(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】車両追跡装置、車両追跡方法、および車両追跡プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/017 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
G08G1/017
(21)【出願番号】P 2019042122
(22)【出願日】2019-03-08
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 祥行
【審査官】秋山 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-052860(JP,A)
【文献】特開2002-222487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/017
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する走行路に対して設定された対象エリア内を繰り返し
電波で走査して検知した前記車両の速度、および位置を含む車両検知データが入力される検知データ入力部と、
前記対象エリアを撮像した動画像が入力される画像入力部と、
前記検知データ入力部に入力された前記車両検知データに基づき、前記対象エリア内で停車した前記車両を特定車両として抽出する特定車両抽出部と、
前記画像入力部に入力された動画像にかかるフレーム画像を処理し、前記特定車両を監視する監視部と、
前記対象エリア内における前記特定車両の走行軌跡を示す追跡データを、前記検知データ入力部に入力された前記車両検知データ、および前記監視部による前記特定車両の監視結果を用いて生成する追跡データ生成部と、を備えた車両追跡装置。
【請求項2】
前記追跡データ生成部は、前記特定車両が停車するまでの第1の期間における前記車両検知データと、前記特定車両が停車後に再発進した後の第2の期間における前記車両検知データと、を前記監視部による前記特定車両の監視結果を用いて対応づける、請求項1に記載の車両追跡装置。
【請求項3】
前記監視部は、前記特定車両の停車後の再発進を監視する、請求項1、または2に記載の車両追跡装置。
【請求項4】
前記監視部は、前記特定車両の監視を、当該特定車両の画像から抽出した特徴量を用いて行う、請求項1~3のいずれかに記載の車両追跡装置。
【請求項5】
前記監視部は、前記特定車両抽出部が前記特定車両を抽出すると、この特定車両の監視を開始し、前記特定車両の停車後の再発進を確認すると、この特定車両の監視を終了する、請求項1~4のいずれかに記載の車両追跡装置。
【請求項6】
検知データ入力部に入力された、車両が走行する走行路に対して設定された対象エリア内を繰り返し
電波で走査して検知した前記車両の速度、および位置を含む車両検知データに基づき、前記対象エリア内で停車した前記車両を特定車両として抽出する特定車両抽出ステップと、
画像入力部に入力された、前記対象エリアを撮像した動画像にかかるフレーム画像を処理し、前記特定車両を監視する監視ステップと、
前記対象エリア内における前記特定車両の走行軌跡を示す追跡データを、前記検知データ入力部に入力された前記車両検知データ、および前記監視ステップによる前記特定車両の監視結果を用いて生成する追跡データ生成ステップと、を
コンピュータが実行する車両追跡方法。
【請求項7】
検知データ入力部に入力された、車両が走行する走行路に対して設定された対象エリア内を繰り返し
電波で走査して検知した前記車両の速度、および位置を含む車両検知データに基づき、前記対象エリア内で停車した前記車両を特定車両として抽出する特定車両抽出ステップと、
画像入力部に入力された、前記対象エリアを撮像した動画像にかかるフレーム画像を処理し、前記特定車両を監視する監視ステップと、
前記対象エリア内における前記特定車両の走行軌跡を示す追跡データを、前記検知データ入力部に入力された前記車両検知データ、および前記監視ステップによる前記特定車両の監視結果を用いて生成する追跡データ生成ステップと、をコンピュータに実行させる車両追跡プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両を追跡し、その車両の走行軌跡を取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミリ波、マイクロ波等の電波を送信し、その反射波を受信することによって走行している車両を検知するものがあった(特許文献1等参照)。また、この装置は、送信した電波の周波数と、受信した電波の周波数との差に基づいて、検知した車両の速度を取得できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1等に記載された装置は、速度成分がある(取得した速度が略0でない。)ことによって、電波を反射した反射面が車両であると判断している。一方で、特許文献1等に記載された装置は、車両が停車していると、電波を反射した反射面が車両であるのか、車両以外の物体であるのかを判断するための構成を備えていない。
【0005】
このため、特許文献1等に記載された装置は、追跡している車両が対象エリア内で停車すると、その車両を見失うことがあった。特許文献1等に記載された装置は、車両が停車するまでの期間に取得した走行軌跡と、この車両が停車後に再発進した後の期間に取得した走行軌跡とを対応付けることができない。したがって、特許文献1等に記載された装置では、実際には1台の車両であるが、停車するまでの期間に取得した走行軌跡と、停車後に再発進した後の期間に取得した走行軌跡と、を異なる2台の車両の走行軌跡として取得していた。
【0006】
この発明の目的は、車両の走行を追跡している区間内での停車の有無にかかわらず、車両の走行軌跡を適正に取得できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の車両追跡装置は、上記目的を達成するため以下に示すように構成している。
【0008】
検知データ入力部には、車両が走行する走行路に対して設定された対象エリア内を繰り返し探査波で走査して検知した車両の速度、および位置を含む車両検知データが入力される。また、画像入力部には、対象エリアを撮像した動画像が入力される。
【0009】
特定車両抽出部は、検知データ入力部に入力された車両検知データに基づき、対象エリア内で停車した車両を特定車両として抽出する。監視部は、画像入力部に入力された動画像にかかるフレーム画像を処理し、特定車両を監視する。監視部は、例えば、特定車両の移動、すなわち再発進を監視する。追跡データ生成部は、対象エリア内における特定車両の走行軌跡を示す追跡データを、検知データ入力部に入力された車両検知データ、および監視部による特定車両の監視結果を用いて生成する。
【0010】
この構成では、車両の走行を追跡している区間である対象エリア内で停車した車両を画像処理で監視するので、その車両を見失うことがなく、またその車両の再発進を適正に検知できる。したがって、車両の走行を追跡している区間内での停車の有無にかかわらず、車両の走行軌跡を適正に取得できる。
【0011】
例えば、追跡データ生成部は、特定車両が停車するまでの第1の期間における車両検知データと、特定車両が停車後に再発進した後の第2の期間における車両検知データと、を監視部による特定車両の監視結果を用いて対応づける。
【0012】
また、監視部は、特定車両の監視を、当該特定車両の画像から抽出した特徴量を用いて行うことによって、特定車両の再発進を適正に監視できる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、車両の走行を追跡している区間内での停車の有無にかかわらず、車両の走行軌跡を適正に取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(A)は、走行路を走行する車両の幅方向に視た平面図であり、
図1(B)は、車両が走行する走行路を路面に対して垂直な方向に視た平面図である。
【
図2】この例にかかる車両追跡装置、電波レーダ装置、および撮像装置の接続を示す図である。
【
図3】この例にかかる車両追跡装置の主要部の構成を示す図である。
【
図4】停車しなかった車両の追跡データを説明する図である。
【
図5】
図5(A)、(B)は、停車した車両の追跡データを説明する図である。
【
図6】電波レーダ装置の動作を示すフローチャートである。
【
図7】車両追跡装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態の車両追跡装置について説明する。
【0016】
<1.適用例>
図1は、この例にかかる車両追跡装置によって車両を追跡する対象エリアが設定された走行路を示す概略図である。
図1(A)は、走行路を走行する車両の幅方向に視た平面図であり、
図1(B)は、車両が走行する走行路を路面に対して垂直な方向に視た平面図である。
図2は、この例にかかる車両追跡装置、電波レーダ装置、および撮像装置の接続を示す図である。
【0017】
図2に示すように、この例にかかる車両追跡装置1には、電波レーダ装置5、および撮像装置6が接続されている。車両追跡装置1は、電波レーダ装置5、および撮像装置6と、有線で接続される構成であってもよいし、無線で接続される構成であってもよい。また、後述するが、電波レーダ装置5は、走行路に対して設定した対象エリアを探査波である電波で走査できる位置に設置されている。また、撮像装置6は、撮像エリアが対象エリアを含むように設置されている。電波レーダ装置5、および撮像装置6は、対象エリア100の付近に設置されることになるが、車両追跡装置1は、対象エリア100付近に設置されてもよいし、対象エリア100から離れた管制センタ、データ収集センタ等に設置されてもよい。
【0018】
図1では、3車線の走行路を示している。電波レーダ装置5、および撮像装置6は、例えば、走行路の路側に設置されたポール、またはこのポールに取り付けた走行路を走行する車両110の幅方向(車幅方向)に延びるアームに取り付けている。また、電波レーダ装置5、および撮像装置6は、走行路を跨ぐように設置されたガントリに取り付けてもよい。
【0019】
電波レーダ装置5は、
図1に示す対象エリア100内を電波(この発明で言う探査波に相当する。)で走査し、走行している車両110の位置、速度、および大きさを検知する。電波レーダ装置5は、電波による対象エリア100内の走査を、設定された時間間隔(例えば、100msec間隔)で繰り返す。
【0020】
また、電波レーダ装置5は、対象エリア100内における車両110の走行軌跡を示す追跡データを生成する構成を備えていてもよい。この例では、電波レーダ装置5が、この追跡データを生成する構成を備えているものとして説明するが、この追跡データを生成する構成については、車両追跡装置1側に備えてもよい。追跡データを生成する構成とは、電波レーダ装置5による前回の対象エリア100の走査において検知した車両110と、今回の対象エリア100の走査において検知した車両110と、を対応づける構成である。電波レーダ装置5は、対象エリア100を走査する毎に、今回の走査で検知した車両110のID、位置、速度、および大きさを対応づけた車両検知データを出力する。
【0021】
撮像装置6は、公知のビデオカメラである。撮像装置6のフレームレートは、数十フレーム/sec(例えば、30フレーム/sec)である。この撮像装置6は、上記したように撮像エリアが対象エリア100を含むように設置されている。
【0022】
図2に示すように、この例にかかる車両追跡装置1には、電波レーダ装置5から上記した車両検知データが入力されるとともに、撮像装置6から対象エリア100を撮像した動画像が入力される。
【0023】
車両追跡装置1は、入力された車両検知データに基づき、走行路を走行した各車両110の走行軌跡を示す追跡データを取得する。また、車両追跡装置1は、入力された車両検知データに基づき、速度が設定速度未満(例えば、2~5Km/h未満)である車両110を特定車両110aとして抽出する。車両追跡装置1は、停車する可能性が高い車両110を、特定車両110aとして抽出する。
図1では、特定車両110aを、他の車両110と区別している。
【0024】
車両追跡装置1は、撮像装置6から入力された動画像にかかるフレーム画像を処理し、そのフレーム画像に撮像されている特定車両110aを検知し、当該特定車両110aを監視する監視処理を行う。ここで言う、特定車両110aの監視とは、この特定車両110aが停車した後に、再発進するのを監視する処理である。
【0025】
電波レーダ装置5は、特定車両110aの速度成分が略0になると、この特定車両110aを見失う。その結果、この特定車両110aの車両検知データが電波レーダ装置5から車両追跡装置1に入力されなくなる。また、電波レーダ装置5は、特定車両110aが再発進した後、この特定車両110aがある程度の速度を超えた時点で、この特定車両110aを再度検知する。電波レーダ装置5は、再検知した特定車両110aの車両検知データを車両追跡装置1に出力する。
【0026】
上記の説明からわかるように、電波レーダ装置5は、特定車両110aを見失った位置と、再検知した位置とにズレが生じる。したがって、電波レーダ装置5は、この特定車両110aの車両検知データを、停車前後で対応づけることができない。具体的には、電波レーダ装置5は、この特定車両110aに対して、停車前期間(この発明で言う、第1の期間に相当する。)と、再発進した後の再発進後期間(この発明で言う、第2の期間に相当する。)とにおいて、異なるIDを割り当てる(車両検知データに含まれるIDが異なる。)。
【0027】
車両追跡装置1は、電波レーダ装置5が再発進後の特定車両110aを検知する前に、撮像装置6から入力された動画像にかかるフレーム画像の処理で、監視している特定車両110aの再発進を検知することができる。車両追跡装置1は、特定車両110aの再発進を検知すると、電波レーダ装置5から特定車両110aについて入力された車両検知データのIDが、停車前と再発進後で異なっているかどうかを判定する(電波レーダ装置5が、停車した特定車両110aを見失っていたかどうかを判定する。)。
【0028】
車両追跡装置1は、電波レーダ装置5から特定車両110aについて入力された車両検知データのIDが、停車前と再発進後で異なっていれば、これらのIDを対応づけることにより、この特定車両110aの停車前期間の車両検知データと、再発進後期間の車両検知データとを対応付ける。したがって、車両追跡装置1は、車両110の走行を追跡している区間内で停車しても、その車両110の走行軌跡を適正に取得できる。すなわち、車両追跡装置1は、車両110の走行を追跡している区間内での停車の有無にかかわらず、車両110の走行軌跡を適正に取得できる。
【0029】
<2.構成例>
図3は、この例にかかる車両追跡装置の主要部の構成を示す図である。この例にかかる車両追跡装置1は、制御ユニット11と、検知データ入力部12と、画像入力部13と、出力部14と、を備えている。
【0030】
制御ユニット11は、車両追跡装置1本体各部の動作を制御する。また、制御ユニット11は、特定車両抽出部21、画像処理部22、および追跡データ生成部23を有している。制御ユニット11が有する特定車両抽出部21、画像処理部22、および追跡データ生成部23については後述する。
【0031】
検知データ入力部12には、電波レーダ装置5が接続されている。検知データ入力部12には、電波レーダ装置5から車両検知データが入力される。車両検知データは、検知した車両110毎に、その車両110のID、位置、速度、および大きさを対応づけたデータである。電波レーダ装置5は、対象エリア100を電波で走査する毎に、その走査において検知した各車両110の車両検知データを車両追跡装置1に出力する。
【0032】
画像入力部13には、撮像装置6が接続されている。画像入力部13には、撮像装置6によって撮像された対象エリア100の動画像が入力される。
【0033】
出力部14は、管制センタ等の上位装置(不図示)に対して、対象エリア100における各車両110の走行軌跡を示す追跡データ等を出力する。
【0034】
次に、制御ユニット11が有する特定車両抽出部21、画像処理部22、および追跡データ生成部23について説明する。
【0035】
特定車両抽出部21は、電波レーダ装置5から入力された車両検知データに基づき、速度が設定速度未満(例えば、2~5Km/h未満)である車両110を特定車両110aとして抽出する。特定車両抽出部21は、対象エリア100内で停車する可能性が高い車両110を、特定車両110aとして抽出する。
【0036】
画像処理部22は、撮像装置6から入力された動画像にかかるフレーム画像の中から処理対象フレーム画像を選択する。画像処理部22は、選択した処理対象フレーム画像を処理して、その処理対象フレーム画像に撮像されている特定車両110aを監視する。
【0037】
制御ユニット11は、撮像装置6によって撮像された動画像にかかるフレーム画像上の位置を、電波レーダ装置5によって検知された位置に対応付けるためのパラメータを、図示していないメモリに記憶している。例えば、このパラメータは、撮像装置6が撮像した動画像にかかるフレーム画像上の位置と、実空間上の位置とを対応づけるパラメータである。電波レーダ装置5は、設置されている実空間上の位置を基準にして車両110の実空間上の位置を検知する。
【0038】
画像処理部22は、上記パラメータを用いて、特定車両抽出部21によって抽出された特定車両110aが撮像されているフレーム画像上の位置を特定する。画像処理部22は、フレーム画像を処理して特定車両110aの特徴量を抽出する。画像処理部22は、抽出した特徴量を用いて、特定車両110aが停止後に再発進するのを監視する。具体的には、画像処理部22は、フレーム画像上において、特定車両110aの特徴量が検知されるフレーム画像の位置の変化を監視する。画像処理部22が、この発明で言う監視部に相当する。
【0039】
なお、画像処理部22は、特定車両110aの監視において、入力された動画像にかかるフレーム画像を、時間的に並ぶ順番に1フレームずつ処理対象フレーム画像として選択してもよいし、時間的に並ぶ順番に数フレーム間隔(2~10フレーム間隔)で処理対象フレーム画像として選択してもよい。
【0040】
追跡データ生成部23は、電波レーダ装置5から入力された車両検知データを処理して、対象エリア100内における車両110の走行軌跡を示す追跡データを生成する。
図4は、対象エリアを停車することなく走行した車両の追跡データを示す図である。
図5は、対象エリア内で停車した車両の追跡データを示す図である。
図5(A)は、停車前期間の追跡データを示し、
図5(B)は、再発進後期間の追跡データを示している。
図5に示す例は、電波レーダ装置5が、停車したことによって、特定車両110aを見失った例である。
【0041】
図4、および
図5に示すように、車両110の追跡データは、車両110を識別するIDと車両110の大きさと、検知時刻毎に車両110の速度、および位置を対応づけたデータである。車両110の位置は、この例では、車両110の走行方向における第1基準位置からの距離と、走行路の幅方向における第2基準位置からの距離である。第1の基準位置は、例えば、走行方向における電波レーダ装置5の設置位置である。また、第2の基準位置は、例えば、走行路の幅方向の中心位置であって、右側が正値、左側が負値である。
【0042】
対象エリア100を停車することなく走行した車両110は、電波レーダ装置5から入力される車両検知データに含まれるIDが変化しない。したがって、追跡データ生成部23は、入力された車両検知データを、IDで分類して集計することによって、対象エリア100を停車することなく走行した車両110の走行軌跡を示す追跡データを生成できる。
【0043】
一方で、電波レーダ装置5が、対象エリア100内で停車したことにより、見失った特定車両110aについては、停車前期間と、再発進後期間とでIDが異なっている。したがって、追跡データ生成部23が、入力された車両検知データを、IDで分類して集計しただけでは、停車前期間における追跡データ(
図5(A)参照)と、再発進後期間における追跡データ(
図5(B)参照)とを生成できるだけである。追跡データ生成部23は、画像処理部22における特定車両110aの監視結果に基づき、停車前期間における追跡データと、再発進後期間における追跡データとを対応づける。
【0044】
車両追跡装置1の制御ユニット11は、ハードウェアCPU、メモリ、その他の電子回路によって構成されている。ハードウェアCPUが、この発明にかかる車両追跡プログラムを実行したときに、特定車両抽出部21、画像処理部22、および追跡データ生成部23として動作する。また、メモリは、この発明にかかる車両追跡プログラムを展開する領域や、この車両追跡プログラムの実行時に生じたデータ等を一時記憶する領域を有している。制御ユニット11は、ハードウェアCPU、メモリ等を一体化したLSIであってもよい。また、ハードウェアCPUが、この発明にかかる車両追跡方法を実行するコンピュータである。
【0045】
また、メモリには、フレーム画像上の位置を、電波レーダ装置5によって検知された位置に対応付けるためのパラメータを記憶している。例えば、このパラメータは、撮像装置6が撮像した動画像にかかるフレーム画像上の位置と、実空間上の位置とを対応づけるパラメータである。この場合、電波レーダ装置5は、設置されている実空間上の位置を基準にして車両110の実空間上の位置を検知する。
【0046】
なお、メモリに記憶している上記パラメータは、フレーム画像上の位置と、電波レーダ装置5によって検知された位置と、を対応付けることができるパラメータであれば、どのような形式であってもよい。
【0047】
<3.動作例>
図6は、電波レーダ装置の動作を示すフローチャートである。電波レーダ装置5は、対象エリア100の走査タイミングになると(s1)、対象エリア100を探査波である電波で走査し、その反射波を検出することにより、対象エリア100内に位置している車両110を検知する検知処理を行う(s2)。s2では、電波レーダ装置5は、電波の照射方向毎に、反射波を検出するまでの時間(電波の飛行時間)と、反射波の周波数を検出し、電波を反射した物体(車両110、路面等)の位置、この物体の大きさ、およびこの物体の速度を検知する。
【0048】
電波レーダ装置5は、s2にかかる検知処理が完了すると、前回の対象エリア100の走査で検出した車両110と、今回の対象エリア100の走査で検出した車両110と、を対応づける対応づけ処理を行う(s3)。s3にかかる対応づけ処理では、車両110の大きさ、位置、速度を用いて行う。電波レーダ装置5は、前回の走査で検知した車両110に対応づけることができた車両110(今回の走査で検知した車両110)については、対応づけた車両110に割り当てられているIDを割り当てる。一方、電波レーダ装置5は、前回の走査で検知した車両110に対応づけることができなかった車両110(今回の走査で検知した車両110)については、新たなIDを生成し、これを割り当てる。
【0049】
電波レーダ装置5は、停車等によって一時的に見失った車両110を、再度検知したときには、前回の走査で検知した車両110に対応づけることができないので、この車両110に対して、見失う前とは異なるIDを割り当てる。
【0050】
電波レーダ装置5は、今回の走査で検知した車両110毎に、ID、位置、速度、および大きさを対応づけた車両検知データを生成し、ここで生成した車両検知データを車両追跡装置1に出力し(s4)、s1に戻る。
【0051】
この例では、電波レーダ装置5は、100msec間隔で、対象エリア100を電波で走査し、検知した車両110にかかる車両検知データを車両追跡装置1に出力する。すなわち、車両追跡装置1には、車両検知データが100msec間隔で入力される。
【0052】
また、電波レーダ装置5は、上記の処理を行うことによって、対象エリア100を走行した各車両110の追跡データ(
図4、
図5参照)を得ることができる。但し、一時的に見失った車両110(特定車両110a)については、得られた停車前期間における追跡データと、再発進後期間における追跡データとを対応づけることはできない。
【0053】
次に、この例にかかる車両追跡装置1の動作について説明する。
図7は、車両追跡装置の動作を示すフローチャートである。車両追跡装置1は、検知データ入力部12に車両検知データが入力されると(s11)、入力された車両検知データを処理して速度が設定速度未満(例えば、2~5Km/h未満)である車両110を特定車両110aとして抽出する(s12)。特定車両抽出部21が、s12にかかる処理を実行する。
【0054】
車両追跡装置1は、s12で抽出された特定車両110aの中に、今回初めて抽出された特定車両110aがあるかどうかを判定する(s13)。s13にかかる処理は、同じ特定車両110aに対して後述する監視処理を複数実行するのを防止するために設けている。特定車両抽出部21が、s13にかかる処理を実行する。
【0055】
車両追跡装置1は、今回初めて抽出された特定車両110aがあれば、この特定車両110aに対する監視処理を開始する(s14)。s14において開始される監視処理については、後述する。
【0056】
車両追跡装置1は、s13で今回初めて抽出された特定車両110aがないと判定した場合、またはs12で今回初めて抽出された特定車両110aに対する監視処理を開始すると、今回入力された車両検知データをIDで分類して集計し(s15)、s11に戻る。追跡データ生成部23が、s15にかかる処理を実行する。
【0057】
車両追跡装置1は、この
図7に示す処理を実行することにより、上記した
図4、または
図5に示した追跡データを生成する。
【0058】
次に、s14で開始する監視処理について説明する。
図8は、この監視処理を示すフローチャートである。画像処理部22は、画像入力部13に入力された動画像にかかるフレーム画像の中から、今回入力された車両検知データ(特定車両110aを抽出した車両検知データ)の検知時刻に対して、撮像時刻が時間的に最も近いフレーム画像を選択する(s21)。画像処理部22は、s21で選択したフレーム画像に撮像されている特定車両を検出し、この特定車両110aの特徴量を抽出する(s22)。s22では、この特定車両110aのIDと、抽出した特徴量とを対応づけて記憶する。
【0059】
画像処理部22は、車両検知データから今回抽出された特定車両110aの実空間上の位置を得ることができる。また、車両追跡装置1は、実空間上の位置と、フレーム画像上の位置と、を対応づけるパラメータを制御ユニット11のメモリに記憶している。したがって、画像処理部22は、特定車両110aが撮像されているフレーム画像上の位置を判断することができる。画像処理部22は、s22で特定車両の外形形状にかかる特徴だけでなく、特定車両110a色等も特徴として抽出する。
【0060】
画像処理部22は、特定車両110aの再発進を監視するための処理対象フレーム画像を選択し(s23)、特定車両110aの再発進を判定する(s24)。画像処理部22は、特定車両110aの再発進を確認するまで、s23、およびs24にかかる処理を繰り返す。s23では、s21で選択したフレーム画像よりも、撮像タイミングが時間的に遅いフレーム画像である。また、s23では、画像入力部13に入力された動画像にかかるフレーム画像を、時間的に並ぶ順番に1フレームずつ処理対象フレーム画像として選択してもよいし、時間的に並ぶ順番に数フレーム間隔(2~10フレーム間隔)で処理対象フレーム画像として選択してもよい。また、画像処理部22は、s24では、フレーム画像上において、特定車両110aの特徴量が抽出できる位置の変化を監視している。
【0061】
画像処理部22は、s24で特定車両110aの再発進を確認すると、検知データ入力部12に車両検知データが入力されるのを待って(s25)、今回入力された車両検知データの中に、再発進を確認した特定車両110aの車両検知データが含まれているかどうかを判定する(s26)。s26では、特定車両110aが停車していた付近において、新たなIDが割り当てられた車両検知データがあるかどうかを判定している。特定車両110aが停車していた付近において、新たなIDが割り当てられた車両検知データが、再発進した特定車両110aの車両検知データである。
【0062】
画像処理部22は、s26で、再発進を確認した特定車両110aの車両検知データが含まれていると判定するまで、s25、およびs26にかかる処理を繰り返す。画像処理部22は、s26で、再発進を確認した特定車両110aの車両検知データが含まれていると判定すると、この特定車両110aの車両検知データに割り当てられているIDと、s22で抽出した特定車両110aの特徴量に対応付けたIDとを対応づけて記憶し(s27)、本処理を終了する。
【0063】
s27では、対象エリア100内で停車した特定車両110aに対して、停車前期間に割り当てられていたIDと、再発進した後の再発進後期間に割り当てられていたIDとを対応づけている。したがって、追跡データ生成部23は、対象エリア100内で停車したことによって、一時的に見失われた車両110(特定車両110a)の追跡データが
図5(A)に示す停車前期間と、
図5(B)に示す再発進後期間とに分かれても、対象エリア100内における当該車両110の走行軌跡を示す追跡データを適正に取得できる。
【0064】
なお、
図7、および
図8に示した処理は、一例であり、一部の処理ステップの順番を入れ替えたり、一部の処理ステップを同様の処理結果が得られる他の処理ステップに置き換えたりしてもよい。
【0065】
また、上記の例で説明した電波レーダ装置5は、レーザ光を探査波として用いる、レーザレーダ装置に置き換えてもよい。
【0066】
また、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0067】
さらに、この発明に係る構成と上述した実施形態に係る構成との対応関係は、以下の付記のように記載できる。
<付記>
車両(110)が走行する走行路に対して設定された対象エリア(100)内を繰り返し探査波で走査して検知した前記車両(110)の速度、および位置を含む車両検知データが入力される検知データ入力部(12)と、
前記対象エリア(100)を撮像した動画像が入力される画像入力部(13)と、
前記検知データ入力部(12)に入力された前記車両検知データに基づき、前記対象エリア内で停車した前記車両(110)を特定車両(110a)として抽出する特定車両抽出部(21)と、
前記画像入力部(13)に入力された動画像にかかるフレーム画像を処理し、前記特定車両(110a)を監視する監視部(22)と、
前記対象エリア(100)内における前記特定車両(110a)の走行軌跡を示す追跡データを、前記検知データ入力部(12)に入力された前記車両検知データ、および前記監視部(22)による前記特定車両(110a)の監視結果を用いて生成する追跡データ生成部(23)と、を備えた車両追跡装置(1)。
【符号の説明】
【0068】
1…車両追跡装置
5…電波レーダ装置
6…撮像装置
11…制御ユニット
12…検知データ入力部
13…画像入力部
14…出力部
21…特定車両抽出部
22…画像処理部
23…追跡データ生成部
100…対象エリア
110…車両
110a…特定車両