のある領域を最小限に抑えるとともに剛性の基礎を提供するものである。
【0046】
図4~6に加えて、
図7、9、10を参照すると、装置100はさらに、基部104の壁部分106の上縁から上方に延びる高さh
2の複数のばね部材120を具備する。本発明の実施態様では、高さh
2を約0.350~約1.350インチの範囲としているが、本発明の範囲から逸脱せずに高さを変えてもよい。
図9、10に示すように、各ばね部材120は、第1のばね状付勢部分122と、当該第1の部分122に対向する第2のばね状付勢部分124とを具備する。第1の部分122および第2の部分124はいずれもほぼ弓状であり、装置100の上に配置された対応する燃料棒に係合して軽く掴むような配置および構成を有する。
図5~7に示すように、基部104上におけるばね部材120の配置は、4つのばね部材120が各燃料棒102を90度の間隔で取り囲み、各燃料棒102が2組の対向するばね部材120によってわずかに押圧されるようにする。このような構成によると、
図1、3に関して前述したような燃料棒位置決めグリッド20(または他の位置決め要素)の使用が不要になる。
【0047】
図4、7、8および11~13に示すように、装置100はさらに、壁部分106の間の各流路109をほぼカバーするように基部104上に配置される複数の異物フィルタ140を具備する。各異物フィルタ140は一般的に、格子構造142を有する中空で角錐状または円錐状の構造体であり、当該格子構造は貫流する冷却材の流れに対する抵抗したがって圧力降下を最小にするだけでなく、所定サイズ(非限定的な例として約0.040~0.100インチの範囲)を超える大きさの異物が格子構造142によって画定される複数の孔144を通過するのを阻止する大きさおよび構成を有する。本発明の実施態様では、格子構造の幅を約0.005~約0.075インチの範囲、厚さを約0.010~0.100インチの範囲としているが、本発明の範囲から逸脱せずに寸法を変えてもよい。
【0048】
各異物フィルタ140の高さはh
3で、基部104から上方へ延びる。本発明の実施態様では、高さh
3が約0.250~約0.125インチの範囲の異物フィルタを用いているが、本発明の範囲から逸脱せずに高さを変えてもよい。したがって、
図7に示す装置100の上面図において、各異物フィルタ140(4本だけ参照番号を付す)は同図の面から外側へ、すなわち、上方へ延びている。逆に、
図8に示す装置100の下面図では、各異物フィルタ140(2本だけ参照番号を付す)は同図の面から奥の下方へ延びる。
図7の上面図および
図8の下面図からわかるように、異物フィルタ140を構成する格子構造142は、装置100を通る冷却材の全般的な流れに平行な方向で見ると、正方形の格子状パターンを形成する。本発明の実施態様における格子の寸法は約0.250インチ×0.250インチから約1.000インチ×1.000インチの範囲であるが、本発明の範囲から逸脱せずに寸法を変えてもよい。そのような格子状パターンは平面状ではなく、単一面内に収まらない3次元的に「歪ませた」ものである。
【0049】
本発明の例示的な実施態様は、積層造形法によって作製したものである。したがって、基部104、ばね部材120および異物フィルタ140のすべてまたは一部を、単体として形成することができる。実施態様の一例では、直接金属レーザー溶融法がインコネル(R)材料による本発明の装置の作製に使用されている。しかし、本発明の範囲から逸脱せずに、他の適当な方法および/または材料を使用してもよい。
【0050】
したがって、本願の発明は、下部ノズルの本体/支持構造の流れ面積を最大にする層流方式を採用すると共に、異物を捕捉する網目の細かい錐状の構造体を下部ノズルの本体/支持構造の「外側」に展開させる新規で画期的な設計である。現行の下部ノズルの設計では、流路孔を小さくしなければならないことが主因で圧力降下に悪影響が出るが、本発明の構成によると、かかる悪影響を生ぜしめることなく、実効性のある異物捕捉機能を実現できる。それに加え、この先進的な下部ノズルの設計は、燃料棒の最下端を保持する機能も組み込んでいる。既存の燃料設計の多くは、この機能を、異物を捕捉させるだけでなく燃料棒の端部を保持させる目的で下部ノズルの直上に戦略的に配置される支持グリッドに担わせている。網目の細かい錐状の構造体により異物をろ過させるという下部ノズルの先進的な設計に、積層造形法を採用すると、既存の従来型製造法では容易に実現できなかった、異物の捕捉、圧力降下の減少および燃料棒の拘留という下部ノズルに望まれる諸機能を1つの先進的な設計の下部ノズルに統合することができる。したがって、網目の細かい錐状の構造体により異物をろ過させるという下部ノズルの先進的な設計は、原子燃料の設計にとって新規で画期的な設計である。
【0051】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の実施態様は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何ら制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物を含むものである。