(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-10
(45)【発行日】2022-06-20
(54)【発明の名称】スタンド型筐体の揚重支援装置
(51)【国際特許分類】
B66F 9/06 20060101AFI20220613BHJP
【FI】
B66F9/06 S
(21)【出願番号】P 2018082469
(22)【出願日】2018-04-23
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】平木 和香
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-152038(JP,A)
【文献】特開平11-246191(JP,A)
【文献】特開平08-282950(JP,A)
【文献】特開昭49-096436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
B66F 1/00- 5/04
B62B 1/00- 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱と当該支柱の上部に該支柱より幅のある筐体を有するスタンド型筐体の揚重支援装置であって、
前記支柱を横方向から囲むための一方が開放された空間を有し、当該支柱の上部の筐体をその下面で受けて支える筐体受台と、
前記筐体受台を上下に移動可能に支持する受台支持部と、
前記受台支持部が取り付けられる上面板と、当該上面板を支持する脚部と、当該脚部に設けられた車輪とを有し、当該車輪により床面を移動可能な台車型架台と、
前記筐体受台と前記受台支持部との間に上下方向に伸縮可能に取り付けられ、前記筐体の重量に応じた上方への反力を有する揚重機構と、を備え
、
前記受台支持部は、前記支柱を横方向から囲むための一方が開放された空間を前記上面板から上方に延長するように形成した内筒を有し、
前記筐体受台は、前記内筒の外壁に沿った形状の外筒を有し、前記内筒に対し前記外筒が嵌め合わされて上下に移動可能に支持され、
前記受台支持部は、前記内筒の内壁間に前記空間から前記支柱が抜けるのを防止するためのベルトを備える、
スタンド型筐体の揚重支援装置。
【請求項2】
前記筐体受台の前記受台支持部に対する上下の移動位置をユーザ操作に応じて固定又は非固定にする高さ固定機構を備えた、請求項1に記載のスタンド型筐体の揚重支援装置。
【請求項3】
前記筐体受台に設けられ、当該筐体受台を上下に移動する際にユーザにより持つことが可能なハンドル部を備えた、請求項2に記載のスタンド型筐体の揚重支援装置。
【請求項4】
前記ハンドル部に一体にして設けられ、前記高さ固定機構による前記筐体受台の上下の移動位置の固定の状態を非固定の状態にする固定解除レバーを備えた、請求項3に記載のスタンド型筐体の揚重支援装置。
【請求項5】
前記筐体受台と受台支持部との間、前記受台支持部と台車型架台との間、前記筐体受台と受台支持部との間に取り付けられる揚重機構は、何れも着脱可能に構成される、請求項1ないし請求項
4の何れか一項に記載のスタンド型筐体の揚重支援装置。
【請求項6】
前記揚重機構は、前記筐体受台と前記受台支持部との間に上下方向に伸縮可能に取り付けられ、前記筐体の重量に応じた上方へのガス反力を有するガススプリングである、請求項1ないし請求項
5の何れか一項に記載のスタンド型筐体の揚重支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、スタンド型現場操作盤などのスタンド型筐体の揚重支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、各種プラントの電気操作盤の一つとして、スタンド型現場操作盤(以下「スタンド盤」と称呼する。)がある。
【0003】
このスタンド盤は、各種の操作子や操作対象の状態を表示するインジケータなどを収納した箱型の操作盤と、当該操作盤を、ユーザが操作し易い、例えば人の胸あたりの高さで下から支持するための支柱と、当該支柱をその下端において床面の基礎にアンカーボルトで固定するためのベースプレートからなる。
【0004】
以下は、スタンド盤の寸法、重量の一例である。
【0005】
全高:1,600(mm)
操作盤:高さ×幅×奥行=800×700×300(mm)
支柱:高さ×直径=800×140(mm)
全重量:100~140(Kg)
基礎高さ:100~150(mm)
このようなスタンド盤を現場に据え付ける作業には、スタンド盤を現場まで搬送する作業、基礎の導線口から引き出された配線を支柱を通して操作盤底部から入線する作業、スタンド盤を基礎の上に持ち上げる作業、アンカーボルトの打設位置を見定める作業などが必要になるが、そこには次のような問題がある。
【0006】
重量物であるスタンド盤を持ち上げて作業に必要な高さを保持するため、作業者は自身の胸の辺りの力の入れづらい高さで操作盤を支える体勢を維持し続けなければならない。
【0007】
また、スタンド盤を持ち上げている状態で、配線を入線する作業やアンカーボルトの打設位置を見定める作業など、スタンド盤の前面や下部に作業スペースを確保する必要があるため、スタンド盤は少人数(2~3人)の作業者で持ち続けなければならない。
【0008】
従来、電気盤の据え付け作業を支援するものとして電気盤据付用台車、また、重量物の搬送を支援するものとして重量物搬送装置が考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】実開昭63-190299号公報
【文献】特開平11-246191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記従来の電気盤据付用台車は、例えば現場の壁面に沿って据え付ける電気盤を対象とし、当該電気盤を、その上面のねじ穴に取り付ける吊り部材と、その下面で受ける受け部材とにより支持する構造を有し、吊り部材の昇降装置や搬送用車輪も備わるものの、箱型の操作盤とその支柱からなる特殊な構造のスタンド盤には適用することができない。
【0011】
また、前記従来の重量物搬送装置では、操作盤などの重量物を、安全に、かつ、少ない人数で搬送することが可能になるものの、操作盤の盤扉を開けた状態での配線の入線作業など、操作盤の前面側での作業性を考慮した構成となっていない。また、装置自体が大掛かりで取り扱いや持ち運びが難しい問題がある。
【0012】
よって、前述した通り、スタンド盤の据え付け作業は、依然として、作業者への負担が大きく、スタンド盤の落下や転倒が生じる恐れもある。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、スタンド型筐体の据え付けに伴う作業者への負担を軽減することが可能なスタンド型筐体の揚重支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
実施形態のスタンド型筐体の揚重支援装置は、
支柱と当該支柱の上部に該支柱より幅のある筐体を有するスタンド型筐体の揚重支援装置であって、
前記支柱を横方向から囲むための一方が開放された空間を有し、当該支柱の上部の筐体をその下面で受けて支える筐体受台と、
前記筐体受台を上下に移動可能に支持する受台支持部と、
前記受台支持部が取り付けられる上面板と、当該上面板を支持する脚部と、当該脚部に設けられた車輪とを有し、当該車輪により床面を移動可能な台車型架台と、
前記筐体受台と前記受台支持部との間に上下方向に伸縮可能に取り付けられ、前記筐体の重量に応じた上方への反力を有する揚重機構と、を備え、
前記受台支持部は、前記支柱を横方向から囲むための一方が開放された空間を前記上面板から上方に延長するように形成した内筒を有し、
前記筐体受台は、前記内筒の外壁に沿った形状の外筒を有し、前記内筒に対し前記外筒が嵌め合わされて上下に移動可能に支持され、
前記受台支持部は、前記内筒の内壁間に前記空間から前記支柱が抜けるのを防止するためのベルトを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】実施形態のスタンド型筐体の揚重支援装置50の外観構成を示す斜視図。
【
図1B】前記スタンド型筐体の揚重支援装置50の外観構成を示す正面図。
【
図1C】前記スタンド型筐体の揚重支援装置50の外観構成を示す側面図。
【
図2】前記スタンド型筐体の揚重支援装置50により据え付け対象となるスタンド盤1の外観構成を示す斜視図。
【
図3A】前記スタンド型筐体の揚重支援装置50を使用したスタンド盤据え付け作業の作業手順(その1)を示す図。
【
図3B】前記スタンド型筐体の揚重支援装置50を使用したスタンド盤据え付け作業の作業手順(その2)を示す図。
【
図3C】前記スタンド型筐体の揚重支援装置50を使用したスタンド盤据え付け作業の作業手順(その3)を示す図。
【
図3D】前記スタンド型筐体の揚重支援装置50を使用したスタンド盤据え付け作業の作業手順(その4)を示す図。
【
図3E】前記スタンド型筐体の揚重支援装置50を使用したスタンド盤据え付け作業の作業手順(その5)を示す図。
【
図3F】前記スタンド型筐体の揚重支援装置50を使用したスタンド盤据え付け作業の作業手順(その6)を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態のスタンド型筐体の揚重支援装置について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1Aは、実施形態のスタンド型筐体の揚重支援装置50の外観構成を示す斜視図である。
【0018】
図1Bは、前記スタンド型筐体の揚重支援装置50の外観構成を示す正面図である。
【0019】
図1Cは、前記スタンド型筐体の揚重支援装置50の外観構成を示す側面図である。
【0020】
図2は、前記スタンド型筐体の揚重支援装置50により据え付け対象となるスタンド盤1の外観構成を示す斜視図である。
【0021】
図2に示すように、スタンド盤1は、各種の操作子や操作対象の状態を表示するインジケータなどを収納した箱型の筐体を有する操作盤2と、当該操作盤2を、ユーザが操作し易い、例えば人の胸あたりの高さで下から支持するための支柱3と、当該支柱3をその下端において床面の基礎BA(
図3D~
図3F参照)にアンカーボルトで固定するためのベースプレート4からなり、操作盤2の正面は、前記操作子の操作や表示を確認する際に開かれる盤扉2aとして構成される。
【0022】
前記スタンド盤1の設計寸法は、一例として、全高H=1,600(mm)、操作盤2の高さh=800(mm)、幅w=700(mm)、奥行d=300(mm)、支柱3の直径φ=140(mm)とする。
【0023】
図1A~
図1Cに示すように、スタンド型筐体の揚重支援装置50は、床面を移動可能な台車型架台10と、前記スタンド盤1の操作盤2(筐体)をその下面から支えて載置する操作盤受台20(筐体受台)と、台車型架台10の上面を構成する架台板11に着脱可能に取り付けられて立設され、前記操作盤受台20を上下方向に伸縮自在に支持する受台支持部30と、当該受台支持部30の基部側面と前記操作盤受台20との間に着脱可能に且つ伸縮自在に取り付けられ、操作盤受台20を上方へ押し上げるガス反力を有するガススプリング(揚重機構)40L,40Rとを備えて構成される。
なお、前記ガススプリング40L,40Rは、例えば、ガス圧保持力調整可能スプリングを使用することで、そのガス反力の調整が可能である。
【0024】
図1A,
図1Bにおいて、前記台車型架台10の架台板11は、前記スタンド盤1の支柱3を上下に通す中央部空間Aを、図示手前側を開放端としてコの字に囲むように設けた左右架台板11L,11Rを有し、前記台車型架台10は、架台板11の四隅を支持する脚部12a~12dと、当該各脚部12a~12dの下端に取り付けた車輪14a~14dとを備え、床面上で移動可能に構成される。
【0025】
前記台車型架台10の各脚部12a~12dは、何れも、その長さ方向に伸縮可能に繋がれる、上部中空フレーム12a1~12d1と、当該上部中空フレーム12a1~12d1より断面小径の下部フレーム12a2~12d2とからなる。上部中空フレーム12a1~12d1の下端に下部フレーム12a2~12d2を挿入して繋ぎ、上部中空フレーム12a1~12d1の側面から、下部フレーム12a2~12d2の先端近くに形成した何れかのピン孔13a…を選択してねじ式ピン13b…を挿入し、上部中空フレーム12a1~12d1と下部フレーム12a2~12d2とをねじ止め固定する。これにより、前記スタンド盤1の支柱3の高さ(H-h)に対応させて各脚部12a~12dの長さ、すなわち、台車型架台10の高さを調節できる。
【0026】
前記各脚部12a~12dの下端に取り付けた車輪14a~14dは、それぞれ独立して、その進行方向に応じて自在に回動して方向転換する構成とし、ユーザ操作に応じてその回転を強制的に止めておくための車輪ストッパ15a~15dを有する。
【0027】
また、前記台車型架台10は、その架台板11に受台支持部30を取り付けていない(架台板11から受台支持部30を取り外した)状態において、左右架台板11L,11Rの回動可能な接続部P2を支点とし(
図1B参照)、左右の脚部12a,12bと12c,12dとを矢印yに示す互いの方向に近付けることで、図示奥側の左右脚部12b,12c間を繋ぐ補強ステー16a(左右ステー16a1,16a2間)の回動可能な接続部P1を矢印xに示す上方に折り曲げ、小型に折り畳むことができる。
【0028】
なお、図示左側の脚部12a,12b間と、図示右側の脚部12c,12d間にも、それぞれ補強ステー16b,16cを設けるが、図示手前側の左右脚部12a,12d間には、当該左右脚部12a,12d間をスタンド盤1の支柱3を受け入れるための開放端とするため、補強ステーは設けない。
【0029】
前記受台支持部30は、前記台車型架台10の架台板11におけるコの字の中央部空間Aを、当該コの字の中央部空間Aの境界に沿って上方に所定の長さで延長するように形成したコの字の内筒31と、当該内筒31の左右壁面をその下端において外側に折り曲げるように形成したフランジ部32L,32Rとを備える。
【0030】
前記受台支持部30は、そのコの字の内筒31を、前記台車型架台10の架台板11におけるコの字の中央部空間Aに位置合わせし、その下端のフランジ部32L,32Rを、左右架台板11L,11Rに取り付けねじ33a,33b,…により取り付けることで、前記台車型架台10上に着脱可能に立設される。
【0031】
なお、前記受台支持部30の内筒31における左右壁面の内壁間には、当該内筒31の中央部空間Aに通したスタンド盤1の支柱3をすり抜けないように固定するためのすり抜け防止ベルト34が設けられる。
【0032】
なお、前記すり抜け防止ベルト34は、その一端と他端を、
図1Aに示すように、内筒31における左右の内壁に取り付けて設けるのではなく、当該内筒31の図示奥側の内壁に取り付けて設けることで、スタンド盤1の支柱3を遊びなく内筒31内の中央部空間Aに保持する構成としてもよい。
【0033】
前記操作盤受台20は、前記受台支持部30のコの字の内筒31の外壁に沿った形状の外筒21と、当該外筒21の左右壁面の上端において、逆L字状に水平に折り曲げるように形成した左右受台板22L,22Rからなる受台部22とを備える。
【0034】
前記外筒21の図示手前側となるコの字の開放端部には、前記受台支持部30における内筒31のコの字の開放端部に沿って内側に折り曲げるように形成した、当該内筒31に対する嵌め合せフランジ部21L,21Rが設けられる。
【0035】
これにより、前記操作盤受台20は、前記受台支持部30に対し嵌め合わされて、上下方向Xに移動可能に構成され、その受台部22の高さを上下に変更できる。
【0036】
また、前記受台部22(左右受台板22L,22R)の表面は、当該受台部22に載せた操作盤2の滑りを防止する滑り止めシート23により被われる。
【0037】
また、前記操作盤受台20の外筒21の左右壁面には、それぞれその下端に沿った位置に水平方向に突出したハンドル部24L1,24L2,24R1,24R2が設けられ、当該ハンドル部24L1,24L2,24R1,24R2をユーザが持って上下に動かすことで、前記操作盤受台20が、前記受台支持部30に対し上下方向Xに移動される。
【0038】
前記操作盤受台20の外筒21と、前記受台支持部30の内筒31との間には、その上下方向Xの移動位置をユーザ操作に応じて適宜固定するための図示しないラチェット機構や摩擦機構等を用いてなる高さ固定機構が内蔵される。
【0039】
前記操作盤受台20のハンドル部24L1,24L2,24R1,24R2のうち、例えばハンドル部24R1には、
図1Aにその一部を拡大して示すように、当該ハンドル部24R1を持った手で同時操作可能な固定解除レバー25が一体にして設けられる。この固定解除レバー25は、通常時、固定ばね25sのばね力によって前記ハンドル部24R1から離れる方向の定位置に押し付けられており、この状態で前記高さ固定機構が作動して前記操作盤受台20の前記受台支持部30に対する移動位置(高さ)が固定される。
【0040】
すなわち、前記ラチェット機構の場合は、ラチェットの爪が突出して相互の動きが固定された状態になり、また、前記摩擦機構の場合は、摩擦対象に摩擦物が押し当てられて相互の動きが固定された状態になる。
【0041】
そして、矢印sに示すように、前記固定解除レバー25を、前記ハンドル部24R1を持った手の指先で当該ハンドル部24R1に近付く方向に引き寄せることで、前記高さ固定機構の固定動作が解除され、前記操作盤受台20の前記受台支持部30に対する移動位置(高さ)の変更(調節)が可能な状態になる。
【0042】
なお、前記操作盤受台20の前記受台支持部30に対する高さ固定機構は、図示はしないが、受台支持部30における内筒31の側面に上下方向に配列して設けた複数のピン穴に対し、選択的に、操作盤受台20における外筒21の側面から固定ピンを差し込んで固定する単純な構造としてもよい。この場合、前記固定ピンは、前記固定解除レバー25の開放に応じて前記外筒21の側面から差し込まれる構成とすればよい。
【0043】
前記ガススプリング(揚重機構)40L,40Rは、前記受台支持部30の内筒31の下端近くの左右側面と、前記操作盤受台20の外筒21の左右側面との間に、その取り付け部41a,41bにより着脱可能に取り付けられ、前記受台支持部30に対し、前記操作盤受台20を上方へ押し上げるガス反力を有する。
【0044】
前記ガススプリング40L,40Rを合わせたガス反力は、前記操作盤受台20に載置されるスタンド盤1の重量よりも、例えば、10~20Kg程度小さい反力とし、当該スタンド盤1を載置した操作盤受台20を、10~20Kg(2人の場合は5~10Kg)を少し超える軽い持ち上げ力で上昇可能に設定すると共に、スタンド盤1の自重により下降可能に設定する。
【0045】
なお、前記ガススプリング40L,40Rは、着脱可能に取り付けられるので、前記スタンド盤1の重量に応じて異なるガス反力を有するガススプリング40L,40Rに交換してもよい。また、前記受台支持部30の内筒31の左右側面と、前記操作盤受台20の外筒21の左右側面との間に、それぞれ2本以上のガススプリング40L,40Rを着脱可能な構成とし、前記スタンド盤1の多様な重量に適宜対応させてもよい。
【0046】
次に、前記構成によるスタンド型筐体の揚重支援装置50の動作について説明する。
【0047】
図3A~
図3Fは、前記スタンド型筐体の揚重支援装置50を使用したスタンド盤据え付け作業の作業手順(その1~6)を示す図である。
【0048】
手順1(
図3A参照):
揚重支援装置50の操作盤受台20(筐体受台)を、スタンド盤1における操作盤2の下面よりも下げた高さで固定した状態で、台車型架台10を移動させ、スタンド盤1の支柱3を受台支持部30の内筒31および操作盤受台20の外筒21により囲まれる中央部空間Aに受け入れて通す。そして、固定解除レバー25(
図1A参照)の引き寄せ(矢印s)により、前記高さ固定機構による操作盤受台20の高さの固定を解除した状態で、当該操作盤受台20の受台部22の高さを操作盤2の下面に合せた高さに調整し、すり抜け防止ベルト34により支柱3を締め、スタンド盤1が揚重支援装置50から外れないように固定する。
なお、前記操作盤受台20にスタンド盤1などの重量物を載せていない状態で、当該操作盤受台20の高さを下げるときには、前記ガススプリング40L,40Rのガス圧を調整し、そのガス反力を低下させることで、軽い力で下げることができる。
【0049】
手順2(
図3B参照):
台車型架台10の各車輪14a~14dの車輪ストッパ15a~15dを操作して、当該台車型架台10を動かない状態とする。この後、例えば、2人の作業者H1とH2により、それぞれ操作盤受台20の左側面のハンドル部24L1,24L2と右側面のハンドル部24R1,24R2を持ち、前記固定解除レバー25を操作して、前記高さ固定機構による当該操作盤受台20の高さの固定を解除した状態で、
図3Cの矢印X1に示すように、当該操作盤受台20と共にスタンド盤1を所望の高さ(例えば、ベースプレート4が基礎BAを越える高さ(
図3E参照))まで持ち上げる(上昇させる)。
【0050】
この際、スタンド盤1を載せた操作盤受台20は、ガススプリング40L,40Rによりスタンド盤1の重量よりは小さいガス反力(スタンド盤1の揚重を支援するガス反力)を得ているので、作業者H1とH2は、前記各ハンドル部24L1,24L2と24R1,24R2に軽く持ち上げる力を加えるだけで、スタンド盤1を負担なく簡単に持ち上げる(上昇させる)ことができる。
【0051】
手順3(
図3C参照):
スタンド盤1を所望の高さまで持ち上げた(上昇させた)状態で、前記固定解除レバー25を開放して高さ固定機構を作動させ、操作盤受台20(外筒21)の高さを固定する。
【0052】
この際、スタンド盤1は揚重支援装置50に載せられて固定されているので、作業者H1,H2がスタンド盤1を持ち上げ続けなければならない等の負担が生じることは一切無い。
【0053】
手順4(
図3D参照)
台車型架台10の各車輪14a~14dの車輪ストッパ15a~15dを再操作して、当該台車型架台10を動く状態とし、当該台車型架台10を、スタンド盤1を据え付ける基礎BAの近傍に移動させる。この後、車輪ストッパ15a~15dを再操作して、台車型架台10を動かない状態とし、基礎BAの導線口から引き出したケーブルCAを、スタンド盤1の支柱3を通して操作盤2の盤底部から入線する作業を行なう。
【0054】
この際も、作業者H1,H2は、スタンド盤1を持ち上げ続ける必要なく、ケーブルCAの入線作業等を負担なく容易に行なうことができる。
【0055】
手順5(
図3E参照):
台車型架台10の各車輪14a~14dの車輪ストッパ15a~15dを再操作して、当該台車型架台10を動く状態とし、当該台車型架台10に載せたスタンド盤1を、当該スタンド盤1を据え付ける基礎BAの上まで移動させ、ベースプレート4を介したアンカーボルトの打設位置を定める。そしてまた、車輪ストッパ15a~15dを再操作して、台車型架台10を動かない状態とする。
【0056】
この際も、作業者H1,H2は、スタンド盤1を持ち上げ続ける必要なく、ボルト打設位置の見定め作業等を負担なく容易に行なうことができる。
【0057】
手順6(
図3F参照):
前記2人の作業者H1とH2により、それぞれ操作盤受台20の左側面のハンドル部24L1,24L2と右側面のハンドル部24R1,24R2を持ち、前記固定解除レバー25を操作して、前記高さ固定機構による当該操作盤受台20の高さの固定を解除した状態で、矢印X2に示すように、当該操作盤受台20と共にスタンド盤1をそのベースプレート4が基礎BAに載る高さまで下げる(下降させる)。
【0058】
この際、スタンド盤1を載せた操作盤受台20は、ガススプリング40L,40Rによりスタンド盤1の重量より小さいガス反力(スタンド盤1の揚重を支援するガス反力)を得ているので、作業者H1とH2は、前記各ハンドル部24L1,24L2と24R1,24R2に軽く手を添えておくだけで負担なく、スタンド盤1をその自重によりゆっくりと下げる(下降させる)ことができる。
【0059】
したがって、前記構成のスタンド型筐体の揚重支援装置50によれば、スタンド盤1の支柱3を囲む一方向が開放された中央部空間Aを有し、支柱3の上部にある箱型の操作盤2をその下面で受けて支える操作盤受台20と、この操作盤受台20を上下に移動可能に下から支持する受台支持部30と、この受台支持部30が取り付けられて立設される架台板11を上面板とし、その複数の脚部12a~12dの車輪14a~14dによって床面Fを移動可能な台車型架台10と、前記操作盤受台20と受台支持部30との間で上下方向に伸縮可能に取り付けられ、スタンド盤1の重量未満のガス反力(スタンド盤1の揚重を支援するガス反力)に設定されたガススプリング(揚重機構)40L,40Rとを備える。
【0060】
これにより、スタンド盤1の搬送、据え付けを要する現場において、当該スタンド盤1を作業者が持ち続ける必要なく、同スタンド盤1を容易に持ち上げて、所望の場所に移動させたり、ケーブルCAの入線作業を行なったり、基礎BAに対する据え付け位置の位置合わせ等を容易に行なうことができ、作業者への負担を大幅に軽減することが可能になる。
【0061】
また、前記構成のスタンド型筐体の揚重支援装置50によれば、前記受台支持部30に対し上下に移動可能に支持された操作盤受台20には、その側面に水平方向に突出するハンドル部24L1,24L2,24R1,24R2を設ける。そして、前記受台支持部30と操作盤受台20との間には、当該受台支持部30に対する操作盤受台20の上下方向の位置(高さ)を固定する高さ固定機構を設け、例えば、前記ハンドル部24R1に、前記高さ固定機構の固定動作を解除する固定解除レバー25を一体にして設ける。
【0062】
これにより、前記操作盤受台20の上下移動操作(スタンド盤1の上昇/下降操作)のためにハンドル部24R1を持つ作業者の手で、前記固定解除レバー25を同時操作して、操作盤受台20(スタンド盤1)を上下に移動(上昇/下降)させたり、その移動後の高さを固定させたり、容易且つ自在に行なうことができ、スタンド盤1を持ち上げた高さを簡単に固定(維持)して必要な作業を行なうことができる。
【0063】
また、前記構成のスタンド型筐体の揚重支援装置50によれば、台車型架台10と、操作盤受台20と、受台支持部30と、ガススプリング(揚重機構)40L,40Rとは、それぞれ着脱可能に構成され、容易に分解して持ち運ぶことができ、しかも前記台車型架台10は、その単体にて小型に折り畳むこともできるので、スタンド盤1の搬送、据え付けを要する現場に容易に運び込み、簡単に組み立てて使用することができる。
【0064】
なお、前記各実施形態では、スタンド盤1の揚重を支援する揚重機構としてガススプリング40L,40Rを使用した場合について説明したが、これに限らず、例えば、油圧シリンダのような揚重機構を使用してもよい。
【0065】
また、前記各実施形態では、スタンド型筐体がスタンド盤1である場合について説明したが、これに限らず、例えば、郵便ポストのように支柱に支えられたスタンド型の筐体を有する重量物であれば、前記各実施形態同様に適用することで同様の効果を奏するのは勿論である。
【0066】
本願発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、前記各実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、各実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されたり、幾つかの構成要件が異なる形態にして組み合わされても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除されたり組み合わされた構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0067】
1…スタンド盤、2…操作盤、3…支柱、4…ベースプレート、10…台車型架台、
12a~12d…脚部、14a~14d…車輪、15a~15d…車輪ストッパ、
20…操作盤受台、21…外筒、22…受台部、23…滑り止めシート、
24L1,24L2,24R1,24R2…ハンドル部、25…固定解除レバー、
30…受台支持部、31…内筒、32L,32R…フランジ部、
33a,33b…取り付けねじ、34…すり抜け防止ベルト、
40L,40R…ガススプリング(揚重機構)、
50…スタンド型筐体の揚重支援装置、BA…基礎、F…床面。