(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】チャックの爪交換用ハンド、チャックの爪自動交換方法及び爪自動交換システム
(51)【国際特許分類】
B23B 31/39 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
B23B31/39
(21)【出願番号】P 2018051296
(22)【出願日】2018-03-19
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000241588
【氏名又は名称】豊和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】永翁 博
(72)【発明者】
【氏名】川脇 和也
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-237212(JP,A)
【文献】特開2015-003361(JP,A)
【文献】特開昭63-057128(JP,A)
【文献】特開2001-334485(JP,A)
【文献】特開昭59-047106(JP,A)
【文献】特開昭61-103710(JP,A)
【文献】特公平03-066087(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2011/0115171(US,A1)
【文献】特開2009-131918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/39
B25J 17/02
B23P 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械のチャックに設けられる爪を把持可能なハンド部を備え、搬送装置に取り付けられて前記チャックに設けた取付溝に前記爪を着脱するために使用される爪交換用ハンドであって、
前記搬送装置への
前記爪交換用ハンドの取付状態で前記搬送装置と前記ハンド部との間の相対的な変位を許容するコンプライアンスユニットを備え
、
前記コンプライアンスユニットに取り付けられるブラケット部材には、前記取付溝から前記爪を取り外す際に、前記チャックに設けられたロック機構による前記爪のロック/アンロック状態を確認する爪ロック確認手段が設けられていることを特徴とする爪交換用ハンド。
【請求項2】
前記ロック機構は、前記爪のロック/アンロック状態に応じて変位する変位部材を備え、前記爪ロック確認手段は、前記変位部材の位置を検出するセンサであることを特徴とする請求項
1に記載の爪交換用ハンド。
【請求項3】
前記センサは接触式であることを特徴とする請求項
2に記載の爪交換用ハンド。
【請求項4】
請求項1乃至
3の何れかに記載の爪交換用ハンドを搬送装置に取り付けて、工作機械のチャックに設けた取付溝に爪を着脱することを特徴とするチャックの爪自動交換方法。
【請求項5】
請求項1乃至
3の何れかに記載の爪交換用ハンドと、
前記爪交換用ハンドが取り付けられて、工作機械のチャックに設けた取付溝に対して爪を出し入れする搬送装置と、を含み、
前記取付溝と前記爪との少なくとも一方に、前記爪が前記取付溝に挿入される際に前記爪を前記取付溝の入口に案内するガイド部が設けられていることを特徴とするチャックの爪自動交換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に用いられるチャックの爪を自動交換するためのチャックの爪交換用ハンドと、チャックの爪自動交換方法及び爪自動交換システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械に用いられるチャックにおいて、例えばワークを把持する爪は、ワークの形状や大きさに応じて部品として複数準備されており、ワークに応じて爪を交換する必要が生じた場合には、爪交換装置によって自動交換される。この爪交換装置として、例えば特許文献1には、工作機械側のカセットと、複数のチャック爪を保持するストッカーとの間と、爪交換位置に割り出されたカセットとチャックとの間で爪の交換を行うロボットハンドの発明が開示されている。
また、特許文献2には、ロボットアームの先端へ選択的に装備されるナットランナーハンドとジョーハンドとを用い、工具主軸にジョー用工具を装備させて、ロボットアームと工具主軸とで共同して爪を交換するようにした自動交換システムの発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-99303号公報
【文献】特許第4955522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のように搬送装置としてロボットアーム等を用いると、チャックに形成された取付溝に対して爪を最短距離で搬送できるが、取付溝の入口に爪を正確に位置決めして移動させるためには高い精度が必要である。しかし、実際の動作においては、温度変化や各装置の繰り返し精度による位置ずれの影響があり、取付溝への挿入時にこじれが生じ、爪の挿入ができなくなる。
【0005】
そこで、本発明は、周りの環境変化に対し順応して確実に爪を着脱することができるチャックの爪交換用ハンドと、チャックの爪自動交換方法及び爪自動交換システムとを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、工作機械のチャックに設けられる爪を把持可能なハンド部を備え、搬送装置に取り付けられてチャックに設けた取付溝に爪を着脱するために使用される爪交換用ハンドであって、
搬送装置への爪交換用ハンドの取付状態で搬送装置とハンド部との間の相対的な変位を許容するコンプライアンスユニットを備え、
そのコンプライアンスユニットに取り付けられるブラケットには、前記取付溝から前記爪を取り外す際に、チャックに設けられたロック機構による爪のロック/アンロック状態を確認する爪ロック確認手段が設けられていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、ロック機構は、爪のロック/アンロック状態に応じて変位する変位部材を備え、爪ロック確認手段は、変位部材の位置を検出するセンサであることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2の構成において、センサは接触式であることを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、チャックの爪自動交換方法であって、請求項1乃至3の何れかに記載の爪交換用ハンドを搬送装置に取り付けて、工作機械のチャックに設けた取付溝に爪を着脱することを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、チャックの爪自動交換システムであって、請求項1乃至3の何れかに記載の爪交換用ハンドと、爪交換用ハンドが取り付けられて、工作機械のチャックに設けた取付溝に対して爪を出し入れする搬送装置と、を含み、取付溝と爪との少なくとも一方に、爪が取付溝に挿入される際に爪を取付溝の入口に案内するガイド部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、爪交換用ハンドがコンプライアンスユニットを備えることで、温度変化や各装置の繰り返し精度による位置ずれといった周りの環境変化に対し順応して確実に爪を着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】形態1のチャックの爪自動交換システムの正面図である(爪交換用ハンドは背面から示す)。
【
図3】形態1の爪交換用ハンドで爪のロック/アンロックを確認している状態の側面図である。
【
図4】形態1の爪交換用ハンドで爪を把持した状態の側面図である。
【
図5】形態1の爪交換用ハンドで交換用の爪を取付溝の上方に位置決めした状態の正面図である。
【
図6】形態1の爪交換用ハンドで交換用の爪を取付溝の上方に位置決めした状態の側面図である。
【
図8】(A)は、形態1において爪を取付溝の入口に嵌合させる状態の説明図、(B)はコンプライアンスユニットによる変位状態の説明図(それぞれチャック本体は取付溝部分の横断面で示し、爪交換用ハンド及び爪は一部を省略している)である。
【
図9】形態2のチャックの爪自動交換システムの正面図である。
【
図11】形態2の爪交換用ハンドで爪のロック/アンロックを確認している状態の側面図である。
【
図12】形態2の爪交換用ハンドで爪を把持した状態の側面図である。
【
図13】形態2の爪交換用ハンドで交換用の爪を取付溝の上方に位置決めした状態の正面図である。
【
図14】形態2の爪交換用ハンドで交換用の爪を取付溝の上方に位置決めした状態の側面図である。
【
図15】(A)は、形態2において爪を取付溝の入口に嵌合させる状態の説明図、(B)はコンプライアンスユニットによる変位状態の説明図(それぞれチャック本体は取付溝部分の横断面で示し、爪交換用ハンド及び爪は一部を省略している)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[形態1]
図1は、NC旋盤等の工作機械の機体内におけるチャックの爪自動交換システムの正面図、
図2は爪交換用ハンドを単独で見た正面図である。
まず、チャック1は、機体内に設けた図示しない主軸の先端に設けられ、正面視が円形状のチャック本体2を有する。チャック本体2には、軸心に設けた図示しないプランジャの進退動によって放射方向へ移動する3つのマスタジョー3,3・・(
図5に1つのみ図示)と、各マスタジョー3の前側でチャック本体2の前面から周面にかけて開口し、後側が前側の開口よりも幅広の横断面凸字状となる3つの放射状の取付溝4,4・・と、各取付溝4に取り付けられる3つの爪5,5・・とが備えられている。
【0010】
爪5は、横断面形状が取付溝4と同形のベースジョー6と、ベースジョー6の前面にボルト7,7・・で固定されるトップジョー8とからなり、取付溝4に嵌合して挿入されたベースジョー6が、マスタジョー3内に設けられた図示しないロック機構にロックされることで、マスタジョー3に固定される。ベースジョー6において、取付溝4への挿入状態でチャック本体2の中心側となる端部には、左右幅を端部側へ先細りとするガイド部としての傾斜面9,9が形成されている。また、ベースジョー6の上部には、トップジョー8よりも上方へ突出する把持ブロック10が固定されており、把持ブロック10の左右の側面には、後述する爪交換用ハンド20によるクランプ用の凹部11,11が、深くなるほど上下幅が狭くなるテーパ状に凹設されている。
ここではプランジャが後退すると、各マスタジョー3が軸心側へ移動して爪5を一体に移動させてワークをクランプし、プランジャが前進すると、各マスタジョー3が外周側へ移動してワークをアンクランプする。
【0011】
一方、各マスタジョー3に設けたロック機構には、ベースジョー6のロック/アンロック状態に応じて変位する棒状の変位部材15が、それぞれチャック本体2からの突出状態で設けられている。この変位部材15は、ベースジョー6のアンロック状態では、
図1の上側の爪5で示すように、正面視で把持ブロック10を越えてチャック本体2の径方向外側へ長く突出し、ベースジョー6のロック状態では、
図1の下側左右の2つの爪5,5で示すように、正面視で把持ブロック10を僅かに越える位置までチャック本体2の径方向内側へ引っ込むようになっている。
【0012】
爪5の交換には、搬送装置としてのロボットアーム12が用いられる。このロボットアーム12は、複数のアームからなる多関節型で、ロボットアーム12の先端には、爪交換用ハンド20が設けられている。なお、爪交換用ハンド20単独の説明では、ロボットアーム12側を後方とする。
この爪交換用ハンド20は、ロボットアーム12の先端に、アーム先端の回転軸と同軸で取り付けられる軸部21と、軸部21の前端に取り付けられる側面視倒L字状のブラケット22と、ブラケット22へ下向きに取り付けられるコンプライアンスユニット23と、コンプライアンスユニット23に取り付けられるハンド部24とを備えている。
ブラケット22は、軸部21と直交状に固定される縦板部25と、縦板部25の上端から前方へ突出する横板部26とを有する。縦板部25の中央には、
図3に示すように、前方へ突出付勢される押圧部28を備えたプランジャ27が前向きに固定され、その下側には、前方へ突出する接触子30を備えた爪ロック確認手段としての接触式のセンサ29が、前向きに固定されている。
【0013】
コンプライアンスユニット23は、ブラケット22の横板部26の下面に取り付けられるボディ35と、ブラケット板37を介してハンド部24が取り付けられるベース36と、ボディ35とベース36との間に介在されてボディ35及びベース36の相対的な変位を許容するコンプライアンス機構部38とを備えている。コンプライアンス機構部38は、変位したボディ35とベース36とを原点位置に復帰させる復帰機構と、原点位置でボディ35とベース36との相対的な変位を規制するロック機構とを備えている。
【0014】
ハンド部24は、ブラケット板37へ前向きに固定される本体40と、本体40の前部に設けられる左右一対の把持爪41,41とを備えて、コンプライアンスユニット23を介してブラケット22から吊り下げ支持されている。
まず、本体40の後面には、プランジャ27に対向する円形凹部42が形成されており、この円形凹部42の中心にプランジャ27の押圧部28が当接することで、コンプライアンスユニット23で吊り下げ支持される本体40の過度な揺れを規制している。また、本体40の前面には、左右方向にガイド溝43が形成されている。
【0015】
次に、把持爪41は、本体40へスライド可能に連結されるスライド部44と、スライド部44から下向きに連結される爪部45とを備える。スライド部44は、
図2,3及び
図7に示すように、本体40のガイド溝43に嵌合する左右方向の嵌合部46と、嵌合部46の中間部位から前方へ突出する支持部47とからなる平面視T字状で、左右の嵌合部46,46は、本体40内に設けた図示しない駆動部によって同調して相反方向へスライド可能となっている。
爪部45は、スライド部44の支持部47の左右の外面に上端が連結されて下向きに垂下する板状で、互いの対向面の下端前寄りの位置には、突起48が、互いの相手側へ向けて突設されている。各突起48の先端は、先端へ行くほど上下幅が狭くなるテーパ状に形成されている。この爪部45,45は、スライド部44,44のスライドにより、突起48,48がベースジョー6の把持ブロック10の凹部11,11にそれぞれ挿入して把持ブロック10を左右から挟持するクランプ位置と、把持ブロック10の左右の側面から離れて突起48,48が凹部11,11から抜き取られるアンクランプ位置との間で開閉動作可能となっている。
【0016】
以上の如く構成された工作機械において、チャック1から爪5を取り外す際には、
図1に示すように、取り出す爪5が上側となる回転位置にチャック本体2を割り出してマスタジョー3のロック機構を解除した状態とする。このとき変位部材15はアンロック位置に突出している。
次に、ロボットアーム12によって、爪交換用ハンド20を、ハンド部24の爪部45,45をアンクランプ位置とした状態で、センサ29の接触子30が把持ブロック10の上側に位置する高さでチャック本体2に前方から接近させる。このとき、変位部材15がアンロック位置であれば、
図3に示すように、接触子30が変位部材15に当接するため、センサ29からの検出信号によって爪5のアンロック状態が確認できる。
アンロック状態を確認したら、ロボットアーム12によって、爪交換用ハンド20を、爪部45,45が把持ブロック10の凹部11,11の前方外側に位置する高さに移動させて、爪部45,45の突起48,48を凹部11,11の外側に位置させる。
【0017】
その後、爪部45,45をクランプ位置へスライドさせれば、
図4に示すように、突起48,48がそれぞれ凹部11,11に係合し、ハンド部24によって爪5を把持することができる。このとき突起48と凹部11との上下方向の相対位置に多少の誤差があっても、凹部11のテーパ状の斜面と突起48の先端のテーパ状の斜面との案内によって誤差は吸収され、両者はスムーズに係合する。
そして、ここから爪交換用ハンド20を上昇させれば、爪5を取付溝4から上方へ抜き取ることができる。
【0018】
このとき、コンプライアンスユニット23のコンプライアンス機構部38により、ベース36がボディ35に対してハンド部24ごと変位して位置の修正を行うため、ベースジョー6を取付溝4からスムーズに抜き取ることができる。そして、ロボットアーム12によって爪5を図示しない爪ストッカに収納すれば、取り外しは完了する。
【0019】
一方、チャック1に爪5を装着する際は、爪ストッカから、ロボットアーム12によって交換する爪5を取り出す。
そして、ロボットアーム12によって爪5を、チャック本体2の上方へ搬送する。このとき、コンプライアンスユニット23では、コンプライアンス機構部38のロック機構により、ボディ35とベース36とを原点位置で固定して、搬送時の爪5のぐらつきを規制する。
次に、爪5を、
図5,6に示すように、ベースジョー6が取付溝4の上方延長上となる位置に位置決めする。ここで、コンプライアンス機構部38のボディ35とベース36との固定を解除する。
【0020】
この状態で爪交換用ハンド20によって爪5を下方へスライドさせると、ベースジョー6が取付溝4の上側の開口(入口)に嵌合する。このとき、取付溝4とベースジョー6との間に左右方向への多少の誤差があっても、
図8(A)に示すように、ベースジョー6の下端に設けた傾斜面9,9によって左右位置の修正がなされてベースジョー6の下端は取付溝4の入口に導かれる。
続いて
図8(B)に示すように、コンプライアンスユニット23のコンプライアンス機構部38により、ベース36がボディ35に対してハンド部24ごと変位して位置の修正を行うため、ベースジョー6は取付溝4へスムーズに挿入される。ベースジョー6が取付溝4内へ進入した後、マスタジョー3のロック機構によって爪5はロックされる。
【0021】
そして、爪交換用ハンド20で、ハンド部24の爪部45,45をアンクランプ位置へスライドさせて爪5をアンクランプした後、爪交換用ハンド20を上昇させれば、ハンド部24がチャック本体2から離間する。
以上の手順を、チャック本体2を回転させて取付溝4を順番に割り出して繰り返すことで、全ての爪5の交換が可能となる。
【0022】
このように、上記形態1の爪交換用ハンド20及び爪自動交換方法、爪自動交換システムによれば、ロボットアーム12への取付状態でロボットアーム12とハンド部24との間の相対的な変位を許容するコンプライアンスユニット23を備えることで、温度変化や各装置の繰り返し精度による位置ずれといった周りの環境変化に対し順応して確実に爪5を着脱することができる。
特にここでは、ハンド部24に、取付溝4から爪5を取り外す際に、チャック1に設けられたロック機構による爪5のロック/アンロック状態を確認する爪ロック確認手段(センサ29)を設けているので、爪5がロックされた状態で取り外し動作がされるおそれがなくなる。
【0023】
また、ロック機構は、爪5のロック/アンロック状態に応じて変位する変位部材15を備え、爪ロック確認手段を、変位部材15の位置を検出するセンサ29としているので、ロック機構の変位部材15を利用して爪5のロック/アンロック状態の確認が容易に行える。
さらに、センサ29を接触式としているので、変位部材15の変位を確実に検出できる。特に、コンプライアンスユニット23を介して取り付けられるハンド部24にセンサ29が設けられることで、接触させる爪5の姿勢が悪い場合でもセンサ29への負荷が軽減され、損傷のおそれを解消できる利点がある。よって、先端が一方向にしか動作しないセンサでも使用可能となる。
【0024】
そして、上記形態1の爪自動交換システムによれば、上述の効果に加えて、ベースジョー6に、爪5が取付溝4に挿入される際に爪5を取付溝4の入口に案内するガイド部(傾斜面9,9)が設けられているので、爪5が取付溝4の入口へ確実に誘導されてスムーズな爪5の装着が可能となる。
なお、上記形態1では、凹部を備えた把持ブロックを爪へ一体に設けているが、把持ブロックを省略してベースジョーの側面に凹部を直接形成してもよい。
【0025】
[形態2]
次に、本発明の他の形態を説明する。但し、チャック1をはじめ形態1と同じ構成部には同じ符号を付して重複する説明は省略する。但し、形態2では爪交換用ハンド20もチャック本体2に準じて前後の向きを特定する。
形態1では、前向きのロボットアーム12に対して軸部21及びブラケット22を介してコンプライアンスユニット23を下向きに吊り下げ支持し、コンプライアンスユニット23を介してハンド部24を前向きに支持する構造となっているが、形態2では、
図9,10に示すように、下向きのロボットアーム12の下端にコンプライアンスユニット23を下向きに吊り下げ支持し、コンプライアンスユニット23を介してハンド部24Aを下向きに支持している。
【0026】
ここでのハンド部24Aは、ブラケット板37へ下向きに固定される本体50と、本体50の正面側に設けられる前サポート板51と、本体50の背面側に設けられる後サポート板52と、本体50の左右両側に設けられる把持爪53,53とを備えている。センサ29は、後サポート板52の後方でブラケット板37から下向きに固定されている。
前サポート板51は、
図11に示すように、上端が本体50の正面に固定されて下端が本体50の前方で本体50と平行に延びる側面視逆L字状を有し、上端下面には、爪5のトップジョー8の上面に当接する押さえロッド54が下向きに設けられている。また、前サポート板51の下端背面には、トップジョー8の前面に当接するサポートガイド55が設けられている。
後サポート板52は、上端が本体50の背面に固定されて下端が本体50の下方で後方に延びる側面視L字状を有し、下端には、爪5のベースジョー6の上面に当接する左右一対の押さえボルト56,56が下向きに螺合されている。
【0027】
把持爪53は、本体50の左右に設けた一対のガイド溝57にそれぞれ嵌合し、本体50の側面から左右方向へ出没可能なスライド部58と、スライド部58の下面に固定されて下向きに垂下し、互いの対向面に突起60を形成した爪部59とを備えている。左右のスライド部58は、本体50内に設けた図示しない駆動部によって同調して相反方向へスライドするもので、このスライドにより、左右の爪部59,59は、突起60,60がベースジョー6の左右の側面に直接設けた凹部11,11にそれぞれ挿入してベースジョー6を左右から挟持するクランプ位置と、ベースジョー6の左右の側面から離れて突起60,60が凹部11,11から抜き取られるアンクランプ位置との間で開閉動作可能となっている。
【0028】
以上の如く構成された工作機械において、チャック1から爪5を取り外す際には、形態1と同様に、取り出す爪5が上側となる回転位置にチャック本体2を割り出してマスタジョー3のロック機構を解除した状態とする。このとき変位部材15はアンロック位置に突出している。
次に、ロボットアーム12によって、爪交換用ハンド20を、ハンド部24Aの爪部59,59をアンクランプ位置とした状態で、チャック本体2の上方に移動させ、そのまま
図11に示すように、センサ29の接触子30を変位部材15の真上に位置させる。このとき前サポート板51のサポートガイド55がトップジョー8の前面と干渉するが、ここではボルト7が螺合されるボルト穴16にサポートガイド55を進入させることで当接が回避されるため、後方への移動は許容される。
そして、変位部材15がアンロック位置であれば、接触子30が変位部材15に当接するため、センサ29からの検出信号によって爪5のアンロック状態が確認できる。
【0029】
アンロック状態を確認したら、ロボットアーム12によって、爪交換用ハンド20を、前方へ移動させた後、下方へ移動させて、
図12に示すように、ハンド部24Aの押さえロッド54がトップジョー8の上面に、押さえボルト56,56がベースジョー6の上面にそれぞれ当接し、サポートガイド55がトップジョー8の前面に当接する位置で停止させる。この場合、ベースジョー6の上端に、接触子30が当接して停止位置を確認する当接片17を設けてもよい。
その後、爪部59,59をクランプ位置へスライドさせれば、ハンド部24Aによって爪5を把持することができる。そこから爪交換用ハンド20を上昇させれば、爪5を取付溝4から上方へ抜き取ることができる。
【0030】
このとき、コンプライアンスユニット23のコンプライアンス機構部38により、ベース36がボディ35に対してハンド部24Aごと変位して位置の修正を行うため、ベースジョー6を取付溝4からスムーズに抜き取ることができる。そして、ロボットアーム12によって爪5を図示しない爪ストッカに収納すれば、取り外しは完了する。
【0031】
一方、チャック1に爪5を装着する際は、爪ストッカから、ロボットアーム12によって交換する爪5を取り出す。
そして、ロボットアーム12によって爪5を、チャック本体2の上方へ搬送する。このとき、コンプライアンスユニット23では、コンプライアンス機構部38のロック機構により、ボディ35とベース36とを原点位置で固定して、搬送時の爪5のぐらつきを規制する。
次に、爪5を、
図13,14に示すように、ベースジョー6が取付溝4の上方延長上となる位置に位置決めする。ここで、コンプライアンス機構部38のボディ35とベース36との固定を解除する。
【0032】
この状態で爪交換用ハンド20によって爪5を下方へスライドさせると、ベースジョー6が取付溝4の上側の開口(入口)に嵌合する。このとき、取付溝4とベースジョー6との間に左右方向への多少の誤差があっても、
図15(A)に示すように、ベースジョー6の下端に設けた傾斜面9,9によって左右位置の修正がなされてベースジョー6の下端は取付溝4の入口に導かれる。
続いて
図15(B)に示すように、コンプライアンスユニット23のコンプライアンス機構部38により、ベース36がボディ35に対してハンド部24Aごと変位して位置の修正を行うため、ベースジョー6は取付溝4へスムーズに挿入される。ベースジョー6が取付溝4内へ進入した後、マスタジョー3のロック機構によって爪5はロックされる。
【0033】
そして、爪交換用ハンド20で、ハンド部24Aの爪部59,59をアンクランプ位置へスライドさせて爪5をアンクランプした後、爪交換用ハンド20を上昇させれば、ハンド部24Aがチャック本体2から離間して
図9の状態となる。
以上の手順を、チャック本体2を回転させて取付溝4を順番に割り出して繰り返すことで、全ての爪5の交換が可能となる。
【0034】
このように、上記形態2の爪交換用ハンド20及び爪自動交換方法、爪自動交換システムにおいても、ロボットアーム12への取付状態でロボットアーム12とハンド部24Aとの間の相対的な変位を許容するコンプライアンスユニット23を備えることで、温度変化や各装置の繰り返し精度による位置ずれといった周りの環境変化に対し順応して確実に爪5を着脱することができる。また、形態1と同様に、爪ロック確認手段(センサ29)を設けているので、爪5がロックされた状態で取り外し動作がされるおそれがなくなる。
特にここでは、ハンド部24Aに、チャック1の前後方向で爪5に当接して当該前後方向で爪5を位置決めする第1ガイド(サポートガイド55)と、取付溝4への挿入方向で爪5に当接して当該挿入方向で爪5を位置決めする第2ガイド(押さえロッド54及び押さえボルト56)とからなる位置決め手段を設けているので、2方向で爪5が位置決めされてハンド部24Aによる爪5の把持姿勢が安定し、よりスムーズな交換が可能となる。また、ハンド部24Aでの把持力の低減にも繋がる。
【0035】
なお、上記形態2では、第2ガイドとして1つの押さえロッドと2つの押さえボルトとを前後に設けているが、数や形状はこれに限らず、前後共に1つずつ或いは2つずつとしたり、ロッドやボルトでなく板体やブロック体等を採用してもよい。但し、第2ガイドとしては前後両方に限らず、何れか一方のみとしてもよい。第1ガイドも、サポートガイド1つに限らず、上下や左右に複数設けたり、形状を変更したりしても差し支えない。
また、上記形態2では、ハンド部に把持される凹部をベースジョーの側面に設けているが、形態1のような把持ブロックを用いてもよい。
【0036】
そして、各形態に共通して、センサの形態は適宜変更可能で、タッチプローブ等も採用できる。勿論接触式のセンサに限らず、近接センサ等の非接触式のセンサも使用できるし、センサに限らずマイクロスイッチ等も使用できる。また、変位部材がある構造に限らず、ロック機構側にロック/アンロック状態で変位する構成部があればセンサ等で確認可能である。
さらに、爪ロック確認手段としては、センサ等を用いず、チャックの制御装置側でロック/アンロック状態に応じた信号を出力させて搬送装置側で当該信号に基づいてロック状態を確認する場合も含まれる。
【0037】
また、上記形態1,2では、ガイド部である傾斜面を爪側(ベースジョー)に設けているが、取付溝の入口側に傾斜面を設けてもよいし、爪と取付溝の入口との双方に設けてもよい。ガイド部としては傾斜面に限らず、曲面等も採用できる。
さらに、取付溝を上側に割り出して爪の交換を行っているが、搬送装置の形態等によっては上側に限らず、チャックの横側や下側を交換位置としても同様に爪の交換は可能である。
そして、チャックに対する爪の取り外しと取り付けとを一つずつ順番に行っているが、最初にロボットアーム等によってチャックから全ての爪を取り外した後、ロボットアーム等で爪の取り付けを連続して行う手順としても差し支えない。
一方、搬送装置もロボットアームに限らず、ローダーや交換専用に設けたアーム等であってもよい。旋盤のタレット(刃物台)も搬送装置として使用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1・・チャック、2・・チャック本体、3・・マスタジョー、4・・取付溝、5・・爪、6・・ベースジョー、8・・トップジョー、9・・傾斜面、10・・把持ブロック、11・・凹部、12・・ロボットアーム、15・・変位部材、20・・爪交換用ハンド、23・・コンプライアンスユニット、24,24A・・ハンド部、27・・プランジャ、29・・センサ、30・・接触子、35・・ボディ、36・・ベース、38・・コンプライアンス機構部、40,50・・本体、41,53・・把持爪、43,57・・ガイド溝、44,58・・スライド部、45,59・・爪部、48,60・・突起、50・・前サポート板、52・・後サポート板、54・・押さえロッド、55・・サポートガイド、56・・押さえボルト。