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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】レンズユニット、対象物検出装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20220621BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20220621BHJP
   G01V 8/20 20060101ALI20220621BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
G02B7/02 F
G02B7/02 B
G01S7/481 A
G01V8/20 N
G02B26/10 101
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018136654
(22)【出願日】2018-07-20
(65)【公開番号】P2020013054
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101786
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 秀行
(72)【発明者】
【氏名】安藤 恵都
(72)【発明者】
【氏名】田原 泰三
(72)【発明者】
【氏名】金井 伸一
(72)【発明者】
【氏名】角谷 彰朗
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-156887(JP,A)
【文献】実開昭62-181910(JP,U)
【文献】特開昭61-046918(JP,A)
【文献】実開昭64-032508(JP,U)
【文献】特開2016-039002(JP,A)
【文献】特開昭62-011815(JP,A)
【文献】特開2018-091730(JP,A)
【文献】特開2006-126272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G01S 7/481
G01V 8/20
G02B 26/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズと、
前記レンズを取り付けるベースと、
前記レンズの端部に設けられ、前記ベースに対して接着剤で固定されて、前記レンズを支持するレンズ支持部と、を備え、
前記レンズ支持部は、前記レンズを周方向に囲むように枠状に設けられていて、前記レンズと前記ベースとの間の熱膨張収縮差により受ける応力を吸収する応力吸収部を有し、
前記応力吸収部は、前記レンズ支持部の前記レンズと対向する部分に設けられて、前記レンズおよび前記ベースより高い可撓性を有し、前記熱膨張収縮差による応力を受けて撓むことにより、前記応力を吸収し、
前記レンズと前記レンズ支持部との間に、開口部が設けられている、ことを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズユニットにおいて、
前記接着剤は、前記レンズ支持部と前記ベースとに渡るように設けられ、所定の波長の光を照射することにより硬化して、前記レンズ支持部と前記ベースとを固定する、ことを特徴とするレンズユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のレンズユニットにおいて、
前記レンズ支持部は、前記レンズと前記ベースのうち、いずれか一方と同一の材料で形成されている、ことを特徴とするレンズユニット。
【請求項4】
請求項1ないし請求項のいずれかに記載のレンズユニットにおいて、
前記ベースは、前記レンズ支持部の先端部が嵌入され、かつ前記接着剤が充填される凹部を有している、ことを特徴とするレンズユニット。
【請求項5】
請求項1ないし請求項のいずれかに記載のレンズユニットと、
所定範囲に測定光を投光する投光部と、
前記所定範囲にある対象物での前記測定光の反射光を受光する受光部と、を備え、
前記反射光の受光状態に応じて前記受光部から出力される受光信号に基づいて前記対象物を検出する、ことを特徴とする対象物検出装置。
【請求項6】
請求項に記載の対象物検出装置において、
前記投光部から投光された前記測定光を偏向して、前記所定範囲に走査し、前記対象物からの前記反射光を走査して、前記受光部に導くように偏向する光走査部をさらに備え、
前記レンズユニットに備わるレンズは、前記受光部で受光される前の前記反射光を光学的に調整する受光レンズである、ことを特徴とする対象物検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズおよびベースを有するレンズユニットと、該レンズユニットを備えた対象物検出装置とに関し、特にレンズの固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、車載用のレーザレーダのような対象物検出装置には、特許文献1に開示されているように、測定光を投光する投光部と、測定光の対象物による反射光を受光する受光部と、測定光や反射光を光学的に調整するレンズや鏡のような光学部品とが備わっている。また、特許文献1のような対象物検出装置には、対象物の検出範囲を広げるため、測定光や反射光を走査する光走査部が備わっている。投光部には、レーザダイオードなどの発光素子が設けられている。受光部には、フォトダイオードなどの受光素子が設けられている。光走査部には、測定光や反射光を偏向する回転鏡が備わっている。
【0003】
上記の対象物検出装置では、投光部の発光素子から発せられた測定光が、光学部品に含まれる投光レンズで平行光に変換された後、光走査部で偏向されて、所定範囲に投光される。測定光が所定範囲にある対象物で反射されると、その反射光は、光走査部で偏向されて、光学部品に含まれる受光レンズで集光された後、受光部の受光素子で受光される。そして、対象物検出装置は、反射光の受光状態に応じて受光素子から出力される信号に基づいて、対象物の有無を検出する。また、投光部により測定光を投光してから、受光部で反射光を受光するまでの時間に基づいて、対象物までの距離を検出する。
【0004】
対象物検出装置において、対象物の検出精度を向上させるためには、各部を所定位置に精度良く設置する必要がある。投光路の始点に配置される発光素子や、受光路の終点に配置される受光素子は、電子部品であるため、プリント基板に実装される。そして、そのプリント基板は、筐体内でフレームなどのベースに取り付けられる。投光路や受光路の途中に配置されるレンズは、光軸方向を含む直交3光軸方向に光学的に位置調整されて、ベースに取り付けられる。詳しくは、たとえば、自動機のステージにベースを設置し、自動機のアームでレンズを把持してベース上の所定位置まで移動させた後、レンズに光(測定光または反射光)を透過させて、レンズからの出射光を光計測器で観測し、該出射光が適正な状態になるように、アームでレンズを直交3光軸方向に位置調整して、レンズをベースに固定する。
【0005】
レンズは、透光性を有する合成樹脂やガラスなどの材料で形成されている。レンズを取り付けるベースは、遮光性を有する合成樹脂や金属などで形成されている。このように、レンズとベースとは異なる材料で形成されているため、周囲の温度変化により両者に熱膨張収縮差が生じて、レンズが位置ずれし、レンズの光学的特性が劣化するおそれがある。特に、反射光を光学的に調整する受光レンズは、投光レンズより大型であるため、ベースとの熱膨張収縮差による位置ずれ量が多くなり易い。また、車載用の対象物検出装置では、高温環境下や低温環境下で使用されることがあり、レンズとベースとの熱膨張収縮差により、レンズが位置ずれし易くなる。
【0006】
熱膨張によるレンズの位置ずれ対策として、特許文献2に開示されたレンズユニットでは、ベースに保持されたレンズホルダの内周部に、レンズの外周部を固定する溝状の保持部を形成している。そして、レンズの外周部に、レンズの有効径内の最薄部より厚みの薄い部分を形成している。
【0007】
また、特許文献3では、ベース(保持体)に対してレンズ(光学要素)の外周部を接着剤により固定しているが、両者の線膨張率の違いにより接着剤がせん断されるおそれがある。そこで、レンズを取り付けるベースの取り付け平面に凹部を複数形成し、該凹部内に接着剤を充填して、接着剤の厚みを厚くし、接着剤のせん断応力に対する強度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-91730号公報
【文献】特開2009-3130号公報
【文献】特開2017-44947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述したように、対象物の検出精度を向上させるため、レンズを光学的に位置調整してベースに取り付ける必要がある。しかし、特許文献2のような構造では、レンズとレンズホルダが隙間なく係合し、レンズホルダとベースも隙間なく係合しているので、ベースに対してレンズを直交3軸方向に位置調整し難い。また、特許文献3のような構造では、レンズの厚み方向にレンズとベースが密着しているので、ベースに対してレンズを光軸方向に位置調整し難い。
【0010】
また、接着剤を用いてレンズをベースに固定した場合、周囲の温度変化により、レンズとベースとの間で熱膨張収縮差が生じると、硬化状態の接着剤に応力(特にせん断応力)がかかって、該接着剤が損傷(特にせん断)するおそれがある。そして、硬化状態の接着剤が損傷すると、レンズの固定状態が維持されず、レンズが位置ずれして、レンズの光学的特性が劣化してしまう。
【0011】
本発明は、レンズを光学的に位置調整してベースに精度良く取り付け、かつ周囲の温度変化によりレンズが位置ずれするのを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によるレンズユニットは、レンズと、レンズを取り付けるベースと、レンズの端部に設けられ、ベースに対して接着剤で固定されて、レンズを支持するレンズ支持部とを備えている。レンズ支持部は、レンズを周方向に囲むように枠状に設けられていて、レンズとベースとの間の熱膨張収縮差により受ける応力を吸収する応力吸収部を有する。応力吸収部は、レンズ支持部のレンズと対向する部分に設けられて、レンズおよびベースより高い可撓性を有し、前記の熱膨張収縮差による応力を受けて撓むことにより、応力を吸収する。レンズとレンズ支持部との間には、開口部が設けられている。
【0013】
また、本発明による対象物検出装置は、上記レンズユニットと、所定範囲に測定光を投光する投光部と、所定範囲にある対象物での測定光の反射光を受光する受光部とを備え、反射光の受光状態に応じて受光部から出力される受光信号に基づいて対象物を検出する。
【0014】
上記によると、レンズをレンズ支持部ごと光軸方向を含む直交3軸方向に光学的に位置調整してから、接着剤によりレンズ支持部をベースに固定することで、レンズをベースに精度良く取り付けることができる。またその後、周囲の温度変化により、レンズとベースとの間で熱膨張収縮差が生じて、レンズ支持部に応力がかかっても、該応力が応力吸収部で吸収される。このため、レンズ支持部をベースに固定する接着剤にかかる応力が軽減され、接着剤の損傷を防止することができる。その結果、ベースに対するレンズ支持部の固定状態を維持して、レンズの位置ずれも防止することができる。そして、このようなレンズユニットを備えた対象物検出装置では、レンズの位置精度を高く維持して、レンズの光学的特性が劣化するのを防止することができ、対象物を安定して精度良く検出することが可能となる。
【0015】
本発明において、接着剤は、レンズ支持部とベースとに渡るように設けられ、所定の波長の光を照射することにより硬化して、レンズ支持部とベースとを固定してもよい。
【0019】
また、本発明において、レンズ支持部は、レンズとベースのうち、いずれか一方と同一の材料で形成されていてもよい。
【0020】
また、本発明において、ベースは、レンズ支持部の先端部が嵌入され、かつ接着剤が充填される凹部を有していてもよい。
【0021】
さらに、本発明の対象物検出装置において、投光部から投光された測定光を偏向して、所定範囲に走査し、対象物からの反射光を走査して、受光部に導くように偏向する光走査部をさらに備え、レンズユニットに備わるレンズが、受光部で受光される前の反射光を光学的に調整する受光レンズであってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、レンズを光学的に位置調整してベースに精度良く取り付け、かつ周囲の温度変化によりレンズが位置ずれするのを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態による対象物検出装置の電気的構成を示した図である。
図2図1の対象物検出装置の外観を示した斜視図である。
図3図1の対象物検出装置の内部構造を示した斜視図である。
図4図3からベースを省略した状態を示した図である。
図5A】本発明の第1実施形態によるレンズユニットを示した図である。
図5B】本発明の第1実施形態によるレンズユニットを示した図である。
図5C】本発明の第1実施形態によるレンズユニットを示した図である。
図6図5BのA矢視図である。
図7A】本発明の第2実施形態によるレンズユニットを示した図である。
図7B】本発明の第2実施形態によるレンズユニットを示した図である。
図7C】本発明の第2実施形態によるレンズユニットを示した図である。
図7D】本発明の第2実施形態によるレンズユニットを示した図である。
図8】本発明の第3実施形態によるレンズユニットを示した図である。
図9図8のレンズユニットの要部拡大図である。
図10】本発明の第4実施形態によるレンズユニットを示した図である。
図11図10のB矢視図である。
図12】本発明の第5実施形態によるレンズユニットを示した図である。
図13】本発明の第6実施形態によるレンズユニットを示した図である。
図14】本発明の第7実施形態によるレンズユニットを示した図である。
図15】本発明の第8実施形態によるレンズユニットを示した図である。
図16】本発明の第9実施形態によるレンズユニットを示した図である。
図17】本発明の第10実施形態によるレンズユニットを示した図である。
図18】本発明の第11実施形態によるレンズユニットを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0025】
まず、実施形態の対象物検出装置100の電気的構成を説明する。
【0026】
図1は、対象物検出装置100の電気的構成を示した図である。対象物検出装置100は、車載用のレーザレーダである。制御部1は、CPUなどから成り、対象物検出装置100の各部の動作を制御する。
【0027】
LD(レーザダイオード)モジュール2はパッケージ化されている。LDモジュール2には、LDが複数(たとえば4チャンネル)含まれている。各LDは、高出力光パルスを発する発光素子である。充電回路3は、LDモジュール2と接続されている。
【0028】
制御部1は、LDモジュール2の各LDの動作を制御する。詳しくは、たとえば制御部1は、各LDを発光させて、所定範囲にある人や物体などの対象物に測定光を投光する。また、制御部1は、各LDの発光を停止させて、充電回路3により各LDを充電する。LDモジュール2は、本発明の「投光部」の一例である。
【0029】
モータ4cは、後述する光走査部4(図3など)の駆動源である。モータ駆動回路5は、モータ4cを駆動する。エンコーダ6は、モータ4cの回転状態(角度や回転数など)を検出する。制御部1は、モータ駆動回路5によりモータ4cを回転させて、光走査部4の動作を制御する。また、制御部1は、エンコーダ6の出力に基づいて、光走査部4の動作状態(動作量や動作位置など)を検出する。
【0030】
PD(フォトダイオード)モジュール7はパッケージ化されている。PDモジュール7には、受光素子であるPD、TIA(トランスインピーダンスアンプ)、MUX(マルチプレクサ)、およびVGA(可変ゲインアンプ)が含まれている(詳細回路は図示省略)。
【0031】
PDは、PDモジュール7に複数(たとえば32チャンネル)設けられている。MUXは、TIAの出力信号をVGAに入力させる。昇圧回路9は、フォトダイオードの動作に必要な昇圧された電圧を、PDモジュール7の各PDに供給する。ADC(アナログデジタルコンバータ)8は、PDモジュール7から出力されるアナログ信号を、デジタル信号に変換する。
【0032】
制御部1は、PDモジュール7の各部の動作を制御する。詳しくは、たとえば制御部1は、LDモジュール2のLDを発光させることにより、所定範囲に測定光を投光し、所定範囲にある対象物で反射された測定光の反射光をPDモジュール7のPDにより受光する。そして、制御部1は、その受光状態に応じてPDから出力される受光信号を、PDモジュール7のTIAおよびVGAにより信号処理する。さらに、制御部1は、PDモジュール7から出力されるアナログの受光信号を、ADC8によりデジタルの受光信号に変換し、該デジタルの受光信号に基づいて、対象物の有無を検出する。また、制御部1は、LDが発光してから対象物での反射光をPDで受光するまでの時間を算出し、該時間に基づいて対象物までの距離を検出する。PDモジュール7は、本発明の「受光部」の一例である。
【0033】
記憶部10は、揮発性や不揮発性のメモリから成る。記憶部10には、制御部1が対象物検出装置100の各部を制御するための情報や、対象物を検出するための情報などが記憶されている。インタフェイス11は、通信回路から成る。制御部1は、車両に搭載された他の装置に対して、インタフェイス11により対象物に関する情報を送受信したり、各種制御情報を送受信したりする。
【0034】
次に、対象物検出装置100の構造および機能について説明する。
【0035】
図2は、対象物検出装置100の外観を示した斜視図である。図3は、対象物検出装置100の内部構造を示した斜視図である。図4は、図3からベース30を省略した状態を示した図である。
【0036】
図2に示すように、対象物検出装置100のケース12は、正面視が矩形状の箱体である。ケース12の開口部12aは、透光カバー13で覆われている。透光カバー13は、所定の厚みのドーム状に形成されている。
【0037】
ケース12と透光カバー13で囲まれた内部空間には、図3および図4に示すような光学系と、図1に示した電気系などが収納されている。図2の透光カバー13は、ケース12の内外に対して光を透過させる。
【0038】
対象物検出装置100は、たとえば、透光カバー13が車両の前方、後方、または左右側方を向くように、車両の前部、後部、または左右側部に設置される。その際、図2に示すように、ケース12の短辺方向が上下方向を向くように、対象物検出装置100は車両に設置される。
【0039】
図3および図4に示すように、ケース12などの内部空間に収納された光学系は、LDモジュール2のLD、投光レンズ14、光走査部4、受光レンズ16、反射鏡17、およびPDモジュール7のPDから成る。
【0040】
そのうち、LDモジュール2のLD、投光レンズ14、および光走査部4は、投光光学系である。また、光走査部4、受光レンズ16、反射鏡17、およびPDモジュール7のPDは、受光光学系である。
【0041】
図4に示すように、LDモジュール2は、厚みの薄い直方体状に形成されている。LDモジュール2の一側面には、複数のLDの発光部分(図4の符号LDの部分)が露出している。各LDは、測定光(高出力光パルス)を投射する。
【0042】
LDモジュール2は、第1基板21の一方の板面に実装されている。そして、LDモジュール2は、対象物検出装置100の中央部に配置されている。LDモジュール2の各LDの発光部分は、対象物検出装置100の中央側でかつ第1基板21の板面に対して平行な方向を向いている。このため、各LDは、第1基板21の板面に対して平行な方向に測定光を投射する。
【0043】
図3に示すように、第1基板21は、ベース30の対象物側を向いた取り付け面30aに、ねじなどにより固定されている。ベース30は、アルミニウム製のダイキャストから成り、ケース12の内面に対してねじなどにより固定されている。
【0044】
LDモジュール2の発光方向側には、投光レンズ14が配置されている。投光レンズ14は、ベース30の取り付け面30aに固定されている(詳細図示省略)。投光レンズ14は、LDモジュール2の各LDから発せられた光の拡がりを調整し、該光を平行光に変換する。
【0045】
PDモジュール7は、四角棒状に形成されている。PDモジュール7の一側面には、複数のPDの受光部分が上下方向に1列に配列されている(詳細図示省略)。PDモジュール7は、第2基板22の一方の板面に実装されている。PDモジュール7の各PDは、透光カバー13側を向いている。
【0046】
第2基板22は、ベース30の反対象物側を向いた取り付け面30bにねじなどにより固定されている。PDモジュール7は、ベース30の上部に設けられた開口部30kから露出している。すなわち、対象物側から開口部30kを通して、PDモジュール7のPDの受光部分を臨めるようになっている。第1基板21と第2基板22とは、両基板21、22の板厚方向に所定の間隔をおいて平行に配置されている。また、第1基板21は、第2基板22より小さく形成されていて、第2基板22より対象物側に配置されている。
【0047】
第1基板21には、LDモジュール2の他に、図1に示した充電回路3が実装されている。第2基板22には、PDモジュール7の他に、図1に示したADC8、昇圧回路9、モータ駆動回路5、制御部1、記憶部10、およびインタフェイス11などが実装されている。第1基板21と第2基板22とは、図示しないコネクタやFPC(Flexible Printed Circuits)により電気的に接続されている。
【0048】
第2基板22より対象物側には、投光レンズ14、光走査部4、受光レンズ16、および反射鏡17が配置されている。
【0049】
光走査部4は、光偏向器とも呼ばれていて、両面鏡4aとモータ4cなどを備えている。モータ4cは第3基板23上に実装されている。第3基板23は、モータ4cの回転軸(図示せず)が上下方向と平行になるように、ケース12内に固定具により固定されている。第3基板23の板面は、第1基板21および第2基板22の各板面に対して垂直になっている。第3基板23と第2基板22は、図示しないコネクタやFPCにより電気的に接続されている。モータ4cの回転軸の一端部には、両面鏡4aが連結されている。モータ4cの回転軸に連動して、両面鏡4aは回転する。
【0050】
受光レンズ16と反射鏡17は、第1基板21の上方に配置されている(図4)。受光レンズ16は、集光レンズから成り、投光レンズ14より大型に形成されている。受光レンズ16は、光の入射面(凸面)が光走査部4と対向するように、ベース30に取り付けられている。受光レンズ16とベース30を備えたレンズユニット40の詳細は後述する。
【0051】
反射鏡17は、受光レンズ16の光走査部4と反対側に配置されている。反射鏡17は、受光レンズ16とPDモジュール7の各PDの受光部分とに対して所定の角度で傾斜するように、ベース30の取り付け面30cに取り付けられている。
【0052】
図4に1点鎖線の矢印で示すように、LDモジュール2のLDから投射された測定光は、投光レンズ14により拡がりを調整された後、光走査部4の両面鏡4aの下半分の部分に当たる。そして、その測定光は、両面鏡4aの下半分の部分により偏向されて、透光カバー13(図2)を透過し、対象物に照射される。つまり、光走査部4は、LDモジュール2のLDから発せられた測定光を対象物側に偏向する。その際、モータ4cが回転して、両面鏡4aの角度(向き)が変化することで、LDから発せられた測定光が透光カバー13の外方の所定範囲に走査される。
【0053】
透光カバー13を透過した測定光は、所定範囲にある人や物体などの対象物で反射される。その反射光は、透光カバー13を透過した後、図4に2点鎖線の矢印で示すように、光走査部4の両面鏡4aの上半分の部分で偏向されて、受光レンズ16に入射する。その際、モータ4cが回転して、両面鏡4aの角度(向き)が変化することで、透光カバー13の外方の所定範囲から来た反射光が両面鏡4aにより反射されて、受光レンズ16の方へ偏向される。光走査部4を経由して受光レンズ16に入射した反射光は、受光レンズ16により集光された後、反射鏡17で反射して、PDモジュール7のPDにより受光される。
【0054】
上記の反射光の受光状態に応じてPDから出力される受光信号は、PDモジュール7やADC8で信号処理される。そして、この処理後の受光信号に基づいて、制御部1が対象物の有無を検出したり、対象物までの距離を算出したりする。上述した光の投光経路と受光経路とは、ベース30に設けられた隔壁30wにより区切られている。
【0055】
次に、レンズユニット40の構造および機能について説明する。
【0056】
図5A図5Cは、第1実施形態のレンズユニット40を示した図である。図6は、図5BのA矢視図である。
【0057】
第1実施形態のレンズユニット40では、図5A図5Cに示すように、受光レンズ16の両端部に左右一対のレンズ支持部18が設けられている。詳しくは、レンズ支持部18は、受光レンズ16の長手径方向Xの両側に柱状に設けられていて、逆L字形に形成されている。
【0058】
たとえば、受光レンズ16は、ポリカーボネイトなどのような、透光性を有する合成樹脂で形成されている。レンズ支持部18は、ステンレスやアルミニウムなどのような金属で形成されている。受光レンズ16のインサート成形時に、レンズ支持部18を成形金型内に装填することで、レンズ支持部18の根元部18aが受光レンズ16の両端部に固定される。
【0059】
他の例として、たとえばレーザ溶着や接着剤などにより、レンズ支持部18の根元部18aを受光レンズ16の両端部に固定してもよい。
【0060】
各レンズ支持部18は、受光レンズ16の長手径方向Xの両端部から、同径方向Xに所定長突出した後、受光レンズ16の短手径方向Yと平行に下方へ垂直に曲げられて、該下方へ所定長突出している。各レンズ支持部18の先端部18bは、ベース30の隔壁30wの所定位置に設けられた凹部30vに嵌入されている。図5A図6に示すように、凹部30vの内径は、レンズ支持部18の外径(太さ)より大きくなっている。
【0061】
各凹部30v内には、光硬化型の接着剤19が充填されている。具体的には、接着剤19は、紫外線を照射することにより硬化するUV接着剤、またはレーザ光を照射することにより、レーザ光の熱で硬化するレーザ熱硬化型接着剤から成る。接着剤19は、凹部30v内でレンズ支持部18とベース30の隔壁30wに渡るように充填され、所定の波長の光を照射することにより硬化して、レンズ支持部18を隔壁30wに固定している。
【0062】
受光レンズ16をベース30に取り付ける際は、たとえば、まず、図示しない自動機のステージにベース30を設置し、自動機のアームで受光レンズ16または受光レンズ16と一体化されたレンズ支持部18を把持して、ベース30の隔壁30w上の所定位置まで移動させる。次に、アームを動かして、図5Aに示すように、各レンズ支持部18の先端部18bを各凹部30v内に挿入し、かつ硬化前の接着剤19を各凹部30v内に注入する。
【0063】
次に、アームを動かして、図5Bおよび図6に矢印で示すように、レンズ支持部18ごと受光レンズ16を直交3軸方向X、Y、Zに光学的に位置調整する。詳しくは、受光レンズ16に光(反射光)を透過させて、図示しない光計測器により受光レンズ16からの出射光またはPDモジュール7の各PDの受光状態を観測し、当該出射光または当該受光状態が適正な状態になるように、アームで受光レンズ16を直交3光軸方向X、Y、Zに位置調整する。直交3軸方向X、Y、Zは、図5A図5Cに示す受光レンズ16の長手径方向X、短手径方向Y、および図6に示す受光レンズ16の光軸方向Zから成る。
【0064】
なお、レンズ支持部18の先端部18bを凹部30v内に嵌入した状態で、レンズ支持部18ごと受光レンズ16を直交3軸方向X、Y、Zに光学的に位置調整してから、凹部30v内に接着剤19を注入してもよい。
【0065】
そして、図5Cに示すように、光源50から所定の波長の光を各凹部30v内の接着剤19に照射することにより、接着剤19を硬化させて、レンズ支持部18とベース30の隔壁30wとを固定する。これにより、隔壁30w上でレンズ支持部18により受光レンズ16が支持されて、受光レンズ16が適正な3次元位置でベース30に取り付けられる。つまり、対象物検出装置100内の所定位置に、受光レンズ16が配置される。
【0066】
各レンズ支持部18の太さは、受光レンズ16の径や厚み、およびベース30の隔壁30wの厚みより細くなっている。このため、各レンズ支持部18の中間部分には、受光レンズ16やベース30より高い可撓性を有した応力吸収部18cが設けられている。
【0067】
受光レンズ16の線膨張係数は、ベース30の線膨張係数より大きくなっている。このため、周囲の温度変化により、受光レンズ16とベース30とが膨張または収縮すると、両者の間で熱膨張収縮差が生じて、各レンズ支持部18に応力がかかる。そして、受光レンズ16は投光レンズ14より大型であるため、受光レンズ16とベース30との熱膨張収縮差により、レンズ支持部18に強い応力がかかる。
【0068】
特に、受光レンズ16はレンズ支持部18により長手径方向Xの両側から拘束されているので、該径方向Xに生じる受光レンズ16とベース30との熱膨張収縮差により、該径方向Xに作用する大きなせん断応力が各レンズ支持部18にかかる。各レンズ支持部18では、応力吸収部18cが、受光レンズ16とベース30との間の熱膨張収縮差による応力を受けて撓むことで、該熱膨張収縮差による応力を吸収する。
【0069】
上記第1実施形態によると、レンズ支持部18ごと受光レンズ16を直交3軸方向X、Y、Zに光学的に位置調整してから、接着剤19によりレンズ支持部18をベース30の隔壁30wに固定することで、受光レンズ16をベース30に精度良く取り付けることができる。またその後、周囲の温度変化により、受光レンズ16とベース30との間で熱膨張収縮差が生じて、レンズ支持部18に応力がかかっても、該応力が応力吸収部18cで吸収される。このため、レンズ支持部18をベース30の隔壁30wに固定する接着剤19にかかる応力が軽減され、接着剤19の損傷を防止することができる。その結果、隔壁30wに対するレンズ支持部18の固定状態を維持して、受光レンズ16の位置ずれも防止することができる。
【0070】
そして、このようなレンズユニット40を備えた対象物検出装置100では、受光レンズ16の位置精度を高く維持して、受光レンズ16の光学的特性が劣化するのを防止することができ、対象物を安定して精度良く検出することが可能となる。特に、光走査部4を備えた対象物検出装置100では、対象物からの反射光を光走査部4で偏向した後、受光モジュール7の所定のPDへ的確に導くために、受光レンズ16に高い位置精度が要求される。このため、上記のように受光レンズ16の位置精度を高めて、該位置精度を維持することは、対象物検出装置100の受光性能を高めて、対象物を精度良く検出することに大きく貢献する。
【0071】
また、上記第1実施形態では、レンズ支持部18をベース30に固定するのに、光硬化型の接着剤19を用いている。このため、レンズ支持部18ごと受光レンズ16を直交3軸方向X、Y、Zに光学的に位置調整してから、所定の波長の光を照射することにより接着剤19を即座に硬化させて、レンズ支持部18をベース30に確実に固定し、受光レンズ16をベース30に精度良く取り付けることができる。
【0072】
また、上記第1実施形態では、受光レンズ16の長手径方向Xの両側にレンズ支持部18が柱状に設けられ、レンズ支持部18の中間部分にある応力吸収部18cが受光レンズ16やベース30より高い可撓性を有している。このため、周囲の温度変化により、受光レンズ16とベース30との間で大きな熱膨張収縮差が生じて、受光レンズ16の長手径方向Xに作用する大きなせん断応力がレンズ支持部18にかかっても、応力吸収部18cが撓むことで当該せん断応力を効果的に吸収することができる。
【0073】
また、上記第1実施形態では、各レンズ支持部18が、受光レンズ16から長手径方向Xへ突出した後、下方へ屈曲して、ベース30の隔壁30wに固定されている。このため、各レンズ支持部18の長さを長くして、応力吸収部18cを撓み易くし、レンズ支持部18にかかる応力を吸収し易くすることができる。
【0074】
また、上記第1実施形態では、レンズ支持部18の先端部18bを嵌入させる凹部30vを、ベース30の隔壁30wに形成している。このため、レンズ支持部18の先端部18bを凹部30vに嵌入させた状態で、レンズ支持部18ごと受光レンズ16を直交3軸方向X、Y、Zに容易に光学的に位置調整することができる。そして、凹部30vに充填した接着剤19を硬化させることで、レンズ支持部18を隔壁30wに確実に固定し、受光レンズ16をベース30に精度良く取り付けることができる。また、その後、受光レンズ16やベース30が熱膨張した場合には、凹部30vの硬化状態の接着剤19に圧縮応力がかかるので、レンズ支持部18の固定強度を向上させることができる。
【0075】
さらに、上記第1実施形態において、レンズ支持部18をベース30と同じアルミニウムなどの材料で形成することで、レンズ支持部18とベース30との間の熱膨張収縮差を低減して、接着剤19にかかる応力を一層軽減することができる。
【0076】
レンズユニット40において、受光レンズ16の直交3軸方向X、Y、Zへの位置調整幅を大きくしたり、レンズ支持部18をベース30に強固に固定したりするためには、凹部30vの深さを深くしたり、凹部30vの径を大きくしたりすることが好ましい。
【0077】
然るにそうすると、凹部30v内への接着剤19の充填量が多くなり、接着剤19の全域に光を照射して、接着剤19を均一に硬化させることが難くなる。特に、図3に示したように複雑な形に形成されたベース30では、受光レンズ16以外の部品も固定されるので、光源50から凹部30v内の接着剤19に光を照射し難く、凹部30v内の深い位置にある接着剤19に光が到達しないおそれがある。
【0078】
上記の対策として、たとえば、図7A図9に示す他の実施形態の構造を、レンズユニット40に備えてもよい。
【0079】
図7A図7Dは、第2実施形態のレンズユニット40を示した図である。第2実施形態のレンズユニット40では、レンズ支持部18をベース30の隔壁30wに固定するため、図7Dに示すように、2種類の接着剤19、29を用いている。一方の接着剤19は、光硬化型の接着剤から成る。他方の接着剤29は、光硬化型ではない接着剤であって、たとえば湿気や熱により硬化するエポキシ系などの接着剤から成る。この非光硬化型の接着剤29が硬化するまでの所要時間は、光硬化型の接着剤19が硬化するまでの所要時間より長い。
【0080】
受光レンズ16をベース30に取り付ける際は、たとえば、まず、自動機のステージにベース30を設置し、自動機のアームで受光レンズ16とレンズ支持部18をベース30の隔壁30w上の所定位置まで移動させる。次に、アームを動かして、図7Aに示すように、各レンズ支持部18の先端部18bを各凹部30v内に挿入し、かつ硬化前の光硬化型の接着剤19を各凹部30vの所定の深さ(たとえば5分目以下)まで注入する。この際、レンズ支持部18の先端部18bの少なくとも下端面が接着剤19に浸かるようにする。
【0081】
次に、アームを動かして、図7Bに矢印で示すように、レンズ支持部18ごと受光レンズ16を直交3軸方向X、Y、Zに光学的に位置調整する。次に、図7Cに示すように、光源50から所定の波長の光を各凹部30v内の接着剤19に照射することにより、該接着剤19を硬化させて、レンズ支持部18をベース30の隔壁30wに仮固定する。
【0082】
さらに、図7Dに示すように、硬化前の非光硬化型の接着剤29を各凹部30vに充填し、該接着剤29が硬化するのを待つ。接着剤29が硬化すると、レンズ支持部18がベース30の隔壁30wに強固に固定される。そして、隔壁30w上でレンズ支持部18により受光レンズ16が支持されて、受光レンズ16がベース30に取り付けられる。
【0083】
上記第2実施形態によると、ベース30の隔壁30wの凹部30vの深さを深くしたり、凹部30vの径を大きくしたりしても、凹部30vの深い位置に充填された光硬化型の接着剤19の全体に所定の波長の光を照射して、該接着剤19を均一に硬化させ、受光レンズ16を精度良く位置決めすることができる。そして、光硬化型の接着剤19の硬化後に、非光硬化型の接着剤29を凹部30vに充填して、該接着剤29を硬化させるので、レンズ支持部18をベース30の隔壁30wに強固に固定することができる。
【0084】
図8は、第3実施形態のレンズユニット40を示した図である。図9は、図8の要部拡大図である。第3実施形態のレンズユニット40では、図8に示すように、受光レンズ16の両端部に、レンズ支持部16dを受光レンズ16と同一の透光性を有する合成樹脂で一体的に形成している。詳しくは、受光レンズ16を成形するのと同時に、レンズ支持部16dは成形されている。このため、レンズ支持部16dは、光源50から発せられた所定の波長の光を、先端部16eの周辺にある接着剤19まで導く。つまり、レンズ支持部16d全体が導光部になっている。また、レンズ支持部16dの中間部分は、受光レンズ16の本体部分(レンズ部分)やベース30より可撓性を有する応力吸収部16hになっている。レンズ支持部16dの受光レンズ16における形成位置は、第1実施形態のレンズ支持部18と同様である。
【0085】
図9に示すように、各レンズ支持部16dの先端部16eには、規則的または不規則な凹凸からなる光散乱部16fが形成されている。光散乱部16fは、レンズ支持部16dの内部を透過した光を透過させつつ、該光を外部に対して散乱させる。
【0086】
また、光源50からの光が入射するレンズ支持部16dの入射部分(上面)にも、同様の光散乱部16gが形成されている。光散乱部16gは、光源50からレンズ支持部16dに入射する光を透過させつつ散乱させる。
【0087】
光散乱部16f、16g以外のレンズ支持部16dの形状は、第1実施形態のレンズ支持部18と同様である。他の例として、レンズ支持部16dの光の入射部分や出射部分の表面をすりガラス状に加工して、当該部分を光散乱部としてもよい。
【0088】
上記第3実施形態によると、レンズ支持部16dが導光部として機能するので、光源50から発せられた所定の波長の光を、レンズ支持部16dの内部を透過させて、ベース30の凹部30v内に嵌入された先端部16eから、周囲にある光硬化型の接着剤19に導くことができる。また、レンズ支持部16dの光の入射部分や出射部分に光散乱部16g、16fを設けているので、光源50からの光を光散乱部16g、16fで散乱させて、凹部30v内の接着剤19全体に照射することができる。このため、凹部30vの深さを深くしたり、凹部30vの径を大きくしたりしても、凹部30v内に充填された接着剤19の全体に光を照射して、該接着剤19を確実に硬化させることができる。また、凹部30vの深さや径を大きくして、凹部30v内への接着剤19の充填量を多くすることで、受光レンズ16の直交3軸方向X、Y、Zへの位置調整幅を大きくしたり、レンズ支持部16dをベース30に強固に固定したりすることができる。
【0089】
また、レンズ支持部16dの先端部16eに設けた光散乱部16fを凹凸状に形成しているので、レンズ支持部16dを接着剤19に食い込ませて、レンズ支持部16dの固定強度を高くすることができる。さらに、レンズ支持部16dを受光レンズ16と同じ材料で形成しているので、レンズ支持部16dと受光レンズ16との間の熱膨張収縮差を低減して、接着剤19にかかる応力を一層軽減することができる。
【0090】
以上の実施形態では、レンズ支持部18、16dを逆L字形に形成して、径を細くすることにより、レンズ支持部18、16dの中間部分に可撓性を有する応力吸収部18c、16hを設けた例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、図10図13に示すようなレンズ支持部28、38および応力吸収部28c、38cを設けてもよい。
【0091】
図10は、第4実施形態のレンズユニット40を示した図である。図11は、図10(a)のB矢視図である。第4実施形態のレンズユニット40では、図10(a)に示すように、受光レンズ16の両端部にまっすぐなレンズ支持部28が設けられている。詳しくは、レンズ支持部28は、受光レンズ16の長手径方向Xの両側に柱状に設けられている。また、各レンズ支持部28は、受光レンズ16の短手径方向Yと平行に設けられている。各レンズ支持部28の先端部28bは、ベース30の隔壁30wに設けられた凹部30vに嵌入されて、凹部30v内に充填された接着剤19により隔壁30wに固定されている。
【0092】
各レンズ支持部28は、ステンレスやアルミニウムなどのような金属で形成されている。各レンズ支持部28には、図11に示すように2つのスリット28sが設けられている。2つのスリット28sは、レンズ支持部28をX方向に貫通し、かつY方向に延びている。2つのスリット28sの間は、受光レンズ16やベース30より高い可撓性を有する応力吸収部28cになっている。また、応力吸収部28cは、受光レンズ16の長手径方向Xに弾性変形可能になっている。2つのレンズ支持部28の各応力吸収部28cには、受光レンズ16の両端部が固定されており、受光レンズ16は一対のレンズ支持部28の間に支持されている。
【0093】
上記第4実施形態によると、周囲の温度変化により、受光レンズ16とベース30との間で大きな熱膨張収縮差が生じて、受光レンズ16の長手径方向Xに作用する大きなせん断応力がレンズ支持部28にかかっても、たとえば図10(b)に示すように、応力吸収部28cがX方向に弾性変形することで、当該せん断応力を効果的に吸収することができる。このため、レンズ支持部28から接着剤19にかかる応力が軽減され、接着剤19の損傷を防止することができ、隔壁30wに対するレンズ支持部28の固定状態を維持して、受光レンズ16の位置ずれも防止することができる。
【0094】
図12は、第5実施形態のレンズユニット40を示した図である。第5実施形態のレンズユニット40では、受光レンズ16の両端部に渦巻き形のレンズ支持部38が設けられている。詳しくは、レンズ支持部38は、受光レンズ16の長手径方向Xの両側に設けられている。各レンズ支持部38の根元部38aは、受光レンズ16の両端部に固定されている。
【0095】
各レンズ支持部38の中間部分には、渦巻き状に巻回された応力吸収部38cが設けられている。応力吸収部38cは、受光レンズ16やベース30より高い可撓性を有し、弾性変形可能になっている。
【0096】
ベース30の隔壁30w上には、左右一対の側壁30dがY方向と平行に立設されている。各レンズ支持部38の先端部38bは、接着剤19により各側壁30dの側面に固定されている。
【0097】
他の例として、たとえば図13に示す第6実施形態のように、各レンズ支持部38の先端部38bにZ方向へ突出する凸部38dを設けるとともに、各側壁30dに凸部38dを嵌入させる凹部30vを設け、凹部30vに充填した接着剤19で凸部38dを側壁30dに固定してもよい。
【0098】
上記第5および第6実施形態によると、周囲の温度変化により、受光レンズ16とベース30との間で大きな熱膨張収縮差が生じて、受光レンズ16の長手径方向Xに作用する大きなせん断応力がレンズ支持部38にかかっても、応力吸収部38cが弾性変形することで、当該せん断応力を効果的に吸収することができる。このため、レンズ支持部38から接着剤19にかかる応力が軽減され、接着剤19の損傷を防止することができ、側壁30dに対するレンズ支持部38の固定状態を維持して、受光レンズ16の位置ずれも防止することができる。
【0099】
以上の実施形態では、レンズ支持部18、16d、28、38を梁状に形成した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、図14に示す第7実施形態のように、レンズ支持部48を枠状に形成してもよい。
【0100】
図14は、第7実施形態のレンズユニット40を示した図である。第7実施形態のレンズユニット40では、レンズ支持部48が、受光レンズ16を周方向に囲むように枠状に形成されている。レンズ支持部48は、受光レンズ16またはベース30と同一の材料で形成されてもよい。
【0101】
レンズ支持部48の受光レンズ16と対向する各枠部48u、48b、48L、48rの太さは、受光レンズ16の径や厚み、およびベース30の隔壁30wや側壁30dの厚みより細くなっている。このため、各枠部48u、48b、48L、48rは、受光レンズ16やベース30より高い可撓性を有した応力吸収部を構成している。
【0102】
受光レンズ16は、長手径方向Xと平行な上下の枠部48u、48bにより上下方向(受光レンズ16の短手径方向)Yから支持されている。上下の枠部48u、48bの少なくとも一方に対して、受光レンズ16を固定してもよい。その場合の固定手段として、接着剤、レーザ溶着、ねじ、またはばねなどを用いてもよい。
【0103】
受光レンズ16の短手径方向Yと平行な左右の枠部48L、48rと受光レンズ16との間には、開口部48kが設けられている。受光レンズ16の長手径方向Xにおける、開口部48kの開口幅は、受光レンズ16の想定最大膨張幅より広くなっている。
【0104】
左右の枠部48L、48rのそれぞれの外側中央部には、X方向と平行に外方へ突出する一対の凸部48tが形成されている。各凸部48tは、ベース30の側壁30dに対して接着剤19により固定されている。接着剤19は、凸部48tの周囲だけでなく、凸部48tと側壁30dとの間にも塗布されている。このため、レンズ支持部48により受光レンズ16が支持されて、受光レンズ16がベース30に取り付けられている。
【0105】
上記第7実施形態によると、レンズ支持部48ごと受光レンズ16を直交3軸方向X、Y、Zに光学的に位置調整してから、接着剤19によりレンズ支持部48の凸部48tをベース30の側壁30dに固定することで、受光レンズ16をベース30に精度良く取り付けることができる。またその後、周囲の温度変化により、受光レンズ16、ベース30、および/またはレンズ支持部48で熱膨張収縮差が生じて、レンズ支持部48に応力がかかっても、レンズ支持部48の各枠部48u、48b、48L、48rが撓むことで、当該応力を効果的に吸収することができる。
【0106】
また、受光レンズ16とレンズ支持部48との間に開口部48kを設けているので、熱による受光レンズ16のX方向への膨張や収縮を開口部48k内に収めて、受光レンズ16、ベース30、および/またはレンズ支持部48の熱膨張収縮差による応力をより効果的に吸収することができる。
【0107】
そして、上記の結果、レンズ支持部48を側壁30dに固定している接着剤19にかかる応力が軽減され、接着剤19の損傷を防止することができる。このため、側壁30dに対するレンズ支持部48の固定状態を維持して、受光レンズ16の位置ずれも防止することができる。
【0108】
上記第7実施形態では、レンズ支持部48の左右の枠部48L、48rのそれぞれに凸部48tを設けた例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、図15に示す第8実施形態のように、レンズ支持部48の左右の枠部48L、48rのうち、いずれか一方に凸部48tを設けてもよい。
【0109】
また、図16に示す第9実施形態のように、レンズ支持部48の上下の枠部48u、48bのうちいずれか一方の外側中央部に、Y方向と平行に外方へ突出するように凸部48sを設けてもよい。そして、凸部48sの先端をベース30の隔壁30wに設けた凹部30v内に嵌入させて、凹部30v内に充填した接着剤19を硬化させることにより、レンズ支持部48を隔壁30wに固定してもよい。
【0110】
また、上記図14図16に示した第7~第9実施形態では、レンズ支持部48の可撓性を有する各枠部48u、48b、48L、48rと開口部48kにより、受光レンズ16、ベース30、および/またはレンズ支持部48の熱膨張収縮差による応力を吸収した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、図17に示す第10実施形態のように、レンズ支持部48の各枠部48u、48b、48L、48rの内側に、板ばね状の応力吸収部48fを一体的に設けてもよい。そして、受光レンズ16を長手径方向Xの両側と短手径方向Yの両側から各応力吸収部48fで支持し、受光レンズ16、ベース30、および/またはレンズ支持部48の熱膨張収縮差により受光レンズ16の径方向X、Yや光軸方向Zにかかる応力を各応力吸収部48fで吸収してもよい。また、他の例として、枠部48u、48b、48L、48rのうち、一部の内側に応力吸収部48fを一体的に設けてもよい。
【0111】
また、図5A図13に示した第1~第6実施形態では、受光レンズ16の長手径方向Xの両側に、レンズ支持部18、16d、28、38を設けた例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、受光レンズ16の短手径方向Yの両側に、梁状のレンズ支持部を設けてもよい。
【0112】
また、図18に示す第11実施形態のように、ベース30の隔壁30wと対向する受光レンズ16の端部に梁状のレンズ支持部58を複数設け、各レンズ支持部58の先端部58bを隔壁30wに対して接着剤19により固定してもよい。この場合、各レンズ支持部58の中間部分に受光レンズ16やベース30より高い可撓性を有する応力吸収部58cを設ければよい。
【0113】
また、図8および図9に示した第3実施形態では、レンズ支持部16d全体を受光レンズ16と同一の透光性を有する材料で形成して、光を接着剤19まで導く導光部とした例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、受光レンズ16と異なる透光性を有する材料でレンズ支持部を形成してもよい。また、レンズ支持部の先端部だけを、透光性を有する材料で形成したり、光源50と対向するレンズ支持部の光の入射部分から、接着剤19と接する光の出射部分までの範囲を、透光性を有する材料で形成したりしてもよい。また、レンズ支持部の光の入射部分と出射部分のうち、少なくとも一方に光散乱部を設けたり、両方に光散乱部を設けたり、光散乱部を省略したりしてもよい。
【0114】
また、図5A図11図13図16、および図18に示した実施形態では、ベース30に形成した凹部30vに、レンズ支持部の一部を嵌入させるとともに、接着剤19、19aを充填して、レンズ支持部をベース30に固定した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、レンズ支持部に凹状の係合部を設け、ベースに凸状の係合部を設けて、これらの係合部を互いに係合させて接着剤で接着することにより、レンズ支持部をベースに固定してもよい。この場合、各係合部の係合状態を直交3軸方向に調整することにより、受光レンズをベースに対して位置調整すればよい。また、レンズ支持部をベースに固定するために、光硬化型の接着剤以外の接着剤を1種類または複数種類用いてもよい。
【0115】
また、以上の実施形態では、正面視が矩形状の受光レンズ16を備えたレンズユニット40に本発明を適用した例を示したが、たとえば正面視が円形状または楕円形状のような、その他の形状のレンズを備えたレンズユニットに対しても本発明は適用することが可能である。また、受光レンズに限らず、投光レンズを位置調整してベースに取り付ける場合にも、本発明は適用することが可能である。
【0116】
また、以上の実施形態では、測定光と反射光の両方を走査する光走査部4を備えた対象物検出装置100に本発明を適用した例を示したが、たとえば測定光と反射光のうちいずれか一方を走査する光走査部を備えた対象物検出装置にも本発明を適用することは可能である。また、光走査部を備えない対象物検出装置にも本発明を適用することは可能である。
【0117】
さらに、以上の実施形態では、車載用のレンズユニット40や対象物検出装置100に本発明を適用した例を挙げたが、その他の用途のレンズユニットや対象物検出装置に対しても、本発明を適用することは可能である。
【符号の説明】
【0118】
2 LDモジュール(投光部)
4 光走査部
7 PDモジュール(受光部)
16 受光レンズ(レンズ)
16d レンズ支持部(導光部)
16e 先端部
16f、16g 光散乱部
16h 応力吸収部
18、28、38、48、58 レンズ支持部
18b、28b、38b、58b 先端部
18c、28c、38c、58c 応力吸収部
19 光硬化型の接着剤
29 非光硬化型の接着剤
30 ベース
30v 凹部
40 レンズユニット
48b、48L、48r、48u 枠部(応力吸収部)
48f 応力吸収部
48k 開口部
100 対象物検出装置
X 受光レンズの長手径方向
Y 受光レンズの短手径方向
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18