(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】物体検知センサおよび物体検知システム
(51)【国際特許分類】
G01D 5/24 20060101AFI20220621BHJP
G01V 3/02 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
G01D5/24 S
G01V3/02 A
(21)【出願番号】P 2018172171
(22)【出願日】2018-09-14
【審査請求日】2021-02-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年8月30日開催の「イノベーション・ジャパン 2018」において公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】出口 幹雄
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-127619(JP,A)
【文献】再公表特許第2010/110307(JP,A1)
【文献】米国特許第5917314(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00 - 5/252
G01D 5/39 - 5/62
G01B 7/00 - 7/34
G01V 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出用線路に送出された信号の伝播遅延時間の変化から得られる信号に基づいて、前記検出用線路の周囲の実効誘電率の変化を検出して、前記検出用線路の近傍の物体の有無やその動きを含む物体の位置情報を検知する物体検知センサであって、
略同じ形状および寸法を有する金属線を含む複数の前記検出用線路と、
前記複数の検出用線路に対して前記信号を送出する送信部と、
前記複数の検出用線路からそれぞれ得られる前記信号を受信する受信部と、
前記受信部において受信された前記複数の検出用線路からの前記信号の伝播遅延時間を検出する検出部と、
前記検出部において検出された前記複数の検出用線路から受信した前記信号の前記伝播遅延時間の変化から得られる信号のバランスに基づいて、前記物体の前記位置情報を推定する位置情報推定部と、
を備えている物体検知センサ。
【請求項2】
前記複数の検出用線路は、第1線路と第2線路とを有している、
請求項1に記載の物体検知センサ。
【請求項3】
前記第1線路と前記第2線路とは
、所定の距離を介して配置されている、
請求項2に記載の物体検知センサ。
【請求項4】
前記位置情報推定部は、前記第1線路と前記第2線路とから得られる前記信号のバランスから、前記第1線路と前記第2線路とを結ぶ直線に対する前記物体が存在する角度を推定する、
請求項2または3に記載の物体検知センサ。
【請求項5】
前記位置情報推定部は、前記第1線路と前記第2線路とから得られる前記信号のバランスと、前記信号の和と、を用いて、前記物体までの距離を推定する、
請求項2から4のいずれか1項に記載の物体検知センサ。
【請求項6】
前記複数の検出用線路は、第1線路、第2線路、第3線路および第4線路を有している、
請求項1に記載の物体検知センサ。
【請求項7】
前記第1線路、前記第2線路、前記第3線路および前記第4線路は、略90度間隔で回転対称に配置されている、
請求項6に記載の物体検知センサ。
【請求項8】
前記第1線路と前記第2線路とは、第1の距離を有する所定の間隔を介して対向配置されており、
前記第3線路と前記第4線路とは、前記第1の距離を有する所定の間隔を介して対向配置されている、
請求項6または7に記載の物体検知センサ。
【請求項9】
前記第1線路、前記第2線路、前記第3線路および前記第4線路は、略同じ形状、略同じ寸法を有している、
請求項6から8のいずれか1項に記載の物体検知センサ。
【請求項10】
前記位置情報推定部は、前記第1線路および前記第2線路から得られる前記信号のバランスと、前記第3線路および前記第4線路から得られる前記信号のバランスとに基づいて、前記物体の位置を推定する、
請求項6から9のいずれか1項に記載の物体検知センサ。
【請求項11】
前記複数の検出用線路は、略直線状に形成されており、互いに略平行に配置されている、
請求項1に記載の物体検知センサ。
【請求項12】
請求項11に記載の物体検知センサを含む第1系統と、
請求項11に記載の物体検知センサを含む第2系統と、
を備えた物体検知システム。
【請求項13】
前記第1系統と前記第2系統とは、略直線状に形成された前記複数の検出用線路が互いに略直交するように配置されている、
請求項12に記載の物体検知システム。
【請求項14】
前記位置情報推定部は、前記第1系統に含まれる複数の検出用線路から得られる前記信号のバランスと、前記第2系統に含まれる複数の検出用線路から得られる前記信号のバランスとに基づいて、前記物体の位置を推定する、
請求項12または13に記載の物体検知システム。
【請求項15】
請求項11に記載の物体検知センサを含む第3系統を、さらに備えている、
請求項12に記載の物体検知システム。
【請求項16】
前記第1系統、前記第2系統および前記第3系統は、略直線状に形成された前記複数の検出用線路が互いに略120度の角度で交差するように配置されている、
請求項15に記載の物体検知システム。
【請求項17】
前記第3系統は、略直線状に形成された前記複数の検出用線路が互いに略直交するように配置された前記第1系統および前記第2系統に対して、略直線状に形成された前記複数の検出用線路がそれぞれ略45度の角度で交差するように配置されている、
請求項15に記載の物体検知システム。
【請求項18】
前記位置情報推定部は、前記第1系統に含まれる複数の検出用線路から得られる前記信号のバランスと、前記第2系統に含まれる複数の検出用線路から得られる前記信号のバランスと、前記第3系統に含まれる複数の検出用線路から得られる前記信号のバランスとに基づいて、前記物体の位置を推定する、
請求項15から17のいずれか1項に記載の物体検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で物体の位置情報(存在およびその位置)を検知する物体検知センサおよび物体検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種工業プロセスにおいて、物体の存在(有無)や位置情報を取得することは、対象物を認識して処理するために必要不可欠な機能であって、一般的に、このような機能は、各種のセンサ類を用いて実現される。
特に、非接触で物体を検知することが要求される場合も多く、光・磁気・超音波等を利用したセンサ類が用いられている。検知できる距離や検知対象物の条件、位置分解能等の性能パラメータや装置価格については、それぞれのセンサでまちまちである。よって、必要とされる機能を実現するための機能を有するセンサが適切に選択されて使用される。
【0003】
いずれにしても、これらの既存のセンシング技術においては、物体を検知ための特定機能を有するセンサデバイスや高度な電子回路技術が必要であり、要求される性能が高いほど、構成が複雑化してコスト高を招来する。
例えば、比較的長距離で金属等の物体を検知することができる近接センサとして、次のような製品が市販されている。
【0004】
オムロン社 長距離タイプ近接センサ TL-L
http://www.fa.omron.co.jp/products/family/479/lineup.html
キーエンス社 近接センサ
https://www.keyence.co.jp/products/sensor/proximity/
これらのセンサは、高周波の磁界によって物体に生じる渦電流による磁界の変化を検出する原理を用いており、数mmから数cm程度の距離で、物体を検知することができる。しかし、対象物は金属等の良導電体に限られ、単に対象物の近接を検知できるのみで、3次元的な位置情報を単独で得ることはできない。
【0005】
3次元的な位置情報を得ることができるセンサとして、TOFカメラ(TOF: Time Of Flight)と呼ばれるものが近年普及しつつある。
TOFカメラとしては、例えば、以下のような製品が市販されている。
Panasonic社
https://panasonic.co.jp/es/pespl/products/new/tofcamera.html
Basler社
https://ttps://www.baslerweb.com/jp/products/cameras/3d-cameras/time-of-flight-camera/tof640-20gm_850nm/
これらのセンサは、いずれも、測定の原理上、高周波で変調された強い光源とイメージセンサや高度な技術を駆使した電子回路とが用いられるため、上記近接センサと比較して、構成が複雑化してコストが上昇してしまう。
【0006】
また、例えば、特許文献1には、磁界を利用して金属体の有無または位置を検知する近接センサについて開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の物体検知センサでは、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記既存の物体検知センサでは、性能対コスト比の点においては限界があり、比較的長距離で、金属以外の物体でも検知可能な構成とするためには、必然的に、構成が複雑化してコストアップを招来する。
【0009】
本発明の課題は、簡易な構成により、物体の位置情報を取得することが可能な物体検知センサおよび物体検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明に係る物体検知センサは、検出用線路に送出された信号の伝播遅延時間の変化から得られる信号に基づいて、検出用線路の周囲の実効誘電率の変化を検出して、検出用線路の近傍の物体の有無やその動きを含む物体の位置情報を検知する物体検知センサであって、複数の検出用線路と、送信部と、受信部と、検出部と、位置情報推定部とを備えている。送信部は、複数の検出用線路に対して信号を送出する。受信部は、複数の検出用線路からそれぞれ得られる信号を受信する。検出部は、受信部において受信された複数の検出用線路からの信号の伝播遅延時間を検出する。位置情報推定部は、検出部において検出された複数の検出用線路から受信した信号の伝播遅延時間の変化から得られる信号のバランスに基づいて、物体の位置情報を推定する。
【0011】
ここでは、検出用線路の近傍に物体が存在すると検出用線路の周囲の実効誘電率が変化することで複数の検出用線路に送出された信号の伝播遅延時間が変化することを利用して、各検出用線路における伝播遅延時間を検出する。そして、複数の検出用線路において検出された伝播遅延時間の変化から得られる信号のバランスに基づいて、物体の位置情報を推定する。
【0012】
ここで、検出用線路は、電気信号が入力される入力部と、信号を出力する出力部とを有する電線状の部材であって、例えば、蛇行(パルス)形状や直線状の形状等を有している。
また、上記位置情報推定部において推定される物体の位置情報には、検出用線路から見た物体の角度、物体までの距離だけでなく、物体の有無等も含まれる。
【0013】
ここで、一般的に、電気信号が電線を伝播する速度は、電線の周囲の空間の誘電率に依存する。誘電率は、必ずしも空間において一様ではなく、電気信号が作る電界の強さも電線からの距離に依存するため、実質的にはこれらを全空間にわたって重み付け平均した量(実効誘電率)によって伝播速度が決まる。空気の誘電率は、ほぼ真空の誘電率と同じと考えてよいが、一般に、物質の誘電率は、空気の誘電率よりも大きく、真空の誘電率との比(比誘電率)は、例えば、プラスチック系の材料で2~4程度で、多くの材料は1桁台の値を示す。一方、水やアルコールのように有極性分子を含む物質の誘電率は、数10以上の大きな値を示す。
【0014】
また、金属のように良導電性の材料は、等価的に比誘電率が無限大と見なすことができる。したがって、電線の近傍に物体が存在すると、物体が存在しない場合と比べて、電線の周囲の空間の実効誘電率が大きくなる。これにより、電線を伝わる電気信号の伝播遅延時間が大きくなる。
本発明の物体検知センサでは、このような電気信号が入出力される電線を検出用線路として用いるとともに、複数の検出用線路に対して信号を送出して信号が線路を伝播帰還するまでの時間差(伝播遅延時間)を測定して、その伝播遅延時間の変化から得られる信号のバランスを検出する。
【0015】
これにより、複数の検出用線路における伝播遅延時間の変化を示す信号のバランスによって、複数の検出用線路の近傍への物体が近接しているか否か、あるいは、複数の検出用線路のうちのどの検出用線路に最も物体が近い位置にあるか等を検出することで、その物体の位置・方向等の位置情報を推定することができる。
また、物体の材質と寸法形状等が既知であれば、例えば、2つの検出用線路を用いた場合でも、検出用線路から物体までの距離を推定することができる。
【0016】
第2の発明に係る物体検知センサは、第1の発明に係る物体検知センサであって、複数の検出用線路は、第1線路と第2線路とを有している。
ここでは、2つの検出用線路(第1線路および第2線路)を用いて物体検知センサを構成する。
これにより、2つの検出用線路(第1線路および第2線路)に対してそれぞれ入力された信号の伝播遅延時間の変化を示す信号のバランスに基づいて、第1線路および第2線路から物体までの距離、方向等の位置情報を推定することができる。
【0017】
第3の発明に係る物体検知センサは、第2の発明に係る物体検知センサであって、第1線路と第2線路とは、略同じ形状、略同じ寸法を有しており、所定の距離を介して配置されている。
ここでは、略同じ形状、寸法を有する第1線路および第2線路が、所定の距離を介して配置されている。
【0018】
これにより、第1線路と第2線路とが、略同じ形状、略同じ寸法を有しているため、第1線路と第2線路から略同じ距離に物体が存在する場合には、両線路における伝播遅延時間は略同程度となる。
よって、第1線路および第2線路における伝播遅延時間の変化を示す信号のバランスから、物体の位置情報を推定しやすくすることができる。
【0019】
第4の発明に係る物体検知センサは、第2または第3の発明に係る物体検知センサであって、位置情報推定部は、第1線路と第2線路とから得られる信号のバランスから、第1線路と第2線路とを結ぶ直線に対する物体が存在する角度を推定する。
ここでは、第1線路と第2線路とにおいてそれぞれ得られる伝播遅延時間を示す信号のバランスから、第1線路および第2線路に対する物体が存在する角度(方向)を推定する。
【0020】
これにより、第1線路および第2線路の近傍に物体が存在しているか否かを推定することができるとともに、例えば、物体の材質や大きさ、形状等が既知である場合には、その物体までの距離を推定することができる。
【0021】
第5の発明に係る物体検知センサは、第2から第4の発明のいずれか1つに係る物体検知センサであって、位置情報推定部は、第1線路と第2線路とから得られる信号のバランスと、信号の和と、を用いて、物体までの距離を推定する。
ここでは、第1線路と第2線路とから得られる信号のバランスに基づいて物体が存在する方向を推定するとともに、その信号(電圧値等)の和に基づいて物体までの距離を推定する。
これにより、第1線路と第2線路とを用いた簡素な構成により、近傍に存在する物体の方向と距離を推定することができる。
【0022】
第6の発明に係る物体検知センサは、第1の発明に係る物体検知センサであって、複数の検出用線路は、第1線路、第2線路、第3線路および第4線路を有している。
ここでは、4つの検出用線路(第1線路~第4線路)を用いて物体検知センサを構成する。
これにより、4つの検出用線路(第1線路~第4線路)に対してそれぞれ入力された信号の伝播遅延時間の変化を示す信号のうち、例えば、第1線路と第2線路とにおける信号のバランスと、第3線路と第4線路とにおける信号のバランスとに基づいて、第1線路~第4線路から物体までの距離、方向等の位置情報を推定することができる。
【0023】
第7の発明に係る物体検知センサは、第6の発明に係る物体検知センサであって、第1線路、第2線路、第3線路および第4線路は、略90度間隔で回転対称に配置されている。
ここでは、上述した4つの検出用線路(第1~第4線路)が、それらの中央に配置された軸を中心として、略90度間隔で回転対称に配置されている。
これにより、例えば、第1線路と第2線路とを対向する位置に配置させ、第3線路と第4線路とを対向する位置に配置させて、第1線路と第2線路とにおける信号バランスと、第3線路と第4線路とにおける信号バランスとを用いて、物体の存在の有無、位置情報等を推定することができる。
【0024】
第8の発明に係る物体検知センサは、第6または第7の発明に係る物体検知センサであって、第1線路と第2線路とは、第1の距離を有する所定の間隔を介して対向配置されており、第3線路と第4線路とは、第1の距離を有する所定の間隔を介して対向配置されている。
ここでは、対向配置された第1線路と第2線路との間の距離と、対向配置された第3線路と第4線路との間の距離とが、同一の距離(第1の距離)になるように、4つの検出用線路(第1~第4線路)が配置されている。
【0025】
これにより、第1線路と第2線路とを結ぶ直線と、第3線路と第4線路とを結ぶ直線との交点を中心として、4つの検出用線路(第1線路~第2線路)を回転対称に配置することができる。
よって、第1線路と第2線路とにおける信号バランスと、第3線路と第4線路とにおける信号バランスとを用いて、物体の存在の有無、位置情報等を容易に推定することができる。
【0026】
第9の発明に係る物体検知センサは、第6から第8の発明のいずれか1つに係る物体検知センサであって、第1線路、第2線路、第3線路および第4線路は、略同じ形状、略同じ寸法を有している。
ここでは、4つの検出用線路(第1線路~第4線路)が、略同じ形状、寸法を有している。
【0027】
これにより、第1線路と第2線路とが、略同じ形状、略同じ寸法を有しているため、第1線路と第2線路から略同じ距離に物体が存在する場合には、両線路における伝播遅延時間は略同程度となる。同様に、第3線路と第4線路とが、略同じ形状、略同じ寸法を有しているため、第3線路と第4線路から略同じ距離に物体が存在する場合には、両線路における伝播遅延時間は略同程度となる。
【0028】
よって、第1線路および第2線路における伝播遅延時間の変化を示す信号のバランスと、第3線路および第4線路における伝播遅延時間の変化を示す信号のバランスとに基づいて、物体の位置情報を推定しやすくすることができる。
【0029】
第10の発明に係る物体検知センサは、第6から第9の発明のいずれか1つに係る物体検知センサであって、位置情報推定部は、第1線路および第2線路から得られる信号のバランスと、第3線路および第4線路から得られる信号のバランスとに基づいて、物体の位置を推定する。
【0030】
ここでは、第1線路と第2線路とから得られる信号のバランスと、第3線路と第4線路とから得られる信号のバランスとに基づいて物体の方向、物体までの距離を推定する。
これにより、第1線路と第2線路、第3線路と第4線路とをそれぞれ一組とする簡素な構成により、近傍に存在する物体の方向と距離を推定することができる。
【0031】
第11の発明に係る物体検知センサは、第16の発明に係る物体検知センサであって、複数の検出用線路は、略直線状に形成されており、互いに略平行に配置されている。
ここでは、略直線状に形成された複数の検出用線路を、互いに略平行になるように配置している。
これにより、互いに略平行に配置された複数の検出用線路における信号バランスの変化を検出することで、複数の検出用線路に直交する方向における物体の位置を推定することができる。
【0032】
第12の発明に係る物体検知システムは、第11の発明のいずれか1つに係る物体検知センサを含む第1系統と、第11の発明のいずれか1つに係る物体検知センサを含む第2系統と、を備えている。
ここでは、直線状に形成され互いに略平行に配置された複数の検出用線路を含む2つの系統(第1系統および第2系統)を備えた物体検知システムを構成する。
【0033】
ここで、第1系統と第2系統とにおいてそれぞれ検出される伝播遅延時間の変化を示す信号バランスは、第1系統あるいは第2系統に含まれる位置情報推定部へ集められ、物体の位置情報が推定される。
これにより、それぞれが互いに略平行に配置された複数の直線状の検出用線路を備えた2つの系統を用いて、物体の位置情報を推定することができる。
【0034】
第13の発明に係る物体検知システムは、第12の発明に係る物体検知システムであって、第1系統と第2系統とは、略直線状に形成された複数の検出用線路が互いに略直交するように配置されている。
ここでは、直線状に形成され互いに略平行に配置された複数の検出用線路を含む2つの系統(第1系統および第2系統)を、直線状の複数の検出用線路が互いに略直交するように配置している。
これにより、略直交するように重ねて配置された第1系統と第2系統とにおいてそれぞれ検出された信号バランスに基づいて、物体の位置情報を容易に推定することができる。
【0035】
第14の発明に係る物体検知システムは、第12または第13の発明に係る物体検知システムであって、位置情報推定部は、第1系統に含まれる複数の検出用線路から得られる信号のバランスと、第2系統に含まれる複数の検出用線路から得られる信号のバランスとに基づいて、物体の位置を推定する。
【0036】
ここでは、第1系統あるいは第2系統に含まれる位置情報推定部において、第1系統において得られる信号のバランスと、第2系統において得られる信号のバランスとに基づいて、物体の位置を推定する。
これにより、略直交するように重ねて配置された第1系統と第2系統とにおいてそれぞれ検出された信号バランスに基づいて、物体の位置情報を容易に推定することができる。
【0037】
第15の発明に係る物体検知システムは、第12の発明に係る物体検知システムであって、第11の発明に係る物体検知センサを含む第3系統を、さらに備えている。
ここでは、直線状に形成され互いに略平行に配置された複数の検出用線路を含む2つの系統(第1系統および第2系統)に加えて、さらに3つ目の系統(第3系統)を備えた物体検知システムを構成する。
これにより、3つの系統においてそれぞれ検出された信号バランスに基づいて、物体の位置情報を推定することができる。
【0038】
第16の発明に係る物体検知システムは、第15の発明に係る物体検知システムであって、第1系統、第2系統および第3系統は、略直線状に形成された複数の検出用線路が互いに略120度の角度で交差するように配置されている。
【0039】
ここでは、上述した3つの系統(第1~第3系統)を、それぞれの略直線状の複数の検出用線路が互いに略120度の角度で交差するように配置されている。
これにより、略120度の角度で交差するように重ねて配置された3つの系統(第1系統~第3系統)においてそれぞれ検出された信号バランスに基づいて、物体の位置情報を容易に推定することができる。
【0040】
第17の発明に係る物体検知システムは、第15の発明に係る物体検知システムであって、第3系統は、略直線状に形成された複数の検出用線路が互いに略直交するように配置された第1系統および第2系統に対して、略直線状に形成された複数の検出用線路がそれぞれ略45度の角度で交差するように配置されている。
【0041】
ここでは、直線状に形成され互いに略平行に配置された複数の検出用線路を含む2つの系統(第1系統および第2系統)に対して、直線状に形成された複数の検出用線路がそれぞれ略45度の角度で交差するように3つ目の系統(第3系統)を配置している。
これにより、例えば、第1系統~第3系統の近傍に複数の物体が存在する場合でも、3つの系統それぞれにおいて検出された信号バランスに基づいて、それぞれの物体の位置情報を推定することができる。
【0042】
第18の発明に係る物体検知システムは、第15から第17の発明のいずれか1つに係る物体検知システムであって、位置情報推定部は、第1系統に含まれる複数の検出用線路から得られる信号のバランスと、第2系統に含まれる複数の検出用線路から得られる信号のバランスと、第3系統に含まれる複数の検出用線路から得られる信号のバランスとに基づいて、物体の位置を推定する。
【0043】
ここでは、3つの系統(第1系統~第3系統)において得られる伝播遅延時間の変化を示す信号バランスを用いて、物体の位置情報を推定する。
これにより、3つの系統においてそれぞれ検出された信号バランスに基づいて、物体の位置情報を容易に推定することができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明に係る物体検知センサによれば、簡易な構成により、物体の位置情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の一実施形態に係る物体検知センサの構成を示す制御ブロック図。
【
図2】
図1の物体検知センサに含まれる検出用線路と検出対象である物体との位置関係を示す模式図。
【
図3】
図1の物体検知センサを用いた物体位置情報の検出原理を示す説明図。
【
図4】
図3の真鍮丸棒が各チャンネルの線路の正面にある場合の距離と出力電圧との関係を示すグラフ。
【
図5】
図3のXおよびYを変化させて、それぞれのチャンネルの出力電圧の変化を調べた結果を示すグラフ。
【
図6】
図3の2つのチャンネルの線路の間隔と各線路から物体までの距離との関係を示す図。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る物体検知センサを含む物体検知システムの構成を示す図。
【
図8】本発明のさらに他の実施形態に係る物体検知センサを含む物体検知システムの構成を示す図。
【
図9】本発明のさらに他の実施形態に係る物体検知センサを含む物体検知システムの構成を示す図。
【
図10】本発明のさらに他の実施形態に係る物体検知センサを含む物体検知システムの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
(実施形態1)
本発明の一実施形態に係る物体検知センサ1について、
図1~
図6を用いて説明すれば以下の通りである。
本実施形態に係る物体検知センサ1は、複数の検出用線路20(第1線路21および第2線路22)の近傍に存在する物体30(
図2参照)を検知するセンサであって、
図1に示すように、回路部10と、検出用線路20とを備えている。
【0047】
具体的には、本実施形態の物体検知センサ1は、複数の検出用線路(第1線路21および第2線路22)の近傍に物体が存在すると検出用線路(第1線路21および第2線路22)の周囲の実効誘電率が変化して、複数の検出用線路(第1線路21および第2線路22)に送出された信号の伝播遅延時間が変化することを利用して、各検出用線路(第1線路21および第2線路22)における伝播遅延時間を検出する。そして、物体検知センサ1は、複数の検出用線路(第1線路21および第2線路22)において検出された伝播遅延時間の変化から得られる信号のバランスに基づいて、物体30(
図2参照)の位置情報を推定する。
【0048】
回路部10は、
図1に示すように、第1パルス発生部11a、第1送信部12a、第1受信部13a、第1検出部14a、第2パルス発生部11b、第2送信部12b、第2受信部13b、第2検出部14b、位置情報推定部15を備えている。
第1パルス発生部11aは、第1線路21に対して送出されるパルス信号を発生させる。
【0049】
第1送信部12aは、第1線路21および第1検出部14aに対して、第1パルス発生部11aにおいて発生させたパルス信号を送出する。
第1受信部13aは、第1送信部12aから第1線路21に対して送出されたパルス信号と、第1線路21を伝播したパルス信号とを受信する。
第1検出部14aは、第1送信部12aから送出されたパルス信号と第1受信部13aにおいて受信したパルス信号とを比較して、パルス信号の伝播遅延時間を検出する。
【0050】
第2パルス発生部11bは、第2線路22に対して送出されるパルス信号を発生させる。
第2送信部12bは、第2線路22および第2検出部14bに対して、第2パルス発生部11bにおいて発生させたパルス信号を送出する。
第2受信部13bは、第2送信部12bから第2線路22に対して送出されたパルス信号と、第2線路22を伝播したパルス信号とを受信する。
【0051】
第2検出部14bは、第2送信部12bから送出されたパルス信号と第2受信部13bにおいて受信したパルス信号とを比較して、パルス信号の伝播遅延時間を検出する。
位置情報推定部15は、第1検出部14aおよび第2検出部14bにおいてそれぞれ検出されたパルス信号の伝播遅延時間を受信し、第1線路21と第2線路22とにおける伝播遅延時間の変化のバランスに基づいて、第1線路21および第2線路22に対する物体30(
図2参照)の位置情報を推定する。
【0052】
ここで、位置情報推定部15において推定される物体30の位置情報としては、第1線路21および第2線路22に対する相対的な位置に限らず、第1線路21および第2線路22の近傍に物体30が存在するか否かを示す位置情報も含まれる。
なお、第1線路21および第2線路22の近傍における物体30の位置情報を推定する原理については、後段にて詳述する。
【0053】
検出用線路20は、物体30(
図2参照)が近傍に存在すると周囲の実効誘電率が変化して複数の線路(第1線路21および第2線路22)に送出された信号の伝播遅延時間が変化することを利用して、各線路(第1線路21および第2線路22)における伝播遅延時間を検出するために所定の位置に設置されており、
図1に示すように、第1線路21および第2線路22を備えている。
【0054】
第1線路21および第2線路22は、
図2に示すように、略同じ形状、略同じ寸法の蛇行形状(パルス形状)を有する金属線をシート状に敷設して構成されている。そして、第1線路21および第2線路22は、2枚の絶縁性フィルムの間に、金属線を挟みこむように構成されている。これにより、他の導体との接触によって、ノイズが発生することを防止することができる。
【0055】
なお、第1線路21および第2線路22としては、絶縁性フィルムの代わりに、布状または網目状のシートによって、絶縁被覆された金属線を挟み込むように構成されたものを用いてもよい。
第1線路21は、第1送信部12aからパルス信号が入力される入力部と、第1受信部13aへパルス信号を出力する出力部とを有している。
【0056】
第2線路22は、第2送信部12bからパルス信号が入力される入力部と、第2受信部13bへパルス信号を出力する出力部とを有している。
本実施形態の物体検知センサ1は、
図1に示すように、第1線路21に対してパルス信号を送出し、第1線路21において伝播したパルス信号を受信し、伝播遅延時間を検出するとともに、第2線路22に対してパルス信号を送出し、第2線路22において伝播したパルス信号を受信し、伝播遅延時間を検出する。そして、第1線路21および第2線路22における伝播遅延時間の変化を示す信号を比較して、そのバランスに基づいて、第1線路21および第2線路22の近傍に物体30があるか否か、あるいは物体30の方向(角度)および物体30までの距離等、物体30の位置情報を推定する。
【0057】
ここで、検知対象である物体30とそれぞれの検出用線路(第1線路21および第2線路22)との間の距離は、物体30の位置によって変化する。このため、それぞれの検出用線路(第1線路21および第2線路22)から得られるパルス信号の伝播遅延時間の変化を示す信号を比較し、そのバランスに基づいて、2つの検出用線路(第1線路21および第2線路22)を結ぶ直線に対する物体30が存在する方向(角度)を推定することができる。
【0058】
これにより、複数の検出用線路(第1線路21および第2線路22)における伝播遅延時間の変化を示す信号のバランスによって、第1線路21および第2線路22の近傍への物体30が近接しているか否か、物体30の方向(角度)、あるいは、第1線路21および第2線路22のうちのどちらに近い位置に物体30があるか等を推定することができる。
【0059】
この結果、物体30が近づくと第1線路21および第2線路22の周囲の実効誘電率が変化することを利用することで、金属線等からなる第1線路21および第2線路22等の簡素な構成を用いて、物体30の位置・方向等の位置情報を推定することができる。
また、本実施形態の物体検知センサ1では、
図2に示すように、ほぼ同じ形状・ほぼ同じ寸法を有する検出用線路(第1線路21および第2線路22)が、一定の距離を介して所定の位置に配置されている。
【0060】
これにより、物体30が第1線路21および第2線路22から等距離にある場合には、第1線路21および第2線路22において伝播したパルス信号後の遅延時間は、第1受信部13aおよび第2受信部13bにおいて略同じになる。よって、物体30が第1線路21および第2線路22のいずれか一方に近づいた場合には、第1線路21および第2線路22における伝播遅延時間に差が生じるため、容易に、第1線路21および第2線路22を結ぶ直線に対する物体30が存在する方向(角度)を推定することができる。
【0061】
さらに、本実施形態の物体検知センサ1では、2つの検出用線路(第1線路21および第2線路22)から得られる信号の和に基づいて、物体30までの距離を推定する。
すなわち、第1線路21および第2線路22に対して、物体30が接近すると、第1線路21および第2線路22の周囲の実効誘電率の変化が大きくなる。その結果、第1線路21および第2線路22におけるパルス信号の伝播遅延時間は、第1線路21および第2線路22の周囲の実効誘電率の変化によって大きくなる。
【0062】
これにより、物体30が、第1線路21および第2線路22に対して近い位置にある場合には、第1線路21および第2線路22の周囲の実効誘電率が大きく変化してパルス信号の伝播遅延時間が大きく変化したことを示す信号の和を用いることで、第1線路21および第2線路22から物体30までの距離を推定することができる。
なお、第1線路21および第2線路22から物体30までに距離の推定については、伝播遅延時間を示す信号の和を用いる代わりに、予め認識されている物体30の材質、大きさ等に基づいて行われてもよい。
【0063】
<物体位置情報の検出原理について>
本実施形態の物体検知センサ1による物体30の位置情報を推定する原理について、
図3~
図6を用いて説明すれば以下の通りである。
ここでは、
図3に示すように、被覆外径約1mmの導線2本からなる平行導線(長さ160mm)を一端で短絡して折り返し、検出用線路として用いる。そして、同じものを2本(第1線路21および第2線路22)、40mmの間隔を空けて互いに平行に配置し、一方をA-ch(第1線路21)、他方をB-ch(第2線路22)とする。
【0064】
そして、物体30として、直径30mm、長さ50mmの円柱状の真鍮丸棒を用いるものとする。
図3に示すように、この真鍮丸棒(物体30)を、A-ch(第1線路21)およびB-ch(第2線路22)に近づけて、各線路21,22におけるパルス信号の伝播遅延時間の変化から得られる信号を測定した。
【0065】
真鍮丸棒の位置は、
図3に示すように、A-ch(第1線路21)とB-ch(第2線路22)とを結ぶ直線の中間点から、直線方向に沿って距離X、および直線からの高さYで表すものとする。
真鍮丸棒(物体30)が各チャンネル(第1線路21および第2線路22)の正面(第1線路21と第2線路22とを結ぶ直線の中間点上)にある場合の高さYと、各チャンネル(第1線路21および第2線路22)からの出力電圧との関係は、
図4に示すグラフによって表される。
【0066】
このグラフで示されているように、各チャンネル(第1線路21および第2線路22)からの出力電圧は、高さYに対しておおよそ反比例の関係にあることが分かる。よって、出力電圧と真鍮丸棒(物体30)までの距離rとの関係は、
s=k/r
と近似的に表すことができる。ここで、kは、定数である。
【0067】
次に、XおよびYを変化させて、それぞれのチャンネル(第1線路21および第2線路22)の出力電圧の変化を調べた結果を、
図5に示す。
図5に示すグラフでは、2つのチャンネル(第1線路21および第2線路22)からの出力電圧は、2つの線路(第1線路21および第2線路22)の中間点(X=0)の位置を中心として、ほぼ左右対称の形となっている。そして、それぞれのチャンネルの出力電圧は、真鍮丸棒(物体30)がそれぞれのチャンネル(第1線路21および第2線路22)の正面にある場合(A-chはX=-2cm、B-chはX=2cm)に最大となり正面から外れるにつれて小さくなること、距離が遠いほど出力電圧が小さくなることが分かる。
【0068】
したがって、2つチャンネル(第1線路21および第2線路22)の出力信号の大きさとバランスとに基づいて、真鍮丸棒(物体30)までの距離と方向(角度)に関する位置情報を推定することができることが分かる。
ここで、
図6に示すように、2つのチャンネル(第1線路21および第2線路22)の間隔をd、各チャンネル(第1線路21および第2線路22)から物体30までの距離をr
1およびr
2とすると、これらの関係は、
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【数4】
となる。
それぞれの線路の出力を、S
1およびS
2とすれば、S
1およびS
2は、以下の数式によって表される。
【0073】
【0074】
【0075】
【数7】
となり、kおよびdは既知であるから、S
1およびS
2からrを求めることができる。
また、これらは、以下の数式によって表すことができるため、既に求めたrを元に、各チャンネル(第1線路21および第2線路22)に対する物体30の角度θを取得することができる。
【0076】
【数8】
本実施形態の物体検知センサ1では、以上のように、物体検知を実現するための電子回路(回路部10、第1・第2線路21,22等)は、標準的な半導体デバイスのみの組み合わせによって構成される。
これにより、簡素な構成、かつ極めて低コストで、3次元物体検知の機能を実現することができる。
【0077】
(実施形態2)
本発明の他の実施形態に係る物体検知センサ101について、
図7を用いて説明すれば以下の通りである。
本実施形態の物体検知センサ101は、
図7に示すように、略同じ形状・略同じ寸法を有する4つの検出用線路(第1線路121、第2線路122、第3線路123、および第4線路124)が、円板の中心から等距離の周方向に沿って略90度間隔で回転対称に配置されている。また、物体検知センサ101では、それぞれの検出用線路(第1線路121、第2線路122、第3線路123、および第4線路124)から、パルス信号の伝播遅延時間の変化を測定する。
【0078】
そして、4つの検出用線路(第1線路121~第4線路124)から得られた信号の総和から、物体30の有無と各検出用線路の中心からの距離に関する位置情報を推定する。
より具体的には、互いに対向する位置に配置された第1線路121と第2線路122における伝播遅延時間を示す信号の大きさの差から、第1線路121と第2線路122とを結ぶ面内において物体30がどの方向(角度)に存在するかの位置情報を推定する。
【0079】
同様に、互いに対向する位置に配置された第3線路123と第4線路124における伝播遅延時間を示す信号の大きさの差から、第3線路123と第4線路124とを結ぶ面内における方向(角度)に関する位置情報を推定する。
これにより、これらの方向(角度)に関する位置情報を総合することにより、物体30の3次元的な配置を容易に推定することができる。
【0080】
ここで、第1線路121から第2線路122に向かう向きをX軸、第3線路123から第4線路124に向かう向きをY軸、線路を含む面に対して垂直上向きをZ軸とすると、第1線路121から出力される信号と第2線路122から出力される信号とのバランスから、Y軸を含む面に対する物体30が存在する方向(角度)を推定することができる。この推定される角度をθとすると、この面は、
【0081】
【数9】
という数式によって示される。
同様に、第3線路123から出力される信号と第4線路124から出力される信号のバランスに基づいて、X軸を含む面に対する物体30が存在する方向(角度)を推定することができ、この角度をΦとすれば、この面は、
【0082】
【数10】
と数式によって示される。
この結果、この2つの面の交線は、
【0083】
【数11】
であり、物体30は、この直線上に存在することを推定することができる。
つまり、それぞれの検出用線路(第1線路121~第4線路124)から出力される信号のバランスに基づいて、第1線路121~第4線路124が配置された周方向の中心点から物体30までの距離を推定することができる。
よって、4つの検出用線路(第1線路121~第4線路124)を用いて物体検知センサ101を構成することで、物体30の3次元的な位置を容易に推定することができる。
【0084】
(実施形態3)
本発明のさらに他の実施形態に係る物体検知センサ(第1系統)201a~物体検知センサ(第3系統)201cを含む物体検知システム250について、
図8を用いて説明すれば以下の通りである。
【0085】
なお、
図8に示すシステム構成では、説明の便宜上、直線状に形成された複数の線路A1~A8を含む物体検知センサ(第1系統)201a、直線状に形成された複数の線路B1~B8を含む物体検知センサ(第2系統)201b、直線状に形成された複数の線路C1~C8を含む物体検知センサ(第3系統)201cのうち、線路部分のみを示している。しかし、実際の構成では、複数の線路A1~A8等は、それぞれ入力部と出力部とを有しており、
図1に示すように、各線路A1~A8に対してパルス信号を出力し、伝播したパルス信号を受信して伝播遅延時間を検出し、位置情報を推定する構成を有しているものとする。他の線路B1~B8,C1~C8についても同様である。
【0086】
本実施形態の物体検知システム250は、
図8に示すように、直線状に形成された複数の線路A1~A8を有する物体検知センサ201a、線路B1~B8を有する物体検知センサ201b、線路C1~C8を有する物体検知センサ201cを備えている。
物体検知センサ201aでは、直線状に形成された複数の線路A1~A8が互いに等間隔、かつ略平行に配置されている。
【0087】
物体検知センサ201bでは、直線状に形成された複数の線路B1~B8が互いに等間隔、かつ略平行に配置されている。
物体検知センサ201cでは、直線状に形成された複数の線路C1~C8が互いに等間隔、かつ略平行に配置されている。
そして、物体検知センサ201a~201cは、
図8に示すように、線路A1~A8、線路B1~B8、および線路C1~C8が互いに120度の角度で互いに交差するように配置されている。
【0088】
これにより、各物体検知センサ201a~201cに含まれるそれぞれの線路A1~A8、線路B1~B8、線路C1~C8の出力として得られる信号の大きさの分布から、物体30が、どの線路A1~A8,B1~B8、C1~C8に最も近い位置に存在しているのかを容易に推定することができる。
この結果、3つの系統(物体検知センサ201a~201c)から得られる信号バランスを総合的に用いることで、各系統を含む面に物体30から下した垂線の足の座標を推定することができる。さらに、各信号の絶対値の大きさに基づいて、各線路A1~A8,B1~B8,C1~C8から物体30までの距離を推定することができる。
【0089】
なお、
図8の例では、検出用線路群A,B,Cは、いずれも8本の線路A1~A8,B1~B8,C1~C8によって構成されており、これらをAi、Bj、Ck(i,j,k=1~8)とする。
本実施形態の物体検知システム250では、それぞれの物体検知センサ201a~201cに含まれる8本の線路A1~A8,B1~B8,C1~C8が、互いに約120度の角度で交差するように配置されている。
【0090】
このため、それぞれの線路A1~A8,B1~B8,C1~C8によって囲まれた略三角形の領域が88ヶ所形成される。これらの略三角形の領域において、物体30がその領域上に存在する場合、この領域を囲む線路Ai,Bj,Ckの出力が大きくなる。
これにより、各線路Ai,Bj,Ckから物体30までの距離、方向等の位置情報を容易に推定することができる。
【0091】
(実施形態4)
本発明のさらに他の実施形態に係る物体検知センサ301a,301bを含む物体検知システム350について、
図9および
図10を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、
図9に示すシステム構成では、説明の便宜上、直線状に形成された複数の線路A1~A8を含む物体検知センサ(第1系統)301a、直線状に形成された複数の線路B1~B8を含む物体検知センサ(第2系統)301bのうち、線路部分のみを示している。しかし、実際の構成では、複数の線路A1~A8等は、それぞれ入力部と出力部とを有しており、
図1に示すように、各線路A1~A8に対してパルス信号を出力し、伝播したパルス信号を受信して伝播遅延時間を検出し、位置情報を推定する構成を有しているものとする。他の線路B1~B8についても同様である。
【0092】
本実施形態の物体検知システム350は、
図9に示すように、物体検知センサ(第1系統)301aと、物体検知センサ(第2系統)301bと、を備えている。
物体検知センサ301aでは、直線状に形成された複数の線路A1~A8が互いに等間隔、かつ略平行に配置されている。
物体検知センサ301bでは、直線状に形成された複数の線路B1~B8が互いに等間隔、かつ略平行に配置されている。
【0093】
そして、物体検知センサ301a,301bは、
図9に示すように、線路A1~A8、線路B1~B8が互いに略90度の角度で互いに交差するように配置されている。
これにより、各物体検知センサ301a,301bに含まれるそれぞれの線路A1~A8、線路B1~B8の出力として得られる信号の大きさの分布から、物体30が、どの線路A1~A8,B1~B8に最も近い位置に存在しているのかを容易に推定することができる。
【0094】
ここで、例えば、物体330aが1つのみの場合は、線路群(線路A1~A8または線路B1~B8)を含む面に物体330aから下した垂線の足の座標を推定することは、物体検知センサ301a,301bの2系統で実現することができる。
しかしながら、例えば、
図9に示すように、物体330a,330bが複数存在する場合は、物体330aは、線路A1~A8の中で線路A2、および線路B1~B8の中で線路B3に最も近い位置に存在している。
【0095】
このため、これらの線路A2,B3から出力される伝播遅延時間を示す信号が大きくなることにより、物体330aの位置情報を容易に推定することができる。
同様に、物体330bは、線路A1~A8の中で線路A5、および線路B1~B8の中で線路B6に最も近い位置に存在している。このため、これらの線路A5,B6から出力される伝播遅延時間を示す信号が大きくなることにより、物体330bの位置情報を容易に推定することができる。
【0096】
しかしながら、本実施形態の構成において、
図9に示すように、線路A1~A8および線路B1~B8の近傍に、複数の物体330a,330bが存在すると、線路A2および線路B6から出力される伝播遅延時間を示す信号が大きくなった場合、この2つの線路A2,B6の交点上に物体がある場合と識別することは困難である。
同様に、線路A5および線路B3から出力された信号が大きくなった場合、この2つの線路A5,B3の交点上に物体がある場合と識別することは困難である。
【0097】
すなわち、本実施形態の物体検知システム350の構成では、検知対象範囲内に複数の物体が存在する場合には、実際には、物体が無い位置にも物体があるかのように推定して、所謂ゴーストを誤検知してしまうという課題がある。
そこで、本実施形態の物体検知システム450では、
図10に示すように、2系統の線路A1~A8および線路B1~B8は、互いに略90度で交差するように縦・横に配置されており、かつ第3の線路C1~C8を、これらの線路A1~A8,B1~B8に対して略45度で交差するように配置されている。
【0098】
これにより、上述したゴーストの誤検知という課題を解決することができる。また、
図8を用いて説明した互いに略120度の角度で交差する線路配置の例と比較して、物体330a,330bの位置情報の推定を碁盤目状に区分けして実施することができる。この結果、座標データを数式的に処理する上で計算が簡単化できるというメリットもある。
【0099】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0100】
(A)
上記実施形態では、複数の検出用線路(第1・第2線路21,22)に対して、それぞれ別々の送信部(第1・第2送信部12a,12b)から信号を送出し、別々の受信部(第1・第2受信部13a,13b)において信号を受信し、別々の検出部(第1・第2検出部14a,14b)において伝播遅延時間を検出する構成を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、単一の送信部から複数の検出用線路に対して信号を送出し、単一の受信部において複数の検出用線路からの信号を受信し、単一の検出部において、それぞれの伝播遅延時間を検出してもよい。
【0101】
つまり、位置情報推定部が共通であれば、送信部、受信部および検出部は、複数の検出用線路ごとに別々に設けられていてもよいし、共通で用いられていてもよい。
なお、共通の送信部を用いた構成の場合には、送信部から各検出用線路へ送出される信号は、タイミングをずらして送出されればよい。
【0102】
(B)
上記実施形態では、蛇行形状(パルス形状)あるいは直線状の金属線によって、検出用線路を形成した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、検出用線路の形態としては、蛇行形状あるいは直線状に限定されるものではなく、他の形状であってもよい。
【0103】
(C)
上記実施形態では、物体検知センサまたは物体検知システムによって、検出用線路の近傍に存在する物体の有無、方向、距離等の位置情報を検知する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本物体検知センサは、物体検知センサの用途に応じて、物体の有無だけを検知するセンサとして用いてもよいし、物体の方向のみを検知するセンサとして用いてもよい。
【0104】
(D)
上記実施形態では、物体位置情報の検出原理説明において、物体30として真鍮丸棒を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本物体検知センサによって位置情報を検知可能な物体30としては、真鍮丸棒のような金属に限らず、樹脂、紙、液体、ゴム等の他の素材からなる物体であってもよいし、人、乗用車等の移動体等であってもよい。
【0105】
(E)
上記実施形態では、直線状に形成された8本の検出用線路を略平行に配置した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、直線状に形成された検出用線路の数は、8本に限定されるものではなく、用途や検知対象となる物体の種類等に応じて、増減させてもよい。また、直線状に形成された検出用線路の配置は、略平行に限定されるものではなく、例えば、互いに交差するように配置してもよいし、離間した位置に配置してもよい。
【0106】
(F)
上記実施形態では、
図1に示すように、第1線路21に対して送出されるパルス信号を発生させる第1パルス発生部11aと、第2線路22に対して送出されるパルス信号を発生させる第2パルス発生部11bとを別々の構成として設けた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、第1パルス発生部と第2パルス発生部とを、単一のパルス発生部として設けた構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の物体検知センサは、簡易な構成により、物体の位置情報を取得することができるという効果を奏することから、物体の近接検知センサ等に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 物体検知センサ
10 回路部
11a 第1パルス発生部
11b 第2パルス発生部
12a 第1送信部(送信部)
12b 第2送信部(送信部)
13a 第1受信部(受信部)
13b 第2受信部(受信部)
14a 第1検出部(検出部)
14b 第2検出部(検出部)
15 位置情報推定部
20 検出用線路
21 第1線路
22 第2線路
30 物体
101 物体検知センサ
121 第1線路
122 第2線路
123 第3線路
124 第4線路
201a 物体検知センサ(第1系統)
201b 物体検知センサ(第2系統)
201c 物体検知センサ(第3系統)
250 物体検知システム
301a 物体検知センサ(第1系統)
301b 物体検知センサ(第2系統)
330a,330b 物体
350 物体検知システム
401a 物体検知センサ(第1系統)
401b 物体検知センサ(第2系統)
401c 物体検知センサ(第3系統)
450 物体検知システム
A1~A8 線路(検出用線路)
B1~B8 線路(検出用線路)
C1~C8 線路(検出用線路)