(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】全固体電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0562 20100101AFI20220617BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20220617BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220617BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220617BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20220617BHJP
H01B 1/10 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01M10/0585
H01M10/052
H01M4/13
H01B1/06 A
H01B1/10
(21)【出願番号】P 2020568404
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(86)【国際出願番号】 KR2019014758
(87)【国際公開番号】W WO2020091532
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2020-12-08
(31)【優先権主張番号】10-2018-0133816
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ビョン-フン・アン
(72)【発明者】
【氏名】サン-キュン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ-カン・チュン
(72)【発明者】
【氏名】ベク-ボム・チェ
(72)【発明者】
【氏名】サン-フン・チェ
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-008073(JP,A)
【文献】特開2017-062939(JP,A)
【文献】国際公開第2018/131894(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0052039(KR,A)
【文献】特開2012-199150(JP,A)
【文献】特開2017-103253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05 - 10/587
H01M 4/139 - 4/1399
H01B 1/06 - 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極の表面に固体電解質層が形成された全固体電池用電極部材の製造方法であって、
(S1)集電体及び前記集電体の表面に形成された電極活物質層を含む電極を用意する段階と、
(S2)前記電極の表面に固体電解質層形成用スラリーを塗布及び乾燥して固体電解質パターン層を形成する段階と、
(S3)前記(S2)の結果物を加圧して電極活物質層の表面全体が固体電解質層で被覆されるようにラミネートする段階とを含み、
前記(S2)段階は、固体電解質が電極活物質層の表面の少なくとも一部を被覆し、且つ、固体電解質で被覆されていない無地部を含むように、固体電解質層形成用スラリーをパターン化して塗布する方式で行われる、全固体電池用電極部材の製造方法。
【請求項2】
前記(S3)段階の前に前記(S2)段階の結果物を加熱する段階がさらに行われる、請求項1に記載の全固体電池用電極部材の製造方法。
【請求項3】
前記加熱が60℃~150℃の範囲で行われる、請求項2に記載の全固体電池用電極部材の製造方法。
【請求項4】
前記固体電解質層が、下記化学式1の硫化物系固体電解質を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の全固体電池用電極部材の製造方法。
[化学式1]
L
a1M
b1P
c1S
d1A
e1…化学式1
ここで、LはLi、Na及びKから選択される元素であり、MはB、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素であり、AはI、Br、Cl、Fから選択された1種以上であり、a1~e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1=1~12:0~1:1:2~12:0~5である。
【請求項5】
前記固体電解質パターン層が、縞パターン、ドットパターン、碁盤の目状に複数の線が交差するパターン及びマトリクスパターンのうちいずれか一つのパターンを有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の全固体電池用電極部材の製造方法。
【請求項6】
前記(S3)段階の後、電極と固体電解質層との積層配列がズレないように、整列する段階をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の全固体電池用電極部材の製造方法。
【請求項7】
前記加圧がホットプレスを用いて行われる、請求項1から6のいずれか一項に記載の全固体電池用電極部材の製造方法。
【請求項8】
前記加圧がロールプレスを用いて連続工程で行われる、請求項1から6のいずれか一項に記載の全固体電池用電極部材の製造方法。
【請求項9】
第1電極部材及び第2電極部材を各部材の固体電解質層が接するように積層してラミネートし、前記第1電極部材及び第2電極部材が、それぞれ独立して、請求項1に記載の方法で得られた電極部材であり、互いに電気的に反対の極性を有する、電極組立体を製造する方法。
【請求項10】
前記第1電極部材の固体電解質層の表面に第2パターン化電解質層を形成した後、前記第2パターン化電解質層と第2電極部材の固体電解質層とが接するように第2電極部材を積層してラミネートし、前記第1電極部材及び第2電極部材が、それぞれ独立して、請求項1に記載の方法で得られた電極部材であり、互いに電気的に反対の極性を有する、請求項9に記載の電極組立体を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極と負極との間に固体電解質層が介在されている形態の全固体電池を製造する方法に関する。前記固体電解質層は、イオン伝導性を有する無機物系固体電解質を含む。
【0002】
本出願は、2018年11月2日出願の韓国特許出願第10-2018-0133816号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
液体電解質を使用するリチウムイオン電池は、分離膜によって負極と正極とが区画される構造であるため、変形や外部の衝撃により分離膜が破損されれば短絡が生じ得、それによって発火または爆発などの危険につながるおそれがある。したがって、リチウムイオン二次電池の分野において、安全性を確保可能な固体電解質の開発は非常に重要な課題であると言える。
【0004】
固体電解質を用いたリチウム二次電池は、電池の安全性が増大し、電解液の漏出を防止できるため、電池の信頼性が向上し、薄型電池の製作が容易であるという長所がある。また、負極としてリチウム金属を使用できるためエネルギー密度を向上できることから、小型二次電池と共に電気自動車用の高容量二次電池などへの応用が期待されて次世代電池として脚光を浴びている。
【0005】
しかし、固体電解質を使用するリチウム二次電池は、液体電解質に比べてイオン伝導度が低く、特に低温で出力特性が低下する。また、固体電解質層は、液体電解液に比べて電極との密着性が低く、電極と固体電解質層との界面抵抗が増加する問題がある。このような問題を解決しようとして、電極と固体電解質層との密着のため、熱及び/または圧力を用いて加圧するラミネーション工程(合紙工程)を行う。しかし、このとき、高圧が印加されると、電極活物質粒子が壊れるなど電池素子の損傷が生じ得る。また、固体電解質層に延性の高い固体電解質材料が使用される場合、固体電解質粒子の変形によって電極が一緒に延伸して電極が変形され、本来設計した電池の形状が得られないという問題が生じ得る。また、電極が過剰に延伸して破れてしまうおそれがある。このような理由から、固体電解質を使用する電池の場合、液体電解液を使用する電池ほど容量を十分発現できず、設計または理論容量に比べて低い水準にとどまる。したがって、電極と固体電解質層との間の十分な密着力を確保しながらも電極の損傷のない新たな全固体電池の製造方法が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決するため、電極の変形や損傷なく、固体電解質層と電極とを十分密着できる全固体電池の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解できるであろう。一方、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段または方法、及びその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様は、電極の表面に固体電解質層が形成された全固体電池用電極部材の製造方法であって、(S1)集電体及び前記集電体の表面に形成された電極活物質層を含む電極を用意する段階と、(S2)前記電極の表面に固体電解質層形成用スラリーを塗布及び乾燥して固体電解質パターン層を形成する段階と、(S3)前記(S2)の結果物を加圧して電極活物質層の表面全体が固体電解質層で被覆されるようにラミネートする段階とを含み、前記(S2)段階が、固体電解質が電極活物質層の表面の少なくとも一部を被覆し、且つ、固体電解質で被覆されていない無地部を含むように、固体電解質層形成用スラリーをパターン化して塗布する方式で行われることを特徴とする。
【0009】
本発明の第2態様によれば、第1態様において、前記(S3)段階の前に前記(S2)段階の結果物を加熱する段階がさらに行われる。
【0010】
本発明の第3態様によれば、第2態様において、前記加熱が60℃~150℃の範囲で行われる。
【0011】
本発明の第4態様によれば、上述した態様のうち少なくともいずれか一つにおいて、前記固体電解質層が下記化学式1の硫化物系固体電解質を含む。
【0012】
[化学式1]
La1Mb1Pc1Sd1Ae1…化学式1
ここで、LはLi、Na及びKから選択される1種以上の元素であり、MはB、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素であり、AはI、Br、Cl、Fから選択される1種以上であり、a1~e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1=1~12:0~1:1:2~12:0~5である。
【0013】
本発明の第5態様によれば、上述した態様のうち少なくともいずれか一つにおいて、前記固体電解質パターン層が縞パターン、ドットパターン、碁盤の目状に複数の線が交差するパターン及びマトリクスパターンのうちいずれか一つのパターンを有する。
【0014】
本発明の第6態様によれば、上述した態様のうち少なくともいずれか一つにおいて、前記(S3)段階の後、電極と固体電解質層との積層配列がズレないように、整列する段階をさらに含む。
【0015】
本発明の第7態様によれば、上述した態様のうち少なくともいずれか一つにおいて、前記加圧がホットプレスを用いて行われる。
【0016】
本発明の第8態様によれば、上述した態様のうち少なくともいずれか一つにおいて、前記加圧がロールプレスを用いて連続工程で行われる。
【0017】
本発明の第9態様は、上述した態様のうち少なくともいずれか一つによる電極部材を用いた電極組立体を製造する方法であって、第1電極部材及び第2電極部材を各部材の固体電解質層が接するように積層してラミネートし、前記第1電極部材及び第2電極部材が、それぞれ独立して、上述した態様のうち少なくともいずれか一つの方法で得られた電極部材であり、互いに電気的に反対の極性を有することを特徴とする。
【0018】
本発明の第10態様は、上述した態様のうち少なくともいずれか一つによる電極部材を用いた電極組立体を製造する方法であって、第1電極部材の固体電解質層の表面に第2パターン化電解質層を形成した後、前記第2パターン化電解質層と第2電極部材の固体電解質層とが接するように第2電極部材を積層してラミネートし、前記第1電極部材及び第2電極部材が、それぞれ独立して、上述した態様のうち少なくともいずれか一つの方法で得られた電極部材であり、互いに電気的に反対の極性を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の第11態様は、正極、負極及び前記正極と負極との間に介在された固体電解質層を含む電極組立体であって、上述した態様のうち少なくともいずれか一つによる方法で製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明による全固体電池の製造方法によれば、固体電解質層と電極とを加圧して界面を密着させるラミネーション工程時に、延性の大きい固体電解質粒子が変形しても電極が変形せず、電極活物質が損傷されないため、電池性能の低下を防止することができる。
【0021】
本明細書に添付される図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の内容とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。一方、本明細書に添付される図面における要素の形状、大きさ、縮尺または比率などはより明確な説明を強調するため誇張されることもある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】従来の全固体電池の製造方法を図式化して示した概略図である。
【
図2】従来の全固体電池の製造方法によって得られた電池で変形が発生した様子を示した写真である。
【
図4】本発明による固体電解質層のパターン化及び全固体電池の製造方法を図式化して示した概略図である。
【
図5】本発明による固体電解質層のパターン化及び全固体電池の製造方法を図式化して示した概略図である。
【
図6】本発明による固体電解質層のパターン化及び全固体電池の製造方法を図式化して示した概略図である。
【
図7】本発明の一実施形態による全固体電池製造方法の工程の流れを示した図であり、整列工程を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を詳しく説明する。本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0024】
本明細書の全体において、ある部分が他の構成要素を「含む」とは、特に言及しない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0025】
本明細書の全体で使われる用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示されるとき、その数値でまたはその数値に近接した意味として使われ、本願の理解を助けるために正確又は絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使われる。
【0026】
本明細書の全体において、「A及び/またはB」との記載は「A、Bまたはこれら全て」を意味する。
【0027】
本発明は、二次電池を製造する方法及び該方法で製造された電池に関する。前記二次電池はリチウムイオン二次電池であり得る。また、本発明において、前記リチウムイオン二次電池は、電解質として固体電解質を使用する全固体電池である。
【0028】
本発明において、前記全固体電池は、正極、負極及び前記正極と負極との間に介在された固体電解質層を含み、前記固体電解質層は硫化物系固体電解質を含む。また、本発明の一実施形態において、前記正極及び負極は、それぞれ独立して、電極活物質及び固体電解質を含み、前記固体電解質は硫化物系固体電解質を含むことができる。
【0029】
全固体電池は、正極と負極との間に介在された電解質層を通じるイオン伝導によって充放電を行う。前記電解質層は、固体状態のイオン伝導物質を使用するため、電極との密着性が低下して界面抵抗が増加する問題がある。このような問題を解消するため、電極及び固体電解質層を製造した後、これを熱及び/または高い圧力を用いて加圧するラミネーション工程を行うか、または、電極活物質層の表面に固体電解質用スラリーを塗布し乾燥して電極部材を製造した後、これを圧延する方式で電極と固体電解質層との高い密着力を誘導する試みが行われている。しかし、固体電解質層と電極活物質層を圧延するとき、電極活物質層が損傷される問題が生じた。
図1は、従来の全固体電池の製造方法を図式化して示した概略図である。これによれば、電極活物質層の表面全体が固体電解質材料で被覆されるように固体電解質層が形成され、電極と固体電解質層との結着のためラミネーション工程が行われる。
図2及び
図3は、従来の全固体電池製造方法の結果物である電極部材を示した写真及び概略図であり、これによれば電極が原形から変形したことを確認できる。
【0030】
そこで、本発明は、電極及び電極活物質層の損傷を防止すると同時に、積層された電池要素同士の間に十分な密着力を確保できる全固体電池の製造方法を提供する。
【0031】
本発明による電池の製造方法は、電極の表面、より正確に言えば、電極活物質層の表面に固体電解質層用スラリーを塗布し乾燥した後、これを加圧して電極の表面に固体電解質層が形成された電極部材を製造する方法を含む。ここで、前記固体電解質層は、加圧する前に、所定のパターンを有するように形成される。本明細書において、加圧前の固体電解質層は予備固体電解質層またはパターン化電解質層と称される。前記予備固体電解質層は、固体電解質材料が電極活物質層を被覆していない無地部を含んで形成される。その後、前記予備固体電解質層が加圧されることで、パターン化電解質層のパターンが崩壊し、圧力によって平面状に加圧成形され、前記電極活物質層の表面全体が固体電解質層で被覆される。
【0032】
本発明において、前記電極は、電極集電体の少なくとも一面に形成された電極活物質層を含む。前記電極は、正極または負極であり得る。電極が正極である場合、正極集電体の少なくとも一面に形成された正極活物質層を含み、負極である場合、負極集電体の少なくとも一面に形成された負極活物質層を含む。
【0033】
上述した段階で電極部材を収得した後、前記電極部材とこれと反対極性を有する電極とをラミネート(合紙)することで電極組立体を収得することができる。または、上述した方法によって正極部材及び負極部材をそれぞれ用意し、これらをラミネートすることで電極組立体を収得することもできる。いずれの場合においても、固体電解質層が正極と負極との間に介在されるように配置される。
【0034】
本明細書において、用語「ラミネーション(合紙)」とは、積層された電池要素同士を密着させて界面を結着させる工程を意味し、該工程は所定の圧力及び/または温度条件下で行われる。前記圧力は、多様な加圧ローラーや加圧ジグなど多様な加圧部材を用いて印加され得る。
【0035】
本発明の一実施形態は、特定の圧力範囲や温度範囲に限定されない。例えば、前記ラミネーションは80MPa~120MPaの圧力範囲で行われ得る。また、前記ラミネーション工程時に、前記積層構造体は約100℃~150℃の温度に加熱され得る。上記のような加圧及び温度条件下で、電極や電解質層の延伸、破損及び脱離などが発生せず、さらに各層の間に十分な水準の密着力を誘導することができる。
【0036】
図4~
図7は、本発明の一実施形態による電池の製造方法を示した図である。これらを参照して電池の製造方法をより詳しく説明する。
【0037】
まず、集電体及び前記集電体の表面に形成された電極活物質層を含む電極を用意する(S1)。そのため、電極スラリーを用意する。前記電極スラリーは電極活物質及び固体電解質を含み、前記固体電解質は硫化物系固体電解質を含むことができる。これら成分を適切な溶媒に投入及び分散させてスラリーを用意する。前記溶媒は、特に限定されないが、硫化物系固体電解質との反応性が小さく、分子内の双極子モーメントがないか又は非常に小さい非極性溶媒を使用し得る。本発明の一実施形態において、溶媒極性指数(Snyder polarity index)が3以下、または、相対極性度(relative polarity)が0.2以下であり得る。例えば、芳香族溶媒としてベンゼン、キシレン、トルエン、メトキシベンゼン、アニソール、直鎖脂肪族としてヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、環状脂肪族としてシクロヘプタンなどの飽和炭化水素溶媒が挙げられる。また、各電極スラリーは、導電材及びバインダー樹脂から選択された1種以上を含むことができる。前記電極スラリーは、必要に応じて酸化防止剤や還元防止剤のような添加剤をさらに含んでもよい。
【0038】
本発明の一実施形態において、前記スラリーは、電極活物質と固体電解質とを60:40~90:10の重量比で含むことができる。一方、全体スラリー組成のうち、導電材を0.5~5重量比、バインダーを0.5~3重量比の範囲でさらに含むことができる。前記スラリーは、上記の成分を溶媒に投入して混合する湿式混合の方法で得られるが、このとき、PDミキサーやペーストミキサー(paste mixer)などの機械的混合方法を使用し得る。前記スラリーのうち溶媒を除いた他の成分、すなわち固形分は組成比によって50~70重量%の濃度を有し得る。
【0039】
上記のように用意した電極スラリーを電極集電体に塗布し乾燥して電極を用意する。前記スラリーはスロットダイコーティングやドクターブレードのような適切な塗布方法で塗布し得る。前記乾燥は、自然乾燥、熱風乾燥、冷風乾燥、送風乾燥または加熱乾燥などの多様な方法から適切な方法を選択して行われ得、スラリー中の溶媒が除去されて固化した状態の電極が得られるものであれば、特別な方法に限定されることはない。前記乾燥は、60℃~120℃で5分~20分間行われ得、このとき、真空で行われ得る。必要であれば、前記電極は80MPa~400Mpaの圧力で常温加圧されるか、または、60℃~120℃の温度条件で熱間加圧され得る。本発明の具体的な一実施形態において、前記電極は、乾燥後固体電解質層が形成されるまで、未加圧状態で維持され得る。ここで、用語「未加圧状態」とは、各層を形成するためのスラリーを塗布した後、溶媒が除去されて固化した乾燥状態の構造的な特徴、例えば厚さ、大きさ、面積、気孔度などを維持している状態であって、加圧部材による人工的な圧力が印加されていない状態を意味する。
【0040】
次いで、前記電極活物質層の表面に固体電解質層形成用スラリーを塗布及び乾燥してパターン化電解質層を形成する(S2)。前記固体電解質層形成用スラリーは、硫化物系固体電解質を含むことができ、固体電解質を適切な溶媒に投入及び分散させてスラリーを用意する。前記溶媒は、特に限定されないが、硫化物系固体電解質との反応性が小さく、分子内の双極子モーメントがないか又は非常に小さい非極性溶媒を使用し得る。本発明の一実施形態において、溶媒極性指数が3以下、または、相対極性度が0.2以下であり得る。例えば、芳香族溶媒としてベンゼン、キシレン、トルエン、メトキシベンゼン、アニソール、直鎖脂肪族としてヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、環状脂肪族としてシクロヘプタンなどの飽和炭化水素溶媒が挙げられる。また、前記スラリーは、バインダー樹脂、または、必要に応じて酸化防止剤や還元防止剤のような添加剤をさらに含むことができる。前記固体電解質層形成用スラリーは、固体電解質とともに、固体電解質100重量部対比約0重量部~5重量部の範囲でバインダーを非極性溶媒にさらに投入して得られる。スラリーの混合はPDミキサー、ペーストミキサーのような混合方法を使用し得る。前記固体電解質層形成用スラリーの固形分濃度は、固体電解質の物性及びスラリーの組成比に応じて約40重量%~70重量%の範囲で製造され得る。このようにスラリーを用意すれば、これを電極活物質層に塗布する。前記塗布は予め決められたパターンを具現するように行われる。前記パターンは、固体電解質材料が電極活物質層の表面の少なくとも一部を被覆し、且つ、固体電解質材料で被覆されていない無地部が含まれるものである。前記パターンは、具体的には、縞パターン、ドットパターン、碁盤の目状に複数の線が交差するパターン及びマトリクスパターンのうちいずれか一つのパターンを有し得る。しかし、パターンの形状が特に限定されることはない。ただし、前記パターンは、全面にわたって規則的な配列を有することが望ましい。
【0041】
図4~
図6は、全固体電解質層に具現され得る多様なパターンを図式化して示した概略図である。本発明の一実施形態において、前記パターンはロールラミネーションによって加圧される場合は、ローラーの進行方向に対して垂直な縞パターンでパターン化され得る。
【0042】
前記スラリーの塗布は、スロットダイコーティング、グラビアコーティングまたはドクターブレードのような適切な塗布方法を使用し得る。次いで、前記スラリーを乾燥してパターン化された電解質層を収得する。前記乾燥は、自然乾燥、熱風乾燥、冷風乾燥、送風乾燥または加熱乾燥など多様な方法から適切な方法を選択して行われ得、スラリー中で溶媒が除去されて固化した状態の予備固体電解質層が得られるものであれば、特別な方法に限定されることはない。
【0043】
上述したように、パターン化された電解質層は、乾燥した後、後述するラミネーション工程で加圧される前までは未加圧状態で維持される。
【0044】
上述した段階を経て電極活物質層の表面にパターン化電解質層が形成されれば、電極活物質層との密着のためのラミネーション工程が行われる。前記ラミネーションを通じてパターン化電解質層が加圧されながら、電極活物質層の表面全体が固体電解質層で被覆された電極部材が得られる(S3)。このとき、前記ラミネーションは、100MPa~400MPaの圧力条件及び常温(約25℃)~150℃の温度条件で行われる。また、本発明の一実施形態において、前記ラミネーション工程は、約10秒~600秒間行われ得る。ただし、前記加圧時間は、上記の範囲内で電極組立体の厚さ、印加圧力及び温度条件に応じて適切な範囲に制御され得る。
【0045】
前記加圧によって、パターン化電解質層の形態が崩壊されながら固体電解質材料が無地部を充填し、電極活物質層の表面全体が固体電解質層で覆われるようになる。本発明の一実施形態において、前記ラミネーション工程は公知のプレス方法から適切に選択して行われ得るが、例えばホットプレスを用いて行われるか又はロールプレスを用いて連続工程で行われ得る。前記ラミネーション工程を行う前に、電極部材の表面をテレフタレート素材の離型フィルムなどで覆って電極部材の表面を保護してもよい。
【0046】
一方、本発明の一実施形態において、前記パターン化電解質層を形成した後、(S3)段階の前に、前記(S2)段階の結果物を加熱する段階をさらに行うことができる。このようにパターン化電解質層を予め加熱することで、素材の延性を高めることができ、これによって(S3)段階で加圧するとき、固体電解質材料が無地部を完全に充填するのに有利である。前記加熱は60℃~150℃の範囲で行われる。加熱温度が上記の範囲に及ばない場合は、延性が足りなくて円滑に変形が行われず、上記の範囲を超える場合は、固体電解質が分解してイオン伝導度が低下するおそれがある。
【0047】
一方、本発明の一実施形態において、前記ラミネーション段階の後、固体電解質層の外縁部分が均一に整列しないか又は電極活物質層の外側に突出することがある。そこで、前記ラミネーションの後、電極と固体電解質層との積層配列がズレないように整列段階をさらに行うことができる。前記整列は超音波やレーザーを用いた切削によって行われ得るが、特定の方法に限定されない(
図7を参照)。
【0048】
また、本発明は、上記のような方法によって製造された電極部材を含む全固体電池に関し、正極、負極及び前記正極と負極との間に介在された固体電解質層を含む。前記負極及び正極の少なくとも一つは上述した方法によって製造された電極部材(すなわち、負極部材及び正極部材)であり得る。このように電極部材を使用して電極組立体を製作する場合、固体電解質層を別途製作して介在させることなく、前記電極部材に含まれた固体電解質層で代替することができる。すなわち、上述した方法によって固体電解質層を形成した負極部材と別途製作した正極とをラミネートするか、または、上述した方法によって固体電解質層を形成した正極部材と別途製作した負極とをラミネートして全固体電池を製造することができる。前記ラミネーション時に、正極と負極との間に固体電解質層が配置されるように各素子を位置させることは当業者に自明である。
【0049】
例えば、上述した方法によって負極部材と正極部材を製作し、これらをラミネートして全固体電池を製造することができる。本発明の具体的な一実施形態において、前記負極部材及び正極部材のうち一方の部材の固体電解質層の表面に第2パターン化電解質層をさらに形成した後、負極部材と正極部材とをラミネートする方法で全固体電池を製造することができる。前記第2パターン化電解質層は、電極部材の製造時に行われるパターン化電解質層の形成方法と同じ方法で形成され得る。本発明の具体的な一実施形態において、一方の電極部材の表面に第2固体電解質層形成用スラリーを特定パターンを有するように塗布し乾燥して第2パターン化電解質層を形成する。前記第2固体電解質層形成用スラリーの用意、塗布及び乾燥については、パターン化電解質層について説明した内容を参照し得る。上述した段階を経て電極部材の表面に第2パターン化電解質層が形成されれば、他方の反対極性の電極部材をラミネートして全固体電池を製造する。このとき、第2パターン化電解質層の無地部が固体電解質材料によって充填され、第2パターン化電解質層とその上下部の固体電解質層とが不可分に結合されて単一の固体電解質層として形成される。このように電極部材の間に第2パターン化固体電解質層を形成してラミネートする方法で全固体電池を製造する場合、それぞれの電極部材の固体電解質層同士の不可分な結合をより容易に行うことができ、その結果、各層間の界面結合力及び密着力が向上し、イオン伝導度の低下を防止することができる。一方、前記ラミネーション工程は、100MPa~400MPaの圧力条件及び常温(約25℃)~150℃の温度条件で行われる。また、本発明の一実施形態において、前記ラミネーションは、約10秒~600秒間行われ得る。ただし、前記ラミネーション時間は、上記の範囲内で電極組立体の厚さ、印加圧力及び温度条件に応じて適切な範囲に制御され得る。
【0050】
本発明において、前記電極は、複数の電極活物質粒子及び固体電解質を含み、前記固体電解質は硫化物系固体電解質を含む。また、前記電極は、必要に応じて導電材及びバインダー樹脂の一つ以上をさらに含むことができる。また、前記電極は、電極の物理化学的特性の補完や改善を目的として、多様な添加剤をさらに含むことができる。一方、本発明の一実施形態において、前記固体電解質は、酸化物系固体電解質及び高分子系固体電解質のうち1種以上をさらに含むことができる。
【0051】
本発明において、前記電極が負極である場合は、電極活物質として、リチウムイオン二次電池の負極活物質として使用可能な物質であれば制限なく使用することができる。例えば、前記負極活物質として、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素;LixFe2O3(0≦x≦1)、LixWO2(0≦x≦1)、SnxMe1-xMe’yOz(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;リチウム金属;リチウム合金;ケイ素系合金;スズ系合金;SnO、SnO2、PbO、PbO2、Pb2O3、Pb3O4、Sb2O3、Sb2O4、Sb2O5、GeO、GeO2、Bi2O3、Bi2O4及びBi2O5などの金属酸化物;ポリアセチレンなどの導電性高分子;Li-Co-Ni系材料;チタン酸化物;リチウムチタン酸化物などから選択された1種または2種以上を使用することができる。具体的な一実施形態において、前記負極活物質は炭素系物質及び/またはSiを含むことができる。
【0052】
前記電極が正極である場合、前記電極活物質は、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用可能なものであれば制限なく使用することができる。例えば、前記正極活物質として、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物、または、一つまたはそれ以上の遷移金属で置換された化合物;化学式Li1+xMn2-xO4(xは0~0.33)、LiMnO3、LiMn2O3、LiMnO2などのリチウムマンガン酸化物;リチウム銅酸化物(Li2CuO2);LiV3O8、LiV3O4、V2O5、Cu2V2O7などのバナジウム酸化物;化学式LiNi1-xMxO2(M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGa、x=0.01~0.3)で表されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物;化学式LiMn2-xMxO2(M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTa、x=0.01~0.1)またはLi2Mn3MO8(M=Fe、Co、Ni、CuまたはZn)で表されるリチウムマンガン複合酸化物;LiNixMn2-xO4で表されるスピネル構造のリチウムマンガン複合酸化物;化学式のLiの一部がアルカリ土類金属イオンで置換されたLiMn2O4;ジスルフィド化合物;Fe2(MoO4)3などを含むことができるが、これらに限定されることはない。
【0053】
本発明の一実施形態において、前記正極活物質及び/または負極活物質は、粒径が約0.01μm~50μmであり得、複数の粒子が凝集して粗粒化した2次粒子の形態を有し得る。
【0054】
本発明において、前記集電体は、金属板などの電気伝導性を有して二次電池分野で公知の集電体を、電極の極性に合わせて適切に使用することができる。また、集電体の厚さは約1μm~50μmの範囲内で適切に調節可能である。
【0055】
本発明において、前記導電材は、通常、電極活物質を含む混合物の全体重量を基準にして1~30重量%で添加される。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せず導電性を有するものであれば特に制限されなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材から選択された1種または2種以上の混合物を含むことができる。
【0056】
本発明において、前記バインダー樹脂は、活物質と導電材などとの結合、及び集電体に対する結合を補助する成分であれば特に制限されず、例えばポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。前記バインダー樹脂は、通常、電極層100重量%に対して1~30重量%、または1~10重量%の範囲で含むことができる。
【0057】
一方、本発明において、前記電極活物質層は、必要に応じて酸化安定添加剤、還元安定添加剤、難燃剤、熱安定剤、防曇剤(antifogging agent)などのような添加剤を1種以上含むことができる。
【0058】
本発明において、前記固体電解質膜は、負極と正極との間に介在されるものであって、負極と正極とを電気的に絶縁すると同時に、リチウムイオンを通過させる役割を果たす。前記固体電解質膜は、硫化物系固体電解質を含む。また、必要に応じて、酸化物系固体電解質及び高分子系固体電解質から選択された1種以上をさらに含むことができる。また、前記固体電解質層は、必要に応じてバインダー樹脂をさらに含むことができる。
【0059】
本発明において、硫化物系固体電解質は硫黄(S)を含み、周期律表の第1族または第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、また電子絶縁性を有するものが望ましい。例えば、下記化学式1で表される組成を満たすリチウムイオン伝導性無機固体電解質が挙げられる。
【0060】
[化学式1]
La1Mb1Pc1Sd1Ae1…化学式1
ここで、LはLi、Na及びKから選択される元素であり、Liが望ましい。MはB、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al及びGeから選択される元素である。なかでも、B、Sn、Si、Al、Geが望ましく、Sn、Al、Geがさらに望ましい。AはI、Br、Cl、Fから選択された1種以上であり、I、Brが望ましく、Iが特に望ましい。a1~e1は各元素の組成比を示してa1:b1:c1:d1:e1=1~12:0~1:1:2~12:0~5を満たす。また、a1は1~9が望ましく、1.5~4がさらに望ましい。b1は0~0.5が望ましい。d1は3~7が望ましく、3.25~4.5がさらに望ましい。e1は0~3が望ましく、0~1がさらに望ましい。
【0061】
上記の化学式1において、L、M、P、S及びAの組成比は、望ましくはb1、e1が0であり、より望ましくはb1=0、e1=0であり、a1、c1及びd1の比(a1:c1:d1)がa1:c1:d1=1~9:1:3~7である。さらに望ましくは、b1=0、e1=0であり、a1:c1:d1=1.5~4:1:3.25~4.5である。各元素の組成比は、硫化物系固体電解質を製造するとき、原料化合物の配合量を調整することで制御することができる。
【0062】
硫化物系固体電解質は、非結晶(ガラス)または結晶(結晶化ガラス)であり得、全体のうち一部のみが結晶化していてもよい。
【0063】
Li-P-S系ガラス及びLi-P-S系結晶化ガラスにおけるLi2SとP2S5との比率は、Li2S:P2S5のモル比で、望ましくは65:35~85:15、より望ましくは68:32~75:25である。Li2SとP2S5との比率をこのような範囲にすることで、リチウムイオン伝導度を向上させることができる。具体的には、リチウムイオン伝導度を、望ましくは1×10-5S/cm以上、望ましくは1×10-4S/cm以上、より望ましくは1×10-3S/cm以上に向上させることができる。特に上限はないが、実質的に1×10-1S/cm以下である。
【0064】
具体的な化合物の例としては、Li2S及び第13族~第15族元素の硫化物を含む原料組成物を用いたものが挙げられる。具体的には、Li2S-P2S5、Li2S-LiI-P2S5、Li2S-LiI-Li2O-P2S5、Li2S-LiBr-P2S5、Li2S-Li2O-P2S5、Li2S-Li3PO4-P2S5、Li2S-P2S5-P2O5、Li2S-P2S5-SiS2、Li2S-P2S5-SnS、Li2S-P2S5-Al2S3、Li2S-GeS2、Li2S-GeS2-ZnS、Li2S-Ga2S3、Li2S-GeS2-Ga2S3、Li2S-GeS2-P2S5、Li2S-GeS2-Sb2S5、Li2S-GeS2-Al2S3、Li2S-SiS2、Li2S-Al2S3、Li2S-SiS2-Al2S3、Li2S-SiS2-P2S5、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-Li4SiO4、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li10GeP2S12などが挙げられる。なかでもLi2S-P2S5、Li2S-GeS2-Ga2S3、Li2S-LiI-P2S5、Li2S-LiI-Li2O-P2S5、Li2S-SiS2-P2S5、Li2S-SiS2-Li4SiO4、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li2S-Li3PO4-P2S5、Li2S-GeS2-P2S5、Li10GeP2S12から構成される結晶質及び/または非晶質の原料組成物が、高いリチウムイオン伝導性を有するため望ましい。このような原料組成物を用いて硫化物系固体電解質材料を合成する方法としては、例えば非晶質化法が挙げられる。非晶質化法としては、例えばメカニカルミリング法及び溶融急冷法が挙げられ、中でもメカニカルミリング法が望ましい。常温で処理可能であって、製造工程の簡略化を図ることができるためである。
【0065】
また、本発明は、前記二次電池を単位電池として含む電池モジュール、前記電池モジュールを含む電池パック、及び前記電池パックを電源として含むデバイスを提供する。
【0066】
このとき、前記デバイスの具体的な例としては、電気モーターから動力を受けて作動するパワーツール;電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(Hybrid EV)、プラグ-インハイブリッド電気自動車(Plug-in HEV)などを含む電気車;電気自転車(E-bike)、電気スクーター(E-scooter)を含む電気二輪車;電気ゴルフカート;電力貯蔵用システムなどが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0067】
以上、本発明の望ましい実施形態を図示して説明したが、本発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲で請求する本発明の要旨から逸脱することなく本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者によって多様な変形実施が可能であり、このような変形実施が本発明の技術的思想や見込みから個別的に理解されてはならないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0068】
111:集電体
112:電極活物質層
120:固体電解質層
130:加圧部材