IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニューシード ニュートリショナル オーストラリア ピーティーワイ リミテッドの特許一覧

特許7086329エリートイベントキャノーラNS-B50027-4
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】エリートイベントキャノーラNS-B50027-4
(51)【国際特許分類】
   A01H 6/20 20180101AFI20220613BHJP
   A01H 5/10 20180101ALI20220613BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20220613BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220613BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20220613BHJP
   A23D 9/02 20060101ALI20220613BHJP
   A61K 31/202 20060101ALI20220613BHJP
   A61K 36/31 20060101ALI20220613BHJP
   C12N 15/53 20060101ALN20220613BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20220613BHJP
   A61P 3/02 20060101ALN20220613BHJP
【FI】
A01H6/20 ZNA
A01H5/10
A01H5/00 A
C12N5/10
C12N15/11 Z
A23D9/02
A61K31/202
A61K36/31
C12N15/53
C12Q1/686 Z
A61P3/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019518180
(86)(22)【出願日】2017-06-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 US2017038047
(87)【国際公開番号】W WO2017219006
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-05-29
(31)【優先権主張番号】62/351,246
(32)【優先日】2016-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【微生物の受託番号】ATCC  PTA-123186
(73)【特許権者】
【識別番号】522058486
【氏名又は名称】ニューシード ニュートリショナル オーストラリア ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ウェンシャン
(72)【発明者】
【氏名】ディヴァイン,マルコム
(72)【発明者】
【氏名】レオンフォルテ,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ゴロロ,ネルソン
(72)【発明者】
【氏名】バッザ,グレッグ
(72)【発明者】
【氏名】タン,シュンシェー
(72)【発明者】
【氏名】ペトリー,ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】シン,スリンダー
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-528027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01H 6/20
A01H 5/10
A01H 5/00
C12N 5/10
C12Q 1/686
C12N 15/11
A23D 9/02
A61P 3/02
A61K 31/202
A61K 36/31
C12N 15/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同系交配のキャノーラ系統NS-B50027-4の種子であって、前記同系交配のキャノーラ系統の種子は、ATCC受託番号PTA-123186の下で寄託されている、種子。
【請求項2】
請求項1に記載の種子の成長により生産されたキャノーラ植物又はその一部分。
【請求項3】
前記一部分は、種子、葉、花粉、胚、根、根端、鞘、花、胚珠、柄、細胞、原形質体、あるいは組織培養物の少なくとも一つであることを特徴とする請求項2に記載のキャノーラ植物又はその一部分。
【請求項4】
請求項2に記載の植物の種子を得る工程、及びキャノーラ油を得るために種子を処理する工程を含む、キャノーラ油を生産する方法。
【請求項5】
請求項2に記載の植物の種子の中のドコサヘキサエン酸を生産する方法であって、該方法は、前記植物を栽培する工程を含む、方法。
【請求項6】
請求項5におけるように栽培された植物の種子。
【請求項7】
請求項2に記載のキャノーラ植物又はその一部分、または前記植物の誘導体あるいはハイブリッドであって、
(a)配列番号43(TGGAGGTGTTCAAACACT)及び配列番号44(ATAGTATTAGTATACAGA)、これらのいずれか、あるいは両者と少なくとも95%一致する配列、またはその補体
(b)配列番号45(GGCTAAGGTAACACTGAT)及び配列番号46(CAGTGTTTGAAGGACAGA)、これらのいずれか、あるいは両者と少なくとも95%一致する配列、またはその補体
(c)配列番号47及び配列番号48、これらのいずれか、あるいは両者と少なくとも95%一致する配列、またはその補体または、
(d)配列番号49及び配列番号50、これらのいずれか、あるいは両者と少なくとも95%一致する配列、またはその補体
から選択される核酸分子の少なくとも一対を含み、
ここで、前記植物の誘導体あるいはハイブリッドは、請求項1に記載の同系交配のキャノーラ系統NS-B50027-4の種子由来の形質を表わすことを特徴とする、
請求項2に記載のキャノーラ植物又はその一部分、または前記植物の誘導体あるいはハイブリッド。
【請求項8】
前記植物は、
(i)配列番号40の位置2090から14201までに示される核酸配列から成る、第一の遺伝子導入の発現カセット及び
(ii)配列番号41の位置1268から47773までに示される核酸配列から成る、第二の遺伝子導入の発現カセット
を含むことを特徴とする請求項2に記載のキャノーラ植物。
【請求項9】
請求項2に記載の植物、またはそれらの誘導体あるいはハイブリッドの少なくとも95%の種子を含む種子の集まりであって、
前記種子は、5至16%のドコサヘキサエン酸(DHA)(種子における全脂肪酸の重量%)、あるいは5至17%の長鎖多不飽和脂肪酸(種子における全脂肪酸の重量%としてのエイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、及びDHAの合計)を含む、
種子の集まり。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年6月16日出願の米国仮特許出願第62/351,246号の利益を主張するものであり、これは全ての目的のために本明細書に完全に組み込まれるものである。
【0002】
配列表
本出願は配列表を包含しており、これは、EFS-Webを介してASCIIフォーマットで提出され、その全体を引用することで本明細書に組み込まれるものである。
【0003】
技術分野
本実施形態は、キャノーラの育種及び農作物の分野、具体的にはエリートイベントNS-B50027-4に関連する。
【背景技術】
【0004】
キャノーラは、世界の多くの区域で重要な油料作物である。キャノーラ油の脂肪酸組成物は、短鎖オメガ-3を含む一不飽和及び多不飽和両方の脂肪酸が豊富であるが、長鎖オメガ-3脂肪酸は不足している。長鎖オメガ-3(LC-ω3)脂肪酸には健康上の利益が確立されているが、現在ではLC―ω3脂肪酸は、主として藻類から直接、或いは藻類を食べる海水魚から得られる。食物由来のLC-ω3脂肪酸、具体的にドコサヘキサエン酸(22:6 n-3;DHA)及びエイコサペンタエン酸(20:5 n-3;EPA)の認識は、消費可能な魚油の需要の劇的な増加に寄与した。故に、ヒトによる消費のために、LC-ω3脂肪酸の代替的で直接的なソースが必要とされている。加えて、タイセイヨウサケなどの養殖魚は食物由来の脂肪酸に比例して脂肪酸を蓄積させるので、魚用飼料のLC多不飽和脂肪酸(LC-PUFA)の量を維持し、その次に、養殖魚中のこれらの脂肪酸の存在を確保する必要がある。従って、水産養殖に使用され得るLC-PUFAが豊富なソースが必要とされている。例えば、水産養殖での使用の他、ヒトによる直接消費のために、LC-PUFA、具体的にDHAなどLC-ω3脂肪酸を生産することができるキャノーラが必要とされている。しかし、分子遺伝学による植物の育種及び操作の達成にもかかわらず、野生の魚で生産されたものに近いLC-PUFA含有量を持つキャノーラ油の商用の供給源は存在しない。更に、キャノーラ栽培品種(F1雑種ではない)は、確実な方式での商品作物の生産に有用となるように、均質であり、同型接合性であり、且つ再分化可能でなければならない。それ故、維持可能な作物として成長させることができるキャノーラ系統が必要とされ、その種子は商業上実行可能な量のDHAなどのLC-ω3脂肪酸をもたらすものである。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に記載される実施形態は、同系交配の組み換え型キャノーラ系統を提供するものであり、NS-B50027-4が指定され、その種子はω3及びLC-ω3脂肪酸の有利なレベルをもたらし、それにより、これら価値のある油を生産するための再分化可能で地上ベースのシステムをもたらす。同系交配のキャノーラ系統NS-B50027-4の種子の代表的なサンプルは、2016年6月9日にアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC(登録商標))(Manassas、VA)にてブダペスト条約に従い受託され、受託番号PTA-123186を割り当てられた(付録Aを参照)。本明細書には、同系交配のキャノーラNS-B50027-4系統の細胞、組織、種子、及び油も記載される。遺伝子組み換え操作を伴う選択及び育種の組み合わせにより、変異が存在しない種における変異が可能になる。例えば、本明細書に記載されるキャノーラ系統NS-B50027-4の脂肪酸プロファイルは、天然のB.ナパスには存在せず;そして、本明細書に記載される形質、具体的にDHAを生産するのに都合の良い形質は、人によるかなりの技術的な介入によって発達した。
【0006】
本実施形態の態様は、キャノーラ(ブラッシカ・ナパスL.)系統NS-B50027-4の種子、即ち、全脂肪酸含有量に対するω3及びLC-ω3脂肪酸の高い割合(パーセント)をその種子の中に蓄積する安定した均一な育種系統へと選択され且つ育種された、栽培品種AV Jadeの遺伝子組み換えキャノーラを提供する。近交系NS-B50027-4は、一部の野生の魚油に見出されるものに近いレベルでLC-ω3脂肪酸、具体的にDHAを含む種子を生産するキャノーラ植物を提供するために開発された。NS-B50027-4由来の食用油には、他のB.ナパス植物よりも著しく高いDHA含有量がある。新たな均一な育種系統NS-B50027-4は、安定した高収量の形態学的に適当なキャノーラ系統における高いDHA形質のために、遺伝子形質転換、その後、厳格な選択及び育種によって開発された。
【0007】
従って、本明細書に記載される少なくとも1つの実施形態は、同系交配のキャノーラNS-B50027-4系統の種子;同系交配のキャノーラ系統NS-B50027-4の種子から栽培された植物、及びその花粉、胚珠、又は種子などの一部;及び、同系交配のキャノーラ系統NS-B50027-4を栽培することにより、又は、同系交配のキャノーラ系統NS-B50027-4をそれ自体或いは別のキャノーラ又はブラッシカの系統と交雑させることにより、及び成長された後代から種子を得ることによりキャノーラ植物から種子を生産するための方法に関する。
【0008】
少なくとも1つの実施形態は、本明細書に記載される方法により生産されたキャノーラ植物の集団から種子を提供するものであり、前記集団は、キャノーラ系統NS-B50027-4からそのアレルを、平均で10%から100%派生させる。同様に、本実施形態は、種子、油、粉末、又はタンパク質の生産のために植物を育種、又は栽培するための、キャノーラ系統NS-B50027-4、NS-B50027-4の亜系統、NS-B50027-4又は亜系統の後代、或いは、NS-B50027-4を別のキャノーラ又はブラッシカ植物と交雑することによって生産された植物の使用を提供する。
【0009】
少なくとも1つの実施形態は、ゲノム中に同系交配のNS-B50027-4のゲノムの少なくとも一部を含んでいる、ブラッシカ・ナパス植物などの菜種植物の種子を提供する。少なくとも1つの実施形態は、ゲノム中に同系交配のNS-B50027-4のゲノムの少なくとも一部を含んでいる、B.ナパス植物などの植物を提供する。少なくとも1つの実施形態は、ゲノム中に同系交配のNS-B50027-4のゲノムの少なくとも一部を含んでいる、B.ナパス植物などの菜種植物の細胞を提供する。別の実施形態は、系統NS-B50027-4のゲノムの少なくとも一部を含んでいる、B.ナパス植物などの菜種植物のゲノムDNAを提供する。少なくとも1つの実施形態は更に、受託番号PTA-123186を持つATCC(登録商標)にて寄託された種子から成長される、NS-B50027-4のゲノムの少なくとも一部を含む植物の種子、細胞、組織、組織培養、後代、及び子孫に関連する。別の実施形態は更に、(受託番号PTA-123186を持つATCC(登録商標)にて寄託された種子から成長された植物などの)NS-B50027-4のゲノムの少なくとも一部を含むキャノーラ植物から(その繁殖又はそれとの育種などにより)得ることが可能な植物を提供する。
【0010】
少なくとも1つの実施形態は、ゲノム中に系統NS-B50027-4のエリートイベントを含んでいる、B.ナパス植物などの菜種植物の種子を提供する。少なくとも1つの実施形態は、ゲノム中に近交系NS-B50027-4のエリートイベントを含んでいる、B.ナパス植物などの植物を提供する。別の実施形態は、系統NS-B50027-4のエリートイベントを含んでいる、B.ナパス植物などの菜種植物のゲノムDNAを提供する。少なくとも1つの実施形態は更に、受託番号PTA-123186を持つATCC(登録商標)にて寄託された種子から成長される、NS-B50027-4のエリートイベントを含む植物の種子、細胞、組織、後代、及び子孫に関連する。別の実施形態は更に、(受託番号PTA-123186を持つATCC(登録商標)にて寄託された種子から成長された植物などの)エリートイベントを含むキャノーラ植物から(その繁殖又はそれとの育種などにより)得ることが可能な植物を提供する。実施形態はまた、エリートイベントNS-B50027-4を含むキャノーラ植物に関する。
【0011】
本実施形態の近交系NS-B50027-4の基準種子は、受託番号PTA-123186の下でATCC(登録商標)により寄託されている。少なくとも1つの実施形態は、受託番号PTA-123186として寄託されたNS-B50027-4の種子を提供し、これは、種子の全脂肪酸の重量%として、種子が従来の収穫時に少なくとも5%のDHA、約6%のDHA、約7%のDHA、約8%のDHA、約9%のDHA、約10%のDHA、約11%のDHA、約12%のDHA、約13%のDHA、約14%のDHA、約15%のDHA、約16%のDHA、約17%のDHA、又はそれ以上のDNAを含んでいるキャノーラ植物へと成長する。
【0012】
少なくとも1つの実施形態において、ATCC(登録商標)受託番号PTA-123186の種子は、NS-B50027のエリートイベントの導入遺伝子を持つ少なくとも約95%の同系交配の遺伝子導入種子から成る種子のロットであり、これは、種子の全脂肪酸の重量%として、種子が少なくとも5%のDHA、約6%のDHA、約7%のDHA、約8%のDHA、約9%のDHA、約10%のDHA、約11%のDHA、約12%のDHA、約13%のDHA、約14%のDHA、約15%のDHA、約16%のDHA、約17%のDHA、又はそれ以上のDNAを含んでいるキャノーラ植物へと成長する。ATCC(登録商標)受託番号PTA-123186の種子は、NS-B50027のエリートイベントを含む、導入遺伝子DNAと同型接合性の少なくとも約95%の遺伝子導入種子から成る種子のロットであり、これは、種子の全脂肪酸の重量%として、種子が少なくとも5%のLC-PUFA、約6%のLC-PUFA、約7%のLC-PUFA、約8%のLC-PUFA、約9%のLC-PUFA、約10%のLC-PUFA、約11%のLC-PUFA、約12%のLC-PUFA、約13%のLC-PUFA、約14%のLC-PUFA、約15%のLC-UFA、約16%のLC-PUFA、約17%のLC-PUFA、約18%のLC-PUFA、約19%のLC-PUFA、約20%のLC-PUFA、約21%のLC-PUFA、又はそれ以上のLC-PUFAを含むキャノーラ植物へと成長する。
【0013】
別の実施形態において、(例えば、同じ又は異なる遺伝的背景を持つキャノーラ又はブラッシカ植物と交雑した後に)寄託された種子から獲得可能又は獲得される種子又は後代を蒔くことができ、成長する植物にはNS-B50027-4とほぼ同じ表現型があり得る。少なくとも1つの実施形態において、従来の収穫時に、NS-B50027-4-後代種子の脂肪酸含有量は、種子の全脂肪酸の重量%として、少なくとも5%のDHA、約6%のDHA、約7%のDHA、約8%のDHA、約9%のDHA、約10%のDHA、約11%のDHA、約12%のDHA、約13%のDHA、約14%のDHA、約15%のDHA、約17%のDHA、約18%のDHA、約19%のDHA、約20%のDHA、約21%のDHA、約22%のDHA、約23%のDHA、約24%のDHA、又はそれ以上のDHAを含む。少なくとも1つの実施形態において、従来の収穫時に、NS-B50027-4-後代種子の脂肪酸含有量は、種子の全脂肪酸の重量%として、少なくとも5%のLC-PUFA、約6%のLC-PUFA、約7%のLC-PUFA、約8%のLC-PUFA、約9%のLC-PUFA、約10%のLC-PUFA、約11%のLC-PUFA、約12%のLC-PUFA、約13%のLC-PUFA、約14%のLC-PUFA、約15%のLC-UFA、約16%のLC-PUFA、約17%のLC-PUFA、約18%のLC-PUFA、約19%のLC-PUFA、約20%のLC-PUFA、約21%のLC-PUFA、約22%のLC-PUFA、約23%のLC-PUFA、約24%のLC-PUFA、約25%のLC-PUFA、又はそれ以上のLC-PUFAを含む。
【0014】
NS-B50027-4の種子は、従来のキャノーラ変種よりも実質的に多くのω3 ALAも含んでいる。少なくとも1つの実施形態において、従来の収穫時に、NS-B50027-4-後代種子の脂肪酸含有量は、種子の全脂肪酸の重量%として、少なくとも15%のALA、約16%のALA、約17%のALA、約18%のALA、約19%のALA、約20%のALA、約21%のALA、約22%のALA、約23%のALA、約24%のALA、又はそれ以上のALAを含む。
【0015】
本実施形態の別の態様は、都合のよいω3脂肪酸及びLC-ω3脂肪酸レベルを持つ油を提供し、その中の脂肪酸含有量には、一般的なキャノーラ油よりも高いω3:ω6脂肪酸の比率が含まれる。例えば、AV JadeにはLA(ω6)に匹敵するEPA/DPA/DHA(ω3)がなく、一実施形態において、NS-B50027-4の種子油には、約1.25などの、約1から約7のEPA/DPA/DHA(ω3):LA(ω6)の比率がある。NS-B50027-4のω3:ω6の脂肪酸の比率は、パルミチン酸に関しては特に都合がよい。親系統であるAV Jadeの油にはDHAがなく、故にDHA:パルミチン酸塩の比率がなく;NS-B50027-4の油には、例えば約2.12のDHA:パルミチン酸塩の比率があり;養殖のサケの油には、0.59の報告されたDHA:パルミチン酸塩の比率があり;及び野生のサケの油には、1.02の報告されたDHA:パルミチン酸塩の比率がある。少なくとも1つの実施形態において、NSーB50027ー4の種子油におけるω3:ω6の脂肪酸の比率は、約6の比率など、約3から約7である。
【0016】
本実施形態の別の態様において、近交系NS-B50027-4の種子の油、脂質、ω3-FA、LC-PUFA、又はDHAは、ヒト又は動物の食料(飲料を含む食物又は食用材料)として又はその中に、或いは栄養剤(食品添加物)として使用される。少なくとも1つの実施形態において、イベントNS-B50027-4の種子の油、脂質、ω3-FA、LC-PUFA、又はDHAは、栄養補助食品に、又は水産養殖に使用するための飼料添加物として使用される。少なくとも1つの実施形態において、イベントNS-B50027-4の種子の油、脂質、ω3-FA、LC-PUFA、又はDHAは、医薬組成物として、又はその中に使用される。少なくとも1つの他の実施形態において、NS-B50027-4又はその後代の種子から得られる又は富化される種子粉末又はタンパク質は、ヒト又は動物の食料(食物又は食用材料)として又はその中に、或いは栄養剤(食品添加物)として使用される。特定の実施形態において、NS-B50027-4又はその後代の種子の油、脂質、粉末、又はタンパク質は、水産養殖のための飼料として使用される。
【0017】
本実施形態の態様は、LC-PUFAの生合成経路の「フロントエンド」の幾つかの酵素を発現する遺伝子構築物の複数のコピーを植物に(例えば遺伝子形質転換又は育種により)提供することにより、植物中のLC-PUFAを増大させる方法を提供する。例えば、酵素Δ6デサチュラーゼ、Δ5デサチュラーゼ、Δ5エロンガーゼ、及びω3/Δ15デサチュラーゼの全てがフロントエンド酵素として排他的に考慮され得るものではないが、特定の実施形態において、これら遺伝子は、LC-PUFAを生産する植物中のDHAなどのLC-PUFAの生産を増強する人工遺伝子座へとアセンブルされる。特定の実施形態において、幾つかのフロントエンド遺伝子を含む人工遺伝子座は、ミクロモナス・プシラ(Micromonas pusilla)由来のΔ6デサチュラーゼ、ピラミモナス・ コルダタ由来のΔ5エロンガーゼ、パブロバ・サリナ由来のΔ5デサチュラーゼ、及びピキア・パストリス由来のΔ15/ω3デサチュラーゼを含んでいる。
【0018】
記載された実施形態の態様は、NS-B50027-4が指定された新たなキャノーラ育種系統、核ゲノム中にNS-B50027-4のエリートイベントを含むブラッシカ・ナパスL.などの菜種植物を提供する。系統NS-B50027-4の遺伝子イベントを含むブラッシカ植物は、従来のキャノーラ植物中で生産された脂肪酸よりも不飽和で長い鎖を含む、脂肪酸の種子に特異的な生産が可能となる。同系交配のキャノーラ系統NS-B50027-4植物は、非遺伝子組み換えの同系のキャノーラ植物系統とほぼ同等である他の農学のパフォーマンス形質を示すが、このよう形質は、独立した系統又は栽培品種を提供するような他の系統とは異なる。同系交配のキャノーラ系統NS-B50027-4の種子の代表的なサンプルは、ATCC(登録商標)にて受託番号PTA-123186として寄託されている。
【0019】
少なくとも1つの実施形態は、少なくとも1つのトランスジェニックインサートをゲノムへと安定して統合する、遺伝子導入キャノーラの種子、植物、或いは植物の部分、組織、又は細胞に関するものであり、少なくとも1つのトランスジェニックインサートは16の異種遺伝子を含む発現カセットを含み、導入遺伝子は、植物発現のためにコドンを最適化されており、且つ、パブロバ・サリナ由来のΔ4デサチュラーゼ、パブロバ・サリナ由来のΔ5デサチュラーゼ、ピラミモナス・コルダタ由来のΔ5エロンガーゼ、ミクロモナス・プシラ由来のΔ6デサチュラーゼ、ピラミモナス・コルダタ由来のΔ6エロンガーゼ、ラカンセア・クルイヴェリ由来のΔ12デサチュラーゼ、ピキア・パストリス由来のΔ15/ω3デサチュラーゼ、及び少なくとも1つのニコチアナ・タバカム由来のマトリックス付着領域(MAR)、及び選択可能なマーカー遺伝子をコードし;並びに、少なくとも1つのトランスジェニックインサートは4つの異種遺伝子を含む発現カセットを含み、導入遺伝子は、植物発現のためにコドンを最適化され、且つ、ミクロモナス・プシラ由来のΔ6デサチュラーゼ、ピラミモナス・コルダタ由来のΔ5エロンガーゼ、パブロバ・サリナ由来のΔ5デサチュラーゼ、ピキア・パストリス由来のΔ15/ω3デサチュラーゼ導入遺伝子、及び少なくとも1つのニコチアナ・タバカム由来のMARをコードする。同系交配の遺伝子導入系統NS-B50027-4はこの実施形態を例証し、これら異種遺伝子を備えた種子の代表的なサンプルは、ATCC(登録商標)にて受託番号PTA-123186として寄託されている。
【0020】
本実施形態の別の態様は、同系交配のキャノーラ系統NS-B50027-4から得られる単離又は精製されたゲノムDNA、或いは、ATCC受託番号PTA-123186として種子が寄託されている系統NS-B50027-4のエリートイベントを含むキャノーラ植物を提供する。このようなゲノムDNAは、例えば、本明細書に記載される同定アッセイにおける基準対照物質として使用されてもよい。少なくとも1つの実施形態は、位置118589903-118591677においてB.ナパス基準ゲノム(2n=AACC;var.Darmor)のchrUn_random上に位置するHPP遺伝子の3’UTRの中、及び位置18569298-18571066においてB.ラパ基準ゲノム(2n=AA、var.Chiifu)のクロモソームA02にて欠失があるブラッシカ・ナパスL.のゲノムを提供し、ここで、欠失はGTAGCACGACAAGTT(SEQ ID NO:38)である。15-bp欠失は、位置118589927-118589941においてB.ナパス基準ゲノムのchrUn_randomの上、及び、位置18569316-18569330においてB.ラパ基準ゲノムのクロモソームA02の上に位置していた。少なくとも1つの実施形態は、位置17267746-17270700においてB.ナパス基準(var.Darmor)ゲノムのクロモソームA05に位置するPto結合タンパク質(PTI)をコードする遺伝子の第2のエキソンの中に欠失があるブラッシカ・ナパスL.植物を提供し、その欠失はPTIの発現を妨害し、欠失はCACGGTGGAGGTCACCATGT(SEQ ID NO:39)である。これらの欠失は、同系交配のキャノーラ系統NS-B50027-4のゲノムの特徴であり、系統NS-B50027-4及び系統NS-B50027-4に由来する後代を識別するために使用され得る。
【0021】
従って、本実施形態は更に、同系交配のキャノーラ系統NS-B50027-4の遺伝子導入の態様(エリートイベント)を含む遺伝子導入植物、或いはその細胞又は組織を同定する方法を提供し、該方法は、特定のヌクレオチド配列を持ち又は特定のアミノ酸をコードすることを特徴とするDNA分子の存在の同定に基づく。例えば、このような特徴を持つDNA分子は、15塩基対(bp)、少なくとも15bp、20bp、少なくとも20bp、少なくとも24bp、少なくとも30bp、又は30を超えるbpの配列を含み、当該配列は、イベントの挿入接合部位、即ち、LC-ω3脂肪酸合成遺伝子(発現のための調節配列を含む「遺伝子」など)を含む挿入された外来DNAの一部及びそれに接触するキャノーラ又はブラッシカのゲノムの一部(各挿入のための5’又は3’何れかの隣接領域)の両方を含んでおり、エリートイベントの特定の同定を可能にする。例えば、NS-B50027-4のクロモソームA02における4-遺伝子インサートの5’末端の接合配列は、SEQ ID NO:43を含み;クロモソームA02における4-遺伝子インサートの3’末端の接合配列は、SEQ ID NO:44を含み;NS-B50027-16のクロモソームA05における16-遺伝子インサートの5’末端の接合配列は、SEQ ID NO:45を含み;及びクロモソームA05における16-遺伝子インサートの3’末端の接合配列は、SEQ ID NO:46を含む。この実施形態はまた、そのような方法により同定された同系交配のキャノーラ系統NS-B50027-4のエリートイベントを含む植物に関連する。
【0022】
本実施形態の別の態様は、近交系NS-B50027-4のエリートイベントの検出に有用となり、且つNS-B50027-4を含む又は近交系NS-B50027-4に関連する植物を特徴づけるように、NS-B50027-4のエリートイベントの挿入部位、及びキャノーラのゲノムDNA及び遺伝子導入DNAの両方の十分な長さのポリヌクレオチドを含む、核酸分子(例えばポリヌクレオチド又はDNA)を提供する。そのような分子は、例えば、結合部位の各側それぞれに、キャノーラのゲノムDNAの少なくとも9のヌクレオチド、及び同様の数の導入遺伝子DNAのヌクレオチドを含むこともある。例えば、そのようなDNA分子は、キャノーラのゲノムDNAの少なくとも9のヌクレオチド、並びに、SEQ ID NO:40(例えばヌクレオチド2081~2098、及びヌクレオチド14193~14210)、SEQ ID NO:41(例えばヌクレオチド1151~1168、及びヌクレオチド47765~47782)における挿入部位に隣接する遺伝子領域を含む導入遺伝子(外来)DNAの同様の数のヌクレオチドを含む。本発明の1つの態様において、キャノーラ植物はそのような特定の核酸分子を含んで提供される。
【0023】
少なくとも1つの実施形態は、少なくとも1つのトランスジェニックインサートをゲノムへと安定して統合する、ブラッシカ又はキャノーラの種子、或いはその植物細胞、植物、植物部分、又は組織に関するものであり、少なくとも1つのトランスジェニックインサートは16の異種遺伝子を含む発現カセットを含み、導入遺伝子は、植物発現のためにコドンを最適化され、且つ、ミクロモナス・プシラ由来のΔ6デサチュラーゼ、Δ6エロンガーゼ、ピラミモナス・コルダタ由来のΔ5エロンガーゼ、パブロバ・サリナ由来のΔ5デサチュラーゼ、ピキア・パストリス由来のΔ15/ω3デサチュラーゼ、パブロバ・サリナ由来のΔ4デサチュラーゼ、及びラカンセア・クルイヴェリ由来のΔ12デサチュラーゼ、少なくとも1つのニコチアナ・タバカム由来のマトリックス付着領域(MAR)、及び選択可能なマーカー遺伝子をコードし;16のトランスジェニックインサートは、SEQ ID NO:41のヌクレオチド1268~47773によって特徴付けられ;及び少なくとも1つのトランスジェニックインサートは、4つの異種遺伝子の発現カセットを含み、遺伝子は、植物発現のためにコドンを最適化され、且つ、ミクロモナス・プシラ由来のΔ6デサチュラーゼ、ピラミモナス・コルダタ由来のΔ5エロンガーゼ、パブロバ・サリナ由来のΔ5デサチュラーゼ、ピキア・パストリス由来のΔ15/ω3デサチュラーゼ導入遺伝子、及び少なくとも1つのニコチアナ・タバカム由来のMARをコードし;4-遺伝子インサートは、SEQ ID NO:40のヌクレオチド2090~14201によって特徴付けられる。少なくとも1つの実施形態において、2つの発現カセットは、植物ゲノムにおける2つの異なるクロモソームに位置する。
【0024】
別の実施形態は、SEQ ID NO:40、SEQ ID NO:41の核酸配列、又はその補体を持つ組み換え型核酸分子を提供する。別の実施形態は、SEQ ID NO:40の位置2090~14201の核酸配列、又はその補体を持つ組み換え型核酸分子を提供する。別の実施形態は、SEQ ID NO:41の位置1160~47773の核酸配列、又はその補体を持つ組み換え型核酸分子を提供する。本実施形態はまた、SEQ ID NO:40のヌクレオチド2090~14201の核酸配列、又はその組み合わせを含む、ブラッシカ又はキャノーラ種子;及び、SEQ ID NO:41のヌクレオチド1160~47773の核酸配列、又はその補体を含む、ブラッシカ又はキャノーラ種子を提供する。別の実施形態は、そのような核酸分子を含む種子又は細胞を提供する。
【0025】
別の実施形態は、以下のヌクレオチド配列を順に含む、人工遺伝子座を含むDNA分子を提供する:(a)ヌクレオチド2747からヌクレオチド6250までのSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列;(b)ヌクレオチド6257からヌクレオチド8414までのSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列;(c)ヌクレオチド8415からヌクレオチド10374までのSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列;(d)ヌクレオチド10375からヌクレオチド11544までのSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列;及び(e)ヌクレオチド11545からヌクレオチド14049までのSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列;(f)ヌクレオチド配列(a)~(e)との少なくとも80%、95%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性を持つ分子;又は(g)それらの補体。関連する実施形態は、この人工遺伝子座を含む植物細胞、植物材料、又は植物種子を提供する。
【0026】
別の実施形態は、以下のヌクレオチド配列を順に含む、人工遺伝子座を含むDNA分子を提供する:(a)ヌクレオチド1268からヌクレオチド5317までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(b)ヌクレオチド5324からヌクレオチド7481までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(c)ヌクレオチド7482からヌクレオチド9443までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(d)ヌクレオチド9444からヌクレオチド10611までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(e)ヌクレオチド10612からヌクレオチド13116までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(f)ヌクレオチド13117からヌクレオチド17000までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(g)ヌクレオチド17001からヌクレオチド19606までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(h)ヌクレオチド19607からヌクレオチド29773までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(i)ヌクレオチド20783からヌクレオチド22987までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(j)ヌクレオチド23011から24370までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(k)ヌクレオチド42561からヌクレオチド25920までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(l)ヌクレオチド25943からヌクレオチド29324までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(m)ヌクレオチド28157からヌクレオチド29324までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(n)ヌクレオチド29324からヌクレオチド31830までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(p)ヌクレオチド31831からヌクレオチド35816までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(q)ヌクレオチド35817からヌクレオチド38319までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(r)ヌクレオチド38320からヌクレオチド39488までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(s)ヌクレオチド39489からヌクレオチド41449までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(t)ヌクレオチド41450からヌクレオチド43607までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(u)ヌクレオチド43614からヌクレオチド47662までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(v)ヌクレオチド配列(a)~(u)、(a)~(j)、(k)~(u)との少なくとも80%、95%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性を持つ分子;又は(w)それらの補体。関連する実施形態は、この人工遺伝子座を含む植物の細胞、材料、又は種子を提供する。
【0027】
別の実施形態は、以下のヌクレオチド配列を順に含む、人工遺伝子座を含むDNA分子を提供する:(a)ヌクレオチド2747からヌクレオチド4141までのSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列;(b)ヌクレオチド7259からヌクレオチド8065までのSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列の補体のヌクレオチド配列;(c)ヌクレオチド8841からヌクレオチド10121までのSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列;(d)ヌクレオチド12281からヌクレオチド13531までのSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列;(e)ヌクレオチド配列(a)~(d)との少なくとも80%、95%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性を持つ分子;又は(f)それらの補体;ここで、人工遺伝子座は、(a)~(d)、(e)、又は(f)の発現を提供するための調節領域(例えば、プロモーター、リーダー配列、ターミネーター)を含む。関連する実施形態は、この人工遺伝子座を含む植物細胞、植物材料、又は植物種子を提供する。
【0028】
別の実施形態は、以下のヌクレオチド配列を順に含む、人工遺伝子座を含むDNA分子を提供する:(a)ヌクレオチド1820からヌクレオチド3208までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(b)ヌクレオチド6326からヌクレオチド7126までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(c)ヌクレオチド7908からヌクレオチド9192までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(d)ヌクレオチド11352からヌクレオチド12596までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(e)ヌクレオチド15216からヌクレオチド16556までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(f)ヌクレオチド17619からヌクレオチド18866までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(g)ヌクレオチド21895からヌクレオチド22647までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(h)ヌクレオチド25943からヌクレオチド26283までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(i)ヌクレオチド30066からヌクレオチド31313までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(j)ヌクレオチド31831からヌクレオチド35816までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(k)ヌクレオチド36335からヌクレオチド38319までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(l)ヌクレオチド39749からヌクレオチド41023までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(m)ヌクレオチド41805からヌクレオチド42605までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(n)ヌクレオチド45724からヌクレオチド47111までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列;(o)ヌクレオチド配列(a)~(u)、(a)~(j)、(k)~(u)との少なくとも80%、95%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性を持つ分子;又は(p)それらの補体;ここで、人工遺伝子座は、(a)~(n)、(o)、又は(p)の発現を提供するための調節領域(例えば、プロモーター、リーダー配列、ターミネーター)を含む。関連する実施形態は、この人工遺伝子座を含む植物細胞、植物材料、又は植物種子を提供する。
【0029】
1つの実施形態において、本明細書に記載されるような近交系NS-B50027-4の導入遺伝子は、ヌクレオチド位置2090~14201のSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列、又はその補体を有し、或いは、ヌクレオチド位置2090~ヌクレオチド位置14201のSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列、又はその補体に対して少なくとも80%、95%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性を持つ分子を含む。1つの実施形態において、本明細書に記載されるような近交系NS-B50027-4の導入遺伝子は、ヌクレオチド位置1268~47662のSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列、又はその補体を有し、或いは、ヌクレオチド位置1268~ヌクレオチド位置47662のSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列、又はその補体に対して少なくとも80%、95%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性を持つ分子を含む。
【0030】
本明細書にはまた、ゲノム中に核酸分子を含む、ブラッシカ又はキャノーラ植物、植物細胞、組織、又は種子が提供され、前記核酸分子は、ヌクレオチド位置2090~14201のSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列、又はその補体を含み、或いは、ヌクレオチド位置2090~ヌクレオチド位置14201のSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列、又はその補体に対して少なくとも95%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性を持つ分子を含む。別の実施形態は、ゲノム中に核酸分子を含む、ブラッシカ又はキャノーラ植物、植物細胞、組織、又は種子を提供し、前記核酸分子は、ヌクレオチド位置1268~47662のSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列、又はその補体を含み、或いは、ヌクレオチド位置1268~ヌクレオチド位置47662のSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列、又はその補体に対して少なくとも80%、95%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性を持つ分子を含む。
【0031】
本実施形態の別の態様は、キャノーラ植物が、近交系NS-B50027-4、又は系統NS-B50027-4の遺伝子エリートイベントの少なくとも一部を含むキャノーラ植物であるか、或いはそれらに関連するかを判定するためのキットと方法を提供する。生体サンプル中のエリートイベントNS-B50027-4の同定のための単純且つ明確な技術のための組成物及び方法が、本明細書に記載されている。例えば、キットには、ブラッシカクロモソームDNA及び挿入された導入遺伝子の結合に特異的なセンス(フォワード)及びアンチセンス(バックワード)プライマーの少なくとも1つセットが備わっている。例えば、配列SEQ ID NO:43(TGGAGGTGTTCAAACACT)、NO:44(ATAGTATTAGTATACAGA)、NO:45(GGCTAAGGTAACACTGAT)、及びNO:46(CAGTGTTTGAAGGACAGA)を含むDNA結合は、エリートイベントNS-B50027-4の新たなDNA配列であり、且つキャノーラ植物NS-B50027-4及びその後代に特徴的(diagnostic)である。より具体的に、SEQ ID NO:43及びSEQ ID NO:44の接合配列は、導入遺伝子配列フラグメントの挿入部位及びキャノーラのゲノムクロモソームA02 DNAのそれぞれの側に9つのポリヌクレオチドを表わし;SEQ ID NO:45及びSEQ ID NO:46の接合配列は、導入遺伝子配列フラグメントの挿入部位及びキャノーラのゲノムクロモソームA05 DNAのそれぞれの側に9つのポリヌクレオチドを表わす。より長い又はより短いポリヌクレオチドは、本明細書に記載される隣接領域から選択され得る。
【0032】
本実施形態は更に、エリートイベントNS-B50027-4の遺伝子イベントを含む外来DNAインサートの5’又は3’の隣接領域を特異的に認識するプライマー又はプローブに基づいて、生体サンプル中の同系交配のキャノーラ系統NS-B50027-4のエリートイベントを同定する方法を提供する。より具体的には、例となる方法は、少なくとも2つのプライマーとのポリメラーゼ連鎖反応により生体サンプル中に存在する核酸を増幅させる工程を含み、一方のプライマーはエリートイベントNS-B50027-4の挿入された外来DNA(異種又は遺伝子導入のDNA)の5’又は3’ブラッシカ隣接領域を認識し、他方は、100bp~800bpのDNAフラグメントを得るために例えば外来のデサチュラーゼ又はエロンガーゼ遺伝子を含む外来DNA内の配列を認識する。プライマー又はプローブは、インサートに隣接するクロモソームA02の5’領域:位置1~2089のSEQ ID NO:40(又はその補体)内、或いはインサートに隣接するクロモソームA02の3’領域:位置14202~15006のSEQ ID NO:40(又はその補体)内の配列;インサートに隣接するクロモソームA05の5’領域:位置1~1159のSEQ ID NO:41(又はその補体)内、或いはインサートに隣接するクロモソームA05の3’領域:位置47774~49789のSEQ ID NO:41(又はその補体)内の配列;及び、例えば位置2090~14201のSEQ ID NO:40(又はその補体)或いは位置1160~47773のSEQ ID NO:41(又はその補体)を含む外来DNA内の少なくとも1つの配列の認識を介して、NS-B50027-4を同定する場合もある。
【0033】
少なくとも1つの実施形態は更に、競合対立遺伝子特異的(kompetitive allele specific)PCR(KASP)アッセイ(2つの対立遺伝子に特異的なフォワードプライマーがSNPを認識する)、ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)アッセイ、定量的PCR(qPCR)アッセイ、パラログ特異的アッセイ、又は偶発的存在(AP)検定のためのアッセイに有用な組成物を提供する。遺伝子移入研究及び雑種発生に特に役立つ、NS-B50027-4遺伝形質を検出するためにKASPアッセイを実行するのに有用なプライマーの特定の実施形態は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18、SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:20、SEQ ID NO:21、SEQ ID NO:22、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:25、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:29、SEQ ID NO:30、SEQ ID NO:31、SEQ ID NO:32、SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:34、SEQ ID NO:35、SEQ ID NO:36、SEQ ID NO:37、又はそれらの補体のプライマーの、少なくとも10の隣接するヌクレオチドを含む。前述のプライマー又はその補体は、NS-B50027-4、NS-B50027-4の後代、或いは、NS-B50027-4の少なくとも部分的なゲノムを含む他の植物又は植物材料の同定のためのキットに含まれてもよい。関連する実施形態は、そのようなプライマーにより同定された植物材料を提供する。
【0034】
例えば、少なくとも1つの実施形態はDNA分子の単離されたプライマー対を提供し、ここで第1のプライマーは、SEQ ID NO:47又はその完全な補体の5’キャノーラ隣接ゲノム領域のヌクレオチド1~235の少なくとも11の隣接ヌクレオチドを含み、第2のプライマーは、SEQ ID NO:47又はその完全な補体のヌクレオチド236~470の導入遺伝子領域の少なくとも11の隣接ヌクレオチドを含み、DNA増幅反応に共に使用された時、DNA分子のプライマー対は、キャノーライベントNS-B50027-4又はその後代のためにSEQ ID NO:43を含む特徴的なアンプリコンを生産する。
【0035】
少なくとも1つの実施形態はDNA分子の単離されたプライマー対を含む組成物を提供し、ここで第1のプライマーは、SEQ ID NO:48又はその完全な補体の導入遺伝子領域のヌクレオチド1~235の少なくとも11の隣接ヌクレオチドを含み、第2のプライマーは、SEQ ID NO:48又はその完全な補体のヌクレオチド236~470の3’キャノーラ隣接ゲノムDNAの少なくとも11の隣接ヌクレオチドを含み、DNA増幅反応に共に使用された時、DNA分子のプライマー対は、キャノーライベントNS-B50027-4又はその後代のためにSEQ ID NO:44を含む特徴的なアンプリコンを生産する。
【0036】
少なくとも1つの実施形態はDNA分子の単離されたプライマー対を提供し、ここで第1のプライマーは、SEQ ID NO:49又はその完全な補体の5’キャノーラ隣接ゲノム領域のヌクレオチド1~235の少なくとも11の隣接ヌクレオチドを含み、第2のプライマーは、SEQ ID NO:49又はその完全な補体のヌクレオチド236~470の導入遺伝子領域の少なくとも11の隣接ヌクレオチドを含み、DNA増幅反応に共に使用された時、DNA分子のプライマー対は、キャノーライベントNS-B50027-4又はその後代のためにSEQ ID NO:45を含む特徴的なアンプリコンを生産する。
【0037】
少なくとも1つの実施形態はDNA分子の単離されたプライマー対を提供し、ここで第1のプライマーは、SEQ ID NO:50又はその完全な補体の導入遺伝子領域のヌクレオチド1~235の少なくとも11の隣接ヌクレオチドを含み、第2のプライマーは、SEQ ID NO:50又はその完全な補体のヌクレオチド236~470の3’キャノーラ隣接ゲノムDNAの少なくとも11の隣接ヌクレオチドを含み、DNA増幅反応に共に使用された時、DNA分子のプライマー対は、キャノーライベントNS-B50027-4又はその後代のためにSEQ ID NO:46を含む特徴的なアンプリコンを生産する。
【0038】
加えて、DNAイベントプライマー対はまた、NS-B50027-4イベントに特徴的なアンプリコンを生成するために使用され得る。これらのイベントプライマー対は例えば、AATTGTTGGAGGTGTTCAAACACT(SEQ ID NO:51)及びCGGAATCACAATCCCTGAATGATT(SEQ ID NO:52)、又はその補体を含んでいる。SEQ ID NO:51及びSEQ ID NO:52により生産されたアンプリコンは、約250のポリヌクレオチドである。これらのプライマー対に加えて、DNA増幅反応において使用された時にNS-B50027-4イベントに特徴的なアンプリコンを生産する、SEQ ID NO:47、NO:48、NO:49、又はNO:50、或いはその補体に由来する任意のプライマー対は、本実施形態の一態様である。
【0039】
別の実施形態は、パブロバ・サリナ由来のΔ4デサチュラーゼ、パブロバ・サリナ由来のΔ5デサチュラーゼ、ピラミモナス・コルダタ由来のΔ5エロンガーゼ、ミクロモナス・プシラ由来のΔ6デサチュラーゼ、ピラミモナス・コルダタ由来のΔ6エロンガーゼ、ラカンセア・クルイヴェリ由来のΔ12デサチュラーゼ、ピキア・パストリス由来のΔ15/ω3デサチュラーゼのうち1つのための、プライマーの少なくとも1つのセット;及び、SEQ ID NO:40のヌクレオチド2033~2132の接合部、即ち43bpのインサートと57bpのブラッシカクロモソームA02 DNAとを含む100bpの領域などの、インサートと天然のブラッシカクロモソームA02 DNAとの間の5’結合に特異的なプライマーの少なくとも1つのセット、又はSEQ ID NO:40のヌクレオチド14156~14255の結合、即ち46bpのインサートと54bpのブラッシカクロモソームA02 DNAとを含む100bpの領域などの、インサートと天然のブラッシカクロモソームA02 DNAとの間の3’結合に特異的なプライマーの少なくとも1つのセット;及び、SEQ ID NO:41のヌクレオチド47724~47823の結合、即ち50bpのインサートと50bpのブラッシカクロモソームA05 DNAとを含む100bpの領域などの、インサートと天然のブラッシカクロモソームA05 DNAとの間の5’結合に特異的なプライマーの少なくとも1つのセット、又はSEQ ID NO:41のヌクレオチド47724~47823の結合、即ち50bpのインサートと50bpのブラッシカクロモソームA05 DNAとを含む100bpの領域などの、インサートと天然のブラッシカクロモソームA05 DNAとの間の3’結合に特異的なプライマーの少なくとも1つのセットを提供する。
【0040】
別の実施形態は、例えば、SEQ ID NO:57、SEQ ID NO:58の配列、又はその補体を持つミクロモナス・プシラ由来のΔ6デサチュラーゼDNA;SEQ ID NO:63、SEQ ID NO:64の配列、又はその補体を持つピラミモナス・コルダタ由来のΔ5エロンガーゼ;SEQ ID NO:61、SEQ ID NO:62の配列、又はその補体を持つパブロバ・サリナ由来のΔ5デサチュラーゼ;SEQ ID NO:55、SEQ ID NO:56の配列、又はその補体を持つピキア・パストリス由来のΔ15/ω3デサチュラーゼ;SEQ ID NO:65、SEQ ID NO:66の配列、又はその補体を持つパブロバ・サリナ由来のΔ4デサチュラーゼ;SEQ ID NO:53、SEQ ID NO:54の配列、又はその補体を持つラカンセア・クルイヴェリ由来のΔ12デサチュラーゼ;SEQ ID NO:59、SEQ ID NO:60配列、又はその補体を持つピラミモナス・コルダタ由来のΔ6エロンガーゼのうち少なくとも1つのプライマーを含む、NS-B50027-4の外来DNA内の配列を認識するプライマーを提供する。従って、本実施形態は、特異的なプライマー及びそのようなプライマーを使用して増幅された特異的なDNA、及び、本明細書で提供される配列情報に由来し得るプライマーを提供する。
【0041】
NS-B50027-4及びその後代を同定するための方法に従い、キットは、PCR同定プロトコルでの使用のために、エリートイベントNS-B50027-4の5’又は3’隣接領域を特異的に認識するプライマーに加えて、外来DNA内の配列を特異的に認識する第2のプライマーを含んでもよく、前記外来DNAは、ミクロモナス・プシラ由来のΔ6デサチュラーゼ、ピラミモナス・コルダタ由来のΔ5エロンガーゼ、パブロバ・サリナ由来のΔ5デサチュラーゼ、ピキア・パストリス由来の15/ω3デサチュラーゼ、パブロバ・サリナ由来のΔ4デサチュラーゼ、ピラミモナス・コルダタ由来のΔ6エロンガーゼ、又はラカンセア・クルイヴェリ由来のΔ12デサチュラーゼのうち少なくとも1つを含む。キットは、少なくとも2つの特異的なプライマーを含んでも良く、その一方はエリートイベントNS-B50027-4の5’隣接領域内の配列を認識し、他方は、ミクロモナス・プシラ由来のΔ6デサチュラーゼ、ピラミモナス・コルダタ由来のΔ5エロンガーゼ、パブロバ・サリナ由来のΔ5デサチュラーゼ、ピキア・パストリス由来のΔ15/ω3デサチュラーゼ、パブロバ・サリナ由来のΔ4デサチュラーゼ、又はラカンセア・クルイヴェリ由来のΔ12デサチュラーゼのうち少なくとも1つを含む外来DNA内の配列を認識する。
【0042】
本発明は更に、生体サンプル中のエリートイベントNS-B50027-4の同定のためのキットに関し、該キットは、本明細書に記載されるエリートイベントNS-B50027-4の同定に使用するために、SEQ ID NO:1~NO:37のヌクレオチド配列、又はその補体を含むか、或いはそれらから(実質的に)成る、PCRプライマーを含む。
【0043】
少なくとも1つの実施形態は、少なくとも1つのトランスジェニックインサートをゲノムへと安定して統合する、キャノーラの種子、その植物、植物部分、組織、又は細胞に関するものであり、少なくとも1つのトランスジェニックインサートは16の異種遺伝子を含む発現カセットを含み、導入遺伝子は、植物発現のためにコドンを最適化され、且つ、ミクロモナス・プシラ由来のΔ6デサチュラーゼ、ピラミモナス・コルダタ由来のΔ5エロンガーゼ、パブロバ・サリナ由来のΔ5デサチュラーゼ、ピキア・パストリス由来のΔ15/ω3デサチュラーゼ、パブロバ・サリナ由来のΔ4デサチュラーゼ、ピラミモナス・コルダタ由来のΔ6エロンガーゼ、及びラカンセア・クルイヴェリ由来のΔ12デサチュラーゼ、少なくとも1つのニコチアナ・タバカム由来のマトリックス付着領域(MAR)、及び選択可能なマーカー遺伝子をコードし;並びに、少なくとも1つのトランスジェニックインサートは発現カセットである4つの異種遺伝子を含み、遺伝子は、植物発現のためにコドンを最適化され、且つ、ミクロモナス・プシラ由来のΔ6デサチュラーゼ、ピラミモナス・コルダタ由来のΔ5エロンガーゼ、パブロバ・サリナ由来のΔ5デサチュラーゼ、ピキア・パストリス由来のΔ15/ω3デサチュラーゼ導入遺伝子、及び少なくとも1つのニコチアナ・タバカム由来のMARをコードし、4つの遺伝子発現カセットは、SEQ ID NO:40のヌクレオチド2090~14201として特徴付けられる。少なくとも1つの実施形態において、2つの発現カセットは、植物ゲノムにおける2つの異なるクロモソームに位置する。
【0044】
別の実施形態は、図5(SEQ ID NO:40)の核酸配列、又はその補体を持つ組み換え型核酸分子を提供する。別の実施形態は、図6(SEQ ID NO:41)の核酸配列、又はその補体を持つ組み換え型核酸分子を提供する。1つの実施形態において、本明細書に記載されるような近交系NS-B50027-4の導入遺伝子は、ヌクレオチド位置2090~14201のSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列、又はその補体を有し、或いは、ヌクレオチド位置2090~ヌクレオチド位置14201のSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列、又はその補体に対して少なくとも、95%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性を持つ分子を含む。本明細書にはまた、ゲノム中に核酸分子を含む、キャノーラ植物、植物細胞、組織、又は種子が提供され、前記核酸分子は、ヌクレオチド位置2090~14201のSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列、又はその補体を含み、或いは、ヌクレオチド位置2090~ヌクレオチド位置14201のSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列、又はその補体に対して少なくとも95%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性を持つ分子を含む。別の実施形態において、本明細書に記載されるような近交系NS-B50027-4の導入遺伝子は、ヌクレオチド位置1268~47662のSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列、又はその補体を有し、或いは、ヌクレオチド位置1268~ヌクレオチド位置47662のSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列、又はその補体に対して少なくとも、95%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性を持つ分子を含む。本明細書にはまた、ゲノム中に核酸分子を含む、キャノーラ植物、植物細胞、組織、又は種子が提供され、前記核酸分子は、ヌクレオチド位置1268~47662のSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列、又はその補体を含み、或いは、ヌクレオチド位置1268~ヌクレオチド位置47662のSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列、又はその補体に対して少なくとも95%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性を持つ分子を含む。
【0045】
本実施形態の別の態様は、キャノーラ植物が、近交系NS-B50027-4、又は系統NS-B50027-4の遺伝子エリートイベントの少なくとも一部を含むキャノーラ植物であるか、或いはそれらに関連するかを判定するためのキットと方法を提供する。生体サンプル中のエリートイベントNS-B50027-4の同定のための単純且つ明確な技術のための組成物及び方法が、本明細書に記載されている。例えば、キットには、ブラッシカクロモソームDNA及び挿入された導入遺伝子の結合に特異的なセンス(フォワード)及びアンチセンス(バックワード)プライマーの少なくとも1つセットが備わっている。接合配列として、SEQ ID NO:43(TGGAGGTGTTCAAACACT)、NO:44(ATAGTATTAGTATACAGA)、NO:45(GGCTAAGGTAACACTGAT)、及びNO:46(CAGTGTTTGAAGGACAGA)は、NS-B50027-4イベントにおける新たなDNA配列であり、且つキャノーラ植物NS-B50027-4及びその後代に特徴的である。SEQ ID NO:43及びSEQ ID NO:44の接合配列は、導入遺伝子配列フラグメントの挿入部位及びキャノーラのゲノムクロモソームA02 DNAのそれぞれの側に9つのポリヌクレオチドを表わし;SEQ ID NO:45及びSEQ ID NO:46の接合配列は、導入遺伝子配列フラグメントの挿入部位及びキャノーラのゲノムクロモソームA05 DNAのそれぞれの側に9つのポリヌクレオチドを表わす。より長い又はより短いポリヌクレオチドは、本明細書に記載される隣接領域から選択され得る。
【0046】
加えて、DNAイベントプライマー対はまた、NS-B50027-4イベントに特徴的なアンプリコンを生成するために使用され得る。これらのイベントプライマー対は例えば、AATTGTTGGAGGTGTTCAAACACT(SEQ ID NO:51)及びCGGAATCACAATCCCTGAATGATT(SEQ ID NO:52)、又はその補体を含んでいる。SEQ ID NO:51及びSEQ ID NO:52により生産されたアンプリコンは、約250のポリヌクレオチドである。これらのプライマー対に加えて、DNA増幅反応において使用された時にNS-B50027-4イベントに特徴的なアンプリコンを生産する、SEQ ID NO:43、NO:44、NO:45、又はNO:46、或いはその補体に由来する任意のプライマー対は、本発明の一態様である。
【0047】
別の実施形態は、微細藻類ミクロモナス・プシラに由来するΔ6デサチュラーゼ、微細藻類ピラミモナス・コルダタに由来するΔ5エロンガーゼ、ピラミモナス・コルダタに由来するΔ6エロンガーゼ、海洋微細藻類パブロバ・サリナに由来するΔ5デサチュラーゼ、酵母ピキア・パストリスに由来するΔ15/ω3デサチュラーゼ、パブロバ・サリナに由来するΔ4デサチュラーゼ、又は酵母ラカンセア・クルイヴェリに由来するΔ12デサチュラーゼのうち1つのためのプライマーの少なくとも1つのセット;及び、SEQ ID NO:40のヌクレオチド2033~2132の結合、即ち43bpのインサートと57bpのブラッシカクロモソームA02 DNAとを含む100bpの領域などの、インサートと天然のブラッシカクロモソームA02 DNAとの間の5’結合に特異的なプライマーの少なくとも1つのセット、又はSEQ ID NO:40のヌクレオチド14156~14255の結合、即ち46bpのインサートと54bpのブラッシカクロモソームA02 DNAとを含む100bpの領域などの、インサートと天然のブラッシカクロモソームA02 DNAとの間の3’結合に特異的なプライマーの少なくとも1つのセット;SEQ ID NO:41のヌクレオチド11109~11209の結合、即ち50bpのインサートと50bpのブラッシカクロモソームA05 DNAとを含む100bpの領域などの、インサートと天然のブラッシカクロモソームA05 DNAとの間の5’結合に特異的なプライマーの少なくとも1つのセット、又はSEQ ID NO:41のヌクレオチド47724~47823の結合、即ち50bpのインサートと50bpのブラッシカクロモソームA05 DNAとを含む100bpの領域などの、インサートと天然のブラッシカクロモソームA05 DNAとの間の3’結合に特異的なプライマーの少なくとも1つのセットを提供する。
【0048】
本明細書に記載される実施形態の更なる態様は、生体サンプル中のエリートイベントNS-B50027-4を同定するためのキットを提供し、該キットは、外来DNAに隣接する5’又は3’ブラッシカ領域を特異的に認識する少なくとも1つのプライマー又はプローブ、及び、GAGCACCTTGTAGTTGAGTCC(SEQ ID NO:57)、AGTCTGAGGATGCTCCTATGC(SEQ ID NO:58)のヌクレオチド配列、又はその補体を含み得る、ミクロモナス・プシラ由来のΔ6デサチュラーゼ;TGCTGGAACTCTTGGATACG(SEQ ID NO:63)、CTGGGTGATGTACTTCTTCC(SEQ ID NO:64)のヌクレオチド配列、又はその補体を含み得る、ピラミモナス・コルダタ由来のΔ5エロンガーゼ;GCTACCGATGCTTACAAGCA(SEQ ID NO:61)、TAGTGAAGTCCGTGCTTCTC(SEQ ID NO:62)のヌクレオチド配列、又はその補体を含み得る、パブロバ・サリナ由来のΔ5デサチュラーゼ;GACGCTATCCCTAAGCACTGT(SEQ ID NO:55)、GTCCACTCTTGAGCATCGTA(SEQ ID NO:56)のヌクレオチド配列、又はその補体を含み得る、ピキア・パストリス由来のΔ15/ω3デサチュラーゼ;GGCTTTCAGATCTGAGCATC(SEQ ID NO:65)、CTCAGCCTTAACAAGAGGAG(SEQ ID NO:66)のヌクレオチド配列、又はその補体を含み得る、パブロバ・サリナ由来のΔ4デサチュラーゼ;TGGAGCTATCCCTCATGAGT(SEQ ID NO:53)、GATCCTAGAACAGTAGTGGTG(SEQ ID NO:54)のヌクレオチド配列、又はその補体を含み得る、ラカンセア・クルイヴェリ由来のΔ12デサチュラーゼ;TGTTGCTATGGCTCAAGAGC(SEQ ID NO:59)、CTAGCGTGGTGCTTCATGTA(SEQ ID NO:60)のヌクレオチド配列、又はその補体を含み得る、ピラミモナスCS0140由来のΔ6エロンガーゼのうち少なくとも1つのDNAインサートを特異的に認識する少なくとも1つのプライマー又はプローブを含む。
【0049】
この実施形態のキットは、PCR同定プロトコルに使用するために、エリートイベントNS-B50027-4の5’又は3’隣接領域の少なくとも1つを特異的に認識するプライマーに加えて、ミクロモナス・プシラ由来のΔ6デサチュラーゼ、ピラミモナス・コルダタ由来のΔ5エロンガーゼ、パブロバ・サリナ由来のΔ5デサチュラーゼ、ピキア・パストリス由来のΔ15/ω3デサチュラーゼ、パブロバ・サリナ由来のΔ4デサチュラーゼ、ピラミモナス・コルダタ由来のΔ6エロンガーゼ、又はラカンセア・クルイヴェリ由来のΔ12デサチュラーゼのうち少なくとも1つを含む外来DNA内の配列を特異的に認識するプライマーを含んでもよい。キットは、少なくとも2つの特異的なプライマーを含んでもよく、その一方はエリートイベントNS-B50027-4の5’隣接領域内の配列を認識し、他方は、ミクロモナス・プシラ由来のΔ6デサチュラーゼ、ピラミモナス・コルダタ由来のΔ5エロンガーゼ、パブロバ・サリナ由来のΔ5デサチュラーゼ、ピキア・パストリス由来のΔ15/ω3デサチュラーゼ、パブロバ・サリナ由来のΔ4デサチュラーゼ、ピラミモナス・コルダタ由来のΔ6エロンガーゼ、又はラカンセア・クルイヴェリ由来のΔ12デサチュラーゼのうち少なくとも1つを含む外来DNA内の配列を認識する。
【0050】
関連する態様は、系統NS-B50027-4のエリートイベントの少なくとも一部を含む、植物から得られる又はそこから由来するゲノムDNAを提供する。このようなゲノムDNAは、本明細書に記載される同定アッセイにおける基準対照物質として使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】GA7-modB形質転換カセットのスキーム(マップ)を提供する。
図2】バイナリーベクターであるpJP3416のプラスミドマップである。
図3】8つの栽培部位にわたる、kg/haでの予測されたDHAに対してプロットされた穀物収穫量を表す。◆はDHA kg/haであり;--は線形DHA kg/haであり;y=29.296x+2.8315であり;R=0.8567である。
図4】8つの部位にわたる、kg/haでの予測されたLC-PUFA(EPA、DPA、及びDHA)に対してグラフ化された穀物収穫量を表す。◆はLC-PFU kg/haであり;--は線形LC-PFU kg/haであり;y=34.043x+3.4049であり;R=0.8636である。
図5】4つのトランスジェニックインサート及びその隣接するB.ナパス配列(太字)のDNA配列(SEQ ID NO:40)を示す。
図6】16のトランスジェニックインサート及びその隣接するB.ナパス配列(太字)のDNA配列(SEQ ID NO:41)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
この発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、及び試薬などには限定されず、これらは変動し得ることを理解されたい。本明細書で使用された用語は、特定の実施形態のみについて記載するためのものであり、且つ、請求項により単独で定義される本発明の範囲を制限するようには意図されていない。
【0053】
確認された全ての特許及び他の刊行物は、例えば、本発明に関連して使用され得るそのような刊行物に記載される方法論を記載且つ開示するために参照により本明細書に組み込まれるが、本明細書で提示されるものと一致しない用語の定義を提供するものではない。これら刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示のために単独で提供される。この点に関しては何れも、先行発明により又は他の理由のためにそのような開示に先行する権利を発明者が有していないという承認として解釈されるべきでない。日付に関する声明、又はこれら文書の内容に関する表現は全て、出願人に利用可能な情報に基づくものであり、これらの文書の日付又は内容の正確さに関する承認を構成するものではない。
【0054】
本明細書及び請求項で使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、他に内容が明確に指示しない限り、複数の言及を含む。本明細書の全体にわたって、他に示されていない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含むこと(comprising)」は、排他的よりも包括的に使用されるものであり、それにより、明言された整数又は整数の群は、1つ以上の他の明言されていない整数又は整数の群を含み得る。用語「又は」は、例えば「何れか」によって修飾されない限りは包括的である。故に、文脈が示していない限り、単語「又は」は、特定のリストの1つの員を意味し、及びそのリストの員の任意の組み合わせも含む。
【0055】
全ての値は、環境条件によって脂肪酸組成物に幾つか変動が生じるため、およそのものである。値は典型的に、全脂肪酸の重量パーセント、又は全種子の重量パーセントとして表わされる。従って、操作の例以外に、又は他に示されている場合、本明細書で使用される質量又は反応条件を表わす全ての数は、用語「約」により全ての例で修飾されると理解されたい。
【0056】
組み換えDNA技術は、当該技術分野で知られているような標準プロトコルに従い実行することができる。Sambrook et al., MOLECULAR CLONING: LAB. MANUAL (2nd Ed. , Cold Spring Harbor Lab. Press, NY (1989); Ausubel et al., CURRENT PROTOCOLS MOLEC. BIOL. (1994 and updates); DNA CLONING: PRACTICAL APPROACH, Vols. 1-4 (Glover & Hames, Eds., IRL Press 1995, 1996), Croy, PLANT MOLEC. BIOL. LABFAX (BIOS Sci. Pub. Ltd. & Blackwell Sci. Pub., UK, 1993); WO 2015089587を参照。
【0057】
見出しは、利便性のためだけに提供されるものであり、任意の方法で本発明を制限すると解釈されるべきではない。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者により共通して理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で使用された用語は、特定の実施形態のみについて記載するためのものであり、且つ、請求項により単独で定義される本発明の範囲を制限するようには意図されていない。本開示をより容易に理解することが可能となるために、特定の用語が最初に定義される。追加の定義は詳細な説明の全体にわたって説明される。
【0058】
「系統」は、その明示を共有する個体間の全体的な変異をほとんど表示しない植物の群である。「系統」はまた、少なくとも1つの形質のための個体間の遺伝的変異をほとんど又は全く表示しない同じ遺伝物質を実質的に運ぶ、植物の均質の集合体を指す。「変種」又は「栽培品種」は、「系統」と互換的に使用されてもよいが、一般的に、前者の2つの用語は商業上の生産に適切な系統を指す。例えば、句「親系統に遺伝的に由来する」で使用されるような、「遺伝的に由来する」は、問題の特徴が、問題の植物の遺伝的構成の態様によって全体的又は部分的に指示されることを意味する。
【0059】
本明細書で使用されるような「ブラッシカ」植物は、アブラナ科の植物を指す。ブラッシカ植物は、ブラッシカ・ナパス、B.ラパ(或いはカンペステリス(campestris))、又はB.ジュンセアの種のうち1つに属する場合がある。代替的に、この植物は、B.ナポカンペストリス(B.napocampestris)などのこれらブラッシカ種の交雑、或いは、これらブラッシカ種のうち1つのクルシフェラセア(Cruciferacea)の別の種との人工的な交雑から生じる種に属することができる。倍数性は、栽培品種により示されたクロモソームの数が二倍体又は四倍体であるかどうかを指す。ブラッシカ・ナパスは、ブラッシカ・ラパ(以前のB.カンペステリス)及びB.オレラセア両方のゲノムの交雑及び維持から生じる異質四倍体(複二倍体)であるので、導入遺伝子イベントNS-B50027-4を含むB.ナパス植物は、NS-B50027-4イベントを導入するための育種方法、及び故に、本明細書に記載されるようなLC-ω3脂肪酸をブラッシカ属の他の員へと生産する「形質」と共に使用され得る。従って、本実施形態を実行するのに有用なブラッシカ属の員の例は、限定されないが、属ブラッシカに属する他の植物と同様にB.ジュンセア、B.ナポブラッシカ、B.オレラセア、B.カリナタ、B.ナパス、B.ラパ、及びB.カンペステリスの他、ブラッシカ種間の育種を可能にするブラッシカ属に属する他の植物を含む。通常、「油料種子植物」は、B.ナパス、B.ラパ(又はカンペステリス)、又はB.ジュンセアの種のうち1つを指す。
【0060】
ブラッシカ・ナパスは一般的にナタネ(rapeseed)又は菜種として知られており、特定の栽培品種はキャノーラと称されることもある。本明細書で使用されるように、用語「キャノーラ」又は「キャノーラ植物」は、キャノーラ油(即ち、2%未満のエルカ酸を含む特定の品質指定を満たす油)を生産するために使用可能なブラッシカ植物を指し、ブラッシカ・ナパス、B.ナポブラッシカ、B.ラパ、B.ジュンセア、及びB.カンペステリスの変種が含まれる。キャノーラは、ゲノムAACCを持つ複二倍体(異質四倍体とも称される)、各親の形態から設定される完全な二倍体クロモソームを持つ種間雑種である。
【0061】
「キャノーラ」及び「キャノーラ植物」は典型的にブラッシカ・ナパスを指すが、キャノーラで育種され得る全ての植物変種を含む。「キャノーラ」及び「キャノーラ植物」は植物部分も含む。「キャノーラ油」は2%未満のエルカ酸を含まなければならず;1グラムの大気乾燥した油の無い固形キャノーラ種子は、30μモル未満の3-ブテニルグルコシノレート、4-ペンテニルグルコシノレート、2-ヒドロキシ-3-ブテニルグルコシノレート、2-ヒドロキシ-4-ペンテニルグルコシノレート、又はそれらの混合物を含まなければならない。例えば、CODEX ALIMENTARIUS: FATS, OILS & RELATED PRODUCTS, VOL. 8 (2nd ed., Food & Agriculture Org. United Nations, Rome, Italy, 2001)を参照。
【0062】
「植物部分」は、植物細胞、植物器官、植物原形質体、植物が再分化可能な植物細胞組織培養物、植物カルス、植物凝集塊、及び、胚、花粉、胚珠、種子、鞘、葉、花、枝、果実、柄、根、根端、葯、子葉、胚軸、幼根、単細胞、生殖体、細胞培養物、組織培養物などの植物又はその部分において無傷の植物細胞を含む。子葉は子葉(seed leaf)の一種であり;小さな葉が植物胚上に含まれている。子葉は、種子の食品貯蔵(food storage)組織を含む。胚は、成熟種子内に含まれる小さな植物である。「植物細胞」はまた、非再分化可能な植物細胞を包含する。これらの部分がイベントNS-B50027-4核酸分子を含む場合、再分化された植物の後代、誘導体、変異体、及び突然変異体も、本実施形態の範囲内に含まれる。本実施形態はまた、植物の細胞培養物及び組織培養物でのエリートイベントNS-B50027-4導入遺伝子の使用に関する。この実施形態は、エリートイベントNS-B50027-4系統からの植物及び植物部分の他、記載した方法により生産された他の植物を含む。
【0063】
「アレル」は、1つの形質又は特徴に関連する遺伝子の1つ以上の代替的な形態のうち何れかである。二倍体細胞又は生物体において、与えられた遺伝子の2つのアレルは、1組の相同クロモソーム上の対応する遺伝子座を占有する。
【0064】
「遺伝子座」は、例えば修飾された脂肪酸代謝、修飾されたフィチン酸代謝、修飾された糖質代謝、雄性不稔性、除草剤耐性、虫害耐性、耐病性、又は修飾されたタンパク質代謝などの1つ以上の形質を付与する。この形質は、例えば、戻し交雑、天然又は誘発突然変異、或いは形質転換技術を通じて導入された導入遺伝子により、系統のゲノムへと導入される自然に生じる遺伝子によって付与されることもある。遺伝子座は、単一のクロモソーム位置にて統合された1つ以上のアレルを含む場合がある。量的形質遺伝子座(QTL)は、少なくともある程度、通常は連続して分布する数的に表現可能な形質を制御する、遺伝子座を指す。
【0065】
「イベント」は、遺伝子操作の結果、対象の遺伝子のうち少なくとも1つのコピーを含む外来DNAを運ぶ人工遺伝子座である。イベントの典型的なアレルの状態は、外来DNAの存在又は不在である。イベントは、1つ以上の導入遺伝子の発現により表現型的に特徴とされ得る。遺伝子レベルでは、イベントは植物の遺伝的構成の一部である。分子レベルでは、イベントは、制限マップ(例えば、サザンブロッティングにより判定されるように)、導入遺伝子の上流又は下流の隣接配列、或いは導入遺伝子の分子の構成によって特徴付けられる。通常、形質転換するDNAを伴う植物細胞又は植物部分の形質転換は多くのイベントにつながり、その各々は固有のものである。
【0066】
用語「遺伝子」は、共にプロモーター領域を形成するプロモーター及び5’非翻訳領域(5’UTR又は5’非コーディング配列);コーディング領域(タンパク質のためにコードする、又はしない場合がある);及びポリアデニル化部位を含む非翻訳3’領域(3’UTR又は3’非コーディング配列)など、様々な操作可能に結合されたDNA領域を典型的に含むDNA分子を指す。典型的に、植物細胞において、5’UTR、コーディング、及び3’UTR領域は、タンパク質コード化遺伝子の場合にはタンパク質に翻訳されるRNA分子へと転写される。「コーディング配列」は故に、アミノ酸の特異的配列を翻訳するコドンを提供するDNA分子におけるヌクレオチドの配列を指す。遺伝子は、例えばイントロンなど追加のDNA領域を含む場合がある。「遺伝子型」は、細胞又は生物体の遺伝子構造を指す。「遺伝子座」は一般的に、植物のゲノムにおいて与えられた遺伝子の位置である。
【0067】
用語「導入遺伝子」は、植物のゲノムに組み込まれるような対象の遺伝子を指す。従って、「遺伝子導入植物」は、その細胞の全てのゲノムにおける少なくとも1つの導入遺伝子を含む。本実施形態の導入遺伝子は、対象の遺伝子の少なくとも1つのコピーを含み、より具体的には、パブロバ・サリナに由来するΔ4デサチュラーゼ、海洋の微細藻類パブロバ・サリナに由来するΔ5デサチュラーゼ、微細藻類ピラミモナス・コルダタに由来するΔ5エロンガーゼ、微細藻類ミクロモナス・プシラに由来するΔ6デサチュラーゼ、ピラミモナス・コルダタに由来するΔ6エロンガーゼ、酵母ラカンセア・クルイヴェリに由来するΔ12デサチュラーゼ、及び酵母ピキア・パストリスに由来するΔ15/ω3デサチュラーゼのうち少なくとも1つのコピー;並びに、微細藻類ミクロモナス・プシラに由来するΔ6デサチュラーゼ、ピラミモナス・コルダタに由来するΔ5エロンガーゼ、海洋の微細藻類パブロバ・サリナに由来するΔ5デサチュラーゼ、及び酵母ピキア・パストリスに由来するΔ15/ω3デサチュラーゼのうち少なくとも1つの追加のコピーを含む。導入遺伝子は、適切な調節領域を含む発現カセットにおいてバイナリー様式で配置される。上述の導入遺伝子は、コドン最適化戦略を使用して設計されているという点で人工的であり、故に導入遺伝子は自然界に存在しない。遺伝子導入の発現カセットは、ニコチアナ・タバカム由来の少なくとも1つのマトリックス付着領域(MAR)を含む場合がある。導入遺伝子カセットは、選択可能なマーカー遺伝子も含む場合がある。米国特許第8,816,111号を参照。
【0068】
「外来」又は「異種」は、植物種に関して遺伝子又はDNA分子を指す時に、遺伝子又はDNA分子、或いはその部分(例えば特定の領域)がその植物種には自然に見出されず、又はその植物種の遺伝子座に自然に見出されないことを示す。用語「外来DNA」はまた、形質転換の結果として植物のゲノムに組み込まれる又は組み込まれているDNA分子を指す。本開示の文脈において、導入遺伝子、トランスジェニックカセット、又は遺伝子導入発現カセットは、少なくとも1つの外来又は異種のDNAを含む。
【0069】
用語「キメラ」は、遺伝子又はDNA分子を指す時、遺伝子又はDNA分子が、少なくとも1つのDNAがキメラ分子において別のDNA領域にとって異質となるように、自然には互いに関連せず且つ異なるソースから生じる少なくとも2つの機能的に関連するDNA領域(プロモーター、5’UTR、コーディング領域、3’UTR、イントロンなど)を含むことを示すために使用される。
【0070】
用語「プラスミド」及び「ベクター」は、細胞の中央代謝の一部でない遺伝子を頻繁に運ぶ余分なクロモソームエレメントを指し、通常は円形の二本鎖DNAフラグメントの形態である。そのようなエレメントは、任意のソースに由来する一本鎖又は二本鎖DNAの自己複製配列、ゲノム統合配列、ファージ又はヌクレオチド配列、線形又は円形であってもよく、そこでは、多くのヌクレオチド配列が、適切な3’非翻訳配列と共に選択された遺伝子産物のためのプロモーターフラグメント及びDNA配列を細胞へと導入可能な固有の構造へと、結合又は再結合されている。遺伝子導入植物に関連して、そのようなプラスミド又はベクターは、植物ゲノムへの導入遺伝子に対する挿入を容易にするためにT-DNAの領域を含む場合がある。
【0071】
「発現カセット」は、導入遺伝子を含有し、且つ、外来宿主における遺伝子の発現を可能にする外来遺伝子を加えたエレメントを有する遺伝子構成を指し;及び植物のゲノムへの挿入前後のカセットを指すこともある。言いかえれば、遺伝子導入のインサートは発現カセットを含む。
【0072】
「形質転換DNA」は、形質転換のために使用される組み換えDNA分子、例えば発現ベクターを指す。形質転換DNAは通常、形質転換された植物に1つ以上の特定の特徴を付与することができる、少なくとも1つの「対象の遺伝子」(例えばキメラ遺伝子)を含む。
【0073】
「形質転換」は、宿主生物体への核酸分子の移動を指し、遺伝的に安定した遺伝をもたらす。核酸分子は、例えば自律的に複製するプラスミドであり、又は、宿主生物体のゲノムへと統合する場合もある。形質転換された核酸フラグメントを含む宿主生物体は、「遺伝子導入」、「組み換え型」、又は「形質転換した」生物体として言及される。
【0074】
用語「組み換えDNA分子」は例証のために使用され、故に、DNAであり且つ合成DNAの合成又はPCRなどの組み換え或いは他の手順を介して得ることができる、単離された核酸分子を含み得る。PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)は、標的ポリヌクレオチドの複製コピーが、「上流」及び「下流」プライマーから成るプライマー、DNAポリメラーゼなどの重合の触媒、及び典型的に熱により安定するポリメラーゼ酵素を用いて作られる反応である。PCRのための方法は当該技術分野で知られている。例えば、PCR (McPherson & Moller, eds., BIOS Sci. Publ. Ltd., Oxford, 2000)を参照。PCRはゲノムDNA又はcDNAの上で行なわれ得る。
【0075】
「挿入DNA」は、形質転換プロセスを介して植物材料に導入される異種DNAを指し、本明細書で説明されるような形質転換のために使用される本来のDNAとは異なるDNAを含んでいる。挿入DNAは典型的に遺伝子導入の発現カセットである。「エリートイベントNS-B50027-4挿入核酸」及び「イベントNS-B50027-4挿入DNA」は、SEQ ID NO:1のヌクレオチド2090~14201の配列又はその補体から成ることを特徴とする核酸分子;及び、SEQ ID NO:2のヌクレオチド位置987~1894の配列、又はSEQ ID NO:3の1~910の配列、或いはその補体を含むことを特徴とする核酸分子を指す。
【0076】
「適切な調節配列」は、コーディング配列の上流(例えば5’UTR)、その中、又はその下流(3’UTR)に位置するヌクレオチド配列を指し;これは、転写、RNAの処理又は安定、或いは関連するコーディング配列の翻訳に影響を及ぼす。調節配列は、プロモーター、エンハンサーエレメント、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNA処理部位、エフェクター結合部位、及びステムループ構造を含んでもよい。
【0077】
「プロモーター」は、コーディング配列又は機能的RNAの発現を制御することができるDNA配列を指す。一般に、コーディング配列はプロモーター配列に対して3’に位置する。プロモーターは、全体的に天然の遺伝子に由来し、自然に見出される異なるプロモーターに由来する異なるエレメントで構成され、或いは合成DNAセグメントをも含む場合がある。異なるプロモーターが、異なる組織又は細胞タイプにおいて、異なる開発段階にて、又は異なる環境或いは生理学的条件に応じて遺伝子の発現を方向付ける場合があることは、当業者に理解される。多くの場合に大半の細胞型にて遺伝子を発現させるプロモーターは一般的に、「構成的プロモーター」と呼ばれる。大半の場合、調節配列の正確な境界が完全には定められていないことから、異なる長さのDNAフラグメントが同一のプロモーター作用を持つ場合があることが、更に認識される。
【0078】
用語「3’非コーディング配列」及び「転写ターミネーター」は、コーディング配列の下流に位置するDNA配列を指す。これは、ポリアデニル化認識配列、及び、mRNA処理又は遺伝子発現に影響を与えることができる調節シグナルをコードする他の配列を含む。ポリアデニル化シグナルは通常、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸部分(tracts)の付加に影響を及ぼすことにより特徴づけられる。3’領域は、転写、RNAの処理又は安定、或いは関連するコーディング配列の翻訳に影響を及ぼすことができる。
【0079】
用語「操作可能に結合した」は、一方の機能が他方により影響を受けるような単一の核酸フラグメント上での核酸の会合を指す。例えば、プロモーターは、コーディング配列の発現に影響を及ぼすことが可能な場合、コーディング配列と操作可能に結合される(即ち、コーディング配列はプロモーターの転写調節の下にある)。コーディング配列は、センス又はアンチセンスの配向で調節配列に操作可能に結合され得る。
【0080】
本明細書で使用されるように、用語「発現」は、本発明の核酸に由来するセンス(mRNA)の転写及び安定した蓄積を指す。発現はまた、ポリペプチドへのmRNAの翻訳を指す場合もある。
【0081】
細胞に対する言及は、他に明示されない又は文脈から明らかでない限り、単離され、組織培養物中にあり、或いは植物又は植物の部分に組み込まれているかにかかわらず、植物細胞を含む。
【0082】
「後代」は、植物の子孫及び誘導体を含む全ての末裔を意味し、且つ、第1世代、第2世代、第3世代、及びその後の世代を含み;並びに、自家受粉、或いは、同じ又は異なる遺伝子型を持つ植物との交雑により生産され、且つ、様々な適切な遺伝子工学技術により改質されることもある。成長種は一般的に、ヒトにより意識的に変質され且つ選択された植物に関連する。「T0」は形質転換された植物材料の第1世代を指し、「T1」はT0植物上で生産された種子を指し、T1種子は後のTx後代にT2種子等を生産する植物を生じさせる。
【0083】
「育種」は、植物を発育又は繁殖させる方法を全て含み、種間と種内及び系統間と系統内両方の交雑の他、全ての適切な従来の育種及び人工育種技術を含む。望ましい形質(例えばNS-B50027-4 DHAの形質)は、従来の育種方法を介して、他のキャノーラ又はB.ナパスの系統、栽培品種、又は培養種へと導入され;及び、種間交雑を介してB.ジュンセアとB.ラパなどの他のブラッシカ種へと導入され得る。従来の育種方法と種間交雑方法の他、植物間で遺伝物質を導入する他の方法も、当該技術分野で周知である。
【0084】
「戻し交雑」は、育成者が繰り返し雑種後代を、親の系統、例えばF1雑種の親の遺伝子型のうちの1つを持つ第1世代の雑種F1に交雑させるプロセスである。
【0085】
「脂肪酸組成物」又は「脂肪酸含有量」は一般的に、成熟した全体的又は部分的に乾燥した種子の内生的に形成された油に存在する、様々な脂肪酸の重量パーセントを指す。共通の工業的手法は、絶対量ではなく、面積率(標準化された面積)として脂肪酸組成物を報告することである。面積率により、計算、及び、同じ方法を報告する産業における他に多くのものの結果との比較が容易になる。面積率は、絶対重量パーセントと同じではないが、それに近似する。絶対的な結果は、既知の濃度の個々の参照標準、及びmg/kgの方式で結果を計算するための内標準を使用して計算され得る。個々の脂肪酸標準を使用することなく脂肪酸の質量を計算するために補正係数を使用することも可能であるが、未だに内標準が必要な場合がある。一般的に、脂肪酸含有量は、種子を砕くことにより、及び、面積パーセントとしてデータを生成する、或いは面積パーセントが由来し得る、様々な技術によって脂肪酸含有量について分析可能な脂肪酸メチルエステル(FAME)として脂肪酸を抽出することによって、判定される。例となる分析手法には、ガスクロマトグラフィー(GC)、GC質量分析法(GC-MS)、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)、NMR(NMR)、又は近赤外線反射分光法が挙げられる。脂質の合計は、例えばTAG分画などの分画を精製するための、当該技術分野で知られる技術によって分離され得る。脂肪酸組成物を特徴付ける他の方法が、当業者に知られている。例えば、Tinoco et al., 3 Anal. Biochem. 514 (1962); CANOLA: CHEMISTRY, PRODUCTION, PROCESSING & UTILIZATION (Daun et al., eds., AOCS Press, Urbana, IL, 2011) (Daun et al., 2011); US 2015/0166928; US 20160002566を参照。
【0086】
同様に、「油含有量」は、成熟した全体的又は部分的に乾燥した種子(典型的には約6%又は7%の水分を含む)に存在する油の典型的な重量パーセントである。パーセント油は、0%の水分での種子の重量で割られる油の重量として計算される。油含有量は異なる変種の特徴であり得る。これは、NMR(MQC、Oxford Instruments)、NIR、及びソックスレー抽出などの様々な分析技術を使用して判定され得る。例えば、キャノーラ油の含有量は、水分含有量を同時に測定する、パルス波NMS 100 MinispecNMR(Balker Pty Ltd Scientific Instruments, Germany)による核磁気共鳴技術(Rossell & Pritchar, ANALYSIS OF OILSEEDS, FATS & FATTY FOODS 48-53 (Elsevier Sci. Pub. Ltd, London, 1991))によって測定され得る。種子油の含有量も、近赤外線反射(NIR)分光法により測定され得る。Li et al. 67 Phytochem. 904 (2006)を参照。
【0087】
句「抽出された植物脂質」、「単離された植物脂質」、「抽出された脂質」などは、例えば、種子等の砕かれた植物又は植物部分から抽出された脂質を含む組成物を指す。抽出された脂質は、例えば種子などの植物材料を砕くことによって得られる比較的天然のままの組成物;又は、植物材料由来の水、核酸、タンパク質、又は炭水化物の全てではないが大半が油から取り除かれている、更に精製された組成物であり得る。精製方法の例は当該技術分野で知られている。幾つかの実施形態において、抽出又は単離された植物脂質は、組成物の少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、又は少なくとも約95重量%(w/w)の脂質を含む。抽出された脂質は室温の固体又は液体でもよく、後者は「油」と考慮される。幾つかの実施形態において、抽出された脂質は、別のソースにより生産されたDHAなどの別の脂質(例えば魚油のDHA)とは混合されていない。幾つかの実施形態において、抽出後、DHAに対するオレイン酸、DHAに対するパルミチン酸、又はDHAに対するリノール酸の比率、或いは、総ω3脂肪酸に対する総ω6脂肪酸の比率は、無傷の種子又は細胞における比率と比較して、著しく(例えば、10%又は5%以下の変化)変えられていない。言いかえれば、抽出された脂質は、特定の脂肪酸、例えばDHAが豊富ではない。他の実施形態において、抽出された植物脂質は、無傷の種子又は細胞における比率と比較すると、DHAに対するオレイン酸、DHAに対するパルミチン酸、DHAに対するリノール酸、或いは総ω3脂肪酸に対する総ω6脂肪酸の比率を変える、水素化又は分画などの手順に晒されていない。言いかえれば、抽出された脂質は、特定の脂肪酸、例えばDHAが豊富ではない。本実施形態の抽出された植物脂質が油である時、油はステロールなどの非脂肪酸分子を更に含むこともある。
【0088】
上述のように、句「抽出された植物油」及び「単離された植物油」は、室温では液体である抽出された植物脂質又は単離された植物脂質を含む、組成物を指す。油は、植物又は種子などの植物部分から得られる。抽出又は単離された油は、例えば種子などの植物を砕くことによって得られる比較的天然のままの組成物;又は、植物材料由来の水、核酸、タンパク質、又は炭水化物の全てではないが大半が油から取り除かれている、更に精製された組成物であり得る。組成物は、脂質、或いは非脂質、例えばステロールなどの非脂肪酸分子であり得る、他の成分を含むこともある。一実施形態において、油組成物は、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、又は少なくとも約95重量%(w/w)の抽出された植物脂質を含む。一実施形態において、本発明の抽出された油は、別のソースにより生産されたDHAなどの別の油又は脂肪酸(例えば魚油のDHA)とは混合されていない。一実施形態において、抽出後、脂肪酸の比率は、無傷の種子又は細胞における比率と比較して著しく(例えば、10%又は5%以下の変化)変えられず;また、抽出された植物油は、無傷の種子又は細胞における比率と比較すると、抽出物における脂肪酸の比率を著しく変える水素化又は分画などの手順に晒されていない。言いかえれば、抽出された油は、特定の脂肪酸、例えばDHAが豊富ではない。
【0089】
本明細書で使用されるように、「油」は、主に脂質を含み且つ室温では液体である組成物である。例えば、本発明の油は、好ましくは少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%の脂質を含む。典型的に、精製された植物油は、油の中に脂質の少なくとも90重量%のトリアシルグリセロール(TAG)を含む。ジアシルグリセロール(DAG)、遊離脂肪酸(FFA)、リン脂質、又はステロールなどの油の小さな成分が、油に存在することもある。
【0090】
本明細書で使用されるように、用語「脂肪酸」は、飽和又は不飽和の何れかの長鎖(long)脂肪族末端を頻繁に伴うカルボン酸を指す。典型的に、脂肪酸には、長さが少なくとも8の炭素原子、例えば長さが少なくとも12、16、18、20、又は22の炭素の炭素炭素結合された鎖がある。大半の自然に生じる脂肪酸は、その生合成が2つの炭素原子を持つ酢酸塩を含むことから、偶数の炭素原子を持つ。脂肪酸は、遊離状態(エステル化されない);トリグリセリド(TAG)、ジアシルグリセリド(DAG)、モノアシルグリセリドの一部などのエステル化形態;又はアシル-CoA(チオ-エステル)結合の形態、或いは別の結合形態であり得る。脂肪酸は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、又はジホスファチジルグリセロールなどのリン脂質としてエステル化され得る。
【0091】
「飽和脂肪酸」は、炭素炭素二重結合(アルケン)又は鎖に沿った他の官能基を含んでいない。「飽和した」は、あらゆる炭素(カルボン酸[-COOH]基とは別)での水素の存在を指す。言いかえれば、飽和脂肪酸において、脂肪酸のオメガ(ω)末端(n-末端とも呼ばれる)は、3つの水素(-CH)を含み、鎖内の炭素はそれぞれ2つの水素(-CH-)を含む。
【0092】
「不飽和脂肪酸」は、炭素鎖中に少なくとも1つのアルケン基(-CH=CH-)を含むこと以外、飽和脂肪酸と同様の骨格を共有する。2つの隣接する炭素原子(アルケン基の一方の側に結合される)が、シス又はトランス配置に生じる場合がある。「単不飽和脂肪酸」は、炭素鎖中に少なくとも12の炭素原子を持つがアルケン基は1つしか持たない脂肪酸を指す。「多不飽和脂肪酸」又は「PUFA」は、炭素鎖中に少なくとも12の炭素原子及び少なくとも2つのアルケン基を持つ脂肪酸を指す。「長鎖多不飽和脂肪酸」及び「LC-PUFA」は、炭素鎖中に少なくとも20の炭素原子及び少なくとも2つのアルケン基を持つ脂肪酸を指す。「非常に長い鎖の多不飽和脂肪酸」及び「VLC-PUFA」は、炭素鎖中に少なくとも22の炭素原子及び少なくとも3つのアルケン基を持つ脂肪酸を指す。LC-PUFAに対する言及はVLC-PUFAを含む。通常、脂肪酸の炭素鎖中の炭素原子の数は、非分枝炭素鎖を指す。炭素鎖が分枝される場合、炭素原子の数は側基の中のものを除外する。
【0093】
1つの実施形態において、LC-PUFAはω3脂肪酸であり:これは、脂肪酸のメチル末端から第3の炭素炭素結合に脱飽和(アルケン基)を有している。別の実施形態において、LC-PUFAはω6脂肪酸であり:これは、脂肪酸のメチル末端から第6の炭素炭素結合に脱飽和(アルケン基)を有している。脂肪酸鎖中のアルケン(二重結合)の位置はまた、Δ(又はデルタ)を使用して注釈され、そこでは、アルケンの位置は、脂肪酸のカルボン酸末端に関して番号付けされる。例えば、「シス-Δ9、シス-Δ12のオクタデカジエン酸」、又は「Δ9,12のオクタデカジエン酸」といったリノール酸も指定することができる。脂肪酸はまた、「C:D」の脂質の数に関して同定することができ、ここでCは炭素の数であり、Dは炭素骨格中の二重結合の番号である。例えば、アラキドン酸は、脂肪酸のカルボン酸末端から炭素5、8、11、及び14に位置する、4つのアルケン基を伴う12の炭素鎖を意味する、20:4Δ5,8,11,14で注釈され得る。この名称はまた、カルボン酸末端からC14にて20の炭素及び1つのアルケンがある場合にメチル末端の第1のアルケンがC6になければならないため、アラキドン酸がω6脂肪酸であることを示している。
【0094】
更なる実施形態において、LC-PUFAは以下から成る群から選択される:アラキドン酸(ARA、20:4Δ5,8,11,14;ω6)、エイコサテトラエン酸(ETA、20:4Δ8,11,14,17;ω3)、エイコサペンタエン酸(EPA、20:5Δ5,8,11,14,17;ω3)、ドコサペンタエン酸(DPA、22:5Δ7,10,13,16,19;ω3)、又はドコサヘキサエン酸(DHA、22:6Δ4,7,10,13,16,19;ω3)。LC-PUFAはまた、ジホモγ-リノール酸(DGLA)又はエイコサトリエン酸(ETrA、20:3Δ11,14,17;ω3)であり得る。本実施形態に従い生産されたLC-PUFAは、上述の何れか又は全ての混合物であり、且つ、他のLC-PUFA、又はこれらLC-PUFAの何れかの誘導体を含むこともある。しかし、エリートイベントキャノーラに生産されたLC-PUFAは一般的に、魚油に由来のものよりも純粋である。少なくとも1つの実施形態において、ω3脂肪酸は、DHA;DPAとDHA;又は、EPA、DPA、及びDHAのうち、少なくとも1つである。
【0095】
更に、上述のように、LC-PUFA及びVLC-PUFAは、遊離脂肪酸形態(エステル化されていない)、エステル化形態、又は別の結合形態であり得る。故に、本実施形態のLC-PUFAは、細胞の脂質、抽出された脂質、又は精製された油における形態の混合物として存在する場合もある。少なくとも1つの実施形態において、油は少なくとも75%又は少なくとも85%のトリアシルグリセロールを含み、残りは言及されるものなどの脂質の他の形態として存在し、トリアシルグリセロールは少なくとも1つのLC-PUFAを含む。油はその後、例えば遊離脂肪酸を放出するために強塩基を用いた加水分解、又は蒸留などにより、更に精製或いは処理されてもよい。
【0096】
従って、「全ω3脂肪酸」、「全ω3脂肪酸含有量」などは、文脈が定めるように、抽出された脂質、油、組み換え型細胞、植物部分又は種子において、エステル化された又はエステル化されていない全てのω3脂肪酸の合計を指し、典型的に全脂肪酸含有量のパーセンテージとして表わされる。これらω3脂肪酸は、ALA、SDA、ETrA、ETA、EPA、DPA、又はDHAを含んでおり、任意のω6脂肪酸又は単不飽和脂肪酸を除外している。「新たなω3脂肪酸」、「新たなω3脂肪酸含有量」などは、文脈が定めるように、抽出された脂質、油、組み換え型細胞、植物部分又は種子において、エステル化された又はエステル化されていない、ALAを除く全てのω3脂肪酸の合計を指し、全脂肪酸含有量のパーセンテージとして表わされる。これら新たなω3脂肪酸は、エリートイベント導入遺伝子構築物の発現によって本実施形態の細胞、植物、植物部分、及び種子に生産される脂肪酸であり、存在する場合、SDA、ETrA、ETA、EPA、DPA、又はDHAを含むが、ALA、任意のω6脂肪酸、又は単不飽和脂肪酸を除く。典型的な総ω3脂肪酸含有量及び新たなω3脂肪酸含有量は、サンプル中の脂肪酸のFAMEへの変換、及び当該技術分野で既知の方法を用いるGCによる分析によって、判定され得る。例えばAmerican Oilseed Chemists’ Society (AOCS) method Celd-91を参照。
【0097】
同様に、「総ω6脂肪酸」、「総ω6脂肪酸含有量」などは、文脈が定めるように、抽出された脂質、油、組み換え型細胞、植物部分又は種子において、エステル化された又はエステル化されていない全てのω6脂肪酸の合計を指し、全脂肪酸含有量のパーセンテージとして表わされる。「総ω6脂肪酸」は、存在する場合、LA、GLA、DGLA、ARA、EDA、又はω6-DPAを含むが、任意のω3脂肪酸又は単不飽和脂肪酸を除く場合がある。「新たなω6脂肪酸」、「新たなω6脂肪酸含有量」などは、文脈が定めるように、抽出された脂質、油、組み換え型細胞、植物部分又は種子において、エステル化された又はエステル化されていない、LAを除く全てのω6脂肪酸の合計を指し、全脂肪酸含有量のパーセンテージとして表わされる。これら新たなω6脂肪酸は、エリートイベント導入遺伝子の発現を介して、本明細書に記載されるような細胞、植物、植物部分、又は種子に生産される脂肪酸であり、且つ、GLA、DGLA、ARA、EDA、又はω6-DPAを含むが、LA、任意のω3脂肪酸、又は単不飽和脂肪酸を除く場合がある。
【0098】
「半分種子分析(Half-seed analysis)」は、2つの子葉のうちの1つ(半分の種子)に脂肪酸分析が行なわれ、且つ第2の子葉を運ぶ残りの苗木が植物を形成する、手順である。
【0099】
「タンパク質含有量」は、成熟した全体的に乾燥した種子の油の無い粉末中のタンパク質の典型的な重量パーセントであり、当該技術分野で既知の方法により判定される。例えば、Daun et al., 2011; AOCS Official Meth. Ba 4e-93 Combustion Meth. Determination Crude Proteinを参照。
【0100】
種を成長又は複製する以外の目的のために成長業者により作られた成熟種子は時に、「穀物」と称される。
【0101】
遺伝子的イベント(Genetic events)
キャノーラにおける導入遺伝子の形質発現は、導入遺伝子カセット自体の構造、および植物ゲノムにおけるその挿入位置の両方により判定される:植物ゲノムにおいて特定の位置で導入遺伝子が存在することにより、導入遺伝子の発現および植物の全体的な表現型に影響を及ぼす可能性がある。遺伝子操作による植物への商業的に興味深い形質の農業的または工業的に成功した導入は、様々な要因に依存する長い手順である可能性がある。遺伝的に形質転換された植物の実際の形質転換および再生は、広範囲の遺伝的特徴付け、育種、および野外試験での評価を含む一連の選択段階の最初のものにすぎず、最終的にはエリートイベントの選択につながる。
【0102】
本実施形態の態様は、植物ゲノムにおける驚くべき数の発現可能な導入遺伝子のコピーを含んでいる。「発現可能」は、DNA分子の一次構造、すなわち導入遺伝子のコード配列は、その遺伝子が活性タンパク質をコードするということを示すことを意味する。しかしながら、「遺伝子サイレンシング」がインビボで相同導入遺伝子不活性化の様々な機構を介して生じるので、発現可能なコード配列は発現されないことがある。相同導入遺伝子の不活性化は、導入遺伝子がセンス方向に挿入されている植物において記載されており、遺伝子および導入遺伝子の両方がダウンレギュレートされたという予想外の結果を伴っていた。Napoli et al., 2 Plant Cell 279(1990)。相同遺伝子配列の不活性化のために起こりうる機構には、重複したDNA領域が遺伝子サイレンシングのための内因性メカニズムに信号を送る(signal)、メチル化による転写不活性化と、内因性遺伝子および導入遺伝子の両方からのmRNAレベルの組み合わせが両方のメッセージの閾値誘導性分解(threshold-induced degradation)を引き起こす、転写後サイレンシングと、を含む。van Bokland et al., 6 Plant J. 861(1994)。しかしながら、驚くべきことことに、NS-B50027-4にいくつかの導入遺伝子の少なくとも3つのコピーがあるが、そのうちの幾つかは同じ向きで配置され、NS-B50027-4は相乗的なDHA発言を示す。
【0103】
エリート遺伝子イベントは、植物ゲノムにおける組み換えDNA分子の取り込み(incorporation)部位での位置および構成に特徴付けられうる。組み換えDNAカセットが挿入された植物ゲノムの部位はまた「挿入部位」または「標的部位」と呼ばれる。「隣接領域」または「隣接配列」は、例えば、トランスジェニックカセットのすぐ上流に近接して、またはすぐ下流に近接して位置する植物ゲノムの少なくとも20塩基対、少なくとも50塩基対、または最大5000塩基対のDNAの領域である。外来DNAのランダム組み込みをもたらす形質転換は、各形質転換体について特徴的かつ独特であり、異なる隣接領域を有する形質転換体をもたらす(エリートイベント)。
【0104】
一般的に、導入遺伝子が従来の交雑を通じて植物に導入される場合、植物ゲノムにおけるその挿入部位およびその隣接領域は変更されない。「挿入領域」とは(非形質転換)植物ゲノム中の導入遺伝子の上流および下流隣接領域に包含され、挿入部位(および潜在的な標的部位欠失)を含む、少なくとも100の塩基対または最大で10,000を超える塩基対などの、少なくとも40の塩基対に対応する領域を指す。種の内の突然変異によるささいな差異を考慮に入れると、挿入領域は、その種の所与の植物における外来DNAの上流および下流の隣接領域と90%、95%、または100%などの少なくとも85%の配列同一性を保持し得る。しかしながら、植物ゲノムへのトランスジェニックカセットの挿入は、「標的部位欠失」と呼ばれる、植物DNAの欠失をしばしば伴う場合がある。
【0105】
対象の遺伝子の発現は、導入遺伝子が、(対象の遺伝子の一部または全部の構造および機能に基づいて)形質転換DNAの導入によって与えられることが意図された1つ以上の表現型形質(例えば、LC-ω3脂肪酸の産生)を植物に与える、という事実を示す。本実施形態において、いくつかの導入遺伝子は、形質転換された植物におけるLC-ω3脂肪酸の産生のための生合成経路を提供する。
【0106】
「エリートイベント」は、本明細書に使用されるように、導入遺伝子構築物の発現および安定性と、それを含む植物の最適な農業特性との適合性と、望ましい表現型形質の実現とに基づいて、同じ形質転換DNAでの形質転換またはそのような形質転換によって得られる植物との戻し交雑によって得られる、イベントの群から選択されるイベントである。したがって、エリートイベント選択の基準は、以下の少なくとも1つ、および有利には全てである:
(a)導入遺伝子の存在は、作物的性能または商品価値に関連するものなど、植物の他の所望の特性を過度に損なうことはない;
(b)イベントは、安定して受け継がれており、それに対して同一性管理のための適切な診断ツールを開発することができる、明確に定義された分子構成によって特徴付けられる;
(c)導入遺伝子カセットにおける対象の遺伝子は、イベントを有する植物が通常の農学的用途に供される可能性が高い環境条件の範囲の商業的に許容されるレベルで、商業的に許容されるレベルで、イベントのヘテロ接合性(または半接合性)およびホモ接合性状態の両方において、正確で適切かつ安定な空間的および時間的な表現型発現を示す。外来DNAも、さらなる所望の商業的遺伝的背景(commercial genetic backgrounds)への遺伝子移入を可能にする、植物ゲノム中の位置と関連し得る。
【0107】
エリートイベントとしてのイベントの状態は、異なる関連する遺伝的背景におけるエリートイベントの遺伝子移入および、少なくとも1つの基準、例えば上述の(a)、(b)、(c)のへのコンプライアンスを観察することによって確認しうる。さらに、エリートイベントの選択はまた、適合性、より具体的には、エリートイベントNS-B50027-4を保有する植物と少なくとも1つの他のイベントを保有する植物との交雑から生じる後代によっても決定され得る、その結果、後代が両方のイベントを保有する。従って、「エリートイベント」は、上記基準に答えるトランスジェニックカセットを含む遺伝子座を指す。植物、種子、植物材料または後代は、そのゲノムにおける1つ以上のエリートイベントを含むことができる。
【0108】
エリートイベントNS-B50027-4は、LC-PUFA、特にLC-ω3脂肪酸、およびさらに特にはDHAを産生するキャノーラの発育におけるエリートイベントとして選択された。植物ゲノムにおける組み換えDNA分子の取り込みは、典型的には細胞または組織の形質転換(または別の遺伝子操作)に起因する。特定の取り込み部位は偶然の問題であることもあれば、または(標的とされた組み込みのプロセスが使用される場合、)事前に決定されることもある。本明細書に記載されているように、キャノーラ系統NS-B50027-4は安定して均一な育種系統である。これは植物の種類の均一性に細心の注意を払って育てられてきた。均一性について継続的に観察しながら系統を増やした。キャノーラ系統NS-B50027-4は、系統NS-B50027-4の特許出願時に商品化されている他のキャノーラ栽培品種の親ではない。
【0109】
新しい分子生物学的技術の出現により、特定のタンパク質産物をコードするなど、特定の機能を有する遺伝要素の単離および特徴付けが可能になった。植物生物学の分野の科学者は、特定の方法で植物の形質を変えるために、植物のゲノムを遺伝子操作して、外来の遺伝要素、または追加もしくは改変バージョンの天然もしくは内因性遺伝要素を含ませおよび発現させることに強い関心を寄せた。形質転換を使用して種のゲノムに挿入される任意のDNA分子は、異なる種由来であるか同じ種由来であるかにかかわらず、本明細書においてまとめて「導入遺伝子」と呼ばれる。「形質転換する」プロセスは、ゲノムへのDNAの挿入である。トランスジェニック植物を生成するいくつかの方法が開発されており、本発明は、特定の実施形態において、特許請求のキャノーラ系統NS-B50027-4の形質転換したバージョンに関する。
【0110】
生物学的および物理的な、植物の形質転換プロトコルを含む、植物の形質転換のための多数の方法が開発されている。加えて、植物細胞または組織の形質転換および植物の再分化のための発現ベクターおよびインビトロの培養方法が利用可能である。例えば、以下を参照;Miki et al., Procedures for introducing foreign DNA into plants, in METH.PLANT MOLEC.BIOL.& BIOTECHNOL.at 63(Glick & Thompson, eds., CRC Press, Boca Raton, 1993);Gruber et al., Vectors for plant transformation, id.at R 89;Genetic transformation for the improvement of Canola, PROC.WORLD CONF.BIOTECHNOL.FATS & OILS INDUS.at 43-46(Am. Oil. Chem. Soc., Champaign, IL, 1988)。
【0111】
最も普及しているタイプの植物形質転換は、発現ベクターの構築を含んでいる。そのようなベクターは、調節領域、例えばプロモーター、の制御下にあるコード領域または調節領域に作動可能に連結されたコード領域を含むDNA分子を含む。ベクターは1つ以上の遺伝子および1つ以上の調節要素を含みうる。コーディング領域およびそれぞれの調節要素の少なくとも1つは、ベクター内で反対方向に配置され得、バイナリーベクターを提供する。理論上、遺伝子サイレンシングを受けやすい遺伝子を二元的に配置することによって、遺伝子サイレンシングを最小限に抑えることができる。
【0112】
例えば、初期の形質転換カセット(pJP3416_GA7-modB)は、キャノーラ種子中にオメガ-3脂肪酸の蓄積を促進することができる7つの遺伝子と、インビトロで推定上のトランスジェニック植物の選択を容易にする、1つの選択可能なマーカー遺伝子を含んでいた。以下を参照;WO2013/185184;米国特許出願公開2015/0374654;米国特許第8,816,111号および第8,946,460号;Petrie et al., 6 Plant Meth.8(2010)。
【0113】
発現された遺伝子はすべて合成-コドン最適化および合成されたもの-であり、それゆえトランスジェニックDNA分子はいかなる天然生物にも見られない。コドン最適化のための鋳型として使用された元の配列が記載されている。以下を参照;Petrie et al., 12 Metab.Eng’g 233(2010a);Petrie et al., 11 Plant Methods 6(2010b);Petrie et al., 21 Transgenic Res.139(2012)。
【0114】
当技術分野において周知のように、機能遺伝子プロモーターは、遺伝子転写にとって重要であるがペプチドなどの機能性産物をコードしないDNAの領域である。例えば、構成的発現のための一般的なプロモーターはカリフラワーモザイクウイルス(Cauliflower Mosaic Virus)に由来する。Kay et al., 236 Science 1299(1987);Coutu et al., 16 Transgenic Res.771(2007)。ポリアデニル化シグナルを含むターミネーター領域は、完全かつ安定なmRNA分子の産生に必要とされる。例えば、A.ツメファシエンスノパリンシンターゼ(A. tumefaciens nopaline synthase)(NOS)ターミネーターは有用なターミネーターを提供する。Bevan, 12 Nucl.Acid Res.8711(1984);Rogers et al., in BIOTECHNOL.PLANT SCI.at 219(Acad. Press, Inc., New York, NY, 1985);Sanders et al., 15 Nucl.Acids Res.1543(1987)。様々な発現カセットの転写を促進(drive)および終結させるために、一連の調節配列を組み合わせて使用した。GA7 modBにおいて使用される種子特異的プロモーターは以前から記載されている:A. サリアナ(A. thaliana)FAE1(Rossack et al., 46 Plant Molec. Biol. 717(2001));L. ウシタチシマム(L. usitatissimum)Cnl1およびCnl2(Chaudhary et al., WO 2001/016340);および、切断型B.ナパスナピンプロモーター(truncated B. napus napin promoter)(Stalberg et al., 23 Plant Molec. Biol. 671(1993))。米国特許第8,816,111号も参照。
【0115】
LC-PUFA経路をキャノーラに導入するために使用されるトランスジェニック発現カセットのオープンリーディングフレーム5’および3’調節領域ならびに他の非コード領域を含む導入遺伝子のより詳細な記載を表1に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
したがって、生体サンプルが、NS-B50027-4に存在するようなLC-PUFA経路の少なくとも一部を含むかどうかを判定するために、プライマーおよびプローブを用いて導入遺伝子を検出することができる。導入遺伝子を検出するのに役立つ特定のプライマーが表2に示され、ここで、各プライマーは62度のアニーリング温度を有し、そしてサイズ(bp)はPCR産物中の塩基対の数を指す。
【0118】
【表2】
【0119】
ブラッシカ・ナパスL.(変種AV Jade)生殖細胞系から培養された初期の形質転換体は、特にEPAとDHAのレベルにおいて、脂肪酸産生のレベルにおいて広い変異を示した。第2世代と第3世代について、選択は主にトランスジェニック種子のDHAおよびEPA含有量に基づいていた。幾つかの場合、特にT2またはT3世代において、分離パターン(1つの植物から20~40個の子孫まで20~40個の個々の種子を育て、次にそれらの子孫の個々の種子のDHAおよびEPA含量を測定することによって判定される)はまた、散在した結果を示し、複雑なまたは複数コピーの挿入が行われたことを示している。したがって、植物の初期のT2またはT3世代の多くは捨てられた。初めに、トランスジェニックインサートの複数のコピーが不安定な形質転換体を産出し、およびホモ接合の遺伝子型において見られた古典的遺伝子サイレンシングも示すであろうことが結論付けられた。したがって、形質転換された植物のPCR分析が1より大きい(>1)コピー数を示した場合、それらの形質転換体はしばしば廃棄された。
【0120】
驚いたことに、エリートイベントNS-B50027-4はマルチコピーイベントを含んでいることがわかった:バイナリー(逆位)左-境界-左-境界という様式(binary(inverted)left-border-to-left-border fashion)で配置された2つの8遺伝子-T-DNA-境界カセットを含む16遺伝子挿入(大量の回文構造に類似);および、別個のより小さな4遺伝子カセット;および、導入遺伝子インサートのこの組み合わせは、近交系NS-B50027-4内でのDHAの産生に相乗的に作用する。より具体的には、交雑、戻し交雑および自己交雑の組み合わせは、クロモソームA05(N05と呼ばれる)に16遺伝子インサートに分離し、および、クロモソームA02(N02と呼ばれる)に4遺伝子インサートを分離した。個々のトランスジェニッククロモソームの寄与は、各イベントの純粋なホモ接合系統を得るために各分離個体を育種することによって判定された。例えば、1つの実験において、16遺伝子インサートを含む分離個体は約4%のDHAを生成した;また、4遺伝子インサートを含む分離個体はDHAを生成しなかった;しかし、分離個体がトランスジェニッククロモソームA02遺伝子座およびトランスジェニッククロモソームA05遺伝子座を組み合わせるように育種された時、2つのトランスジェニックインサートの組み合わせは、その種子において、少なくとも約7%のDHAから少なくとも約14%のDHAを含めたDHAを生産する植物を提供した。この結果は予期されぬものだった。前述のように、エリートイベントNS-B50027-4の異常な遺伝的構成にもかかわらず、この系統は脂肪酸産生において安定していて、一貫していることが証明された。
【0121】
より小さなものに関して、A02上に位置する4遺伝子インサート、このインサートは機能が未知の遺伝子(HPP遺伝子)の3’UTR領域の約15bpを置き換えた(replaced)。部分的なインサートおよびその隣接するB.ナパス配列は本明細書において十分に特徴付けられている。4遺伝子インサートはΔ6デサチュラーゼ、Δ5エロンガーゼ、Δ5-デサチュラーゼおよびΔ15/ω3デサチュラーゼ導入遺伝子を含む;しかし、Δ4デサチュラーゼ、Δ12-デサチュラーゼ、Δ6エロンガーゼ遺伝子、および、遺伝子選択マーカーPATを含まない。Δ4-デサチュラーゼは植物種子細胞におけるDHA産生のために必要なので、4遺伝子インサートがトランスジェニック系統NS-B50027-4でのDHAの産生に相乗的に寄与したのは予想外かつ驚くべきことであった。A02上の4遺伝子インサートおよびその隣接するB.ナパス領域を図5に示す(SEQ ID NO:40)。特に、SEQ ID NO:40のヌクレオチド1~2089は、小さいインサートの挿入部位の5’(上流)隣接領域であり;SEQ ID NO:40のヌクレオチド2090~14201は、トランスジェニックカセット由来の異種の核酸を提供し;および、SEQ ID NO:40のヌクレオチド14202~15006は、挿入部位の808bp 3’(下流)領域である。SEQ ID NO:40のヌクレオチド1~2089および14202~15006は、B.ナパスクロモソームA02に固有である。固有のB.ナパス配列および挿入部位を比較する遺伝子分析は、挿入欠失を明らかにした:導入遺伝子インサートは、位置118589927-118589941でのB.ナパス栽培品種Darmor reference(2n=AACC)のchrUn_randomに、および位置18569316-18569330でのB.ラパ栽培品種(2n=AA)由来の基準ゲノムのクロモソームA2に、位置していたであろう15-bp-フラグメント(GTAGCACGACAAGTT; SEQ ID NO:38)を置き換えた(replaced)。以下を参照;Chalhoub et al., 345 Sci.950(2014);NCBI Ref.Seq. NC_024796.1;Wang et al., 43 Nat.Genet.1035(2011);NCBI Ref.Seq. XM_009130638。
【0122】
16遺伝子インサートは、そうでなければ過敏性応答媒介シグナル伝達に関与するであろうPto相互作用タンパク質(PTI)、セリン-トレオニンキナーゼをコードするブラッシカ(Brassica)遺伝子に位置することが確認された。PTI遺伝子は、位置17267746-17270700で、参照ゲノムB.ナパス(栽培品種Darmor)のクロモソームA05に位置する。このより大きなインサートも、PTIタンパク質の第2エキソン中の20bpストレッチのDNA(CACGGTGGAGGTCACCATGT;SEQ ID NO:39)を置き換えた挿入欠失と関連しており;これによりPTIの発現を妨害する。この20-bp欠失は、位置17269790 - 17269809での参照ゲノムのクロモソームA05に位置する。A05上の16遺伝子インサートおよびその隣接B.ナパス領域のDNA配列を図6(SEQ ID NO:41)に示す。特に、SEQ ID NO:41のヌクレオチド1~1159は、大きいインサートの挿入部位の5’(上流)隣接領域であり;SEQ ID NO:41のヌクレオチド47774~49789は挿入部位の3’(下流)隣接領域である。SEQ ID NO:41のヌクレオチド1~1159およびSEQ ID NO:41の47774~49789は、ブラッシカ・ナパスのクロモソームA05に固有である(native)。
【0123】
従って、別の実施形態は、以下のヌクレオチド配列を順に含む人工のバイナリー遺伝子座を含むDNA分子を提供する(矢印は、参照される5’から3’へのDNA配列に関する転写の方向を示す):
(a)ヌクレオチド2747からヌクレオチド6250までのSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列(PRO、リーダー(leader)、TERを含むMicpu-d6D←);
(b)ヌクレオチド6257からヌクレオチド8414までのSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列(PRO、リーダー(leader)、TERを含む→Pyrco-d5E);
(c)ヌクレオチド8415からヌクレオチド10374までのSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列(PRO、リーダー(leader)、TERを含む→Pavsa-d5D);
(d)ヌクレオチド10375からヌクレオチド11544までのSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列(→MAR);及び、
(e)ヌクレオチド11545からヌクレオチド14049までのSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列(PRO、リーダー(leader)、TERを含むPicpa-w3/d15D←);
(f)ヌクレオチド配列(a)~(e)との少なくとも80%、95%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性を持つ分子;又は、
(g)それらの補体。関連する実施形態は、この人工のバイナリー遺伝子座を含む植物細胞、植物材料、又は植物種子を提供する。
【0124】
別の実施形態は、以下のヌクレオチド配列を順に含む、人工のバイナリー遺伝子座を含むDNA分子を提供する:
(a)ヌクレオチド1268からヌクレオチド5317までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(Cnl2 PRO thru leader thru coding region for Micpu-d6D ← thru TER);
(b)ヌクレオチド5324からヌクレオチド7481までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(PRO thru → Pyrco-d5E thru TER);
(c)ヌクレオチド7482からヌクレオチド9443までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(PRO thru leader and → Pavsa-d5D thru TER);
(d)ヌクレオチド9444からヌクレオチド10611までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(→ MAR);
(e)ヌクレオチド10612からヌクレオチド13116までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(PRO thru leader and Picpa-w3/d15D ← thru TER);
(f)ヌクレオチド13117からヌクレオチド17000までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(PRO thru → Pavsa d4D thru TER);
(g)ヌクレオチド17001からヌクレオチド19606までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(PRO thru → Lack-d12D thru TER);
(h)ヌクレオチド19607からヌクレオチド29773までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(→ MAR);
(i)ヌクレオチド20783からnucleotide22987までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(PRO thru → Pyrco-d6E thru TER);
(j)ヌクレオチド23011から24370までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(PRO thru → PAT thru TER);
(k)ヌクレオチド42561からヌクレオチド25920までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(PRO thru PAT← thru TER);
(l)ヌクレオチド25943からヌクレオチド29324までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(PRO thru Pyrco-d6E← thru TER);
(m)ヌクレオチド28157からヌクレオチド29324までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(MAR←);
(n)ヌクレオチド29324からヌクレオチド31830までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(PRO thru Lack-d12D ← thru TER);
(p)ヌクレオチド31831からヌクレオチド35816までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(PRO thru Pavsa d4D ← thru TER);
(q)ヌクレオチド35817からヌクレオチド38319までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(PRO thru leader and → Picpa-w3/d15D thru TER);
(r)ヌクレオチド38320からヌクレオチド39488までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(MAR←);
(s)ヌクレオチド39489からヌクレオチド41449までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(PRO thru Pavsa-d5D ← thru TER);
(t)ヌクレオチド41450からヌクレオチド43607までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(PRO thru Pyrco-d5E ← thru TER);
(u)ヌクレオチド43614からヌクレオチド47662までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(PRO → Micpu-d6D thru TER);
(v)ヌクレオチド配列(a)~(u)、(a)~(j)、(k)~(u)との少なくとも80%、95%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性を持つ分子;又は、
(w)それらの補体。
関連する実施形態は、この人工のバイナリーの遺伝子座を含む植物の細胞、材料、又は種子を提供する。
【0125】
別の実施形態は、以下のヌクレオチド配列を順に含む、人工のバイナリー遺伝子座を含むDNA分子を提供する:
(a)ヌクレオチド2747からヌクレオチド4141までのSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列(Micpu-d6D←);
(b)ヌクレオチド7259からヌクレオチド8065までのSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列の補体ヌクレオチド配列(→Pyrco-d5E);
(c)ヌクレオチド8841からヌクレオチド10121までのSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列(→Pavsa-d5D);
(d)ヌクレオチド12281からヌクレオチド13531までのSEQ ID NO:40のヌクレオチド配列(Picpa-w3/d15D←);
(e)ヌクレオチド配列(a)~(d)との少なくとも80%、95%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性を持つ分子;又は、
(f)それらの補体;ここで、人工遺伝子座は、(a)~(d)、(e)、又は(f)の発現を提供するための調節領域(例えば、プロモーター、リーダー配列、ターミネーター)を含む。関連する実施形態は、この人工バイナリー遺伝子座を含む植物細胞、植物材料、又は植物種子を提供する。
【0126】
別の実施形態は、以下のヌクレオチド配列を順に含む、人工バイナリー遺伝子座を含むDNA分子を提供する:
(a)ヌクレオチド1820からヌクレオチド3208までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(Micpu-d6D←);
(b)ヌクレオチド6326からヌクレオチド7126までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(→Pyrco-d5E);
(c)ヌクレオチド7908からヌクレオチド9192までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(→Pavsa-d5D);
(d)ヌクレオチド11352からヌクレオチド12596までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(Picpa-w3/d15D←);
(e)ヌクレオチド15216からヌクレオチド16556までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(→Pavsa d4D);
(f)ヌクレオチド17619からヌクレオチド18866までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(→Lack-d12D);
(g)ヌクレオチド21895からヌクレオチド22647までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(→Pyrco-d6E);
(h)ヌクレオチド25943からヌクレオチド26283までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(Pyrco-d6E←);
(i)ヌクレオチド30066からヌクレオチド31313までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(Lack-d12D←);
(j)ヌクレオチド31831からヌクレオチド35816までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(Pavsa-d4D←);
(k)ヌクレオチド36335からヌクレオチド38319までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(→Picpa-w3/d15D);
(l)ヌクレオチド39749からヌクレオチド41023までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(Pavsa-d5D←);
(m)ヌクレオチド41805からヌクレオチド42605までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(Pyrco-d5E←);
(n)ヌクレオチド45724からヌクレオチド47111までのSEQ ID NO:41のヌクレオチド配列(→Micpu-d6D);
(o)ヌクレオチド配列(a)~(u)、(a)~(j)、(k)~(u)との少なくとも80%、95%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性を持つ分子;
又は、
(p)それらの補体;ここで、人工遺伝子座は、(a)~(n)、(o)、又は(p)の発現を提供するための調節領域(例えば、プロモーター、リーダー配列、ターミネーター)を含む。関連する実施形態は、この人工バイナリー遺伝子座を含む植物細胞、植物材料、又は植物種子を提供する。
【0127】
本明細書に記載されるような形質転換技術を用いて特定のキャノーラ植物へと遺伝子操作されているような遺伝形質を、品種改良分野において周知の従来の育種技術を使用して、別のキャノーラまたはブラッシカ系統に移すことができる。例えば、エリートイベントNS-B50027-4を保有する植物は、例えばATCCに寄託された種子から得ることができる。そのような植物はさらに、同じ植物種の別の栽培品種にエリートイベントNS-B50027-4を導入するために、従来の育種スキームにおいて使用され、及び/又は繁殖させることができる。寄託された種子はブラッシカ・ナパス種に属する。しかしながら、B.ナパスからB.ジュンセアまでのAゲノムまたはC-ゲノムに位置するアレルまたは導入遺伝子を導入する方法は、当技術分野において周知であり、繰り返される戻し交雑を含んでいる。戻し交雑のアプローチを用いて、形質転換されたキャノーラ植物からエリート近交系に導入遺伝子を移すことができ、結果として得られた後代は導入遺伝子を含む。また、近交系が形質転換のために使用される場合、トランスジェニック植物は、トランスジェニック雑種キャノーラ植物を生産するために異なる系統へ交雑することができる。本明細書で用いられるように、「交雑」は、文脈に応じて、単純なXとYの交雑、または戻し交雑のプロセスを指すことができる。様々な遺伝要素は、さらに、形質転換を使用して植物ゲノムに導入することができる。これらの要素は、限定されないが、遺伝子;コード配列;誘導性で、構成的な、組織特異的プロモーター;増強配列(enhancing sequences);および、シグナル配列および標的配列、を含んでいる。
【0128】
同系交配のキャノーラ系統NS-B50027-4
本明細書に記載されているように、キャノーラ系統NS-B50027-4は安定して均一な育種系統である。これは植物の種類の均一性に細心の注意を払って育てられてきており、均一性について継続的に観察しながら系統を増やした。NS-B50027-4は、種子におけるLC-PUFA、特にLC-ω3脂肪酸、さらに特にはDHAの産生のために、特に識別される。キャノーラ系統NS-B50027-4は、系統NS-B50027-4の特許出願時に商品化された他のキャノーラ栽培品種の親ではない。
【0129】
同系交配のトランスジェニックキャノーラ系統NS-B50027-4は、以下の形態および生理学的特徴を有する(主として2015年にオーストラリアの8つの異なる場所から収集され平均されたデータに基づく):
【0130】
【表3】
【0131】
別の態様は、NS-B50027-4由来のブラッシカ・ナパス植物またはその種子などの一部を生産する方法を提供し、該方法は、上記のB.ナパス植物またはその部分を交雑する工程、上記のブラッシカ植物を得る工程、および、ブラッシカ植物生育条件下で植物を成長させる工程を含む。別の態様は、B.ナパス系統NS-B50027-4、ATCC受託番号PTA-123186で寄託された前記系統の代表的な種子、NS-B50027-4の亜系統、NS-B50027-4または亜系統の後代、または、NS-B50027-4と第2のキャノーラもしくはブラッシカ植物を交雑させることによって生産された植物、を成長させる方法を提供し、該方法は:上記のブラッシカ種子を得る工程、および、ブラッシカ植物生育条件下で植物を成長させる工程、を含む。別の態様は、NS-B50027-4-由来のブラッシカ・ナパス植物または種子などのその部分を生産する方法を提供し、該方法は、ブラッシカ・ナパス植物をまたはその部分を交雑する工程を含む。
【0132】
LC-ω3脂肪酸
キャノーラ系統NS-B50027-4植物を用いて、本実施形態に従って、LC-ω3脂肪酸をNS-B50027-4キャノーラ種子から商業的な量で生産することができる。したがって、形質転換された植物の選択および増殖のための技術は、従来の方法で収穫され、脂肪酸が対象組織、例えば種子から抽出されるという、NS-B50027-4の都合のよい特性を備えた複数の植物を産む。
【0133】
上述のように、「脂肪酸含有量」または「脂肪酸組成」は、概して、正規化された面積としての特定の脂肪酸のパーセントとして;または、既知の基準に対して;または、種子のグラムあたりの脂肪酸の重量比(例えばmg DHA/g種子)として;計算される、成熟し部分的に乾燥した(典型的には約6%または7%の水分を含む)種子全体の内因的に形成された油中に存在する種々の脂肪酸の重量パーセントを指す。
【0134】
一般的な業界慣行では、脂肪酸組成を絶対量としてではなく、面積率(正規化された面積)として報告している。例えば、クロマトグラフィーは、しばしばピークとしてデータを生成し、各ピークの下の区域は積分され、クロマトグラムにおける脂肪酸についての全ピークの下の総面積のパーセンテージとして表示される。面積率は簡単に計算でき、業界の他の人が報告した結果と比較することも簡単にできる。面積率は絶対的ではないが、許容可能な近似値を提供する。絶対mg/kgの結果は、例えば既知の濃度の参照基準と内部の基準を含めることで計算できる。補正因子も脂肪酸の質量を計算するために使用することができる。
【0135】
例えば、脂肪酸含有量を測定する際に、種子を粉砕し、オイルトリアシルグリセリド(TAG)を抽出し、続いて、メタノールとナトリウムメトキシドでの鹸化およびメチル化、または、メタノール中1.25%の3(トリフルオロメチル)フェニル-トリメチル水酸化アンモニウム(Meth Prep II(商標)、Fischer Scientific Cat #AT18007)での反応により、脂肪酸メチルエステルを形成することができる。結果として生じる脂肪酸メチルエステル(FAME)は、不飽和度および脂肪酸鎖長に基づきFAMEを分離するキャピラリーカラムを使用して、気液クロマトグラフィー(GLC)により分析することができる。例えばGC、LC-MS、GC-MS、NMRまたは近赤外反射分光法によりFAMEを分析することができる。脂肪酸組成はまた、例えば種皮を壊して破壊した種子を直接メチル化に供することにより、種子全体から測定されうる。脂質の合計は、当技術分野においてTAG画分などの画分を精製すると知られている技術により分離されうる。例えば、薄層クロマトグラフィー(TLC)が、TAGの脂肪酸組成を特異的に測定するために、DAG、アシルCoAまたはリン脂質などの他の脂質画分からTAGを分離させる分析規模で行なわれうる。当業者に知られているように、多くの他の分析技術が使用されてもよい。例えば、以下を参照;Tinoco et al., 3 Anal.Biochem.514(1962);CANOLA:CHEMISTRY, PRODUCTION, PROCESSING & UTILIZATION(Daun et al., eds., AOCS Press, Urbana, IL, 2011)(Daun et al., 2011);US2015/0166928;US2016/0002566。
【0136】
さらなる実施形態において、抽出された植物脂質は、全脂肪酸含有量の割合として、DHAのレベルを増大させるために処理することができる。例えば、その処理は、遊離脂肪酸を生成するエステル化脂肪酸の加水分解、またはエステル交換反応を含む。例えば、キャノーラ油は、油中の脂肪酸をメチルエステルまたはエチルエステルなどのアルキルエステルに変換するように処理することができ、次いでこれを精製または分別して脂質または油をDHAについて富化することができる。複数の実施形態では、そのような処理後の脂質の脂肪酸組成は、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または、少なくとも90%、のDHAを含む。
【0137】
本実施形態はまた、系統NS-B50027-4からこれらの新しいB.ナパス系統の後代および子孫を含む。当業者に知られているように、後代または子孫は、育種または組織培養の方法により開発することができる。例えば、後代または子孫は、これらの系統において開発されたキャノーラ脂肪酸特性を含むことができる。従って、子孫または後代は、開発された系統から任意の数の遺伝子を有することができる。子孫または後代は、本明細書に提供されるキャノーラ脂肪酸表現型を提供する遺伝子のみ、またはさらなる遺伝子を含み得る。当業者に知られているように、これは分子分析により測定されうる。
【0138】
一態様は、NS-B50027-4の表現型と同じ表現型を有するブラッシカ・ナパス種子を開発するための方法を提供する。例えば、NS-B50027-4種子のDHA脂肪酸含有量は、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%のDHA、少なくとも約11%のDHA、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、またはそれ以上のDHA(%脂肪酸)を含む。例えば、NS-B50027-4種子のLC-PUFA脂肪酸含有量は、少なくとも約10%のLC-PUFA、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約16%、少なくとも約17%、少なくとも約18%、またはより多くのLC-PUFA(EPA、DPA、%脂肪酸としてのDHA、の合計)を含む。
【0139】
別の態様は、本明細書に記載の植物から生成された、粉砕されたブラッシカ・ナパス種子の均質な集合体を提供し、ここで、粉砕されたブラッシカ・ナパス種子は、重量にして、約36重量%から約40重量%などを含めた、少なくとも約30重量%、少なくとも約35重量%の総脂肪酸を有する(重量%種子)。特定の実施形態において、例えば、粉砕されたブラッシカ・ナパス種子の均質な集合体の脂肪酸含有量は、少なくとも約7%のDHA、少なくとも約8%のDHA、少なくとも約9%のDHA、少なくとも約10%のDHA、少なくとも約11%のDHA、少なくとも約12%のDHA、少なくとも約13%のDHA、少なくとも約14%のDHA、少なくとも約15%のDHAまたはより多くのDHAを含む(%脂肪酸)。特定の実施形態において、例えば、粉砕されたブラッシカ・ナパス種子の均質な集合体の脂肪酸含有量は、少なくとも約8%のLC-PUFA、少なくとも約9%のLC-PUFA、少なくとも約10%のLC-PUFA、少なくとも約11%のLC-PUFA、少なくとも約12%のLC-PUFA、少なくとも約13%、少なくとも約14%のLC-PUFA、少なくとも約15%のLC PUFA、少なくとも約16%、少なくとも約17%、少なくとも約18%またはより多くのLC-PUFA(EPA、DPA、%脂肪酸としてのDHA、の合計)を含む。また、そのような粉砕された種子から油および粉末が提供される。
【0140】
粉砕された系統NS-B50027-4種子の均質な集合体、または、NS-B50027-4の後代または子孫のブラッシカ・ナパスの粉砕された種子の均質な集合体も提供され、ここで、粉砕された種子は、少なくとも約7%のDHA、、少なくとも約8%のDHA、少なくとも約9%のDHA、少なくとも約10%のDHA、少なくとも約11%のDHA、少なくとも約12%のDHA、少なくとも約13%のDHA、少なくとも約14%のDHA、少なくとも約15%のDHA、または、より多くのDHA(%脂肪酸)のDHA含有量を含む。例えば、粉砕されたブラッシカ・ナパスNS-B50027-4種子の均質な集合体、または、NS-B50027-4の後代または子孫のブラッシカ・ナパスの粉砕された種子の均質な集合体があり、ここで、粉砕された種子の均質な集合体は、少なくとも約8%のLC-PUFA、少なくとも約9%のLC-PUFA、少なくとも約10%のLC-PUFA、少なくとも約11%のLC-PUFA、少なくとも約12%のLC-PUFA、少なくとも約13%、少なくとも約14%のLC-PUFA、少なくとも約15%のLC PUFA、少なくとも約16%、少なくとも約17%、少なくとも約18%またはより多くのLC PUFA(EPA、DPA、%脂肪酸としてのDHA、の合計)を含む。また、そのような粉砕された種子から油および粉末が提供される。
【0141】
本明細書に記載されている別の態様は、ブラッシカ・ナパス系統NS-B50027-4、ATCC受託番号PTA-123186で寄託された前記系統の代表的な種子、NS-B50027-4の亜系統、NS-B50027-4または亜系統の後代、または、NS-B50027-4と第2のキャノーラもしくはブラッシカ植物を交雑させることによって生産された植物、から油または粉末を生成する方法を提供し、該方法は:ブラッシカ植物生育条件下で上記の植物を成長させる工程と;種子を収穫する工程と;油または粉末を抽出する工程と、を含む。
【0142】
本明細書に記載されている別の態様は、ブラッシカ・ナパス系統NS-B50027-4、ATCC受託番号PTA-123186で寄託された前記系統の代表的な種子、NS-B50027-4の亜系統、NS-B50027-4または亜系統の後代、または、NS-B50027-4と第2のキャノーラもしくはブラッシカ植物を交雑させることによって生産された植物から油を生産する方法を提供し、該方法は:ブラッシカ・ナパス系統NS-B50027-4、ATCC受託番号PTA-123186で寄託された前記系統の代表的な種子、NS-B50027-4の亜系統、NS-B50027-4または亜系統の後代、または、NS-B50027-4と第2のキャノーラもしくはブラッシカ植物を交雑させることによって生産された植物の種を粉砕する工程と;前述の種子から油を抽出する工程と、を含む。
【0143】
別の態様は、NS-B50027-4種子またはNS-B50027-4由来の後代の種子の粉末(meal)およびタンパク質、ならびに油を提供する。植物バイオマスからのタンパク質抽出は既知の方法により達成することができる。例えば、以下を参照;Heney & Orr, 114 Anal.Biochem.92(1981)。NS-B50027-4からの粉末は、少なくともいくらかのDHAおよび他のω3脂肪酸を含有するので、特に有利であることが証明されうる。同様に、NS-B50027-4由来のタンパク質分画は少なくともいくらかの有益なDHAおよび他のω3脂肪酸を含む。
【0144】
高オレイン酸含有量によってDHAおよび他のLC-PUFAに安定性を与えると主張されている油よりもオレイン酸含有量が低いにもかかわらず、NS-B50027-4の種子からのLC-PUFAω3脂肪酸油は驚くべき安定性を示す。より具体的には、LC-PUFAω3脂肪酸は、非常に不安定で、特に酸化しやすいことで悪名高い。LC-PUFAおよびLC-PUFAを含有する食品の貯蔵寿命を延ばすためには、カプセル化、他の油、特に高オレイン酸油とのブレンド、または酸化防止剤の添加が必要であることが、当該分野で理解されている。しかしながら、そのような処置をとらないにもかかわらず、粉砕したNS-B50027-4種子から抽出した原油は室温で数ヶ月間新鮮さを保っていることをいくつかのエビデンスが示唆している。
【0145】
本実施形態の別の態様は、ヒトおよびヒト以外の動物のための栄養剤および食物における使用のためのDHAおよびLC PUFAの供給源を提供する。特に、NS-B50027-4種子由来の油は、水産養殖における使用のためのDHAおよびLC-PUFAの持続可能な供給源を提供する。魚に対する世界的な高い需要および結果として生じる海産物(the seas)の濫獲により、海洋養殖および淡水養殖はますます重要になっている。Betancor et al., 4 Sci.Rep. 8104(2014)。例えば、サケ科の魚の養殖および消費は過去20年間に劇的に増大した。しかしながら、野生の魚の食料は、水産養殖におけるそれらの仲間の種の食料とは非常に異なる。実際、水産養殖は、魚粉と魚油などの重要な食物由来の栄養素を提供するために、海洋捕獲漁業に依然として大きく依存している。実際、魚粉と魚油は水産養殖におけるω3-LC PUFAの主要な供給源である。海の魚油は、急成長中(一年あたり5~10%)の養魚業の制限要因であるため、水産養殖飼料は、マメ科植物の種子、油料種子ケーキ(oilseed cakes)、葉の粉末、およびますます多くの部分を占める植物油などの、様々な代替的な植物系原料を含んでいる。従来からLC-PUFAが少ない植物油と魚油とを置き換えることは、アマニ油など幾つかの油が、限られた程度ではあるにせよ、魚のLC代謝産物へと変換されうるある量のALAを含むとしても、LC PUFAが魚の飼料にあまり利用可能でない、ということを示す。一般に、魚の飼料における現行の植物油は魚のFA分布に悪影響を及ぼす可能性があり、これらはω3/ω6比率を変更する可能性がある。
【0146】
例えば、典型的な植物油は、主としてリノール酸(C18:2 ω6; LA)として、高量のω6 PUFAを含んでいる。DHA:LAの比率が0.908である養殖のサケからの油と比較して、親系統であるAV Jadeの油にはDHAがなく、故にDHA:LAの比率がなく;NS-B50027-4の油は、DHA:LAの比率が1.048である。Strobel et al., 11 Lipids Health Dis.144(2012)。興味深いことに、NS-B50027-4由来のω3 FAの比率は、心血管疾患および脂質異常症に関連するパルミチン酸、飽和脂肪酸に関して特に有利である。Diet, Nutrition & Prevention of Chronic Dis., WHO Tech.Rep. Series 916, Report of a Joint WHO/FAO Expert Consultation, 88(World Health Organization, Geneva, 2003)。親系統であるAV Jadeの油にはDHAがなく、故にDHA:パルミチン酸塩の比率がなく;NS-B50027-4の油は、DHA:パルミチン酸塩の比率が2.122であり;養殖のサケの油は、DHA:パルミチン酸塩の比率が0.591であり;及び、野生のサケの油は、DHA:パルミチン酸塩の比率が1.018である。Strobel et al., 2012。LC-PUFAを含む水産養殖材料の調製は、当技術において他の場合には知られている。以下を参照;Betancor et al., 2014;Petrie et al., 9 PLOS ONE 1, 2014;Tocher, Aquaculture(2015)。したがって、本実施形態の範囲は、水産養殖飼料のためのω3脂肪酸のソースとしてのNS-B50027-4からの油と、NS-B50027-4およびその後代から得られた油を含む水産養殖飼料と、の使用を包含する。
【0147】
NS-B50027-4およびその後代の同定
エリート遺伝子イベントは、植物ゲノムにおける組み換えDNA分子の取り込みの部位での位置と構成により特徴づけられうる。組み換えDNAカセットが挿入された植物ゲノムにおける部位はまた「挿入部位」または「標的部位」と呼ばれる。「隣接領域」または「隣接配列」は、例えば、トランスジェニックカセットのすぐ上流に近接して、またはすぐ下流に近接して位置する植物ゲノムの少なくとも20塩基対、少なくとも50塩基対、または最大5000塩基対のDNAの領域である。 外来DNAのランダム組み込みにつながる形質転換は、各形質転換体について特徴的かつ独特であり、異なる隣接領域を有する形質転換体をもたらす(エリートイベント)。
【0148】
別の態様は、NS-B50027-4由来のブラッシカ・ナパス植物、またはその部分を生産するための方法を提供し、該方法は、第1世代の後代の種子を生産するために、第2の植物と上記のブラッシカ・ナパス植物またはその部分を交雑する工程;F1世代植物を生成するために前述の第一世代の後代の種子を成長させる工程;随意に、育種系統NS-B50027-4由来のブラッシカ・ナパス種子、植物、または、その部分を得るために、前記種子の連続した雑種世代を得るために、交雑と成長の工程を繰り返す工程、を含む。この方法により生産された(任意の雑種を含む)植物または植物の部分も提供される。一実施形態において、特定のキャノーラ植物のゲノムへと遺伝子操作された遺伝形質は、植物育種技術においてよく知られている従来の育種技術を用いて、別の栽培品種のゲノムへと移すことができる。例えば、戻し交雑アプローチは、形質転換されたキャノーラ栽培品種から既に高度に開発されたキャノーラ栽培品種へと導入遺伝子を移すために使用されてもよく、そして、得られた戻し交雑転換植物は導入遺伝子を含むであろう。
【0149】
従って、本実施形態の別の態様はNS-B50027-4の検出のための組成物、方法およびキットを提供する。性的交雑の後代が対象の導入遺伝子を含むかどうか判断するために特定のイベントの存在を検出することができることは都合がよいだろう。加えて、特定のイベントを検出する方法は、例えば、組み換え作物に由来する食品の販売前承認や表示を要求する規制を遵守するのに有用である。核酸プローブを使用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはDNAハイブリダイゼーションなど任意の周知の核酸検出方法により導入遺伝子の存在を検出することが可能である。これらの検出方法は、一般に、プロモーター、ターミネーター、マーカー遺伝子等など頻繁に使用される遺伝要素に焦点を合わせる。その結果、このような方法は、異なるイベント、特に、挿入されたDNAに隣接する染色体DNA(「隣接するDNA(flanking DNA)」)の配列が知られていない限り、同じDNA構築物を用いて製造されたものを区別するのに有用でないことがある。イベント特異的PCRアッセイが記載される。例えば、Windels et al.,(Med. Fac. Landbouww, Univ. Gent 64/5b: 459-462, 1999)を参照(インサートと隣接DNAとの間の接合部にまたがるプライマーセット、具体的にはインサート由来の配列を含む1つのプライマーおよび隣接DNA由来の配列を含む第2のプライマー、を用いたPCRによるグリフォサート耐性ダイズイベントの同定)。さらに、NS-B50027-4の16遺伝子インサートは、Pto結合タンパク質(PTI)、クロモソームA05に位置する過敏性応答媒介シグナル伝達に含まれるセリン・トレオニンキナーゼ、をコードするブラッシカ遺伝子の発現を妨害した。表現型の変化は観察されなかったが、これは、NS-B50027-4またはNSのB50027の4-由来の後代の同定のための別のマーカーを提供する。
【0150】
本明細書の方法とキットは、生体サンプル中で、特にNS-B50027-4の導入遺伝子を含む植物材料、ならびにトランスジェニックキャノーラ植物、植物材料、およびそのようなイベントを含む種子の存在を同定するのに有用である。本明細書に記述したエリートイベントNS-B50027-4は遺伝子型により同定することができ、遺伝子型は、同じ栽培品種または関連する栽培品種の植物を同定することができるか、または血統を判定または検証するために使用することができる、遺伝子マーカー特性を通じて特徴付けられうる。遺伝標識形質特性は、制限酵素断片長多型(RFLP)、ランダム増幅多型DNA(RAPD)、任意プライムポリメラーゼ連鎖反応(AP-PCR)、DNA増幅フィンガープリンティング法(DAF)、増幅領域特徴配列(Sequence Characterized Amplified Regions)(SCAR)、増幅断片長多型(AFLP)、マイクロサテライトとも呼ばれる単純反復配列(SSR)、および、一塩基多型(SNP)、などの技術によって得られる。
【0151】
例えば、本明細書に記述したエリートイベントNS-B50027-4は、植物材料のサンプルから遺伝子地図の生成により同定することができる。遺伝子地図は、従来のRFLP、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析、または、外来タンパク質をコードする組み込まれたDNA分子のおよその染色体位置を同定するSSR、によって生成され得る。以下を参照;Glick & Thompson, METHODS IN PLANT MOLEC.BIOL.& BIOTECHNOL.269(CRC Press, Boca Raton, FL, 1993)。染色体位置に関するマップ情報は対象のトランスジェニック植物の専売の保護のために有用である。例えば、組み込み領域のマップは、疑わしい植物についての類似のマップと比較して、後者が対象植物と共通の起源(parentage)を有するかどうかを判定することができる。マップ比較はハイブリダイゼーション、RFLP、PCR、SSRおよび配列決定を含むことができ、これらはすべて従来の技術である。
【0152】
本実施形態の別の態様は、キャノーラ植物が、近交系NS-B50027-4、または、系統NS-B50027-4の遺伝子エリートイベントの少なくとも一部を含むキャノーラ植物、であるかまたはそれらに関連するかどうかを判定するためのキットと方法を提供する。生体サンプル中のエリートイベントNS-B50027-4の同定のための単純且つ明確な技術のための組成物及び方法が、本明細書に記載されている。
【0153】
例えば、キットは、1組のセンス(フォワード)およびアンチセンス(バックワード)プライマーなどの、NS-B50027-4の1つ以上の遺伝子マーカーの同定のための少なくとも1組のプライマーを含み得る。表2を参照。プライマーの特定の実施形態は、特に遺伝子移入研究および雑種開発に有用な、NS-B50027-4の遺伝的形質を検出するためのKASPアッセイを実施するためのキットに有用な、以下のプライマーを含んでいる。実施例2を参照。これらのプライマーは、以下のような配列の少なくとも10個の連続した核酸を含む核酸分子から成りうる。GAAGGTGACCAAGTTCATGCTCCAAGCACCGTAGTAAGAGAGCA(SEQ ID NO:1、Micopu―Δ6D);GCTAAGAAGTGGGGACTCAACTACAA(SEQ ID NO:2、Micopu―Δ6D);GAAGGTGACCAAGTTCATGCTGCTCTTGCTGGAACTCTTGG(SEQ ID NO:3、Pyrco―Δ5E);GGGTTAGCCACATTGTAGGTAACGTA(SEQ ID NO:4、Pyrco―Δ5E);GAAGGTGACCAAGTTCATGCTTAAGAGACACCCTGGTGGAAAGA(SEQ ID NO:5、PavsaΔ5D);TAGCATCAGTTCCAACTTGGTAAGCAAT(SEQ ID NO:6、Pavsa―Δ5D);GAAGGTGACCAAGTTCATGCTGAACACGTAAGCAGACCAAGCAG(SEQ ID NO:7、Picpaω3D);CCCTCTTCTCCCTAACGAATTCCTT(SEQ ID NO:8、Picpa―ω3D);GAAGGTGACCAAGTTCATGCTGAGGAACCTGTTGCTGCTGATGA(SEQ ID NO:9、PavsaΔ4D);GCGATCCTAGCACAAAGTTGAAGGTA(SEQ ID NO:10、Pavsa―Δ4D);GAAGGTGACCAAGTTCATGCTGGATGGATCGCTTACCTCTTCGT(SEQ ID NO:11、LacklΔ12D);CAGGGTAAGGTTGTCCTGTAACGTT(SEQ ID NO:12、Lackl―Δ12D);GAAGGTGACCAAGTTCATGCTCTATTGGATGGGGACTCAAGC(SEQ ID NO:13、PyrcoΔ6E);GGGAGATCCTTAGTAGCAGAAGAGAT(SEQ ID NO:14、Pyrco―Δ6E);GAAGGTGACCAAGTTCATGCTCCTGAGAGGCGTCCTGTTGAAAT(SEQ ID NO:15、PAT);AACAGCAGCCATATCAGCAGCAGTA(SEQ ID NO:16、PAT);GAAGGTGACCAAGTTCATGCTTGTTCTTGGGTGGGTCTGTCCTTC(SEQ ID NO:17; A05インサート接合部(Insert Junction)1);GAAGGTCGGAGTCAACGGATTGTGTTCTTGGGTGGGTCTGTCCTTA(SEQ ID NO:18、A05インサート接合部1);ATCCACTAGCAGATTGTCGTTTCCC(SEQ ID NO:19、A05インサート接合部1);GTTGGCTAAGGTCACGGTGGAG(SEQ ID NO:20、A05インサート接合部1);GAAGGTGACCAAGTTCATGCTCCGCCTTCAGTTTAAACTATCAGTGTT(SEQ ID NO:21、A05インサート接合部1);GAAGGTCGGAGTCAACGGATTGGTCACGGTGGAGGTCACCA(SEQ ID NO:22、A05インサート接合部1)、GGTGTGTTCTTGGGTGGGTCTG(SEQ ID NO:23、A05インサート接合部1);GAAGGTGACCAAGTTCATGCTACTTTTTTTTCAACTGTTGGCTAAGGTA(SEQ ID NO:24、A05インサート接合部2);GAAGGTCGGAGTCAACGGATTACTTTTTTTTCAACTGTTGGCTAAGGTC(SEQ ID NO:25、A05インサート接合部2);GTGTGTTCTTGGGTGGGTCTG(SEQ ID NO:26、A05インサート接合部2);GTCGTTTCCCGCCTTCAGTTT(SEQ ID NO:27、A05インサート接合部2);GAAGGTGACCAAGTTCATGCTAAACTATCAGTGTTTGAACACCTCC(SEQ ID NO:28、A02インサート接合部1);GAAGGTCGGAGTCAACGGATTACAACTTGTCGTGCTACACACCT(SEQ ID NO:29、A02インサート接合部1);GGTTGTGTGAAAACGTGTGAGC(SEQ ID NO:30、A02インサート接合部1);GAAGGTGACCAAGTTCATGCTCTTTTAGCTAAATAAGAGGTTCTGTATACT(SEQ ID NO:31、A02インサート接合部2);GAAGGTCGGAGTCAACGGATTCTTTTAGCTAAATAAGAGGTTCTGTATACA(SEQ ID NO:32、A02インサート接合部2);GATTGTGATTCCGGGCAGT(SEQ ID NO:33、A02インサート接合部2);GTGTGAAAACGTGTGAGCAAT(SEQ ID NO:34、A02インサート接合部2);GAAGGTGACCAAGTTCATGCTTTGTGATTCCGGGCAGTAG(SEQ ID NO:35、A02インサート接合部2);GAAGGTCGGAGTCAACGGATTTGTGAGCAATTGTTGGAGGT(SEQ ID NO:36、A02インサート接合部2);TCTTATCAACATTAAGAACATAATCTTTTAG(SEQ ID NO:37、A02インサート接合部2);又はそれらの補体。
【0154】
本発明は、エリートイベントNS-B50027-4キャノーラ植物を同定する方法を提供し、該方法は:(a)キャノーラ植物DNAを含む生体サンプルと、イベントNS-B50027-4特異的核酸分子を増幅することができる第1および第2の核酸プライマーと、を含む混合物を形成する工程と;(b)第1および第2の核酸プライマーがイベントNS-B50027-4特異的核酸分子を増幅することを可能にする条件下で混合物を反応させる工程と;(c)増幅フラグメント核酸分子の存在を検出する工程であって、ここで、キャノーラエリートイベントNS-B50027-4特異的核酸分子の存在は、キャノーラ植物はNS-B50027-4キャノーラ植物であるということを示す、工程を含む。
【0155】
別の実施形態は、生体サンプル中でエリートイベントNS-B50027-4核酸分子を検出する方法を提供し、該方法は:(a)DNAを含有する生体サンプルと、イベントNS-B50027-4特異的核酸分子にハイブリダイズすることができる核酸プローブと、を含む混合物を形成する工程と;(b)プローブがイベントNS-B50027-4-特異的核酸分子にハイブリダイズすることを可能にする条件下で混合物を反応させる工程と;(c)ハイブリダイズされた核酸分子の存在を検出する工程であって、イベントNS-B50027-4特異的核酸分子の存在は、サンプルがイベントNS-B50027-4核酸分子を含んでいるということを示す、工程を含む。
【0156】
さらに別の実施形態は、生体サンプル中でイベントNS-B50027-4核酸分子の存在を検出する方法を提供し、該方法は:(a)DNAを含有する生体サンプルと、イベントNS-B50027-4挿入核酸分子の領域にアニーリングすることができる第1のプライマーと、宿主細胞ゲノム中の隣接する核酸分子にアニーリングすることができる第2のプライマーと、を含む混合物を形成する工程と;(b)第1および第2の核酸プライマーが、イベントNS-B50027-4インサート核酸分子のフラグメントを含む増幅された核酸分子の産生を可能にする条件下で混合物を反応させる工程と;(c)増幅された核酸分子の存在を検出する工程であって、イベントNS-B50027-4インサート核酸分子のフラグメントの存在は、サンプルがイベントNS-B50027-4インサートDNAを含んでいるということを示す、工程を含む。
【0157】
適切な検定はいかなる重大な欠点も検出し、現行の栽培品種を超える優位性または改善のレベルを確立せねばならない。優れたパフォーマンスを示すことに加えて、業界標準と両立する、または新しい市場を創出する、新しい栽培品種に対する需要がなければならない。新しい栽培品種の導入により、種子生産者、栽培者、加工業者と消費者に対し、特別な広告とマーケティング、変化した種子と商業的生産の慣行、および新製品の利用のために、追加の費用がかかるでしょう。新しい栽培品種の発売前の検定では、研究開発コストならびに最終品種の技術的優位性を考慮に入れるべきである。種子で増える栽培品種については、種子を簡単かつ経済的に産生することが実行可能でなければならない。
【0158】
例えば、キットは、微細藻類ミクロモナス・プシラに由来するΔ6デサチュラーゼ、微細藻類ピラミモナス・コルダタに由来するΔ5エロンガーゼ、ピラミモナス・コルダタに由来するΔ6エロンガーゼ、海洋微細藻類パブロバ・サリナに由来するΔ5デサチュラーゼ、酵母ピキア・パストリスに由来するΔ15/ω3デサチュラーゼ、パブロバ・サリナに由来するΔ4デサチュラーゼ、または、酵母ラカンセア・クルイヴェリに由来するΔ12デサチュラーゼ(例えば表2を参照)に特異的なセンス(フォワード)プライマーおよびアンチセンス(バックワード)プライマーの少なくとも1セットのプライマーと;SEQ ID NO:40のヌクレオチド2033から2132までの接合部、インサートの43bpおよびをブラッシカクロモソームA02DNAの57bpを含む100bp領域などの、インサートと天然のブラッシカクロモソームA02 DNAの間の5’結合に特異的な少なくとも1セットのプライマー、または、SEQ ID NO:40のヌクレオチド14156から14255までの接合部、インサートの46bpおよびブラッシカクロモソームA02DNAの54bpを含む100bp領域などの、天然のブラッシカクロモソームA02 DNAとインサートとの間の3’接合部に特異的な少なくとも1つのプライマーセットと;SEQ ID NO:41のヌクレオチド1110から1209までの接合部、インサートの50bpおよびをブラッシカクロモソームA05DNAの50bpを含む100bp領域などの、インサートと天然のブラッシカクロモソームA05 DNAの間の5’結合に特異的な少なくとも1セットのプライマー、または、SEQ ID NO:42のヌクレオチド47724から47823までの接合部、インサートの50bpおよびブラッシカクロモソームA05DNAの50bpを含む100bp領域などの、天然のブラッシカクロモソームA02 DNAとインサートとの間の3’接合部に特異的な少なくとも1つのプライマーセットと;を含む
【0159】
NS-B50027-4イベントに特徴的なアンプリコンを生成するためにDNAプライマーを使用する方法のための増幅条件は、当技術分野の通常の技術の範囲内である。追加において、内因性のキャノーラ遺伝子の増幅のための制御プライマー対は、反応状態のための内部基準として含まれており、約100-5000のヌクレオチドのアンプリコンを生成する。NS-B50027-4イベント植物組織サンプルの分析は、NS-B50027-4イベント由来の正の組織対照、NS-B50027-4イベントでないキャノーラ植物由来の負の対照、および、鋳型キャノーラDNAを含まない負の対照を含むべきである。追加のプライマーを、DNA増幅方法の当業者によりSEQ ID NO:47、NO:48、NO:49およびNO:50において示される接合部、および、NS-B50027-4に特徴的なアンプリコンをもたらしうるものであり得るアンプリコンの生産のために最適化された条件、から選ぶことができる。形質転換を備えたこれらのDNAプライマー配列の使用は、本明細書に記載されている実施形態の範囲内である。PCR法で使用する際に、NS-B50027-4イベントについて特徴的なアンプリコンを生産する、SEQ ID NO:47に由来する少なくとも1つのプライマー配列、または、SEQ ID NO:48に由来する少なくとも1つのプライマー配列、または、SEQ ID NO:49に由来する少なくとも1つのプライマー配列、または、SEQ ID NO:50に由来する少なくとも1つのプライマー配列、の使用により生産されたアンプリコンは、記載された方法において使用されることができ、かつ、本実施形態の一態様である。NS-B50027-4イベントアンプリコンの産生は、サーモサイクラーを使用することによって、または当業者に公知の方法および装置によって実施することができる。
【0160】
本発明は、エリートイベントNS-B50027-4キャノーラ植物を同定する方法を提供し、該方法は:(a)キャノーラ植物DNAを含む生体サンプルと、イベントNS-B50027-4特異的核酸分子を増幅することができる第1および第2の核酸プライマーと、を含む混合物を形成する工程と;(b)第1および第2の核酸プライマーがイベントNS-B50027-4特異的核酸分子を増幅することを可能にする条件下で混合物を反応させる工程と;(c)増幅フラグメント核酸分子の存在を検出する工程であって、ここで、キャノーラエリートイベントNS-B50027-4特異的核酸分子の存在は、キャノーラ植物はNS-B50027-4キャノーラ植物であるということを示す、工程を含む。
【0161】
別の実施形態は、生体サンプル中でエリートイベントNS-B50027-4核酸分子を検出する方法を提供し、該方法は:(a)DNAを含有する生体サンプルと、イベントNS-B50027-4特異的核酸分子にハイブリダイズすることができる核酸プローブと、を含む混合物を形成する工程と;(b)プローブがイベントNS-B50027-4特異的核酸分子にハイブリダイズすることを可能にする条件下で混合物を反応させる工程と;(c)ハイブリダイズされた核酸分子の存在を検出する工程であって、イベントNS-B50027-4特異的核酸分子の存在は、サンプルがイベントNS-B50027-4核酸分子を含んでいるということを示す、工程を含む。
【0162】
さらに別の実施形態は、生体サンプル中でイベントNS-B50027-4核酸分子の存在を検出する方法を提供し、該方法は:(a)DNAを含有する生体サンプルと、イベントNS-B50027-4インサート核酸分子の領域にアニーリングすることができる第1のプライマーと、宿主細胞ゲノム中の隣接する核酸分子にアニーリングすることができる第2のプライマーと、を含む混合物を形成する工程と;(b)第1および第2の核酸プライマーが、イベントNS-B50027-4インサート核酸分子のフラグメントを含む増幅された核酸分子の産生を可能にする条件下で混合物を反応させる工程と;(c)増幅された核酸分子の存在を検出する工程であって、イベントNS-B50027-4インサート核酸分子のフラグメントの存在は、サンプルがイベントNS-B50027-4インサートDNAを含んでいるということを示す、工程を含む。
【0163】
後代
本明細書に記述された系統NS-B50027-4はまた、他の系統を育種するために使用することができる。例えば、原材料は自家受粉され、外交配され、戻し交雑され、倍加半数体を生産するために使用され、遺伝的形質転換のための原材料として使用され、遺伝的形質転換の対象とされ、さらに変異誘発され、当業者に知られているように他の形態の育種に使用されることができる。他の系統を育種するために原材料材料を使用する方法およびその結果も、これらの実施形態の範囲内である。
【0164】
特異的なタンパク質産物をコードする遺伝子の単離および特徴づけを可能にする分子生物学的技術の出現により、植物生物学の分野の科学者は、特定の方法で植物の形質を変えるために、植物のゲノムを遺伝子操作して、外来の遺伝子、または追加もしくは改変バージョンの天然もしくは内因性遺伝要素(おそらく異なるプロモーターによって駆動される)を含ませおよび発現させることに強い関心を寄せた。形質転換または様々な育種方法を使用してゲノムに導入される任意のDNA配列は、異なる種由来であるか同じ種由来であるかにかかわらず、本明細書においてまとめて「導入遺伝子」と呼ばれる。過去15~20年にわたって、トランスジェニック植物を生成するいくつかの方法が開発されており、本発明も、特定の実施形態において、特許請求の系統の形質転換バージョンに関する。
【0165】
核酸、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、直鎖もしくは分岐、単鎖もしくは二重鎖、またはそのハイブリッド-RNA/DNAハイブリッドを含む-の、RNAまたはDNAの分子を指す。これらの用語はまた、典型的には、遺伝子のコード領域の5’末端より上流の少なくとも約1000ヌクレオチドの配列、およびコード領域の3’末端より下流の少なくとも約200ヌクレオチドの配列である、3’UTRおよび5’UTRを包含する。イノシン、5-メチルシトシン、6-メチルアデニン、ヒポキサンチン、およびその他などのあまり一般的でない塩基もまた、アンチセンス、dsRNA、およびリボザイムペアリングに使用することができる。例えば、ウリジンとシチジンのC-5プロピンアナログを含むポリヌクレオチドは、RNAに高い親和性で結合し、かつ遺伝子発現の有力なアンチセンスの阻害剤であると示されてきた。ホスホジエステル骨格への修飾、またはRNAのリボース糖基中の2’-ヒドロキシなどの他の修飾も行うことができる。アンチセンスポリヌクレオチドとリボザイムは完全にリボヌクレオチドからなることもでき、または、リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドの混合物を含むこともできる。本発明のポリヌクレオチドは、ゲノム調製、cDNA調製、インビトロ合成、RT-PCR、および、インビトロまたはインビボでの転写を含む、任意の手段によって生成されうる。
【0166】
植物形質転換は、植物細胞において機能するであろう発現ベクターの構築を含んでいる。そのようなベクターは、調節エレメント(例えば、プロモーター)の制御下にあるか、またはそれに作動可能に連結された遺伝子を含むDNAを含む。発現ベクターは、1つ以上のそのような作動可能に連結された遺伝子/調節エレメントの組み合わせを含み得る。ベクターはプラスミドの形態であってもよく、単独でまたは他のプラスミドと組み合わせて使用して、NS-B50027-4キャノーラ植物を含むキャノーラ植物の遺伝物質に導入遺伝子を組み込むための、当技術分野において公知の形質転換方法を用い、形質転換されたキャノーラ植物を提供することができる。
【0167】
形質転換技術を用いて特定のキャノーラ植物へと遺伝子操作された遺伝形質を、品種改良分野において周知の従来の育種技術を使用して、別のキャノーラまたはブラッシカ系統に移すことができるだろう。 例えば、エリートイベントNS-B50027-4を保有する植物は、例えばATCCに寄託された種子から得ることができる。 そのような植物はさらに、同じ植物種の別の栽培品種にエリートイベントNS-B50027-4を導入するために、従来の育種スキームにおいて使用され、及び/又は繁殖させることができる。寄託された種子は、ブラッシカ・ナパス種に属する。しかしながら、B.ナパスからB.ジュンセアまでのAゲノムまたはC-ゲノムに位置するアレルまたは導入遺伝子を導入する方法は、当技術分野において周知であり、繰り返される戻し交雑を含んでいる。 戻し交雑のアプローチを用いて、形質転換されたキャノーラ植物からエリート近交系に導入遺伝子を移すことができ、結果として得られた後代は導入遺伝子を含む。 また、近交系が形質転換のために使用される場合、トランスジェニック植物は、トランスジェニック雑種キャノーラ植物を生産するために異なる系統へ交雑することができる。 本明細書で用いられるように、「交雑」は、文脈に応じて、単純なXとYの交雑、または戻し交雑のプロセスを指すことができる。
【0168】
様々な遺伝要素はさらに、形質転換を使用して植物ゲノムに導入することができる。これらの要素は、限定されないが:コード配列;誘導性で、構成的な、組織特異的プロモーター;増強配列(enhancing sequences);およびシグナル配列および標的配列、を含む。新しい分子生物学的技術の出現により、特定のタンパク質産物をコードするなど、特定の機能を有する遺伝要素の単離および特徴付けが可能になった。植物生物学の分野の科学者は、特定の方法で植物の形質を変えるために、植物のゲノムを操作して、外来の遺伝要素、または追加もしくは改変バージョンの天然もしくは内因性遺伝要素を含ませおよび発現させることに強い関心を寄せた。形質転換を使用してゲノムに挿入された任意のDNA分子は、異なる種に由来するかまたは同じ種に由来するかにかかわらず、本明細書でまとめて「導入遺伝子」と呼ばれる。「形質転換する」プロセスは、ゲノムへのDNAの挿入である。遺伝子導入植物を生成するいくつかの方法が開発されており、本発明は、特定の実施形態において、特許請求のキャノーラ株NS-B50027-4の形質転換したバージョンに関する。
【0169】
生物学的および物理的な、植物の形質転換プロトコルを含む、植物の形質転換のための多数の方法が開発されている。加えて、植物細胞または組織の形質転換および植物の再分化のための発現ベクターおよびインビトロの培養方法が利用可能である。例えば以下を参照;Miki et al., Procedures for introducing foreign DNA into plants, in METH.PLANT MOLEC.BIOL.& BIOTECHNOL.at 63(Glick & Thompson, eds., CRC Press, Boca Raton, 1993);Gruber et al., Vectors for plant transformation, id.at R 89;Genetic transformation for the improvement of Canola, PROC.WORLD CONF.BIOTECHNOL.FATS & OILS INDUS.at 43-46(Am. Oil. Chem. Soc., Champaign, IL, 1988)。
【0170】
最も普及しているタイプの植物形質転換は、発現ベクターの構築を含む。そのようなベクターは、調節領域、例えばプロモーター、の制御下にあるコード領域または調節領域に作動可能に連結されたコード領域を含むDNA分子を含む。ベクターは1つ以上の遺伝子および1つ以上の調節要素を含みうる。コーディング領域およびそれぞれの調節要素の少なくとも1つは、ベクター内で反対方向に配置され得、バイナリーベクターを提供する。 理論上、遺伝子サイレンシングを受けやすい遺伝子を二元的に配置することによって、遺伝子サイレンシングを最小限に抑えることができる。ベクターはプラスミドの形態であってもよく、単独でまたは他のプラスミドと組み合わせて使用して、NS-B50027-4植物またはNS-B50027-4由来の植物の遺伝物質に導入遺伝子を組み込むための、当技術分野において公知の形質転換方法を用い、形質転換されたキャノーラ植物を提供することができる。
【0171】
例えば、初期の形質転換カセット(pJP3416_GA7-modB)は、キャノーラ種子中にオメガ-3脂肪酸の蓄積を促進することができる7つの遺伝子と、インビトロで推定上のトランスジェニック植物の選択を容易にする、1つの選択可能なマーカー遺伝子を含んでいた。以下を参照;WO2013185184;米国特許出願公開2015/0374654;Petrie et al., 6 Plant Meth.8(2010)。発現された遺伝子はすべて合成-コドン最適化およびコドン合成されたもの-であり、それゆえトランスジェニックDNA分子はいかなる天然生物にも見られない。コドン最適化のための鋳型として使用された元の配列が記載されている。以下を参照;Petrie et al., 12 Metab.Eng’g 233(2010a);Petrie et al., 11 Plant Methods 6(2010b);Petrie et al., 21 Transgenic Res.139(2012)。
【0172】
当技術分野において周知のように、機能遺伝子プロモーターは、遺伝子転写にとって重要であるがペプチドなどの機能性産物をコードしないDNAの領域である。例えば、構成的発現のための共通のプロモーターはカリフラワーモザイクウイルスに由来する。Kay et al., 236 Sci.1299(1987);Coutu et al., 16 Transgenic Res.771(2007)。発生制御下のプロモーターには、種子、葉、根、繊維、木部血管、気管、または強膜などの特定の組織において優先的に転写を開始するプロモーターが含まれる。特に関連性のあるプロモーターは、主に種子内で、または種子内でのみ転写を開始する「種子優先(“seed-preferred”)」プロモーターである。「種子優先」プロモーターは、「種子特異的」プロモーター(種子貯蔵タンパク質のプロモーターのような種子発育中に活性なプロモーター)、および「種子発芽」プロモーター(種子発芽中に活性なプロモーター)の両方を含む。Thompson et al., 10 BioEssays 108(1989)を参照。このような種子優先プロモーターは、限定されないが、Cim1(サイトカイニン誘導性メッセージ);cZ19B1(トウモロコシ19 kDa zein);milps(myo-イノシトール-1-ホスフェートシンターゼ(WO2000/11177および米国特許第6,225,529号を参照)を含む。双子葉植物については、種子特異的プロモーターは、豆のβ-ファセオリン(β-phaseolin)、ナピン(napin)、β-コングリシニン(β-conglycinin)、ダイズレクチン(soybean lectin)、クルシフェリン(cruciferin)、コリンニン(conlinin)を含むがこれらに限定されない。GA7 modBにおいて使用される種子特異的プロモーターは以前から記載されており:A. サリアナ(A. thaliana)FAE1(Rossack et al., 46 Plant Molec. Biol. 717(2001));L. ウシタチシマム(L. usitatissimum)Cnl1およびCnl2(Chaudhary et al., WO 2001/016340); および、切断型B.ナパスナピンプロモーター(truncated B. napus napin promoter)(Stalberg et al., 23 Plant Molec. Biol. 671(1993))。米国特許第8,816,111号も参照。
【0173】
「誘導性」プロモーターは環境の制御下にあるプロモーターである。誘導性プロモーターに影響を及ぼし得る環境条件の例には、化学的制御(特定の化学物質の存在下で誘導される)、嫌気的条件、または光の存在が含まれる。組織特異的プロモーター、組織優先(例えば、種子優先)プロモーター、および誘導性プロモーターは、「非構成的」(“non-constitutive”)プロモーターの分類を構成する。以下を参照;Ward et al., 22 Plant Mol.Biol. 361(1993);Meft et al., 90 PNAS 4567(1993)(銅誘導性);Gatz et al., 243 Mol.Gen. Genet.32(1994)(除草剤毒性緩和剤により誘導される);Gatz, et al., 227 Mol.Gen. Genet.229(1991)(テトラサイクリン誘導性);Schena et al., 88 PNAS 10421(1991)(グルココルチコステロイド誘導性)。また、WO2001/016340および該明細書に開示されたプロモーターを参照。
【0174】
「構成的」プロモーターは、ほとんどの環境条件下で活性であるプロモーターである。典型的な構成的プロモーターとしては、カリフラワーモザイクウイルス(CMV)由来の35Sプロモーターなどの植物ウイルス由来のプロモーター(Odell et al., 313 Nature 810(1985))、およびイネアクチンなどの遺伝子由来のプロモーター(McElroy et al.,2 Plant Cell 163(1990));ユビキチン(Christensen et al., 12 Plant Mol. Biol. 619(1989); Christensen et al., 18 Plant Mol. Biol. 6759(1992));pEMU(Last et al., 81 Theor. Appl. Genet. 581(1991));MAS(Velten et al., 3 EMBO J. 2723(1984))およびトウモロコシH3ヒストン(Lepetit et al., 231 Mol. Gen. Genet. 276(1992); Atanassova et al., 2 Plant J. 291(1992))、が含まれる。ALSプロモーター、ブラッシカ・ナパスALS3構造遺伝子の5’側のXbaI/Ncolフラグメント(または前記XbaI/Ncolフラグメントとのヌクレオチド配列の類似性)は別の構成的プロモーターを提供する。また、WO1996/30530および該明細書に開示されたプロモーターを参照。CMVプロモーターも有用なエンハンサー領域に関連する。WO1996/30530、WO2013/185184、および該明細書に開示されたプロモーターを参照。
【0175】
ポリアデニル化シグナルを含む終結領域は、完全かつ安定なmRNA分子の産生に必要とされる。例えば、A.ツメファシエンスノパリンシンターゼ(A. tumefaciens nopaline synthase)ターミネーター(NOS)ターミネーターは有用なターミネーターを提供する。Bevan, 12 Nucl.Acid Res.8711(1984);Rogers et al., in BIOTECHNOL.PLANT SCI.at 219(Acad. Press, Inc., New York, NY, 1985);Sanders et al., 15 Nucl.Acids Res.1543(1987)。様々な発現カセットの転写を促進および終結させるために、一連の調節配列を組み合わせて使用した。
【0176】
導入遺伝子によって産生されるタンパク質を、葉緑体、液胞、ペルオキシソーム、グリオキシソーム、細胞壁、またはミトコンドリアなどの細胞内区画へ、またはアポプラストへの分泌のために、輸送することは、シグナル配列をコードするヌクレオチド配列を目的のタンパク質をコードする遺伝子の5’または3’領域に作動可能に連結することによって達成される。構造遺伝子の5’または3’末端の標的配列は、タンパク質合成およびプロセシングの間に、コードされたタンパク質が最終的に区画化される(compartmentalized)場所を決定し得る。
【0177】
シグナル配列の存在は、ポリペプチドを細胞内オルガネラもしくは細胞内区画のいずれかに、またはアポプラストへの分泌のために方向付ける。多くのシグナル配列が当技術分野で知られている。例えば、以下を参照;Becker et al., 20 Plant Mol.Biol. 49(1992);Knox et al., 9 Plant Mol.Biol. 3(1987);Lerner et al., 91 Plant Physiol. 124(1989);Fontes et al., 3 Plant Cell 483(1991);Matsuoka et al., 88 PNAS 834(1991);Creissen et al., 2 Plant J. 129(1991);Kalderon et al., 39 Cell 499(1984);Steifel et al., 2 Plant Cell 785(1990)。
【0178】
発現ベクターは、典型的には、負の選択、即ち選択マーカー遺伝子を含まない細胞の増殖の阻害により、または、正の選択、すなわち遺伝子マーカーによってコードされる産物についてのスクリーニングにより、マーカーを含む形質転換細胞を回収することができる、調節エレメント(例えば、プロモーター)に作動可能に連結された少なくとも1つの遺伝子マーカーを含む。植物形質転換のための一般的に使用される選択可能なマーカー遺伝子の多くが形質転換技術分野において周知であり、例えば、例えば、抗生物質または除草剤であり得る選択的化学物質を代謝的に解毒する酵素をコードする遺伝子、または、阻害剤に対して非感受性の改変された標的をコードする遺伝子、が挙げられる。正の選択方法も当該技術分野で周知である。
【0179】
植物形質転換のために一般的に使用される選択マーカー遺伝子の1つは、トランスポゾンTn5から単離されたネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(nptII)遺伝子であり、これは植物調節シグナルの制御下に置かれるとカナマイシン耐性を付与する。Fraley et al., 80 PNAS 4803(1983)。別の一般的に使用される選択マーカー遺伝子は、抗生物質ハイグロマイシンに対する耐性を付与するハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子である。Vanden Elzen et al., 5 Plant Mol.Biol. 299(1985)。抗生物質耐性を与える細菌起源の追加の選択可能なマーカー遺伝子は、ゲンタマイシンアセチルトランスフェラーゼ、ストレプトマイシンホスホトランスフェラーゼ、アミノグリコシド-3’-アデニルトランスフェラーゼ、ブレオマイシン耐性決定基を含んでいる。Hayford et al., 86 Plant Physiol. 1216(1988);Jones et al., 210 Mol.Gen. Genet., 86(1987);Svab et al., 14 Plant Mol.Biol. 197(1990);Hille et al., 7 Plant Mol.Biol. 171(1986)。他の選択可能なマーカー遺伝子は、グリフォサート、グルホシネートまたはブロモキシニルなど除草剤に対する耐性を与える。Comai et al., 317 Nature 741(1985);Gordon-Kamm et al., 2 Plant Cell 603(1990);Stalker et al., 242 Sci.419(1988)。細菌の起源でない植物形質転換のための選択可能なマーカー遺伝子は、例えば、マウスジヒドロ葉酸レダクターゼ、植物5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸シンターゼ、および植物アセト乳酸シンターゼ、を含む。Eichholtz et al., 13 Somatic Cell Mol.Genet.67(1987);Shah et al., 233 Sci.478(1986);Charest et al., 8 Plant Cell Rep. 643(1990)。
【0180】
植物形質転換のためのマーカー遺伝子の他のクラスは、抗生物質などの毒性物質に対する耐性のために、形質転換された細胞の直接的な遺伝的選択よりもむしろ、推定される形質転換植物細胞のスクリーニングを必要とする。これらの遺伝子は、特定の組織における遺伝子の発現の分布様式を定量または視覚化するのに特に有用であり、これらは遺伝子発現の調査のために遺伝子または遺伝子調節配列に融合することができるので、しばしばレポーター遺伝子と呼ばれる。推定される形質転換細胞をスクリーニングするために一般的に使用される遺伝子は、α-グルクロニダーゼ(GUS)、α-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼおよびクロラムフェニコール、アセチルトランスフェラーゼ、を含む。Jefferson, R. A., Plant Mol.Biol., 5:387(1987);Teeri, et al., EMBO J., 8:343(1989);Koncz, et al., PNAS, 84:131(1987);およびDeBlock, et al., EMBO J., 3:1681(1984)。GUS活性を視覚化する幾つかのインビボの方法は、植物組織の破壊を必要としない。Molecular Probes, Publication 2908, IMAGENE GREEN, 1-4(1993);Naleway et al., 115 J. Cell Biol. 151a(1991)。GUS活性を可視化するためのインビボ方法は問題が多いが、低感度、高蛍光バックグラウンド、および選択マーカーとしてのルシフェラーゼ遺伝子の使用に関連する制限を示す。緑色蛍光タンパク質(GFP)は、原核生物および真核細胞における遺伝子発現のためのマーカーとして利用されうる。Chalfie et al., 263 Sci.802(1994)。GFPおよびGFPの突然変異体はスクリーニング可能なマーカーとして使用されてもよい。
【0181】
NS-B50027-4およびNS-B50027-4後代は、疾患または害虫への耐性を与えるためにさらに形質転換することができる。例えば、植物系統を、クローン化された耐性遺伝子を用いて、特定の病原体株に耐性のある植物を遺伝子操作するために形質転換することができる。例えば、以下を参照;Jones et al., 266 Sci.789(1994)(クラドスポリウム・フルバム(Cladosporium fulvum)に対する耐性のためのトマトCf-9遺伝子のクローニング);Martin, et al., 262 Sci.1432(1993)(シュードモナス・シリンガエ pv.トマト(Pseudomonas syringae pv.tomato)プロテインキナーゼ耐性のトマトPto遺伝子、);Mindrinos et al., 78 Cell 1089(1994)(P.シリンガエ(P.syringae)に対する耐性のためのアラビドプシス(Arabidopsis)RSP2遺伝子);Geiser et al. 48 Gene 109(1986)(バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensi)δ-エンドトキシン遺伝子);Van Damme et al., 24 Plant Mol.Biol. 25(1994)(クリヴィア・ミニアタ(Clivia miniata)マンノース結合レクチン);Sumitani et al., 57 Biosci.Biotech.Biochem.1243(1993)(amylase inhibitor);Abe et al., 262 J. Biol.Chem. 16793(1987)(システインプロテイナーゼ阻害剤);Huub et al., 21 Plant Mol.Biol. 985(1993)(タバコ・プロテイナーゼ阻害剤I);Regan, 269 J. Biol.Chem. 9(1994)(昆虫ジウレチックホルモン受容体);Pratt et al., 163 Biochem.Biophys.Res.Comm.1243(1989)(allostatin);Tomalski et al.,米国特許第5,266,317号(昆虫特異的麻痺性神経毒);Scott et al.,WO1993/02197(callase遺伝子);Kramer et al., 23 Insect Biochem.Mol.Biol. 691(1993)(タバコスズメガキチナーゼ(tobacco hornworm chitinase));Kawalleck et al., 21 Plant Mol.Biol. 673(1993)(パセリubi4-2ポリユビキチン遺伝子);WO1995/16776(タキプレシン(tachyplesin)の誘導体は真菌類を阻害する);WO1995/18855(合成抗菌ペプチド);Jaynes et al., 89 Plant Sci.43(1993)(セクロピン-β、溶解ペプチドはトランスジェニックタバコ植物をシュードモナスソラナセラムに対し耐性にする);Botella et al., 24 Plant Mol.Biol., 24:757(1994)(緑豆カルモジュリン);Griess, et al., 104 Plant Physiol. 1467(1994)(トウモロコシカルモジュリン);Taylor, et al., Abstract #497, 7th Int’l Symp.Molec.植物微生物相互作用(Edinburgh,Scotland(1994))(トランスジェニック単一の鎖抗体によるタバコにおける酵素の不活性化);Tavladorakiet al., 366 Nature 469(1993)(トランスジェニック抗体によるウイルス耐性);Lamb et al., 10 Bio technol. 1436(1992)(真菌エンド-α-1,4 -D-ポリガラクツロナーゼフラグメントは、真菌コロニー形成を促進し、植物細胞壁ホモ-α -1,4-D-ガラクツロナーゼを可溶化することにより植物栄養素が放出される);Toubart et al., 2 Plant J. 367(1992)(マメのエンドポリガラクツロナーゼ-阻害タンパク質);Logemann et al., 10 Bio/technology 305(1992)(10のバイオ/技術305(1992)(オオムギリボソーム不活性化遺伝子を発現するトランスジェニック植物は真菌病に対する耐性が増加している)。
【0182】
上述のように、除草剤耐性は遺伝子の修飾により導入されうる別の有用な特性である。例えば、イミダゾリノンまたはスルホニル尿素など成長点または分裂組織を阻害する除草剤に対する耐性は、突然変異体ALSおよびAHAS酵素により付与できる。以下を参照;Lee et al., 7 EMBO J. 1241(1988);Miki et al., 80 Theor. Appl.Genet.449(1990);グリフォサート耐性はaroAおよび変異型5-エノールピルシキメート(enolpyruvlshikimate)-3-ホスフェートシンターゼ(EPSPS)遺伝子によって付与される。グルホシネート耐性はホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子により付与される;また、ピリジノキシまたはフェノキシプロピオン酸およびシクロヘクソンに対する耐性は、ACCase阻害剤をコードする遺伝子によって付与される。例えば、米国特許第4,940,835号(EPSPSはグリフォサート耐性を付与する);変異型aroA遺伝子、ATCC受託番号39256、Comai、米国特許第4,769,061号を参照;また、Umaballava-Mobapathie, 8 Transgenic Research 33(1999)(グルホシネートに耐性を有するラクツカ・サティバ(Lactuca sativa)))も参照;Kumada et al., EP 0 333 033;Goodman et al.,米国特許第4,975,374号(EPSPSは、Lホスフィノトリシンなどの除草剤に対する耐性を与える);Leemans et al., EP0242246(ホスフィノトリシン-アセチル-トランスフェラーゼ);DeGreef et al., 7 Bio/technol.61(1989)(ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼをコードするキメラバー遺伝子);Marshall et al., 83 Theor. Appl.Genet.435(1992)(Acc1-S1、Acc1-S2およびAcc1-S3遺伝子は、セトキシジムとハロキシホップなどのフェノキシプロピオン酸およびシクロヘクソン(cyclohexones)に対する耐性を与える);Przibilla et al., 3 Plant Cell 169(1991)(PsbAおよびgs+遺伝子はトリアジン耐性を与える);Stalker、米国特許第4,810,648号(ニトリラーゼ遺伝子はベンゾニトリル耐性を付与する);Hayes et al., 285 Biochem.J.173(1992)(グルタチオンS-トランスフェラーゼ);Hattori et al., 246 Mol.Gen. Genet.419(1995)(アセトヒドロキシ酸シンターゼは複数の除草剤に対する耐性を付与する);Shiota et al., 106 Plant Physiol. 17(1994)(酵母NADPH-チトクロームP450オキシドレダクターゼ);Aono et al., 36 Plant Cell Physiol. 1687(1995)(グルタチオンレダクターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ);Datta, et al., 20 Plant Mol.Biol. 619(1992)(様々なリン酸転移酵素);WO2001/12825;米国特許第6,288,306号;第6,282,837号;第5,767,373号;(プロトックス(protox )活性が変化した植物はプロトックスターゲティング除草剤に耐性がある)。
【0183】
NS-B50027-4およびNS-B50027-4-由来の後代は、当技術分野において知られているように、任意の数の付加価値形質を与えるためにさらに修飾することができる。例えば、以下を参照;Goto, et al., 521 Acta Horticulturae 101(2000)(大豆フェリチン遺伝子);Curtis et al., 18 Plant Cell Rep. 889(1999)(硝酸レダクターゼ);Knultzon et al., 89 PNAS 2625(1992)(ステアリル-ACPデサチュラーゼ);Shiroza et al., 170 J. Bacteriol.810(1988)(ストレプトコッカス・ミュータンスのフルクトシルトランスフェラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列);Steinmetz et al., 20 Mol.Gen. Genet.220(1985)(バチルス・サブティリスレバン・スクラーゼ遺伝子)(Bacillus subtilis levan-sucrase gene);Pen et al., 10 Bio/technol.292(1992)(トランスジェニック植物はバチルス・リケニフォルミス(Bacillus lichenifonnis)α-アミラーゼを発現する);Elliot et al., 21 Plant Mol.Biol. 515(1993)(トマトインベルターゼ遺伝子);Sogaard et al., 268 J. Biol.Chem. 22480(1993)(大麦α-アミラーゼ遺伝子の部位特異的突然変異誘発);Fisher et al., 102 Plant Physiol. 1045(1993)トウモロコシ内乳デンプン分枝酵素II)。
【0184】
キャノーラ系統NS-B50027-4はまた、機械的方法、化学的方法、自己不和合性(SI)、細胞質雄性不稔性(CMS、oguraまたは別のシステム)または核雄性不稔性(NMS)の使用を含む、当技術分野で公知の多数の方法のいずれかによって雄性不稔であるように遺伝子操作できる。「雄性不稔であるように遺伝子操作された」という用語は、キャノーラ系統NS B 50027 4の雄性不稔バージョンを製造するための任意の利用可能な技術の使用を指す。雄性不稔は部分的または完全な雄性不稔でありうる。例えば、以下を参照。WO2001/29237(タペータム特異的プロモーターの制御下および化学的N-Ac-PPTの適用でのデアセチラーゼ遺伝子の導入);WO1992/13956、WO1992/13957(雄しべ特異的プロモーター);Paul et al., 19 Plant Mol. Biol. 611(1992)(バルナーゼおよびバルスター遺伝子の導入);米国特許第5,859,341号;第6,297,426号;第5,478,369号;第5,824,524号;第5,850,014号;第6,265,640号;Hanson et. al.、16 Plant Cell S154(2004)も参照。
【0185】
生物学的および物理的な植物の形質転換プロトコルを含む、植物の形質転換のための多くの方法が開発されている。例えば、WO 2013185184; Miki et al., in METHS. PLANT MOLEC. BIOL. BIOTECHNOL. at 67-88 (Glick & Thompson, Eds., CRC Press, Inc., Boca Raton, FL, 1993)を参照。加えて、発現ベクターと、植物細胞または組織の形質転換および植物の再分化のためのインビトロ培養方法は利用可能である。例えば、WO 2013185184; Gruber et al., METHS. PLANT MOLEC. BIOL. BIOTECHNOL. at 89-119 (Glick & Thompson, Eds., CRC Press, Inc., Boca Raton, FL, 1993)を参照。植物へ発現ベクターを導入する1つの方法は、アグロバクテリウムの天然の形質転換系を使用する。Horsch et al., 227 Sci. 1229 (1985); Curtis et al., 45 J. Exper. Botany 1441 (1994); Torres et al., 34 Plant Cell Tissue Organ Culture 279 (1993); Dinant et al., 3 Molec. Breeding 75 (1997); Kado, 10 Crit. Rev. Plant Sci. 1 (1991) (Ti and Ri plasmids of A. tumefaciens and A. rhizogenes, respectively, carry genes responsible for genetic transformation of plant); Gruber et al.; Miki et al.; Moloney et al., 8 Plant Cell Rep. 238 (1989) (Agrobacterium vector systems, methods for Agrobacterium-mediated gene transfer); U.S. Patent No. 5,591,616を参照されたい。
【0186】
まとめて遺伝子直接導入と呼ばれる植物の形質転換のいくつかの方法は、アグロバクテリウムを媒介とする形質転換の代わりとして開発されてきた。植物の形質転換の一般に適用可能な方法は、1μm~4μmの微小発射体の表面にDNAが運ばれる、微小発射体媒介性形質転換(microprojectile-mediated transformation)である。発現ベクターは、植物の細胞壁と細胞膜に浸透するのに十分な300m/s~600m/sの速度へと微小発射体を加速させる遺伝子銃装置(biolistic device)によって植物組織へ導入される。Russell et al., 12 Plant Cell Rep. 165 (1993); Aragao et al., 20 Plant Mol. Biol. 357 (1992); Aragao et al., 12 Plant Cell Rep. 483 (1993); Aragao, 93 Theor. Appl. Genet. 142 (1996); Kim & Minamikawa 117 Plant Sci. 131 (1996); Sanford et al., 5 Part. Sci. Technol. 27 (1987); Sanford 6 Trends Biotech. 299 (1988); Klein et al., 6 Bio/technol. 559 (1988); Sanford, 7 Physiol. Plant 206 (1990); Klein et al., 10 Bio/technol. 268 (1992)。
【0187】
植物へのDNAの物理的な送達のための方法も当該技術分野では知られている。例えば、Zhang et al., 9 Bio/technol. 996 (1991) (sonication); Deshayes et al., 4 EMBO J., 2731 (1985) (liposomes); Christou et al., 84 PNAS 3962 (1987) (spheroplast NHW11915); Hain et al., 199 Mol. Gen. Genet. 161 (1985) (CaC12 precipitation); Draper et al., 23 Plant Cell Physiol. 451 (1982) (polyvinyl alcohol or poly-L-ornithine); Saker et al., 40 Biologia Plantarum, 507 (1997/98) (electroporation of protoplasts)を参照。追加の方法としては、限定されないが、遺伝子銃装置を用いる微小発射体媒介性送達、DNA注入、エレクトロポレーションなど、の遺伝子直接導入方法を使用して、植物組織へ導入された発現ベクターが挙げられる。形質転換後に、上記の選択可能なマーカー遺伝子の発現は、当該技術分野で周知の再分化と選択の方法を使用して、形質転換細胞、組織、または植物の優先的な選択を可能にすることもある。例えば、WO 2013185184を参照。
【0188】
形質転換のための前述の方法は、トランスジェニック系統を生産するために一般に使用されていた。その後、トランスジェニック系統は、新しいトランスジェニックキャノーラ系統を生産するために、別の(非形質転換または形質転換)系統と交雑可能である。代替的に、公知の形質転換技術を使用して、特定のキャノーラまたはアブラナへと遺伝子操作された遺伝形質は、従来の品種改良技術でも公知の戻し交雑技術を使用して、他の系統へと導入することがある。例えば、戻し交雑するアプローチが、遺伝子操作された形質を、一般の非エリート近交系からエリート近交系へ、またはそのゲノム中に外来遺伝子を含有している近交系からその遺伝子を含有していない近交系(複数可)へ移動させるために使用され得る。本明細書で使用されるように、「交雑」は、文脈に応じて、単純なXとYの交雑(a simple X by Y cross)、または戻し交雑のプロセスを指す可能性がある。
【0189】
「NS-B50027-4植物」という用語が本実施形態の文脈において使用される場合、この用語は、その系統のすべての遺伝子変換も含む。「遺伝子変換された植物」という用語は、戻し交雑プロセス、遺伝子操作、または突然変異により開発されるNS-B50027-4植物を指し、ここで、本質的には、戻し交雑技術、遺伝子操作、または突然変異を介して、NS-B50027-4―派生系統へと伝達された1つ以上の遺伝子に加えて、品種の所望の形態学的特徴および生理学的特徴のすべてが回復する。戻し交雑方法は、その品種の特徴を改善するか導入するために現在の実施形態と共に使用できる。明細書において使用されるような「戻し交雑」という用語は、反復親に戻って雑種後代を繰り返し交雑すること、すなわち、反復親に1、2、3、4、5、6、7、8、9、またはそれ以上の回数戻し交雑することを指す。所望の特徴のための遺伝子を提供する親のブラシカ植物は、「非反復親」または「供与親」(”nonrecurrent” or ”donor parent”)と称される。この技術用語は、一回親が戻し交雑プロトコルにおいて1回だけ使用され、ひいては繰り返されないという事実を指す。一回親からの遺伝子(複数可)が伝達される親のブラシカ植物は、戻し交雑プロトコルにいくつかのラウンドで使用されるので、反復親として既知である。Poehlman & Sleper, 1994; Fehr, 1993。典型的な戻し交雑プロトコルでは、目的の原品種(反復親)は、伝達される予定の目的の遺伝子を保有する、第2の品種(一回親)に交雑される。その後、この交雑から結果としてもたらされる後代は、再び反復親に交雑させられ、そしてそのプロセスは、キャノーラ植物が得られるまで繰り返され、ここで、本質的には、一回親から伝達された遺伝子に加えて、反復親の所望の形態学的特徴および生理学的特徴はすべて、変換された植物中で回復する。
【0190】
適切な反復親を選択することは、戻し交雑の処理を成功させるために重要な工程である。戻し交雑プロトコルの目的は、最初の系統の形質または特徴を、変更するか置き換えることである。これを達成するために、反復栽培品種の遺伝子は、一回親の所望の遺伝子で修飾されるか置換される一方で、所望の遺伝子学的特徴、ひいては、最初の系統の所望の生理学的特徴および形態学的特徴の残りの全てを本質的に保持する。特定の一回親の選出は、戻し交雑の目的による。主な目的のうちの1つは、植物にいくらかの商業上望ましく、農業経済学的に重要な形質を加えることである。正確な戻し交雑プロトコルは、変更される特徴または形質に応じて、適切な検定プロトコルを決定する。伝達されている特徴が優性対立遺伝子である場合、戻し交雑方法は簡易化されるが、劣性対立遺伝子も伝達されることもある。この例では、後代の検査を導入して、所望の特徴が成功裡に伝達されたかどうか判定することが必要なこともある。
【0191】
新しい系統の開発では選択されないが、 戻し交雑技術により改良できる遺伝子形質が、同定されることもある。遺伝子形質は遺伝子導入のものであってもよく、そうでなくてもよい。これらの形質の例は、限定されないが、雄性不稔、炭水化物代謝の修正、除草剤抵抗性、細菌性疾患、菌類病、もしくはウイルス病に対する耐性、耐虫性、栄養価の増強、工業的使用、生産高安定性、生産高の向上が挙げられる。これらの遺伝子は、通常は核を介して遺伝する。例えば、米国特許第5,969,212号、米国特許第7,164,059号を参照されたい。
【0192】
近交系NS-B50027-4のさらなる再生産が、組織培養物および再分化により発生し得る。「組織培養物」という用語は、同じまたは異なるタイプの単離細胞を含む構成物、または植物の一部分へと組織化されたそのような細胞の集団を示す。例示的なタイプの組織培養物は、原形質体、カルス、分裂組織細胞、および葉、花粉、胚、根、根端、葯、雌しべ、花、種子、葉柄、吸枝、および同種のものなどの植物または植物の部分におけるそのままの組織培養物を生成できる植物細胞である。植物組織培養物を調製し維持するための手段は、当技術分野において公知である。キャノーラの様々な組織の組織培養物、およびそれからの植物の再分化は公知である。例えば、Teng et al., 27 HortSci. 1030 (1992); Teng et al., 28 HortSci. 669 (1993); Zhang et al., 46 J. Genet. Breeding 287 (1992); Webb et al., 38 Plant Cell Tissue Organ Cult. 77 (1994); Curtis et al., 45 J. Exp. Bot. 1441 (1994); Nagata et al., 125 J. Am. Soc’y Hort. Sci. 669 (2000); Ibrahim,et al., 28 Plant Cell Tissue Organ Cult. 139 (1992); 米国特許第5,959,185号;米国特許第5,973,234号;米国特許第5,977,445号を参照されたい。キャノーラ植物の再分化のための組織培養物ならびに小胞子培養物は、成功裡に完成できる。Chuong et al., 4 Plant Cell Rep. 4 (1985); Barsby et al., 5 Plant Cell Rep. 101 (1986); Kartha et al., 31 Physiol. Plant 217 (1974); Narasimhulu et al., 7 Plant Cell Rep. 104 (1988); Swanson, 6 Meth. Molec. Biol. 159 (1990); Cell Culture Tech. & Canola Improvement, 66 J. Am. Oil Chem. Soc. 455 (1989)を参照されたい。その技術的現状は、植物を得るこれらの方法は、高い割合の成功で慣例的に使用されるようなものであることが、文献から明らかである。したがって、本実施形態の他の態様は、成長および分化に際して、同系交配のトランスジェニック系統NS-B50027-4の生理学的特徴および形態学的特徴を有するキャノーラ植物を生産する細胞を提供する。
【0193】
通常では、導入遺伝子が従来の交雑を通じて植物へと導入されるとき、植物ゲノム内のその挿入部位およびその隣接領域は変えられない。「挿入領域」は、(形質転換されていない)植物ゲノム中の導入遺伝子の上流および下流の隣接領域により囲まれ、かつ挿入部位(および起こり得る標的部位の欠失)を含む、少なくとも100の塩基対、または最大10,000を超える塩基対などの少なくとも40の塩基対の領域に対応する領域を指す。種内の突然変異が原因の小さな差異を考慮に入れると、挿入領域は、その種のうちの所与の植物中の外来性DNAの上流および下流の隣接領域に対して、90%、95%、または100%の配列同一性などの、少なくとも85%の配列同一性を保持することもある。しかしながら、植物ゲノムへのトランスジェニックカセットの挿入は、「標的部位欠失」と言われる植物DNAの欠失に時折関連する可能性がある。それにもかかわらず、さらなる導入遺伝子または他の遺伝子操作が、不必要な実験作業を行うことなくNS-B50027-4中で作ることができ;そして、NS-B50027-4由来の植物が、本明細書に記載されるように同定され得る。
【0194】
ソース材料NS-B50027-4は、細胞質雄性不稔ソース、または雌としての近交系を滅菌するための他のいくらかのソース上へと戻し交雑される場合、雑種種子の系統を生産するために使用できる。代替的に、その系統は直接使用できる。例えば、セイヨウアブラナ(B. napus )系統のNS-B50027-4は、F1植物の第一世代集団を形成するために他のキャノーラ植物で交雑できる。この方法により生産された第一世代F1植物の集団もまた、実施形態である。F1植物のこの第一世代集団は、キャノーラ系統NS-B50027-4の対立遺伝子の本質的に完全なセットを含む。典型的には、F1雑種は各親の対立遺伝子のすべてを有するものと考慮される。当業者は、育種家の本または分子法のいずれかを活用して、キャノーラ系統NS-B50027-4を使用して生産された特定のF1植物を同定でき、かついかなるそのような個々の植物も本発明により包含される。これらの実施形態はまた、NS-B50027-4系統のトランスジェニック遺伝子変換または単一の遺伝子変換を用いるこれらの方法の使用を含む。
【0195】
本発明の他の実施形態は、キャノーラ系統NS-B50027-4に対する何度も繰り返される戻し交雑に関与する育種において、キャノーラ系統NS-B50027-4を使用する方法である。本明細書に記載されるトランスジェニック法、戻し交雑法、または当業者に既知の他の育種方法を使用して、当業者は、キャノーラ系統NS-B50027-4の遺伝子プロファイルの少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%を保持する、個々の植物、および植物の集団を成長させることができる。後代中に保持された遺伝学の割合は、系統分析、または分子マーカーもしくは電気泳動などの遺伝学的技術の使用のいずれかによって測定され得る。系統分析では、平均して、他の系統に対して1度交雑した後に出発生殖質の50%が後代系統に継代し、異なる系統に対して別の交雑を行った後に出発生殖質の25%が後代系統に継代する。分子マーカーは、後代系統の系統図を確認および/または判定するために使用される可能性がある。
【0196】
キャノーラ系統NS-B50027-4に由来する系統を生産するための特異的な方法は、以下のとおりである。当業者は、キャノーラ系統NS-B50027-4を、エリート系統などの別のキャノーラ植物と交雑する。この交雑に由来するF1種子を、均質の集団を形成するために成長させる。F1種子は、キャノーラ系統NS-B50027-4からの対立遺伝子の50%と、別の植物の対立遺伝子の50%とを含有している。F1種子を成長および自己増殖させ、それによってF2種子を形成する。平均して、F2種子は、NS-B50027-4系統からのその対立遺伝子の50%と、他のキャノーラ植物からの50%に由来するが、その集団からの様々な個々の植物は、はるかに高い割合の、イベントNS-B50027-4に由来するそれらの対立遺伝子を有する。Wang et al., 40 Crop Sci. 659 (2000); Bernardo et al., 102 Theor. Appl. Genet. 986 (2001)。この文脈において使用されるように、集団という用語は、統計的に代表的なサンプルを指す。F2種子を成長させ、植物の選択を、形質の目視観察または目視測定に基づいて行う。選択するために使用される形質は、キャノーラの種子における高DHA産出のキャノーラ系統NS-B50027-4形質であり得る。所望のNS-B50027-4由来の形質を表わす、イベントNS-B50027-4由来の後代を選択し、各植物を別々に収穫する。各植物からのこのF3種子を、個々の列で成長させ、自己増殖させる。その後、選択された列、またはその列からの植物を、個々に収穫かつ脱穀する。選択は、再び、植物表現型の目視観察、または望ましいNS-B50027-4由来の形質などの、植物の望ましい形質の測定に基づく。同系交配のNS-B50027-4由来のキャノーラ植物が得られるまで、成長および選択のプロセスを何度も繰り返す。
【0197】
NS-B50027-4由来のキャノーラ植物は、キャノーラ系統NS-B50027-4に由来する望ましい形質を含有しており、そのうちのいくつかは、キャノーラ系統NS-B50027-4が交雑された別のキャノーラ植物によって発現させられることがあり、そしてそのうちのいくつかは、両方のキャノーラ系統によって発現させられることもあるが、ここでNS-B50027-4で発現させられたレベルに等しいか、それよりも高い。
【0198】
NS-B50027-4由来のF1キャノーラ植物またはブラシカ植物は、平均して、NS-B50027-4の50%に由来するそれらの遺伝子を有するが、その集団からの様々な個々の植物は、はるかに高い割合の、NS-B50027-4に由来するそれらの対立遺伝子を有する。交雑、自家受粉、および選択の育種プロセス、平均して、NS-B50027-4に由来するそれらの遺伝子の25%を有するNS-B50027-4由来のキャノーラ植物の別の集団を生産するために繰り返されるが、その集団からの様々な個々の植物は、はるかに高い割合の、NS-B50027-4に由来するそれらの対立遺伝子を有する。本発明の別の実施形態は、高DHAの望ましいNS-B50027-4由来の形質を受け取った同系交配のNS-B50027-4由来のキャノーラ植物である。
【0199】
先の例は、多くの方法で修正でき、例えば、選択は、自家受粉した世代の全てで生じることもあれば、生じないこともあり、選択が、実際の自己受粉プロセスが生じる前または後に生じることもあり、または個々の選択が、記載された育種プロセスの任意の時点における、個々の鞘、植物、列、または区画の収穫によりなされることもある。加えて、倍加半数体の育種方法は、プロセス中のあらゆる工程で使用されてもよい。自家受粉の各世代および任意の世代で生産された植物の集団は、本実施形態の実施形態でもあり、そのような各集団は、キャノーラ系統NS-B50027-4からのその遺伝子の50%、交雑および選択の第2のサイクルにおけるキャノーラ系統NS-B50027-4からのその遺伝子の25%、交雑および選択の第3のサイクルにおけるキャノーラ系統NS-B50027-4からのその遺伝子の12.5%を含有している植物など、から成るだろう。
【0200】
別の実施形態は、別のキャノーラ植物と共にキャノーラ系統NS-B50027-4を交雑し、F1種子もしくはF1植物またはこの交雑の自己増殖によって得られたキャノーラ系統NS-B50027-4の任意の世代に倍加半数体の方法法を適用することにより、ホモ接合体のNS-B50027-4由来のキャノーラ植物を得る方法である。系統育種は、自家受粉作物または異花受粉作物近交系を改良するために一般的に使用される。好ましく相補的な形質を所有する2つの親がF1を生産するために交雑させられる。F2集団は、1つまたはいくつかのF1集団を自己増殖させること、または 2つのF1集団を異系交配する(同胞交配)ことによって生産される。最良の個体の選択は、F2集団で通常着手される。その後F3に着手し、最良のファミリーにおける最良の個体を選択する。ファミリー、またはこれらのファミリーの個体に関与する雑種の組み合わせの再現検定は、低い遺伝率を有する形質を選択する実効性を向上させるために、しばしばF4世代の後に行われる。同系交配がかなり進行した段階(すなわちF6およびF7)において、最良の系統、または表現型的に同様の系統の混合物は、新しい栽培品種としてリリースされる可能性について検定される。
【0201】
まださらに、本実施形態は、キャノーラ植物と共にキャノーラ系統NS-B50027-4を交雑し、その後代種子成長させ、成長工程によりNS-B50027-4由来のキャノーラ植物と共に交雑を1~2回、1~3回、1~4回、または1~5回繰り返し、そして、第1、第2、第3、第4、または第5の交雑後に何回も自己増殖させることによって、NS-B50027-4由来のキャノーラ植物を生産する方法を対象とする。質量および反復の選択は、自家受粉作物または異花受粉作物のいずれかの集団を改良するために使用できる。ヘテロ接合個体の遺伝学的に変更可能な集団は、同定されるか、いくつかの異なる親を異系交配することにより作られる。最良の植物は、個々の優越、優秀な後代、または優れた組合せ能力に基づいて選択される。選択された植物は、選択のさらなるサイクルが継続させられる新しい集団を生産するために異系交配される。
【0202】
簡単に遺伝し、高遺伝性の形質のため遺伝子を、反復親である望ましいホモ接合栽培品種または系統へと伝達するために、戻交雑育種法を使用した。伝達される形質の源は供与親と呼ばれる。結果としてもたらされる植物は、反復親(例えば栽培品種)の特質と、供与親から伝達された望ましい形質とを有することが推測される。初めの交雑後に、供与親の表現型を所有する個体を選択し、反復親に対して繰り返し交雑(戻し交雑)する。結果としてもたらされる植物は、反復親(例えば栽培品種)の特質と、供与親から伝達された望ましい形質とを有することが推測される。
【0203】
単粒系統処理は、厳密に言えば、分離集団を植え、1つの植物当たり1つの種子のサンプルを収穫し、次世代を植えるために単粒サンプルを使用することを指す。その集団を、F2から同系繁殖の所望のレベルまで進ませた場合、系統が由来する植物は、それぞれ異なるF2個体にまでさかのぼる(trace to)であろう。集団の植物の数は、いくつかの種子が発芽するのに失敗する、またいくつかの植物が少なくとも1つの種子を生産するのに失敗することが原因で、各世代で減少する。その結果、集団において最初にサンプル収穫されたF2植物のすべてが、世代の進行が完了したときに、後代によって示されるとは限らない。
【0204】
さらなる実施形態は、NS-B50027-4の単一遺伝子の変換をもたらす。DNA配列が戻し交雑などの従来の(非形質転換)育種技術によって導入されるとき、遺伝子変換が生じる。DNA配列は、自然発生であって、も導入遺伝子であっても、これらの従来の育種技術を使用して導入され得る。このプロセスを経て伝達される所望の形質には、限定されないが、稔性の変更、脂肪酸プロファイルの変更、他の栄養素の増大、産業的増強、耐病性、耐虫性、除草剤抵抗性、および生産高増大が挙げられる。目的の形質は、供与親から反復親、この場合は、本明細書に開示されるキャノーラ植物に伝達される。単一遺伝子の形質は、優性対立遺伝子または劣性対立遺伝子のいずれかの伝達に起因し得る。目的の形質を含有している後代を選択することは、優性対立遺伝子に関連する形質を個別選択(direct selection)することによって行われる。劣性対立遺伝子を介して伝達される形質の後代を選択するには、第1の戻し交雑世代を成長およびかつ自己増殖させて、どの植物が劣性対立遺伝子を保有するのかを判定することが求められる。劣性形質は、目的の遺伝子の存在を判定するために、連続戻し交雑世代のさらなる後代検定を必要とすることもある。目的の形質を選択すると共に、後代を、反復親の表現型のために選択する。時折、さらなるポリヌクレオチド配列または遺伝子が、目的の単一遺伝子変換形質に加えて、伝達されることが理解されるだろう。本明細書に開示されるキャノーラ植物である反復親からの遺伝子の少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%を含有し、かつその遺伝子変換形質を含有している後代は、NS-B50027-4の遺伝子変換であると考えられる。形質が2つの遺伝子によって制御されるとき(例えばいくらかの耐病性)、例えば、2つの遺伝子に対する選択が同時に行われる。
【0205】
突然変異育種は、キャノーラ品種へと新しい形質を導入する別の方法である。自然に生じる、または人為的に誘導される突然変異は、植物育種家にとって、変異性の有用な源になり得る。人工の突然変異誘発の目的は、所望の特徴のための突然変異の割合を増大させることである。突然変異率は、温度、長期の種子貯蔵、組織培養条件、放射(X線、ガンマ線、中性子、ベータ線、または紫外線など)、化学変異原(5-ブロモ-ウラシルのような塩基アナログなど)、抗生物質、アルキル化剤(サルファマスタード類、ナイトロジェンマスタード類、エポキシド類、エチレンアミン類、硫酸塩類、スルホン酸塩類、スルホン類、またはラクトン類など)、アジ化物、ヒドロキシルアミン、亜硝酸、アクリジン類を含む多くの様々な手段によって増大できる。一旦、所望の形質が突然変異生成によって観察されると、その後、形質は従来の育種技術によって既存の生殖質へと組み込まれることもある。例えば、Fehr, PRINCIPLES CULTIVAR DEVEL.(Macmillan Pub’l Co., 1993)を参照されたい。
【0206】
本実施形態のキャノーラ系統は、細胞質遺伝子、核内遺伝子、または他の因子のルーチン操作によって、前で議論された文献において記載されるように、雄性不稔の形態で生産されることが理解されるだろう。そのような実施形態はまた、本請求項の範囲内である。このように、本実施形態は、キャノーラ系統NS-B50027-4の使用によって生産されたF1雑種の種子および植物を提供する。
【0207】
植物の遺伝子型の分析、比較、およびキャラクタリゼーションが可能な、以下のような多くの研究室ベースの技術が存在する;アイソザイム電気泳動、制限断片長多型(RFLP)、ランダム増幅多型DNA(RAPD)、任意プライムポリメラーゼ連鎖反応(AP-PCR)、DNA増幅フィンガープリンティング(DAF)、配列特徴化増幅領域(SCAR)、増幅断片長多型(AFLP)、単純反復配列(SSR、マイクロサテライトとも呼ばれる)、および一塩基多型(SNP)。
【0208】
アイソザイム電気泳動およびRFLPは遺伝組成を判定するために広範に使用されてきた。Shoemaker & Olsen (Molecular Linkage Map of Soybean (Glycine max), pp. 6.131-6.138 in S. J. O’Brien (ed.) Genetic Maps: Locus Maps of Complex Genomes, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1993))では、約365のRFLP、11のRAPD、3つの古典的マーカー、および4つのアイソザイム遺伝子座を備えた25の連鎖群から成る、分子の遺伝連鎖地図が開発された。Shoemaker, R. C., RFLP Map of Soybean, pp. 299-309, in Phillips, R. L. and Vasil, I. K. (eds.), DNA-Based Markers in Plants, Kluwer Academic Press, Dordrecht, the Netherlands (1994)も参照されたい。
【0209】
現在では、SSR技術が、効率的かつ実践的なマーカー技術であり;より多くのマーカー遺伝子座が慣例的に使用でき、RFLPと比較して、SSRを使用して、標識座当たりより多くのアレルが発見され得る。例えばDiwan & Cregan, 95 Theor. Appl. Genet. 22 (1997)を参照されたい。SNPも、発明の特有の遺伝組成、およびその特有の遺伝組成を保持する後代品種を同定するために使用されることもある。様々な分子マーカー技術が、全体的な分析を増強するために併用して使用されてもよい。分子マーカーが、アイソザイム電気泳動、RFLP、RAPD、AP-PCR、DAF、SCAR、AFLP、SSR、およびSNPのような技術の使用によって同定されたマーカーを含み、品種改良において使用されることもある。分子マーカーを1回使用することが、量的形質遺伝子座(QTL)マッピングである。QTLマッピングは、定量的形質対する測定可能な効果を有するアレルに緊密に結合されることが知られているマーカーを使用することである。育種プロセスの選択は、好ましい効果を奏するアレルに結合されたマーカーの蓄積、または植物のゲノムからの、好ましくない効果を奏するアレルに結合されたマーカーの排除に基づく。
【0210】
分子マーカーも、育種プロセスの間に、質的形質を選択するために使用できる。例えば、アレルに緊密に結合されたマーカーまたは目的の現在のアレル内に配列を含むマーカーが、戻し交雑育種プログラムの間に、目的のアレルを含む植物を選択するために使用され得る。それらのマーカーはまた、反復親のゲノムに向けて、および供与親のマーカーに対して選択するために使用できる。この処理により、選択された植物中に残る供与親からのゲノムの量を最小化することを試みる。その処理は、戻し交雑プログラムにおいて必要であった反復親に対する交雑の数を減らすためにも使用できる。選択プロセスにおける分子マーカーの使用は、遺伝子マーカー増強選択(genetic marker enhanced selection)、またはマーカー利用選抜(marker-assisted selection)としばしば呼ばれる。分子マーカーはまた、交雑によって追跡遺伝子プロファイルの手段を提供することによって、親の品種、または植物の祖先として、生殖質の特定の源を同定し除外するために使用されることもある。
【0211】
したがって、最先端技術である、植物を得るこれらの方法は、それらが慣例的に使用され 高い成功率を有するという点で「従来のもの」であることが明らかである。キャノーラ系統NS-B50027-4の有用性はまた、他の種との交雑にまで及ぶ。一般的には、適切な種はアブラナ科である。従って、育種におけるキャノーラエリートイベントNS-B50027-4を使用する全ての方法は、本実施形態によって含まれ、自己増殖、系統育種、戻し交雑、雑種生産、および集団に対する交雑が挙げられる。および、親としてキャノーラ系統エリートイベントNS-B50027-4を使用して生産された全ての植物および植物の集団は、本実施形態の範囲内にあり、キャノーラ系統NS-B50027-4に由来する品種から成長させられたものを含む。特有の分子マーカープロファイルまたは育種記録は、キャノーラ系統NS-B50027-4に由来する後代系統または後代の集団を同定するために当業者によって使用され得る。
【実施例
【0212】
実施例1
圃場試験におけるNS-B50027-4系統のキャラクタリゼーションおよび選択
植物育種における困難な作業は、遺伝学的に優秀な個々の植物の同定であるが、これは、ほとんどの形質に対して、真の遺伝子型値に、他の植物形質または環境要因が混同することによって隠されることもあるからである。優秀な植物を同定するための1つの方法が、他の実験の植物および1つ以上の広く成長させられた標準的な栽培品種と比較して、その性能を観察することである。単独観察が決定的でない場合、観察を繰り返すことによって、遺伝学的な価値のより良い評価がもたらされる。
【0213】
B0050-027-18として最初に同定された植物は、植物当たり1つの種子のサンプルを収穫し、 次世代を植えるために単粒サンプルを使用することによる、単粒系統処理に基づいて選択された。一般的には、集団中の植物の数は、ある程度の種子が発芽に、またはある程度の植物が少なくとも1つの種子を生産するのに失敗するために、各世代で減少する。その結果、世代の進行が完了したときに、集団中で最初にサンプルされた全ての植物が後代によって示されるわけではない。さらに、最初の遺伝子導入イベントは、後代の遺伝子型または表現型に関して予想ができないほど、遺伝の複雑性を悪化させる。したがって、植物を選択し、特定の系統がホモ接合体になるまで連続する世代のタイプに自家受粉させ、これによって、優れた農学的プロパティを備えた選択された形質が示され、そして純粋品種の後代の一様な集団が生産された。より具体的には、Nuseed Innovation Centre (NIC), Horsham (Victoria, Australia)における育種再選択プログラムに従って、検定系統を選択した。候補の系統の選択および増進は以下に基づく:
(a)T-DNAインサートのコピー数;
(b)DHA発現の分離パターン;
(c)ホモ接合性(脂肪酸の表現型および遺伝子型に基づく);
(d)LC-ω3-DHAの生産;および
(e)冬と夏の位置での後代検定に基づいた、作物生産に関する適切な農業形質。
【0214】
オーストラリアでは、キャノーラは、南部乾燥地域の作物地域にわたって、ほとんどは主に冬に雨が降る環境で栽培される。オーストラリアでの生産は、春化処理をほとんど必要としない春まき性のキャノーラ栽培品種由来である。一般的には、オーストラリアの栽培品種は、一般的には開花の始まりが少し遅れ、冬月にわたって比較的高い草勢またはバイオマス生産を有する。オーストラリアのキャノーラ作物は、第1の主要な降雨事象の後の4月から5月まで一般的には種をまかれ、10月から12月まで収穫される。収穫量は、主として、栽培期の間の可利用水分および栽培品種の水使用効果率によって影響を受ける。レプトスフェリア・マクランズ(Leptosphaeria maculans)に起因する黒あし病に対する主要な病原型遺伝子抵抗力によって、苗の生存率および茎の腐敗の観点から、栽培品種を区別できるが、オーストラリアの栽培品種は、一般的に、推奨された農耕法の下で成長させられた場合に高耐性を有すると考えられる。種子の発育は、5~7ヶ月の栽培期の後、晩春または初夏に始まる。水利用可能性とは別に、収穫量は、種子および種子の鞘の不稔をもたらすこともある広い温度限界(<0℃~>35℃)に著しく影響を受ける可能性がある。
【0215】
本明細書において留意される。キャノーラ生殖質の形質転換を、LC-ω3脂肪酸類、特にDHAの、種子特異的な蓄積を結果としてもたらした8つの遺伝子構成で試みた。おおまかに言えば、表現型を、製品品質(PQ)(生産されたオメガ-3脂肪酸類)によってキャラクタライズしたが、植物はマーカー遺伝子(MG)を保有した。形質転換された材料を、遺伝子座のホモ接合性、種子におけるDHAの発現、および 市販品の生産に適する農業的形質および生産力に関して再度選択した。
【0216】
遺伝子導入イベントからの3つのT2世代由来の同胞を、8つの実験的な位置(場所)にわたる様々な重要な農学的形質および種子形質のために、8つの他のキャノーラ栽培品種(系統)と比較した。2015年、ビクトリアで、栽培期の降雨量は長期平均以下であり、栽培期の期間が縮小された。8つのオーストラリアの現場は、現場平均の現場収穫量内の範囲(すなわち、AV Garnet:0.7~2.4t/ha)によって示されるような広範囲の環境的な生産力を示した。トランスジェニック系統B0050-027-18-Xを、以下の3つのトランスジェニック系統によって表した:B0050-027-18-20(T3)、B0050-027-18-36-13(T4)、およびB0050-027-18-105-13(T4)。検定系統の農業形質変種は、検定された全ての環境にわたって評価された市販の栽培品種と同等であった。この結論は、最も高生産の検定系統の穀物収穫量が、現場間分析(across-site analysis)(MET-REML)に基づいて、最も高生産な市販の栽培品種と統計的に同等であったという結果によって裏付けられた。さらに、各現場に対して、最も高生産な検定系統が、著しい差が無かったある現場を例外として、少なくとも1つの栽培品種よりも著しく生産が多かった。検定系統は、わずかに低い割合の種子油、および変動する脂肪酸組成物を有する種子を生産したが;これは生産高または能楽的性能には影響を与えなかった。LCω3DHA脂肪酸は、検定された環境にわたって非常に安定して発現した。
【0217】
検定系統は、形質転換された苗木(var. AV Jade)に由来した。種子を、植物が単離環境(すなわち防虫テント)で自家受粉することを可能にすることによって大きくした。
【0218】
比較のために使用された対照の栽培品種(市販の育種系統)によって、作物地域において広範に成長させられた、農業経済学的に異なる(例えば草性、生物季節学の)範囲の、よく適した(すなわち生産力および含油量は高いが変動する)栽培品種をもたらした。これらの栽培品種を、全て自然受粉させ、例えば、Australian National Variety Testing ProgramおよびRegional annual crop reportsに記載し、大規模に評価した。「nvtonline」というウェブサイトを参照されたい。さらに、植物病害抵抗性の変種は、オーストラリアの黒あし症に関してよく説明されている。Van De Wouw et al., 67 Crop & Pasture Sci. 273 (2015)。オーストラリアでは、黒あし病は、最大90%の収穫損失を引き起こす可能性がある。Marcroft & Bluett, Agricul. Notes, AG1352, Victoria, Dept. Primary Indus. (2008)。特定の種子の脂肪酸組成物および種子油の含有量のための、市販の栽培品種のうちの遺伝変異は、経時的に実証されてきた。Seberry et al., Quality of Australian canola 2011 (Australian Oilseeds Fed., 2012)を参照されたい。栽培品種AV Jadeからの植物を、遺伝子導入T0を生産するために形質転換し、従ってAV Jadeは、本明細書に記載された遺伝子導入イベントの形質転換されていない同質遺伝子系統と考えられ得る。
【0219】
検定系統のための表現型変異を、植物出芽草勢、開花期、開花持続時間、植物丈、種子の脱粒、耐倒伏性、黒あし症の重症度、植物収穫数、穀物収穫量、穀粒水分、種子油の割合、および特に種子LC-ω3多不飽和脂肪酸(LC-PUFA)、 具体的にはEPA、DPAおよびDHAの収穫量に関係する脂肪酸含有量によって、キャラクタライズした。測定されたすべての形質に対して、限定的推定尤度分析(restricted estimated likelihood analysis)を、統計ソフトウェアGenStat中のASREMLを使用して試みた。Gilmour et al., ASREML user guide, release 3.0, Biometric Bulletin (3) (VSV Int’l, Waterhouse Stm Hemel Hempstead, UK, 2009)。線形混合モデルの統計的方法を、広範囲に記載されるような畑の空間的変化を考慮するために使用し、かつ畑での植物育種および遺伝子学的研究のために使用した。Cullis & Gleeson, 47 Biometrics 1449 (1991); Smith et al., 57 Biometrics 1138 (2001); Welham et al., Analysis of linear mixed models by ASReml-R with Applications in Plant Breeding: Course Notes (VSV Int’l, Waterhouse Stm Hemel Hempstead, UK, 2013)。Meta-REML現場間分析を、穀物の収穫量(t/ha)のためにさらに試みて、検定系統のために現場間の最良線形不偏予測(BLUP)を測定した。
【0220】
植物出芽に関して、8つの現場全てにわたって、各区画内の2つの1平方メートル(1m)の四分区間における播種後に、およそ12日で出芽した植物の数を数えて出芽の数を推定した。四分区間の両方の平均を、1平方メートルごとに出芽した植物の数を推定するために使用し、形質変量として分析した。区画当たりの平均植物密度の視覚的な評価に基づく植物出芽スコアを、全ての現場にわたって、各区画について記録し、形質変量として分析した(例えば、1=低=0-5植物/m;5=中=25-30植物/m;9=高=45-50植物/m)。1平方メートルごとの数に基づく植物出芽、および出芽スコアは、8つの現場全ての系統処理間で著しく変動した。統計的には、トランスジェニック系統の植物出芽、全ての実験にわたって、栽培品種により示された範囲内で著しく変動した。草勢を、全ての現場にわたる各区画について、植物キャベツ期(plant cabbage stage)(すなわち6枚葉期から)における植物性バイオマスの、1-9のスコアによる観察を使用して栽培期の初期に予測し、そして形質変量として分析した。
【0221】
開花期を、種まきから、区画内の植物の50%の少なくとも1つの花が開いた時までの日数として記録した。これを、全ての試験にわたって各区画で記録し、形質変量として分析した。開花の始まり(種をまいてからの日数)は、開花した植物の50%に基づき、すべての現場の系統処理間で著しく変動した。現場平均開花期は、99日から110日まで変動し、この形質のための実験現場にわたる環境的な差異の指標である。統計的には、トランスジェニック系統の開花期は、全ての実験にわたって、栽培品種により示された範囲内で著しく変動した。
【0222】
開花持続時間は、開花期~開花期の終了(日数として示される)の算出された差とした。これを、全ての試験にわたって各区画で算出し、形質変量として分析した:開花持続時間=開花終了日-開花期(50%。開花の始まり(種をまいてからの日数)は、開花した植物の50%に基づき、すべての8つの現場の系統処理間で著しく変動した。現場平均開花期は99日から110日まで変動し、この形質のための実験現場にわたる環境的な差異を反映する。統計的には、トランスジェニック系統の開花期は、全ての実験にわたって、栽培品種により示された範囲内で著しく変動した。開花の終了(種をまいてからの日数)は、植物の90%が花を持たないことに基づき、8つの現場すべての系統間で著しく変動した。開花期の終了の現場平均は128日から139日まで変動し、このことがこの形質のための実験現場にわたる環境的な差異を反映した。統計的には、トランスジェニック系統の開花期の終了は、現場全てにわたって、栽培品種により示された範囲内で著しく変動した。
【0223】
1平方メートルごとの植物に基づく収穫時の植物は、8つの現場全ての系統間で著しく変動した。統計的には、トランスジェニック系統の収穫時における植物数は、全ての植付および位置にわたって、栽培品種により示された範囲内で著しく変動した。出芽時の植物の数は、収穫時に記録された植物の数に対して有意に相関した。算出された生存割合のうちのいくつかは100%を超過したが、これは、2つの栽培品種(ATR WahooおよびAV Jade)の遅い幼植物出芽を反映している:全ての苗木が、植物出芽数が記録されたときに出芽していたわけではない。
【0224】
乾燥種子成熟段階時の、底から、区画の中心にある生長点までの植物丈を測定した。区画間空間的面積に恐らく関連する交絡効果(エッジ効果)を避けるために区画の中心を使用した。これ形質を、全ての試験にわたって各区画で記録し、形質変量として分析した。成熟時の植物丈(cm)は、現場全ての系統処理間で著しく変動した。現場平均の植物丈は、63cmから105cm日まで変動し、この形質のための実験現場にわたる環境的な差異を示した。統計的には、成熟したトランスジェニック系統の丈は、実験全てにわたって、栽培品種により示された範囲内で著しく変動した。
【0225】
成熟時の種子の脱粒(時々鞘脱粒と呼ばれる)を、2週間にわたって記録された、1平方メートルの1/8当たり種子の脱粒の数を使用して分析した。これを、種子をまいた列の間、かつ全ての位置の各区画のキャノピーの下に、2つのトレーを配置することにより試み、形質変量として分析した。種子脱粒スコア(1(皆無)~9(高:+40)のスケールに基づく)を、1つの現場で、収穫直前の地面上で観察された種子の数に基づいて記録し、形質変量として分析した。収穫時の地面上の種子の数に基づく種子の脱粒は、8つの現場のうちの4つの系統処理間で著しく変動した。現場平均の種子の脱粒数は、(1平方メートルの1/8当たり)3から15まで変動し、全ての現場にわたって低レベルの脱粒を示した。現場のうちの1つにおける種子脱粒スコアはまた、系統間で著しく変動し、現場間平均の種子脱粒数に密接に相関した。これは、スコアとして記録された脱粒が種子脱粒の良好な予測因子であったことを示す。統計的には、トランスジェニック系統の、種子数に基づく種子脱粒およびスコアは、実験全てにわたって、栽培品種により示された範囲内で著しく変動した。
【0226】
成熟時の植物の底から傾く植物の角度に基づいてスコア付けされる耐倒伏性を、1(抵抗力がある)~9(感染しやすい)として記録した。植物倒伏に関する統計的に著しい変動は存在しなかった。この形質に関する変動が無かったのは、恐らく、遅い結莢期(late pod fill stage)において平均雨量が少なかったことに関連する。
【0227】
レプトスフェリア・マクランズおよびレプトスフェリア・ビッグロボサ(Leptosphaeria biglobosa)の代表的な黒あし症葉の重症徴候を、5つの現場にわたる1つの繰り返しについて、1(低<5%)~9(高>40%)スコアとして記録した。顕著な変動が無かったので、全ての区画がスコア付けされたわけではない。腐敗および茎の折損に関連する症状は観察されなかった。黒あし病の葉の症状は、8つの現場全てにおいて、非常に低レベルでしか観察されなかった。むき出しの種子(bare seed)(殺菌剤で未処理の種子)を使用して、1つの現場に種子をまいた。この現場と、種子殺菌剤で処理された他の現場との間では、検定された系統間の植物出芽の相対的な差異はなかった。葉の症状によって、L.マクランズ(L.maculans)(収穫量の減少の主要因であり、オーストラリアの抵抗力レーティングの基礎、Sosnowski et al., 33 Australian Plant Pathol. 401 (2004)を参照されたい。)により引き起こされる茎の腐敗の程度を、常に予測できるとは限らない。いくつかの試験で、子葉、葉、茎(がん腫病)に対する病原体感染、および現場条件下の植物生存率に基づいて黒あし症の抵抗力が評価された。腐敗および茎の折損が無いと仮定して、キャノーラ系統は、本明細書に記載された目的のための、現行の病害圧力(disease pressure)に耐性があるとみなされ得る。
【0228】
植物収穫数を、8つの現場全ての各区画内の、2つの1平方メートルの四分区間における植物を数えることにより推定した。その後、四分区間の両方の平均を、1平方メートルごとの植物の数を推定するために使用し、形質変量として分析した。植物数の現場平均を、植物出芽数の現場平均の%として表すことにより、植物生存率(%)を算出した:植物生存率% =(植物収穫数×100)/植物出芽数。
【0229】
穀物を、種子が生理学上成熟し、かつ乾燥した(~7%)時に、区画収穫機を使用して収穫した。収穫方向を、各試験で一貫(すなわち各列で前後の範囲)させて、収穫方向よる誤差を避けた。各区画の乾燥穀物重量を測定し、区画面積に基づく単位t/haに変換し、形質変量として分析した。
【0230】
収穫時および研究所サンプルの穀粒水分を記録し、形質変量として分析した。ハンドヘルドの水分計を使用して、現場の収穫点でバルクサンプルを直接分析した。Australian Oilseed Federation(AOF)メソッド4-1.5に基づき、オーブン乾燥法を使用して、水分の割合を測定した。この方法は、開いた缶内で、130℃で1時間、5グラムのサンプルをオーブン乾燥することを含んだ。そのサンプルを、40分間デシケーター中で冷却し、重さを測り、水分の割合を、質量のパーセント損失として測定した。収穫時の穀粒水分(%)は、8つの現場全ての系統処理間で著しく変動した。収穫時の現場平均の穀粒水分は9%から12%まで変動し、このことが、種子が同様の穀物期で収穫されたことを示す。統計的には、トランスジェニック系統の収穫時の穀粒水分は、実験全てにわたって、栽培品種により示された範囲内で著しく変動した。収穫時の穀粒水分%は、後の開花系統(すなわちATR WahooとMonola515TT)の種子が、全ての現場にわたって、収穫期において著しく高い穀粒水分%を有するように、開花期と相関した。研究室の種子水分は、全ての現場にわたって、系統間で著しく変動した。しかしながら、系統間および現場間の差異は非常に低く、平均して約7%であった。これは、種子貯蔵の交絡効果を示さない。トランスジェニック系統に関する研究室における種子水分は、非トランスジェニック系統により示された範囲内で著しく(P<0.05)変動した。
【0231】
種子含油量(%)を、6%の水分まで調節された種子上でスピンロック核磁気共鳴(NMR)分光測定を使用して分析した。簡潔に言えば、5グラム~10グラムの種子のサンプルをNMR管へと量り取り、核磁気共鳴分光計により分析した。種子油の結果を、重量測定による油抽出により測定されるように、既知の割合の含油量の20の標準サンプルを使用して最初に作られたソフトウェア較正によって測定した。種子含油量は、8つの現場全てにわたって系統間で著しく(P<0.05)変動した。現場平均の種子油%は、37.0%から41.5%まで変動したが、これは、概して植付位置の平均以下であった。これは恐らく、登熟期の間に雨量が平均以下であり、気温が平均より高かった結果である。相対的な系統差は、現場にわたって十分に一致していた。トランスジェニック系統に関する種子含油量の変動は、全ての現場にわたって、非トランスジェニック系統と比較して、わずかに小さく、平均の約2%上であったが、これによって、遺伝学的改良の目標を提供することもある。より低い含油量は、遺伝子導入イベントに遺伝学的に関係しないこともあるが、より低い含油量の栽培品種(すなわちAV Jade)を形質転換した結果である可能性もある。
【0232】
非遺伝子導入栽培品種のものと比較したイベントNS-B50027-4の農業形質のキャラクタリゼーションの概要を、表4に示す(分析REML;全ての形質についてF pr<0.001Sig)。
【0233】
【表4】
【0234】
脂肪酸を、溶剤抽出を用いて測定し、その後に、同時に鹸化およびメチル化を実施し、GC-FIDにより分析した。簡潔に言えば、これは、種子サンプルを粉砕し、 粉砕された種子の副サンプルから溶媒へと油を抽出することを含んだ。その溶媒を窒素下で蒸発させ、油の副サンプルを新しい溶媒で希釈した。アリコートをMeth Prep II(鹸化/メチル化剤)と反応させた。サンプルを、反応を促進させるために40℃で加熱し、その後脂肪酸を測定するためのBPX-70カラムを使用するGC-FID上に注入した。脂肪酸を、各脂肪酸ピークの領域が、クロマトグラムにおける脂肪酸ピークの合計のパーセンテージとして測定された油の組成物%として算出した。これらの推定量を形質変量として個々に分析した。以下特定の脂肪酸の%を推定した:パルミチン酸;ステアリン酸;オレイン酸&シス-バクセン酸;リノール酸;αリノレン酸(ALA);アラキジン酸(エイコサン酸としても知られる)およびステアリドン酸(SDA);パウリン酸、ゴンドイン酸、およびガドレイン酸;エルカ酸およびエイコサテトラエン酸(ETA)イコサペンタエン酸(EPA);ドコサペンタエン酸(DPA);、ならびにドコサヘキサエン酸(DHA)。表5は、種子脂肪酸含有量の現地缶分析を示す(全ての値はパーセントである;分析REML;全ての形質についてFpr<0.001Sig)。
【0235】
【表5】
【0236】
ステアリン酸として存在する、種子中の脂肪酸のパーセントは、GC-FIDにより分析されたように、8つの現場全てにわたって系統間で著しく変動した。現場平均の%のステアリン酸は、非常に小さな変動を示し、その範囲は1.6%から2.2%までであった。統計的には、トランスジェニック系統の%のステアリン酸は、現場全てにわたって、非トランスジェニック系統により示された範囲内で著しく変動した。
【0237】
オレイン酸およびシス-バクセン酸としての種子中の脂肪酸の%は、GC-FIDにより分析されたように、8つの現場全てにわたって、系統間で著しく変動した。現場平均の%のオレイン酸およびシス-バクセン酸は、51%から58%まで変動した。統計的には、トランスジェニック系統の%のオレイン酸およびシス-バクセン酸の変動は、現場全てにわたって、非トランスジェニック系統により示された範囲よりも著しく小さかった。この結果は、トランスジェニックインサートに関連し、市販の農学的生産または穀物生産に影響を与えない。
【0238】
リノール酸として存在する、種子中の脂肪酸の%は、GC-FIDを使用して分析されるように、8つの現場全てにわたって系統間で著しく変動した。現場当たりの平均%リノール酸は、13.4%から14.7%まで変動した。1つのT2イベント(植物B0050-027-18)に由来する遺伝子導入同胞系統の%リノール酸に関する変動は、全ての現場にわたる栽培品種、および他のイベント同胞に由来する同胞により示された範囲よりも著しく(P<0.05)小さかった。%リノール酸が著しく異なるのは、恐らく導入遺伝子の発現に関連する。%リノール酸の減少は、恐らくトランスジェニックインサートに関連するが、工業規模の農学的生産または穀物生産には影響を与えない。
【0239】
ALA、アラキジン酸、およびSDAとして存在する脂肪酸の%は、8つの現場全ての系統間で著しく変動した。%のALA、アラキジン酸、およびSDAの現場平均は、5%~11%の範囲であった。トランスジェニック系統に対する、%のALA、アラキジン酸、およびSDAの変動は、全ての実験にわたって、非遺伝子導入栽培品種により示された変動よりも著しく(P<0.05)大きかった。いくつかの現場でこの形質に関して見られた著しい差は、導入遺伝子の発現に関連した。この結果は、トランスジェニックインサートに関連し、市販の農学的生産または穀物生産に影響を与えない。高オレイン酸油特化栽培品種(Monola515 TT)は、他の栽培品種と比較されて著しく(P<0.05)低い%のALAを生産したが、これはFad遺伝子内のSNPが原因である。
【0240】
パウリン酸、ゴンドイン酸、およびガドレイン酸として存在する脂肪酸の%は、8つの現場全てにわたって系統間で著しく変動した。%のパウリン酸、ゴンドイン酸、およびガドレイン酸に関する現場平均は、2.0%から2.5%までの範囲であった。トランスジェニック系統に対する、%のパウリン酸、ゴンドイン酸、およびガドレイン酸の変動は、全ての実験にわたって、非遺伝子導入栽培品種により示された変動よりも著しく(P<0.05)大きかった。この結果は、トランスジェニックインサートに関連し、市販の農学的生産または穀物生産に影響を与えない。
【0241】
エルカ酸とETAとして存在する脂肪酸存在の%を5つの現場で記録したが、変動は概して0%ほどであった。この結果は、トランスジェニックインサートに関連し、農学的生産または穀物生産に商業的には影響を与えない。
【0242】
種子LC-ω3多不飽和脂肪酸(LC-PUFA)、具体的にはEPA、DPA、およびDHAを、各区画サンプルに対するパーセントとして算出し、LC PUFA=EPA%+DPA%+DHA%である、形質変量として分析した。予測されたDHAを、kg/haの単位として、各区画に対して算出し、形質変量として分析した:DHA kg/ha=(油%×0.01)×(DHA%×0.01)×穀物収穫量(t/ha)×1000。予測されたLC-PUFAを、kg/haの単位として、各区画に対して算出し、形質変量として分析した:DHA kg/ha=(油%×0.01)×(LC-PUFA%×0.01)×穀物収穫量(t/ha)×1000。
【0243】
EPAとしての脂肪酸の%は、8つの現場全てにわたって系統の間で著しく(P<0.05)変動した。トランスジェニック系統に対するその%の変動は、非遺伝子導入栽培品種により示された変動よりも著しく(P<0.05)大きかった。この結果は、トランスジェニックインサートに関連し、農学的生産または穀物生産に影響を与えず、実際のところ穀物の価値をさらに高くすることもある。
【0244】
DPAとしての脂肪酸の%は、全ての現場にわたって系統間で著しく(P<0.05)変動した。トランスジェニック系統に対する%の変動は、全ての現場にわたって、非遺伝子導入栽培品種により示された変動よりも著しく(P<0.05)大きかった。この結果は、トランスジェニックインサートに関連し、農学的生産または穀物生産に商業的に影響を与えないだろう。
【0245】
DHAとしての脂肪酸の%は、8つの現場全てにわたって系統間で著しく変動した。トランスジェニック系統のその%の変動は、全ての位置における、非遺伝子導入栽培品種により示された変動よりも著しく(P<0.05)大きかった。この結果は、トランスジェニックインサートに関連し、市販の農学的生産または穀物生産に影響を与えない。遺伝子導入同胞系統間の変動を、選択の基準として使用した。現場にわたる、エリートイベントNS-B50027-4と非遺伝子導入栽培品種とを比較したDHAのパーセントを表6に示す(分析REML;全ての位置についてF pr<0.001Sig)。
【0246】
【表6】
【0247】
kg/haとして表された予測されたDHAは、脂肪酸プロファイル、種子油%、および穀物収穫量に基づいて算出され、全ての現場にわたって系統間で著しく(P<0.05)変動した。トランスジェニック系統のその%の変動は、全ての位置における、非トランスジェニック系統により示された変動よりも著しく(P<0.05)大きかった。この結果は、トランスジェニックインサートに関連し、穀物の価値をさらに高くすること以外は、市販の農学的生産または穀物生産に影響を与えない。遺伝子導入同胞系統間の変動を、選択の基準として使用した。面積当たりの生産の単位(kg/ha)の点で、DHAの安定性は高かったが、これは、種子中で生産された種子油および%のDHAの現場間変動が小さかったためである。現場にわたる、エリートイベントNS-B50027-4と非遺伝子導入栽培品種とを比較する、DHAの予測された収穫量(kg/ha)を表7に示す(分析REML、全ての位置についてF pr<0.001Sig):
【0248】
【表7】
【0249】
種子LC-PUFAオメガ3である、パーセントのEPA、DPA、およびDHAに関して、パーセントのLC PUFAは、8つの現場全てにわたって系統の間で著しく(P<0.05)変動した。トランスジェニック系統に対する%の変動は、全ての実験にわたって、栽培品種により示された変動よりも著しく(P<0.05)大きかった。この結果は、トランスジェニックインサートに関連し、穀物の価値を増大させること以外は、農学的生産または商業的穀物生産に影響を与えない。遺伝子導入同胞系統間の変動を、選択の基準として使用した。非トランスジェニック系統において観察されるLC-PUFAのトレースレベルは、恐らく、花粉の流れ、種子の移動、またはGC-FIDのエラーに関連する。
【0250】
表8は、GC-FIDにより測定されるようなパーセントの値を示す(分析REML;全ての位置についてF pr<0.001Sig):
【0251】
【表8】
【0252】
kg/haとして表された予測されたLC-PUFAは、脂肪酸プロファイル、種子油%、および穀物収穫量に基づいて算出され、全ての現場にわたって処理系統間で著しく変動した。統計的には、トランスジェニック系統のその%の変動は、全ての実験にわたって、栽培品種により示された変動よりも著しく高かった。この結果は、トランスジェニックインサートに関連し、農学的生産または穀物生産に商業的には影響を与えない。遺伝子導入同胞系統間の変動を、選択の基準として使用した。栽培品種の種子のトレースレベルは、恐らく、花粉の流れ、種子の移動、またはGC-FIDのエラーに関連する。面積当たりの生産の単位(kg/ha)の点で、LC-PUFAの安定性は高いが、これは、種子中で生産された種子油および%のDHAの現場間変動が小さいからである。表9は予測されたkg/haのLC-PUFUを示す(全ての現場についてF pr<0.001)。
【0253】
【表9】
【0254】
NMRを使用して測定された種子含油量はまた、栽培現場の各々に関して表にされ、表10に示される。(単位はパーセント;分析REML;全ての現場に対して、F pr<0.001Sig):
【0255】
【表10】
【0256】
NS-B50027-4種子の脂肪酸含有量の更なる分析を表11に示す:
【0257】
【表11-1】
【0258】
【表11-2】
【0259】
表11のデータによって、LC-ω3脂肪酸に加えて、 NS-B50027-4の種子は、従来のキャノーラ変種よりも実質的に多くのω3 ALAも含んでいることが確認される。表5を参照されたい。ALAはLC-PUFAではないが、ω3脂肪酸である。表11におけるNS-B50027-4の種子油中のω3:ω6脂肪酸の比率は、約3.59~約6.12であり;従来のキャノーラ油のω3:ω6脂肪酸の比率は約0.5である。Patterson et al., J. Nutr. Metab. (2012)。
【0260】
表12は、オーストラリアの実験的な栽培で成長させられたエリートイベントNS-B50027-4の16世代からの種子の、パーセントのDHAおよびLC-PUFAに関するデータを示す。オーストラリアの更なる圃場試験では、9.6%のDHAおよび10.1%のLC PUFAを有するバルク種子を生成した:
【0261】
【表12】
【0262】
さらに、カナダで成長させる予定のNS-B50027-4の性能を、2016年に、2つの異なる現場において、制御された実験条件下で検定した。表13は、NS-B50027-4といくつかの非遺伝子導入キャノーラ系統を比較する農学的データおよび収穫量データを示す:
【0263】
【表13】
【0264】
キャノーラ系統NS-B50027-4は、実質的に均質であるので、そのような系統の種子を植え、 十分に単離された自家受粉条件または同胞受粉条件下で結果としてもたらされるキャノーラ植物を成長させ、そして 従来の農耕法を使用して、結果としてもたらされる種子を収穫することによって再生産できる。
【0265】
実施例2
Kompetitive Allele Specific PCR(KASP)アッセイ
キャノーラの導入遺伝子の表現型発現を、導入遺伝子カセット自体の構造、および植物ゲノムのそのインサート位置の両方により測定する:植物ゲノムの特定の位置における導入遺伝子の存在は、導入遺伝子の発現および植物の全体の表現型に影響を及ぼすこともある。植物ゲノムの組換えDNA分子の取り込みは、一般的には、細胞もしくは組織の形質転換(または別の遺伝子操作)に起因する。取り込みの特定の現場は、(標的とされた組み込みのプロセスを使用する場合)運任せか、予め決められていてもよい。遺伝子操作による植物における商業上関心をそそる形質の農業経済学的にまたは産業上成功した導入は、様々な因子に依存する長い処理である可能性がある。遺伝学的に形質転換された植物の実際の形質転換および再分化は、単に一連の選択工程における第1の工程であり、これらの工程は、圃場試験における広範な遺伝学的なキャラクタリゼーション、育種、および評価を含み、最終的には、エリートイベントの選択につながる。
【0266】
NS-B50027-4を、広範な選択育種および圃場試験の後に発育させ、少なくとも約7%-15%のDHAを生産するキャノーラ栽培品種をもたらす。遺伝子分析によって、NS-B50027-4がクロモソームA02上にトランスジェニックインサートを、クロモソームA05上に別のトランスジェニックインサートを有していたことが示された。A05上のインサートは、向かい合って整列された(RB-LB:LB-RB)、8つの遺伝子(Micpu-Δ6D、Pyrco-Δ5E、Pavsa-Δ5D、Picpa-ω3D、Pavsa-Δ4D、Lackl-Δ12D、Pyrco-Δ6E、およびPATマーカー)の2つの完全なT-DNAボーダーカセットを含む。クロモソームA02上のインサートは、4つの遺伝子であるMicpu-Δ6D、Pyrco-Δ5E、Pavsa-Δ5D、およびPicpa-ω3Dのセットから構成される。驚いたことに、分離交雑(segregation crossing)によって、約11%のDHA生産を達成するために、クロモソームA02およびクロモソームA05の両方の上にインサートが必要であったことが示された。
【0267】
8つの様々なBCからの約1200の後代、およびDHAキャノーラ遺伝子移入育種のF集団を、WoodlandのNuseed Molecular Labで開発されたLGC Octopure SOPに基づいてDNAを抽出するために使用した。簡潔に言えば、直径0.25インチの2つの凍結乾燥された葉ディスクを、GenoGrinderを用いて、8分間1400rpmで、300μLのDNA抽出バッファ(100mMのTris-HCl、PH8.0;25mMのEDTA、PH8.0;0.5%のSDS、1.5MのNaCl)中で細かく砕いた。55℃の水槽での45分間のインキュベーション、および4500rpmでの30分間の遠心分離の後に、50μLの上澄みを、磁気sbeadexビーズを用いて、100μLのLGC結合バッファに移動させた。結合と洗浄の後に、DNAを、LGC 80μLのDNA溶出バッファに溶出させた。
【0268】
NanoDrop 8000(Thermo Scientific)でDNA濃度を測定すると、5.0-20.0ng/μLの範囲であり、平均は10.0ng/μLであった。DNAサンプルを1×に希釈した。各反応のために、2.0μL(~5.0ng/μL)のゲノムDNAサンプル、およびプライマーを有する2μLのマスターミックスを、KASP遺伝子型判定のための384ウェルプレートに分配した。
【0269】
DHAキャノーラ遺伝子移入の集団からの後代に加えて、8つの対照を遺伝子型判定に含ませた。これらは、2つの非GMO対照(DwarfおよびAV Jade)、2つのヘミ接合性の対照(2.5ngのAv Jadeまたは2.5ngのDwarf + 2.5ngのB0050-027-18-20-12-19);2つのイベント陽性対照(B0050-027-18-20-12-19)、ならびに4つの非鋳型対照(NTC)、を含んだ。陽性対照(T5植物B0050-027-18-20-12-19)を、配列決定によるDHAキャノーライベントのキャラクタリゼーションのために、前もって使用した。
【0270】
KASPアッセイを、単純で、費用対効果の高く、ハイスループットで、柔軟な方法を提供し、8つの導入遺伝子および4つのNS B50027 4―特異的な接合を検出しモニタリングし、そして育種プログラムにおけるNS-B50027-4遺伝子移入をさらに容易とするために、開発した。KASP(商標)の遺伝子型判定化学、アッセイデザイン、遺伝子型判定、およびスコア化を、製造業者(LGC Ltd.,Middlesex,UK)の変更した標準プロトコルに従って実施した。
【0271】
LGC Kraken Workflow Managerへと配列情報をアップロードし、そのアッセイデザインプログラムであるPrimer Pickerを使用して、KASPアッセイを設計した。典型的なKASPアッセイは、2つの対立遺伝子特異的プライマー(遺伝子導入アレルのためのPrimer_Allele X、および非遺伝子導入野生型アレルのためのPrimer_Allele Y)と、1つの一般的な遺伝子座特異的プライマー(Primer_Common)とを含む。Primer_Allele Xは、蛍光性のFAMに関連し、Primer_Allele Yは、蛍光性のHEXに関連する。
【0272】
接合を標的とするほとんどのアッセイは、このタイプの3つのプライマーアッセイ(表14)だった。DHAキャノーラを検出するために、上記された従来の3つのプライマーのアッセイに加えて、4つのプライマーのアッセイも開発した。4つのプライマーのアッセイは、反応において、遺伝子導入アレルに特異的なPrimer_Allele X、野生型アレルに特異的なPrimer_Allele Y、オメガ3遺伝子に特異的なPrimer_Common、および野生型に特異的なPrimer_Common 2を有する。オメガ3カセット中の8つの遺伝子を検出するために、2つのプライマーである、Primer_Allele XおよびPrimer_Commonだけを、各アッセイ(2つのプライマーのアッセイ)に使用し;両方のプライマーはオメガ3遺伝子に特異的であった(表14):
【0273】
【表14-1】
【0274】
【表14-2】
【0275】
KASP遺伝子型判定システムは、以下の2つの成分を必要とする:アッセイミックスおよびマスターミックス。アッセイミックスは必要とされたプライマーの混合物であり、マスターミックスは、PCRバッファと、ユニバーサル蛍光性レポーティングシステムと、Taqポリメラーゼとを含む、他の必要とされた構成要素の全てを含む。
【0276】
2.0μL(10.0ng)のゲノムDNA、 2.0μLの2×KASPマスターミックス、および 0.06μLのアッセイ(プライマー)ミックスから成る、4.0μLの体積中でKASP反応を実行した。アッセイ(プライマー)ミックスは、2つのプライマーのアッセイのためには、12μMのアレルに特異的なPrimer_Allele X、および12μMのPrimer_Commonの組み合わせ、3つのプライマーのアッセイのためには、12μMのアレルに特異的なPrimer_Allele X、12μMのアレルに特異的なPrimer_Allele Y、および30μMのPrimer_Commonの組み合わせ、ならびに4つのプライマーのアッセイのためには、12μMのアレルに特異的なPrimer_Allele X、12μMのアレルに特異的なPrimer_Allele Y、12μMのPrimer_Common、および12μMのPrimer_Common2の組み合わせである。
【0277】
それらの反応を、以下のサイクリングパラメーターを用いて、LGC Hydrocycler16中384ウェルプレートにおいて実行した:15分間94℃で1サイクル、その後、30秒間94℃と、60秒間64℃-57℃(1サイクル当たり1.0℃低下)との8サイクル、そしてその後、30秒間94℃と、60秒間57℃との30サイクル。透明な遺伝子型判定クラスタが得られていない場合、そのプレートをさらに、30秒間94℃と60秒間57℃との追加の3サイクルで熱的サイクリングに晒した。
【0278】
KASP反応が完了した後に、遺伝子導入アレルをPrimer_Allele XによってFAMで標識し、非遺伝子導入野生型アレルをPrimer_Allele YによってHEXで標識した。蛍光シグナルを、PheraStar microplate reader中で、FAMのためには485nmの励起波長および520nmの発光波長を、 HEXのためには535nm/556nmを読み取った。LGC Kraken databaseを使用して、データを分析した。
【0279】
遺伝子特異的優性(Gene-specific, dominant)(NBN01-NBN08;1アッセイ/遺伝子)を、構成物カセット中の8つの遺伝子を検出するために開発した。A02上のインサートの上流(NBN57、NBN68、NBN58、NBN85およびNBN14)ならびに下流(NBN16、NBN62およびNBN64)の接合部、および、A05上のインサートの上流(NBN52、NBN51、NBN09、NBN50、NBN48およびNBN10)ならびに下流(NBN83、NBN82、NBN84、NBN66、NBN41およびNBN43)の接合部を標的とした、インサート特異的共優性KASPアッセイを、NS-B50027-4遺伝子移入集団からの1200の後代を用いて開発し、実証した(表14)。10,000を超えるサンプルの遺伝子型をこれらのマーカーを用いて同定した。
【0280】
DHAキャノーライベントNS-B50027-4の2つのインサートの、8つの遺伝子および4つの接合部を標的とする、Thirty Kompetitive Allele Specific PCR(KASP)アッセイを開発および実証した。これらのアッセイは、検出し、かつ育種プログラム中のNS-B50027-4をモニタリングするために単純で、費用対効果の高く、ハイスループットで、柔軟なアプローチを提示した。
【0281】
実施例3
NS-B50027-4と非遺伝子導入キャノーラとの詳細な比較
2014-2016年の実験用畑区画におけるキャノーラ種子生産からのデータを表した。DHAの範囲、およびEPA+DPA+DHAの合計は、いくつかの検定圃の観察に基づいた。NS-B50027-4および非遺伝子導入「対照(Control)」キャノーラの両方の主要な脂肪酸の含有量は、成長条件に応じていくつかのパーセントポイントにより変動することもある。以下の表15では、「0.0」は、成分の量を正確に測定するのに必要な量未満として識別される微量を指すこともある:
【0282】
【表15】
【0283】
NS-B50027-4の実験的な栽培から収穫された種子を粉砕し、冷搾によって油を得た。親の同質遺伝子系統から収穫された種子であるAV Jadeを同様に処理し、各油の含有量を表16で示されるように比較した:
【0284】
【表16-1】
【0285】
【表16-2】
【0286】
ブダペスト条約に従って、出願人は、10801 University Blvd., Manassas, Va., 20110-2209 U.S.A.にあるAmerican Type Culture Collection(ATCC登録商標)に、キャノーラNS-B50027-4の少なくとも2500粒の種子を、受託番号PTA123186で寄託し、ATCC(登録商標)が種子の生存を確認した。本出願の係属中に、本発明へのアクセスが、求めに応じて長官に付与される可能性があり;公衆に対する利用可能性に際する全ての制限は、特許付与時に取り消しできないように取り消され;系統NS-B50027-4の寄託は、公共の貯蔵場であるATCC貯蔵場において、30年の期間、最近の依頼の5年の期間、または本特許の有効期間のうちのいずれか長い期間維持され;その期間に育成不可能になれば交換される。寄託の時点で種子の生産能力を検定した。出願人は、37 C.F.R. §§ 1.801-1.809の要件を全て満たした。出願人は、ATCCからの寄託資料の利用可能性に対する制約を加えないが;しかしながら、出願人は、生体物質の運搬または商業目的のその輸送に対する法律により課されたいかなる制限も放棄する権限がない。出願人は、本特許の下、または植物新種保護法(7 U.S.C. § 2321 et seq.)の下で許可されたその権利の侵害を放棄しない。
【0287】
明確性と理解の目的のために、例示および例として前述の実施形態をある程度詳細に記載したが、単一遺伝子の改変および突然変異、ソマクローン変異体、本近交系の植物の大規模な集団からの選択された変異個体、ならびに同種のものなどの特定の変更および修正が、もっぱら添付の請求項により限定された本発明の範囲内で実施されることもあることは、当業者に明白である。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図6-4】
図6-5】
図6-6】
図6-7】
図6-8】
図6-9】
図6-10】
図6-11】
図6-12】
【配列表】
0007086329000001.app