IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎重工業株式会社の特許一覧

特許7089460ガス圧検知装置、ガス圧検知装置を備えるロボット及びそのガス圧検知方法
<>
  • 特許-ガス圧検知装置、ガス圧検知装置を備えるロボット及びそのガス圧検知方法 図1
  • 特許-ガス圧検知装置、ガス圧検知装置を備えるロボット及びそのガス圧検知方法 図2
  • 特許-ガス圧検知装置、ガス圧検知装置を備えるロボット及びそのガス圧検知方法 図3
  • 特許-ガス圧検知装置、ガス圧検知装置を備えるロボット及びそのガス圧検知方法 図4
  • 特許-ガス圧検知装置、ガス圧検知装置を備えるロボット及びそのガス圧検知方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】ガス圧検知装置、ガス圧検知装置を備えるロボット及びそのガス圧検知方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 7/00 20060101AFI20220615BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
G01L7/00 D
B25J19/00 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018224917
(22)【出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2020085831
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芳野 紘治
(72)【発明者】
【氏名】加納 英朗
(72)【発明者】
【氏名】竹内 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】川口 慶輔
(72)【発明者】
【氏名】安部 壮祐
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06408225(US,B1)
【文献】特開平05-228884(JP,A)
【文献】特表2012-519083(JP,A)
【文献】実開昭58-095307(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 7/00
B25J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーム支持部と、前記アーム支持部に回動可能に支持される回動アームと、前記回動アームの回動負荷を軽減するガスバランサと、前記ガスバランサのガスの圧力を測定する圧力センサと、を備えるロボットにおいて、前記圧力の低下を検知するガス圧検知装置であって、
前記回動アームの回動角度θにおける基準圧力Pa(θ)と前記回動角度θで前記圧力センサが測定して得られる測定圧力Pt(θ)との大小関係を表す変数Rt(θ)を算出し、測定時刻の異なる複数の前記測定圧力Pt(θ)から複数の前記変数Rt(θ)を算出し、前記測定圧力Pt(θ)のj回目(jは2以上の自然数)の測定時刻tjにおける前記変数Rt(θ)の移動平均Rtj(θ)を算出する算出部と、
前記移動平均Rtj(θ)と基準値Rとを比較して前記ガスの圧力低下を検知する判定部と、を備える、ガス圧検知装置。
【請求項2】
前記算出部の算出する前記変数Rt(θ)が、前記基準圧力Pa(θ)と前記測定圧力Pt(θ)とから係数Aとして下記の数式(1)で表される、請求項1に記載のガス圧検知装置。
【数1】
【請求項3】
前記算出部が算出する前記移動平均Rtj(θ)が、i回目(iは1以上の自然数)の測定時刻tiからj回目(jはiより大きい自然数)の測定時刻tjまでに得られる複数の前記変数Rt(θ)を用いて下記の数式(2)で表される、請求項1又は2に記載のガス圧検知装置。
【数2】
【請求項4】
前記算出部が前記移動平均Rtj(θ)の算出に用いる複数の前記測定圧力Pt(θ)の測定時刻の間隔が1秒以下である、請求項1から3のいずれかに記載のガス圧検知装置。
【請求項5】
前記算出部が前記移動平均Rtj(θ)の算出に用いる複数の前記測定圧力Pt(θ)を得る測定時間が10秒以上である、請求項1から4のいずれかに記載のガス圧検知装置。
【請求項6】
前記算出部が前記移動平均Rtj(θ)の算出に用いる複数の前記測定圧力Pt(θ)を得る測定時間が600秒以下である、請求項5に記載のガス圧検知装置。
【請求項7】
アーム支持部と、前記アーム支持部に回動可能に支持される回動アームと、前記回動アームの回動負荷を軽減するガスバランサと、前記ガスバランサのガスの圧力を測定する圧力センサと、前記圧力の低下を検知するガス圧検知装置とを備えており、
前記ガス圧検知装置が、
前記回動アームの回動角度θにおける基準圧力Pa(θ)と前記回動角度θで前記圧力センサが測定して得られる測定圧力Pt(θ)との大小関係を表す変数Rt(θ)を算出し、測定時刻の異なる複数の前記測定圧力Pt(θ)から複数の前記変数Rt(θ)を算出し、前記測定圧力Pt(θ)のj回目(jは2以上の自然数)の測定時刻tjにおける前記変数Rt(θ)の移動平均Rtj(θ)を算出する算出部と、
前記移動平均Rtj(θ)と基準値Rとを比較して前記ガスの圧力低下を検知する判定部と、を備える、ロボット。
【請求項8】
アーム支持部と、前記アーム支持部に回動可能に支持される回動アームと、前記回動アームの回動負荷を軽減するガスバランサと、前記ガスバランサのガスの圧力を測定する圧力センサと、を備えるロボットにおいて、前記ガスバランサのガスの圧力低下を検知する方法であって、
(A)前記圧力センサで前記ガスバランサのガスの圧力を測定して前記回動アームの回動角度θにおける測定圧力Pt(θ)を得るステップ、
(B)前記測定圧力Pt(θ)と前記回動アームの回動角度θにおける基準圧力Pa(θ)との大小関係を表す変数Rt(θ)を算出するステップ、
(C)測定時刻の異なる複数の前記測定圧力Pt(θ)から複数の前記変数Rt(θ)を算出し、前記測定圧力Pt(θ)のj回目(jは2以上の自然数)の測定時刻tjにおける前記変数Rt(θ)の移動平均Rtj(θ)を算出するステップ
及び
(D)前記移動平均Rtj(θ)と基準値Rとを比較して前記ガスの圧力低下を検知するステップ
を含む、ガス圧検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバランサのガスの圧力を検出するガス圧検知装置と、このガス圧検知装置を備えるロボットと、このガス圧検知装置を用いたガス圧検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第5512706号公報には、アームと、このアームに回動可能に連結された回動アームと、この回動アームの回動負荷を軽減するガスバランサとしての気体ばねと、を備えるロボットが開示されている。このロボットでは、ガスバランサの圧力が検出される。この圧力が所定の圧力値から外れると圧力が調整される。これにより、このロボットでは、このガスバランサのメンテナンスが軽減されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5512706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このガスバランサには、このロボットの可動可能な圧力として、所定の圧力値が設定されている。この所定の圧力値と実際の測定圧力との大小関係から、ガスバランサの圧力の低下を検知している。しかしながら、実際には、ガスバランサの圧力がそれほど大きく低下していないにも関わらず、この所定の圧力値と測定圧力とに大きな差が検出されることがある。この圧力の低下の誤検知は、不要なロボットの停止やガスバランサの点検を生じさせる。この圧力の低下の誤検知は、このロボットの生産性を阻害する。
【0005】
本発明の目的は、ガスバランサにおいて、ガス圧力の低下の誤検出を低減しうるガス圧検知装置と、このガス圧検知装置を備えるロボットと、このガス圧検知装置を用いたガスの圧力低下の検知方法と、の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るガス圧検知装置は、アーム支持部と、前記アーム支持部に回動可能に支持される回動アームと、前記回動アームの回動負荷を軽減するガスバランサと、前記ガスバランサのガスの圧力を測定する圧力センサと、を備えるロボットにおいて、前記圧力の低下を検知する。
このガス圧検知装置は、
前記回動アームの回動角度θにおける基準圧力Pa(θ)と前記回動角度θで前記圧力センサが測定して得られる測定圧力Pt(θ)との大小関係を表す変数Rt(θ)を算出し、測定時刻の異なる複数の前記測定圧力Pt(θ)から複数の前記変数Rt(θ)を算出し、前記測定圧力Pt(θ)のj回目(jは2以上の自然数)の測定時刻tjにおける前記変数Rt(θ)の移動平均Rtj(θ)を算出する算出部と、
前記移動平均Rtj(θ)と基準値Rとを比較して前記ガスの圧力低下を検知する判定部と、を備える。
【0007】
好ましくは、このガス圧検知装置では、前記算出部の算出する前記変数Rt(θ)は、前記基準圧力Pa(θ)と前記測定圧力Pt(θ)とから係数Aとして下記の数式(1)で表される。
【0008】
【数1】
【0009】
好ましくは、このガス圧検知装置では、前記算出部が算出する前記移動平均Rtj(θ)は、i回目(iは1以上の自然数)の測定時刻tiからj回目(jはiより大きい自然数)の測定時刻tjまでに得られる複数の前記変数Rt(θ)を用いて下記の数式(2)で表される。
【0010】
【数2】
【0011】
好ましくは、前記算出部が前記移動平均Rtj(θ)の算出に用いる、複数の前記測定圧力Pt(θ)の測定時刻の間隔は、1秒以下である。
【0012】
好ましくは、前記算出部が前記移動平均Rtj(θ)の算出に用いる、複数の前記測定圧力Pt(θ)を得る測定時間は、10秒以上である。
【0013】
好ましくは、前記算出部が前記移動平均Rtj(θ)の算出に用いる、複数の前記測定圧力Pt(θ)を得る測定時間は、600秒以下である。
【0014】
本発明に係るロボットは、アーム支持部と、前記アーム支持部に回動可能に支持される回動アームと、前記回動アームの回動負荷を軽減するガスバランサと、前記ガスバランサのガスの圧力を測定する圧力センサと、前記圧力の低下を検知するガス圧検知装置と、を備える。
前記ガス圧検知装置は、
前記回動アームの回動角度θにおける基準圧力Pa(θ)と前記回動角度θで前記圧力センサが測定して得られる測定圧力Pt(θ)との大小関係を表す変数Rt(θ)を算出し、測定時刻の異なる複数の前記測定圧力Pt(θ)から複数の前記変数Rt(θ)を算出し、前記測定圧力Pt(θ)のj回目(jは2以上の自然数)の測定時刻tjにおける前記変数Rt(θ)の移動平均Rtj(θ)を算出する算出部と、
前記移動平均Rtj(θ)と基準値Rとを比較して前記ガスの圧力低下を検知する判定部と、を備える。
【0015】
本発明に係るガス圧検知方法は、アーム支持部と、前記アーム支持部に回動可能に支持される回動アームと、前記回動アームの回動負荷を軽減するガスバランサと、前記ガスバランサのガスの圧力を測定する圧力センサと、を備えるロボットにおいて、前記ガスバランサのガスの圧力低下を検知する。
このガス圧検知方法は、
(A)前記圧力センサで前記ガスバランサのガスの圧力を測定して前記回動アームの回動角度θにおける測定圧力Pt(θ)を得るステップ、
(B)前記測定圧力Pt(θ)と前記回動角度θにおける基準圧力Pa(θ)との大小関係を表す変数Rt(θ)を算出するステップ、
(C)測定時刻の異なる複数の前記測定圧力Pt(θ)から複数の前記変数Rt(θ)を算出し、前記測定圧力Pt(θ)のj回目(jは2以上の自然数)の測定時刻tjにおける前記変数Rt(θ)の移動平均Rtj(θ)を算出するステップ
及び
(D)前記移動平均Rtj(θ)と基準値Rとを比較して前記ガスの圧力低下を検知するステップ
を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るガス圧検知装置は、基準圧力Pa(θ)と測定圧力Pt(θ)との大小関係を表す変数Rt(θ)を算出し、変数Rt(θ)の移動平均Rtj(θ)を算出する。これにより、このガス圧検知装置は、一時的なガスバランサの圧力低下による、誤検出が低減される。このガス圧検知装置は、ロボットの生産性の向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る間接型ロボットが示された側面図である。
図2図2は、図1のロボットの圧力検知装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、図1のロボットのガスバランサが示された説明図である。
図4図4は、図1のロボットの回動アームの回動角度θとガスバランサの理論圧力Pk(θ)及び基準圧力Pa(θ)との関係が示されたグラフである。
図5図5は、図1のロボットの回動アームを回動したときのガスバランサの理論圧力Pk(θ)と測定圧力Pt(θ)との関係が示されたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0019】
図1には、本発明に係るロボット2が示されている。このロボット2は、基台4、ロボットアーム6、ガスバランサ8、圧力センサ9及びガス圧検知装置10を備えている。このロボット2では、圧力センサ9は、ガスバランサ8の内部に配置されている。図示されないが、このロボット2は、更に、駆動モータM1からM6と、回転センサE1からE6とを備えている。
【0020】
ロボットアーム6は、第1アーム12、第2アーム14、第3アーム16、第4アーム18、第5アーム20及び第6アーム22を備えている。このロボット2では、基台4、第1アーム12、第2アーム14、第3アーム16、第4アーム18、第5アーム20及び第6アーム22が順次連結されている。このロボット2は、これらの連結部として複数の関節を備えている。このロボット2は、所謂、多関節型ロボットである。
【0021】
図1に示される様に、このロボット2では、第6アーム22の先端部に、ハンド24が取り付けられている。このハンド24は、図示されないワークを把持する機能を備えている。このハンド24は、ロボット2に取り付けられるツールの例示であって、他のツールが取り付けられてもよい。
【0022】
このロボット2では、第1アーム12は、基台4に連結されている。第1アーム12は、上下方向の軸線L1を回転軸として回転可能である。第2アーム14は、第1アーム12に連結されている。第2アーム14は、水平方向の軸線L2を回動軸として回動可能である。第3アーム16は、第2アーム14に連結されている。第3アーム16は、水平方向の軸線L3を回動軸として回動可能である。第4アーム18は、第3アーム16に連結されている。第4アーム18は、軸線L4を回転軸として回転可能である。第5アーム20は、第4アーム18に連結されている。第5アーム20は、軸線L4に直交する軸線L5を回動軸として回動可能である。第6アーム22は、第5アーム20に連結されている。第6アーム22は、軸線L6を回転軸として回転可能である。
【0023】
図示されない駆動モータM1は、第1アーム12を回転させる機能を備えている。駆動モータM2は、第2アーム14を回動させる機能を備えている。同様に、駆動モータM3は第3アーム16を、駆動モータM5は第5アーム20を、それぞれ回動させる機能を備え、駆動モータM4は第4アーム18を、駆動モータM6は第6アーム22を、それぞれ回転させる機能を備えている。駆動モータM1、M2、M3、M4、M5及びM6は、例えば、サーボモータである。
【0024】
回転センサE1は、駆動モータM1の回転位置を検出する機能を備えている。回転センサE2は、駆動モータM2の回転位置を検出する機能を備えている。同様に、回転センサE3、E4、E5及びE6は、駆動モータM3、M4、M5及びM6の回転位置を検出する機能を備えている。この回転センサE1、E2、E3、E4、E5及びE6は、例えば、エンコーダである。
【0025】
ガスバランサ8は、ガスが封入されている。ガスバランサ8は、伸縮可能である。ガスバランサ8の伸縮に伴って、封入されたガスの圧力が変動する。このガスの圧力の変動によって、ガスバランサ8は伸縮力を変動させる。このガスバランサ8は、その基端部8bを第1アーム12に軸着されている。その先端部8cを第2アーム14に軸着されている。
【0026】
図1の符号Paは、第2アーム14の回動中心を表している。符号Pbは、ガスバランサ8の基端部8bの回動中心を表している。符号Pcは、ガスバランサ8の先端部8cの回動中心を表している。符号Pdは、第3アーム16の回動中心を表している。一点鎖線Laは、回動中心Paと回動中心Pdとを通って延びる直線を表している。両矢印Sは、回動中心Pbから回動中心Pcまでの距離を表している。
【0027】
符号Pd’は、図1の姿勢から第2アーム14が回動したときの、回動中心Pdの回動位置を表している。一点鎖線La’は、回動中心Paと回動位置Pd’とを通って延びる直線を表している。両矢印θは、第2アーム14の回動角度を表している。この回動角度θは、直線Laと直線La’とのなす角度である。第2アーム14の回動角度θは、第2アーム14が図1の姿勢にあるときに0°である。この第2アーム14が図1の姿勢から時計回りに回動したときに回動角度θは正の角度で表され、反時計回りに回動したときに回動角度θは負の角度で表される。
【0028】
第1アーム12に対して第2アーム14が回動することによって、ガスバランサ8の距離Sは変動する。この距離Sの変動によって、ガスバランサ8は伸縮する。この伸縮によって、ガスバランサ8は、回動中心Pbと回動中心Pcとの間で、伸縮力を変動させる。この伸縮力によって、ガスバランサ8は、第2アーム14に作用する荷重を支持し、駆動モータM2の回転負荷を軽減する。
【0029】
圧力センサ9は、ガスバランサ8に取り付けられている。このロボット2では、ガスバランサ8の内部に取り付けられている。圧力センサ9は、ガスバランサ8に封入されたガスの圧力を測定する機能を備えている。圧力センサ9は、ガスバランサ8の外に取り付けられてもよい。
【0030】
図2に示される様に、このロボット2は、更に、ロボットアーム6の動作を制御する制御装置11を備えている。制御装置11は、回転センサ(E1、E2、E3、E4、E5及びE6)から、駆動モータ(M1、M2、M3、M4、M5及びM6)の回転位置データを受信する機能を備えている。制御装置11は、第1アーム12、第4アーム18及び第6アーム22の回転位置を算出する機能を備えている。制御装置11は、第2アーム14、第3アーム16及び第5アーム20の回動位置を算出する機能を備えている。制御装置11は、駆動モータ(M1、M2、M3、M4、M5及びM6)を制御する機能を備えている。
【0031】
ガス圧検知装置10は、データの入出力部としてのインターフェースボード10aと、演算部としてのプロセッサ10bと、データの記憶部としてのメモリ10cと、を備えている。
【0032】
このインターフェースボード10aは、制御装置11から第2アーム14の回動位置データ(回動角度θ)を受信する機能を備えている。インターフェースボード10aは、圧力センサ9が測定した測定圧力Pt(θ)のデータを受信する機能を備えている。インターフェースボード10aは、圧力異常の信号を警報装置等に送信する機能を備えている。
【0033】
プロセッサ10bは、後述される基準圧力Pa(θ)と測定圧力Pt(θ)との大小関係を表す変数Rt(θ)と、この変数Rt(θ)の移動平均Rtj(θ)とを算出する算出部を含む。プロセッサ10bは、更に、この移動平均Rtj(θ)と基準値Rとを比較して圧力低下を検知する判定部を含む。プロセッサ10bは、圧力低下を検知したときに、インターフェースボード10aに圧力異常の信号を送信させる機能を備えている。このプロセッサ10bは、インターフェースボード10aが受信する回動位置データから、回動角度θを算出してもよい。
【0034】
メモリ10cは、第2アーム14の、回動角度θと回動角度θにおける基準圧力Pa(θ)を記憶する機能を備えている。この基準圧力Pa(θ)は、回動角度θにおけるガスバランサ8の稼働許容圧力である。メモリ10cは、圧力センサ9から得られた測定圧力Pt(θ)とこの測定圧力Pt(θ)が測定されたときの回動角度θとを対応させて記憶する機能を備えている。
【0035】
図3に示される様に、ガスバランサ8は、シリンダ26及びピストン28を備えている。シリンダ26は、基端部8bに連結さられている。ピストン28は、先端部8cに連結さられている。このピストン28がシリンダ26に摺動可能に挿入されている。このピストン28とシリンダ26とがガス室30を形成している。このガス室30には、高圧のガスが封入されている。このガスは、特に限定されないが、例えば不活性ガスである。このガスバランサ8は、距離Sが変化することで、伸縮する。この伸縮によって、ガス室30の容積が変化する。この容積の変化によって、ガスの圧力が変化する。圧力センサ9は、このガスの圧力を測定する。
【0036】
このガスバランサ8では、その全長が伸びたときに、その全長が縮む向きの伸縮力が作用する。これにより、ガスバランサ8は、駆動モータM2の回転負荷を軽減する。このガスバランサ8は、駆動モータM2の回転負荷を軽減する様に構成されていればよい。ガスバランサ8は、その全長が縮んだときに、その全長が延びる向きの伸縮力が作用するものであってもよい。ガスバランサ8の全長が縮んだときに、その全長が延びる向きの伸縮力を作用させて、駆動モータM2の回転負荷を軽減する様に構成されてもよい。
【0037】
図4には、第2アーム14の回動角度θとガスバランサ8の理論圧力Pk(θ)及び基準圧力Pa(θ)との関係が示されている。この理論圧力Pk(θ)は、回動角度θにおけるガス室30の容積から計算で求められる圧力である。このロボット2では、第2アーム14の回動角度θが9°のとき、ガス室30の容積が最大であり、理論圧力Pk(θ)が最小である。図4では、回動角度θが9°のときの理論圧力Pk(θ)を100(%)とする指数で、理論圧力Pk(θ)及び基準圧力Pa(θ)が示されている。基準圧力Pa(θ)は、回動角度θにおける稼働許容圧力を表している。この基準圧力Pa(θ)は、第2アーム14の稼働可能な圧力か否かの判断に用いられる基準圧力であればよく、その算出方法は特に限定されない。基準圧力Pa(θ)は、例えば、理論圧力Pk(θ)と1より小さい正の係数Bとの積として算出される圧力であってもよいし、理論圧力Pk(θ)から所定の圧力を差し引いて算出される圧力であってもよい。
【0038】
ここで、このロボット2を用いて、本発明に係るガスの圧力低下の検知方法が説明される。ここでは、ガスバランサ8のガスの圧力低下の検知を例に説明がされる。ここでは、第1アーム12がアーム支持部であり、第2アーム14は回動アームである。
【0039】
ガス圧検知装置10のメモリー10cは、回動角度θと回動角度θにおける基準圧力Pa(θ)を記憶している。インターフェースボード10aは、回動角度θと測定圧力Pt(θ)とを受信する(STEP1)。このメモリー10cは、所定の時間間隔毎に、回動角度θと測定圧力Pt(θ)とを記憶する。例えば、このガス圧検知装置10では、時刻t1から時刻tn(nは自然数)までのそれぞれの時刻tにおける、n個の回動角度θと測定圧力Pt(θ)とが記憶される。
【0040】
ガス圧検知装置10のプロセッサ10b(算出部)は、回動角度θにおける、基準圧力Pa(θ)と測定圧力Pt(θ)との大小関係を表す変数Rt(θ)を算出する(STEP2)。具体的には、例えば、係数Aとして、以下の式(1)に示される比を変数Rt(θ)として算出する。
【0041】
【数1】
【0042】
このプロセッサ10bは、所定の時間間隔毎に得られる複数の測定圧力Pt(θ)から複数の変数Rt(θ)を算出する。このプロセッサ10bは、この複数の変数Rt(θ)から時刻tjにおける移動平均Rtj(θ)を算出する(STEP3)。具体的には、例えば、以下の数式(2)で求められる。この数式(2)において、Rtj(θ)はj回目(jはn以下の自然数)の時刻tjにおける移動平均を表す。この移動平均Rtj(θ)は、i回目(iはjより小さい自然数)の時刻tiから時刻tjまでに得られた変数Rt(θ)の平均値として求められている。
【0043】
【数2】
【0044】
ガス圧検知装置10のプロセッサ10b(判定部)は、この移動平均Rtj(θ)と記憶された基準値Rとを比較して、ガスバランサ8のガスの圧力低下を検知する(STEP4)。このガス圧検知装置10は、所定の時間間隔の時刻毎に、移動平均Rtj(θ)の算出を繰り返す。例えば、プロセッサ10bは、移動平均Rtj(θ)が、基準値R以上のとき、ガスバランサ8の圧力は稼働可能な許容範囲と判断する。プロセッサ10bは、この移動平均Rtj(θ)が基準値R未満であれば、ガスバランサ8の圧力が稼働可能な許容範囲を下回ったと判定する。このとき、プロセッサ10bは、インターフェースボード10aに圧力異常の信号を送信させる。この圧力異常の信号によって、例えば、警報灯を点灯し、ロボット2が停止させられる。
【0045】
図5には、第2アーム14を回動させたときの実際の測定圧力Pt(θ)と理論圧力Pk(θ)との関係が示されている。図5では、回動角度θが9°のときの理論圧力Pk(θ)を100(%)とする指数で、理論圧力Pk(θ)及び測定圧力Pt(θ)が示されている。この図5では、第2アーム14を回動角度θを90°に回動し、その後に9°に回動して、圧力センサ9で得られた測定圧力Pt(θ)が示されている。この測定圧力Pt(θ)を得たのと同様に、第2アーム14を回動したときの、理論圧力Pk(θ)が示されている。
【0046】
図5において、第2アーム14が回動角度θを90°に回動されたときに、ガスバランサ8が伸長してガス室30の容積は縮小している。封入されたガスは圧縮される。このときの理論圧力Pk(θ)は、約148(%)である。第2アーム14が回動角度θを9°に回動されたときに、ガスバランサ8が縮短してガス室30の容積は拡大している。封入されたガスは膨張させられる。このときの理論圧力Pk(θ)は100(%)である。第2アーム14の回動によって、理論圧力Pk(θ)は、約148(%)から100(%)に変化している。
【0047】
これに対して、第2アーム14が回動角度θを90°に回動されたときに、実際に得られた測定圧力Pt(θ)は、約152(%)である。この測定圧力Pt(θ)は理論圧力Pk(θ)の約148(%)より高い。第2アーム14が回動角度θを9°に回動されたときに、測定圧力Pt(θ)は、約88(%)に低下した後、時間T(sec)の経過によって、約100(%)まで漸増している。この測定圧力Pt(θ)と理論圧力Pk(θ)との差は、時間の経過によって漸減している。
【0048】
図5に示される様に、理論圧力Pk(θ)と測定圧力Pt(θ)との間には、差が生じている。この圧力差は、第2アーム14が回動した時に一時的に増加する。これは、第2アーム14の回動によって、ガス室30に封入されたガスは一時的に断熱変化に近い圧力変化をすることによる。具体的には、このガス室30では、封入されたガスが膨張させられるときに、ガスの温度が低下する。ガス室30の容積の変化による圧力低下に加え、温度の低下による圧力低下を生じる。その後に、このガスの温度の上昇に伴ってが圧力が徐々に上昇する。同様に、ガスが圧縮されるときには、ガスの温度が上昇する。ガス室30の容積の変化による圧力上昇に加え、温度の上昇による圧力上昇を生じる。その後に、このガスの温度の低下に伴ってが圧力が徐々に低下する。この現象によって、図5に示される測定圧力Pt(θ)が得られている。
【0049】
前述の圧力低下の検出方法では、ガス圧検知装置10は、基準圧力Pa(θ)に対する前記測定圧力Pt(θ)の比(Pt(θ)/Pa(θ))を、変数Rt(θ)として算出している。この変数Rt(θ)を算出することで、測定時刻t毎の測定圧力Pt(θ)と基準圧力P(a)との大小関係が評価されている。ガス圧検知装置10は、更に、この変数Rt(θ)の移動平均Rtj(θ)を算出している。移動平均Rtj(θ)を用いることで、ガス圧検知装置10は、理論圧力Pk(θ)と測定圧力Pt(θ)との一時的な差の影響を低減している。これにより、ガスバランサ8のガスの圧力低下の誤検知が抑制される。
【0050】
この測定圧力Pt(θ)を得る測定時刻tの間隔を短くすることで、ガスの圧力の変化を高精度に把握しうる。この観点から、測定時刻tの間隔は、好ましくは1秒以下であり、更に好ましくは0.5秒以下であり、特に好ましくは0.1秒以下である。この測定時刻tの間隔に特に下限はない。この測定時刻tの間隔は、圧力センサ9によって定まる測定間隔の下限値以上であってもよい。
【0051】
測定圧力Pt(θ)を得る測定時間(時刻tiから時刻tjまでの時間)を長くすることで、第2アーム14の回動による一時的な差の影響を低減しうる。この観点から、この時間は、好ましくは、10秒以上であり、更に好ましくは30秒以上であり、特に好ましくは60秒以上である。この測定時間は、長いほど、一時的な差の影響を低減しうるので、例えば200秒以上であってもよい。特に、この測定時間に上限値はないが、この時間が長いガス圧検知装置10では、圧力低下の検知が遅れる。迅速に圧力低下を検知する観点から、この時間は、好ましくは600秒以下である。
【0052】
この変数Rt(θ)は、基準圧力Pa(θ)と測定圧力Pt(θ)との大小関係を表すものであればよく、比(Pt(θ)/Pa(θ))に限られない。例えば、この変数Rt(θ)は、基準圧力Pa(θ)と測定圧力Pt(θ)との差に基づくものであってもよい。具体的には、ガス圧検知装置10は、この変数Rt(θ)として、基準圧力Pa(θ)と測定圧力Pt(θ)との差(Pt(θ)-Pa(θ))を算出する。この変数Rt(θ)から算出される移動平均Rtj(θ)が所定の数値、例えば0より小さいときに、ガス圧検知装置10は、ガスの圧力が稼働許容圧力を下回ったと検知してもよい。この変数Rt(θ)として、差(Pt(θ)-Pa(θ))と係数Aとの積が用いられてもよい。更には、基準圧力Pa(θ)又は測定圧力Pt(θ)に対する、差(Pt(θ)-Pa(θ))の比が算出されてもよい。
【0053】
このロボット2では、第2アーム14が本発明に係る回動アームとして、第1アーム12が本発明に係るアーム支持部として、説明がされたがこれに限られない。例えば、第2アーム14と第3アーム16との間にガススプリングが設けられて、第2アーム14がアーム支持部とされ、第3アーム16が回動アームとされてもよい。同様に、第4アーム18と第5アーム20との間にガススプリングが設けられて、第4アーム18がアーム支持部とされ、第5アーム20が回動アームとされてもよい。ここでは、本発明に係るロボット2は、多関節型ロボットを例に説明がされたが、アーム支持部と回動アームとを備える関節型ロボットであればよい。
【符号の説明】
【0054】
2・・・ロボット
4・・・基台
6・・・ロボットアーム
8・・・ガスバランサ
9・・・圧力センサ
10・・・ガス圧検知装置
10a・・・インターフェースボード
10b・・・プロセッサ
10c・・・メモリ
12・・・第1アーム(アーム支持部)
14・・・第2アーム(回動アーム)
26・・・シリンダ
28・・・ピストン
30・・・ガス室
図1
図2
図3
図4
図5