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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
B60C11/13 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018098171
(22)【出願日】2018-05-22
(65)【公開番号】P2019202607
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】中島 幸一
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-231600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行時に接地するトレッド面を含むトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続してのびる周方向溝を含み、
前記周方向溝は、溝底と、前記溝底から前記トレッド面に向けてタイヤ半径方向にのびる一対の溝壁とを有し、
前記溝底は、前記周方向溝の最も深い位置で前記トレッド面に平行な面として規定される溝底基準面から、タイヤ半径方向外側に突出する溝底隆起部を含み、
前記溝底隆起部は、前記周方向溝の幅方向の第1の側に位置する第1溝底隆起部と、前記幅方向の第2の側に位置する第2溝底隆起部とを含み、
前記第1溝底隆起部及び前記第2溝底隆起部は、それぞれ、タイヤ半径方向に対して±10°以内の角度で傾斜する第1底面と、前記第1底面よりもタイヤ半径方向に対して大きい角度で傾斜する第2底面とを有する隆起単位を複数含み、
前記第1溝底隆起部の前記第2底面の傾斜の向きは、前記第2溝底隆起部の前記第2底面の傾斜の向きと逆向きである、
タイヤ。
【請求項2】
前記第1溝底隆起部の前記第1底面は、タイヤ周方向において、前記第2溝底隆起部の前記第1底面と同じ位置に配される、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
走行時に接地するトレッド面を含むトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続してのびる周方向溝を含み、
前記周方向溝は、溝底と、前記溝底から前記トレッド面に向けてタイヤ半径方向にのびる一対の溝壁とを有し、
前記溝底は、前記周方向溝の最も深い位置で前記トレッド面に平行な面として規定される溝底基準面から、タイヤ半径方向外側に突出する溝底隆起部を含み、
前記溝底隆起部は、前記周方向溝の幅方向の第1の側に位置する第1溝底隆起部と、前記幅方向の第2の側に位置する第2溝底隆起部とを含み、
前記第1溝底隆起部及び前記第2溝底隆起部は、それぞれ、略タイヤ半径方向にのびる第1底面と、前記第1底面よりもタイヤ半径方向に対して大きい角度で傾斜する第2底面とを有する隆起単位を複数含み、
前記第1溝底隆起部の前記第2底面の傾斜の向きは、前記第2溝底隆起部の前記第2底面の傾斜の向きと逆向きであり、
前記第1溝底隆起部の前記第1底面は、タイヤ周方向において、前記第2溝底隆起部の前記第1底面と異なる位置に配される
タイヤ。
【請求項4】
前記第1底面の前記溝底基準面からのタイヤ半径方向の高さは、1mm以上である、請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第1底面の前記溝底基準面からのタイヤ半径方向の高さは、タイヤ周方向に隣接する前記第1底面間のタイヤ周方向長さの3%以上である、請求項1~4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
前記一対の溝壁は、前記第1の側に位置する第1溝壁と、前記第2の側に位置する第2溝壁とを含み、
前記第1溝壁及び前記第2溝壁の少なくとも一方は、前記周方向溝の溝幅の最も広い位置でタイヤ周方向に沿った面として規定される溝壁基準面から、前記周方向溝の内側に突出する溝壁隆起部を含み、
前記溝壁隆起部は、タイヤ幅方向にのびる第1壁面と、前記第1壁面よりもタイヤ幅方向に対して大きい角度で傾斜する第2壁面とを有する隆起単位を複数含む、請求項1~5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第1溝壁の前記第2壁面は、トレッド平面視において、前記第2溝壁の前記第2壁面に対して、略平行である、請求項6に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第1壁面は、タイヤ周方向において、前記第1底面と同じ位置に配される、請求項6又は7に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記第1壁面の前記溝壁基準面からのタイヤ幅方向の突出長さは、1mm以上である、請求項6~8のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項10】
前記第1壁面の前記溝壁基準面からのタイヤ幅方向の突出長さは、タイヤ周方向に隣接する前記第1壁面間のタイヤ周方向長さの3%以上である、請求項6~9のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド部に、タイヤ周方向に連続してのびる周方向溝が形成されたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雪上性能を向上させるために、トレッド部に形成されたタイヤ周方向に連続してのびる周方向溝の溝壁形状を特定する試みが行われている。例えば、下記特許文献1は、周方向溝に拡幅部を設けることで雪上性能を向上させたタイヤを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-137763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のタイヤは、使用状態によって雪上走行時の駆動力及び制動力が不足する場合があり、高い雪上性能を維持するために更なる改善が求められていた。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、周方向溝の形状を特定することを基本として、雪上性能を向上し得るタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、走行時に接地するトレッド面を含むトレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続してのびる周方向溝を含み、前記周方向溝は、溝底と、前記溝底から前記トレッド面に向けてタイヤ半径方向にのびる一対の溝壁とを有し、前記溝底は、前記周方向溝の最も深い位置で前記トレッド面に平行な面として規定される溝底基準面から、タイヤ半径方向外側に突出する溝底隆起部を含み、前記溝底隆起部は、前記周方向溝の幅方向の第1の側に位置する第1溝底隆起部と、前記幅方向の第2の側に位置する第2溝底隆起部とを含み、前記第1溝底隆起部及び前記第2溝底隆起部は、それぞれ、略タイヤ半径方向にのびる第1底面と、前記第1底面よりもタイヤ半径方向に対して大きい角度で傾斜する第2底面とを有する隆起単位を複数含み、前記第1溝底隆起部の前記第2底面の傾斜の向きは、前記第2溝底隆起部の前記第2底面の傾斜の向きと逆向きであることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るタイヤにおいて、前記第1溝底隆起部の前記第1底面は、タイヤ周方向において、前記第2溝底隆起部の前記第1底面と同じ位置に配されるのが望ましい。
【0008】
本発明に係るタイヤにおいて、前記第1溝底隆起部の前記第1底面は、タイヤ周方向において、前記第2溝底隆起部の前記第1底面と異なる位置に配されるのが望ましい。
【0009】
本発明に係るタイヤにおいて、前記第1底面の前記溝底基準面からのタイヤ半径方向の高さは、1mm以上であるのが望ましい。
【0010】
本発明に係るタイヤにおいて、前記第1底面の前記溝底基準面からのタイヤ半径方向の高さは、タイヤ周方向に隣接する前記第1底面間のタイヤ周方向長さの3%以上であるのが望ましい。
【0011】
本発明に係るタイヤにおいて、前記一対の溝壁は、前記第1の側に位置する第1溝壁と、前記第2の側に位置する第2溝壁とを含み、前記第1溝壁及び前記第2溝壁の少なくとも一方は、前記周方向溝の溝幅の最も広い位置でタイヤ周方向に沿った面として規定される溝壁基準面から、前記周方向溝の内側に突出する溝壁隆起部を含み、前記溝壁隆起部は、タイヤ幅方向にのびる第1壁面と、前記第1壁面よりもタイヤ幅方向に対して大きい角度で傾斜する第2壁面とを有する隆起単位を複数含むのが望ましい。
【0012】
本発明に係るタイヤにおいて、前記第1溝壁の前記第2壁面は、トレッド平面視において、前記第2溝壁の前記第2壁面に対して、略平行であるのが望ましい。
【0013】
本発明に係るタイヤにおいて、前記第1壁面は、タイヤ周方向において、前記第1底面と同じ位置に配されるのが望ましい。
【0014】
本発明に係るタイヤにおいて、前記第1壁面の前記溝壁基準面からのタイヤ幅方向の突出長さは、1mm以上であるのが望ましい。
【0015】
本発明に係るタイヤにおいて、前記第1壁面の前記溝壁基準面からのタイヤ幅方向の突出長さは、タイヤ周方向に隣接する前記第1壁面間のタイヤ周方向長さの3%以上であるのが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のタイヤにおいて、周方向溝の溝底は、周方向溝の最も深い位置でトレッド面に平行な面として規定される溝底基準面から、タイヤ半径方向外側に突出する溝底隆起部を含んでいる。このような周方向溝は、溝底隆起部が雪に食い込み、雪上性能を向上させることができる。
【0017】
本発明のタイヤにおいて、溝底隆起部は、周方向溝の幅方向の第1の側に位置する第1溝底隆起部と、前記幅方向の第2の側に位置する第2溝底隆起部とを含み、前記第1溝底隆起部及び前記第2溝底隆起部は、それぞれ、略タイヤ半径方向にのびる第1底面と、前記第1底面よりもタイヤ半径方向に対して大きい角度で傾斜する第2底面とを有する隆起単位を複数含んでいる。このような溝底隆起部は、雪が第1底面及び第2底面によって圧縮されることで雪の凝縮が促進され、タイヤが摩耗した状態であっても、雪柱せん断力を向上させ得る。
【0018】
本発明のタイヤにおいて、第1溝底隆起部の第2底面の傾斜の向きは、第2溝底隆起部の前記第2底面の傾斜の向きと逆向きである。このような溝底隆起部は、タイヤの回転方向によらず、同様の雪上性能を発揮することができる。このため、本発明のタイヤは、雪上走行時の駆動力及び制動力が共に向上し、タイヤの回転方向によらず、雪上性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のタイヤの周方向溝の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1の周方向溝の平面図である。
図3図2のA-A線の断面図である。
図4図2のB-B線の断面図である。
図5図1の周方向溝の断面斜視図である。
図6】他の実施形態の周方向溝の平面図である。
図7】さらに他の実施形態の周方向溝の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ1の周方向溝3を示す斜視図であり、図2は、周方向溝3の平面図である。図1及び図2に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、走行時に路面に接地するトレッド面2aを含むトレッド部2を有している。タイヤ1は、例えば、冬用タイヤとして好適に用いられる。ここで、冬用タイヤとは、スタッドレスタイヤ、スノータイヤ、オールシーズンタイヤ等を含む雪上走行に適したタイヤ1である。
【0021】
本実施形態のトレッド部2は、タイヤ周方向に連続してのびる少なくとも1本の周方向溝3と、周方向溝3により区分される複数の陸部4とを含んでいる。
【0022】
図3は、図2のA-A線の断面図であり、図4は、図2のB-B線の断面図である。また、図5は、図1の周方向溝3の断面斜視図である。図1図5に示されるように、本実施形態の周方向溝3は、溝底5と、溝底5からトレッド面2aに向けてタイヤ半径方向にのびる一対の溝壁6とを有している。本明細書において、「方向にのびる」とは、その方向の成分を多く含むことを意味する。
【0023】
溝底5は、周方向溝3の溝深さDの最も深い位置でトレッド面2aに平行な面として規定される溝底基準面5aから、タイヤ半径方向外側に突出する溝底隆起部7を含んでいる。
【0024】
このような周方向溝3は、溝底隆起部7が雪に食い込み、雪上性能を向上させることができる。このため、本実施形態のタイヤ1は、摩耗した状態であっても、良好な雪上性能を維持することができる。また、このような溝底隆起部7は、周方向溝3の気柱内の振動を攪乱し、走行時の気柱共鳴音を低減させることができるので、タイヤ1のノイズ性能を向上することができる。
【0025】
本実施形態の溝底隆起部7は、周方向溝3の幅方向の第1の側s1に位置する第1溝底隆起部7Aと、幅方向の第2の側s2に位置する第2溝底隆起部7Bとを含んでいる。第1溝底隆起部7A及び第2溝底隆起部7Bは、それぞれ、略タイヤ半径方向にのびる第1底面8と、第1底面8よりもタイヤ半径方向に対して大きい角度で傾斜する第2底面9とを有する隆起単位10を複数含むのが望ましい。ここで、「略タイヤ半径方向にのびる」とは、タイヤ半径方向に対して±10°以内の角度で傾斜する面を含むことを意味する。このような溝底隆起部7は、雪が第1底面8及び第2底面9によって圧縮されることで雪の凝縮が促進され、タイヤ1が摩耗した状態であっても、雪柱せん断力を向上させ得る。
【0026】
本実施形態の第1溝底隆起部7Aの第2底面9の傾斜の向きは、第2溝底隆起部7Bの第2底面9の傾斜の向きと逆向きである。このような溝底隆起部7は、タイヤ1の回転方向によらず、同様の雪上性能を発揮することができる。このため、本実施形態のタイヤ1は、雪上走行時の駆動力及び制動力が共に向上し、タイヤ1の回転方向によらず、雪上性能を向上させることができる。
【0027】
本実施形態の第1溝底隆起部7Aの第1底面8は、タイヤ周方向において、第2溝底隆起部7Bの第1底面8と同じ位置に配されている。このような溝底隆起部7は、第1溝底隆起部7Aの第1底面8と第2溝底隆起部7Bの第1底面8とが確実に雪に食い込み、タイヤ1の雪上性能をより向上させることができる。
【0028】
本実施形態の第1底面8及び第2底面9は、それぞれ、平面で構成されている。第1底面8及び第2底面9は、例えば、曲面で構成されていてもよく、また、それぞれ、複数の平面の組み合わせで構成されていてもよい。
【0029】
本実施形態の第1溝底隆起部7Aは、トレッド平面視において、周方向溝3の中心線3cにより第2溝底隆起部7Bと区分されている。このような溝底隆起部7は、第1溝底隆起部7Aと第2溝底隆起部7Bとが均等に配されているので、タイヤ1の回転方向によらず、同様の雪上性能を発揮することができる。
【0030】
なお、第1溝底隆起部7Aは、トレッド平面視において、周方向溝3の中心線3cとは異なる位置で第2溝底隆起部7Bと区分されていてもよい。この場合には、例えば、一対の周方向溝3が対称に配されることで、タイヤ1の回転方向によらず、同様の雪上性能を発揮することができる。
【0031】
図3及び図4に示されるように、第1底面8の溝底基準面5aからのタイヤ半径方向の高さHは、好ましくは、1mm以上である。第1底面8の高さHが1mmよりも小さいと、周方向溝3内の雪を凝縮する効果が低減し、駆動力を発揮するための雪柱せん断力が向上しないおそれがある。
【0032】
第1底面8の高さHは、タイヤ1の摩耗限界を示すトレッドウェアインジケータ(図示省略)の溝底基準面5aからの高さよりも小さいのが望ましい。このような第1底面8を有する溝底隆起部7は、タイヤ1の摩耗限界まで使用した場合であっても、第1底面8が確実に雪に食い込み、タイヤ1の良好な雪上性能を維持することができる。
【0033】
第1底面8の高さHは、好ましくは、タイヤ周方向に隣接する第1底面8間のタイヤ周方向長さLbの3%以上である。このような第1底面8を有する溝底隆起部7は、第1底面8が適切に雪に食い込み、大きな駆動力を発揮するので、タイヤ1の雪上性能を向上させることができる。
【0034】
図1及び図2に示されるように、本実施形態の一対の溝壁6は、第1の側s1に位置する第1溝壁6Aと、第2の側s2に位置する第2溝壁6Bとを含んでいる。第1溝壁6A及び第2溝壁6Bの少なくとも一方は、周方向溝3の溝幅Wの最も広い位置でタイヤ周方向に沿った面として規定される溝壁基準面6aから、周方向溝3の内側に突出する溝壁隆起部11を含むのが望ましい。本明細書において、「方向に沿った」とは、その方向に平行であることを意味する。
【0035】
このような周方向溝3は、溝壁隆起部11が雪に食い込み、雪上性能を向上させることができる。また、このような溝壁隆起部11は、周方向溝3の気柱内の振動を攪乱し、走行時の気柱共鳴音を低減させることができるので、タイヤ1のノイズ性能を向上することができる。
【0036】
図1図2及び図5に示されるように、本実施形態の溝壁隆起部11は、タイヤ幅方向にのびる第1壁面12と、第1壁面12よりもタイヤ幅方向に対して大きい角度で傾斜する第2壁面13とを有する隆起単位14を複数含んでいる。このような溝壁6は、第1壁面12によりタイヤ幅方向のエッジ成分が増加するので、雪上走行時の駆動力及び制動力を向上させ得る。また、この溝壁6は、雪が第2壁面13に沿って移動することで、雪の凝縮が促進され、雪柱せん断力を向上させ得る。
【0037】
このため、本実施形態のタイヤ1は、溝壁6により凝縮された雪に、溝底隆起部7が食い込むことで、雪上性能をさらに向上させ得る。また、このような周方向溝3は、トレッド面2aの接地時と離地時とにおける溝底隆起部7及び溝壁隆起部11の変形により、排雪作用が向上し、雪上性能をさらに向上させ得る。
【0038】
本実施形態の第1壁面12は、タイヤ周方向において、第1底面8と同じ位置に配されている。このような周方向溝3は、溝壁6により凝縮された雪に、溝底隆起部7が食い込むことによる雪上性能の向上が、より効果的に発揮され得る。
【0039】
図2に示されるように、本実施形態の第1壁面12及び第2壁面13は、それぞれ、平面で構成されている。第1溝壁6Aの第2壁面13は、トレッド平面視において、第2溝壁6Bの第2壁面13に対して、略平行であるのが望ましい。なお、本明細書で「略平行」とは、平行であるものと、平行に対し±5°以内の角度で傾斜するものとを含んでいる。このような溝壁隆起部11は、タイヤ1の回転方向によらず、同様の雪上性能を発揮することができる。
【0040】
第1壁面12の溝壁基準面6aからのタイヤ幅方向の突出長さWLは、好ましくは、1mm以上である。第1壁面12の突出長さWLが1mmよりも小さいと、周方向溝3内の雪を凝縮する効果が低減し、駆動力を発揮するための雪柱せん断力が向上しないおそれがある。
【0041】
第1壁面12の突出長さWLは、タイヤ周方向に隣接する第1壁面12間のタイヤ周方向長さLwの3%以上である。このような第1壁面12を有する溝壁隆起部11は、第1壁面12が適切に雪に食い込み、大きな駆動力を発揮するので、タイヤ1の雪上性能を向上させることができる。なお、本実施形態の第1壁面12間のタイヤ周方向長さLwは、第1底面8間のタイヤ周方向長さLbと等しい。
【0042】
上述の周方向溝3を有するタイヤ1は、溝底5及び溝壁6の形状を特定することにより、タイヤ1が摩耗していない状態であっても、タイヤ1が摩耗した状態であっても、良好な雪上性能を維持することができる。
【0043】
図6は、他の実施形態の周方向溝20の平面図である。上述の実施形態と同一の構成には、同一の符号が付され、その説明が省略される。図6に示されるように、この実施形態の周方向溝20は、溝底隆起部21を含む溝底22と、溝底22からトレッド面2aに向けてタイヤ半径方向にのびる一対の溝壁23とを有している。
【0044】
溝底隆起部21は、周方向溝20の幅方向の第1の側s1に位置する第1溝底隆起部21Aと、幅方向の第2の側s2に位置する第2溝底隆起部21Bとを含んでいる。第1溝底隆起部21A及び第2溝底隆起部21Bは、それぞれ、タイヤ半径方向にのびる第1底面24と、第1底面24よりもタイヤ半径方向に対して大きい角度で傾斜する第2底面25とを有する隆起単位26を複数含むのが望ましい。この実施形態の第1底面24及び第2底面25は、それぞれ、平面で構成されている。
【0045】
この実施形態の第1溝底隆起部21Aの第1底面24は、タイヤ周方向において、第2溝底隆起部21Bの第1底面24と異なる位置に配されている。このような溝底隆起部21は、第1溝底隆起部21Aと第2溝底隆起部21Bとの境界部21Cを跨ぐ通路を形成することができる。このため、この実施形態の周方向溝20は、この通路を介して溝底22に沿って水がスムーズに流れるので、ハイドロプレーニング現象を抑制する効果を発揮し、その結果、ウェット性能をより向上させることができる。
【0046】
第1溝底隆起部21Aの第1底面24は、例えば、タイヤ周方向において、第2溝底隆起部21Bのタイヤ周方向に隣接する第1底面24間の中間位置に配されている。また、この実施形態の第1溝底隆起部21Aは、トレッド平面視において、周方向溝20の中心線20cにより第2溝底隆起部21Bと区分されている。このような溝底隆起部21は、第1溝底隆起部21Aと第2溝底隆起部21Bとが均等に配されているので、タイヤ1の回転方向によらず、同様の雪上性能を発揮することができる。
【0047】
この実施形態の一対の溝壁23は、第1の側s1に位置する第1溝壁23Aと、第2の側s2に位置する第2溝壁23Bとを含んでいる。第1溝壁23A及び第2溝壁23Bの少なくとも一方は、周方向溝20の溝幅Wの最も広い位置でタイヤ周方向に沿った面として規定される溝壁基準面23aから、周方向溝20の内側に突出する溝壁隆起部27を含むのが望ましい。
【0048】
この実施形態の溝壁隆起部27は、タイヤ幅方向にのびる第1壁面28と、第1壁面28よりもタイヤ幅方向に対して大きい角度で傾斜する第2壁面29とを有する隆起単位30を複数含んでいる。この実施形態の第1壁面28及び第2壁面29は、それぞれ、平面で構成されている。
【0049】
この実施形態の第1溝壁23Aの第1壁面28は、タイヤ周方向において、第1溝底隆起部21Aの第1底面24と同じ位置に配されている。また、第2溝壁23Bの第1壁面28は、タイヤ周方向において、第2溝底隆起部21Bの第1底面24と同じ位置に配されている。このような周方向溝20は、溝壁23により凝縮された雪に、溝底隆起部21が食い込むことによる雪上性能の向上が、より効果的に発揮され得る。
【0050】
図7は、さらに他の実施形態の周方向溝40の平面図である。上述の実施形態と同一の構成には、同一の符号が付され、その説明が省略される。図7に示されるように、この実施形態の周方向溝40は、溝底隆起部41を含む溝底42と、溝底42からトレッド面2aに向けてタイヤ半径方向にのびる一対の溝壁43とを有している。
【0051】
溝底隆起部41は、周方向溝40の幅方向の第1の側s1に位置する第1溝底隆起部41Aと、幅方向の第2の側s2に位置する第2溝底隆起部41Bとを含んでいる。第1溝底隆起部41A及び第2溝底隆起部41Bは、それぞれ、タイヤ半径方向にのびる第1底面44と、第1底面44よりもタイヤ半径方向に対して大きい角度で傾斜する第2底面45とを有する隆起単位46を複数含むのが望ましい。この実施形態の第1底面44及び第2底面45は、それぞれ、平面で構成されている。
【0052】
この実施形態の第1溝底隆起部41Aは、トレッド平面視において、周方向溝40の中心線40cにより第2溝底隆起部41Bと区分されている。このような溝底隆起部41は、第1溝底隆起部41Aと第2溝底隆起部41Bとが均等に配されているので、タイヤ1の回転方向によらず、同様の雪上性能を発揮することができる。
【0053】
この実施形態の一対の溝壁43は、第1の側s1に位置する第1溝壁43Aと、第2の側s2に位置する第2溝壁43Bとを含んでいる。第1溝壁43A及び第2溝壁43Bの少なくとも一方は、周方向溝40の溝幅Wの最も広い位置でタイヤ周方向に沿った面として規定される溝壁基準面43aから、周方向溝40の内側に突出する溝壁隆起部47を含むのが望ましい。
【0054】
この実施形態の溝壁隆起部47は、タイヤ幅方向にのびる第1壁面48と、第1壁面48よりもタイヤ幅方向に対して大きい角度で傾斜する第2壁面49とを有する隆起単位50を複数含んでいる。この実施形態の第1壁面48は、平面で構成され、第2壁面49は、曲面で構成されている。
【0055】
このような溝壁隆起部47は、雪が第2壁面49の曲面に沿って移動することで、雪の凝縮が促進され、雪柱せん断力を向上させ得る。なお、この実施形態の第2壁面49は、周方向溝40の内側に向けて突出する曲面で構成されているが、周方向溝40の外側に向けて突出する曲面で構成されていてもよい。
【0056】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施し得る。
【実施例
【0057】
図1図5の溝底隆起部及び溝壁隆起部を有する周方向溝が設けられた実施例1のタイヤと、図6の溝底隆起部及び溝壁隆起部を有する周方向溝が設けられた実施例2のタイヤとが試作された。また、比較例として、溝底隆起部及び溝壁隆起部を有さない周方向溝が設けられたタイヤが試作された。
【0058】
これら試作タイヤと、試作タイヤを摩耗限界の50%まで摩耗させたタイヤとを、それぞれ、テスト車両に装着し、雪上を走行させたときの雪上性能と、ウエット路面走行時のウェット性能とがテストされた。また、試作タイヤのドライ路面走行時のノイズ性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下のとおりである。
【0059】
テスト車両:中型乗用車
タイヤサイズ:255/55R17
リムサイズ:17×7J
空気圧:230kPa
【0060】
<雪上性能>
供試タイヤを全輪に装着したテスト車両で、圧雪路面を走行したときの駆動性能、制動性能及び操縦安定性能が、評価技能を有したドライバーの官能により評価された。結果は、それぞれ、従来例を100とする指数で表示され、数値が大きいほど雪上性能に優れていることを示す。
【0061】
<ウェット性能>
供試タイヤを全輪に装着したテスト車両で、ウェット路面を走行したときの駆動性能、制動性能及び操縦安定性能が、評価技能を有したドライバーの官能により評価された。結果は、それぞれ、従来例を100とする指数で表示され、数値が大きいほどウェット性能に優れていることを示す。
【0062】
<ノイズ性能>
供試タイヤを全輪に装着したテスト車両で、ロードノイズ計測路を80km/hで走行したときの車内騒音が、マイクロホンを用いて測定された。ドライバーの耳側部付近で、かつ、窓側のノイズが測定され、1KHz付近の狭帯域におけるピーク値の音圧レベルが評価された。結果は、それぞれ、従来例を100とする指数で表示され、数値が小さいほどノイズ性能に優れていることを示す。
【0063】
テストの結果が表1に示される。
【0064】
【表1】
【0065】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに対して、雪上性能に優れており、タイヤが摩耗した状態であっても、良好な雪上性能を維持していることが確認できた。また、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに対して、同等のウェット性能を維持しており、実施例2のタイヤは、タイヤが摩耗した状態であっても、同等のウェット性能を維持していることが確認できた。また、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに対して、ドライ路面走行時のノイズ性能も優れており、走行時の気柱共鳴音が低減していることが確認できた。
【符号の説明】
【0066】
2a トレッド面
3 周方向溝
5 溝底
5a 溝底基準面
6 溝壁
7 溝底隆起部
7A 第1溝底隆起部
7B 第2溝底隆起部
8 第1底面
9 第2底面
10 隆起単位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7