(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-09
(45)【発行日】2022-06-17
(54)【発明の名称】半導体受光素子
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0232 20140101AFI20220610BHJP
【FI】
H01L31/02 D
(21)【出願番号】P 2022517291
(86)(22)【出願日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2022001752
【審査請求日】2022-03-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000161862
【氏名又は名称】株式会社京都セミコンダクター
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】磯村 尚友
(72)【発明者】
【氏名】大村 悦司
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-216976(JP,A)
【文献】特開2000-188415(JP,A)
【文献】特許第6921457(JP,B1)
【文献】国際公開第2021/131758(WO,A1)
【文献】特開2002-151668(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0091491(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/0392,31/08-31/119
(57)【特許請求の範囲】
【請求項4】
前記第2面が前記入射光の波長以上の高さの凹凸を有するように粗面に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の半導体受光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光計測、光通信に用いられる赤外光を受光する半導体受光素子に関し、特に光パルスを受光し終えた後の立下り応答特性を向上させた半導体受光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光通信に用いられる光ファイバケーブルの損失状態、欠陥位置を測定する光パルス試験器(Optical Time Domain Reflectometer:OTDR)が広く利用されている。この光パルス試験器は、敷設されている光ファイバケーブルの一端からパルス光を入射し、このパルス光が光ファイバケーブル内を伝搬するときに生じるレイリー散乱光のうちの入射側に戻る後方散乱光を受光する。そして、後方散乱光の量(強度)に基づいて損失を測定し、パルス光を入射してから後方散乱光を受光するまでの時間に基づいて光パルス試験器からの距離を測定する。
【0003】
光パルス試験器と測定対象の光ファイバケーブルの一端を接続した接続点では、光ファイバケーブルにパルス光が入射する際に、フレネル反射が生じることが避けられない。そのため、光パルス試験器からパルス光を出射したときに、この接続点でのフレネル反射光が最初に光パルス試験器に受光され、その後で後方散乱光が受光される。
【0004】
この後方散乱光は、フレネル反射光と比べて光強度が極めて小さい。それ故、光パルス試験器の受光素子は、パルス光のパルス幅に相当するフレネル反射光の受光時間と、フレネル反射光の受光が終わってから後方散乱光を検知可能になるまでの応答時間(立下り時間)が経過するまでは、後方散乱光を検知することができない。従って、後方散乱光を検知することができない時間に相当する光パルス試験器からの光の往復距離内に欠陥が存在していても、この欠陥を検出することができないデッドゾーンが生じる。
【0005】
デッドゾーンを小さくするために、受光素子の立下り時間を短縮することが要求されている。例えば特許文献1のように、受光素子の立下り時間を短縮するために、受光部の第1光吸収層を透過した光を第2光吸収層で吸収することにより、第1光吸収層に再入射する光を減少させる半導体受光素子が知られている。反射して第1光吸収層に再入射する光が少ないので、第1光吸収層を光が透過し終わると光電流が急激に減少し、立下り時間が短縮される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の半導体受光素子は、入射した光を光電流(電気信号)に変換するための第1光吸収層と、第1光吸収層を透過した光を吸収することにより第1光吸収層に再入射しないようにするための第2光吸収層を有する。そのため、構造が複雑になると共に、結晶成長させるため形成することが容易ではない2つの光吸収層を別々に形成する必要があるので、製造コストが上昇してしまう課題がある。
【0008】
本発明の目的は、簡単な構造で受光部の光吸収層を透過した光が受光部に再入射しないように構成した半導体受光素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明の半導体受光素子は、光通信用の赤外光領域の入射光に対して透明な半導体基板の第1面側に、光吸収層を有する受光部を備えた半導体受光素子において、前記半導体基板の前記第1面に対向する第2面側には、前記受光部に入射して前記光吸収層を透過した入射光が到達する領域に、前記入射光を前記第2面に向けて反射する反射部を備え、前記反射部で反射されて前記第2面に到達した光が前記第2面で反射されて到達する前記半導体基板の端面は、前記入射光の波長以上の高さの凹凸を有するように粗面に形成されたことを特徴としている。
【0010】
上記構成によれば、半導体受光素子は、半導体基板の第1面側に光吸収層を有する受光部を備え、光通信に使用される赤外光領域の光を受光する。そして、半導体基板の第2面側には、受光部に入射して光吸収層を透過した光が到達する領域に、この入射光を半導体基板の第2面に向けて反射する反射部を備えている。反射部で反射された反射光は、半導体基板の第2面で反射されて半導体基板の端面に到達する。この半導体基板の端面が、入射光の波長以上の高さの凹凸を有する粗面に形成されているので、この端面に到達した光の大部分は、端面で反射されない。従って、受光部に入射して光吸収層を透過した光の受光部への再入射を低減することができ、半導体受光素子の立下り時間を短縮することができる。
【0011】
請求項2の発明の半導体受光素子は、請求項1の発明において、前記反射部は、2つの平坦な反射面を有するように前記半導体基板を前記第2面側から前記第1面側に向かって凹入させた断面V字形の溝に形成されたことを特徴としている。
上記構成によれば、溝長を長く、且つ溝幅を大きくしながら溝深さを浅くすることができるので反射部を大きく形成することが容易である。そして、この反射部によって受光位置ずれを許容して光吸収層を透過した入射光を半導体基板の第2面に向けて反射させることができる。従って、受光部に入射して光吸収層を透過した光の受光部への再入射を一層低減することができる。
【0012】
請求項3の発明の半導体受光素子は、請求項1の発明において、前記第2面が前記半導体基板の(100)面であり、前記反射部の反射面が前記半導体基板の(111)面であることを特徴としている。
上記構成によれば、反射部の反射面が平坦になると共に反射面の傾斜角度が一定になる。反射部の反射面が平坦なので、受光部に入射して光吸収層を透過した入射光が受光部に戻るように反射部で散乱されることを防止することができる。また、反射面の傾斜角度が一定なので、受光部に入射して光吸収層を透過した光を半導体基板の第2面に向けて確実に反射することができる。従って、受光部に入射して光吸収層を透過した光の受光部への再入射を一層低減することができる。
【0013】
請求項4の発明の半導体受光素子は、請求項1の発明において、前記第2面が前記入射光の波長以上の高さの凹凸を有するように粗面に形成されたことを特徴としている。
上記構成によれば、半導体基板の第2面が粗面なので、反射部で反射されて半導体基板の第2面に到達した光の反射を低減することができ、半導体基板の端面で反射される光を一層低減することができる。従って、受光部に入射して光吸収層を透過した光の受光部への再入射を一層低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の半導体受光素子によれば、簡単な構造で受光部の光吸収層を透過した光が受光部に再入射しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例に係る半導体受光素子の斜視図である。
【
図2】
図1の半導体受光素子を光入射側から見た平面図である。
【
図4】半導体基板の端面に形成されるマイクロテクスチャの断面モデル図である。
【
図5】マイクロテクスチャによる反射率を示すグラフである。
【
図7】半導体基板の第2面も粗面に形成された場合の光の反射の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0017】
半導体受光素子1は、光通信用の赤外光領域(波長λが1100~1600nmの領域)の入射光を受光する例えばPINフォトダイオード又はアバランシェフォトダイオードを備えている。ここでは、PINフォトダイオードを備えた半導体受光素子1の例を説明する。
【0018】
図1~
図3に示すように、半導体受光素子1は、光通信用の赤外光領域の入射光に対して透明な単結晶の半導体基板2として、例えばn-InP基板を有する。この半導体基板2の第1面2a(表面)は半導体基板2の(100)面であり、この第1面2a側に、入射光を吸収する光吸収層4として例えばInGaAs層と、半導体層5としてn-InP層が形成されている。半導体層5は、例えばZnが選択的にドープされたp型拡散領域5aを有する。p型拡散領域5aに接する光吸収層4の領域が光吸収領域4aであり、p型拡散領域5aと光吸収領域4aと半導体基板2によって受光部6であるPINフォトダイオードが形成されている。半導体層5、光吸収層4の厚さは夫々適宜設定され、例えば0.5~5μmの厚さに形成されている。
【0019】
半導体層5の表面は、p型拡散領域5aに連通する開口部7aを有する保護膜7(例えばSiN膜、SiON膜等)に覆われている。保護膜7は、受光部に入射する光の反射防止機能を備えていてもよい。この開口部7aを介してp型拡散領域5aに接続するアノード電極8が形成されている。尚、開口部7aがp型拡散領域5aの内縁部よりも内側に形成され、p型拡散領域5aが露出していてもよい。
【0020】
p型拡散領域5aの大きさ、形状は夫々適宜設定され、例えば直径が10~200μmの円形に形成されている。半導体基板2の第1面2aが露出した部分には、この第1面2aに接続するカソード電極9が形成されている。アノード電極8及びカソード電極9は、例えばクロム、金を含む金属膜を選択的に堆積することによって形成されている。受光部6で光電変換された光電流は、アノード電極8とカソード電極9を介して外部に出力される。
【0021】
半導体基板2の第1面2aに対向する第2面2b側(裏面側)には、半導体基板2に対して第1面2a側から入射するように外部から受光部6に入射して、光吸収層4の光吸収領域4aを透過した光が到達する領域に、反射部11を備えている。この反射部11は、受光部6の光吸収層4を透過した光を、半導体基板2の第2面2bに向けて反射させる。
【0022】
反射部11は、2つの平坦な反射面11a,11bを有するように、半導体基板2を第2面2b側から第1面2a側に向かって凹入させた断面V字形の溝に形成されている。この溝の幅は受光部6の直径と同等又は同等以上に形成され、溝内に反射膜として例えば金を含む金属膜が形成されていてもよい。断面V字形の溝なので、反射部11を大きく形成することが容易である。
【0023】
反射面11a,11bは、反射面11aの法線N1及び反射面11bの法線N2が、半導体基板2の第1面2aの法線N0に対して45°よりも大きい角度θで夫々交差するように形成されている。これにより、受光部6に入射して光吸収層4を透過した光を半導体基板2の第2面2bに向けて反射させることができる。
【0024】
断面V字形の溝は、エッチング速度が結晶面方位に依存する異方性を有する公知のエッチング液として、例えばブロム-メタノール溶液を用いて、公知の異方性エッチングによって形成される。具体的には、半導体基板2の第2面2bにエッチングマスク層を形成し、この第2面2bの露出部分を異方性エッチングすることによって、半導体基板2のエッチング速度が遅い(111)面を露出させる。これにより、半導体基板2の(111)面である2つの反射面11a,11bが形成される。
【0025】
半導体基板2の(100)面と(111)面は54.7°の角度で交差するので、反射面11a,11bの法線N1,N2は第1面2aの法線N0に対して角度θ=54.7°で夫々交差する。尚、断面V字形の溝は、角度θが45°よりも大きくなるように、例えばイオンビームによるエッチングによって形成することもできる。
【0026】
半導体基板2の4つの端面のうち、反射面11a,11bが夫々臨む2つの端面2c,2dは、微細な凹凸からなるマイクロテクスチャ12が形成されて粗面になっている。マイクロテクスチャ12は、半導体基板2と空気の間の屈折率が連続的に変化するように作用し、端面2c,2dにおける光の反射を軽減している。
【0027】
図4は、マイクロテクスチャ12の断面モデル図である。マイクロテクスチャ12は、半導体基板2を物理的に加工して形成され、断面が三角形状の微細な複数の突起12aを有する。マイクロテクスチャ12の突起12aの高さをh、突起12aの基端の幅をb、突起12aの配設ピッチをpとし、これらの平均値を夫々平均高さH、平均幅B、平均ピッチPとする。
【0028】
図4のマイクロテクスチャ12を備えた端面2cの反射率のシミュレーション結果を
図5に示す。入射光の波長λに対する複数の突起12aの平均高さHの比率(H/λ)と反射率の関係が、端面2cの断面における複数の突起12aの密集度別に曲線L1~L3で示されている。複数の突起12aの密集度は、複数の突起12aの平均ピッチPに対する複数の突起19aの平均幅Bの比率(B/P)で表される。曲線L1はB/P=0.2に対応し、曲線L2はB/P=0.8に対応し、曲線L3はB/P=1に対応する。
【0029】
突起12aがない平坦な端面2c(平均高さH=0、つまりH/λ=0)の場合には、反射率が27.4%であるが、波長λに対する複数の突起12aの平均高さHの比率(H/λ)が大きいほど反射率が小さい傾向がある。また、複数の突起12aの密集度(B/P)が大きいほど反射率が小さい。尚、入射光は、端面2cに垂直に入射するものとしているが、入射の角度を変えても上記の傾向は大きく変化しない。
【0030】
図5によれば、波長λに対する複数の突起12aの平均高さHの比率(H/λ)が1以上(複数の突起12aの平均高さHが波長λ以上)であって、複数の突起12aの密集度(B/P)が0.8以上であれば、反射率を5%以下に低減することができる。また、曲線L3で示す複数の突起12aの密集度(B/P)が1の場合には、波長λに対する複数の突起12aの平均高さHの比率(H/λ)が1以上のときに反射率を1%以下に低減することができる。
【0031】
このように反射率を低減するために、半導体基板2の端面2c,2dには、入射光の波長λ以上の平均高さHを有し、且つ密集度(B/P)が0.8以上となるように、好ましくは密集度(B/P)が1となるように形成された複数の突起12aを備えたマイクロテクスチャ12が形成されている。尚、複数の突起12aの間を溝とし、溝の深さと溝底の幅と溝のピッチを用いて上記と同様にして、入射光の波長λ以上の平均深さの溝であって、マイクロテクスチャ12の断面における溝底の幅の割合が20%以下の溝を備えていると言うこともできる。
【0032】
マイクロテクスチャ12は、例えば支持フィルムに貼り付けられたウェハの状態の半導体基板2をダイシングブレードによって研削して分割する際に形成される。ダイシングブレードに入射光の波長λよりも大きい粒径の砥粒が固着されている場合に、入射光の波長λ以上の高さの突起12aを形成可能である。ダイシングブレードの回転速度、移動速度などの加工条件については、適切に選択される。尚、端面2c,2d以外の端面にもマイクロテクスチャ12が形成されてもよい。
【0033】
図6に示すように、半導体受光素子1の外部から受光部6に、半導体基板2の第1面2aに垂直に入射光Iが入射する。入射光Iは頂角が例えば14°程度の円錐状に広がって空気中を進行する。受光部6に入射した入射光Iの一部は受光部6で光電変換され、光電変換されなかった光が光吸収層4(光吸収領域4a)を透過して反射部11に到達する。
【0034】
入射光Iのうちの反射部11に到達した光は、反射面11a,11bによって半導体基板2の第2面2bに向けて反射される。反射面11aで反射された反射光R1は、半導体基板2の第2面2bで反射されて端面2cに到達する。端面2cにはマイクロテクスチャ12が形成されているので、反射光R1の大部分は、端面2cで反射されずに半導体受光素子1の外部に出て、半導体基板2側から受光部6の光吸収層4(光吸収領域4a)に再入射しない。
【0035】
同様に、反射面11bで反射された反射光R2は、第2面2bで反射され、マイクロテクスチャ12が形成された端面2dに到達するので、反射光R2の大部分は受光部6に再入射しない。尚、反射部11で第2面2bに向けて反射された反射光R1,R2の一部が、第2面2bで反射されずにマイクロテクスチャ12を有する端面2c,2dに直接到達しても、端面2c,2dでほとんど反射されないので、受光部6への再入射を低減することができる。
【0036】
図7のように、半導体基板2の端面2c,2dのマイクロテクスチャ12と同様のマイクロテクスチャ12が、半導体基板2の第2面2bにも形成されていてもよい。半導体基板2の第2面2bのマイクロテクスチャ12は、例えば波長λよりも大きい粒径の砥粒を含む研磨剤を用いて第2面2bを研磨することによって形成することができる。半導体基板2の第2面2bでの反射が低減されるので、反射光R1,R2が受光部6に再入射することが一層低減される。
【0037】
図8に示すように、入射光Iのうち受光部6の光吸収層4を透過した光を、反射部11の反射面11aのみで半導体基板2の第2面2bに向けて反射するようにしてもよい。反射面11aで反射された反射光R1は、第2面2bで反射され、マイクロテクスチャ12が形成された端面2cに到達するので、受光部6への再入射を低減することができる。
【0038】
反射面11aと反射面11bの交差部分で直線Lに沿うように分割することにより、半導体受光素子1を小型化することも可能である。図示を省略するが、直線Lで分割される反射面11b側の半導体基板2にも受光部6、アノード電極8,カソード電極9、マイクロテクスチャ12を備えた端面を形成して、1つのV字形の溝に対して対称に半導体受光素子1を形成することもできる。
【0039】
上記半導体受光素子1の作用、効果について説明する。
半導体受光素子1は、半導体基板2の第1面2a側に、光吸収層4を有する受光部6を備え、光通信に使用される波長域(λ=1100~1600nm)の光を受光して、光電変換により光電流を出力する。半導体基板2の第2面2b側には、受光部6に入射した入射光Iのうち、光吸収層4(光吸収領域4a)を透過した光が到達する領域に、この光を半導体基板2の第2面2bに向けて反射する反射部11を備えている。
【0040】
反射部11で反射された反射光R1,R2は第2面2bで反射されて半導体基板2の端面2c,2dに到達する。この半導体基板2の端面2c,2dが、入射光Iの波長以上の高さの凹凸を有する粗面に形成されているので、この端面2c,2dに到達した反射光R1,R2の大部分が端面2c,2dで反射されずに半導体受光素子1の外部に出てゆく。従って、受光部6に入射して光吸収層4を透過した光の受光部6への再入射を低減することができ、半導体受光素子1の立下り時間を短縮することができる。
【0041】
また、反射部11は、2つの平坦な反射面11a,11bを有するように半導体基板2の第2面2b側から第1面2a側に向かって凹入させた断面V字形の溝に形成されている。これにより、溝長を長く、且つ溝幅を大きくしながら溝深さを浅くすることができるので、反射部11を大きく形成することが容易である。この反射部11によって受光位置ずれを許容して、受光部6の光吸収層4を透過した光を半導体基板2の第2面2bに向けて反射させることができ、この光吸収層4を透過した光の受光部6への再入射を一層低減することができる。
【0042】
半導体基板2の第2面2bがこの半導体基板2の(100)面であり、反射部11の反射面11a,11bが半導体基板2の(111)面なので、反射面11a,11bが平坦になると共に反射面11a,11bの傾斜角度が一定になる。従って、入射光Iのうち光吸収層4を透過した光が受光部6に戻るように反射部11で散乱されることを防止することができる。また、反射面11a,11bの傾斜角度が一定なので、受光部6に入射して光吸収層4を透過した光を半導体基板2の第2面2bに向けて確実に反射することができる。それ故、受光部6の光吸収層4を透過した光の受光部6への再入射を一層低減することができる。
【0043】
半導体基板2の第2面2bが入射光Iの波長以上の深さの凹凸を有する粗面である場合には、反射部11で反射されて第2面2bに到達した反射光R1,R2の反射を低減することができる。従って、半導体基板2の端面2c,2dに到達する反射光R1,R2が少なくなり、端面2c,2dで反射される光を一層低減することができるので、受光部6に入射して光吸収層4を透過した光の受光部6への再入射を一層低減することができる。
【0044】
反射部11が形成される断面V字形の溝の長さは、受光部6の大きさと同等に形成されていてもよい。受光部6は、例えば増倍層を備えたアバランシェフォトダイオードでもよく、上記と異なる材料、異なる形状で形成されたフォトダイオードであってもよい。その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はその種の変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0045】
1 :半導体受光素子
2 :半導体基板
2a :第1面
2b :第2面
2c,2d:端面
4 :光吸収層
4a :光吸収領域
5 :半導体層
5a :p型拡散領域
6 :受光部
7 :保護膜
7a :開口部
8 :アノード電極
9 :カソード電極
11 :反射部
11a:第1反射面
11b:第2反射面
12 :マイクロテクスチャ
12a:突起
【要約】
【課題】簡単な構造で受光部の光吸収層を透過した光が受光部に再入射しないように構成した半導体受光素子を提供すること。【解決手段】半導体受光素子(1)は、光通信用の赤外光領域の入射光に対して透明な半導体基板(2)の第1面(2a)側に、光吸収層(4)を有する受光部(6)を備え、半導体基板(2)の第1面(2a)に対向する第2面(2b)側には、受光部(6)に入射して光吸収層(4)を透過した入射光が到達する領域に、入射光を半導体基板(2)の第2面(2b)に向けて反射する反射部(11)を備え、反射部(11)で反射されて半導体基板(2)の第2面(2b)に到達した光が半導体基板(2)の第2面(2b)で反射されて到達する半導体基板(2)の端面(2c,2d)は、入射光の波長以上の高さの凹凸を有するように粗面に形成された。