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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】スパンレース不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/425 20120101AFI20220616BHJP
   D04H 1/492 20120101ALI20220616BHJP
   C02F 1/50 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
D04H1/425
D04H1/492
C02F1/50 510A
C02F1/50 520Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018016856
(22)【出願日】2018-02-02
(65)【公開番号】P2018127755
(43)【公開日】2018-08-16
【審査請求日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2017019987
(32)【優先日】2017-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松永 篤
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 修
(72)【発明者】
【氏名】林田 和人
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-202004(JP,A)
【文献】特開2013-075107(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105088530(CN,A)
【文献】特開平10-183452(JP,A)
【文献】特開昭54-116459(JP,A)
【文献】特開2004-041677(JP,A)
【文献】特開2012-233275(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106555272(CN,A)
【文献】中国実用新案第206337049(CN,U)
【文献】不織布の基礎と応用,日本,日本繊維機械学会,1993年08月25日,第157頁
【文献】繊維機械学会誌,第50巻、第8号,日本,1997年,第23頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/50
D04H1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維にて構成されたウェブを水流交絡により不織布化するに際し、複数段の水流交絡処理を、次亜塩素酸ナトリウムを0.1~0.3ppm添加して殺菌処理した水にて行うとともに、水流交絡処理後に130~145℃の温度で乾燥処理することで、一般細菌数(平均)が50CFU/g以下の不織布を得ることを特徴とするスパンレース不織布の製造方法。
【請求項2】
複数段の水流交絡処理における少なくとも最終段の処理を、水流交絡装置における循環水ではない水源から直接供給され殺菌処理された水にて行うことを特徴とする請求項1記載のスパンレース不織布の製造方法。
【請求項3】
乾燥処理後における不織布の水分率を8質量%以下とすることを特徴とする請求項1または2記載のスパンレース不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスパンレース不織布製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風合いに優れた不織布として、スパンレース不織布が知られている(特許文献1)。スパンレース不織布は、コットン等のセルロース繊維にて構成されたウェブを水流交絡により不織布化したものである。特に湿潤状態で使用されるものがあり、それは、フェイスマスク、おしぼり、消毒綿、ボディワイパー等の用途に供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-144281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、湿潤状態で使用される不織布は、特に細菌が繁殖しないように留意することが必要となる。
【0005】
そこで本発明は、細菌数の少ないスパンレース不織布を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のスパンレース不織布の製造方法は、以下の特徴を有する。
【0007】
(1)セルロース繊維にて構成されたウェブを水流交絡により不織布化するに際し、複数段の水流交絡処理を、次亜塩素酸ナトリウムを0.1~0.3ppm添加して殺菌処理した水にて行うとともに、水流交絡処理後に130~145℃の温度で乾燥処理することで、一般細菌数(平均)が50CFU/g以下の不織布を得ることを特徴とするスパンレース不織布の製造方法。
【0008】
複数段の水流交絡処理における少なくとも最終段の処理を、水流交絡装置における循環水ではない、水源から直接供給され殺菌処理された水にて行うことを特徴とする上記(1)のスパンレース不織布の製造方法。
【0009】
(3)乾燥処理後における不織布の水分率を8質量%以下とすることを特徴とする上記(1)または(2)のスパンレース不織布の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、複数段の水流交絡処理を殺菌処理した水にて行うとともに、水流交絡処理後に120℃以上の温度で乾燥処理することで、湿潤状態を維持したものでありながら細菌数の少ないスパンレース不織布を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
スパンレース不織布は、セルロース繊維を構成繊維とし、特に好ましくはコットンを構成繊維とし、高圧水流を適用することによって構成繊維同士を交絡させることにより、不織布形態を保持するものである。スパンレース不織布は、繊維同士の交絡のみによって不織布形態が保持されたものであるため、繊維間空隙が保たれ、嵩高となり、肌触りが良好で柔軟性を有する。またセルロース繊維を構成繊維としていることで、繊維端が鋭利な断面でないことからも肌当たりが滑らかであり、このため肌に直接触れる用途に好適な素材である。
【0012】
このようなスパンレース不織布を製造する際には、まずコットンなどのセルロース繊維を用いて公知の方法によりウェブを得る。次に、得られたウェブを有孔支持体に担持させる。有孔支持体としては、たとえば金網や合成樹脂製ネットなどの適当なメッシュ数のメッシュ織物を挙げることができる。
【0013】
そして、このように有孔支持体に担持させたウェブに高圧水流を付与する。高圧水流は、たとえば孔径0.05~2.0mmの噴射孔から10MPa以下の圧力の水を噴射させて得られるものである。この高圧水流が、有孔支持体に担持されたウェブに衝突すると、高圧水流のエネルギーがウェブを構成する繊維を運動させるエネルギーとなって繊維相互の交絡が生じる。
【0014】
高圧水流は、通常は複数段すなわち複数のステージに分けて付与される。高圧水流に用いる液体としては、水資源を節約する観点から、一度使用した処理水を循環させて再利用する。本発明においては、循環させた水に殺菌処理を施した水を使用する。殺菌処理した水としては、例えば循環水に次亜塩素酸ナトリウムを0.1~0.3ppm程度添加したものを用いることができる。循環水以外の水たとえば地下水や河川水などを同様に殺菌処理したものを用いることもできる。
このように殺菌処理した水を用いて高圧水流処理を施すことによって、殺菌処理された不織布を得ることができる。
【0015】
あるいは、上記に加えて、最終段の高圧水流処理を、循環水では無い、水源から直接供給され殺菌処理された水を用いて、行うこともできる。この場合は、循環水を用いるよりも、製造後の不織布に存在する細菌数を減らす効果を得ることができる。
【0016】
高圧水流処理が終わった対象物は、マングルなどの脱水装置によって脱水処理を行い、その後に高温での乾燥処理を行う。高温での乾燥処理によって、さらに確実な殺菌効果を得ることができる。乾燥処理は、たとえば対象物を熱風乾燥機に通すことによって行うことができる。そのときの処理温度、すなわち熱風乾燥機を用いる場合はその設定温度は、120~150℃とすることが好適である。乾燥前の対象物は湿潤状態にあるため、これを高温で乾燥処理すると、湿熱状態での処理となるので、十分な殺菌効果を得ることができる。処理温度が120℃未満であると一般細菌を効果的に殺菌することが困難である。反対に処理温度が150℃を超えると、生産上のエネルギーコストが増大してしまう。このため、より好ましい乾燥温度範囲は130~145℃である。この範囲であると、不織布の目付や生産速度などの生産銘柄に影響を及ぼすことなしに、殺菌状態の不織布を得ることができる。
【0017】
乾燥処理のための時間は、1分~3分が適当である。最小時間よりも短い場合は、上記の適正範囲に温度設定しても十分な殺菌効果が得られない。反対に最大時間よりも長くすると、生産速度が遅くなり、生産性が悪くなってしまい、コスト高となり無駄である。
【0018】
すなわち本発明によれば、殺菌処理した水を用いて高圧水流処理を施すとともに、その後に120~150℃という高温での乾燥処理を施すことによって、あるいは、水源から直接供給され殺菌処理された水を用いて最終段の高圧水流処理を施すとともに、その後に同様に120~150℃という高温での乾燥処理を施すことによって、用途として湿潤状態で用いた場合であっても菌数の少ないスパンレース不織布を得ることができる。乾燥処理後の不織布は、殺菌状態を維持するために、その水分率が8質量%以下であることが好適である。7質量%以下であることが特に好ましい。なお、水分率の下限は、殺菌状態維持の点では、小さいほどよいが、このような低水分率のスパンレース不織布を得るための製造工程管理を考慮すれば、下限は4質量%程度が好ましい。この点から、下限が5質量%であることが、より好ましい。水分率はJIS K 0068:2001、「化学製品の水分測定方法」の、「7.乾燥減量法」に基づき測定されるものである。なお、同規格では、乾燥温度が105±2℃と規定されているが、本明細書に記載の水分率は、乾燥温度を110℃に変更して測定されるものである。乾燥温度を変更する理由は、早期の乾燥を実現するためである。
【0019】
なお、水源からの水を用いた高圧水流処理は、最終段の処理のみに限られるものではなく、それよりも前段において同様の処理を施すことも可能である。すなわち、少なくとも最終段において当該処理を施せば足りる。
【0020】
このようにすることで、良好に殺菌処理されたスパンレース不織布、たとえば一般細菌数(平均)が50CFU/g以下の不織布を得ることができる。一般細菌数(平均)は、40CFU/g以下であることが好ましく、より好ましくは30CFU/g以下、さらには20CFU/g以下であることが好ましい。
【0021】
本発明において、一般細菌数(平均)は、次の手法により測定する。すなわち、供試コットンスパンレース不織布を1グラム準備し、この不織布を5mm角以下の大きさとなるように細かく裁断したうえで、リン酸緩衝生理食塩水20ミリリットルを加えて混合する。得られた混合液1ミリリットルずつをシャーレ(3枚)にそれぞれ採取し、これに標準寒天培地を20ミリリットル加え、温度35℃で48時間培養した後に、それぞれのシャーレ内のコロニー数を計測する。計測した値から、スパンレース不織布1グラム当たりのコロニー数を算出し、その平均値を一般細菌数(平均)(CFU/g)とする。
【実施例
【0022】
(実施例1)
セルロース繊維として、単繊維繊度1.7dtex、平均繊維長25mmの木綿繊維を準備し、これをランダムカード機にて開繊し、約100g/mの不織ウェブを得た。得られた不織ウェブを、移動式のプラスチック製織物からなる有孔支持体(18メッシュ)に載置し、不織ウェブに対して、高圧水流噴射装置(噴射孔のノズル孔径が0.13mm、噴射孔間隔が0.6mm)を用いて、一方の面側(表面)に、噴射圧力2MPaにて1回、噴射圧力5MPaにて1回の高圧水流処理を施した。その後、不織ウェブを反転させて他方の面(裏面)に、噴射圧力4MPaにて1回、噴射圧力5MPaにて1回の高圧水流処理を施した。その後、さらに反転させて、表面側に噴射圧力7MPaにて1回の高圧水流処理を施した。この合計5回の高圧水流処理において使用した水は、不織布の製造工場で普通に用いられている循環水であって、高圧水流処理への使用に際し次亜塩素酸ナトリウム0.1ppm添加により殺菌処理を施した。
【0023】
上記の高圧水流処理を施した不織ウェブは、マングルロールに通すことにより不織ウェブが含んでなる余剰水分を絞って除去し、次いで、145℃の温度で乾燥処理を施し、水分率5質量%のセルロース不織布を得た。
【0024】
得られたセルロース不織布の一般細菌数(平均値)は、40CFU/gであった。
【0025】
(実施例2)
実施例1と比べて、高圧水流処理において、表面および裏面より合計5回の高圧水流処理を施した後、さらに、表面より、噴射圧力5MPaにて1回の高圧水流処理を施した点を変更した。そして、それ以外は実施例1と同様にして、実施例2のセルロース不織布を得た。その水分率は、5質量%であった。なお、最後(6回目)に施した高圧水流処理に用いた水は、循環水ではなく、水源からの直接供給水であって、次亜塩素酸ナトリウム0.1ppm添加により殺菌処理した水とした。
【0026】
得られたセルロース不織布の一般細菌数(平均値)は、20CFU/gであった。
【0027】
(比較例1)
実施例1と比べて、高圧水流処理において、次亜塩素酸ナトリウムを添加せず殺菌処理を施していない循環水を用いた点を変更した。そして、それ以外は実施例1と同様にして、セルロース不織布を得た。その水分率は、5質量%であった。
【0028】
得られたセルロース不織布の一般細菌数(平均値)は、67CFU/gであった。なお、一般細菌数測定において、3つのシャーレサンプルの値はバラツキがあり、ひとつのサンプルは150CFU/gを超えるものもあった。
【0029】
(比較例2)
実施例1と比べて、高圧水流処理後の乾燥処理の温度を90℃に設定した点を変更した。そして、それ以外は実施例1と同様にして、セルロース不織布を得た。その水分率は、9質量%であった。
【0030】
得られたセルロース不織布の一般細菌数(平均値)は、320CFU/gであった。