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特許7088475電波伝搬特性測定システム、動的な伝搬パラメータの推定方法、受信機及び電波伝搬特性測定プログラム
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  • 特許-電波伝搬特性測定システム、動的な伝搬パラメータの推定方法、受信機及び電波伝搬特性測定プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】電波伝搬特性測定システム、動的な伝搬パラメータの推定方法、受信機及び電波伝搬特性測定プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/309 20150101AFI20220614BHJP
【FI】
H04B17/309
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019132675
(22)【出願日】2019-07-18
(65)【公開番号】P2021019240
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2021-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 光貴
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 泰司
(72)【発明者】
【氏名】守山 貴庸
(72)【発明者】
【氏名】山田 渉
(72)【発明者】
【氏名】久野 伸晃
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】高田 潤一
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-200218(JP,A)
【文献】特開2011-014980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/30 - 17/391
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を送信する送信機と、
前記送信機が送信する電波を合成開口方式によって受信する受信機と
を備えた電波伝搬特性測定システムにおいて、
前記受信機は、
合成開口方式により電波を受信するアンテナと、
到来波ごとの到来角、ドップラーシフト及び伝搬遅延に基づいて到来波信号を推定する到来波信号推定部と、
前記到来波信号推定部が推定した到来波信号に基づいて、到来波ごとにパワースペクトラムを最大にして伝搬パラメータを推定する伝搬パラメータ推定部と、
前記伝搬パラメータ推定部が推定した伝搬パラメータに基づいて、到来波ごとに複素振幅を更新する更新部と
を有することを特徴とする電波伝搬特性測定システム。
【請求項2】
前記更新部が所定回数の更新を行った複素振幅に基づいて動的チャネル信号を算出するチャネル信号算出部
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の電波伝搬特性測定システム。
【請求項3】
合成開口方式の電波伝搬特性測定システムを用いた動的な伝搬パラメータの推定方法において、
到来波ごとの到来角、ドップラーシフト及び伝搬遅延に基づいて到来波信号を推定する到来波信号推定工程と、
推定した到来波信号に基づいて、到来波ごとにパワースペクトラムを最大にして伝搬パラメータを推定する伝搬パラメータ推定工程と、
推定した伝搬パラメータに基づいて、到来波ごとに複素振幅を更新する更新工程と
を含む一連の処理を繰り返すことを含むことを特徴とする動的な伝搬パラメータの推定方法。
【請求項4】
合成開口方式により電波を受信するアンテナと、
到来波ごとの到来角、ドップラーシフト及び伝搬遅延に基づいて到来波信号を推定する到来波信号推定部と、
前記到来波信号推定部が推定した到来波信号に基づいて、到来波ごとにパワースペクトラムを最大にして伝搬パラメータを推定する伝搬パラメータ推定部と、
前記伝搬パラメータ推定部が推定した伝搬パラメータに基づいて、到来波ごとに複素振幅を更新する更新部と
を有することを特徴とする受信機。
【請求項5】
請求項4に記載の受信機の各部としてコンピュータを機能させるための電波伝搬特性測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波伝搬特性測定システム、動的な伝搬パラメータの推定方法、受信機及び電波伝搬特性測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高周波数帯での伝搬チャネル測定では、装置構成の単純化や小型化が期待できる合成開口方式のチャネルサウンダが用いられることが多い。合成開口チャネルサウンダは、アンテナ素子が回転台等に取り付けられて回転することにより、次々と測定位置を変えながら伝搬チャネルの測定を行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Hung-Anh Nguyen et al. ,"Instantaneous Direction of Arrival Measurements in Mobile Radio Channels Using Virtual Circular Array Antennas", 2016 IEEE Globecom Workshops (GC Wkshps), Washington, DC, 2016, pp.1-7.
【文献】Jeffrey A. Fessler et al., "Space-Alternating GeneralizedExpectation-Maximization Algorithm", IEEE Transactions on Signal Processing, vol.42, no.10, Oct 1994. pp.2664-2677
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の伝搬チャネル解析では、測定中に伝搬チャネルが変化しない静的条件を仮定して解析が行われていた。しかしながら、乗り物等によって移動するユーザの伝搬チャネル特性等を解析する場合、伝搬チャネルが変化しない静的条件は必ずしも成り立たない。
【0005】
本発明は、測定中に伝搬チャネルが変化する動的条件であっても、伝搬パラメータを精度よく推定することができる電波伝搬特性測定システム、動的な伝搬パラメータの推定方法、受信機及び電波伝搬特性測定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様にかかる電波伝搬特性測定システムは、電波を送信する送信機と、前記送信機が送信する電波を合成開口方式によって受信する受信機とを備えた電波伝搬特性測定システムにおいて、前記受信機が、合成開口方式により電波を受信するアンテナと、到来波ごとの到来角、ドップラーシフト及び伝搬遅延に基づいて到来波信号を推定する到来波信号推定部と、前記到来波信号推定部が推定した到来波信号に基づいて、到来波ごとにパワースペクトラムを最大にして伝搬パラメータを推定する伝搬パラメータ推定部と、前記伝搬パラメータ推定部が推定した伝搬パラメータに基づいて、到来波ごとに複素振幅を更新する更新部とを有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一態様にかかる動的な伝搬パラメータの推定方法は、合成開口方式の電波伝搬特性測定システムを用いた動的な伝搬パラメータの推定方法において、到来波ごとの到来角、ドップラーシフト及び伝搬遅延に基づいて到来波信号を推定する到来波信号推定工程と、推定した到来波信号に基づいて、到来波ごとにパワースペクトラムを最大にして伝搬パラメータを推定する伝搬パラメータ推定工程と、推定した伝搬パラメータに基づいて、到来波ごとに複素振幅を更新する更新工程とを含む一連の処理を繰り返すことを含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様にかかる受信機は、合成開口方式により電波を受信するアンテナと、到来波ごとの到来角、ドップラーシフト及び伝搬遅延に基づいて到来波信号を推定する到来波信号推定部と、前記到来波信号推定部が推定した到来波信号に基づいて、到来波ごとにパワースペクトラムを最大にして伝搬パラメータを推定する伝搬パラメータ推定部と、前記伝搬パラメータ推定部が推定した伝搬パラメータに基づいて、到来波ごとに複素振幅を更新する更新部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、測定中に伝搬チャネルが変化する動的条件であっても、伝搬パラメータを精度よく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態にかかる電波伝搬特性測定システムの構成例を示す図である。
図2】一実施形態にかかる受信機が受信する電波の動的伝搬チャネルの信号モデルを模式的に示す図である。
図3】受信アンテナの回転を模式的に示す図である。
図4】一実施形態にかかる受信機が有する機能を示す機能ブロック図である。
図5】一実施形態にかかる受信機の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を用いて電波伝搬特性測定システム(チャネルサウンダ)の一実施形態を説明する。図1は、一実施形態にかかる電波伝搬特性測定システム1の構成例を示す図である。図1に示すように、電波伝搬特性測定システム1は、例えば送信機2及び受信機3を有する。
【0012】
送信機2は、送信アンテナ20を備え、例えばOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)などの複数のサブキャリアからなるマルチキャリア信号となる電波を受信機3に対して送信する。受信機3は、例えば回転台30によって円周上を回転させられる1本の受信アンテナ32を有し、送信機2が送信する電波を合成開口方式によって受信して解析する。
【0013】
一般に、電波伝搬特性測定システムに用いられる等間隔円形アレーアンテナ(UCA:Uniform Circular Array Antenna)は、複数のアンテナが円周上に等間隔に配置され、それぞれのアンテナが無線信号を受信する。受信機3は、UCAを備えていてもよいが、ここでは受信アンテナ32が円周上を移動しながら順次に無線信号を受信し、受信信号を合成することによってUCAと同様に動作する仮想UCAを用いている。
【0014】
図2は、受信機3が受信する電波の動的伝搬チャネルの信号モデルを模式的に示す図である。受信機3は、複数の異なる方向から到来波(到来波の数:K)を受信する。以下、K個の到来波におけるk番目の到来波を#k(1≦k≦K)と記す。
【0015】
また、到来波の伝搬パラメータをθ=[τ(t),φ(t),μ]とする。ここで、τ(t)は到来波の伝搬遅延、φ(t)は到来角、γは複素振幅、μはドップラーシフトを表す。
【0016】
図3は、受信アンテナ32の回転を模式的に示す図である。受信アンテナ32が円周上を回転するため、受信アンテナ32が受信する信号の位相は、受信アンテナ32の移動にともなうドップラーシフトに応じて変化する。つまり、受信アンテナ32の回転に応じて、受信アンテナ32が受信するチャネルの伝搬パラメータは変化する。
【0017】
このとき、伝搬パラメータθを用いて、下式(1)に示すようにモードベクトルα(θ)を定義する。
【0018】
【数1】
【0019】
UCAモードベクトルαUCA(φ)は、下式(2)によって表される。
【0020】
【数2】
【0021】
UCAモードベクトルαUCA(φ)をドップラーシフトに基づいて補正するドップラー補正αdop(μ)は、下式(3)によって表される。
【0022】
【数3】
【0023】
伝搬遅延ベクトルατ(τ)は、下式(4)によって表される。
【0024】
【数4】
【0025】
電波伝搬特性測定システム1においては、送信機2が受信する信号の伝搬チャネルが様々な方位から到来する到来波の重ね合せで表されることから、各到来波の動的チャネル信号を下式(5)に示したモデルによって示すこととする。
【0026】
【数5】
【0027】
以下、上式(5)について説明する。ドップラー補正後のUCAモードベクトルαAOA(φ,μ)は、下式(6)によって表される。
【0028】
【数6】
【0029】
次に、受信機3について詳述する。図4は、受信機3が有する機能を示す機能ブロック図である。図4に示すように、受信機3は、記憶部40、入力部41、初期設定部42、到来波信号推定部43、伝搬パラメータ推定部44、更新部45、出力部46及びチャネル信号算出部47を有する。
【0030】
記憶部40は、受信機3が受信アンテナ32を介して受信した電波の測定データ(受信信号)x、後述する各データ及びプログラムなどを記憶するデータベースであり、メモリなどの記憶装置によって構成される。入力部41は、記憶部40が記憶する測定データxを読出し、初期設定部42に対して入力する。
【0031】
初期設定部42は、例えば下式(7)に示す伝搬パラメータ初期値を設定し、設定した伝搬パラメータ初期値を記憶部40及び到来波信号推定部43に対して出力する。
【0032】
【数7】
【0033】
初期設定部42は、上式(7)によって定義されるパワースペクトラムのピーク値によって伝搬パラメータ初期値を設定することに限定されず、任意の値を伝搬パラメータ初期値に設定してもよい。
【0034】
到来波信号推定部43は、下式(8)を用いて、到来波#kの到来角、ドップラーシフト及び伝搬遅延に基づく到来波信号を推定し、推定した到来波信号を記憶部40及び伝搬パラメータ推定部44に対して出力する。
【0035】
【数8】
【0036】
伝搬パラメータ推定部44は、下式(9)を用いることにより、パワースペクトラムを最大化するパラメータによって到来波#kの伝搬パラメータを推定し、推定した伝搬パラメータ推定値を記憶部40及び更新部45に対して出力する。
【0037】
【数9】
【0038】
また、伝搬パラメータ推定部44は、繰り返し回数(itr)が所定値に達した場合、伝搬パラメータの推定結果θを出力部46に対して出力する。
【0039】
更新部45は、itrをインクリメントし、下式(10)を用いて到来波#kの複素振幅を更新し、更新結果を到来波信号推定部43に対して出力する。
【0040】
【数10】
【0041】
出力部46は、伝搬パラメータ推定部44が出力した伝搬パラメータの推定結果θを記憶部40に対して出力する。
【0042】
チャネル信号算出部47は、例えば上式(5)など、及び記憶部40が記憶する各データを用いて、各到来波の動的チャネル信号等を算出する。
【0043】
次に、受信機3の動作例について説明する。図5は、受信機3の動作例を示すフローチャートである。図5に示すように、受信機3は、まず入力部41が受信信号xを初期設定部42に対して入力する(S100)。
【0044】
次に、初期設定部42は、例えば上式(7)などを用いて伝搬パラメータの初期値を設定する(S102)。
【0045】
そして、到来波信号推定部43が到来波信号を推定し(S104)、伝搬パラメータ推定部44が伝搬パラメータを推定する(S106)。また、伝搬パラメータ推定部44は、itrが所定値に達したか否かを判定し(S108)、itrが所定値に達していない場合(S108:N)にはS110の処理に進み、itrが所定値に達した場合(S108:Y)にはS112の処理に進む。
【0046】
S110の処理において、更新部45は、itrをインクリメントし、上式(10)を用いて到来波#kの複素振幅を更新する。つまり、受信機3は、S104、S106及びS110の処理を所定回繰り返す。
【0047】
S112の処理において、出力部46は、伝搬パラメータの推定結果を記憶部40に対して出力し、記憶させる。記憶部40が記憶した伝搬パラメータの推定結果は、チャネル信号算出部47が各到来波の動的チャネル信号等を算出するために用いられる。
【0048】
このように、電波伝搬特性測定システム1は、送信機2が送信する電波のドップラーシフトに基づいて伝搬パラメータを推定するので、測定中に伝搬チャネルが変化する動的条件であっても、伝搬パラメータを精度よく推定することができる。
【0049】
なお、図4に示した受信機3が有する各機能は、それぞれ一部又は全部がハードウェアによって構成されてもよいし、図示しないプロセッサが実行するプログラムとして構成されてもよい。
【0050】
すなわち、本発明にかかる電波伝搬特性測定システム1は、コンピュータとプログラムを用いて実現することができ、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0051】
以上述べた実施形態は、本発明の実施形態を例示的に示すものであって、限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様でも実施することができる。
【符号の説明】
【0052】
1・・・電波伝搬特性測定システム、2・・・送信機、3・・・受信機、30・・・回転台、32・・・受信アンテナ、40・・・記憶部、41・・・入力部、42・・・初期設定部、43・・・到来波信号推定部、44・・・伝搬パラメータ推定部、45・・・更新部、46・・・出力部、47・・・チャネル信号算出部
図1
図2
図3
図4
図5