(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/325 20210101AFI20220621BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20220621BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20220621BHJP
【FI】
H01M50/325
H01M10/04 Z
H01M50/103
(21)【出願番号】P 2018237510
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2021-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100190470
【氏名又は名称】谷澤 恵美
(72)【発明者】
【氏名】濱岡 賢志
(72)【発明者】
【氏名】井上 拓
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-185904(JP,A)
【文献】特開昭10-125293(JP,A)
【文献】特開2018-18674(JP,A)
【文献】特開2012-226984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/30-50/392
H01M 10/04
H01M 50/103
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極が積層された電極積層体と、前記電極積層体を取り囲むように配置され、前記電極積層体に設けられた複数の内部空間とそれぞれ連通された複数の第1連通孔を有する枠体とを有するモジュール本体と、
前記モジュール本体に取り付けられ、前記複数の第1連通孔とそれぞれ連通された複数の第2連通孔を有する圧力調整弁と、を備え、
前記圧力調整弁は、前記複数の第2連通孔が設けられた壁部を有し、
前記壁部は、
前記複数の第2連通孔の第1端が開口した外壁面と、
前記複数の第2連通孔の第2端が開口した内壁面と、
前記第1端を囲むように前記外壁面に設けられ、前記モジュール本体と接合された接合用突起と、を含み、
前記複数の第2連通孔の少なくとも一つは、前記接合用突起のバリを収容するための収容部を含
み、
前記収容部は、前記第2連通孔の前記第1端を含む部分に設けられ、
前記収容部での前記第2連通孔の断面積は、前記第2端での前記第2連通孔の断面積よりも大きい、電池モジュール。
【請求項2】
前記収容部は、前記第2連通孔の断面積を前記第1端に向かうにつれて拡大させるテーパ状の内面を有している、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記圧力調整弁は、前記複数の第2連通孔を塞ぐ複数の弾性体で形成された弁体を有し、
前記壁部は、前記第2端を囲むように前記内壁面から突出し、前記複数の弁体の少なくとも一つに押し付けられるシール部を含む、請求項1又は2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記接合用突起は、
前記複数の第2連通孔の前記第1端を囲むように設けられた矩形状の枠部と、
前記枠部の内部を前記電極積層体の積層方向において二等分するように設けられた仕切り部と、を有し、
前記複数の第2連通孔は、前記積層方向において前記枠部よりも前記仕切り部の近くに配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電池モジュールとしては、例えば特許文献1に記載されているような薄型電池が知られている。特許文献1に記載の薄型電池は、正極、負極及び集電体を有するバイポーラ電極と、セパレータ及び電解液を含む電解質層と、集電体の一方の主面に正極を取り囲むように配置された第1シール部と、集電体の他方の主面に負極を取り囲むように配置された第2シール部と、第2シール部を貫通するチューブとを備えている。チューブの一端は、セパレータ、集電体及び第2シール部で画成された内部空間に臨み、チューブの他端は、第2シール部の外部空間に臨んでいる。電池内部に発生したガスは、チューブを介して電池外部へ排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、チューブは、内部空間の圧力が上昇すると、内部空間のガスを排出する圧力調整弁として機能する。そのような圧力調整弁を備えた電池モジュールでは、複数の電極が積層された電極積層体と電極積層体の周囲に配置された枠体とを有するモジュール本体に圧力調整弁を取り付ける際、モジュール本体と圧力調整弁との接合部に突起を設け、その突起を溶融させた状態でモジュール本体と圧力調整弁とを押し付けて接合するという工法がある。この場合には、突起の溶融時に発生するバリによりガスの流路を閉塞させないようにする必要がある。
【0005】
本発明の一側面は、ガスの流路の閉塞を抑制することができる電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る電池モジュールは、複数の電極が積層された電極積層体と、電極積層体を取り囲むように配置され、電極積層体に設けられた複数の内部空間とそれぞれ連通された複数の第1連通孔を有する枠体とを有するモジュール本体と、モジュール本体に取り付けられ、複数の第1連通孔とそれぞれ連通された複数の第2連通孔を有する圧力調整弁と、を備え、圧力調整弁は、複数の第2連通孔が設けられた壁部を有し、壁部は、複数の第2連通孔の第1端が開口した外壁面と、複数の第2連通孔の第2端が開口した内壁面と、第1端を囲むように外壁面に設けられ、モジュール本体と接合された接合用突起と、を含み、複数の第2連通孔の少なくとも一つは、接合用突起のバリを収容するための収容部を含む。
【0007】
この電池モジュールでは、接合用突起が溶融された状態で、モジュール本体に押し付けられて接合することにより、圧力調整弁がモジュール本体に取り付けられる。このとき、接合用突起に発生したバリは、第2連通孔の収容部に収容される。そのため、バリによるガスの流路の閉塞を抑制することができる。
【0008】
この電池モジュールでは、収容部は、第2連通孔の断面積を第1端に向かうにつれて拡大させるテーパ状の内面を有していてもよい。この場合、接合用突起に発生したバリが内面に沿って案内され、その結果、収容部に収容される。従って、バリによるガスの流路の閉塞を更に抑制することができる。
【0009】
この電池モジュールでは、圧力調整弁は、複数の第2連通孔を塞ぐ複数の弾性体で形成された弁体を有し、壁部は、第2端を囲むように内壁面から突出し、複数の弁体の少なくとも一つに押し付けられるシール部を含んでいてもよい。この場合、シール部が弁体を確実に弾性変形させられるので、圧力調整弁の開弁圧のばらつきを抑制することができる。加えて、壁部がシール部を含むことで、第2連通孔が収容部を有する部分で壁部の厚さが薄くなることが抑制される。これにより、壁部が樹脂の射出成形により形成される場合の成形性(寸法精度)が向上する。よって、この点でも圧力調整弁の開弁圧のばらつきを抑制することができる。
【0010】
この電池モジュールでは、接合用突起は、複数の第2連通孔の第1端を囲むように設けられた矩形状の枠部と、枠部の内部を電極積層体の積層方向において二等分するように設けられた仕切り部と、を有し、複数の第2連通孔は、積層方向において枠部よりも仕切り部の近くに配置されてもよい。この場合、電池モジュールを積層方向において小型化することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面によれば、ガスの流路の閉塞を抑制することができる電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る電池モジュールを備えた蓄電装置を示す概略断面図である。
【
図4】電池モジュールの一部を示す分解斜視図(一部断面図を含む)である。
【
図9】モジュール本体の接合用突起と圧力調整弁の接合用突起とを接合する方法を示す断面図である。
【
図10】接合用突起のバリを模式的に示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0014】
図1は、実施形態に係る電池モジュールを備えた蓄電装置を示す概略断面図である。蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の車両のバッテリとして使用される。蓄電装置1は、複数(ここでは3つ)の電池モジュールとしてのバイポーラ電池2を備えている。バイポーラ電池2は、例えばニッケル水素二次電池である。
【0015】
複数のバイポーラ電池2は、金属製の導電板3を介して積層されている。導電板3は、積層方向(Z軸方向)の両端に位置するバイポーラ電池2の外側にも配置されている。バイポーラ電池2及び導電板3は、例えば積層方向から見て矩形状(平面視矩形状)である。導電板3は、隣り合うバイポーラ電池2と電気的に接続されている。これにより、複数のバイポーラ電池2が積層方向に直列接続されている。
【0016】
積層方向の一端(ここでは下端)に位置する導電板3には、正極端子4が接続されている。積層方向の他端(ここでは上端)に位置する導電板3には、負極端子5が接続されている。正極端子4及び負極端子5は、積層方向に垂直な方向(X軸方向)に延在している。このような正極端子4及び負極端子5を設けることにより、蓄電装置1の充放電を実施することができる。
【0017】
導電板3は、バイポーラ電池2において発生した熱を放出するための放熱板としても機能し得る。導電板3には、積層方向と正極端子4及び負極端子5の延在方向とに垂直な方向(Y軸方向)に延在した複数の空隙3aが設けられている。これらの空隙3aを空気等の冷媒が通過することにより、バイポーラ電池2からの熱が効率的に外部に放出される。
【0018】
また、蓄電装置1は、バイポーラ電池2及び導電板3を積層方向に拘束する拘束ユニット6を備えている。拘束ユニット6は、バイポーラ電池2及び導電板3を積層方向に挟む1対の拘束プレート7と、これらの拘束プレート7同士を締結する複数組のボルト8及びナット9とを有している。
【0019】
拘束プレート7は、鉄等の金属で形成されている。各拘束プレート7と導電板3との間には、樹脂フィルム等の絶縁フィルム10がそれぞれ配置されている。拘束プレート7及び絶縁フィルム10は、例えば平面視矩形状を有している。ボルト8の軸部8aが各拘束プレート7に設けられた挿通孔7aを挿通した状態で、軸部8aの先端部にナット9が螺合することで、バイポーラ電池2、導電板3及び絶縁フィルム10に積層方向の拘束荷重が付与される。
【0020】
図2は、バイポーラ電池2の概略断面図である。
図3は、バイポーラ電池2の概略斜視図である。
図2及び
図3において、バイポーラ電池2は、複数のセル(例えば24セル)が積層された構造(複数セル構造)を有している。バイポーラ電池2は、モジュール本体11と、このモジュール本体11の一側面に取り付けられた複数(ここでは4つ)の圧力調整弁12とを備えている。
【0021】
モジュール本体11は、複数のバイポーラ電極13(電極)がセパレータ14を介して積層された電極積層体15と、この電極積層体15を取り囲むように配置された枠体16とを備えている。複数のバイポーラ電極13の積層方向は、複数のバイポーラ電池2の積層方向(Z軸方向)と一致している。
【0022】
バイポーラ電極13及びセパレータ14は、例えば平面視矩形状を有している。セパレータ14は、積層方向に隣り合うバイポーラ電極13の間に配置されている。バイポーラ電極13は、集電体であるニッケル箔17と、当該ニッケル箔17の上面17a(一方面)に形成された正極活物質層18と、当該ニッケル箔17の下面17b(他方面)に形成された負極活物質層19とを有している。
【0023】
バイポーラ電極13の正極活物質層18は、セパレータ14を挟んで積層方向に隣り合う一方のバイポーラ電極13の負極活物質層19と対向している。バイポーラ電極13の負極活物質層19は、セパレータ14を挟んで積層方向に隣り合う他方のバイポーラ電極13の正極活物質層18と対向している。
【0024】
電極積層体15の最下層には、正極側終端電極20(電極)が配置されている。正極側終端電極20は、ニッケル箔17と、当該ニッケル箔17の上面17aに形成された正極活物質層18とを有している。電極積層体15の最上層には、負極側終端電極21(電極)が配置されている。負極側終端電極21は、ニッケル箔17と、当該ニッケル箔17の下面17bに形成された負極活物質層19とを有している。正極側終端電極20の正極活物質層18は、セパレータ14を挟んで最下層のバイポーラ電極13の負極活物質層19と対向している。負極側終端電極21の負極活物質層19は、セパレータ14を挟んで最上層のバイポーラ電極13の正極活物質層18と対向している。正極側終端電極20及び負極側終端電極21のニッケル箔17は、積層方向に隣り合う導電板3(
図1参照)に接続されている。
【0025】
正極活物質層18は、ニッケル箔17の上面17aに正極活物質を含む正極スラリーを塗工することにより形成されている。正極活物質としては、例えばコバルト(Co)酸化物コートが施された水酸化ニッケルが用いられる。負極活物質層19は、ニッケル箔17の下面17bに負極活物質を含む負極スラリーを塗工することにより形成されている。負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が用いられる。ニッケル箔17の縁部17cは、正極スラリー及び負極スラリーが塗工されない未塗工領域となっている。
【0026】
セパレータ14は、正極活物質層18と負極活物質層19との間に配置され、正極活物質層18と負極活物質層19とを隔離する。セパレータ14は、積層方向から見てニッケル箔17よりも小さく且つ正極活物質層18及び負極活物質層19よりも大きい。セパレータ14は、例えばシート状に形成されている。セパレータ14は、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、もしくはPE、PP、またはメチルセルロース等からなる不織布または織布等で形成されている。また、セパレータ14は、フッ化ビニリデン樹脂化合物等で補強されていてもよい。なお、セパレータ14の形状としては、特にシート状に限られず、袋状であってもよい。
【0027】
枠体16は、電極積層体15の周囲に配置され、各ニッケル箔17の縁部17cをそれぞれ保持する複数の一次シール部22と、これらの一次シール部22の周囲に配置された二次シール部23とを有している。
【0028】
各一次シール部22は、積層方向に沿ってニッケル箔17毎に配置されている。一次シール部22は、枠状に形成されている。一次シール部22は、ニッケル箔17の縁部17cに熱溶着により接合されている。
【0029】
積層方向に隣り合うニッケル箔17間に、ニッケル箔17、正極活物質層18、負極活物質層19及び一次シール部22が協働して内部空間Vを形成している。換言すると、積層方向に隣り合う2つのニッケル箔17、一方のニッケル箔17の正極活物質層18、他方のニッケル箔17の負極活物質層19及び一次シール部22によって囲われた空間が内部空間Vである。従って、電極積層体15には、複数の内部空間Vが設けられている。セパレータ14内を含む内部空間Vには、アルカリ性の電解液が注入されている。アルカリ性の電解液としては、例えば水酸化カリウム水溶液等を含むアルカリ溶液が用いられている。一次シール部22は、内部空間Vを封止する。バイポーラ電池2の各セルは、二つのニッケル箔17、二つのニッケル箔17の一方の正極活物質層18、二つのニッケル箔17の他方の負極活物質層19、セパレータ14及び一次シール部22により構成され、これらが協働して内部空間Vを形成している。
【0030】
二次シール部23は、角筒状を有している。二次シール部23は、内部空間Vを更に封止する。二次シール部23は、各一次シール部22に接合されている。二次シール部23は、例えば射出成形等により形成されている。
【0031】
一次シール部22及び二次シール部23は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)または変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等の樹脂で形成されている。
【0032】
次に、圧力調整弁12の構成について詳細に説明する。
図4は、バイポーラ電池2の一部を示す分解斜視図(一部断面図を含む)である。
図5は、圧力調整弁12の底面図(底壁部32の外壁面32a側から見た図)である。
図6は、圧力調整弁12の分解斜視図である。
図7は、ケース29の平面図である。
図8は、圧力調整弁12の断面図である。
【0033】
図3及び
図4に示されるように、枠体16を構成する一の壁部16aには、圧力調整弁12が取り付けられる複数(ここでは4つ)の取付領域24が設けられている。
図4に示されるように、一次シール部22の各取付領域24には、複数(ここでは6つ)の連通孔25(第1連通孔)がそれぞれ設けられている。連通孔25は、各取付領域24において3列2段(Y軸方向に3列、Z軸方向に2段)に配列されている。従って、連通孔25は、壁部16aにおいて12列2段に配列されている。各連通孔25は、異なるセルの内部空間Vとそれぞれ連通されている。
【0034】
二次シール部23の各取付領域24には、各連通孔25と連通された複数(ここでは6つ)の連通孔26(第1連通孔)がそれぞれ設けられている。連通孔26は、各取付領域24において3列2段に配列されている。
【0035】
連通孔25,26は、内部空間Vに電解液を注入するための注液孔として機能する。また、連通孔25,26は、電解液が注入された後は、内部空間Vで発生したガスが流れる流路となる。
【0036】
二次シール部23の各取付領域24の外側面には、略枠状の接合用突起27がそれぞれ設けられている。接合用突起27は、モジュール本体11と圧力調整弁12とを接合すると共に、各内部空間Vからのガスがそれぞれ流れる複数(ここでは6つ)の流路28を連通孔26と協働して形成する。従って、流路28は、各取付領域24において3列2段に配列されている。流路28は、X軸方向に垂直な面に沿った断面において矩形状を有している。接合用突起27は、X軸方向から見て、格子状に形成されている。
【0037】
図4及び
図6に示されるように、圧力調整弁12は、ケース29と、複数(ここでは6つ)の弁体30と、カバー31とを有している。ケース29は、例えばPP、PPSまたは変性PPE等の樹脂で形成されている。ケース29は、ケース29とカバー31とが対向する対向方向(X軸方向)から見て略矩形状に形成されている。対向方向は、モジュール本体11(壁部16a)に対する圧力調整弁12の取付方向(後述する接合用突起27の先端27aと接合用突起34の先端34dとが対向する方向)でもある。
【0038】
ケース29は、底壁部32(壁部)を有している。底壁部32には、モジュール本体11の各連通孔26とそれぞれ連通された複数(ここでは6つ)の連通孔33(第2連通孔)が設けられている。連通孔33は、X軸方向に垂直な面(YZ平面)に沿った断面で円形状を有している(
図5参照)。連通孔33は、底壁部32を貫通している。底壁部32は、複数の連通孔33の第1端33aが開口した外壁面32aと、複数の連通孔33の第2端33bが開口した内壁面32bと、を含んでいる。外壁面32aは、モジュール本体11と対向している。内壁面32bは、外壁面32aとは反対側に位置し、後述する弁体30の第1端面30aと対向している。
【0039】
図5に示されるように、底壁部32の外壁面32aには、略枠状の接合用突起34が設けられている。接合用突起34は、モジュール本体11と圧力調整弁12とを接合すると共に、各内部空間Vからのガスがそれぞれ流れる複数(ここでは6つ)の流路35を形成する。接合用突起34は、モジュール本体11の接合用突起27と接合されている。接合用突起34は、接合用突起27に対応する形状及び寸法を有している。従って、流路35は、X軸方向に垂直な面(YZ平面)に沿った断面において矩形状を有している。また、接合用突起34は、X軸方向から見て、格子状に形成されている。
【0040】
接合用突起34は、矩形状の枠部34a、第1仕切り部34b(仕切り部)、及び、一対の第2仕切り部34cを有している。枠部34aは、複数(ここでは、3列2段の6つ)の連通孔33の第1端33aをまとめて囲むように設けられている。第1仕切り部34bは、Y軸方向に延在し、枠部34aの内部をZ軸方向において二等分するように設けられている。一対の第2仕切り部34cは、Z軸方向に延在し、枠部34aの内部をY軸方向において三等分するように設けられている。各流路35は、枠部34a、第1仕切り部34b、及び、一対の第2仕切り部34cによって画定されている。複数の連通孔33は、Z軸方向において枠部34aよりも第1仕切り部34bの近くに配置されている。
【0041】
図4及び
図6~
図8に示されるように、ケース29は、それぞれ底壁部32からカバー31側に突出した側壁部36及び隔壁部37を有している。本実施形態では、側壁部36及び隔壁部37は、底壁部32と一体的に形成されている。側壁部36は、複数(ここでは6つ)の弁体30を包囲するように、底壁部32の内壁面32bの縁部に立設されている。具体的には、側壁部36は、底壁部32の外周縁部の全周にわたって形成されており、ケース29の外壁を構成している。より具体的には、側壁部36は、対向方向から見て、略矩形状に形成された底壁部32の外周縁部に沿って、略矩形枠状に形成されている。
【0042】
隔壁部37は、各弁体30の側面30cを覆うように底壁部32の内壁面32bに立設されている。すなわち、隔壁部37は、各弁体30が収容される円柱状の収容空間S1を形成している。本実施形態では、隔壁部37と側壁部36の一部とが弁体30の側面30cを包囲することによって、収容空間S1が形成されている。また、本実施形態では、一の弁体30を収容する隔壁部37と当該一の弁体30に隣接する位置に配置された他の弁体30を収容する隔壁部37とは、一体的に形成されている。このように、互いに異なる弁体30を収容する隔壁部37同士は、共有する部分を有していてもよい。
【0043】
本実施形態では、底壁部32の内壁面32bを基準として、側壁部36のカバー31側の端部36aは、隔壁部37のカバー31側の端部37aよりも高い位置にある。従って、ケース29にカバー31が取り付けられた状態において、カバー31が側壁部36の端部36aに接する一方で、カバー31と隔壁部37の端部37aとは互いに離間している。すなわち、カバー31と隔壁部37の端部37aとの間には空間S2が形成されている。当該空間S2は、内部空間Vから圧力調整弁12の内部に流入したガスの流路として機能する。
【0044】
弁体30は、連通孔33を塞ぐように、収容空間S1に収容されている。弁体30は、ゴム等の弾性体で形成された円柱状部材である。弁体30は、連通孔33を塞ぐ第1端面30aと、第1端面30aとは反対側に位置する第2端面30bと、第1端面30a及び第2端面30bを接続する側面30cとを有している。第1端面30aは、底壁部32の内壁面32bと対向している。第2端面30bは、カバー31と対向し、カバー31によって押圧される被押圧面である。弁体30は、第1端面30aが底壁部32の内壁面32bに対して押し付けられた状態で配置されることで、連通孔33を塞いでいる。弁体30は、内部空間Vの圧力に応じて、連通孔33を開閉させる。弁体30の側面30cと隔壁部37の内壁面又は側壁部36の内壁面との間には、隙間Gが設けられている。
【0045】
図6及び
図7に示されるように、隔壁部37の内壁面には、弁体30を位置決めするための突出部38が形成されている。突出部38は、隔壁部37の内壁面から内周側へ突出している。突出部38は、弁体30の中心位置が連通孔33の中心軸線からずれて配置された場合に、弁体30の側面30cと接触するように形成されている。このような突出部38により、弁体30の位置ずれを一定の範囲内に抑えることができる。本実施形態では、複数(ここでは6つ)の突出部38が、連通孔33の中心軸線回りに等ピッチで形成されている。
【0046】
図7及び
図8に示されるように、底壁部32は、内壁面32bに形成されたシール部39を含んでいる。シール部39は、内壁面32bからカバー31側に突出し、弁体30に押し付けられる。シール部39は、当該シール部39に対して押し付けられた弁体30の第1端面30aと接触することで、連通孔33と隙間Gとの間を開閉可能に封止している。シール部39は、内壁面32bに開口した連通孔33の第2端33bを囲むように形成されている。シール部39は、第2端33bの縁部に沿って、連通孔33の中心軸線を中心とする円環状に形成されている。シール部39は、連通孔33の全周を隙間無く囲むように形成されている。これにより、シール部39は、弁体30の第1端面30aと隙間無く接触しており、気密性が確保されている。
【0047】
連通孔33は、接合用突起34のバリ34eを収容するための収容部40を含んでいる。収容部40は、第1端33aを含んでいる。収容部40は、連通孔33の第1端33a側の部分に設けられている。収容部40は、連通孔33の断面積を第1端33aに向かうにつれて拡大させるテーパ状の内面40aを有している。収容部40は、バリ34eを逃がすための逃がし部、又は、バリ34eが逃げるための逃げ部とも言える。バリ34eは内面40aに沿って案内され、その結果、収容部40に収容される。したがって、収容部40は、バリ34eを案内するための案内部とも言える。収容部40の少なくとも一部は、X軸方向から見て、シール部39と重なっている。連通孔33の中心軸線方向(X軸方向)における収容部40の長さは、例えば、シール部39の長さ(内壁面32bからの突出高さ)と同等としてもよい。収容部40の容積は、例えば、シール部39の容積と同等としてもよい。
【0048】
カバー31は、ケース29の開口を塞ぐ板状部材である。カバー31は、例えばPP、PPSまたは変性PPE等の樹脂で形成されている。カバー31は、ケース29の開口端面に溶着により接合されている。カバー31は、複数の弁体30をケース29の底壁部32に押し付ける押圧部材としても機能する。カバー31は、弁体30をケースの底壁部32に押し付けた状態を維持しつつ、ケース29の開口端面に接合されている。具体的には、カバー31の内面31aの縁部は、側壁部36の端部36aに例えば超音波溶着によって接合されている。
【0049】
カバー31は、内面31aに設けられた接合用突起31bを有している。接合用突起31bは、内面31aの縁部の全周にわたって略矩形環状に形成されている。接合用突起31bの断面形状は、内面31a側からケース29側に向かって先細りとなるテーパ状に形成されている。カバー31をケース29に取り付ける際には、接合用突起31bが側壁部36の端部36aに押し付けられながら超音波溶着が実施される。これにより、接合用突起31bの先端側の一部が溶かされて、カバー31がケース29側に押し込まれる。
【0050】
図6に示されるように、カバー31には、圧力調整弁12の内部のガスを圧力調整弁12の外部に排気するための排気口41が設けられている。本実施形態では一例として、矩形板状を有するカバー31の一対の対角部のそれぞれに、X軸方向に延びる断面円形状の排気口41が設けられている。排気口41は、対向方向から見て弁体30と重ならないように配置されている。なお、排気口41が設けられる位置及び形状、並びに排気口41の個数は、この例に限られない。
【0051】
図4及び
図8に示されるように、圧力調整弁12において、ケース29の連通孔33は、二次シール部23の連通孔26及び一次シール部22の連通孔25を介してモジュール本体11の内部空間Vと連通されている。内部空間Vの圧力が設定圧よりも低いときは、連通孔33が弁体30によって塞がれた閉弁状態に維持される。内部空間Vの圧力が上昇して設定圧以上になると、弁体30が底壁部32から離間するように弾性変形し、連通孔33の閉塞が解除された開弁状態となる。その結果、内部空間Vからのガスは、弁体30の側面30cと隔壁部37の内壁面との隙間G(収容空間S1)を介して、隔壁部37とカバー31との間に形成された空間S2へと流通する。そして、当該ガスは、空間S2から排気口41を介して圧力調整弁12の外部へと排気される。
【0052】
上述のバイポーラ電池2の製造方法では、モジュール本体11と圧力調整弁12とを接合する工程が実施される。本実施形態では、熱溶着の一つである熱板溶着によってモジュール本体11と圧力調整弁12とが接合される。具体的には、
図9(A)に示されるように、モジュール本体11の接合用突起27の先端27aを熱板Hに当接することで、接合用突起27を先端27aから溶融させる。これにより、接合用突起27の先端27aには、溶融した樹脂によりバリ27bが発生する。また、
図9(B)に示されるように、圧力調整弁12の接合用突起34の先端34dを熱板Hに当接することで、接合用突起34を先端34dから溶融させる。これにより、接合用突起34の先端34dには、溶融した樹脂によりバリ34eが発生する。接合用突起27を溶融させる工程、及び接合用突起34を溶融させる工程は同時に行われる。続いて、
図9(C)に示されるように、接合用突起27,34が溶融している間に、モジュール本体11の接合用突起27と圧力調整弁12の接合用突起34とを押し付けることにより、接合用突起27,34同士を溶着させる。これにより、接合用突起27,34同士が接合され、その結果、モジュール本体11と圧力調整弁12とが接合される。
【0053】
次に、本実施形態に係るバイポーラ電池2の作用・効果について説明する。
【0054】
バイポーラ電池2は、複数の連通孔25,26を有するモジュール本体11と、複数の連通孔33を有する圧力調整弁12と、を備え、各連通孔33は、圧力調整弁12の接合用突起34のバリ34eを収容するための収容部40を含んでいる。例えば、接合用突起27と接合用突起34との間に位置ずれが存在し、かつ、先端27a,34dの溶融量が大きい場合は、
図10に示されるように、バリ27b,34eが大きくなり易い。特に、連通孔33に近い第1仕切り部34b(
図5参照)から発生したバリ34eは、バリ34eの先端部を湾曲させながら、外壁面32aに沿って延在し、連通孔33を閉塞するおそれがある。このような場合でも、バイポーラ電池2では、収容部40にバリ34eが収容されるので、連通孔33の収容部40以外の部分は閉塞されない。そのため、ガスの流路のバリ34eによる閉塞を抑制することができる。
【0055】
収容部40は、連通孔33の断面積を第1端33aに向かうにつれて拡大させるテーパ状の内面40aを有している。このため、バリ34eが内面40aに沿って案内され、その結果、収容部40に収容される。従って、ガスの流路のバリ34eによる閉塞を更に抑制することができる。
【0056】
底壁部32は、弁体30の第1端面30aに押し付けられるシール部39を含んでいる。このため、シール部39が弁体30を確実に弾性変形させることができるので、圧力調整弁12の開弁圧のばらつきを抑制することができる。
【0057】
底壁部32が樹脂の射出成形により形成される場合、底壁部32の厚さが不均一であると、熱収縮量の違いから、底壁部32の成形性(寸法精度)が低下するおそれがある。この場合、弁体30の圧縮量がばらつく結果、圧力調整弁12の開弁圧のばらつくおそれがある。本実施形態では、底壁部32がシール部39を含んでいる。これにより、連通孔33が収容部40を有する部分で底壁部32の厚さが薄くなることが抑制されるので、底壁部32の厚さを均一に保つことができる。従って、底壁部32の成形性(寸法精度)が向上する。よって、この点でも圧力調整弁12の開弁圧のばらつきを抑制することができる。
【0058】
接合用突起34は、矩形状の枠部34aと、枠部34aの内部をZ軸方向において二等分するように設けられた第1仕切り部34bと、を有している。複数の連通孔33は、Z軸方向において枠部34aよりも第1仕切り部34bの近くに配置されている。このため、複数の連通孔33をZ軸方向に交差するY軸方向にずらして配置することができる。よって、圧力調整弁12をZ軸方向において小型化することができる。この結果、バイポーラ電池2をZ軸方向において小型化することができる。
【0059】
以上、実施形態について詳細に説明されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0060】
例えば、バイポーラ電池2では、複数の連通孔33の少なくとも一つが収容部40を含んでいればよい。これにより、少なくとも当該一つの連通孔33が、バリ34eによって閉塞されることが抑制される。底壁部32は、複数の弁体30の少なくとも一つに押し付けられるシール部39を含んでいればよい。これにより、少なくとも当該一つの弁体30に起因した開弁圧のばらつきの発生を抑制することができる。
【0061】
収容部40は、バリ34eを収容可能であれば、上記実施形態の形状とは異なる形状を有していてもよい。収容部40の内面40aはテーパ状でなくてもよく、例えば、連通孔33の第1端33aに近づいても収容部40の断面積が一定となるように収容部40の内面40aがX軸方向に平行であってもよい。すなわち、第2端33bでの連通孔33の孔径よりも第1端33aでの連通孔33の孔径が大きくなっていればよい。連通孔33は、例えば、第1仕切り部34b(
図5参照)側にのみ収容部40を有してもよい。このような収容部40によれば、バリ34eを効率的に収容できる。
【0062】
弁体30は、円柱状部材に限られず、例えば多角形柱状部材であってもよい。また、この場合、隔壁部37は、弁体30の形状に応じた形状の収容空間S1を形成するように形成されればよい。
【0063】
排気口41は、カバー31以外の部材(例えばケースの側壁部等)に設けられてもよい。
【0064】
上記実施形態では、電池モジュールとしてのバイポーラ電池2はニッケル水素二次電池であるが、本発明は、特にニッケル水素二次電池には限られず、リチウムイオン二次電池等にも適用可能である。また、本発明は、バイポーラ電池2以外にも、複数の電極が積層された電極積層体と電極積層体を取り囲むように配置された枠体とを有するモジュール本体を備えた電池モジュールであれば適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
2…バイポーラ電池(電池モジュール)、11…モジュール本体、12…圧力調整弁、13…バイポーラ電極(電極)、15…電極積層体、16…枠体、20…正極側終端電極(電極)、21…負極側終端電極(電極)、25,26…連通孔(第1連通孔)、29…ケース、30…弁体、32…底壁部(壁部)、32a…外壁面、32b…内壁面、33…連通孔(第2連通孔)、33a…第1端、33b…第2端、34…接合用突起、34a…枠部、34b…第1仕切り部(仕切り部)、34e…バリ、39…シール部、40…収容部、40a…内面、V…内部空間。