(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】廃棄物焼却炉
(51)【国際特許分類】
F23G 5/44 20060101AFI20220620BHJP
F23G 5/00 20060101ALI20220620BHJP
F23G 5/14 20060101ALI20220620BHJP
F23G 5/50 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
F23G5/44 D
F23G5/00 109
F23G5/14 F
F23G5/44 G
F23G5/14 G
F23G5/50 Q
F23G5/50 H
(21)【出願番号】P 2018067162
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(72)【発明者】
【氏名】臼井 勝久
(72)【発明者】
【氏名】谷口 暢子
(72)【発明者】
【氏名】杉山 慎也
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-121820(JP,A)
【文献】特開昭61-022117(JP,A)
【文献】特開平06-257952(JP,A)
【文献】実開昭49-035876(JP,U)
【文献】特開2017-223395(JP,A)
【文献】特開2015-161444(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0091402(KR,A)
【文献】特開2015-055385(JP,A)
【文献】特開2014-013093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/44
F23G 5/00
F23G 5/14
F23G 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物をほぼ水平方向に搬送しながら焼却する焼却装置と、
前記焼却装置が配置された燃焼室であって、上流部から下流部にかけて下方に向けて縮小する、前記焼却装置で発生した燃焼ガスの通路を形成する燃焼室と、
前記燃焼室の、前記焼却装置の搬送方向における下流端部から上方へ偏向する燃焼ガス通路を形成する再燃焼室と、
前記燃焼室の上流部に設けられた二次助燃ガス噴射口と、
を備える廃棄物焼却炉であって、
前記燃焼室の上流部の側壁に、この側壁に沿って下向きに冷却ガスを噴射する冷却ガス噴射口が設けられて
おり、
前記燃焼室の下流部の側壁に、この側壁に沿って上向きに冷却ガスを噴射する冷却ガス噴射口が設けられている、
廃棄物焼却炉。
【請求項2】
請求項
1に記載の廃棄物焼却炉において、前記冷却ガスが当該廃棄物焼却炉から排出された排ガスである廃棄物焼却炉。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の廃棄物焼却炉において、少なくとも前記二次助燃ガス噴射口よりも下流側に前記冷却ガス噴射口が設けられている廃棄物焼却炉。
【請求項4】
廃棄物をほぼ水平方向に搬送しながら焼却する焼却装置と、
前記焼却装置が配置された燃焼室であって、上流部から下流部にかけて下方に向けて縮小する、前記焼却装置で発生した燃焼ガスの通路を形成する燃焼室と、
前記燃焼室の、前記焼却装置の搬送方向における下流端部から上方へ偏向する燃焼ガス通路を形成する再燃焼室と、
前記燃焼室の上流部に設けられた二次助燃ガス噴射口と、
を備える廃棄物焼却炉であって、
前記燃焼室の上流部の側壁に、この側壁に沿って下向きに冷却ガスを噴射する冷却ガス噴射口が設けられており、
上流側から下流側へ向けて複数の前記二次助燃ガス噴射口が設けられており、
少なくとも、最上流側の前記二次助燃ガス噴射口と最下流側の前記二次助燃ガス噴射口との間に前記冷却ガス噴射口が設けられている
廃棄物焼却炉。
【請求項5】
廃棄物をほぼ水平方向に搬送しながら焼却する焼却装置と、
前記焼却装置が配置された燃焼室であって、上流部から下流部にかけて下方に向けて縮小する、前記焼却装置で発生した燃焼ガスの通路を形成する燃焼室と、
前記燃焼室の、前記焼却装置の搬送方向における下流端部から上方へ偏向する燃焼ガス通路を形成する再燃焼室と、
前記燃焼室の上流部に設けられた二次助燃ガス噴射口と、
を備える廃棄物焼却炉であって、
前記燃焼室の上流部の側壁に、この側壁に沿って下向きに冷却ガスを噴射する冷却ガス噴射口が設けられており、
さらに、焼却された廃棄物の質を判定する判定装置と、前記判定装置の判定結果に基づいて前記冷却ガス噴射口からのガス噴射量を制御する制御装置とを備える廃棄物焼却炉。
【請求項6】
請求項
5に記載の廃棄物焼却炉において、
上流側から下流側へ向けて複数の前記冷却ガス噴射口が設けられており、
前記制御装置が、前記判定装置の判定結果に基づいて複数の前記冷却ガス噴射口のうちガスを噴射させる冷却ガス噴射口を選択する、
廃棄物焼却炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般廃棄物や産業廃棄物などの廃棄物を焼却する廃棄物焼却炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物焼却炉として、複数並べた火格子(ストーカ)によって廃棄物を搬送しながら焼却する焼却装置を備えるストーカ式焼却炉が一般的に採用されている。また、ストーカ式焼却炉として、廃棄物の焼却過程において発生する未燃成分を、廃棄物の搬送方向に沿って燃焼室の下流側まで流してから、上方に向けて偏向させる、いわゆる並行流方式の焼却炉が知られている(例えば、特許文献1参照)。ストーカ式焼却炉では、一般的に、未燃成分を完全に燃焼させてNOxやダイオキシン類などの有害物質を低減するために、二次燃焼用の空気が燃焼室に供給される。並行流方式の焼却炉によれば、未燃成分を含むガスの流れを、その流路の構造によって強制的に偏向させることによって、未燃成分と二次燃焼用空気との撹拌,混合が促進され、より少量の二次燃焼用空気の投入で未燃成分を燃焼させることができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、廃棄物焼却炉では、炉内で発生するガス中の煤塵が炉壁表面で溶融して塊状に堆積した、いわゆるクリンカの付着が問題となることがある。並行流式焼却炉も、上述の利点を有する一方、焼却炉の構造上、未燃成分と二次燃焼用空気との燃焼により燃焼室内に高温となり易くクリンカが付着しやすい領域が存在する。クリンカ付着により、焼却炉のメンテナンス作業の負担が増加するので、クリンカの付着を抑制することが求められている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記の課題を解決するために、並行流式の廃棄物焼却炉において、効果的にクリンカの付着を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するために、本発明に係る廃棄物焼却炉は、
廃棄物をほぼ水平方向に搬送しながら焼却する焼却装置と、
前記焼却装置が配置された燃焼室であって、上流部から下流部にかけて下方に向けて縮小する、前記焼却装置で発生した燃焼ガスの通路を形成する燃焼室と、
前記燃焼室の、前記焼却装置の搬送方向における下流端部から上方へ偏向する燃焼ガス通路を形成する再燃焼室と、
前記燃焼室の上流部に設けられた二次助燃ガス噴射口と、
を備え、
前記燃焼室の上流部の側壁に、この側壁に沿って下向きにガスを噴射する噴射口が設けられている。
【0007】
この構成によれば、いわゆる並行流式廃棄物焼却炉の構造上高温の燃焼ガスが滞留しやすく、かつ、二次助燃ガス投入による燃焼ガスの二次燃焼によって高温となりやすいことから、クリンカが付着しやすい箇所である上流部の側壁に、冷却ガスの噴射口を設け、側壁に沿って冷却ガスを噴射することができる。これにより、燃焼室側壁面の温度上昇が抑制され、効果的にクリンカ付着を抑制することができる。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記燃焼室の下流部の側壁に、この側壁に沿って上向きにガスを噴射する噴射口が設けられていてもよい。この構成によれば、通路面積が狭く、また焼却装置に近いことから高温となり易く、クリンカが付着しやすい箇所である下流部の側壁に、冷却ガスの噴射口を設け、側壁に沿って冷却ガスを噴射することにより、この側壁面の温度上昇が抑制され、効果的にクリンカ付着を抑制することができる。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記冷却ガスが当該廃棄物焼却炉から排出された排ガスであってもよい。この構成によれば、冷却ガスとして酸素濃度の低い排ガスを利用するので、クリンカが付着しやすい部分において酸素濃度上昇による燃焼促進を防止しながら冷却することができるので、一層効果的にクリンカ付着を抑制することができる。
【0010】
本発明の一実施形態において、少なくとも前記二次助燃ガス噴射口よりも下流側に前記冷却ガス噴射口が設けられていてもよい。また、上流側から下流側へ向けて複数の前記二次助燃ガス噴射口が設けられている場合には、少なくとも、最上流側の前記二次助燃ガス噴射口と最下流側の前記二次助燃ガス噴射口との間に前記冷却ガス噴射口が設けられていてもよい。この構成によれば、燃焼室の側壁の、二次助燃ガスの投入による二次燃焼によって特に高温となり易い部分に効率的に冷却ガスを噴射することができる。
【0011】
本発明の一実施形態において、さらに、焼却された廃棄物の質を判定する判定装置と、前記判定装置の判定結果に基づいて前記冷却ガス噴射口からのガス噴射量を制御する制御装置とを備えていてもよい。この構成によれば、廃棄物の質に応じた最適なガス噴射量によってクリンカ付着を抑制することができる。したがって、廃棄物焼却炉全体の効率化を図りながらクリンカ付着を抑制することができる。
【0012】
本発明の一実施形態において、上流側から下流側へ向けて複数の前記冷却ガス噴射口が設けられており、前記制御装置が、前記判定装置の判定結果に基づいて複数の前記冷却ガス噴射口のうちガスを噴射させる噴射口を選択するものであってもよい。この構成によれば、廃棄物の質に応じた最適なガス噴射位置を選択してクリンカ付着を抑制することができる。したがって、廃棄物焼却炉全体のさらなる効率化を図りながらクリンカ付着を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明に係る廃棄物焼却炉によれば、並行流式の廃棄物焼却炉において、効果的にクリンカの付着を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る焼却炉1を示す側面図である。
【
図2】
図1の焼却炉1の燃焼室の上流部における冷却ガス噴射口を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図1の焼却炉1の燃焼室の下流部における冷却ガス噴射口を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図1の焼却炉1の一変形例を示す断面図である。
【
図5】
図4の変形例に係る焼却炉1を示す側面図である。
【
図6】
図1の実施形態に用いられる判定装置および制御装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1に、本発明の第1実施形態に係る廃棄物焼却炉(以下、単に「焼却炉」と呼ぶ。)1を示す。焼却炉1では、投入口3から投入された焼却対象の廃棄物Wが、燃焼室5に設置された焼却装置7によって焼却されるとともに、廃棄物Wの焼却の際に焼却装置7で発生した燃焼ガスBGに含まれる未燃成分が、燃焼室5の下流端部に接続された再燃焼室9において再燃焼される。すなわち、燃焼室5の焼却装置7よりも上方の領域および再燃焼室9が、燃焼ガスBGの通路を形成している。再燃焼室9で燃焼された排ガスEGは、焼却炉1から排出された後、後述するように燃焼室5に循環されて再利用される。この排ガスEGは、再燃焼室9のさらに下流側に接続されたボイラのような加熱装置(図示せず)の熱源として利用してもよい。焼却装置7は、廃棄物Wをほぼ水平方向(同図では左側から右側へ向かう方向)に搬送しながら焼却する。焼却装置7で廃棄物Wを焼却して生じた灰は、排出シュート11から排出される。
【0017】
なお、本明細書において、廃棄物Wの搬送方向としての「ほぼ水平方向」には、水平方向のみならず、水平方向成分を含む方向も含まれる。したがって、例えば、水平方向から鉛直方向に傾斜した搬送方向も上記「ほぼ水平方向」に含まれる。また、後述するように焼却装置7が複数配列されたストーカからなるような場合に、隣接するストーカ間において廃棄物Wが鉛直下方に移動する箇所が存在する場合であっても、焼却装置7全体として(つまり焼却装置7の上流端から下流端にかけて)廃棄物Wの搬送方向が水平方向成分を含む方向であれば、「ほぼ水平方向」に含まれる。
【0018】
具体的には、焼却装置7は、廃棄物Wの搬送方向に沿って複数の火格子(ストーカ)を並べて配置したストーカ式焼却装置として構成されている。焼却装置7は、上流側から順に、乾燥ブロック7a、燃焼ブロック7b、および後燃焼ブロック7cの3つのブロックに分けて構成されている。乾燥ブロック7aにおいて投入口3から投入された廃棄物Wを乾燥し、燃焼ブロック7bにおいて乾燥された廃棄物Wを燃焼し、後燃焼ブロック7cにおいて、燃焼ブロック7bで未燃焼となった廃棄物Wの燃焼残部を燃焼する。焼却装置7の各ブロックには、下方から一次空気A1が供給される。
【0019】
このような焼却装置7が設置された燃焼室5の、焼却装置7による搬送方向の下流端部に再燃焼室9が接続されているので、燃焼室5で発生した未燃成分を含む燃焼ガスBGは、燃焼室5内において廃棄物Wの搬送方向にほぼ並行して流れることになる。焼却炉1はこのような構造を有する、いわゆる並行式焼却炉として構成されている。本実施形態では、燃焼室5は、上流部5aから下流部5bにかけて下方に向けて縮小する、焼却装置7で発生した燃焼ガスBGの通路(以下、「燃焼ガス通路」)GPを形成する。
【0020】
燃焼室5の上流部5aは、上方に膨出する天壁13によって覆われている。図示の例では、天壁13は、下流側に向かうに従って上方に傾斜している。燃焼室5の下流部5bに再燃焼室9が接続されている。再燃焼室9は、燃焼室5の下流部5bから上方に偏向している。より具体的には、図示の例では、再燃焼室9は燃焼室5の上流側に向けて傾斜した方向に延設されている。燃焼室5における、天壁13と、再燃焼室9の下側の側壁25との間の中間部分には、天壁13から下方に凹んで再燃焼室9の下側の側壁に連なる中間壁15が設けられている。このように、燃焼室5は、上方に膨出した燃焼ガス通路を形成する上流部5aと、上流部5aから下方に向けて縮小する燃焼ガス通路を形成する下流部5bとを有している。換言すれば、燃焼室5の上流部5aとは、燃焼室5における天壁13の下方の部分であり、下流部5bとは、天壁13に覆われた上流部5aよりも下流側の部分である。
【0021】
なお、燃焼室5の具体的構成は図示の例に限定されない。例えば、天壁13は、図示例の態様に限らず、水平方向に延びていてもよく、下流側に向かうに従って下方に傾斜していてもよい。また、中間壁15は設けられていなくともよい。
【0022】
燃焼室5の上流部5aには、燃焼室5内における燃焼ガスBG中の未燃成分を二次燃焼させるための二次助燃ガスである二次空気A2を上流部5aに噴射する第1二次空気噴射口19が設けられている。図示の例では、燃焼室5の上流部5aの天壁13に第1二次空気噴射口19が設けられている。また、燃焼室5の中間壁15には、燃焼室5の下流部5bに二次空気A2を噴射する第2二次空気噴射口21が設けられている。
【0023】
なお、第1二次空気噴射口19は、天壁13ではなく、天壁13近傍の側壁23に設けられていてもよい。いずれの場合も、下方の焼却装置7で発生した燃焼ガスBGと二次空気A2とを効果的に混合させるため、第1二次空気噴射口19は、二次空気A2を下向きに噴射するように構成されていることが好ましい。
【0024】
また、二次助燃ガスは空気に限定されず、例えば、焼却炉1から排出された排ガスEGを二次助燃ガスとして使用してもよいが、以下の説明では上記二次空気A2を二次助燃ガスとして説明する。
【0025】
燃焼室5の側壁23には、側壁23に沿って冷却ガスCGを噴射する冷却ガス噴射口25が設けられている。具体的には、燃焼室5の上流部5aの側壁23は、この側壁23に沿って下向きに冷却ガスCGを噴射する第1冷却ガス噴射口25Aが設けられている。本実施形態では、さらに、燃焼室5の下流部5bの側壁23に、側壁23に沿って上向きに冷却ガスCGを噴射する第2冷却ガス噴射口25Bが設けられている。以下の説明では、第1冷却ガス噴射口25Aと第2冷却ガス噴射口25Bとで区別して説明する必要がない場合には、まとめて「冷却ガス噴射口25」と称する。
【0026】
より具体的には、本実施形態では、
図2に示すように、上流部5aの側壁23の上端部に、内側に肉厚となる第1ノズル用凸部27が設けられており、第1ノズル用凸部27の内部に、第1ノズル用凸部27の段差面27aから下向きに冷却ガスCGを噴射する第1噴射ノズル29が設けられている。この第1噴射ノズル29が第1冷却ガス噴射口25Aを形成している。
【0027】
図3に示すように、第2冷却ガス噴射口25Bは、燃焼室5の下流部5bの側壁23における中間壁15の下方に設けられている。具体的には、本実施形態では、
図3に示すように、側壁23における下端部(焼却装置7の近傍部分)に、内側に肉厚となる第2ノズル用凸部31が設けられており、第2ノズル用凸部31の内部に、第2ノズル用凸部31の段差面31aから上向きに冷却ガスCGを噴射する第2噴射ノズル33が設けられている。この第2噴射ノズル33が第2冷却ガス噴射口25Bを形成している。
【0028】
また、
図1に示すように、本実施形態では、冷却ガス噴射口25は、燃焼室5における上流側から下流側に向けて複数設けられている。具体的には、第1冷却ガス噴射口25Aは、上流部5aにおける上流側から下流側に沿って複数設けられている。より具体的には、図示の例では、複数の第1冷却ガス噴射口25Aは、天壁13の傾斜に沿った方向に一列に並べて等間隔に配置されている。もっとも、複数の第1冷却ガス噴射口25の配列態様はこの例に限定されない。
【0029】
また、第2冷却ガス噴射口25Bは、下流部5bにおける上流側から下流側に沿って複数設けられている。より具体的には、図示の例では、複数の第2冷却ガス噴射口25Bは、ほぼ水平方向に並べて等間隔に配置されている。
【0030】
図1の実施形態に係る並行流式の焼却炉1では、燃焼室5からの燃焼ガスBGの出口(再燃焼室9との接続部分)が燃焼室5の下流端部(すなわち中間部分ではなく焼却装置7の搬送方向における下流端部)に位置するので、高温の燃焼ガスBGは上流部5aにおいて燃焼室5の上部に滞留しやすい。燃焼室5の上流部5aの天壁13(または天壁13近傍の側壁23)に第1二次空気噴射口19が設けられて二次空気A2が噴射され、二次空気A2と燃焼ガスBGが混合される領域で燃焼ガスBG内の未燃成分の二次燃焼が起こるから、上流部5aの天壁13の近傍において高温の燃焼ガスが発生しやすい。したがって、上流部5aの天壁13の近傍領域において側壁23にクリンカが付着しやすいので、この領域に冷却ガスCGを噴射する第1冷却ガス噴射口25Aを設けている。また、燃焼室5の下流部5bの中間壁15に第2二次空気噴射口21が設けられて二次空気A2が噴射されることから、下流部5bの中間壁15と焼却装置7との間の領域において高温の燃焼ガスが発生しやすく、しかもこの領域は通路面積が狭くなっているので、高温になりやすい。したがって、下流部5bの中間壁15と焼却装置7との間の領域において側壁23にクリンカが付着しやすいので、この領域に冷却ガスCGを噴射する第2冷却ガス噴射口25Bを設けている。
【0031】
なお、上流部5aの各第1冷却ガス噴射口25Aの鉛直方向位置は、特に限定されないが、上流部5aにおいてクリンカが付着しやすい領域に効率的に冷却ガスCGを噴射するために、各第1冷却ガス噴射口25Aについて焼却装置7の上端と第1二次空気噴射口19の下端との中間位置よりも上方に位置することが好ましい。
【0032】
同様の理由から、第1冷却ガス噴射口25Aは、少なくとも第1二次空気噴射口19よりも下流側に設けられていることが好ましい。本実施形態のように、上流側から下流側へ向けて複数の第1二次空気噴射口19が設けられている場合には、少なくとも最上流側の第1二次空気噴射口19と最下流側の第1二次空気噴射口19との間に第1冷却ガス噴射口25Aが設けられていることが好ましく、最下流側の第1二次空気噴射口19の下流側にも第1冷却ガス噴射口25Aが設けられていることがさらに好ましい。
【0033】
本実施形態では、
図2に示すように、焼却炉1から排出された排ガスEG(
図1)を燃焼室5へ循環させる循環路35を設け、循環路35から供給される排ガスEGを冷却ガスCGとして利用している。冷却ガスCGとして酸素濃度の低い排ガスEGを利用することにより、クリンカが付着しやすい部分において酸素濃度上昇による燃焼促進を防止しながら冷却することが可能になる。これにより、極めて効果的にクリンカの付着を抑制できる。冷却ガスCGとして、当該焼却炉1からの排ガスEGではなく、例えば併設された他の設備からの排ガスのような低酸素濃度のガスを利用してもよい。もっとも、冷却ガスCGは空気であってもよく、例えば、二次空気A2の供給通路37から分岐させて設けた通路(図示せず)から供給される空気や、二次空気A2とは独立の供給源から供給された空気を冷却ガスCGとして利用してもよい。
【0034】
なお、冷却ガス噴射口25は、
図2,3に例示したような噴射ノズル29,33として設けられる必要はない。例えば、
図4に変形例として示すように、側壁23を上下方向に分割し、側壁23間の隙間によって冷却ガスCGの通路および冷却ガス噴射口25を形成してもよい。図示の例では、上側の分割側壁23Aが、下側の分割側壁23Bよりも内側に肉厚に形成され、内側の壁面部分が、下側側壁23Bの上端部の壁面に対向するように下方に突出している。この上側の分割側壁23Aの突出部分23Aaと、下側の分割側壁23Bとの間の隙間が、側壁23に沿って下向きに冷却ガスCGを噴射する第1冷却ガス噴射口25Aを形成している。
【0035】
このように分割された側壁23間に第1冷却ガス噴射口25Aを形成する場合、
図5に模式的に示すように、燃焼室5における上流側から下流側向かう方向に、側壁23間の隙間を分割する仕切り壁39を設けることにより、第1冷却ガス噴射口25Aを、燃焼室5の上流側から下流側に沿って複数設けることができる。なお、
図4,5に示した変形例は、第1冷却ガス噴射口25Aのみならず、第2冷却ガス噴射口25Bにも同様に適用することができる。
【0036】
また、
図6に示すように、本実施形態に係る焼却炉1は、焼却された廃棄物Wの質を判定する判定装置41を備えている。焼却炉1は、さらに、判定装置41の判定結果に基づいて冷却ガス噴射口25からのガス噴射量を制御する制御装置43を備えている。ここでの「廃棄物Wの質」とは、具体的には、廃棄物Wの単位重量当たりの発熱量を意味する。
【0037】
判定装置41は、具体的には、例えば、焼却炉1に、排ガスを利用するボイラBが設けられている場合、処理した廃棄物重量に対する水蒸気発生量を測定、算出することにより廃棄物Wの質を判定する。
【0038】
また、本実施形態では、制御装置43が、判定装置41の判定結果に基づいて、上述のように上流側から下流側へ向けて設けられた複数の冷却ガス噴射口25のうち、冷却ガスCGを噴射させる冷却ガス噴射口25を選択する。
【0039】
廃棄物が高質(高発熱量)の場合、廃棄物Wは主として焼却装置7の上流側段において燃焼されるので、燃焼室5内における高温領域も上流側部分となる。他方、廃棄物Wが低質(低発熱量)の場合、廃棄物Wは主として焼却装置7の下流側段において燃焼されるので、燃焼室5内における高温領域も下流側部分となる。すなわち、廃棄物Wの質によって、燃焼室5内の高温領域が変動し、これに対応してクリンカが付着しやすい領域も変動する場合がある。そこで、制御装置43は、判定装置41によって判定された廃棄物Wの質に応じて、どの領域の冷却ガス噴射口25から冷却ガスCGを噴射するかを選択する。
【0040】
なお、判定装置41の代わりに、または判定装置41に追加して、燃焼室5内の側壁23表面の複数箇所に温度センサを取り付け、温度センサによって測定した燃焼室5内の側壁23表面の温度分布に基づいて、制御装置43によってどの領域の冷却ガス噴射口25から冷却ガスCGを噴射するかを選択してもよい。
【0041】
また、冷却ガス噴射口25を、冷却ガスCGの噴射方向を変更可能に構成し、判定装置41および/または温度センサの測定結果に基づいて、制御装置43によってクリンカ付着が予測される領域に向けて冷却ガスCGを噴射するように制御してもよい。
【0042】
上述のように、制御装置43によって廃棄物Wの質に応じた最適なガス噴射量によってクリンカ付着を抑制することが可能になる。また、制御装置43によって廃棄物Wの質に応じた最適なガス噴射位置を選択してクリンカ付着を抑制することが可能になる。その結果、焼却炉1全体の効率化を図りながらクリンカ付着を抑制することができる。もっとも、判定装置41および制御装置43は省略してもよい。
【0043】
以上説明した本実施形態に係る廃棄物焼却炉1によれば、いわゆる並行流式廃棄物焼却炉の構造上高温の燃焼ガスが滞留しやすく、かつ、二次空気A2投入による燃焼ガスBGの二次燃焼によって高温となりやすいことから、クリンカが付着しやすい箇所である燃焼室上流部5aの側壁23に、冷却ガスCGの噴射口25Aを設け、側壁23に沿って冷却ガスCGを噴射することができる。これにより、燃焼室5の側壁面の温度上昇が抑制され、効果的にクリンカ付着を抑制することができる。
【0044】
さらに、通路面積が狭く、また焼却装置7に近いことから高温となり易く、クリンカが付着しやすい箇所である下流部5bの側壁23についても、冷却ガスCGの噴射口25Bを設けることによりクリンカ付着を抑制することが可能となる。
【0045】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1 廃棄物焼却炉
5 燃焼室
5a 燃焼室の上流部
5b 燃焼室の下流部
7 焼却装置
9 再燃焼室
13 天壁
21 噴射ノズル
23 燃焼室の側壁
25 冷却ガス噴射口
25A 第1冷却ガス噴射口
25B 第2冷却ガス噴射口
35 判定装置
37 制御装置
CG 冷却ガス
BG 燃焼ガス