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  • 特許-タイヤの冷却装置及び冷却方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】タイヤの冷却装置及び冷却方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20220614BHJP
   B29C 35/16 20060101ALI20220614BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20220614BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/16
B29L30:00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018074510
(22)【出願日】2018-04-09
(65)【公開番号】P2019181777
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅香 潤
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-205576(JP,A)
【文献】特開2010-274591(JP,A)
【文献】特開平02-022016(JP,A)
【文献】特開2018-030273(JP,A)
【文献】特開2006-027107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを保持する保持手段と、経路部材とを備え、前記経路部材が、前記タイヤの内部に冷却媒体を供給する供給経路と、当該タイヤの外部に当該冷却媒体を排出する排出経路とを有する、タイヤの冷却装置を用いて、加硫直後のタイヤをインフレート状態で冷却するタイヤの冷却方法であって、
前記保持手段に前記タイヤを保持させる保持工程と、
前記供給経路を通じて前記タイヤの内部に新鮮な冷却媒体を供給し、当該タイヤの内圧を予め定められた圧力Pbに設定するインフレート工程と、
前記排出経路を通じて前記タイヤの内部から冷却媒体を排出しながら、前記供給経路を通じて当該タイヤの内部に新鮮な冷却媒体を供給するパージ工程と
を含み、
前記供給経路が、前記タイヤの径方向に沿うとともに、当該タイヤの内部に前記冷却媒体を吹き出す、吹き出しルートを備えており、
前記吹き出しルートが前記タイヤの径方向に対して傾斜しており、当該タイヤの軸方向において、当該吹き出しルートの口がその根元よりも内側に位置しており、
前記吹き出しルートが径方向に対してなす角度が30°以上60°以下であり、
前記パージ工程において、前記タイヤの内圧が前記圧力Pbよりも低い圧力Psで保持され、
前記圧力Pbと前記圧力Psとの差が20kPa以上である、タイヤの冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの冷却装置及び冷却方法に関する。詳細には、本発明は、加硫直後のタイヤをインフレート状態で冷却するための冷却装置及びこの冷却装置を用いて当該タイヤを冷却するための冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、生のタイヤ、すなわち、ローカバーをモールド内で加圧及び加熱することにより得られる。モールドから取り出された加硫直後のタイヤは、高い温度を有する。
【0003】
タイヤのカーカスは、ポリエステル繊維等の有機繊維からなるコード(以下、有機繊維コードという。)を含む。加硫直後のタイヤをそのまま冷却すると、有機繊維コードが収縮し、タイヤが変形する恐れがある。
【0004】
冷却に伴うタイヤの変形を抑えるために、加硫直後のタイヤをインフレート状態で保持し、このタイヤの温度が有機繊維コードの収縮が収まる温度以下に到達するまで、タイヤを冷却するための装置(以下、ポストキュアインフレーターという。)について、様々な検討が行われている(例えば、特開平4-131210号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-131210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポストキュアインフレーターに、タイヤは横にした状態でセットされる。セット後、タイヤの内部に冷却媒体が充填され、タイヤはインフレート状態で保持される。これによりタイヤは冷却される。この冷却の過程において、高い温度を有する冷却媒体が上側に集まり、低い温度を有する冷却媒体が下側に集まるため、タイヤの内部において、上側と下側とで温度差が生じることが懸念される。冷却媒体の温度はタイヤの冷却速度に影響するため、この場合、タイヤの上側部分の成形状態と下側部分の成形状態とに、違いが生じる恐れがある。
【0007】
前述の特許文献1は、タイヤの内部に充填されたエアを強制的に循環させる、エア循環手段を開示する。しかし、この特許文献1には、冷却の過程において、タイヤの内部に充填された冷却媒体の上側と下側とに温度差が生じることについての開示も、エアを強制的に循環させる場合にタイヤの内部にエアをどのように吹き出させるかについての開示もない。
【0008】
高品質なタイヤを得るには、タイヤ全体を一様に冷却する必要があり、冷却過程においてタイヤの内部に生じる温度差を解消できる技術の確立が求められている。
【0009】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、タイヤ全体を一様に冷却することができる、タイヤの冷却装置及び冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るタイヤの冷却装置は、加硫直後のタイヤをインフレート状態で冷却するタイヤの冷却装置であって、前記タイヤを保持する保持手段と、前記タイヤの内部に冷却媒体を供給する供給経路と、当該タイヤの外部に当該冷却媒体を排出する排出経路とを有する、経路部材とを備えている。
前記供給経路は、前記タイヤの径方向に沿うとともに、当該タイヤの内部に前記冷却媒体を吹き出す、吹き出しルートを備えている。
前記吹き出しルートは前記タイヤの径方向に対して傾斜しており、当該タイヤの軸方向において、当該吹き出しルートの口はその根元よりも内側に位置している。
前記吹き出しルートが径方向に対してなす角度は、30°以上60°以下である。
【0011】
好ましくは、このタイヤの冷却装置では、前記経路部材は複数の吹き出しルートを有している。前記経路部材において、これら吹き出しルートの口は周方向に等間隔で配置されている。
【0012】
好ましくは、このタイヤの冷却装置では、前記保持手段は上下一対のリム体を備えている。前記経路部材は、下側のリム体にセットされている。
【0013】
本発明に係るタイヤの冷却方法は、前述のタイヤの冷却装置を用いて、加硫直後のタイヤをインフレート状態で冷却するタイヤの冷却方法であって、
(1)前記保持手段に前記タイヤを保持させる保持工程、
(2)前記供給経路を通じて前記タイヤの内部に新鮮な冷却媒体を供給し、当該タイヤの内圧を予め定められた圧力Pbに設定するインフレート工程、及び、
(3)前記排出経路を通じて前記タイヤの内部から冷却媒体を排出しながら、前記供給経路を通じて当該タイヤの内部に新鮮な冷却媒体を供給するパージ工程
を含んでいる。
【0014】
好ましくは、このタイヤの冷却方法では、前記パージ工程において、前記タイヤの内圧は前記圧力Pbよりも低い圧力Psで保持される。
【0015】
好ましくは、このタイヤの冷却方法では、前記圧力Pbと前記圧力Psとの差は20kPa以上である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るタイヤの冷却装置では、タイヤの内部において冷却媒体が効果的に攪拌されるので、このタイヤの内部の冷却媒体に温度差は生じにくい。タイヤ全体を一様に冷却することができるので、この冷却装置によれば、高品質なタイヤが得られる。
【0017】
本発明に係るタイヤの冷却方法においても、タイヤの内部において冷却媒体が効果的に攪拌されるので、タイヤの内部の冷却媒体に温度差は生じにくい。タイヤ全体を一様に冷却することができるので、この冷却方法によれば、高品質なタイヤが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤの冷却装置の概要が示された概略図である。
図2図2は、冷却装置の給排手段が示された平面図である。
図3図3は、図2のa-a線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0020】
[冷却装置]
図1には、本発明の一実施形態に係る冷却装置2の一部が示されている。この冷却装置2では、加硫直後のタイヤTがインフレート状態で冷却される。この冷却装置2は、ポストキュアインフレーターとも称される。この図1に示されているように、この冷却装置2にはタイヤTは横にしてセットされる。この図1において、左右方向はこの冷却装置2の幅方向であり、タイヤTの径方向に相当する。上下方向は、この冷却装置2の上下方向であり、タイヤTの軸方向に相当する。
【0021】
この冷却装置2には、加硫直後のタイヤTを冷却するために冷却媒体が供給される。この冷却媒体には通常、温度が5℃~40℃の範囲で調整された、ガスが用いられる。
【0022】
この冷却装置2では、タイヤTを冷却することができるのであれば、冷却媒体としてのガスに特に制限はない。このようなガスとしては、例えば、空気及び窒素が挙げられる。タイヤTのゴムとの反応性が低い観点から、冷却媒体としては窒素が好ましい。
【0023】
この冷却装置2は、タイヤTを保持する保持手段4と、タイヤTの内部に冷却媒体を供給し、このタイヤTの内部からこの冷却媒体を排出する給排手段6とを備えている。なお、この図1において、一点鎖線CLはこの冷却装置2の中心線である。この中心線CLは、この冷却装置2にセットされたタイヤTの回転軸の軸心とも一致する。
【0024】
保持手段4は、上下一対のリム体8を備えている。これらリム体8は、上下に距離を隔てて配置されている。この冷却装置2では、上側のリム体8aと下側のリム体8bとは、互いに向き合っている。
【0025】
リム体8はそれぞれ、ディスク状の基部10と、リング状の嵌合部12とを備えている。嵌合部12は、基部10の径方向外側に設けられている。図1に示されているように、この嵌合部12にタイヤTのビード部Bが組み合わされる。
【0026】
この冷却装置2は、図示されない昇降手段により、下側のリム体8bに対して上側のリム体8aが上下に移動できるように構成されている。これにより、上下のリム体8の距離が調整される。
【0027】
この冷却装置2では、タイヤTが保持手段4に保持されることにより、タイヤTと上下のリム体8とにより囲まれた空間Rが形成される。この空間RがタイヤTの内部であり、この空間Rに冷却媒体が充填される。
【0028】
給排手段6は、ディスク状の経路部材14を備えている。この経路部材14は、リム体8の軸方向内側において、このリム体8に積層されている。この冷却装置2では、経路部材14の径方向中心位置PCが中心線CL上に位置するように、経路部材14はリム体8に取り付けられる。
【0029】
この冷却装置2では、給排手段6は、タンク(図示されず)に貯蔵されている冷却媒体をタイヤTの内部に供給するための供給パイプ16と、冷却媒体の供給とその供給停止とを調整するためのバルブ18と、タイヤTの内部にある冷却媒体を外部に排出するための排出パイプ20と、この冷却媒体の排出とその排出停止とを調整するバルブ22とを備えている。
【0030】
この冷却装置2では、タンク(図示されず)内の冷却媒体をタイヤTの内部に供給する場合、供給側のバルブ18が開かれる。冷却媒体は、供給パイプ16を経由して経路部材14に導入される。冷却媒体は、この経路部材14を通じてタイヤTの内部に供給される。タイヤTの内部から冷却媒体を排出する場合、排出側のバルブ22が開かれる。冷却媒体は、経路部材14を通じて排出パイプ20に導入される。この冷却媒体は、この排出パイプ20を通じて外部に排出される。
【0031】
図2には、経路部材14が示されている。図2において、紙面に対して垂直な方向は経路部材14の厚さ方向であり、タイヤTの軸方向に相当する。この図2においては、紙面の表側がタイヤTの軸方向内側に相当する。
【0032】
図3は、図2のa-a線に沿った、経路部材14の断面図である。この図2のa-a線は経路部材14の径方向中心位置PC(以下、経路部材14の中心PCという。)を通る。この図3において、左右方向は経路部材14の径方向であり、タイヤTの径方向に相当する。上下方向は経路部材14の厚さ方向であり、タイヤTの軸方向に相当する。この図3においては、紙面の上側がタイヤTの軸方向内側に相当し、この紙面の下側がタイヤTの軸方向外側に相当する。
【0033】
この冷却装置2では、経路部材14は供給経路24と排出経路26とを有する。この経路部材14では、供給経路24と排出経路26とは互いに独立している。
【0034】
供給経路24は、タンク(図示されず)に貯蔵されている新鮮な冷却媒体をタイヤTの内部に供給する。この供給経路24は、冷却媒体のルートとして、接続ルート28と、吹き出しルート30と、中間ルート32とを備えている。
【0035】
接続ルート28は、経路部材14の底面34から上向きに伸びている。この接続ルート28には、供給パイプ16が繋げられる。
【0036】
図2に示されているように、経路部材14を平面視した場合、吹き出しルート30は経路部材14の中心PCの側から径方向外向きに伸びている。この吹き出しルート30は、冷却装置2にセットされるタイヤTとの関係においては、このタイヤTの径方向に沿っている。図示されていないが、この吹き出しルート30の断面形状は円形である。この断面形状が矩形であってもよい。
【0037】
図3に示されているように、経路部材14の厚さ方向に沿った、この経路部材14の断面においては、吹き出しルート30はこの経路部材14の径方向に対して傾斜している。つまり、この吹き出しルート30はタイヤTの径方向に対して傾斜している。経路部材14の厚さ方向においては、吹き出しルート30の口36はこの経路部材14の頂面38側に位置しており、この吹き出しルート30の根元40はこの経路部材14の底面34側に位置している。つまり、タイヤTの軸方向において、吹き出しルート30の口36はこの吹き出しルート30の根元40よりも内側に位置している。なお、この図3において、角度αは、吹き出しルート30が径方向に対してなす角度である。
【0038】
この冷却装置2では、吹き出しルート30の口36は経路部材14の側面42に設けられている。この吹き出しルート30の口36が、この経路部材14の頂面38に設けられてもよい。
【0039】
中間ルート32は、接続ルート28と吹き出しルート30との間に位置する。この中間ルート32は、接続ルート28と連通しており、吹き出しルート30とも連通している。この経路部材14では、中間ルート32はリング状を呈している。
【0040】
この冷却装置2では、供給側のバルブ18を開けることにより、供給パイプ16を通じて冷却媒体が供給経路24の接続ルート28に導入される。この冷却媒体は、中間ルート32を経由して吹き出しルート30に入り、この吹き出しルート30の口36から吹き出される。これにより、タイヤTの内部に冷却媒体が供給される。
【0041】
排出経路26は、タイヤTの内部から外部に冷却媒体を排出する。この排出経路26は、冷却媒体のルートとして、誘導ルート44と、接続ルート46と、中間ルート48とを備えている。
【0042】
誘導ルート44は、経路部材14の頂面38から下向きに伸びている。この誘導ルート44の口50は、この頂面38に設けられている。この経路部材14では、径方向において、この誘導ルート44の口50は吹き出しルート30の口36よりも内側に位置している。この冷却装置2では、この誘導ルート44の口50は経路部材14の中心PCに位置している。
【0043】
接続ルート46は、経路部材14の底面34から上向きに伸びている。この接続ルート46には、排出パイプ20が繋げられる。
【0044】
中間ルート48は、誘導ルート44と接続ルート46との間に位置する。この中間ルート48は、誘導ルート44と連通しており、接続ルート46とも連通している。
【0045】
この冷却装置2では、排出側のバルブ22を開けることにより、タイヤTの内部にある冷却媒体は誘導ルート44の口50から排出経路26に導入される。冷却媒体は、誘導ルート44を通り中間ルート48を経由して接続ルート46に入る。この冷却媒体は、接続ルート46から排出パイプ20に導入され、この排出パイプ20を通じて外部に排出される。
【0046】
この冷却装置2では、供給経路24は、タイヤTの径方向に沿うとともに、このタイヤTの内部にこの冷却媒体を吹き出す、吹き出しルート30を備えている。
【0047】
この冷却装置2は、供給側のバルブ18を開けることにより、インフレート状態にあるタイヤTの内部に吹き出しルート30から冷却媒体を吹き出すことができる。この吹き出しにより、タイヤTの内部において冷却媒体が攪拌される。
【0048】
前述したように、この冷却装置2では、吹き出しルート30はタイヤTの径方向に対して傾斜しており、タイヤTの軸方向において、吹き出しルート30の口36はその根元40よりも内側に位置している。特に、この冷却装置2では、吹き出しルート30が径方向に対してなす角度αは、30°以上60°以下である。
【0049】
この冷却装置2では、冷却媒体は、吹き出しルート30の口36から、経路部材14がセットされていない側のタイヤTのショルダー部分Sに向かって吹き出される。この吹き出しにより、タイヤTの内部の冷却媒体が効果的に撹拌される。この冷却装置2では、タイヤTの内部の冷却媒体に、温度差は生じにくい。この冷却装置2では、タイヤT全体が一様に冷却されるので、この冷却装置2にセットされたタイヤTの上側部分と下側部分とが同様の成形状態で得られる。この冷却装置2によれば、高品質なタイヤTが得られる。この観点から、吹き出しルート30が径方向に対してなす角度αは、40°以上が好ましく、50°以下が好ましい。
【0050】
図2に示されているように、この冷却装置2の経路部材14には、複数の吹き出しルート30が設けられている。具体的には、この経路部材14には、4本の吹き出しルート30が設けられている。これら吹き出しルート30は、経路部材14の中心PCから外側に向かって放射状に延びている。これら吹き出しルート30の口36は、周方向に等間隔で配置されている。このため、この冷却装置2では、吹き出しルート30から吹き出された冷却媒体により、タイヤTの内部の冷却媒体がより効果的に攪拌される。この冷却装置2では、タイヤTの内部の冷却媒体に、温度差は生じにくい。この冷却装置2では、タイヤT全体が一様に冷却されるので、この冷却装置2にセットされたタイヤTの上側部分と下側部分とが同様の成形状態で得られる。この冷却装置2によれば、高品質なタイヤTが得られる。この観点から、この冷却装置2では、経路部材14が複数の吹き出しルート30を有しており、この経路部材14において、これら吹き出しルート30の口36が周方向に等間隔で配置されているのが好ましい。この経路部材14に設けられる吹き出しルート30の本数としては、3本以上が好ましく、4本以上がより好ましい。この本数としては、8本以下が好ましく、6本以下がより好ましい。
【0051】
冷却装置2においてインフレート状態で保持されたタイヤTにおいては、その上側のショルダー部分Sに、高い温度を有する冷却媒体が集まる。
【0052】
図1に示されているように、この冷却装置2では、経路部材14は下側のリム体8bにセットされている。このため、この冷却装置2では、この経路部材14の吹き出しルート30から、高い温度を有する冷却媒体が集まる、タイヤTの上側のショルダー部分Sに向かって、冷却媒体が吹き出される。この冷却装置2では、吹き出しルート30から吹き出された冷却媒体により、タイヤTの内部の冷却媒体がより効果的に攪拌される。この冷却装置2では、タイヤTの内部の冷却媒体に、温度差は生じにくい。この冷却装置2では、タイヤT全体が一様に冷却されるので、この冷却装置2にセットされたタイヤTの上側部分と下側部分とが同様の成形状態で得られる。この冷却装置2によれば、高品質なタイヤTが得られる。この観点から、この冷却装置2では、経路部材14は下側のリム体8bにセットされるのが好ましい。
【0053】
[冷却方法]
以上説明した冷却装置2において、加硫直後のタイヤTがインフレート状態で冷却される。このタイヤTの冷却方法について以下に説明する。この冷却方法は、保持工程と、インフレート工程と、パージ工程とを含んでいる。この冷却方法では、インフレート工程として、第一インフレート工程及び第二インフレート工程が設けられている。さらにパージ工程として、第一パージ工程及び第二パージ工程が設けられている。以下に、保持工程、第一インフレート工程、第一パージ工程、第二インフレート工程及び第二パージ工程について説明する。
【0054】
[保持工程]
この冷却方法ではまず、保持工程が行われる。この保持工程では、モールド(図示されず)から取り出された加硫直後のタイヤTが、下側のリム体8bに載せられる。昇降手段(図示されず)により、上側のリム体8aが下降させられる。これにより、上側のリム体8aと下側のリム体8bとの間でタイヤTが横向きで保持される。
【0055】
[第一インフレート工程]
この冷却方法では、保持工程の次に第一インフレート工程が行われる。この第一インフレート工程では、タイヤTの内部に冷却媒体が供給される。この冷却媒体の供給のために、供給側のバルブ18が開けられる。これにより、供給パイプ16を通じて経路部材14の供給経路24に冷却媒体が導入される。この冷却媒体は、吹き出しルート30の口36から吹き出される。この第一インフレート工程では、排出側のバルブ22は閉じられるので、冷却媒体の供給により、タイヤTの内圧は上昇する。そして、この内圧が予め定められた圧力Pbに達した時点で、供給側のバルブ18が閉じられる。この第一インフレート工程では、経路部材14の供給経路24を通じてタイヤTの内部に新鮮な冷却媒体を供給し、タイヤTの内圧が圧力Pbに設定される。この冷却方法では、第一インフレート工程に要する時間は通常、40秒~50秒の範囲で設定される。この第一インフレート工程に要する時間は、供給側のバルブ18を開けてタイヤTの内部への、冷却媒体の供給を開始してから、この供給を停止するためにこのバルブ18を閉じるまでの時間で表される。
【0056】
[第一パージ工程]
この冷却方法では、第一インフレート工程の次に第一パージ工程が行われる。この第一パージ工程では、排出側のバルブ22が開けられる。これにより、タイヤTの内部から冷却媒体が排出される。この第一パージ工程ではさらに、供給側のバルブ18が開けられる。これにより、タイヤTの内部に新鮮な冷却媒体が供給される。この第一パージ工程では、経路部材14の排出経路26を通じてタイヤTの内部から冷却媒体を排出しながら、供給経路24を通じてタイヤTの内部に新鮮な冷却媒体が供給される。この第一パージ工程では、タイヤTの内圧は予め設定された圧力Psで保持されるとともに、タイヤTの内部からの冷却媒体の排出と、タイヤTの内部への新鮮な冷却媒体の供給とが所定時間行われる。この冷却方法では、排出側のバルブ22を閉じて冷却媒体の排出を停止することにより、第一パージ工程は終了する。この冷却方法では、第一パージ工程に要する時間は通常、10秒から20秒の範囲で設定される。この第一パージ工程に要する時間は、排出側のバルブ22及び供給側のバルブ18を開けて冷却媒体の排出と冷却媒体の供給とを開始してから、冷却媒体の排出を停止するために排出側のバルブ22を閉じるまでの時間で表される。
【0057】
[第二インフレート工程]
この冷却方法では、第一パージ工程の次に第二インフレート工程が行われる。この第二インフレート工程は、前述の第一パージ工程において、排出側のバルブ22を閉じることで開始される。この第二インフレート工程では、供給側のバルブ18は開けられているので、新鮮な冷却媒体が経路部材14の供給経路24を通じてタイヤTの内部に供給され、タイヤTの内圧は上昇する。この内圧が、前述の第一インフレート工程と同様、予め設定された圧力Pbに達した時点で、バルブ18が閉じられる。この第二インフレート工程では、経路部材14の供給経路24を通じてタイヤTの内部に新鮮な冷却媒体を供給し、タイヤTの内圧が圧力Pbで設定される。この冷却方法では、第二インフレート工程に要する時間は通常、100秒~110秒の範囲で設定される。第二インフレート工程に要する時間は、第一パージ工程において排出側のバルブ22を閉じてから、タイヤTの内部への冷却媒体の供給を停止するために供給側のバルブ18を閉じるまでの時間で表される。
【0058】
[第二パージ工程]
この冷却方法では、第二インフレート工程の次に第二パージ工程が行われる。この第二パージ工程では、第一パージ工程と同様、排出側のバルブ22が開けられる。これにより、タイヤTの内部から冷却媒体が排出される。この第二パージ工程ではさらに、供給側のバルブ18が開けられる。これにより、タイヤTの内部に新鮮な冷却媒体が供給される。この第二パージ工程においても、第一パージ工程と同様、経路部材14の排出経路26を通じてタイヤTの内部から冷却媒体を排出しながら、供給経路24を通じてタイヤTの内部に新鮮な冷却媒体が供給される。この第二パージ工程においても、第一パージ工程と同様、タイヤTの内圧は予め設定された圧力Psで保持されるとともに、タイヤTの内部からの冷却媒体の排出と、タイヤTの内部への新鮮な冷却媒体の供給とが所定時間行われる。この冷却方法では、供給側のバルブ18を閉じて冷却媒体の供給を停止することにより、第二パージ工程は終了する。この冷却方法では、第二パージ工程に要する時間は通常、10秒から20秒の範囲で設定される。この第二パージ工程に要する時間は、排出側のバルブ22及び供給側のバルブ18を開けて冷却媒体の排出と冷却媒体の供給とを開始してから、冷却媒体の排出を停止するために排出側のバルブ22を閉じるまでの時間で表される。
【0059】
この冷却方法では、第二パージ工程が終了すると、昇降手段(図示されず)により、上側のリム体8aが上昇させられる。タイヤTが取り出され、次に冷却される加硫直後のタイヤTが保持手段4にセットされる。冷却後のタイヤTを取り出し、次の加硫直後のタイヤTに置き換える工程は、復帰工程とも称される。この冷却方法は、復帰工程を含んでいる。
【0060】
この冷却方法は、パージ工程を含んでいる。この冷却方法では、このパージ工程において、タイヤTの内部の冷却媒体が新鮮な冷却媒体に置き換えられる。この冷却方法では、冷却媒体の温度上昇が抑えられるので、タイヤTが効果的に冷却される。しかも、冷却媒体が、経路部材14の吹き出しルート30の口36から、経路部材14がセットされていない側のタイヤTのショルダー部分Sに向かって吹き出されるので、タイヤTの内部において、冷却媒体が効果的に撹拌される。この冷却方法では、タイヤTの内部の冷却媒体に温度差は生じにくい。この冷却方法では、タイヤT全体が一様に冷却されるので、この冷却方法によって冷却されるタイヤTの上側部分と下側部分とが同様の成形状態で得られる。この冷却方法によれば、高品質なタイヤTが得られる。
【0061】
この冷却方法では、パージ工程において、タイヤTの内圧は、インフレート工程において設定される圧力Pbよりも低い圧力Psで保持されるのが好ましい。これにより、経路部材14の供給経路24を通じた冷却媒体の供給が促され、タイヤTの内部における冷却媒体の置換、そしてこの冷却媒体の撹拌がより効果的に促される。この冷却方法では、タイヤTの内部の冷却媒体に温度差は生じにくい上に、タイヤTはより効果的に冷却される。この観点から、圧力Pbと圧力Psとの差は20kPa以上が好ましい。冷却に要する時間が適切に維持される観点から、この圧力Pbと圧力Psとの差は40kPa以下が好ましい。なお、この冷却方法では、インフレート工程において設定されるタイヤTの内圧、すなわち、圧力Pbは、0.6MPaから0.9MPaの範囲で適宜設定される。
【0062】
この冷却方法では、第一インフレート工程、第一パージ工程、第二インフレート工程及び第二パージ工程においてタイヤTは冷却される。この冷却方法において、この第一インフレート工程、第一パージ工程、第二インフレート工程及び第二パージ工程は、この冷却方法のメイン工程である。この冷却方法では、このメイン工程が、第一インフレート工程及び第一パージ工程で構成されてもよい。このメイン工程が、第一インフレート工程、第一パージ工程、第二インフレート工程及び第二パージ工程に加えて、第三インフレート工程及び第三パージ工程をさらに含むように構成されてもよい。この冷却方法では、タイヤTの内部の冷却媒体に温度差が生じにくく、タイヤTをより効果的に冷却することができ、しかも、タイヤTの加硫サイクルと適切に調和させることでできる観点から、このメイン工程は、第一インフレート工程、第一パージ工程、第二インフレート工程及び第二パージ工程からなる4つの工程を含むのが好ましい。
【0063】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく、この技術的範囲には特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明されたタイヤの冷却装置及び冷却方法は、種々のタイプのタイヤに適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
2・・・冷却装置
4・・・保持手段
6・・・給排手段
8、8a、8b・・・リム体
14・・・経路部材
16・・・供給パイプ
18・・・供給側のバルブ
20・・・排出パイプ
22・・・排出側のバルブ
24・・・供給経路
26・・・排出経路
28・・・供給経路24の接続ルート
30・・・供給経路24の吹き出しルート
32・・・供給経路24の中間ルート
36・・・吹き出しルート30の口
40・・・吹き出しルート30の根元
44・・・排出経路26の誘導ルート
46・・・排出経路26の接続ルート
48・・・排出経路26の中間ルート
T・・・タイヤ
B・・・タイヤTのビード部
S・・・タイヤTのショルダー部分

図1
図2
図3