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特許7085612コンピュータプロセスを個人的方法で制御するための色等輝度情報の決定
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-08
(45)【発行日】2022-06-16
(54)【発明の名称】コンピュータプロセスを個人的方法で制御するための色等輝度情報の決定
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20220609BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20220609BHJP
   G09G 5/02 20060101ALI20220609BHJP
   G06F 21/32 20130101ALI20220609BHJP
【FI】
A61B3/10
G09G5/00 510
G09G5/02 B
G06F21/32
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020503351
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2018058120
(87)【国際公開番号】W WO2018178258
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-02
(31)【優先権主張番号】1752814
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519353891
【氏名又は名称】アンスティチュ ドゥ セルヴォ エ ドゥ ラ モアル エピニエーレ
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(73)【特許権者】
【識別番号】519353905
【氏名又は名称】アシスタンス パブリケ-オピトー ド パリ
(73)【特許権者】
【識別番号】518079208
【氏名又は名称】ソルボンヌ、ユニベルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】プジェ、ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ジュナン、アレクシ
【審査官】田辺 正樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05141305(US,A)
【文献】特開2008-054996(JP,A)
【文献】特開2008-237492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/16
G06F21/00、21/30-21/46
G09G 5/00-5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータシステムにおけるコンピュータプロセスを制御するための方法(1、30)であって、
ユーザ(2)に関する少なくとも1つの色等輝度情報(g、b)を決定するステップ(50、51、82、83)と、
前記少なくとも1つの色等輝度情報を、コンピュータシステムにおけるコンピュータプロセスの入力データとして使用するステップ(54、85)と、を備え、
前記色等輝度情報を決定するステップは、
前記ユーザに、典型的には2色刺激である少なくとも1つの動的多色刺激を与えるステップ(41)を備え、
前記多色刺激は、前記コンピュータシステムのディスプレイ装置(10)上に、典型的には2色である多色パターンを表示し、
前記多色パターンのうちの少なくとも2つは、マーキング周波数(Ftag)で周期的に反転し、
前記色等輝度情報を決定するステップは、
前記多色パターンを前記ディスプレイ装置上に表示しているときに、2つの色の間の輝度の差を変化させるために、表示された多色パターンのうちの少なくとも1つの色(C)の輝度を変化させて、この色(C)の時間的変化を制御するステップ(41)と、
画像取得装置(20)を用いて、前記多色パターンを前記ディスプレイ装置上に表示しているときに、前記ユーザの少なくとも1つの瞳の振動反応(SIGresp)を取得するステップ(42、43、44)と、
取得した振動反応から、2つの色のうちの少なくとも1つの時間変化および前記2つの色の輝度の差の関数として、前記瞳の振動反応(SIGresp)のパワーを表す信号(SIGpower、APPROXpower)を生成するステップ(46、48)と、
少なくとも1つの色等輝度情報を決定するステップ(49)と、をさらに備え、
前記少なくとも1つの色等輝度情報は、前記パワーを表す信号(SIG power 、APPROX power )の最小値(MIN)に相当する、動的多色刺激における2つの色の色等輝度情報を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記コンピュータプロセスは、前記コンピュータシステムのディスプレイ装置(10)を較正するためのプロセスであり、
当該プロセスにおいて、ピクセル(p )の表示が少なくとも1つの前記決定された色等輝度情報の関数として補正されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
決定された少なくとも1つの色等輝度情報(g、b)は、赤-緑-青の色空間における、赤-緑、赤-青および青-緑のうちの少なくとも1対の色のペアに関し、第1の色(C)に関して決定された値を備え、
このとき第2の色(C)は参照値を取ることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ディスプレイ装置のスクリーンの初期較正のために、第1の色(C)の色等輝度のデフォルト値(gref、bref)が取得され、このとき第2の色(C)は参照値(rref)を取り、
前記ピクセル(p)の補正(54)は、色等輝度のデフォルト値(gref、bref)と、決定された等輝度の値(g、b)との間の差分の値(δ1、δ2)に従って、前記ピクセルの第1の色、または第2の色、または第1および第2の両方の色を調整するステップを備えることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ピクセル(p)の補正(54)は、前記差分の値(δ1、δ2)を用いて、前記ピクセルの第1または第2の色を変化させるステップを含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ピクセル(p)の補正(54)は、前記差分の値(δ1、δ2)および前記ピクセルの第2の色(r)の参照値(rref)からの隔たりの値の両方の関数である値を用いて、前記ピクセルの第1の色を変化させるステップを含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記関数は、前記ピクセルの第2の色の参照値からの隔たりに関して線形であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
赤-緑-青の色空間における、赤-緑、赤-青および青-緑のうちの2つの異なる色ペアに関する2つの色等輝度情報を決定するステップを備え、
当該2つの色等輝度情報の各々は、第1の色(C)に関して決定された値を備え、このとき第2の色(C)は参照値(rref)を取ることを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
【請求項9】
前記ディスプレイ装置(10)のスクリーンのピクセル(p)の補正(54)は、
前記ピクセルを定義する色トリプレットを、前記2つの色ペアに関して取得された2つの差分値(δ1、δ2)に基づき、前記スクリーンの初期較正に従って調整するステップを備え、
前記差分値(δ1、δ2)の各々は、前記色ペアの第1の色に関する色等輝度のデフォルト値と、決定された色等輝度の値との差を表し、このとき第2の色は参照値を取ることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記色トリプレットの調整は、一定のピクセルの輝度で行われることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記色トリプレットの調整は、当該色トリプレットのうちの色成分の1つが一定の値で行われることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの色等輝度情報(g、b)を使うコンピュータプロセスは、ユーザ(2)を認証または証明するためのプロセスであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記決定された少なくとも1つの色等輝度情報(g、b)を、少なくとも1つの対応する参照色等輝度情報(gref、bref)と比較するステップ(85、86)と、
前記色等輝度情報(g、b)と前記参照色等輝度情報(gref、bref)とが一致したときにのみ前記ユーザの認証または証明を認めるステップ(87)と、をさらに備え、
前記参照色等輝度情報(gref、bref)は、前記ユーザ(2)識別子と関連付けてコンピュータシステムのメモリに記憶されていることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
赤-緑-青の色空間における、赤-緑、赤-青および青-緑のうちの2つの異なる色ペアに関する2種類の色等輝度情報(g、b)を決定するステップを備え、
前記2種類の色等輝度情報(g、b)の各々は、第1の色(C)に関して決定された値(g、b)を備え、このとき第2の色(C)は参照値(rref)を取ることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ユーザ(2)に関連する少なくとも1つの参照色等輝度情報(gref、bref)を取得するために、前記ユーザ(2)を特定する予備的なステップ(80)を、前記比較するステップ(85、86)の前段にさらに備えることを特徴とする請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
色等輝度情報(g、b)を決定するステップ(82、83)において典型的には2色である多色パターンの色を時間的に変化させるときの変化値の制限範囲を、取得された前記ユーザの特定に基づいて決定するステップ(84)をさらに備えることを特徴とする請求項12から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
コンピュータシステムにおけるコンピュータプロセスを制御するためのシステム(1)であって、
ユーザ(2)に関する少なくとも1つの色等輝度情報(g、b)を決定するサブシステム(30)と、
前記少なくとも1つの色等輝度情報を、前記コンピュータシステムにおけるコンピュータプロセスの入力データとして使用するように構成されたプロセス制御モジュールと、を備え、
前記色等輝度情報(g、b)を決定するサブシステムは、
ディスプレイ装置(10)と、
典型的には2色刺激である少なくとも1つの動的多色刺激を用いてユーザを刺激するためのコンピュータシステム(31)と、
多色パターンを前記ディスプレイ装置上に表示しているときに、2つの色の間の輝度の差を変化させるために、表示された多色パターンのうちの少なくとも1つの色(C)の輝度を変化させて、この色(C)を時間的に変化させるように構成された色制御部(32)と、
前記多色パターンを前記ディスプレイ装置上に表示しているときに、前記ユーザの少なくとも1つの瞳の振動反応(SIGresp)を取得するための画像取得装置(20)と、
取得した振動反応から、2つの色のうちの少なくとも1つの時間変化および前記2つの色の輝度の差の関数として、前記瞳の振動反応(SIGresp)のパワーを表す信号(SIGpower、APPROXpower)を生成するための識別子またはバイオマーカー生成部(33)と、
少なくとも1つの色等輝度情報を決定するように構成された色度等輝度決定ユニットと、をさらに備え、
前記少なくとも1つの色等輝度情報は、前記パワーを表す信号(SIG power 、APPROX power )の最小値(MIN)に相当する、動的多色刺激における2つの色の色等輝度情報を含み、
前記コンピュータシステム(31)は、典型的には2色である多色パターンを用いて前記ディスプレイ装置上のディスプレイを制御し、
前記多色パターンのうちの少なくとも2つは、マーキング周波数(Ftag)で周期的に反転することを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物における色認識に関し、より具体的には、人間や動物のような哺乳類被験者における色認識の指標またはバイオマーカーを生成する方法とシステムに関する。本発明はまた、コンピュータシステムにおいて個人的方法でコンピュータプロセスを制御するための等色輝度タイプの指標の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
色認識は、哺乳類被験者ごとに著しく異なる。
【0003】
従来この相違は、通常は中心窩上または周辺の網膜の活性化領域における、被験者間での色光受容器(錐体細胞)の集中、分布および感度の違いで説明されてきた。
【0004】
色認識は、被験者の年齢によって変わる。
【0005】
色認識はまた、遺伝学または病理学に関係する、目(色光受容器)、視路または脳の視覚野の機能障害の影響を受ける。
【0006】
色認識の評価は、多くの医学的および非医学的応用において有用である。
【0007】
例えば米国特許US5141305は、垂直ドットまたはバーパターン(その表示色は緑と赤の間でのみ交代する)の等輝度刺激に対する瞳孔反射を測定することによる純粋フェーズの神経活動の評価を開示する。
【0008】
色等輝度と呼ばれる代替的な方法は、色の組み合わせ(その片方は時間的に変化する)が常に(一般には2回)同じ輝度を持つと被験者によって認識されるのはいつかを決定することからなる。この検査法は、哺乳動物の視覚処理に関する心理的および神経生理学的研究で広く使われている。特にこの方法により、被験者における色認識の完全姓を評価することが可能となるとともに、輝度感受細胞の相対的な寄与を色認識に分離することができる。
【0009】
長い間、色等輝度は主観的であった。なぜならこの方法は、被験者の感覚的判断に基づくからである。
【0010】
言葉を使わない哺乳類(動物や赤ん坊など)での客観的評価を可能とするため、哺乳類被験者における色認識の標識またはバイオマーカーが開発されてきた。これらの標識またはバイオマーカーは、試験色の認識に関するある程度客観的な神経学的、生理学的指標である。
【0011】
刊行物「Screening for color blindness usingoptokinetic nystagmus」(Cavanagh P. et al, 1984)は、例えば、赤と緑のバー(一方の色は時間的に徐々に変化する)で形成されたグリッド内の錯覚的ちらつきに反応する被験者の目の眼振を表す信号の生成を開示する。この反応信号は、被験者における色認識の標識となる。特に、眼球運動の方向が眼振信号内で反転したとき、2つの試験色(赤と緑)間の等輝度が取得される。
【0012】
刊行物「A new technique for estimating in humans and monkeys(Chaudhuri A. et al., 1990)」もまた、動的な2色刺激の表示に対する視動性反応信号の生成を開示する。眼振方向の変化もまた、使われる2色(緑と灰色)間の等輝度を特定するために使われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
これらの技術は、色認識の指標としての被験者の視動性反応に基づくが、眼球運動の非常に正確な解析を必要とする。実際、動的な2色刺激に反応する無意識の眼球振動は、一般に突然で急速である。従って、洗練された画像取得装置(例えば、100-フレーム/秒のカメラ)と、処理装置(特にリアルタイム処理のための)が必要である。
【0014】
さらにこの正確さを保証するために、被験者の視線が動かない必要がある。動物や赤ん坊のような被験者の場合、この制約を保つことは難しい。
【0015】
眼球運動を測定するためのオクロメータ(oculometer)の使用は、オクロメータのための調整処理を必要とする。この調整処理もまた被験者からの反応を必要とするため、非協力的な被験者に対して当該測定を正確に行うことが困難となる。
【0016】
従って、より簡単に取得することができ、制約がより少ない、色認識の指標またはバイオマーカーが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らの持つアイデアは、輝度の変化に対する瞳の反応に依拠する。実際、この反応(瞳の収縮または拡大)は眼振より遅いため、比較的洗練されていない装置や処理でも十分であろうというのが本発明者らの考えである。
【0018】
この文脈において本発明者らは最初に、哺乳類の被験者における色認識の識別子またはバイオマーカーを生成する方法を提案する。この方法は、以下のステップを備える。
哺乳類の被験者に、典型的には2色刺激である少なくとも1つの動的多色刺激を与えるステップ。多色刺激は、ディスプレイ装置(スクリーンその他の画像媒体)上に、典型的には2色である多色パターンを表示する。このようにしてこの多色パターンは、任意の瞬間に、複数の色(反転する2つの色を含む)を表示する。
多色刺激をディスプレイ装置上に表示しているときに、表示された多色パターンのうちの少なくとも1つの色の輝度を変化させて、この色の時間的変化を制御するステップ。この色変化の目的は、2つの色の間の輝度の差(すなわち、実際の輝度または認識された輝度)を時間的に変化させることにある。
画像取得装置を用いて、動的多色刺激をディスプレイ装置上に表示しているときに、哺乳類の被験者の少なくとも1つの瞳の振動反応を取得するステップ。
取得した振動反応から、2つの色のうちの少なくとも1つの時間変化および2つの色の輝度の差の関数として、瞳の振動反応のパワーを表す信号を生成するステップ。
【0019】
古典的には、瞳の振動反応は、瞳の直径の時間発展(収縮または拡大)を測定することからなる。
【0020】
別個にまたは組み合わされて(例えば平均化されて)、両目の瞳が解析できると有利である。
【0021】
瞳の振動反応が遅いことに起因して、使われるマーキング周波数は非常に低く、被験者の他の生理学的周波数とは大きく異なる。
【0022】
この生理学的周波数の差のおかげで、瞳の振動反応の信号対雑音比は自然と低いものとなる。これにより、振動反応のパワーを表す信号が得られるこの信号は、純粋な瞳の反応を実際に示すものである。従って、試験色に対する網膜の反応および/または認識を表すこの信号を、直接または直接他の情報と関連付けて、色識別および/または色認識のための信頼性の高い識別子またはバイオマーカーとして使うことができる。
【0023】
従って、生成された信号は、後述のように医学的または非医学的応用に使うことができ、例えば2つの試験色の間の色等輝度を決定することができる。
【0024】
さらに、低いマーキング周波数(一般には0.1Hzと5Hzとの間の範囲、例えば1.3Hzまたは1.4Hz)を使うことにより、従来のビデオ撮影装置(典型的には、毎秒25フレームのカメラ。例えばコンピュータや携帯電話で使われるもの)で十分である。従って、取得された信号の処理(特にリアルタイム処理)は実質的に削減される。
【0025】
上記に関連付けて、本発明者らは最初に、哺乳類の被験者における色認識の識別子またはバイオマーカーを生成するシステムを提案する。このシステムは以下を含む。
ディスプレイ装置。
典型的には2色刺激である少なくとも1つの動的多色刺激を用いて哺乳類の被験者を刺激するためのコンピュータシステム。
前記多色パターンを前記ディスプレイ装置上に表示しているときに、表示された多色パターンの輝度を変化させるために、前記多色パターンのうちの少なくとも1つの色の時間的に変化させるように構成された色制御部。
前記多色パターンを前記ディスプレイ装置上に表示しているときに、前記ユーザの少なくとも1つの瞳の振動反応を取得するための画像取得装置。
取得した振動反応から、2つの色のうちの少なくとも1つの時間変化の関数として、前記瞳の振動反応のパワーを表す信号を生成するための識別子またはバイオマーカー生成部。
【0026】
このシステムは、前述の方法と同様の利点を持つ。
【0027】
方法の選択的な特徴も後述する。このシステムはまた、これらの選択的な特徴を実現するために構成された手段を有する。
【0028】
ある実施の形態では、この方法は、瞳の振動反応のパワーを表す信号の最小値に相当する、動的多色(典型的には2色)刺激における2つの色(すなわち、これらの2つの色の値)の2色等輝度構成を決定するステップをさらに備える。本発明者らは、パターン内の2つの色の周期的な反転に起因して、瞳は、対応する(マーキング)周波数で振動することを見出した。この瞳の振動は、当該2つの色の強度の差が大きいと認識したときますます大きなものとなる。また、パワーを表す信号の最小値を決定することにより、被験者が認識した色等輝度(すなわち、時間的に変化する2つの試験色間の輝度の差が最小になったと被験者が認識したときの状態)を決定することが可能となる。色等輝度の一致は、被験者における色認識の標識またはバイオマーカーとして使うことができる。実際、これは他の被験者のものと比較することができる。
【0029】
色等輝度を決定するために使われる計算は、既知の技術に比べて著しく簡易なものとなる。さらに、パワーを表す信号が最小になるときの位置は、瞳の振動反応の測定に使われる単位と無関係である。またこの構成は、画像取得装置の調整を必要としない。
【0030】
ある実施の形態では、動的多色刺激の表示中、多色パターンの2つの色のうちの他方は一定に保たれる。
【0031】
他の実施の形態では、マーキング周波数は被験者によって変わる。特にこの方法は、マーキング周波数を決定するための予備的なステップを含んでよい。この予備的なステップは、以下のステップを含む。
少なくとも1つの調整光フラッシュを被験者に与えるステップ。
調整光フラッシュに対する、被験者の瞳の平均反応時間を測定するステップ。
測定された平均反応時間に応じて、マーキング周波数を設定するステップ。
【0032】
特に、これらの準備により、行われる測定(例えば、試験色に関する色等輝度の構成)の信頼性を低コストで向上させることが可能となる。さらに、これらの準備により、試験の持続時間(典型的には2色の多色刺激を与える時間)を調整し、特にこれを短縮することが可能となる。
【0033】
代替的にまたは前述と組み合わせて、使われる多色パターンは被験者(例えば、光フラッシュに対する瞳の振動反応)によって変わる。これにより、被験者の病状(これは、患者の目の空間的感度を変える)考慮に入れることが可能となる。例えば、被験者に応じて、多色パターンをスクリーンの好ましい領域(例えば、スクリーンの上部または下部、あるいはスクリーンの四分の一の領域)に位置付けることができる。
【0034】
ある実施の形態では、色の時間的変化の制御は、徐々に(またはステップ単位で)増加させて変化させることを含む。これにより、特にスライディング解析時間ウインドウを用いることで、振動反応を安定的に取得することが可能となる。特に色の変化(増加)の周波数は、マーキング周波数より低い。色の変化の周波数は、マーキング周波数の約数であることが望ましい。これにより、表示された多色(典型的には2色)パターン内で同一の2色の交代を複数持つことが可能となり、従ってより良好な振動反応を取得することができる。
【0035】
ある実施の形態では、哺乳類の被験者には、2つの異なる色ペアに基づいて、2つの動的多色(典型的には2色)刺激を与えることができる。この構成は、被験者の色認識に関する完全な相対指標を与える。実際、一般に色メトリック空間は3次元(例えば、赤-緑-青に関するRGB)である。従って、2つの色ペアの相対認識を知れば、(例えば、簡単な計算により)すべての色ペアの相対認識を得ることができる。この相対認識は、例えば色等輝度の一致である。
【0036】
ある実施の形態では、ディスプレイ装置上の色表示は、赤-緑-青のトリプレットを用いて制御される。このとき、多色パターンの2つの色は純色である。これらの純色では、赤、緑、青の3成分のうちの2つはゼロである。こうして色の時間的変化は、単純に第3のゼロでない成分を漸進的に増加させることにより実現することができる。
【0037】
この場合、上述の2つの色ペアは、RGB空間内で、RG、RBおよびGBから選ばれる。ただし、R、GおよびBはそれぞれ、純色の赤、純色の緑および純色の青である。
【0038】
パワーを表す信号は、取得された反応信号に適用される処理に応じて、異なる方法で形成することができる。
【0039】
第1の実施の形態では、信号は、マーキング周波数および/またはマーキング周波数の1つ以上の調波における瞳の振動パワーを表す信号であり、マーキング周波数および/またはマーキング周波数の1つ以上の調波における瞳の振動反応の周波数成分の時間発展を表す信号である。以下「調波」とは、マーキング周波数の倍数および/または約数のことをいう。典型的には、マーキング周波数Ftagに加えて、半調波Ftag/2、倍調波2*Ftagを考えることができる。
【0040】
周波数領域を通すことにより、生成された識別子またはバイオマーカーのノイズに対する抵抗が向上する。例えば、マーキング周波数における瞳の振動パワーを表す信号を生成するステップは、取得された反応に、スライディング時間ウインドウ上で離散高速フーリエ変換を適用するステップと、各ウインドウに関し、マーキング周波数および/または取得された周波数スペクトルの1つ以上の調波における周波数成分の値を記憶するステップと、を含む。有利なことに、これらの処理は、限られたメモリリソースを用いて、リアルタイムで実行することができる。
【0041】
特に、スライディング時間ウインドウの幅は、マーキング周波数の周期と少なくとも等しいように(例えば、当該周期の倍であるように)選ばれる。
【0042】
他の特定の特徴に従うと、新たな離散高速フーリエ変換が適用されたとき、スライディング時間ウインドウは、取得された反応のサンプルだけシフトされる。一般にサンプルの時間的精度は、使われる画像取得装置とその配置に依存する。有利なことに、本発明では、通常のカメラの解像度(毎秒25フレーム)に相当する25Hzのサンプリング周波数を使うことができる。こうして、前述の準備のおかげで、生成された振動パワーを表す信号は、使われる画像取得装置を考慮した可能な最良の解像度を持つことができる。
【0043】
特定の実施の形態では、マーキング周波数および/またはマーキング周波数の1つ以上の調波における瞳の振動パワーを表す信号を生成するステップは、記憶されたマーキング周波数および/またはマーキング周波数の1つ以上の調波における周波数成分の値で形成された信号の、少なくとも1つの数学的関数(例えば、アフィン関数や指数関数を含む1つ以上のサブ関数の組み合わせである区分的関数)による近似をさらに含む。記憶された値を用いて信号の一部を形成するための、それぞれの最もよいサブ関数を近似および選択するために、通常の技術が使われてよい。このような近似を使うことにより、比較的簡単な識別子またはバイオマーカーを得ることができ、従ってその後の処理を単純化することができる。例えば、コンピュータ操作をカスタマイズするために、あるいは病状の進行またはこうした病気に対する治療の効果を評価するために、この識別子を使うことができる。
【0044】
第2の実施の形態では、振動パワーを表す信号の生成は、多色(典型的には2色)パターンの色の各反転に反応した瞳の直径の変化の強度を決定するステップを含む。上記の信号は、こうして決定された強度から形成されたパワーを表す。これらの強度(すなわち、各瞳の反応での瞳の直径の違い)は実際に、1つの係数(瞳の反応時間)内に瞳の反応のパワーを表す。
【0045】
瞳の振動反応(すなわち、多色パターン表示の制御された各変化に対する反応)のパワーを表す信号を与える別の任意の方法が使われてもよい。
【0046】
これらすべての方法に関し、特別なフィルタリングを使うことなく、解析を実行することができる。さらに、有利なことには、本発明により、通常のカメラの解像度(毎秒25フレーム)に相当する25Hzのサンプリング周波数を使うことが可能となる。このようにして、使われる画像取得装置を考慮した可能な最良の解像度で、振動パワーを表す信号が生成される。
【0047】
ある実施の形態では、この方法はまた、このようして得られたパワーを表す信号の最小値(例えば、前述で構成された部分的関数の最小値、あるいは瞳の振動の強度の信号の最小値)を決定するステップを含んでよい。従ってこの最小値により、認識された色等輝度の多色(典型的には2色)構成を特定することが可能となる。あるいは、例えば、当該パターンが複数の色ペア(そのうちの1つの色の輝度が時間的に変化する)を含む場合は、色等輝度の多色構成を特定することが可能となる。
【0048】
ある実施の形態では、この方法は、取得された振動反応をフィルタリングするステップをさらに備える。このフィルタリングするステップは、目が瞬く間に、振動反応信号を補完する(好ましくは線形に)ステップを含む。これにより、曲線内の点雑音を補正することができる。
【0049】
本発明者らは、
前述のマーキングの方法を用いて取得された色等輝度の構成により、被験者に関する客観的でロバストな標識が構成されることを見出した。
【0050】
しかしながら、多くのITシステムででは、ITプロセスを効率的に管理できるために、個人特にユーザが、信頼性が高くロバストな情報に、簡単かつ高速にアクセスできることが要求される。例えばこれは、ユーザ認証または証明するプロセスに当てはまる。現行の技術は複雑であり、ときにユーザ識別情報が盗まれ得る。これはまた、ユーザに最も適したコンピュータシステムの構成、例えばスクリーンの調整にも当てはまる。
【0051】
また、本発明者らは、この等輝度構成をこのような方法を使うことが非常に効果的であることを見出した。こうして、この制御は、簡単、高速、ロバストとなり、複雑なリソースを必要としない。
【0052】
この文脈において本発明者らは、コンピュータシステムにおけるコンピュータプロセスを個人的方法で制御するための方法を提案する。このシステムは、以下のステップを含む。 前述のように、ユーザに関する少なくとも1つの色等輝度情報を決定するステップ。すなわち、この少なくとも1つの色等輝度情報を決定するステップは、以下のステップを含む。
ユーザに、典型的には2色刺激である少なくとも1つの動的多色刺激を与えるステップ。
この多色刺激は、コンピュータシステムのディスプレイ装置上に、典型的には2色である多色パターンを表示する。この多色パターンのうちの少なくとも2つは、マーキング周波数で周期的に反転する。このようにしてこの多色パターンは、任意の瞬間に、複数の色(反転する2つの色を含む)を表示する。
多色パターンをディスプレイ装置上に表示しているときに、2つの色の間の輝度の差を変化させるために、表示された多色パターンのうちの少なくとも1つの色の輝度を変化させて、この色の時間的変化を制御するステップ。この色変化の目的は、2つの色の間の輝度の差(すなわち、実際の輝度または認識された輝度)を時間的に変化させることにある。
画像取得装置を用いて、動的多色刺激をディスプレイ装置上に表示しているときに、ユーザの少なくとも1つの瞳の振動反応を取得するステップ。
動的多色刺激を表示しているときに、取得した振動反応から、2つの色のうちの少なくとも1つの時間変化の関数として、瞳の振動反応のパワーを表す信号を生成するステップ。
瞳の振動反応のパワーを表す信号の最小値に相当する、動的多色刺激における2つの色の2色等輝度構成を決定するステップ。
これは、時間的に変化する2つの試験色間の輝度の差が最小となったと被験者が認識したときに取得された、これら2つの色の値である。
このようにして決定された少なくとも1つの色等輝度情報を、コンピュータシステムにおけるプロセス入力データとして使用するステップ。
【0053】
上記に関連付けて、本発明者らは最初に、コンピュータシステムにおけるコンピュータプロセスを個人的方法で制御するためのシステムを提案する。このシステムは以下を含む。
ユーザに関する少なくとも1つの色等輝度情報を決定するサブシステム。
少なくとも1つの色等輝度情報を、コンピュータシステムにおけるプロセス入力データとして使用するように構成されたプロセス制御モジュール。
色等輝度情報を決定するサブシステムは、以下を含む。
ディスプレイ装置。
典型的には2色刺激である少なくとも1つの動的多色刺激を用いてユーザを刺激するためのコンピュータシステム。
多色パターンをディスプレイ装置上に表示しているときに、2つの色の間の輝度の差を変化させるために、表示された多色パターンのうちの少なくとも1つの色の輝度を変化させて、この色を時間的に変化させるように構成された色制御部。
多色パターンをディスプレイ装置上に表示しているときに、ユーザの少なくとも1つの瞳の振動反応を取得するための画像取得装置。
取得した振動反応から、2つの色のうちの少なくとも1つの時間変化および2つの色の輝度の差の関数として、瞳の振動反応のパワーを表す信号を生成するための識別子またはバイオマーカー生成部。
パワーを表す信号の最小値に相当する、動的多色刺激における2つの色の2色等輝度構成を決定するように構成された色度等輝度決定ユニット。
このコンピュータシステム、典型的には2色である多色パターンを用いてディスプレイ装置上のディスプレイを制御する。多色パターンのうちの少なくとも2つは、マーキング周波数で周期的に反転する。
【0054】
このコンピュータプロセスを個人的方法で制御するための方法の選択的な特徴は、後述でも定義される。対応するシステムもまた、これらの選択的な特徴を実行するための構成手段を含んでよい。
【0055】
個人(この場合は、一般にユーザ)の正しい色認識を得るようにディスプレイのスクリーンを調整することは複雑な問題であり、通常は高価な外付け装置を必要とする。2016年に、アップル(登録商標)の携帯端末およびタブレットまたはAndroid(登録商標)の端末に「True Tone(登録商標)」オプションが実装された。このオプションにより、ホワイトバランスの動的な調整と、ディスプレイの環境(外光)状態に対する表示輝度の動的な調整が可能となった。ユーザの色の認識は向上すると考えられる。従って、こうしたユーザが異なるスクリーンを使ったときも、同じ表示が得られること、従って同じ表示画像を認識できることが特に求められる。
【0056】
しかしながら、この動的調整は満足できるものではない。なぜならこの技術では、異なるユーザは、スクリーン上の同じ画像に対し、同じ認識を持つことができないからである実際、「True Tone」オプションはユーザの認識を表現するものではない。なぜなら、この技術は、センサ(目)やユーザに特有の処理手段(視神経、大脳の視覚野)を考慮しないからである。
【0057】
従ってある実施の形態では、本発明者らは、この方法をコンピュータシステムの表示スクリーンの調整に適用することを検討した。この場合、ピクセル(より一般的にはすべてのピクセル)の表示は、少なくとも1つの決定された色等輝度情報に従って補正される。従ってこれは、コンピュータシステムに接続された表示スクリーンを調整するための方法を与える。この方法は、ユーザに関する色等輝度情報を前述のように決定するステップと、この決定された色等輝度情報に従って、スクリーン上に表示された色を較正するステップと、を含む。
【0058】
この構成により、ピクセル表示をユーザごとに調整することができる。これにより、ユーザとは無関係に、表示された画像は各色間で同様に認識される輝度を持つ。例えば、個人的に調整した後、各ユーザは完全に同じ輝度を持つと画像を認識する。また何人かのユーザが、異なるスクリーンを使って(ときには離れた場所で)、同じ色であると認識しながら、同じ画像上で作業をすることができる。
【0059】
ある実施の形態では、少なくとも1つの色等輝度情報は、赤-緑-青の色空間における、赤-緑、赤-青および青-緑のうちの少なくとも1対の色のペアに関し、第1の色に関して決定された値を備え、このとき第2の色は参照値を取る。較正は、1つの色が参照値(例えば、(140、0、0)の赤)に固定されたものとし、スクリーン上の緑(または赤)の成分の表示を赤(または緑)に対して調整するように決定された色等輝度の緑を用いて実行することができる。
【0060】
望ましくは、純色(2つのゼロ成分を持つ色)が使われる。
【0061】
特定の実施の形態では、ディスプレイ装置のスクリーンの初期較正のために、第1の色の色等輝度のデフォルト値が取得され、このとき第2の色は参照値を取る。ピクセルの補正は、色等輝度のデフォルト値と、決定された等輝度の値との間の差分の値に従って、ピクセルの第1の色、または第2の色、または第1および第2の両方の色を調整する(すなわち、本発明に従った個人的な方法による調整がなければ表示されるべきであったピクセルの値を変化させる)ステップを備える。例えば、初期較正が赤(140、0、0)を緑(0、120、0)に関連付けて等輝度構成を定義するものであった場合、当該ユーザに関する色等輝度の緑(0、120、0)の決定は、決定された20単位の差分に従って、スクリーンに表示されるべきピクセルの緑成分を減少させるもの、または赤成分を増加させるものであってよい。
【0062】
このようにして、実現が容易なピクセル(または画像)の色補正のための個人的方法が得られる。これは、当該ユーザによるピクセル(または画像)の認識を、任意の他のユーザの色の認識に近づけるものであり、これは他のユーザにとっても有用なものである。
【0063】
選択的な特徴に従うと、ピクセルの補正は、前述の差分の値と同じ値を用いて、ピクセルの第1または第2の色を変化させるステップを含む。この構成は、実現が非常に簡単である。
【0064】
変形に従うと、ピクセルの補正は、差分の値およびピクセルの第2の色の参照力の隔たりの値の両方の関数である値を用いて、ピクセルの第1の色を変化させるステップを含む。
【0065】
特にこの関数は、ピクセルの第2の色の参照値からの隔たりに関して線形であることが望ましい。これにより補正は、効率的に調整が可能となる。従って変化した値は、さらなる処理を受けることを要さずに、使われる色空間に維持される。
【0066】
例えば線形性は、値の範囲の両端値(例えば色(0、0、0)および色(255、255、255)に相当する)が固定点であるという事実によって決定することができる。
この場合、関数は、第2の参照色で決定される色等輝度点のいずれかの側で、区分的に線形である。
【0067】
ある実施の形態では、個人的に制御する(より正確にはスクリーンを較正する)方法は、赤-緑-青の色空間における、赤-緑、赤-青および青-緑のうちの2つの異なる色ペアに関する2つの色等輝度情報を決定するステップを備える。当該2つの色等輝度情報の各々は、第1の色に関して決定された値を備え、このとき第2の色は参照値を取る。これにより、考察されている色メトリック空間(ここではRGB)の全体にわたって、ユーザの等輝度パラメータを知ることができる。また本発明により、これら2つの測定値だけを用いて、表示スクリーンを完全に調整することができる。これにより、ユーザの色認識は、同じ原理に従う個人的調整を使う他のユーザの色認識と同じものとなる。
【0068】
特定の特徴に従うと、ディスプレイ装置のスクリーンのピクセルの補正は、ピクセルを定義する色トリプレットを、2つの色ペアに関して取得された2つの差分値に基づき、スクリーンの初期較正に従って調整するステップを備える。これらの差分値の各々は、色ペアの第1の色に関する色等輝度のデフォルト値と、決定された色等輝度の値との差を表し、このとき第2の色は参照値を取る。
【0069】
ユーザに関して赤-緑の等輝度測定が行われた前述の例に戻ると、そこでは、赤(140、0、0)-緑(0、120、0)の等輝度構成で、-20単位の緑のシフトが見られた。同様に、ユーザに関して赤-青ペアで等輝度測定が行われる。その結果、赤(140、0、0)-青(0、0、170)の等輝度構成で、デフォルトの赤(140、0、0)-青(0、0、140)の等輝度構成に比べ、+30の青のオフセットが見られる。従ってディスプレイの補正は、緑成分を20単位増加させ(または同じ値だけ赤を140から動かす)、青成分を30単位減少させる(または同じ値だけ赤を140から動かす)ことからなる。
【0070】
このようにして、異なるユーザによる同じ色認識が簡単に実現される。
【0071】
ある実施の形態では、色トリプレットの調整は、当該色トリプレットのうちの色成分の1つが一定の値で行われる。この構成によれば、表示ピクセルの成分に対して実行されるべき計算が制限される。
【0072】
代替的に、色トリプレットの調整は、一定のピクセルの輝度で行われる。この構成によれば、本発明の教示に従い個人的な方法でスクリーンを補正した後も、表示画像の全体輝度を保つことできる。一般に3つの色成分は、等輝度構成によって得られた2つの差分に従って調整される。
【0073】
現行の生体認証または生体証明のシステムは、十分安全ではない。特に、必要とされる生体情報は再生可能である。あるいは、例えば認証の対象となる個人は必ずしも生きていなくてもよい。従って、これらの生体認証技術を改善する必要がある。
【0074】
また本発明者らは、個人的方法による制御プロセスをこうした個人の認証/証明に応用することにより、既知の技術の欠点を克服できることを見出した。この方法では、少なくとも1つの色等輝度構成を使うプロセスは、例えばコンピュータシステムで個人を認証または証明するための処理となる。これは、個人を認証または証明するための方法である。この方法は、前述のユーザに関する少なくとも1つの色等輝度情報を決定するステップと、この決定された色等輝度情報を、コンピュータシステムの認証または証明プロセスにおける識別子として使用するステップと、を備える。
【0075】
本発明を用いて決定された色等輝度情報は個人の瞳の振動反応を必要とするため、認証または証明を実現するためには、この個人は生きている必要がある。さらにこれは、指紋または虹彩センサに比べてそれほど複雑でない装置に基づく
【0076】
ある実施の形態では、この方法は、決定された少なくとも1つの色等輝度情報を、少なくとも1つの対応する参照色等輝度情報と比較するステップと、当該色等輝度情報と当該参照色等輝度情報とが一致したときにのみユーザの認証または証明を認めるステップと、をさらに備える。参照色等輝度情報は、ユーザと識別子と関連付けてコンピュータシステムのメモリに記憶されている。
【0077】
好ましい実施の形態では、この方法は、赤-緑-青の色空間における、赤-緑、赤-青および青-緑のうちの2つの異なる色ペアに関する2種類の色等輝度情報を決定するステップを備える。この2種類の色等輝度情報の各々は、第1の色に関して決定された値を備え、このとき第2の色は参照値を取る。これにより、考察されている色メトリック空間(ここではRGB)の全体にわたって、ユーザの等輝度パラメータを知ることができる。従って簡単な計算より、認証/証明の確認に必要な等輝度色の任意の組み合わせを求めることができる。
【0078】
さらにこの確認は、色メトリック空間内の複数の点で実行することができる。これにより、コンピュータシステムのアクセスに関するセキュリティが向上する。
【0079】
ある実施の形態では、この方法は、ユーザに関連する少なくとも1つの参照色等輝度情報を取得するために、当該ユーザを特定する予備的なステップを、前述の比較するステップの前段にさらに備える。このようにすると、本発明に係る色等輝度構成を用いた確認は、より一般的な認証と補完的となる。これにより、特にこの(またはこれらの)色等輝度構成を決定するのに必要な厳密さ限定することができる。従って、認証/証明に必要な時間を削減することができる。
【0080】
例えば、このユーザの特定のための予備的なステップは、当該ユーザに関する生体情報(指紋や虹彩画像)を取得するステップを含む。代替的に、単純なログインコードを要求することもできる。
【0081】
ある実施の形態では、この方法は、色等輝度情報を決定するステップにおいて典型的には2色である多色パターンの色を時間的に変化させるときの変化値の制限範囲(可能な値の範囲に対する)を、取得されたユーザの特定に基づいて決定するステップをさらに備える。例えば、緑の等輝度が120(140の赤に対し)に設定されたユーザを特定するステップでは、試験されるべき値の範囲を[80-160]に制限することができる。これにより、取得すべきデータ量、実行すべき処理、従ってユーザの神経学的標識を取得するのに必要な時間を実質的に削減することができる。
【0082】
システムのセキュリティを向上させるために、この制限された値の範囲は、メモリ内に記憶された等輝度値を含んでいる限り、当該値の周辺のマージンとともに実行中にランダムに生成されてもよい。代替的にこれは、ユーザ識別子と関連付けて、コンピュータシステムのメモリ内に設定されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
本発明のその他の特徴および利点は、添付の図面を参照して以下で説明される。
図1】本発明の実施の形態に係る、哺乳類の被験者において色認識の指標またはバイオマーカーを生成するシステムを示す図である。
図2】本発明の実施の形態に係る、動的2色刺激を模式的に示す図である。
図3】(a)は、実施の形態に係る、図2の2色刺激パターン内の1つの色の変化のパターンまたはプロファイルを示す。(b)は、実施の形態に係る、図2に示されるタイプの動的2色刺激に対する瞳の振動反応一例を示す。(c)は、実施の形態に係る、図3(b)の信号解析ウインドウに離散高速フーリエ変換を適用した結果得られた周波数スペクトルを模式的に示す。(d)および(d’)は、別の実施の形態に係る、瞳の振動強度を表す信号およびそれを近似する区分的関数を示す。(e)は、実施の形態に係る、図3(a)の変化プロファイル上の色等輝度値の決定を示す。
図4】本発明の実施の形態に係る、哺乳類の被験者において色認識の標識またはバイオマーカーを生成する方法を示すフロー図である。
図5】本発明の実施の形態に係る、図4の方法による等輝度情報タイプの指標またはバイオマーカーを用いて、表示スクリーンを調整する方法を示すフロー図である。
図6図5の方法におけるピクセルの色補正の異なるプロファイルを示す図である。
図7】ユーザの認証/証明情報を決定および記憶するための予備的な方法を示すフロー図である。
図8】本発明の実施の形態に係る、図4の方法による等輝度情報に基づいてユーザを認証/証明するための方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0084】
本発明は、哺乳動物の色の認識または識別に焦点を当て、これを各被験者のバイオマーカー特性にする。これは、哺乳動物被験者の振動光刺激に対する瞳の振動反応が遅い(0.1Hz以上5Hz以下)という利点を利用する。これにより、被験者の相対的色認識に関する客観的な神経学的指標を生成する。
【0085】
瞳周波数タグ付け方法(A pupil frequency-tagging method)は、瞳の反応速度に適用されるマーキング周波数Ftagで使われる。有利なことに、これは被験者の目の反応運動に関する他の生理学的周波数とは異なる。例えばFtagは、1.3から1.4Hzの範囲にあるか、むしろそれより遅い。
【0086】
この方法は、被験者の他の眼球運動に起因するノイズに対してロバストであり、被験者による調整を必要としない。
【0087】
この方法により、例えば、取得された生理学的指標から、被験者が認識した色等輝度を決定することが可能となる。
【0088】
図1に、哺乳類の被験者2において色認識の指標またはバイオマーカーを生成するシステム1を示す。
【0089】
システム1は、表示スクリーン10と、画像取得装置20と、制御および処理のためのコンピュータシステム30とを含む。
【0090】
表示スクリーン10は、ピクセルのパネル(例えば、解像度1920×1080ピクセル、表示周波数60Hz)であり、ビデオカードによってシステム30から制御される。各ピクセルは、それぞれ8ビットの色成分(すなわち、0から255の値を取ることができる):赤、緑、青(RGB)からなる。もちろん本発明の文脈内で、別のピクセル定義(色ごとのビット数、色メトリック空間)を考えることもできる。
【0091】
スクリーン10は、中央に配置されて被験者2の目と対向されてよく、視線と直行する平面に置かれ、被験者から一定の距離にあってよい。被験者2のいかなる運動も避けるため、被験者の頭部は、顎と額とが適切な支持具に支えられることにより安定化されてよい。
【0092】
画像取得装置20は、典型的には瞳の直径を記録する赤外線検知カメラその他の任意のタイプのセンサであり、これもまた被験者に対向して配置され、被験者2の1つ以上の瞳の画像を取得することができる。
【0093】
説明を簡単にする目的で、画像の取得は被験者2の片方の瞳に限るものとする。もちろん、同様の処理を両方の瞳で実行することができる。これは例えば、1つの瞳に関して得られた結果を平均化または実証する、あるいは片方の瞳の他方の瞳への置換を最後に解析することによって実行できる。
【0094】
比較的低いマーキング周波数Ftagのおかげで、25フレーム/秒の既製のタイプのカメラ20を使用することができる。特に、赤外線を検知である限り、通常の電子デバイス(携帯電話、コンピュータ、デジタルタブレット、ポータブルカメラ)のオンボードカメラを使うことができる。
【0095】
もちろん25fpsより高周波数のカメラを使うこともできる。
【0096】
カメラが赤外線より広い周波数スペクトルで動作する場合、画像取得の最後に赤外線スペクトルでの画像のみを取得するために(あるいは、少なくとも観測される瞳の直径を決定するために)、既知の技術を用いたフィルタリング(物理的または電気的)が与えられてもよい。
【0097】
コンピュータ制御および処理システム30は、動的多色(典型的には2色)刺激により哺乳類の被検者を刺激するためのコンピュータモジュール31と、色制御部32と、識別子またはバイオマーカー生成部33と、を含む。これらの様々な要素は、ソフトウェアによって実行される。なぜならこれらは本質的に、スクリーン10上の表示を制御する、または、装置20によって得られたデータを処理するように意図された動作を処理するように意図された動作を処理するからである。この目的のためにシステム30はまた、スクリーン10が接続される通常のビデオカード38と、画像取得装置20が接続される通常のビデオ取得カード39と、を含む。
【0098】
システム30は、操作者がシステムを設定し、発明の方法および応用を起動できるようにするための、入力/出力手段(キーボード、マウス、ネットワークカード)を含んでもよい。
【0099】
哺乳類の被検者を動的多色(典型的には2色)刺激(31)による刺激するためのコンピュータモジュールは、スクリーン10上で多色パターン(典型的には2色)のディスプレイを制御する。この少なくとも2色は、マーキング周波数Ftagで周期的に反転する。
【0100】
問題となる多色パターンは、いくつかの色を任意の所定のタイミングで表示する。
その後、これらの色の少なくとも2つは周期的に反転する。
【0101】
図2に、色CおよびCによって形成された2色パターンの例を模式的に示す。このうちの一方と同色(ここでは見やすさのため、白で示される)が背景に表示され、他方と同色(ここでは見やすさのため、ハッチングで示される)が中央に表示される。動的な2色刺激は、2つの色CおよびCの間で、周波数Ftagの交代を生成すること
からなる。2色パターンは、例えば白の背景上で示すことができる。
【0102】
2色パターンの2つの色CおよびCは、純色、すなわちこれらの色のうち、赤、緑、青の2つがゼロであることが望ましい。従って、RGBの色メトリック空間において、CおよびCは、RG, RBまたはGBのいずれかである。ここで、R、G、Bは純色の赤(r、0、0)、緑(0、g、0)、青(0、0、b)である。
【0103】
およびCは、同じ純色(RR、GG、BB)として選択できる(特に制御テストのために)ことに注意する。もちろん、必ずしも純色を含まない他の色ペア(C、C)を選択することも考えられる。
【0104】
色制御部32は、動的多色(典型的には2色)刺激をスクリーン10上に表示中に、この色の表示輝度を変化させる(通常は複数回)ために、多色パターン(典型的には2色(図2))の2色のうち少なくとも1つを時間的に変化させるように構成される。純色に関しては、輝度変化は、単にゼロでない成分(rまたはgまたはb)を変えることにより、容易に実現させることができる。
【0105】
この2色のうち1色を変化させる目的は、考察対象の2色間の相対輝度を時間的に変化させること、すなわちこれら2色間の輝度の差を変化させることにある。この差は、現実の差であってもよいし、被験者が感じた差であってもよい。
【0106】
ある実施の形態では、動的2色刺激を表示中に、パターンの他の色(例えばC)が固定されてもよい。これは、試験全体(すべての画像が図2に示される)を通じて、同一のRGBトリプレットを用いて色Cが表示されることを意味する。もちろん、この他の色は、時間的に変化してもよい(例えば、最初の色と反対の方向に)。
【0107】
ここで重要なのは、2色間のオフセットを決定することである。これにより、等輝度の認識が確実となる。その後、等輝度構成における他の色の値を得るために、第1近似としてこのオフセットを、色のうちの1つの任意の値に適用することができる。
【0108】
試験中、好ましくは色Cの時間的変化は、可能な値の範囲(あるいは試験される値の範囲)での増加ステップ(例えば、変化する成分に限って0から255)で実行されるか、または減少ステップ(例えば、255から0)で実行される。純色でない色の場合、結果として得られる輝度(RGB成分と異なる形式が当業者に得られる)は、試験中、増加または減少するように選択されてよい。
【0109】
代替的に、色Cの変化は、第1の試験で決定された第1の等輝度値の周りの両分を考えてよい(本発明または他の方法の技術に基づく)。
【0110】
多色パターンの他の例が使われてもよい。これは例えば、より多くの色や、2つ以上の異なる色のペアを表示する多色パターンで上述のように2つずつ反転するものなどを含む。また、スクリーン10上の表示領域においてパターンが空間的に異なるものが考えられてもよい。これは例えば、四分の一スクリーン上の表示や、上半分(または右半分)や下半分(または左半分)上の表示を含む。
【0111】
以下の説明を簡単にするために、主に2色パターンを参照する。同時に表示されたこの2色は反転する(これは、例えば一様な背景上に表示されてよく、究極的には多色表示になってもよい)。
【0112】
図3aは、色Cを徐々に増加方向に変化させる(またはステップさせる)ことにより、色Cの時間的変化を制御する例を示す。こうして2つの色間の輝度の違いは時間的に変化する。この例では、色Cのゼロでない成分は20から220(両端の値は重要ではない)の間で、20ステップの単位で変化する。もちろん、試験時間を延長または短縮するために、あるいは例えば等輝度の決定精度を低下または向上させるために、他の試験範囲が他のステップ単位で使われてもよい。
【0113】
特に、等輝度値の近似値(すなわち、被験者2によって固定値Cと同じ輝度を持つと認識されたCの値。これは第1の試験で、本発明または他の方法の技術に基づいて既に決定された)周辺の第2の試験で、より高い精度(より狭い範囲で、より少ないステップ数)が使われてよい。
【0114】
図2に示される通り、Cの値の増加周波数Fstepは、マーキング周波数Ftagより低いように選ばれる。例えば、増加周波数Fstepは、マーキング周波数Ftagより3倍低い(図2。すなわち、3つの連続表示画像が同じCの色値を持つ)、10倍低い(図3a)、またはFtagの約数である。
【0115】
再び図1を参照すると、標識またはバイオマーカー生成部33は、画像取得装置20によって得られた被験者2の少なくとも1つの瞳の振動反応SIGrespから、瞳の振動強度信号SIGpowerを生成するように構成される。振動反応の一例は図3bに示される。
一方、瞳の振動強度信号の例は、図3dおよび3d’に示される。
【0116】
この信号SIGpowerは、瞳の振動反応のパワーを、動的2色刺激が表示されているときの、少なくとも1つの色の時間変化の関数として表す(図3a)。
【0117】
この信号SIGpowerを取得するための別の実施の形態を考えることもできる。
【0118】
第1の高速な方法は、2色パターンの色の各反転(時刻tでの)に反応する瞳の直径の変化の強度Aを決定することからなる。強度Aの各々は、瞳が反応中の瞳の直径の変化を定量化する。このような強度は、1つの係数内に瞳反応のパワーを表す(瞳の反応時間)。その後、こうして決定された強度から信号SIGpowerが形成される(図3d’を参照。ここでは決定された各強度A(t)が三角形で模式的に示される)。
【0119】
よりノイズに強い第2の方法は、振動反応SIGrespの周波数領域で機能する。この場合好ましくは、信号SIGpowerは、マーキング振動数における瞳の振動パワーを表す信号であり、前述のマーキング周波数における瞳の振動反応SIGrespの周波数成分Pi,tagの発展を、動的2色刺激を表示中(図2)の色Cの時間変化(図3a)の関数として表す。その後、こうして決定された周波数成分Pi,tagから信号SIGpowerが形成される(3dを参照)。
【0120】
これらの周波数成分の決定は、各色反転に対する完全な振動反応を取得することを必ずしも必要としない点に注意する。実際、既知の技術により、瞳の振動反応の周期の一部分から、これらの周波数成分を取得することができる。好ましい実施の形態は、完全な振動反応に依拠する。
【0121】
代替的に、または第1調波(first harmonic)Ftagと組み合わせて、マーキング周波数Ftagの調波(harmonics)、特に半調波Ftag/2のような低調波および/または2倍または第2高調波2*Ftagなどの高調波に焦点を当てることができる。この場合、各調波は後述のように別々に扱われる。それらの結果は、等輝度の唯一の2色構成を得るために、組み合わせることができる(平均の使用、または第1調波の結果を調整することなどによる)。
【0122】
このようにして、標識またはバイオマーカー生成部33は、任意の処理された調波の信号SIGpowerから、C(固定値)に関するCの等輝度を決定することができる。後に図3dおよび3eに関連して図4を参照して説明するように、この色等輝度は、信号SIGpowerの最小値に相当する動的2色刺激の2色等輝度構成に対応する。実際、瞳反応の強度(従ってその振動パワー)は、表示された刺激の輝度の変化に密接に関連する。従ってこれらは、輝度の変化が最小のとき(すなわち、被験者によって認識された、表示された2色パターンの色等輝度が最小のとき)、最小となる。
【0123】
次に図4を参照して、本発明の教示に従い、哺乳類の被験者の色認識における標識またはバイオマーカーを生成するための処理の一例を説明する。
【0124】
システム1からスタートすると、選択的なステップ40により、システム1を被験者2に対して調整することができる。特にこのステップは、被験者2および/または使われるパターンに応じて、周波数Ftagを決定することを目的とする。実際、瞳の反応時間は、被験者ごとに異なる(時には大きく)。また、試験の持続時間を削減するために、あるいは関係する測定を確実にするために、Ftagはなるべく大きいことが望ましいが、一方、被検者の瞳に反応時間を超えないことが望ましい。
【0125】
さらに、被験者の網膜のある領域に対して特に影響する条件を隔離するために、被験者の固定点に関して空間的に区別されたパターンが考えられてもよい。例えばアルツハイマー患者の場合、色の認識の差が存在してもよい。これに対し、局所的AMD患者によって認識された特定の領域(これらの領域は、病気による網膜の悪化領域に相当する)を認識するのは難しい。
【0126】
一般に調整ステップ40は、瞳の反応時間および使われる周波数Ftagを導出するために(例えば対応テーブルを用いて)、および/または、2色パターンを表示するのに優先領域を定義する被験者の感度領域を導出するために、被験者の瞳(通常は収縮時)を記録するステップからなる。
【0127】
例えば被験者2は、システム30によって制御されスクリーン10上に表示される、少なくとも1つの調整光フラッシュを与えられてよい(例えば、調整試験中における、黒いスクリーンから突然の白いスクリーンへの変化、黒いスクリーン上での突然の白い領域の出現、またはこの白い領域の位置の変化など)。
【0128】
装置20を用いた被験者2の瞳反応の画像の取得(フラッシュまたは複数のフラッシュ)により、瞳(特にその直径)の変化(収縮)を表す信号を得ることが可能となる。この信号から、通常の技術(例えば、フラッシュの開始時刻から、90%の収縮反応に至るまで掛かった時間など)を用いて、瞳の反応時間(おそらくは、いくつかの反応の平均)を測定することができる。典型的には、個々人の瞳反応時間は、0.5秒から2秒の範囲にある。
【0129】
この測定されたまたは計算された反応時間から、ステップ40は周波数Ftagを決定する。これは、限られた数のマーキング周波数の値を持つために、マッピングテーブル(これは、それぞれのFtagの値を反応時間範囲に関連付ける)を用いて達成することができる。マーキング周波数Ftagに関する周期は、反応時間の2倍、または測定された反応時間の何倍かに設定することができる。
【0130】
既定値としてのFtagの値は、概ね1.3から1.4Hzを使うことができる。
【0131】
被験者は固定的な点に保持されるが、装置はまた、スクリーンの複数の領域におけるフラッシュの表示に対する複数の反応から、より敏感な被験者の領域を決定する。その後この領域を、スクリーンの一部にのみ2色パターンを表示するために使うことができる。また最後に、対象被験者に応じて空間的に異なるパターンが表示される。
【0132】
ステップ41で、被験者2は、少なくとも1つの動的多色(典型的には2色)刺激を受ける。
【0133】
以下の説明は、被験者に単一の2色刺激を与えることに焦点を当てる。しかしながら、3次元の全RGB色空間にわたる被験者の色の相対感覚を取得するために、この被験者に、2つの連続する動的2色刺激(例えば、2つの異なる色のペアに基づくもの)を与えるように計画されてもよい。例えば、ある被験者に関し、RGペアの色等輝度を決定する試験を、それに続く2番目のGBペアの色等輝度を決定する試験と組み合わせることができる。その後、赤と青の間の相対感覚を直接推測することができ、当該被験者の色空間におけるすべての色の相対感覚が分かる。
【0134】
ここで使われる刺激は、2つの色のみが反転し、これらのうち少なくとも1つが時間的に変化するという意味で2色である。しかしながら、使われる多色刺激が、周波数Ftagで反転するいくつかの異なる色のペアであって、同じスクリーンに同時に表示されるものを含むことも予想される。
【0135】
ステップ41で、動的多色刺激を用いて哺乳類の被験者を刺激するためのコンピュータモジュール31は、2色パターンの表示(おそらく、優先表示領域における)と、2つの色CとCの周波数Ftagでの周期的反転を制御する(図2)。同時に色Cの輝度は、色制御部32の制御の下で、変化プロファイル410に従って時間的に変化する。図3aに示されるように、Cのゼロでない成分に関する変化プロファイルは、増加するものであってよい。
【0136】
ステップ42で、画像取得装置20は、赤外線スペクトルにおいて、モニタされる被験者2の瞳の画像を撮影し取得する。これらの画像はシステム30に送信され、メモリ420に記憶される。画像取得は、装置20の性能に応じて、毎秒25から1000フレームのサンプリングレートFsamplingで行われる。
【0137】
ステップ43で、取得された画像は、瞳の輪郭を検出し瞳の直径を測定するためのアルゴリズムを用いて処理される。これらの測定により、動的2色刺激を表示中の瞳の振動反応信号SIGrespを決定することが可能となる。この信号は、瞳の直径の時間発展を表す。
【0138】
図3bは、動的2色(赤-緑)刺激に対する瞳の振動反応信号SIGrespの一例を示す。このとき、赤の純色は(140、0、0)に設定され、緑の純色は図3aに示される曲線に従う(Fstep=0.0345または約29秒のステップ)。周波数Ftagは、0.345Hzに設定される。
【0139】
結果として得られるSIGrespは、システム30のメモリ430に記憶される。
【0140】
コンピュータシステム30に送信されるデータ量を削減するために、輪郭検出およびSIGresp生成のプロセスが画像取得装置20に埋め込まれてもよいことに注意する。
【0141】
振動反応SIGrespは、下記のようにステップ45から49で使うことができる。
実際、周波数Ftag(これは生理学的ノイズの周波数とは大きく異なる)を使用することは、この反応の良好なロバスト性を保証する。
【0142】
しかしながら、信号内の雑音を除去するために、この反応をフィルタすることも選択肢としてあり得る。
【0143】
この場合この方法は、得られた振動反応SIGrespをフィルタリングする選択的なステップ44に続く。このフィルタリングの目的の1つは、信号内のノイズ(例えば、目の瞬きに起因するノイズ。ここでは、輪郭検出アルゴリズムでは瞳を検出することができない)を除去することにある。
【0144】
ある実施の形態では、ステップ44は、1つ以上の目の瞬きにおける(すなわち輪郭検出アルゴリズムが、画像内で瞳を検出できないときの)振動反応信号SIGrespを補完する(好ましくは線形的に)からなる。従来の補完技術を使うことができる。
【0145】
例えば、Savitzky-Golayに基づくフィルタリングを使うことができる。
【0146】
フィルタされた信号は、システム30のメモリ440に記憶される。
【0147】
信号SIGpowerは、フィルタされたまたはフィルタされない信号SIGrespから生成される。
【0148】
前述の第1の実施の形態では、生成部33は、表示された2色刺激における色反転の時間を決定してよく、その後、対応する振動反応の各々における被験者2の瞳の直径の変化の強度A(t)を決定してよい。
【0149】
これは単に、色反転時における直径の値と、実質的に被験者の反応時間に相当する時間ウインドウにおける直径の端値(最大または最小)との差を決定する問題に過ぎないだろう。
【0150】
もちろん、強度を評価する他の方法、例えば直径の端値のパーセンテージを使うものや、反応の90%(またはそれより小さい)における直径の値を使うものを考えることもできる。
【0151】
すべての計算された強度は、色反転のそれぞれの時間に関連し、以下のステップ48および49で使われる信号SIGpowerを形成する(図3d’)。
【0152】
周波数領域に基づく第2の実施の形態では、得られた信号SIGrespは(フィルタされてもよい)は、周波数成分Ftagおよび/またはその調波の発展を解析するために、スペクトル領域に変換される。このため、信号SIGrespに、スライディング時間ウインドウWで離散高速フーリエ変換(DEFT)が適用される。これにより、ウインドウで解析される信号部分に対応する周波数スペクトルが得られる。その後、各解析時間ウインドウWに関し、周波数Ftagにおける周波数成分の値Pi,tag(および/または1つ以上の調波)が記憶される。
【0153】
以下の説明は、周波数成分Ftagに焦点を当てる。同様のアプローチは、興味のある任意の調波を取り扱うためにも使うことができる。
【0154】
図3bに、使われる解析時間ウインドウWについて、最初のウインドウWから最後のウインドウWまでを示す。スペクトル中のFtagにおける周波数成分の存在を保証するため、スライディング時間ウインドウWの幅は、マーキング周波数Ftagに関する周期Ttagに少なくとも等しい。図の例では、2*Ttag(またはそれより大きい)の値が選択される。こうして、tにセンタリングされたウインドウWから、ゼロでない成分P0,tagを得ることができる。
【0155】
各解析時間ウインドウWは、関連する時刻tにセンタリングされる。好ましくは、ウインドウWは、振動パワーを表す信号(値{Pi,tag}を取る)の最大分解能を取得するために、各サンプリング時間に関連付けられる。この場合、スライディング時間ウインドウWは、高速フーリエ変換の新たなアプリケーションの各々に関し、得られた反応SIGrespのサンプルだけシフトする。もちろん、解析ウインドウWをシフトさせるステップSTEPは、単一のサンプリング周期より大きくてもよい(この例では、Tsampling=1/Fsamplingが使われる)。いくつかのサンプリング周期に設定されたステップSTEPは、必要な計算とメモリサイズを削減する。
【0156】
瞳の振動反応SIGrespの周波数成分Ftagの発展を表す周波数Ftagにおける瞳の振動パワーSIGpowerを表す信号を得るために、プロセスは、最初にステップ45で、変数Tをゼロに初期化するプロセスを含んでもよい(各サンプルを処理するために)。
【0157】
その後、現在の時間ウインドウW(これは、処理されるサンプルT(すなわちti)にセンタリングされる)で定義される信号SIGrespの部分に、DEFTが適用される。図3cに、結果として得られる周波数スペクトルの模式的な例を示す。ウインドウWの幅に相当する周波数より低い周波数成分は存在せず、サンプリング周波数の半分の値より高い周波数も存在しないことに注意する(ナイキスト基準)。従ってFtagの調波成分は存在するだろう。
【0158】
このグラフは、Ftagにおける周波数成分Pi,tagが非常に優れた信号対雑音比を持つことを示す。なぜなら、Ftagは、被験者2の生理学的周波数(これは寄生的である)と大きく異なるからである。Pi,tagの値は、メモリ460に記憶される。これはステップ46である。
【0159】
DEFTは、必ずしも厳密に周波数Ftagにおける周波数成分を生成しないことが理解される。なぜなら、DEFTは離散的な値(サンプル)で動作するからである。また、値Pi,tagは、Ftagの近くで得られた周波数成分の値であってもよく、Ftagの周囲の2つ(またはそれより多く)の周波数成分の間の近似値(例えば線形近似)であってもよく、Ftagの周囲の2つ以上の周波数成分の平均値であってもよい。
【0160】
できるだけ高いサンプリング周波数Fsamplingおよび/またはウインドウサイズWを使うことにより、スペクトル内の(特にFtag周辺の)周波数サンプルの数が増えることに注意する。
【0161】
ステップ46の後で、すべてのDEFTが実行されたか否かが決定される(試験47で、i=N(Nは、試験周期中処理されるサンプルの数)であるかを確認する)。さもなければ、次のウインドウW上のDEFTを実行するために、変数”i”が、インクリメントされる(ステップ470)。
【0162】
すべてのウインドウを用いて(すなわち、反応SIGrespのすべてのピース上で)DEFTが適用されると、メモリ460は、すべてのPi,tagの値を記憶する。このPi,tagの値は、瞳から周波数Ftagまでの信号SIGpowerを形成する(図3dを参照)。
【0163】
任意の方法で生成された信号SIGpowerは、すでに被験者2における色認識の標識またはバイオマーカーである。実際これは、被験者2のロバストな生理学的記号である。後述のように、この信号の時間発展を解析することにより、病気やその悪化を検知することができる。多発性硬化症はその一例である。
【0164】
選択的なステップ48および49により、この標識またはバイオマーカーを洗練させることができる。信号SIGpowerの一般的な形は、横側領域より中央下側領域を示す。
【0165】
選択的なステップ48では、信号SIGpowerを数学的関数にマッチさせるために、信号SIGpowerを近似するためのアルゴリズムが実行される。特にこの信号を、区分的関数に合致させるように試みられる。この場合、各区分は、アフィン関数、指数関数その他の通常の関数に相当するものであってよい。
【0166】
図3dに示される例では、一般に信号の減少する部分(左)および一般に信号の増加する部分(右)にマッチさせるために、ピース(2つのピース)APPROXpowerごとに、指数関数が使われる。通常のマッピング近似技術を用いることができるが、ここではその詳細は述べる必要はないだろう。
【0167】
このようにして得られた信号APPROXpowerもまた、被験者2の色認識の指標またはバイオマーカーとして使うことができる。
【0168】
その後のステップ49は、信号SIGpowerまたはその近似値APPROXpowerを最小化する、色CのC値を決定するステップからなる。これは、通常の技術を用いて、信号SIGpowerまたは信号APPROXpowerの最小値MINを決定するステップと、変化プロファイル410を用いて、この最小値信号に対応する時刻tminにおけるの値を決定するステップと、を含む(図3eで再生された図3a)。
【0169】
この例では、Cとして、値C(tmin)=120が得られる。言い換えれば、図示された例では被験者2は、純粋な赤と緑との間の相対色等輝度を、C=(140、0、0)、C=(0、120、0)に関して認識する。
【0170】
結果として得られる等輝度499の構成は、被験者2における色認識の指標またはバイオマーカーとして使うことができる。
【0171】
この構成は、1つ以上のFtagの調波から決定された1つ以上の他の対応等輝度構成と組み合わせることができる。
【0172】
使われた動的多色刺激が、周波数Ftagで反転する複数の異なる色のペアを持つ場合は、信号SIGpowerまたは信号APPROXpowerの最小値MINは、この異なる色のペアの等輝度構成の全体に対応することに注意すべきである。すなわちこの等輝度構成は、別個に得られたそれぞれの色ペアの等輝度構成に個別に対応するのではない。
【0173】
ある実施の形態では、得られた等輝度構成は、反転変形プロファイル410(例えば、220から20にステップ的に減少する)を持つ試験を再現することによって、確認することができる。特に、被験者2の色CとCに関する平均等輝度構成を表すために、これらの2つの試験で得られた2つのC値の平均値を計算することができる。
【0174】
上記の方法は、4人の人間の被験者において、それぞれが45分の14セッションにわたって試験された。同様に、7匹の人間でない哺乳類の被験者において、20分の1セッションで試験された。選ばれたマーキング周波数は0.345Hzであり、これはすべての被験者に適用された。使われた2色パターンは図2のものであり、一方の色は固定され、他方の色はステップ的に変更された(図3に模式的に示される)。ピクセル解像度1920×1080、各色が8ビット、60Hzの平坦なスクリーン10が、被験者から67cmの距離に固定された。
【0175】
本発明者らは、すべての被験者に関して、試験体の2色パターンの刺激の輝度の等輝度構成までの変化によって引き起こされた瞳振動のパワーの減衰の最大値を観測した。
【0176】
本発明者らは、等輝度構成、すなわちユーザの個人的な標識を得るこの方法が、ITプロセスのモニタリングまたは個人的方法において明白な利点を持つことを見出した。
【0177】
図5から8に、このような個人的方法による制御を実行するためのいくつかの方法、従って医学分野に限られない等輝度構成のいくつかのアプリケーションを示す。
【0178】
本発明に係るコンピュータシステムにおけるプロセスの個人的方法による制御は、一般に以下のステップを含む。
上述の技術(例えば図4に示されるプロセス)を用いて、コンピュータシステムのユーザに関する少なくとも1つの色等輝度情報を決定するステップ(特に、動的多色(典型的には2色)刺激の等輝度構成が、信号(特にSIGpower)の最小値に対応するものとして決定される)と、
上記のように決定された少なくとも1つの色等輝度情報を、コンピュータシステムへのプロセスの入力データとして使うステップ。
【0179】
図5に、等輝度構成のコンピュータシステムディスプレイのスクリーンの較正への応用を示す。例えばスクリーン10(図1)は、ユーザ2のために較正されてよい。これによりユーザ2は、画像を表示し、その画像の色を、当該技術を用いて較正した他のスクリーン上で他のユーザが認識するのと同じ様に認識することができる。
【0180】
この方法の利点は、この方法が、中程度の解像度のカメラを備えたコンシューマデジタルシステム、例えばコンピュータモニタ、ラップトップ、デジタルタブレット、スマートフォン等において、そのディスプレイを較正するために利用できることにある。これは、複雑な部品を必要としない。
【0181】
図示された方法は、ステップ50で、例えば図4に示されるステップを用いて、第1の等輝度情報を決定するステップを含む。典型的には、赤-緑-青の色空間における、赤-緑、赤-青および緑-青の色ペアが考察される。ステップ50は、第1の色(例えば、緑)に関して決定された値を与える。このとき第2の色(例えば、赤)は、参照値、例えばrref=140(これは、赤(140、0、0)に対応する)を取る。このように、決定された値(上の例では、色(0、120、0)に関するg=120)は、第1の等輝度情報となる。
【0182】
選択的なステップ51で、やはり例えば図4に示されるステップを用いて、第2の等輝度情報を得ることができる。この第2の情報は、他の色ペア(例えば、赤-青)に関して得ることができる。上の例では、青の値=(0、0、170)は、赤(140、0、0)を参照して得られる。
【0183】
このようにして、2つの色等輝度情報(例えば、g=120、b=170)が、赤-緑-青の色空間における、赤-緑、赤-青および緑-青のうちの2つの異なる色ペアに関して得られる。等輝度の各色情報は、第1の色(それぞれ、緑および青)に関し、決定された値(g=120、b=170)を含む。一方、第2の色(いずれの場合も赤)は、赤(140、0、0)に関する参照値rref=140を取る。
【0184】
この例では、使われる色は、好ましくは純色である。
【0185】
ステップ52で、計算された値の差分δi(すなわち、得られた第1のgの値と対応する較正デフォルト値(ここでは、緑の成分から得られる)との差)が計算される。実際、この場合におけるアイデアは、スクリーン10のデフォルト較正値を調整するためのものである。
【0186】
これにより、表示スクリーン10の初期パラメータが与えられる。これらのパラメータは、メモリ30内にあってもよく、スクリーン10のコントローラ(図示しない)から与えられてもよい。これらのパラメータを用いて、第1の色(この場合は、緑)の色等輝度のデフォルトにより、スクリーン10に関するgdefault値を得ることができる。一方、第2の色(この場合は、赤)は、赤(140、0、0)に関する参照値rref=140を取る。説明を簡単にするために、スクリーン10の初期等輝度較正を(140、140、140)と仮定する。これは、すべての色成分が等輝度であることを意味する。
【0187】
その後のステップ52は、δi=g-gdefaultを計算するステップからなる。
【0188】
上の例では、δ1=120―140=-20である。
【0189】
較正パラメータの考察においてステップ50が参照値(この場合は、赤)に対する色等輝度値を与えない場合は、調節(例えば、第2の色が参照値を取るように、決定された等輝度構成の両方の色に関し、同じ単位数の加算/減算を行うことなど)がされてもよいことに注意する。
【0190】
選択的なステップ53も同様に、得られた第2の値と、対応する較正デフォルト値(この場合は、青の成分の)との差分δ2を計算する。
【0191】
この例では、δ2=b2-bdefault=170―140=+30である。
【0192】
未処理の第3の色ペアに関する等輝度構成は、ステップ50および51で得られた2つの構成から直接決定できることに注意する。この例では、例えば緑が参照値140に設定されたとき、緑-青の等輝度の構成は、ユーザが認識した青の等輝度の値bを表現していなければならない。この構成は、一定の輝度において、緑は、赤より20単位弱く、青より30単位強いことを示す。また、緑の参照セット(0、140、0)に関し、等輝度値bは190である。
【0193】
プロセスは、この(または、これらの)差分を用いてスクリーン10の較正を調整するために、ステップ54に続く。特に、ピクセル(より具体的には、すべてのピクセル)の表示は、決定された色等輝度情報gおよび/またはbに従って補正される。これは例えば、ピクセルを定義する色トリプレット(通常はRGB)を、2つの差分δ1およびδ2に基づいて、表示スクリーンの初期較正に従って調整することによって行われる。
【0194】
スクリーンのピクセルPiの色補正(r、g、b)の異なる変化を考えることができる。補正後の色は(rnew、gnew、bnew)で表される。
【0195】
いくつかの変化は、色成分のうちの1つの一定値として処理することができる。この例では、赤の成分rを不変とする(他の色成分を不変としても、同じ説明があてはまる)。すなわちrnew=rである。
【0196】
ある実施の形態では、ピクセルの補正は、前述の差分と同じ値だけピクセルの色を変化させることを含む。例えば、gnew=g+δ1、bnew=b+δ2である。
【0197】
図6aに、赤-緑の等輝度が線形であるときの、緑の成分gに関する、スクリーン構成におけるこの変化を示す。時6bに、赤-緑の等輝度がランダムであるときの、同様の変化を示す。
【0198】
ある実施の形態では、ピクセルの補正は、前述の差分値と、前述の参照値からの他のピクセル色の隔たりの両方の関数である値だけ、ピクセル色を変えることを含む。このアイデアは、ピクセル色の1つが多かれ少なかれ参照値(この参照値から、補正差分δ1およびδ2が決定された)と違っているかに基づいて変えることのできる補正を導入するためのものである。これにより、極端値(0、0、0)および(255、255、255)をこの補正における不変値と定義することで、補正値rnew、gnew、bnewを色メトリック空間内に(すなわち、それぞれを0と255との間に)保つことができる。
【0199】
赤は参照値として保たれる。赤の成分は140であるとき、他の緑および青の成分は、それぞれδ1およびδ2だけ補正される。表示されるピクセルが140と異なる赤の成分を保つ場合は、赤はより小さい値(これは、赤の成分の140からの隔たりによる)だけ補正される。値0および255における補正は0である。色成分は必ず整数であるため、端数処理が行われる。
【0200】
好ましくは、赤の成分140からの隔たり(すなわちrrefとrとの隔たり)に応じた変化関数δ1およびδ2は、この距離に関して線形である。
【0201】
この構成は、図6c(線形な赤-緑の等輝度)および6d(非線形な赤-緑の等輝度)に示される。従ってこの関数は、決定された等輝度点(140、160)(ここでは赤-緑のペアに関する)のいずれかの側で、区分的に線形である。
【0202】
この場合、以下が成り立つ。
new(r)=q(r)+δ1*r/140 (r<140の場合)
new(r)=q(r)+δ1*(255-r)/(255-140) (r>140の場合)
【0203】
他の実施の形態では、表示される色トリプレット(r、g,b)の補正は、一定のピクセルPの輝度で行われる。
【0204】
以下の、色のRGBトリプレットから計算された輝度の例(当業者には他の形式も存在する)を考える。
L(r、g,b)=0.2126*r+0.7512*g+0.0722*b
【0205】
これらの他の実施の形態は、以下の3つの式で表される未知の3つのシステムを解くステップを含む。
i-(rnew、gnew、bnew)=L(r、g,b
new=gnew(r
new=bnew(r
【0206】
本発明に従いスクリーンを較正するこの方法により、異なるスクリーンを用いて、異なるユーザにより、同じ様に(等輝度に関し)色を認識することが可能となる。
【0207】
図7および8に、等輝度構成のセキュリティへの応用を示す。これは例えば、認証および/または証明を含むセキュアコンピュータシステムに基づく、個人認証(ID制御)またはアクセス制御(自動車、金庫、ビル、ドア、データベース、銀行口座などのオンラインサービス)などである。
【0208】
個人を認証または証明するプロセスは、図1に示されるシステム1により実現することができる。
【0209】
図7に、システム30に個人2(例えばコンピュータシステムのユーザ)の認証/証明情報を記憶するための予備ステップを示す。これは、その後の本発明の教示に係る認証または証明を可能とすることを目的とする。
【0210】
ステップ70で、ユニークなユーザIDを含むユーザ2のプロファイルが取得される。例えばユーザは、PINコード、チップコード、ログインパスワード、生体認その他の任意の手段を用いて、自分自身をシステム30に対して認証する。
【0211】
ステップ71で、例えば図4に示されるプロセスを用いて、ユーザの目の片方に関する第1の等輝度情報が決定される。典型的には、赤-緑-青の色空間における、赤-緑、赤-青および緑-青の色ペアが考察される。ステップ71は、第1の色(例えば、緑)に関して決定された値を与える。このとき第2の色(例えば、赤)は、参照値(例えば、140、0、0)を取る。決定された値は、例えば図5に示される例ではg=120である。このようにして、この値が決定された第1の等輝度情報を構成する。
【0212】
選択的なステップ72で、やはり、例えば図4に示されるプロセスを用いて、同じ目に関する第2の等輝度情報を得ることができる。この第2の情報は、別の色ペア(例えば上述の例では、赤-青)に関して得ることもできる。この場合、赤(140、0、0)に関する参照赤rref=140に関して、青=(0、0、170)の値が得られる。
【0213】
このようにして、赤-緑-青の色空間における、赤-緑、赤-青および緑-青のうちの2つの異なる色ペアに関し、2つの色等輝度情報(例えば、g=120、b=170)が得られる。各色等輝度情報は、第1の色に関して決定された値(g=120、b=170)を含む。このとき第2の色(いずれの場合も赤)は、参照値(例えば、140、0、0)を取る。
【0214】
ステップ73で、関心対象の目に関する2つの色等輝度情報(この場合は、g=120、b=170)は、1つのユーザID(ここではユーザプロファイル内の)に従って、コンピュータシステム30のメモリに記憶される。
【0215】
これらの2つの情報は、図8のプロセスでユーザの2の認証または証明を肯定または否定するために使われるという意味で参照色等輝度情報であり、grefおよびbrefと表される。これらは、好ましくは、暗号化された形式でおよび/またはプロテクトメモリ(例えば、セキュアモジュール)内に記憶される。
【0216】
以上で図7に示される予備的なステップは完了する。
【0217】
図8に示されるように、ここではユーザ2は、システム30によって管理されるサービス/システムにアクセスすることを望むが、これは認証または証明を必要とする。
【0218】
ステップ81で、ユーザ2は、予備的な認証ステップを実行する。このステップは、認証/証明プロセス(ステップ82以降)を実行する前に、当該ユーザに関する、ユーザプロファイルおよび参照grefおよびbrefの色等輝度情報を獲得することを目的とする。
【0219】
前述のステップ70と同様に、この予備的な認証ステップは、ユーザから与えられたPINコード、ユーザを特定するチップカード、ユーザのログインパスワード、ユーザの生体認証(体型測定、指紋、虹彩画像)その他の手段に基づいてよい。
【0220】
図7で使われたものと同じ参照赤(140、0、0)に関し、ユーザの関連する目の色等輝度情報gおよびbを決定するために、プロセスはステップ82および83に進む。これらのステップは、前述のステップ50および51、またはステップ71また72に似ている。従って、これらは例えば図4に示されるプロセスを使う。
【0221】
これらのステップの処理を削減することを意図したある実施の形態では、ステップ84が与えられる。このステップ84は、ステップ80で得られたユーザの認証に応じて、多色(典型的には2色)パターン(これは、82および/または83を決定するときに変化する)の色を時間的に変化させるための変化値に関して、少なくとも1つの制限範囲(可能な値の範囲に関する)を決定するためのものである。典型的には、これらのステップ82および83を実行中に使われる変化プロファイル410は、図3に示されるものの一部のみ(例えば、80と160の間)であってもよい(もし、認証されるユーザが、約120の参照等輝度の値を持っていることが既知であれば)。この制限された範囲は、ユーザプロファイルで示すこともできるし(識別子により)、その場でランダムに生成することもできる(ユーザの参照等輝度値の近くで)。
【0222】
続くステップ85でプロセスは、ステップ82および/または83で決定された色等輝度情報を、対応する参照色等輝度情報と比較する。これらの情報は、ステップ73でユーザのために記憶されたものである。
【0223】
比較は必ずしも厳密でなくてもよく、誤差のマージン(例えば、各色成分に関する可能な値の0-255スケールでの数単位)を含んでいてもよい(ステップ86)。
【0224】
ユーザ2の認証または証明は、色等輝度情報が一致したときにのみ、すなわち、対象となる目に関しステップ82および83で決定されたgおよびbが、それぞれgrefおよびbrefであるときにのみ認められる(ステップ87)。この場合、サービスまたはシステムに対するアクセスが認証される。
【0225】
さもなければ、認証または証明は拒絶される(ステップ88)。
【0226】
離散的で人間の数に比べて少数の可能な等輝度情報が与えられる場合は、本発明に係る等輝度情報に基づく認証または証明は、強力なユーザ認証または証明(例えば、生体データ)と組み合わされることが望ましい(例えば、前述のステップ80で)。このようにして、本発明に係る等輝度情報に基づく認証または証明は、ユーザが確かに生きていることを保証するという点で、生体的な認証または証明をセキュアなものとする。
【0227】
前述の認証/証明の例は、ユーザの1つの目で認識された等輝度構成に基づく。一般にユーザの2つの目は同じ様には色を認識しないが、その認識の違いは軽微であり、重要ではないことが見出された。従って、特定の実施の形態では、両目の等輝度構成に基づいて(前述のように)、個人を認証/証明することができるだろう。例えば、第1の認証ステップを第1の目(例えば、右目)で実行し、その後第2の認証ステップを他方の目で実行してもよい。このようにこの実施の形態では、安全性が向上する。
【0228】
代替的に、個人の2つの瞳の反応の違いが考慮され、前述のセキュリティの目的で個人を認証/証明するための要素として使われてもよい。例えば、2つの等輝度構成の違い(例えば、赤が参照値に設定されたときの緑における違い)が使われてもよい。
【0229】
前述の例は本発明の実施の形態に過ぎず、これらに限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8