(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】超音波検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/265 20060101AFI20220616BHJP
G01N 29/04 20060101ALI20220616BHJP
G21C 17/003 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
G01N29/265
G01N29/04
G21C17/003 100
(21)【出願番号】P 2018135557
(22)【出願日】2018-07-19
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 睦三
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-214136(JP,A)
【文献】特開平09-053937(JP,A)
【文献】特開平01-153908(JP,A)
【文献】特開2017-096770(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0322185(US,A1)
【文献】特開昭60-073307(JP,A)
【文献】実開平03-106455(JP,U)
【文献】実開平07-020515(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
G21C 17/00 - G21C 17/14
G01B 11/00 - G01B 11/30
G01C 1/00 - G01C 1/14
G01C 5/00 - G01C 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査部位に超音波を送信する送信用斜角探触子と、
前記検査部位で反射された超音波を受信する受信用斜角探触子と、
前記送信用斜角探触子及び前記受信用斜角探触子を保持するマニピュレータと、
前記受信用斜角探触子で受信された超音波に関する情報を表示又は記憶する処理を実行する制御装置とを備えた超音波検査装置において、
前記マニピュレータに設けられ、前記送信用斜角探触子の姿勢角を調整する第1の回転軸と、
前記第1の回転軸に連結された第1の光ビーム発生器と、
前記マニピュレータに設けられ、前記受信用斜角探触子の姿勢角を調整する第2の回転軸と、
前記第2の回転軸に連結された第2の光ビーム発生器と、
前記第1の光ビーム発生器からの光ビームと前記第2の光ビーム発生器からの光ビームが照射された場合に、それらの照射位置を視認可能な受光板と
、
前記受光板を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影された前記受光板の画像を処理する画像処理装置と、
前記画像処理装置で生成された合成画像を表示する画像表示装置とを備え、
前記画像処理装置は、
前記送信用斜角探触子の位置と予め設定された姿勢角に基づき、前記第1の光ビーム発生器からの光ビームが照射されるべき前記受光板上の第1の目標照射位置を演算し、
前記受信用斜角探触子の位置と予め設定された姿勢角に基づき、前記第2の光ビーム発生器からの光ビームが照射されるべき前記受光板上の第2の目標照射位置を演算し、
前記カメラで撮影された前記受光板の画像に対し、前記第1の目標照射位置及び前記第2の目標照射位置にそれぞれ対応する第1の目標マーカ及び第2の目標マーカを重畳して、合成画像を生成することを特徴とする超音波検査装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の超音波検査装置において、
前記画像処理装置で生成された合成画像を保存する記憶装置を備えたことを特徴とする超音波検査装置。
【請求項3】
請求項
1に記載の超音波検査装置において、
無線通信装置を介し前記カメラからの画像を受信する携帯端末機を備え、
前記携帯端末機は、前記画像処理装置と前記画像表示装置を備えたことを特徴とする超音波検査装置。
【請求項4】
請求項
1に記載の超音波検査装置において、
無線通信装置を介し前記画像処理装置からの合成画像を受信する携帯端末機を備え、
前記携帯端末機は、前記画像表示装置を備えたことを特徴とする超音波検査装置。
【請求項5】
検査部位に超音波を送信する送信用斜角探触子と、
前記検査部位で反射された超音波を受信する受信用斜角探触子と、
前記送信用斜角探触子及び前記受信用斜角探触子を保持するマニピュレータと、
前記受信用斜角探触子で受信された超音波に関する情報を表示又は記憶する処理を実行する制御装置とを備えた超音波検査装置において、
前記マニピュレータに設けられ、前記送信用斜角探触子の姿勢角を調整する第1の回転軸と、
前記第1の回転軸に連結された第1の光ビーム発生器と、
前記マニピュレータに設けられ、前記受信用斜角探触子の姿勢角を調整する第2の回転軸と、
前記第2の回転軸に連結された第2の光ビーム発生器と、
前記第1の光ビーム発生器からの光ビームと前記第2の光ビーム発生器からの光ビームが照射された場合に、それらの照射位置を視認可能な受光板とを備え、
前記受光板は、前記第1の光ビーム発生器からの光ビームが前記受光板の一方側側面に照射されると共に、前記第2の光ビーム発生器からの光ビームが前記受光板の反対側側面に照射されるように配置されて、前記第1の光ビーム発生器からの光ビームの照射位置と前記第2の光ビーム発生器からの光ビームの照射位置との関係が前記一方側側面又は前記反対側側面から目視確認可能なように半透明な材料で構成されたことを特徴とする超音波検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信用斜角探触子及び受信用斜角探触子を備えた超音波検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検査部位に欠陥が生じているか否かを検査する超音波検査方法の一つとして、送信用斜角探触子と受信用斜角探触子を用いる二探触子法が知られている。送信用斜角探触子は、検査部位に超音波を送信する。受信用斜角探触子は、検査部位に欠陥が存在する場合に、欠陥で反射された超音波を受信する。制御装置は、受信用斜角探触子で受信された超音波に関する情報(詳細には、例えば、超音波の振幅の経時変化、若しくは、それから得られた情報)を表示又は記憶する。検査者は、この情報により、検査部位に欠陥が生じているか否かを確認する。
【0003】
特許文献1に記載の二探触子法では、検査部位は、例えば平板状の母材に形成された溶接部である。送信用斜角探触子及び受信用斜角探触子は、溶接部を挟んで一方側及び反対側にそれぞれ配置される。送信用斜角探触子は、溶接線に垂直な仮想平面に沿った送信方向で超音波を送信するように、母材の表面に配置される。受信用斜角探触子は、前述の仮想平面に沿った受信方向で超音波を受信するように、母材の表面に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した二探触子法では、送信用斜角探触子の姿勢角と受信用斜角探触子の姿勢角を調整して、送信用斜角探触子の超音波の送信方向と受信用斜角探触子の超音波の受信方向の精度を高めることが好ましい。送信用斜角探触子の超音波の送信方向又は受信用斜角探触子の超音波の受信方向の精度が低ければ、検査部位に欠陥が存在しても、受信用斜角探触子は、欠陥で反射された超音波を受信しないか、若しくは、受信強度(言い換えれば、超音波の振幅)が低くなる可能性がある。一方、検査部位に欠陥が生じていなければ、受信用斜角探触子は、超音波を受信しないか、若しくは、受信強度が低くなる。したがって、検査部位に欠陥が生じていないという検査結果の信頼性を高めるためには、送信用斜角探触子の姿勢角と受信用斜角探触子の姿勢角を調整して、送信用斜角探触子の超音波の送信方向と受信用斜角探触子の超音波の受信方向の精度を高めることが好ましい。
【0006】
本発明の目的は、送信用斜角探触子の姿勢角と受信用斜角探触子の姿勢角を調整して、送信用斜角探触子の超音波の送信方向と受信用斜角探触子の超音波の受信方向の精度を高めることができる超音波検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、代表的な本発明は、検査部位に超音波を送信する送信用斜角探触子と、前記検査部位で反射された超音波を受信する受信用斜角探触子と、前記送信用斜角探触子及び前記受信用斜角探触子を保持するマニピュレータと、前記受信用斜角探触子で受信された超音波に関する情報を表示又は記憶する処理を実行する制御装置とを備えた超音波検査装置において、前記マニピュレータに設けられ、前記送信用斜角探触子の姿勢角を調整する第1の回転軸と、前記第1の回転軸に連結された第1の光ビーム発生器と、前記マニピュレータに設けられ、前記受信用斜角探触子の姿勢角を調整する第2の回転軸と、前記第2の回転軸に連結された第2の光ビーム発生器と、前記第1の光ビーム発生器からの光ビームと前記第2の光ビーム発生器からの光ビームが照射された場合に、それらの照射位置を視認可能な受光板と、前記受光板を撮影するカメラと、前記カメラで撮影された前記受光板の画像を処理する画像処理装置と、前記画像処理装置で生成された合成画像を表示する画像表示装置とを備え、前記画像処理装置は、前記送信用斜角探触子の位置と予め設定された姿勢角に基づき、前記第1の光ビーム発生器からの光ビームが照射されるべき前記受光板上の第1の目標照射位置を演算し、前記受信用斜角探触子の位置と予め設定された姿勢角に基づき、前記第2の光ビーム発生器からの光ビームが照射されるべき前記受光板上の第2の目標照射位置を演算し、前記カメラで撮影された前記受光板の画像に対し、前記第1の目標照射位置及び前記第2の目標照射位置にそれぞれ対応する第1の目標マーカ及び第2の目標マーカを重畳して、合成画像を生成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、送信用斜角探触子の姿勢角と受信用斜角探触子の姿勢角を調整して、送信用斜角探触子の超音波の送信方向と受信用斜角探触子の超音波の受信方向の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態の被検体である原子炉圧力容器の下鏡部を下側から見た図である。
【
図2】
図1中断面II-IIによる下鏡部の鉛直断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態における超音波検査装置の構成を表すブロック図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態における送信用斜角探触子、受信用斜角探触子、第1及び第2のレーザ、並びに受光板の配置を表す、下鏡部を下側から見た図である。
【
図5】
図4中断面V-Vによる鉛直断面に、溶接部の欠陥と受光板の一方側側面を投影して表すと共に、送信用斜角探触子の超音波の送信方向とこれに対応する第1のレーザの光ビームの照射方向を投影して表す図である。
【
図6】
図4中断面VI-VIによる鉛直断面に、溶接部の欠陥と受光板の反対側側面を投影して表すと共に、受信用斜角探触子の超音波の受信方向とこれに対応する第2のレーザの光ビームの照射方向を投影して表す図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態における超音波検査装置の構成を表すブロック図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態における送信用斜角探触子、受信用斜角探触子、第1及び第2のレーザ、受光板、並びにカメラの配置を表す、下鏡部を下側から見た図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態における受光板の受光面の具体例を表す図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態における表示装置の表示画面の具体例を表す図である。
【
図11】本発明の第1の変形例における超音波検査装置の構成を表すブロック図である。
【
図12】本発明の第2の変形例における超音波検査装置の構成を表すブロック図である。
【
図13】本発明の第3の実施形態における超音波検査装置の構成を表すブロック図である。
【
図14】本発明の第3の実施形態における送信用斜角探触子、受信用斜角探触子、及び光位置検出器の配置を表す、下鏡部を下側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は、本実施形態の被検体である原子炉圧力容器の下鏡部を下側から見た図であり、
図2は、
図1中断面II-IIによる下鏡部の鉛直断面図である。
図3は、本実施形態における超音波検査装置の構成を表すブロック図である。
図4は、本実施形態における送信用斜角探触子、受信用斜角探触子、第1及び第2のレーザ、並びに受光板の配置を表す、下鏡部を下側から見た図である。
図5は、
図4中断面V-Vによる鉛直断面に、溶接部の欠陥と受光板の一方側側面を投影して表すと共に、送信用斜角探触子の超音波の送信方向とこれに対応する第1のレーザの光ビームの照射方向を投影して表す図である。
図6は、
図4中断面VI-VIによる鉛直断面に、溶接部の欠陥と受光板の反対側側面を投影して表すと共に、受信用斜角探触子の超音波の受信方向とこれに対応する第2のレーザの光ビームの照射方向を投影して表す図である。
【0012】
原子炉圧力容器の下鏡部は、球冠形状のドーム部11と、円錐台の側部形状の下鏡ペタル部12とを有し、それらが円筒形状の溶接部13で接合されている。ドーム部11には、複数の制御棒駆動機構ハウジング14が形成され、下鏡ペタル部12には、複数のインターナルポンプケーシング15が形成されている。
【0013】
本実施形態の超音波検査装置は、原子炉圧力容器の下鏡部の溶接部13に欠陥16(詳細には、溶接部13の境界面に沿って生じる面状の内部欠陥)が生じているか否かを検査するためのものである。この超音波検査装置は、送信用斜角探触子21、受信用斜角探触子22、マニピュレータ23、送受信装置24、制御装置25、記憶装置26、及び表示装置27を備えている。なお、制御装置25はコンピュータ又は電子部品を搭載した基板等で構成され、記憶装置26はハードディスク等で構成され、表示装置27はディスプレイ等で構成されている。
【0014】
制御装置25は、マニピュレータ23を介して送信用斜角探触子21及び受信用斜角探触子22の位置を制御すると共に、送受信装置24を介して送信用斜角探触子21及び受信用斜角探触子22による超音波の送受信を制御するようになっている。
【0015】
送受信装置24は、図示しないものの、パルサ及びレシーバを有している。送受信装置24のパルサは、制御装置25からの指令に応じて送信用斜角探触子21に駆動信号(電気信号)を出力する。送信用斜角探触子21は、送受信装置24のパルサからの駆動信号に応じて超音波を溶接部13に送信する。受信用斜角探触子22は、溶接部13に欠陥16が存在する場合に、欠陥16で反射された超音波を受信し、受信した超音波を波形信号(電気信号)に変換して送受信装置24のレシーバに出力する。送受信装置24のレシーバは、受信用斜角探触子22からの波形信号に対し所定の処理(詳細には、アナログ信号からデジタル信号への変換処理等)を行い、制御装置25に出力する。
【0016】
送信用斜角探触子21及び受信用斜角探触子22として用いる「斜角探触子」の定義を述べる。本明細書の「斜角探触子」とは、被検体の表面(検査面)の法線方向に対して斜めに超音波を送信又は受信する探触子と定義される。したがって、斜角探触子として、探触子の表面から斜め方向に超音波を送信又は受信する探触子を用いてもよい。また、垂直探触子とシュー(またはウエッジ)を組み合わせることで、検査面の法線方向に対して斜めに超音波を送信又は受信する探触子を用いてもよい。さらに、複数の振動子を有するフェーズドアレイ探触子を用いてもよい。フェーズドアレイ探触子は、複数の振動子の放射位相を適切に調整することで、検査面の法線方向に対して斜めに超音波を送信又は受信することが可能である。
【0017】
制御装置25は、送受信装置24のレシーバからの波形信号により、受信用斜角探触子22で受信された超音波に関する情報を取得しており、この情報を記憶装置26で記憶すると共に、表示装置27で表示する処理を実行する。具体的に説明すると、例えば、受信用斜角探触子22で受信された超音波の振幅の経時変化をそのまま、若しくは、送信用斜角探触子21の送信タイミングを基準として設定された時間範囲における超音波の振幅の経時変化を抽出して、記憶装置26で記憶すると共に、表示装置27で表示する。あるいは、例えば、受信用斜角探触子22で受信された超音波の振幅が予め設定された閾値より大きい場合に、溶接部13に欠陥16が存在すると判定し、その判定結果を記憶装置26で記憶すると共に、表示装置27で表示する。なお、前述した情報は、送信用斜角探触子21の位置及び姿勢角と受信用斜角探触子22の位置及び姿勢角に基づいて算出された探傷位置と関連付けられて、記憶装置26で記憶すると共に、表示装置27で表示することが好ましい。また、前述した処理は、記憶装置26の記憶又は表示装置27の表示のうちのいずれ一方のみでもよい。
【0018】
マニピュレータ23は、送信用斜角探触子21及び受信用斜角探触子22を保持して、送信用斜角探触子21及び受信用斜角探触子22をインターナルポンプケーシング15等と干渉しないように下鏡ペタル部12の表面に配置するためのものである。マニピュレータ23は、例えば、溶接部13に沿って延在する円環状の軌道レール31と、軌道レール31に沿って移動する駆動装置32A,32Bとで構成されている。
【0019】
駆動装置32Aは、軌道レール31上を走行可能な移動体33Aと、移動体33Aの周方向位置での下鏡ペタル部12の円錐台母線方向(
図4中直線K
1の方向)に沿ってスライド可能なように移動体33Aに設けられたアーム34Aと、アーム34Aの先端側に設けられて送信用斜角探触子21を支持する回転軸35A(第1の回転軸)とを有している。そして、制御装置25からの指令に応じて、移動体33Aが移動すると共にアーム34Aがスライドすることにより、送信用斜角探触子21の位置を制御するようになっている。
【0020】
回転軸35Aは、手動操作により、下鏡ペタル部12の円錐台母線方向に対し垂直な軸心まわりで回転可能とし、且つ、その回転位置を固定可能としている。これにより、送信用斜角探触子21の姿勢角(詳細には、下鏡ペタル部12の円錐台母線方向と送信用斜角探触子21の向きの間の角度)を調整可能としている。
【0021】
駆動装置32Bは、軌道レール31上を走行可能な移動体33Bと、移動体33Bの周方向位置での下鏡ペタル部12の円錐台母線方向(
図4中直線K
2の方向)に沿ってスライド可能なように移動体33Bに設けられたアーム34Bと、アーム34Bの先端側に設けられて受信用斜角探触子22を支持する回転軸35B(第2の回転軸)とを有している。そして、制御装置25からの指令に応じて、移動体33Bが移動すると共にアーム34Bがスライドすることにより、受信用斜角探触子22の位置を制御するようになっている。
【0022】
回転軸35Bは、手動操作により、下鏡ペタル部12の円錐台母線方向に対し垂直な軸心まわりで回転可能とし、且つ、その回転位置を可能としている。これにより、受信用斜角探触子22の姿勢角(詳細には、下鏡ペタル部12の円錐台母線方向と受信用斜角探触子22の向きの間の角度)を調整可能としている。
【0023】
送信用斜角探触子21は、溶接部13の円筒軸方向(言い換えれば、鉛直方向)に垂直な仮想平面(言い換えれば、水平面)に沿った送信方向S1で超音波を送信するように、その姿勢角が調整されることが好ましい。受信用斜角探触子22は、前述した仮想平面に沿った受信方向S2で超音波を受信するように、その姿勢角が調整されることが好ましい。これにより、溶接部13の欠陥16を高感度に検出することが可能である。
【0024】
そこで、本実施形態の超音波検査装置は、回転軸35Aに連結されたレーザ41A(第1の光ビーム発生器)と、回転軸35Bに連結されたレーザ41B(第2の光ビーム発生器)と、例えば軌道レール31に取付具(図示せず)を介し取付けられた受光板42とを備えている。
【0025】
レーザ41Aは、回転軸35Aを介し送信用斜角探触子21と連動して回転する。そして、指向性の(言い換えれば、比較的小さなビームの広がり角を有する)光ビームを発生しており、その照射方向L1が送信用斜角探触子21の向きに平行であって、超音波の送信方向S1に対応する。レーザ41Bは、回転軸35Bを介し受信用斜角探触子22と連動して回転する。そして、指向性の光ビームを発生しており、その照射方向L2が受信用斜角探触子22の向きに平行であって、超音波の受信方向S2に対応する。
【0026】
受光板42は、送信用斜角探触子21の姿勢角及び受信用斜角探触子22の姿勢角が適切である場合にレーザ41Aからの光ビームとレーザ41Bからの光ビームが交差する位置(本実施形態では、送信用斜角探触子21と受信用斜角探触子22の対称面)に配置されている。また、受光板42は、レーザ41Aからの光ビームが受光板42の一方側(
図4中下側)の側面に照射されると共に、レーザ41Bからの光ビームが受光板42の反対側(
図4中上側)の側面に照射されるように配置されている。
【0027】
そして、受光板42は半透明な材料で構成されている。これにより、検査者は、例えば検査前(詳細には、斜角探触子21,22の設置時)又は検査途中に(詳細には、斜角探触子21,22の移動毎に、若しくは所定時間の経過毎に)、レーザ41Aからの光ビームの照射位置(
図5中の位置M
1)とレーザ41Bからの光ビームの照射位置(
図6中の位置M
2)との関係を、受光板42の一方側側面又は反対側側面から目視確認可能としている。そして、検査者は、2つの光ビームの照射位置が互いにずれていれば、2つの光ビームの照射位置が互いに同じとなるように回転軸35A又は35Bを手動操作して、送信用斜角探触子21の姿勢角又は受信用斜角探触子22の姿勢角を調整する。これにより、送信用斜角探触子21の超音波の送信方向と受信用斜角探触子22の超音波の受信方向の精度を高めることができる。特に、本実施形態の被検体である原子炉圧力容器の下鏡部は大型であり、超音波の伝播距離が長くなることから、その効果が顕著となる。
【0028】
なお、第1の実施形態においては、検査者が受光板42の一方側側面又は反対側側面を目視確認する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。例えば、受光板42の一方側側面又は反対側側面を撮影するカメラと、このカメラで撮影された受光板42の画像を表示する画像表示装置とを設けることにより、検査者が画像表示装置を見て確認してもよい。更に、カメラで撮影された受光板42の画像を処理する画像処理装置を設け、レーザ41Aからの光ビームの照射位置とレーザ41Bからの光ビームの照射位置とのずれを画像処理装置によって抽出して画像表示装置に表示してもよい。
【0029】
本発明の第2の実施形態を、
図7~
図10を用いて説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0030】
図7は、本実施形態における超音波検査装置の構成を表すブロック図である。
図8は、本実施形態における送信用斜角探触子、受信用斜角探触子、第1及び第2のレーザ、受光板、並びにカメラの配置を表す、下鏡部を下側から見た図である。
図9は、本実施形態における受光板の受光面の具体例を表す図である。
図10は、本実施形態における表示装置の画面の具体例を表す図である。
【0031】
本実施形態では、受光板42Aは、送信用斜角探触子21の姿勢角及び受信用斜角探触子22の姿勢角が適切である場合にレーザ41Aからの光ビームとレーザ41Bからの光ビームが交差する位置の近傍(本実施形態では、送信用斜角探触子21と受信用斜角探触子22の対称面)に配置されている。また、受光板42Aは、レーザ41Aからの光ビームとレーザ41Bからの光ビームが受光板42の一方側(
図8中右側)の側面(受光面)に照射されるように配置されている。そして、受光板42Aは、不透明な材料で構成されている。
【0032】
本実施形態の超音波検査装置は、受光板42Aの受光面を撮影するカメラ43と、カメラ43で撮影された受光板42Aの受光面の画像を処理する画像処理装置44と、画像処理装置44で処理された画像を表示する画像表示装置45と、入力装置46とを備えている。なお、画像処理装置44はコンピュータ又は電子部品を搭載した基板等で構成され、画像表示装置45はディスプレイ等で構成され、入力装置46はキーボードやマウスで構成されるか、若しくはタッチパネル等で構成されている。
【0033】
画像表示装置45は、例えば
図10で示す画面51を表示する。画面51は、カメラ43で撮影された受光板42Aの受光面の画像と共に、例えば入力装置46によって入力された送信用斜角探触子21の位置及び姿勢角と受信用斜角探触子22の位置及び姿勢角を表示する。なお、記憶装置26は、各検査番号に対応する送信用斜角探触子21の位置及び姿勢角と受信用斜角探触子22の位置及び姿勢角を予め記憶してもよい。そして、画像表示装置45は、入力装置46によって入力された検査番号に応じて、送信用斜角探触子21の位置及び姿勢角と受信用斜角探触子22の位置及び姿勢角を記憶装置26から取得して、画面51に表示してもよい。あるいは、画像表示装置45は、送信用斜角探触子21の位置及び姿勢角と受信用斜角探触子22の位置及び姿勢角を制御装置25から取得して、画面51に表示してもよい。
【0034】
画面51は、「マーカ表示」ボタン52、「ビームON」ボタン53、及び「保存」ボタン54を有している。そして、検査者が入力装置46を用いて画面51の「マーカ表示」ボタン52を操作すると、その指令が画像処理装置44に入力される。画像処理装置44は、前述した指令に応じて、カメラ43で撮影された受光板42Aの受光面の画像に対し目標マーカ55A,55Bを重畳して合成画像を生成し、画像表示装置45の画面51は、合成画像を表示する。
【0035】
画像処理装置44の合成画像の生成処理について説明する。画像処理装置44は、入力装置46によって入力された送信用斜角探触子21の位置と予め設定された理想的な姿勢角に基づき、レーザ41Aからの光ビームが照射されるべき受光板42Aの受光面上の第1の目標照射位置を演算する。詳しく説明すると、レーザ41Aの光ビームの出射位置をベクトルr0で表し、レーザ41Aの光ビームの出射方向をベクトルuで表す。受光板42Aの受光面の法線方向をベクトルnで表し、受光板42Aの受光面上の任意の点の位置をベクトルrで表す。座標原点から受光板42Aの受光面を含む無限長平面までの距離をhで表す。距離hは、ベクトルnとベクトルrの内積(n,r)に等しい。レーザ41Aの光ビームと受光板42Aの受光面との交差点である位置ベクトルrは、下記の式(1)を用いて演算する。なお、式中の括弧は内積を示す。
【0036】
【0037】
同様に、画像処理装置44は、入力装置46によって入力された受信用斜角探触子22の位置と予め設定された理想的な姿勢角に基づき、レーザ41Bからの光ビームが照射されるべき受光板42A上の第2の目標照射位置を演算する。
【0038】
そして、画像処理装置44は、カメラ43で撮影された受光板42Aの受光面の画像に対し、上述した第1の目標照射位置及び第2の目標照射位置にそれぞれ対応する目標マーカ55A,55Bを重畳して、合成画像を生成する。なお、例えば
図9で示すように、受光板42Aの受光面には、複数の位置合わせマーカ47が設けられている。画像処理装置44は、画像上の位置合わせマーカ47を認識することにより、目標マーカ55A,55Bを正確な位置に重畳することが可能である。
【0039】
検査者が入力装置46を用いて画面51の「ビームON」ボタン53を操作すると、その指令が制御装置25に入力される。制御装置25は、前述した指令に応じてレーザ41A,41Bを駆動させる。これにより、画像表示装置45の画面51は、カメラ43で撮影された受光板42Aの受光面の画像であって、レーザ41Aからの光ビームが照射されて受光板42Aの受光面上の照射位置56Aとレーザ41Bからの光ビームが照射された受光板42A上の照射位置56Bを示す画像を表示する。検査者は、画像表示装置45の画面51を見て、照射位置56Aが目標マーカ55Aに対してずれているかどうか、照射位置56Bが目標マーカ55Bに対してずれているかどうかを確認することができる。
【0040】
そして、検査者は、照射位置56Aが目標マーカ55Aに対してずれていれば、照射位置56Aが目標マーカ55Aに重なるように回転軸35Aを手動操作して、送信用斜角探触子21の姿勢角を調整することができる。また、検査者は、照射位置56Bが目標マーカ55Bに対してずれていれば、照射位置56Bが目標マーカ55Bに重なるように回転軸35Bを手動操作して、受信用斜角探触子22の姿勢角を調整する。これにより、送信用斜角探触子21の超音波の送信方向と受信用斜角探触子22の超音波の受信方向の精度を高めることができる。
【0041】
その後、検査者が入力装置46を用いて画面51の「画像保存」ボタン54を操作すると、その指令が画像処理装置44に入力される。画像処理装置44は、前述した指令に応じて、目標マーカ55A,55B及び照射位置56A,56Bを示す合成画像を記憶装置26で記憶する処理を実行する。
【0042】
なお、第1及び第2の実施形態においては、特に説明しなかったが、レーザ41A,41Bが発生する光ビームの色を互いに異ならせてもよい。具体的には、例えば、レーザ41A,41Bのうちの一方が発生する光ビームを赤色とし、他方が発生する光ビームを緑色としてもよい。これにより、受光板42又は42Aにおける2つの光ビームの照射位置を容易に識別することができる。
【0043】
また、第2の実施形態においては、受光板42Aに対するレーザ41Aからの光ビームの照射とレーザ41Bからの光ビームの照射を同時に行う場合を例にとって説明したが、これに限られず、別々の時間に行ってもよい。
【0044】
また、第2の実施形態においては、カメラ43等にケーブルを介し画像処理装置44が接続された場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。すなわち、例えば
図11で示す第1の変形例のように、超音波検査装置は、無線通信装置48を介しカメラ43からの画像を受信する携帯端末機49を備え、携帯端末機49は、画像処理装置44、画像表示装置45、及び入力装置46を備えてもよい。更に、携帯端末機49は、無線通信装置48及び制御装置25を介して記憶装置26に合成画像を記憶させてもよい。あるいは、例えば
図12で示す第2の変形例のように、超音波検査装置は、無線通信装置48を介し画像処理装置44からの合成画像(又はカメラ43で撮影された画像)を受信する携帯端末機49Aを備え、携帯端末機49Aは、画像表示装置45及び入力装置46を備えてもよい。これらの変形例では、検査者が携帯端末機を持ちながら、送信用斜角探触子21又は受信用斜角探触子22に近づくことができるため、送信用斜角探触子21の姿勢角又は受信用斜角探触子22の姿勢角を効率よく調整することができる。
【0045】
また、第2の実施形態及び変形例においては、カメラ43で撮影された受光板42Aの受光面の画像を処理する画像処理装置44を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。例えば、受光板42Aの受光面に目標マーカを設けることにより、画像処理装置44を備えなくともよい。
【0046】
本発明の第3の実施形態を、
図13及び
図14を用いて説明する。なお、本実施形態において、上記実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0047】
図13は、本実施形態における超音波検査装置の構成を表すブロック図である。
図14は、本実施形態における送信用斜角探触子、受信用斜角探触子、第1及び第2のレーザ、並びに光位置検出器の配置を表す、下鏡部を下側から見た図である。
【0048】
本実施形態では、マニピュレータ23Aは、回転軸35A,35Bをそれぞれ駆動する回転装置36A,36Bを備えている。また、送信用斜角探触子21の姿勢角及び受信用斜角探触子22の姿勢角が適切である場合にレーザ41Aからの光ビームとレーザ41Bからの光ビームが交差する位置の近傍(本実施形態では、送信用斜角探触子21と受信用斜角探触子22の対称面)には、第1の実施形態の受光板42に代えて、光位置検出器50が設けられている。光位置検出器50は、例えば2次元PSD(Position Sensitive Detector)であって、フォトダイオードの表面抵抗を利用して光ビームの照射位置を計測する素子を有する。
【0049】
光位置検出器50は、レーザ41Aからの光ビームが照射された場合の第1の照射位置を検出し、この第1の照射位置を制御装置25Aへ出力する。制御装置25Aは、光位置検出器50で検出された第1の照射位置に基づいて回転装置36Aを制御する。詳しく説明すると、制御装置25Aは、送信用斜角探触子21の位置と予め設定された理想的な姿勢角に基づき、レーザ41Aからの光ビームが照射されるべき光位置検出器50上の第1の目標照射位置を演算する。そして、光位置検出器50で検出された第1の照射位置が第1の目標照射位置となるように回転装置36Aを制御する。これにより、送信用斜角探触子21の姿勢角を調整して、送信用斜角探触子21の超音波の送信方向の精度を高めることができる。
【0050】
光位置検出器50は、レーザ41Bからの光ビームが照射された場合の第2の照射位置を検出し、この第2の照射位置を制御装置25Aへ出力する。制御装置25Aは、光位置検出器50で検出された第2の照射位置に基づいて回転装置36Bを制御する。詳しく説明すると、制御装置25Aは、受信用斜角探触子22の位置と予め設定された理想的な姿勢角に基づき、レーザ41Bからの光ビームが照射されるべき光位置検出器50上の第2の目標照射位置を演算する。そして、光位置検出器50で検出された第2の照射位置が第2の目標照射位置となるように回転装置36Bを制御する。これにより、受信用斜角探触子22の姿勢角を調整して、受信用斜角探触子22の超音波の受信方向の精度を高めることができる。
【0051】
光位置検出器50に対するレーザ41Aからの光ビームの照射とレーザ41Bからの光ビームの照射は、同時に行わないほうがよい。そのため、送信用斜角探触子21の姿勢角の調整と受信用斜角探触子22の姿勢角の調整は別々の時間で行う。
【0052】
なお、第1~第3の実施形態においては、光ビーム発生器としてレーザ41A,41Bを備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。光ビーム発生器として、例えば、指向性の光ビームを発生する発光ダイオードを備えてもよい。
【0053】
以上において、検査部位は、円錐台の側部形状の下鏡ペタル部12(母材)に形成された円筒形状の溶接部13である場合を例にとって説明したが、これに限られない。検査部位は、例えば円錐の側部形状の母材に形成された円筒形状の溶接部であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
13 溶接部
21 送信用斜角探触子
22 受信用斜角探触子
23,23A マニピュレータ
25,25A 制御装置
26 記憶装置
35A 回転軸(第1の回転軸)
35B 回転軸(第2の回転軸)
36A 回転装置(第1の回転装置)
36B 回転装置(第2の回転装置)
41A レーザ(第1の光ビーム発生器)
41B レーザ(第2の光ビーム発生器)
42,42A 受光板
43 カメラ
44 画像処理装置
45 画像表示装置
48 無線通信装置
49,49A 携帯端末機
50 光位置検出器