(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】無停電電源システム更新方法
(51)【国際特許分類】
H02J 9/06 20060101AFI20220613BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
H02J9/06 120
H02J3/38
(21)【出願番号】P 2018049604
(22)【出願日】2018-03-16
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】浦野 拓也
(72)【発明者】
【氏名】日置 一太郎
(72)【発明者】
【氏名】柏木 克巳
【審査官】原 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-288428(JP,A)
【文献】特開2006-197709(JP,A)
【文献】国際公開第2008/155968(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00-7/98
H02J 3/00-7/12
7/34-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無停電装置を更新する無停電電源システム更新方法であって、
設置スペースに設置された既設の無停電電源装置より少ない台数であり、負荷への電力供給を充足する台数である第1の新設の無停電電源装置を、前記既設の無停電電源装置と電気的に並列接続となるように、仮設スペースに設置する第1の手順と、
前記第1の新設の無停電電源装置から負荷へ電力の供給を行い、前記既設の無停電電源装置を前記設置スペースから撤去する第2の手順と、
前記第1の手順で仮設スペースに設置された前記第1の新設の無停電電源装置と電気的に並列接続となるように、第2の新設の無停電電源装置を前記設置スペースに設置する第3の手順と、
前記第3の手順で前記設置スペースに設置された前記第2の新設の無停電電源装置と電気的に並列接続となるように、仮設スペースに設置された前記第1の新設の無停電電源装置のうち少なくとも1台を設置スペースに移設する第4の手順と、
を有する無停電電源システム更新方法。
【請求項2】
仮設スペースに設置された全ての前記第1の新設の無停電電源装置が、設置スペースに移設するまで、前記第4の手順が繰り返される、
請求項1に記載の無停電電源システム更新方法。
【請求項3】
前記第2の手順の前に、商用電源にて負荷へ電力を供給し、前記既設の無停電電源装置から負荷への電力の供給を停止する手順を有する、
請求項1または2に記載の無停電電源システム更新方法。
【請求項4】
前記第3の手順にて設置される第2の新設の無停電電源装置は、単数または複数である
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無停電電源システム更新方法。
【請求項5】
前記第4の手順にて移設される第1の新設の無停電電源装置は、単数または複数である
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の無停電電源システム更新方法。
【請求項6】
複数の無停電電源装置から出力電力および電池残量に関するデータを受信する受信手順と、
受信した前記出力電力に基づき、複数の前記無停電電源装置の出力電力の総和電力を算出する算出手順と、
受信した前記電池残量に基づき、複数の前記無停電電源装置のうち指定された残置する無停電電源装置の前記電池残量で、算出した前記総和電力を供給することができる供給可能時間を算出する演算手順と、
を有する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の無停電電源システム更新方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、電力系統の停電時に電力の供給を行う無停電電源システムの更新方法および更新方法に対応した、無停電電源システム、無停電電源用監視装置、無停電電源システム用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
放送局の放送設備、インターネットデータセンター、銀行、証券会社のオンラインシステムなどの負荷設備には、電源として、定電圧、定周波数の電力が継続して供給されることが必要とされる。近年、情報インフラの重要性が高まり、無停電にて動作させる負荷設備が数多く普及している。このため、負荷設備に無停電にて電源供給を行う無停電電源システムの需要が高まっている。
【0003】
商用電源にかかる電力が停止した場合、無停電電源システムは、蓄電池が放電した直流電力を交流電力に変換し、交流電力を無瞬断で負荷設備に供給する。このような無停電電源システムは、供給された交流電力を交流直流変換する交流直流変換部と、交流直流変換部から供給された直流電力により充電される蓄電池と、蓄電池から放電された直流電力を直流交流変換し交流電力を出力する直流交流変換部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような無停電電源システムは、老朽化に伴うシステムの更新や故障に起因するシステムの更新が必要とされる。無停電電源システムは、負荷に停電なく電力を供給するためのシステムであり、システムの更新時にも停電することは望ましくない。
【0006】
一方、無停電電源システムは、複数台の無停電電源装置により構成されている場合が多い。システムの更新の対象となる無停電電源装置は老朽化しており、一般的に、新設される無停電電源装置に比べ、出力波形のひずみが大きい。このため、新設される無停電電源装置と更新の対象となる無停電電源装置とを連携して動作させた場合、両装置の出力波形が異なるため、両装置の出力間に不要な電流が流れる可能性があった。このような不要な電流は、発熱等の不都合を招く恐れがあるとの問題点があった。
【0007】
このため、従来、無停電電源システムを更新する場合、更新の対象となる無停電電源装置と同数の新設無停電電源装置を準備し、一斉に新設無停電電源装置に切替える作業が行われていた。しかしながら、一斉に新設無停電電源装置に切替える場合、新設無停電電源装置を設置する十分な設置スペースが確保できない場合があるとの問題点があった。
【0008】
本実施形態は、上記問題点を鑑み、十分な設置スペースが確保できない場合でも更新することができる無停電電源システムの更新方法および更新方法に対応した、無停電電源システム、無停電電源用監視装置、無停電電源システム用プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態の無停電電源システム更新方法は、次のような手順を有することを特徴とする。
(1)設置スペースに設置された既設の無停電電源装置より少ない台数であり、負荷への電力供給を充足する台数である第1の新設の無停電電源装置を、既設の無停電電源装置と電気的に並列接続となるように、仮設スペースに設置する第1の手順。
(2)前記新設の無停電電源装置から負荷へ電力の供給を行い、前記既設の無停電電源装置を前記設置スペースから撤去する第2の手順。
(3)前記第1の手順で仮設スペースに設置された第1の新設の無停電電源装置と電気的に並列接続となるように、第2の新設の無停電電源装置を設置スペースに設置する第3の手順。
(4)前記第3の手順で設置スペースに設置された第2の新設の無停電電源装置と電気的に並列接続となるように、仮設スペースに設置された前記第1の新設の無停電電源装置のうち少なくとも1台を設置スペースに移設する第4の手順。
【0010】
また、上記の無停電電源システム更新方法に対応した無停電電源システム、無停電電源用監視装置、無停電電源システム用プログラムも本実施形態に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態にかかる無停電電源システムを示す図
【
図2】第1実施形態にかかる無停電電源装置の構成を示す図
【
図3】第1実施形態にかかる監視装置の構成を示す図
【
図4】第1実施形態にかかる無停電電源システム更新方法の手順を示す図
【
図5】第1実施形態にかかる監視措置のプログラムフローを示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1~3を参照して本実施形態の一例としての無停電電源システム1について説明する。
【0013】
(1)無停電電源システム1の全体構成
本無停電電源システム1は、複数の無停電電源装置2、監視装置5を有する。一例として本無停電電源システム1は、3台の無停電電源装置2a、2b、2cおよび監視装置5を有する。本実施形態において、既設の無停電電源装置2d、2e、2fが新設の無停電電源装置2a、2b、2cに更新される場合について説明する。無停電電源装置2b、2cは、請求項における第1の新設の無停電電源装置に相当し、無停電電源装置2aは、請求項における第2の新設の無停電電源装置に相当する。
【0014】
本実施形態において、同一構成の装置や部材が複数ある場合にはそれらについて同一の番号を付して説明を行い、また、同一構成の個々の装置や部材についてそれぞれを説明する場合に、共通する番号にアルファベット(小文字)の添え字を付けることで区別する。本実施形態における、3台の新設の無停電電源装置2a、2b、2cおよび3台の既設の無停電電源装置2d、2e、2fは、同じ構成を有する。
【0015】
本無停電電源システム1において、以下のデータが送受信、作成、記憶される。
出力電力W:無停電電源装置2から出力される電力に関するデータ
必要供給電力WT:負荷8に供給が必要とされる電力
電池残量R:蓄電池22の残量に関するデータ
供給可能時間TA:無停電電源装置2の蓄電池22から電力供給ができる供給可能時間
予め設定された時間TS
【0016】
無停電電源装置2は、電力系統9に接続される。電力系統9は、商用電源92に接続される。無停電電源装置2は、電力系統9の電力供給線91を介し、商用電源92から商用電力の供給を受ける。無停電電源装置2から出力された交流電力は、負荷8に供給される。
【0017】
更新前の既設の無停電電源装置2d、2e、2fは、互いに電気的に並列に接続され、それぞれ入力側が電力系統9の電力供給線91に、出力側が負荷8に電気的に接続される。また、更新完了後の新設の無停電電源装置2a、2b、2cは、互いに電気的に並列に接続され、それぞれ入力側が電力系統9の電力供給線91に、出力側が負荷8に電気的に接続される。
【0018】
(2)無停電電源装置2の構成
無停電電源装置2の構成を
図2に示す。無停電電源装置2は、電力供給線91から供給された交流電力を直流電力に変換し蓄電池を充電し、蓄電池から放電された直流電力を交流電力に変換し、負荷8に出力する電源装置である。無停電電源装置2は、交流直流変換部21、蓄電池22、直流交流変換部23、バイパス回路24、入力端子25、補助入力端子26、出力端子27、測定部31、検出部32、送受信部33を有する。無停電電源装置2は、電力需要家の配電室等に設置される。
【0019】
入力端子25は、電力供給線91に接続され、交流電力が供給される。出力端子27は、負荷8が接続され、負荷8には、無停電電源装置2から交流電力が供給される。補助入力端子26は、バックアップ用の交流電力が供給される。
【0020】
(交流直流変換部21)
交流直流変換部21は、交流電力を直流電力に変換するコンバータにより構成される。交流直流変換部21を構成するコンバータは、トランジスタ等のスイッチング素子を有し、このスイッチング素子をスイッチングすることにより、交流電力を直流電力に変換する。
【0021】
交流直流変換部21は、蓄電池22の近傍に設置される。交流直流変換部21は、交流側が入力端子25を介し電力供給線91に、直流側が蓄電池22および直流交流変換部23に接続される。
【0022】
交流直流変換部21は、入力端子25を介し電力供給線91から供給された交流電力を直流電力に変換し、直流電力を蓄電池22、直流交流変換部23に供給する。
【0023】
(蓄電池22)
蓄電池22は、供給された直流電力にかかる電荷を充電し、充電した電荷を直流電力として放電する充電可能な蓄電装置である。蓄電池22は、リチウム2次電池のような充電可能な電池が複数組合され構成される。蓄電池22は、交流直流変換部21および直流交流変換部23の近傍に設置される。蓄電池22は、交流直流変換部21および直流交流変換部23に接続される。
【0024】
蓄電池22は、交流直流変換部21により交流直流変換された直流電力により充電される。また、蓄電池22から放電された直流電力は、直流交流変換部23により直流交流変換され、交流電力として出力端子27から出力され、負荷8に供給される。
【0025】
(直流交流変換部23)
直流交流変換部23は、直流電力を交流電力に変換するインバータにより構成される。直流交流変換部23を構成するインバータは、トランジスタ等のスイッチング素子を有し、このスイッチング素子をスイッチングすることにより、直流電力を交流電力に変換する。
【0026】
直流交流変換部23は、蓄電池22の近傍に設置される。直流交流変換部23は、交流側が出力端子27に、直流側が蓄電池22および交流直流変換部21に接続される。直流交流変換部23は、蓄電池22から放電された直流電力を交流電力に変換し、交流電力を出力端子27に出力する。出力端子27に出力された交流電力は負荷8に供給される。
【0027】
(バイパス回路24)
バイパス回路24は、電流の開閉を行うコンタクタ、リレーまたはパワーエレクトロニクス半導体素子のような開閉素子により構成される。バイパス回路24は、無停電電源装置2を構成する筐体の内部に配置される。バイパス回路24は、一方が補助入力端子26に、他方が出力端子27に接続される。
【0028】
バイパス回路24は、作業者の手動により、または事故発生時に制御回路(図中不指示)により、開路閉路を制御される。バイパス回路24は、補助入力端子26から供給された交流電力を、閉路状態時に出力端子27に供給する。出力端子27に供給された交流電力は、負荷8に供給される。
【0029】
(測定部31)
測定部31は、電気量測定器とアナログデジタル変換器が組み合わされた回路により構成される。測定部31は、無停電電源装置2を構成する筐体の内部であり、直流交流変換部23の近傍に配置される。測定部31は、直流交流変換部23と電気的に接続され、直流交流変換部23の出力電力を測定する。測定部31は、測定した直流交流変換部23の出力電力を出力電力Wとして送受信部33に出力する。
【0030】
(検出部32)
検出部32は、電気量測定器とアナログデジタル変換器が組み合わされた回路により構成される。検出部32は、無停電電源装置2を構成する筐体の内部であり、蓄電池22の近傍に配置される。検出部32は、蓄電池22と電気的に接続され、蓄電池22の電池残量を検出する。検出部32は、検出した蓄電池22の電池残量を電池残量Rとして送受信部33に出力する。
【0031】
(送受信部33)
送受信部33は、ローカル通信用の電文送受信回路等により構成される。送受信部33は、入力側が測定部31、検出部32に、出力側が監視装置5に接続される。送受信部33は、測定部31から送信された出力電力W、検出部32から送信された電池残量Rを、監視装置5に送信する。
【0032】
新設の無停電電源装置2a、2b、2cの送受信部33a、33b、33cは、それぞれ出力電力Wa、Wb、Wcおよび電池残量Ra、Rb、Rcを監視装置5に送信する。既設の無停電電源装置2d、2e、2fの送受信部33d、33e、33fは、それぞれ出力電力Wd、We、Wfを監視装置5に送信する。
【0033】
(3)監視装置5の構成
監視装置5の構成を
図3に示す。監視装置5は、パーソナルコンピュータ等により構成される。監視装置5は、送受信部51、入力部52、表示部53、警報出力部54、送受信部55、演算部56を有する。監視装置5は、電力需要家の電力管理等に設置される。または、監視装置5は、複数の無停電電源装置2のうちの一つに配置されていてもよい。
【0034】
監視装置5は、受信した出力電力W、電池残量Rに基づき、複数の無停電電源装置2a、2b、2cまたは無停電電源装置2d、2e、2fのうち指定された残置する無停電電源装置2の電池残量Rで、電力を供給することができる供給可能時間TAを算出する。
【0035】
(送受信部51)
送受信部51は、パーソナルコンピュータの通信ポート等により構成される。送受信部51は、複数の無停電電源装置2(2a~2f)の送受信部33(33a~33f)に接続される。送受信部51は、ローカル通信線を介し無停電電源装置2の送受信部33から、出力電力W、電池残量Rを受信する。送受信部51の受信動作は、演算部56により制御される。
【0036】
(入力部52)
入力部52は、キーボードやマウス等の入力装置にCRT等の表示装置が組み合わされた装置により構成される。入力部52は、作業者により操作される。電力の出力を停止する無停電電源装置2が、作業者により入力部52に入力される。または、電力の出力を継続する無停電電源装置2が、作業者により入力部52に入力されるようにしてもよい。これにより複数の無停電電源装置2のうち、電力の出力を継続する無停電電源装置2が指定される。
【0037】
(表示部53)
表示部53は、液晶パネルのような表示装置にて構成される。表示部53は、複数の無停電電源装置2のうち指定された無停電電源装置2の電池残量で、電力を供給することができる供給可能時間TAを表示する。表示部53は、演算部56により、表示が制御される。
【0038】
(警報出力部54)
警報出力部54は、警報音、警報表示により警報を出力する警報装置により構成される。警報出力部54は、供給可能時間TAが予め設定された時間TS以下である場合に警報を出力する。
【0039】
(送受信部55)
送受信部55は、パーソナルコンピュータの通信ポート等により構成される。送受信部55は、インターネット等の通信回線(図中不示)や、スマートフォンの通信回線に接続される。送受信部55は、通信回線を介し他のコンピュータ、スマートフォン等の機器と通信を行う。送受信部55は、供給可能時間TA、および供給可能時間TAが予め設定された時間TS以下である場合の警報を送信する。送受信部55の送受信動作は、演算部56により制御される。
【0040】
(演算部56)
演算部56は、監視装置5を構成するパーソナルコンピュータのCPU等により構成される。演算部56は、後述するコンピュータプログラムを内蔵する。演算部56は、送受信部51、入力部52、表示部53、警報出力部54、送受信部55に接続される。演算部56は、以下の演算および制御を行う。
【0041】
(イ)送受信部51に対する制御
演算部56は、送受信部51を制御し、ローカル通信線を介し複数の無停電電源装置2の送受信部33から、出力電力W、電池残量Rを受信する。
【0042】
(ロ)入力部52に対する制御
演算部56は、入力部52を制御し、作業者により入力された電力の出力を停止する無停電電源装置2、または電力の出力を継続する無停電電源装置2に関する情報を受信する。
【0043】
(ハ)表示部53に対する制御
演算部56は、表示部53を制御し、複数の無停電電源装置2のうち指定された無停電電源装置2の電池残量で、電力を供給することができる供給可能時間TAを表示させる。
【0044】
(ニ)警報出力部54に対する制御
演算部56は、警報出力部54を制御し、供給可能時間TAが予め設定された時間TS以下である場合に警報を出力する。警報は警報音、警報表示により出力される。
【0045】
(ホ)送受信部55に対する制御
演算部56は、送受信部55を制御し、インターネット通信回線、スマートフォンの通信回線等を介し接続されたコンピュータ、スマートフォン等の機器との通信を行う。演算部56は、送受信部55を制御し、供給可能時間TA、および供給可能時間TAが予め設定された時間TS以下である場合の警報を送信する。
【0046】
[1-2.作用]
次に、本実施形態の無停電電源システム更新方法および無停電電源システム1の動作の概要を、
図1~5に基づき説明する。
【0047】
[A.無停電電源システム更新方法]
最初に無停電電源システム更新方法について説明する。一例として、3台の既設の無停電電源装置2d、2e、2fを新設の無停電電源装置2a、2b、2cに更新する場合について説明する。3台の既設の無停電電源装置2d、2e、2fは、
図1に示すように新設の無停電電源装置2a、2b、2cに更新される。3台の既設の無停電電源装置2d、2e、2fを、3台の新設の無停電電源装置2a、2b、2cに更新する手順を
図4に示す。無停電電源システム1は、下記の手順1~5の手順にて更新される。
【0048】
(更新前)
3台の既設の無停電電源装置2d、2e、2fは、
図4に示すように更新前において事務所のフロア等の設置スペースに設置されている。3台の既設の無停電電源装置2d、2e、2fは、それぞれ出力電力Wd、We、Wfの電力を負荷8に対し出力している。3台の既設の無停電電源装置2d、2e、2fの入力端子25d、25e、25fは、電力供給線91を介し商用電源92に接続されている。また、3台の既設の無停電電源装置2d、2e、2fの出力端子27d、27e、27fは、スイッチボックス(図中不示)を介し負荷8に電力を供給するように接続されている。
【0049】
(手順1:2台の新設の無停電電源装置2b、2cを設置)
図4の手順1に示すように2台の新設の無停電電源装置2b、2cを設置する。2台の新設の無停電電源装置2b、2cは、事務所の屋上等に設けられたプレハブ等の仮設スペースに設置される。2台の新設の無停電電源装置2b、2cは、3台の既設の無停電電源装置2d、2e、2fと電気的に並列に接続される。2台の新設の無停電電源装置2b、2cの入力端子25b、25c、補助入力端子26b、26cは、電力供給線91を介し商用電源92に接続される。また、2台の新設の無停電電源装置2b、2cの出力端子27b、27cは、スイッチボックス(図中不示)を介し負荷8に電力を供給するように接続される。
【0050】
2台の新設の無停電電源装置2b、2c内に設けられたにバイパス回路24b、24cは、閉路状態とされている。バイパス回路24b、24cは作業者により手動にて閉路状態とされる。手順1の段階では、バイパス回路24b、24cを介し、商用電源92からの電力が負荷8に供給される。手順1の段階では、無停電電源装置2bの直流交流変換部23b、無停電電源装置2cの直流交流変換部23cから出力される電力は、負荷8に供給されない。なお、バイパス回路24b、24cは、無停電電源装置2b、2cに故障が発生した場合、故障を検出した制御回路(図中不示)により開路状態とされる。
【0051】
3台の既設の無停電電源装置2d、2e、2fは、旧型の機種である可能性が高い。また3台の既設の無停電電源装置2d、2e、2fは、新設の無停電電源装置2b、2cと異なる製造業者により製造されたものである可能性もある。
【0052】
したがって、2台の新設の無停電電源装置2b、2cの直流交流変換部23b、23cから出力される電圧波形と3台の既設の無停電電源装置2d、2e、2fの直流交流変換部23d、23e、23fから出力される電圧波形は異なる波形である可能性がある。このため、3台の既設の無停電電源装置2d、2e、2fが電力を出力している時に、電気的に並列に接続された2台の新設の無停電電源装置2b、2cが直流交流変換部23b、23cから電力を出力した場合、3台の既設の無停電電源装置2d、2e、2fと2台の新設の無停電電源装置2b、2cとの間で出力コンフリフトが発生し、両者間に不要の電流が発生する可能性がある。
【0053】
このような不要電流は、発熱の原因となり不都合である。不要電流の発生を避けるため、手順1の段階では、2台の新設の無停電電源装置2b、2cの直流交流変換部23b、23cから出力された電力ではなく、商用電源92からの電力が、バイパス回路24b、24cを介し、負荷8に供給される。
【0054】
新設の無停電電源装置2b、2cの蓄電池22b、22cの電池残量は、それぞれ電池残量Rb、Rcである。
【0055】
(手順2:3台の既設の無停電電源装置2d、2e、2fを撤去)
図4の手順2に示すように3台の既設の無停電電源装置2d、2e、2fを撤去する。3台の既設の無停電電源装置2d、2e、2fは、事務所のフロア等の設置スペースから撤去される。これにより、事務所のフロア等の設置スペースは空スペースとなる。
【0056】
3台の既設の無停電電源装置2d、2e、2fの撤去の後、新設の無停電電源装置2b、2cの直流交流変換部23b、23cから負荷8に電力を供給させる。その後、2台の新設の無停電電源装置2b、2c内に設けられたにバイパス回路24b、24cを開路状態とし、バイパス回路24b、24cを介した負荷8への電力の供給を停止する。バイパス回路24b、24cは作業者により手動にて開路状態とされる。
【0057】
新設の無停電電源装置2b、2cの直流交流変換部23b、23cはそれぞれ出力電力Wb、Wcの電力を出力する。負荷8には、出力電力Wb+Wcの電力が供給される。
【0058】
(手順3:新設の無停電電源装置2aを設置)
図4の手順3に示すように1台の新設の無停電電源装置2aを設置する。1台の新設の無停電電源装置2aは、手順2で空スペースとなった事務所のフロア等の設置スペースに設置される。新設の無停電電源装置2aは、2台の新設の無停電電源装置2b、2cと電気的に並列に接続される。新設の無停電電源装置2aの入力端子25aは、電力供給線91を介し商用電源92に接続される。また、新設の無停電電源装置2aの出力端子27aは、スイッチボックス(図中不示)を介し負荷8に電力を供給するように接続される。
【0059】
無停電電源装置2aの直流交流変換部23aは、出力電力Waの電力を出力する。負荷8には、出力電力Wa+Wb+Wcの電力が供給される。また、無停電電源装置2aの蓄電池22aの電池残量は、電池残量Raである。
【0060】
(手順4:無停電電源装置2bを移設)
図4の手順4に示すように1台の無停電電源装置2bを移設する。手順2で仮設スペースに設置された無停電電源装置2bは、手順2で空スペースとなった事務所のフロア等の設置スペースに移設される。
【0061】
無停電電源装置2bは、2台の無停電電源装置2a、2cと電気的に並列に接続される。無停電電源装置2bの入力端子25bは、電力供給線91を介し商用電源92に接続される。また、無停電電源装置2bの出力端子27bは、スイッチボックス(図中不示)を介し負荷8に電力を供給するように接続される。
【0062】
無停電電源装置2bの直流交流変換部23bは、出力電力Wbの電力を出力する。負荷8には、出力電力Wa+Wb+Wcの電力が供給される。また、無停電電源装置2bの蓄電池22bの電池残量は、電池残量Rbである。
【0063】
(手順5:無停電電源装置2cを移設)
図4の手順5に示すように1台の無停電電源装置2cを移設する。手順2で仮設スペースに設置された無停電電源装置2cは、手順2で空スペースとなった事務所のフロア等の設置スペースに移設される。
【0064】
無停電電源装置2cは、2台の無停電電源装置2a、2bと電気的に並列に接続される。無停電電源装置2cの入力端子25cは、電力供給線91を介し商用電源92に接続される。また、無停電電源装置2cの出力端子27cは、スイッチボックス(図中不示)を介し負荷8に電力を供給するように接続される。
【0065】
無停電電源装置2cの直流交流変換部23cは、出力電力Wcの電力を出力する。負荷8には、出力電力Wa+Wb+Wcの電力が供給される。また、無停電電源装置2cの蓄電池22cの電池残量は、電池残量Rcである。
【0066】
(完了)
以上で、3台の既設の無停電電源装置2d、2e、2fを新設の無停電電源装置2a、2b、2cに更新する作業は完了となる。無停電電源装置2を更新する作業は、作業者の人出または作業ロボットにより行われる。完了時の3台の新設の無停電電源装置2a、2b、2cを
図4の完了に示す。上記の手順で3台の既設の無停電電源装置2d、2e、2fは、3台の新設の無停電電源装置2a、2b、2cに更新される。
【0067】
[B.無停電電源システム1の動作]
次に無停電電源システム1の動作について説明する。無停電電源装置2は、電力供給線91に停電が発生した場合、蓄電池22に充電された直流電力を、直流交流変換部23にて交流電力に変換し、負荷8に供給する。無停電電源装置2は、電力供給線91に停電が発生していない場合、交流直流変換部21から出力された直流電力を、直流交流変換部23にて交流電力に変換し、負荷8に供給する。
【0068】
無停電電源装置2は、送受信部33から、直流交流変換部23から出力されている現在の出力電力W、および現在の蓄電池22の電池残量Rを、予め設定された一定時間間隔で監視装置5に送信する。無停電電源装置2a、2b、2cの送受信部33a、33b、33cは、それぞれ出力電力Wa、Wb、Wcおよび電池残量Ra、Rb、Rcを監視装置5に送信する。
【0069】
監視装置5は、無停電電源装置2から出力電力W、電池残量Rを受信する。無停電電源装置2は、出力電力W、電池残量Rを、予め設定された一定時間間隔で監視装置5に送信しており、監視装置5は、無停電電源装置2から送信された出力電力W、電池残量Rに基づき現段階で負荷8に対し電力供給を行っている無停電電源装置2を識別する。
【0070】
監視装置5は、受信した出力電力W、電池残量Rに基づき、無停電電源システムの更新を行う作業時に、複数の無停電電源装置2のうち指定された残置する無停電電源装置2の電池残量Rで、負荷8に対し、蓄電池22により電力を供給することができる供給可能時間TAを算出する。作業者は、監視装置5により算出された供給可能時間TAを参照し、移設に伴う無停電電源装置2の負荷8への電力供給の停止が可能であるか判断する。
【0071】
また、監視装置5は、供給可能時間TAが予め設定された時間TS以下である場合に、警報出力部54から警報を出力する。作業者は、監視装置5から出力された警報により、無停電電源装置2a、2cの蓄電池22a、22bの残量が少ないことを認識する。
【0072】
監視装置5の演算部56は、以下の処理を実行する。監視装置5の演算部56は、
図5に示すプログラムに従って動作を行う。
図5に示すプログラムは、判断部5の演算部56に内蔵される。
【0073】
図5に示すプログラムは、無停電電源システムの更新を行う作業開始時に、作業者によりプログラムの起動を指示する起動コマンドが、入力部52に入力され起動する。プログラムの起動後、
図5に示すプログラムは、監視装置5の演算部56により、一定周期ごとに繰り返し継続的に実行される。
【0074】
以下に、一例として上記の無停電電源システム更新方法の手順4を行う場合の、監視装置5の動作について説明する。手順4における無停電電源装置2bの移設を行う前に、作業者により電力の出力を継続する無停電電源装置2を指定するコマンドが、入力部52に入力される。電力の出力を継続する無停電電源装置2を指定するコマンドは、電力の出力を継続する無停電電源装置2a、2cが入力部52に入力されるものであってもよいし、電力の出力を停止する無停電電源装置2bが入力部52に入力されるものであってもよい。
【0075】
(ステップS01:電力の出力を継続する無停電電源装置2を識別する)
演算部56は、入力部52に入力された電力の出力を継続する無停電電源装置2を指定するコマンドに基づき、電力の出力を継続する無停電電源装置2および電力の出力を停止する無停電電源装置2を識別する。
【0076】
入力部52には、電力の出力を継続する無停電電源装置2a、2c、または電力の出力を停止する無停電電源装置2bが入力される。プログラムは一定周期ごとに繰り返し継続的に実行されており、監視装置5は、一定時間間隔で無停電電源装置2から出力電力W、電池残量Rを受信している。
【0077】
演算部56は、無停電電源装置2から送信された出力電力W、電池残量Rに基づき、現段階で負荷8に対し電力供給を行っている無停電電源装置2を記憶している。したがって、演算部56は、電力の出力を継続する無停電電源装置2a、2c、または電力の出力を停止する無停電電源装置2bの少なくとも一方が、入力部52に入力されることにより、電力の出力を継続する無停電電源装置2a、2c、および電力の出力を停止する無停電電源装置2bを識別することができる。
【0078】
演算部56は、入力部52に入力された電力の出力を継続する無停電電源装置2を指定するコマンドに基づき、無停電電源装置2a、2cが電力の出力を継続する無停電電源装置2であり、無停電電源装置2bが電力の出力を停止する無停電電源装置2であると識別する。
【0079】
(ステップS02:無停電電源装置2から出力電力Wを受信する)
次に演算部56は、無停電電源装置2から現在における出力電力Wを受信する。手順4の移設作業前の段階において、無停電電源装置2a、2b、2cが負荷8に対し電力供給を行っている。演算部56は、無停電電源装置2a、2b、2cから現在におけるそれぞれの出力電力である出力電力Wa、Wb、Wcを受信する。
【0080】
(ステップS03:無停電電源装置2から電池残量Rを受信する)
次に演算部56は、無停電電源装置2から現在における蓄電池22の残量(電力量)である電池残量Rを受信する。演算部56は、無停電電源装置2a、2b、2cから現在におけるそれぞれの蓄電池22a、22b、22cの残量(電力量)である出力電力Ra、Rb、Rcを受信する。なお、無停電電源装置2a、2b、2cは新設の無停電電源装置2であるため、十分に蓄電池22が充電されていない場合がある。
【0081】
(ステップS04:負荷8への必要供給電力WTを算出する)
次に演算部56は、負荷8への供給が必要とされる電力供給量である必要供給電力WTの算出を行う。必要供給電力WTは、現段階で負荷8に対し電力供給を行っている無停電電源装置2a、2b、2cの出力電力Wa、Wb、Wcに基づき算出される。必要供給電力WT=Wa+Wb+Wcである。必要供給電力WTは、複数の無停電電源装置2a、2b、2cの出力電力の総和電力である。手順4における無停電電源装置2bの移設作業中に、負荷8に対し、必要供給電力WT=Wa+Wb+Wcにかかる電力の供給が必要とされる。
【0082】
(ステップS05:供給可能時間TAを算出し表示する)
次に演算部56は、複数の無停電電源装置2のうち指定された残置する無停電電源装置2の電池残量Rで、負荷8に対し、電力を供給することができる供給可能時間TAを算出する。供給可能時間TAは、指定された残置する無停電電源装置2a、2cの電池残量Ra、Rc、および必要供給電力WTに基づき、算出される。
【0083】
供給可能時間TA=(Ra+Rc)/WT=(Ra+Rc)/(Wa+Wb+Wc)により、供給可能時間TAが算出される。算出された供給可能時間TAは、表示部53に表示される。また、演算部56は、送受信部55を制御し、インターネット通信回線、スマートフォンの通信回線等を介し接続されたコンピュータ、スマートフォン等に対し、供給可能時間TAを送信する。
【0084】
作業者は、監視装置5の表示部53に表示された供給可能時間TA、または送受信部55からコンピュータ、スマートフォン等に送信された供給可能時間TAを参照し、手順4の移設に伴う無停電電源装置2bの負荷8への電力供給の停止が可能であるか判断する。
【0085】
供給可能時間TAは、複数の無停電電源装置2のうち指定された残置する無停電電源装置2a、2cの電池残量Ra、Rcで、負荷8に対し蓄電池22による電力を供給することができる時間である。無停電電源装置2a、2cは新設の無停電電源装置2であるため、十分に蓄電池22a、22cが充電されていない場合がある。作業者は、監視装置5により算出された供給可能時間TAを参照し、移設に伴う無停電電源装置2bによる、負荷8への電力供給の停止が可能であるか判断する。
【0086】
作業者は、供給可能時間TAが十分であると判断した場合、仮設スペースに設置された無停電電源装置2bによる負荷8への電力供給を一時停止し、無停電電源装置2bを設置スペースに移設する。また、作業者は、供給可能時間TAが不十分であると判断した場合、無停電電源装置2bの設置スペースへの移設作業を中断し、供給可能時間TAが十分となるまで、無停電電源装置2a、2cの蓄電池22a、22cが充電されるのを待つ。
【0087】
供給可能時間TAは、無停電電源装置2bを設置スペースに移設する時間を充足する時間であることが望ましい。しかしながら通常、供給可能時間TAとなる無停電電源装置2a、2cの蓄電池22a、22cによる電力供給可能時間は、10分から数10分であり、無停電電源装置2bを設置スペースに移設する移設作業に要する時間より短い場合が多い。
【0088】
移設作業中にも無停電電源装置2a、2cには、電力供給線91を介し商用電源92から商用電力が供給される。このため無停電電源装置2a、2cの蓄電池22a、22bの残量は、移設作業中に減少しない場合もある。したがって移設作業に適する供給可能時間TAは、作業者により適宜判断される。
【0089】
(ステップS06:供給可能時間TAは予め設定された時間TS以下か判断する)
次に演算部56は、供給可能時間TAは予め設定された時間TS以下か判断する。予め設定された時間TSは、作業者により事前に設定された任意の時間である。予め設定された時間TSは、無停電電源装置2bの移設作業中に停電が発生し、無停電電源装置2a、2cによる負荷8への電力供給が停止した場合でも、作業者によりリカバー処理を行うことができる十分な時間であることが望ましい。
【0090】
演算部56により、供給可能時間TAは予め設定された時間TS以下であると判断された場合(ステップS06のYES)、プログラムはステップS07に移行する。演算部56により、供給可能時間TAは予め設定された時間TS以下であると判断されない場合(ステップS06のNO)、一連のプログラムは終了となる。
【0091】
(ステップS07:警報出力部54から警報を出力する)
ステップS06にて供給可能時間TAは予め設定された時間TS以下であると判断された場合、演算部56は、供給可能時間TAが予め設定された時間TS以下であることを示す警報を、警報出力部54から出力する。作業者は、監視装置5から出力された警報により、無停電電源装置2a、2cの蓄電池22a、22bの残量が少ないことを認識する。
【0092】
また、演算部56は、送受信部55を制御し、インターネット通信回線、スマートフォンの通信回線等を介し接続されたコンピュータ、スマートフォン等に対し、供給可能時間TAが予め設定された時間TS以下であることを示す警報を送信する。その後、演算部56は、一連のプログラムを終了する。
【0093】
上記ステップS01~S07は繰り返し実行される。したがって、手順4における無停電電源装置2bの移設作業中にも、ステップS01~S07は繰り返し実行され、監視装置5は逐次無停電電源装置2a、2cから出力電力Wa、Wcおよび電池残量Ra、Rcを受信する。その結果、供給可能時間TAは逐次更新される。これにより作業者は、手順4における無停電電源装置2bの移設作業中に、無停電電源装置2a、2cの蓄電池22a、22cの残量が減少した場合であっても、リアルタイムで供給可能時間TAを知ることができる。
【0094】
以上が、監視装置5の動作である。上記のように監視装置5により、供給可能時間TAが逐次算出される。
【0095】
上記では、一例として無停電電源システム更新方法にかかる手順4において、無停電電源装置2a、2cにより電力の出力を継続し、移設するため無停電電源装置2bによる電力の出力を停止する場合の供給可能時間TAを算出するものとした。ステップS05により、供給可能時間TA=(Ra+Rc)/WT=(Ra+Rc)/(Wa+Wb+Wc)にて、供給可能時間TAが算出される。
【0096】
無停電電源システム更新方法にかかる手順5において、無停電電源装置2a、2bにより電力の出力を継続し、移設するため無停電電源装置2cによる電力の出力を停止し、供給可能時間TAを算出する場合にも適用される。ステップS05により、供給可能時間TA=(Ra+Rb)/WT=(Ra+Rb)/(Wa+Wb+Wc)にて、供給可能時間TAが算出される。
【0097】
さらに、無停電電源システム更新方法にかかる手順2において、無停電電源装置2b、2cにより電力の出力を継続し、撤去するため無停電電源装置2d、2e,2fによる電力の出力を停止し、供給可能時間TAを算出する場合にも適用される。ステップS05により、供給可能時間TA=(Rb+Rc)/WT=(Rb+Rc)/(Wd+We+Wf)にて、供給可能時間TAが算出される。
【0098】
なお既設の無停電電源装置2d、2e,2fが出力電力Wd、We、Wfを送信する機能を有しない場合、作業者により測定された無停電電源装置2d、2e,2fの出力電力Wd、We、Wfが、監視装置5の入力部52から入力されるようにしてもよい。
【0099】
[1-3.効果]
(1)本実施形態によれば、無停電電源システム更新方法は、設置スペースに設置された既設の無停電電源装置2d、2e、2fより少ない台数であり、負荷8への電力供給を充足する台数である第1の新設の無停電電源装置2b、2cを、既設の無停電電源装置2d、2e、2fと電気的に並列接続となるように、仮設スペースに設置する第1の手順と、第1の新設の無停電電源装置2b、2cから負荷8へ電力の供給を行い、既設の無停電電源装置2d、2e、2fを設置スペースから撤去する第2の手順と、第1の手順で仮設スペースに設置された第1の新設の無停電電源装置2b、2cと電気的に並列接続となるように、第2の新設の無停電電源装置2aを設置スペースに設置する第3の手順と、第3の手順で設置スペースに設置された第2の新設の無停電電源装置2aと電気的に並列接続となるように、仮設スペースに設置された第1の新設の無停電電源装置2b、2cのうち少なくとも1台を設置スペースに移設する第4の手順と、を有するので、十分な設置スペースが確保できない場合でも更新することができる無停電電源システムの更新方法、および更新方法に対応した、無停電電源システム、無停電電源用監視装置、無停電電源システム用プログラムを提供することができる。
【0100】
(2)本実施形態によれば、無停電電源システム更新方法は、仮設スペースに設置された全ての第1の新設の無停電電源装置2b、2cが、設置スペースに移設するまで、第4の手順が繰り返されるので、十分な設置スペースが確保できない場合でも、無停電電源システムの更新を行うことができる。
【0101】
(3)本実施形態によれば、無停電電源システム更新方法は、第2の手順の前に、商用電源にて負荷8へ電力を供給し、既設の無停電電源装置から負荷への電力の供給を停止する手順を有するので、2台の新設の無停電電源装置2b、2cの直流交流変換部23b、23cから出力される電圧波形と3台の既設の無停電電源装置2d、2e、2fの直流交流変換部23d、23e、23fから出力される電圧波形が異なる波形である場合でも、既設の無停電電源装置2d、2e、2fと新設の無停電電源装置2b、2cとの間の出力コンフリフトに起因する、不要電流の発生を避けることができる。
【0102】
(4)本実施形態によれば、無停電電源システム1は、出力電力Wおよび電池残量Rに関するデータを送信する、複数の無停電電源装置2と、複数の無停電電源装置2から出力電力Wおよび電池残量Rに関するデータを受信する送受信部51と、受信した出力電力Wに基づき、複数の無停電電源装置2の出力電力の総和電力である必要供給電力WTを算出し、受信した電池残量Rに基づき、複数の無停電電源装置2のうち指定された無停電電源装置2の電池残量Rで、算出した総和電力である必要供給電力WTを供給することができる供給可能時間TAを算出する演算部56と、を有するので、作業者は、監視装置5の表示部53に表示された供給可能時間TA、または送受信部55からコンピュータ、スマートフォン等に送信された供給可能時間TAを参照し、手順4の移設に伴う無停電電源装置2bの負荷8への電力供給の停止が可能であるか判断することができる。
【0103】
供給可能時間TAは、複数の無停電電源装置2のうち指定された残置する無停電電源装置2a、2cの電池残量Ra、Rcで、負荷8に対し蓄電池22による電力を供給することができる時間である。無停電電源装置2a、2cは新設の無停電電源装置2であるため、十分に蓄電池22a、22cが充電されていない場合がある。作業者は、監視装置5により算出された供給可能時間TAを参照し、移設に伴う無停電電源装置2bによる、負荷8への電力供給の停止が可能であるか判断することができる。
【0104】
作業者は、供給可能時間TAが十分であると判断した場合、仮設スペースに設置された無停電電源装置2bによる負荷8への電力供給を一時停止し、無停電電源装置2bを設置スペースに移設する。また、作業者は、供給可能時間TAが不十分であると判断した場合、無停電電源装置2bの設置スペースへの移設作業を中断し、供給可能時間TAが十分となるまで、無停電電源装置2a、2cの蓄電池22a、22bが充電されるのを待つことができる。これにより、移設作業中に停電が発生した場合でも、適切な時間、無停電電源装置2a、2cにより、負荷8に対し電力を供給することが可能となる。
【0105】
(5)本実施形態によれば、無停電電源システム1の監視装置5は、供給可能時間TAが予め設定された時間TS以下である場合に警報を出力する警報出力部54を有するので、作業者は、監視装置5から出力された警報により、無停電電源装置2a、2cの蓄電池22a、22bの残量が少ないことを認識することができる。
【0106】
[4.他の実施形態]
変形例を含めた実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。以下は、その一例である。
【0107】
(1)上記実施形態では、手順1で新設される無停電電源装置2は、2台であるものとしたが、台数はこれに限られない。手順1で新設される無停電電源装置2の台数は、設置スペースに設置された既設の無停電電源装置2より少ない台数であり、負荷8への電力供給を充足する台数であればよい。
【0108】
(2)上記実施形態では、手順3で新設される無停電電源装置2は、1台であるものとしたが、複数台であってもよい。
【0109】
(3)上記実施形態では、手順4または手順5で移設される無停電電源装置2は、1台であるものとしたが、複数台であってもよい。
【0110】
(4)上記実施形態では、監視装置5は一つの装置であるものとしたが、監視装置5は無停電電源装置2a、2b、2cに内蔵されるものであってもよい。また、監視装置5は、移設を伴わず新設される無停電電源装置2aに内蔵されることが望ましい。
【符号の説明】
【0111】
1・・・無停電電源システム
2,2a,2b,2c・・・無停電電源装置
5・・・監視装置
8・・・負荷
9・・・電力系統
21・・・交流直流変換部
22・・・蓄電池
23・・・直流交流変換部
24・・・バイパス回路
25,25a,25b,25c・・・入力端子
26,26a,26b,26c・・・補助入力端子
27,27a,27b,27c・・・出力端子
31・・・測定部
32・・・検出部
33・・・送受信部
51・・・送受信部
52・・・入力部
53・・・表示部
54・・・警報出力部
55・・・送受信部
56・・・演算部
91・・・電力供給線
92・・・商用電源